以下、図面を参照して本開示に係る物理量検出装置の実施形態を説明する。
図1は、本開示の一実施形態に係る物理量検出装置20を使用した電子燃料噴射方式の内燃機関制御システム1のシステム図である。エンジンシリンダ11とエンジンピストン12を備える内燃機関10の動作に基づき、吸入空気が被計測気体2としてエアクリーナ21から吸入され、たとえば主通路22である吸気ボディと、スロットルボディ23と、吸気マニホールド24を介してエンジンシリンダ11の燃焼室に導かれる。燃焼室に導かれる吸入空気である被計測気体2の物理量は、物理量検出装置20で検出され、その検出された物理量に基づいて燃料噴射弁14より燃料が供給され、被計測気体2と共に混合気の状態で燃焼室に導かれる。なお、本実施形態では、燃料噴射弁14は内燃機関の吸気ポートに設けられ、吸気ポートに噴射された燃料が被計測気体2とともに混合気を成形し、吸気弁15を介して燃焼室に導かれ、燃焼して機械エネルギを発生する。
燃焼室に導かれた燃料および空気は、燃料と空気の混合状態を成しており、点火プラグ13の火花着火により、爆発的に燃焼し、機械エネルギを発生する。燃焼後の気体は排気弁16から排気管に導かれ、排気ガス3として排気管から車外に排出される。前記燃焼室に導かれる吸入空気である被計測気体2の流量は、アクセルペダルの操作に基づいてその開度が変化するスロットルバルブ25により制御される。前記燃焼室に導かれる吸入空気の流量に基づいて燃料供給量が制御され、運転者はスロットルバルブ25の開度を制御して前記燃焼室に導かれる吸入空気の流量を制御することにより、内燃機関が発生する機械エネルギを制御することができる。
エアクリーナ21を介して取り込まれて主通路22を流れる吸入空気である被計測気体2の流量、温度、湿度、圧力などの物理量が物理量検出装置20により検出され、物理量検出装置20から吸入空気の物理量を表す電気信号が制御装置4に入力される。また、スロットルバルブ25の開度を計測するスロットル角度センサ26の出力が制御装置4に入力され、さらに内燃機関のエンジンピストン12や吸気弁15や排気弁16の位置や状態、さらに内燃機関の回転速度を計測するために、回転角度センサ17の出力が、制御装置4に入力される。排気ガス3の状態から燃料量と空気量との混合比の状態を計測するために、酸素センサ28の出力が制御装置4に入力される。
制御装置4は、物理量検出装置20の出力である吸入空気の物理量と、回転角度センサ17の出力に基づき計測された内燃機関の回転速度とに基づいて、燃料噴射量や点火時期を演算する。これらの演算結果に基づいて、燃料噴射弁14から供給される燃料量、また点火プラグ13により点火される点火時期が制御される。燃料供給量や点火時期は、実際にはさらに物理量検出装置20で検出される温度やスロットル角度の変化状態、エンジン回転速度の変化状態、酸素センサ28で計測された空燃比の状態に基づいて、きめ細かく制御されている。制御装置4は、さらに内燃機関のアイドル運転状態において、スロットルバルブ25をバイパスする空気量をアイドルエアコントロールバルブ27により制御し、アイドル運転状態での内燃機関の回転速度を制御する。
内燃機関の主要な制御量である燃料供給量や点火時期はいずれも物理量検出装置20の出力を主パラメータとして演算される。したがって、物理量検出装置20の検出精度の向上や、経時変化の抑制、信頼性の向上が、車両の制御精度の向上や信頼性の確保に関して重要である。特に近年、車両の省燃費に関する要望が非常に高く、また排気ガス浄化に関する要望が非常に高い。これらの要望に応えるには、物理量検出装置20により検出される被計測気体2である吸入空気の物理量の検出精度の向上が極めて重要である。また、物理量検出装置20が高い信頼性を維持していることも大切である。
物理量検出装置20が搭載される車両は、温度や湿度の変化が大きい環境で使用される。物理量検出装置20は、その使用環境における温度や湿度の変化への対応や、塵埃や汚染物質などへの対応も、考慮されていることが望ましい。また、物理量検出装置20は、内燃機関からの発熱の影響を受ける吸気管に装着される。このため、内燃機関の発熱が主通路22である吸気管を介して物理量検出装置20に伝わる。物理量検出装置20は、被計測気体と熱伝達を行うことにより被計測気体の流量を検出するので、外部からの熱の影響をできるだけ抑制することが重要である。
車両に搭載される物理量検出装置20は、以下で説明するように、単に発明が解決しようとする課題の欄に記載された課題を解決し、発明の効果の欄に記載された効果を奏するのみでなく、以下で説明するように、上述した色々な課題を十分に考慮し、製品として求められている色々な課題を解決し、色々な効果を奏している。物理量検出装置20が解決する具体的な課題や奏する具体的な効果は、以下の実施形態に関する記載の中で説明する。
