JP6973586B2 - 駆動回路 - Google Patents
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Description
このようなD級増幅において、自励発振の周波数を安定化するために、自励発振のための帰還経路に、PLL(Phase Locked Loop)を組み込んで、自励発振の信号を、基準信号の周波数に追従させる技術が提案されている(特許文献2参照)。
また、上記構成では、源信号に対して、増幅後の出力信号の再現性が悪いという点も指摘されている。この理由の1つに、ローパスフィルターで復調した出力信号(最終出力)ではなく、途中段階の変調信号を帰還する点が挙げられる。なお、源信号に対して出力信号の再現性が悪いと、インクの吐出不良等を引き起こし、印刷品質の低下を招く。
そこで、本発明のいくつかの態様の目的の一つは、圧電素子に印加する駆動信号をD級増幅する液体吐出装置において、比較的簡単な構成で、源信号に対する出力信号の再現性を向上させて、印刷品質の低下を防ぐことができる技術を提供することにある。
また、この一態様に係る液体吐出装置のように、コンデンサーの自己共振周波数を自励発振の周波数よりも高くすると、異常発振(例えば2倍の周波数での発振)や、自励発振の周波数のばらつきなどの発生を抑えることができる。したがって、この一態様に係る液体吐出装置によれば、ローパスフィルターで濾波した駆動信号のリップルが小さくなるなど、波形の再現性が向上する。
なお、自励発振の周波数とは、自励発振信号の周波数をいう。
コンデンサーのインピーダンスは、比較的低い周波数領域では、周波数が高くなるにつれて低下するが、高い周波数領域では、寄生インダクタンス成分や電極の比抵抗などの損失によって、周波数の変化に対して極小値を持つ特性となる。この極小値となる周波数を自己共振周波数としている。
源信号とは、圧電素子の変位を規定する駆動信号の源となる信号、すなわち、変調前の信号であって、駆動信号の波形の基準となる信号(規定する信号を含み、アナログ、デジタルを問わない)。変調信号とは、源信号をパルス変調(例えばパルス幅変調、パルス密度変調等)して得られるデジタル信号である。
もし、当該周波数を1MHzよりも低くしてしまうと、再現される駆動信号の波形のエッジが鈍って丸くなってしまう。換言すれば、角が取れて波形が鈍ってしまう。駆動信号の波形が鈍ると、波形の立ち上がり、立ち下がりエッジに応じて動作する圧電素子の変位が緩慢になり、吐出時の尾引きや、吐出不良などを発生させて、印刷の品質を低下させてしまう。
一方、自励発振の周波数を8MHzよりも高くすれば、駆動信号の波形の分解能は高まる。ただし、トランジスターにおけるスイッチング周波数が上昇することによって、スイッチング損失が大きくなり、AB級アンプなどのリニア増幅と比べて、優位性を有する省電力性、省発熱性が損なわれてしまう。
このため、上記一態様に係る液体吐出装置において、前記変調信号の周波数は、1MHz以上8MHz以下であることが好ましい。
前記遅延要素は、周波数カットフィルターであることが好ましい。なお、周波数カットフィルターとは、具体的には例えば、ローパスフィルター、ハイパスフィルター、または、バンドパスフィルターである。
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えばヘッドユニットの単体など、様々な態様で実現することができる。
この図に示されるように、印刷装置1は、移動体2を、主走査方向に移動(往復動)させる移動機構3を備える。
移動機構3は、移動体2の駆動源となるキャリッジモーター31と、両端が固定されたキャリッジガイド軸32と、キャリッジガイド軸32とほぼ平行に延在し、キャリッジモーター31により駆動されるタイミングベルト33と、を有している。
移動体2のキャリッジ24は、キャリッジガイド軸32に往復動自在に支持されるとともに、タイミングベルト33の一部に固定されている。そのため、キャリッジモーター31によりタイミングベルト33を正逆走行させると、移動体2がキャリッジガイド軸32に案内されて往復動する。
