JP6952350B2 - インスリン分泌促進剤又はインスリン抵抗性改善剤 - Google Patents

インスリン分泌促進剤又はインスリン抵抗性改善剤 Download PDF

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    • A61P5/50Drugs for disorders of the endocrine system of the pancreatic hormones for increasing or potentiating the activity of insulin

Description

本発明は、後述する式(I)で表される化合物及びその薬理学的に許容される塩(以下、これらを総称して「本件硫酸化合物類」ということがある)から選択される1種又は2種以上の化合物を有効成分として含有する、インスリン分泌の促進用剤又はインスリン抵抗性の改善用剤や、本件硫酸化合物類から選択される1種又は2種以上の化合物を有効成分として含有する、インスリン分泌低下又はインスリン抵抗性に起因する疾患の予防用剤又は改善用剤や、本件硫酸化合物類から選択される1種又は2種以上の化合物を有効成分として含有する、GATAにより調節される転写の活性化剤に関する。
糖尿病は、持続的な高血糖状態を伴う疾患である。世界保健機関(WHO)によると、世界の糖尿病患者数は年々増加しており、2014年時点では、4億2200万人に達しているとの研究結果を明らかにしている。糖尿病患者数の増加に伴い、糖尿病治療薬の市場規模も拡大しており、日・米・欧における糖尿病治療薬の市場規模は、2014年時点では、3兆5000億円を超えている。
インスリンは、膵臓から体内に分泌されるホルモンの一種であり、血糖値を低下させる作用を有する。糖尿病における持続的な高血糖は、遺伝的要因や環境的要因により、インスリンが欠乏したり、その作用が阻害された結果生じることが知られている。
糖尿病の治療は、軽症の場合、主に、食事療法、運動療法、肥満等の体質改善などが行われる。症状がさらに進行した場合、インスリン、インスリン分泌促進作用を有する物質、又はインスリン抵抗性の改善作用を有する物質を注射して、血糖値をコントロールする薬物療法が行われる。インスリン分泌促進作用を有する物質として、例えば、ピロリジジン化合物(特許文献1)、ポリグリセリン脂肪酸エステル(特許文献2)、ロズマリン酸(特許文献3)等が報告されている。また、インスリン抵抗性の改善作用を有する物質として、例えば、リンゴ果実圧搾残渣及びローズマリー抽出物(特許文献4)、トラニラスト(N−(3,4−ジメトキシシンナモイル)アントラニル酸)(特許文献5)、アディポネクチン(特許文献6)等が報告されている。しかしながら、本件硫酸化合物類と、インスリン分泌促進作用やインスリン抵抗性改善作用との関連性についてはこれまで知られていなかった。
特開2016−34929号公報 特開2012−140406号公報 特開2005−139136号公報 特開2016−000707号公報 特開2009−120607号公報 国際公開2003/63894号パンフレット
本発明の課題は、インスリン分泌を効果的に促進する作用を有するインスリン分泌促進剤や、インスリン抵抗性を効果的に改善する作用を有するインスリン抵抗性改善剤や、インスリン分泌を効果的に促進したり、インスリン抵抗性を効果的に改善することにより、血糖降下を効果的に促進する作用を有する、インスリン分泌低下又はインスリン抵抗性に起因する疾患の予防又は改善剤や、GATAにより調節される転写レベルを上昇させる作用を有する活性化剤を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を続けている。その過程において、本件硫酸化合物類が、インスリン分泌を効果的に促進する作用を有すること、インスリン抵抗性を効果的に改善する作用を有すること、血糖降下を効果的に促進する作用を有することを、及びGATAにより調節される転写レベルを上昇させる作用を有することを、たまたま見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕下記式(I)
Figure 0006952350
(式中、Aは、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルキルカルボニル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のキノリニル基、置換若しくは無置換のウンベリフェリル基、又は置換若しくは無置換のステロイド残基を表し、上記各基が置換基を有する場合、当該置換基は、C1−6アルキル基、フェニル基、置換フェニル基、C1−6アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルデヒド基、アセチル基、カルボキシ−C1−6アルキル基、ヒドロキシ−C1−6アルキル基、ジヒドロキシ−C1−6アルキル基、カルバモイル−C1−6アルキル基、並びに末端の炭素原子がカルボキシ及びアミノによって置換されたC1−6アルキル基からなる群より選択される1若しくは2以上の基を意味する)
で表される化合物及びその薬理学的に許容される塩から選択される1種又は2種以上の化合物を有効成分として含有することを特徴とするインスリン分泌促進剤又はインスリン抵抗性改善剤。
〔2〕化合物が、下記のいずれかの化合物であることを特徴とする上記〔1〕に記載のインスリン分泌促進剤又はインスリン抵抗性改善剤。
Figure 0006952350
〔3〕経口投与することを特徴とする上記〔1〕又は〔2〕に記載のインスリン分泌促進剤又はインスリン抵抗性改善剤。
〔4〕下記式(I)
Figure 0006952350
(式中、Aは、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルキルカルボニル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のキノリニル基、置換若しくは無置換のウンベリフェリル基、又は置換若しくは無置換のステロイド残基を表し、上記各基が置換基を有する場合、当該置換基は、C1−6アルキル基、フェニル基、置換フェニル基、C1−6アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルデヒド基、アセチル基、カルボキシ−C1−6アルキル基、ヒドロキシ−C1−6アルキル基、ジヒドロキシ−C1−6アルキル基、カルバモイル−C1−6アルキル基、並びに末端の炭素原子がカルボキシ及びアミノによって置換されたC1−6アルキル基からなる群より選択される1若しくは2以上の基を意味する)
で表される化合物及びその薬理学的に許容される塩から選択される1種又は2種以上の化合物を有効成分として含有することを特徴とする、インスリン分泌低下又はインスリン抵抗性に起因する疾患の予防又は改善剤。
〔5〕化合物が、下記のいずれかの化合物であることを特徴とする上記〔4〕に記載の予防又は改善剤。
Figure 0006952350
〔6〕経口投与することを特徴とする上記〔4〕又は〔5〕に記載の予防又は改善剤。
〔7〕インスリン分泌低下又はインスリン抵抗性に起因する疾患が、糖尿病であることを特徴とする上記〔4〕〜〔6〕のいずれかに記載の予防又は改善剤。
〔8〕下記式(I)
Figure 0006952350
(式中、Aは、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルキルカルボニル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のキノリニル基、置換若しくは無置換のウンベリフェリル基、又は置換若しくは無置換のステロイド残基を表し、上記各基が置換基を有する場合、当該置換基は、C1−6アルキル基、フェニル基、置換フェニル基、C1−6アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルデヒド基、アセチル基、カルボキシ−C1−6アルキル基、ヒドロキシ−C1−6アルキル基、ジヒドロキシ−C1−6アルキル基、カルバモイル−C1−6アルキル基、並びに末端の炭素原子がカルボキシ及びアミノによって置換されたC1−6アルキル基からなる群より選択される1若しくは2以上の基を意味する)