図2は、図1に示す物理量検出装置20の正面図である。物理量検出装置20は、主通路22の通路壁に設けられた取り付け孔から主通路22の内部に挿入されて利用される。物理量検出装置20は、ハウジング201と、ハウジング201に取り付けられるカバー202とを備えている。ハウジング201は、合成樹脂製材料を射出成形することによって構成されており、カバー202は、たとえばアルミニウム合金などの導電性材料からなる板状部材によって構成されている。カバー202は、薄い板状に形成されて、広い平坦な冷却面を有している。
ハウジング201は、主通路22である吸気ボディに固定されるフランジ211と、フランジ211から突出して外部機器との電気的な接続を行うために吸気ボディから外部に露出するコネクタ212と、フランジ211から主通路22の中心に向かって突出するように延びる計測部213を有している。
フランジ211は、たとえば、所定の板厚からなる平面視略矩形状を有しており、角部に貫通孔を有している。フランジ211は、たとえば、角部の貫通孔に固定ネジが挿通されて主通路22のネジ穴に螺入されることにより、主通路22に固定される。
コネクタ212は、たとえば、その内部に4本の外部端子と、補正用端子とが設けられている。外部端子は、物理量検出装置20の計測結果である流量や温度などの物理量を出力するための端子および物理量検出装置20が動作するための直流電力を供給するための電源端子である。補正用端子は、生産された物理量検出装置20の計測を行い、それぞれの物理量検出装置20に関する補正値を求めて、物理量検出装置20内部のメモリに補正値を記憶するのに使用する端子である。
計測部213は、フランジ211から主通路22の中心方向に向かって延びる薄くて長い形状を成し、幅広な正面221と背面、および幅狭な一対の側面である上流端面223と下流端面224を有している。計測部213は、たとえば、主通路22に設けられた取り付け孔から内部に挿入され、フランジ211を主通路22に当接させてねじで主通路22に固定することで、フランジ211を介して主通路22に固定される。
計測部213は、物理量検出装置20を主通路22に取り付けた状態で、主通路22の内壁から主通路22の中心軸22aに向かって突出している。そして、正面221と背面が主通路22の中心軸22aに沿って平行に配置され、計測部213の幅狭な上流端面223と下流端面224のうち計測部213の短手方向一方側の上流端面223が主通路22の上流側を向くように配置され、計測部213の短手方向他方側の下流端面224が主通路22の下流側を向くように配置される。
計測部213の正面221は、短手方向に沿って上流端面223から下流端面224まで平坦である。一方、計測部213の背面は、下流端面224側の角部が面取りされており、かつ、短手方向中間位置から下流端面224まで移行するにしたがって正面に漸次接近する方向に傾斜している。これにより、計測部213の断面形状は、いわゆる流線型になっている。したがって、主通路22の上流から流れてきた被計測気体2を計測部213の正面221および背面に沿って円滑に下流に導くことができ、被計測気体2に対する計測部213の流体抵抗を小さくすることができる。
計測部213は、突出方向の端部が段差状に形成されており、物理量検出装置20を主通路22に取り付けた状態で、主通路22の上流側の下面226と、主通路22の下流側の整流面227とを有している。計測部213は、上流側の下面226よりも下流側の整流面227の方が突出方向に突出し、上流側の下面226と下流側の整流面227との間を結ぶ段差面である上流端面228が主通路22の上流側を向くように配置される。
詳細については後述するが、本実施形態の物理量検出装置20は、次の構成を最大の特徴としている。計測部213は、先端部213aの先端に設けられた整流面227を有している。整流面227は、上流整流面227aと、下流整流面227bと、を有している。上流整流面227aは、主通路22の上流側から下流側へ向けてフランジ211に近づくように設けられている。下流整流面227bは、上流整流面227aよりも主通路22の下流側に設けられ、主通路22の中心軸22aに沿って延びる。
また、計測部213は、フランジ211と反対側で上流側の下面226よりも突出した先端部213aの上流端面228に、吸入空気などの被計測気体2の一部を計測部213内の副通路に取り込むための入口231が開口して設けられている。そして、計測部213の先端部213aの下流端面224には、計測部213内の副通路に取り込んだ被計測気体2を主通路22に戻すための第1出口232および第2出口233が開口して設けられている。
つまり、計測部213は、主通路22における被計測気体2の流れ方向の上流側に向けて配置される第1壁部としての上流端面223を有する。また、計測部213は、第1壁部としての上流端面223よりも主通路22における被計測気体2の流れ方向の下流側の位置において被計測気体2の流れ方向の上流側に向けて配置される第2壁部として先端部213aの上流端面228を有する。この先端部213aの段差面である上流端面228に、副通路の入口231が開口している。
