以下、実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
〔基板処理システム〕
基板処理システム1は、基板に対し、感光性被膜の形成、当該感光性被膜の露光、及び当該感光性被膜の現像を施すシステムである。処理対象の基板は、例えば半導体のウェハWである。感光性被膜は、例えばレジスト膜である。
基板処理システム1は、塗布・現像装置2と露光装置3とを備える。露光装置3は、ウェハW上に形成されたレジスト膜の露光処理を行う。具体的には、液浸露光等の方法によりレジスト膜の露光対象部分にエネルギー線を照射する。塗布・現像装置2は、露光装置3による露光処理の前に、ウェハWの表面にレジスト膜を形成する処理を行い、露光処理後にレジスト膜の現像処理を行う。
(塗布・現像装置)
以下、基板処理装置の一例として、塗布・現像装置2の構成を説明する。図1~図3に示すように、塗布・現像装置2は、キャリアブロック4と、処理ブロック5と、インタフェースブロック6と、コントローラ100とを備える。
キャリアブロック4は、塗布・現像装置2内へのウェハWの導入及び塗布・現像装置2内からのウェハWの導出を行う。例えばキャリアブロック4は、ウェハW用の複数のキャリア11を支持可能であり、受け渡しアームA1を内蔵している。キャリア11は、例えば円形の複数枚のウェハWを収容する。受け渡しアームA1は、キャリア11からウェハWを取り出して処理ブロック5に渡し、処理ブロック5からウェハWを受け取ってキャリア11内に戻す。
処理ブロック5は、複数の処理モジュール14,15,16,17を有する。図2及び図3に示すように、処理モジュール14,15,16,17は、複数の液処理ユニットU1と、複数の熱処理ユニットU2と、これらのユニットにウェハWを搬送する搬送アームA3とを内蔵している。処理モジュール17は、液処理ユニットU1及び熱処理ユニットU2を経ずにウェハWを搬送する直接搬送アームA6を更に内蔵している。液処理ユニットU1は、処理液をウェハWの表面に塗布する。熱処理ユニットU2は、例えば熱板及び冷却板を内蔵しており、熱板によりウェハWを加熱し、加熱後のウェハWを冷却板により冷却して熱処理を行う。
処理モジュール14は、液処理ユニットU1及び熱処理ユニットU2によりウェハWの表面上に下層膜を形成する。処理モジュール14の液処理ユニットU1は、下層膜形成用の処理液をウェハW上に塗布する。処理モジュール14の熱処理ユニットU2は、下層膜の形成に伴う各種熱処理を行う。
処理モジュール15は、液処理ユニットU1及び熱処理ユニットU2により下層膜上にレジスト膜を形成する。処理モジュール15の液処理ユニットU1は、レジスト膜形成用の処理液(塗布液)を下層膜の上に塗布する。処理モジュール15の熱処理ユニットU2は、レジスト膜の形成に伴う各種熱処理を行う。処理モジュール15の液処理ユニットU1についての詳細は後述する。
処理モジュール16は、液処理ユニットU1及び熱処理ユニットU2によりレジスト膜上に上層膜を形成する。処理モジュール16の液処理ユニットU1は、上層膜形成用の処理液をレジスト膜の上に塗布する。処理モジュール16の熱処理ユニットU2は、上層膜の形成に伴う各種熱処理を行う。
処理モジュール17は、液処理ユニットU1及び熱処理ユニットU2により、露光後のレジスト膜の現像処理を行う。処理モジュール17の液処理ユニットU1は、露光済みのウェハWの表面上に現像用の処理液(現像液)を塗布した後、これを洗浄用の処理液(リンス液)により洗い流すことで、レジスト膜の現像処理を行う。処理モジュール17の熱処理ユニットU2は、現像処理に伴う各種熱処理を行う。熱処理の具体例としては、現像処理前の加熱処理(PEB:Post Exposure Bake)、現像処理後の加熱処理(PB:Post Bake)等が挙げられる。
処理ブロック5内におけるキャリアブロック4側には棚ユニットU10が設けられている。棚ユニットU10は、上下方向に並ぶ複数のセルに区画されている。棚ユニットU10の近傍には昇降アームA7が設けられている。昇降アームA7は、棚ユニットU10のセル同士の間でウェハWを昇降させる。処理ブロック5内におけるインタフェースブロック6側には棚ユニットU11が設けられている。棚ユニットU11は、上下方向に並ぶ複数のセルに区画されている。
インタフェースブロック6は、露光装置3との間でウェハWの受け渡しを行う。例えばインタフェースブロック6は、受け渡しアームA8を内蔵しており、露光装置3に接続される。受け渡しアームA8は、棚ユニットU11に配置されたウェハWを露光装置3に渡し、露光装置3からウェハWを受け取って棚ユニットU11に戻す。
