JP6997669B2 - 複層ペレット、及び容器の製造方法 - Google Patents
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Description
しかし、フッ化処理技術では未処理部分が発生してしまい、容器の最内層に均一に燃料バリア性を付与することが難しいという技術面の問題の他に、安全面及びコスト面での問題もあった。
また、特許文献2には、(A)ポリオレフィン50~97重量%と、(B)メタキシリレンジアミン構成単位を70モル%以上含むジアミン成分と、炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸とイソフタル酸のモル比率が3:7~10:0である構成単位を70モル%以上含むジカルボン酸成分とを含むポリアミド樹脂2~45重量%、及び、(C)変性ポリオレフィンおよび/またはスチレン系共重合体1~45重量%からなる燃料バリア性に優れた熱可塑性樹脂組成物が開示されている。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[2]前記ポリアミド系樹脂(A)が、前記ポリアミド(A1)及び前記脂肪族ポリアミド(A2)からなり、前記ポリアミド(A1)が、アジピン酸に由来するジカルボン酸構成単位とメタキシリレンジアミンに由来するジアミン構成単位とからなるポリアミドであり、記脂肪族ポリアミド(A2)が、ポリ(カプロラクタム)である、前記[1]に記載の複層ペレット。
[3]熱流束示差走査熱量測定して得られるDSC曲線における、前記ポリアミド系樹脂(A)由来の2つの融解ピークのうち高温側の融解ピークの融解ピーク温度(TH)と低温側の融解ピークの融解ピーク温度(TL)との差(ΔT1=TH-TL)、及び前記ポリアミド(A1)の融解ピーク温度(TA1)と前記脂肪族ポリアミド(A2)の融解ピーク温度(TA2)との差の絶対値(ΔT2=|TA1-TA2|)が、下記式1の関係を満たす、前記[1]又は[2]に記載の複層ペレット。
(式1) |ΔT1-ΔT2|≦3℃
[4]前記ポリアミド系樹脂(A)由来の2つの融解ピークのうち高温側の融解ピークの融解ピーク温度(TH)と低温側の融解ピークの融解ピーク温度(TL)との差(ΔT1=TH-TL)が、10℃以上18℃以下である、前記[3]に記載の複層ペレット。
[5]前記被覆層中の酸変性ポリオレフィン系樹脂(B)に由来する酸成分の含有量が0.05~5重量%である、前記[1]~[4]のいずれか1つに記載の複層ペレット。
[6]前記脂肪族ポリアミド(A2)に対する前記ポリアミド(A1)の重量比(A1/A2)が、30/70~70/30である、前記[1]~[5]のいずれか1つに記載の複層ペレット。
[7]前記[1]~[6]のいずれか1つに記載の複層ペレット(X)、及び高密度ポリエチレン樹脂(Y)を押出機に供給し、これらを溶融混練してなる溶融混練物を押出して形成された軟化状態のパリソンを金型で挟み込みブロー成形する容器の製造方法であって、前記容器中の複層ペレット(X)に由来するポリアミド系樹脂(A)の含有割合が、1~10重量%となるように複層ペレット(X)を押出機に供給する、容器の製造方法。
本発明の複層ペレットは、ポリアミド系樹脂(A)を含む芯層と、該芯層を被覆する酸変性ポリオレフィン系樹脂(B)を含む被覆層とを有する複層ペレットであって、被覆層に対する芯層の重量比(芯層/被覆層)が20/80~80/20であり、ポリアミド系樹脂(A)が、炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するジカルボン酸構成単位とメタキシリレンジアミンに由来するジアミン構成単位とを含むポリアミド(A1)、及び脂肪族ポリアミド(A2)を含有し、脂肪族ポリアミド(A2)に対するポリアミド(A1)の重量比(A1/A2)が、30/70~80/20である。
これにより、燃料バリア性に優れ燃料透過量が少なく、且つ耐圧強度に優れた容器を製造することができる複層ペレットが得られる。
ペレットの構造を複層構造とせずに芯層に含まれるポリアミド系樹脂(A)と、被覆層に含まれる酸変性ポリオレフィン系樹脂(B)とをそれぞれ単層構造のペレットとし、本発明で規定する成分を規定の重量比で用いて容器を製造したとしても、所望の燃料バリア性は得られるものの、耐圧強度に劣る容器となるおそれがあり、燃料バリア性及び耐圧強度を高いレベルで両立できず、本発明の格別な効果は得られない。
この理由については定かではないが、以下のように考えられる。
芯層と、芯層を被覆する被覆層とを有する複層構造とした複層ペレットと、高密度ポリエチレン樹脂との混合樹脂を基材樹脂として容器を製造する際、容器を構成する基材樹脂中においてポリアミド系樹脂(A)が層状に配向し易くなると考えられる。更に、容器を製造する際、被覆層に含まれる酸変性ポリオレフィン系樹脂(B)により、容器を構成する基材樹脂中においてポリアミド系樹脂(A)と高密度ポリエチレン樹脂(Y)等の樹脂との界面の接着性が良好なものとなると考えられる。その結果、高い水準で燃料バリア性及び耐圧強度を両立できる優れた効果を有するものと考えられる。
芯層の重量比が低すぎる場合、燃料バリア性に劣るおそれがある。
一方、芯層の重量比が高すぎる場合、容器を製造する際、芯層に含まれるポリアミド系樹脂(A)と、高密度ポリエチレン樹脂(Y)等の樹脂との界面の接着性に劣るおそれがある。
本発明において芯層を構成するポリアミド系樹脂(A)は、炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するジカルボン酸構成単位とメタキシリレンジアミンに由来するジアミン構成単位とを含むポリアミド(A1)、及び脂肪族ポリアミド(A2)を、重量比(A1/A2)30/70~80/20の割合で含有する。
これにより、燃料バリア性に優れ燃料透過量が少なく、且つ耐圧強度に優れた容器を製造することができる複層ペレットが得られる。
ポリアミド系樹脂(A)が、ポリアミド(A1)を含有しない場合には、所望の耐圧強度は得られるものの、燃料バリア性に劣る容器となるおそれがある。