また、移動体2のうち、印刷媒体Pと対向する部分にはヘッドユニット20が設けられる。このヘッドユニット20は、後述するように、多数のノズルからインク滴(液滴)を吐出させるためのものであり、フレキシブルケーブル190を介して各種の制御信号等が供給される構成となっている。
印刷媒体Pが搬送機構4によって搬送されたタイミングで、ヘッドユニット20が当該印刷媒体Pにインク滴を吐出することによって、印刷媒体Pの表面に画像が形成される。
この図に示されるように、印刷装置1では、制御ユニット10とヘッドユニット20とがフレキシブルケーブル190を介して接続される。
制御ユニット10は、制御部100と、キャリッジモーター31と、キャリッジモータードライバー35と、搬送モーター41と、搬送モータードライバー45と、2つの駆動回路50−a、50−bと、を有する。このうち、制御部100は、ホストコンピューターから画像データが供給されたときに、各部を制御するための各種の制御信号等を出力する。
詳細には、第1に、制御部100は、キャリッジモータードライバー35に対して制御信号Ctr1を供給し、キャリッジモータードライバー35は、当該制御信号Ctr1にしたがってキャリッジモーター31を駆動する。これにより、キャリッジ24における主走査方向の移動が制御される。
第2に、制御部100は、搬送モータードライバー45に対して制御信号Ctr2を供給し、搬送モータードライバー45は、当該制御信号Ctr2にしたがって搬送モーター41を駆動する。これにより、搬送機構4による副走査方向の移動が制御される。
第3に、制御部100は、2つの駆動回路50−a、50−bのうち、一方の駆動回路50−aにデジタルのデータdAを供給し、他方の駆動回路50−bにデジタルのデータdBを供給する。ここで、データdAは、ヘッドユニット20に供給する駆動信号のうち、駆動信号COM−Aの波形を規定し、データdBは、駆動信号COM−Bの波形を規定する。
なお、詳細については後述するが、駆動回路50−aは、データdAをアナログ変換した後に、D級増幅した駆動信号COM−Aをヘッドユニット20に供給する。同様に、駆動回路50−bは、データdBをアナログ変換した後に、D級増幅した駆動信号COM−Bをヘッドユニット20に供給する。また、駆動回路50−a、50−bについては、入力するデータ、および、出力する駆動信号が異なるのみであり、後述するように回路的な構成は同一である。このため、駆動回路50−a、50−bについて特に区別する必要がない場合(例えば後述する図10を説明する場合)には、「−(ハイフン)」以下を省略し、単に符号を「50」として説明する。
第4に、制御部100は、ヘッドユニット20に、クロック信号Sck、データ信号Data、制御信号LAT、CHを供給する。
選択制御部210は、選択部230のそれぞれに対して駆動信号COM−A、COM−Bのいずれかを選択すべきか(または、いずれも非選択とすべきか)を、制御部100から供給される制御信号等によって指示し、選択部230は、選択制御部210の指示にしたがって、駆動信号COM−A、COM−Bを選択し、圧電素子60の一端にそれぞれに駆動信号として供給する。なお、図では、この駆動信号の電圧をVoutと表記している。
圧電素子60のそれぞれにおける他端は、この例では、電圧VBSが共通に印加されている。
図に示されるように、ヘッドユニット20は、圧電素子60と振動板621とキャビティ(圧力室)631とリザーバー641とノズル651とを含む。このうち、振動板621は、図において上面に設けられた圧電素子60によって変位(屈曲振動)し、インクが充填されるキャビティ631の内部容積を拡大/縮小させるダイヤフラムとして機能する。ノズル651は、ノズルプレート632に設けられるとともに、キャビティ631に連通する開孔部である。
また、圧電素子60は、ヘッドユニット20においてキャビティ631とノズル651とに対応して設けられ、当該圧電素子60は、図1において、選択部230にも対応して設けられる。このため、圧電素子60、キャビティ631、ノズル651および選択部230のセットは、ノズル651毎に設けられることになる。
