JP6973476B2 - ポリイミドフィルム、積層体、及びディスプレイ用表面材 - Google Patents
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Description
しかしながら、従来の透明ポリイミドを用いた樹脂フィルムでは、平坦状態、折り曲げ状態を一定の周期で繰り返す試験において良好な結果を示すものであっても、長時間折り曲げられた状態が続くと、折り癖がつき、平坦に戻り難く、静的屈曲耐性に劣るという問題がある。
また、樹脂フィルムの弾性率を大きくすることにより、フィルムの剛性が高くなるため、耐衝撃性を向上することができるが、一方で、樹脂フィルムの弾性率を大きくすると、屈曲状態後の復元性が悪化し、屈曲耐性が不十分になる傾向がある。実際、後述する比較例2で示されるように、弾性率が大きいポリイミドフィルムは、耐衝撃性は向上するものの、屈曲耐性が悪化している。屈曲耐性を向上するには、フィルムの膜厚を薄くすることが、屈曲時にフィルムにかかる応力を小さくすることができるため効果的である。しかし、表面材として用いる樹脂フィルムにおいて、フィルムの膜厚を薄くしてしまうと、フィルムの剛性が低下し、発光デバイスや回路を衝撃から守る機能が低下する問題がある。このように、樹脂フィルムにおいて耐衝撃性と屈曲耐性とは相反する特性であると考えられている。表面材として用いる樹脂フィルムは、耐衝撃性と屈曲耐性とのバランスをとるようにフィルムの厚みが設定されるため、折り曲げられないリジッドなパネルに用いられるガラスに比べると満足いく耐衝撃性が得られておらず、耐衝撃性と屈曲耐性の両立が求められている。
また、本開示は、前記樹脂フィルムを有する積層体、及び、前記樹脂フィルム又は前記積層体であるディスプレイ用表面材を提供することを目的とする。
[静的屈曲試験方法]
15mm×40mmに切り出したポリイミドフィルムの試験片を、長辺の半分の位置で折り曲げ、当該試験片の長辺の両端部が厚み6mmの金属片(100mm×30mm×6mm)を上下面から挟むようにして配置し、当該試験片の両端部と金属片との上下面での重なりしろが各々10mmずつになるようにテープで固定した状態で、上下からガラス板(100mm×100mm×0.7mm)で挟み、当該試験片を内径6mmで屈曲した状態で固定する。その際に、金属片とガラス板の間で当該試験片がない部分には、ダミーの試験片を挟み込み、ガラス板が平行になるようにテープで固定する。このようにして屈曲した状態で固定した当該試験片を、60℃、90%相対湿度(RH)の環境下で24時間静置した後、ガラス板と固定用のテープを外し、当該試験片にかかる力を解放する。その後、当該試験片の一方の端部を固定し、試験片にかかる力を解放してから30分後の試験片の内角を測定する。
また、本開示によれば、前記樹脂フィルムを有する積層体、及び、前記樹脂フィルム又は前記積層体であるディスプレイ用表面材を提供することができる。
本開示のポリイミドフィルムは、ヤング率が互いに異なる2層以上のポリイミド層を有し、全体厚みが5μm以上200μm以下であり、JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率が85%以上である。
図1は、本開示のポリイミドフィルムの一例を示す概略断面図である。図1に示す本開示のポリイミドフィルム10は、ポリイミド層1aとポリイミド層1a’との間にポリイミド層1bを有し、ポリイミド層1aとポリイミド層1a’は互いにヤング率が同一であり、ポリイミド層1bは、ポリイミド層1a及びポリイミド層1a’とはヤング率が異なる。
図2は、本開示のポリイミドフィルムの他の一例を示す概略断面図である。図2に示す本開示のポリイミドフィルム11は、ポリイミド層1aと、ポリイミド層1bとを有し、ポリイミド層1aとポリイミド層1bとは互いにヤング率が異なる。
JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率は、例えば、ヘイズメーター(例えば村上色彩技術研究所製 HM150)により測定することができる。
屈曲耐性に優れる樹脂フィルムは、フィルムの厚みを厚くすることにより耐衝撃性を向上することができるが、フィルムの厚みが厚すぎると屈曲耐性が悪化してしまう。それに対し、本開示のポリイミドフィルムは、ヤング率が互いに異なる2層以上のポリイミド層を有することにより、耐衝撃性に優れ、屈曲耐性も良好である。2層以上のポリイミド層のうち、相対的にヤング率が大きいポリイミド層は、比較的変形しにくく、耐衝撃性に優れる。一方で、相対的にヤング率が小さいポリイミド層は、比較的変形しやすく、屈曲耐性に優れる。本開示のポリイミドフィルムにおいては、2層以上のポリイミド層のうち、相対的にヤング率が大きいポリイミド層が耐衝撃性を向上し、相対的にヤング率が小さいポリイミド層が屈曲耐性を向上することにより、耐衝撃性と屈曲耐性とを両立していると考えられる。また、衝撃吸収という観点では、相対的にヤング率の高いポリイミド層は、衝突の力を面で拡散する傾向が強く、相対的にヤング率の低いポリイミド層は、衝突の力を時間で拡散する傾向が強い。本開示のポリイミドフィルムでは、このように衝突の力を拡散する作用が互いに異なるポリイミド層を組み合わせることにより、衝撃力の最大値を適度に拡散し、小さくすることができると推定され、それにより、耐衝撃性を更に向上していると考えられる。
本開示のポリイミドフィルムは、ヤング率が互いに異なる2層以上のポリイミド層を有し、全体厚みが5μm以上200μm以下であり、全光線透過率が85%以上である。本開示の効果が損なわれない限り、他の構成を有していても良い。
本開示のポリイミドフィルムは、ヤング率が互いに異なる2層以上のポリイミド層が積層されているものであり、ヤング率が互いに異なる2層以上のポリイミド層を互いに隣接して有するものである。
本開示のポリイミドフィルムは、図2に示すように、2層のポリイミド層を有するものであっても良いし、図1に示すように、3層のポリイミド層を有するものであっても良いし、図示はしないが、4層以上のポリイミド層を有するものであっても良い。
また、本開示のポリイミドフィルムは、3層以上のポリイミド層を有し、前記ポリイミド層のうちヤング率が最も小さいポリイミド層が、表面に位置しないことが、耐衝撃性及び屈曲耐性の点から好ましく、中でも、ポリイミド層の層数が3層以上で且つ奇数であり、前記ポリイミド層のうちヤング率が最も小さいポリイミド層が中央に位置することが好ましい。
一方で、2層のポリイミド層からなる本開示のポリイミドフィルムは、耐衝撃性及び屈曲耐性を向上しながら、薄膜化できる点から好ましい。2層のポリイミド層からなるポリイミドフィルムを表面材に用いる場合は、相対的にヤング率が大きいポリイミド層が表面側となるように用いることが、耐衝撃性及び屈曲耐性の点から好ましい。2層のポリイミド層からなる本開示のポリイミドフィルムにおいては、耐衝撃性と屈曲耐性との点、及びフィルムの反りを抑制する点から、相対的にヤング率が大きいポリイミド層のヤング率が、相対的にヤング率が小さいポリイミド層のヤング率の1.2倍以上2.0倍以下であることが好ましい。
本開示のポリイミドフィルムは、中でも、耐衝撃性と屈曲耐性を向上する点から、ポリイミド層の層数が3層以上で且つ奇数であり、隣接する層間で相対的にヤング率が大きいポリイミド層と、相対的にヤング率が小さいポリイミド層とが、交互に積層され、表面に位置するポリイミド層が、相対的にヤング率が大きいポリイミド層であることがより好ましく、更に、一方の表面に位置するポリイミド層と、もう一方の表面に位置するポリイミド層とが、前記ポリイミド層のうちヤング率が最も大きいポリイミド層であることがより好ましく、更に、中央に位置するポリイミド層が、ヤング率が最も小さいポリイミド層であることがより更に好ましい。
なお、本開示のポリイミドフィルムが有するポリイミド層の層数は、2層以上であれば特に限定はされないが、ポリイミドフィルムの薄膜化の観点及び製造が容易な点から、5層以下であることが好ましく、2層又は3層であることがより好ましい。中でも、相対的にヤング率が小さいポリイミド層の両面に当該ポリイミド層よりもヤング率が大きい層が位置する3層構成であることが、耐衝撃性の点から特に好ましい。
なお、本開示において、ヤング率が最も小さいポリイミド層のヤング率に対する、ヤング率が最も大きいポリイミド層のヤング率の比は、JIS Z8401:1999の規則Bに従い、小数点以下第1位に丸めた値として求める。
中でも、ヤング率が最も大きいポリイミド層のヤング率は、3.5GPa以上であることが好ましく、5.0GPa以上であることがより好ましく、6.0GPa以上であることがより更に好ましい。ヤング率が最も小さいポリイミド層のヤング率は、4.5GPa以下であることが好ましく、4.0GPa以下であることがより好ましい。
なお、各ポリイミド層の50℃から250℃の範囲での線熱膨張係数(CTE)は、各ポリイミド層と同じ材料、同じ条件で作製した単層のポリイミドフィルムを5mm×15mmに切り出した試験片に対して、熱機械分析装置(TMA)により、下記条件で試験片の伸び量を測定し、50℃から250℃の範囲での線熱膨張係数(CTE)を算出することにより求めることができる。
<CTE測定条件>
機種名:TMA−60、(株)島津製作所製
雰囲気ガス:窒素
ガス流量:50ml/min
初期荷重:9g
[温度プログラム]
窒素雰囲気下、30℃で10分間維持した後、加熱速度10℃/minで400℃まで昇温し、400℃のまま1分間維持する。
互いに隣接するポリイミド層の境界に、各ポリイミド層の材料が混合したミキシング領域を有して界面が不明瞭な場合、ポリイミド層の厚みを求める際の境界は例えば以下のようにして決定することができる。互いに隣接する2層のポリイミド層に用いられる各材料のうち、最も違いが出やすい元素を選択して、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)等による元素マッピングを行い、元素マッピングにおいて選択した元素の検出量が、前記ミキシング領域でない2つの領域の元素の検出量の平均値となる部分を、ポリイミド層の厚みを求める際の境界とする。前記ミキシング領域でない2つの領域の元素の検出量の平均値となる部分が厚みを有する領域の場合には、当該領域の厚み方向の中央部を、ポリイミド層の厚みを求める際の境界とする。
一方、本開示のポリイミドフィルムは、前記ポリイミド層のうちヤング率が最も大きいポリイミド層の合計厚みが、ポリイミドフィルムの全体厚みの15%以上60%以下であると、屈曲耐性の低下を抑制しながら、耐衝撃性を向上できる点から好ましく、20%以上60%以下としてもよい。
本開示のポリイミドフィルムが有する各ポリイミド層は、少なくともポリイミドを含有し、本開示の効果を損なわない範囲において、更に必要に応じて、添加剤やポリイミド以外のその他の樹脂を含有していても良い。
ポリイミドは、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを反応させて得られるものである。テトラカルボン酸成分とジアミン成分の重合によってポリアミド酸を得てイミド化することが好ましい。イミド化は、熱イミド化で行っても、化学イミド化で行ってもよい。また、熱イミド化と化学イミド化とを併用した方法で製造することもできる。
これらのテトラカルボン酸二無水物は単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。
これらのジアミンは単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。
ポリイミドに(i)フッ素原子を含むとポリイミド骨格内の電子状態を電荷移動し難くすることができる点から光透過性が向上する。
