磁気読み取り−ラッピングツールアセンブリを利用して磁気センサの列バーをラッピングする方法を記載する。以下の説明では、説明を目的として、本明細書に記載された本発明の実施形態の完全な理解を提供するために、多数の具体的な詳細が記載されている。ただし、本明細書に記載される本発明の実施形態が、これらの具体的な詳細を用いることなく実施され得ることは明らかであろう。他の例では、本明細書に記載された本発明の実施形態を不必要に不明瞭にすることを回避するために、周知の構造及びデバイスをブロック図の形態で示す。
例示的な動作環境の物理的説明
実施形態は、デジタルデータ記憶デバイス(ハードディスクドライブ(HDD)など)のための読み取り−書き込みヘッドの文脈で使用することができる。こうして、実施形態に従って、例示的な動作文脈を示すために、HDD100を示す平面図が図1に表されている。
図1は、磁気読み取り−書き込みヘッド110aを含むスライダ110bを含むHDD100の構成要素の機能的配置を示す。まとめて、スライダ110b及びヘッド110aはヘッドスライダと称され得る。HDD100は、ヘッドスライダを含む少なくとも1つのヘッドジンバル組立品(head gimbal assembly、HGA)110と、典型的にはフレクシャを介してヘッドスライダに取り付けられたリードサスペンション110cと、リードサスペンション110cに取り付けられたロードビーム110dと、を含む。HDD100はまた、スピンドル124上に回転可能に取り付けられた少なくとも1つの記録媒体120と、媒体120を回転させるためにスピンドル124に取り付けられた駆動モータ(不可視)と、を含む。変換器とも称され得る読み取り−書き込みヘッド110aは、HDD100の媒体120に格納された情報をそれぞれ書き込み及び読み取るための書き込み要素及び読み取り要素を含む。媒体120又は複数のディスク媒体は、ディスククランプ128でスピンドル124に固定されてもよい。
HDD100は、HGA110に取り付けられたアーム132と、キャリッジ134と、キャリッジ134に取り付けられたボイスコイル140を含む電機子136を含むボイスコイルモータ(voice coil motor、VCM)と、ボイスコイル磁石(不可視)を含むステータ144と、を更に含む。VCMの電機子136は、キャリッジ134に取り付けられており、アーム132及びHGA110を移動させ、かつ媒体120の部分にアクセスするように構成されており、全てまとめて、介在するピボット軸受組立品152で枢動シャフト148上に装着されている。複数のディスクを有するHDDの場合、キャリッジ134は、キャリッジに櫛の外観を与える連動したアームアレイを搬送するようにキャリッジが配置されているため、「Eブロック」又は櫛と称され得る。
ヘッドスライダが結合されたフレクシャと、フレクシャが結合されたアクチュエータアーム(例えば、アーム132)及び/又はロードビームと、アクチュエータアームが結合されたアクチュエータ(例えば、VCM)と、を含む、ヘッドジンバル組立品(例えば、HGA110)を備える組立品は、ヘッドスタック組立品(head stack assembly、HSA)と総称され得る。ただし、HSAは、記載されたものよりも多い又は少ない構成要素を含んでもよい。例えば、HSAは、電気相互接続構成要素を更に含む組立品を指し得る。一般に、HSAは、読み取り動作及び書き込み動作のために、ヘッドスライダを媒体120の部分にアクセスするように移動させるように構成された組立品である。
図1を更に参照すると、ヘッド110aからの書き込み信号及び読み取り信号を含む電気信号(例えば、VCMのボイスコイル140への電流)は、可撓性ケーブル組立品(flexible cable assembly、FCA)156(又は「フレックスケーブル」)によって送信される。フレックスケーブル156とヘッド110aとの間の相互接続は、読み出し信号用のオンボード前置増幅器、並びに他の読み取りチャネル及び書き込みチャネル電子構成要素を有し得る、アーム電子機器(arm-electronics、AE)モジュール160を含んでもよい。AEモジュール160は、図示のようにキャリッジ134に取り付けられてもよい。フレックスケーブル156は、いくつかの構成では、HDD筐体168によって提供された電気フィードスルーを通して電気通信を提供する電気コネクタブロック164に結合されてもよい。HDDハウジング168(又は「エンクロージャベース」又は単に「ベース」)は、HDDカバーと共に、HDD100の情報記憶構成要素のための半封止された(又は、いくつかの構成では気密封止された)保護エンクロージャを提供する。
デジタル信号プロセッサ(digital-signal processor、DSP)を含むディスクコントローラ及びサーボ電子機器を含む他の電子構成要素は、駆動モータ、VCMのボイスコイル140及びHGA110のヘッド110aに、電気信号を提供する。駆動モータに提供される電気信号は、駆動モータがスピンドル124にトルクを提供しながら回転することを可能にし、次いでトルクはスピンドル124に添設された媒体120に伝達される。その結果、媒体120は、方向172に回転する。回転媒体120は、スライダ110bが、情報が記録された薄い磁気記録層と接触することなく媒体120の表面の上方に浮上するように、スライダ110bの空気軸受表面(air-bearing surface、ABS)が乗る空気軸受として作用する空気のクッションを形成する。非限定的な例としてのヘリウムなどの、空気より軽いガスが利用されるHDDにおいても同様に、回転媒体120は、スライダ110bが乗るガス又は流体軸受として作用するガスのクッションを形成する。
VCMのボイスコイル140に提供される電気信号は、HGA110のヘッド110aが、情報が記録されるトラック176にアクセスすることを可能にする。こうして、弧180を通るVCMスイングの電機子136は、HGA110のヘッド110aが媒体120上の様々なトラックにアクセスすることを可能にする。情報は、セクタ184などの媒体120上のセクタに配置された複数の半径方向に入れ子になったトラック内の媒体120上に格納される。それに対応して、各トラックは、セクタ化されたトラック部分188などの複数のセクタ化されたトラック部分(又は「トラックセクタ」)から構成される。各セクタ化されたトラック部分188は、記録された情報と、エラー訂正符号情報、及びトラック176を識別する情報であるABCDサーボバースト信号パターンなどのサーボバースト信号パターンを含むヘッダと、を含んでもよい。トラック176にアクセスする際、HGA110のヘッド110aの読み取り要素はサーボバースト信号パターンを読み取り、サーボバースト信号パターンは、サーボ電子機器に位置誤差信号(position-error-signal、PES)を提供し、サーボ電子機器は、VCMのボイスコイル140に提供される電気信号を制御することによって、ヘッド110aがトラック176に追従することを可能にする。トラック176を見つけ、かつ特定のセクタ化されたトラック部分188を識別すると、ヘッド110aは、トラック176から情報を読み取るか、又は、外部エージェント、例えば、コンピュータシステムのマイクロプロセッサからディスクコントローラによって受信された命令に応じて、トラック176に情報を書き込む。
HDDの電子アーキテクチャは、ハードディスクコントローラ(hard disk controller、「HDC」)、インターフェースコントローラ、アーム電子モジュール、データチャネル、モータドライバ、サーボプロセッサ、バッファメモリなどの、HDDの動作のための自体のそれぞれの機能を実行するための、多数の電子部品を含む。そのような構成要素のうちの2つ以上は、「チップ上のシステム(system on a chip、「SOC」)と称される単一の集積回路基板上で組み合わされてもよい。そのような電子部品の、全てではないがいくつかは、典型的には、HDD筐体168などのHDDの下部側に結合されたプリント基板上に配置される。
図1を参照して示され及び記載されたHDD100などの、本明細書におけるハードディスクドライブへの言及は、「ハイブリッドドライブ」と呼ばれることがある情報記憶デバイスを包含してもよい。ハイブリッドドライブとは、一般に、電気的に消去可能でプログラム可能であるフラッシュ又は他のソリッドステート(例えば、集積回路)メモリなどの不揮発性メモリを使用するソリッドステートデバイス(solid-state storage device、SSD)と組み合わされた従来のHDD(例えば、HDD100を参照)の、両方の機能を有する記憶デバイスを指す。異なるタイプの記憶媒体の動作、管理、及び制御は、通常異なるため、ハイブリッドドライブのソリッドステート部分は、それ自体の対応するコントローラ機能を含んでもよく、コントローラ機能は、HDD機能と共に単一のコントローラに統合され得る。ハイブリッドドライブは、非限定的な例として、頻繁にアクセスされるデータを格納する、I/O集約データなどを記憶するなどのために、ソリッドステートメモリをキャッシュメモリとして使用するなどによって、ソリッドステート部分をいくつかの方法で動作させて利用するように設計及び構成されてもよい。更に、ハイブリッドドライブは、ホスト接続のための1つ以上のインターフェースのいずれかで、単一のエンクロージャの2つの記憶デバイス、すなわち従来のHDD及びSSDとして本質的に設計及び構成されてもよい。
序論
