この種の鍵盤装置は、鍵盤シャーシに複数のハンマー部材を複数の鍵それぞれに対応させた状態で上下方向に回転可能に取り付けるため、鍵盤シャーシに設けられた軸部にハンマー部材の軸受部を取り付ける構造になっている。この場合、軸受部は、中心部に軸部が回転可能に嵌合する嵌合孔と、軸受部の外周から嵌合孔に軸部を導く軸挿入部とを備え、全体がほぼC字形状に形成されている。
以下、図1~図4を参照して、この発明を電子鍵盤楽器の鍵盤装置に適用した一実施形態について説明する。
この鍵盤装置は、図1に示すように、ABS樹脂などの合成樹脂製の鍵盤シャーシ1と、この鍵盤シャーシ1上に配列されて上下方向にそれぞれ回転可能に取り付けられた複数の鍵2と、これら複数の鍵2の押鍵操作に伴って各鍵2それぞれにアクション荷重を付与する複数のハンマー部材3と、複数の鍵2の押鍵動作に応じてそれぞれオン動作するスイッチ部4と、を備えている。
鍵盤シャーシ1は、楽器ケース(図示せず)内に配置されるものである。この鍵盤シャーシ1の前端部(図1では右端部)には、図1に示すように、前脚部5が底部から上方に突出して設けられている。この前脚部5の上部には、鍵2の横振れを防ぐための鍵ガイド部6が各鍵2にそれぞれ対応して設けられている。
また、この鍵盤シャーシ1における前脚部5の後部側(図1では左側部)には、図1に示すように、ハンマー載置部7が前脚部5よりも少し高い高さで設けられている。このハンマー載置部7の下面には、ハンマー部材3を支持するためのハンマー支持部8が下側に向けて突出して設けられている。このハンマー支持部8には、ハンマー部材3を上下方向に回転可能に支持するハンマー支持軸8aが設けられている。
また、この鍵盤シャーシ1の前後方向(図1では左右方向)におけるほぼ中間部、つまりハンマー鍵載置部7の上部後方には、図1に示すように、基板載置部10が一段低い高さで設けられている。この基板載置部10の上方には、スイッチ部4がハンマー載置部7と基板支持部11との両方に跨った状態で取り付けられている。この場合、基板支持部11は、基板載置部10の後部側(図1では左側)上面に起立して設けられている。
さらに、この鍵盤シャーシ1の後部、つまり基板載置部10の後部側には、図1に示すように、鍵載置部12が鍵ガイド部6の上部よりも少し低い高さで設けられている。この鍵載置部12の上面には、鍵支持部13が上方に突出して設けられている。この鍵支持部13には、鍵2の後端部を上下方向に回転可能に支持する鍵支持軸13aが設けられている。
また、この鍵盤シャーシ1における鍵載置部12の後端部には、図1に示すように、鍵盤シャーシ1の後端部を支持する後脚部14が鍵盤シャーシ1の上部から底部に向けて垂下されている。この後脚部14の下端部には、ハンマー部材3の下限位置を規制するためのフェルトなどの下限ストッパ部15が設けられている。
一方、鍵2は、白鍵と黒鍵とを有している。ただし、この実施形態では、1つの白鍵について説明する。この鍵2は、図1に示すように、その後端部(図1では左端部)が鍵盤シャーシ1の鍵載置部12上に設けられた鍵支持部13の鍵支持軸13aによって上下方向に回転可能に支持されている。この鍵2の前後方向(図1では左右方向)におけるほぼ中間部には、鍵盤シャーシ1の基板載置部10上に取り付けられたスイッチ部4を押圧するためのスイッチ押圧部16が下側に突出して設けられている。
この場合、スイッチ部4は、図1に示すように、スイッチ基板17上に配置されたゴムシートを膨出させたドーム状の膨出部18を備えている。このドーム状の膨出部18は、鍵2のスイッチ押圧部16に対応してスイッチ基板17上に設けられている。このスイッチ部4におけるスイッチ基板17は、その前端部(図1では右端部)がハンマー載置部7上に配置され、他端部(図1では左端部)が基板載置部10上に設けられた基板支持部11上に配置され、この状態で基板載置部10の上方に浮いた状態で取り付けられている。