物理量検出装置20は、副通路の入口231が、フランジ211から主通路22の中心方向に向かって延びる計測部213の先端部213aに設けられているので、主通路22の内壁面近傍ではなく、内壁面から離れた中央部に近い部分の気体を副通路に取り込むことができる。このため、物理量検出装置20は、主通路22の内壁面から離れた部分の気体の流量を測定することができ、熱などの影響による計測精度の低下を抑制できる。
主通路22の内壁面近傍では、主通路22の温度の影響を受け易く、気体の本来の温度に対して被計測気体2の温度が異なる状態となり、主通路22内の主気体の平均的な状態と異なることになる。特に主通路22がエンジンの吸気ボディである場合は、エンジンからの熱の影響を受け、高温に維持されていることが多い。このため主通路22の内壁面近傍の気体は、主通路22の本来の気温に対して高いことが多く、計測精度を低下させる要因となる。また、主通路22の内壁面近傍では流体抵抗が大きく、主通路22の平均的な流速に比べ、流速が低くなる。このため、主通路22の内壁面近傍の気体を被計測気体2として副通路に取り込むと、主通路22の平均的な流速に対する流速の低下が計測誤差につながるおそれがある。
物理量検出装置20は、フランジ211から主通路22の中央に向かって延びる薄くて長い計測部213の先端部213aに入口231が設けられているので、主通路22の内壁面近傍の流速低下に関係する計測誤差を低減できる。また、物理量検出装置20は、フランジ211から主通路22の中央に向かって延びる計測部213の先端部213aに入口231が設けられているだけでなく、副通路の第1出口232および第2出口233も計測部213の先端部213aに設けられているので、さらに計測誤差を低減することができる。
物理量検出装置20は、計測部213が主通路22の外壁から中央に向かう軸に沿って長く伸びる形状を成しているが、上流端面223および下流端面224の幅は、正面221の幅よりも狭く、計測部213が板状の形状を成している。これにより、物理量検出装置20は、被計測気体2に対しては流体抵抗を小さい値に抑えることができる。
図3は、図2に示す物理量検出装置20のカバー202を取り外した状態を示す正面図である。なお、図3では、回路基板207を封止する封止材の図示を省略している。
計測部213には、副通路234を形成するための副通路溝250と、回路基板207を収容するための回路室235が設けられている。回路室235と副通路溝250は、計測部213の正面に凹設されており、計測部213の短手方向一方側と他方側に分かれて配置されている。回路室235は、主通路22における被計測気体2の流れ方向の上流側の位置に配置され、副通路234は、回路室235よりも主通路22における被計測気体2の流れ方向の下流側の位置に配置される。なお、主通路22における被計測気体2の流れ方向において、回路室235の上流側の壁部の上流側の面を、計測部213の上流端面223とすることで省スペース化が可能となる。
副通路溝250は、カバー202との協働により副通路234を形成する。副通路234は、計測部213の突出方向である計測部213の長手方向に沿って延在して設けられている。副通路234を形成する副通路溝250は、第1副通路溝251と、第1副通路溝251の途中で分岐する第2副通路溝252とを有している。
第1副通路溝251は、計測部213の先端部213aの上流端面228に開口する入口231と、計測部213の先端部213aの下流端面224に開口する第1出口232との間に亘って、計測部213の短手方向に沿って延在するように形成されている。入口231は、主通路22における被計測気体2の流れ方向の上流側を向くように開口されている。第1副通路溝251は、カバー202との間に、入口231から主通路22の中心軸22aに沿って延びて第1出口232に至る第1副通路234aを形成する。
第1副通路234aは、主通路22内を流れる被計測気体2を入口231から取り込み、その取り込んだ被計測気体2を第1出口232から主通路22に戻す。第1副通路234aは、入口231から主通路22内における被計測気体2の流れ方向に沿って延在し、第1出口232に接続されている。
第2副通路溝252は、第1副通路溝251の途中位置で計測部213の基端部すなわちフランジ211へ向けて分岐して、計測部213の長手方向すなわち主通路22の中心軸22aに交差する方向、たとえば中心軸22aにおおむね直交する方向に延びている。さらに、第2副通路溝252は、計測部213のフランジ211の近傍で先端部213aへ向けて、たとえばU字状または円弧状に湾曲して折り返し、計測部213の長手方向すなわち主通路22の中心軸22aに交差する方向、たとえば中心軸22aにおおむね直交する方向に延びている。
第2副通路溝252は、最終的に、計測部213の下流端面224へ向けて、たとえば円弧状に湾曲するように曲折し、第2出口233に接続されている。第2出口233は、主通路22における被計測気体2の流れ方向の下流側を向くように開口されている。第2出口233は、第1出口232とほぼ同等または若干大きい開口面積を有しており、第1出口232よりも計測部213の長手方向の基端部側に隣接した位置に形成されている。第2副通路溝252は、カバー202との間に、第1副通路234aからフランジ211へ向けて分岐して第2出口233に至る第2副通路234bを形成する。