用語「実質的に」は、大部分又はほぼ構造化された、構成された、寸法決めされたなどの特徴を記載していることが理解されるであろうが、その製造公差などは、実際には、構造、構成、寸法などが、常には又は必ずしも正確に述べられない状況を結果として生じ得る。例えば、「実質的に垂直な」として構造を記載するとすれば、側壁は全ての実用上の目的で垂直であるが、正確に90度ではない場合があるように、その用語にはその明白な意味が割り当てられる。
上で述べたように、全体的な磁気コア幅(MCW)シグマに最も寄与するのは、典型的には、「列内バー」シグマであり、目標MCWにできる限り近付けたMCWを有する読み取り−書き込みヘッドを製造するように開発されている場合であっても、いくつかの薄膜プロセスは、製造されるあらゆるヘッドの目標MCWを達成することを継続的に困難にする、固有の変動を経験する。
更にまた、大量の磁気薄膜ヘッドスライダの製作には、別々の材料除去工程において行われる高精度な減法的機械加工を必要とする。スライダ処理は、40,000以上のデバイスからなる完成した薄膜ヘッドウエハから始まり、全てのデバイスが個別化されて、数多くの及び厳しい仕様を満たすときに完了する。個々のデバイスは、最終的に、読み取り−書き込みヘッドを収容するヘッドスライダになる。したがって、最適な歩留まり、性能、及び安定性を達成するために、読み取り装置の寸法の、並びに読み取り装置及び書き込み装置の互いに対する配列の正確な制御は、読み取り−書き込みヘッド製造プロセスの重要な構成要素である。個々の読み取り−書き込みヘッドの理想的な寸法を達成するために、1つには、各ヘッドスライダを個々に処理することを選択することがあり得る。しかしながら、その手法は、例えば、著しく複雑で、非効率的で、かつ高コストなヘッドスライダ製造プロセスをもたらすので、実際の製造性の観点からほぼ不可能である。
図2は、処理の様々な段階におけるヘッドスライダのウエハを例示する分解斜視図であり、図2Aは、読み取り−書き込みトランスデューサを例示する斜視図であり、どちらも実施形態によるものである。図2は、AlTiCが一般的に使用される基材203上に堆積された未完成の読み取り−書き込みトランスデューサ(図2A参照)を有する未完成のヘッドスライダのマトリックスを備える、ウエハ202を表す。スライダのマトリックスは、典型的に、歴史的に「クワッド」と称され、現在は「チャンク」又は「ブロック」と称されることもある、バッチ、すなわちウエハのサブセットにおいて処理される。未完成のヘッドスライダのブロック、ブロック204は、複数列の未完成のヘッドスライダ206a〜206n(又は「列バー」)を備え、ここで、nは、実装ごとに変化し得る、ブロック204あたりの列バーの数を表す。各列206a〜206nは、複数のヘッドスライダ208a〜208mを備え、ここで、mは、実装ごとに変化し得る、列206a〜206nあたりのヘッドスライダの数を表す。
図2Aを参照すると、読み取り−書き込みトランスデューサ210は、書き込み装置要素212(又は単に「書き込み装置212」)と、対応するコイル216と、を備える。書き込みヘッドは、コイル216などのコイルを通って流れる電流を利用して、磁場を生成する。電気パルスは、正電流及び負電流の異なるパターンで書き込みヘッドに送信され、書き込みヘッドのコイル内の電流は、ヘッドと磁気ディスクとの間の間隙にわたる磁場を誘導し、次いでこの磁場が記録媒体上の小領域を磁化する。書き込み装置212などの書き込み装置は、対応するフレアポイント213を有し、これは、(a)書き込み装置の主極の端部(すなわち、極先端部220の端部)と、極先端部220がその最小断面まで広がる地点(b)221との間の距離である。フレアポイント213は、一般に、書き込み装置212などの磁気書き込み装置と関連付けられた限界寸法と見なされる。
図2Aを続けると、読み取り−書き込みトランスデューサ210は、対応するストライプ高さ215を有する読み取り装置要素214(又は単に「読み取り装置214」)を更に備え、これも同様に、読み取り装置214などの磁気読み取り装置と関連付けられた限界寸法と見なされる。書き込み装置212のフレアポイント213及び読み取り装置214のストライプ高さ215は、限定されないが、(図3などを参照して)本明細書により詳細に記載される、ウェッジ角度ラッピング(「WAL」)と称される「粗ラップ」プロセスによって、製作の際に共通に制御される。
トランスデューサ210などの読み取り−書き込みトランスデューサは、読み取り装置−書き込み装置オフセット217(又は「読み取り−書き込みオフセット」又はread−write offset、「RWO」)と更に関連付けられ、このオフセットは、読み取り装置214の特定の地点又は表面と、書き込み装置212の特定の地点又は表面との間の距離であり、y方向として表される。RWO217は、読み取り−書き込みトランスデューサ210内に設計される。しかしながら、ウエハ202の製作中には、書き込み装置212と読み取り装置214との間に制御できない(かつ望ましくない)オフセットが生じる場合があり、このオフセットは、x方向として表される列に沿って変化し得る、直線オフセット及び/又は角度オフセットを生じさせ得る。そのような任意のオフセットは、主に、書き込み装置212及び読み取り装置214が異なる薄膜層内に配置されることに起因し、したがって、製造プロセスの限度に起因する。例えば、書き込み装置212及び読み取り装置214は、ナノメートルスケールの製造プロセスでの異なる堆積層において異なるパターンを有する異なるマスクを露出させることと関連付けられる問題のため、空気軸受面に対して及び/又は互いに対して常に正確に整列しない場合がある。
結果的に、ウエハレベルで製作されるRWOは、正確に目標RWOではない場合がある。それゆえ、上述したWAL(又は「RWO角度」)プロセスは、典型的には、列バーRWOを目標RWOのより近くに整列させるために利用される。しかしながら、上述した粗ラッピングWALプロセスは、典型的には、約5nmの修正レベルにしか到達することができず、また、典型的には、「スライダあたり」ではなく「列バーあたり」に適用される。したがって、より微細でより正確なラッピング手順が有用であると見なされ得る。
ヘッドスライダの製造プロセス−一般
典型的なヘッドスライダ製造プロセスフローは、読み取り装置要素及び書き込み装置要素(例えば、図2Aの読み取り装置214及び書き込み装置212)の堆積を含むウエハ(例えば、図2のウエハ202)製造プロセスと、その後に続く、ウエハから未完成のスライダのブロック(例えば、図2のブロック204)を取り出すためのブロック(又は「クワッド」)スライスと、を含むことができる。次いで、ブロックからのスライダ(例えば、図2のヘッドスライダ208a〜208m)の外側列(例えば、図2の列206a)を粗ラッピングして(例えば、ウェッジ角度ラッピングして)、所望の読み取り装置及び書き込み装置の寸法(例えば、図2Aのフレアポイント213及びストライプ高さ215)に近くなるように製作し、次いで、ブロック(例えば、ブロック204)から外側の粗ラッピングした列(例えば、列206aを)をスライスすることができる。そこから、列は、「バックラッピング」するなど、更にラッピングして、空気軸受面(air bearing surface、ABS)に対向するフレクシャ側表面を形成し、そして、「微細ラッピング」(又は「最終ラッピング」)して、ABS表面を更に研磨することができる。次いで、これは、ABS表面のオーバーコーティング及びレールエッチングなどにつながり、最終的な空気軸受又は飛行表面を形成することができ、その時点で、各ヘッドスライダ(例えば、ヘッドスライダ208a〜208m)を、列からそれぞれの完成したヘッドスライダへとダイシング加工又は分割することができ、それによって、次いで、フレクシャと結合させること、ヘッドジンバル組立品(HGA)に組み立てること、などを行うことができる。
ウェッジ角度ラッピング
論じたように、書き込み装置212(図2A)のフレアポイント213(図2A)及び読み取り装置214(図2A)のストライプ高さ215(図2A)は、限定されないが、ウェッジ角度ラッピング(「WAL」)と称される粗ラッピングプロセスによって、製作の際に共通に制御される。「受動WAL制御」によって、列バーは、しばしばオフラインの電気試験測定に基づいて、所定のウェッジ角度(wedge angle、「WA」)にラッピングされ、それによって、WAは、ラッピングによって物理的目標角度に制御される。代替的に、「能動WAL制御」によって、列バーは、(例えば、読み取り装置要素及び/又は書き込み装置要素と関連付けられた、電子ラッピングガイドの使用又はelectronic lapping guide、「ELG」からの)抵抗に基づくフィードバックに基づいて、所望のRWOにサーボ又は制御される。どちらの場合においても、列バー内のヘッドスライダの個々の制御を伴わずに、列バー全体について平均又は中間のWAが目標とされる。
図3は、粗ラップ段階などでの、ウェッジ角度ラッピング(WAL)プロセスを例示する図である。図3の左側の図は、空気軸受面(「ABS」)を粗ラッピングする前のヘッドスライダ302を表す。読み取り装置214及び対応する所望のストライプ高さ215が表されており、そのラッピングは、上で述べたように、典型的には、抵抗に基づくフィードバック機構を介して制御され、また、書き込み装置212及び対応する結果として生じるフレアポイント213も表されている。破線は、所望の最終ABSを例示し、これは、ウェッジ角度303でヘッドスライダ302のABS側をラッピングすることによって達成される。