コントローラ100は、例えば以下の手順で塗布・現像処理を実行するように塗布・現像装置2を制御する。
まずコントローラ100は、キャリア11内のウェハWを棚ユニットU10に搬送するように受け渡しアームA1を制御し、このウェハWを処理モジュール14用のセルに配置するように昇降アームA7を制御する。
次にコントローラ100は、棚ユニットU10のウェハWを処理モジュール14内の液処理ユニットU1及び熱処理ユニットU2に搬送するように搬送アームA3を制御し、このウェハWの表面上に下層膜を形成するように液処理ユニットU1及び熱処理ユニットU2を制御する。その後コントローラ100は、下層膜が形成されたウェハWを棚ユニットU10に戻すように搬送アームA3を制御し、このウェハWを処理モジュール15用のセルに配置するように昇降アームA7を制御する。
次にコントローラ100は、棚ユニットU10のウェハWを処理モジュール15内の液処理ユニットU1及び熱処理ユニットU2に搬送するように搬送アームA3を制御し、このウェハWの下層膜上にレジスト膜を形成するように液処理ユニットU1及び熱処理ユニットU2を制御する。その後コントローラ100は、ウェハWを棚ユニットU10に戻すように搬送アームA3を制御し、このウェハWを処理モジュール16用のセルに配置するように昇降アームA7を制御する。
次にコントローラ100は、棚ユニットU10のウェハWを処理モジュール16内の各ユニットに搬送するように搬送アームA3を制御し、このウェハWのレジスト膜上に上層膜を形成するように液処理ユニットU1及び熱処理ユニットU2を制御する。その後コントローラ100は、ウェハWを棚ユニットU10に戻すように搬送アームA3を制御し、このウェハWを処理モジュール17用のセルに配置するように昇降アームA7を制御する。
次にコントローラ100は、棚ユニットU10のウェハWを棚ユニットU11に搬送するように直接搬送アームA6を制御し、このウェハWを露光装置3に送り出すように受け渡しアームA8を制御する。その後コントローラ100は、露光処理が施されたウェハWを露光装置3から受け入れて棚ユニットU11に戻すように受け渡しアームA8を制御する。
次にコントローラ100は、棚ユニットU11のウェハWを処理モジュール17内の各ユニットに搬送するように搬送アームA3を制御し、このウェハWのレジスト膜に現像処理を施すように液処理ユニットU1及び熱処理ユニットU2を制御する。その後コントローラ100は、ウェハWを棚ユニットU10に戻すように搬送アームA3を制御し、このウェハWをキャリア11内に戻すように昇降アームA7及び受け渡しアームA1を制御する。以上で塗布・現像処理が完了する。
なお、基板処理装置の具体的な構成は、以上に例示した塗布・現像装置2の構成に限られない。基板処理装置は、被膜形成用の液処理ユニットU1(処理モジュール14,15,16の液処理ユニットU1)と、これを制御可能なコントローラ100とを備えていればどのようなものであってもよい。
〔熱処理ユニット〕
続いて、処理モジュール15の熱処理ユニットU2について図4~図13を参照して詳細に説明する。図4に示すように、熱処理ユニットU2は、筐体90と、温度調整機構50と、加熱機構30と、コントローラ100(制御部)とを有する。
筐体90は、加熱機構30及び温度調整機構50を収容する処理容器である。筐体90の側壁にはウェハWの搬入口91が開口されている。また、筐体90内には、筐体90内をウェハWの移動領域である上方領域と、下方領域とに区画する床板92が設けられている。
温度調整機構50は、熱板34と外部の搬送アームA3(図3参照)との間でウェハWを受け渡す(搬送する)と共に、ウェハWの温度を所定温度に調整する構成である。温度調整機構50は、温度調整プレート51と、連結ブラケット52とを有する。
温度調整プレート51は、載置されたウェハWの温度調整を行うプレートであり、詳細には、加熱機構30の熱板34により加熱されたウェハWを載置し該ウェハWを所定温度に冷却するプレートである。本実施形態では、温度調整プレート51は、略円盤状に形成されている。温度調整プレート51は、例えば熱伝導率の高い、アルミ、銀、又は銅等の金属によって構成されており、熱による変形を防止する観点等から同一の材料で構成されることが好ましい。温度調整プレート51の内部には、冷却水及び(又は)冷却気体を流通させるための冷却流路(不図示)が形成されている。
