JP6954554B2 - 光硬化性樹脂組成物の硬化物の製造方法および光照射装置 - Google Patents
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Description
図1は、実施の形態に係る光照射装置10の構成を示す上面図である。光照射装置10は、複数の発光ユニット12を備える。発光ユニット12は、複数の発光素子14と、ユニット基板20とを有する。光照射装置10は、複数の発光ユニット12が並んで配置されるモジュール型の発光装置である。
図8は、変形例に係る光照射装置110の構成を示す上面図である。本変形例では、ベース基板130を上述の実施の形態に係るベース基板30よりも大型化することにより、より多くの発光ユニット12を配置できるようにしている。具体的には、4×8=32個の発光ユニット12を配置できるような大きさを有するベース基板130としている。光照射装置110は、8枚の配線基板40a〜40gと8枚の放熱板50を備える。本変形例によれば、ベース基板130の大きさを変えることで、上述の実施の形態に係る発光ユニット12、配線基板40および放熱板50を流用してサイズの異なる光照射装置110を提供することができる。
図9は、別の変形例に係る光照射装置210の構成を示す上面図である。本変形例では、ベース基板230の形状を細長くすることにより、上述の実施の形態とは異なる形状の光照射装置210としている。具体的には、8個の発光ユニット12が一列に配置できるような形状のベース基板230としている。光照射装置210は、二枚の配線基板40a,40bと二枚の放熱板50を備える。本変形例によれば、ベース基板230の形状を変えることで、上述の実施の形態に係る発光ユニット12、配線基板40および放熱板50を流用して形状の異なる光照射装置210を提供することができる。
実施の形態に係る光硬化性樹脂組成物を調製し、調製した組成物に、上述した光照射装置10から深紫外光を照射して硬化物を製造した実施例について説明する。なお、深紫外光を発光可能なLEDを備えた光照射装置10を、従来の高圧水銀灯などの光源と区別するために、「LED光照射装置」ともいう。
光硬化性樹脂組成物の主成分である光カチオン重合可能な化合物のモノマーまたはオリゴマーとして、エポキシ基、オキセタン基、またはビニルエーテル基を含む化合物を使用可能である。以下の実施例においては、下記の化学式で表される3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチルを用いた。この化合物は、フナコシ株式会社からエポキシ樹脂作製用ビルディングブロックERL−4221として市販されている。
図10は、上記のモノマーのUVスペクトルを示す。ERL−4221のアセトニトリル溶液(5.0g/L)の紫外可視スペクトルを測定した。これは、膜厚50μmの薄膜に相当する。ERL−4221は、300nm以上の波長の光をほとんど吸収しないことが分かる。したがって、ERL−4221を光硬化性樹脂組成物のモノマーとして使用する場合、太陽光や照明光などが当たることによって生じ得る光劣化が低減された、耐光性に優れた硬化物を実現することができる。エポキシ基またはオキセタン基を有する他のカチオン重合可能な化合物などについても同様である。耐光性の観点からは、光硬化性樹脂組成物のモノマーまたはオリゴマーとして使用する化合物は、二重結合、三重結合、および芳香環を含まない、脂環式エポキシ化合物またはオキセタン系化合物であることが好ましい。
光硬化性樹脂組成物の光カチオン重合開始剤として、下記の4種類の化合物を用いた。
(1)DPTPSP(ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロリン酸塩)
図11は、上記の光カチオン重合開始剤のUVスペクトルを示す。それぞれの光カチオン重合開始剤のアセトニトリル溶液(1.0×10−4M)の紫外可視スペクトルを測定した。それぞれの光カチオン重合開始剤のアセトニトリル溶液(1.0×10−4M)のモル吸光係数と、ERL−4221のアセトニトリル溶液(5.0g/L)のモル吸光係数を表1に示す。DPTPSPは、300nm付近に強い吸収ピークを有するので、約260〜330nm付近の波長の光を照射することが可能な光照射装置を使用して光硬化性樹脂組成物を硬化させる場合に、とくに好適である。
