次に、本発明の実施形態を図1〜図24に基づいて説明する。図1〜図3に示すように各実施形態では動力工具1として、一般にマルチツールと称される多機能な電動工具を例示する。この動力工具1は、出力軸に取り付けた先端工具を一定角度で高速に揺動させる構成を備えるもので、例えば石工ボードの切断作業、タイルの剥離作業、木材の研削等の各種作業に用いられる。以下の説明では、5つの実施形態について説明する。各実施形態は、半割りハウジングの結合構造について異なる特徴を有しており、係る特徴部分を除いたハウジング及び動力工具の基本的構成については共通となっている。このため、動力工具1の概略構成については、第1実施形態についてのみ説明し、第2実施形態以降については同位の符号を付してその説明を省略する。
この動力工具1は、駆動源としての電動モータ11を内装した工具本体部10と、工具本体部10の前部側に設けた機構部20と、工具本体部10の後部側に設けたグリップ部30と、グリップ部30の後部側に設けた電源部40を備えている。この動力工具1は、前側から順に機構部20、工具本体部10、グリップ部30、電源部40がほぼ直列に連なった構成を備えている。これら各部10〜40は、モータ軸線Mに沿って延びる概ね円筒形状のハウジング50に内装されている。ハウジング50は左右半割り構造の樹脂製ハウジングであり、各実施形態ではこの半割り構造の結合構造に特徴を有している。ハウジング50の詳細については後述する。
図3に示すように工具本体部10の電動モータ11は、円筒形のモータケース11aに内装されている。モータケース11aの後部には、モータ軸11cに取り付けた冷却ファン11bが内装されている。モータケース11aの後部には、長円形の排気窓11dが設けられている。図3では排気窓11dを経て冷却ファン11bが見えている。一方、図1,4,5に示すようにハウジング50の長手方向前側と中ほどと後側の側面には、複数の吸気口50bが設けられている。また、ハウジング50の長手方向中ほどの側面であって排気窓11dの周囲となる部位には、複数の排気口50aが設けられている。電動モータ11の起動により冷却ファン11bが回転すると、ハウジング50の吸気口50bを経てモータケース11a内に外気が導入されて当該電動モータ11の冷却がなされる。モータケース11a内に導入されたモータ冷却風は、冷却ファン11bの回転により排気窓11dから排気口50aを経てハウジング50の外部に排気される。
電動モータ11は、電源部40に取り付けたバッテリパック41を電源としている。電動モータ11のモータ軸11cに、機構部20が接続されている。機構部20は、機構部ケース21の内部に、駆動軸22と、揺動アーム23と、出力軸24を回転支持した構成を備えている。モータ軸11cに駆動軸22が結合されている。駆動軸22は軸受22a,22bを介して機構部ケース21に回転可能に支持されている。駆動軸22は、モータ軸線M回りに回転可能に支持されている。駆動軸22の前部には、モータ軸線Mに対して偏心する偏心軸部22cが一体に設けられている。偏心軸部22cには駆動ローラ25が取り付けられている。
駆動ローラ25の左右両側には、揺動アーム23の作動部23aが摺接されている。左右の作動部23aは、揺動アーム23の後部に一体に設けられている。両作動部23aは、相互に一定の間隔をおいて後方へ平行に延びている。揺動アーム23の前部に、出力軸24が結合されている。出力軸24は、モータ軸線Mに直交する出力軸線P回りに回転可能に支持されている。出力軸24は、上下の軸受24a,24bを介して機構部ケース21に支持されている。
電動モータ11が起動すると、駆動軸22がモータ軸線M回りに回転する。駆動軸22がモータ軸線M回りに回転すると、偏心軸部22cがモータ軸線M回りに公転する。このため、駆動ローラ25がモータ軸線M回りに公転する。駆動ローラ25の公転動作のうち左右変位分が左右の作動部23aを介して揺動アーム23に伝達され、これにより揺動アーム23が出力軸線P回りに一定の角度で揺動する。揺動アーム23が出力軸線P回りに揺動することにより、出力軸24が出力軸線P回りに一定角度で揺動する。
