A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態における液体供給システム100の概略構成を示す斜視図である。図1には、互いに直交するXYZ軸が描かれている。図1のXYZ軸は他の図のXYZ軸にも対応している。液体供給システム100は、液体収容体としてのカートリッジ120と、液体噴射装置としてのプリンター150とを備える。液体供給システム100では、プリンター150のキャリッジ520に、利用者によってカートリッジ120が装着可能である。本実施形態において、「液体」とはインクを意味する。
液体供給システム100のカートリッジ120は、内部に印刷材(液体)としてのインクを収容する。カートリッジ120に収容されたインクは、後述する液体供給口及び液体導入部を介して液体噴射ヘッド540に供給される。本実施形態では、プリンター150のホルダー560には、複数のカートリッジ120が着脱可能に装着される。各カートリッジ120は、互いに異なる種類のインクを収容する。なお、収容するインクの種類や、カートリッジ120の数は任意に変更可能である。
プリンター150は、個人向けの小型インクジェットプリンターである。プリンター150は、制御部510と、キャリッジ520とを備える。キャリッジ520は、液体噴射ヘッド540とホルダー560とを備える。プリンター150は、ホルダー560に装着されたカートリッジ120から後述する液体導入部を介して液体噴射ヘッド540にインクを流通させ、紙やラベルなどの印刷媒体に対して液体噴射ヘッド540からインクを吐出(供給)する。これにより、液体噴射ヘッド540を用いて文字、図形および画像などを印刷媒体に印刷する。
プリンター150の制御部510は、プリンター150の各部を制御する。プリンター150のキャリッジ520は、液体噴射ヘッド540を印刷媒体に対して相対的に移動可能に構成されている。プリンター150の液体噴射ヘッド540は、カートリッジ120に収容された液体を印刷媒体に吐出する液体吐出機構を備える。制御部510とキャリッジ520との間はフレキシブルケーブル517を介して電気的に接続されており、液体噴射ヘッド540の液体吐出機構は、制御部510からの制御信号に基づいて動作する。
本実施形態では、キャリッジ520には、液体噴射ヘッド540と共にホルダー560が設けられている。このように、液体噴射ヘッド540を移動させるキャリッジ520上のホルダー560にカートリッジ120が装着されるプリンター150のタイプは、「オンキャリッジタイプ」とも呼ばれる。他の実施形態では、キャリッジ520とは異なる部位に、定置型の不動のホルダー560を構成し、ホルダー560に装着されたカートリッジ120からのインクを、フレキシブルチューブを介してキャリッジ520の液体噴射ヘッド540に供給しても良い。このようなプリンターのタイプは、「オフキャリッジタイプ」とも呼ばれる。
プリンター150は、キャリッジ520と印刷媒体とを相対的に移動させて印刷媒体に対する印刷を実現するための主走査送り機構および副走査送り機構を備える。プリンター150の主走査送り機構は、キャリッジモーターおよび駆動ベルトを備え、駆動ベルトを介してキャリッジモーターの動力をキャリッジ520に伝達することによって、キャリッジ520を主走査方向に往復移動させる。プリンター150の副走査送り機構は、搬送モーターおよびプラテンを備え、搬送モーターの動力をプラテンに伝達することによって、主走査方向に直交する副走査方向に印刷媒体を搬送する。主走査送り機構のキャリッジモーター、および副走査送り機構の搬送モーターは、制御部510からの制御信号に基づいて動作する。
本実施形態では、液体供給システム100の使用状態(「使用姿勢」ともいう。)において、キャリッジ520を往復移動させる主走査方向(左右方向)に沿った軸をX軸とし、印刷媒体を搬送する副走査方向(前後方向)に沿った軸をY軸とし、重力方向(上下方向)に沿った軸をZ軸とする。ここで、液体供給システム100の使用状態とは、水平な面に設置された液体供給システム100の状態であり、水平な面はX軸およびY軸に平行な面(XY平面)である。副走査方向(前方向)は+Y方向、その逆方向(後方向)は−Y方向であり、重力方向の下方から上方に向かう方向(上方向)は+Z方向、その逆方向(下方向)は−Z方向である。また、+Y方向側(前側)が液体供給システム100の正面となる。本実施形態では、液体供給システム100の左側面から右側面に向かう方向を+X方向(右方向)、その逆方向を−X方向(左方向)とする。X軸に沿った方向(左右方向)、つまり、キャリッジ520が往復移動する方向を「X方向」とも呼び、Z軸に沿った方向(上下方向)を「Z方向」とも呼ぶ。本実施形態では、ホルダー560に装着されたカートリッジ120の配列方向はY方向である。つまり、キャリッジ520において、カートリッジ120は、キャリッジ520が移動する方向(X方向)と直交する方向(Y方向)に並ぶ。
図2及び図3は、ホルダー560の斜視図であり、図4は、ホルダー560を+Z方向側から見た平面図である。図5は、カートリッジ120が1個装着された状態のホルダー560の平面図である。
ホルダー560は、5つの壁部601,603,604,605,606を有する。これら5つの壁部によって形成された凹部が、カートリッジ収容室602(「カートリッジ装着部602」とも呼ぶ)となる。以下では、壁部601のことを、底部601とも呼ぶ。カートリッジ収容室602は、仕切り板607によって、カートリッジ120をそれぞれ受け入れ可能な複数のスロット(装着空間)に分割されている。仕切り板607は、スロットにカートリッジ120を挿入する際のガイドとして機能する。各スロットには、液体導入部640と、シート部材648と、電極部661と、レバー680と、位置決め突起610と、装置側規制部620(図3)と、が設けられている。装置側規制部620は、ホルダー560の側壁604に形成された穴である。各スロットの一側面(+Z方向側面;上面)は開口しており、この開口した一側面(上面)を介して、カートリッジ120がホルダー560に対して着脱される。液体導入部640は、2つの仕切り板607に挟まれるように設けられている。
位置決め突起610は、底部601から+Z方向に向けて突出した略直方体の部材である。位置決め突起610は、カートリッジ120に設けられた位置決め部(後述)に挿入される。位置決め突起610は、カートリッジ120の位置決め部への挿入を容易とするために、先端部分の+X方向側の面と−X方向側との面とが、先端ほど近づくように互いに傾斜している。
