JP6965956B2 - 高強度鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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[1] 質量%で、C:0.10%以上0.20%以下、Si:0.01%以上2.50%以下、Mn:3.5%以上6.0%以下、P:0.100%以下、S:0.0500%以下、Al:0.01%以上0.50%以下およびN:0.010%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成と、鋼板組織全体に対する面積率で、下部ベイナイトが30%以上80%未満、焼戻しマルテンサイトを含むマルテンサイトが10%以上50%未満、残留オーステナイトが10%以上30%以下、ポリゴナルフェライトが10%以下(0%を含む)、前記残留オーステナイト中の平均Mn量が質量%で7%以上、下部ベイナイト、マルテンサイトおよびポリゴナルフェライト中の平均Mn量が質量%で4%以下である鋼板組織と、を有し、引張強さが1300MPa以上、引張強さ×全伸びが18000MPa・%以上、引張強さ×穴拡げ率が40000MPa・%以上であることを特徴とする高強度鋼板。
[2] 前述の成分組成は、さらに、質量%で、Cr:0.005%以上1.000%以下、V:0.005%以上1.000%以下、Ni:0.005%以上1.000%以下、Mo:0.005%以上1.000%以下およびCu:0.01%以上2.00%以下のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする[1]に記載の高強度鋼板。
[3] 前述の成分組成は、さらに、質量%で、Ti:0.005%以上0.100%以下およびNb:0.005%以上0.100%以下のうちから選んだ1種または2種を含有することを特徴とする[1]または[2]に記載の高強度鋼板。
[4] 前述の成分組成は、さらに、質量%で、B:0.0003%以上0.0050%以下を含有することを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の高強度鋼板。
[5] 前述の成分組成は、さらに、質量%で、Ca:0.001%以上0.005%以下およびREM:0.001%以上0.005%以下のうちから選んだ1種または2種を含有することを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の高強度鋼板。
[6] 前記成分組成は、さらに、質量%で、Sb:0.200%以下、Sn:0.200%以下、Ta:0.100%以下、W:0.500%以下、Mg:0.0050%以下、Zr:0.1000%以下のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項[1]〜[5]のいずれか一項に記載の高強度鋼板。
[7] [1]〜[6]のいずれかに記載の成分組成からなる鋼片を、熱間圧延後、(Ac1変態点+20℃)以上Ac3変態点以下の温度域で600s以上108000s以下保持する第1の熱処理工程と、第1の熱処理工程後の鋼板を冷却し、該鋼板を冷間圧延により冷延鋼板とし、ついで該冷延鋼板を、オーステナイト単相域で15秒以上1000秒以下焼鈍した後、(Ms点−100℃)以上Ms点未満の第1温度域まで平均冷却速度:10℃/s以上で冷却し、その後、250℃以上、(Bs点−20℃)または450℃のうちのいずれか低い温度以下の第2温度域に昇温し、引き続き該第2温度域に15秒以上1000秒以下保持する第2の熱処理工程と、を有することを特徴とする高強度鋼板の製造方法。
ここで、Ms点はマルテンサイト変態開始温度であり、Bs点は、下記式により求められる値である。
Bs(℃)=830−270×[C%]−90×[Mn%]−37×[Ni%]−70×[Cr%]−83×[Mo%] ただし、[X%]は鋼板の成分元素Xの質量%とする。
