本発明に係るフィラメントワインディング装置を適用した実施形態に係るフィラメントワインディング装置(Filament Winding Process、以下FW装置という。)10について図面を参照して説明する。
実施形態に係るFW装置10は、図1に示すタンク20を作製する装置からなる。タンク20は、ライナー21と、ライナー21の外周面に形成された補強層22と、口金23,24とを有している。タンク20は、気体を透過させにくい性質、いわゆるガスバリア性を有しており内部には水素などの比較的高圧のガスが充填されるように構成されている。なお、本実施形態のライナー21は、本発明に係るFW装置におけるタンクに対応する。
ライナー21は、筒状の中空容器からなり、ポリアミド樹脂(PA)などのプラスチックを炭素繊維(Carbon Fiber)で強化した炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics、以下CFRPという。)で形成されている。なお、ライナー21の材料は、いわゆるナイロン(登録商標)などの高い機械的強度を有するエンジニアリングプラスチックや金属材料であってもよい。
ライナー21は、シリンダ部25と、シリンダ部25の両端部に設けられた一対のドーム部26とを有している。シリンダ部25は円筒状に形成され、各ドーム部26は、それぞれ中空の略半球体からなりシリンダ部25と一体的に形成されている。各ドーム部26は、図示しない口金装着部を有しており、口金装着部には口金23,24が装着されている。
口金23は、金属材料からなり、ドーム部26からライナー21の軸線方向に突出している。口金24は、口金23と同様、金属材料からなり、ドーム部26からライナー21の軸線方向に突出している。口金23は、高圧のガスが流通する通路を有しており、高圧のガスをライナー21の内部に充填する配管が接続され、高圧のガスが流通するように構成されている。口金23,24は、ライナー21を回転させる回転軸を支持する回転支持部としての機能を有している。
補強層22は、繊維束Fがライナー21の外周面に巻き付けられて形成されている。繊維束Fは、ガラス繊維(Glass Fiber)、カーボン繊維(Carbon Fiber)、アラミド繊維(Aromatic Polyamide Fiber)などの繊維からなる。繊維束Fは、数十本の単繊維を撚り合わせて1本の糸にした、いわゆるマルチフィラメントが、数千〜数万本程度束ねられた繊維束からなる。補強層22の形成は、FW装置10によって行われる。なお、本実施形態の繊維束Fは、本発明に係るフィラメントワインディング装置の繊維に対応する。
FW装置10は、図2に示すように、繊維束供給路11に設けられた含浸部30と、繊維巻取り部40と、制御部50とを備えている。制御部50は、演算処理を行う中央処理装置および制御プログラムを格納したメモリを有し、センサの検知情報や設定値情報に基づいて各構成要素を制御する。FW装置10は、含浸部30から樹脂を含浸させた繊維束Fを供給し、供給された繊維束Fを繊維巻取り部40でライナー21の外周面にヘリカル巻きやフープ巻きで巻き取らせるように構成されている。なお、本実施形態の繊維束供給路11は、本発明に係るFW装置の繊維供給路に対応する。
含浸部30は、ボビン31と、開繊機構32と、含浸機構33と、ニップローラ34と、送りローラ35,36,37,38と、図示しない冷却チラーを備えている。含浸部30では、供給される繊維束Fの供給速度(m/sec)が一定に保たれている。本実施形態の含浸機構33は、本発明に係るFW装置における樹脂含浸部に対応する。
ボビン31は、繊維束Fが巻き付けられた円筒状の部材からなり、張力を調整しつつ繊維束Fを巻き出すよう支持する図示しないクリールスタンドにセットされている。ボビン31は、単一または複数で構成されており、クリールスタンドに支持されている各ボビン31から開繊機構32に向けて繊維束Fが巻き出されるようになっている。
