JP6988293B2 - 希土類元素の炭酸塩の製造方法 - Google Patents
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Description
工程1:少なくとも希土類元素と鉄族元素を含む処理対象物に対して酸化処理を行った後、処理環境を炭素の存在下に移し、1150℃以上の温度で熱処理することで、希土類元素を酸化物として鉄族元素から分離する工程
工程2:工程1で得た希土類元素の酸化物を塩酸に溶解し、pH5.5以上7.5未満の希土類元素の溶液を準備する工程
工程3:工程2で準備したpH5.5以上7.5未満の希土類元素の溶液に、工程1で発生した炭酸ガスを供給することで、希土類元素の炭酸塩を沈殿させる工程
を少なくとも含んでなることを特徴とする。
また、請求項2記載の希土類元素の炭酸塩の製造方法は、請求項1記載の希土類元素の炭酸塩の製造方法において、工程3における、工程1で発生した炭酸ガスの供給を、溶液の温度を50℃以上にして行うことを特徴とする。
また、請求項3記載の希土類元素の炭酸塩の製造方法は、請求項1記載の希土類元素の炭酸塩の製造方法において、処理対象物がR−Fe−B系永久磁石であることを特徴とする。
工程1:少なくとも希土類元素と鉄族元素を含む処理対象物に対して酸化処理を行った後、処理環境を炭素の存在下に移し、1150℃以上の温度で熱処理することで、希土類元素を酸化物として鉄族元素から分離する工程
工程2:工程1で得た希土類元素の酸化物を塩酸に溶解し、pH5.5以上7.5未満の希土類元素の溶液を準備する工程
工程3:工程2で準備したpH5.5以上7.5未満の希土類元素の溶液に、工程1で発生した炭酸ガスを供給することで、希土類元素の炭酸塩を沈殿させる工程
を少なくとも含んでなることを特徴とするものである。以下、本発明の方法における工程を順次説明する。
この工程1は、特許文献1に記載の方法に該当する。以下、その概要を説明する。
この工程2で用いる塩酸は、工程1で得た希土類元素の酸化物を溶解することができる濃度や容量で用いることができる。具体的には、例えば、用いる塩酸の濃度は0.5mol/L〜11mol/L(濃塩酸)程度であり、その容量は濃度に応じて希土類元素の酸化物1gに対して1mL〜35mL程度である。溶解温度は、例えば20℃〜85℃であってよい。溶解時間は、例えば1時間〜3日間であってよい。なお、希土類元素の酸化物は、その溶解を効率的に行うために、粒径が1mm以下の粒状ないし粉末状に粉砕して塩酸に溶解することが望ましい。粉砕は粒径が500μm以下になるまで行うことがより望ましい。この工程2で準備する希土類元素の溶液のpHを5.5以上7.5未満とする理由は、pHが5.5未満であると、後の工程3で溶液に炭酸ガスを供給しても希土類元素の炭酸塩が沈殿しない一方、pHが7.5以上であると、希土類元素の水酸化物からなる濾過性が非常に悪いゲル状沈殿物が溶液中に生成するからである。工程1で得た希土類元素の酸化物を塩酸に溶解することで得られる溶液のpHが5.5未満の場合、例えばアンモニアや水酸化ナトリウムなどのアルカリを溶液に加えることで、pHを5.5〜7.5に調整すればよい。なお、理由は定かでないが、工程1で得た希土類元素の酸化物を塩酸に溶解することで得られる溶液のpHは、工程1で得た希土類元素の酸化物のホウ素含量に依存し、ホウ素含量が少ない場合は多い場合よりも塩酸に多く溶解してpHが高くなり、例えばホウ素含量が1.5mass%以下の希土類元素の酸化物を塩酸にその溶解上限量程度まで溶解すると(例えば濃度が1mol/Lの塩酸1Lあたり60g以上溶解すると)、溶液のpHは自然と6.1〜6.5となる。こうした場合は、工程1で得た希土類元素の酸化物を塩酸に溶解することで得られる溶液のpHをアルカリを加えて調整することなく、pH5.5以上7.5未満の希土類元素の溶液を準備することができる。