また、このスイッチ部4は、図1に示すように、ゴムシートの膨出部18がスイッチ押圧部16によって押圧された際に、膨出部18が弾性変形して、その内部の可動接点がスイッチ基板17の固定接点に接触することにより、オン信号を出力するようになっている。この場合、スイッチ基板17には、スイッチ部4からのオン信号に基づいて楽音情報を生成し、この生成した楽音情報に基づいてスピーカ(図示せず)から楽音を放音させるための発音部17aが設けられている。
さらに、鍵2のスイッチ押圧部16の前側(図1では右側)に位置する鍵2の箇所には、図1に示すように、ハンマー押圧部20が鍵2の下側に向けて突出して設けられている。このハンマー押圧部20の下部には、ハンマー部材3の後述する鍵当接摺動部26を摺動可能に保持するハンマー保持部21が設けられている。
ハンマー部材3は、図1および図2に示すように、ハンマー本体23と、このハンマー本体23の後部(図2では左側部)に設けられた錘部24と、ハンマー本体23の前部側(図2では右側部)に設けられて、ハンマー本体23の回転中心となる回転取付部25と、ハンマー本体23の前側に位置する先端部(図2では右端部)に設けられた鍵当接摺動部26と、を備えている。
このハンマー部材3は、図1および図2に示すように、ハンマー本体23の鍵当接摺動部26を鍵盤シャーシ1のハンマー載置部7の前下り部9に設けられた開口部9aに挿入させた状態で、ハンマー本体23の回転取付部25がハンマー載置部7の下面に設けられたハンマー支持部8のハンマー支持軸8aに回転可能に取り付けられることにより、ハンマー本体23がハンマー支持軸8aを中心に上下方向に回転するようになっている。
また、このハンマー部材3は、図1および図2に示すように、ハンマー本体23の回転取付部25がハンマー支持部8のハンマー支持軸8aに回転可能に取り付けられた際に、ハンマー本体23の前側に位置する先端部(図1では右端部)に設けられた鍵当接摺動部26が、鍵2のハンマー押圧部20に設けられたハンマー保持部21内に、摺動可能に挿入されるようになっている。
これにより、ハンマー部材3は、図1および図2に示すように、通常の状態で、ハンマー本体23が錘部24の重量によってハンマー支持部8のハンマー支持軸8aを中心に反時計回りに回転し、ハンマー本体23の錘部24側の後端部(図1では左端部)が下限ストッパ部15に当接して位置規制されると共に、ハンマー本体23の鍵当接摺動部26が鍵2のハンマー押圧部20を押し上げて鍵2を上限位置に位置規制するようになっている。
また、このハンマー部材3は、図1および図2に示すように、鍵2が上方から押鍵されると、鍵2のハンマー押圧部20によってハンマー本体23の鍵当接摺動部26がハンマー本体23の錘部24の重量に抗して押し下げられ、これに伴ってハンマー本体23がハンマー支持部8のハンマー支持軸8aを中心に時計回りに回転し、ハンマー本体23の錘部24側の後端部が鍵盤シャーシ1の鍵載置部12の下面に設けられたフェルトなどの上限ストッパ12aに当接して、ハンマー本体23の回転が停止するようになっている。
ところで、このハンマー部材3の回転取付部25は、図2および図3に示すように、ハンマー本体23の切欠き部30に装着して取り付けられる軸受取付部27と、この軸受取付部27に設けられた軸受部28と、を備え、これらがポリアセタール(POM)などの剛性の高い合成樹脂によって一体に形成されている。この場合、ハンマー本体23の切欠き部30は、ハンマー本体23の前部側(図2では右側)に設けられ、ハンマー本体23の後部側(図2では左側)に向けて開放されている。
