本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
図1は、本実施の形態に係るエンジン1の全体構成図である。図1を参照して、エンジン1は、たとえば走行のための動力発生装置として車両(たとえば、4輪自動車)に搭載される。図1に示すエンジン1は、直列4気筒ディーゼルエンジンである。ただし、エンジンの種類は、ディーゼルエンジンに限定されず、ガソリンエンジンであってもよい。また、図1に示すエンジンの構成は一例であり、適宜変更可能である。たとえば、直列以外の気筒レイアウト(たとえばV型あるいは水平型)にしてもよい。また、バンクや気筒の数も任意に変更できる。また、図1には一部のセンサしか示していないが、エンジン1の状態等を検出して制御装置200へ出力する各種センサ(たとえば、吸気圧センサ、排気圧センサ等)がさらに設けられていてもよい。また、エンジン1は、EGR(Exhaust Gas Recirculation)装置を備えていてもよい。
エンジン1は、エンジン本体10と、エアクリーナ20と、インタークーラ25と、吸気絞り弁26と、吸気マニホールド28と、過給機30と、排気マニホールド50とを備える。そして、エンジン1は、制御装置200によって制御される。以下、エンジン1において、流路として機能する配管等に関しては、上流側の一方端を「第1端」、下流側の他方端を「第2端」と称する。
エンジン本体10は、出力軸11と、複数の気筒12と、コモンレール14と、複数のインジェクタ16とを含む内燃機関である。
出力軸11は、燃焼により発生するエネルギーを利用して回転するように構成される。出力軸11は、たとえばクランクシャフトである。より具体的には、各気筒12内には、ピストン(図示せず)が設けられ、気筒12の内壁とピストンの頂部とによって燃焼室(燃料が燃焼する空間)が形成されている。燃焼室内で燃料の燃焼が行なわれると、燃焼により発生する熱エネルギーが運動エネルギーに変換され、ピストンが往復運動する。さらに、ピストンの往復運動は出力軸11のクランク機構によって回転運動に変換される。こうして、ピストンの往復運動に対応して出力軸11が回転する。そして、出力軸11の回転力が車両の駆動輪に伝達されることによって、駆動輪が駆動され、車両が走行する。出力軸11には、回転速度センサ108が設けられている。回転速度センサ108は、出力軸11の回転速度(エンジン回転速度)を検出し、その検出値NEを制御装置200へ出力する。
インジェクタ16は、燃焼室に燃料を供給するように構成される。より具体的には、気筒12ごとにインジェクタ16が設けられ、各インジェクタ16はコモンレール14に接続される。燃料タンク(図示せず)に貯留された燃料は、サプライポンプ(図示せず)により所定圧に加圧されてコモンレール14に供給される。コモンレール14に供給された燃料は、各インジェクタ16から所定のタイミングで燃焼室内に噴射される。インジェクタ16により噴射供給された燃料が燃焼室で燃焼することによって出力軸11にトルクが発生する。出力軸11は、こうして生成されるトルクで回転するように構成される。各インジェクタ16の噴射タイミングおよび燃料噴射量は、制御装置200によって制御される。
エアクリーナ20は、第1吸気管22の途中に設けられ、第1吸気管22の第1端に設けられる吸気口(図示せず)から吸入される空気に含まれる異物を除去するように構成される。第1吸気管22の第2端は、過給機30のコンプレッサ32の吸気流入口に接続され、コンプレッサ32の吸気流出口には、第2吸気管24の第1端が接続される。第1吸気管22と第2吸気管24とは、互いにコンプレッサ32のハウジング内に形成された吸気通路(図示せず)を介してつながっている。
インタークーラ25は、第2吸気管24の途中に設けられ、第2吸気管24を流通する空気を冷却するように構成される。インタークーラ25は、たとえば空冷式または水冷式の熱交換器である。
第3吸気管27の第1端はインタークーラ25に、第3吸気管27の第2端は吸気マニホールド28に接続されている。また、第3吸気管27の途中には吸気絞り弁26が設けられている。吸気絞り弁26は、バルブ、モータ、および開度センサ(スロットルポジションセンサ)等を含んで構成される。吸気絞り弁26の開度に応じて吸気マニホールド28へ供給される空気流量が変化する。吸気絞り弁26の開度は、制御装置200によって制御される。