工程2で準備したpH5.5以上7.5未満の希土類元素の溶液に、工程1で発生した炭酸ガスを供給すると、溶液中に目的とする希土類元素の炭酸塩が沈殿する。従って、この方法は、工程1で酸化処理を行った処理対象物を炭素の存在下で熱処理することで発生した炭酸ガスを、大気中に放出せずに有効利用するので、地球環境に優しい方法であるとともに、希土類元素の炭酸塩を沈殿させるための、炭酸のアルカリ金属塩などの沈殿剤を必要としないので、低コストな方法である。工程2で準備したpH5.5以上7.5未満の希土類元素の溶液に対する、工程1で発生した炭酸ガスの供給は、例えば、溶液を撹拌子で撹拌しながら、溶液に炭酸ガスをバブリングする方法によって行うことができる。工程2で準備したpH5.5以上7.5未満の希土類元素の溶液に対する、工程1で発生した炭酸ガスの供給は、工程2でpH5.5以上7.5未満の希土類元素の溶液の準備を完了する前から開始してもよい。炭酸ガスを供給する際の溶液の温度は、特段の制限はないが(例えば10℃以上であればよい)、溶液のpHは、溶液の温度が低くなるにつれて、炭酸ガスを供給し続けることで低下し、5.5を下回ると、希土類元素の炭酸塩が沈殿しなくなるので、こうした場合には、溶液のpHはアルカリを加えて5.5〜7.5に維持することが望ましい。特筆すべきは、溶液の温度を50℃以上にして炭酸ガスを供給することで、濾過性が良好な希土類元素の炭酸塩をより多く沈殿させることができることであり、この特性を利用すれば、工程1で発生した炭酸ガスは高温であるので(100℃を大きく超える)、高温の炭酸ガスを溶液に供給することで溶液の温度を50℃以上にすれば、濾過性が良好な希土類元素の炭酸塩を効率的に沈殿させることができる。希土類元素の炭酸塩を沈殿させるための、工程2で準備したpH5.5以上7.5未満の希土類元素の溶液に対する炭酸ガスの供給量は、溶液に含まれる希土類元素イオン1gあたり例えば0.2L以上であり、0.3L以上が望ましく、0.4L以上がより望ましい。
(工程1)
R−Fe−B系永久磁石の製造工程中に発生した約10μmの粒径を有する磁石加工屑(自然発火防止のため水中で7日間保管したもの)に対し、吸引ろ過することで脱水してからロータリーキルンを用いて燃焼処理することで酸化処理を行った。こうして酸化処理を行った磁石加工屑のICP分析(使用装置:島津製作所社製のICPV−1017)の結果を表1に示す。
工程1で得た希土類元素の酸化物を主成分とする塊状物Bを、瑪瑙製の乳鉢と乳棒で粉砕し、ステンレス製の篩を用いて粒径が125μm未満の粉末を得る操作を複数回行うことで、約1kgの塊状物Bの粉末を調製した。こうして調製した塊状物Bの粉末75gを、濃度が1.0mol/Lの塩酸1Lに加え、80℃で6時間撹拌した後、残渣をろ過することで、塊状物Bの塩酸溶液を得た(塊状物Bの塩酸への溶解量は塩酸1Lあたり63g(溶解上限量)、pHは1.3)。次に、室温において、ビーカー内の塊状物Bの塩酸溶液100mL(希土類元素イオンを合計として約7g含有)に、市販の28%アンモニア水を加えることで、pHを4.5,5.0,5.5,6.0,6.5,7.0,7.5,8.0,8.5のそれぞれに調整した希土類元素の溶液を準備した。塊状物Bの塩酸溶液のpHを7.5,8.0,8.5に調整すると、ビーカー内に希土類元素の水酸化物からなる濾過性が非常に悪いゲル状沈殿物が生成した(よってこの時点で実験を中止した)。
室温において、ビーカー内の工程2で準備したpHを4.5,5.0,5.5,6.0,6.5,7.0のそれぞれに調整した希土類元素の溶液に、撹拌子を500rpmで回転させることで撹拌しながら、市販の炭酸ガスを塩化ビニール製チューブで導き、10分間バブリングすることで、炭酸ガス1.6Lを溶液に供給した。なお、いずれの溶液も、炭酸ガスを供給している間、溶液に市販の28%アンモニア水を加えることで、所定のpHを維持した。その結果、pHを4.5に調整した溶液に炭酸ガスを供給しても、溶液に変化は認められなかった。pHを5.0に調整した溶液に炭酸ガスを供給した場合も同様であった。しかしながら、pHを5.5に調整した溶液に炭酸ガスを供給すると、ビーカー内に白色の希土類元素の炭酸塩が沈殿した。この現象は、pHを6.0,6.5,7.0のそれぞれに調整した溶液に炭酸ガスを供給した場合にも認められた。pHを5.5〜7.0の範囲に調整した溶液に炭酸ガスを供給することで得た希土類元素の炭酸塩(ホウ素含量は1.5mass%以下)は、アルミナるつぼに収容し、大気雰囲気中で900℃で2時間焼成することで、希土類元素の酸化物(軽希土類元素と重希土類元素の複合酸化物ないし酸化物の混合物)に変換することができた。