したがって、図3の右側の図を参照すると、ABSラッピングは、簡略化した形態で表されるラッピング治具304及びラッピングプレート306(例えば、共通に、ダイヤモンドをちりばめた及び/又はダイヤモンドスラリーを伴う)を使用してヘッドスライダ302に実行することができる。治具304は、ラッピングプレート306を動作させて、最終的に目標の読み取り装置214及び書き込み装置212の寸法に到達するまで、ウェッジ角度303でヘッドスライダ302をラッピングし、それによって、ヘッドスライダ製作プロセスのこの特定の部分のための少なくとも所望のストライプ高さ215を有する読み取り−書き込みヘッドを達成するように設定される。
ウェッジ角度ラッピングは、典型的には、特定の所定のウェッジ角度で、列206a〜206n(図2)のいずれかなどのスライダの全ての列バーに対して実行される。したがって、所与の列内の各スライダ208a〜208m(図2)が、ウェッジ角度303(図3)などの同じウェッジ角度で粗ラッピングされる。しかしながら、上で述べたように、ウエハ202(図2)の製作中には、書き込み装置212(図2A)と読み取り装置214(図2A)との間に望ましくないオフセット(複数可)が生じる場合があり、このオフセットは、1つ以上の方向において直線及び/又は角度オフセットを生じさせ得る。更にまた、書き込み装置212及び読み取り装置214に対応するそのようなオフセット(複数可)は、ヘッドスライダの任意の所与の列(例えば、列206a)の長さ(x方向)に沿っても、ブロック(例えば、図2のブロック204)から複数の列(例えば、列206a〜206n)にわたっても一定でない場合がある。ここでも、実際に可能である場合に、ヘッドスライダの処理を個々に行うことが好ましいとされ得る理由がある。
図4A、図4Bは、図3に表されるシナリオに適用可能であり得る、剛性ボンドWAラッピングプロセスを例示する図である。図4Aは、一連の粗ラップWALプロセスの「スナップショット」(各スナップショットを垂直の破線で分離する)を表し、このプロセスでは、剛性接着ボンド403を使用して、未完成のヘッドスライダ402が剛性ツーリング治具404に一時的に接合される。図4Aの頂部分では、ヘッドスライダ402が、ラッピングプレート406を使用して、第1のウェッジ角度aで徐々にラッピングされ、したがって、ヘッドスライダ402−1の製作は、第1の四辺形の多角形形状を有するように表されることが認識される。ウェッジ角度でのラッピングは、読み取り装置の特定の目標ストライプ高さ(図2Aの読み取り装置214のストライプ高さ215など)を達成する目的を伴い得る。図4Bを参照すると、ラッピングがWALプロセスを通して進行して、ヘッドスライダ402−1に到達するときに、一定のウェッジ角度aで、ヘッドスライダ402の材料除去の進行が均一(すなわち、一定角度で)であることが認識される。
図4A、図4BAの底部分では、ヘッドスライダ402−1が、引き続きラッピングプレート406を使用して、第2のウェッジ角度βで徐々にラッピングされ、したがって、ヘッドスライダ402−2の製作は、第2の四辺形の多角形形状を有することが認識される。この一定のウェッジ角度βへのラッピングは、ラッピングがWALプロセスを通して進行して、ヘッドスライダ402−2に到達するときに、同じように均一である。現在の実施では、ウェッジ角度の調整が、典型的には、図4A、図4Bに表される粗ラップWALプロセス中に1回又は2回だけしか行われ得ないことは注目に値する。更にまた、一定のウェッジ角度の使用は、1度又は2度調整される場合であっても、ヘッドスライダ内のファセット(複数可)を生成し得る(ヘッドスライダ402−1に最良に表される)。また更に、この粗ラップWALプロセスが、(図3の読み取り装置214のストライプ高さ215などの)読み取り装置要素のストライプ高さを目標にし、かつ読み取り装置又は書き込み装置ELGを介してラッピングフィードバックを得ることによって共通に利用され、一方で、(図3の書き込み装置212のフレアポイント213などの)書き込み装置要素のフレアポイント及びRWO217(図2)が、比較的無制御状態であることは注目に値する。
列内ウェッジ角度ラッピングのラッピングツール
図5は、ラッピングツールを例示する底部側斜視図であり、図6は、図5のラッピングツールを例示する底部前面斜視図であり、どちらの図も、実施形態によるものである。ラッピングツール500は、実施形態によれば、回転可能及び/又は可撓性であるボックス構造502を備える。ボックス構造502は、z方向に略移動可能である複数の力ピン505を収容する正面側504と、後壁506と、を含む。
ラッピングツール500は、複数の力ピン505の各々が力を列バー206の対応するヘッドスライダに印加するように位置付けられるように、磁気読み取り−書き込みヘッドスライダの列バー206を保持するための治具508を更に備える。ラッピングツール500は、ボックス構造502の後壁506からある距離にある第2の後壁510と、ボックス構造502の後壁506と第2の後壁510とを相互接続する少なくとも2つの可撓性ウェッジ角度(wedge angel、WA)フレクシャ512a、512b(WAフレクシャ512cと共に3つが表される)と、を更に備える。特に、WAフレクシャ512a、512b、512cは、列バー206と関連付けられたx軸を中心とする回転軸で仮想的に交差し、したがってこの回転軸を画定する(図7、図7Aを参照してより詳細に表され、説明される)。それゆえ、WAフレクシャ512a、512b、512cの作動に応じて、かつそれらの仮想交差部に基づいて、各力ピン505は、WAフレクシャ512a、512b、512cの仮想交差部によって画定される回転軸を中心に、トルクをその対応するヘッドスライダに印加する。
ラッピングツール500の上述の相互作用構造に基づいて、(y軸方向に対する)独立かつ可変のウェッジ角度を、それぞれの目標ウェッジ角度にラッピングするように、列バー206の各ヘッドスライダ(例えば、図2のヘッドスライダ208a〜208m)を設定することができる。実際には、複数の力ピン505は、作動に応じて、列バー206をまとめてねじって、並列ラッピングするための列バー206の各ヘッドスライダをそのそれぞれの目標ウェッジ角度に並行して設定する。
実施形態によれば、ラッピングツール500は、トルクに対応するy方向圧力勾配(例えば、図9Aの圧力勾配904a)を力ピン505から対応するヘッドスライダ208a〜208mに伝達するために、各力ピン505と列バー206のその対応するヘッドスライダ(例えば、図2のヘッドスライダ208a〜208m)との間に柔軟エラストマー516を更に備える。したがって、ラッピングによる各ヘッドスライダ208a〜208mと関連付けられた材料除去は、各それぞれのヘッドスライダ208a〜208mに印加される圧力勾配904aに対応する。
実施形態によれば、エラストマー516の材料は、10〜90デュロメータの範囲のショアA硬度を有し、これは、意図する目的に好適であることが見出される。例えば、(図4Aの剛性接着ボンド403などの剛性ボンドではなく)柔軟エラストマー516、非限定的な例として、シリコン又はポリウレタンゴム(例えば、厚さ0.05〜1.5mm、その意図する目的に好適であることが見出される範囲)の使用は、図4Aの剛性ボンドで生じ得る、ラッピングプレートからヘッドスライダが離昇するアクション、及び関連するヘッドスライダのファセッティングを効果的に排除する。更にまた、エラストマー516が厚くなるほど、力ピン505とヘッドスライダ208a〜208m(図2)との間に提供するクッションがより軟らかくなり、したがって、各ヘッドスライダ208a〜208mにわたる圧力勾配904aのより微細な制御が達成される。すなわち、力ピン505の作動及びヘッドスライダ208a〜208mに対するそれらの効果に対応する応答が効果的に弱められる。同様に、エラストマー516がより硬くなるほど、より多く急速な力ピン505の作動に対応する応答及びヘッドスライダ208a〜208mに対するそれらの効果がより急速になる(すなわち、この応答があまり弱められず、より段階的に変化させるためのより微細な作動制御を提供しなければならない)。したがって、各ヘッドスライダにわたる圧力勾配904aの有効解像度は、柔軟エラストマー516に使用される材料の選択に基づいて、実装ごとに変化し得る。
ラッピングツール500は、ボックス構造502の正面側504及び後壁506を相互接続している少なくとも2つの可撓性ストライプ高さ(stripe height、SH)フレクシャ514a、514bを更に備える。SHフレクシャ514a、514bによってボックス構造502全体に提供される構造的支持を考慮して、各力ピン505は、(図2Aの読み取り装置214のストライプ高さ215などの)それぞれの読み取り装置の目標ストライプ高さにラッピングするように、z方向の力を、列バー206のその対応するヘッドスライダ(例えば、図2のヘッドスライダ208a〜208m)に印加することができる。したがって、ラッピングツール500の上述の相互作用構造に基づいて、独立した(z軸に対する)読み取り装置の目標ストライプ高さを、そのそれぞれの目標ストライプ高さにラッピングするように、列バー206の各ヘッドスライダに設定することができる。
ラッピングツールウェッジ角度フレクシャ