ポリイミドに(ii)脂肪族環を含むと、ポリイミド骨格内のπ電子の共役を断ち切ることで骨格内の電荷の移動を阻害することができる点から光透過性が向上する。
ポリイミドに(iii)芳香族環同士をスルホニル基又はフッ素原子で置換されていても良いアルキレン基で連結した構造を含むと、ポリイミド骨格内のπ電子の共役を断ち切ることで骨格内の電荷の移動を阻害することができる点からの点から光透過性が向上する。
ポリイミド中のフッ素原子の含有割合は、ポリイミド表面をX線光電子分光法により測定したフッ素原子数(F)と炭素原子数(C)の比率(F/C)が、0.01以上であることが好ましく、更に0.05以上であることが好ましい。一方でフッ素原子の含有割合が高すぎるとポリイミド本来の耐熱性などが低下する恐れがあることから、前記フッ素原子数(F)と炭素原子数(C)の比率(F/C)が1以下であることが好ましく、更に0.8以下であることが好ましい。
ここで、X線光電子分光法(XPS)の測定による上記比率は、X線光電子分光装置(例えば、Thermo Scientific社 Theta Probe)を用いて測定される各原子の原子%の値から求めることができる。
前記ポリイミドは、テトラカルボン酸残基及びジアミン残基の合計を100モル%としたときに、芳香族環及びフッ素原子を有するテトラカルボン酸残基及び芳香族環及びフッ素原子を有するジアミン残基の合計が50モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましく、75モル%以上であることがより更に好ましい。
ポリイミドに含まれる炭素原子に結合する水素原子の50%以上が、芳香族環に直接結合する水素原子であるポリイミドである場合には、大気中における加熱工程を経ても、例えば200℃以上で延伸を行っても、光学特性、特に全光線透過率や黄色度YI値の変化が少ない点から好ましい。ポリイミドに含まれる炭素原子に結合する水素原子の50%以上が、芳香族環に直接結合する水素原子であるポリイミドである場合には、酸素との反応性が低いため、ポリイミドの化学構造が変化し難いことが推定される。ポリイミドフィルムはその高い耐熱性を利用し、加熱を伴う加工工程が必要なデバイスなどに用いられる場合が多いが、ポリイミドに含まれる炭素原子に結合する水素原子の50%以上が、芳香族環に直接結合する水素原子であるポリイミドである場合には、これら後工程を透明性維持のために不活性雰囲気下で実施する必要が生じないので、設備コストや雰囲気制御にかかる費用を抑制できるというメリットがある。
ここで、ポリイミドに含まれる炭素原子に結合する全水素原子(個数)中の、芳香族環に直接結合する水素原子(個数)の割合は、ポリイミドの分解物を高速液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフ質量分析計及びNMRを用いて求めることができる。例えば、サンプルを、アルカリ水溶液、又は、超臨界メタノールにより分解し、得られたポリイミドの分解物を、高速液体クロマトグラフィーで分離し、当該分離した各ピークの定性分析をガスクロマトグラフ質量分析計及びNMR等を用いて行い、高速液体クロマトグラフィーを用いて定量することで、ポリイミドに含まれる全水素原子(個数)中の、芳香族環に直接結合する水素原子(個数)の割合を求めることができる。
本開示に用いられるケイ素原子を含むポリイミドとしては、中でも、ケイ素原子を有するジアミン残基を、ジアミン残基の総量100モル%のうち、好ましくは1モル%以上50モル%以下、より好ましくは2.5モル%以上40モル%以下、より更に好ましくは5モル%以上30モル%以下の割合で含むポリイミドが好適に用いられる。
主鎖にケイ素原子を1個有するジアミンとしては、例えば、下記一般式(A)で表されるジアミンが挙げられる。また、主鎖にケイ素原子を2個有するジアミンとしては、例えば、下記一般式(B)で表されるジアミンが挙げられる。
R10で表される1価の炭化水素基としては、炭素数1以上20以下のアルキル基、アリール基、及びこれらの組み合わせが挙げられる。アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、直鎖状又は分岐状と環状の組合せであっても良い。
炭素数1以上20以下のアルキル基としては、炭素数1以上10以下のアルキル基であることが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。前記環状のアルキル基としては、炭素数3以上10以下のシクロアルキル基であることが好ましく、具体的には、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。前記アリール基としては、炭素数6以上12以下のアリール基であることが好ましく、具体的には、フェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられる。また、R10で表される1価の炭化水素基としては、アラルキル基であっても良く、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等が挙げられる。
酸素原子又は窒素原子を含んでいても良い炭化水素基としては、例えば後述する2価の炭化水素基と前記1価の炭化水素基とをエーテル結合、カルボニル結合、エステル結合、アミド結合、及びイミノ結合(−NH−)の少なくとも1つで結合した基が挙げられる。
R10で表される1価の炭化水素基が有していても良い置換基としては、本開示の効果が損なわれない範囲で特に限定されず、例えば、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、水酸基等が挙げられる。
炭素数1以上20以下のアルキレン基としては、炭素数1以上10以下のアルキレン基であることが好ましく、例えば、メチレン基、エチレン基、各種プロピレン基、各種ブチレン基、シクロヘキシレン基等の直鎖状又は分岐状アルキレン基と環状アルキレン基との組合せの基などを挙げることができる。
前記アリーレン基としては、炭素数6以上12以下のアリーレン基であることが好ましく、アリーレン基としては、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基等が挙げられ、更に後述する芳香族環に対する置換基を有していても良い。
酸素原子又は窒素原子を含んでいても良い2価の炭化水素基としては、前記2価の炭化水素基同士をエーテル結合、カルボニル結合、エステル結合、アミド結合、及びイミノ結合(−NH−)の少なくとも1つで結合した基が挙げられる。
R11で表される2価の炭化水素基が有していても良い置換基としては、前記R10で表される1価の炭化水素基が有していても良い置換基と同様であって良い。
主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基は単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。
前記一般式(1)のR2は、中でも、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン残基、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン残基、及び、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン残基から選択される少なくとも1種の2価の基であることが、光透過性と、耐衝撃性及び屈曲耐性の点から好ましく、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン残基であることがより好ましい。
ポリイミドにおける繰り返し単位数nは、所望のヤング率を示すように、構造に応じて適宜選択されれば良く、特に限定されないが、通常10以上2000以下であり、更に15以上1000以下であることが好ましい。
なお、各繰り返し単位におけるR1は各々同一であっても異なっていても良く、各繰り返し単位におけるR2は各々同一であっても異なっていても良い。
なお、本開示に用いられるポリイミドは、前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドを1種又は2種以上含有することができる。
中でも、前記グループBとしては、フッ素原子を含む、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基、及び3,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基の少なくとも一種を用いることが、耐衝撃性と光透過性の向上の点から好ましい。
前記R3が、前記グループAのテトラカルボン酸残基を含む場合は、前記一般式(2)のR4が、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基を含むことが、屈曲耐性の点から好ましい。
前記R3において、これらの好適な残基を合計で、50モル%以上含むことが好ましく、更に70モル%以上含むことが好ましく、より更に90モル%以上含むことが好ましい。
主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基としては、例えば、上述した主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミンから2つのアミノ基を除いた残基を挙げることができる。中でも、ケイ素原子を2個有するジアミン残基であることが、光透過性の点、及び耐衝撃性及び屈曲耐性の点から好ましく、更に、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン残基、1,3−ビス(4−アミノブチル)テトラメチルジシロキサン残基、1,3−ビス(5−アミノペンチル)テトラメチルジシロキサン残基等が、入手容易性や光透過性と耐衝撃性の両立の観点から好ましい。
すなわち、R4の総量(100モル%)のうち、前記主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基をxモル%(0≦x≦50)とすると、R4の(100−x)モル%である50モル%以上100モル%以下が、ケイ素原子を有さず、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基であり、R4の{(100−x)/2}モル%超過が、前記群から選ばれる少なくとも1種の2価の基である。中でも、前記残りのR4のうちの前記群から選ばれる少なくとも1種の2価の基の割合、すなわち、前記ケイ素原子を有さず、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基の総量を100モル%としたときの前記群から選ばれる少なくとも1種の2価の基の割合は、表面硬度と耐衝撃性の点及び光透過性の点から、70モル%以上であることが好ましく、85モル%以上であることがより好ましく、95モル%以上であることがより更に好ましい。なお、R4は、前記群から選ばれる少なくとも1種の2価の基とは異なる、ケイ素原子を有さず、芳香族環又は脂肪族環を有する他のジアミン残基を含有していても良い。
ここで、ケイ素原子を有さず芳香族環を有するジアミン残基は、ケイ素原子を有さず芳香族環を有するジアミンから2つのアミノ基を除いた残基とすることができ、ケイ素原子を有さず脂肪族環を有するジアミン残基は、ケイ素原子を有さず脂肪族環を有するジアミンから2つのアミノ基を除いた残基とすることができる。前記R4が含んでいても良い、前記群から選ばれる少なくとも1種の2価の基とは異なる、ケイ素原子を有さず、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基に用いられるジアミンとしては、例えば、上述したジアミンの中から、ケイ素原子を有さず、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミンを適宜選択して用いることができ、特に限定はされない。