出力軸24の下部側は、機構部ケース21の下面から下方へ突き出されている。出力軸24の下部には、工具ホルダ26が設けられている。この工具ホルダ26に固定ねじ26aを締め込んで挟み込むことにより出力軸24の下部に先端工具Tが取り付けられている。先端工具Tは、出力軸24の下部から前方(出力軸線Pに直交する方向)へ延びる状態に取り付けられている。図1に示すように先端工具Tとして、出力軸24には帯板形状の鋸歯(カットソー)が取り付けられている。この先端工具Tが出力軸線P回りに一定角度で高速に揺動されることにより、その先端部で木材の角切り抜き加工等がなされる。
ハウジング50のうち、工具本体部10に相当する部位(本体部ハウジング51)の上面には、前後方向にスライド操作する起動スイッチ12が設けられている。図3に示すように起動スイッチ12の下面には作動レバー13が一体に設けられている。この作動レバー13は、ハウジング50の内面に沿って後方へ延びている。作動レバー13の後部は、グリップ部30に内装したメインスイッチ14に連結されている。起動スイッチ12を前側へスライド操作(オン操作)すると、メインスイッチ14がオンして電動モータ11が起動する。起動スイッチ12を後側へスライド操作(オフ操作)するとメインスイッチ14がオフして電動モータ11が停止される。
グリップ部30は、使用者が片手で把持する部位で、工具本体部10の後側に位置している。ハウジング50のうち、グリップ部30に相当する部位(グリップ部ハウジング53)は、使用者が片手で把持しやすい太さ及び形状を有している。グリップ部30の後部には、電動モータ11の出力回転数を調整するためのスピードコントローラ31が内装されている。スピードコントローラ31には回転操作式の調整ダイヤル31aが設けられている。図2に示すように調整ダイヤル31aの上部が、グリップ部ハウジング53の上面に設けた窓部53aからはみ出されている。窓部53aの前側には、調整した回転速度を指し示す三角形の指針53bが表示されている。窓部53aは、矩形すり鉢形状の凹部53cの底部に設けられている。調整ダイヤル31aの上部は、この凹部53cからはみ出さない範囲で窓部53aからはみ出されている。これにより調整ダイヤル31aの不用意な誤操作が防止されるようになっている。
グリップ部30の後部に電源部40が設けられている。ハウジング50のうち、電源部40に相当する部分(電源部ハウジング54)は、グリップ部ハウジング53の後部から、斜め後方へ傾斜しつつ下方へ張り出す状態で一体に設けられている。電源部ハウジング54には、主として電動モータ11の動作制御を行うメインコントローラ43が内装されている。図では省略されているが、メインコントローラ43は、モータ制御回路や電源回路を含む制御基板を矩形底浅のケース内に収容して樹脂でモールドした構成を備えている。
メインコントローラ43の後面側には、正負の端子板42aを有する端子台42が内装されている。端子台42の左右側方には、バッテリパック41を案内する左右一対のレール受け部44が設けられている。バッテリパック41は、複数本のセルをケース内に収容したスライド取り付け形式のリチウムイオンバッテリであり、本実施形態では例えば10.8V出力のバッテリが用いられている。バッテリパック41の前面には電源部40側のレール受け部44に係合される左右一対の案内レール41aが設けられている。左右の案内レール41a間に正負の端子受け部が配置されている。
バッテリパック41は、下方へスライドさせることにより電源部40に取り付けることができ、逆に上方へ向けてスライドさせることにより電源部40から取り外すことができる。図では見えていないが、バッテリパック41には、電源部40に対する取り付け状態をロックするための爪部が設けられている。一方、図2に示すようにバッテリパック41の上面には、この爪部をアンロック側に変位させて取り付けロック状態を解除するためのアンロックボタン41bが設けられている。バッテリパック41は、電源部40から取り外して別途用意した充電器で充電することにより繰り返し使用することができる。