すなわち、このハンマー本体23には、図2および図3に示すように、切欠き部30の下部に位置する切欠き下辺部23aと、切欠き下辺部23aの前端部から斜め上方に向けて傾斜する切欠き傾斜部23bと、この切欠き傾斜部23bの前側上部から垂直に延びる切欠き前部23cと、この切欠き前側部23cの上端部から切欠き部30の上部に位置する切欠き上辺部23dと、が設けられている。
これにより、軸受取付部27は、図2および図3に示すように、ハンマー本体23の切欠き下辺部23aに取り付けられる下部取付部27aと、ハンマー本体23の切欠き傾斜部23bの内周部に取り付けられる傾斜取付部27bと、ハンマー本体23の切欠き前部23cの内周部に取り付けられる前部取付部27cと、ハンマー本体23の切欠き上辺部23dに取り付けられる上部取付部27dと、を備えている。
この軸受取付部27は、図2および図3に示すように、下部取付部27a、傾斜取付部27b、前部取付部27c、および上部取付部27dが一体に設けられ、ハンマー本体23の切欠き部30の周囲に装着されて取り付けられるようになっている。
軸受部28は、図2および図3に示すように、軸受取付部27の内周部に一体に設けられて、ハンマー本体23の切欠き部30内に配置されるようになっている。この軸受部28は、その外形がほぼ円形状をなし、径方向に弾性変形可能な状態で軸受取付部27の内周部に設けられるようになっている。
すなわち、この軸受部28は、図2および図3に示すように、軸受本体31と、この軸受本体31のほぼ中心部に設けられて鍵盤シャーシ1のハンマー支持部8に設けられたハンマー支持軸8aが回転可能に嵌合する嵌合孔32と、軸受部28の外周側から嵌合孔32にハンマー支持軸8aを導く挿入孔33と、を備えている。
軸受本体31は、図2および図3に示すように、上部が軸受取付部27の上部取付部27dに一体に設けられ、この上部以外の外周部が弾性支持部31aによって軸受取付部27の傾斜取付部27bの内周部に支持されている。すなわち、弾性支持部31aは、軸受取付部27の傾斜取付部27bの内周部と、これに対向する軸受本体31の外周との間に設けられている。
これにより、軸受本体31は、図2および図3に示すように、軸受取付部27の上部取付部27dを除いて、軸受本体31の外周面と軸受取付部27の内周面との間に隙間が設けられ、軸受取付部27の下部取付部27aに対応する軸受本体31の下部側の外周部が弾性支持部31aを支点として径方向に弾力的に変位するようになっている。
また、この軸受本体31は、図2および図3に示すように、軸受取付部27の下部取付部27aに対応する下部に複数の開口部31bが複数のリブ31cによって設けられている。この場合、複数のリブ31cは、弾力的に屈曲可能に設けられている。このため、この軸受本体31は、複数のリブ31cが弾力的に屈曲して複数の開口部31bが変形することにより、軸受取付部27の下部取付部27aに対応する軸受本体31の下部側が径方向に弾力的に変位するようになっている。
また、軸受部28の嵌合孔32は、図2~図4に示すように、軸受本体31の中心部にほぼ円形状に設けられ、挿入孔33と反対側に位置する内周面に半円弧状の凹部32aが設けられている。これにより、嵌合孔32は、その内部に鍵盤シャーシ1のハンマー支持部8に設けられたハンマー支持軸8aが回転可能に嵌合するようになっている。この場合、ハンマー支持部8のハンマー支持軸8aは、断面が円形状の丸棒状に形成されている。
また、軸受部28の挿入孔33は、図2および図3に示すように、軸受本体31の後部側(図3では左側)に位置する外周部から嵌合孔32に亘って設けられている。この場合、挿入孔33は、軸受本体31の外周側の溝幅がハンマー支持部8のハンマー支持軸8aの外径と同じか、それよりも少し広く形成されている。また、この挿入孔33は、嵌合孔32に位置する箇所の溝幅がハンマー支持軸8aの外径よりも少し狭く形成されている。