Cは鋼板の高強度化および安定した残留オーステナイト量を確保するのに必要不可欠な元素であり、マルテンサイト量の確保および室温でオーステナイトを残留させるために必要な元素である。C量が0.10%未満では、鋼板の強度と加工性を確保することが難しい。一方、C量が0.20%を超えると、溶接部および溶接熱影響部の硬化が著しく溶接性が劣化する。したがって、C量は0.10%以上0.20%以下の範囲とする。C量は、好ましくは0.12%以上、より好ましくは0.14%以上である。C量は、好ましくは0.18%以下、より好ましくは0.17%以下である。
Siは、固溶強化により鋼の強度向上と炭化物の抑制に寄与する有用な元素である。Si量が0.01%に満たないとその添加効果が乏しくなるため、Si量は0.01%以上とする。Si量は、好ましくは0.05%以上、より好ましくは0.10%以上である。一方、Si量が2.50%を超えると、鋼板の脆化により穴拡げ率が低下、所望の伸びフランジ性の確保が困難となるため、Si量は2.50%以下とする。Si量は、好ましくは2.00%以下、より好ましくは1.50%以下である。
Mnは、本発明において極めて重要な添加元素である。すなわち、Mnは、残留オーステナイトを安定化させる元素で、良好な延性の確保に有効であり、さらに、固溶強化により鋼の強度を上昇させる元素である。また、残留オーステナイト中のMn濃化により、残留オーステナイトを体積率で10%以上と多量に確保することが可能となる。このような作用は、Mn量が3.5%以上で認められる。一方、Mn量が6.0%を超える過剰な添加は、適切なMn濃度を得ることができない。こうした観点から、Mn量は3.5%以上6.0%以下とする。Mn量は、好ましくは、4.0%以上、より好ましくは4.2%以上である。Mn量は、好ましくは5.5%以下、より好ましくは5.0%以下である。
Pは、鋼の強化に有用な元素であるが、P量が0.100%を超えると、粒界偏析により脆化することにより耐衝撃性を劣化させ、鋼板に合金化溶融亜鉛めっきを施す場合には合金化速度を大幅に遅延させる。したがって、P量は0.100%以下とする。P量は好ましくは0.050%以下である。P量は、より好ましくは0.030%以下である。P量は、低減することが好ましいが、0.005%未満とするには大幅なコスト増加を引き起こすため、P量は0.005%以上とすることが好ましい。より好ましくは0.007%以上である。
Sは、MnSなどの介在物となり、耐衝撃性の劣化や溶接部のメタルフローに沿った割れの原因となるため、S量を極力低減することが好ましい。しかしながら、0.0500%までは許容可能であることから、S量は0.0500%以下とする。好ましくは0.0300%以下であり、より好ましくは0.0100%以下である。なお、Sは0.0003%未満とするには大きな製造コストの増加を伴うため、製造コストの点からはS量は0.0003%以上が好ましい。S量は、より好ましくは0.0005%以上、さらに好ましくは0.0008%以上である。
Alは、製鋼工程で脱酸剤として添加される有用な元素である。この効果を得るためには0.01%以上の添加が必要である。一方、Al量が0.50%を超えると、連続鋳造時のスラブ割れの危険性が高まる。したがって、Al量は0.01%以上0.50%以下とする。Al量は、好ましくは0.02%以上、より好ましくは0.03%以上である。Al量は、好ましくは0.40%以下、より好ましくは0.30%以下である。
Nは、鋼の耐時効性を最も大きく劣化させる元素であり、極力低減することが好ましい。N量が0.010%を超えると耐時効性の劣化が顕著となるため、N量は0.010%以下とする。N量は、好ましくは0.008%以下、より好ましくは0.007%以下である。なお、Nを0.001%未満とするには大きな製造コストの増加を招くため、製造コストの点からは、N量は0.001%以上が好ましい。N量は、より好ましくは0.002%以上、さらに好ましくは0.003%以上である。