また、ポリアミド系樹脂(A)が、脂肪族ポリアミド(A2)を含有しない場合には、所望の燃料バリア性は得られるものの、耐圧強度にさらなる改善の余地を有する容器となるおそれがある。
脂肪族ポリアミド(A2)比率が高すぎる場合、所望の耐圧強度は得られるものの、燃料バリア性に劣る容器となるおそれがある。
一方、脂肪族ポリアミド(A2)比率が低すぎる場合、所望の燃料バリア性は得られるものの、耐圧強度さらなる改善の余地を有する容器となるおそれがある。
ポリアミド(A1)及び脂肪族ポリアミド(A2)を溶融混練する程度は、特に限定されるものではないが、ポリアミド(A1)と脂肪族ポリアミド(A2)とを適度に溶融混練し、適度に相溶化して得られたポリアミド系樹脂(A)を芯層として複層ペレットを製造することが好ましい。
これにより、燃料バリア性及び耐圧強度の効果を共に発現させ易くし、燃料バリア性に優れ燃料透過量が少なく、且つ耐圧強度に優れた容器を製造することができる複層ペレットが得られるという、格別な効果がより発揮され易くなる。
本明細書における「適度に相溶化」とは、ポリアミド(A1)及び脂肪族ポリアミド(A2)を溶融混練することによって、ポリアミド(A1)と脂肪族ポリアミド(A2)とが完全に相溶化した状態を指すものではなく、以下に示す指標により、適度に相溶化した状態を判断することができる。
(式1) |ΔT1-ΔT2|≦3℃
すなわち、上記|ΔT1-ΔT2|が、上記範囲にある場合、本発明の効果が得られ易い適度に相溶化した状態と判断することができる。
本明細書における融解ピーク温度、すなわち融点は、JIS K7121(1987)に記載の方法に準拠し、熱流束示差走査熱量測定法により、熱流束示差走査熱量測定して得られるDSC曲線における融解ピークから求められる。
具体的には、ポリアミド系樹脂(A)由来の2つの融解ピークの温度差(ΔT1)は、芯層のみを測定対象サンプルとし、すなわち芯層を構成するポリアミド系樹脂(A)を測定対象サンプルとし、測定対象サンプルをDSC装置の容器に入れ、熱処理を行わず、10℃/minの加熱速度にて常温から300℃まで昇温する際のDSC曲線を得る。そして、得られたDSC曲線から高温側の融解ピークの融解ピーク温度(TH)及び低温側の融解ピークの融解ピーク温度(TL)をそれぞれ読み取り、融解ピークの融解ピーク温度(TH)と融解ピークの融解ピーク温度(TL)との温度差(ΔT1=TH-TL)が求められる。
一方、ポリアミド(A1)の融解ピーク温度(TA1)と脂肪族ポリアミド(A2)の融解ピーク温度(TA2)との差の絶対値(ΔT2=|TA1-TA2|)は、溶融混練前のポリアミド(A1)、及び溶融混練前の脂肪族ポリアミド(A2)を測定対象サンプルとし、前記と同様の測定方法により、DSC曲線をそれぞれ得る。ここで、溶融混練前のポリアミド(A1)単独での融解ピークの融解ピーク温度を「ポリアミド(A1)の融点(TA1)」とし、溶融混練前の脂肪族ポリアミド(A2)単独での融解ピークの融解ピーク温度を「脂肪族ポリアミド(A2)の融点(TA2)」とする。
そして、それぞれ得られたDSC曲線から融点(TA1)及び融点(TA2)をそれぞれ読み取り、ポリアミド(A1)の融解ピーク温度(TA1)と脂肪族ポリアミド(A2)の融解ピーク温度(TA2)との差の絶対値(ΔT2)が求められる。
更に、温度差(ΔT1=TH-TL)と差の絶対値(ΔT2=|TA1-TA2|)とから差の絶対値(|ΔT1-ΔT2|)が求められる。
ここで、ポリアミド(A1)と脂肪族ポリアミド(A2)との相溶化は、その程度が進むに応じて、熱流束示差走査熱量測定して得られるDSC曲線における、前記ポリアミド系樹脂(A)由来の2つの融解ピークのうち高温側の融解ピークの融解ピーク温度(TH)と低温側の融解ピークの融解ピーク温度(TL)との差(ΔT1=TH-TL)が変化する(以下、前記差(ΔT1=TH-TL)を、ポリアミド系樹脂(A)由来の2つの融解ピークの温度差(ΔT1)ともいう)。
ポリアミド(A1)と脂肪族ポリアミド(A2)とを溶融混練し、相溶化が進むと、熱流束示差走査熱量測定して得られるDSC曲線におけるポリアミド系樹脂(A)由来の2つの融解ピークの温度差(ΔT1)と、ポリアミド(A1)及び脂肪族ポリアミド(A2)をそれぞれ単独で熱流束示差走査熱量測定して得られる、ポリアミド(A1)の融解ピーク温度(TA1)と脂肪族ポリアミド(A2)の融解ピーク温度(TA2)の差の絶対値(ΔT2=|TA1-TA2|)とを比べると、その変化は比較的大きくなる傾向、すなわち|ΔT1-ΔT2|は比較的大きくなる傾向にある。
これに対して、ポリアミド(A1)と脂肪族ポリアミド(A2)とを過度に相溶化しないように溶融混練すれば、熱流束示差走査熱量測定して得られるDSC曲線におけるポリアミド系樹脂(A)由来の2つの融解ピークの温度差(ΔT1)と、ポリアミド(A1)及び脂肪族ポリアミド(A2)をそれぞれ単独で熱流束示差走査熱量測定して得られる、ポリアミド(A1)の融解ピーク温度(TA1)と脂肪族ポリアミド(A2)の融解ピーク温度(TA2)の差の絶対値(ΔT2=|TA1-TA2|)とを比べると、その変化は比較的小さくなる傾向、すなわち|ΔT1-ΔT2|は比較的小さくなる傾向にある。
上記融解ピークの温度差(ΔT1)が、上記範囲にあることで、燃料バリア性及び耐圧強度の両立を容易化し、本発明の格別な効果を得られ易くする。
ポリアミド(A1)は、炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するジカルボン酸構成単位とメタキシリレンジアミンに由来するジアミン構成単位とを含み、炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するジカルボン酸構成単位とメタキシリレンジアミンに由来するジアミン構成単位とからなることが好ましい。
ポリアミド(A1)を構成するジカルボン酸構成単位は、炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する。
炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するジカルボン酸構成単位の炭素数は、4~20であり、好ましくは5~16、より好ましくは5~12、更に好ましくは6~10である。
これらの中でも、所望の燃料バリア性が得られ易い観点から、アジピン酸単位を90モル%以上含むことが好ましく、アジピン酸単位を95モル%以上含むことがより好ましく、アジピン酸単位のみからなることがさらに好ましい。
ポリアミド(A1)を構成するジアミン構成単位は、メタキシリレンジアミンに由来する。
ポリアミド(A1)を構成するジアミン構成単位には、本発明の目的効果を阻害しない範囲においてメタキシリレンジアミン以外の他のジアミン成分を含有してもよい。他のジアミン成分としては、例えば、パラキシリレンジアミン、オルトキシリレンジアミン、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン等がある。ポリアミド(A1)を構成するジアミン構成単位としては、メタキシリレンジアミン単位を90モル%以上含むことが好ましく、メタキシリレンジアミン単位を95モル%以上含むことがより好ましく、メタキシリレンジアミン単位のみからなることがさらに好ましい。
前記したジカルボン酸構成単位及びジアミン構成単位を含むポリアミド(A1)としては、具体的に、炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸とメタキシリレンジアミンの重縮合などによって得ることができる。
ポリアミド(A1)の具体例としては、ポリメタキシリレンアジパミドが挙げられる。
本明細書における相対粘度は、JIS K6920-2:2009の付属書JAに記載の方法に基づき、試薬として硫酸を用いて測定される値である。
脂肪族ポリアミド(A2)は、アミド結合を含み、分子骨格中に芳香環を含まない構成単位を主成分とするポリアミドである。
ここで「主成分とする」とは、脂肪族ポリアミドの構成単位のうち、芳香環を含まない構成単位が50モル%超、好ましくは80~100モル%、より好ましくは90~100モル%、更に好ましくは脂肪族ポリアミドの構成単位のみからなることを指していう。
脂肪族ポリアミド(A2)の具体例としては、ポリ(カプロラクタム)としても知られるポリ(6-アミノヘキサン酸)(ナイロン6)、ポリ(ラウロラクタム)(ナイロン12)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)(ナイロン6,6)、ポリ(7-アミノヘプタン酸)(ナイロン7)、ポリ(8-アミノオクタン酸)(ナイロン8)、ポリ(9-アミノノナン酸)(ナイロン9)、ポリ(10-アミノデカン酸)(ナイロン10)、ポリ(11-アミノウンデカン酸)(ナイロン11)、ポリ(ヘキサメチレンセバカミド)(ナイロン6,10)、ポリ(デカメチレンセバカミド)(ナイロン10,10)、ポリ(ヘキサメチレンアゼラミド)(ナイロン6,9)、ポリ(テトラメチレンアジパミド)(ナイロン4,6)、ポリ(テトラメチレンセバカミド)(ナイロン4,10)、ポリ(ペンタメチレンアジパミド)(ナイロン5,6)、及びポリ(ペンタメチレンセバカミド)(ナイロン5,10)などのホモポリマー;ヘキサメチレンアジパミド-カプロラクタム共重合体(ナイロン6,6/6)などのコポリマー;などが挙げられる。
これらの中でも、所望の耐圧強度が得られ易い観点から、ポリ(カプロラクタム)(ナイロン6)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)(ナイロン6,6)、ヘキサメチレンアジパミド-カプロラクタム共重合体(ナイロン6,6/6)が好ましく、中でも、ポリ(カプロラクタム)(ナイロン6)が好ましい。
本発明において芯層は、ポリアミド系樹脂(A)を必須成分として含有するが、本発明の目的効果を損なわず、上記ポリアミド系樹脂(A)由来の2つの融解ピークの温度差(ΔT1)を求め難くさせるような融解ピークが測定されない程度であれば、更にその他の成分を含有してもよい。
その他の成分としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロプレン、ポリスチレン等が挙げられる。その他の成分の含有量は、芯層を構成する全樹脂(その他の成分を含む)100重量部に対して3重量部以下であること好ましく、1重量部以下であることがより好ましく、芯層にその他の成分を含まないことがさらに好ましい。
本発明において被覆層は、酸変性ポリオレフィン系樹脂(B)を必須成分として含有する。
酸変性ポリオレフィン系樹脂(B)は、ポリオレフィンを不飽和カルボン酸又はその無水物でグラフト変性したもので、一般に接着性樹脂として用いられているものである。
酸変性ポリオレフィン系樹脂(B)の前駆体となるポリオレフィンとしては、後述するポリオレフィン系樹脂(C)で列挙したポリオレフィンと同様のものを用いることができ、それらの中でも、機械的強度、成形加工性、経済性に優れるという観点から、ポリエチレンが好ましく、中でも、密度が940~960kg/m3の高密度ポリエチレンがより好ましく用いられる。
例えば、ポリオレフィンを押出機等で溶融させ、グラフトモノマーを添加して共重合させる方法;ポリオレフィンを溶媒に溶解させ、グラフトモノマーを添加して共重合させる方法;ポリオレフィンを水懸濁液として、グラフトモノマーを添加して共重合させる方法;等が挙げられる。
酸成分の含有量が上記範囲にあることで、複層ペレットと、高密度ポリエチレン樹脂等の樹脂との混合樹脂を基材樹脂とする容器を製造する際、酸変性ポリオレフィン系樹脂(B)により、ポリアミド系樹脂(A)と高密度ポリエチレン樹脂(Y)等の樹脂との界面の接着性が良好なものとなり、燃料バリア性に優れ燃料透過量が少なく、且つ耐圧強度に優れた容器が得られ易くなる。
酸変性ポリオレフィン系樹脂の変性率は、好ましくは0.1~8重量%、より好ましくは0.2~5重量%、更に好ましくは0.3~3重量%である。