図12は、実施例において深紫外光を照射するために用いた光照射装置10と、従来の光硬化性樹脂の硬化において広く用いられている高圧水銀灯のパワースペクトルを示す。265nmの波長において光強度(分光放射照度)のピークを有するLED光照射装置(以下、「265nmLED照射装置」ともいう)の放射照度は0.28mW/cm2であり、285nmにピークを有するLED光照射装置(以下、「285nmLED照射装置」ともいう)の放射照度は0.74mW/cm2であり、300nmにピークを有するLED光照射装置(以下、「300nmLED照射装置」ともいう)の放射照度は0.67mW/cm2である。高圧水銀灯の200〜400nmの波長領域における放射照度は0.74mW/cm2であり、200〜600nmの波長領域における放射照度は1.38mW/cm2であり、i線(365nm)付近の波長領域における放射照度は0.23mW/cm2である。
ERL−4221のモノマーと、光カチオン重合開始剤としてDPTPSPを、光硬化性樹脂組成物の総重量を基準として0.5重量%含む光硬化性樹脂組成物を調製した。この光硬化性樹脂組成物の液体を基材上に塗布し、スピンコートにより厚さ13μmの薄膜を形成した。形成した薄膜の膜厚は、ナノメトリックス社製M3000干渉膜厚計により測定した。この薄膜に、空気中で、3種類のLED光照射装置から深紫外光を照射した。また、対照実験として、中圧水銀灯および365nmにピークを有するLED光照射装置から光を照射した。なお、中圧水銀灯から発せられる400nm以上の波長領域の光は、DPTPSPにより吸収されないことが明らかであるから、フィルターにより遮蔽せずに薄膜に照射しているが、照射量は、上述した200〜400nmの波長領域の放射照度に基づいて算出している。赤外線吸収スペクトルの例として、0.5重量%のDPTPSPを含むERL−4221の薄膜の、深紫外光照射前の空気中におけるFT−IRスペクトルと、光強度が0.74mW/cm2の285nmの深紫外光を10分間照射した後の空気中におけるFT−IRスペクトルを図14に示す。ERL−4221の二重結合に由来する950〜1000cm−1付近の吸光度の減少から反応率を算出した。
ERL−4221のモノマーと、上記の4種類の光カチオン重合開始剤のそれぞれを、光硬化性樹脂組成物の総重量を基準として0.5重量%含む光硬化性樹脂組成物を調製した。この光硬化性樹脂組成物の液体を基材上に塗布し、スピンコートにより厚さ13μmの薄膜を形成した。形成した薄膜の膜厚は、ナノメトリックス社製M3000干渉膜厚計により測定した。この薄膜に、空気中で、上記の3種類のLED光照射装置から深紫外光を照射した。また、対照実験として、中圧水銀灯および365nmにピークを有するLED光照射装置から光を照射した。なお、中圧水銀灯から発せられる400nm以上の波長領域の光は、上記の4種類の光重合開始剤により吸収されないことが明らかであるから、フィルターにより遮蔽せずに薄膜に照射している。光の照射後、赤外線分光装置により薄膜の赤外線吸収スペクトルを測定し、反応率を算出した。実験結果を図16に示す。図16に示したグラフの縦軸は、反応率を露光量で除したものであり、硬化速度を示す。
図18は、薄膜硬化における光カチオン重合開始剤の対アニオン依存性を示す。■はヘキサフルオロアンチモン酸イオン(SbF6 −)を対アニオンとした光カチオン重合開始剤のデータを示し、+はヘキサフルオロリン酸イオン(PF6 −)を対アニオンとした光カチオン重合開始剤のデータを示し、▲はトリフルオロメタンスルホン酸イオン(CF3SO3 −)を対アニオンとした光カチオン重合開始剤のデータを示す。対アニオンの酸性度の高い順(SbF6 −>PF6 −>CF3SO3 −)に高い硬化速度を示し、従来から使用されていた光源を使用した場合と同じ傾向となった。
図19は、薄膜硬化における雰囲気依存性を示す。光源として254nmLED光照射装置、285nmLED光照射装置、300nmLED光照射装置のいずれを使用した場合も、空気中で光を照射した場合であっても、窒素中で光を照射した場合と同等またはそれ以上の硬化速度を示した。カチオン系においては、ラジカル系で見られるような空気中の酸素による硬化阻害は起こらず、硬化雰囲気を自由に選択できることが確認された。
図20は、実施例の光硬化性樹脂組成物の、膜厚が13μmおよび200μmの薄膜に、285nm光照射装置により光を照射したときの反応率と露光量との関係を示す。本図は、図15に示した実験結果と図17に示した実験結果を同じスケールに変換して重ねたものである。上記の条件下では、膜厚が13μmの薄膜の方が、膜厚が200μmの薄膜よりも、効率良く速やかに硬化させることができることが分かる。これは、膜厚が厚くなるにつれて、照射光が薄膜の深部にまで到達しにくくなるからであると考えられる。