連結ブラケット52は、温度調整プレート51に連結されると共に、コントローラ100によって制御される駆動機構53によって駆動させられ、筐体90内を移動する。より詳細には、連結ブラケット52は、筐体90の搬入口91から加熱機構30の近傍にまで延びるガイドレール(不図示)に沿って移動可能とされている。連結ブラケット52がガイドレール(不図示)に沿って移動することにより、温度調整プレート51が搬入口91から加熱機構30まで移動可能となっている。連結ブラケット52は、例えば熱伝導率の高い、アルミ、銀、又は銅等の金属によって構成されている。
加熱機構30は、ウェハWを加熱処理する構成である。加熱機構30は、支持台31と、天板部32と、昇降機構33と、支持ピン35と、昇降機構36と、熱板34と、複数の温度センサ80(位置検出部)と、複数の昇降機構60と、を有する。
支持台31は、中央部分に凹部が形成された円筒形状を呈する部材である。支持台31は、熱板34を支持する。天板部32は、支持台31と同程度の直径の円板状の部材である。天板部32は、例えば筐体90の天井部分に支持された状態で、支持台31と隙間を介して対向する。天板部32の上部には排気ダクト37が接続されている。排気ダクト37は、チャンバ内の排気を行う。
昇降機構33は、コントローラ100の制御に応じて天板部32を昇降させる構成である。昇降機構33によって天板部32が上昇させられることにより、ウェハWの加熱処理を行う空間であるチャンバが開かれた状態となり、天板部32が下降させられることにより、チャンバが閉じられた状態となる。
支持ピン35は、支持台31及び熱板34を貫通するように延びウェハWを下方から支持する部材である。支持ピン35は、上下方向に昇降することにより、ウェハWを所定の位置に配置する。支持ピン35は、ウェハWを搬送する温度調整プレート51との間でウェハWの、受け渡しを行う構成である。支持ピン35は、例えば周方向等間隔に3本設けられている。昇降機構36は、コントローラ100の制御に応じて支持ピン35を昇降させる構成である。
熱板34は、支持台31の凹部に嵌合されると共に、ウェハWを載置し該ウェハWを加熱する。熱板34は、ウェハWを加熱処理するためのヒータを有している。当該ヒータは例えば抵抗発熱体から構成されている。熱板34は、図5に示すように、複数の分割片41に分割されている。各分割片41は、熱板34を厚さ方向に切断することにより形成されており、隣り合う分割片41との間には隙間(不図示)が形成されている。図5に示す例では、熱板34の中央に平面視円形の分割片41が形成されており、該円形の分割片41の外周を囲う領域が略均等に4分割されて4つの分割片41,41,41,41が形成されている。
温度センサ80は、ウェハWが熱板34に載置される際又は載置状態における温度変化を検出することにより、熱板34に載置されるウェハWの位置に関する位置情報を検出する。温度センサ80は、例えば熱板34及びウェハW間に空間(エア層)を形成するためのギャップピンとしての機能を有するものであってもよい。温度センサ80は、検出した温度情報(すなわちウェハWの位置情報)をコントローラ100に送信する。温度センサ80は、図5に示すように、1つの分割片41(詳細には分割片41の中央)に対応して1つ設けられてもよい。これにより、各分割片41に対向するウェハWの領域の位置を検出することができる。
温度センサ80は、図9(a)及び図9(b)に示すように、1つの分割片41に対応して複数設けられていてもよい。これにより、分割片41に対するウェハWの位置をより詳細に検出することができる。図9(a)に示す例では、中央の分割片41に対して3つの温度センサ83が設けられており、外周の4つの分割片41に対してそれぞれ2つの温度センサ81,82が設けられている。温度センサ83は、例えば中央の分割片41を三等分した各領域の中央部分に設けられている。温度センサ81は、例えば外周の4つの分割片41それぞれの中央部分に設けられている。温度センサ82は、例えば外周の4つの分割片41における周方向一端側に設けられている。温度センサ82は、対応する分割片41における周方向一端側におけるウェハWの位置情報を検出することができるだけでなく、隣り合う分割片41における周方向他端側におけるウェハWの位置情報を検出することができる。すなわち、温度センサ82は、周方向において隣り合う分割片41が互いに連続する領域EwにおけるウェハWの位置情報を検出することができる(図9(a)参照)。このように、温度センサ82による検出結果が隣り合う分割片41におけるウェハWの位置情報としても用いられることにより、温度センサ80の数を最小限に抑えながら、分割片41に対するウェハWの位置を詳細に検出することができる。また、図9(b)に示す例では、中央の分割片41に対する温度センサ83が1つのみ設けられている。この場合、例えば外周の4つの分割片41それぞれの中央部分に設けられた温度センサ81は、対応する分割片41におけるウェハWの位置情報を検出するだけでなく、中央の分割片41における外周側の領域におけるウェハWの位置情報を検出するセンサとして用いられる。すなわち、温度センサ81は、径方向において隣り合う分割片41が互いに連続する領域Ecの位置情報を検出することができる(図9(b)参照)。