第2副通路234bは、第1副通路234aから分岐されて流れ込んだ被計測気体2を通過させて第2出口233から主通路22に戻す。第2副通路234bは、計測部213の長手方向に沿って往復する経路を有する。より詳細には、第2副通路234bは、たとえば、直線状の上流部と、円弧状の湾曲部と、直線状の下流部とを有している。
第2副通路234bの上流部は、第1副通路234aから分岐して計測部213のフランジ211へ向けてまっすぐに延びている。第2副通路234bの湾曲部は、フランジ211の近傍で上流部に接続され、計測部213の先端部213aへ向けて折り返すように円弧状またはU字状に湾曲している。第2副通路234bの下流部は、フランジ211の近傍で湾曲部に接続され、計測部213の先端部213aへ向けてまっすぐに延び、先端部213aにおいて下流端面224へ向けて湾曲して第2出口233に接続されている。
第2副通路234bは、たとえば上流部に流量センサ205が配置されている。より詳細には、第2副通路234bの上流部において、流量センサ205は、第1副通路234aと湾曲部との間の中間部に配置されている。第2副通路234bは、上記のような湾曲形状を有することで、通路長さをより長く確保することができ、主通路内に脈動が生じた場合に、流量センサ205への影響を小さくすることができる。
上記構成によれば、計測部213の突出方向である長手方向に沿って副通路234を形成することができ、副通路234の長さを十分に長く確保できる。これにより、物理量検出装置20は、十分な長さの副通路234を備えることができる。したがって、物理量検出装置20は、流体抵抗を小さい値に抑えられるとともに高い精度で被計測気体2の物理量を計測することが可能である。
第1副通路234aは、入口231から計測部213の短手方向すなわち主通路22の中心軸22aに沿って延びて第1出口232に至るので、入口231から第1副通路234a内に侵入した塵埃などの異物をそのまま第1出口232から排出させることができる。これにより、異物が第2副通路234bに侵入するのを抑制し、第2副通路内234bに配置された流量センサ205に影響を与えるのを抑制することができる。
第1副通路234aの入口231と第1出口232は、入口231の方が第1出口232よりも大きな開口面積を有している。入口231の開口面積を第1出口232よりも大きくすることによって、第1副通路234aに流入した被計測気体2を、第1副通路234aの途中で分岐している第2副通路234bにも確実に導くことができる。
第1副通路溝251の入口231の近傍には、計測部213の長手方向における入口231の中央位置に突起部253が設けられている。突起部253は、入口231の大きさを計測部213の長手方向に二等分し、二等分された入口231のそれぞれの開口面積を第1出口232および第2出口233の開口面積よりも小さくしている。突起部253は、入口231から第1副通路234aに侵入可能な異物の大きさを第1出口232および第2出口233よりも小さいものだけに規制し、異物によって第1出口232や第2出口233が塞がれるのを防ぐことができる。
回路基板207は、計測部213の短手方向一方側に設けられた回路室235に収容されている。回路基板207は、計測部213の長手方向に沿って延在する長方形の形状を有しており、その表面には、チップパッケージ208と、圧力センサ204と、温湿度センサ206と、吸気温度センサ203とが実装されている。回路基板207は、すべてのセンサに共通する搭載部を有しており、様々なセンサの実装パターンに対して共通して利用可能である。回路基板207の表面は、たとえば、主通路22を流れる被計測気体2にほぼ平行に配置される。これにより、計測部213の薄型化が可能になり、主通路22を流れる被計測気体2の圧力損失を低減することができる。
チップパッケージ208は、回路基板207に実装されている。チップパッケージ208には、流量センサ205と、流量センサ205を駆動する電子部品であるLSIとが実装され、トランスファーモールドにより封止されている。チップパッケージ208は、第2副通路234b内に流量センサ205が配置されるように、回路基板207の長手方向の中央位置で回路基板207から第2副通路234b内にチップパッケージ208の一部が突出した状態で実装されている。
チップパッケージ208は、副通路234と回路室235との間に亘って配置されている。これにより、回路室235と副通路234が分離され、チップパッケージ208に配置された流量センサ205への流れが副通路234の形状によって律速される。そのため、副通路234内に被計測気体2の流れを阻害する障壁物がない構成となり、被計測気体2の安定的な流れを流量センサ205へ供給することができる。したがって、流量センサの流速感度、ノイズ性能や脈動特性を維持しつつ、計測部213を小型化することが可能である。