開繊機構32は、複数の開繊ローラ32aを有しており、中央部分に配置されたローラ32aが繊維束Fを挟持する開繊位置と、繊維束Fの挟持を解除する解除位置との間を図示しないエアシリンダなどのアクチュエータにより移動する構成を有している。この開繊機構32により、ボビン31から巻き出された繊維束Fは、その幅を広げて扁平な状態になる。即ち、開繊される。開繊機構32は、制御部50に接続されており、制御部50により動作が制御されるようになっている。
含浸機構33は、図2および図3(a)、図3(b)に示すように、樹脂塗布ローラ41,42と、ブレード43,44と、樹脂貯留部45,46と、ブレード43,44をそれぞれ移動させる図示しないアクチュエータとを有している。含浸機構33は、開繊機構32により開繊された繊維束Fに樹脂を含浸させてニップローラ34に向けて送り出すように構成されている。
樹脂塗布ローラ41は、円柱形で形成され、図示しない支持軸に回転自在に支持されている。樹脂塗布ローラ41は、外周のローラ面41aが、樹脂貯留部45に貯留されている樹脂と接触しており、矢印方向に回転することにより、ローラ面41aに樹脂が塗布される。樹脂塗布ローラ41には、繊維束Fが巻き掛けられており、ローラ面41aに塗布された樹脂が繊維束Fに含浸されるようになっている。樹脂塗布ローラ42も、樹脂塗布ローラ41と同様、円柱形で形成され、図示しない支持軸に回転自在に支持されている。
樹脂塗布ローラ42も、外周のローラ面42aが、樹脂貯留部46に貯留されている樹脂と接触しており、矢印方向に回転することにより、ローラ面42aに樹脂が塗布される。樹脂塗布ローラ42には、繊維束Fが巻き掛けられており、ローラ面42aに塗布された樹脂が繊維束Fに含浸されるようになっている。
ブレード43は、樹脂貯留部45の一部を構成し、アクチュエータにより樹脂塗布ローラ41に近接する方向に移動し、樹脂塗布ローラ41のローラ面41aとブレード43との間の隙間を小さくすることで、ローラ面41aに塗布される樹脂供給量を少なくし、繊維束Fへの樹脂含浸量を少なくするように構成されている。一方、ブレード43は、樹脂塗布ローラ41から離間する方向に移動し、樹脂塗布ローラ41のローラ面41aとブレード43との間の隙間を大きくすることで、ローラ面41aに塗布される樹脂供給量を多くし、繊維束Fへの樹脂含浸量を多くするように構成されている。
ブレード44も、ブレード43と同様、樹脂貯留部46の一部を構成し、アクチュエータにより樹脂塗布ローラ42に近接する方向に移動し、樹脂塗布ローラ42のローラ面42aとブレード44との間の隙間を小さくすることで、ローラ面42aに塗布される樹脂供給量を少なくし、繊維束Fへの樹脂含浸量を少なくするように構成されている。一方、ブレード44は、樹脂塗布ローラ42から離間する方向に移動し、樹脂塗布ローラ42のローラ面42aとブレード44との間の隙間を大きくすることで、ローラ面42aに塗布される樹脂供給量を多くし、繊維束Fへの樹脂含浸量を多くするように構成されている。
樹脂貯留部45,46にそれぞれ貯留されている樹脂は、エポキシ樹脂(EP)、ポリエステル樹脂(PE)やポリアミド樹脂(PA)などの未硬化の熱硬化性樹脂からなり、ローラ面41a,42aにそれぞれ塗布されるよう流動性を有している。アクチュエータは、制御部50に接続されており、制御部50により動作が制御され、ブレード43,44をそれぞれ移動させる。
ニップローラ34は、複数のローラで構成されており、各ローラは、図示しない支持軸で回転自在に支持されている。ニップローラ34は、含浸機構33から送り出された繊維束Fを、各ローラの回転により通過させ、繊維巻取り部40に向けて送り出すように構成されている。