この図に示されるように、ノズル651は、例えば2列で次のように配列している。詳細には、1列分でみたとき、複数個のノズル651が副走査方向に沿ってピッチPvで配置する一方、2列同士では、主走査方向にピッチPhだけ離間して、かつ、副走査方向にピッチPvの半分だけシフトした関係となっている。
なお、ノズル651は、カラー印刷する場合には、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)などの各色に対応したパターンが例えば主走査方向に沿って設けられるが、以下の説明では、簡略化するために、単色で階調を表現する場合について説明する。
すなわち、1回のインク滴の吐出で1ドットが形成される場合、ドット間隔Dは、速度vを、インクの吐出周波数fで除した値(=v/f)、換言すれば、インク滴が繰り返し吐出される周期(1/f)においてヘッドユニット20が移動する距離で示される。
なお、図4の例では、ピッチPhがドット間隔Dに対して係数nで比例する関係にして、2列のノズル651から吐出されるインク滴が、印刷媒体Pにおいて同一列で揃うように着弾させている。このため、(b)に示されるように、副走査方向のドット間隔が、主走査方向のドット間隔の半分となっている。ドットの配列は、図示の例に限られないことは言うまでもない。
また、印刷速度とは別に、解像度を高めるためには、単位面積当たりで形成されるドット数を増やせば良い。ただし、ドット数を増やす場合に、インクを少量にしないと、隣り合うドット同士が結合してしまうだけでなく、インクの吐出周波数fを高めないと、印刷速度が低下する。
このように、高速印刷および高解像度印刷を実現するためには、インクの吐出周波数fを高める必要があるのは、上述した通りである。
そこで、駆動信号COM−A、COM−Bについて説明し、この後、駆動信号COM−A、COM−Bを選択するための構成について説明する。なお、駆動信号COM−A、COM−Bについては、それぞれ駆動回路50によって生成されるが、駆動回路50については、便宜的に、駆動信号COM−A、COM−Bを選択するための構成の後に説明する。
図に示されるように、駆動信号COM−Aは、印刷周期Taのうち、制御信号LATが出力されて(立ち上がって)から制御信号CHが出力されるまでの期間T1に配置された台形波形Adp1と、印刷周期Taのうち、制御信号CHが出力されてから次の制御信号LATが出力されるまでの期間T2に配置された台形波形Adp2とを連続させた波形となっている。
この図に示されるように、選択制御部210には、クロック信号Sck、データ信号Data、制御信号LAT、CHが制御ユニット10から供給される。選択制御部210では、シフトレジスタ(S/R)212とラッチ回路214とデコーダー216との組が、圧電素子60(ノズル651)のそれぞれに対応して設けられている。
データ信号Dataは、クロック信号Sckに同期してノズルごとに、ヘッドユニット20の主走査に合わせて制御部100からシリアルで供給される。シリアルで供給されたデータ信号Dataを、ノズルに対応して2ビット分、一旦保持するための構成がシフトレジスタ212である。
詳細には、圧電素子60(ノズル)に対応した段数のシフトレジスタ212が互いに縦続接続されるとともに、シリアルで供給されたデータ信号Dataが、クロック信号Sckにしたがって順次後段に転送される構成となっている。
なお、圧電素子60の個数をm(mは複数)としたときに、シフトレジスタ212を区別するために、データ信号Dataが供給される上流側から順番に1段、2段、…、m段と表記している。
デコーダー216は、ラッチ回路214によってラッチされた2ビットのデータ信号Dataをデコードして、制御信号LATと制御信号CHとで規定される期間T1、T2ごとに、選択信号Sa、Sbを出力して、選択部230での選択を規定する。
この図において、ラッチされた2ビットの印刷データDataについては(MSB、LSB)と表記している。デコーダー216は、例えばラッチされた印刷データDataが(0、1)であれば、選択信号Sa、Sbの論理レベルを、期間T1ではそれぞれH、Lレベルとし、期間T2ではそれぞれL、Hレベルとして、出力するということを意味している。