なお、流量センサ205は、必ずしもチップパッケージ208に設けられている必要はない。たとえば、回路基板207の一部を突出させて流量センサ205を副通路234に配置してもよく、回路基板207に実装された流量センサ205を板状の支持体によって副通路234に配置してもよい。
流量センサ205とLSIは同一半導体素子に一体に形成されていても、別の半導体素子として形成されていてもよい。流量センサ205は、表面の流量計測部が少なくとも露出するように樹脂によって封止されている。チップパッケージ208にLSIを設ける構造について説明したが、回路基板207にLSIを搭載する構造としてもよい。チップパッケージ208にLSIを設ける利点としては、回路基板207にLSIを搭載しなくてもよいことから、回路基板207の小型化に寄与する点である。
チップパッケージ208は、第2副通路234bの上流部における被計測気体2の流れ方向に沿って延びる凹溝を有し、この凹溝の底部に流量センサ205を備えている。チップパッケージ208の凹溝は、第2副通路234bの上流部を流れる被計測気体2の流れ方向における両端部から中央部へ向けて徐々に幅が狭まる絞り形状を有し、最も幅が狭い中央部に流量センサ205が配置されている。この絞り形状により、副通路234を流れる被計測気体2が整流され、ノイズの影響を低減することができる。
圧力センサ204は、チップパッケージ208よりも回路基板207の長手方向基端部側に実装されており、温湿度センサ206は、チップパッケージ208よりも回路基板207の長手方向先端側に実装されている。そして、回路基板207の表面には、吸気温度センサ203のリードが接続されている。吸気温度センサ203は、温湿度センサ206よりも回路基板207の長手方向先端側の位置にリードが接続され、センサ本体203bが回路基板207から長手方向にはみ出して計測部213の外部に露出した位置に配置されるように実装されている。
吸気温度センサ203は、計測部213のフランジ211側の上流端面223と、先端部213aの上流端面228との間に配置されている。吸気温度センサ203は、回路基板207に実装され、計測部213の外に露出して設けられている。吸気温度センサ203は、円柱状のセンサ本体と、センサ本体の軸方向両端部から互いに離間する方向に向かって突出する一対のリードとを有するアキシャルリード部品によって構成されている。計測部213には、吸気温度センサ203を保護するためのプロテクタ202aが設けられている。
計測部213には、その長手方向に沿って基端部側から先端部側に向かって(計測部213の突出方向に向かって)、(1)圧力センサ204、(2)流量センサ205、(3)温湿度センサ206、(4)吸気温度センサ203が順番に配置されている。圧力センサ204は、被計測気体2の圧力を検出し、流量センサ205は、被計測気体2の流量を検出する。温湿度センサ206は、被計測気体2の湿度を検出し、吸気温度センサは、被計測気体2の温度を検出する。
図4は、図3に示すカバー202を取り外した物理量検出装置20の計測部213の先端部213aを拡大した拡大図である。以下、本実施形態の物理量検出装置20の特徴部分について、詳細に説明する。
前述のように、本実施形態の物理量検出装置20は、次の構成を最大の特徴としている。計測部213は、先端部213aの先端に設けられ上流端面228から下流端面224へ向けてフランジ211に近づくように設けられた整流面227を有している。整流面227は、主通路22を流れる被計測気体2の順流時の流れ方向の上流側よりも下流側の部分がフランジ211に近く、フランジ211が取り付けられた主通路22の内壁面に近くなっている。
整流面227は、たとえば、複数の平面、角、および段差を有してもよいが、主通路22を流れる被計測気体2に対し、上流端面228から下流端面224まで連続する流線形の形状を有していることが好ましい。整流面227は、たとえば、主通路22を流れる被計測気体2の順流時の流れの方向の上流側から下流側へ向けて、接線の傾きが連続的に変化している。図4に示す正面視で、整流面227は、変曲点を持つS字状の滑らかな曲線形状を有している。
整流面227は、主通路22を流れる被計測気体2の順流時の流れの方向の上流側と下流側に、それぞれ、上流整流面227aと下流整流面227bとを有している。すなわち、上流整流面227aと下流整流面227bは、それぞれ、整流面227の上流側の部分と整流面227の下流側の部分である。ここで、「上流」と「下流」は、主通路22を流れる被計測気体2の順流時の流れの方向を基準とするものである。すなわち、図1に示す例において、相対的にエアクリーナ21に近い方が上流側であり、相対的に内燃機関10に近い方が下流側である。
上流整流面227aは、計測部213の先端部213aの上流端面228から主通路22の下流側へ向けてフランジ211に近づくように設けられている。より具体的には、上流整流面227aは、主通路22の上流側から下流側へ向けてフランジ211に近づくように主通路22の中心軸22aに対して90度未満の傾斜角度で傾斜した傾斜面227cを有している。