昇降機構60は、複数の分割片41に対応して設けられ、各分割片41を昇降させる。昇降機構60は、図6に示すように、駆動部61と、支持部62とを有する。支持部62は、その上端において分割片41を支持している。駆動部61は、コントローラ100の制御に応じて支持部62を上下に昇降(伸縮)させる。
昇降機構60は、例えば1つの分割片41に対応して1つ設けられている。例えば図7(a)に示すように、ウェハWの一部の領域と分割片41(図7(a)における右側の分割片41)とが大きく離間している場合において、昇降機構60の駆動部61が、コントローラ100の制御に応じて支持部62を上昇させる(伸ばす)ことにより、図7(b)に示すように、ウェハWの各領域と各分割片41との離間距離を所望の距離とすることができる。
昇降機構60は、図10に示すように、分割片41の傾きを調整する傾き調整機構70を有していてもよい。傾き調整機構70は、1つの分割片41の第1領域78を昇降させる第1昇降部71と、該分割片41における第1領域78とは異なる第2領域79を昇降させる第2昇降部72と、を有する。第1昇降部71及び第2昇降部72は、互いに同様の構成とされており、上述した駆動部61及び支持部62を有している。昇降機構60が傾き調整機構70を有し、傾き調整機構70の第1昇降部71及び第2昇降部72それぞれが同一の分割片41における異なる領域を昇降させることにより、同一の分割片41に対応するウェハWの領域内の傾斜や凸凹に合わせて分割片41を配置することができる。例えば図10に示す例では、ウェハWの反りに応じて、分割片41の第2領域79をウェハWに接近させている。なお、同一の分割片41における異なる領域であるとして説明した上記第1領域78及び第2領域79は、例えば、図11に示すように、熱板34を平面視した場合に、熱板34の中心から外側に向かう方向(すなわち径方向)に並んで配置されている。
コントローラ100は、図4に示すように、機能モジュールとして、チャンバ開閉制御部101と、支持ピン昇降制御部102と、プレート移動制御部103と、位置取得部104と、昇降制御部105とを有する。
チャンバ開閉制御部101は、天板部32の昇降によってチャンバが開閉するように、昇降機構33を制御する。
支持ピン昇降制御部102は、支持ピン35の昇降によって温度調整プレート51と支持ピン35との間でウェハWの受け渡しが行われるように、昇降機構36を制御する。また、支持ピン昇降制御部102は、ウェハWを支持する支持ピン35が降下し支持ピン35から熱板34にウェハWが載置されるように、昇降機構36を制御する。なお、支持ピン昇降制御部102は、ウェハWを載置する際の支持ピン35の位置データ(Z軸ポジションデータ)を取得可能とされている。
プレート移動制御部103は、温度調整プレート51が筐体90内を移動するように、駆動機構53を制御する。
位置取得部104は、各分割片41に対応して設けられた温度センサ80から位置情報を取得する。
昇降制御部105は、位置取得部104によって取得された位置情報に基づき、各分割片41とウェハWとの距離のばらつきが小さくなるように昇降機構60を制御する。昇降制御部105は、例えばウェハWが熱板34に載置される際又は載置状態におけるウェハWの位置情報に基づき、昇降機構60を制御する。例えば図7(a)に示す例では、図7(a)の左側の分割片41に設けられた温度センサ80によって検出された位置情報においてウェハWと分割片41とが近接していることが示されるのに対して、図7(a)の右側の分割片41に設けられた温度センサ80によって検出された位置情報においてはウェハWと分割片41とが大きく離間していることが示される。この場合、昇降制御部105は、各分割片41とウェハWの距離のばらつきが小さくなるように、図7(b)に示すように、右側の昇降機構60の駆動部61を制御することにより、支持部62を上昇させ、右側の分割片41をウェハWに近接させる。