Cr、V、Ni、Mo及びCuは、焼鈍温度からの冷却時にパーライトの生成を抑制する作用を有する元素である。その効果は、Cr、V、Ni、Mo:各々0.005%以上およびCu:0.01%以上で得られる。一方、Cr、V、Ni、Mo:各々1.000%、およびCu:2.00%を超えると、硬質なマルテンサイトの量が過大となり、必要な加工性を得ることができなくなる。したがって、Cr、V、Ni、Mo及びCuを含有させる場合には、Cr、V、Ni、Mo:各々0.005%以上1.000%以下、およびCu:0.05%以上2.00%以下の範囲とする。Cr、V、Ni、Moは、好ましくは各々0.010%以上、より好ましくは各々0.015%以上である。Cuは、好ましくは0.08%以上、より好ましくは0.10%以上である。また、Cr、V、Ni、Moは、好ましくは各々0.800%以下、より好ましくは各々0.500%以下である。Cuは、好ましくは1.00%以下、より好ましくは0.80%以下である。
Ti及びNbは鋼の析出強化に有用で、その効果は、それぞれの含有量が0.005%以上で得られる。一方、それぞれの含有量が0.100%を超えると加工性および形状凍結性が低下する。したがって、Ti及びNbを含有させる場合は、Ti:0.005%以上0.100%以下およびNb:0.005%以上0.100%以下の範囲とする。Ti及びNbを含有させる場合は、好ましくはTi:0.008%以上、Nb:0.008%以上、より好ましくはTi:0.010%以上、Nb:0.010%以上である。Ti及びNbを含有させる場合は、好ましくはTi:0.080%以下、Nb:0.080%以下、より好ましくはTi:0.060%以下、Nb:0.060%以下である。
Bはオーステナイト粒界からポリゴナルフェライトが生成・成長することを抑制するのに有用な元素である。その効果は0.0003%以上の含有で得られる。一方、Bの含有量が0.0050%を超えると加工性が低下する。したがって、Bを含有させる場合は、0.0003%以上0.0050%以下の範囲とする。Bを含有させる場合は、好ましくは0.0004%以上、より好ましくは0.0005%以上である。Bを含有させる場合は、好ましくは0.0040%以下、より好ましくは0.0030%以下である。
Ca、REMは、いずれも硫化物の形態制御により加工性を改善させるのに有効な元素である。このような効果を得るには、Ca、REMから選ばれる少なくとも1種の元素の含有量を0.001%以上にする必要がある。Ca、REMから選ばれる少なくとも1種の元素の含有量は、好ましくは0.0015%以上、より好ましくは0.0020%以上である。一方、Ca、REMのそれぞれの含有量が0.005%を超えると、鋼の清浄度に悪影響を及ぼすおそれがある。したがって、Ca、REMの含有量はそれぞれ0.001〜0.005%とする。Ca、REMから選ばれる少なくとも1種の元素の含有量は、好ましくは0.0045%以下、より好ましくは0.0040%以下である。
さらに、本発明の高強度鋼板は、上記の成分組成に加えて、さらに、質量%で、Sb:0.200%以下、Sn:0.200%以下、Ta:0.100%以下、W:0.500%以下、Mg:0.0050%以下、Zr:0.1000%以下のうちから選んだ1種または2種以上を含有することが好ましい。
Snは焼鈍中の鋼板表面の脱炭の抑制に有用である。Snの含有量が0.200%を超えると加工性が低下する。したがって、Snを含有させる場合は、0.200%以下とする。Snを含有させる場合は、好ましくは0.002%以上、より好ましくは0.010%以上である。Snを含有させる場合は、好ましくは0.180%以下、より好ましくは0.160%以下である。
Taは熱間圧延時または焼鈍時に、微細な炭化物、窒化物または炭窒化物を形成し、鋼の析出強化に有用である。Taの含有量が0.100%を超えると、加工性が低下する。したがって、Taを含有させる場合は、0.100%以下とする。Taを含有させる場合は、好ましくは0.0010%以上、より好ましくは0.010%以上である。Taを含有させる場合は、好ましくは0.080%以下、より好ましくは0.060%以下である。
Wは熱間圧延時または焼鈍時に、微細な炭化物、窒化物または炭窒化物を形成し、鋼の析出強化に有用である。Wの含有量が0.500%を超えると加工性が低下する。したがって、Wを含有させる場合は、0.500%以下とする。Wを含有させる場合は、好ましくは0.0050%以上、より好ましくは0.050%以上である。Wを含有させる場合は、好ましくは0.400%以下、より好ましくは0.300%以下である。