吸気マニホールド28は、エンジン本体10の各気筒12の吸気ポート(図示せず)に連結される。各気筒12の燃焼室内においては、吸気マニホールド28から供給される吸気ガスと、インジェクタ16から供給される燃料とによって混合気が生成され、燃料が燃焼することによって排気ガスが生成される。燃焼により生成される排気ガスは、エンジン1の排気通路を流れて車外へ排出される。エンジン1の排気通路は、排気マニホールド50と、タービン36と、第1排気管54と、排気浄化装置56と、第2排気管58とを含む。
排気マニホールド50の第1端は、エンジン本体10の各気筒12の排気ポート(図示せず)に連結される。排気マニホールド50の第2端は、過給機30のタービン36の排気流入口に接続される。各気筒12の排気ポートから排出される排気ガスは、排気マニホールド50を通じてタービン36に供給される。
排気マニホールド50は二重管構造体を含む。この実施の形態では、排気マニホールド50の全体が二重管構造体になっている。排気マニホールド50は、内管51と外管52と中間空間Vsとを有する。中間空間Vsは、内管51と外管52との間に形成される空間である。排気ガスは内管51内を流れる。内管51の表面(内面)は排気ガスに接し、外管52の表面(外面)は大気に接する。
図2は、排気マニホールド50(二重管構造体)の一部を拡大して示す断面図である。図2を参照して、排気マニホールド50は、鋳造によって製造された鋳物である。排気マニホールド50は、内管51および外管52に加えてフランジ部53をさらに含む。図2には排気マニホールド50の一端のみを図示しているが、フランジ部53は、排気マニホールド50の両端に形成されている。内管51と外管52とは、互いにフランジ部53を介してつながっている。内管51、外管52、およびフランジ部53は、たとえば鋳鉄で形成されている。内管51および外管52の各々の厚さは、たとえば5mm程度である。排気マニホールド50は、シームレス構造の二重管構造体であり、内管51と外管52とフランジ部53とは、鋳造によって一体成形されている。気密性低下の要因になりやすい継ぎ目(溶接箇所等)が無いため、中間空間Vsは高い気密性を有する。これにより、中間空間Vsを減圧するときには、中間空間Vsの圧力を所望の圧力(たとえば、100Pa以下)まで早期に減圧することが可能になる。また、中間空間Vsの減圧処理を停止した後に、中間空間Vsを減圧停止時の圧力で維持しやすくなる。
再び図1を参照して、エンジン1は、中間空間Vsを減圧するための減圧装置をさらに備える。減圧装置は、真空ポンプ60と真空配管61と制御弁62とを含んで構成される。真空配管61は、真空ポンプ60の負圧発生部と排気マニホールド50の中間空間Vsとを接続している。真空配管61は、減圧対象(この実施の形態では、中間空間Vs)から気体成分を吸引して減圧対象を減圧するための通路(減圧通路)として機能する。真空配管61の途中には制御弁62が設けられている。この実施の形態では、制御弁62として、制御装置200によってON(開)/OFF(閉)制御されるオンオフバルブを採用する。制御弁62は、たとえば電磁弁(ソレノイドバルブ)である。ただし、制御弁62は、上記オンオフバルブに限られず、中間開度にも調整可能な連続制御弁であってもよい。
真空ポンプ60は、出力軸11(たとえば、クランクシャフト)の回転力を利用して駆動される。真空ポンプ60は、出力軸11に連動するように出力軸11に連結される駆動部(たとえば、ロータ)を含み、出力軸11が回転することによって、真空ポンプ60の駆動部が駆動され、真空ポンプ60の所定の部位(負圧発生部)に負圧(大気圧よりも低い圧力)が発生する。出力軸11の回転力は、たとえばドライブギヤ(図示せず)を介して真空ポンプ60の駆動部に伝達される。ドライブギヤは、出力軸11と噛み合う他のギヤとともに、エンジン本体10のギヤボックス(図示せず)内に収容されている。
真空ポンプ60は、たとえばベーン式真空ポンプである。制御弁62は、真空ポンプ60による減圧処理(たとえば、真空引き)が行なわれるときにON状態(開いた状態)にされる。真空ポンプ60の作動中に制御弁62が開かれると、中間空間Vsに存在する気体成分等が真空配管61を通じて真空ポンプ60に吸引され、中間空間Vsが減圧される。なお、中間空間Vsの圧力を制御するために、中間空間Vsの圧力を検出する圧力センサを設けてもよい。