なお、選択信号Sa、Sbの論理レベルについては、クロック信号Sck、印刷データData、制御信号LAT、CHの論理レベルよりも、レベルシフター(図示省略)によって、高振幅論理にレベルシフトされる。
この図に示されるように、選択部230は、インバーター(NOT回路)232a、232bと、トランスファーゲート234a、234bとを有する。
デコーダー216からの選択信号Saは、トランスファーゲート234aにおいて丸印が付されていない正制御端に供給される一方で、インバーター232aによって論理反転されて、トランスファーゲート234aにおいて丸印が付された負制御端に供給される。同様に、選択信号Sbは、トランスファーゲート234bの正制御端に供給される一方で、インバーター232bによって論理反転されて、トランスファーゲート234bの負制御端に供給される。
トランスファーゲート234aの入力端には、駆動信号COM−Aが供給され、トランスファーゲート234bの入力端には、駆動信号COM−Bが供給される。トランスファーゲート234a、234bの出力端同士は、共通接続されるとともに、対応する圧電素子60の一端に接続される。
トランスファーゲート234aは、選択信号SaがHレベルであれば、入力端および出力端の間を導通(オン)させ、選択信号SaがLレベルであれば、入力端と出力端との間を非導通(オフ)させる。トランスファーゲート234bについても同様に選択信号Sbに応じて、入力端および出力端の間をオンオフさせる。
ここで、制御信号LATが立ち上がると、ラッチ回路214のそれぞれは、シフトレジスタ212に保持されたデータ信号Dataを一斉にラッチする。図5において、L1、L2、…、Lmは、データ信号Dataが、1段、2段、…、m段のシフトレジスタ212に対応するラッチ回路214によってラッチされたデータ信号Dataを示している。
すなわち、第1に、デコーダー216は、当該データ信号Dataが(1、1)であって、大ドットのサイズを規定する場合、選択信号Sa、Sbを、期間T1においてH、Lレベルとし、期間T2においてもH、Lレベルとする。第2に、デコーダー216は、当該データ信号Dataが(0、1)であって、中ドットのサイズを規定する場合、選択信号Sa、Sbを、期間T1においてH、Lレベルとし、期間T2においてL、Hレベルとする。第3に、デコーダー216は、当該データ信号Dataが(1、0)であって、小ドットのサイズを規定する場合、選択信号Sa、Sbを、期間T1においてL、Lレベルとし、期間T2においてL、Hレベルとする。第4に、デコーダー216は、当該データ信号Dataが(0、0)であって、非記録を規定する場合、選択信号Sa、Sbを、期間T1においてL、Hレベルとし、期間T2においてL、Lレベルとする。
データ信号Dataが(1、1)であるとき、選択信号Sa、Sbは、期間T1においてH、Lレベルとなるので、トランスファーゲート234aがオンし、トランスファーゲート234bがオフする。このため、期間T1において駆動信号COM−Aの台形波形Adp1が選択される。選択信号Sa、Sbは期間T2においてもH、Lレベルとなるので、選択部230は、駆動信号COM−Aの台形波形Adp2を選択する。
このように期間T1において台形波形Adp1が選択され、期間T2において台形波形Adp2が選択されて、駆動信号として圧電素子60の一端に供給されると、当該圧電素子60に対応したノズル651から、中程度の量のインクが2回にわけて吐出される。このため、印刷媒体Pにはそれぞれのインクが着弾し合体して、結果的に、データ信号Dataで規定される通りの大ドットが形成されることになる。
したがって、ノズルから、中程度および小程度の量のインクが2回にわけて吐出される。このため、印刷媒体Pには、それぞれのインクが着弾して合体して、結果的に、データ信号Dataで規定された通りの中ドットが形成されることになる。
このため、期間T1においてノズル651の開孔部付近のインクが微振動するのみであり、インクは吐出されないので、結果的に、ドットが形成されない、すなわち、データ信号Dataで規定された通りの非記録になる。
なお、図5に示した駆動信号COM−A、COM−Bはあくまでも一例である。実際には、ヘッドユニット20の移動速度や印刷媒体Pの性質などに応じて、予め用意された様々な波形の組み合わせが用いられる。