昇降制御部105は、位置取得部104によって取得された位置情報に基づき、各分割片41とウェハWとの距離が所定値以下となった場合に、熱板34に対するウェハWの載置が完了したと判定し、昇降機構60に対する制御を終了する。例えば上述した図7(b)に示す例では、昇降制御部105は、右側の昇降機構60に対する制御(分割片41を上昇させる制御)を行った後に、位置取得部104によって取得された位置情報に基づき、全ての分割片41についてウェハWとの離間距離が所定値以下となっているか否かを判定し、所定値以下となっている場合に昇降機構60に対する制御を終了する。なお、分割片41とウェハWとの距離が所定値以下となった状態とは、例えば、分割片41上の温度センサ80がウェハWの裏面と接触した状態である。
例えば1つの分割片41の領域が広い場合等において、図8(a)に示すように1つの分割片41に対して1つの温度センサ80しか設けられていない場合には、温度センサ80によって位置情報が検出される領域E1と、領域E1よりもウェハWとの離間距離が短い領域E2と、領域E1よりもウェハWとの離間距離が長い領域E3とが存在することとなる。この場合、領域E1の情報のみに基づいて昇降制御部105による昇降機構60の制御が行われると、図8(a)に示すように、昇降制御前においてウェハWとの離間距離が最も短かった領域E2において分割片41が直接ウェハWの裏面に接触してしまうおそれがある。この点、図8(b)に示すように1つの分割片41に対して複数の温度センサ80が設けられている場合には、昇降制御部105は、当該複数の温度センサ80の情報に基づき昇降機構60を制御することができるため、図8(a)に示すようなウェハWと分割片41との接触(例えば領域E2における接触)を防止することができる。
昇降制御部105は、各分割片41について、対応する温度センサ80に検出された位置情報と、隣り合う他の分割片41に対応する温度センサ80に検出された位置情報とに基づき、対応する昇降機構60を制御する。ウェハWの反りは、急峻な段状ではなく緩やかなカーブを描くことが多い。このため、例えば隣り合う2つの分割片41がある場合に、一方の分割片41に対応する温度センサ80であっても、当該温度センサ80が他方の分割片41に近接した位置に設けられている場合等においては、当該温度センサ80の位置情報を、他方の分割片41に関する昇降制御の際に用いることができる。すなわち、例えば図8(b)に示す例において、昇降制御部105は、左側の分割片41の昇降制御において、左側の分割片41に設けられた温度センサ80の位置情報だけでなく、隣り合う右側の分割片41に設けられた温度センサ80(詳細には、右側の分割片41に設けられた温度センサ80のうち左寄りの温度センサ80)の位置情報を用いて、対応する昇降機構60を制御してもよい。
昇降制御部105は、ウェハWが熱板34に載置される際の載置動作における位置情報に基づき、ウェハWの凸凹傾向(反り傾向)を推定する。昇降制御部105は、ウェハWが支持ピン35から熱板34に載置される際において、位置取得部104から位置情報(温度センサが検出した位置情報)を取得すると共に、支持ピン昇降制御部102から支持ピン35の位置データを取得する。昇降制御部105は、これらの情報から、支持ピン35がどの位置である場合に、どの分割片41がウェハWに近接したか(例えばどの分割片41の温度センサ80がウェハWの裏面に接触したか)を把握する。昇降制御部105は、予め、ウェハWに目立った反りがない場合(凹凸がない場合)における、位置情報と支持ピン35の位置データとの関係(正解データ)を取得している。そして、昇降制御部105は、取得した位置情報及び支持ピン35の位置データと正解データとを比較することにより、ウェハWの凸凹傾向(反り傾向)を推定する。ウェハWの主な凸凹傾向(反り傾向)は、平面視した場合の外側から中心に向かって凸の反り形状(逆お椀型)か、又は、外側から中心に向かって凹の反り形状(お椀型)となることが一般的である。このため、昇降制御部105は、正解データと比べて、支持ピン35が高い状態(すなわち載置動作における早い段階)で中央部分の分割片41がウェハWに近接している場合には、当該ウェハWをお椀型と推定でき、支持ピン35が高い状態(すなわち載置動作における早い段階)で外側部分の分割片41がウェハWに近接している場合には、当該ウェハWを逆お椀型と推定することができる。
例えば図12に示す例では、逆お椀型のウェハWを分割片41に載置している。支持ピン35はウェハWの中央部分を支持するため、載置前の状態においてウェハWは外側が通常位置WL(反りがないウェハWを支持した場合の位置)よりも下方に垂れ下がった状態となっている。この状態から、支持ピン35が下降すると、ウェハWの外側が最初に直下の分割片41,41に近接することとなる。このような情報に基づき、昇降制御部105は、ウェハWの凸凹傾向(図12に示す例では逆お椀型)を推定することができる。なお、ウェハWがお椀型である場合においてウェハWの中央部分が直下の分割片41に近接した場合、当該ウェハWがお椀型であるのか或いは平坦(目立った反りなし)であるのかを判別できないおそれがある。このため、図12に示すように、ウェハWの中央直下の分割片41は、他の分割片41よりも少し下方にずらして配置されることが好ましい。