で表される化合物及びその薬理学的に許容される塩から選択される1種又は2種以上の化合物を有効成分として含有することを特徴とする、GATAにより調節される転写の活性化剤。
〔9〕化合物が、下記の化合物であることを特徴とする上記〔8〕に記載の活性化剤。
Figure 0006952350
また本発明の実施の他の形態として、本件硫酸化合物類から選択される1種又は2種以上の化合物を、インスリン分泌低下に起因する疾患の予防又は改善(治療)剤を必要とする患者に投与することにより、インスリン分泌低下に起因する疾患を予防又は改善(治療)する方法や、インスリン分泌低下に起因する疾患の予防又は改善(治療)剤として使用するための、本件硫酸化合物類から選択される1種又は2種以上の化合物や、インスリン分泌低下に起因する疾患の予防又は改善(治療)における使用のための、本件硫酸化合物類から選択される1種又は2種以上の化合物や、インスリン分泌低下に起因する疾患の予防又は改善(治療)剤を製造するための、本件硫酸化合物類から選択される1種又は2種以上の化合物の使用を挙げることができる。
また本発明の実施の他の形態として、本件硫酸化合物類から選択される1種又は2種以上の化合物を、インスリン抵抗性に起因する疾患の予防又は改善(治療)を必要とする患者に投与することにより、インスリン抵抗性に起因する疾患を予防又は改善(治療)する方法や、インスリン抵抗性に起因する疾患の予防又は改善(治療)剤として使用するための、本件硫酸化合物類から選択される1種又は2種以上の化合物や、インスリン抵抗性に起因する疾患の予防又は改善(治療)における使用のための、本件硫酸化合物類から選択される1種又は2種以上の化合物や、インスリン抵抗性に起因する疾患の予防又は改善(治療)剤を製造するための、本件硫酸化合物類から選択される1種又は2種以上の化合物の使用を挙げることができる。
また本発明の実施の他の形態として、本件硫酸化合物類から選択される1種又は2種以上の化合物を、GATAにより調節される転写レベルの低下に起因する疾患の予防又は改善(治療)を必要とする患者に投与することにより、GATAにより調節される転写レベルの低下に起因する疾患を予防又は改善(治療)する方法や、GATAにより調節される転写レベルの低下に起因する疾患の予防又は改善(治療)剤として使用するための、本件硫酸化合物類から選択される1種又は2種以上の化合物や、GATAにより調節される転写レベルの低下に起因する疾患の予防又は改善(治療)における使用のための、本件硫酸化合物類から選択される1種又は2種以上の化合物や、GATAにより調節される転写レベルの低下に起因する疾患の予防又は改善(治療)剤を製造するための、本件硫酸化合物類から選択される1種又は2種以上の化合物の使用を挙げることができる。
本発明によると、インスリン分泌を効果的に促進させたり、インスリン抵抗性を効果的に改善させたり、血糖降下を効果的に促進させたり、GATAにより調節される転写を活性化させることにより、インスリン分泌低下、インスリン感受性低下、高血糖、及び/又はGATAにより調節される転写レベルの低下を抑制又は予防し、インスリン分泌、インスリンに対する感受性、及び/又は血糖値を正常に調節することができるため、インスリン分泌低下又はインスリン抵抗性に起因する疾患や、GATAにより調節される転写レベルの低下に起因する疾患の予防又は改善(治療)に有用である。
グルコースで刺激したラットランゲルハンス氏島(「ラ氏島」、「膵ラ氏島」、「膵島」ともいう)由来細胞株INS−1eを、本件硫酸化合物類(硫酸ナトリウムフェニル[PS])存在下又は非存在下(溶媒の脱イオン水[HO]存在下)で培養したときのインスリン濃度(分泌量)を測定した結果を示す図である。図中の「*」は、統計学的に有意差(p<0.05)があることを示す。 グルコースで刺激したマウス膵ラ氏島を、本件硫酸化合物類(硫酸ナトリウムフェニル[100μM PS])存在下又は非存在下(溶媒の脱イオン水[Control]存在下)で培養したときのインスリン分泌量(図2A)、タンパク質量で補正したインスリン分泌量(図2B)、当該マウス膵ラ氏島における全インスリン含量(図2C)、及びインスリン分泌率(全インスリン量に対する分泌したインスリンの割合)(図2D)を測定した結果を示す図である。図中の「*」は、統計学的に有意差(p<0.05)があることを示す。 図3Aは、グルコースで刺激したINS−1e細胞を、8種類の本件硫酸化合物類(硫酸ナトリウムフェニル[PS]、硫酸カリウムp−クレゾール[#1]、硫酸カリウムp−クロロフェノール[#8]、硫酸カリウムp−ニトロフェノール[#11]、硫酸カリウムo−クレゾール[#14]、硫酸カリウムキノリノール[#21]、硫酸カリウム1−ナフトール[#22]、及び4−硫酸カリウムジヒドロフェルラ酸[#24])存在下、又は非存在下(溶媒の脱イオン水[dH2O]存在下)で培養したときの、タンパク質量で補正したインスリン分泌量を測定した結果を示す図である。図3Bは、グルコースで刺激したINS−1e細胞を、9種類の本件硫酸化合物類(硫酸カリウム2−ナフトール[#20]、硫酸カリウムアンドロステロン[#23]、硫酸カリウムシクロヘキサノール[#34]、硫酸カリウムテストステロン[#35]、硫酸カリウム2−(4−ヒドロキシフェニル)アセトアミド[#37]、硫酸カリウムo−メトキシフェニル[#42]、硫酸カリウム4−エチルフェニル[#48]、硫酸カリウムバニリン[#50]、及び硫酸カリウムチロシン[#69])存在下、又は非存在下(溶媒のジメチルスルホキシド[DMSO]存在下)で培養したときの、タンパク質量で補正したインスリン分泌量を測定した結果を示す図である。図中の「*」及び「**」は、コントロールの溶媒(脱イオン水又はDMSO)に対して、それぞれ統計学的に有意差(p<0.05、及びp<0.01)があることを示す。 硫酸ナトリウムフェニルを投与した糖尿病モデルマウス(KK−Ay マウス)(図中の「PS」)、又は硫酸ナトリウムフェニル非投与(溶媒の脱イオン水投与)のKK−Ay マウス(図中の「水」)を、グルコース負荷試験(GTT;Glucose Tolerance Test)し、血中インスリン濃度を測定した結果を示す図である。横軸は、グルコース負荷後の経過時間(分)を示す。また、図中の「*」は、統計学的に有意差(p<0.05)があることを示す。 硫酸ナトリウムフェニルを投与したKK−Ay マウス(図中の「PS」)、又は硫酸ナトリウムフェニル非投与(溶媒の脱イオン水投与)のKK−Ay マウス(図中の「水」)を、インスリン負荷試験(IPTT;Insulin Tolerance Test)し、血糖値レベルを測定した結果を示す図である。横軸は、インスリン負荷後の経過時間(分)を示す。縦軸の「血糖値レベル」は、インスリン負荷直後(0分)の血糖値を1としたときの相対値として示す。また、図中の「*」は、統計学的に有意差(p<0.05)があることを示す。 腎臓由来エリスロポエチン産生細胞(REP細胞;renal erythropoietin-producing cell)株を、本件硫酸化合物類(硫酸ナトリウムフェニル[PS])存在下又は非存在下(溶媒の脱イオン水[HO]存在下)で培養したときのGATAによる転写活性化レベルを測定した結果を示す図である。