光硬化性樹脂組成物の硬化物を製造する際に、光カチオン重合可能なモノマーまたはオリゴマーの種類及び量、光カチオン重合開始剤の種類及び量、照射する光の波長、強度、照射時間、及び露光量、膜の厚さ、要求される膜の機械的特性を得るために必要な反応率などの因子は、相互に影響しうるので、硬化物を使用する製品の種類、大きさ、要求される機械的特性、使用環境などに応じて必須となる因子をまず決定し、決定された因子に合わせて他の因子を設計すればよい。例えば、耐光性が要求される応用においては、実施例において説明したように、脂環式エポキシ樹脂をモノマーまたはオリゴマーとして使用するのが好適であるから、まずモノマーまたはオリゴマーの種類を決定し、要求される機械的特性や、使用する光照射装置などに合わせて、光カチオン重合開始剤の種類、膜の厚さなどを決定すればよい。
(5)TPSA(トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩)
Claims (8)
- 重合体の構成単位となる光カチオン重合可能な化合物のモノマーまたはオリゴマーと、
光カチオン重合開始剤と、
を含む光硬化性樹脂組成物を含む膜に、深紫外光を発光可能なLEDから発せられる光を照射することにより、該光硬化性樹脂組成物を硬化させるステップを備え、
前記膜の前記LEDから発せられる光の透過率が10%以上となるように、前記光カチオン重合可能な化合物の種類又は量、前記光カチオン重合開始剤の種類又は量、又は前記膜の厚さが調整され、
該光硬化性樹脂組成物を硬化させるステップにおいて、異なる波長をピークとする光を照射可能な複数の種類の光照射装置を用いて該光硬化性樹脂組成物を硬化させ、
該光硬化性樹脂組成物を硬化させるステップは、
該光硬化性樹脂組成物を含む膜に深紫外領域の第1の波長の光を照射することにより、前記膜の表面付近の該光硬化性樹脂組成物を硬化させるステップと、
前記膜に前記第1の波長よりも長い第2の波長の光を照射することにより、前記膜の内部の該光硬化性樹脂組成物を硬化させるステップと、
を含む
ことを特徴とする光硬化性樹脂組成物の硬化物の製造方法。 - 前記光カチオン重合可能な化合物は、エポキシ基、オキセタン基、またはビニルエーテル基を含むことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
- 前記LEDから発光される深紫外光の波長が200〜350nmであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の製造方法。
- 深紫外光を発光可能なLEDを含む複数の光源から光硬化性樹脂組成物に光を照射することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の製造方法。
- 基材上に前記光硬化性樹脂組成物の膜を形成するステップを更に備え、
前記膜の厚さは20μm以下であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の製造方法。 - 前記モノマーまたはオリゴマーの種類又は量、前記光カチオン重合開始剤の種類又は量、照射する光の波長、強度、又は照射時間、露光量、前記膜の厚さ、或いは要求される前記膜の機械的特性を得るために必要な反応率を含む因子のうち、該光硬化性樹脂組成物の硬化物を使用する製品の種類、大きさ、要求される機械的特性、又は使用環境に応じて必須となる因子を決定するステップと、
決定された因子に合わせて他の因子を設計するステップと、
をさらに備えることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の製造方法。 - 異なる波長をピークとする深紫外光を発光可能な複数の種類のLEDを備え、
重合体の構成単位となる光カチオン重合可能な化合物のモノマーまたはオリゴマーと、光カチオン重合開始剤と、を含む光硬化性樹脂組成物を含む、前記LEDから発せられる光の透過率が10%以上である膜に、前記LEDから発光された第1の波長の深紫外光を照射することにより、前記膜の表面付近の該光硬化性樹脂組成物を硬化させた後、前記膜に前記LEDから発光された前記第1の波長よりも長い第2の波長の深紫外光を照射することにより、前記膜の内部の該光硬化性樹脂組成物を硬化させる
ことを特徴とする光照射装置。
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