エンジン1が搭載される車両は、ブレーキ踏力(図示しないブレーキペダルを踏む力)を補助するマスターバック70を備える。マスターバック70は、負圧を利用した倍力装置である。真空ポンプ60は、マスターバック70用の負圧を発生させるように構成される。たとえば、マスターバック70は、内部圧力が負圧に保持される負圧室(図示せず)と、ブレーキペダルの操作に応じて内部圧力が変化する変圧室(図示せず)とを備え、これら負圧室と変圧室との内部圧力の差に応じてブレーキペダルに付与されたブレーキ踏力を増大させるように構成される。そして、マスターバック70の負圧室が図示しない制御弁(たとえば、制御装置200によって開閉制御される制御弁)を介して真空ポンプ60の負圧発生部に接続される。なお、負圧室の圧力を制御するために、負圧室の圧力を検出する圧力センサを設けてもよい。
タービン36の排気流出口には、第1排気管54の第1端が接続されている。排気マニホールド50と第1排気管54とは、互いにタービン36のハウジング内に形成された排気通路(図示せず)を介してつながっている。また、第1排気管54の第2端は、排気浄化装置56の排気流入口に接続されている。
第1排気管54の所定部位(たとえば、排気浄化装置56の排気流入口付近)には、排気温センサ104が設けられている。排気温センサ104は、第1排気管54内を流れる排気ガスの温度を検出し、その検出値Tcを制御装置200へ出力する。
排気浄化装置56の例としては、PM(粒子状物質)除去フィルタ、NOx触媒、DPNR(Diesel Particlulate-NOx Reduction)が挙げられる。排気浄化装置56の排気流出口には、第2排気管58の第1端が接続されている。排気浄化装置56で浄化された排気ガスは、第2排気管58を通り、図示しないマフラー等を経由して車外に排出される。
エンジン1においては、コンプレッサ32とタービン36とによって過給機30(たとえば、可変ノズルターボ)が構成される。コンプレッサ32のハウジング内の吸気通路にはコンプレッサホイール34が設けられ、タービン36のハウジング内の排気通路にはタービンホイール38が設けられる。コンプレッサホイール34とタービンホイール38とは、連結軸35により連結されて一体的に回転する。コンプレッサホイール34は、タービン36を流通する排気ガスによってタービンホイール38とともに回転駆動され、第1吸気管22を通じてコンプレッサ32に吸入される空気を圧縮して第2吸気管24へ吐出する。これにより、エンジン本体10の吸気(すなわち、各気筒12の燃焼室に吸入される空気)が過給される。
エンジン1は、エアフローメータ102と、吸気温センサ106と、水温センサ110と、アクセルペダルポジションセンサ112と、大気圧センサ114と、外気温センサ116とをさらに備える。
エアフローメータ102は、外部からエアクリーナ20を通じて取り込まれてエンジン本体10に供給される空気量(新気量)を検出し、その検出値FIを制御装置200へ出力する。吸気温センサ106は、吸気マニホールド28における吸気ガスの温度(吸気温度)を検出し、その検出値Tbを制御装置200へ出力する。水温センサ110は、エンジン本体10の冷却水の温度(エンジン冷却水温)を検出し、その検出値TEを制御装置200へ出力する。アクセルペダルポジションセンサ112は、アクセルペダル(図示せず)の踏込量(アクセル開度)を検出し、その検出値APを制御装置200へ出力する。大気圧センサ114は大気圧を検出し、その検出値Paを制御装置200へ出力する。外気温センサ116は外気温を検出し、その検出値Taを制御装置200へ出力する。
制御装置200は、演算装置としてのCPU(Central Processing Unit)と、記憶装置と、各種信号を入出力するための入出力ポートと(いずれも図示せず)を含んで構成される。記憶装置は、作業用メモリとしてのRAM(Random Access Memory)と、保存用ストレージ(ROM(Read Only Memory)、書き換え可能な不揮発性メモリ等)とを含む。制御装置200は、入力ポートに接続された各種機器および各種センサから信号を受信し、受信した信号に基づいて出力ポートに接続された各種機器(インジェクタ16等)を制御する。記憶装置に記憶されているプログラムをCPUが実行することで、各種制御が実行される。ただし、各種制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で処理することも可能である。