上記変性率が、上記範囲にあることで、燃料バリア性に優れ燃料透過量が少なく、且つ耐圧強度に優れた容器を製造することができる複層ペレットが得られ易くなる。
本明細書における変性率は、JIS K0070(1992)に記載の方法に基づき、中和滴定法により酸価を求め、酸価の値から算出されるものである。なお、被覆層中の酸変性ポリオレフィン系樹脂(B)に由来する酸成分の含有量は、酸変性ポリオレフィン系樹脂の酸変性率に、被覆層中の酸変性ポリオレフィン系樹脂(B)の含有割合をかけることにより算出することもできる。
ポリオレフィン系樹脂(C)は、酸などにより変性されていない未変性のポリオレフィン樹脂を指していう。
ポリオレフィン樹脂としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等に代表されるポリエチレン;プロピレンホモポリマー、エチレン-プロピレンブロックコポリマー、エチレン-プロピレンランダムコポリマー等に代表されるポリプロピレン;1-ポリブテン、1-ポリメチルペンテン等の炭素数2以上のエチレン系炭化水素の単独重合体;炭素数3~20のα-オレフィンの単独重合体;炭素数3~20のα-オレフィンの共重合体;炭素数3~20のα-オレフィンと環状オレフィンの共重合体;などが挙げられる。
これらの中でも、ポリエチレンが好ましく、中でも、密度が940~960kg/m3の高密度ポリエチレンがより好ましく用いられる。
本発明において被覆層は、酸変性ポリオレフィン系樹脂(B)を必須成分として含有し、好ましくはポリオレフィン系樹脂(C)を更に含有するが、本発明の目的効果を損なわない範囲で、更にその他の成分を含有してもよい。
その他の成分としては、例えば、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリスチレン等が挙げられる。その他の成分の含有量は、被覆層を構成する全樹脂(その他の成分を含む)100重量部に対して、10重量部以下であることが好ましく、5重量部以下であることがより好ましく、3重量部以下であることがさらに好ましい。
本発明の容器は、前述した複層ペレット(X)、及びポリオレフィン系樹脂(Y)の混合樹脂を基材樹脂とする容器である。
ポリオレフィン系樹脂(Y)は、前述したポリオレフィン系樹脂(C)で列挙したポリオレフィン樹脂と同様のものを用いることができ、それらの中でも、ポリエチレンが好ましく、中でも、密度が940~960kg/m3の高密度ポリエチレンがより好ましく用いられる。
その他の成分としては、例えば、容器の燃料バリア性を向上させて燃料透過量を少なくするためにスメクタイト系クレー、バーミキュライト、ハロイサイト、及びマイカ等の鱗片状または層状構造を有する無機物質等を添加してもよい。また、その他の添加剤として、帯電防止剤、導電性付与剤、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、金属不活性剤、顔料、染料、結晶核剤、充填材等の各種の添加剤を必要に応じて適宜配合することができる。
本明細書における「層状」とは、樹脂層断面において、高密度ポリエチレン樹脂(Y)中に分散しているポリアミド系樹脂(A)の大部分が、微細に、かつ樹脂層の厚み方向に対し直交する方向に延伸された状態で重なり合うように存在している状態のことをいう。
これにより、燃料バリア性に優れ燃料透過量が少なく、且つ耐圧強度に優れた容器が得られ易くなる。ポリアミド系樹脂(A)が、高密度ポリエチレン樹脂(Y)中で層状に分散していることを確認する方法としては、例えば、容器を切断し、切断面にヨードチンキを塗ってポリアミド系樹脂(A)を染色することで確認することができる。
上記重量比(X/Y)が、上記範囲にあることで、燃料バリア性に優れ燃料透過量が少なく、且つ耐圧強度に優れた容器が得られ易くなる。
また、複層ペレット(X)の含有量は、基材樹脂の全量(100重量%)に対して、好ましくは5~30重量%、より好ましくは7~20重量%、更に好ましくは8~15重量%である。
上記複層ペレット(X)の含有量が、上記範囲にあることで、燃料バリア性に優れ燃料透過量が少なく、且つ耐圧強度に優れた容器が得られ易くなる。
再生樹脂(Z)は、容器の製造過程で形成されてしまうバリや不良品等を回収し、粉砕されたものであってもよいし、あるいは単軸や二軸押出機等でペレット状に再加工されたものであってもよい。特に、再生樹脂(Z)の構成成分となるポリアミド系樹脂は吸湿性を有する。このため、吸湿による発泡が生じるおそれや、燃料バリア性や耐圧強度を低下させるおそれを抑制する観点から、成形直後のものや除湿乾燥等を行って水分量を1000ppm以下にしたものが好ましく用いられる。
再生樹脂(Z)の含有量は、基材樹脂の全量(100重量%)に対して、好ましくは80重量%以下であり、より好ましくは60重量%以下である。一方、再生樹脂を利用する観点から、再生樹脂(Z)の含有量は、概ね20重量%以上が好ましい。
本発明の容器の形状は特に限定されないが、中空成形体、例えばボトル状、タンク状等とすることができる。本発明の容器は、燃料バリア性に優れ燃料透過量が少なく、耐圧強度に優れることから、ガソリンタンク等の燃料保存用容器として特に好ましく用いることができる。
本発明の容器は、ブロー成形により製造されることが好ましい。
具体的には、前述した複層ペレット(X)、及び高密度ポリエチレン樹脂(Y)の混合樹脂を溶融混練してなる溶融混練物を押出して形成された軟化状態のパリソンを金型で挟み込みブロー成形することにより製造する方法が好ましい。
パリソンを金型で挟み込む方法は、特に限定されないが、例えば、パリソンを分割金型間に配置し、分割金型を型締めしてパリソンを挟み込む方法が挙げられる。また、パリソンをブロー成形する方法も、特に限定されないが、例えば、パリソン内に加圧気体を吹き込むことで金型形状に対応した形状の成形体、すなわち容器を製造することができる。
通常、分割金型を用いて軟化状態のパリソンを挟み込む際に、パリソンが金型キャビティの周縁部により挟み込まれた位置には、パリソンの対向する内面同士が融着してピンチオフ部が生じる。このピンチオフ部から外側がバリと呼ばれる余剰部分となる。最終的にこのバリが取り除かれることにより容器が得られる。その結果、該方法により得られた容器は、その周縁の全体又は一部にピンチオフ部を有することとなる。