カートリッジ120は、レバー680と装置側規制部620とによって係止され、後述する液体供給口が液体導入部640に接続された状態で、ホルダー560に装着される。この状態を「カートリッジがホルダー560に装着された状態」、または「装着状態」とも呼ぶ。装着状態では、カートリッジ120の回路基板(後述)に設けられた端子群と電極部661とが電気的に接続されて、カートリッジ120とプリンター150との間で各種情報の伝達を行うことが可能となる。
液体導入部640(図3)は、装着状態において、カートリッジ120の液体供給口に接続されることによって、カートリッジ120に収容された液体を、液体導入部640に連通する液体噴射ヘッド540へと流通させる。液体導入部640は、略筒状であり、+Z軸側に位置する先端部642と、−Z軸側に位置する基端部645とを有する。基端部645は、底部601に設けられる。先端部642は、カートリッジ120の液体供給口に接続される。先端部642には、装置側フィルター643が設けられている。カートリッジ120の液体供給口からは、装置側フィルター643を通じて、液体導入部640内に液体が流入する。装置側フィルター643は、例えば、金属メッシュや金属不織布、樹脂フィルターなどの多孔部材によって形成される。液体導入部640の中心軸CはZ軸と平行である。中心軸Cに沿って基端部645から先端部642に向かう方向が、+Z方向となる。
液体導入部640の基端部645の周囲には、液体導入部640を囲むシート部材648が設けられている。シート部材648は、例えば、弾性ゴムによって形成される。シート部材648は、装着状態においてカートリッジ120の液体供給口の周囲を密閉する。これにより、シート部材648は、液体供給口から周囲に液体が漏出することを防止する。装着状態において、シート部材648は、カートリッジ120に対して、+Z方向の成分を含む付勢力を加える。
図6及び図7は、カートリッジ120の斜視図であり、図8〜図13は、カートリッジ120の6面図(正面図、背面図、左側面図、右側面図、平面図、及び底面図)である。カートリッジ120は、液体の消費に伴って間欠的に外部の空気を内部に導入する、いわゆる半密閉タイプのカートリッジである。
カートリッジ120は、7つの壁部201〜207を有する。これらの壁部が、カートリッジ120の略直方体形状の外殻200を構成する。7つの壁部は、第1壁部201(底壁201)と、第2壁部202(上壁202)と、第3壁部203(第3側壁203)と、第4壁部204(第4側壁204)と、第5壁部205(第1側壁205)と、第6壁部206(第2側壁206)と、第7壁部207(傾斜壁207)とからなる。
以下の説明において、2つの壁部が「交わる」あるいは「交差する」とは、2つの壁部が相互に繋がって交わる状態と、一方の壁部を延長した場合に他方の壁部に交わる状態と、それぞれの壁部を延長した場合に交わる状態と、のいずれかの状態であることを意味する。また、2つの壁部が「対向する」とは、2つの壁部の間に他の物が存在しない場合と存在する場合との両方を含む意味である。
各壁部201〜207の外表面は、概ね平面である。概ね平面とは、面全域が完全に平坦である場合と、面の一部に凹凸を有する場合を含む。つまり、面の一部に多少の凹凸があっても、カートリッジ120の外殻200を構成する面や壁が把握できるような場合を含む。第1壁部201〜第7壁部207を平面視(各壁部をその法線方向から観察した状態)における外形は、第5壁部205と第6壁部206とを除き、いずれも長方形である。本実施形態では、第1壁部201〜第7壁部207は、複数の部材を組み立てた組立体の外表面であっても良い。本実施形態では、第1壁部201〜第7壁部207は、板状である。他の実施形態では、第1壁部201〜第7壁部207の一部は、フィルム状(薄膜状)やシート状の部材で形成されていてもよい。第1壁部201〜第7壁部207は、例えば、ポリアセタール(POM)などの合成樹脂で形成されている。
第1壁部201(底壁)及び第2壁部202(上壁)は、X軸及びY軸に平行な壁部であり、X方向と交わるZ方向において対向する。第1壁部201は−Z方向側に位置し、第2壁部202は+Z方向側に位置する。第1壁部201および第2壁部202は、第3壁部203、第4壁部204、第5壁部205および第6壁部206と交わる位置関係にある。本実施形態では、カートリッジ120がホルダー560に装着された装着状態で、第1壁部201はカートリッジ120の底面を構成し、第2壁部202はカートリッジ120の上面を構成する。第1壁部201(図13)には、液体供給口280と、外周壁288と、位置決め部130とが設けられている。液体供給口280は、ホルダー560の液体導入部640(図4)に接続される。位置決め部130は、ホルダー560の位置決め突起610(図4)に係合することによって、カートリッジ120のY方向の位置決めを行う機能を有する。外周壁288の内側には、空気孔132が形成されている。空気孔132は、外周壁288内の閉空間と外部とを連通させるための開口である。装着状態において、空気孔132が、外周壁288内の閉空間と外部(外気)を連通させることにより、閉空間と外部との圧力差が略一定に維持される。そのため、閉空間内の圧力変動に伴って液体供給口280から液体が漏れることが抑制される。
第3壁部203(第3側壁)及び第4壁部204(第4側壁)は、Y軸及びZ軸に平行な壁部であり、X方向において対向する。第3壁部203は−X方向側に位置し、第4壁部204は+X方向側に位置する。第3壁部203は、第1壁部201および第2壁部202と交差する。第4壁部204は、第1壁部201および第2壁部202と交差し第3壁部203と対向する。本実施形態では、カートリッジ120をキャリッジ520に装着した状態において、キャリッジ520の移動方向Xは、第3壁部203から第4壁部204に向かう方向に沿っている。第4壁部204(図11)には、突起状の第1のカートリッジ側規制部210が形成されている。第1のカートリッジ側規制部210は、装着状態においてレバー680によって係止される。第3壁部203(図10)には、突起状の第2のカートリッジ側規制部221が形成されている。第2のカートリッジ側規制部221は、第3壁部203から−X方向に突出し、キャリッジ520の装置側規制部620(図3)と係合可能な突起である。なお、装置側規制部620は、ホルダー560の側壁604に形成された穴である。装着状態において、第2のカートリッジ側規制部221は、装置側規制部620に挿入されて係止される。すなわち、装着状態においては、ホルダー560のレバー680と装置側規制部620とにより、カートリッジ120がX方向の両側において係止されることによって、カートリッジ120がホルダー560に対して固定される。
