JP6965530B2 - 切込プリプレグおよび切込プリプレグの製造方法 - Google Patents

切込プリプレグおよび切込プリプレグの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、成形時に良好な形状追従性を有し、固化した際に高い力学特性を有する繊維強化プラスチックの中間基材として好適な切込プリプレグおよびその製造方法に関する。
強化繊維と樹脂とからなる繊維強化プラスチックは、比強度、比弾性率が高く、力学特性に優れること、耐候性、耐薬品性などの高機能特性を有することなどから産業用途においても注目され、航空機、宇宙機、自動車、鉄道、船舶、電化製品、スポーツ等の構造用途に展開され、その需要は年々高まりつつある。
繊維強化プラスチックの中間基材として、SMC(シートモールディングコンパウンド)がある。SMCは、通常25mm程度に切断し熱硬化性樹脂を含浸したチョップドストランドがランダムに分散したシート状の基材であり、複雑な三次元形状を有する繊維強化プラスチックを成形するのに適した材料として知られている。しかし、SMCにより成形された繊維強化プラスチックはチョップドストランドの分布ムラ、配向ムラが必然的に生じてしまうため、成形体の力学特性が低下し、あるいはその値のバラツキが大きくなってしまう。安定して高い力学特性を発現する繊維強化プラスチックの成形法としては、連続した強化繊維に樹脂を含浸したプリプレグを積層し、オートクレーブにより成形する方法が知られている。しかしながら、連続繊維を用いたプリプレグでは、変形能不足によりシワや強化繊維の突っ張りが発生し、三次元形状等の複雑な形状へと成形することが難しい。
上述のような材料の欠点を埋めるべく、連続的な強化繊維と樹脂とからなるプリプレグに切込を入れて強化繊維を分断することにより、流動可能で、かつ力学特性のバラツキも小さくなるとされる基材が開示されている(例えば特許文献1、2)。
特開昭63−247012号公報 特許第5167953号公報
特許文献1及び特許文献2に記載の方法は、SMCと比較すると力学特性が大きく向上し、バラツキも小さくなるものの、特許文献1については構造材として適用するには十分な強度とは言えず、三次元形状追従性も向上の余地がある。また特許文献2については、さらに高い強度を発現し三次元形状追従性も良好であるものの、成形時に切込が開口することによりプリプレグ対比、表面品位が劣るという問題があった。
本発明は、かかる背景技術に鑑み、三次元形状追従性に優れ、固化した際に高い表面品位と優れた力学特性を発現する繊維強化プラスチックを得ることのできる中間基材(切込プリプレグ)を提供することにある。
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、以下である。
(1)一方向に配向した強化繊維と樹脂とを含むプリプレグの少なくとも一部の領域に強化繊維を分断する複数の切込を有する切込プリプレグであって、前記領域内から任意に選択される、10個の直径10mmの円形の小領域内に含まれる切込の個数を母集団とした場合に、母集団の平均値が10以上、かつ変動係数が20%以内である切込プリプレグ。
(2)強化繊維と樹脂とを含むプリプレグの少なくとも一部の領域に強化繊維を分断する複数の切込を有する切込プリプレグの製造方法であって、
プリプレグに対して複数の切込1を挿入する工程1、及び、プリプレグに対して、切込1と重ならない複数の切込2を挿入する工程2とを含む、切込プリプレグの製造方法。
本発明によれば、3次元形状追従性に優れ、繊維強化プラスチックとした場合に良質な表面品位と優れた力学特性を発現する中間基材を得ることができる。
本発明の切込プリプレグの概念図である。 均質でない切込パターン(a)と均質な切込パターン(b,c)を例示したものである。 本発明の切込プリプレグに用いられる切込パターンの一例である。 本発明の切込プリプレグに用いられる切込パターンの一例である。 本発明の切込プリプレグに用いられる切込パターンの一例である。 本発明の切込プリプレグに用いられる切込パターンの一例である。 プレス成形用の型である。 本発明の切込プリプレグに用いられる切込パターンの6つの例である。 本発明の切込プリプレグに用いられない切込パターンの5つの例である。 実施例における、切込プリプレグ内の小領域抽出パターンである。
本発明者らは、三次元形状への追従性に優れ、繊維強化プラスチックとした場合に優れた力学特性を発現する中間基材を得るために、鋭意検討し、一方向に配向した強化繊維と樹脂とを含むプリプレグの少なくとも一部の領域に強化繊維を分断する複数の切込が挿入し強化繊維を不連続とすることで3次元形状への追従性を高め、かかる課題を解決することを究明した。
具体的には、複数の切込が挿入された領域(以下、切込領域という)において任意に選択される10個の直径10mmの円形の小領域内に含まれる切込の個数を母集団とした場合に、母集団の平均値が10以上かつ変動係数が20%以内の切込プリプレグである(以下、母集団の平均値が10以上の状態を高密度、変動係数が20%以内の状態を均質という)。
図1(a)はプリプレグ1に複数の切込2が挿入された切込領域3を含む切込プリプレグの概念図を示している。切込領域は、プリプレグの少なくとも一部の領域にありさえすれば、プリプレグの一部のみに存在しても、プリプレグ全域に存在してもよく、プリプレグ内に複数の切込領域が含まれていてもよい。切込領域は、切込プリプレグのいずれの箇所に存在しても構わないが、切込プリプレグを用いて成形して繊維強化プラスチックとした際に、曲面や凹凸など三次元形状を含む領域に存在することが好ましい。切込領域内では、全ての強化繊維が切込によって分断されていても、切込によって分断されない強化繊維を含んでいても良い。また、強化繊維の配向方向と切込とのなす角が2種以上となってもよいし、切込によって分断される強化繊維の長さが2種以上となってもよい。
