以下、本発明を具体化した実施例について図面を参照しつつ説明する。
(実施例)
図1に示すように、実施例の定着装置100は、本発明の定着装置の具体的態様の一例である。定着装置100は、画像形成装置1に備えられている。画像形成装置1は、電子写真方式によりシートSHに画像を形成するレーザプリンタである。
図1では、紙面右側を画像形成装置1の前側と規定し、画像形成装置1を前側から見た場合に左手に来る側、すなわち紙面手前側を画像形成装置1の左側と規定して、前後、左右及び上下の各方向を表示する。そして、図2以降の各図に示す各方向は、全て図1に示す各方向に対応させて表示する。以下、図1等に基づいて、画像形成装置1が備える各構成要素の概略構成を説明した後、定着装置100について詳しく説明する。
<画像形成装置の概略構成>
図1に示すように、画像形成装置1は、装置本体2、供給部20、プロセスカートリッジ7、スキャナ部8、定着装置100及び排出部29を備えている。
装置本体2は、筐体と、筐体内に設けられた図示しないフレーム部材とを含んで構成されている。装置本体2内の下部には、シートカセット2Cが着脱可能に設けられている。シートカセット2Cの内部には、画像形成される記録シートSHが積層状態で収容される。記録シートSHは、用紙やOHPシート等である。また、本実施例では、封筒も記録シートSHに含まれる。
装置本体2の上面には、排出トレイ2Dが設けられている。排出トレイ2Dには、画像形成を終えた記録シートSHが排出される。
供給部20、プロセスカートリッジ7、スキャナ部8、定着装置100及び排出部29は、装置本体2内におけるシートカセット2Cよりも上方の位置で、図示しないフレーム部材に組み付けられている。
装置本体2内には、搬送経路P1が設けられている。搬送経路P1は、シートカセット2Cの前端部から上向きにUターンしながら供給部20を経由した後、後向きに略水平に進んでプロセスカートリッジ7及び定着装置100を経由し、さらに上向きにUターンしながら排出部29を経由して排出トレイ2Dに至る経路である。
供給部20は、シートカセット2Cに収容された記録シートSHを供給ローラ21、分離ローラ22及び分離パッド22Aにより1枚ずつ搬送経路P1に送り出す。そして、供給部20は、搬送経路P1に沿って配設された搬送ローラ23A及びピンチローラ23Pと、レジストローラ24A及びピンチローラ24Pとにより、記録シートSHをプロセスカートリッジ7に向けて搬送する。
プロセスカートリッジ7は、周知の構成であるトナー収容部7A、感光ドラム7B、現像ローラ7C及び帯電器7D等を含んで構成されている。
スキャナ部8は、プロセスカートリッジ7よりも上方に設けられている。スキャナ部8は、周知の構成であるレーザ光源、ポリゴンミラー、fθレンズ及び反射鏡等を含んで構成されている。スキャナ部8は、上方からレーザビームをプロセスカートリッジ7内の感光ドラム7Bに照射する。
感光ドラム7Bの表面は、その回転に伴って帯電器7Dにより一様に正帯電された後、スキャナ部8から照射されるレーザビームの高速走査により露光される。これにより、感光ドラム7Bの表面には、記録シートSHに形成すべき画像に対応した静電潜像が形成される。現像ローラ7Cは、その静電潜像に対応して、トナー収容部7Aから現像剤を感光ドラム7Bの表面に供給する。これにより、感光ドラム7Bの表面上に現像剤像が担持される。その現像剤像は、プロセスカートリッジ7を通過する記録シートSHに転写される。
定着装置100は、プロセスカートリッジ7よりも後方に設けられている。定着装置100は、搬送経路P1に対して上側に位置する加熱ベルトユニット102と、搬送経路P1を挟んで下から加熱ベルトユニット102に対向する加圧ローラ101とを有している。定着装置100は、加圧ローラ101と加熱ベルトユニット102とによって記録シートSHを挟んで加熱加圧し、記録シートSH上に現像剤像を熱定着させる。
排出部29は、排出ローラ29A及び排出ピンチローラ29Pにより、現像剤像が定着した記録シートSHを排出トレイ2Dに排出する。
<定着装置の詳細構成>
図2及び図3に示すように、定着装置100は、定着フレーム120、加圧ローラ101、加熱ベルトユニット102、左右一対の保持部材130、左右一対のカム部材150及び左右一対の引っ張りコイルバネ109を備えている。
加圧ローラ101は、本発明の「第1定着部材」の一例である。加熱ベルトユニット102は、本発明の「第2定着部材」の一例である。引っ張りコイルバネ109は、本発明の「付勢部材」の一例である。
右方の保持部材130は、左方の保持部材130と勝手違いの同一形状である。このため、右方の保持部材130の図示は簡略する。右方のカム部材150は、左方のカム部材150と勝手違いの同一形状である。このため、右方のカム部材150の図示は簡略する。
また、定着装置100は、図2に示すように、制御部C1、モータM1及び伝達部G1を備えている。制御部C1は、図示しないCPU、ROM、RAMを主とするマイクロコンピュータとして構成されている。ROMには、CPUが画像形成装置1の各種動作を制御するためのプログラムや、識別処理を実行するためのプログラムなどが格納されている。RAMはCPUが上記プログラムを実行する際に用いるデータや信号を一時的に記録する記憶領域、或いはデータ処理の作業領域として使用される。制御部C1は、定着装置100を制御するだけでなく、供給部20、プロセスカートリッジ7、スキャナ部8及び排出部29を含む画像形成装置1の全体を制御するものである。モータM1は、本発明の「駆動源」の一例である。モータM1は、定着装置100専用のものであってもよいし、供給部20、プロセスカートリッジ7及び排出部29の駆動源を兼ねていてもよい。本実施例では、モータM1はステッピングモータであり、制御部C1に制御されて正回転及び逆回転する。
図2及び図3に示すように、定着フレーム120は、ベース部121と、左右一対の側壁部122とを有している。ベース部121は、左右方向に長く延びており、装置本体2の図示しないフレーム部材に支持されている。
左方の側壁部122は、ベース部121の左端部に接続している。左方の側壁部122は、上向きに突出し、かつ前後方向に延びている。図2に示すように、右方の側壁部122は、ベース部121の右端部に接続している。右方の側壁部122は、上向きに突出し、かつ前後方向に延びている。右方の側壁部122は、左方の側壁部122と勝手違いの同一形状である。このため、右方の側壁部122の図示は簡略する。