容器内の圧力が上昇した際や容器を落下させた際に、容器の基材樹脂がポリエチレン系樹脂単独の場合と比べて、容器の基材樹脂がポリエチレン系樹脂とポリアミド系樹脂(A1)との混合樹脂であり、かつポリアミド系樹脂(A1)がポリエチレン系樹脂中で容器壁部の周方向に沿って引き伸ばされて分散している場合には、容器のピンチオフ部付近が割れやすくなる。これは、内圧上昇や落下等によりピンチオフ部に生じたわずかな亀裂が、ポリエチレン系樹脂とポリアミド系樹脂(A1)との界面に達し、両者が界面剥離することによるものと考えられる。
本発明の方法により製造される容器においては、ポリアミド系樹脂(A)が、高密度ポリエチレン樹脂(Y)の連続相中で層状に分散した分散層が形成される。本発明の方法により製造される容器は、ポリアミド系樹脂(A)の層状の分散層が形成されていても、ポリアミド系樹脂(A)がポリアミド(A1)と脂肪族ポリアミド(A2)とを特定比率含み、かつ酸変性ポリオレフィン系樹脂(B)がポリアミド系樹脂(A)と接して存在していることにより、ポリアミド系樹脂(A)と高密度ポリエチレン樹脂(Y)等の樹脂との界面の接着性が良好であると考えられる。このことから、本発明の容器の製造方法によれば、前述したピンチオフ部の強度を低下させることなく、耐圧強度に優れる容器が得られる。
実施例で使用した複層ペレットの製造例、並びに、比較例で使用した複層ペレット及び単層ペレットの製造例を以下に示した。
(製造例1)
複層ペレットの製造には、芯層用樹脂組成物の予備混練を行った後、芯層形成用単軸押出機及び被覆層(外層)形成用単軸押出機を併設し、出口側で多数本の複層ストランド状の共押出が可能なダイを付設した複層ペレット製造用単軸混練押出機を用いた。
(芯層用樹脂組成物の予備混練)
ポリアミド(A1)としてポリメタキシリレンアジパミド(三菱ガス化学(株)製「MXナイロン 6121」、相対粘度=3.6、融点=237.9℃)、及び脂肪族ポリアミド(A2)としてナイロン6(宇部興産(株)製「UBEナイロン 1030B」、相対粘度=4.4、融点=221.0℃)を、重量比60/40(A1/A2)の割合で芯層用樹脂組成物を二軸押出機(スクリュー径:26mm、L/D:65)を用いて下記に示す条件にて予備混練し、芯層用樹脂組成物の混練物を得た。
<芯層用樹脂組成物の予備混練条件(二軸押出機)>
・設定温度:260℃(樹脂温度は275℃)
・スクリュー回転数:200rpm
・混練時間:5分間
一方、被覆層用樹脂組成物としては、酸変性ポリオレフィン系樹脂(B)として無水マレイン酸変性ポリエチレン(ダウ・ケミカル製「AMPLIFY TY1053H」、変性率:1.4重量%)、及びポリオレフィン系樹脂(C)として高密度ポリエチレン((株)プライムポリマー製「ハイゼックス6008B」)を、重量比1/2(B/C)の割合で準備した。
次いで、前記した被覆層用樹脂組成物、及び前記で得られた芯層用樹脂組成物の混練物を、重量比40/60(芯層/被覆層)の割合で準備した。
前記した芯層用樹脂組成物の混練物を芯層形成用単軸押出機(スクリュー径:65mm、L/D:28)を用いて下記に示す条件にて溶融混練した。
<芯層樹脂組成物の混練物の溶融混練条件(単軸押出機)>
・設定温度:250℃(樹脂温度は265℃)
・スクリュー回転数:30rpm
・混練時間:5分間
一方、前記した被覆層用樹脂組成物を被覆層形成用単軸押出機(スクリュー径:55mm、L/D:36)を用いて下記に示す条件にて溶融混練した。
<被覆層樹脂組成物の溶融混練条件(単軸押出機)>
・設定温度:200℃(樹脂温度は225℃)
・スクリュー回転数:50rpm
・混練時間:5分間
前記したように、芯層用樹脂組成物の混練物、及び被覆層樹脂組成物をそれぞれ溶融混練しながら、ダイ内において合流し、前記した複層ペレット製造用単軸混練押出機の先端に取り付けた口金の細孔から、芯層の外周を円環状に被覆する被覆層が形成された複層ストランドとして共押出し、共押出されたストランドを水冷し、ペレタイザーで重量が1個当たり略20mgとなるように切断し、乾燥して、製造例1の複層ペレット1を得た。
製造例1の芯層用樹脂組成物の予備混練において、ポリアミド(A1)及び脂肪族ポリアミド(A2)の重量比(A1/A2)を40/60に変更したこと以外は、製造例1と同様にして製造例2の複層ペレット2を得た。
製造例1の芯層用樹脂組成物の予備混練において、ポリアミド(A1)及び脂肪族ポリアミド(A2)の重量比(A1/A2)を80/20に変更したこと以外は、製造例1と同様にして製造例3の複層ペレット3を得た。
製造例1の芯層用樹脂組成物の予備混練において、製造例1の芯層用樹脂組成物の予備混練条件のうち、設定温度を320℃(樹脂温度は330℃)に変更したこと以外は、製造例1と同様にして製造例4の複層ペレット4を得た。
製造例1の芯層用樹脂組成物の予備混練において、ポリアミド(A1)及び脂肪族ポリアミド(A2)の重量比(A1/A2)を20/80に変更したこと以外は、製造例1と同様にして製造例5の複層ペレット5を得た。
製造例1の芯層用樹脂組成物の予備混練において、脂肪族ポリアミド(A2)を用いなかったこと以外は、製造例1と同様にして製造例6の複層ペレット6を得た。
製造例1の芯層用樹脂組成物の予備混練において、ポリアミド(A1)を用いなかったこと以外は、製造例1と同様にして製造例7の複層ペレット7を得た。
単層ペレットの製造には、二軸押出機を用いた。
製造例1で芯層用樹脂組成物として用いた、ポリアミド(A1)及び脂肪族ポリアミド(A2)の重量比(A1/A2)を60/40の割合とし、単層ペレット用樹脂組成物を二軸押出機(スクリュー径:26mm、L/D:65)を用いて下記に示す条件にて予備混練し、単層ペレット用樹脂組成物の混練物を得た。
なお、ポリアミド系樹脂(A)及びオレフィン系樹脂の重量比は40/60(ポリアミド系樹脂(A)/オレフィン系樹脂)の割合とした。