また、ここでは、圧電素子60が、電圧の上昇に伴って上方向に撓む例で説明したが、電極611、612に供給する電圧を逆転させると、圧電素子60は、電圧の上昇に伴って下方向に撓むことになる。このため、圧電素子60が、電圧の上昇に伴って下方向に撓む構成では、図に例示した駆動信号COM−A、COM−Bが、電圧Vcを基準に反転した波形となる。
一般に、単位期間Tにおいてインク滴がQ(Qは2以上の整数)回吐出可能であって、当該Q回のインク滴の吐出で1ドットが形成される場合、インクの吐出周波数fはQ/Tと表すことができる。
本実施形態のように、印刷媒体Pに異なるサイズのドットを形成する場合の方が、1回のインク滴の吐出で1ドットを形成する場合と比較して、1ドットを形成するために要する時間(周期)が同じでも、1回のインク滴を1回吐出するため時間を短くする必要がある。
なお、2以上のインク滴を結合させないで2以上のドットを形成する第3方法については、特段の説明は要しないであろう。
他方の駆動回路50−bについても同様な構成であり、データdBから駆動信号COM−Bを出力する点についてのみ異なる。そこで以下の図10においては、駆動回路50−a、50−bについて区別しないで、駆動回路50として説明する。
ただし、入力されるデータや出力される駆動信号については、dA(dB)、COM−A(COM−B)などと表記して、駆動回路50−aの場合には、データdAを入力して駆動信号COM−Aを出力し、駆動回路50−bの場合には、データdBを入力して駆動信号COM−Bを出力する、ということを表すことにする。
この図に示されるように、駆動回路50は、LSI500や、Nチャネル型のトランジスターM1、M2のほか、抵抗やコンデンサーなどの各種素子から構成される。
加算器504の入力端(−)には、ピンVfbを介して入力した端子Outの電圧、すなわち、駆動信号COM−A(COM−B)が供給される。
加算器504は、入力端(−)の電圧を積分・減衰した上で、入力端(+)の電圧と演算する。詳細には、加算器504は、入力端(+)の電圧から、入力端(−)の積分・減衰電圧を差し引いた偏差を求め、当該偏差を示す信号Abを加算器510の入力端の一方に供給する。
なお、DAC502からコンパレーター520までに至る回路の電源電圧は、低振幅の3.3ボルトである。アナログ信号Aaの電圧が最大でも2ボルト程度であるのに対し、駆動信号COM−Aの電圧が最大で40ボルトを超える場合があるので、偏差を求めるにあたって両電圧の振幅範囲を合わせるため、駆動信号COM−A(COM−B)の電圧を減衰させている。
加算器510から出力される信号Asの電圧は、目標を示すアナログ信号Aaの電圧からピンVfbに供給された信号の減衰電圧を差し引いた偏差に、ピンIfbに供給された信号の減衰電圧を加算した電圧である。このため、加算器510による信号Asの電圧は、目標であるアナログ信号Aaの電圧から、出力である駆動信号COM−A(COM−B)の減衰電圧を指し引いた偏差を、当該駆動信号COM−A(COM−B)の高周波成分で補正した信号ということができる。
遅延器512は、信号Asを後述する時間だけ遅延させた信号Adを、コンパレーター520に供給する。
Vth1>Vth2
という関係に設定されている。
なお、ゲートドライバー530が出力する2つのゲート信号の論理レベルは、実際には、同時にHレベルとはならないように(すなわち、Nチャネル型のトランジスターM1、M2が同時にオンしないように)、タイミング制御しても良い。このため、ここでいう排他的とは、厳密にいえば、同時にHレベルになることがない(トランジスターM1、M2でいえば、同時にオンすることがない)、という意味である。
また、図10に示した構成では、デジタルのデータdA(dB)をDAC502によってアナログの信号Aaに変換したが、DAC502を介することなく、例えば制御部100による指示にしたがって外部回路から信号Aaの供給を受けても良い。デジタルのデータdA(dB)にしても、アナログの信号Aaにしても、駆動信号COM−A(COM−B)の波形を生成するにあたっての目標値を規定しているので、源信号であることには変わりはない。