図2及び図3に示すように、左右の側壁部122には、上端縁から後方かつ下方に向かって凹む凹部122Aが形成されている。
左右の側壁部122における凹部122Aの下部には、加圧ローラ支持部123が設けられている。左右の側壁部122における凹部122Aの上部には、直動ガイド部124A、124Bが設けられている。
左右の側壁部122における上方かつ前方の角部には、保持部材支持部125が設けられている。左右の側壁部122における下方かつ後方の角部から上方にずれた位置には、フック126が下向きに突出するように設けられている。
加圧ローラ101は、左右方向に延びる回転軸101Sと一体回転するローラである。回転軸101Sは、図示しない軸受を介して、左右の側壁部122の加圧ローラ支持部123に回転可能に支持されている。
図2に示すように、回転軸101Sの左端部は、遊星ギヤ式ワンウェイクラッチ101Cを経由してモータM1に連結されている。図示は省略するが、遊星ギヤ式ワンウェイクラッチ101Cは、モータM1の駆動力が伝達される入力ギヤと、入力ギヤから離れて配置されて回転軸101Sに連結された出力ギヤと、入力ギヤの回転中心周りに揺動可能なアームと、アームの先端部に自転可能に支持されて入力ギヤと常時噛み合う遊星ギヤとを有する周知の構成である。モータM1が正回転する場合、遊星ギヤが出力ギヤと噛み合う位置に変位するので、モータM1の駆動力が回転軸101Sに伝達される。その結果、加圧ローラ101が図4の反時計回りに回転する。その一方、モータM1が逆回転する場合、遊星ギヤが出力ギヤから離間する位置に変位するので、モータM1の駆動力が回転軸101Sに伝達されない。その結果、加圧ローラ101は回転しない。
加熱ベルトユニット102は、図4に示す定着ベルト105及びヒータ102Hと、図2~図4に示すニップ板103、反射板104及びステイ106と、図2及び図3に示す左右一対のガイド部材110とを含んで構成されている。右方のガイド部材110は、左方のガイド部材110と勝手違いの同一形状である。このため、右方のガイド部材110の図示は簡略する。
図4に示すように、定着ベルト105は、耐熱性及び可撓性を有する無端ベルトである。定着ベルト105は、筒形状で左右方向に長く延びている。定着ベルト105は例えばステンレス鋼製であり、その外周面にフッ素樹脂等がコーティングされている。
図示は省略するが、定着ベルト105は、その左右方向の両端部が左右のガイド部材110に案内されることにより回転可能となっている。定着ベルト105の内側には、ヒータ102H、ニップ板103、反射板104及びステイ106が設けられている。
ヒータ102Hは例えばハロゲンヒータであり、輻射熱を発してニップ板103を加熱する部材である。
図2~図4に示すように、ニップ板103は、加圧ローラ101に上から対向する位置で、定着ベルト105の内周面に摺接するように配置されている。ニップ板103は、ヒータ102Hからの輻射熱を受け、その熱を定着ベルト105に、ひいては記録シートSH上の現像剤像に伝達する板状の部材である。ニップ板103は、熱伝導率が大きい、例えばアルミニウム製の板材が折り曲げ加工等されることにより形成されている。
反射板104は、ヒータ102Hを取り囲むように、ヒータ102Hから所定の間隔をあけて配置されている。反射板104は、ニップ板103から遠ざかるようにヒータ102Hから放射される輻射熱をニップ板103に向けて反射する部材である。反射板104は、赤外線及び遠赤外線の反射率が大きい、例えばアルミニウム製の板材が断面略U字形状に折り曲げ加工等されることにより形成されている。
ステイ106は、反射板104の外面形状に沿った断面略U字形状を有して反射板104を覆うように配置されている。ステイ106は、ニップ板103の前後方向の両端部を反射板104を介して保持することでニップ板103の剛性を確保する部材である。ステイ106は、ニップ板103と比較して剛性が大きい、例えば鋼製の板材が折り曲げ加工等されることにより形成されている。
図2及び図3に示すように、左右のガイド部材110は、ヒータ102H、ニップ板103、反射板104及びステイ160の左右方向の両端部を一体的に支持している。ガイド部材110は、樹脂等の絶縁性材料製である。
左右のガイド部材110は、左右の側壁部122の凹部122A内に進入した状態で、直動ガイド部124A、124Bに挟まれている。左右のガイド部材110は、直動ガイド部124A、124Bに案内されることにより、左右の側壁部122の凹部122Aに沿って上下方向に直動可能となっている。図4~図6に示すように、定着ベルト105、ヒータ102H、ニップ板103、反射板104及びステイ160も、左右のガイド部材110の直動に伴って、加圧ローラ101に対して接近及び離間するように直動可能となっている。
加熱ベルトユニット102が図4に示す位置にある状態では、ニップ板103及び定着ベルト105が加圧ローラ101から離間している。加熱ベルトユニット102が図5に示す位置にある状態では、ニップ板103及び定着ベルト105が加圧ローラ101の外周面の一部を押し潰すように接触している。加熱ベルトユニット102が図6に示す位置にある状態では、ニップ板103及び定着ベルト105が加圧ローラ101の外周面の一部を図5の状態よりも大きく押し潰すように接触している。
図4に示す加熱ベルトユニット102の位置は、加熱ベルトユニット102が加圧ローラ101に対して離間する離間位置である。図6に示す加熱ベルトユニット102の位置は、加熱ベルトユニット102が加圧ローラ101に対して圧接する圧接位置である。圧接位置は、用紙やOHPシート等の一般的な厚みを有する記録シートSHに対応する位置である。図5に示す加熱ベルトユニット102の位置は、加熱ベルトユニット102が図6に示す圧接位置での圧接力よりも小さい圧接力で加圧ローラ101に対して圧接する弱圧接位置である。弱圧接位置は、記録シートSHが一般的なシートよりも厚い封筒SH1等である場合に対応する位置である。
加熱ベルトユニット102が図6に示す圧接位置、又は図5に示す弱圧接位置にある状態で、加圧ローラ101が回転することにより、加圧ローラ101に接触する定着ベルト105が従動回転するようになっている。