ところで、自動車用エンジンの排気マニホールドとしては、ステンレス鋼製の排気マニホールドと、鋳鉄製の排気マニホールドとが知られている。このうち、鋳鉄製の排気マニホールドは、高温の排気ガスが流通したときに温度が上昇して表面が酸化しやすい。このため、鋳鉄製の排気マニホールドを採用する場合には、排気マニホールドの表面が酸化しないようにエンジンの燃焼条件(燃料噴射量および燃料噴射タイミング等)を調整して排気温度を低下させることが求められる。しかし、燃焼条件を決める上で、排気マニホールドの酸化防止の観点から上記のような制約を受けると、エンジンの出力性能や燃費性能などの観点から燃焼条件の最適化を図ることが難しくなるため、エンジンの性能を十分に発揮できなくなる可能性がある。
そこで、この実施の形態に係るエンジン1では、エンジン本体10に接続される排気マニホールド50として、鋳物(たとえば、鋳鉄)で形成された二重管構造体(図2参照)を採用し、以下に説明するような減圧制御を実行することで、排気マニホールド50内を高温の排気ガスが流通した場合でも排気マニホールド50の外管52の表面の変質(たとえば、酸化)を抑制することができるようにしている。
エンジン1において、制御装置200は、外管52の表面温度に相関するパラメータ(以下、「温度パラメータ」とも称する)を用いて外管52の表面温度が許容温度を超えるか否かを判断し、外管52の表面温度が許容温度を超えると判断される場合には、制御弁62を開いて真空ポンプ60により中間空間Vsを減圧する。中間空間Vsが減圧されると、中間空間Vsに存在する気体が少なくなる。これにより、中間空間Vsの熱伝導率(ひいては、内管51および外管52間の熱伝導率)が低くなる。このため、中間空間Vsが減圧されているときには、中間空間Vsの断熱作用により内管51から外管52へ熱が伝わりにくくなり、内管51内を高温の排気ガスが流れていても、外管52の温度(ひいては、外管52の表面温度)が上昇しにくくなる。このため、中間空間Vsを減圧することで、温度上昇に起因する外管52の表面の変質を抑制することができる。
また、制御装置200は、外管52の表面温度が許容温度を超えないと判断される場合には、減圧装置により中間空間Vsを減圧しない。より具体的には、制御弁62を閉じた状態にする。制御弁62を閉じることで、真空ポンプ60の負荷が小さくなり、エンジン1における損失(たとえば、エンジンフリクション)が低減される。このように、減圧装置による減圧処理の頻度を減らすことで、真空ポンプ60を駆動するために消費されるエネルギーの量が少なくなるため、エンジン1における燃費(燃料消費率)を向上させることができる。
温度パラメータとしては、たとえばエンジン本体10の運転条件を採用できる。エンジン本体10の運転条件は、エンジン本体10の運転時における燃焼室での燃焼条件(以下、単に「燃焼条件」とも称する)とエンジン本体10の状態(以下、単に「エンジン運転状態」とも称する)とを含む。燃焼条件およびエンジン運転状態の各々は、外管52の表面温度に相関するパラメータである。たとえば、燃焼室に供給される燃料の量(燃料噴射量)が多いほど、また燃焼室に供給される吸気ガスの温度(吸気温度)が高いほど、燃焼により生成される熱エネルギーが大きくなり、排気マニホールド50に排出される排気温度が高くなる傾向がある。さらに、燃焼時において、エンジン回転速度が高速であるほど、またエンジン冷却水温が高いほど、燃焼によって排気マニホールド50に排出される排気温度が高くなる傾向がある。そして、排気マニホールド50に排出される排気温度が高くなるほど外管52の表面温度が高くなる傾向がある。
上記のように、この実施の形態に係るエンジン1では、外管52の表面温度が許容温度を超えると判断される場合には、制御装置200によって中間空間Vsの減圧処理が行なわれる。これにより、排気マニホールド50における外管52の表面温度が過剰に上昇することが抑制される。すなわち、この実施の形態では、温度上昇に起因する外管52の表面の変質が生じ得るときに中間空間Vsの減圧処理が行なわれることによって、変質が生じないように外管52の表面温度が制御される。以下、図3を用いて、この実施の形態に係る外管表面の温度制御について説明する。
図3は、制御装置200により実行される外管表面の温度制御を説明するためのフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、所定の制御周期毎にメインルーチン(図示せず)から呼び出されて繰り返し実行される。