第5壁部205(第1側壁)及び第6壁部206(第2側壁)は、X軸及びZ軸に平行な壁部であり、X方向及びZ方向と交わるY方向において対向する。第5壁部205は、第1壁部201、第2壁部202、第3壁部203および第4壁部204と交差する。第6壁部206は、第1壁部201、第2壁部202、第3壁部203および第4壁部204と交差し、第5壁部205と対向する。第6壁部206(図8)には、カートリッジ120の内部に空気を導入するための開口290が形成されている。
第7壁部207(図7)は、第1壁部201と第4壁部204とを繋ぐ傾斜壁である。第7壁部207は、第5壁部205および第6壁部206と交差し、第1壁部201と第4壁部204との間に位置する。第7壁部207には、プリンター150の電極部661と接触可能な接触部116が形成されている。本実施形態では、この接触部116は、第7壁部207に設けられた基板115に形成されている。つまり、基板115は、装着状態において、ホルダー560に設けられた電極部661と接触する複数の接触部116を有する。接触部116とは、より具体的には、基板115の表面に設けられた電極用端子の中の、電極部661と接触する領域である。本実施形態では、複数の接触部116(図13)は、−Z方向から見た場合に、Y方向に沿ってそれぞれ並びX方向に所定の間隔をあけた2つの列を形成している。基板115の裏面にはカートリッジ120の各種情報を記憶する記憶装置(後述)が設けられている。この記憶装置には、例えば、インクの残量状態やインクの色を表す情報が記憶されている。ホルダー560に設けられた電極部661が接触部116に接触すると、プリンター150に備えられた制御部510は、フレキシブルケーブル517を通じて、カートリッジ120に備えられた記憶装置から各種情報を読み込むことができる。
図14は、カートリッジ120の分解斜視図である。カートリッジ120は、本体部材301と正面側の蓋部材305とを備える。本体部材301は、+Y方向側が開口した略直方体形状の箱状部材として構成さている。本体部材301は、第1壁部201と、第2壁部202と、第3壁部203と、第4壁部204と、第5壁部205とを構成する。一方、蓋部材305は、第6壁部206を構成する。本体部材301は、内部に、仕切り壁330を備えている。仕切り壁330は、本体部材301内の液体収容空間を、Z方向のうち上壁202側である+Z方向側の第1収容室310と、Z方向のうち底壁201側である−Z方向側の第2収容室320とに仕切る。第1収容室310のことを「主収容室」ともいい、第2収容室320のことを「副収容室」ともいう。カートリッジ120の未使用状態において、第1収容室310および第2収容室320には、インクが収容されている。第1収容室310と第2収容室320とは、第1収容室310と第2収容室320とを連通させる連通口361により連通している。連通口361は、仕切り壁330に設けられている。第2収容室320は、液体供給口280と接続されている。第1収容室310は、連通口361と第2収容室320とを介して液体供給口280と接続されている。本実施形態では、第1収容室310内の空間容積よりも、第2収容室320内の空間容積の方が大きい。なお、他の実施形態では、第1収容室310内の空間容積よりも、第2収容室320内の空間容積の方が小さくてもよい。
本実施形態のカートリッジ120は、更に、本体部材301と共に液体収容空間を構成する部材として、可撓性を有するシート部材291を備える。シート部材291は、液体不透過性、気密性、及び、可撓性を有する薄膜である。シート部材291は、本体部材301に接着や溶着により接合されて、本体部材301と共に第1収容室310および第2収容室320を区画形成する。シート部材291は、第1収容室310、第2収容室320、及び、第2収容室320の下方に形成される各種の流路を覆うことが可能なサイズとされている。このように、第1収容室310および第2収容室320の外壁の一部は、シート部材291によって形成される。
蓋部材305は、シート部材291を覆うように本体部材301に取り付けられる。本体部材301と蓋部材305は、ポリプロピレン等の合成樹脂により形成されている。シート部材291は、ナイロンとポロプロピレンを含む複合材料等の合成樹脂により形成されている。
第1収容室310の内部には、板状部材としての受圧板293が配置される。受圧板293の一方の面はシート部材291に接触する。受圧板293の他方の面(−Y方向側の面)と第5壁部205との間には、付勢部材としてのコイルばね294が配置される。第5壁部205の内面の中央には、コイルばね294を受ける凹部332が形成されている。コイルばね294は、第5壁部205から第6壁部206に向けて受圧板293を付勢する。つまり、コイルばね294は、第1収容室310の容積を拡大する方向に受圧板293を介してシート部材291を付勢する。このコイルばね294の付勢力によって、第1収容室310内の圧力は大気圧よりも低い圧力(負圧)に維持される。コイルばね294は、円錐台状の外形を有しているが、円筒状の外形を有するものを用いてもよい。
第1収容室310の内部には、更に、大気を第1収容室310に導入するための大気弁140が配置される。大気弁140は、弁座146と、弁体部材144と、コイルばね142と、を備える。弁体部材144は、コイルばね142によって弁座146に押し付けられ、弁座146に形成された貫通孔である大気導入口147を塞ぐ。弁体部材144は、大気導入口147を開閉可能な弁体部143と、受圧板293と当接することで弁体部143を可動にするレバー部149と、を備える。弁座146は、本体部材301のうち、第2壁部202と第4壁部204とが交わるコーナー部分に収容され、本体部材301に取り付けられる。弁座146は凹部を有し、凹部の開口を形成する端面にはシート部材291が気密に貼り付けられる。弁座146の凹部は、シート部材291の貫通孔296と連通している。また、弁座146の凹部の底部には弁座146の裏側まで貫通した大気導入口147が形成されている。大気導入口147は、第1収容室310に連通する。つまり、大気導入口147は、第1収容室310に設けられている。大気導入口147は、第1収容室310の外部から第1収容室310内に大気を導入するためのものである。弁体部材144の弁体部143は、コイルばね142によって弁座146に押し付けられ、大気導入口147を塞ぐ。弁体部材144のレバー部149は、受圧板293が−Y方向に移動するときに受圧板293によって押される。後述するように、レバー部149が受圧板293に押されると、これに応じて弁体部143と弁座146の状態が閉弁状態から開弁状態に変化する。