図2及び図3に示すように、左方の保持部材130は、前端部が下向きに突出して、左方の側壁部122の保持部材支持部125内に進入している。右方の保持部材130は、前端部が下向きに突出して、右方の側壁部122の保持部材支持部125内に進入している。左右の保持部材130は、左右の保持部材支持部125によって揺動軸心X130周りに揺動可能に支持されている。
保持部材130の後端部側は、断面略L字形状に折り曲げ加工されており、その折り曲げられた部分の下を向く面が接触面131Aとされている。また、保持部材130の後端部側には、フック132が形成されている。
保持部材130における接触面131Aと揺動軸心X130との間には、係合部133が形成されている。係合部133は、ガイド部材110の上端部111に係合している。ガイド部材110における上端部111の近傍には、ブロック状に突出する被押圧部112が形成されている。係合部133の下端縁は、被押圧部112に当接している。
保持部材130が図3の時計回りに揺動することにより、保持部材130の係合部133がガイド部材110の上端部111を上向きに引っ張る。これにより、加熱ベルトユニット102は、図4に示す離間位置に向けて変位する。
その一方、保持部材130が図3の反時計回りに揺動することにより、保持部材130の係合部133の下端縁が被押圧部112を下向きに押す。これにより、加熱ベルトユニット102は、図5に示す弱圧接位置に向けて変位し、さらには、図6に示す圧接位置に向けて変位する。つまり、保持部材130は、図4に示す離間位置と図6に示す圧接位置との間で変位可能に加熱ベルトユニット102を保持している。
図2及び図3に示すように、左方の引っ張りコイルバネ109は、その上端部が左方の保持部材130のフック132に係止され、その下端部が左方の側壁部122のフック126に係止されている。図示は簡略するが、右方の引っ張りコイルバネ109も、同様に、その上端部が右方の保持部材130のフック132に係止され、その下端部が右方の側壁部122のフック126に係止されている。
引っ張りコイルバネ109は、加熱ベルトユニット102を加圧ローラ101に接近する付勢方向DF1に付勢している。また、付勢方向DF1は、保持部材130がカム部材150のカム面155に接近する方向である。付勢方向DF1は、側壁部122の凹部122Aが凹む方向と略平行に延びており、下方かつ後方に向かって傾斜している。
左右の側壁部122の後方かつ上方の角部よりも上側、かつ、左右の保持部材130の接触面131Aよりも下側の位置には、伝達軸190が設けられている。図7及び図8に示すように、伝達軸190の左右方向の両端部は、装置本体2内に設けられた左右一対のサイドフレーム部材180によって、左右方向に延びる回転中心X150周りに回転可能に支持されている。サイドフレーム部材180は、強度及び剛性が高い、例えば鋼製の板状部材であり、前後方向及び上下方向に延在している。図7及び図8では左方のサイドフレーム部材180のみを図示しているが、右方のサイドフレーム部材180は左方のサイドフレーム部材180と勝手違いの同一形状である。このため、右方のサイドフレーム部材180の図示は省略する。
図2に示すように、伝達軸190は、強度及び剛性が高い、例えば、鋼製の軸状部材である。伝達軸190の左右方向の両端部には、軸部191が形成されている。図7及び図8に示すように、伝達軸190の左端部側の軸部191の先端は、左方のサイドフレーム部材180よりも左側に突出している。伝達軸190の左端部側の軸部191の先端には、伝達ギヤ199が一体回転可能に嵌合されている。
図2及び図3に示すように、左方のカム部材150は、伝達軸190の左端部側の軸部191であって、左方の保持部材130の接触面131Aの真下に位置する部分に一体回転可能に嵌合されている。右方のカム部材150は、伝達軸190の右端部側の軸部191であって、右方の保持部材130の接触面131Aの真下に位置する部分に一体回転可能に嵌合されている。図8に示すように、左方のサイドフレーム部材180は、左方のカム部材150と伝達ギヤ199との間に位置している。
図2に示すように、伝達部G1は、電磁クラッチGC1、モータM1と電磁クラッチGC1の入力側とを連結する図示しないギヤ群、電磁クラッチGC1の出力側に連結された伝達ギヤ199、伝達軸190、及び伝達軸190の軸部191とカム部材150の軸穴160との嵌合部を主に含んで構成されている。電磁クラッチGC1は、制御部C1に接続されており、制御部C1に制御されて接続状態と遮断状態とに切り替わる。
伝達部G1は、モータM1が制御部C1に制御されて正回転し、電磁クラッチGC1が制御部C1に制御されて接続状態に切り替わった場合、モータM1の駆動力をカム部材150に伝達して、カム部材150を回転中心X150周りに第1方向R1に回転させる。
その一方、伝達部G1は、モータM1が制御部C1に制御されて逆回転し、電磁クラッチGC1が制御部C1に制御されて接続状態に切り替わった場合、モータM1の駆動力をカム部材150に伝達して、カム部材150を回転中心X150周りに第1方向R1とは反対の第2方向R2に回転させる。
第1方向R1は、図3の時計回りの方向である。第2方向R2は、図3の反時計回りの方向である。
図9~図17に示すように、カム部材150は、保持部材130の接触面131Aに接触可能なカム面155を有している。回転中心X150に沿って見て、保持部材130におけるカム面155と接触する接触面131Aは、後方かつ上方に向かって傾斜するように直線状に延びている。
カム面155は、回転中心X150からの距離が第2方向R2に向かって短くなっている。ここで、「回転中心X150からの距離が第2方向R2に向かって短くなる」構成には、回転中心X150からの距離が一定で回転中心X150周りに所定の長さで延びる部分がカム面155の一部に形成されている構成が含まれる。換言すると、回転中心X150からの距離が第2方向R2に向かって長くなる部分がカム面155の一部に形成されている構成は、「回転中心X150からの距離が第2方向R2に向かって短くなる」構成には該当しない。
また、カム部材150は、カム面155の一端と他端とに隣接する不使用面159を有している。不使用面159は、カム面155の一端と他端とを略直線状に接続している。制御部C1は、不使用面159が保持部材130の接触面131Aに接触しない範囲で、カム部材150を第1方向R1及び第2方向R2に回転させるようにモータM1及び電磁クラッチGC1を制御するようになっている。