ポリイミドにおける繰り返し単位数n’は、所望のヤング率を示すように、構造に応じて適宜選択されれば良く、特に限定されないが、通常10以上2000以下であり、更に15以上1000以下であることが好ましい。
なお、各繰り返し単位におけるR3は各々同一であっても異なっていても良く、各繰り返し単位におけるR4は各々同一でも異なっていても良い。
なお、本開示に用いられるポリイミドは、前記一般式(2)で表される構造を有するポリイミドを1種又は2種以上含有することができる。
ポリイミドフィルムが有する全てのポリイミド層が、前記一般式(2)で表される構造を有するポリイミドを含有するポリイミド層であるポリイミドフィルムにおいては、ヤング率が最も大きいポリイミド層の合計厚みが、ポリイミドフィルムの全体厚みの5%以上30%以下であることが、屈曲耐性及び耐衝撃性の点から好ましく、5%以上20%以下であることがより好ましく、5%以上15%以下であることがより更に好ましい。
ポリイミドフィルムが有する全てのポリイミド層が、前記一般式(2)で表される構造を有するポリイミドを含有するポリイミド層であるポリイミドフィルムにおいては、耐衝撃性及び屈曲耐性の点から、ヤング率が最も大きいポリイミド層のヤング率が、ヤング率が最も小さいポリイミド層のヤング率の1.2倍以上であることが好ましく、2.0倍以下であってもよく、1.8倍以下であってもよい。
本開示に用いられるポリイミドのガラス転移温度は、動的粘弾性測定によって得られる温度−tanδ(tanδ=損失弾性率(E’’)/貯蔵弾性率(E’))曲線のピーク温度から求められるものである。ポリイミドのガラス転移温度は、tanδ曲線のピークが複数存在する場合、ピークの極大値が最大であるピークの温度をいう。動的粘弾性測定としては、例えば、動的粘弾性測定装置 RSA III(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株))によって、測定範囲を−150℃〜400℃として、周波数1Hz、昇温速度5℃/minにより行うことができる。また、サンプル幅を5mm、チャック間距離を20mmとして測定することができる。
本開示において、tanδ曲線のピークとは、極大値である変曲点を有し、且つ、ピークの谷と谷の間であるピーク幅が3℃以上であるものをいい、ノイズ等測定由来の細かい上下変動については、前記ピークと解釈しない。
本開示に係るポリイミドフィルムが有する各ポリイミド層は、前記ポリイミドの他に、必要に応じて更に添加剤を含有していてもよい。前記添加剤としては、例えば、巻き取りを円滑にするためのシリカフィラーや、製膜性や脱泡性を向上させる界面活性剤等が挙げられる。
ポリイミド層がポリイミド以外のその他の樹脂を含有する場合、当該その他の樹脂の含有量は、ポリイミド層全量に対して、50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、0質量%であることが特に好ましい。
本開示のポリイミドフィルムにおけるヤング率、全光線透過率及び線熱膨張係数については、前述したのでここでの記載を省略する。
[静的屈曲試験方法]
15mm×40mmに切り出したポリイミドフィルムの試験片を、長辺の半分の位置で折り曲げ、当該試験片の長辺の両端部が厚み6mmの金属片(100mm×30mm×6mm)を上下面から挟むようにして配置し、当該試験片の両端部と金属片との上下面での重なりしろが各々10mmずつになるようにテープで固定した状態で、上下からガラス板(100mm×100mm×0.7mm)で挟み、当該試験片を内径6mmで屈曲した状態で固定する。その際に、金属片とガラス板の間で当該試験片がない部分には、ダミーの試験片を挟み込み、ガラス板が平行になるようにテープで固定する。このようにして屈曲した状態で固定した当該試験片を、60℃、90%相対湿度(RH)の環境下で24時間静置した後、ガラス板と固定用のテープを外し、当該試験片にかかる力を解放する。その後、当該試験片の一方の端部を固定し、試験片にかかる力を解放してから30分後の試験片の内角を測定する。
前記引張弾性率は、引張り試験機(例えば島津製作所製:オートグラフAG−X 1N、ロードセル:SBL−1KN)を用い、幅15mm×長さ40mmの試験片をポリイミドフィルムから切り出して、25℃で、引張り速度10mm/min、チャック間距離は20mmとして測定することができる。
前記ポリイミドフィルムの鉛筆硬度は、測定サンプルを温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した後、JIS−S−6006が規定する試験用鉛筆を用いて、JIS K5600−5−4(1999)に規定する鉛筆硬度試験(0.98N荷重)をフィルム表面に行い、傷がつかない最も高い鉛筆硬度を評価することにより行うことができる。例えば東洋精機(株)製 鉛筆引っかき塗膜硬さ試験機を用いることができる。
前記ポリイミドフィルムの鉛筆硬度は、相対的にヤング率が大きいポリイミド層の表面において達成できることが好ましい。
<密着性試験>
JIS K5400の碁盤目試験に準拠して、表面のポリイミド層にカッターナイフを用いて1mm間隔で碁盤目状に切れ込みを入れ、100マスの格子を形成する。次いで、当該格子上にセロハンテープ(ニチバン(株))を貼り付けた後剥離し、これを5回繰り返した後、表面のポリイミド層の剥離を観察する。
前記JIS K7373−2006に準拠して算出される黄色度(YI値)は、中でも11.0以下であることが好ましく、10.0以下であることがより好ましく、5.0以下であることが更に好ましく、3.0以下であることがより更に好ましく、2.0以下であることが特に好ましい。
前記黄色度(YI値)が前記上限値以下であることにより、本開示のポリイミドフィルムは、黄色味の着色が抑制され、光透過性が向上し、ガラス代替材料となり得る。
なお、黄色度(YI値)は、前記JIS K7373−2006に準拠して、紫外可視近赤外分光光度計(例えば、日本分光(株) V−7100)を用い、分光測色方法により、補助イルミナントC、2度視野を用いて、250nm以上800nm以下の範囲を1nm間隔で測定される透過率をもとに、XYZ表色系における三刺激値X,Y,Zを求め、そのX,Y,Zの値から以下の式より算出することができる。
YI=100(1.2769X−1.0592Z)/Y
なお、本開示において、前記黄色度(YI値)を膜厚(μm)で割った値(YI値/膜厚(μm))は、JIS Z8401:1999の規則Bに従い、小数点以下第3位に丸めた値とする。
前記ヘイズ値は、JIS K−7105に準拠した方法で測定することができ、例えば村上色彩技術研究所製のヘイズメーターHM150により測定することができる。
なお、本開示のポリイミドフィルムの前記波長590nmにおける厚み方向の複屈折率は、以下のように求めることができる。
まず、位相差測定装置(例えば、王子計測機器株式会社製、製品名「KOBRA−WR」)を用いて、23℃、波長590nmの光で、ポリイミドフィルムの厚み方向位相差値(Rth)を測定する。厚み方向位相差値(Rth)は、0度入射の位相差値と、斜め40度入射の位相差値を測定し、これらの位相差値から厚み方向位相差値Rthを算出する。前記斜め40度入射の位相差値は、位相差フィルムの法線から40度傾けた方向から、波長590nmの光を位相差フィルムに入射させて測定する。
ポリイミドフィルムの厚み方向の複屈折率は、式:Rth/dに代入して求めることができる。前記dは、ポリイミドフィルムの膜厚(nm)を表す。
なお、厚み方向位相差値は、フィルムの面内方向における遅相軸方向(フィルム面内方向における屈折率が最大となる方向)の屈折率をnx、フィルム面内における進相軸方向(フィルム面内方向における屈折率が最小となる方向)の屈折率をny、及びフィルムの厚み方向の屈折率をnzとしたときに、Rth[nm]={(nx+ny)/2−nz}×dと表すことができる。
また、ポリイミドフィルムのX線光電子分光法により測定した、少なくとも一方のフィルム表面のフッ素原子数(F)と窒素原子数(N)の比率(F/N)が、0.1以上20以下であることが好ましく、更に0.5以上15以下であることが好ましい。
ここで、X線光電子分光法(XPS)の測定による上記比率は、X線光電子分光装置(例えば、Thermo Scientific社 Theta Probe)を用いて測定される各原子の原子%の値から求めることができる。
本開示のポリイミドフィルムの製造方法は、上述した本開示のポリイミドフィルムを得ることができる製造方法であれば良く、特に限定はされないが、例えば、第1の製造方法として、
ポリイミド成形体を準備する工程と、
ポリイミド前駆体と、有機溶剤とを含むポリイミド前駆体樹脂組成物を調製する工程と、
前記ポリイミド成形体の少なくとも一方の面に、前記ポリイミド前駆体樹脂組成物を塗布して、ポリイミド前駆体樹脂塗膜を形成する工程と、
加熱をすることにより、前記ポリイミド前駆体をイミド化する工程と、を含む製造方法が挙げられる。
前記第1の製造方法において、3層以上のポリイミド層を有するポリイミドフィルムを製造する方法としては、例えば、ポリイミド前駆体樹脂組成物を塗布して、ポリイミド前駆体樹脂塗膜を形成する工程を、所望の層数になるまで行った後、前記イミド化する工程により、各ポリイミド前駆体樹脂塗膜が含有する各ポリイミド前駆体をイミド化する方法が挙げられる。なお、2層以上のポリイミド前駆体樹脂塗膜は、ポリイミド成形体の一方の面のみに形成しても良いし、一方の面ともう一方の面の両面に形成しても良い。
前記第1の製造方法により、3層のポリイミド層を有するポリイミドフィルムを製造する方法としては、例えば、
ポリイミド成形体を準備する工程と、
ポリイミド前駆体と、有機溶剤とを含む第1のポリイミド前駆体樹脂組成物、及びポリイミド前駆体と、有機溶剤とを含む第2のポリイミド前駆体樹脂組成物を調製する工程と、
前記ポリイミド成形体の一方の面に、前記第1のポリイミド前駆体樹脂組成物を塗布して、第1のポリイミド前駆体樹脂塗膜を形成する工程と、
前記ポリイミド成形体のもう一方の面に、前記第2のポリイミド前駆体樹脂組成物を塗布して、第2のポリイミド前駆体樹脂塗膜を形成する工程と、
加熱をすることにより、前記第1のポリイミド前駆体樹脂塗膜が含むポリイミド前駆体及び第2のポリイミド前駆体樹脂塗膜が含むポリイミド前駆体をイミド化する工程と、を含み、前記第1のポリイミド前駆体樹脂組成物と前記第2のポリイミド前駆体樹脂組成物とは同じ組成であっても良い、製造方法が挙げられる。
前記第1の製造方法においては、前記ポリイミド成形体、及び所望の層数となるように形成された各ポリイミド前駆体樹脂塗膜が、それぞれポリイミド層となる。
前記第1の製造方法は、ポリイミドフィルムの複屈折率を低減しやすい点から好ましい。前記第1の製造方法によれば、波長590nmにおける厚み方向の複屈折率が0.035以下、より好ましくは0.030以下、より好ましくは0.025以下、より好ましくは0.020以下であるポリイミドフィルムを好適に形成可能である。
前記第1の製造方法に用いられるポリイミド成形体としては、例えば、以下の製造方法により作製されたフィルム状のポリイミド成形体を用いることができる。
フィルム状のポリイミド成形体の製造方法としては、例えば、製造方法Aとして、
ポリイミド前駆体と、有機溶剤とを含むポリイミド前駆体樹脂組成物を調製する工程と、
前記ポリイミド前駆体樹脂組成物を支持体に塗布して、ポリイミド前駆体樹脂塗膜を形成する工程と、