図3を参照して、ステップ(以下、ステップを「S」と記載する)11にて、制御装置200は、エンジン本体10の運転条件(より特定的には、燃焼条件およびエンジン運転状態)を取得する。燃焼条件としては、たとえば燃料噴射量が取得される。また、エンジン運転状態としては、たとえばエンジン回転速度(回転速度センサ108の検出値NE)が取得される。
燃料噴射量は、制御装置200において、ユーザからの要求(たとえば、アクセルペダルポジションセンサ112の検出値AP)およびエンジン運転状態(たとえば、エンジン回転速度)などに基づいて算出される。たとえば、エンジン1の出力性能および/または燃費性能の観点から最適な燃焼条件(燃料噴射量、燃料噴射タイミング等)が算出される。算出された燃焼条件は、この図3の処理と並行して行なわれるインジェクタ16の制御において使用される。
S12にて、制御装置200は、上記S11で取得した燃料噴射量およびエンジン回転速度(温度パラメータ)を用いて、外管52の表面温度が許容温度を超えるか否かを判断する。以下、図4を参照して、S12の判断処理について説明する。
図4は、燃料噴射量とエンジン回転速度と排気温度との関係を示す図である。図4中に示される数値は、予め実験によりエンジン運転条件(より特定的には、燃料噴射量およびエンジン回転速度で規定される条件)ごとに測定された排気マニホールド50内の排気温度である。
図4に示されるように、基本的には、燃料噴射量が多くなるほど、またエンジン回転速度が高速であるほど、排気温度は高くなる。排気温度が高くなるほど外管52の表面温度は高くなるため、この実施の形態では、エンジン運転条件から推定される排気温度が所定温度以上になるか否かに基づいて、外管52の表面温度が許容温度を超えるか否かが判断される。より具体的には、排気温度が650℃以上になる場合には、外管52の表面温度が許容温度を超えると判断され、排気温度が650℃未満になる場合には、外管52の表面温度が許容温度を超えないと判断される。
再び図3を参照して、S12において外管52の表面温度が許容温度を超えると判断される場合(S12にてYES)には、制御装置200は、S13において制御弁62をON状態(開いた状態)にする。制御弁62が開かれることによって、真空ポンプ60により中間空間Vsが減圧され、中間空間Vsが真空状態になる。他方、S12において外管52の表面温度が許容温度を超えないと判断される場合(S12にてNO)には、制御装置200は、S14において制御弁62をOFF状態(閉じた状態)にする。制御弁62が閉じられることで、真空ポンプ60と中間空間Vsとが連通しなくなる。このため、制御弁62が閉じた状態では、真空ポンプ60による中間空間Vsの減圧処理は行なわれない。
図5は、制御弁62の開閉制御(図3のS12〜S14)で用いられる制御マップを示す図である。この制御マップは、たとえば予め実験等によって作成されて制御装置200の記憶装置に記憶されている。
図4とともに図5を参照して、図5に示す制御マップでは、排気温度が650℃以上になるエンジン運転条件(図4参照)には「ON」が、排気温度が650℃未満になるエンジン運転条件(図4参照)には「OFF」が規定されている。制御装置200は、こうした制御マップを参照して、制御弁62をエンジン運転条件(より特定的には、燃料噴射量およびエンジン回転速度で規定される条件)に応じた状態(ON/OFF)にする。これにより、排気温度が650℃以上になるエンジン運転条件では制御弁62が開かれ、排気温度が650℃未満になるエンジン運転条件では制御弁62が閉じられる。
上記図3に示す一連の処理が繰り返し実行されることで、エンジン運転条件から外管52の表面温度が許容温度を超えると判断される場合(たとえば、排気温度が650℃以上になる場合)には、制御弁62がON状態(開いた状態)になる。これにより、真空ポンプ60によって中間空間Vsが減圧される。中間空間Vsが減圧されると、内管51内を高温の排気ガスが流れていても、外管52の表面温度が上昇しにくくなる。このため、真空ポンプ60によって中間空間Vsを減圧することで、温度上昇に起因する外管52の表面の変質(たとえば、鋳鉄の酸化)を抑制することができる。また、エンジン運転条件から外管52の表面温度が許容温度を超えないと判断される場合(たとえば、排気温度が650℃未満になる場合)には、制御弁62がOFF状態(閉じた状態)になる。これにより、真空ポンプ60を駆動するために消費されるエネルギーの量が少なくなり、エンジン1における燃費を向上させることができる。たとえば、エンジン本体10において暖機運転(たとえば、アイドリング運転)が行なわれるときなどには、エンジン運転条件から外管52の表面温度が許容温度を超えないと判断される。