図7は、図5〜図6のラッピングツールを例示する側断面図であり、図7Aは、図7のラッピングツールの治具を例示する側断面図であり、どちらも実施形態によるものである。図7及び図7Aは、WAフレクシャ512a、512b、512c(図5〜図6)をより詳細に説明するために参照する。
図7は、図5〜図6に関して説明される実施形態による、ラッピングツール500及び構成要素を例示する。図7及び図7Aは、WAフレクシャ512a、512b(及び512c)が列バー206と関連付けられたx軸を中心とする回転軸で「仮想的に」交差し、したがって、この回転軸を画定するように、ボックス構造502及び第2の後壁510の後壁506を相互接続する少なくとも2つのウェッジ角度(WA)のフレクシャ512a、512b(及び随意の512c)が位置付けられ、かつ構成されることを更に例示する。他に記述がなければ、WAフレクシャ512a、512b(及び512c)は、それらがボックス構造502の後壁506及び正面側504を通って延在した場合に、それらが全て(x方向で)回転軸を画定する地点で交差するように位置付けられる。この回転軸は、それを中心として対応する力ピン505を作動させることによりトルクがヘッドスライダ(例えば、図2の208a〜208m)に印加され、したがって、ボックス構造502が効果的に回転する。トルクは、柔軟エラストマー516を通して伝達されたときに、対応するヘッドスライダの長さ(y方向)にわたって印加される圧力勾配904aとして現れることを想起されたい。それゆえ、この独立かつ可変に印加される圧力勾配904aは、各それぞれのヘッドスライダの共通の回転軸を中心とするWAラッピング制御(ブロック矢印702として表される)を提供する。回転軸が、実施形態によれば、列バー206のラッピング界面/底面での重心に又はその近く及びそこにあるように設計されているので、正確な、独立した、かつ動的に可変の(すなわち、力ピン505の作動を変化させることによる)ウェッジ角度制御が、各ヘッドスライダ構成要素について列バー206に提供される。
図7及び図7Aは、ストライプ高さ(SH)ラッピング制御(ブロック矢印704として表される)を更に例示し、その使用は、図8の列バーをラッピングする方法を参照して記載される。
磁気読み取り−書き込みヘッドスライダの列バーをラッピングするための方法
図8は、実施形態によるヘッドスライダの列バーをラッピングするための方法を例示するフロー図である。図8に関して記載される様々な実施形態は、本明細書の他の場所に記載されるラッピングツール500(図5〜図7)を使用して各々実行することができる。文脈について、及び記載されるように、各列バーは、列の方向に沿ったx軸と、列バー内のヘッドスライダと関連付けられた読み取り装置−書き込み装置オフセットの方向に沿ったy軸と、を有し、各ヘッドスライダは、読み取り装置要素と、書き込み装置要素と、を備える。
ブロック802で、磁気読み取り−書き込みヘッドスライダの列バーをラッピングツール治具に固定する。例えば、列バー206(図5、図6、図7A)は、エラストマー516(図5、図6、図7A)などを介して、ラッピングツール500(図5〜図7)の治具508(図5〜図7A)に固定される。エラストマー516材料の粘着性は、エラストマー516が列バー206を治具508上の適所に保持する能力に影響を及ぼす。したがって、エラストマー516の粘着性は、実装ごとに変化し得る。
ブロック804で、ラッピングツールの各複数の力ピンを作動させて、それぞれの目標ウェッジ角度にラッピングするように、列バーの各ヘッドスライダを設定する。例えば、各力ピン505を、(非限定的な例として、空気圧で、油圧で、機械的、電気的、などにより)作動させて、列バー206の各ヘッドスライダ208a〜208m(図2)をy軸に沿ったy平面に対する角度であるそれぞれの目標ウェッジ角度303(図3)に設定する。各それぞれの目標ウェッジ角度が設定される様態は、図5〜図7Aを参照して本明細書に記載されるものと一致する。
したがって、ブロック806で、各それぞれ対応する目標ウェッジ角度に従って、各ヘッドスライダを同時にラッピングする。例えば、各対応する目標ウェッジ角度303に従って、列バー206の各ヘッドスライダ208a〜208mをラッピングする。図3から、ラッピングは、共通にダイヤモンドをちりばめた及び/又はダイヤモンドスラリーを伴うラッピング治具304及びラッピングプレート306を使用して、ヘッドスライダ又はヘッドスライダの列バーに実行することができることを想起されたい。
図9A、図9Bは、実施形態による「軟質」ボンドWAラッピングプロセスを例示する図である。図9A、図9Bの軟質ボンドWAラッピングプロセスと、図4A、図4Bの剛性ボンドWAラッピングプロセスとを比較するために、図4A、図4Bを更に参照する。図9Aは、一連の「ファインラップ」(又は「最終ラップ」)WALプロセスの「スナップショット」(各スナップショットを垂直の破線で分離する)を表し、このプロセスでは、柔軟エラストマー516により、未完成のヘッドスライダ902が剛性ツーリング治具508に一時的に接合される。第1のスナップショットでは、少なくとも目標ウェッジ角度を達成し始めるために、ヘッドスライダ902に適用するための適切な圧力勾配904aが決定されることが認識される。スライダ902について、対応する力ピン505(図5〜図6)は、トルクを、ラッピングツール治具508に、及びエラストマー516を通してヘッドスライダ902に印加して、ヘッドスライダ902の長さにわたる所望の圧力勾配904aを発生させる。図9Aの図は、エラストマー516が、ヘッドスライダ902との界面に急な線を有するように、例えば、あたかもエラストマー516の一部分が切り取られたかのように見えるという点で単純化されていることに留意されたい。しかしながら、エラストマー516は、トルクに応じて(切り取られるのではなく)圧縮し、それによって、トルクは、トルクの方向において回転軸(又はトルクの中心)から離れる距離と相対的にエラストマー516内により大きい圧縮を生じさせることを認識されたい。同様に、トルクは、トルクの方向と反対方向において回転軸(又はトルクの中心)から離れる距離と相対的にエラストマー516内により小さい圧縮を生じさせる。そのため、圧力勾配904aは、右から左への方向においてより小さいものからより大きいものへと表される。結果的に、(圧力勾配904aにより)徐々に大きくなる点圧力をヘッドスライダ902にその長さにわたって印加することによって、及びヘッドスライダが剛性ラッピングプレート406と連動することを考慮すると、より多くの材料が、圧力勾配904aに従って(すなわち、左から右へ)スライダから除去される。
図9Bを参照すると、圧力勾配904aをヘッドスライダ902に適用することによって、WALプロセスを通してラッピングが進行するときに、ヘッドスライダ902の材料除去の進行が一定の角度でないことが認識される。スライダの全長にわたっていくらかの圧力があるので、圧力勾配904aに従って圧力が変化するが、材料除去の進行は、図4Bに表されるような剛性ボンド及び一定のラッピング角度によるものとは異なる。図9Bに表されるように、圧力勾配904aの適用によって、ヘッドスライダ902の表面から材料が徐々に除去されるにつれてラッピング角度が変化する。
第2の(中央の)スナップショットでは、わずかに異なる圧力勾配904bがヘッドスライダ902に印加されて、目標ウェッジ角度に到達したときのサーボ制御変化などにより、目標ウェッジ角度を達成し続けることを表す。それゆえ、本明細書に記載されるラッピングシステム及び方法は、制御されたフィードバックシステム(例えば、ELGフィードバックシステム)によって、ヘッドスライダごとのウェッジ角度の動的な変化を提供する。ウェッジ角度は、ラッピングプロセス中に力ピン505の作動プロファイル変化させることによって、動的に変化させることができ、それによって、ラッピングシステムが動的にサーボされて、所望の結果を達成する。一定の剛性ウェッジ角度を使用するのではなく、エラストマーを使用した圧力勾配の適用によりウェッジ角度を徐々に変化させることを使用することで、ヘッドスライダ内にファセット(複数可)を生成する可能性がはるかに低くなることは注目に値する。
図8のフロー図に戻ると、随意のブロック808で、各複数の力ピンを作動させて、それぞれの読み取り装置目標ストライプ高さにラッピングするように、列バーの各ヘッドスライダを設定する。例えば、各力ピン505は、(非限定的な例として、空気圧で、油圧で、機械的、電気的、などにより)サーボ又は離散的に作動させて、列バー206の各ヘッドスライダ208a〜208m(図2)を、それぞれの読み取り装置の目標ストライプ高さ215(図2A、図3)に設定する。
続けると、随意のブロック810で、各それぞれの対応する目標ストライプ高さに従って、各ヘッドスライダを同時にラッピングする。例えば、各対応する読み取り装置214の目標ストライプ高さ215(読み取り装置ELG及び/又は書き込み装置ELGストライプ高さに基づくことができる)に従って、列バー206の各ヘッドスライダ208a〜208mをラッピングする。図9Aに戻ると、第3のスナップショットでは、ヘッドスライダにわたるトルク及び結果として生じる圧力勾配904a(及び904b)が中断される(例えば、目標ウェッジ角度が到達した)こと、及び、この時点で、ヘッドスライダ902の長さにわたって比較的に(又は「実質的に」)一定の圧力904cが印加されて、この時点で、目標の読み取り装置214のストライプ高さ215にラッピングすることを表す。