<単層ペレット用樹脂組成物の予備混練条件(二軸押出機)>
・設定温度:260℃(樹脂温度は275℃)
・スクリュー回転数:200rpm
・混練時間:5分間
次いで、前記した単層ペレット用樹脂組成物の溶融混練物を単層ストランドとして押出し、押出されたストランドを水冷し、ペレタイザーで重量が1個当たり略20mgとなるように切断し、乾燥して、製造例8の単層ペレット1を得た。
製造例1で芯層樹脂組成物として用いたポリアミド(A1)であるポリメタキシリレンアジパミド(三菱ガス化学(株)製「MXナイロン 6121」、相対粘度=3.6、融点=237.9℃)そのものを単層ペレット2とした。
製造例1で芯層樹脂組成物として用いた脂肪族ポリアミド(A2)であるナイロン6(宇部興産(株)製「UBEナイロン 1030B」、相対粘度=4.4、融点=221.0℃)そのものを単層ペレット3とした。
製造例8の単層ペレット用樹脂組成物の予備混練において、製造例1で芯層用樹脂組成物として用いた、ポリアミド(A1)及び脂肪族ポリアミド(A2)を用いず、製造例1で被覆層用樹脂組成物として用いた、酸変性ポリオレフィン系樹脂(B)及びポリオレフィン系樹脂(C)のみ用い、単層ペレット用樹脂組成物の予備混練条件を下記に示す条件に変更したこと以外は、製造例8と同様にして製造例11の単層ペレット4を得た。
<単層ペレット用樹脂組成物の予備混練条件(被覆層形成用単軸押出機)>
・設定温度:200℃(樹脂温度は225℃)
・スクリュー回転数:200rpm
・混練時間:5分間
更に、前記の製造例1~7で得られた複層ペレット1~7については、以下に示す方法で、(1)熱流束示差走査熱量測定試験を行い、その測定結果を表1に示した。
(1)熱流束示差走査熱量測定試験
製造例1~7で得られた複層ペレット1~7において、芯層のみをサンプルとしてそれぞれ採取した。
ポリアミド系樹脂(A)由来の2つの融解ピークの温度差(ΔT1)は、芯層のみを測定対象サンプルとし、すなわち芯層を構成するポリアミド系樹脂(A)を測定対象サンプルとし、JIS K7121(1987)に記載の方法に準拠し、熱流束示差走査熱量測定法により、DSC曲線を得た。具体的には、測定対象サンプルをDSC装置の容器に入れ、熱処理を行わず、10℃/minの加熱速度にて常温から300℃まで昇温する際のDSC曲線を得た。なお、複層ペレット及び測定対象サンプルは、高温、多湿条件下を避けて加水分解しないようデシケーター内で窒素雰囲気下とした後、真空吸引して水分量を1000ppm以下で保存した。
そして、得られたDSC曲線から高温側の融解ピークの融解ピーク温度(TH)及び低温側の融解ピークの融解ピーク温度(TL)をそれぞれ読み取り、融解ピークの融解ピーク温度(TH)と融解ピークの融解ピーク温度(TL)との温度差(ΔT1)を求めた。
一方、ポリアミド(A1)の融解ピーク温度(TA1)と脂肪族ポリアミド(A2)の融解ピーク温度(TA2)との差の絶対値(ΔT2=|TA1-TA2|)は、溶融混練前のポリアミド(A1)、及び溶融混練前の脂肪族ポリアミド(A2)を測定対象サンプルとし、前記と同様の測定方法により、DSC曲線をそれぞれ得た。
ここで、溶融混練前のポリアミド(A1)単独での融解ピークの融解ピーク温度を「ポリアミド(A1)の融点(TA1)」とし、溶融混練前の脂肪族ポリアミド(A2)単独での融解ピークの融解ピーク温度を「脂肪族ポリアミド(A2)の融点(TA2)」とした。
そして、それぞれ得られたDSC曲線から融点(TA1)及び融点(TA2)をそれぞれ読み取り、ポリアミド(A1)の融解ピーク温度(TA1)と脂肪族ポリアミド(A2)の融解ピーク温度(TA2)との温度差(ΔT2=|TA1-TA2|)を求めた。
更に、温度差(ΔT1)と差の絶対値(ΔT2)とから差の絶対値(|ΔT1-ΔT2|)を求めた。
複層ペレットの製造例1~7において、芯層用樹脂組成物として用いたポリアミド(A1)、及び脂肪族ポリアミド(A2)を測定対象サンプルとし、JIS K6920-2:2009の付属書JAに記載の方法に基づき、それぞれ1gを精秤し、96質量%硫酸100mlに20~30℃でそれぞれ撹拌溶解した。
測定対象サンプルが完全に溶解した後、速やかにキャノンフェンスケ型粘度計(商品名:キャノンフェンスケ粘度計、東京硝子器械(株)製)に溶液5mlを取り、25℃の恒温漕中で10分間放置後、測定対象サンプルの落下時間(t)を測定した。また、96質量%硫酸そのものの落下時間(t0)も同様に測定した。相対粘度は、測定されたt及びt0の値から、下式(2)により算出した。
(式2) 相対粘度=t/t0
再生樹脂ペレット(Z)を作製した後、得られた再生樹脂ペレット(Z)を用いて実施例1の容器を製造した。以下に詳しい製造方法を記載する。
再生樹脂ペレット(Z)
再生樹脂ペレット(Z)は、製造例1で得られた複層ペレット1、及び高密度ポリエチレン((株)日本ポリエチレン製「ノバテックHD HB111R」)を、重量比20/80(複層ペレット1/高密度ポリエチレン)でドライブレンドし、ドライブレンド物をブロー成形機(Y.K エンジニアリング製「YKC-080C」)の押出機に供給した。これらを押出機にて、押出設定温度220℃、スクリュー回転数90rpm、混練時間5分間の条件で溶融混練し、この溶融混練物を環状ダイを通して押出して、円筒状のパリソンを形成した。このとき、溶融混練物の温度は250℃であった。軟化状態にあるパリソンを、ダイ直下に位置する分割金型で挟み込み、パリソン内にブローピンを打ち込んだ。ブローピンから圧縮エアーをパリソン内の空間に吹き込んで、パリソンを膨張させ、金型キャビティの内面に押し付け、金型キャビティの形状どおりに賦形した。冷却後、金型を開き、バリ付きの容器を金型から取出し、バリを切除することにより、容器を得た。得られた容器を破砕することにより再生樹脂(Z)を得た。なお、容器の製造に用いた金型としては、再生樹脂ペレットの製造に用いた金型と同じものを用いた。