加熱をすることにより、前記ポリイミド前駆体をイミド化する工程と、を含む製造方法が挙げられる。
前記製造方法Aは、ポリイミドフィルムの複屈折率を低減しやすい点から好ましく、波長590nmにおける厚み方向の複屈折率が0.025以下、より好ましくは0.020以下であるポリイミドフィルムを好適に形成可能である。前記第1の製造方法において、ポリイミド成形体の製造方法として、前記製造方法Aを用いると、ポリイミドフィルムの複屈折率を低減する効果が高い点で更に好ましく、波長590nmにおける厚み方向の複屈折率が0.025以下、より好ましくは0.020以下であるポリイミドフィルムを好適に形成可能である。
前記製造方法Aにおいて、ポリイミド前駆体樹脂組成物としては、後述する「ポリイミド前駆体樹脂組成物調製工程」で得られるポリイミド前駆体樹脂組成物と同様のものを用いることができ、ポリイミド前駆体樹脂塗膜を形成する方法、及びイミド化する方法としては、それぞれ後述する「ポリイミド前駆体樹脂塗膜形成工程」及び「イミド化工程」と同様とすることができる。
前記製造方法Aにおいて、支持体としては、例えば、後述する第2の製造方法に用いられる支持体と同様のものが挙げられる。
また、前記製造方法Aは、更に前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜、及び、前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜をイミド化したイミド化後塗膜の少なくとも一方を延伸する延伸工程を有していてもよい。延伸工程は、後述する第2の製造方法の延伸工程と同様とすることができる。
ポリイミドと、有機溶剤とを含むポリイミド樹脂組成物を調製する工程と、
前記ポリイミド樹脂組成物を支持体に塗布して、ポリイミド樹脂塗膜を形成する工程と、を含む製造方法が挙げられる。
前記製造方法Bは、使用するポリイミドが25℃で有機溶剤に5質量%以上溶解するような溶剤溶解性を有する場合に好適に用いることができる。
前記製造方法Bは、ポリイミドフィルムの黄色度(YI値)を低減しやすい点から好ましく、前記JIS K7373−2006に準拠して算出される黄色度(YI値)を膜厚(μm)で割った値(YI値/膜厚(μm))が0.330以下、より好ましくは0.200以下、より更に好ましくは0.150以下のポリイミドフィルムを好適に形成可能である。
前記製造方法Bにおいて、ポリイミド樹脂組成物としては、後述する第3の製造方法のポリイミド樹脂組成物と同様のものを用いることができ、ポリイミド樹脂塗膜を形成する方法としては、後述する第3の製造方法のポリイミド樹脂塗膜形成工程と同様とすることができる。
また、前記製造方法Bにおいて、支持体としては、例えば、後述する第2の製造方法に用いられる支持体と同様のものが挙げられる。
前記第1の製造方法において調製するポリイミド前駆体樹脂組成物は、ポリイミド前駆体と、有機溶剤とを含有し、必要に応じて添加剤等を含有していてもよい。
ポリイミド前駆体は、テトラカルボン酸成分とジアミン成分との重合によって得られるポリアミド酸である。前記第1の製造方法において、ポリイミド前駆体に用いられるテトラカルボン酸成分及びジアミン成分は特に限定はされず、例えば、上述したポリイミドのテトラカルボン酸残基となるテトラカルボン酸二無水物、及びジアミン残基となるジアミンをそれぞれ挙げることができる。
ポリイミド前駆体の数平均分子量は、NMR(例えば、BRUKER製、AVANCEIII)により求めることができる。例えば、ポリイミド前駆体溶液をガラス板に塗布して100℃で5分乾燥後、固形分10mgをジメチルスルホキシド−d6溶媒7.5mlに溶解し、NMR測定を行い、芳香族環に結合している水素原子のピーク強度比から数平均分子量を算出することができる。
ポリイミド前駆体の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定できる。具体的には、ポリイミド前駆体を0.5重量%の濃度のN−メチルピロリドン(NMP)溶液とし、展開溶媒は、含水量500ppm以下の10mmol%LiBr−NMP溶液を用い、東ソー製GPC装置(HLC−8120、使用カラム:SHODEX製GPC LF−804)を用い、サンプル打ち込み量50μL、溶媒流量0.5mL/分、40℃の条件で測定を行う。重量平均分子量は、サンプルと同濃度のポリスチレン標準サンプルを基準に求める。
主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミンを用いる場合は、たとえば、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミンが溶解された反応液に、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミンの0.5等量のモル比の酸二無水物を投入し反応させることで、酸二無水物の両端に主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミンが反応したアミド酸を合成し、そこへ、残りのジアミンを全部、又は一部投入し、酸二無水物を加えてポリアミド酸を重合しても良い。この方法で重合すると、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミンが1つの酸二無水物を介して、連結した形でポリアミド酸の中に導入される。このような方法でポリアミド酸を重合することは、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するアミド酸の位置関係がある程度特定され、耐衝撃性及び屈曲耐性の優れた膜を得易い点から好ましい。
重合反応の手順は、公知の方法を適宜選択して用いることができ、特に限定されない。
また、合成反応により得られたポリイミド前駆体溶液をそのまま用い、そこに必要に応じて他の成分を混合しても良いし、ポリイミド前駆体溶液の溶剤を乾燥させ、別の溶剤に溶解して用いても良い。
ポリイミド前駆体溶液の粘度は、粘度計(例えば、TVE−22HT、東機産業株式会社)を用いて、25℃で、サンプル量0.8mlとして測定することができる。
前記ポリイミド前駆体樹脂組成物中の有機溶剤は、均一な塗膜及びポリイミド層を形成する点から、樹脂組成物中に40質量%以上であることが好ましく、更に50質量%以上であることが好ましく、また99質量%以下であることが好ましい。
なお、ポリイミド前駆体樹脂組成物の含有水分量は、カールフィッシャー水分計(例えば、三菱化学株式会社製、微量水分測定装置CA−200型)を用いて求めることができる。
前記ポリイミド成形体の少なくとも一方の面に、前記ポリイミド前駆体樹脂組成物を塗布して、ポリイミド前駆体樹脂塗膜を形成する工程において、前記塗布手段は、目的とする膜厚で塗布可能な方法であれば特に制限はなく、例えばダイコータ、コンマコータ、ロールコータ、グラビアコータ、カーテンコータ、スプレーコータ、リップコータ等の公知のものを用いることができる。
塗布は、枚葉式の塗布装置により行ってもよく、ロールtoロール方式の塗布装置により行ってもよい。
光学特性の高度な管理が必要な場合、溶剤の乾燥時の雰囲気は、不活性ガス雰囲気下であることが好ましい。不活性ガス雰囲気下としては、窒素雰囲気下であることが好ましく、酸素濃度が100ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがより好ましい。大気下で熱処理を行うと、フィルムが酸化され、着色したり、性能が低下する可能性がある。
前記第1の製造方法においては、加熱をすることにより、前記ポリイミド前駆体をイミド化する。
イミド化の温度は、ポリイミド前駆体の構造に合わせて適宜選択されれば良い。
通常、昇温開始温度を30℃以上とすることが好ましく、100℃以上とすることがより好ましい。一方、昇温終了温度は250℃以上とすることが好ましい。
ポリイミドフィルムの製造効率の点から、5℃/分以上とすることが好ましく、10℃/分以上とすることが更に好ましい。一方、昇温速度の上限は、通常50℃/分とされ、好ましくは40℃/分以下、さらに好ましくは30℃/分以下である。上記昇温速度とすることが、フィルムの外観不良や強度低下の抑制、イミド化反応に伴う白化をコントロールでき、光透過性が向上する点から好ましい。
ただし、ポリイミドに含まれる炭素原子に結合する水素原子の50%以上が、芳香族環に直接結合する水素原子である場合は、光学特性に対する酸素の影響が少なく、不活性ガス雰囲気を用いなくても光透過性の高いポリイミドが得られる。
イミド化を90%以上、さらには100%まで反応を進行させるには、昇温終了温度で一定時間保持することが好ましく、当該保持時間は、通常1分〜180分、更に、5分〜150分とすることが好ましい。
なお、イミド化率の測定は、赤外測定(IR)によるスペクトルの分析等により行うことができる。
ポリイミド前駆体と、有機溶剤とを含む第1のポリイミド前駆体樹脂組成物、及びポリイミド前駆体と、有機溶剤とを含む第2のポリイミド前駆体樹脂組成物をそれぞれ調製する工程と、
前記第1のポリイミド前駆体樹脂組成物を支持体に塗布して、第1のポリイミド前駆体樹脂塗膜を形成する工程と、
前記第1のポリイミド前駆体樹脂塗膜上に、前記第2のポリイミド前駆体樹脂組成物を塗布して、第2のポリイミド前駆体樹脂塗膜を形成する工程と、
加熱をすることにより、前記第1のポリイミド前駆体樹脂組成物が含有するポリイミド前駆体及び前記第2のポリイミド前駆体樹脂組成物が含有するポリイミド前駆体をイミド化する工程と、を含む製造方法が挙げられる。
前記第2の製造方法において、3層以上のポリイミド層を有するポリイミドフィルムを製造する方法としては、例えば、ポリイミド前駆体樹脂組成物を塗布して、ポリイミド前駆体樹脂塗膜を形成する工程を、所望の層数になるまで行った後、前記イミド化する工程により、各ポリイミド前駆体樹脂塗膜が含有する各ポリイミド前駆体をイミド化する方法が挙げられる。
前記第2の製造方法により、3層のポリイミド層を有するポリイミドフィルムを製造する方法としては、例えば、
ポリイミド前駆体と、有機溶剤とを含む第1のポリイミド前駆体樹脂組成物、ポリイミド前駆体と、有機溶剤とを含む第2のポリイミド前駆体樹脂組成物、及びポリイミド前駆体と、有機溶剤とを含む第3のポリイミド前駆体樹脂組成物を調製する工程と、
前記第1のポリイミド前駆体樹脂組成物を支持体に塗布して、第1のポリイミド前駆体樹脂塗膜を形成する工程と、
前記第1のポリイミド前駆体樹脂塗膜上に、前記第2のポリイミド前駆体樹脂組成物を塗布して、第2のポリイミド前駆体樹脂塗膜を形成する工程と、
前記第2のポリイミド前駆体樹脂塗膜上に、前記第3のポリイミド前駆体樹脂組成物を塗布して、第3のポリイミド前駆体樹脂塗膜を形成する工程と、
加熱をすることにより、前記第1のポリイミド前駆体樹脂組成物が含有するポリイミド前駆体、前記第2のポリイミド前駆体樹脂組成物が含有するポリイミド前駆体及び前記第3のポリイミド前駆体樹脂組成物が含有するポリイミド前駆体をイミド化する工程と、を含み、前記第1のポリイミド前駆体樹脂組成物と前記第3のポリイミド前駆体樹脂組成物とは同じ組成であっても良い、製造方法が挙げられる。
前記第2の製造方法においては、所望の層数となるように形成された各ポリイミド前駆体樹脂塗膜が、それぞれポリイミド層となる。
前記第2の製造方法は、ポリイミドフィルムの複屈折率を低減しやすい点から好ましい。前記第2の製造方法によれば、波長590nmにおける厚み方向の複屈折率が0.025以下、より好ましくは0.020以下であるポリイミドフィルムを好適に形成可能である。