本発明のインスリン分泌促進剤は、「インスリン分泌を促進するため」という用途が限定された、本件硫酸化合物類から選択される1種又は2種以上の化合物を有効成分として含有する剤(以下、「本件インスリン分泌促進剤」ということがある)であり、また、本発明のインスリン抵抗性改善剤は、「インスリン抵抗性を改善するため」という用途が限定された、本件硫酸化合物類から選択される1種又は2種以上の化合物を有効成分として含有する剤(以下、「本件インスリン抵抗性改善剤」ということがある)であり、また、本発明のインスリン分泌低下又はインスリン抵抗性に起因する疾患の予防又は改善剤は、「インスリン分泌低下又はインスリン抵抗性に起因する疾患を予防又は改善するため」という用途が限定された、本件硫酸化合物類から選択される1種又は2種以上の化合物を有効成分として含有する剤(以下、「本件予防/改善剤」ということがある)であり、また、本発明のGATAにより調節される転写の活性化剤は、「GATAにより調節される転写を活性化するため」という用途が限定された、本件硫酸化合物類から選択される1種又は2種以上の化合物を有効成分として含有する剤(以下、「本件転写活性化剤」ということがある)である(これら剤を総称して、「本件剤」ということがある)。本件剤には、医薬品(インスリン分泌促進用製剤、インスリン抵抗性改善[治療]用製剤、インスリン分泌低下又はインスリン抵抗性に起因する疾患の予防用又は改善[治療]用製剤、GATAにより調節される転写の活性用製剤)の他、健康補助食品、保健機能食品、サプリメント等の特定の機能を有し、健康維持などを目的として摂食される医薬品類似の(食品)組成物や機能性食品も含まれる。
本発明において、「インスリン分泌促進」とは、膵島由来の細胞(β細胞等)から分泌されるインスリンの量(例えば、血中のグルコース濃度の上昇に伴い分泌されるインスリンの量)が増加することを意味する。「インスリン分泌促進」の有無は、グルコース負荷試験(GTT;Glucose Tolerance Test)を行い、インスリン濃度を測定することにより確認・評価することができる。
本発明において、「インスリン抵抗性」とは、インスリンの感受性、より具体的には、インスリンの作用効果が低下(悪化)した状態を意味する。「インスリン抵抗性」は、インスリン受容体数の減少、インスリン拮抗物質の増加、インスリン受容体を介する細胞内へのシグナル伝達レベルの低下等が要因となる。「インスリン抵抗性」の有無は、インスリン負荷試験(IPTT;Insulin Tolerance Test)を行い、血糖値を測定することにより確認・評価することができる。
本発明において、「GATAにより調節される転写の活性化」とは、哺乳動物(例えば、ヒト)細胞において、転写因子である少なくとも1種類のGATAタンパク質が調節する遺伝子の転写(mRNAの発現)レベルが、活性化(増加)することを意味する。かかるGATAタンパク質としては、具体的には、GATA−1、GATA−2、GATA−3、GATA−4、GATA−5及びGATA−6タンパク質を挙げることができる。
本発明において用いられる化合物は、下記式(I)で表される化合物及びその薬理学的に許容される塩から選択される1種又は2種以上の化合物である。
Figure 0006952350
(式中、Aは、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルキルカルボニル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のキノリニル基、置換若しくは無置換のウンベリフェリル基、又は置換若しくは無置換のステロイド残基を表し、上記各基が置換基を有する場合、当該置換基は、C1−6アルキル基、フェニル基、置換フェニル基、C1−6アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルデヒド基、アセチル基、カルボキシ−C1−6アルキル基、ヒドロキシ−C1−6アルキル基、ジヒドロキシ−C1−6アルキル基、カルバモイル−C1−6アルキル基、並びに末端の炭素原子がカルボキシ及びアミノによって置換されたC1−6アルキル基からなる群より選択される1若しくは2以上の基を意味する)
以下、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルキルカルボニル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のキノリニル基、置換若しくは無置換のウンベリフェリル基、及び置換若しくは無置換のステロイド残基の各々を官能基ということがある。
前記に加えて、本発明の別の態様として、Aは、置換若しくは無置換のC1−6アルキル基、置換若しくは無置換のC1−6アルキルカルボニル基、置換若しくは無置換のC3−8シクロアルキル基、置換若しくは無置換のフェニル基、置換若しくは無置換のナフチル基、置換若しくは無置換のフェニルC1−6アルキル基、置換若しくは無置換のキノリニル基、置換若しくは無置換のウンベリフェリル基、置換若しくは無置換のアンドロステロン残基、置換若しくは無置換のデヒドロエピアンドロステロン残基、置換若しくは無置換のテストステロン残基、置換若しくは無置換のジヒドロテストステロン残基、置換若しくは無置換のエストロン残基、置換若しくは無置換のエストラジオール残基、又は置換若しくは無置換のエストリオール残基を表し、上記各基が置換基を有する場合、当該置換基は、C1−6アルキル基、フェニル基、置換フェニル基、C1−6アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルデヒド基、アセチル基、カルボキシ−C1−6アルキル基、ヒドロキシ−C1−6アルキル基、ジヒドロキシ−C1−6アルキル基、カルバモイル−C1−6アルキル基、並びに末端の炭素原子がカルボキシ及びアミノによって置換されたC1−6アルキル基からなる群より選択される1若しくは2以上の基を意味する。
本発明の更に別の態様として、Aは、置換若しくは無置換のC1−4アルキル基、置換若しくは無置換のC1−4アルキルカルボニル基、無置換のC5−6シクロアルキル基、置換若しくは無置換のフェニル基、置換若しくは無置換のナフチル基、置換若しくは無置換のキノリニル基、置換若しくは無置換のウンベリフェリル基、置換若しくは無置換のアンドロステロン残基、又は置換若しくは無置換のテストステロン残基を表し、上記各基が置換基を有する場合、当該置換基は、C1−4アルキル基、フェニル基、C1−4アルコキシ置換フェニル基、C1−4アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルデヒド基、アセチル基、カルボキシ−C1−4アルキル基、ヒドロキシ−C1−4アルキル基、ジヒドロキシ−C1−4アルキル基、カルバモイル−C1−4アルキル基、並びに末端の炭素原子がカルボキシ及びアミノによって置換されたC1−4アルキル基からなる群より選択される1若しくは2以上の基を意味する。
本発明の更に別の態様として、Aは、メトキシフェニル置換C1−4アルキル基、フェニル置換C1−4アルキルカルボニル基、無置換のC5−6シクロアルキル基、置換若しくは無置換のフェニル基(置換基を有する場合、当該置換基は、C1−4アルキル基、ニトロ基、ハロゲン原子、C1−4アルコキシ基、カルボキシ−C1−4アルキル基、カルバモイル−C1−4アルキル基、ヒドロキシ基、ジヒドロキシ−C1−4アルキル基、カルボキシ−C1−4アルキル基、カルボキシ基、ヒドロキシ−C1−4アルキル基、アセチル基、並びに末端の炭素原子がカルボキシ及びアミノによって置換されたC1−4アルキル基からなる群より選択される1若しくは2以上の基である)、無置換のナフチル基、無置換のキノリニル基、置換若しくは無置換のウンベリフェリル基(置換基を有する場合、当該置換基は、C1−4アルキル基である)、無置換のアンドロステロン残基、又は無置換のテストステロン残基を表す。