したがって、実施形態によれば、及び本明細書の他の場所に記載されるように、図4A、図4Bに表される剛性ボンド(粗)ラッピングプロセスとは対照的に、この軟質(微細)ラップWALプロセスは、最初に、目標ウェッジ角度にラッピングし、次いで、目標の読み取り装置又は書き込み装置のストライプ高さにラッピングし、それによって、(図2のRWO217などの)RWOの制御を含む、複数の程度の制御を提供する。また、目標ストライプ高さに向けた最初のラップ、及び目標ウェッジ角度への次のラップへのプロセスを補正することも想到され、かつ本明細書に記載される実施形態の範囲内である。
列内のストライプ高さ/フレアポイント及びウェッジ角度ラッピングのためのラッピングマウントツール
図10Aは、ラッピングマウントツールを例示する正面側斜視図であり、図10Bは、図10Aのラッピングツールを例示する正面頂部斜視図であり、図10Cは、図10Aのラッピングツールを例示する底部側斜視図であり、全てが実施形態によるものである。別途注記のない限り、ラッピングツール500の文脈で記載される機能及び動作の概念の多くは、図10A〜図10Cのラッピングマウントツール1000に同様に適用することができる。
ラッピングマウントツール1000は、実施形態によれば、回転可能及び/又は可撓性である、第1の構造部材1002を備える。第1の構造部材1002は、その各々がV字形状のノッチ(「Vノッチ」)を備える複数の角度作動ピン1005、又はフォーク1003(非限定的な例として、2刃のフォーク)を、少なくとも作動の目的で、頂部に収容する。実施形態によれば、第1の構造部材1002の最初及び最後の「ピン」構造は、内側の角度作動ピン1005と構造的に異なり、より広いように表され、また、主に、内側のより脆弱な角度作動ピン1005を保護する役割を果たすことに留意されたい。しかしながら、ラッピングマウントツール1000は、第1の構造部材1002の最初及び最後の「ピン」が、角度作動ピン1005の大部分と同じように、対応するヘッドスライダと相互作用することを意図しないので、ピンがツールから省略された場合に、それでもその意図する目的のために動作可能である。実施形態によれば、及び表されるように、隣接するフォーク1003(例えば、フォークの櫛)は、z方向に交互に千鳥状とすることができ、これは、そのような空間的に制限された環境における作動機構と対応するフォーク1003間の係合を容易にする。しかしながら、実施形態によれば、一群のフォーク1003は、表されるように、千鳥状ではなく直線状に構成され得る。第1の構造部材1002は、各複数の角度作動ピン1005が、作動(例えば、「第2の作動」)に応じて、角度ラッピング力を列バー206の対応するヘッドスライダに印加するように位置付けられるように、磁気読み取り−書き込みヘッドスライダの列バー(例えば、図2の列206a〜206n;一般に「列バー206」)を保持するための治具1008を備える。
ラッピングツール1000は、第1の可撓性ウェッジ角度(WA)のフレクシャ1012a(「第1のフレクシャ」)及び第2の可撓性ウェッジ角度(WA)のフレクシャ1012b(「第2のフレクシャ」)を介して、又はそれらにより、第1の構造部材1002から変位され、かつそれと結合された第2の構造部材1006を更に備える。第2の構造部材1006は、各々がラッピング力を列バー206の対応するヘッドスライダに印加するように位置付けられた複数のストライプ高さ(stripe height、SH)作動ピン1007を収容する。実施形態によれば、第1の構造部材1002の外側「ピン」構造に類似して、第2の構造部材1006第1及び最後の「ピン」構造は、内側のSH作動ピン1007と構造的に異なり、より広いように表され、また、主に、内側のより脆弱なSH作動ピン1007を保護する役割を果たす。しかしながら、ラッピングマウントツール1000は、第2の構造部材1006の最初及び最後の「ピン」構造が、SH作動ピン1007の大部分と同じように、対応するヘッドスライダと相互作用することを意図しないので、ピン構造がツールから省略された場合に、それでもその意図する目的のために動作可能である。実施形態によれば、各SH作動ピン1007は、作動(例えば、「第1の作動」)に応じて、実質的にz方向の力(図11の直線ラッピング力1105を参照されたい)を、対応するヘッドスライダに印加し、それによって、それぞれの目標ストライプ高さにラッピングする。実施形態によれば、各SH作動ピン1007は、読み取り−書き込みヘッドの読み取り装置要素のそれぞれの目標ストライプ高さに、又は読み取り−書き込みヘッドの書き込み装置要素のそれぞれの目標ストライプ高さ(同じく、図2Aの「フレアポイント213」)にラッピングするように作動させることができる。
ラッピングツール1000は、第3の可撓性フレクシャ1014a(「第3のフレクシャ」)及び第4の可撓性フレクシャ1014b(「第4のフレクシャ」)を介して、又はそれらにより、第2の構造部材1006と結合された第3の構造部材1010を更に備える。
特に、第1のフレクシャ1012a及び第2のフレクシャ1012bは、列バー206と関連付けられたx軸を中心とする回転軸で仮想的に交差し、したがってこの回転軸を画定する(図11を参照してより詳細に表され、説明される)。それゆえ、作動(例えば、「第2の作動」)に応じて、及び第1のフレクシャ1012a及び第2のフレクシャ1012bの仮想交差部に基づいて、各角度作動ピン1005は、第1のフレクシャ1012a及び第2のフレクシャ1012bの仮想交差部によって画定された回転軸を中心に、角度ラッピング力(例えば、トルク)をその対応するヘッドスライダに印加する。
ラッピングマウントツール1000の上述の相互作用構造に基づいて、独立かつ可変の(z軸方向で)ストライプ高さを、ストライプ高さ作動ピン1007を作動させることにより、それぞれの読み取り装置又は書き込み装置の目標ストライプ高さ(書き込み装置の要素の場合「フレアポイント」と称されることがある)にラッピングするように、列バー206の各読み取り−書き込みヘッドに設定することができる。同様に、独立かつ可変の(y軸方向と比較して)ウェッジ角度を、角度作動ピン1005を作動させることにより、かつ第1及び第2のフレクシャ1012a、1012bの仮想交差部の効果に従って、それぞれの目標ウェッジ角度にラッピングするように、列バー206の各ヘッドスライダ(図2のヘッドスライダ208a〜208m)に設定することができる。実際には、複数の角度作動ピン1005は、作動に応じて、列バー206をまとめてねじって、並列ラッピングするための列バー206の各ヘッドスライダをそのそれぞれの目標ウェッジ角度に並行して設定する。
実施形態によれば、ラッピングツール1000は、角度ラッピング力に対応するy方向の圧力勾配(例えば、図9Aの圧力勾配904a)を各角度作動ピン1005から対応するヘッドスライダ208a〜208mに伝達するために、第1の構造部材1002の治具1008に、かつ列バー206に接着された(図5のエラストマー516などの)柔軟エラストマーを更に備えることができる。したがって、ラッピングによる各ヘッドスライダ208a〜208mと関連付けられた材料除去は、各それぞれのヘッドスライダ208a〜208mに印加される圧力勾配904aに対応する。
列バー206をラッピングマウントツール1000の角度作動ピン1005に取り付ける/接着するために利用される柔軟エラストマー516に関して、隣接する角度作動ピン1005からの角度の変化は、角度作動ピン1005からのエラストマー516の分離を誘導することができ、次いでこれが、ラッピング中に、エラストマー516からの列バー206の分離を誘導することができる。実施形態によれば、エラストマー516は、治具1008に面する側の第1のレベルの表面粗さ、及び列バー206に面する反対側の第2のレベルの表面粗さを有し、第2のレベルの表面粗さは、第1のレベルの表面粗さよりも大きい。それゆえに、有効接着力は、列バー206側上の(すなわち、有効接触面積を低減することによって)より高い表面粗さに対してはより少なく、それによって、より安定した列バー206除去プロセス(例えば、ラッピングの後にエラストマー516から取り外す際に列バーを破損する可能性がより少ない)を提供する。対照的に、エラストマー516の対向する治具1008側は、比較的滑らかなレベルの表面粗さで作製され、これは、マウントツールピン1005、1007に対する有効接触領域を最大にして、比較的高レベルの接着を達成する。
ラッピングマウントツールのウェッジ角度フレクシャ
図11は、実施形態による図10A〜図10Cのラッピングツールを例示する側断面図である。図11は、第1のフレクシャ1012a及び第2のフレクシャ1012bの動作をより詳細に説明するために参照する(また、類似する機能について図7Aも参照する)。