図1(b)は切込領域3内で直径10mmの円形の小領域4を10箇所抽出した様子を示している(以降、直径10mmの円形の小領域4を、小領域と略記する)。小領域は、切込領域内で、小領域が重ならない程度に密に抽出することが好ましいが、切込領域が小領域を10個全て重ならずに抽出するのに十分なサイズでない場合には、小領域同士が重なるように抽出しても良い。ただし、前述の母集団の平均値と変動係数をより精度よく測るために、切込領域の境界を越えて小領域を設定してはならない。切込領域の境界は、切込の端部同士を結ぶ線分を繋げた線分群であって、かつ該線分群内に全ての切込が含まれ、該線分群の長さの合計が最小となる線分群とする。
小領域内に含まれる切込みの個数とは、小領域内に存在する切込と、小領域の輪郭に一部が接触する切込の合計数とする。なお、前述の母集団の平均値と前述の母集団の変動係数は、10個の小領域内の切込数をni(i=1〜10)とすると、それぞれ式1、式2で計算される。
Figure 0006965530
Figure 0006965530
切込の個数は高密度であるほど、三次元形状への追従性が向上し、切込プリプレグの変形時に一つ一つの切込の開口が小さくなるため、繊維強化プラスチックとした際に、良好な表面品位を得ることができる。また、全体として切込によって分断される強化繊維の数が同じであっても、繊維強化プラスチックとした際に負荷が与えられた場合、切込が大きい場合は切込周辺の応力集中が大きくなるが、細かくなるほど応力集中が軽減され、力学特性が向上する。
したがって、小領域内に含まれる切込の個数を、10個の小領域においてカウントし母集団とした際に、母集団は平均値が10以上であることが好ましい。さらに好ましくは15個以上である。小領域内で同一の強化繊維が複数の切込によって分断されていてもよいが、強化繊維の繊維長さLが10mmより小さい場合、固化後の力学特性が低下する場合があるため、小領域内では同一の強化繊維が複数の切込みによって分断されていないことがより好ましい。なお繊維長さLとは、図2(a)〜(c)に示すように、任意の切込と、強化繊維方向に最近接の切込(対になる切込)とにより分断される強化繊維の長さを指している。母集団の平均値が50より大きい場合、小領域内で同一の強化繊維が複数の切込によって分断される可能性が高くなるため、母集団の平均値は50以下であることが好ましい。一方、切込領域内において、均質に切込が分布しているほど、切込プリプレグ変形時に一つ一つの切込の開口のバラツキが小さくなるため、繊維強化プラスチックとした際に安定した力学特性を発現する。したがって、母集団の変動係数は20%以下が好ましい。さらに好ましくは15%以下である。ここで小領域の抽出方法としては、図1(b)に示すように、小領域同士が比較的近くに存在するように抽出することが好ましい。抽出パターンによって前記変動係数が変動する場合もあるが、その場合は5回抽出パターンを変えて測定し、4回以上前記変動係数が20%以下であれば、本発明の態様を満たすとみなす。
比較的小さな切込を挿入する概念は既に特許文献2に記載されているが、例えば特許文献2の図2に記載の切込パターンを拡大縮小して前記母集団の平均値が10以上となるようにした場合、強化繊維の繊維長さは10mm以下とならざるを得ず、強化繊維の繊維長さを10mmとした場合には、前記母集団の平均値は5以下と、切込の分布の密度は小さくなる。
また、特許文献1の第1図(A)に代表される多くの既存の切込パターンでは、図2(a)(文献を特定しないときは本明細書の図である。以下同じ)に示すように、強化繊維の長さLに対して、隣接する切込を、Lの半分の長さL/2ずらして、断続的な切込としている。このような切込パターンの場合、切込の長さが短く、繊維長さが長いほど、強化繊維の配向方向にL/2おきに存在する直線状に切込が存在しやすくなり、前記母集団のばらつきが大きくなる。このような場合、切込開口が前記直線上に集中し、開口が顕著に現れる。図2(b)のように、隣接する切込をL/2ではなく、L/5やL/6といった、細かい周期でずらすことで、切込プリプレグ中により切込が均等に分布した切込パターンとなり、切込プリプレグが伸張する際に、伸張箇所が偏ることなく、均質な変形が可能となり、一つ一つの切込の開口が抑制される(以降、切込が均等に分布した切込パターンのことを均質な切込パターンと記す場合もある)。さらに、図2(b)のように、隣り合う切込を階段状にずらすのではなく、図2(c)のようにずらしてもよい。図2(c)はL/10の周期で切込がずれているが、切込によって分断された強化繊維束で、隣り合う強化繊維束の端部同士(例えば図2(c)中の切込s1と切込s2)の距離は、2L/5となっており、図2(b)のL/5よりも長くなっている。隣り合う強化繊維束の端部同士の距離が長いことで、き裂進展や切込開口の連鎖を抑制する効果があり、力学特性・表面品位ともに向上する。図2(a)の場合、隣り合う強化繊維束の端部同士の距離はL/2と長いが、強化繊維束を挟んだ2つの切込同士の距離も近いため、その2つの切込開口による応力集中部が重なりやすく、力学特性としても好ましくない。
分断後の強化繊維の長さは10mm以上が好ましく、15mm以上がより好ましく、さらに好ましくは20mm以上である。強化繊維の長さが20mm以上の場合でも、一つ一つの切込によって分断される強化繊維数を少なくすることで、切込が高密度に分布した切込パターン(以降、高密度な切込パターンと記す場合もある)を得ることができ、強化繊維が長いことに加え、切込が小さいことにより、力学特性向上の効果が見込める。図2(b)のように、隣接する切込を細かい周期でずらすことにより、繊維長さを保ちつつ、均質かつ高密度な切込パターンを実現できる。切込が強化繊維の配向方向に対して斜めに挿入されている場合でも同様である。