Mgは、介在物の形態制御により加工性を改善させるのに有効な元素である。一方、Mgの含有量が0.0050%を超えると、鋼の清浄度に悪影響を及ぼすおそれがある。したがって、Mgを含有させる場合は、Mgの含有量は0.0050%以下とする。Mgを含有させる場合は、好ましくは0.0005%以上、より好ましくは0.0010%以上である。Mgを含有させる場合は、好ましくは0.0040%以下、より好ましくは0.0030%以下である。
Zrは、介在物の形態制御により加工性を改善させるのに有効な元素である。一方、Zrの含有量が0.1000%を超えると、鋼の清浄度に悪影響を及ぼすおそれがある。したがって、Zrを含有させる場合は、Zrの含有量は0.1000%以下とする。Zrを含有させる場合は、好ましくは0.0005%以上、より好ましくは0.0010%以上である。Zrを含有させる場合は、好ましくは0.0900%以下、より好ましくは0.0800%以下である。
本発明では冷間圧延前にMnを局所的に濃化させることが重要であり、その濃化量は7%以上で優れた加工性を得ることができる。局所的に濃化させるためには濃化部以外であるポリゴナルフェライト中のMn量は質量%で4%以下(0%を含む)とすることが必要である。Mnはオーステナイト中に濃化するため、残留オーステナイトの面積率は10%以上必要である。一方、30%超えでは十分に濃化しないため、残留オーステナイトの面積率は30%以下とする。
ベイナイト変態によるベイニティックフェライトの生成は、未変態オーステナイト中のCを濃化させ、加工時に高歪域でTRIP効果を発現して歪分解能を高める残留オーステナイトを得るために必要である。オーステナイトからベイナイトへの変態は、およそ150〜550℃の広い温度範囲にわたって起こり、この温度範囲内で生成するベイナイトには種々のものが存在する。従来技術では、このような種々のベイナイトを単にベイナイトと規定する場合が多かったが、本発明で目標とする強度と加工性を得るためには、ベイナイト組織を明確に規定する必要があることから、上部ベイナイトおよび下部ベイナイトを次のように定義する。
マルテンサイトは硬質相であり、鋼板の強度を上昇させる。またベイナイト変態以前にマルテンサイトを生成することによりベイナイト変態を促進する。マルテンサイトの面積率が10%未満では、ベイナイト変態を十分に促進させることができず、後述のベイナイト面積率を達成できない。一方、マルテンサイトの面積率が50%を超えると、ベイナイト組織が減少し安定した残留オーステナイト量が確保できないため、延性等の加工性が低下することが問題となる。したがって、マルテンサイトの面積率は、10%以上50%未満とする。マルテンサイトの面積率は、好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上である。マルテンサイトの面積率は、好ましくは40%未満、より好ましくは35%未満である。なお、マルテンサイトは、焼戻しマルテンサイトを含む。
焼入れままのマルテンサイトは、極めて硬質で変形能が低く靭性に劣るため、焼入れままのマルテンサイトの量が多くなると、歪付与時に脆性的に破壊して結果的に優れた延性及び伸びフランジ性が得られない場合がある。そのため、焼入れままのマルテンサイトの焼戻による、マルテンサイト自体の変形能の大幅な改善により、歪付与時における脆性的な破壊は生じず、焼戻しマルテンサイトを含む本発明の全体の組織構成の実現によって、TS×T.Elを18000MPa・%以上、TS×λを40000MPa・%以上とすることができる場合がある。したがって、マルテンサイトのうち焼戻しマルテンサイトの割合は鋼板中に存在する全マルテンサイト面積率の80%以上が好ましい。より好ましくは、焼戻しマルテンサイトの割合は全マルテンサイト面積率の90%以上である。
残留オーステナイトは、加工時にTRIP効果によりマルテンサイト変態し、高Cを含有する硬質なマルテンサイトにより高強度化を進めると同時に歪分散能を高めることにより延性を向上させる。