上記式(I)で表される化合物の薬理学的に許容される塩には、アンモニウム塩、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属との塩;アルミニウム塩、亜鉛塩、鉄塩等の金属塩;トリエチルアミン、エタノールアミン、モルホリン、ピペリジン、ジシクロへキシルアミン等の有機アミンとの塩;アルギニン、リジン等の塩基性アミノ酸との塩などが含まれ、そのような塩としては、具体的には、硫酸ナトリウムフェニル、硫酸カリウムフェニル、硫酸カルシウムフェニル、硫酸マグネシウムフェニル、硫酸アンモニウムフェニル、硫酸テトラメチルアンモニウムフェニル、硫酸アルミニウムフェニル、硫酸亜鉛フェニル、硫酸トリエチルアミンフェニル、硫酸ピペリジンフェニル、及び硫酸モルホリンフェニル、硫酸カリウムo−クレゾール、硫酸カリウムp−ニトロフェノール、硫酸カリウムp−クロロフェノール、硫酸カリウムキノリノール、硫酸カリウム1−ナフトール、硫酸カリウム2−ナフトール、硫酸カリウム4−メチルウンベリフェリル、硫酸カリウムアンドロステロン、硫酸カリウムp−クレゾール、硫酸カリウムバニリン、硫酸カリウムチロシン、4−硫酸カリウムジヒドロフェルラ酸、硫酸カリウム2−(4−ヒドロキシフェニル)アセトアミド、硫酸カリウムシクロヘキサノール、硫酸カリウム4−エチルフェニル、硫酸カリウムテストステロン、硫酸カリウムo−メトキシフェニル、硫酸カリウム4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニルグリコール、硫酸カリウムホモバニリン、4−ヒドロキシ安息香酸−4−O−硫酸カリウム、硫酸カリウムチロソール、硫酸カリウムウンベリフェリル、硫酸カリウム4−メトキシフェニルエタノール、硫酸カリウムカテコール、硫酸カリウムp−ヒドロキシフェノール、4−ヒドロキシブタン酸−O−硫酸カリウム、2,4−ジヒドロキシアセトフェノン 2−硫酸カリウム、及び3,4−ジヒドロキシフェニルグリコール O−硫酸カリウムを挙げることができる。
本発明において、「アルキル基」は、−C2n+1(式中、nは自然数である)で表される直鎖若しくは分岐鎖の1価の基を意味する。例えば、炭素数1〜20のアルキル基(C1-20アルキル基)、炭素数1〜16のアルキル基(C1-16アルキル基)、炭素数1〜12のアルキル基(C1-12アルキル基)、炭素数1〜8のアルキル基(C1-8アルキル基)、炭素数1〜6のアルキル基(C1-6アルキル基)、炭素数1〜4のアルキル基(C1-4アルキル基)等を挙げることができる。具体的なアルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基(t−ブチル基)、ペンチル基、イソペンチル基(3−メチルブチル基)、sec−ペンチル基(1−メチルブチル基)、3−ペンチル基(1−エチルプロピル基)、tert−ペンチル基(1,1−ジメチルプロピル基)、ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、オクチル基、イソオクチル基、及び1−メチルヘプチル基等が例示される。
本発明において、「アルキルカルボニル基」は、前記アルキル基にカルボニル基が結合した1価の基、即ち、−CO−C2n+1(式中、nは自然数である)で表される1価の基を意味する。例えば、アルキル基部分の炭素数が1〜20のアルキルカルボニル基(C1-20アルキルカルボニル基)、アルキル基部分の炭素数が1〜16のアルキルカルボニル基(C1-16アルキルカルボニル基)、アルキル基部分の炭素数が1〜12のアルキルカルボニル基(C1-12アルキルカルボニル基)、アルキル基部分の炭素数が1〜8のアルキルカルボニル基(C1-8アルキルカルボニル基)、アルキル基部分の炭素数が1〜6のアルキルカルボニル基(C1-6アルキルカルボニル基)、アルキル基部分の炭素数が1〜4のアルキルカルボニル基(C1-4アルキルカルボニル基)等を挙げることができる。具体的なアルキル基として、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基(ブチリル基)、sec−ブチルカルボニル基、イソブチルカルボニル基、tert−ブチルカルボニル基(t−ブチルカルボニル基)、ペンタノイル基、イソペンチルカルボニル基(3−メチルブチルカルボニル基)、sec−ペンチルカルボニル基(1−メチルブチルカルボニル基)、3−ペンチルカルボニル基(1−エチルプロピルカルボニル基)、tert−ペンチルカルボニル基(1,1−ジメチルプロピルカルボニル基)、ヘキサノイル基、2−メチルペンチルカルボニル基、3−メチルペンチルカルボニル基、2,2−ジメチルブチルカルボニル基、2,3−ジメチルブチルカルボニル基、オクタノイル基、イソオクチルカルボニル基、及び1−メチルヘプチルカルボニル基等が例示される。
本発明において、「シクロアルキル基」は、シクロアルカン(飽和な単環式の炭化水素)の任意の環炭素原子(ring carbon atom)から一個の水素原子を除去することにより得られる一価の基、即ち、C2nー1−(式中、nは3以上の自然数である)で表される環状アルカンの一価の基を意味する。例えば、炭素数3〜20のシクロアルキル基(C3-20シクロアルキル基)、炭素数3〜16のシクロアルキル基(C3-16シクロアルキル基)、炭素数3〜12のシクロアルキル基(C3-12シクロアルキル基)、炭素数3〜8のシクロアルキル基(C3-8シクロアルキル基)、炭素数3〜6のシクロアルキル基(C3-6シクロアルキル基)、炭素数5〜6のアルキル基(C5-6アルキル基)等を挙げることができる。具体的なシクロアルキル基として、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、及びシクロオクチル基等を例示することができる。
本発明において、「アリール基」は、単環式または多環式の芳香族の炭化水素の任意の環炭素原子から一個の水素原子を除去することにより得られる一価の基を意味する。具体的なアリール基として、フェニル基、トリル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラセニル基、2−アントラセニル基、1−フェナントレニル基、2−フェナントレニル基、1−ピレニル基、及び2−ピレニル基等が例示される。
本発明において、「キノリニル基」は、キノリンの任意の環炭素原子の一個の水素原子を除去することにより得られる一価の基を意味する。例えば、2−キノリニル基、3−キノリニル基、4−キノリニル基、5−キノリニル基、6−キノリニル基、7−キノリニル基、8−キノリニル基を挙げることができる。
本発明において、「ウンベリフェリル基」は、7−クマリニル基と同義である。
本発明において、「ステロイド残基」は、ステロイド骨格の環構造中に少なくとも1個のヒドロキシ基を有するステロイド化合物、例えば、3位及び17位の少なくとも一方にヒドロキシ基を有するステロイド化合物、から一個のヒドロキシ基を除去することにより得られる一価の基を意味する。かかるステロイド化合物としては、アンドロステロン、コレステロール、コール酸、エステロン、デヒドロエピアンドステロン、エストラジオール、エストリオール、テストステロン、及びジヒドロテストステロン等が例示される。
本発明において、「アルコキシ基」は、「−O−アルキル基」で表される基を意味する。アルキル基は前記のとおりの意味を有する。例えば、炭素数1〜20のアルコキシ基(C1-20アルコキシ基)、炭素数1〜16のアルコキシ基(C1-16アルコキシ基)、炭素数1〜12のアルコキシ基(C1-12アルコキシ基)、炭素数1〜8のアルコキシ基(C1-8アルコキシ基)、炭素数1〜6のアルコキシ基(C1-6アルコキシ基)、炭素数1〜4のアルコキシ基(C1-4アルコキシ基)等を挙げることができる。具体的なアルコキシ基として、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、sec−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基(t−ブトキシ基)、ペントキシ基、イソペントキシ基(3−メチルブトキシ基)、sec−ペントキシ基(1−メチルブトキシ基)、3−ペントキシ基(1−エチルプロポキシ基)、tert−ペントキシ基(1,1−ジメチルプロポキシ基)、ヘキソキシ基、2−メチルペントキシ基、3−メチルペントキシ基、2,2−ジメチルブトキシ基、2,3−ジメチルブトキシ基、オクトキシ基、イソオクトキシ基、及び1−メチルヘプトキシ基等が例示される。
本発明において、「ハロゲン原子」は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子のいずれかを意味する。