本発明における切込プリプレグの態様として、任意の切込Aと、当該切込に最近接する別の切込Bとは、同一の強化繊維を分断していないことが好ましい。最近接する切込同士で分断された強化繊維は、比較的短い強化繊維となってしまうため、繊維強化プラスチックとした際に力学特性を低下させる要因となる。また、切込Aと最近接する切込Bとの間に、切込Aと切込Bのどちらによっても分断されていない強化繊維が存在することで、繊維強化プラスチックとした際に、切込Aと切込Bが損傷により連結しにくくなり、力学特性が向上する。
図3は切込領域の一部を示しており、切込Aと最近接する切込Bとの間には複数の強化繊維5が存在しており、切込Aと切込Bは同一の強化繊維を分断していない。図3(a)のように、切込Aと切込Bの間の強化繊維5が、切込Aおよび切込Bに最近接していない切込Cによって分断されていてもよいし、図3(b)のように、切込Aと切込Bの間の強化繊維5が、切込によって分断されていなくてもよい。最近接する切込同士の間は、強化繊維の直角方向に、切込を強化繊維に直角な平面に投影した投影長さWsの0.5倍以上であることが好ましく、より好ましくはWsの1倍以上である。
高密度に切込を分布させた切込プリプレグでは、切込同士の距離が近くなり、最近接する切込同士が同一の強化繊維を分断してしまった際には非常に短い強化繊維が混入してしまう可能性があるため、最近接する切込同士が同一の強化繊維を分断しないように間隔を設けることで、高密度な切込パターンであっても短い強化繊維の混入を抑制し、安定した力学特性を発現せさることができる。
本発明における切込プリプレグの好ましい態様として、図4のように、切込は実質的に同一の長さY(以下、Yを切込長さともいう)であり、最近接する切込同士の距離6は、Yの0.5倍よりも長い切込プリプレグが挙げられる。ここで、実質的に同一の長さとは、全ての切込長さが、全ての切込長さの平均値の±5%以内であることをいう(以下同じ)。なお、本発明において切込は、直線状でも曲線状でもよく、いずれの場合でも切込の端部同士を結ぶ線分を切込長さYとする。
最近接する切込同士の距離とは、最近接する切込同士の最短距離を意味する。最近接する切込同士の距離が近い場合、繊維強化プラスチックに損傷が入った場合に、損傷が切込同士を連結しやすくなるため、最近接する切込同士の距離が、切込長さYの0.5倍より大きいことが好ましい。最近接する切込同士の距離は、より好ましくはYの0.8倍以上、さらに好ましくはYの1.0倍以上である。一方で、最近接する切込同士の距離に上限は特にないが、プリプレグに高密度な切込を付与するにあたり、最近接する切込同士の距離が切込長さYの10倍以上とすることは容易ではない。
高密度に切込が分布する切込プリプレグにおいては、三次元形状への追従性は向上し、一つ一つの切込が小さいことによる力学特性の向上が見込めるが、切込同士の距離が近い場合よりも切込同士が離れている方が力学特性はさらに向上する。したがって、密に切込を挿入した場合には、切込同士の距離を空けた切込パターン、すなわち最近接する切込同士の距離を、切込長さYの0.5倍より大きくすることが力学特性向上のために特に重要となる。さらに、切込領域内で全ての強化繊維を分断し賦形性を向上させた切込プリプレグの場合、最近接する切込同士の最短距離を切込長さYの0.5倍よりも大きく空け、かつ最近接する切込同士が同一の強化繊維を分断しないことで、三次元形状への追従性および表面品位を損なわずに、最大限に力学特性を発現できる。
本発明における切込プリプレグの好ましい態様として、切込が、強化繊維の配向方向に対して、斜めに挿入されている切込プリプレグが挙げられる。切込が曲線状の場合は、切込の端部同士を結ぶ線分が、強化繊維の配向方向に対して斜めであることを指す。切込を、強化繊維の配向方向に対して斜めとすることで、切込プリプレグの三次元形状への追従性や繊維強化プラスチックとした際の力学特性を向上することができる。強化繊維の配向方向と切込のなす角度をθとすると、θが2〜60°であることが好ましい。特にθの絶対値が25°以下であることで力学特性、中でも引張強度の向上が著しく、かかる観点からθの絶対値が25°以下がより好ましい。一方、θの絶対値は2°より小さいと切込を安定して入れることが難しくなる。すなわち、強化繊維に対して切込が寝てくると、刃で切込を入れる際、強化繊維が刃から逃げやすく、切込の位置精度を担保しながら挿入することが難しくなる。かかる観点からは、θの絶対値が2°以上であることがより好ましい。
高密度に切込が分布する場合に限らず、θの絶対値が小さくなるほど、力学特性の向上が見込める一方、特に切込領域内で全ての強化繊維を分断する場合に、切込同士が近くなり、切込で発生した損傷が連結しやすく力学特性が低下する懸念もある。しかし、任意の切込と、当該切込に最近接する別の切込とは、同一の強化繊維を分断していないこと、かつ切込は、実質的に同一の長さYであり、最近接する切込同士の距離が、Yの0.5倍よりも長いことで、切込が強化繊維の配向方向に対して直角な場合と比較して、さらなる力学特性の向上が見込める。切込が高密度の場合は、特に、力学特性の向上と共に、切込開口の抑制による表面品位の向上が見込める。特許文献2に代表されるように、強化繊維に対して斜めに切込を挿入することは知られた技術であるが、特許文献2の図2(f)や図12のように、隣接する切込が強化繊維の繊維長さLに対してL/2ずれたような切込パターンでは、Lが長く切込の長さが小さい場合には、図2に示した現象と同様に、均質な切込パターンは実現できず、切込プリプレグの伸張時には切込が密な箇所が伸張しやすくなり、繊維強化プラスチックとした場合も切込同士が近くに存在するため、切込同士が連結しやすく、力学特性の低下を招く場合がある。図2(b)や図2(c)のような均質な切込配置に斜めの切込を適用することで、斜めに切込を挿入することによる力学特性向上の効果をより効果的に発現できる。