本体部材301の底面に設けられた液体供給口280には、板バネ135と、液体透過性の多孔質部材134(例えば樹脂発泡体)と、カートリッジ側フィルター136と、が順に嵌め込まれる。カートリッジ側フィルター136は、ホルダー560の液体導入部640(図4)と接触した状態で、液体導入部640に液体を供給する。
本体部材301の第7壁部207には、記憶装置118を有する基板115が固定される。本体部材301の第2壁部202の外表面には、ラベル125が貼付される場合がある。ラベル125には、例えば、カートリッジ120の製造者や型番が表示される。なお、ラベル125が貼付される位置は任意である。例えば、第2壁部202、第3壁部203、第4壁部204、第5壁部205、第6壁部206のうちの任意の一の壁部に貼付されても良いし、2以上の壁部に跨がって貼付されてもよい。
図15は、本体部材301の正面図である。図16は、本体部材301の斜視図である。図17は、第2収容室320付近の斜視図である。図18は、第2流路324を+Z方向から見た図である。図19は、図18におけるXIX−XIX断面図である。
図15において、太い一点鎖線の矢印は、インクが流れる経路を示している。本体部材301の仕切り壁330の+Z方向側には、第1収容室310が形成される。第1収容室310は、第2壁部202の内面と、第3壁部203の内面と、第4壁部204の内面と、第5壁部205の内面と、仕切り壁330の上面と、によって囲まれた断面略矩形状の空間である。第1収容室310の+Y方向側は、シート部材291(図14)によって密封される。第1収容室310の底部のうち、第4壁部204よりも第3壁部203に近い位置には、第1収容室310と第2収容室320とを連通させる連通口361が設けられている。この連通口361は、仕切り壁330に設けられた開口である。インクは、第1収容室310から連通口361を介して、第1収容室310よりも下側(−Z方向側)に位置する第2収容室320に移動する。
第2収容室320は、X方向に沿って流路が折り返された折り返し流路321を含んでいる。この折り返し流路321により、第2収容室320内には、X方向に沿った複数の流路がZ方向に並ぶ。折り返し流路321のX方向に沿った幅は、液体供給口280のX方向に沿った幅よりも大きい。第1収容室310内のインクは、連通口361から折り返し流路321を経由して、液体供給口280へと導出される。本実施形態では、折り返し流路321は、第3壁部203側から第4壁部204側に向けてインクが流れる第1流路323と、第4壁部204側から第3壁部203側に向けてインクが流れる第2流路324とを含んでいる。第1流路323は、連通口361を通じて第1収容室310に連通している。第2流路324は、第1流路323よりも下側(−Z方向側)に位置している。第1流路323および第2流路324のZ方向に沿った幅、すなわち、流路の高さは、2〜3mmである。第1流路323と第2流路324とは、それぞれの第1壁部201の+X方向側の端部付近で上下方向(Z方向)に接続されている。第1流路323と第2流路324とが接続されている部分のことを、接続部326という。以下では、折り返し流路321のうち、第1収容室310に近い側を上流側とし、液体供給口280に近い側を下流側として説明する。
本実施形態では、第2収容室320は、気泡貯留部325を備える。気泡貯留部325は、折り返し流路321よりも+Z方向側に位置する空間325sを有する。空間325sを含む気泡貯留部325内の空間には、気泡が貯留可能である。気泡貯留部325は、折り返し流路321の途中で、折り返し流路321と接続されている。気泡貯留部325は、折り返し流路321の上流側の端部や下流側の端部から遠い位置において折り返し流路321に接続されることが好ましい。本実施形態では、第1流路323と第2流路324とが接続される接続部326に、気泡貯留部325が接続されている。気泡貯留部325は、接続部326から、折り返し流路321とは反対側の斜め上方に延びている。気泡貯留部325の上面は、仕切り壁330によって形成され、下面は第7壁部207によって形成されている。
本実施形態では、折り返し流路321のうち、最も下流側の流路である第2流路324の上面を形成する壁331(以下、中間壁331という)は、下流側から上流側に向けて+Z方向側に傾斜する部分を含んでいる。中間壁331は、全体が傾斜していてもよいし、一部に傾斜していない部分が含まれていてもよい。また、仕切り壁330は、折り返し流路321のうち、最も上流側の流路である第1流路323の上面を形成しており、下流側から上流側に向けて+Z方向側に傾斜する部分を含んでいる。このように、本実施形態では、折り返し流路321を構成する仕切り壁330と中間壁331とが、逆の傾きを有している。そのため、折り返し流路321を構成する仕切り壁330の傾斜部分の下流側および中間壁331の傾斜部分の上流側をそれぞれの傾斜に沿って延長すると、交差する関係を有している。
本実施形態では、図16〜19に示すように、第2収容室320と液体供給口280との間には、第3流路327と第4流路328とが備えられている。第3流路327は、インクを第2収容室320から液体供給口280へ送出するインク送出用の流路である。第4流路328は、空気を液体供給口280から第2収容室320へ送出する空気送出用の流路である。本実施形態では、第3流路327よりも第4流路328の方が、上流側に設けられている。また、本実施形態では、第3流路327よりも第4流路328の方が、接続部326に近い位置に設けられている。つまり、本実施形態では、第3流路327よりも第4流路328の方が、気泡貯留部325に近い位置に設けられている。なお、第3流路327は、インク送出用に設けられているが、内部に空気が流れてもかまわない。第4流路328は、空気送出用に設けられているが、内部にインクが流れてもかまわない。