トランジスターM1、M2のそれぞれは、この例ではNチャンネル型としているので、ゲート信号がHレベルであればオンする。このため、トランジスターM1のソース電極とトランジスターM2のドレイン電極との接続点Sd、すなわちインダクターL1の一端では、変調信号Msを増幅した変調増幅信号が現れることになる。このため、トランジスター対としてのトランジスターM1、M2が、変調信号Msを増幅した変調増幅信号を出力することになる。
抵抗R4、R23は、LSI500に対して外付けとなっているが、LSI500に内蔵された構成であっても良い。
上記HPFのカットオフ周波数は、上記LPFのカットオフ周波数よりも低く設定されるので、HPFとLPFとは、駆動信号COM−A(COM−B)のうち、所定の周波数域の周波数成分を通過させるBPF(Band Pass Filter)560として機能する。
ここで説明の便宜上、ピンIfbを介した帰還と、遅延器512による遅延とを除外した構成を想定したとき、駆動信号COM−A(COM−B)は、ピンVfbを介して積分・減衰された上で、加算器504に帰還されるので、変調信号Msは、当該帰還経路、すなわちLPF550と加算器504とを経由する経路の伝達関数で定まる周波数で自励発振することになる。
ただし、ピンVfbを介した帰還経路の遅延量が大であるために、当該ピンVfbを介した帰還のみでは、自励発振の周波数を、駆動信号COM−A(COM−B)の波形精度を十分に確保できるほど高くすることができない。
なお、遅延器512における遅延量については後述する。
この図に示されるように、信号Asは三角波であり、その発振周波数は、アナログ信号Aaの電圧(入力電圧)に応じて変動する。具体的には、入力電圧が中間値である場合に最も高くなり、入力電圧が中間値から高くなるにつれて、または、低くなるにつれて、低くなる。なお、信号As(Ad)が自励発振信号である。
このため、変調信号Msは、次のようなパルス密度変調信号となる。すなわち、変調信号Msのデューティー比は、入力電圧の中間値でほぼ50%であり、入力電圧が中間値よりも高くなるにつれて大きくなり、入力電圧が中間値よりも低くなるにつれて小さくなる。
したがって、トランジスターM1、M2の接続点Sdにおける増幅変調信号を、インダクターL1およびコンデンサーC1で平滑化した駆動信号COM−A(COM−B)の電圧は、変調信号Msのデューティー比が大きくなるにつれて高くなり、デューティー比が小さくなるにつれて低くなるので、結果的に、駆動信号COM−A(COM−B)は、アナログ信号Aaの電圧を拡大した信号となるように制御されて、出力されることになる。
すなわち、回路全体で扱うことができる最小の正パルス幅と負パルス幅はその回路特性で制約されるので、周波数固定のパルス幅変調では、デューティー比の変化幅として所定の範囲(例えば10%から90%までの範囲)しか確保できない。これに対し、パルス密度変調では、入力電圧が中間値から離れるにつれて、発振周波数が低くなるため、入力電圧が高い領域においては、デューティー比をより大きくすることができ、また、入力電圧が低い領域においては、デューティー比をより小さくすることができる。このため、自励発振型パルス密度変調では、デューティー比の変化幅として、より広い範囲(例えば5%から95%までの範囲)を確保することができるのである。
また、周波数が落ち込む境界付近では、同図の(b)に示されるように、周波数分散もピークとなる。すなわち、この付近で自励発振の周波数がばらつき、安定性に欠ける、ということになる。
そこで次に、自励発振の周波数が安定しない理由について検討する。
この図の破線丸印で示されるように、自励発振の周波数が6〜8MHz付近で、位相差が極小点となる。さらに、この極小点における位相差は、1周期遅れとなる−360度付近の値となっている。
この特性から言えることは、位相差が−360度付近となる周波数が2つ近接している、ということ、詳細には、自励発振の周波数が6〜8MHz付近においては、位相差が極小点に対して低周波数側の(a)側、または、高周波数側の(b)側のどちらかに転んで、2状態のいずれかに定まりにくい、ということである。