図10に示すように、カム面155は、第1周面151、第2周面152、第3周面153及び第4周面154を有している。第3周面153は、本発明の「所定周面」の一例である。
第1周面151は、回転中心X150からの距離がカム面155において最も長い第1距離L1に設定されている。第1周面151は、第1距離L1を維持して回転中心X150周りに所定の長さL151で延びている。第1周面151と不使用面159との接続部は丸め処理されている。
第2周面152は、第1周面151に対して回転中心X150周りに第2方向R2に所定の間隔で離間して設けられている。第2周面152は、回転中心X150からの距離が第1距離L1よりも短い第2距離L2に設定されている。第2周面152は、第2距離L2を維持して回転中心X150周りに所定の長さL152で延びている。
第3周面153は、第2周面152に対して回転中心X150周りに第1方向R1に離間した位置に設けられている。第3周面153は、回転中心X150からの距離が第2距離L2よりも長い第3距離L3に設定されている。
第4周面154は、第2周面152に対して回転中心X150周りに第2方向R2に離間した位置に設けられている。第4周面154は、回転中心X150からの距離が第2距離L2よりも短い第4距離L4に設定されている。
カム面155における第1周面151と第3周面153との間の範囲は、回転中心X150からの距離が第2方向R2に向かって除々に短くなるなだらかな曲面となっている。また、カム面155における第3周面153と第2周面152との間の範囲も、回転中心X150からの距離が第2方向R2に向かって除々に短くなるなだらかな曲面となっている。また、カム面155における第4周面154と第2周面152との間の範囲も、回転中心X150からの距離が第2方向R2に向かって除々に短くなるなだらかな曲面となっている。
カム面155において、第1周面151と第2周面152との間の長さLW1は、第2周面152と第4周面154との間の長さLW2よりも大きく設定されている。
図9及び図10に示すように、カム部材150は、回転中心X150を中心とする軸穴160を有している。軸穴160は、円筒面163の一部が第1平坦面161によって切り取られた断面略D字形状である。
図2及び図3に示すように、カム部材150の軸穴160には、伝達軸190の軸部191が嵌入される。伝達軸190の軸部191は、カム部材150の軸穴160に整合する断面略D字形状である。伝達軸190の軸部191は、第1平坦面161に当接する第2平坦面192を有している。図10に示すように、第1平坦面161は、回転中心X150から第1周面151に向かう方向DD1に重なるように配置されている。
図2に示すように、定着装置100は、フォトインタラプタS1を備えている。フォトインタラプタS1は、本発明の「検知手段」の一例である。図7及び図8に示すように、フォトインタラプタS1は、伝達ギヤ199の左面に対向する位置に配置されている。伝達ギヤ199の左面には、回転中心X150を中心とする円筒形状のリブ199Rが左向きに突出するように形成されている。リブ199Rの一部は、切欠部199Cによって切り欠かれている。
フォトインタラプタS1は、制御部C1に接続されており、伝達ギヤ199の回転に伴ってリブ199Rが光路を遮断することによりCLOSE信号を制御部C1に送信する。その一方、フォトインタラプタS1は、伝達ギヤ199の回転に伴って切欠部199Cが光路を開放することによりOPEN信号を制御部C1に送信する。
以下に詳しく説明するように、制御部C1は、モータM1によりカム部材150を第1方向R1に回転させることによりカム面155を保持部材130の接触面131Aから離間させ、引っ張りコイルバネ109に付勢された加熱ベルトユニット102を図6に示す圧接位置に変位させる。その一方、制御部C1は、モータM1によりカム部材150を第2方向R2に回転させることによりカム面155を保持部材130の接触面131Aに接触させて引っ張りコイルバネ109に抗して加熱ベルトユニット102を図4に示す離間位置に変位させる。
制御部C1は、フォトインタラプタS1によって伝達ギヤ199の回転姿勢を検知することでカム部材150の回転姿勢を検知し、カム部材150が図11に示す位置にあるか否か、すなわち、加熱ベルトユニット102が図4に示す離間位置にあるか否かを検知する。
具体的には、伝達ギヤ199の切欠部199Cは、カム部材150が図11に示す位置にあって、カム面155の第1周面151が保持部材130の接触面131Aに接触する状態で、フォトインタラプタS1の光路を開放する位置に配置されている。伝達ギヤ199のリブ199Rは、カム部材150が図11に示す位置になく、カム面155の第1周面151が保持部材130の接触面131Aに接触しない状態で、フォトインタラプタS1の光路を遮断する位置に配置されている。つまり、フォトインタラプタS1は、カム面155の第1周面151が保持部材130の接触面131Aに接触するか否かのみを検知する。
制御部C1は、フォトインタラプタS1からOPEN信号を受信した場合、カム部材150が図11に示す位置にあり、加熱ベルトユニット102が図4に示す離間位置にあることを検知する。その一方、制御部C1は、フォトインタラプタS1からCLOSE信号を受信した場合、カム部材150が図11に示す位置になく、加熱ベルトユニット102が図4に示す離間位置にないことを検知する。
そして、制御部C1は、図11に示すカム部材150の位置を原点位置として、ステッピングモータであるモータM1をパルス信号制御等によって精度良く正回転及び逆回転させ、カム部材150の回転姿勢を精度よく変化させる。制御部C1は、カム部材150を図11に示す原点位置から図17に示す位置に向けて変位させる場合、カム部材150を第1方向R1に回転させる。制御部C1は、カム部材150を図11に示す原点位置に復帰させる場合、カム部材150を第2方向R2に回転させる。
図2、図3及び図11に示すように、カム部材150は、カム面155の第1周面151を保持部材130の接触面131Aに接触させた状態で、第1距離L1がカム面155において最も長いことにより、引っ張りコイルバネ109に抗して加熱ベルトユニット102を図4に示す離間位置に変位させている。