ニップローラ34は、繊維束Fを各ローラに通過させることで、繊維供給路の上流の巻出側の繊維束Fの張力と、繊維供給路の下流の巻取側の繊維束Fの張力とを分断する構成を有している。この構成により、繊維束Fに掛かる巻出側の張力と巻取側の張力とは、実質的に影響し合うことがなく、互いに独立した状態となり、含浸部30では、繊維束Fの供給速度が一定とされ、繊維巻取り部40では、繊維束Fの供給速度が可変とされる。
冷却チラーは、含浸機構33で樹脂が含浸され、温度(℃)が上昇した繊維束Fを冷却するよう、ニップローラ34の各ローラ内を冷却する冷却機構を有している。図4に示すように、繊維束Fに含浸された樹脂は、温度が高まると粘度(Pa・s)が低下する特性を有している。樹脂の粘度が低下すると、流動性が高まり、繊維束Fがライナー21の外周面に巻き付けられる際、即ち、ライナー21で繊維束Fを巻き取る際に、繊維束Fから樹脂が飛散してしまうおそれがある。冷却チラーで樹脂の温度を下げることで、繊維束Fから樹脂が飛散することが抑制される。
冷却チラーの冷却機構は、冷却水を各ローラ内に流通させ熱交換機との間で冷却水を循環させる水冷によるものでもよく、冷風を熱交換機を介して各ローラ内に送り込む空冷のものであってもよい。樹脂の温度は、含浸された樹脂の特性や繊維束Fの供給速度(m/sec)など、FW装置10の設定諸元、実験値などのデータに基づいて、予め設定された目標の設定温度に基づいて調整される。具体的には、温度の調整は、ニップローラ34に設けられた図示しない温度センサの検知温度に基づいて、冷却機構に接続されている制御部50により、冷却機構の動作がフィードバック制御されることで行われる。
送りローラ35,36は、図2に示すように、繊維束供給路11におけるボビン31と開繊機構32との間にそれぞれ配置された図示しない支持軸に回転自在に支持されており、ボビン31から巻き出された繊維束Fの供給方向を転換して繊維束Fを開繊機構32に送るように構成されている。送りローラ37,38は、繊維束供給路11における開繊機構32と含浸機構33との間にそれぞれ配置された図示しない支持軸に回転自在に支持されており、開繊機構32から送り出された繊維束Fの供給方向を転換して繊維束Fを含浸機構33に送るように構成されている。
繊維巻取り部40は、図2に示すように、繊維束供給路11に設けられたテンションローラ51と、エンコーダ52と、アクティブダンサ53と、送りローラ54,55,56と、繊維束供給機構57と、繊維束巻取機構58を備えている。
テンションローラ51は、繊維束供給路11におけるニップローラ34とアクティブダンサ53との間に配置されている。テンションローラ51は、図示しない支持軸に回転自在に支持され支点となるローラ51aと、揺動可能なローラ51bと、ローラ51aとローラ51bとの間に設けられたステー51cと、ステー51cに連結されたピストンロッドを有するシリンダ51dとを有している。
シリンダ51dは、制御部50に接続されており、制御部50によりピストンロッドが伸縮され、それに応じてステー51cに所定の圧力(MPa)を負荷し、ローラ51bを揺動させ、繊維束Fに張力(N)を付与し、繊維束Fの張力を調整するように構成されている。テンションローラ51で張力が調整された繊維束Fは、アクティブダンサ53に向けて送られる。
エンコーダ52は、繊維束Fの供給速度を検知するためのものであり、繊維束供給路11におけるニップローラ34とアクティブダンサ53との間に配置されている。本実施例では、エンコーダ52は、テンションローラ51のローラ51bに取り付けられており、ローラ51bとともに回転するロータリエンコーダにより構成されている。ロータリエンコーダは、制御部50に接続されており、ローラ51bの回転速度(rpm)を検知し、回転の機械的変位量を電気信号に変換し、制御部50に電気信号を送信する。