本実施形態では、図15,17〜19に示すように、第5壁部205の内面(+Y方向側の面)に、第6壁部206側へ突出する凸部205tが形成されている。凸部205tは、Z方向において仕切り壁330の下面から第2流路324の底面まで延びている。この凸部205tは、気泡貯留部325と折り返し流路321の境界部分に位置する。凸部205tは、上部分と下部分とで第5壁部205から+Y方向に向けた高さが異なる。具体的には、X方向において第1流路323に対向する上部分の高さの方が、X方向において第2流路324に対向する下部分の高さよりも高い。なお、凸部205tの+Y方向に向けた高さは、一定でもよい。
本実施形態では、第1流路323と第2流路324との接続部326において、第1側壁205の内面に、上壁202から底壁201に向かう方向に延びる段差329が形成されている。つまり、接続部326において、第1側壁205の内面には、重力方向に沿って段差329が形成されている。段差329は、凸部205tのY方向における基端の角部でもある。第1流路323を通るインクは、この段差329を伝って、第2流路324に流れることが可能である。なお、段差329は、凸部205tとは独立して設けられてもよい。
図15に示すように、第1収容室310内のインクは、連通口361から折り返し流路321を経由して、液体供給口280へと導出される。より具体的には、第1収容室310内のインクは、まず、第1収容室310の底部にある連通口361を介して第2収容室320の折り返し流路321に流れ込み、折り返し流路321の第1流路323および第2流路324を経由した後に、第3流路327を経由して液体供給口280へと導出される。そしてインクは、液体供給口280からホルダー560(図4)に設けられた液体導入部640に到達する。なお、インクの一部は、第4流路328を通って液体供給口280に導出されてもよい。
図20は、仕切り壁330に形成された連通口361の流路断面形状を示す図である。本実施形態では、Z方向からみたときに、連通口361の流路断面の形状は、少なくとも第1の多角形371と第2の多角形372とを含んでいる。第1の多角形371と第2の多角形372の面積は異なっており、本実施形態では、第1の多角形371の面積の方が、第2の多角形372の面積よりも大きい。第1の多角形371および第2の多角形372は、Y方向に沿った直線L1上で接している。つまり、連通口361の流路断面形状は、異なる面積の多角形を組み合わせて構成された形状となっている。第1の多角形371および第2の多角形372は、本実施形態ではいずれも四角形であり、略正方形である。第1の多角形371および第2の多角形372は、四角形に限らず、三角形や五角形などの他の多角形でもよい。
本実施形態では、面積の小さな第2の多角形372が、第3壁部203および第6壁部206(より具体的にはシート部材291)に接するように配置され、第1の多角形371は、第2の多角形372および第6壁部206(より具体的にはシート部材291)に接するように第2の多角形372よりも第4壁部204側に配置されている。本実施形態では、第1の多角形371と第2の多角形372とは、X方向に並んでおり、互いに接続されることで一つの図形を構成している。第1の多角形371と第2の多角形372とで構成された図形は、本実施形態では、少なくとも一つの内角の大きさが180度を超える凹多角形となっている。
第1の多角形371の面積は、気泡が第2収容室320側から第1の多角形371を通って第1収容室310側に流通可能な程度の面積である。また、第2の多角形372の面積は、インクが第1収容室310側から第2の多角形372を通って第2収容室320に流通可能な程度の面積である。つまり、連通口361の流路断面形状は、インクと気泡とが同時に流通可能(気液交換可能)な形状となっている。
図21は、接続部326の流路断面形状を示す図である。本実施形態では、第1流路323と第2流路324との接続部326をZ方向からみたとき、接続部326の流路断面の形状は、少なくとも第3の多角形373と第4の多角形374とを含んでいる。第3の多角形373の面積と第4の多角形374の面積とは異なっており、本実施形態では、第3の多角形373の面積の方が、第4の多角形374の面積よりも大きい。つまり、接続部326の流路断面形状は、異なる面積の多角形を組み合わせて構成された形状となっている。第3の多角形373および第4の多角形374は、本実施形態ではいずれも四角形であり、略長方形である。第3の多角形373および第4の多角形374は、四角形に限らず、三角形や五角形などの他の多角形でもよい。
第4の多角形374は、仕切り壁330の+X方向側の端部と、第5壁部205と、凸部205tの−X方向側の面と、凸部205tの+Y方向側の面に沿った直線L2と、によって区画される。第3の多角形373は、仕切り壁330の+X方向側の端部と、第6壁部206(より具体的にはシート部材291)と、凸部205tの+Y方向側の面に沿った直線L2と、凸部205tの+X方向側の面に沿った直線L3と、によって区画される。本実施形態では、段差329が、第4の多角形374の一つの角を構成している。
本実施形態では、面積の小さな第4の多角形374の方が、第5壁部205に接するように配置され、第3の多角形373は、第4の多角形374に接するように第4の多角形374と第6壁部206との間に配置されている。本実施形態では、第3の多角形373と第4の多角形374とは、Y方向に並んでおり、互いに接続されることで一つの図形を構成している。第3の多角形373と第4の多角形374とで構成された図形は、本実施形態では、少なくとも一つの内角の大きさが180度を超える凹多角形となっている。
第3の多角形373の面積は、第1流路323から第3の多角形373を通って第2流路324に気泡が流通可能な程度の面積である。また、第4の多角形374の面積は、第1流路323から第4の多角形374を通って第2流路324にインクが流通可能な程度の面積である。つまり、接続部326の流路断面形状は、インクと気泡とが同時に流通可能(気液交換可能)な形状となっている。