本発明における切込プリプレグの好ましい態様として、切込と強化繊維の配向方向とのなす角度θの絶対値が、実質的に同一であり、さらにθが正である切込(正切込という)とθが負である切込(負切込という)を含む切込プリプレグが挙げられる。θの絶対値が実質的に同一とは、全ての切込における角度θの絶対値が、全ての切込における角度θの絶対値から求めた平均値の±1°以内であることをいう。切込プリプレグ内に正切込だけでなく、負切込も挿入することで、切込プリプレグが伸張時に正切込近傍で面内せん断変形が発生した場合に、負切込近傍では逆向きのせん断変形が生じることによりマクロとして面内のせん断変形を抑制し伸張させることができる。
さらに好ましくは、正切込と負切込を略同数含む、切込プリプレグである。正切込と負切込を略同数含むとは、θが正となる切込の数とθが負となる切込の数が略同数であることを意味する。そして、θが正となる切込の数とθが負となる切込の数が略同数とは、数を基準とした百分率で示した時に、正の角となるθの数と負の数となるθの数がいずれも45%以上55%以下であることをいう(以下同じ)。
図5のように正切込と負切込は互いに交互に配置することで、高い密度で切込を挿入しながらも、近接する切込間の距離を確保しやすくなる。また、得られた切込プリプレグを積層する際、正切込または負切込のみを含む切込プリプレグの場合には、同一の強化繊維の配向方向のプリプレグであっても、プリプレグを表から見るか裏から見るかで異なる切込の方向となる。したがって繊維強化プラスチック製造時に、毎回切込の方向が同じようになるように、もしくは同じ強化繊維の方向で切込の方向が異なるものを同じ枚数積層するための積層手順を制御する手間が増える可能性がある。したがって、切込と強化繊維の配向方向とのなす角度θの絶対値が実質的に同一であり、正切込と負切込が略同数となる切込パターンであれば、通常の連続繊維プリプレグ同様の扱いで積層が可能となる。
正切込と負切込が略同数存在する切込プリプレグで、かつ正切込と負切込が均一に混合された切込パターンの場合は、特に高密度の切込分布の場合に、任意の切込が、当該切込に最近接する別の切込とで、同一の強化繊維を分断せず、かつ最近接する切込同士の距離がYの0.5倍よりも長い切込パターンを作成しやすくなる。これにより、切込で発生した損傷の連結を抑制することができ、力学特性が向上する。また、正切込と負切込が存在する場合は切込プリプレグ伸張時にも切込の開口が発見されにくく、繊維強化プラスチックとした場合に良好な表面品位を得られるが、高密度な切込分布とした際にはさらに切込が細かくなり、さらに良好な表面品位を得ることができる。切込領域内で全ての強化繊維を分断する際にも当該切込パターンは有効であり、三次元形状への追従性を保ちつつ、力学特性と表面品位を向上させることができる。また、刃を用いてプリプレグに切込を挿入する際に、正切込または負切込のみ挿入する場合は、刃に押し出される際にプリプレグを幅方向に移動する力が作用するため、プリプレグが幅方向にズレやすくなるが、正切込と負切込が略同数含まれた刃を用いることで、プリプレグが幅方向にズレにくくなり、精度よく切込を挿入できる。
さらに好ましくは、任意の切込と、当該切込の延長線上に存在する最近接する別の切込との間隔について、正切込同士の間隔と負切込同士の間隔とで長さが異なる、切込プリプレグである。図6は正切込と負切込が略同数ずつ挿入された切込プリプレグを示している。正切込は直線9上に、負切込は直線10上に配置されており、直線9上での正切込の間隔は直線10上での負切込の間隔よりも小さくなっている。このような切込の配置にすることで、均質・高密度かつ近接する切込間の距離を確保することができ、最近接する切込が同一の強化繊維を分断しない切込パターンが作成可能である。さらに、任意の切込と、当該切込の延長線上に存在する最近接する別の切込との間隔について、正切込同士の間隔と負切込同士の間隔とで長さが同一の場合よりも強化繊維の長さを長くすることが可能であり、高密度で切込が分布されていても力学特性を維持することが可能である。なお、切込の延長線上に切込が存在するとは、切込を延長した直線と対象となる切込同士の最も近接する点同士を結んだ直線との角度が1°以内であることを指す。
任意の切込と、当該切込の延長線上に存在する最近接する別の切込との間隔について、正切込同士の間隔と負切込同士の間隔とで長さが異なる切込パターンとすることで、高密度であっても強化繊維の長さをより長くすることができ、さらに切込領域内で全ての強化繊維を分断する場合にも、任意の切込と、当該切込に最近接する別の切込とは、同一の強化繊維を分断せず、最近接する切込同士の距離が切込長さYの0.5倍よりも長い切込パターンが得やすくなる。これにより、より効果的に、表面品位と三次元形状への追従性を損なわずに、力学特性を向上させることができる。すなわち、正切込と負切込が略同数挿入されており、任意の切込と、当該切込の延長線上に存在する最近接する別の切込との間隔について、正切込同士の間隔と負切込同士の間隔とで長さが異なり、任意の切込と、当該切込に最近接する別の切込とは、同一の強化繊維を分断せず、最近接する切込同士の距離が切込長さYの0.5倍よりも長く、切込領域にて実質的に全ての強化繊維が繊維長さ15mm以上に分断されている切込パターンが、三次元形状追従性、表面品位、力学特性の観点から、特に好ましい。特許文献2の図1、図2(d)、図14(d)のように、正切込と負切込が挿入された切込パターンは既知であるが、いずれの切込パターンも、本明細書の図2(a)と同様に、隣接する切込が強化繊維の繊維長さLの半分ズレた切込パターンであり、Lが長く、切込が小さくなるほど、切込配置の疎密が発生しやすくなる。隣接する切込を図2(b)、図2(c)のようにL/2に限定せず、ずらすことで、高密度かつ均質な切込パターンとすることができる。