図12及び図13に示すように、制御部C1がモータM1によりカム部材150を第1方向R1に回転させ始めると、カム部材150は、カム面155における第1周面151と第2周面152との間の範囲を保持部材130の接触面131Aに接触させる。その範囲は回転中心X150からの距離が第2方向R2に向かって除々に短くなるなだらかな曲面になっていることから、保持部材130が付勢方向DF1に徐々に揺動し、加熱ベルトユニット102が加圧ローラ101に接近する。そして、図13に示すように、第3周面153が保持部材130の接触面131Aに接触した時点で、加熱ベルトユニット102が加圧ローラ101に接触するようになっている。
図14に示すように、制御部C1がカム部材150をさらに第1方向R1に回転させると、カム部材150は、カム面155の第2周面152を保持部材130の接触面131Aに接触させる。この状態では、保持部材130が付勢方向DF1にさらに揺動し、加熱ベルトユニット102が加圧ローラ101の外周面の一部を押し潰して図5に示す弱圧接位置に変位する。
図15及び図16に示すように、制御部C1がカム部材150をさらに第1方向R1に回転させると、カム部材150は、カム面155における第4周面154と第2周面152との間の範囲を保持部材130の接触面131Aに接触させる。その範囲は回転中心X150からの距離が第2方向R2に向かって除々に短くなるなだらかな曲面になっていることから、保持部材130が付勢方向DF1に徐々に揺動し、加熱ベルトユニット102が加圧ローラ101の外周面の一部をさらに押し潰す。そして、図16に示すように、第4周面154が保持部材130の接触面131Aに対向した時点で、カム面155が接触面131Aから離間する。換言すると、第1方向R1に回転するカム部材150のカム面155が保持部材130の接触面131Aから離間する前に、加熱ベルトユニット102が加圧ローラ101に接触する。なお、図16に示す状態では、第4周面154と接触面131Aとの隙間が微小であり、カム部材150をさらに第1方向R1に回転することによって、カム面155と接触面131Aとの隙間が拡大する。
図17に示すように、制御部C1がカム部材150をさらに第1方向R1に回転させると、カム部材150は、不使用面159を保持部材130の接触面131Aに隙間を有して対向させる。その結果、保持部材130に引っ張りコイルバネ109の付勢力のみが作用し、加熱ベルトユニット102が図6に示す圧接位置に変位する。
制御部C1がモータM1によりカム部材150を第2方向R2に回転させる場合、カム部材150及び保持部材130が上記の説明とは逆に動作し、加熱ベルトユニット102を図6に示す圧接位置から図4に示す離間位置に変位させる。
図18に実線で示すカム部材150及び保持部材130の姿勢は図11と同じであり、加熱ベルトユニット102が図4に示す離間位置に変位した状態に対応している。図18に二点鎖線で示すカム部材150の姿勢は図17と同じであり、加熱ベルトユニット102が図6に示す圧接位置に変位した状態に対応している。
図18に示すように、加熱ベルトユニット102が図4に示す離間位置に変位した状態でカム部材150の第1周面151が保持部材130の接触面131Aに接触する位置を第1位置PS1とする。
加熱ベルトユニット102が図6に示す圧接位置に変位した状態でカム部材150の第1周面151が保持部材130の接触面131Aから離間する位置を第2位置PS2とする。
第1位置PS1から回転中心X150周りに最短距離で第2位置PS2に到達する方向R3は、第2方向R2と同じ向きである。第1方向R1は、第1位置PS1から回転中心X150周りに最短距離で第2位置PS2に到達する方向R3とは逆向きである。
このような第1方向R1の設定により、カム部材150が比較的長い距離で回転して、加熱ベルトユニット102を図6に示す圧接位置と図4に示す離間位置との間で変位させることができる。これにより、保持部材130の接触面131Aとカム面155とが接触する位置が回転中心X150に対して相対変位する範囲を狭くできる。
その結果、この定着装置100では、引っ張りコイルバネ109の付勢力がカム部材150を回転中心X150周りに回転させようとする方向がカム部材150の回転姿勢の変化によって第1方向R1から第2方向R2に、又は第2方向R2から第1方向R1に突然変化することを抑制できる。これにより、伝達部G1の構成部品同士の衝突を抑制できる。具体的には、図2に示すように、伝達軸190の軸部191とカム部材150の軸穴160との嵌合部や、伝達軸190の軸部191と伝達ギヤ199との嵌合部等において、嵌合するもの同士の間の隙間が急激に無くなって、嵌合するもの同士が衝突することを抑制できる。
図19に示すグラフにおいて、カム部材150の回転角度が原点付近にある状態は、加熱ベルトユニット102が図6に示す圧接位置に変位した状態に対応している。カム部材150の回転角度が破線DL1に近づいた状態は、加熱ベルトユニット102が図4に示す離間位置に変位した状態に対応している。なお、このグラフでは、加熱ベルトユニット102に対して外周面の一部が押し潰された加圧ローラ101から作用する反力は考慮していない。
カム部材150が第1方向R1に回転すると、引っ張りコイルバネ109に付勢された保持部材130の接触面131Aからカム面155に反力が作用し、カム部材150に回転中心X150回りのモーメントM150が作用する。カム部材150の回転角度が破線DL1を超えると、モーメントM150が急激に逆向きになる。本実施例では、不使用面159が保持部材130の接触面131Aに接触しない範囲でカム部材150が第1方向R1及び第2方向R2に回転するので、カム部材150の回転角度が破線DL1を超えることはない。つまり、制御部C1の制御により、引っ張りコイルバネ109の付勢力がカム部材150を回転中心X150周りに回転させようとする方向がカム部材150の回転姿勢の変化によって第1方向R1から第2方向R2に、又は第2方向R2から第1方向R1に突然変化することを抑制している。
<電源が入ったときから開始される制御プログラムの詳細>