図22〜図24は、カートリッジ120の第1収容室310内に設けられた大気弁140の動作を説明するための模式図である。蓋部材305には、開口290が設けられている。第1収容室310は、本体部材301と、シート部材291とによって区画されている。また、蓋部材305とシート部材291との間には、空気室241が形成されている。空気室241は、蓋部材305に設けられた開口290を通じて外部の大気に連通している。また、空気室241には、カートリッジ120の底壁201に設けられた空気孔132(図13)が連通している。シート部材291の内側には、受圧板293とコイルばね294が配置されている。コイルばね294は、第1収容室310の容積を拡大する方向に受圧板293及びシート部材291を付勢する。このコイルばね294の付勢力によって、第1収容室310内の圧力は大気圧よりも低い圧力(負圧)に維持される。
第1収容室310内には、開口290、空気室241および大気導入口147を介して所定のタイミングで大気が導入される。大気導入口147は、第1収容室310と、空気室241とを連通する連通孔である。大気導入口147から大気が導入されることで、第1収容室310内の圧力状態が良好になる。大気弁140は、この大気導入口147の開閉を行うための弁機構である。大気弁140は、弁座146と、弁体部材144と、コイルばね142と、を備える。弁体部材144は、コイルばね142によって弁座146に押し付けられ、弁座146に形成された貫通孔である大気導入口147を塞ぐ。弁体部材144は、大気導入口147を開閉可能な弁体部143と、受圧板293と当接することで弁体部143を可動にするレバー部149と、を備える。
カートリッジ120の初期状態(未使用状態)では、第1収容室310にはインクが充填されている。このとき、受圧板293は、図22に示すように、最も蓋部材305に近い位置にある。図23に示すように、第1収容室310の液体が消費され、受圧板293が第5壁部205側に近づくと、受圧板293がレバー部149を第5壁部205側に押す。これにより、弁体部143が大気導入口147から離れる。すなわち、弁体部材144が開弁状態となる。そして、外部の空気が開口290、空気室241および大気導入口147を通じて第1収容室310に流入する。これにより、図24に示すように空気が導入された分だけ第1収容室310の容積が大きくなる。同時に、第1収容室310内の負圧は小さくなり、大気圧に近づく。そして、第1収容室310にある程度の空気が導入されると、受圧板293がレバー部149から離れる。これにより、弁体部143が再び大気導入口147を塞ぐ。すなわち、弁体部材144が閉弁状態となる。このように、インクの消費に伴って、第1収容室310内の負圧が大きくなると、一時的に弁体部材144が開弁状態になることで第1収容室310内の圧力を適切な圧力範囲に維持することが可能となる。そのため、例えば、第1収容室310内の負圧が大きくなりすぎ、液体が液体供給口280から供給されなくなることを抑制することができる。
なお、カートリッジ120において、大気弁140は省略してもよい。この場合に、開口290を蓋部材305でなく上壁202(図15)に設け、開口290から第1収容室310に大気が直接導入されるようにしてもよい。更に、開口290も省略して、第1収容室310に大気が導入されないような構成も採用可能である。
以上で説明した本実施形態のカートリッジ120によれば、第1収容室310と第2収容室320とが仕切り壁330で仕切られており、連通口361のみで接続されている。そのため、キャリッジ520の往復移動等に伴って第1収容室310内でインクが波立って気泡が発生しても、その気泡が第2収容室320に入り込むことを抑制できる。また、本実施形態では、第2収容室320は折り返し流路321を含んでおり、折り返し流路321は、キャリッジ520の移動方向であるX方向に沿って折り返されている。そのため、折り返し流路321を構成する流路の高さを抑えることができ、この結果、第2収容室320内においてインクの揺れが抑制される。従って、第2収容室320内において、インクが波立って気泡が発生することを抑制できる。更に、本実施形態では、第1収容室310内のインクは、折り返し流路321を経由して液体供給口280へ導かれるので、インクが第1収容室310を出てから液体供給口280に到達するまでの時間を長くすることができる。従って、第1収容室310から第2収容室320に流入するインクに気泡が混入していたとしても、液体供給口280に到達する前に、気泡が自然に消滅する可能性が高くなり、また、気泡同士が合体して第1収容室310または気泡貯留部325まで浮上する可能性も高くなる。つまり、本実施形態のカートリッジ120によれば、カートリッジ120からプリンター150に供給されるインクに気泡が混入する可能性を低減できる。
また、本実施形態では、第1収容室310と第2収容室320とを連通させる連通口361の流路断面の形状が、面積の異なる第1の多角形371と第2の多角形372とを含む。そのため、例えば、面積の小さな第1の多角形371側をインクが流れ、面積の大きな第2の多角形372側を気泡が通過することにより、連通口361において気液交換が促進される。従って、気泡が液体供給口280に到達しにくくなり、カートリッジ120から供給されるインクに気泡が混入する可能性をより効果的に低減できる。また、本実施形態では、連通口361の流路断面が多角形により構成されているので、流路断面に角部が形成される。そのため、毛細管現象によってその角部にインクが集中し、連通口361をインクが流れやすくなる。また、連通口361の流路断面が多角形により構成されているので、流路断面が円形に形成されているよりも、気泡が通過しやすくなる。
また、本実施形態では、連通口361の流路断面形状を構成する第1の多角形371と第2の多角形372のうち、主にインクが流れる面積の小さな第2の多角形372が、壁面(第3壁部203)側に配置されている。そのため、インクがその壁面を伝うことにより、インクが連通口361を流れやすくなる。
また、本実施形態では、折り返し流路321は、第3側壁203側から前記第4側壁204側に向けて液体が流れる第1流路323と、第4側壁204側から第3側壁203側に向けて液体が流れる第2流路324と、を含んでいる。そのため、折り返し流路321の流路長を長くできる。そのため、折り返し流路321中で気泡が消滅する可能性が高くなる。