また、切込プリプレグを製造する際に、切込プリプレグの表面に、保護シートを貼りつけ、保護シートを貫通してプリプレグに切込を挿入することで、回転刃ロールと切込プリプレグの粘着を抑制してもよい。そのようにして製造された切込プリプレグの積層時には、保護シートを剥がす必要があり、最近接する切込同士の距離が近いと、保護シートを剥がす際に保護シートが引きちぎれ、取り扱い性が低下する場合がある。したがって、切込プリプレグシートの取り扱い性の観点からも、最近接する切込同士の距離が切込長さYの0.5倍よりも長いことが好ましい。略同数の正切込と負切込が混合して配置されている場合には、保護シートを剥がす際に保護シート上の切込が連結しにくく、切込プリプレグシートの取り扱い性がさらに向上する。任意の切込と、当該切込の延長線上に存在する最近接する別の切込との間隔について、正切込同士の間隔と負切込同士の間隔とで長さが異なる場合は、正切込と負切込をより均一に配置することができ、保護シートが引きちぎれにくくなり、切込プリプレグの取り扱い性がさらに向上する。なお、保護シートの材質の代表的なものにはポリエチレン、ポリプロピレン等のポリマー類が挙げられ、プリプレグに刃で切込を挿入する際、刃に樹脂が粘着することを防ぐ役割や、切込プリプレグ保管時に切込プリプレグ表面をホコリ等の異物から保護する役割がある。
本発明において、切込プリプレグに含まれる樹脂は、熱可塑性樹脂でも熱硬化性樹脂でもよく、熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド(PA)、ポリアセタール、ポリアクリレート、ポリスルフォン、ABS、ポリエステル、アクリル、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、液晶ポリマー、塩ビ、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂、シリコーンなどが挙げられる。熱硬化性樹脂としては、樹脂が熱により架橋反応を起こし少なくとも部分的な三次元架橋構造を形成するものであればよい。これらの熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂およびポリイミド樹脂等が挙げられる。これらの樹脂の変形および2種以上のブレンドの樹脂を用いることもできる。また、これらの熱硬化性樹脂は熱により自己硬化する樹脂であってもよいし、硬化剤や硬化促進剤等を含むものであってもよい。また、耐熱性や導電性等を向上させるために充填材が含まれていてもよい。
本発明の切込プリプレグに含まれる強化繊維は、ガラス繊維、ケブラー繊維、炭素繊維、グラファイト繊維またはボロン繊維等であってもよい。この内、比強度および比弾性率の観点からは、炭素繊維が好ましい。
強化繊維の体積含有率Vfは70%以下とすることで切込部の強化繊維のずれがおき、ブリッジングを効果的に抑制し、形状追従性とボイド等の成形不具合の抑制効果を得ることができる。かかる観点からVfが70%以下であることがより好ましい。また、Vfは低いほどブリッジングは抑制できるが、Vfが40%より小さくなると、構造材に必要な高力学特性が得られにくくなる。かかる観点からVfが40%以上であることがより好ましい。より好ましいVfの範囲は45〜65%、さらに好ましくは50〜60%である。
切込プリプレグは強化繊維へ部分的に樹脂を含浸させた(すなわち、一部を未含浸とした)プリプレグを用いて製造してもよい。強化繊維に部分的に樹脂を含浸させた切込プリプレグを用いることで、プリプレグ内部の強化繊維の未含浸部が面内の流路となり、積層の際に切込プリプレグの層間に閉じ込められた空気や切込プリプレグからの揮発成分などの気体が切込プリプレグ外に排出されやすくなる(このような気体の流路を脱気パスと呼ぶ)。一方で、含浸率が低すぎると、強化繊維と樹脂の間で剥離が生じ、切込プリプレグ積層時に未含浸部で切込プリプレグが二つに割れてしまうなど作業性が劣ってしまう場合があることや、成形中の含浸時間を長く取らないとボイドが残ってしまう場合があること、などから、含浸率は10〜90%が好ましい。かかる観点から、含浸率の範囲のより好ましい上限は70%であり、さらに好ましい上限は50%であり、含浸率の範囲のより好ましい下限は20%である。
本発明の切込プリプレグは、その表面に樹脂層が存在しても良い。切込プリプレグの表面に樹脂層が存在することで、切込プリプレグを積層した際に、切込プリプレグ同士の間に層間樹脂層が形成される。これにより、面外衝撃荷重が加わった際、クラックが柔軟な層間樹脂層に誘導され、かつ熱可塑性樹脂の存在により靭性が高いため剥離が抑制されることで、面外衝撃後の残存圧縮強度を高くすることができ、航空機などの高い安全性が要求される主構造用材料として適する。
本発明の切込プリプレグは、積層してプレス成形やオートクレーブ成形に適用することができる。積層方法は用途に応じて任意に選択可能であるが、熱の残留応力に起因する反りの抑制や力学特性のバランスを考慮すると擬似等方積層体やクロスプライ積層が特に好ましい。積層時には、積層基材の流動性をさらに高めるために、SMCなどランダムに強化繊維が配向した基材や、樹脂フィルムなどを適宜積層してもよい。
以下では、強化繊維と樹脂とを含むプリプレグの少なくとも一部の領域に強化繊維を分断する複数の切込を有する切込プリプレグの製造方法について説明する。
プリプレグに切込を挿入する手段は、刃を用いて機械的に挿入してもレーザーのような熱源で焼き切ってもよい。より高密度に、精度よく切込を挿入する場合は、刃が定位置に配置されたロールをプリプレグに押し当てる方法が好ましい。
別の好ましい切込プリプレグの製造方法としては、プリプレグに対して複数の切込1を挿入する工程1、及び、プリプレグに対して切込1と重ならない複数の切込2を挿入する工程2とを含む方法であってもよい。具体的には、刃の配置された打ち抜き型を昇降機に取り付け、打ち抜き型をプリプレグに押し当てることで切込を挿入する装置で、切込1を挿入した後、プリプレグ又は昇降機を移動させ、切込1と重ならない位置に切込2を挿入する方法が挙げられる。打ち抜き型の代わりに回転刃を用いるのも好ましい手段の一つである。また切込1と切込2で切込領域のサイズや形が異なっていてもよい。