また、排気マニホールド50の中間空間Vsを真空状態(好ましくは、1Pa以下)にすることで、排気マニホールド50からの放射音(燃焼騒音)が低減される。これにより、エンジン1の静粛性が向上する。
上記実施の形態では、温度パラメータとして、燃焼条件(より特定的には、燃料噴射量)およびエンジン運転状態(より特定的には、エンジン回転速度)を採用している。燃焼条件およびエンジン運転状態から、高い精度で外管の表面温度を推定することができる。しかも、こうした推定方法によれば、燃焼により排気ガスが生成される前に排気温度(ひいては、外管52の表面温度)を予測することができるため、外管52の表面温度が許容温度を超えるか否かの判断を早期に行なって、減圧装置による減圧処理を早期に実行することが可能になる。なお、制御装置200は、燃料噴射量およびエンジン回転速度に加えて、吸気温度(吸気温センサ106の検出値Tb)およびエンジン冷却水温(水温センサ110の検出値TE)なども考慮して、外管52の表面温度が許容温度を超えるか否かを判断するように構成されてもよい。
上記実施の形態において、真空ポンプ60は、エンジン本体10の出力軸11の回転力を利用して駆動されるため、エンジン本体10の運転時においては常に吸引を行なっている。しかし、減圧装置で用いられるポンプは、真空ポンプ60のようなエンジン本体10を駆動源とするポンプに限られず、電動ポンプであってもよい。図6は、減圧装置の変形例を示す図である。以下、図1に示したエンジン1との相違点を中心に、図6に示すエンジン1Aの減圧装置について説明する。
図6を参照して、エンジン1Aは、真空ポンプ60および制御弁62の代わりに電動ポンプ60Aを備える。電動ポンプ60Aは、たとえば車載バッテリから電力の供給を受けるモータを駆動源とすることができる。電動ポンプ60Aの負圧発生部は、真空配管61を介して排気マニホールド50の中間空間Vsと接続されている。エンジン1Aは、図3の処理を実行する制御装置200Aを備える。ただし、S12において外管52の表面温度が許容温度を超えると判断される場合(S12にてYES)には、制御装置200Aは、S13において電動ポンプ60Aを作動させる。電動ポンプ60Aが作動することによって、電動ポンプ60Aにより中間空間Vsが減圧される。他方、S12において外管52の表面温度が許容温度を超えないと判断される場合(S12にてNO)には、制御装置200Aは、S14において電動ポンプ60Aを停止させる。電動ポンプ60Aが停止することで、電動ポンプ60Aによる中間空間Vsの減圧処理が行なわれなくなる。
図6に示すエンジン1Aでは、減圧装置が電動ポンプ60Aを用いて減圧処理を行なうため、エンジン本体10の状態とは無関係に電動ポンプ60Aを独立して駆動することができる。また、減圧装置による中間空間Vsの減圧処理の実行/非実行を電動ポンプ60Aの作動/停止によって容易に切り替えることができる。
電動ポンプ60Aの停止時においては、中間空間Vsを開放することにより中間空間Vsに空気を入れてもよい。中間空間Vsに空気を入れる(たとえば、中間空間Vsの圧力を大気圧にする)ことで、中間空間Vsの熱伝導率が高くなるため、内管51の放熱性を高めることができる。中間空間Vsの熱伝導率が高くなると、内管51の熱が中間空間Vsおよび外管52を通じて外部へ放出されやすくなる。
図6の例では、電動ポンプ60Aが弁を介さずに直接的に中間空間Vsに接続されているが、制御装置200Aによって開度調整(たとえば、開/閉制御)される真空バルブを真空配管61の途中に設けて、電動ポンプ60Aが真空バルブを介して中間空間Vsに接続されるようにしてもよい。そして、電動ポンプ60Aの停止時においては、真空バルブを閉じて中間空間Vsを密閉することにより中間空間Vsを減圧状態(たとえば、真空状態)で維持するようにしてもよい。