延伸時の加熱温度は、ポリイミド乃至ポリイミド前駆体のガラス転移温度±50℃の範囲内であることが好ましく、ガラス転移温度±40℃の範囲内であることが好ましい。延伸温度が低すぎるとフィルムが変形せず充分に配向を誘起できない恐れがある。一方で、延伸温度が高すぎると延伸によって得られた配向が温度で緩和し、充分な配向が得られない恐れがある。
延伸工程は、イミド化工程と同時に行っても良い。イミド化率80%以上、更に90%以上、より更に95%以上、特に実質的に100%イミド化を行った後のイミド化後塗膜を延伸することが、ポリイミドフィルムの耐衝撃性を向上する点から好ましい。
ポリイミド成形体を準備する工程と、
ポリイミドと、有機溶剤とを含むポリイミド樹脂組成物を調製する工程と、
前記ポリイミド成形体の少なくとも一方の面に、前記ポリイミド樹脂組成物を塗布して、ポリイミド樹脂塗膜を形成する工程と、を含む製造方法が挙げられる。
また、本開示のポリイミドフィルムの製造方法としては、第4の製造方法として、
ポリイミドと、有機溶剤とを含む第1のポリイミド樹脂組成物、及びポリイミドと、有機溶剤とを含む第2のポリイミド樹脂組成物をそれぞれ調製する工程と、
前記第1のポリイミド樹脂組成物を支持体に塗布して、第1のポリイミド樹脂塗膜を形成する工程と、
前記第1のポリイミド樹脂塗膜上に、前記第2のポリイミド樹脂組成物を塗布して、第2のポリイミド樹脂塗膜を形成する工程と、を含む製造方法が挙げられる。
前記第3の製造方法及び前記第4の製造方法において、3層以上のポリイミド層を有するポリイミドフィルムを製造する方法としては、例えば、ポリイミド樹脂塗膜を形成する工程を、所望の層数になるまで行う方法が挙げられる。
前記第3の製造方法及び前記第4の製造方法は、ポリイミドフィルムの黄色度(YI値)を低減しやすい点から好ましく、前記JIS K7373−2006に準拠して算出される黄色度(YI値)を膜厚(μm)で割った値(YI値/膜厚(μm))が0.330以下、より好ましくは0.200以下、より更に好ましくは0.150以下のポリイミドフィルムを好適に形成可能である。
前記第4の製造方法に用いられる支持体としては、前記第2の製造方法に用いられる支持体と同様のものが挙げられる。
以下、前記第3の製造方法及び前記第4の製造方法における、ポリイミド樹脂組成物を調製する工程(以下、ポリイミド樹脂組成物調製工程という)、及びポリイミド樹脂塗膜を形成する工程(以下、ポリイミド樹脂塗膜形成工程という)について、詳細に説明する。
また、前記第3の製造方法及び前記第4の製造方法において、前記ポリイミド樹脂組成物の含有水分量1000ppm以下とする方法としては、前記第1の製造方法における前記ポリイミド前駆体樹脂組成物調製工程において説明した方法と同様の方法を用いることができる。
前記第3の製造方法及び前記第4の製造方法におけるポリイミド樹脂塗膜形成工程においては、前記ポリイミド樹脂組成物を塗布した後、必要に応じて溶剤を乾燥する。乾燥温度としては、常圧下では80℃以上150℃以下とすることが好ましい。減圧下では10℃以上100℃以下の範囲とすることが好ましい。前記第3の製造方法及び前記第4の製造方法においては、150℃以下で溶剤を乾燥した後、150℃超過300℃以下で更に乾燥しても良い。
本開示のポリイミドフィルムの用途は特に限定されるものではなく、従来薄い板ガラス等ガラス製品が用いられていた基材や表面材等の部材として用いることができる。本開示のポリイミドフィルムは、耐衝撃性と屈曲耐性が向上したものであるため、中でも、曲面に対応できるディスプレイ用の基材や表面材等の部材として好適に用いることができる。
本開示のポリイミドフィルムは、具体的には例えば、薄くて曲げられるフレキシブルタイプの有機ELディスプレイや、スマートフォンや腕時計型端末などの携帯端末、自動車内部の表示装置、腕時計などに使用するフレキシブルパネル等に好適に用いることができる。また、本開示のポリイミドフィルムは、液晶表示装置、有機EL表示装置等の画像表示装置用部材や、タッチパネル用部材、フレキシブルプリント基板、表面保護膜や基板材料等の太陽電池パネル用部材、光導波路用部材、その他半導体関連部材等に適用することもできる。
本開示の積層体は、前述した本開示のポリイミドフィルムと、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有するハードコート層とを有する積層体である。
本開示の積層体に用いられるポリイミドフィルムとしては、前述した本開示のポリイミドフィルムを用いることができるので、ここでの説明を省略する。
本開示の積層体に用いられるハードコート層は、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有する。
ラジカル重合性化合物とは、ラジカル重合性基を有する化合物である。前記ラジカル重合性化合物が有するラジカル重合性基としては、ラジカル重合反応を生じ得る官能基であればよく、特に限定されないが、例えば、炭素−炭素不飽和二重結合を含む基などが挙げられ、具体的には、ビニル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。なお、前記ラジカル重合性化合物が2個以上のラジカル重合性基を有する場合、これらのラジカル重合性基はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
前記ラジカル重合性化合物としては、反応性の高さの点から、中でも(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましく、更に、密着性の点、並びに光透過性と表面硬度及び耐衝撃性の点から、(メタ)アクリロイル基を1分子中に2つ以上有する化合物が好ましい。例えば、1分子中に2〜6個の(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリレートモノマーと称される化合物やウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートと称される分子内に数個の(メタ)アクリロイル基を有する分子量が数百から数千のオリゴマーを好ましく使用できる。
なお、本明細書において、(メタ)アクリロイルとは、アクリロイル及びメタクリロイルの各々を表し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの各々を表す。
カチオン重合性化合物とは、カチオン重合性基を有する化合物である。前記カチオン重合性化合物が有するカチオン重合性基としては、カチオン重合反応を生じ得る官能基であればよく、特に限定されないが、例えば、エポキシ基、オキセタニル基、ビニルエーテル基などが挙げられる。なお、前記カチオン重合性化合物が2個以上のカチオン重合性基を有する場合、これらのカチオン重合性基はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
また、前記カチオン重合性化合物としては、中でも、カチオン重合性基としてエポキシ基及びオキセタニル基の少なくとも1種を有する化合物が好ましく、密着性の点、並びに光透過性と表面硬度及び耐衝撃性の点から、エポキシ基及びオキセタニル基の少なくとも1種を1分子中に2つ以上有する化合物がより好ましい。エポキシ基、オキセタニル基等の環状エーテル基は、重合反応に伴う収縮が小さいという点から好ましい。また、環状エーテル基のうちエポキシ基を有する化合物は多様な構造の化合物が入手し易く、得られたハードコート層の耐久性に悪影響を与えず、ラジカル重合性化合物との相溶性もコントロールし易いという利点がある。また、環状エーテル基のうちオキセタニル基は、エポキシ基と比較して重合度が高い、低毒性であり、得られたハードコート層をエポキシ基を有する化合物と組み合わせた際に塗膜中でのカチオン重合性化合物から得られるネットワーク形成速度を早め、ラジカル重合性化合物と混在する領域でも未反応のモノマーを膜中に残さずに独立したネットワークを形成する等の利点がある。
本開示に用いられるハードコート層が含有する前記ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物は、例えば、前記ラジカル重合性化合物及び前記カチオン重合性化合物の少なくとも1種に、必要に応じて重合開始剤を添加して、公知の方法で重合反応させることにより得ることができる。
本開示に用いられるハードコート層は、前記重合物の他に、必要に応じて、帯電防止剤、防眩剤、防汚剤、硬度を向上させるための無機又は有機微粒子、レべリング剤、各種増感剤等の添加剤を含有していてもよい。
本開示の積層体は、前記ポリイミドフィルムと、前記ハードコート層とを有するものであれば特に限定はされず、前記ポリイミドフィルムの一方の面側に前記ハードコート層が積層されたものであってもよいし、前記ポリイミドフィルムの両面に前記ハードコート層が積層されたものであってもよい。また、本開示の積層体は、本開示の効果を損なわない範囲で、前記ポリイミドフィルム及び前記ハードコート層の他に、例えば、前記ポリイミドフィルムと前記ハードコート層との密着性を向上させるためのプライマー層等の他の層を有するものであってもよい。また、本開示の積層体は、前記ポリイミドフィルムと、前記ハードコート層とが隣接して位置するものであってもよい。
本開示の積層体に用いられるポリイミドフィルムの最表面に位置する2つのポリイミド層のヤング率が互いに異なり、当該ポリイミドフィルムの一方の面に前記ハードコート層が積層された積層体である場合、当該2つのポリイミド層のうち、相対的にヤング率の大きいポリイミド層側にハードコート層が位置することが、耐衝撃性が向上する点から好ましい。
また、本開示の積層体において、各ハードコート層の厚さは、2μm以上80μm以下であることが好ましく、3μm以上50μm以下であることがより好ましい。
本開示の積層体は、鉛筆硬度がHB以上であることが好ましく、F以上であることがより好ましく、H以上であることがより更に好ましく、2H以上であることが特に好ましい。
本開示の積層体の鉛筆硬度は、前記ポリイミドフィルムの鉛筆硬度の測定方法において、荷重を9.8Nとする以外は同様にして測定することができる。
本開示の積層体の前記全光線透過率は、前記ポリイミドフィルムのJIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率と同様にして測定することができる。
本開示の積層体の前記黄色度(YI値)は、前記ポリイミドフィルムの前記JIS K7373−2006に準拠して算出される黄色度(YI値)と同様にして測定することができる。
本開示の積層体のヘイズ値は、前記ポリイミドフィルムのヘイズ値と同様にして測定することができる。
本開示の積層体の前記複屈折率は、前記ポリイミドフィルムの波長590nmにおける厚み方向の複屈折率と同様にして測定することができる。
本開示の積層体の用途は特に限定されるものではなく、例えば、前述した本開示のポリイミドフィルムの用途と同様の用途に用いることができる。
本開示の積層体の製造方法としては、例えば、
前記本開示のポリイミドフィルムの少なくとも一方の面に、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種を含有するハードコート層形成用組成物の塗膜を形成する工程と、
前記塗膜を硬化する工程と、を含む製造方法が挙げられる。
ここで、前記ハードコート層形成用組成物が含有するラジカル重合性化合物、カチオン重合性化合物、重合開始剤及び添加剤については、前記ハードコート層において説明したものと同様のものを用いることができ、溶剤は、公知の溶剤から適宜選択して用いることができる。
前記塗布手段は、目的とする膜厚で塗布可能な方法であれば特に制限はなく、例えば、前記ポリイミド前駆体樹脂組成物を支持体に塗布する手段と同様のものが挙げられる。