前記したように動力工具1は、モータ軸線Mに沿って延びる概ね円筒形状で左右半割り構造のハウジング50を備えている。ハウジング50は、左右の分割ハウジング50L,50Rを相互に突き合わせてねじ結合した構成を備えている。ハウジング50の前部が機構部20の機構部ハウジング52に相当し、その後側が工具本体部10の本体部ハウジング51に相当し、その後側がグリップ部30のグリップ部ハウジング53に相当し、後部が電源部40の電源部ハウジング54に相当する。
図2に示すように左側の分割ハウジング50Lと右側の分割ハウジング50Rは、突き合わせ面Jで相互に突き合わされて円筒形状のハウジング50が構成されている。突き合わせ面Jで左右に分割した左分割ハウジング50Lが図4に示され、右分割ハウジング50Rが図5に示されている。図4は左分割ハウジング50Lを内面側から見た状態を示し、図5は右分割ハウジング50Rを内面側から見た状態を示している。左右の分割ハウジング50L,50Rとも、主としてその上縁部及び下縁部に沿って突き合わせ面Jが設けられている。
なお、左右の分割ハウジング50L,50Rの外周面には、主として滑り止め及び落下時等の衝撃を緩和する目的で弾性樹脂層55が被覆されている。図4及び図5ではこの弾性被覆層に斜線が付されて突き合わせ面Jとは明確に区別されている。突き合わせ面Jには、左右の分割ハウジング50L,50Rの突き合わせ面方向(主として相互に上下方向)の位置決めを目的としてリブ56が設けられている。このリブ56は、左側の分割ハウジング50Lの突き合わせ面Jに設けられている。リブ56は、薄板形状を有して、突き合わせ面Jに沿って適宜間隔を置いて複数個所に設けられている。リブ56は、左側の分割ハウジング50Lの上縁側に5箇所設けられ、下縁側に2箇所(合計7箇所)設けられている。
上記各リブ56に対応して、右側の分割ハウジング50Rの突き合わせ面Jには、溝孔58が設けられている。各溝孔58は、対向するリブ56を挿入可能な溝幅及び長さで形成されている。図6,8,9に示すように各溝孔58にリブ56を挿入して左右の分割ハウジング50L,50Rを突き合わせることにより、当該両分割ハウジング50L,50Rを突き合わせ面方向に相互に位置決めされ、この位置決め状態で相互にねじ結合されている。また、各溝孔58にリブ56が挿入されていることにより、振動等による左右の分割ハウジング50L,50Rの突き合わせ面J方向の位置ずれを規制若しくは防止することができる。
左右の分割ハウジング50L,50Rの下縁にはそれぞれ補助リブ57,59が設けられている。図4に示すように左側の分割ハウジング50Lの下縁側の突き合わせ面Jに2つの補助リブ57が設けられている。図5に示すように右側の分割ハウジング50Rの下縁側の突き合わせ面Jに2つの補助リブ59が設けられている。各補助リブ57,59は突き合わせ面Jに沿って長く形成されている。前側の補助リブ57,59は、本体部ハウジング51に相当する部位の突き合わせ面Jに沿って設けられている。後側の補助リブ57,59は、グリップ部ハウジング53から電源部ハウジング54に至る範囲で突き合わせ面Jに沿って設けられている。
図6,8,9に示すように左側の分割ハウジング50L側の補助リブ57と、右側の分割ハウジング50R側の補助リブ59が、相互に板厚方向に重ね合わさることにより、当該左右の分割ハウジング50L,50Rの突き合わせ面J方向であって主として上下方向の位置決め及び位置ずれ防止がなされる。左右の分割ハウジング50L,50Rの下縁側の補助リブ57,59が相互に板厚方向に重ね合わされて位置決めされる構成については、後述する第2実施形態以降においても同様の構成となっている。
図1に示すように左右の分割ハウジング50L,50Rは、合計9箇所のねじ結合部60で相互に結合されている。各ねじ結合部60は、左分割ハウジング50L側のねじボス部61と、右分割ハウジング50R側のボス受け部62と、ハウジング結合用のねじ63で構成されている。