図11は、図10A〜図10Cを参照して記載される実施形態による、ラッピングツール1000及び構成要素の側断面図を例示する。図11は、第1のフレクシャ1012a及び第2のフレクシャ1012bが列バー206と関連付けられたx軸を中心とする回転軸で「仮想的に」交差し、したがって、この回転軸を画定するように、回転可能な第1の構造部材1002及び第2の構造部材1006を相互接続する第1のフレクシャ1012a及び第2のフレクシャ1012bが位置付けられ、かつ構成されることを例示する。この回転軸は、それを中心として対応する角度作動ピン1005を作動させること1102により角度ラッピング力1103がヘッドスライダ(例えば、図2の208a〜208m)に印加され、したがって、それを中心として第1の構造部材1102(例えば、レバーとして作用する)及び関連する治具1008が効果的に回転する。角度ラッピング力1103(又はトルク)は、柔軟エラストマー516を通して伝達されたときに、対応するヘッドスライダの長さ(y方向)にわたって印加される圧力勾配904a(図9)として現れることを想起されたい。それゆえ、この独立かつ可変に印加される圧力勾配904aは、各それぞれのヘッドスライダの共通の回転軸を中心とするWAラッピング制御(例えば、ラッピング力1103のブロック矢印として表される)を提供する。回転軸が、実施形態によれば、列バー206のラッピング界面/底面での重心で又はその近くに及びそこにあるように設計されているので、正確な、独立した、かつ動的に可変の(すなわち、角度作動ピン1005の作動1102を変化させることによる)ウェッジ角度制御が、各ヘッドスライダ構成要素について列バー206に提供される。
図11は、直線ラッピング力1105(例えば、直線力1105のブロック矢印として表される)が、ストライプ高さ作動ピン1007を作動させること1104により、ヘッドスライダ(例えば、図2の208a〜208m)に印加されるように、ストライプ高さ作動ピン1007が位置付けられ、かつ構成されることを更に例示する。それゆえ、正確な、独立した、動的に可変の(すなわち、角度作動ピン1007の作動1104を変化させることによって)ストライプ高さ/フレアポイント制御が、各ヘッドスライダ構成要素について列バー206に提供される。
耐落下衝撃特徴
ラッピングマウントツール1000は、(例えば、操作者又はロボットマシンによって)製造現場を、及び場合により異なるツール間を移動するなどの、ラッピングマウントツール1000を取り扱う用途/動作に対して実装され得るので、ラッピングマウントツール1000に対する落下衝撃/衝突の影響が考慮事項であり、様々な作動ピン1005、1007が比較的細く脆弱な構成要素であり得ることに留意する。したがって、図11を再度参照すると、実施形態によれば、いくつかの構造空間許容度をラッピングマウントツール1000の構成要素の間に提供するために、変位を制限するように機能する1つ以上の間隙制御制御手段をラッピングマウントツール1000の構成に組み込むことができる。実施形態によれば、間隙1107が、第2の構造部材1006のストライプ高さ作動ピン1007の末端部分と、第1の構造部材1002の遠位側に向かって配置されたノッチ1106の表面1106aとの間に提供される。実施形態によれば、間隙1108が、第2のフレクシャ1112bが取り付けられる第2の構造部材1006の遠位末端部分と、第3の構造部材1010の対向する近位面1010aとの間に提供され、及び/又は間隙1109が、第2の構造部材1006の遠位末端部分と、第3の構造部材1010の対向する近位面1010bとの間に提供される。実装される落下衝撃間隙の数は、間隙1107、1108、1109のうちの任意の1つ以上を実装して、落下衝撃保護をラッピングマウントツール1000に提供することができるように、実装ごとに変化し得る。特に、上述の多方向間隙手段は、主にy方向(例えば、間隙1108、1109)だけでなくz方向(例えば、間隙1107)のラッピングマウントツール1000への衝撃/衝突事象の影響を低減させることができる。
更にまた、(角度作動ピン1005を含む)第1の構造部材1002、ストライプ高さ作動ピン1007、及びストライプ高さ作動ピン1007のための第2の構造部材1006の主支持構造の組み合わせ質量に少なくとも部分的に起因して、y方向における落下試験は、第2の構造部材1006及び第3の構造部材1010を相互接続する第3のフレクシャ1014a及び第4のフレクシャ1014bの座屈を誘発する傾向を示した。それゆえ、実施形態によれば、第3のフレクシャ1014a及び第4のフレクシャ1014bは、衝撃/衝突事象の際に第3のフレクシャ1014a及び第4のフレクシャ1014bに与えられる最大応力を効果的に低減させる、又は緩和することによって、これらのフレクシャの座屈モードを阻止又は防止するように、(図11に表されるように、y方向に沿って湾曲させた)湾曲フレクシャビームとして実装することができる。そのような湾曲フレクシャビームの利用は、上述の間隙手段と併せて実装することができ、更には連動して機能することができる。
論じたように、ラッピングマウントツール1000は、製造現場を、及び場合により異なるツール間を輸送するなどの、ラッピングマウントツール1000を取り扱う用途/動作に対して実装され得るので、ラッピングマウントツール1000に対する落下衝撃/衝突の影響が考慮事項である。より具体的には、実施形態によれば、ラッピング装着ツール1000は、1つ以上の構造筐体相互接続と連接されてラッピングマウントツール1000を収容し、並びにマウントツール1000を他の構成要素、高レベルラッピングツール、及び/又は治具に相互接続し、したがって、製造現場及び場合により異なるツール間において取り扱うこと、及び輸送することができるラッピングツールアセンブリを提供する。
実施形態によれば、図12Aは、ラッピングツールアセンブリの一部分を例示する分解頂部側斜視図であり、図12Bは、図12Aのラッピングツールアセンブリの一部分を例示する頂部側斜視図である。ラッピングツールアセンブリ1200は、組立品ベース部1202(「組立品ベース1202」)と連接又は結合されたラッピングマウントツール1000を備える。組立品ベース1202は、複数の相互係止ピン1202a(例えば、「櫛」)を備える。各隣接する相互係止ピン1202aは、ラッピングマウントツール1000と係合されたときに、一群の隣接するストライプ高さ作動ピン1007(図12Bの破線の円を参照されたい)と関連付けられた対応するポケット1007a内に位置付けられる。それゆえ、組立品ベース1202のピン1202aとラッピングマウントツール1000との係合は、それによって、ポケット1007aの構造構成及び形状から生じる、主に(図12Aの矢印1203で表される)x方向だけでなく、z方向のストライプ高さ作動ピン1007の変位及び材料応力も制限するように機能する。したがって、ストライプ高さ作動ピン1007は、一般に、ラッピングツールアセンブリ1200を矢印1203の方向に落下させている際に、及び/又は矢印1203の方向に力成分を有する落下衝撃/衝突を経験している際に、(マウントツールの精度及び性能に影響を及ぼし得る)損傷から保護することができる。
実施形態によれば、図13Aは、ラッピングツールアセンブリの一部分を例示する分解正面側斜視図であり、図13Bは、図13Aのラッピングツールアセンブリの一部分を例示する分解側面斜視図である。ラッピングツールアセンブリ1300は、実施形態に従ってPCBを装着することができる装着プレート部1302(「装着プレート1302」)と連接又は結合されたラッピングマウントツール1000を備える。装着プレート1302は、複数の下部相互係止ピン1302a(又は「下部櫛」)を備える。各隣接する下部相互係止ピン1302aは、ラッピングマウントツール1000と係合されたときに、一群の隣接する角度作動ピン1005と関連付けられた対応するポケット1005a内に位置付けられる。実施形態によれば、装着プレート1302は、複数の上部相互係止ピン1302b(又は「上部櫛」)を更に備え、各隣接する上部相互係止ピン1302bは、ラッピングマウントツール1000と係合したときに、角度作動ピン1005への対応する隣接するフォーク1003又は一群のフォーク1003の構成要素間に位置付けられる。それゆえ、装着プレート1302の下部相互係止ピン1302a及び上部相互係止ピン1302bとラッピングマウントツール1000との係合は、それによって、ポケット1005aの構造構成及び形状から、及びフォーク1003の対応する櫛を有する上部相互係止ピン1302a、1302bを相互係止することから生じる、主に(図12Aの矢印1303で表される)x方向だけでなく、z方向の角度作動ピン1005の変位及び材料応力を制限するように機能し、並びに、上部相互係止ピン1302a、1302bがフォーク1003の対応する櫛と相互係合する場合に、作動機構との適切な配列を確実にするように機能する。したがって、角度作動ピン1005は、一般に、ラッピングツールアセンブリ1300を矢印1303の方向に落下させている際に、及び/又は矢印1303の方向に力成分を有する落下衝撃/衝突を経験している際に、(マウントツールの精度及び性能に影響を及ぼし得る)損傷から保護することができる。
装着プレート1302の下部ピン1302a及び/又は上部ピン1302bは、組立品ベース1202(図12A、図12B)のピン1202a(図12A、図12B)から独立して実装することができるが、組立品ベース1202(図12A、図12B)のピン1202a(図12A、図12B)は、装着プレート1302の下部ピン1302a及び/又は上部ピン1302bと併せて実装して、作動ピン1007及びラッピングマウントツール1000の角度作動ピン1005への落下衝撃/衝突損傷に対する保護を提供することができることに留意されたい。また、作動ピン1005、1007を対応するピン1302a、1302b、1202aで強化することが、落下衝撃又は他の衝突事象が生じた際のy方向における損傷に対する支持及び保護を更に提供することができることにも留意されたい。
磁気読み取り−書き込みヘッドスライダの列バーをラッピングするための方法