複層ペレット(X)として製造例1で得られた複層ペレット1、高密度ポリエチレン(Y)として高密度ポリエチレン((株)日本ポリエチレン製「ノバテックHD HB111R」)、及び上記により得られた再生樹脂(Z)を、重量比10/40/50(X/Y/Z)でドライブレンドし、ドライブレンド物をブロー成形機(Y.K エンジニアリング製「YKC-080C」)の押出機に供給した。これらを押出機にて、押出設定温度220℃、スクリュー回転数90rpm、混練時間5分間の条件で溶融混練し、この溶融混練物を環状ダイを通して押出して、円筒状のパリソンを形成した。このとき、溶融混練物の温度は250℃であった。軟化状態にあるパリソンを、ダイ直下に位置する分割金型で挟み込み、パリソン内にブローピンを打ち込んだ。ブローピンから圧縮エアーをパリソン内の空間に吹き込んで、パリソンを膨張させ、金型キャビティの内面に押し付け、金型キャビティの形状どおりに賦形した。冷却後、金型を開き、バリ付きの容器を金型から取出し、バリを切除することにより、実施例1の容器を得た。
得られた容器は、重量460g、容量0.0012m3(1.2L)、内部表面積0.1m2、及び平均厚み3mmのものであり、スクリューキャップで封じることが可能な口栓部を有し、口栓部の開口部以外の部分は、全周にわたってピンチオフ部を有するものであった。
実施例1の基材樹脂組成物の溶融混練において、製造例1で得られた複層ペレット1を、製造例2で得られた複層ペレット2に変更し、実施例1の再生樹脂(Z)を、複層ペレット2と高密度ポリエチレン樹脂との混合樹脂に基づく再生樹脂に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例2の容器を作製した。
実施例1の基材樹脂組成物の溶融混練において、製造例1で得られた複層ペレット1を、製造例3で得られた複層ペレット3に変更し、実施例1の再生樹脂(Z)を、複層ペレット3と高密度ポリエチレン樹脂との混合樹脂に基づく再生樹脂に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例3の容器を作製した。
実施例1の基材樹脂組成物の溶融混練において、製造例1で得られた複層ペレット1を、製造例4で得られた複層ペレット4に変更し、実施例1の再生樹脂(Z)を、複層ペレット4と高密度ポリエチレン樹脂との混合樹脂に基づく再生樹脂に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例4の容器を作製した。
実施例1の基材樹脂組成物の溶融混練において、製造例1で得られた複層ペレット1を、製造例5で得られた複層ペレット5に変更し、実施例1の再生樹脂(Z)を、複層ペレット5と高密度ポリエチレン樹脂との混合樹脂に基づく再生樹脂に変更したこと以外は、実施例1と同様にして比較例1の容器を作製した。
実施例1の基材樹脂組成物の溶融混練において、製造例1で得られた複層ペレット1を、製造例6で得られた複層ペレット6、及び製造例7で得られた複層ペレット7からなる混合複層ペレットに変更し、実施例1の再生樹脂(Z)を、複層ペレット6及び複層ペレット7からなる混合複層ペレットと高密度ポリエチレン樹脂との混合樹脂に基づく再生樹脂に変更したこと以外は、実施例1と同様にして比較例2の容器を作製した。
なお、ここで混合複層ペレットは、複層ペレット6及び複層ペレット7を重量比60/40(複層ペレット6/複層ペレット7)の割合で混合したものである。
実施例1の基材樹脂組成物の溶融混練において、製造例1で得られた複層ペレット1を、製造例8で得られた単層ペレット1、及び製造例11で得られた単層ペレット4からなる混合単層ペレットに変更し、実施例1の再生樹脂(Z)を、単層ペレット1と単層ペレット4からなる混合単層ペレットと高密度ポリエチレン樹脂との混合樹脂に基づく再生樹脂に変更したこと以外は、実施例1と同様にして比較例3の容器を作製した。
なお、ここで混合単層ペレットは、単層ペレット1及び単層ペレット4を重量比40/60(単層ペレット1/単層ペレット4)の割合で混合したものである。
実施例1の基材樹脂組成物の溶融混練において、製造例1で得られた複層ペレット1を、製造例9で得られた単層ペレット2、及び製造例11で得られた単層ペレット4からなる混合単層ペレットに変更し、実施例1の再生樹脂(Z)を、単層ペレット2と単層ペレット4からなる混合単層ペレットと高密度ポリエチレン樹脂との混合樹脂に基づく再生樹脂に変更したこと以外は、実施例1と同様にして比較例4の容器を作製した。
なお、ここで混合単層ペレットは、単層ペレット2及び単層ペレット4を重量比40/60(単層ペレット2/単層ペレット4)の割合で混合したものである。
実施例1の基材樹脂組成物の溶融混練において、製造例1で得られた複層ペレット1を、製造例10で得られた単層ペレット3、及び製造例11で得られた単層ペレット4からなる混合単層ペレットに変更し、実施例1の再生樹脂(Z)を、単層ペレット3と単層ペレット4からなる混合単層ペレットと高密度ポリエチレン樹脂との混合樹脂に基づく再生樹脂に変更したこと以外は、実施例1と同様にして比較例5の容器を作製した。
なお、ここで混合単層ペレットは、単層ペレット3及び単層ペレット4を重量比40/60(単層ペレット3/単層ペレット4)の割合で混合したものである。
実施例1の基材樹脂組成物の溶融混練において、製造例1で得られた複層ペレット1を、製造例6で得られた複層ペレット6に変更し、実施例1の再生樹脂(Z)を、複層ペレット6と高密度ポリエチレン樹脂との混合樹脂に基づく再生樹脂に変更したこと以外は、実施例1と同様にして比較例6の容器を作製した。
実施例1の基材樹脂組成物の溶融混練において、製造例1で得られた複層ペレット1を、製造例7で得られた複層ペレット7に変更し、実施例1の再生樹脂(Z)を、複層ペレット7と高密度ポリエチレン樹脂との混合樹脂に基づく再生樹脂に変更したこと以外は、実施例1と同様にして比較例7の容器を作製した。
なお、実施例1~4で作製した容器については、容器を切断し、切断面にヨードチンキを塗ってポリアミド系樹脂(A)を染色させたところ、ポリアミド系樹脂(A)が、高密度ポリエチレン樹脂(Y)中で層状に分散していることが確認できた。
(2)燃料透過試験