図4に示すように左側の分割ハウジング50Lの内面には、ねじ63を締め込むためのねじ孔61aを有するねじボス部61が9箇所に設けられている。各ねじボス部61は当該左側の分割ハウジング50Lの内面側から右側の分割ハウジング50R側(図において手前側)に向けて突き出す状態に設けられている。突き出し側の先端部に一定深さのねじ孔61aが設けられている。左側の分割ハウジング50Lの機構部ハウジング52に相当する部位の内面に3箇所のねじボス部61が設けられ、本体部ハウジング51に相当する部位の内面に2箇所のねじボス部61が設けられ、グリップ部ハウジング53に相当する部位の内面に2箇所のねじボス部61が設けられ、電源部ハウジング54に相当する部位の内面に2箇所のねじボス部61が設けられている。なお、左側の分割ハウジング50Lの機構部ハウジング52に相当する部位の内面には、3箇所のねじボス部61に加えて、機構部ケース21を固定するためのねじ孔64aを有するケース固定部64が3箇所に設けられている。
図5に示すように右分割ハウジング50Rの内面には、上記左分割ハウジング50Lのねじボス部61に対応して合計9箇所のボス受け部62が設けられている。各ボス受け部62は、ねじボス部61の先端部を挿入可能な円筒形状を有している。各ボス受け部62の底部中心に、ねじ63を挿通するための挿通孔62aが設けられている。右分割ハウジング50R側から挿通孔62aにねじ63を挿通させて、当該ねじ63を左分割ハウジング50L側のねじ孔61aに締め込むことにより、左分割ハウジング50Lと右分割ハウジング50Rが相互に突き合わせ状態で結合されてハウジング50が形成される。合計9箇所のねじ結合部60の全てについてねじ63を外せば、左分割ハウジング50Lと右分割ハウジング50Rを相互に分離することができる。
左分割ハウジング50Lと右分割ハウジング50Rとの間には、相互の分離方向への変位を規制する手段(相対変位規制手段70)が設けられている。この相対変位規制手段70について、以下様々な実施形態を説明する。図5〜図7に示すように第1実施形態の相対変位規制手段71は、ボス受け部62の内周面に圧入突部71aを設けた構成となっている。圧入突部71aは、右分割ハウジング50Rのグリップ部ハウジング53に相当する部位の2箇所のねじ結合部60のうち上側のねじ結合部60に設けられている。当該上側のねじ結合部60付近において、左右の分割ハウジング50L,50Rの突き合わせ面J間の擦れ(振動)が最も大きくなることが想定され、第3実施形態では当該部位について相対変位規制手段70が設定されている。
上側のねじ結合部60において、ボス受け部62の内周面には、4つの圧入突部71aが周方向四等分位置に設けられている。この圧入突部71aにより、当該上側のボス受け部62の内径は、他の8箇所のボス受け部62の内径よりも小さくなっており、左分割ハウジング50L側のねじボス部61の先端部を圧入可能な寸法に設定されている。
このため、左右の分割ハウジング50L,50Rが相互に結合された状態では、グリップ部ハウジング53に相当する部位の上側のねじ結合部60においては、ねじボス部61がボス受け部62の内周孔に圧入され、その他8箇所のねじ結合部60においてはねじボス部61がボス受け部62の内周孔に抵抗なく挿入された状態となっている。このように、9箇所のうち1箇所のねじ結合部60について、圧入突部71aによりねじボス部61がボス受け部62に圧入されて、左右の分割ハウジング50L,50R間に分離方向の抵抗(分離抵抗)が与えられている。この分離抵抗により、全てのねじ結合部60のねじ63を緩めて外しても左右の分割ハウジング50L,50Rは、相互に突き合わせ状態に保持される。本実施形態において、圧入突部71aによる分離抵抗(突き合わせ状態保持力)は、例えば一方の分割ハウジング50L(50R)を把持して当該ハウジング50を水平姿勢に保持したときに、他方の分割ハウジング50R(50L)がその自重により分離されない(落下しない)程度の保持力に設定されている。第1実施形態では、係る分離抵抗を得るために4つの圧入突部71aの内周側への張り出し寸法が適切に設定されている。