図14は、実施形態によるヘッドスライダの列バーをラッピングするための方法を例示するフロー図である。図14に関して記載される様々な実施形態は、本明細書の他の場所に記載されるラッピングマウントツール1000(図10A〜図11)を使用して各々実行することができる。文脈について、及び記載されるように、各列バーは、列の方向に沿ったx軸と、列バー内のヘッドスライダと関連付けられた読み取り装置−書き込み装置オフセットの方向に沿ったy軸と、を有し、各ヘッドスライダは、読み取り装置要素と、書き込み装置要素と、を備える。
ブロック1402で、磁気読み取り−書き込みヘッドスライダの列バーをラッピングマウントツール治具に固定する。例えば、列バー206(図5、図6、図7A)は、エラストマー516(図5、図6、図7A)などを介して、ラッピングツール1000(図10A〜図11)の第1の構造部材1002(図10A〜図10C)の治具1008(図10A〜図11)に固定され、装着プレート1302(図13A、図13B)に装着されたPCBに電気的に接続される。
ブロック1404で、ラッピングマウントツールの複数の第1の作動ピンの各々を作動させ、それによって、それぞれの目標ストライプ高さにラッピングするように、列バーの各ヘッドスライダを設定する(ストライプ高さは、書き込み装置の要素のフレアポイントと称されることがあり得る)。例えば、各ストライプ高さ作動ピン1007(図10A〜図11)を、(非限定的な例として、空気圧で、油圧で、機械的、電気的、などにより)作動させて1104(図11)、z軸方向に対する寸法であるそれぞれの目標ストライプ読み取り装置高さ215(図2A)にラッピングするように、列バー206の各ヘッドスライダ208a〜208m(図2)を設定する。各それぞれの目標ストライプ高さが設定される様態は、図10A〜図11を参照して本明細書に記載されるものと一致する。
したがって、ブロック1406で、各それぞれの対応する目標ストライプ高さに従って、各ヘッドスライダを同時にラッピングする。例えば、それぞれの直線ラッピング力1105(図11)に応じて、各対応する目標ストライプ高さ215に従って、列バー206の各ヘッドスライダ208a〜208mをラッピングする。図3から、ラッピングは、共通にダイヤモンドをちりばめた及び/又はダイヤモンドスラリーを伴うラッピング治具304及びラッピングプレート306を使用して、ヘッドスライダ又はヘッドスライダの列バーに実行することができることを想起されたい。
該当する場合に、又は所望に応じてウェッジ角度ラッピングを継続して、ブロック1408で、ラッピングマウントツールの複数の第2の作動ピン各々を作動させ、それによって、それぞれの目標ウェッジ角度にラッピングするように、列バーの各ヘッドスライダを設定する。例えば、各角度作動ピン1005(図10A〜図11)を、(非限定的な例として、空気圧で、油圧で、機械的、電気的、などにより)作動させて1102(図11)、y軸方向に対する角度であるそれぞれの目標ウェッジ角度303(図3)にラッピングするように、列バー206の各ヘッドスライダ208a〜208mを設定する。各それぞれの目標ウェッジ角度が設定される様態は、図10A〜図11を参照して本明細書に記載されるものと一致する。各角度作動ピン1005が、ラッピングマウントツール1000の第1の構造部材1002(図10A〜図10C)内に収容されること、及び、第1の構造部材1002と第2の構造部材1006とを相互接続する第1のフレクシャ1012a(図10A、図10C、図11)及び第2のフレクシャ1012b(図10A、図10C、図11)の仮想交差部であって、x軸を中心とする角度作動ピン1005(したがって、列バー206)の回転軸を画定する、仮想交差部に基づいて、各角度作動ピン1005を通して、画定された回転軸を中心に角度ラッピング力1103(図11)を対応するヘッドスライダ208a〜208mに印加することを想起されたい。
したがって、ブロック1410で、各それぞれ対応する目標ウェッジ角度に従って、各ヘッドスライダを同時にラッピングする。例えば、各対応する目標ウェッジ角度303に従って、列バー206の各ヘッドスライダ208a〜208mをラッピングする。図3から、ラッピングは、共通にダイヤモンドをちりばめた及び/又はダイヤモンドスラリーを伴うラッピング治具304及びラッピングプレート306を使用して、ヘッドスライダ又はヘッドスライダの列バーに実行することができることを想起されたい。実施形態によれば、ブロック1404で、第1の作動ピンを作動させること1104の後に、ブロック1408で、第2の作動ピンを作動させること1102を実行する。しかしながら、この動作の順序は、実装ごとに変化し得、したがって、所望に応じて逆になり得る。
傾斜インターポーザを有するラッピングツールアセンブリ
実施形態によれば、図15Aは、傾斜インターポーザを含むラッピングツールアセンブリを例示する側面斜視図であり、図15Bは、図15Aのラッピングツールアセンブリの一部分を例示する側面斜視図である。実施形態によれば、図16は、図15Aの傾斜インターポーザの側断面図であり、図17は、図15Aのラッピングツールアセンブリの側断面図である。ラッピングツールアセンブリ1500は、ラッピングマウントツール1000(図10A〜11を参照)と、マウントツール1000の角度作動ピン1005を作動させるための複数のアクチュエータ1510(非限定的な例では、空気軸受アクチュエータ)と、アクチュエータ1510とマウントツール1000との間に介在する作動インターポーザ1502(「インターポーザ1502」)と、を含むアセンブリである。
インターポーザ構造1502は、複数のインターポーザ構造1504を含む第1の要素(「インターポーザピン1504」又は集合的に「第1の要素1504」)を含み、それぞれが対応するアクチュエータ1510と反応的に結合される。各インターポーザピン1504は、マウントツール1000の対応する角度作動ピン1005への伝達又は印加のために、対応するアクチュエータ1510からそれぞれの平行移動力1511を受け取るように構成される。インターポーザ1502は、(a)第1のフレクシャ1505a及び第2のフレクシャ1505bを介して第1の要素1504に結合され、かつ、(b)第3のフレクシャ1507a及び第4のフレクシャ1507bを介して固定フレーム又はハウジング1508に結合される、第2の要素、T字型構造1506(「T字構造1506」)を更に含む。ゼロz軸(垂直)シフトフレクシャシステムとして特徴付けられ得る前述のフレクシャシステム(明瞭さを維持するために図15Aには図示されていないフレクシャ)の説明については図16を参照されたい。
可撓性の第1及び第2のフレクシャ1505a、1505bによってT字構造1506から「吊り下げる」第1の要素1504を考慮すると、水平(y軸)方向に作動させたときに、第1の要素1504は、例えば、第1及び第2のフレクシャ1505a、1505bの屈曲により、反時計回り方向に上向きに揺動又は弧を描く自然な傾向を有する。マウントツール1000の受け入れ角度作動ピン1005に実質的に垂直な作動力と適切に係合して平行移動するためには、y方向への第1の要素1504の単純な線形平行移動が好ましいため、第1の要素1504の任意の上向き運動(z軸)は、望ましくない。したがって、実施形態によれば、第1のフレクシャ1505a、第2のフレクシャ1505b、第3のフレクシャ1507a、及び第4のフレクシャ1507bは、(例えば、図16に示されるように)反時計回り方向に上向きに揺動する第1の要素の傾向が、第3及び第4のフレクシャ1507a、1507bの屈曲により時計回り方向に下向きに揺動するT字構造1506によってオフセットされるように、構成される。その結果、第1の要素に構成されるインターポーザピン1504は、y方向のみに実質的に直線的に平行移動するように、許容又は強制される。
図16を参照すると、実施形態によれば、第1の要素1504は、インターポーザからマウントツールへのz軸デカプラ又は分離フレクシャシステムを更に含み、インターポーザ1502の第1の要素の各インターポーザピン1504は、(a)アクチュエータ1510に近位の近位端1504aと、(b)マウントツール1000の対応する角度作動ピン1505と係合可能な先端部1504eを含む遠位端1504cと、(c)近位端1504aと遠位端1504cとの間の中間構造1504bであって、そこから遠位端1504cが延在する、中間構造1504bと、を含む。第1の要素1504で具体化されるz軸分離フレクシャシステムは、近位端1504aを中間構造1504bに結合する、1つ以上の第1のデカプラフレクシャ1504fの群と、1つ以上の第2のデカプラフレクシャ1504fの群と、を更に含む。第1及び第2のデカプラフレクシャ1504fの構造的構成は、実装ごとに異なり得る。非限定的な例では、第1及び第2のデカプラフレクシャ1504fの各々は、各インターポーザピン1504に対応し、近位端1504aから中間構造1504bに及ぶ単一のフレクシャ1504fを含んでもよく、又は、それぞれが、近位端1504aから中間構造1504bに及ぶモノリシックフレクシャ1504fを含んでもよい。