本発明における切込プリプレグの製造方法は、切込パターンが、切込と強化繊維の配向方向がなす角が異なる切込が存在する場合にも好ましく用いることができる。具体的には、切込1と強化繊維とのなす角度θ1が正又は負であり、切込2と強化繊維とのなす角度θ2が、前記なす角度θ1とは正負が異なる場合である。特に、刃によって切込を挿入する場合、異なる角度の刃が高密度に配置させた刃を作製することが困難な場合があるため、複数段階に分けて切込を挿入することで、より高密度に切込を挿入することができる。
なお、本発明における切込プリプレグの製造方法は、強化繊維が一方向に配向したプリプレグだけでなく、強化形態が織物やランダムマットである場合にも好ましく適用できる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、実施例に記載の発明に限定されるものではない。本実施例において、切込プリプレグの作製、切込の密度分布、三次元形状への追従性、繊維強化プラスチックの表面に品位、引張弾性率、引張強度は下記方法に従って測定した。図8、9はそれぞれ実施例および比較例に用いた切込パターンの一部を示しており、切込プリプレグ上で各々の切込パターンがプリプレグ面内で繰り返されている。実施例1〜7、比較例1〜5の結果は表1に示した通りである。
<切込プリプレグの製造>
“トレカ”(商標登録)プリプレグシートP3052S−15(強化繊維:T700S、樹脂組成物樹脂:2500、強化繊維の体積含有率:56%、片面離型紙を積層)を準備し、刃を設けたシートを巻きつけたロール(回転刃ロール)にプリプレグシートを押し付けることで、切込を挿入した。いずれの実施例においても切込領域はプリプレグ全体とし、全ての切込が同一長さ、切込によって分断される強化繊維の長さも同一となる切込パターンとした。プリプレグシートはシート基材Aである離型紙で担持されており、離型紙と反対側の面にはポリエチレンフィルムが密着している。切込挿入時にはポリエチレンフィルムを貫通し、離型紙にも厚さの50%程度まで切込を挿入した。
<切込プリプレグの切込パターンの確認>
切込プリプレグに意図通り切込が挿入できているかどうかを確認するために、切込挿入後に、切込プリプレグの表面をデジタルマイクロスコープで撮影し、デジタルマイクロスコープの測定ソフトウェアを用いて、切込分布、切込の長さ、切込によって分断された強化繊維の長さ、強化繊維の配向方向と切込とのなす角(切込角)、切込を強化繊維の配向方向に直角な平面に投影した投影長さWs、最近接する切込同士の距離、切込の延長線上に存在する切込同士の間隔を測定した。撮影した画像を複数枚連結させて50mm×50mmの領域として、測定を行った。
まず、画像上に存在する切込の端部同士を結んだ線分を、全ての切込において抽出することで、切込パターンを抽出した。ただし、画像の端部と接している切込に関しては線分を抽出していない。画像上に、直径10mmの円形の小領域を図10のように六方最密配置状で10個描き、各小領域内に含まれる線分をカウントした。このとき、小領域の境界に接する線分も小領域内に含まれるとみなした。10個の小領域に含まれる線分数を母集団とし、式1および式2で母集団の平均値と変動係数を算出した。
切込の長さについては、線分の長さが切込の長さに相当し、画像上に存在する全ての線分の長さの平均値を算出した。全ての線分の長さが平均値±5%の範囲内であれば、全ての切込が実質的に同一であるとみなし、平均値を代表値として切込の長さとした。
切込角については、強化繊維の配向方向(繊維方向)と線分とのなす角度とした。全ての線分において切込角を測定して平均値を算出し、全ての切込角が平均値±1%の範囲内であれば、全ての切込角が実質的に同一であるとみなし、平均値を代表値として切込角とした。正切込と負切込が存在する場合は、切込角の絶対値を代表値として上記計算を行った。
切込によって分断される強化繊維の長さについては、繊維方向に隣接する線分間の、繊維方向における距離とした。一組の線分間について3箇所の距離を測定してその平均値を線分間距離とし、抽出可能な線分間全てについて同様に線分間距離を測定した。線分間距離の平均値を、切込によって分断された強化繊維の長さとした。
Wsについては、各線分について、各線分の端部と接し、繊維方向と平行な直線を描き、該直線同士の直線間距離とした。全ての線分について直線間距離を測定し、平均値を代表地としてWsとした。
最近接する切込同士の距離は、任意の線分について線分の端部と、該端部と最も近い線分との最短距離とした。全ての線分の端部について該端部と最も近い線分との最短距離を測定し、平均値を代表地として最近接する切込同士の距離とした。また、任意の切込において、最近接する切込同士の間に、該二つの切込によっても切断されない強化繊維が複数本存在する場合に、任意の切込と、当該切込に最近接する別の切込とは、同一の強化繊維を分断していないとみなした。
切込の延長線上に存在する切込同士の間隔については、正切込と負切込が存在する場合に測定した。正切込に関しては、任意の正切込から抽出された線分を延長し、他の正切込から抽出された線分と接触、あるいは限りなく近づく線分が存在し、かつ該2つの線分の中央を結ぶ直線と、どちらか一方の線分との角度が1°以下である場合に、2つの線分が一つの直線状に存在するとみなした。図6の正切込同士の距離11のように2つの線分の近い方の端点同士の距離を最近接する切込同士の距離とした。負切込に関しても同様に同一直線状に隣接する切込間距離12を測定した。
<プレス成形後の表面品位確認>
切込プリプレグの強化繊維の配向方向を0°とし、[+45/0/−45/90]2sに積層された150mm×150mmの積層体を準備し、図7に示す形状の金型でプレス成形を行った。成形温度は150℃、プレス圧は3MPaとした。成形品の表面品位を以下の3段階で評価した。
A:切込の存在がほとんど認識できないもの