これにより、挿入孔33は、図2および図3に示すように、ハンマー支持軸8aを軸受本体31の後部側(図3では左側)に位置する外周部から嵌合孔32に導く際に、ハンマー支持軸8aが挿入する挿入圧が徐々に大きくなる。このため、この挿入孔33は、ハンマー支持軸8aが嵌合孔32に近づくに従って軸受本体31が徐々に径方向に広がるように弾性変形することにより、挿入孔33の溝幅が徐々に広がってハンマー支持軸8aを嵌合孔32に嵌合させるようになっている。
ところで、軸受部28の嵌合孔32の内周面には、図2および図3に示すように、ハンマー支持軸8aの外周面に軸受部28の回転方向に摺動可能に接触する複数の突起部34が設けられている。これら複数の突起部34は、軸受部28の嵌合孔32と挿入孔33との境界に設けられている。すなわち、複数の突起部34は、嵌合孔32と挿入孔33との境界において、挿入孔33の上部と下部とに位置する2箇所に設けられている。
この場合、複数の突起部34それぞれは、図2および図3に示すように、頂上が点接触する第1の山形状に形成されていても良く、また頂上が線接触する第2の山形状に形成されていても良い。すなわち、突起部34が第1の山形状の場合には、ハンマー支持軸8aの外周面に点接触で摺動することにより、摩擦抵抗が軽減される。また、突起部34が第2の山形状の場合には、ハンマー支持軸8aの外周面に線接触で摺動することにより、摩擦抵抗が軽減される。
この場合、嵌合孔32は、図3に示すように、ハンマー支持軸8aが嵌合した際に、複数の突起部34がハンマー支持軸8aの外周面に接触し、これら複数の突起部34と反対側に位置する凹部32aの各縁部にハンマー支持軸8aの外周面が接触するようになっている。これにより、嵌合孔32は、その内周面にハンマー支持軸8aの外周面が4点で接触するようになっている。
また、軸受部28の嵌合孔32の内周面には、図3に示すように、複数の突起部34によってグリースなどの潤滑材(図示せず)を溜める潤滑溜め部35がそれぞれ設けられている。すなわち、嵌合孔32は、その内周面にハンマー支持軸8aの外周面が複数の突起部34によって4点で接触する。このため、複数の潤滑溜め部35は、上部側の突起部34と凹部32aの上部側の縁との間、および下部側の突起部34と凹部32aの下部側の縁との間にそれぞれ設けられている。
この場合、ハンマー支持部8のハンマー支持軸8aは、図4に示すように、鍵盤シャーシ1のハンマー載置部7の下面に設けられた一対の支持片8b間に設けられている。また、ハンマー部材3の軸受部28は、その中心軸の軸方向の長さ(厚み)が一対の支持片8b間の長さ(幅)、つまりハンマー支持軸8aの軸方向の長さと同じ長さに形成されている。このため、ハンマー部材3の軸受部28は、その中心軸の軸方向の両側面が一対の支持片8bの各対向面に接触するようになっている。
これにより、複数の潤滑溜め部35は、図3および図4に示すように、軸受部28の軸方向の両側面が一対の支持片8bの各対向面に接触することにより、軸受部28の軸方向に位置する潤滑溜め部35の両側部が一対の支持片8bの各対向面で塞がれる。このため、複数の潤滑溜め部35は、その内部にグリースなどの潤滑材が軸受部28の軸方向から漏れることがなく封入されるようになっている。
次に、このような鍵盤装置の作用について説明する。
まず、鍵2が押鍵操作されていない初期状態のときには、図1に示すように、ハンマー部材3が錘部24の重量によってハンマー支持部8のハンマー支持軸8aを中心に反時計回りに回転し、このハンマー部材3の錘部24側の後端部が鍵盤シャーシ1の後脚部14における下端部に設けられた下限ストッパ15に上方から当接している。