第1及び第2のフレクシャ1504fの実装により、第1の要素1504のこの部分の屈曲剛性が低減又は比較的低くなり、これにより、マウントツール1000の対応する係合角度作動ピン1005に各遠位端1504cを追従させる一方で、マウントツール1000上の各遠位端1504cからの力の影響を実質的に分離することを可能にする。マウントツール1000の角度作動ピン1005及びストライプ高さ作動ピン1007(ラッピングのためにz軸方向に移動する)は、マウントツール1000の第1のフレクシャ1012a及び第2のフレクシャ1012bを介して結合され(例えば、図10A、10C、11を参照)、したがって、1種類の作動ピンの移動は、他の種類の作動ピンに影響を及ぼし得ることを想起されたい。しかしながら、前述のz軸カプラデカプラフレクシャシステムは、インターポーザピン1504からストライプ高さ作動ピン1007へのy軸方向の係合力の印加を(例えば、各インターポーザピン1504のそれぞれの先端部1504eが角度作動ピン1005と直接係合するため)実質的に分離するように動作し、それにより、そのようなy軸力がz軸方向のストライプ高さ作動ピン1007に影響を及ぼすことを抑制又は低減又は排除する。
図18は、実施形態による図15Aのアクチュエータ傾斜インターポーザのプレアライナの側面斜視図である。図16及び図18を参照すると、実施形態によれば、各インターポーザピン1504は、インターポーザピン1504の対応する遠位端1504cをマウントツール1000の対応する角度作動ピン1005と位置合わせするのに役立つ位置合わせバンプ構造/機構1504d(「位置合わせバンプ1504d」)を含むものとして示されている。位置合わせバンプ1504dは、インターポーザピン1504が角度作動ピン1005と係合したときに、対応する角度作動ピン1005のフォーク1003内のインターポーザピン1504の対応する遠位端先端部1504eを実質的に中心に合わせる。
図15A、15B、17及び18を参照すると、ラッピングツールアセンブリ1500は、各インターポーザピン1504を特定のz軸(垂直)許容範囲内に位置付けるプレアライナ櫛1512を更に含む。すなわち、プレアライナ櫛1512は、インターポーザピン1504をz軸方向に拘束するように動作する。更に、インターポーザピン1504がマウントツール1000の対応する角度作動ピン1005と適切かつ確実に係合すると、インターポーザピン1504の各位置合わせバンプ1504dは、プレアライナ櫛1512とインターポーザピン1504の遠位端先端部1504eとの間に位置付けられる。したがって、各位置合わせバンプ1504dがプレアライナ櫛1512の外側に位置すると、各インターポーザピン1504は、マウントツール1000のそれぞれの係合角度作動ピン1005とともに、z軸方向に自由に移動する。
磁気センサデバイスの列バーをラッピングするためのラッピングマウントツールに作動力を印加する方法
図19は実施形態による磁気センサデバイスの列バーをラッピングするためのラッピングマウントツールに作動力を印加するための方法のフロー図であり、列バーが、列の方向に沿ったx軸と、列バーの幅の方向に沿ったy軸とを有する。磁気センサデバイスは、例えば、磁気読み取り−書き込みヘッドの無数の形態のいずれか、又は磁気読み取り器のみ、又は他の種類の磁気センサを含み得る。
ブロック1902で、列バーはラッピングマウントツール治具に固定される。例えば、列バー206(図5、6、7A)は、エラストマー516(図5、6、7A)などを介して、ラッピングツール1000(図10A〜11)の第1の構造部材1002(図10A〜10C)の治具1008(図10A〜11)に固定される。
ブロック1904で、複数のアクチュエータの各々が作動され、各アクチュエータから、インターポーザ構造の対応するインターポーザピンにそれぞれの平行移動力を印加する。例えば、アクチュエータアセンブリ1500(図15A、15B、16、17)のアクチュエータ1510(図15A、17)の各々が作動され、それぞれの平行移動力1511(図15A、17)を、インターポーザ構造1502(図15A、16、17)の対応するインターポーザピン1504(図15A、16、17)に印加する。
ブロック1906で、ゼロz軸シフトフレクシャシステムが動作され、そのようなフレクシャシステムは、(a)インターポーザピンとインターポーザ構造の回転可能なT字構造とを相互接続する1組の第1のフレクシャと、(b)T字構造を固定フレームと相互接続する1組の第2のフレクシャと、を含み、第1のフレクシャの屈曲に起因して作動時に反時計回りに上向きに揺動するインターポーザピンの傾向が、第2のフレクシャの屈曲に起因して時計回りに下向きに揺動するT字構造によってオフセットされ、それにより、インターポーザピンが、y方向にのみ実質的に平行移動する。例えば、インターポーザ構造1502(図16)の機構が動作され、このような機構は、(a)インターポーザピン1504とインターポーザ構造1502の回転可能なT字構造1506(図15A、16、17)とを相互接続する1組の第1のフレクシャ1507aと、(b)T字構造1506を固定フレーム1508(図15A、16、17)と相互接続する1組の第2のフレクシャ1507bと、を含み、第1のフレクシャ1507aの屈曲に起因して作動時に反時計回りに上向きに揺動するインターポーザピン1504の傾向が、第2のフレクシャ1507bの屈曲に起因して時計回りに下向きに揺動するT字構造1506によってオフセットされ、それにより、インターポーザピン1504が、y方向にのみ実質的に平行移動する。
実施形態によれば、任意選択のブロック1908で、インターポーザ−マウントツールz軸分離フレクシャシステムが動作され、このようなフレクシャシステムは、インターポーザピンからラッピングマウントツールへのy方向の力の印加がz軸方向から実質的に分離されるように、各近位端をインターポーザピンの中間構造に結合する、1組の1つ以上の第1の分離フレクシャと、1組の1つ以上の第2の分離フレクシャと、を含む。例えば、インターポーザ−マウントツールz軸分離フレクシャシステムが動作され、このようなフレクシャシステムは、インターポーザピン1504からラッピングマウントツール1000へのy方向の力の印加がz軸方向から実質的に分離されるように、各近位端1504a(図16)をインターポーザピン1504の中間構造1504b(図16)に結合する、1組の1つ以上の第1の分離フレクシャ1504f(図16)と、1組の1つ以上の第2の分離フレクシャ1504f(図16)と、を含む。
実施形態によれば、任意選択のブロック1910で、インターポーザピンが作動ピンと係合した状況において、各インターポーザピンの遠位端の近くのそれぞれの位置合わせバンプが、ラッピングマウントツールの対応する作動ピンのvノッチ内でインターポーザピンの遠位端先端部を実質的に中心に合わせることが可能となる。例えば、インターポーザピン1504が角度作動ピン1005と係合した状況において、各インターポーザピン1504の遠位端1504c(図16)の近くのそれぞれの位置合わせバンプ1504d(図16、18)が、ラッピングマウントツール1000の対応する角度作動ピン1005(図10A〜10C、15A、15B、17、18)のフォーク1003(図10A〜10C、18)内でインターポーザピンの遠位端先端部1504e(図16、18)を実質的に中心に合わせることが可能となる。
実施形態によれば、任意選択のブロック1912で、プレアライメント櫛により、各インターポーザピンをz軸許容範囲内に位置付けることが可能となり、インターポーザピンの各位置合わせバンプは、インターポーザピンがラッピングマウントツールのそれぞれの係合した作動ピンとともにz軸許容範囲内でz軸方向に自由に移動するように、インターポーザピンのプレアライメント櫛と遠位端先端部との間に位置付けられる。例えば、プレアライメント櫛1512(図15A、15B、17、18)により、各インターポーザピン1504をz軸許容範囲内に位置付けることが可能となり、インターポーザピン1504の各位置合わせバンプ1504dは、インターポーザピン1504がラッピングマウントツール1000のそれぞれの係合した角度作動ピン1005とともにz軸許容範囲内でz軸方向に自由に移動するように、インターポーザピン1504のプレアライメント櫛1512と遠位端先端部1504eとの間に位置付けられる。
拡張物及び代替物
前述の説明において、本発明の実施形態は、実装ごとに変わり得る多数の具体的な詳細を参照して説明されてきた。したがって、実施形態のより広い趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な修正及び変更を行うことができる。こうして、本発明であり、かつ本出願人らが本発明であることを意図するものの唯一及び排他的な指針は、本出願に由来する特許請求の範囲のセットであり、そのような特許請求の範囲が由来し、任意の後続の補正を含む、特定の形態をなす。そのような特許請求の範囲に包含される用語について本明細書に明示的に記載される定義は、特許請求の範囲で使用されるような用語の意味を支配するものとする。それゆえ、特許請求項に明示的に記載されていない限定、要素、特性、特徴、利点又は属性は、決してそのような特許請求項の範囲を限定すべきではない。これにより、本明細書及び図面は、制限的な意味ではなく例示的と見なされるものである。
加えて、この説明では、特定のプロセス工程が特定の順序で記載されてもよく、アルファベット及び英数字符号を使用して、特定の工程を識別することができる。本明細書において特記されない限り、実施形態は、そのような工程を実施する任意の特定の順序に必ずしも限定されない。特に、符号は単に工程の簡便な識別に使用され、そのような工程を実施する特定の順序を指定又は必要とすることは意図されていない。