また、ハードコート層用硬化性樹脂組成物の塗工量としては、得られる積層体が要求される性能により異なるものであるが、乾燥後の膜厚が3μm以上25μm以下になるように適宜調節することが好ましく、塗工量が3g/m2以上30g/m2以下の範囲内、特に5g/m2以上25g/m2以下の範囲内であることが好ましい。
加熱をする場合は、通常40℃以上120℃以下の温度にて処理する。また、室温(25℃)で24時間以上放置することにより反応を行っても良い。
本開示のディスプレイ用表面材は、前述した本開示のポリイミドフィルム又は前述した本開示の積層体である。
以下、特に断りがない場合は、25℃で測定又は評価を行った。
<ポリイミド前駆体の重量平均分子量>
ポリイミド前駆体の重量平均分子量は、ポリイミド前駆体を0.5重量%の濃度のN−メチルピロリドン(NMP)溶液とし、その溶液をシリンジフィルター(孔径:0.45μm)に通じて濾過させ、展開溶媒として、含水量500ppm以下の10mmol%LiBr−NMP溶液を用い、GPC装置(東ソー製、HLC−8120、使用カラム:SHODEX製GPC LF−804)を用い、サンプル打ち込み量50μL、溶媒流量0.5mL/分、40℃の条件で測定を行った。ポリイミド前駆体の重量平均分子量は、サンプルと同濃度のポリスチレン標準サンプル(重量平均分子量:364,700、204,000、103,500、44,360,27,500、13,030、6,300、3,070)を基準に測定した標準ポリスチレンに対する換算値とした。溶出時間を検量線と比較し、重量平均分子量を求めた。
<ポリイミド前駆体溶液の粘度>
ポリイミド前駆体溶液の粘度は、粘度計(例えば、TVE−22HT、東機産業株式会社)を用いて、25℃で、サンプル量0.8mlとして測定した。
ポリイミド粉体15mgを、15000mgのN−メチルピロリドン(NMP)に浸漬し、ウォーターバスで60℃に加熱しながら、スターラーを用いて回転速度200rpmで、目視で溶解を確認するまで3〜60時間撹拌することにより、0.1重量%の濃度のNMP溶液を得た。その溶液をシリンジフィルター(孔径:0.45μm)に通じて濾過させ、展開溶媒として、含水量500ppm以下の30mmol%LiBr−NMP溶液を用い、GPC装置(東ソー製、HLC−8120、検出器:示差屈折率(RID)検出器、使用カラム:SHODEX製GPC LF−804を2本直列に接続)を用い、サンプル打ち込み量50μL、溶媒流量0.4mL/分、カラム温度37℃、検出器温度37℃の条件で測定を行った。ポリイミドの重量平均分子量は、サンプルと同濃度のポリスチレン標準サンプル(重量平均分子量:364,700、204,000、103,500、44,360,27,500、13,030、6,300、3,070)を基準に測定した標準ポリスチレンに対する換算値とした。溶出時間を検量線と比較し、重量平均分子量を求めた。
<ポリイミド溶液の粘度>
ポリイミド溶液の粘度は、粘度計(例えば、TVE−22HT、東機産業株式会社)を用いて、25℃で、サンプル量0.8mlとして測定した。
各実施例のポリイミドフィルムが有する各ポリイミド層の膜厚、及び各比較例の単層ポリイミドフィルムの膜厚は、10cm×10cmの大きさに切りだしたポリイミドフィルムを厚み方向に切断した試験片の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、ポリイミドフィルムの幅方向の両端から等間隔に位置する5点について、各ポリイミド層の膜厚を測定し、その平均値とした。
実施例7〜10及び参考例11、12のポリイミドフィルムは、互いに隣接するポリイミド層の境界に、各ポリイミド層の材料が混合したミキシング領域を有していたため、ポリイミドフィルムを厚み方向に切断した試験片の断面について、飛行時間型二次イオン質量分析(ION−TOF社製、型番TOF.SIMS5)を用いて、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)による元素マッピングを行い、ケイ素原子の検出量がミキシング領域でない2つの領域のケイ素原子の検出量の平均値となる部分を、ポリイミド層間の境界として、各ポリイミド層の膜厚を測定した。なお、前記ミキシング領域でない2つの領域のケイ素原子の検出量の平均値となる部分が厚みを有する領域の場合には、当該領域の厚み方向の中央部をポリイミド層間の境界として、各ポリイミド層の膜厚を測定した。
ポリイミドフィルムを厚み方向に切断した試験片の断面を用いて、温度25℃で、ISO14577に準拠し、ナノインデンテーション法を用いて測定した。具体的には、測定装置は(株)フィッシャー・インストルメンツ製、PICODENTOR HM500を用い、測定圧子としてビッカース圧子を用いた。試験片断面の各層について、任意の点を8ヶ所測定して数平均して求めた値を各層のヤング率とした。なお、測定条件は、最大押込み深さ:1000nm、加重時間:20秒、クリープ時間:5秒とした。
単層のポリイミドフィルムを5mm×15mmに切り出した試験片に対して、熱機械分析装置(TMA)により、下記条件で試験片の伸び量を測定し、50℃から250℃の範囲での線熱膨張係数(CTE)を算出した。
<CTE測定条件>
機種名:TMA−60、(株)島津製作所製
雰囲気ガス:窒素
ガス流量:50ml/min
初期荷重:9g
[温度プログラム]
窒素雰囲気下、30℃で10分間維持した後、加熱速度10℃/minで400℃まで昇温し、400℃のまま1分間維持した。
ポリイミドフィルムを15mm×40mmに切り出した試験片を、温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した後、JIS K7127に準拠し、引張り速度を8mm/分、チャック間距離を20mmとして、25℃における引張弾性率を測定した。引張り試験機は(島津製作所製:オートグラフAG−X 1N、ロードセル:SBL−1KN)を用いた。
JIS K7361−1に準拠して、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製 HM150)により測定した。
JIS K−7105に準拠して、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製 HM150)により測定した。
YI値は、JIS K7373−2006に準拠して、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光(株) V−7100)を用い、分光測色方法により、補助イルミナントC、2度視野を用いて、250nm以上800nm以下の範囲を1nm間隔で測定した透過率をもとに、XYZ表色系における三刺激値X,Y,Zを求め、そのX,Y,Zの値から以下の式より算出した。
YI=100(1.2769X−1.0592Z)/Y
更に、YI値をポリイミドフィルムの全体膜厚(μm)で割った値(YI/膜厚(μm))を求めた。
位相差測定装置(王子計測機器株式会社製、製品名「KOBRA−WR」)を用いて、23℃、波長590nmの光で、ポリイミドフィルムの厚み方向位相差値(Rth)を測定した。厚み方向位相差値(Rth)は、0度入射の位相差値と、斜め40度入射の位相差値を測定し、これらの位相差値から厚み方向位相差値Rthを算出した。前記斜め40度入射の位相差値は、位相差フィルムの法線から40度傾けた方向から、波長590nmの光を位相差フィルムに入射させて測定した。
ポリイミドフィルムの複屈折率は、式:Rth/d(ポリイミドフィルムの膜厚(nm))に代入して求めた。
以下、静的屈曲試験の方法について、図3を参照して説明する。
15mm×40mmに切り出したポリイミドフィルムの試験片10を、長辺の半分の位置で折り曲げ、当該試験片10の長辺の両端部が厚み6mmの金属片2(100mm×30mm×6mm)を上下面から挟むようにして配置し、当該試験片10の両端部と金属片2との上下面での重なりしろが各々10mmずつになるようにテープで固定した状態で、上下からガラス板(100mm×100mm×0.7mm)3a、3bで挟み、当該試験片10を内径6mmで屈曲した状態で固定した。その際に、金属片2とガラス板3a、3bの間で当該試験片10がない部分には、ダミーの試験片4a、4bを挟み込み、ガラス板3a、3bが平行になるようにテープで固定した。このようにして屈曲した状態で固定した当該試験片10を、60℃、90%相対湿度(RH)の環境下で24時間静置した後、ガラス板と固定用のテープを外し、当該試験片10にかかる力を解放した。その後、当該試験片10の一方の端部を固定し、試験片10にかかる力を解放してから30分後の試験片の内角を測定した。
なお、参考例11のポリイミドフィルムは、相対的にヤング率が大きいポリイミド層が内側になるように屈曲させた。
当該静的屈曲試験によってフィルムが影響を受けずに完全に元に戻った場合は、前記内角は180°となる。
ポリイミドフィルムの鉛筆硬度は、測定サンプルを温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した後、JIS−S−6006が規定する試験用鉛筆を用い、東洋精機(株)製 鉛筆引っかき塗膜硬さ試験機を用いて、JIS K5600−5−4(1999)に規定する鉛筆硬度試験(0.98N荷重)をフィルム表面に行い、傷がつかない最も高い鉛筆硬度を評価することにより行った。なお、参考例11のポリイミドフィルムは、相対的にヤング率が大きいポリイミド層の表面に鉛筆硬度試験を行った。
以下、耐衝撃性の評価方法について、図4を参照して説明する。
鉄製の土台5の上に、厚さ100μmのアルミ箔6を10枚積層し、その上に15mm×40mmに切り出したポリイミドフィルムの試験片10を置いた。ボールペン7(BiC製、0.7mm)を高さ(試験片10とポールペン先端の間隔)90mmに設置し、試験片10上面にボールペン7を落下させて、ボールペン7の先端によって形成されたアルミ箔6の凹みの深さを光学顕微鏡(焦点深度)で測定することで評価した。凹みの深さを表2及び表4に示す。凹みの深さが小さいほど耐衝撃性に優れる。なお、参考例11のポリイミドフィルムは、相対的にヤング率が大きいポリイミド層の表面を上面として、耐衝撃性を評価した。
5Lのセパラブルフラスコに、脱水されたジメチルアセトアミド3081g、及び、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)322g(1.00mol)を入れ、TFMBを溶解させた溶液の液温が30℃に制御されたところへ、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)443g(1.00mol)を温度上昇が2℃以下になるように数回に分けて徐々に投入し、ポリイミド前駆体1が溶解したポリイミド前駆体溶液1(固形分20重量%)を合成した。ポリイミド前駆体溶液1(固形分20重量%)の25℃における粘度は34920cpsであり、GPCによって測定したポリイミド前駆体1の重量平均分子量は408500であった。
前記合成例1の手順で、表1に記載の原料、固形分濃度になるように反応を実施し、ポリイミド前駆体溶液2〜3とした。
5Lのセパラブルフラスコに、脱水されたジメチルアセトアミド(2265g)、及び、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(AprTMOS)(24.9g)を溶解させた溶液を入れ、液温30℃に制御されたところへ、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)(22.2g)を、温度上昇が2℃以下になるように徐々に投入し、メカニカルスターラーで30分撹拌した。そこへ、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)(288g)を添加し、完全に溶解したことを確認後、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)(420g)を温度上昇が2℃以下になるように数回に分けて徐々に投入し、ポリイミド前駆体4が溶解したポリイミド前駆体溶液4(固形分25質量%)を合成した。なお、ポリイミド前駆体溶液4において、TFMBとAprTMOSのモル比(TFMB:AprTMOS)は90:10であり、TFMBとAprTMOSの合計モルが、合成例1のTFMBのモルと同じになるようにした。