このように、左右の分割ハウジング50L,50Rを相互に突き合わせ状態(結合状態)に保持する分離抵抗は、当該2つの分割ハウジング50L,50Rの突き合わせ面J方向(分離方向に直行する方向)の変位を規制する抵抗としても作用する。圧入突部71a(相対変位規制手段70)により発生する分離抵抗により、左右の分割ハウジング50L,50Rの突き合わせ面J方向の相対変位(振動)が規制される結果、相互に突き合わされた突き合わせ面Jの発熱を未然に防止し、若しくは抑制することができる。
以上説明した第1実施形態に係るハウジング50の相対変位規制手段71によれば、左右の分割ハウジング50L,50Rを結合する合計9箇所のねじ結合部60のうちの1箇所のねじ結合部60についてねじボス部61がボス受け部62の内周側に圧入されている。この圧入により、左右の分割ハウジング50L,50R間には、分離方向に適度な抵抗(分離抵抗)が持たされている。この分離抵抗により、左右の分割ハウジング50L,50Rの突き合わせ面J方向の相対変位が規制される結果、突き合わせ面J相互の擦れ(振動)が抑制されて従来の発熱が抑制される。
図8には、第2実施形態の相対変位規制手段72が示されている。第2実施形態の相対変位規制手段72は、上記4つの圧入突部71aに代えてボス受け部62の内周側に円筒形のゴムブッシュ72aを嵌め付けた構成を備えている。ゴムブッシュ72aの内周側にねじボス部61の先端部が圧入されることにより、1箇所のねじ結合部60について左右の分割ハウジング50L,50Rに分離抵抗が持たされている。
このように第2実施形態の相対変位規制手段72(ゴムブッシュ72a)によっても、左右の分割ハウジング50L,50R間に分離抵抗が持たされている。この分離抵抗により左右の分割ハウジング50L,50Rの突き合わせ面J方向の相対変位が規制される結果、当該突き合わせ面J相互の擦れ(振動)が抑制されて発熱が抑制される。
図9及び図10には、第3実施形態の相対変位規制手段73が示されている。第3実施形態の相対変位規制手段73は、圧入ピン73aを用いて左右の分割ハウジング50L,50R間に分離抵抗を持たせる構成となっている。第3実施形態では、この圧入ピン73aを、同じくグリップ部ハウジング53の上側のねじ結合部60に沿って突き合わせ面J間に圧入されている。この圧入ピン73aにより、左右の分割ハウジング50L,50R間に分離抵抗が持たされる結果、両分割ハウジング50L,50Rの突き合わせ面J相互の擦れが抑制されて発熱が抑制される。
図11〜図14には、第4実施形態の相対変位規制手段74が示されている。第4実施形態の相対変位規制手段74は、圧入ピン73aに代えて左側の分割ハウジング50Lのリブ56を右側の分割ハウジング50Rの溝孔58に圧入することにより両分割ハウジング50L,50R間に分離抵抗を持たせる構成となっている。第4実施形態では、リブ56にゴムシート74aを貼り付けて必要な圧入代を確保する構成を備えている。ゴムシート74aは、リブ56の内側と外側の両側面に沿って貼り付けられている。図11及び図12に示すように両側面に沿ってゴムシート74aを貼り付けたリブ56が溝孔58に圧入されている。リブ56が溝孔58に圧入されることにより、左右の分割ハウジング50L,50R間に分離抵抗が持たされて、両分割ハウジング50L,50Rの突き合わせ面J相互の相対変位(振動、擦れ)が抑制され、ひいては同部位での発熱が抑制される。
図15及び図16には、第5実施形態の相対変位規制手段75が示されている。第5実施形態の相対変位規制手段75は、グリップ部ハウジング53において左側の分割ハウジング50Lのリブ56の板厚を大きくして必要な圧入代を確保する構成となっている。図では圧入代を追加して板厚を大きくしたリブ56に符号Wを付した。第5実施形態では、第4実施形態のようにゴムシート74a等を貼り付けて圧入代を確保するのではなく、リブ56Wの板厚そのものを大きく成形して圧入代を確保している。このリブ56Wを溝孔58に沿って圧入することにより、左右の分割ハウジング50L,50R間に分離抵抗が持たされている。このため、第5実施形態においても、両分割ハウジング50L,50Rの突き合わせ面J相互の相対変位(振動、擦れ)が抑制されて発熱が抑制される。