本発明において、「カルボキシアルキル基」は、アルキル基の任意の炭素原子に結合している1個の水素原子が1個のカルボキシ基に置き換わった基を意味する。アルキル基は前記のとおりの意味を有する。かかるカルボキシアルキル基として、例えば、カルボキシ−C1-12アルキル基,カルボキシ−C1-8アルキル基,カルボキシ−C1−6アルキル基、及びカルボキシ−C1-4アルキル基を挙げることができる。カルボキシがアルキル基の末端の炭素原子に結合しているカルボキシアルキル基、例えば、−CH−COOH、−CH−CH−COOH、及び−CH−CH−CH−COOH、が好ましい。なお、カルボキシアルキル基におけるカルボキシのHは、Na、K、Mg、Ca、Zn、Fe等の金属原子によって置き換わっていてもよい(例えば、−COOK、及び−COONa)。
本発明において、「ヒドロキシアルキル基」は、アルキル基の任意の炭素原子に結合している1個の水素原子が1個のヒドロキシ基に置き換わった基を意味する。アルキル基は前記のとおりの意味を有する。かかるヒドロキシアルキル基として、例えば、ヒドロキシ−C1-12アルキル基,ヒドロキシ−C1-8アルキル基,ヒドロキシ−C1−6アルキル基、及びヒドロキシ−C1-4アルキル基を挙げることができる。ヒドロキシがアルキル基の末端の炭素原子に結合しているヒドロキシアルキル基、例えば、−CH−OH、−CH−CH−OH、及び−CH−CH−CH−OH、が好ましい。
本発明において、「ジヒドロキシアルキル基」は、アルキル基の任意の炭素原子に結合している2個の水素原子が2個のヒドロキシ基に置き換わった基を意味する。前記2個の水素原子は、同一の炭素原子でも異なる炭素原子でもよい。アルキル基は前記のとおりの意味を有する。かかるジヒドロキシアルキル基として、例えば、ジヒドロキシ−C1-12アルキル基,ジヒドロキシ−C1-8アルキル基,ジヒドロキシ−C1−6アルキル基、及びジヒドロキシ−C1-4アルキル基を挙げることができる。かかるジヒドロキシアルキル基の例として、−CH(OH)−CH−OH、−CH(OH)−CH−CH−OH、及び−CH(CH−OH)−CH−OHを挙げることができる。
本発明において、「カルバモイルアルキル基」は、アルキル基の任意の炭素原子に結合している1個の水素原子が1個のカルバモイル(−CONH)基に置き換わった基を意味する。アルキル基は前記のとおりの意味を有する。かかるカルバモイルアルキル基として、例えば、カルバモイル−C1-12アルキル基,カルバモイル−C1-8アルキル基,カルバモイル−C1−6アルキル基、及びカルバモイル−C1-4アルキル基を挙げることができる。カルバモイルがアルキル基の末端の炭素原子に結合しているカルバモイルアルキル基、例えば、−CH−CONH、−CH−CH−CONH、及び−CH−CH−CH−CONH、が好ましい。
本発明において、「末端の炭素原子がカルボキシ及びアミノによって置換されたアルキル基」は、アルキル基の末端の炭素原子がカルボキシ基及びアミノ基によって置換されたアルキル基を意味する。アルキル基は前記のとおりの意味を有する。かかる末端の炭素原子がカルボキシ及びアミノによって置換されたアルキル基として、末端の炭素原子がカルボキシ及びアミノによって置換されたC1−12アルキル基、末端の炭素原子がカルボキシ及びアミノによって置換されたC1−8アルキル基、末端の炭素原子がカルボキシ及びアミノによって置換されたC1−6アルキル基、及び末端の炭素原子がカルボキシ及びアミノによって置換されたC1−4アルキル基を挙げることができる。なお、カ末端の炭素原子がカルボキシ及びアミノによって置換されたアルキル基におけるカルボキシのHは、Na、K、Mg、Ca、Zn、Fe等の金属原子によって置き換わっていてもよい(例えば、−COOK、及び−COONa)。
本発明において、ある官能基について「置換又は無置換」という場合には、その官能基が置換基を有しない場合と1又は2以上の置換基を有する場合とがあることを示している。ある官能基が置換基を有する場合、結合する置換基の個数、置換位置、及び種類は特に限定されない。ある官能基が2個以上の置換基を有する場合には、それらは同一でも異なっていてもよい。本発明において、ある官能基が置換基を有する場合、置換基の例としては、アルキル基、アリール基、置換アリール基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルデヒド基、アセチル基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、ジヒドロキシアルキル基、カルバモイルアルキル基、並びに末端の炭素原子がカルボキシ及びアミノによって置換されたアルキル基を挙げることができる。これらの置換基は前記のとおりの意味を有する。
また、本発明において、ある官能基が置換基を有する場合、置換基の例としては、C1−6アルキル基、フェニル基、置換フェニル基、C1−6アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルデヒド基、アセチル基、カルボキシ−C1−6アルキル基、ヒドロキシ−C1−6アルキル基、ジヒドロキシ−C1−6アルキル基、カルバモイル−C1−6アルキル基、並びに末端の炭素原子がカルボキシ及びアミノによって置換されたC1−6アルキル基を挙げることができる。
更に、本発明において、ある官能基が置換基を有する場合、置換基の例としては、C1−4アルキル基、フェニル基、C1−4アルコキシ置換フェニル基、C1−4アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルデヒド基、アセチル基、カルボキシ−C1−4アルキル基、ヒドロキシ−C1−4アルキル基、ジヒドロキシ−C1−4アルキル基、カルバモイル−C1−4アルキル基、並びに末端の炭素原子がカルボキシ及びアミノによって置換されたC1−4アルキル基を挙げることができる。
更に加えて、本発明において、ある官能基が置換基を有する場合、置換基の例としては、C1−4アルキル基の置換基としてメトキシフェニル基、C1−4アルキルカルボニル基の置換基としてフェニル基、フェニル基の置換基としてC1−4アルキル基、ニトロ基、ハロゲン原子、C1−4アルコキシ基、カルボキシ−C1−4アルキル基、カルバモイル−C1−4アルキル基、ヒドロキシ基、ジヒドロキシ−C1−4アルキル基、カルボキシ−C1−4アルキル基、カルボキシ基、ヒドロキシ−C1−4アルキル基、アセチル基、並びに末端の炭素原子がカルボキシ及びアミノによって置換されたC1−4アルキル基からなる群より選択される1若しくは2以上の基、並びにウンベリフェリル基の置換基としてC1−4アルキル基を挙げることができる。
本発明において用いられる式(I)で表される化合物及びその薬理学的に許容される塩の中に、幾何異性体、光学異性体等の立体異性体が存在する場合は、当該異性体、ラセミ体等の化合物はすべて本発明の化合物の範囲に包含される。
式(I)で表される本発明化合物の具体例を以下に示す。
Figure 0006952350
Figure 0006952350
Figure 0006952350
Figure 0006952350
本件剤は、必要に応じて、薬学的に許容される通常の担体、結合剤、安定化剤、賦形剤、希釈剤、pH緩衝剤、崩壊剤、等張剤、添加剤、被覆剤、可溶化剤、潤滑剤、滑走剤、溶解補助剤、滑沢剤、風味剤、甘味剤、溶剤、ゲル化剤、栄養剤等の配合成分がさらに添加されたものを例示することができる。かかる配合成分としては、具体的に、水、生理食塩水、動物性脂肪及び油、植物油、乳糖、デンプン、ゼラチン、結晶性セルロース、ガム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアルキレングリコール、ポリビニルアルコール、グリセリンを例示することができる。