上流整流面227aの傾斜面227cは、たとえば、計測部213の短手方向における先端部213aの中心を通り、かつ計測部213の長手方向に平行な中心線CLよりも、上流端面228に近い位置から、下流整流面227bまで設けられている。図4に示す正面視で、傾斜面227cの上流側部分は、計測部213の突出方向へ向けて膨出した凸曲面状に設けられ、傾斜面227cの下流整流面227bの近傍の下流側部分は、上流側部分の凸曲面とは反対に凹曲面状に設けられている。
図4に示す傾斜面227cは、図1に示す主通路22の中心軸22aに対する傾斜角度が、たとえば45度以下になっている。図4に示すように、傾斜面227cが曲面である場合、傾斜面227cの傾斜角度は、傾斜面227cの接線の角度である。すなわち、図4に示す傾斜面227cは、主通路22を流れる被計測気体2の流れ方向の全体にわたって、接線の角度が45度以下になっている。
また、上流整流面227aは、上流端面228から主通路22の下流側へ向けて主通路22の中心軸22aに沿って延びる上流平面部227dを有している。上流平面部227dは、たとえば、主通路22の中心軸22aに平行な平面であり、計測部213の先端部213aの中心線CLよりも、主通路22の上流側に設けられている。
下流整流面227bは、上流整流面227aよりも主通路22の下流側に設けられ、下流端面224まで主通路22の中心軸22aに沿って延びている。下流整流面227bは、たとえば、主通路22の中心軸22aにおおむね平行な平面であり、計測部213の先端部213aの中心線CLよりも、主通路22の下流側に設けられている。
以下、本実施形態の物理量検出装置20の動作について説明する。
図1に示すように、物理量検出装置20は、たとえば、主通路22の通路壁に設けられた取り付け孔から主通路22の内部に挿入され、図2および図3に示すフランジ211が主通路22の通路壁に固定される。内燃機関10の動作に基づき、吸入空気が被計測気体2としてエアクリーナ21から吸入され、被計測気体2が主通路22を流れる。主通路22を流れる被計測気体2は、おおむね中心軸22aに沿って流れ、物理量検出装置20の計測部213に設けられた入口231から、第1副通路234aに取り込まれる。
物理量検出装置20の入口231から計測部213内に取り込まれた被計測気体2の一部は、主通路22の中心軸22aに沿って延びる第1副通路234aを流れ、第1出口232から排出されて主通路22に戻る。また、第1副通路234aを流れる被計測気体2の一部は、第1副通路234aからフランジ211へ向けて分岐する第2副通路234bに流入する。
第2副通路234bに流入した被計測気体2は、図3に示すチップパッケージ208の表面側と裏面側を流れる。このとき、チップパッケージ208に設けられた流量センサ205によって、チップパッケージ208の表面側の凹溝を流れる被計測気体2の流量が検出される。また、吸気温度センサ203によって、計測部213の入口231に取り込まれる前の被計測気体2の温度が検出され、圧力センサ204と温湿度センサ206によって、計測部213の回路室235内の被計測気体2の圧力と湿度が検出される。
第2副通路234bの上流部に流入し、チップパッケージ208を通過した被計測気体2は、円弧状またはU字状の湾曲部で計測部213の先端部213aへ向けて折り返され、第2副通路234bの下流部を通過して第2出口233から排出されて主通路22へ戻る。このような構成の物理量検出装置20において、仮に計測部213の先端部213aに整流面227を有しない場合、次のような問題が生じるおそれがある。
物理量検出装置20の入口231から計測部213内に取り込まれ、第1副通路234aを流れる被計測気体2は、第2副通路234bの下流側の壁面252aに強く押し付けられる。すると、第2副通路234bの横断面において、被計測気体2の最大流速が上昇するおそれがある。第1副通路234aから第2副通路234bに流入する塵埃の量は、第2副通路234bの横断面における被計測気体2の最大流速と流量に比例する。そのため、第2副通路234bの横断面における被計測気体2の最大流速が上昇すると、第1副通路234aから第2副通路234bへ流入する塵埃が増加するおそれがある。その結果、チップパッケージ208や流量センサ205に対する塵埃の堆積が短期間に進行し、流量センサ205の測定精度が短期間で低下するおそれがある。
これに対し、本実施形態の物理量検出装置20は、主通路22を流れる被計測気体2の物理量を検出する装置であって、以下の構成を特徴としている。