なお、昇降制御部105は、ウェハWが熱板34に載置される際の載置動作における位置情報に基づき、ウェハWの凸凹傾向(反り傾向)を推定するとして説明したが、これに限定されず、例えばウェハWを熱板34に載置する処理とは別に、例えば別装置によって測定されたウェハWの凸凹傾向を単に取得するものであってもよい。
コントローラ100は、一つ又は複数の制御用コンピュータにより構成される。例えばコントローラ100は、図13に示す回路120を有する。回路120は、一つ又は複数のプロセッサ121と、メモリ122と、ストレージ123と、入出力ポート124と、タイマー125とを有する。
入出力ポート124は、昇降機構33、昇降機構36、駆動機構53、昇降機構60、及び温度センサ80との間で電気信号の入出力を行う。タイマー125は、例えば一定周期の基準パルスをカウントすることで経過時間を計測する。ストレージ123は、例えばハードディスク等、コンピュータによって読み取り可能な記録媒体を有する。記録媒体は、後述の基板処理手順を実行させるためのプログラムを記録している。記録媒体は、不揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク及び光ディスク等の取り出し可能な媒体であってもよい。メモリ122は、ストレージ123の記録媒体からロードしたプログラム及びプロセッサ121による演算結果を一時的に記録する。プロセッサ121は、メモリ122と協働して上記プログラムを実行することで、上述した各機能モジュールを構成する。
なお、コントローラ100のハードウェア構成は、必ずしもプログラムにより各機能モジュールを構成するものに限られない。例えばコントローラ100の各機能モジュールは、専用の論理回路又はこれを集積したASIC(Application Specific Integrated Circuit)により構成されていてもよい。
〔基板処理手順〕
次に、基板処理方法の一例として、コントローラ100の制御に応じて熱処理ユニットU2が実行する基板処理手順を、図14及び図15を参照して説明する。図14に示すフローチャートは、熱板34によるウェハWの熱処理を開始するに際して行う分割片41の位置決め処理を示している。また、図15に示すフローチャートは、ウェハWを熱板34に載置する際(図14のステップS1)において行う凸凹傾向推定処理を示している。
図14に示すように、まず、コントローラ100は、ウェハWを支持する支持ピン35が降下し支持ピン35から熱板34にウェハWが載置されるように、昇降機構36を制御する(ステップS1)。
つづいて、コントローラ100は、各分割片41に対応して設けられた温度センサ80から位置情報(各分割片41とウェハWとの離間距離)を取得する(ステップS2)。コントローラ100は、位置情報に基づいて、各分割片41の昇降量を決定する(ステップS3)。すなわち、コントローラ100は、位置情報に基づき、各分割片41とウェハWとの距離のばらつきが小さくなるように、各分割片41の昇降量を決定する。
そして、コントローラ100は、決定した昇降量となるように、分割片41の昇降制御を行う(ステップS4)。具体的には、コントローラ100は、決定した昇降量となるように、昇降機構60の駆動部61を制御して、各分割片41の支持部62を上昇させる。
つづいて、コントローラ100は、全ての分割片41について、ウェハWとの離間距離が所定値以下となっているか否かを判定する(ステップS5)。S5において所定値以下となっていないと判定された場合には、再度ステップS3からの処理が行われる。一方で、S5において所定値以下となっていると判定された場合には、処理が終了する。以上が、熱板34によるウェハWの熱処理を開始するに際して行う分割片41の位置決め処理である。
図15に示すように、上述したステップS1の処理では、最初に、コントローラ100が、ウェハWの載置動作における、温度センサ80との接触位置を取得する(ステップS11)。具体的には、コントローラ100は、位置取得部104から位置情報(温度センサが検出した位置情報)を取得すると共に、支持ピン昇降制御部102から支持ピン35の位置データを取得し、これらの情報から、支持ピン35がどの位置である場合に、どの分割片41の温度センサ80がウェハWの裏面に接触したかを特定する。