本件予防/改善剤の予防又は改善対象の疾患である、インスリン分泌低下又はインスリン抵抗性に起因する疾患としては、膵臓から産生されるインスリンの分泌低下や、インスリンの抵抗性に起因して生じる疾患であればよく、例えば、肥満、耐糖能不全、高脂血症、糖尿病(例えば、1型糖尿病、2型糖尿病、膵性糖尿病)、高血糖症、高血圧、糖尿病神経障害、糖尿病腎症、糖尿病網膜症、浮腫、不安定糖尿病、脂肪萎縮、インスリンアレルギー、インスリノーマを挙げることができ、これらの中でも糖尿病が好ましい。
上記本件硫酸化合物類は、インスリン分泌、特にグルコース刺激によるインスリン分泌を効果的に促進する作用や、インスリン抵抗性を効果的に改善する作用や、血糖降下を効果的に促進する作用を有する。したがって、本件硫酸化合物類を有効成分として含有する本件インスリン分泌促進剤又は本件インスリン抵抗性改善剤は、前述のインスリン分泌低下又はインスリン抵抗性に起因する疾患の予防用若しくは改善用剤に有利に適用することができる。本件インスリン分泌促進剤、本件インスリン抵抗性改善剤、又は本件予防/改善剤を用いると、インスリン分泌低下、インスリンに対する感受性低下(悪化)、及び/又は高血糖を抑制又は予防し、インスリン分泌、インスリンに対する感受性、及び/又は血糖値を正常に調節することができる。
また、上記本件硫酸化合物類は、GATAにより調節される転写を活性化する作用を有する。したがって、本件硫酸化合物類を有効成分として含有する本件転写活性化剤は、GATAにより調節される転写レベルの低下に起因する疾患の予防又は改善剤に有利に適用することができる。本明細書において、「GATAにより調節される転写レベルの低下に起因する疾患」としては、GATAタンパク質の変異や、GATAタンパク質の結合配列(GATA配列)の変異等が要因となり、GATA配列の下流に位置する遺伝子の転写(mRNAの発現)レベルが低下することに起因する疾患であればよく、具体的には、前述のインスリン分泌低下又はインスリン抵抗性に起因する具体的な疾患のうち、GATAにより調節される転写レベルの低下に起因して生じる疾患の他、GATA(好ましくはGATA2又はGATA−3)のハプロ不全(例えば、副甲状腺機能低下症、感音性難聴、腎形成不全等)を挙げることができる。
本件剤の投与形態としては、粉末、顆粒、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、懸濁液などの剤型で投与する経口投与や、溶液、乳剤、懸濁液などの剤型を注射、又はスプレー剤の型で鼻孔内投与する非経口投与を挙げることができ、経口投与が好ましい。
本件剤の投与量は、年齢、体重、性別、症状、薬剤への感受性等に応じて適宜決定される。通常、1μg〜200mg/dayの投与量の範囲で、好ましくは2μg〜2000μg/dayの投与量の範囲で、より好ましくは3〜200μg/dayの投与量の範囲で、さらに好ましくは4〜20μg/dayの投与量の範囲で、一日あたり単回又は複数回(例えば、2〜4回)に分けて投与されるが、症状の改善の状況に応じて投与量を調節してよい。
本件硫酸化合物類は、化学合成、微生物による生産、酵素による生産等のいずれの公知の方法によっても製造することができるが、市販品を用いることもできる。例えば、本件硫酸化合物類として硫酸カリウムフェニルを用いる場合、文献(J.Feigenbaum and C.A.Neuberg J Am Chem Soc.,63,p.3529-3530(1941))に記載の「Simplified Method for the Preparation of Aromatic Sulfuric Acid Esters(芳香族硫酸エステルの簡易合成法)」にしたがって製造することができる。すなわち、氷冷した、フェノールのジメチルアニリン溶液に、均一にかき混ぜながら、塩化スルホン酸(HSOCl)を滴下する。次いで、強アルカリ性の水酸化カリウム水溶液を等量加えてアルカリ性溶液とした後、固形部分を吸引により濾別し、エーテルで十二分に洗浄する。エステル塩を残留物から熱アルコール(95%)で抽出し、アルコール溶液を加熱した漏斗で濾過した後、放冷して得られる結晶を濾取し、冷アルコールで洗浄する。最少量の熱水から再結晶して、白色の純粋な目的物(硫酸カリウムフェニル)を得ることができる。また、本件硫酸化合物類として硫酸ナトリウムフェニルを用いる場合、上述の芳香族硫酸エステルの簡易合成法において、水酸化カリウム水溶液に代えて水酸化ナトリウム水溶液を用いる方法や、本実施例に記載の合成方法にしたがって製造することができる。
前記製造方法によって、目的とする本件硫酸化合物類に対応するフェノール化合物を出発原料として、下記の化合物を製造することができる。
Figure 0006952350
1)X=2,4−ジニトロ
2)X=2,5−ジニトロ
3)X=2,3,4,5,6−ペンタフルオロ
4)X=4−ニトロ
5)X=2−ニトロ
6)X=3−ニトロ
7)X=3−クロロ
8)X=4−クロロ
9)X=2,4−ジメチル
また、目的とするアルキルサルフェートに対応するアルコールを出発原料として、前記製造方法と同様にして、下記の硫酸アルキル類を製造することができる。
Figure 0006952350
10)X=−CHC(CH
11)X=−CH(CHCH
更に、式(I)におけるAがフェニル基及びアルキル基以外の官能基の場合についても、目的とする本件硫酸化合物類に対応する、ヒドロキシ基を有する化合物を用いて、式(I)におけるAがフェニル基及びアルキル基以外の官能基を有する本件硫酸化合物類を製造することができる。以下に製造された本件硫酸化合物類を記載する。
Figure 0006952350
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
[材料]
1.硫酸ナトリウムフェニル
硫酸ナトリウムフェニルは、以下の〔1〕〜〔4〕に示す手順にしたがって製造されたものを、ナミキ商事株式会社から入手した。
Figure 0006952350
〔1〕イソブチルアルコール(1)に塩化スルフリル(SOCl)を添加して、イソブチルクロロサルフェート(2)を得た。
〔2〕ヘキサメチルジシラザンナトリウム(NaHMDS)のテトラヒドロフラン(THF)溶液にフェノールを溶解したものに、−78℃に冷却下で、撹拌しながらイソブチルクロロサルフェート(2)を滴加して、フェニルイソブチルサルフェート(3)を含む反応混合液を得た。
〔3〕フェニルイソブチルサルフェート(3)を含む反応混合液を徐々に室温に戻し、撹拌しながら、ナトリウムメトキシド(NaOMe)のメタノール溶液を添加した。
〔4〕減圧下で溶媒を除去し、残留物をエタノールで再結晶し、白色結晶として硫酸ナトリウムフェニル(4)を得た。
2.フェニルサルフェート類縁体の合成法
以下に代表例としてo-クレゾールサルフェートカリウムの合成法を示す。その他のサルフェート体の合成には合成原料に対応するフェノール類(またはアルコール類)を合成原料に用いることで目的のサルフェート体が得られる。また、合成に用いる合成原料、反応試薬は一般的な市販品である。
o−クレゾールサルフェートカリウムの合成
Figure 0006952350
ネジ付試験管(25φx150mm)に撹拌子を入れ、o−クレゾール(10mmol)と三酸化硫黄-ピリジン錯体(11mmol)とピリジン(5mL)を混合し、キャップで封管し、45℃で2時間撹拌した。室温に戻し、氷冷下にて反応液を水酸化カリウム水溶液(1M、50mL)中にゆっくり滴下した。次に、イソプロパノールを約200mL加えて冷蔵庫に終夜静置した。析出物を桐山ロートで濾取し、イソプロパノールで洗浄した。得られた固体を200mLフラスコに移し、エタノール:水=3:1の溶液を約100mL加え、超音波照射及び湯浴(>80℃)による十分な加熱溶解を行った。不溶物を濾過し、濾液を冷蔵庫に終夜静置した。析出物を濾取し、前述の溶解・沈殿操作を繰り返すことにより目的のo−クレゾールサルフェートカリウムを得た(白色粉末、収率:21%)。生成物はH−NMR、元素分析により同定した。(参考文献: Edwards, D. R.; Lohman, D. C.; Wolfenden, R. J. Am. Chem. Soc. 2012, 134, 525.)
元素分析(CKOS)
計算値:C,37.15;H,3.12.
実測値:C,37.04;H,3.11.