上記構成である画像形成装置1では、電源が入ったときから制御部C1が図20に示す制御プログラムを開始する。この制御プログラムにおいて、制御部C1は、図21に示すカム部材150の回転角度とフォトインタラプタS1の検知信号の位相(OPEN信号又はCLOSE信号)との関係に基づいて、カム部材150の回転姿勢や加熱ベルトユニット102の位置を判断する。
図20は、制御部C1によって行われる識別処理の手順の一例を示すフローチャートである。制御部C1は、電源が入ったときにステップS101でフォトインタラプタS1の位相検知を開始する。制御部C1は、ステップS101から次のステップに移行した後も電源が切られるまでフォトインタラプタS1の位相検知を継続する。
次に、制御部C1は、ステップS102に移行して、フォトインタラプタS1の検知信号の位相がOPEN信号であるか否かを判断する。ステップS102において「Yes」の場合、すなわち、電源が入ったときに加熱ベルトユニット102が図4に示す離間位置にあることをフォトインタラプタS1が検知している場合、制御部C1はモータM1を作動させず、カム部材150を回転させない。そして、制御部C1はステップS108に移行して、定着装置100を待機状態とする。
その一方、ステップS102において「No」の場合、すなわち、電源が入ったときに加熱ベルトユニット102が図4に示す離間位置にないことをフォトインタラプタS1が検知している場合、制御部C1はステップS103~S107を実行して、カム部材150を第2方向R2に回転させて、加熱ベルトユニット102を図4に示す離間位置に変位させる。この際、制御部C1は、第2周面152が保持部材130の接触面131Aに接触するか否かにかかわらず、カム部材150を第2方向R2に回転させる。
具体的には、制御部C1は、ステップS103に移行するとモータM1を逆回転させる。
次に、制御部C1は、ステップS104に移行して電磁クラッチGC1に給電し、電磁クラッチGC1を接続状態とする。これにより、伝達部G1は、モータM1の駆動力をカム部材150に伝達してカム部材150を回転中心X150周りに第2方向R2に回転させる。
次に、制御部C1は、ステップS105に移行してフォトインタラプタS1の検知信号の位相がOPEN信号であるか否かを判断する。ステップS105において「No」の場合、制御部C1は、カム部材150が図11に示す原点位置に復帰していないと判断し、ステップS105を繰り返す。
その一方、ステップS105において「Yes」の場合、制御部C1は、カム部材150が図11に示す原点位置に復帰し、加熱ベルトユニット102が図4に示す離間位置に変位したと判断して、ステップS106に移行する。
制御部C1は、ステップS106に移行すると電磁クラッチGC1への給電を停止し、電磁クラッチGC1を遮断状態とする。これにより、伝達部G1はモータM1の駆動力をカム部材150に伝達しなくなり、カム部材150が図11に示す原点位置に停止する。
次に、制御部C1は、ステップS107に移行してモータM1を停止した後、ステップS108に移行して定着装置100を待機状態とする。
制御部C1は、ステップS110において、画像形成装置1に対する画像形成動作の開始指令を受けると、ステップS111に移行してモータM1を正回転させる。
次に、制御部C1は、ステップS112に移行して、画像形成対象の記録シートSHの種類が封筒か否かを判断する。ステップS112において「Yes」の場合、ステップS113、S115を実行して加熱ベルトユニット102を図5に示す弱圧接位置に変位させる。
具体的には、制御部C1は、ステップS113に移行して電磁クラッチGC1にT1秒間給電し、電磁クラッチGC1をT1秒間接続状態とする。これにより、伝達部G1は、モータM1の駆動力をカム部材150に伝達してカム部材150を回転中心X150周りに第1方向R1にT1秒間回転させる。ここで、T1秒は、カム部材150が図11に示す位置から図14に示す位置まで回転する所要時間に設定されている。
そして、制御部C1は、ステップS115に移行すると電磁クラッチGC1への給電を停止し、電磁クラッチGC1を遮断状態とした後、ステップS116に移行する。これにより、カム部材150が図14に示す位置に停止する。その結果、加熱ベルトユニット102が図5に示す弱圧接位置に変位する。
その一方、制御部C1は、ステップS112において「No」の場合、ステップS114、S115を実行して加熱ベルトユニット102を図6に示す圧接位置に変位させる。
具体的には、制御部C1は、ステップS114に移行して電磁クラッチGC1にT2秒間給電し、電磁クラッチGC1をT2秒間接続状態とする。これにより、伝達部G1は、モータM1の駆動力をカム部材150に伝達してカム部材150を回転中心X150周りに第1方向R1にT2秒間回転させる。ここで、T2秒は、カム部材150が図11に示す位置から図17に示す位置まで回転する所要時間に設定されている。T2秒はT1秒よりも長い。
そして、制御部C1は、ステップS115に移行すると電磁クラッチGC1への給電を停止し、電磁クラッチGC1を遮断状態とした後、ステップS116に移行する。これにより、カム部材150が図17に示す位置に停止する。その結果、加熱ベルトユニット102が図6に示す圧接位置に変位する。
制御部C1はステップS116に移行すると、供給部20、プロセスカートリッジ7、スキャナ部8及び定着装置100を制御して、上述した画像形成動作を実行する。この際、定着装置100は、図6に示す圧接位置、又は図5に示す弱圧接位置にある加熱ベルトユニット102と、加圧ローラ101とによって記録シートSHを加熱加圧し、記録シートSH上に現像剤像を熱定着させる処理を実行する。これにより、記録シートSHの厚みに応じて、定着装置100が好適な熱定着処理を行うことができる。
次に、制御部C1は、ステップS117に移行して、排出部29によって現像剤像が定着した記録シートSHを排出トレイ2Dに排出する。
そして、制御部C1は、画像形成対象の全ての記録シートSHが排出トレイ2Dに排出されると、ステップS118に移行して、モータM1を停止する。
次に、制御部C1は、ステップS119に移行して、記録シートSHの排出後、スリープモードに移行するまでの待ち時間T3秒が経過するまで、ステップS119を繰り返す。
そして、制御部C1は、待ち時間T3秒が経過すると、ステップS121~S125を実行して加熱ベルトユニット102を図4に示す離間位置に変位させる。ステップS121~S125の処理内容は、上述したステップS103~S107と同じであるので説明は省略する。