ポリゴナルフェライトの面積率が10%を超えると、引張強さ(TS)が1300MPa以上を満足することが困難になると同時に、加工時に硬質組織内に混在した軟質なポリゴナルフェライトに歪が集中することにより加工時に容易に亀裂が発生し、結果として所望の加工性を得られない。ここで、ポリゴナルフェライトの面積率が10%以下であれば、ポリゴナルフェライトが存在しても硬質相中に少量のポリゴナルフェライトが孤立分散した状態となり、歪の集中を抑制することができ、加工性の劣化を避けることができる。したがって、ポリゴナルフェライトの面積率は10%以下とする。好ましいポリゴナルフェライトの面積率は5%以下、さらに好ましくは3%以下であり、0%であってもよい。
TRIP効果を活用して優れた加工性を得るためには、引張強さ(TS)が1300MPa級以上の高強度鋼板においては、残留オーステナイト中のMn量が重要である。発明者らが検討した結果、本発明の鋼板においては、残留オーステナイト中の平均Mn量が7%以上であれば、より一層優れた加工性が得られることが解った。残留オーステナイト中の平均Mn量が7%未満の場合、加工時において低歪域でマルテンサイト変態が生じてしまい、加工性を向上させる高歪域でのTRIP効果が十分に得られない場合がある。したがって、残留オーステナイト中の平均Mn量は7%以上とする。残留オーステナイト中の平均Mn量は、好ましくは8%以上、より好ましくは10%以上である。
上記の通り残留オーステナイト中の平均Mn量を質量%で7%以上とするためには残留オーステナイト以外の部分、すなわち、下部ベイナイト、マルテンサイト、および、ポリゴナルフェライト中の平均Mn量を低くすることが必要である。下部ベイナイト、マルテンサイト、および、ポリゴナルフェライト中の平均Mn量を質量%で4%以下とすることで残留オーステナイト中の平均Mn量を十分高めることができる。したがって、下部ベイナイト、マルテンサイト、および、ポリゴナルフェライト中の平均Mn量を質量%で4%以下とする。好ましくは3.8%以下、より好ましくは3.5%以下である。下部ベイナイト、マルテンサイト、および、ポリゴナルフェライト中の平均Mn量は、好ましくは2%以上、より好ましくは2.2%以上である。
ここで、Ac1は、次式によって算出することができる。なお、[X%]は鋼板の成分元素Xの質量%とする。
Ac1点(℃) = 723+29×[Si%]−11×[Mn%]−17×[Ni%]+17×[Cr%]
Ac3は、次式によって算出することができる。なお、[X%]は鋼板の成分元素Xの質量%とする。
Ac3点(℃) = 937.2−436.5×[C%]+56×[Si%]−19.7×[Mn%]−26.6×[Ni%]−4.9×[Cr%]−16.3×[Cu%]+38.1×[Mo%]+124.8×[V%]+136.3×[Ti%]−19.1×[Nb%]+198.4×[Al%]+3315×[B%]
また、第2の熱処理工程における焼鈍時間が15秒未満の場合には、オーステナイトへの逆変態が十分に進まない場合や、鋼板中の炭化物が十分に溶解しない場合がある。一方、第2の熱処理工程における焼鈍時間が1000秒を超えると、多大なエネルギー消費に伴うコスト増を招く。したがって、第2の熱処理工程における焼鈍時間は15秒以上1000秒以下の範囲とする。第2の熱処理工程における焼鈍時間は、好ましくは、30秒以上、より好ましくは60秒以上である。第2の熱処理工程における焼鈍時間は、好ましくは800秒以下、より好ましくは600秒以下である。
Ms(℃) =550−35×[Mn%]−13×[Si%]−10×[Cr%]−18×[Ni%]−12×[Mo%]−600×(1−exp(−0.96×[C%]))
ただし、[X%]は鋼板の成分元素Xの質量%とする。
Bsとはベイナイト変態開始温度を示し、フォーマスタ試験などによる冷却時の熱膨張測定や電気抵抗測定による実測により決定することが好ましいが、例えば次式に示すような近似式によって求めることもできる。Bsは、経験的に求められる近似値である。
Bs(℃)=830−270×[C%]−90×[Mn%]−37×[Ni%]−70×[Cr%]−83×[Mo%]
ただし、[X%]は鋼板の成分元素Xの質量%とする。