つづいて、コントローラ100は、上述した接触位置の情報に基づいてウェハWの凸凹傾向を推定する。具体的には、コントローラ100は、取得した位置情報及び支持ピン35の位置データと、予め把握している正解データ(ウェハWに目立った反りがない場合における、位置情報と支持ピン35の位置データとの関係)とを比較することにより、ウェハWの凸凹傾向(反り傾向)を推定する。このように、分割片41の昇降制御を行う前にウェハWの凸凹傾向が推定されることにより、凸凹傾向に応じて予め昇降機構60を制御する等が可能となり、昇降制御をより円滑に行うことができる。
〔作用効果〕
本実施形態に係る熱処理ユニットU2は、複数の分割片41に分割され、載置されたウェハWを加熱する熱板34と、複数の分割片41に対応して設けられ、各分割片41を昇降させる昇降機構60と、を備える。このような熱処理ユニットU2では、熱処理を行う熱板34が複数の分割片41に分割されており、各分割片41が昇降機構60によって昇降可能とされている。これにより、例えばウェハWが反り形状を有している場合において、ウェハWの反り(変形)に合わせて各分割片41を昇降させることが可能となる。このことで、ウェハWが反り等の変形を有している場合であっても、ウェハWの各領域と対応する分割片41(熱板34)との距離を所望の距離に調整することができ、熱処理におけるウェハW面内の温度均一性を向上させることができる。
昇降機構60は、分割片41の傾きを調整する傾き調整機構70を有する。分割片41の傾きが調整されることにより、該分割片41に対応するウェハWの領域内の傾斜や凹凸に合わせて分割片41を配置することができ(図10参照)、熱処理におけるウェハW面内の温度均一性をより向上させることができる。
傾き調整機構70は、図10に示すように、1つの分割片41の第1領域78を昇降させる第1昇降部71と、該分割片41における第1領域78とは異なる第2領域79を昇降させる第2昇降部72と、を有する。これにより、簡易な構成によって分割片41の傾きを適切に調整することができる。
図11に示すように、第1領域78及び第2領域79は、熱板34を平面視した場合に、熱板34の中心から外側に向かう方向(すなわち径方向)に並んで配置されている。ウェハWは、平面視した場合の外側から中心に向かって凸の反り形状となるか、或いは、外側から中心に向かって凹の反り形状となることが多い。このため、中心から外側に向かう方向に並んで配置された第1領域78及び第2領域79がそれぞれ昇降可能とされることにより、上述した凸の反り形状又は凹の反り形状を有するウェハWと分割片41との距離を適切に調整することができる。
熱処理ユニットU2は、熱板34に載置されるウェハWの位置に関する位置情報を検出する複数の温度センサ80と、コントローラ100と、を備え、コントローラ100は、位置情報に基づき、各分割片41とウェハWとの距離のばらつきが小さくなるように昇降機構60を制御する(図10(a)及び(b)参照)。ウェハWの位置情報が検出され、各分割片41とウェハWとの距離のばらつきが小さくなるように昇降機構60が制御されることにより、ウェハWの各領域と対応する分割片41との距離を確実に所望の位置に調整し、熱処理におけるウェハW面内の温度均一性をより向上させることができる。
コントローラ100は、位置情報に基づき、各分割片41とウェハWとの距離が所定値以下となった場合に、熱板34に対するウェハWの載置が完了したと判定し、昇降機構60に対する制御を終了する。これにより、ウェハWを適切に加熱することができる位置まで、各分割片41を確実に移動させることができる。
温度センサ80は、1つの分割片41に対して少なくとも1つ設けられ、コントローラ100は、各分割片41について、対応する温度センサ80に検出された位置情報と、隣り合う他の分割片41に対応する温度センサ80に検出された位置情報とに基づき、対応する昇降機構60を制御する(図8(a)及び(b)参照)。例えば1つの分割片41の領域が大きくなるように熱板が分割されている場合には、温度センサ80によって検出される位置と、該温度センサ80に対応する分割片41の領域の一部の位置とが大きく乖離するおそれがある(例えば図8(a)中の領域E1と領域E2等)。この点、対応する温度センサ80に検出された位置情報に加えて、隣り合う他の分割片41に対応する温度センサ80に検出された位置情報も考慮することによって、分割片41の各領域の位置をより高精度に推定することができる。これにより、昇降機構60を用いた分割片41の位置決めをより高精度に行い、熱処理におけるウェハW面内の温度均一性をより向上させることができる。