また、本実施形態では、第1流路323と第2流路324との接続部326をZ方向からみたときの流路断面の形状が、面積の異なる第3の多角形373と第4の多角形374とを含む。そのため、例えば、面積の小さな第4の多角形374側をインクが流れ、面積の大きな第3の多角形373側を気泡が通過することにより、第1流路323と第2流路324との接続部326においても気液交換が促進される。従って、気泡が液体供給口280に到達しにくくなり、カートリッジ120から供給されるインクに気泡が混入する可能性をより効果的に低減できる。また、本実施形態では、接続部326の流路断面が多角形により構成されているので、流路断面に角部が形成される。そのため、毛細管現象によってその角部にインクが集中し、接続部326をインクが通過しやすくなる。また、接続部326の流路断面が多角形により構成されているので、流路断面が円形に形成されているよりも、気泡が通過しやすくなる。
また、本実施形態では、第1流路323と第2流路324との接続部326において、第5壁部205の内面に、第2壁部202から第1壁部201に向かう方向に延びる段差329が形成されている。そのため、この段差329をインクが伝って流れることができ、第1流路323から第2流路324にインクが流れやすい。
また、本実施形態では、第2収容室320と液体供給口280とが、第3流路327と第4流路328とで接続されている。そのため、例えば、液体供給口280と液体導入部640(図4)の接続部分に空気が存在する状態でインクを液体供給口280から供給する場合にも、第2収容室320と液体供給口280との間で気液交換が促進され、第3流路327からインクを供給すると同時に、第4流路328から空気をカートリッジ120内に取り入れることができる。従って、カートリッジ120から供給されるインクに気泡が混入する可能性を効果的に低減できる。
また、本実施形態では、インク送出用の第3流路327よりも空気送出用の第4流路328の方が、気泡貯留部325に近い位置に設けられているので、第4流路328から送出された気泡を気泡貯留部325によって効率的に捕捉することができる。
また、本実施形態では、折り返し流路321のうち、最も下流側の流路(第2流路324)の上面を形成する中間壁331は、下流側から上流側に向けて+Z方向側に傾斜する部分を含んでいる。そのため、第2収容室320内の気泡を、その浮力を利用して上流側へ移動させることができる。
また、本実施形態では、仕切り壁330は、折り返し流路321のうち、最も上流側の流路(第1流路323)の上面を形成しており、下流側から上流側に向けて+Z方向側に傾斜する部分を含んでいる。そのため、第2収容室320内の気泡を、その浮力を利用して、より上流側へ移動させることができる。
また、本実施形態では、第1収容室310内の空間容積よりも、第2収容室320内の空間容積の方が大きい。そのため、第2収容室320内の気泡が液体供給口280まで移動する時間を長くなるので、気泡が自然に消滅する可能性や、気泡同士が合体して大きくなり第1収容室310側へ排出される可能性を高めることができる。
また、本実施形態では、第2収容室320は、折り返し流路321よりも+Z方向側に位置する空間325sを有し、その空間325sに気泡が貯留される気泡貯留部325を備えている。そのため、第2収容室320内の気泡を、その浮力を利用して、空間325sに移動させることができる。
また、本実施形態では、空間325sは、折り返し流路321の途中で、折り返し流路321と接続されている。そのため、第1収容室310や液体供給口280から気泡を遠ざけることができる。従って、カートリッジ120から供給されるインクに気泡が混入する可能性をより効果的に低減できる。
B.第2実施形態:
図25は、第2実施形態における連通口361Aの流路断面形状を示す図である。第2実施形態と第1実施形態とでは、カートリッジ120の連通口の構成のみが異なり、他の構成は同じである。本実施形態における連通口361Aは、第1実施形態と同様に、Z方向からみたときに、第1の多角形371と第2の多角形372とを含む。ただし、本実施形態では、第2の多角形372の面積が第1の多角形371よりも大きく、第2の多角形372が、第3壁部203の内面全体に接する形状となっている。このような連通口361の形状であっても、第1の多角形371を気泡が通り、第2の多角形372をインクが通ることができるので、第1収容室310と第2収容室320との間で気液交換を促進することができる。
C.第3実施形態:
図26は、第3実施形態における連通口361Bの流路断面形状を示す図である。第3実施形態と第1実施形態とでは、カートリッジ120の連通口の構成のみが異なり、他の構成は同じである。本実施形態における連通口361Bは、第1実施形態および2実施形態と同様に、Z方向からみたときに、第1の多角形371と第2の多角形372とを含む。ただし、本実施形態では、第1の多角形371と第2の多角形372とが分離している。このような構成であっても、第1の多角形371を気泡が通り、第2の多角形372をインクが通ることができるので、第1収容室310と第2収容室320との間で気液交換を促進することができる。
D.第4実施形態:
図27は、第4実施形態における連通口361Cの流路断面形状を示す図である。第4実施形態と第1実施形態とでは、カートリッジ120の連通口の構成のみが異なり、他の構成は同じである。本実施形態における連通口361Cは、第1実施形態と同様に、Z方向からみたときに、第1の多角形371と第2の多角形372とを含む。ただし、本実施形態では、第1の多角形371が四角形、第2の多角形372が三角形であり、これらの形状が合体することで、1つの大きな三角形となるように連通口361Cが構成されている。このような構成であっても、連通口361Cの第1の多角形371に該当する部分を気泡が通り、第2の多角形372に該当する部分をインクが通ることができるので、第1収容室310と第2収容室320との間で気液交換を促進することができる。
なお、上記第3実施形態および第4実施形態の連通口361B,361Cの流路断面形状は、第1流路323と第2流路324とが接続される接続部326の流路断面形状にも適用可能である。つまり、接続部326の流路断面形状は、第3の多角形373と第4の多角形374とが分離した形状でもよい。また、接続部326の流路断面形状は、第3の多角形373と第4の多角形374とが合体することで一つの三角形を構成する形状でもよい。
E.第5実施形態:
図28は、第5実施形態における液体供給ユニット800の構成を示す模式図である。この液体供給ユニット800は、液体ボトル810と、カートリッジ820と、液体供給チューブ830とを含む。カートリッジ820は、液体供給チューブ830が接続される点を除き、第1実施形態ないし第4実施形態のカートリッジ120と同じ構造である。