LPF550を構成するインダクターL1には、本来のインダクタンスLrのみならず、電極や巻線などにおける抵抗R51や、巻線同士で形成されるなどにおけるキャパシタンスC51が寄生する。LPF550を構成するコンデンサーC1においても、本来のキャパシタンスCrのみならず、電極等における抵抗R52や、インダクタンスL52が寄生する。
インダクターL1のインピーダンスZは、周波数が高くなるにつれて、大きくなるが、ある周波数findにおいて、本来のインダクタンスLrとキャパシタンスC51とが共振現象を発生させる。さらに、周波数が高くなると、キャパシタンスC51が支配的となり、インピーダンスZが低くなる。
なお、このようなインピーダンスZの特性において、変極(極大)点となる周波数findを、インダクター自己共振周波数と呼ぶ。自己共振周波数findよりも高い周波数では、インダクターがインダクターとして機能しない。
コンデンサーC1のインピーダンスZは、周波数が高くなるにつれて、低くくなるが、ある周波数fcapにおいて、本来のキャパシタンスCrとインダクタンスL52とが共振現象を発生させる。さらに、周波数が高くなると、インダクタンスL52が支配的となり、インピーダンスZが高くなる。
このようなインピーダンスZの特性において、変極(極小)点となる周波数fcapを、コンデンサーの自己共振周波数と呼ぶ。なお、自己共振周波数fcapよりも高い周波数では、コンデンサーがコンデンサーとして機能しない。
fcap>fm …(1)、
にすると、自励発振の周波数が安定化しやすい。
fcap≧1.5fm …(2)、
すなわち、コンデンサーC1の自己共振周波数fcapを、自励発振の周波数fmの1.5倍以上高くすることが望ましい。
このような並列接続した構成によれば、寄生インダクタンスが小さくなることによって、コンデンサーC1でみたときの自己共振周波数を高くすることができる。なお、並列接続するコンデンサーの素子数は「2」に限られず、「3」以上であっても良い。
このように、上記帰還経路に存在する回路のうち、少なくとも1つに遅延要素を持たせるとともに、その遅延量を適切に設定して、自励発振の周波数fmを低下させれば良い。すなわち、上記帰還経路による遅延量が長くなるにつれて、自励発振の周波数fmが低くなるので、当該周波数fmを、コンデンサーC1の自己共振周波数fcapよりも下回るようにすることで、当該自励発振を安定化させることができる。
図20に示されるように、回路基板には、駆動回路50を構成するLSI500、トランジスターM1、M2、インダクターL1、コンデンサーC1、C5、C7、C8、抵抗R4、R10、R18、R23が実装される。
コンデンサーC1の他端に接続される端子X1、トランジスターM2のソース電極に接続される端子X2、抵抗R18の他端に接続される端子X3、および、コンデンサーC8の他端に接続される端子X4は、それぞれグラウンドパターンに接続される構成となっている。
図10の回路図では、端子Outから2系統に分かれて、LSI500のピンVfb、Ifbに帰還されているが、実際には、図19に示されるように、端子Outを含むパターンに設けられたスルーホールN1から、内挿の配線パターン(図示省略)と、スルーホールN2と、を順次介して、抵抗R4の一端とコンデンサーC7の一端とに分岐する構成となっている。このうち、抵抗R4側の経路がピンVfbに帰還され、コンデンサーC7側の経路がピンIfbに帰還される。
ここでいう内挿の配線パターンとは、図19に示した配線パターンを第1層としたときに、当該第1層以外で構成される配線パターンをいう。
トランジスターM1のソース電極に接続される端子X12と、トランジスターM2のドレイン電極に接続される端子X13とを含むパターン(図10の接続点Sd)には、スルーホールN6が設けられている。インダクターL1の一端に接続される端子X14を含むパターンには、スルーホールN7が設けられている。スルーホールN6と、スルーホールN7とは、内挿の配線パターン(図示省略)を介して、互いに電気的に接続されている。
この図に示されるように、LPF550を構成するコンデンサーC1は、トランジスターM1よりも、トランジスターM2の側に近接するように配置されている。詳細には、コンデンサーC1からトランジスターM2までの最短距離Q2は、コンデンサーC1からトランジスターM1までの最短距離Q1よりも短くなるように配置されている。