表2−2から明らかなように、本発明の方法で製造された鋼板はいずれも、引張強さが1300MPa以上で、かつTS×T.Elの値が18000MPa・%以上、TS×λの値が40000MPa・%以上であり、所望の強度と優れた加工性を兼ね備えていることが確認された。
Claims (7)
- 質量%で、
C:0.10%以上0.20%以下、
Si:0.01%以上2.50%以下、
Mn:3.5%以上6.0%以下、
P:0.100%以下、
S:0.0500%以下、
Al:0.01%以上0.50%以下および
N:0.010%以下を含有し、
残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成と、
鋼板組織全体に対する面積率で、
下部ベイナイトが30%以上80%未満、
焼戻しマルテンサイトを含むマルテンサイトが10%以上50%未満、
残留オーステナイトが10%以上30%以下、
ポリゴナルフェライトが10%以下(0%を含む)、
前記残留オーステナイト中の平均Mn量が質量%で7%以上、
下部ベイナイト、マルテンサイトおよびポリゴナルフェライト中の平均Mn量が質量%で4%以下である鋼板組織と、を有し、
引張強さが1300MPa以上、引張強さ×全伸びが18000MPa・%以上、
引張強さ×穴拡げ率が40000MPa・%以上であることを特徴とする高強度鋼板。 - 前記成分組成は、さらに、質量%で、
Cr:0.005%以上1.000%以下、
V:0.005%以上1.000%以下、
Ni:0.005%以上1.000%以下、
Mo:0.005%以上1.000%以下および
Cu:0.01%以上2.00%以下
のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の高強度鋼板。 - 前記成分組成は、さらに、質量%で、
Ti:0.005%以上0.100%以下および
Nb:0.005%以上0.100%以下
のうちから選んだ1種または2種を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の高強度鋼板。 - 前記成分組成は、さらに、質量%で、
B:0.0003%以上0.0050%以下
を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の高強度鋼板。 - 前記成分組成は、さらに、質量%で、
Ca:0.001%以上0.005%以下および
REM:0.001%以上0.005%以下
のうちから選んだ1種または2種を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の高強度鋼板。 - 前記成分組成は、さらに、質量%で、
Sb:0.200%以下、
Sn:0.200%以下、
Ta:0.100%以下、
W:0.500%以下、
Mg:0.0050%以下、
Zr:0.1000%以下
のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の高強度鋼板。 - 請求項1〜6のいずれか一項に記載の高強度鋼板の製造方法であって、
前記成分組成からなる鋼片を、熱間圧延後、(Ac1変態点+20℃)以上Ac3変態点以下の温度域で600s以上108000s以下保持する第1の熱処理工程と、
第1の熱処理工程後の鋼板を冷却し、該鋼板を冷間圧延により冷延鋼板とし、
ついで該冷延鋼板を、オーステナイト単相域で15秒以上1000秒以下焼鈍した後、(Ms点−100℃)以上Ms点未満の第1温度域まで平均冷却速度:10℃/s以上で冷却し、その後、250℃以上、(Bs点−20℃)または450℃のうちのいずれか低い温度以下の第2温度域に昇温し、引き続き該第2温度域に15秒以上1000秒以下保持する第2の熱処理工程と、を有することを特徴とする高強度鋼板の製造方法。
ここで、Ms点はマルテンサイト変態開始温度であり、Bs点は、下記式により求められる値である。
Bs(℃)=830−270×[C%]−90×[Mn%]−37×[Ni%]−70×[Cr%]−83×[Mo%] ただし、[X%]は鋼板の成分元素Xの質量%とする。
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