B:切込の開口は少ないものの切込の存在が認識されるもの
C:切込が開口が大きく開口し、切込開口が目立つもの。
<繊維強化プラスチックの引張弾性率・引張強度>
切込プリプレグから300mm×300mm、積層構成が[+45/−45/0/90]2sの切込プリプレグの積層体を作製した。積層時は、ポリエチレンフィルムを剥がした面が上に来るように積層した。その後、切込プリプレグの積層体を350mm×350mmの型を用いてプレス機により3MPaの面圧の下でプレス成形し、350mm×350mmの繊維強化プラスチックを成形した。プレス時の温度は130℃、プレス後に90分保持してから脱型し、室温に放置して冷却した。強化繊維の0度方向が長手方向となるように、25mm×250mmの試験片を切り出し、ASTM D3039(2008)に規定された方法で引張試験を行った。測定した試験片の数は各水準5本とし、引張弾性率および引張強度の平均値を代表値として算出した。
(実施例1)
切込プリプレグの切込パターンを図8(a)のような切込パターンとした。切込挿入により分断された強化繊維の長さは8mm、切込を強化繊維の配向方向に直角な平面に投影した投影長さWsは1mm、強化繊維の配向方向と切込とがなす角は90°であった。切込によって分断された強化繊維束は、隣接する強化繊維束に対して、強化繊維長さLの1/3ずれて配置されていた。
プレス成形品は表面に切込の開口が見られた。強化繊維の長さが短いが引張弾性率は高い値となった。
(実施例2)
切込プリプレグの切込パターンを図8(b)のような切込パターンとした。切込挿入により分断された強化繊維の長さは12mm、切込を強化繊維の配向方向に直角な平面に投影した投影長さWsは0.64mm、強化繊維の配向方向と切込とがなす角は40°であった。切込は実質的に同一の長さY=1mmであり、最近接する切込同士の距離は1.7mmでYの0.5倍よりも長い。切込によって分断された強化繊維束は、隣接する強化繊維束に対して、強化繊維長さLの1/6ずれて配置されていた。
プレス成形品は表面に切込の開口が見られた。引張弾性率は実施例1と同等であったが引張強度は実施例1より向上した。
(実施例3)
切込プリプレグの切込パターンを、図8(c)のような切込パターンとした。切込挿入後に確認したところ、任意の切込と、当該切込に最近接する別の切込とは、同一の強化繊維を分断していなかった。切込は実質的に同一の長さY=1mmであり、最近接する切込同士の距離は1mmでYと同等であった。分断された強化繊維の長さは20mm、切込を強化繊維の配向方向に直角な平面に投影した投影長さWsは0.34mm、強化繊維の配向方向と切込とがなす角は20°であった。複数の切込により断続的な直線が形成されていた。
プレス成形品の表面品位は実施例1、2と同等であったが、引張弾性率、引張強度は実施例1、2よりさらに高い値となった。
(実施例4)
切込プリプレグの切込パターンを、図8(d)のような切込パターンとした。切込挿入後に確認したところ、任意の切込と、当該切込に最近接する別の切込とは、同一の強化繊維を分断していなかった。切込は実質的に同一の長さY=1mmであり、最近接する切込同士の距離は1.5mmでYの1.5倍であった。分断された強化繊維の長さは20mm、切込を強化繊維の配向方向に直角な平面に投影した投影長さWsは0.34mmであった。強化繊維の配向方向と切込とがなす角は20°であった。切込によって分断された強化繊維束は、隣接する強化繊維束に対して、強化繊維長さLの2/5ずれて配置されていた。
プレス成形品の表面品位は実施例3と同等であったが、引張強度は実施例3もよりさらに高い値となった。
(実施例5)
切込プリプレグの切込パターンを、図8(e)のような切込パターンとした。切込挿入後に確認したところ、切込は実質的に同一の長さY=1mmであり、最近接する切込同士の距離は1.4mmでYの1.4倍であった。分断された強化繊維の長さは12mm、切込を強化繊維の配向方向に直角な平面に投影した投影長さWsは0.64mmであった。強化繊維の配向方向と切込とがなす角θの絶対値は40°でありθが正である正切込とθが負である負切込を略同数含んでいた。
切込プリプレグ製造時には、実施例2の切込パターンでは、プリプレグシートを回転刃ロールに押し当てる際、押し当てた距離が長くなるほどプリプレグシートが幅方向にずれていく傾向が見られたが、実施例5ではプリプレグの幅方向のズレが小さかった。積層時には、離型紙側とポリエチレンフィルム側、どちらが上になるように積層しても正切込と負切込が存在するため、切込プリプレグの裏表気にすることなく積層することができた。また、実施例2の切込パターンではポリエチレンフィルムを剥がす際に、ポリエチレンフィルムがちぎれやすかったが、実施例5ではちぎれることなくポリエチレンフィルムをはがすことができた。
プレス成形品には、切込開口が見られたが、実施例2よりも見えにくくなっていた。引張弾性率、引張強度は実施例2と同等の値となった。
(実施例6)
切込プリプレグの切込パターンを、図8(f)のような切込パターンとした。切込挿入後に確認したところ、任意の切込と、当該切込に最近接する別の切込とは、同一の強化繊維を分断していなかった。切込は実質的に同一の長さY=1mmであり、最近接する切込同士の距離は1.5mmでYの1.5倍であった。分断された強化繊維の長さは20mm、切込を強化繊維の配向方向に直角な平面に投影した投影長さWsは0.34mmであった。強化繊維の配向方向と切込とがなす角θの絶対値は20°でありθが正である正切込とθが負である負切込を略同数含む。さらに、切込の延長線上に存在する切込同士の間隔が、正切込(3.4mm)と負切込(24.5mm)とで異なった。
プレス成形品には、切込開口がほとんど見られなかった。引張弾性率、引張強度は実施例3、4よりも高い値となった。
(実施例7)