なお、素子間の最短距離については、例えば、素子を平面視したときの(対角)中心点から、相手方の素子を平面視したときの中心点までの距離をいう。
なお、図22では、改善後(すなわち図19に示したグラウンドパターンに対して、図20、図21に示されるようにトランジスターM1、M2およびコンデンサーC1を実装した構成)と、改善前(グラウンドパターンや部品配置を考慮しない構成)とを比較して示している。
また、ここでいう2点間とは、
(1)コンデンサーC1の素子単体(実装状態での端子X1−X6の間とほぼ同等)、
(2)コンデンサーC1を回路基板に実装した状態でのテストピンTp−端子X6の間、および、
(3)コンデンサーC1を回路基板に実装した状態での端子X2−X6の間、
である。
このため、コンデンサーC1の自己共振周波数fcapを高くするには、単体での寄生インダクタンスのみならず、回路基板での配線インダクタンスを小さくする必要がある。
なお、実施形態のように改善後であれば、回路基板に実装した状態であっても、素子単体の状態におけるコンデンサーC1の自己共振周波数fcapを、改善前と比較して悪化させないで済む。
ここでは、コンデンサーC1の寄生インダクタンスと、端子X1から端子X2までの配線インダクタンスとを含むインダクタンスを、0.6nH、0.8nH、1.0nH、1.2nHに変化させたときのシミュレーションの結果を示している。
この図に示されるように、上記インダクタンスが1.0nHよりも高いと、位相差が−360度付近となる2つの周波数が近接して、自励発振の安定性に欠けてしまうことが判る。逆にいえば、上記インダクタンスが1.0nH以下であれば、位相差が−360度付近となる2つの周波数が十分に離間する結果、自励発振が安定化することになる。
印刷装置1については、複数のノズル651を有するヘッドユニットを、主走査方向に往復動させながらインクを吐出する形式ではなく、ノズルを副走査方向に対して直交または斜めとなる方向に配列させたヘッドユニットを複数個備えて、ヘッドユニットを筐体に対して固定させた、いわゆるラインプリンタであっても良い。
Claims (8)
- 容量性負荷を駆動する駆動信号を出力する駆動回路であって、
源信号を自励発振によりパルス変調した変調信号を生成する変調回路と、
前記変調信号を増幅して増幅変調信号を生成するトランジスターと、
インダクターおよびコンデンサーを含み、前記増幅変調信号を平滑化して前記駆動信号を生成するローパスフィルターと、
前記駆動信号をプルアップし前記変調回路に帰還する帰還回路と、
を備え、
前記コンデンサーの自己共振周波数は、前記自励発振の周波数よりも高い
ことを特徴とする駆動回路。 - 前記帰還回路は、前記駆動信号の周波数成分を前記変調回路に帰還する、
請求項1記載の駆動回路。 - 前記自励発振の周波数は、1MHz以上である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の駆動回路。 - 前記自励発振の周波数は、8MHz以下である
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の駆動回路。 - 前記コンデンサーの自己共振周波数は、前記自励発振の周波数の1.5倍以上である
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の駆動回路。 - 前記変調回路、前記トランジスター、前記ローパスフィルター、および、前記帰還回路のうち、少なくとも1つが遅延要素を有する
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の駆動回路。 - 前記遅延要素は、周波数カットフィルターである
ことを特徴とする請求項6に記載の駆動回路。 - 前記コンデンサーは、複数の素子の並列接続された
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の駆動回路。
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