H−NMR(600MHz,DO)d:7.36(dd,2H,J=8.2Hz),7.29(t,1H,J=8.2,7.6Hz),7.25(t,1H,J=8.2,7.6Hz),2.33(s,3H)
3.ラ氏島由来細胞株及びラ氏島、並びに腎臓由来細胞株
ラットランゲルハンス氏島(ラ氏島、膵島)由来細胞株INS−1eは、1mM ピルビン酸ナトリウム、10mM HEPES、2mM グルタミン、50μM β-メルカプトエタノール(以上、すべてSigma-Aldrich社製)、100U/mL ペニシリン(GIBCO社製)、100μg/mL ストレプトマイシン(GIBCO社製)、及び10% 非動化FBS(GIBCO社製)を含むRPMI1640(GIBCO社製)培養液中で5%CO/20%O、37℃条件下で培養・維持した。また、マウス膵ラ氏島は、5.5mM グルコース、0.5% BSA(bovine serum albumin)、100μg/mL ストレプトマイシン(GIBCO社製)、及び10% 非動化FBS(GIBCO社製)を含むRPMI1640(GIBCO社製)培養液中で5%CO/20%O、湿度95%、37℃条件下で培養・維持した。また、REP細胞株は、100U/mL ペニシリン(GIBCO社製)、100μg/mL ストレプトマイシン(GIBCO社製)、及び10% 非動化FBS(GIBCO社製)を含むDMEM(GIBCO社製)培養液(以下、単に「10%FBS/DMEM培養液」という)中で5%CO/20%O、湿度95%、37℃条件下で培養・維持した。
[実施例1]
1.本件硫酸化合物類がインスリン分泌促進作用を有することの確認1
本件硫酸化合物類がインスリン分泌促進作用を有することを確認するために、INS−1e細胞、及びマウス膵ラ氏島を用いて解析した。
1−1 方法
1−1−1 INS−1e細胞を用いた解析
グルコース刺激によるインスリン分泌は、文献(Santini, E. et al., Diabetes 53 Suppl. 3:S79-S83, 2004)に記載の方法にしたがって行った。すなわち、12穴プレートにINS−1e細胞を10万個まき、48時間培養した後、硫酸ナトリウムフェニルを、最終濃度100μMになるように培養液に添加し、更に24時間培養した。その後、当該細胞をKRB(Krebs Ringer bicarbonate)バッファー(135mM 塩化ナトリウム、3.6mM 塩化カリウム、5mM 炭酸水素ナトリウム、0.5mM リン酸二水素ナトリウム、0.5mM 塩化マグネシウム、1.5mM 塩化カルシウム、10mM HEPES[pH 7.4]、及び0.1% BSA)中で1時間培養した後、新しいKRBバッファーで2回細胞を洗浄し、11mM グルコースを含むKRBバッファー中でさらに1時間培養した。その後、培養上清(KRBバッファー)を回収し、培養上清中のインスリン濃度を、ラットインスリンELISAキット(Mercodia社製)を用いて測定した。なお、硫酸ナトリウムフェニルに代えてコントロールとして蒸留水を用いた。
1−1−2 マウス膵ラ氏島を用いた解析
30個のマウス膵ラ氏島を、11週齢のC57BL/6Jマウスから文献(Takahashi,I. et al.,J Diabetes Investig. 3(4):362-370, 2012)に記載の方法にしたがって単離し、硫酸ナトリウムフェニルを、最終濃度100μMになるように培養液に添加し、48時間培養した。その後、当該ラ氏島を、2.8mM グルコースを含むKRBバッファー中で1時間培養し、11mM グルコースを含む新しいKRBバッファーに交換した後、さらに1時間培養した。その後、培養上清中のインスリン濃度を、ラットインスリンELISAキット(Mercodia社製)を用いて測定した。また、培養上清中の全タンパク質量は、BCAタンパク質定量用試薬(Micro-BCA Protein Assay Reagent、PIERCE社製)を用いて測定した。なお、硫酸ナトリウムフェニルに代えてコントロールとして蒸留水を用いた。
1−2 結果
グルコースで刺激したINS−1e細胞を、硫酸ナトリウムフェニル存在下で培養すると、硫酸ナトリウムフェニル非存在下で培養した場合と比べ、分泌されるインスリン量が増加することが示された(図1参照)。また、グルコースで刺激したマウス膵ラ氏島を、硫酸ナトリウムフェニル存在下で培養した場合も同様に、分泌されるインスリン量が増加することが示された(図2参照)。
[実施例2]
2.本件硫酸化合物類がインスリン分泌促進作用を有することの確認2
硫酸フェニル以外の本件硫酸化合物類についても、グルコース刺激によるインスリン分泌を増加させる作用を有することを確認するために、16種類の本件硫酸化合物類(硫酸カリウムp−クレゾール、硫酸カリウムp−クロロフェノール、硫酸カリウムp−ニトロフェノール、硫酸カリウムo−クレゾール、硫酸カリウムキノリノール、硫酸カリウム1−ナフトール、4−硫酸カリウムジヒドロフェルラ酸、硫酸カリウム2−ナフトール、硫酸カリウムアンドロステロン、硫酸カリウムシクロヘキサノール、硫酸カリウムテストステロン、硫酸カリウム2−(4−ヒドロキシフェニル)アセトアミド、硫酸カリウムo−メトキシフェニル、硫酸カリウム4−エチルフェニル、硫酸カリウムバニリン、及び硫酸カリウムチロシン)を用い、実施例1の上記「1−1−1」の項目に記載の方法にしたがって解析を行った。
その結果、グルコースで刺激したINS−1e細胞を、上記16種類の本件硫酸化合物類存在下で培養すると、上記16種類の本件硫酸化合物類非存在下で培養した場合と比べ、分泌されるインスリン量が増加することが示された(図3参照)。
以上の結果は、本件硫酸化合物類(例えば、硫酸フェニル、硫酸p−クレゾール、硫酸p−クロロフェノール、硫酸p−ニトロフェノール、硫酸o−クレゾール、硫酸キノリノール、硫酸1−ナフトール、4−硫酸ジヒドロフェルラ酸、硫酸2−ナフトール、硫酸アンドロステロン、硫酸シクロヘキサノール、硫酸テストステロン、硫酸2−(4−ヒドロキシフェニル)アセトアミド、硫酸o−メトキシフェニル、硫酸4−エチルフェニル、硫酸バニリン、硫酸チロシン等)は、ラ氏島において、グルコース刺激によるインスリン分泌を増加させる作用を有することを示している。
[実施例3]
3.本件硫酸化合物類がインスリン分泌低下やインスリン抵抗性に起因する疾患に有用であることの確認
本件硫酸化合物類が、インスリン分泌低下やインスリン抵抗性に起因する疾患に有用であることを確認するために、実施例1及び2において、インスリン分泌を増加させる作用を有することを具体的に示した本件硫酸化合物類のうち、代表例として硫酸ナトリウムフェニルを用い、糖尿病モデルマウス(KK−Ay マウス)を用いて解析した。
3−1 方法
3−1−1 グルコース負荷試験(GTT)
KK−Ay マウス6週齢(CLEA Japan,Inc)に、0.1% 硫酸ナトリウムフェニルを含む水、又は硫酸ナトリウムフェニル不含の水を給水ボトルで与え、5週間後に定法にしたがってGTT(2gグルコース/マウス体重[kg])、及び血中インスリン濃度の測定を行った。
3−1−2 インスリン負荷試験(IPTT)
KK−Ay マウス6週齢(CLEA Japan,Inc)に、0.1% 硫酸ナトリウムフェニルを含む水、又は硫酸ナトリウムフェニル不含の水を給水ボトルで与え、5週間後に定法にしたがってIPTT(1U インスリン/マウス体重[kg])、及び血糖値の測定を行った。
3−2 結果
硫酸ナトリウムフェニルを投与したKK−Ay マウスに、グルコース負荷させると、硫酸ナトリウムフェニル非投与のKK−Ay マウスに、グルコース負荷させた場合と比べ、血中インスリン濃度が増加することが示された(図4参照)。
この結果から、硫酸フェニルは、インビボ(糖尿病モデルKK−Ay マウス)において、グルコース刺激によるインスリン分泌を増加させる作用を有することが示された。
また、硫酸ナトリウムフェニルを投与したKK−Ay マウスに、インスリン負荷させると、硫酸ナトリウムフェニル非投与のKK−Ay マウスに、インスリン負荷させた場合と比べ、血糖値レベルが低下することが示された(図5参照)。