このときには、図1に示すように、鍵2のハンマー押圧部20のハンマー保持部21がハンマー本体23の先端部(図1では右端部)に位置する鍵当接摺動部26によって押し上げられているので、鍵2が鍵盤シャーシ1の鍵載置部12上に設けられた鍵支持部13の鍵支持軸13aを中心に反時計回りに回転して上限位置に規制されている。この状態では、鍵2のスイッチ押圧部16がスイッチ部4の上方に位置して離れている。
この状態で、鍵2を押鍵操作すると、図1において、鍵2が鍵支持部13の鍵支持軸13aを中心に時計回りに回転して、ハンマー押圧部20のハンマー保持部21がハンマー部材3の鍵当接摺動部26を押し下げる。これにより、ハンマー部材3が錘部24の重量に抗して、図1において時計回りに回転する。このときには、ハンマー部材3のハンマー本体23の回転によって、鍵2にアクション荷重が付与されるので、鍵荷重が重くなる。
そして、鍵2の押鍵操作に伴ってハンマー部材3が時計回りに更に回転して、ハンマー本体23の後端部(図1では左端部)が鍵盤シャーシ1の鍵載置部12の下面に設けられたフェルトなどの上限ストッパ12aに下側から接近する。このときには、スイッチ部4が鍵2のスイッチ押圧部16によって押圧されて、ゴムシートの膨出部18が弾性変形することにより、スイッチ部4がスイッチ信号を出力する。
これにより、発音部17aがスイッチ部4からのオン信号に基づいて楽音情報を生成し、この生成した楽音情報に基づいてスピーカ(図示せず)から楽音を放音させる。この後、ハンマー本体23の後端部(図1では左端部)が鍵盤シャーシ1の鍵載置部12の下面に設けられたフェルトなどの上限ストッパ12aに下側から当接し、ハンマー本体23が上限位置に規制されて、ハンマー部材3の回転が停止する。
そして、鍵2から指が離れて鍵2が離鍵動作を開始すると、ハンマー部材3のハンマー本体23が錘部24の重量によってハンマー支持部8のハンマー支持軸8aを中心に反時計回りに回転し、鍵2がスイッチ部4の膨出部18の弾性復帰力によって鍵支持部13の鍵支持軸13aを中心に反時計回りに回転を開始する。
このように、ハンマー本体23がハンマー支持部8のハンマー支持軸8aを中心に反時計回りに更に回転し、鍵2が鍵支持部13の鍵支持軸13aを中心に反時計回りに更に回転する。そして、ハンマー本体23の錘部24側の後端部が鍵盤シャーシ1の後脚部14における下端部に設けられた下限ストッパ15に上方から当接する。
これにより、鍵2は、図1に示すように、ハンマー押圧部20のハンマー保持部21がハンマー本体23の先端部(図1では右端部)に位置する鍵当接摺動部26によって押し上げられるので、鍵2が鍵支持部13の鍵支持軸13aを中心に反時計回りに回転して上限位置に規制される。この状態では、鍵2が初期位置に戻り、鍵2のスイッチ押圧部16がスイッチ部4の上方に位置して離れる。
このように、ハンマー部材3の回転取付部25が鍵盤シャーシ1のハンマー支持部8のハンマー支持軸8aを中心に回転する際には、軸受部28の軸受本体31がハンマー支持軸8aの径方向に弾性変形可能に設けられているので、軸受部28における嵌合孔32の内周面に設けられた複数の突起部34がハンマー支持軸8aの外周面に弾力的に点接触または線接触した状態で、軸受部28がハンマー支持軸8aを中心に回転する。
すなわち、複数の突起部34がハンマー支持軸8aの外周面に弾力的に接触した際には、これら複数の突起部34と反対側に位置する凹部32aの各縁部にハンマー支持軸8aの外周面が接触する。これにより、軸受部28の嵌合孔32の内周面がハンマー支持軸8aの外周面に4点で弾力的に接触する。このため、ハンマー支持軸8aに対する軸受部28の摩擦抵抗が少なく、ハンマー支持軸8aに対して軸受部28がガタつくことがなく、円滑に回転する。