なお、ニップローラ34が含浸機構33の構造の一部となるよう、ニップローラを備えた含浸機構33が構成される場合には、エンコーダ52は、繊維束供給路11における含浸機構33とアクティブダンサ53との間に配置されることになる。しかしながら、ニップローラは、繊維束Fの張力を調整するように構成されているので、ニップローラよりも、繊維束供給路11における上流側、即ち、巻き出し側にエンコーダ52を配置すると、繊維束巻取機構58によるフープ巻きの際の繊維束Fの供給速度の変化を的確に検知することができないおそれがある。
制御部50は、エンコーダ52から送信された電気信号に基づいて、含浸機構33のブレード43,44に設けられた各アクチュエータの移動量を算出し、算出結果および格納されている設定値情報によりアクチュエータを移動させる制御を行う。この構成により、樹脂塗布ローラ41のローラ面41aとブレード43との間の隙間および樹脂塗布ローラ42のローラ面42aとブレード44との間の隙間が調整され、繊維束Fへの樹脂供給量が調整され、繊維束Fの樹脂含浸量が調整される。
例えば、繊維束巻取機構58によりライナー21がその外周面に繊維束Fをフープ巻きで巻き取る場合、図5に示すように、繊維束Fの巻き始めは、定速(m/sec)になるまでは急激に繊維束Fの供給速度が上昇する。一方、繊維束Fの定速から巻き終わりまでは、急激に繊維束Fの供給速度が下降する。このような供給速度の変動は、繊維束Fの樹脂含浸量に影響する。エンコーダ52により、このような繊維束Fの供給速度の変動を検知することで、制御部50によるフィードバック制御が行われ、供給速度の変動が吸収され、安定した樹脂含浸量が確保される。
アクティブダンサ53は、図2に示すように、ローラ53aと53bとにより構成されている。ローラ53a,53bは、図示しない支持軸で回転自在に支持されている。アクティブダンサ53は、送りローラ54およびエンコーダ52を介して送られる繊維束Fに対して、ローラ53aが矢印a方向へ昇降することにより、繊維束Fの張力(N)の変動幅を小さくして供給速度が一定になるように構成されている。即ち、アクティブダンサ53においては、繊維束Fの供給速度(m/sec)における加速度(m/sec2)や減速度(m/sec2)が調整され、いわゆる加速度や減速度の吸収が行われて、供給速度が一定になるよう調整される。
例えば、繊維束巻取機構58によりライナー21がその外周面に繊維束Fをヘリカル巻きで巻き取る場合、アクティブダンサ53が無いと、図6に示す繊維束Fの巻き始めから巻き終わりの間は、破線で示すように、急激に繊維束Fの供給速度が上昇と下降を繰り返す。このような供給速度の変動は、繊維束Fの樹脂含浸量に影響する。一方、アクティブダンサ53があると、実線で示すように、繊維束Fの巻き始めから巻き終わりの間は、供給速度が一定に保たれる。アクティブダンサ53は、このように急激に上昇と下降を繰り返す繊維束Fの供給速度を一定に保つ機能を有している。
アクティブダンサ53で張力調整が行われ、供給速度が一定に保たれた繊維束Fは、送りローラ55,56を介して繊維束供給機構57に向けてアクティブダンサ53から送り出されるように構成されている。
送りローラ54は、繊維束供給路11におけるニップローラ34とテンションローラ51との間に配置された図示しない支持軸に回転自在に支持されており、ニップローラ34から送られた繊維束Fの供給方向を転換して繊維束Fをテンションローラ51に送るように構成されている。送りローラ55,56は、繊維束供給路11におけるアクティブダンサ53と繊維束供給機構57との間にそれぞれ配置された図示しない支持軸に回転自在に支持されており、アクティブダンサ53から送られた繊維束Fの供給方向を転換して繊維束Fを繊維束供給機構57に送るように構成されている。
繊維束供給機構57は、図示しない支持軸に回転自在に支持されたローラ61,62,63と、図示しない張力計とを有しており、複数のボビン31から供給される繊維束Fをまとめて単一の繊維束Fとして繊維束巻取機構58に供給する、いわゆるアイクチとしての機能を有している。