物理量検出装置20は、主通路22を流れる被計測気体2の物理量を検出する装置である。物理量検出装置20は、物理量を検出するセンサと、そのセンサを収容するハウジング201と、を備えている。ハウジング201は、主通路22に固定されるフランジ211と、そのフランジ211から主通路22の中心方向へ延びる計測部213と、を有している。計測部213は、フランジ211と反対側の先端部213aに設けられて主通路22の中心軸22aに沿って延びる第1副通路234aと、その第1副通路234aからフランジ211へ向けて分岐してセンサが配置された第2副通路234bと、先端部213aの先端に設けられた整流面227と、を有している。そして、整流面227は、主通路22の上流側から下流側へ向けてフランジ211に近づくように設けられた上流整流面227aと、その上流整流面227aよりも主通路22の下流側に設けられ、主通路22の中心軸22aに沿って延びる下流整流面227bと、を有する。
より詳細には、物理量検出装置20は、物理量を検出するセンサが実装された回路基板207と、その回路基板207を収容するハウジング201と、を備えている。ハウジング201は、前述のように、主通路22に固定されるフランジ211と、フランジ211から主通路22の中心方向へ延びる計測部213と、を有している。計測部213は、入口231と、第1出口232と、第2出口233と、第1副通路234aと、第2副通路234bと、整流面227と、を有している。入口231は、フランジ211と反対側の先端部213aの上流端面228に設けられている。第1出口232および第2出口233は、先端部213aの下流端面224に設けられている。第1副通路234aは、入口231から主通路22の中心軸22aに沿って延びて第1出口232に至る。第2副通路234bは、第1副通路234aからフランジ211へ向けて分岐して第2出口233に至る。整流面227は、先端部213aの先端に設けられ、上流整流面227aと、下流整流面227bと、を有している。上流整流面227aは、上流端面228から主通路22の下流側へ向けてフランジ211に近づくように設けられている。下流整流面227bは、上流整流面227aよりも主通路22の下流側に設けられ、下流端面224まで主通路22の中心軸22aに沿って延びている。
このような構成により、主通路22を流れる被計測気体2は、図4に示すように、整流面227に沿って流れる過程で、上流整流面227aの形状に沿って上流端面228から主通路22の下流側へ向けてフランジ211に近づくように流れ方向が変化する。この被計測気体2の流れ方向の変化、すなわち被計測気体2の偏向は、主通路22の径方向の広い範囲にわたって被計測気体2の流れに影響を及ぼすだけでなく、整流面227の上流側を流れる被計測気体2にも影響を及ぼす。すなわち、主通路22における被計測気体2の流れが全体的にフランジ211に近づくようにシフトする。
その結果、第1副通路234aから分岐した第2副通路234bの壁面であって第1副通路234aの下流側に位置する壁面252aに対し、第1副通路234aを流れる被計測気体2を従来よりも緩やかに衝突させることができる。換言すると、第2副通路234bの壁面252aに対し、被計測気体2の流れが押し付けられるのを抑制し、第2副通路234bの横断面内における被計測気体2の最大流速を低下させることができる。これにより、第1副通路234aから第2副通路234bに流入する塵埃の量が減少する。
また、整流面227は、下流整流面227bを有し、下流整流面227bは、上流整流面227aよりも主通路22の下流側に設けられ、下流端面224まで主通路22の中心軸22aに沿って延びている。この構成により、主通路22を流れる被計測気体2は、上流整流面227aの形状に沿って上流端面228から主通路22の下流側へ向けてフランジ211に近づくように流れ方向が変化し、その後、下流整流面227bに沿って流れる。下流整流面227bに沿って流れた被計測気体2の流れの向きは、主通路22の中心軸に沿う方向に修正される。
その結果、第1副通路234aを流れ、第1出口232から排出されて主通路22に戻る被計測気体2の流れの方向が、主通路22の中心軸22aに沿う方向から、物理量検出装置20のフランジ211に向けて変化するのを抑制することができる。第1出口232から排出される被計測気体2の流れの方向が、主通路22の中心軸22aに沿う方向から変化するのを抑制することで、第2副通路234bの横断面において、被計測気体2の流量の増加が抑制される。これにより、第1副通路234aから第2副通路234bに流入する塵埃の増加が抑制される。
したがって、本実施形態によれば、チップパッケージ208や流量センサ205に対する塵埃の堆積が抑制され、流量センサ205の測定精度を長期にわたって高精度に維持することができ、耐汚損性を向上させることが可能な物理量検出装置20を提供することができる。
また、本実施形態の物理量検出装置20において、上流整流面227aは、主通路22の上流側から下流側へ向けてフランジ211に近づくように主通路22の中心軸22aに対して90度未満の傾斜角度で傾斜した傾斜面227cを有している。
この構成により、上流整流面227aの形状に沿って上流端面228から主通路22の下流側へ向けてフランジ211に近づくように流れ方向が変化する被計測気体2に剥離が発生するのを抑制することができる。その結果、前述のように、第2副通路234bの横断面において、より確実に被計測気体2の最大流速を低下させるとともに被計測気体2の流量の増加を抑制し、第1副通路234aから第2副通路234bに流入する塵埃の量をより確実に減少させることができる。