コントローラ100は、ウェハWが熱板34に載置される際の載置動作における位置情報に基づき、ウェハWの凹凸傾向を推定する(図12参照)。ウェハWを載置する際には、ウェハWのどの部分が熱板34に早く近づいたか等の情報を把握することができる。このような情報を用いて、分割片41に対する昇降制御を行う前にウェハWの凹凸傾向を事前に推定することにより、その後の分割片41の昇降制御を、事前に推定したウェハWの凹凸傾向に応じて円滑に行うことができる。また、ウェハWの反り形状は例えばロット単位で同様になる傾向があるため、事前にウェハWの凹凸傾向を推定し、それに応じた同一の昇降制御をロット単位で準備することにより、ロット単位で行うウェハWの熱処理を円滑に行うことができる。
以上、実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、熱処理ユニットU2において、図16に示す圧損付与部材95(気流抑制部材)が設けられていてもよい。圧損付与部材95は、分割片41の下方において分割片41に近接して設けられており、例えば金属の板である。圧損付与部材95と熱板34(分割片41)との間の距離は、後述する隙間clと同程度であり、例えば1mm程度とされ、好ましくは500μm以下とされる。図16に示す構成では、各分割片41間には隙間clが形成されている。各分割片41間には隙間clが形成されることにより、分割片41が、温度膨張によって熱変形した場合や昇降時に隣り合う分割片41と擦れ合った場合等に摩耗・破損することを効果的に防止できる。一方で、上述した隙間clが形成された場合には、通気性が上がることでウェハW面内の温度均一性が阻害されるおそれがある。この点、各分割片41の下方に、各分割片41に近接する金属製の圧損付与部材95が設けられることにより、通気性が上がることを効果的に抑制し、ウェハW面内の温度均一性を担保することができる。
また、熱処理ユニットU2は、図17に示すように、熱板34を回転させる回転機構190を更に備え、コントローラ100は、推定した凸凹傾向に基づき、処理対象のウェハWが、周方向に沿って凸凹が変化する場合に、熱板34(分割片41)を回転させるように回転機構190を制御してもよい。回転機構190は、例えば熱板34及び昇降機構60の下方に設けられており、複数の昇降機構60を回転させることにより、昇降機構60が支持する熱板34(分割片41)を回転させる機構である。ウェハWの凸凹傾向は、周方向に沿って変化する場合がある。例えば図17(a)に示す例では、周方向に沿って、下反りが強い領域Esと上反りが強い領域Euとが交互に並んでいる。ここで、熱処理ユニットU2においては分割片41単位で昇降制御が行われるところ、同一の分割片41内においては極力凸凹の変化が少ないこと、すなわち領域Es又は領域Euのいずれか一方の領域となることが好ましい。しかしながら、図17(a)に示す例では、同一の分割片41内に領域Es及びEuの双方が含まれるようになっており、分割片41をウェハWに沿って配置することが難しい。この点、図17(b)に示す例では、回転機構190が設けられていることにより、熱板34を回転させ、1つの分割片41に領域Es又は領域Euのいずれか一方のみが含まれているようにすることができている。このように、熱板34を回転させることにより、同一の分割片41内における凸凹の変化を少なくすることができ、ウェハWの各領域と対応する分割片41との距離を適切に所望の位置に調整することができる。なお、回転機構190が熱板34を回転させるとして説明したが、回転機構190はウェハWを回転させるものであってもよい。
また、熱板34の分割態様についても、上述した態様に限定されない。すなわち、図18(a)に示すように、熱板134の中央に平面視円形の分割片141が形成されており、該円形の分割片141の外周を囲う領域が略均等に4分割されて4つの分割片141が形成されており、さらに、4つの分割片141の外周を囲う領域が略均等に8分割されて8つの分割片141が形成されていてもよい。また、図18(b)に示すように、熱板234において、例えば正六角形の分割片241が複数連続して形成されていてもよい。なお、熱板34のように分割数が少なくされることにより、分割数に応じて必要となる制御機器及び昇降機構の増加を抑制すると共に、温度制御・調整を簡易化することができる。
位置検出部の例として温度センサ80を説明したが、熱板34に載置されるウェハWの位置に関する位置情報を検出することができるものであれば、位置検出部は他のセンサであってもよい。