繊維束供給機構57は、図示しない移動機構により、矢印bで示すアイクチトラバース方向に往復移動し、矢印cで示すアイクチ前後方向に往復移動し、矢印d方向で示すアイクチ揺動方向に揺動するように構成されている。移動機構は、制御部50に接続されており制御部50により移動機構の動作が制御される。
張力計は、ローラ61,62,63を通過する繊維束Fの張力を測定し、測定結果の信号を制御部50に送る。制御部50は、送られた信号に基づいて、開繊機構32、含浸機構33、ニップローラ34、テンションローラ51、繊維束供給機構57および繊維束巻取機構58の各構成要素を制御する。
繊維束巻取機構58は、ライナー21を長手方向の両端部で支持する一対の支持部71と、ライナー21を矢印e方向、即ち、ライナー21の軸心周りに回転させる回転駆動部72と、矢印fで示すライナートラバース方向にライナー21を往復移動させる図示しない移動機構とを有している。
繊維束巻取機構58は、繊維束供給機構57から供給されるとともに、繊維束供給機構57のアイクチトラバース方向、アイクチ前後方向およびアイクチ揺動方向への動作と、繊維束巻取機構58におけるライナー21の回転およびライナートラバース方向への移動との協働により、ライナー21に繊維束Fを巻き取らせる構成を有している。即ち、繊維束巻取機構58は、繊維束供給機構57から供給される繊維束Fをライナー21に巻き付けるように構成されている。
繊維束巻取機構58は、繊維束供給機構57による繊維束Fの各方向における移動速度(m/sec)と、繊維束巻取機構58によるライナー21の回転速度(rpm)および移動速度(m/sec)とを制御部50により制御することで、ライナー21の繊維束Fの巻き取り方をヘリカル巻きやフープ巻きに変化させることができる。
ヘリカル巻きは、図7(a)に示すように、繊維束Fの巻回軌跡がライナー21の軸線CLに対して、例えば10°〜30°程度の低角度θで交差する巻回方法で、繊維束Fがライナー21の長手方向の円筒部および両端部の全体に亘って螺旋状に繰り返し巻き付けられる。このヘリカル巻きでは、繊維束供給機構57が、アイクチトラバース方向に平行移動するとともに、繊維束巻取機構58の回転駆動部72がライナー21を軸心周り回転させることで、ライナー21に繊維束Fのヘリカル層が形成される。
フープ巻きは、図7(b)に示すように、繊維束Fの巻回軌跡がライナー21の軸線CLに対して、例えば90°程度の直角に近い角度で交差する巻き付け方で、ライナー21の長手方向の円筒部に繰り返し巻き付ける。このフープ巻きにおいても、繊維束供給機構57が、アイクチトラバース方向に平行移動するとともに、繊維束巻取機構58の回転駆動部72がライナー21を軸心周り回転させることで、ライナー21に繊維束Fのフープ層が形成される。
次いで、本実施形態に係るFW装置10の動作について図面を参照して簡単に説明する。
まず、本実施形態に係るFW装置10で作製されるタンク20を構成するライナー21が、図2に示すように、繊維束巻取機構58にセットされ、ボビン31が図示しないクリールスタンドにセットされて、ボビン31から繊維束Fが巻き出される。巻き出された繊維束Fは、送りローラ35,36を介して開繊機構32にセットされ、送りローラ37,38を介して含浸機構33にセットされ、ニップローラ34にセットされる。次いで、繊維束Fは、送りローラ54を介してテンションローラ51およびエンコーダ52、アクティブダンサ53にセットされ、送りローラ55,56を介して繊維束供給機構57にセットされる。
繊維束FのFW装置10へのセットが完了すると、制御部50の制御により、ボビン31から繊維束Fの巻き出しが開始され、開繊機構32により繊維束Fが開繊される。そして、開繊された繊維束Fは、含浸機構33で繊維束Fに樹脂が含浸され、ニップローラ34を通過して繊維束Fの張力が調整される。ニップローラ34を通過する際に、冷却チラーにより、繊維束Fに含浸された樹脂が効率よく冷却される。