以上のように突き合わせ面Jに設けた位置決め用のリブ56を溝孔58に圧入するために、ゴムシート74aを貼り付け(第4実施形態)、あるいはリブ56W自体の板厚を大きくする(第5実施形態)構成とする他、図17〜図19に示す圧入構造(相対変位規制手段)を採用することができる。図17に示す圧入構造は、リブ56の片面若しくは両側面に複数個の突起56aを設けて必要な圧入代を確保する構成となっている。この突起56aにより、リブ56を溝孔58に圧入することにより、左右の分割ハウジング50L,50R間に分離抵抗が持たされて突き合わせ面J間の振動(擦れ)が抑制され、ひいては同部位における発熱が抑制される。突起56aは図示するように4つとする構成のほか、さらに多数の突起を設ける構成、あるいは片面に一つの突起で必要な圧入代を確保する構成としてもよい。
また、必要な圧入代は、上記の突起56aに代えて、図18に示すようにリブ56の片面若しくは両側面に一つの突条56bを設けることによっても確保することができる。突条56bは、図示するように片面に設ける構成とする他、両側面に設けてもよく、また片面について複数の突条を設けることにより必要な圧入代を確保する構成としてもよい。
図19には、さらに別形態の圧入構造(相対変位規制手段)が示されている。図19に示す圧入構造は、テーパ形のリブ56Tを溝孔58に圧入して左右の分割ハウジング50L,50R間に分割抵抗を持たせる構成となっている。リブ56Tは、張り出し先端側に至るほど板厚が小さくなる方向に板厚が連続的に変化している。係るテーパ形のリブ56Tを溝孔58に圧入することによっても、左右の分割ハウジング50L,50R間に分離抵抗を持たせて突き合わせ面J間の振動(擦れ)を抑制して発熱を抑制することができる。
以上説明したように、左右の分割ハウジング50L,50Rには、突き合わせ面J間の相対変位(擦れ)を抑制して発熱を抑制するための手段として、相対変位規制手段71,72,73,74,75により相互の分離抵抗を持たせる工夫がなされている。第1実施形態と同じく、第2〜第5実施形態の圧入構造、あるいは図17〜図19に示す圧入構造を採用する場合においても、左右の分割ハウジング50L,50R間の分離抵抗(突き合わせ状態保持力)は、例えば一方の分割ハウジング50L(50R)を把持して当該ハウジング50を水平姿勢に保持したときに、他方の分割ハウジング50R(50L)がその自重により分離されない(落下しない)程度の保持力に設定することにより、突き合わせ面J相互の振動(擦れ)を効率よく低減でき、これにより発熱を抑制することができる。
また、第1実施形態では、グリップ部ハウジング53の上側のボス受け部62について相対変位規制手段71を設けた構成を例示したが、合計9箇所のボス受け部62のうち、その他の部位のボス受け部62、若しくは複数個所のボス受け部62について、圧入突部71aを設けて分離抵抗を持たせる構成とすることができる。この点は、第2実施形態の以降の圧入構造についても同様であり、グリップ部ハウジング53の上縁側のリブ56に圧入代を設け、あるいは同リブ56付近に圧入ピン73aを打ち込む構成を例示したが、合計7箇所のリブ56のうち、その他のリブ56あるいは複数個所のリブ56について例示した圧入構造を適用することができる。
さらに、リブ56に圧入代を確保する構成を例示したが、溝孔58側にリブ56を圧入するための圧入代を設ける構成としてもよい。