室温において、ビーカー内の実験例1の工程2で得た塊状物Bの塩酸溶液100mL(希土類元素イオンを合計として約7g含有)を、撹拌子を500rpmで回転させることで撹拌しながら、当該塩酸溶液に、市販の炭酸ガスを塩化ビニール製チューブで導き、バブリングするとともに、市販の28%アンモニア水を加えることで、pHを6.0に調整して希土類元素の溶液を準備した後、引き続き炭酸ガスをバブリングすることで、10分間で炭酸ガス1.6Lを溶液に供給したところ(炭酸ガスを供給している間、溶液に市販の28%アンモニア水を加えることで、pHを6.0に維持)、白色の希土類元素の炭酸塩が沈殿した。
塊状物Bの粉末150gを、濃度が2.3mol/Lの塩酸1Lに加えること以外は、実験例1の工程2と同様の方法で、塊状物Bの塩酸溶液を得た(塊状物Bの塩酸への溶解量は塩酸1Lあたり132g(溶解上限量)、pHは1.3)。次に、室温において、ビーカー内の塊状物Bの塩酸溶液100mL(希土類元素イオンを合計として約11.3g含有)に、市販の28%アンモニア水を加えることで、pHを6.0に調整した希土類元素の溶液を準備した。この希土類元素の溶液を60℃と90℃のそれぞれに加温した後、それぞれの溶液に、撹拌子を500rpmで回転させることで撹拌しながら、市販の炭酸ガスを塩化ビニール製チューブで導き、バブリングすることで、60分間で炭酸ガス12Lを供給したところ(炭酸ガスを供給している間、溶液に市販の28%アンモニア水を加えることで、pHを6.0に維持)、いずれの溶液からも、濾過性が良好な白色の希土類元素の炭酸塩が沈殿した。希土類元素の炭酸塩の沈殿量は、90℃に加温した溶液を用いた場合の方が、60℃に加温した溶液を用いた場合よりも多かった。また、60℃に加温した溶液を用いた場合の希土類元素の炭酸塩の沈殿量は、加温しない溶液(室温の溶液)を用いた場合の希土類元素の炭酸塩の沈殿量よりも多かった。
(工程1)
実験例1の工程1と同様にして、希土類元素の酸化物を主成分とする塊状物Bを得た。
(工程2)
実験例1の工程2と同様にして、工程1で得た希土類元素の酸化物を主成分とする塊状物Bの粉末を調製した。塊状物Bの粉末150gを、濃度が2.3mol/Lの塩酸1Lに加え、80℃で6時間撹拌した後、残渣をろ過することで、塊状物Bの塩酸溶液を得た(塊状物Bの塩酸への溶解量は塩酸1Lあたり132g(溶解上限量)、pHは1.3)。次に、室温において、ビーカー内の塊状物Bの塩酸溶液100mL(希土類元素イオンを合計として約11.3g含有)に、市販の28%アンモニア水を加えることで、pHを6.0に調整した希土類元素の溶液を準備した。
(工程3)
ビーカー内の工程2で準備したpHを6.0に調整した希土類元素の溶液に、撹拌子を500rpmで回転させることで撹拌しながら、工程1で電気炉内に発生した高温の炭酸ガスをアルゴンガスとの混合ガスの形態でステンレス製の配管で導き、溶液の温度を80℃以上に保った状態でバブリングし続けることで、炭酸ガスを供給し続けたところ(炭酸ガスを供給している間、溶液に市販の28%アンモニア水を加えることで、pHを6.0に維持)、濾過性が良好な白色の希土類元素の炭酸塩が沈殿した。
Claims (3)
- 工程1:少なくとも希土類元素(Nd,Pr,Dy,Tb,Sm)と鉄族元素を含む処理対象物に対して酸化処理を行った後、処理環境を炭素の存在下に移し、1150℃以上の温度で熱処理することで、希土類元素を酸化物として鉄族元素から分離する工程
工程2:工程1で得た希土類元素の酸化物を塩酸に溶解し、pH5.5以上7.5未満の希土類元素の溶液を準備する工程
工程3:工程2で準備したpH5.5以上7.5未満の希土類元素の溶液に、工程1で発生した炭酸ガスを供給することで、希土類元素の炭酸塩を沈殿させる工程
を少なくとも含んでなることを特徴とする希土類元素の炭酸塩の製造方法。 - 工程3における、工程1で発生した炭酸ガスの供給を、溶液の温度を50℃以上にして行うことを特徴とする請求項1記載の希土類元素の炭酸塩の製造方法。
- 処理対象物がR−Fe−B系永久磁石であることを特徴とする請求項1記載の希土類元素の炭酸塩の製造方法。
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