液体供給チューブ830は、液体ボトル810と、カートリッジ820内の第1収容室310(図15)とを接続する。液体ボトル810には、液体(インク)が収容されている。液体は、液体ボトル810に、適宜、補充可能である。液体ボトル810は、プリンター150の外部に設置される。液体ボトル810内の液体は、液体供給チューブ830を通じて、カートリッジ820内の第1収容室310に供給される。このような液体供給ユニット800においても、カートリッジ820の各部の構成は第1実施形態ないし第4実施形態のカートリッジ120と同じなので、これらの実施形態と同じ作用効果を奏することができる。
F.他の実施形態:
上記実施形態において、接続部326の流路断面形状は、複数の多角形(第3の多角形373と第4の多角形374)を含まない形状でもよい。つまり、接続部326の流路断面形状は、例えば、四角や円などの単純な形状であってもよい。
上記実施形態では、折り返し流路321は、流路が1回折り返されることにより構成されている。これに対して、折り返し流路321は、流路が2回以上折り返されることにより構成されてもよい。つまり、折り返し流路321は、第1流路323と第2流路324だけではなく、より多くの流路を含んでもよい。
上記実施形態において、接続部326内には、段差329が形成されていなくてもよい。
上記実施形態では、第5壁部205の内面に凸部205tが形成されることにより段差329が設けられているが、例えば、第5壁部205に、上壁202から底壁201に向かう方向に溝が形成されることによって段差が設けられてもよい。
上記実施形態において、第2収容室320と液体供給口280との間には、第3流路327と第4流路328のいずれか一方のみが備えられてもよい。
上記実施形態において、中間壁331は、折り返し流路321の下流側から上流側に向けて−Z方向側に傾斜していてもよい。
上記実施形態において、仕切り壁330は、折り返し流路321の下流側から上流側に向けて−Z方向側に傾斜していてもよい。
上記実施形態において、カートリッジ120は、気泡貯留部325を備えていなくてもよい。
上記実施形態において、気泡貯留部325は、折り返し流路321の途中ではなく、上流側の端部や下流側の端部で折り返し流路321と接続されてもよい。
上記実施形態では、
(1)連通口361の流路断面形状が第1の多角形371と第2の多角形372とを含むこと、
(2)接続部326の流路断面形状が第3の多角形373と第4の多角形374とを含むこと、
(3)第2収容室320と液体供給口280との間に、第3流路327と第4流路328とを含むこと、
の3つの要件のうち、少なくとも1つの要件が満たされれば、他の2つの要件は満たされていなくてもよい。
上記実施形態では、カートリッジ120は、7つの壁部201〜207により構成されていたが、内部にインクを収容可能な空間が形成されるのであれば、カートリッジ120を構成する壁部の数は7つに限られない。例えば、6つ以下の壁部により構成されても良いし、8つ以上の壁部により構成されてもよい。また、例えば、球状あるいは曲面状の1つ以上の壁部によって構成されてもよい。その他、曲面状の壁部と板状の壁部とを組み合わせて構成されてもよい。
上述した各種実施形態のカートリッジ120の構造を、液体収容部材とアダプターとに分離した構造に変更してもよい。アダプターは、プリンター150のホルダー560との係合を行うための各種の係合部材を備えるとともに、アダプター内に液体収容部材を分離可能に収容する部材として構成される。この場合に、例えば、液体収容部材が第1収容室310と第2収容室320と液体供給口280とを備え、アダプターが記憶装置118を有する基板115を備えるように構成することが好ましい。
本発明は、プリンター及びそのインクカートリッジに限らず、インク以外の他の液体を消費する任意の液体噴射装置及びそれらの液体噴射装置に用いられるカートリッジにも適用することができる。例えば、以下のような各種の液体噴射装置に用いられるカートリッジとして本発明は適用可能である。
(1)ファクシミリ装置等の画像記録装置。
(2)液晶ディスプレイ等の画像表示装置用のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射装置。
(3)有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイや、面発光ディスプレイ(Field Emission Display、FED)等の電極形成に用いられる電極材噴射装置。
(4)バイオチップ製造に用いられる生体有機物を含む液体を噴射する液体噴射装置。
(5)精密ピペットとしての試料噴射装置。
(6)潤滑油の噴射装置。
(7)樹脂液の噴射装置。
(8)時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置。
(9)光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂液等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置。
(10)基板などをエッチングするために酸性又はアルカリ性のエッチング液を噴射する液体噴射装置。
(11)他の任意の微小量の液滴を吐出させる液体消費ヘッドを備える液体噴射装置。
なお、「液滴」とは、液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう「液体」とは、液体噴射装置が消費できるような材料であればよい。例えば、「液体」は、物質が液相であるときの状態の材料であれば良く、粘性の高い又は低い液状態の材料、及び、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような液状態の材料も「液体」に含まれる。また、物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなども「液体」に含まれる。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種の液体状組成物を包含するものとする。
本発明は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。