実施例1~4、及び比較例1~7で作製した各容器(重量:460g、容量:1.2L、内部表面積:0.1m2、及び平均厚み:3mm)に、燃料0.5Lを口栓開口部から充填し、口栓開口部をキャップで封じた密閉状態で温度43℃の環境下で10週間放置した。
なお、ここで容器に充填した燃料は、イソオクタン/トルエン/エタノールを、重量比45/45/10の割合で混合したものである。
その後、各容器から燃料を全て排出し、各容器に新しい燃料1.2Lを口栓開口部から充填し、口栓開口部をキャップで封じた密閉状態で各容器の総重量(W1)を測定した。この燃料が充填された各容器を温度40℃の環境下で10日間放置した。
そして、各容器の総重量(W2)を測定し、測定した各容器の重量変化量(W1-W2)から燃料透過量(g/m2/日)を算出した。
このように算出した燃料透過量(g/m2/日)の結果から、下記に示す基準で燃料バリア性の良否を評価した。
○(良):燃料透過量が3.0g/m2/日以下
×(否):燃料透過量が3.0g/m2/日を超える
実施例1~4、及び比較例1~7で作製した各容器(重量:460g、容量:1.2L、内部表面積:0.1m2、及び平均厚み:3mm)において、口栓開口部をキャップで封じた密閉状態で所定の蓋を容器に装着し、60℃の水槽に浸した。
なお、ここで所定の蓋とは、口栓開口部をキャップで封じた密閉状態でエアーを注入し、容器内に圧力を付与可能な機能を有し、エアー注入穴が備えられた蓋を指していう。
次いで、所定の蓋に備えられたエアー注入穴からエアーを容器内に注入し、容器の内部圧力を300kPaに保持し、容器が破壊するまでの時間を測定した。
このように測定した容器破壊に要した時間の結果から、下記に示す基準で耐圧強度の良否を評価した。
○(良):容器破壊に要した時間が2時間以上
×(否):容器破壊に要した時間が2時間未満
表3に示した評価結果より、以下のことが分かる。
比較例1の容器は、ポリアミド(A1)及び脂肪族ポリアミド(A2)を、重量比(A1/A2)20/80の割合で含有する複層ペレット5を基材樹脂として用いて作製したことに起因して、所望の耐圧強度は得られるものの、実施例の容器よりも燃料バリア性に劣り燃料透過量が多いことが分かった。
比較例2の容器は、脂肪族ポリアミド(A2)を含有しない複層ペレット6、及びポリアミド(A1)を含有しない複層ペレット7からなる混合複層ペレットを基材樹脂として用いて作製したことに起因して、所望の燃料バリア性は得られるものの、実施例の容器よりも耐圧強度に劣ることが分かった。
比較例4の容器は、脂肪族ポリアミド(A2)を含有しない単層ペレット2を基材樹脂として用いて作製したことに起因して、所望の燃料バリア性は得られるものの、実施例の容器よりも耐圧強度に劣ることが分かった。
比較例5の容器は、ポリアミド(A1)を含有しない単層ペレット3を基材樹脂として用いて作製したことに起因して、所望の耐圧強度は得られるものの、実施例の容器よりも燃料バリア性に劣り燃料透過量が多いことが分かった。
比較例7の容器は、ポリアミド(A1)を含有しない複層ペレット7を基材樹脂として用いて作製したことに起因して、所望の耐圧強度は得られるものの、実施例の容器よりも燃料バリア性に劣り燃料透過量が多いことが分かった。
Claims (6)
- ポリアミド系樹脂(A)を含む芯層と、該芯層を被覆する酸変性ポリオレフィン系樹脂(B)を含む被覆層とを有する複層ペレットであって、
前記被覆層に対する前記芯層の重量比(芯層/被覆層)が20/80~80/20であり、
前記ポリアミド系樹脂(A)が、炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するジカルボン酸構成単位とメタキシリレンジアミンに由来するジアミン構成単位とを含むポリアミド(A1)、及び脂肪族ポリアミド(A2)を含有し、
前記脂肪族ポリアミド(A2)に対する前記ポリアミド(A1)の重量比(A1/A2)が、35/65~80/20であり、
熱流束示差走査熱量測定して得られるDSC曲線における、前記ポリアミド系樹脂(A)由来の2つの融解ピークのうち高温側の融解ピークの融解ピーク温度(T H )と低温側の融解ピークの融解ピーク温度(T L )との差(ΔT 1 =T H -T L )、及び
前記ポリアミド(A1)の融解ピーク温度(T A1 )と前記脂肪族ポリアミド(A2)の融解ピーク温度(T A2 )との差の絶対値(ΔT 2 =|T A1 -T A2 |)が、
下記式1の関係を満たす、複層ペレット。
(式1) |ΔT 1 -ΔT 2 |≦3℃ - 前記ポリアミド系樹脂(A)が、前記ポリアミド(A1)及び前記脂肪族ポリアミド(A2)からなり、
前記ポリアミド(A1)が、アジピン酸に由来するジカルボン酸構成単位とメタキシリレンジアミンに由来するジアミン構成単位とからなるポリアミドであり、
前記脂肪族ポリアミド(A2)が、ポリ(カプロラクタム)である、請求項1に記載の複層ペレット。 - 前記ポリアミド系樹脂(A)由来の2つの融解ピークのうち高温側の融解ピークの融解ピーク温度(TH)と低温側の融解ピークの融解ピーク温度(TL)との差(ΔT1=TH-TL)が、10℃以上18℃以下である、請求項1又は2に記載の複層ペレット。
- 前記被覆層中の酸変性ポリオレフィン系樹脂(B)に由来する酸成分の含有量が0.05~5重量%である、請求項1~3のいずれか1項に記載の複層ペレット。
- 前記脂肪族ポリアミド(A2)に対する前記ポリアミド(A1)の重量比(A1/A2)が、35/65~70/30である、請求項1~4のいずれか1項に記載の複層ペレット。
- 請求項1~5のいずれか1項に記載の複層ペレット(X)、及び高密度ポリエチレン樹脂(Y)を押出機に供給し、これらを溶融混練してなる溶融混練物を押出して形成された軟化状態のパリソンを金型で挟み込みブロー成形する容器の製造方法であって、
前記容器中の複層ペレット(X)に由来するポリアミド系樹脂(A)の含有割合が、1~10重量%となるように複層ペレット(X)を押出機に供給する、容器の製造方法。
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