また、このときには、軸受部28の嵌合孔32の内周面にグリースなどの潤滑材(図示せず)を溜める潤滑溜め部35が複数の突起部34によってそれぞれ設けられているので、ハンマー支持軸8aに対して軸受部28が回転する際に、複数の潤滑溜め部35に溜められたグリースなどの潤滑材をハンマー支持軸8aの外周面に確実にかつ良好に塗布することができる。
すなわち、複数の潤滑溜め部35は、上部側の突起部34と凹部32aの上部側の縁との間、および下部側の突起部34と凹部32aの下部側の縁との間にそれぞれ設けられているので、ハンマー支持軸8aに対して軸受部28が繰り返し回転しても、複数の潤滑溜め部35に溜められたグリースなどの潤滑材をハンマー支持軸8aの外周面に円滑にかつ良好に塗布することができる。
この場合、複数の潤滑溜め部35は、軸受部28の軸方向の両側面が一対の支持片8bの各対向面に接触した状態で、ハンマー支持軸8aに対して軸受部28が回転することにより、複数の潤滑溜め部35の軸方向の両側を一対の支持片8bの各対向面で塞ぐことができる。このため、複数の潤滑溜め部35に溜められたグリースなどの潤滑材が複数の潤滑溜め部35の両側から漏れることがないので、ハンマー支持軸8aに対して軸受部28が繰り返し回転しても、潤滑材の減少を防ぐことができる。
このように、この電子鍵盤楽器の鍵盤装置によれば、ハンマー支持軸8aと、挿入孔33が設けられ、ハンマー支持軸8aが挿入孔33から挿入されることにより弾性変形される軸受部28と、軸受部28の内周面に設けられ、軸受部28に挿入されたハンマー支持軸8aの外周面に、ハンマー支持軸8aの回転方向に沿って摺動可能に接触する突起部34と、を備えていることにより、ハンマー支持軸8aに対する軸受部28のガタつきを防ぐことができる。
すなわち、この鍵盤装置では、ハンマー支持軸8aの径方向に弾性変形可能な軸受部28の内周面に設けられた複数の突起部34をハンマー支持軸8aの外周面に弾力的に押し当てることができるので、ハンマー支持軸8aに対して軸受部28が回転する際に、複数の突起部34をハンマー支持軸8aの外周面に沿って弾力的に摺動させることができる。このため、ハンマー支持軸8aに対する軸受部28のガタつきを防いで、円滑に軸受部28を回転させることができる。
この場合、軸受部28は、軸受本体31を備え、この軸受本体31の外周部が弾性支持部31aによってハンマー部材3の切欠き部30に取り付けられた軸受取付部27の内周部に支持されていることにより、軸受本体31の外周面と軸受取付部27の内周面との間に隙間を設けることができるので、弾性支持部31aを支点として軸受本体31を径方向に弾力的に変位させることができる。
また、この軸受部28は、軸受本体31に複数の開口部31bが弾力的に屈曲可能な複数のリブ31cによって設けられていることにより、複数のリブ31cが弾力的に屈曲して複数の開口部31bを変形させることができるので、これによっても軸受本体31を径方向に弾力的に変位させることができる。
また、この鍵盤装置では、軸受部28が、軸受本体31と、ハンマー支持軸8aが嵌合する嵌合孔32と、ハンマー支持軸8aを軸受本体31の外周から嵌合孔32に導く挿入孔33と、を備えていることにより、軸受部28をハンマー支持軸8aに取り付ける際に、ハンマー支持軸8aを挿入孔33に挿入させて、この挿入孔33でハンマー支持軸8aを嵌合孔32に確実に導くことができる。