この結果は、硫酸フェニルは、インビボ(糖尿病モデルKK−Ay マウス)において、インスリン抵抗性を改善する作用を有することを示している。
実施例1〜3の結果をまとめると、本件硫酸化合物類は、ラ氏島のインスリン分泌を促進したり、インスリン抵抗性を改善することにより、血糖降下を促進すると考えられる。
[実施例4]
4.本件硫酸化合物類がGATAによる転写活性化を促進する作用を有することの確認
本件硫酸化合物類によるインスリン分泌促進作用又はインスリン抵抗性改善作用が、どのようなメカニズムで生じるかについて解析するために、本件硫酸化合物類を用いて、45種類の転写因子によるmRNAの発現レベルの変化を解析した。
4−1 方法
以下の手順〔1〕〜〔7〕に従って行った。
〔1〕Cignal transduction 45 pathways plate(QIAGEN社製)に、1ウェル当たり150μLのOpti-MEM I(GIBCO社製)を加え、軽く前後させることにより、各ウェル表面上に乾燥状態で付着した2種類のルシフェラーゼレポーターベクター(45種類の転写因子に応答して発現するホタル[firefly]ルシフェラーゼレポーターベクター、及び恒常的に発現するウミシイタケ[renilla]ルシフェラーゼレポーターベクター)を溶解した。
〔2〕0.6μLのLipofectamin 2000(Invitrogen社製)を、50μLのOpti-MEM Iに加え、室温で5分間インキュベートした後、かかるLipofectamin 2000/Opti-MEM I溶液を、上記〔1〕で調製した各ウェルに50μLずつ加え、室温で20分間インキュベートした。
〔3〕REP細胞を、3×10個/50μLの濃度となるように、抗生物質(ペニシリン及びストレプトマイシン)不含の10%FBS/DMEM培養液中に懸濁し、各ウェルに50μLずつ播種し、24時間培養した。
〔4〕各ウェルの培養液を、100μMの硫酸ナトリウムフェニルを含む0.5%FBS/DMEM培養液100μL、又はコントロールとして硫酸ナトリウムフェニル不含の10%FBS/DMEM培養液100μLに交換し、6時間培養した。
〔5〕培養液を除去し、100μLのPBSで細胞を洗浄した。
〔6〕細胞溶解用試薬であるPLB(Passive Lysis Buffer)を1倍量各ウェルに添加し、室温で15分間インキュベートした。
〔7〕Dual Luciferase Reporter Assay System(Promega社製)を使用してルシフェラーゼレポーターアッセイを行い、Fire fly及びRenillaのルシフェラーゼ量の測定は、ルミノメーターLumat LB9507(NERTHOLD TECHNOLOGIES社製)を用いて行った。転写活性化レベルは、Fireflyルシフェラーゼ量を、内部コントロールであるRenillaルシフェラーゼ量で割ることにより算出した(図6の縦軸参照)。
4−2 結果
REP細胞を、硫酸ナトリウムフェニル存在下で培養すると、硫酸ナトリウムフェニル非存在下で培養した場合と比べ、GATAにより調節されるmRNAの発現レベルが上昇することが示された(図6参照)。
この結果は、硫酸フェニル等の本件硫酸化合物類が、GATAにより調節される転写を活性化する作用を有することを示している。
また、実施例1〜3の結果を総合すると、本件硫酸化合物類が、GATAにより調節される転写を活性化した結果、氏島のインスリン分泌を促進したり、インスリン抵抗性を改善したと推測される。
本発明は、インスリン分泌低下又はインスリン抵抗性に起因する疾患、或いはGATAにより調節される転写レベルの低下に起因する疾患の予防又は改善(治療)に資するものである。

Claims (9)

  1. 下記式(I)
    Figure 0006952350
    (式中、Aは、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のフェニル基、置換若しくは無置換のナフチル基、置換若しくは無置換のキノリニル基、又は置換若しくは無置換のステロイド残基を表し、上記各基が置換基を有する場合、当該置換基は、C1−6アルキル基、フェニル基、C 1−6アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルデヒド基、アセチル基、カルボキシ−C1−6アルキル基、ヒドロキシ−C1−6アルキル基、ジヒドロキシ−C1−6アルキル基、カルバモイル−C1−6アルキル基、並びに末端の炭素原子がカルボキシ及びアミノによって置換されたC1−6アルキル基からなる群より選択される1若しくは2以上の基を意味する)
    で表される化合物及びその薬理学的に許容される塩から選択される1種又は2種以上の化合物を有効成分として含有することを特徴とするインスリン分泌促進剤又はインスリン抵抗性改善剤。
  2. 化合物が、下記のいずれかの化合物であることを特徴とする請求項1に記載のインスリン分泌促進剤又はインスリン抵抗性改善剤。
    Figure 0006952350
  3. 経口投与することを特徴とする請求項1又は2に記載のインスリン分泌促進剤又はインスリン抵抗性改善剤。
  4. 下記式(I)
    Figure 0006952350
    (式中、Aは、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のフェニル基、置換若しくは無置換のナフチル基、置換若しくは無置換のキノリニル基、又は置換若しくは無置換のステロイド残基を表し、上記各基が置換基を有する場合、当該置換基は、C1−6アルキル基、フェニル基、C 1−6アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルデヒド基、アセチル基、カルボキシ−C1−6アルキル基、ヒドロキシ−C1−6アルキル基、ジヒドロキシ−C1−6アルキル基、カルバモイル−C1−6アルキル基、並びに末端の炭素原子がカルボキシ及びアミノによって置換されたC1−6アルキル基からなる群より選択される1若しくは2以上の基を意味する)
    で表される化合物及びその薬理学的に許容される塩から選択される1種又は2種以上の化合物を有効成分として含有することを特徴とする、インスリン分泌低下又はインスリン抵抗性に起因する疾患の予防又は改善剤。
  5. 化合物が、下記のいずれかの化合物であることを特徴とする請求項4に記載の予防又は改善剤。
    Figure 0006952350
  6. 経口投与することを特徴とする請求項4又は5に記載の予防又は改善剤。
  7. インスリン分泌低下又はインスリン抵抗性に起因する疾患が、糖尿病であることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の予防又は改善剤。
  8. 下記式(I)
    Figure 0006952350
    (式中、Aは、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のフェニル基、置換若しくは無置換のナフチル基、置換若しくは無置換のキノリニル基、又は置換若しくは無置換のステロイド残基を表し、上記各基が置換基を有する場合、当該置換基は、C1−6アルキル基、フェニル基、C 1−6アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルデヒド基、アセチル基、カルボキシ−C1−6アルキル基、ヒドロキシ−C1−6アルキル基、ジヒドロキシ−C1−6アルキル基、カルバモイル−C1−6アルキル基、並びに末端の炭素原子がカルボキシ及びアミノによって置換されたC1−6アルキル基からなる群より選択される1若しくは2以上の基を意味する)
    で表される化合物及びその薬理学的に許容される塩から選択される1種又は2種以上の化合物を有効成分として含有することを特徴とする、GATAにより調節される転写の活性化剤。
  9. 化合物が、下記の化合物であることを特徴とする請求項8に記載の活性化剤。
    Figure 0006952350
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