TFMB:2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン
BAPS:ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン
AprTMOS:1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン
6FDA:4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物
PMDA:ピロメリット酸二無水物
ポリイミド前駆体溶液1を用い、下記(1)〜(3)の手順で得られた膜厚50μmの単層ポリイミドフィルムを、ポリイミド成形体Aとして準備した。
(1)ポリイミド前駆体溶液1をガラス板上に塗布し、120℃の循環オーブンで10分乾燥した。
(2)窒素気流下(酸素濃度100ppm以下)、昇温速度10℃/分で、350℃まで昇温し、1時間保持後、室温まで冷却した。
(3)ガラス板より剥離し、ポリイミドフィルムを得た。
前記ポリイミド成形体Aの表裏両面に、ポリイミド前駆体溶液2を、イミド化後の膜厚がそれぞれ3μmとなるように塗布し、120℃の循環オーブンで10分乾燥してポリイミド前駆体樹脂塗膜を形成した後、窒素気流下(酸素濃度100ppm以下)、昇温速度10℃/分で、350℃まで昇温し、1時間保持後、室温まで冷却してポリイミド前駆体をイミド化することにより、実施例1のポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムは、相対的にヤング率が小さいポリイミド層(以下、低ヤング率層という)の両面に、相対的にヤング率が大きいポリイミド層(以下、高ヤング率層という)がそれぞれ積層された層構成を有する多層のポリイミドフィルムであった。
実施例1において、高ヤング率層の厚さを表2のようにした以外は、実施例1と同様にして、実施例2、3のポリイミドフィルムを得た。
実施例1において、ポリイミド成形体Aに代えて、ポリイミド前駆体溶液1の塗布量を変えて作製した膜厚80μmの単層ポリイミドフィルムであるポリイミド成形体Bを用い、高ヤング率層の厚さを表2のようにした以外は、実施例1と同様にして、実施例4〜6のポリイミドフィルムを得た。
実施例1のポリイミド成形体Aの作製において、ポリイミド前駆体溶液1に代えて、ポリイミド前駆体溶液4を用いた以外は同様にして、膜厚51μmの単層ポリイミドフィルムを得て、ポリイミド成形体Cとした。実施例1のポリイミドフィルムの作製において、ポリイミド成形体Aに代えて、ポリイミド成形体Cを用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例7のポリイミドフィルムを得た。
ポリイミド前駆体溶液1を用いて、実施例1の前記(1)〜(3)と同様の手順で得られた膜厚48μmの単層ポリイミドフィルムを、比較例1のポリイミドフィルムとした。
ポリイミド前駆体溶液2を用いて、実施例1の前記(1)〜(3)と同様の手順で得られた膜厚49μmの単層ポリイミドフィルムを、比較例2のポリイミドフィルムとした。
ポリイミド前駆体溶液3を用いて、実施例1の前記(1)〜(3)と同様の手順で得られた膜厚49μmの単層ポリイミドフィルムを、比較例3のポリイミドフィルムとした。
ポリイミド前駆体溶液4を用いて、実施例1の前記(1)〜(3)と同様の手順で得られた膜厚52μmの単層ポリイミドフィルムを、比較例4のポリイミドフィルムとした。
ポリイミド前駆体溶液1を用いて、実施例1の前記(1)〜(3)と同様の手順で得られた膜厚80μmの単層ポリイミドフィルムを、比較例5のポリイミドフィルムとした。
なお、表2及び表4に示す層構成において、「高」とは高ヤング率層を表し、「低」とは低ヤング率層を表す。また、表2及び表4に示す膜厚、ヤング率及び線熱膨張係数(CTE)は、各ポリイミド層の測定結果であり、その他の評価結果については、ポリイミドフィルム全体についての評価結果を示す。表2及び表4のポリイミド種の番号1〜6は、各々ポリイミド前駆体溶液乃至ポリイミド溶液1〜6を用いて得られるポリイミドに対応する。表2及び表4のヤング率比(高/低)は、最もヤング率の高いポリイミド層のヤング率の値を、最もヤング率の低いポリイミド層のヤング率の値で割った値である。表2及び表4の高ヤング率層の厚み割合(%)は、ポリイミドフィルムの合計厚みを100%としたときの、ヤング率が最も大きいポリイミド層の合計厚みの割合(%)である。
また、比較例3、4の単層ポリイミドフィルムは、実施例1〜7のポリイミドフィルムに比べ、耐衝撃性に劣っていた。
5Lのセパラブルフラスコに、脱水されたジメチルアセトアミド(2903g)、及び、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(AprTMOS)(15.9g)を溶解させた溶液を入れ、液温30℃に制御されたところへ、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)(14.6g)を、温度上昇が2℃以下になるように徐々に投入し、メカニカルスターラーで30分撹拌した。そこへ、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)(387g)を添加し、完全に溶解したことを確認後、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)(548g)を温度上昇が2℃以下になるように数回に分けて徐々に投入し、ポリイミド前駆体5が溶解したポリイミド前駆体溶液5(固形分25質量%)を合成した。
窒素雰囲気下で、5Lのセパラブルフラスコに、室温に下げた上記ポリイミド前駆体溶液5(400g)を加えた。そこへ、脱水されたジメチルアセトアミド(109g)を加え均一になるまで撹拌した。次に触媒であるピリジン(41.4g)と無水酢酸(53.4g)を加え24時間室温で撹拌し、ポリイミド溶液を合成した。得られたポリイミド溶液に酢酸ブチル(406g)を加え均一になるまで撹拌し、次にメタノール(3000g)を徐々に加え白色スラリーを得た。上記スラリーをろ過し、5回メタノールで洗浄し、ポリイミド5を得た。GPCによって測定したポリイミドの重量平均分子量は175000であった。
ポリイミド5を溶剤(ジクロロメタン)に溶かし、固形分15質量%のポリイミド溶液5を作製した。ポリイミド溶液5(固形分15質量%)の25℃における粘度は4174cpsであった。
前記合成例5の手順で、ポリイミド前駆体溶液5に代えて、合成例4で得たポリイミド前駆体溶液4を用いた以外は、前記合成例5と同様にして、ポリイミド6を得た。GPCによって測定したポリイミド6の重量平均分子量を表3に示す。また、前記合成例5において、ポリイミド5に代えて、ポリイミド6を用いた以外は、前記合成例5と同様にして、表3に示すポリイミド溶液6を得た。ポリイミド溶液6(固形分15質量%)の25℃における粘度を表3に示す。
ポリイミド溶液6を用い、下記(i)〜(iii)の手順で得られた膜厚47μmの単層ポリイミドフィルムを、ポリイミド成形体Dとして準備した。
(i)ポリイミド溶液6をガラス板上に塗布し、自然乾燥後、フィルムをガラス板より剥離した。
(ii)フィルムを50℃の循環オーブンで10分乾燥した。
(iii)フィルムを、窒素気流下(酸素濃度100ppm以下)、昇温速度10℃/分で、200℃まで昇温し、200℃で1時間保持後、室温まで冷却し、ポリイミドフィルムを得た。
前記ポリイミド成形体Dの表裏両面に、ポリイミド溶液5を、乾燥後の膜厚がそれぞれ3μmとなるように塗布し、自然乾燥後、50℃の循環オーブンで10分乾燥し、次いで、窒素気流下(酸素濃度100ppm以下)、昇温速度10℃/分で、200℃まで昇温し、200℃で1時間保持後、室温まで冷却することにより、実施例8のポリイミドフィルムを得た。
実施例8の前記(i)〜(iii)の手順において、ポリイミド溶液6に代えてポリイミド溶液5を用いた以外は、前記(i)〜(iii)の手順と同様にして、膜厚55μmの単層ポリイミドフィルムを得て、ポリイミド成形体Eとした。
前記ポリイミド成形体Eの表裏両面に、ポリイミド前駆体溶液2を、イミド化後の膜厚がそれぞれ3μmとなるように塗布し、120℃の循環オーブンで10分乾燥してポリイミド前駆体樹脂塗膜を形成した後、窒素気流下(酸素濃度100ppm以下)、昇温速度10℃/分で、350℃まで昇温し、1時間保持後、室温まで冷却してポリイミド前駆体をイミド化することにより、実施例9のポリイミドフィルムを得た。
実施例8の前記(i)〜(iii)の手順において、ポリイミド溶液6に代えてポリイミド溶液5を用い、乾燥後の膜厚が20μmとなるように塗布量を調整した以外は、前記(i)〜(iii)の手順と同様にして、膜厚20μmの単層ポリイミドフィルムを得て、ポリイミド成形体Fとした。
前記ポリイミド成形体Fの表裏両面に、ポリイミド前駆体溶液2を、イミド化後の膜厚がそれぞれ15μmとなるように塗布し、120℃の循環オーブンで10分乾燥してポリイミド前駆体樹脂塗膜を形成した後、窒素気流下(酸素濃度100ppm以下)、昇温速度10℃/分で、350℃まで昇温し、1時間保持後、室温まで冷却してポリイミド前駆体をイミド化することにより、実施例10のポリイミドフィルムを得た。
実施例8の前記(i)〜(iii)の手順において、ポリイミド溶液6に代えてポリイミド溶液5を用いた以外は、前記(i)〜(iii)の手順と同様にして、膜厚48μmの単層ポリイミドフィルムを得て、ポリイミド成形体Gとした。
前記ポリイミド成形体Gの一方の面に、ポリイミド前駆体溶液2を、イミド化後の膜厚が3μmとなるように塗布し、120℃の循環オーブンで10分乾燥してポリイミド前駆体樹脂塗膜を形成した後、窒素気流下(酸素濃度100ppm以下)、昇温速度10℃/分で、350℃まで昇温し、1時間保持後、室温まで冷却してポリイミド前駆体をイミド化することにより、参考例11のポリイミドフィルムを得た。
実施例1の前記(1)〜(3)の手順において、ポリイミド前駆体溶液1に代えてポリイミド前駆体溶液2を用いた以外は、前記(1)〜(3)の手順と同様にして、膜厚10μmの単層ポリイミドフィルムを得て、ポリイミド成形体Hとした。
前記ポリイミド成形体Hの表裏両面に、ポリイミド溶液5を、乾燥後の膜厚がそれぞれ20μmとなるように塗布し、自然乾燥後、50℃の循環オーブンで10分乾燥し、次いで、窒素気流下(酸素濃度100ppm以下)、昇温速度10℃/分で、200℃まで昇温し、200℃で1時間保持後、室温まで冷却することにより、参考例12のポリイミドフィルムを得た。
ポリイミド溶液5を用いて、実施例8の前記(i)〜(iii)と同様の手順で得られた膜厚55μmの単層ポリイミドフィルムを、比較例6のポリイミドフィルムとした。
ポリイミド溶液6を用いて、実施例8の前記(i)〜(iii)と同様の手順で得られた膜厚47μmの単層ポリイミドフィルムを、比較例7のポリイミドフィルムとした。
実施例9、10のポリイミドフィルムは、ケイ素原子を含有する低ヤング率層の両面に、ケイ素原子を含有しない高ヤング率層を有しており、ケイ素原子を含有する低ヤング率層単層のポリイミドフィルムである比較例6と同程度の良好な屈曲耐性を有しながら、耐衝撃性が顕著に向上しており、さらに、高ヤング率層単層のポリイミドフィルムである比較例2に比べて、屈曲耐性が向上しており、耐衝撃性が顕著に向上していた。