この場合、挿入孔33は、軸受本体31の外周側の溝幅がハンマー支持軸8aの直径と同じか、それよりも少し広くなっており、嵌合孔32の内周側がハンマー支持軸8aの直径よりも少し狭くなっているので、ハンマー支持軸8aを挿入孔33に挿入させて嵌合孔32に導く際に、挿入孔33を弾力的に押し広げて、ハンマー支持軸8aを嵌合孔32に確実にかつ良好に嵌合させることができ、またハンマー支持軸8aが嵌合孔32に嵌合した際に、ハンマー支持軸8aが不用意に挿入孔33から抜け出さないようにすることができる。
また、この鍵盤装置では、複数の突起部34が挿入孔33と嵌合孔32との境界部に設けられていることにより、ハンマー支持軸8aが挿入孔33から嵌合孔32に嵌合した際に、複数の突起部34によってハンマー支持軸8aが不用意に挿入孔33から抜け出すのを確実に防ぐことができる。すなわち、複数の突起部34は、嵌合孔32と挿入孔33との境界において、挿入孔33の上部と下部とに位置する2箇所に設けられているので、ハンマー支持軸8aが挿入孔33から抜け出さないようにすることができる。
この場合、突起部34は、ハンマー支持軸8aの外周面に対して点接触と線接触とのいずれか一方で接触することにより、ハンマー支持軸8aの外周面に対する突起部34の接触面積を小さくすることができ、これによりハンマー支持軸8aに対して軸受部28が回転する際の摩擦抵抗を大幅に軽減することができる。
すなわち、複数の突起部34は、1つの頂点を有する山形状に形成されている場合に、ハンマー支持軸8aの外周面に点接触で摺動させることができるので、摩擦抵抗を大幅に軽減することができる。また、複数の突起部34は、頂点がハンマー支持軸8aの軸方向に連続する山形状に形成されている場合に、ハンマー支持軸8aの外周面に線接触で摺動させることができるので、これによっても摩擦抵抗を軽減させることができる。
この場合、嵌合孔32は、ハンマー支持軸8aが嵌合した際に、複数の突起部34をハンマー支持軸8aの外周面に接触させると共に、挿入孔33と反対側に位置する嵌合孔32の内周面に設けられた凹部32aの各縁部にハンマー支持軸8aの外周面を接触させることができる。
このため、この嵌合孔32は、その内周面にハンマー支持軸8aの外周面を4点で接触させることができるので、これによってもハンマー支持軸8aの外周面に対する嵌合孔32の内周面の接触面積を小さくすることができる。このため、ハンマー支持軸8aに対して軸受部28が回転する際の摩擦抵抗を更に軽減させることができる。
また、この鍵盤装置では、軸受部28の内周面に突起部34によってグリースなどの潤滑材を溜める潤滑溜め部35が設けられていることにより、ハンマー支持軸8aに対して軸受部28が回転する際に、ハンマー支持軸8aの外周面にグリースなどの潤滑材を確実にかつ良好に塗布することができ、これによりハンマー支持軸8aに対して軸受部28を円滑にかつ良好に回転させることができる。
すなわち、潤滑溜め部35は、嵌合孔32の内周面にハンマー支持軸8aの外周面が複数の突起部34によって4点で接触するため、上部側の突起部34と凹部32aの上部側の縁との間、および下部側の突起部34と凹部32aの下部側の縁との間にそれぞれ設けられているので、ハンマー支持軸8aに対して軸受部28が回転する際に、ハンマー支持軸8aの外周面にグリースなどの潤滑材を確実にかつ良好に塗布することができる。
この場合、ハンマー部材3の軸受部28は、ハンマー支持部8のハンマー支持軸8aが鍵盤シャーシ1のハンマー載置部7の下面に設けられた一対の支持片8b間に設けられていることにより、軸受部28の中心軸の軸方向の両側面を一対の支持片8bの各対向面に接触させることができる。
このため、このハンマー部材3の軸受部28では、複数の潤滑溜め部35の軸方向の両側部を一対の支持片8bの各対向面によって塞ぐことができるので、複数の潤滑溜め部35の内部に充填されたグリースなどの潤滑材が軸受部28の軸方向から漏れないように封入することができる。