そして、制御部C1は、ステップS125からステップS126に移行すると、画像形成装置1をスリープモードに移行させ、この処理を終了する。
制御部C1は、このような制御プログラムを実行することにより、画像形成装置1がスリープモードに移行する場合には加熱ベルトユニット102を図4に示す離間位置に変位させ、画像形成動作が開始される直前に、加熱ベルトユニット102を図5に示す弱圧接位置、又は図6に示す圧接位置に変位させる。これにより、加圧ローラ101が局所的に圧接及び加熱される期間を減らすことができるで、定着装置100の熱定着処理の品質維持や耐久性の向上を実現できる。
<変形例の制御プログラムの詳細>
図22に示す変形例の制御プログラムは、図20に示す制御プログラムのステップS119とステップS121との間にステップS131~S140を追加したものである。図22に示す変形例の制御プログラムのステップS131~S140以外にステップは、図20に示す制御プログラムと同じである。
制御部C1は、図22に示す変形例の制御プログラムを実行する場合において、ステップS119に移行すると、記録シートSHの排出後、スリープモードに移行するまでの待ち時間T3秒が経過したか否かを判断する。制御部C1は、ステップS119において「Yes」の場合、図20に示す制御プログラムと同様に、ステップS121に移行する。それ以降の説明は省略する。
その一方、制御部C1は、ステップS119において「No」の場合、ステップS131に移行して次の処理の指令を受けたか否かを判断する。制御部C1は、ステップS131において「No」の場合、ステップS119に戻って待ち時間T3秒が経過するまでステップS119、S131を繰り返す。
その一方、制御部C1は、ステップS131において「Yes」の場合、ステップS132に移行して、画像形成対象の記録シートSHの種類が封筒か否かを判断する。ステップS132において「Yes」の場合、ステップS133に移行する。その一方、ステップS132において「No」の場合、ステップS137に移行する。
ステップS132からステップS133に移行すると、制御部C1は、加熱ベルトユニット102が図6に示す圧接位置にあるか否かを判断する。この判断は、制御部C1が過去の制御記録データ、例えば、カム部材150が図11に示す原点位置にあることを検知した時点、その時点からのモータM1の正回転及び逆回転の履歴、その時点からの電磁クラッチGC1への給電履歴等を参照することによって判断される。
制御部C1は、ステップS133において「No」の場合、すなわち、加熱ベルトユニット102が図5に示す弱圧接位置、すなわち封筒に適した位置にあるので、そのままの状態で、ステップS116に移行して、画像形成動作を実行する。
その一方、制御部C1は、ステップS133において「Yes」の場合、加熱ベルトユニット102を図5に示す弱圧接位置に変位させる必要があるので、ステップS134に移行してモータM1を逆回転させる。
次に、制御部C1は、ステップS135に移行して電磁クラッチGC1にT2-T1秒間給電し、カム部材150を第2方向R2にT2-T1秒間回転させる。ここで、T2-T1秒は、カム部材150が図17に示す位置から図14に示す位置まで、又は図14に示す位置から図17に示す位置まで回転する所要時間である。
そして、制御部C1は、ステップS136に移行すると電磁クラッチGC1への給電を停止する。これにより、カム部材150が図14に示す位置に停止し、カム面155の第2周面152が保持部材130の接触面131Aに接触し、加熱ベルトユニット102が図5に示す弱圧接位置に変位する。その後、制御部C1は、ステップS116に移行して、画像形成動作を実行する。
ステップS132からステップS137に移行すると、制御部C1は、加熱ベルトユニット102が図6に示す圧接位置にあるか否かを判断する。この判断は、ステップS133で説明した通りである。
制御部C1は、ステップS137において「Yes」の場合、そのままの状態で、ステップS116に移行して、画像形成動作を実行する。
その一方、制御部C1は、ステップS137において「No」の場合、加熱ベルトユニット102を図6に示す圧接位置に変位させる必要があるので、ステップS138に移行してモータM1を正回転させる。
次に、制御部C1は、ステップS139に移行して電磁クラッチGC1にT2-T1秒間給電し、カム部材150を第1方向R1にT2-T1秒間回転させる。
そして、制御部C1は、ステップS140に移行すると電磁クラッチGC1への給電を停止する。これにより、カム部材150が図17に示す位置に停止し、カム面155が保持部材130の接触面131Aから離間し、加熱ベルトユニット102が図6に示す圧接位置に変位する。その後、制御部C1は、ステップS116に移行して、画像形成動作を実行する。
<作用効果>
実施例の定着装置100では、図20に示すように、制御部C1は、電源が入ったときに加熱ベルトユニット102が図4に示す離間位置にあることをフォトインタラプタS1が検知している場合、ステップS102で「Yes」となってステップS108の待機状態に移行し、モータM1によりカム部材150を回転させない。また、制御部C1は、電源が入ったときに加熱ベルトユニット102が図4に示す離間位置にないことをフォトインタラプタS1が検知している場合、ステップS102で「No」となってステップS103~S107を実行する。これにより、制御部C1は、モータM1によりカム部材150を第2方向R2に回転させて、加熱ベルトユニット102を図4に示す離間位置に変位させる。つまり、カム部材150は、回転中心X150からの距離が第2方向R2に向かって短くなるカム面155の一端と他端とに隣接する不使用面159を有している。そして、突然電源が切られてしまい再び電源が入ったときに様々な姿勢をとり得るカム部材150を第1方向R1に回転させると、カム部材150の不使用面159に対して保持部材130の接触面131Aが勢いよく当接し易くなるが、そのような事態の発生を抑制できる。