各実施形態の動力工具1については、上記例示した種々形態の相対変位規制手段に加えてさらに様々な振動対策及び落下時等の衝撃緩和対策が施されている。図20には、ハウジング50に対する機構部20からの振動の伝達を抑制するための工夫が示されている。ハウジング50の機構部ハウジング52に相当する部位において左右分割ハウジング50L,50Rの内面前部には、機構部ケース21の振動を抑制するための第1緩衝部81が設けられている。図示するように第1緩衝部81は、左右の分割ハウジング50L,50Rの機構部ケース21の周囲に相当する部位に左右対称に設けられている。図5及び図20に示すように第1緩衝部81は、片側4本の緩衝突部81aを有している。4本の緩衝突部81aは、周方向に適宜間隔をおいて平行に配置されており、それぞれ前後に長く形成されている。各緩衝突部81aは、外面側の弾性樹脂層55と同じく弾性樹脂を素材として当該分割ハウジング50Rの成形時に二色成形等の手段により一体に成形されている。
ハウジング50に対する機構部20の組み付け状態において、上記の各緩衝突部81aが機構部ケース21の外面に押圧される。機構部ケース21は、左右の第1緩衝部81を介してハウジング50に保持されている。第1緩衝部81により機構部20において発生する振動であって主として揺動アーム23の揺動動作により発生する振動が吸収されて、ハウジング50の振動が低減される。第1緩衝部81により左右の分割ハウジング50L,50Rの振動が低減されることにより、突き合わせ面Jの擦れが低減され、これにより同部位での発熱が抑制される。
図21に示すようにハウジング50の本体部ハウジング51に相当する部位において左右分割ハウジング50L,50Rの内面には、電動モータ11の振動を吸収するための第2緩衝部82が設けられている。第2緩衝部82は、左右の分割ハウジング50L,50Rの内面に沿って設けた左右一対のゴムシート82aを有している。ハウジング50に対する電動モータ11の組み付け状態において、適度な弾性を有する左右一対のゴムシート82aがモータケース11aの外周面に押し当てられることにより、当該電動モータ11で発生する振動が吸収されてハウジング50の振動が低減される。第2緩衝部82により左右の分割ハウジング50L,50Rの振動が提言されることにより、突き合わせ面Jの擦れが低減され、これにより同部位での発熱が抑制される。
図22に示すようにハウジング50の本体部ハウジング51に相当する部位において左右分割ハウジング50L,50Rの内面には、それぞれモータケース11aの外面との間の隙間を塞ぐ通気シール部83が設けられている。通気シール部83は、左右の分割ハウジング50L,50Rの内面に沿って一体に設けられている。
排気窓11dの前側において、左右の通気シール部83により左右の分割ハウジング50L,50Rの内面とモータケース11aの外面との間の隙間が塞がれることにより、排気窓11dから排出されたモータ冷却風(排気)が前側へ流れて再度モータケース11a内に吸入されてしまうことがなくなり、この点で当該電動モータ11の排気効率を高めることができ、ひいては当該電動モータ11の冷却効率を高めることができる。排気窓11dの後側にも同様の通気シール部を配置することにより、排気効率及び冷却効率を一層高めることができる。
左右の通気シール部83は、ハウジング50の外面に被覆される弾性樹脂層55の成形時に、左右の分割ハウジング50L,50Rのそれぞれに設けた樹脂流し込み口50cを経て溶融樹脂材を内面側に流し込ませて成形されている。このため、左右の通気シール部83は、それぞれ外面側の弾性樹脂層55と同じ弾性素材で同時に成形されている。
図23に示すようにハウジング50の本体部ハウジング51の後部に相当する部位において左右の分割ハウジング50L,50Rの内面には、スピードコントローラ31の振動を低減し、衝撃を緩和するための第4緩衝部84が設けられている。第4緩衝部84は、スピードコントローラ31の左右両側部に当接される左右一対の緩衝体84aを備えている。スピードコントローラ31が左右側部に当接された緩衝体84aを介してハウジング50の内部に支持されることにより、当該スピードコントローラ31への振動を低減することができ、また落下時等の衝撃を緩和することができ、これにより当該スピードコントローラ31の耐久性を高めてその誤作動等を未然に防止することができる。