参考例11のポリイミドフィルムは、ケイ素原子を含有する低ヤング率層の一方の面に、ケイ素原子を含有しない高ヤング率層を有しており、ケイ素原子を含有する低ヤング率層単層のポリイミドフィルムである比較例6と同程度の良好な屈曲耐性を有しながら、耐衝撃性が向上しており、さらに、高ヤング率層単層のポリイミドフィルムである比較例2に比べて、屈曲耐性が向上しており、耐衝撃性が向上していた。
参考例12のポリイミドフィルムは、ケイ素原子を含有しない高ヤング率層の両面に、ケイ素原子を含有する低ヤング率層を有しており、ケイ素原子を含有する低ヤング率層単層のポリイミドフィルムである比較例6と比べて、耐衝撃性が向上しており、高ヤング率層単層のポリイミドフィルムである比較例2に比べて、屈曲耐性が向上していた。
また、実施例1〜10及び参考例11、12のポリイミドフィルムについて、干渉縞の有無を検査した。具体的には、ポリイミドフィルムの一方の面を黒インキで塗りつぶし、もう一方の面に干渉縞検査ランプをあて、目視にて反射観察を行った。その結果、いずれのポリイミドフィルムも実用可能なレベルであったが、実施例1〜6のポリイミドフィルムに比べ、実施例7〜10及び参考例11、12のポリイミドフィルムは、干渉縞が抑制されていた。
<密着性試験>
JIS K5400の碁盤目試験に準拠して、表面のポリイミド層にカッターナイフを用いて1mm間隔で碁盤目状に切れ込みを入れ、100マスの格子を形成した。次いで、当該格子上にセロハンテープ(ニチバン(株))を貼り付けた後剥離し、これを5回繰り返した後、表面のポリイミド層の剥離を観察した。
ペンタエリスリトールトリアクリレートの40質量%メチルイソブチルケトン溶液に、ペンタエリスリトールトリアクリレート100質量部に対して10質量部の1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(BASF製、イルガキュア184)を添加して、ハードコート層用樹脂組成物を調製した。
実施例1のポリイミドフィルムを10cm×10cmに切り出し、一方の面に前記ハードコート層用樹脂組成物を塗布し、紫外線を窒素気流下200mJ/cm2の露光量で照射し硬化させ、10μm膜厚の硬化膜であるハードコート層を形成し、積層体を作製した。
実施例13において、実施例1のポリイミドフィルムに代えて、実施例2〜10又は参考例11、12のポリイミドフィルムを各々用いた以外は、実施例13と同様にして、実施例14〜22及び参考例23、24の積層体を作製した。なお、参考例11のポリイミドフィルムを用いた参考例23においては、ポリイミドフィルムの高ヤング率層側の面に、ハードコート層を形成して、積層体を作製した。
実施例13〜22及び参考例23、24で得られた積層体を、温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した後、JIS−S−6006が規定する試験用鉛筆を用い、東洋精機(株)製 鉛筆引っかき塗膜硬さ試験機を用いて、JIS K5600−5−4(1999)に規定する鉛筆硬度試験(9.8N荷重)を、ハードコート層側の表面に行い、傷がつかない最も高い鉛筆硬度を評価することにより、各積層体の鉛筆硬度を求めた。実施例13〜22及び参考例23、24で得られた積層体の鉛筆硬度は、すべて2Hであった。
10、11 ポリミドフィルム
2 金属片
3a、3b ガラス板
4a、4b ダミーの試験片
5 土台
6 アルミ箔
7 ボールペン
Claims (15)
- ヤング率が互いに異なる2層以上のポリイミド層を含む3層以上のポリイミド層を有し、全体厚みが5μm以上200μm以下であり、JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率が85%以上であり、前記ポリイミド層のうちヤング率が最も小さいポリイミド層が、表面に位置しない、ポリイミドフィルム。
- 前記ポリイミド層のうちヤング率が最も大きいポリイミド層のヤング率が、ヤング率が最も小さいポリイミド層のヤング率の1.2倍以上である、請求項1に記載のポリイミドフィルム。
- 前記ポリイミド層のうちヤング率が最も大きいポリイミド層が、少なくとも一方の表面に位置する、請求項1又は2に記載のポリイミドフィルム。
- 前記ポリイミド層のうち最も厚みの厚い層が、ヤング率が最も大きいポリイミド層でない、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のポリイミドフィルム。
- 前記ポリイミド層のうちヤング率が最も大きいポリイミド層の合計厚みが、全体厚みの60%以下である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のポリイミドフィルム。
- 下記静的屈曲試験方法に従って、静的屈曲試験を行った場合に、当該試験後の内角が90°以上である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のポリイミドフィルム。
[静的屈曲試験方法]
15mm×40mmに切り出したポリイミドフィルムの試験片を、長辺の半分の位置で折り曲げ、当該試験片の長辺の両端部が厚み6mmの金属片(100mm×30mm×6mm)を上下面から挟むようにして配置し、当該試験片の両端部と金属片との上下面での重なりしろが各々10mmずつになるようにテープで固定した状態で、上下からガラス板(100mm×100mm×0.7mm)で挟み、当該試験片を内径6mmで屈曲した状態で固定する。その際に、金属片とガラス板の間で当該試験片がない部分には、ダミーの試験片を挟み込み、ガラス板が平行になるようにテープで固定する。このようにして屈曲した状態で固定した当該試験片を、60℃、90%相対湿度(RH)の環境下で24時間静置した後、ガラス板と固定用のテープを外し、当該試験片にかかる力を解放する。その後、当該試験片の一方の端部を固定し、試験片にかかる力を解放してから30分後の試験片の内角を測定する。 - JIS K7373−2006に準拠して算出される黄色度を、膜厚(μm)で割った値が、0.330以下である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のポリイミドフィルム。
- 前記3層以上のポリイミド層がそれぞれ、芳香族環を含み、且つ、(i)フッ素原子、(ii)脂肪族環、及び(iii)芳香族環同士をスルホニル基又はフッ素原子で置換されていても良いアルキレン基で連結した構造からなる群から選択される少なくとも1つを含むポリイミドを含有する、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のポリイミドフィルム。
- 前記ポリイミド層のうちヤング率が最も大きいポリイミド層が、下記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドを含有する、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のポリイミドフィルム。
(一般式(1)において、R1は3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物残基、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物残基、及びピロメリット酸二無水物残基からなる群から選択される少なくとも1種の4価の基、R2は、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン残基、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン残基、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン残基、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン残基、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ジフェニルエーテル残基、1,4−ビス[4−アミノ−2−(トリフルオロメチル)フェノキシ]ベンゼン残基、2,2−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン残基、4,4’−ジアミノ−2−(トリフルオロメチル)ジフェニルエーテル残基、及び9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン残基からなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の基を表す。nは繰り返し単位数を表し、1以上である。) - 下記一般式(2)で表される構造を有するポリイミドを含有するポリイミド層を更に有する、請求項9に記載のポリイミドフィルム。
(一般式(2)において、R3は芳香族環又は脂肪族環を有するテトラカルボン酸残基である4価の基、R4は、ジアミン残基である2価の基を表し、R4の総量の50モル%以下が、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基であり、残りのR4が、ケイ素原子を有さず、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基であり、前記残りのR4のうちの半分よりも多くが、1,4−シクロヘキサンジアミン残基、trans−1,4−ビスメチレンシクロヘキサンジアミン残基、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン残基、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン残基、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン残基、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン残基、及び下記一般式(3)で表される2価の基からなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の基を表す。n’は繰り返し単位数を表し、1以上である。)
(一般式(3)において、R5及びR6はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、またはパーフルオロアルキル基を表す。) - 下記一般式(2)で表される構造を有するポリイミドを含有するポリイミド層を有する、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のポリイミドフィルム。
- 前記請求項1乃至11のいずれか一項に記載のポリイミドフィルムと、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有するハードコート層とを有する積層体。
- 前記ラジカル重合性化合物が(メタ)アクリロイル基を1分子中に2つ以上有する化合物であり、前記カチオン重合性化合物がエポキシ基及びオキセタニル基の少なくとも1種を1分子中に2つ以上有する化合物である、請求項12に記載の積層体。
- 前記請求項1乃至11のいずれか一項に記載のポリイミドフィルム、又は、前記請求項12又は13に記載の積層体である、ディスプレイ用表面材。
- フレキシブルディスプレイ用である、請求項14に記載のディスプレイ用表面材。
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