また、突然電源が切られてしまい再び電源が入ったときにカム部材150を第1方向R1に回転させて、カム部材150の不使用面159が保持部材130の接触面131Aに接触する状態から、カム150の第1周面151が保持部材130の接触面131Aに接触する状態に移行すると、図19に示すように、破線DL1の周辺で、カム部材150に作用するモーメントM150が急激に逆向きになる。しかしながら、本実施例では、電源が入ったときにカム部材150を第2方向R2に回転させるので、そのような事態の発生を抑制でき、伝達部G1の構成部品同士の衝突を抑制できる。具体的には、図2及び図8に示すように、伝達軸190の軸部191とカム部材150の軸穴160との嵌合部や、伝達軸190の軸部191と伝達ギヤ199との嵌合部等において、嵌合するもの同士の間の隙間が急激に無くなって、嵌合するもの同士が衝突することを抑制できる。
したがって、実施例の定着装置100では、電源が入ったときに異音が発生することを抑制できる。
また、この定着装置100では、上記構成により、図7及び図8に示す1つのフォトインタラプタS1を用いて、加熱ベルトユニット102が図4に示す離間位置にあるか否かを検知する。そして、制御部C1は、電源が入ったときに加熱ベルトユニット102が図4に示す離間位置にあることをフォトインタラプタS1が検知している場合、モータM1によりカム部材150を回転させない。これにより、この定着装置100では、検知手段の削減による製造コストの低廉化を実現しつつ、電源が入ったときに異音が発生することを抑制できる。
さらに、この定着装置100では、図7及び図8に示すように、1つのフォトインタラプタS1がカム部材150の回転姿勢に基づいて、加熱ベルトユニット102が図4に示す離間位置にあるか否かを検知する。より詳しくは、フォトインタラプタS1がカム部材150と一体回転する伝達ギヤ199の回転姿勢をリブ199R及び切欠部199Cによって検知して、カム部材150が図11に示す原点位置にあるか否かを検知し、加熱ベルトユニット102が図4に示す離間位置にあるか否かを検知する。このような構成により、検知手段の簡素化及び低廉化を実現できる。
また、この定着装置100では、図20のステップS102において、フォトインタラプタS1が第1周面151が保持部材130の接触面131Aに接触するか否かのみを検知し、第3周面153が保持部材130の接触面131Aに接触するか否かは検知しない。このため、電源が入ったときに加熱ベルトユニット102が図4に示す離間位置にないことをフォトインタラプタS1が検知している場合において、カム部材150を第2方向R2に回転させて加熱ベルトユニット102を図4に示す離間位置に変位させる際、第3周面153が保持部材130の接触面131Aに接触する状態でカム部材150が止まることを抑制できる。その結果、カム部材150を第1方向R1に回転させようとする負荷が作用する不安定な状態になることを抑制できる。
さらに、この定着装置100では、制御部C1は、電源が入ったときに加熱ベルトユニット102が図4に示す離間位置にないことをフォトインタラプタS1が検知している場合、図20のステップS103~S107に示すように、第2周面152が保持部材130の接触面131Aに接触するか否かにかかわらず、カム部材150を第2方向R2に回転させて、加熱ベルトユニット102を図4に示す離間位置に変位させる。これにより、制御部C1は、電源が入ったときに、加熱ベルトユニット102を図5に示す弱圧接位置に止めてしまうことなく、図4に示す離間位置に確実に変位させることができる。
また、この定着装置100では、図20のステップS119に示すように、制御部C1は、記録シートSH上に現像剤像を熱定着させる処理が終了した後、スリープ状態に入るまでは、カム部材150を回転させない。このため、加熱ベルトユニット102は、スリープ状態に入るまでは、熱定着処理中の位置(例えば、図6に示す圧接位置及び図5に示す弱圧接位置の一方)に維持される。このため、スリープ状態に入る前に次の処理の指令が入った場合に、カム部材150を作動させる手間を省略又は短縮することができる。
さらに、この定着装置100では、図22のステップS131~S140に示すように、制御部C1は、記録シートSH上に現像剤像を熱定着させる処理が終了した後、スリープ状態に入る前に次の処理の指令が入った場合、カム面155を保持部材130の接触面131Aから離間させ、又は第2周面152を保持部材130の接触面131Aに接触させるようにカム部材150を回転させる。これにより、次の処理のために加熱ベルトユニット102を図6に示す圧接位置又は図5に示す弱圧接位置に変位させる際、加熱ベルトユニット102を一度図4に示す離間位置に復帰させる手間を省くことができる。
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
駆動源や伝達部は実施例の構成には限定されない。例えば、定着装置は、加圧ローラを駆動するモータとは別に、カム部材を駆動するモータを備えていてもよい。また、駆動源が正回転又は停止するだけで逆回転はせず、伝達部の途中でカム部材に伝達される回転方向を切り替えて、カム部材を第1方向及び第2方向に回転させてもよい。
第1定着部材及び第2定着部材は実施例の構成には限定されない。例えば、第1定着部材が加熱ローラであり、第2定着部材が加圧ローラであって、加圧ローラが加熱ローラに対して圧接及び離間してもよい。
保持部材は揺動可能に支持される構成には限定されず、例えば直動可能に支持されてもいてもよい。図5に示す弱圧接位置は必須ではなく、省略することもできる。
カム面が保持部材の付勢方向への変位を許容する構成としては、図17に示すように、カム面155が保持部材130の接触面131Aから離間する構成には限定されず、例えば、カム面が保持部材に接触したままである構成も含まれる。
実施例では、本発明の「離間位置及び圧接位置の一方」が圧接位置であり、本発明の「離間位置及び圧接位置の他方」が離間位置であるが、その逆の構成、すなわち、「カム部材は、第1方向に回転して第2定着部材を離間位置に変位させる一方、第2方向に回転して第2定着部材を圧接位置に変位させ、検知手段は、第2定着部材が圧接位置にあるか否かを検知し、制御部は、電源が入ったときに第2定着部材が圧接位置にあることを検知手段が検知している場合、カム部材を回転させず、電源が入ったときに第2定着部材が圧接位置にないことを検知手段が検知している場合、カム部材を第2方向に回転させて、第2定着部材を圧接に変位させる」構成も、本発明に含まれる。