なお、上述した実施形態では、複数の突起部34を軸受部28の嵌合孔32の内周面に設けた場合について述べたが、この発明は、これに限らず、例えば複数の突起部34をハンマー支持軸8aの外周面に設けても良い。
また、上述した実施形態では、軸受部28の嵌合孔32の内周面に設けられた潤滑溜め部35にグリースなどの潤滑材を充填させた場合について述べたが、この発明は、これに限らず、シリコーンオイルを含浸させた合成樹脂でハンマー部材3の軸受部28を形成し、ハンマー支持軸8aに対して軸受部28が回転する際に、シリコーンオイルが浸み出すようにしても良い。
また、上述した実施形態では、電子鍵盤楽器の鍵盤装置において、鍵盤シャーシ1のハンマー支持軸8aにハンマー部材3の軸受部28を回転可能に取り付けた場合について述べたが、この発明は、これに限らず、例えば鍵2の後端部に軸受部28を設け、この鍵2の軸受部28を鍵盤シャーシ1の鍵支持軸13aに回転可能に取り付けるようにしても良い。
さらに、上述した実施形態では、電子鍵盤楽器の鍵盤装置に適用した場合について述べたが、この発明は、これに限らず、軸と軸受部とを備え、これらが相対的に回転する軸受構造を備えた機器にも適用することができる。
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明は、これに限られるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。
以下に、本願の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
(付記)
請求項1に記載の発明は、軸と、挿入孔が設けられ、前記軸が前記挿入孔から挿入されることにより弾性変形される軸受部と、前記軸の外周面および前記軸受部の内周面のいずれか一方に設けられ、前記軸の外周面と前記軸受部の内周面とのいずれか他方に、前記軸受部に挿入された前記軸の回転方向に沿って摺動可能に接触する突起部と、を備えていることを特徴とする軸受構造である。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の軸受構造において、前記軸受部は、前記軸が嵌合する嵌合孔を備えていることを特徴とする軸受構造である。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の軸受構造において、前記突起部は、前記嵌合孔と前記挿入孔との境界部に設けられていることを特徴とする軸受構造である。
請求項4に記載の発明は、請求項1~請求項3のいずれかに記載の軸受構造において、前記突起部は、前記軸の外周面に対して点接触と線接触とのいずれか一方で接触することを特徴とする軸受構造である。
請求項5に記載の発明は、請求項1~請求項4のいずれかに記載の軸受構造において、前記嵌合孔の内周面には、前記突起部によって潤滑材を溜める潤滑溜め部が設けられていることを特徴とする軸受構造である。
請求項6に記載の発明は、請求項1~請求項5のいずれかに記載の軸受構造を備えた鍵盤装置と、前記鍵盤装置の操作に応じて楽音を発生する発音部と、を備えていることを特徴とする電子鍵盤楽器である。
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の電子鍵盤楽器において、前記鍵盤装置は、鍵盤シャーシに回転可能に設けられた複数の鍵それぞれの押鍵操作に応じて回転して、前記複数の鍵それぞれにアクション荷重を付与する複数のハンマー部材の各回転部が前記軸受構造になっていることを特徴とする電子鍵盤楽器である。
請求項8に記載の発明は、請求項1~請求項5のいずれかに記載の軸受構造を備えていることを特徴とする機器である。