繊維束Fは、繊維束供給機構57から繊維束巻取機構58に供給され、テンションローラ51を通過して張力が調整されるとともに、テンションローラ51のローラ51bに設けられたエンコーダ52により、繊維束Fの供給速度が検知され、検知情報が制御部50に送信される。そして、繊維束巻取機構58によりライナー21への繊維束Fの巻き付けが開始する。即ち、ライナー21による繊維束Fの巻き取りが開始する。ライナー21による繊維束Fの巻き取りの開始と同時に、繊維束供給機構57の張力計による繊維束Fの張力の検知が開始され、検知情報が制御部50に送信される。
FW装置10が稼働中に、制御部50により、格納されている制御プログラムが実行され、繊維束供給機構57の張力計およびエンコーダ52から受信した各検知情報や設定値情報に基づいて、FW装置10の各構成要素が制御される。そして、ライナー21による繊維束Fの巻き取りが完了すると、次のライナー21が繊維束巻取機構58にセットされる。なお、ライナー21による繊維束Fの巻き取りが完了し、外周面に繊維束Fからなる補強層22が形成されたライナー21は、次工程に送られ、樹脂の硬化処理が行われてタンク20が完成する。
以上のように構成された実施形態に係るFW装置10の効果について説明する。
本実施形態に係るFW装置10は、含浸機構33が、繊維束供給路11のボビン31とアクティブダンサ53との間の位置に配置されているので、繊維束巻取機構58による繊維束Fの巻き取りの際に生ずる繊維束Fの速度変化をアクティブダンサ53により吸収することができ、繊維束Fの速度変化が含浸機構33に影響することが抑制されるという効果がある。特に、繊維束巻取機構58によるヘリカル巻きで巻き付け速度が急激に繊維束Fの供給速度が変化しても、含浸機構33において繊維束への安定した樹脂含浸量が確保されるという効果が得られる。
また、本実施形態に係るFW装置10は、エンコーダ52が、アクティブダンサ53と含浸機構33との間の繊維束供給路11に配置されており、エンコーダ52により含浸機構33アクティブダンサ53との間の繊維束Fの供給速度が検知される。この構成により、繊維束巻取機構58によるフープ巻きの巻き始めや巻き終わりの急激な速度変化により繊維束Fの供給速度が急激に変化しても、含浸機構33における繊維束Fへの安定した樹脂含浸量が確保されるという効果が得られる。
即ち、制御部50により、エンコーダ52で検知された供給速度に基づいて、含浸機構33のブレード43,44がそれぞれ移動し、ブレード43,44と樹脂塗布ローラ41,42との間の隙間がそれぞれ調整され、樹脂供給量が適正な値になるよう制御される。その結果、含浸機構33において繊維束Fの適正な樹脂含浸量が得られる。
また、本実施形態に係るFW装置10においては、繊維束Fが、ニップローラ34を通過する際に、温度センサの検知情報に基づいて、制御部50により冷却チラーが制御されるので、効率よく、樹脂が含浸された繊維束Fの温度が調節され、樹脂の粘度が適正な値に維持される。その結果、繊維束Fがライナー21に巻き取られる際に、繊維束Fの張力により含浸された樹脂が絞り出されて飛散するという問題が解消され、タンク20の機械的強度などの品質の低下を阻止することができ、安定した品質が確保されるという効果が得られる。
また、樹脂の粘度が適正な値に維持されると、FW装置10を構成する各ローラに樹脂が付着して、繊維束Fが切れてしまうという問題も解消される。さらに、樹脂がローラに付着することが抑制され、FW装置10の清掃などのメンテナンスに時間を要するという問題も解消される。
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。