切込プリプレグの切込パターンを、図8(f)のような切込パターンとした。切込挿入後に確認したところ、任意の切込と、当該切込に最近接する別の切込とは、同一の強化繊維を分断していなかった。切込は実質的に同一の長さY=1mmであり、最近接する切込同士の距離は1.8mmでYの1.8倍であった。分断された強化繊維の長さは24mm、切込を強化繊維の配向方向に直角な平面に投影した投影長さWsは0.34mmであった。強化繊維の配向方向と切込とがなす角θの絶対値は20°でありθが正である正切込とθが負である負切込を略同数含んでいた。さらに、切込の延長線上に存在する切込同士の間隔が、正切込(33.3mm)と負切込(44.7mm)とで異なった。
プレス成形品には、切込開口がほとんど見られなかった。引張強度は実施例6より高い値となった。
(比較例1)
切込プリプレグの切込パターンを、図9(a)のような切込パターンとした。切込と、当該切込に最近接する別の切込とは、同一の強化繊維を分断している可能性があり、最近接する切込同士の距離が、切込の長さの0.5倍よりも短い箇所があった。分断された強化繊維の長さが20mm以下、切込を強化繊維の配向方向に直角な平面に投影した投影長さWsは1〜2mm、強化繊維の配向方向と切込とがなす角θは90°の範囲でランダムに挿入されていた。
プレス成形品には、切込が大きく開口している箇所があった。引張強度は実施例1〜7のいずれよりも低かった。
(比較例2)
切込プリプレグの切込パターンを、図9(b)のような切込パターンとした。切込と、当該切込に最近接する別の切込とは、同一の強化繊維を分断している可能性があった。分断された強化繊維の長さは20mm、切込を強化繊維の配向方向に直角な平面に投影した投影長さWsは5mmであった。強化繊維の配向方向と切込とがなす角θは40°であった。
プレス成形品の表面は、切込が大きく開口していた。引張弾性率、引張強度は比較例1と比べて高かったが、同じ強化繊維の長さとした実施例3、4、6と比較すると低かった。
(比較例3)
切込プリプレグの切込パターンを、図9(c)のような切込パターンとした。切込と、当該切込に最近接する別の切込とは、同一の強化繊維を分断している可能性がある。分断された強化繊維の長さは20mm、切込を強化繊維の配向方向に直角な平面に投影した投影長さWsは5mmであった。強化繊維の配向方向と切込とがなす角θの絶対値は40°でありθが正である正切込とθが負である負切込を略同数含む。
プレス成形品の表面は、切込の開口が見られたが、比較例2よりも小さかった。引張強度は比較例2より若干向上した。
(比較例4)
切込プリプレグの切込パターンを、図9(d)のような切込パターンとした。連続的な切込が挿入されており、分断された強化繊維の長さは20mm、切込と強化繊維の配向方向とがなす角θは20°であった。
プレス成形品の表面は切込が大きく開口していた。引張強度は比較例3よりも高かった。
(比較例5)
切込プリプレグの切込パターンを、図9(e)のような切込パターンとした。切込は実質的に同一の長さY=1mmであり、分断された強化繊維の長さは24mm、切込を強化繊維の配向方向に直角な平面に投影した投影長さWsは0.34mmであった。強化繊維の配向方向と切込とがなす角θの絶対値は20°であった。小領域の位置を変えた場合、変動係数が80%を超えるパターンも存在していた。
切込により分断された繊維長と、θの絶対値が同じであるにもかかわらず、実施例7と比較すると、プレス成形品の表面は切込が大きく開口しており、引張強度は低かった。
Figure 0006965530
1:プリプレグ
2:切込
3:強化繊維を分断する複数の切込を有する領域(切込領域)
4:直径10mmの円形の小領域
5:切込Aと切込Bの間の強化繊維
6:最近接する切込同士の距離
7:正切込
8:負切込
9:正切込が乗る直線
10:負切込が乗る直線
11:同一直線状に隣接する正切込間距離
12:同一直線状に隣接する負切込間距離

Claims (9)

  1. 一方向に配向した強化繊維と樹脂とを含むプリプレグの少なくとも一部の領域に強化繊維を分断する複数の切込を有する切込プリプレグであって、
    前記領域内から任意に選択される、10個の直径10mmの円形の小領域内に含まれる切込の個数を母集団とした場合に、母集団の平均値が10以上、かつ変動係数が20%以内である切込プリプレグ。
  2. 任意の切込と、当該切込に最近接する別の切込とは、同一の強化繊維を分断していない、請求項1に記載の切込プリプレグ。
  3. 切込は、実質的に同一の長さYであり、最近接する切込同士の距離は、Yの0.5倍よりも長い、請求項1または2に記載の切込プリプレグ。
  4. 切込が、強化繊維の配向方向に対して、斜めに挿入されている、請求項1〜3のいずれかに記載の切込プリプレグ。
  5. 切込と強化繊維の配向方向とのなす角度θの絶対値が、実質的に同一であり、さらにθが正である切込(正切込という)とθが負である切込(負切込という)を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の切込プリプレグ。
  6. 正切込と負切込を略同数含む、請求項5に記載の切込プリプレグ。
  7. 任意の切込と、当該切込の延長線上に存在する最近接する別の切込との間隔について、正切込同士の間隔と負切込同士の間隔とで長さが異なる、請求項5または6に記載の切込プリプレグ。
  8. 強化繊維と樹脂とを含むプリプレグの少なくとも一部の領域に強化繊維を分断する複数の切込を有する切込プリプレグの製造方法であって、
    プリプレグに対して複数の切込1を挿入する工程1、及び、プリプレグに対して切込1と重ならない複数の切込2を挿入する工程2とを含む、切込プリプレグの製造方法。
  9. 切込1と強化繊維とのなす角度θ1が正又は負であり、切込2と強化繊維とのなす角度θ2が、前記なす角度θ1とは正負が異なる、請求項8に記載の切込プリプレグの製造方法。
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