二重管構造体の材料は、鋳鉄に限られず、鋳物である範囲で任意に変更できる。また、二重管構造体において内管と外管とをつなぐ部材は、フランジ部に限られない。また、排気通路において二重管構造体が適用される範囲および位置は任意に変更できる。たとえば、排気マニホールド50の一部(たとえば、特に温度上昇しやすい部位)のみが二重管構造体で形成されていてもよい。二重管構造体で形成される排気マニホールド50の部位は、フランジ部近傍の部位であってもよいし、フランジ部から離れた部位であってもよい。また、排気マニホールド50に代えて、または加えて、タービン36のハウジングが二重管構造体を有していてもよい。排気マニホールド50および過給機30の両方が二重管構造体を有する場合、排気マニホールド50の二重管構造体と、過給機30(より特定的には、タービン36)のハウジングによって形成される二重管構造体とは、互いにつながっていてもよいし、互いに離間していてもよい。
上記実施の形態では、温度パラメータとしてエンジン運転条件を採用しているが、外管52の表面温度が許容温度を超えるか否かの判断に用いられる温度パラメータは、エンジン運転条件に限定されず、外管52の表面温度に相関する他のパラメータであってもよい。温度パラメータは、外管52における所定部位の温度(たとえば、外管52の表面温度)であってもよいし、外管52と熱交換し得る部位の温度(たとえば、内管51内を流れる排気ガスの温度)であってもよい。たとえば、内管51よりも下流側の排気温度の実測値(排気温センサ104の検出値Tc)から、内管51内を流れる排気ガスの温度を推定することができる。
図7は、二重管構造体の変形例を示す図である。図7を参照して、この二重管構造体は、内管51A、外管52A、および接続部53Aを含む。内管51Aと外管52Aとは、互いに接続部53Aを介してつながっている。内管51Aと外管52Aと接続部53Aとは、鋳造によって一体成形されている。すなわち、内管51A、外管52A、および接続部53Aの各々は、鋳物で形成されている。
外管52Aの表面には、外管52Aの表面温度を検出する温度センサ120が設けられている。温度センサ120の検出値は、制御装置200Bへ出力される。制御装置200Bは、温度センサ120の出力(すなわち、温度センサ120により検出された外管52Aの表面温度)を用いて、外管52Aの表面温度が許容温度を超えるか否かを判断するように構成される。
図8は、図7に示す制御装置200Bにより実行される外管表面の温度制御を説明するためのフローチャートである。以下、図3に示した処理との相違点を中心に、図8に示す処理について説明する。
図8を参照して、この処理では、図3のS11の代わりに、S11Aが実行される。S11Aにて、制御装置200Bは、外管52Aの表面温度の実測値(温度センサ120の検出値)を取得する。そして、S12にて、制御装置200Bは、上記S11Aで取得した外管52Aの表面温度の実測値(温度パラメータ)を用いて、外管52Aの表面温度が許容温度を超えるか否かを判断する。たとえば、外管52Aの表面温度(実測値)が所定値以上である場合には、外管52Aの表面温度が許容温度を超えると判断され、外管52Aの表面温度(実測値)が所定値未満である場合には、外管52Aの表面温度が許容温度を超えないと判断される。制御装置200Bは、たとえば、図5に示した制御マップに代えて、外管52Aの表面温度と制御弁62の状態(ON/OFF)との関係を示す制御マップ(図示せず)を用いて、制御弁62の開閉制御を行なうことができる。
上記図8の処理によれば、温度センサ120の検出値から外管52Aの表面温度が許容温度を超えると判断される場合には、制御弁62がON状態(開いた状態)になる。これにより、温度上昇に起因する外管52Aの表面の変質を抑制することができる。温度センサ120の検出値から外管52Aの表面温度が許容温度を超えないと判断される場合には、制御弁62がOFF状態(閉じた状態)になる。これにより、エンジン1における燃費を向上させることができる。
上記S11Aにおいて、制御装置200Bは、温度センサ120の検出値を用いて外管52Aの表面温度が許容温度を超えるか否かを判断しているが、温度センサ120の検出値の代わりに、排気温センサ104の検出値Tc(図1)および外気温センサ116の検出値Ta(図1)を用いて外管52Aの表面温度が許容温度を超えるか否かを判断してもよい。
本発明のエンジンが適用される対象は、車両に限られず任意である。適用対象は、たとえば、他の乗り物(船、飛行機等)であってもよい。
なお、上記した変形例は、その全部または一部を組み合わせて実施してもよい。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。