前記通気シール部83と同じく、第4緩衝部84の緩衝体84aは、ハウジング50の外面に被覆される弾性樹脂層55の成形時に、左右の分割ハウジング50L,50Rのそれぞれに設けた樹脂流し込み口50dを経て溶融樹脂材を内面側に流し込ませて成形されている。このため、左右の緩衝体84aは、それぞれ外面側の弾性樹脂層55と同じ弾性素材で同時に成形されている。
図24に示すようにハウジング50の電源部ハウジング54に相当する部位において左右の分割ハウジング50L,50Rの内面には、メインコントローラ43の振動を低減するための第5緩衝部85が設けられている。第5緩衝部85は、メインコントローラ43の角部付近に当接される合計4個の緩衝体85aを備えている。緩衝体85aは、それぞれブロック体形を有している。第5緩衝部85の緩衝体85aも通気シール部83、第4緩衝部84と同じく、弾性樹脂層55の成形時に樹脂流し込み口を経て同時に成形されている。メインコントローラ43が左右側部に当接された緩衝体85aを介してハウジング50の内部に支持されることにより、当該メインコントローラ43への振動を低減することができ、また落下時等の衝撃を緩和することができ、これにより当該メインコントローラ43の耐久性を高めてその誤作動等を未然に防止することができる。
以上説明した各実施形態には、さらに変更を加えて実施することができる。例えば、第1及び第2実施形態において、グリップ部ハウジング53の上側のねじ結合部60についてねじボス部61をボス受け部62の挿通孔62aに圧入する構成を例示したが、その他のねじ結合部60について例示した圧入構造を適用することができ、1箇所に限らず複数個所(例えば3箇所)のねじ結合部60について例示した圧入構造を適用することができる。
また、第1実施形態ではボス受け部62の挿通孔62aに圧入突部71aを設け、第2実施形態では挿通孔62aにゴムブッシュ72aを介在させることによりねじボス部61を圧入する構成を例示したが、ねじボス部61の外形寸法に直接圧入代を設定してボス受け部62の挿通孔62aに圧入する構成、あるいはねじボス部61をテーパピン形状に設けて挿通孔62aに圧入する構成としてもよい。
さらに、第3実施形態では、グリップ部ハウジング53の上側のねじ結合部60付近において分割ハウジング50L,50R間に圧入ピン73aを圧入する構成を例示したが、その他の部位あるいは複数個所において分割ハウジング50L,50R間に同様の圧入ピンを圧入して分離抵抗を持たせる構成としてもよい。
また、第4及び第5実施形態では、グリップ部ハウジング53の上縁側のリブ56について溝孔58に圧入する構成を例示したが、その他の部位のリブ56あるいは複数個所のリブ56について溝孔58に圧入して分割ハウジング50L,50R間に分離抵抗を持たせるする構成としてもよい。要は、突き合わせ面J相互の擦れ(振動)が最も大きくなることが想定される部位を中心にして適宜箇所に例示した相対変位規制手段70を適用して分割ハウジング50L,50R間に適度な分離抵抗を持たせることにより、突き合わせ面J相互の突き合わせ面方向の擦れを低減して発熱を抑制することができる。
さらに、動力工具としてマルチツールと称される多機能電動工具を例示したが、震動ドリルやねじ締め機、あるいは切断機等その他の電動工具にも広く適用することができる。電動工具の電源は、例示したバッテリパック(充電式)のほか、商用100Vの交流電源を電源とする電動工具についても適用することができる。
また、動力工具1のハウジング50として左右の分割ハウジング50L,50Rを突き合わせた半割り構造のハウジング50を例示したが、円筒形の本体ハウジングの前部に結合するフロントハウジングや後部に結合する後部ハウジングと本体ハウジングとの突き合わせ面、あるいはピストル形の動力工具における左右半割り構造のグリップ部ハウジングの突き合わせ面等についても例示した相対変位規制手段70を適用することにより当該突き合わせ面相互の擦れ(振動)を低減して発熱を抑制することができる。