また、本実施形態の物理量検出装置20において、主通路22の中心軸22aに対する傾斜面227cの傾斜角度は、45度以下である。
この構成により、上流整流面227aの形状に沿って上流端面228から主通路22の下流側へ向けてフランジ211に近づくように流れ方向が変化する被計測気体2に剥離が発生するのをより確実に抑制することができる。その結果、前述のように、第2副通路234bの横断面において、被計測気体2の最大流速をさらに確実に低下させるとともに被計測気体2の流量を減少させ、第1副通路234aから第2副通路234bに流入する塵埃の量をさらに確実に減少させることができる。
また、本実施形態の物理量検出装置20において、上流整流面227aは、主通路22の上流側を向く計測部213の先端部213aの上流端面228から主通路22の下流側へ向けて主通路22の中心軸22aに沿って延びる上流平面部227dを有している。
この構成により、主通路22において物理量検出装置20よりも上流側から主通路22の中心軸22aに沿って流れる被計測気体2が、整流面227の上流平面部227dに沿って流れやすくなる。その結果、上流平面部227dに沿って流れたより多くの被計測気体2が、傾斜面227cに沿って流れてフランジ211に近づくように流れ方向が変化する。これにより、第2副通路234bの横断面において、被計測気体2の最大流速をより確実に低下させ、第1副通路234aから第2副通路234bに流入する塵埃の量をさらに確実に減少させることができる。
また、本実施形態の物理量検出装置20において、整流面227は、主通路22の上流側を向く計測部213の先端部213aの上流端面228から、主通路22の下流側を向く計測部213の先端部213aの下流端面224まで連続する流線形の形状を有している。
この構成により、主通路22において物理量検出装置20よりも上流側から主通路22の中心軸22aに沿って流れる被計測気体2が、整流面227に沿って流れやすくなる。その結果、整流面227に沿って流れたより多くの被計測気体2の流れ方向がフランジ211に近づくように変化する。これにより、第2副通路234bの横断面において、被計測気体2の最大流速をより確実に低下させ、第1副通路234aから第2副通路234bに流入する塵埃の量をさらに確実に減少させることができる。
以上説明したように、本実施形態によれば、第1副通路234aから分岐した第2副通路234bに流入する塵埃を減少させ、耐汚損性を向上させることが可能な物理量検出装置20を提供することができる。なお、本開示に係る物理量検出装置は、前述の実施形態に係る物理量検出装置20の構成に限定されない。以下、前述の実施形態に係る物理量検出装置20のいくつかの変形例について説明する。
図5は、図4に示す物理量検出装置20の変形例を示す拡大図である。図5に示す変形例において、整流面227は、主通路22の上流側を向く計測部213の先端部213aの上流端面228から、主通路22の下流側を向く計測部213の先端部213aの下流端面224まで、連続する複数の平面によって構成されている。より具体的には、整流面227は、平面である上流平面部227dと、平面である傾斜面227cと、平面である下流整流面227bとの三つの連続する平面によって構成されている。なお、平面の数は特に限定されず、四つ以上の連続する平面によって整流面227を構成してもよい。この変形例においても、前述の実施形態に係る物理量検出装置20と同様の効果を奏することができる。
図6は、図4に示す物理量検出装置20の別の変形例を示す拡大図である。図6に示す変形例において、整流面227は、計測部213の先端部213aの上流端面228から下流端面224まで連続する二つの平面によって構成されている。より具体的には、整流面227は、平面である傾斜面227cからなる上流整流面227aと、平面である下流整流面227bとの二つの連続する平面によって構成されている。この変形例においても、前述の実施形態に係る物理量検出装置20と同様の効果を奏することができる。
図7は、図4に示す物理量検出装置20の別の変形例を示す拡大図である。図7に示す変形例において、整流面227は、曲面である傾斜面227cからなる上流整流面227aと、平面である下流整流面227bとによって構成されている。傾斜面227cは、図7に示す正面視において、曲率が一定の曲面であり、円弧状の部分円筒面である。また、整流面227は、計測部213の先端部213aの上流端面228から下流端面224まで連続する流線形の形状を有している。この変形例においても、前述の実施形態に係る物理量検出装置20と同様の効果を奏することができる。
以上、図面を用いて本開示に係る物理量検出装置の実施形態を詳述してきたが、具体的な構成は前述の実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本開示に含まれるものである。