JP6948907B2 - マレイミド樹脂及びその製造方法、マレイミド樹脂組成物及び硬化物 - Google Patents

マレイミド樹脂及びその製造方法、マレイミド樹脂組成物及び硬化物 Download PDF

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Description

本発明はマレイミド樹脂、それを含む組成物及びその硬化物並びに該樹脂の製造方法に関する。本発明のマレイミド樹脂及びそれを用いたマレイミド樹脂組成物は、得られる硬化物の靱性が改良されたものである。さらに、本発明のマレイミド樹脂は有機溶剤への溶解性が優れ、溶媒に均一に溶解することが容易であり、例えば積層板を製造する用途に好適に用いることができる。
マレイミド樹脂は、その剛直な構造に由来し、単独重合、あるいは分子中に2重結合を有する化合物との組み合わせにより非常に優れた耐熱性を有する硬化物を与える。このためマレイミド樹脂は、電気・電子部品、構造用材料、接着剤、塗料等の分野で幅広く使用されている。
特に電子材料分野では、半田の鉛フリ−化に伴う耐熱性樹脂が求められ、特に、高度な耐熱性、寸法安定性、電気特性等を要求される耐熱性積層板の分野には、ビスマレイミドを用いた硬化物が使用されている。
しかし、上記ビスマレイミドは、汎用の有機溶媒に対する溶解性が極めて低く、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、N,N,ジメチルホルムアミド等の高沸点溶媒を使用する必要がある。また、その溶解に必要な有機溶剤の量も多く必要となる。従って、ビスマレイミドをこれらの溶媒に溶解させて調製した含浸ワニスを使用する際には、溶媒の除去に高温を必要とする。また、このワニスから調製したプレプリグ中には溶媒が残存し易く、積層板にボイドが形成され、絶縁不良の原因となる。そのような理由から、ビスマレイミドは、少なくともメチルエチルケトンのような低沸点の溶剤に良く溶けることが望まれる。
また、ビスマレイミドの剛直な構造に由来し、得られる硬化物の靱性が不足し、かた脆い硬化物を与えることも知られており、靱性の向上が望まれている。
このようなビスマレイミドの溶剤溶解性、あるいは靱性の改善に対しては、既存のビスマレイミド化合物とジアミン化合物をマイケル付加反応させてプレポリマー化する方法が提案されている(特許文献1)。
特開2006―241300号公報
しかし、このビスマレイミド化合物とジアミン化合物よりなるプレポリマーは構造中に2級アミンを残存させており、熱的安定性に欠ける問題点がある。すなわち硬化過程等における加熱により、2級アミンが活性化し、さらにマイケル付加を進行させる。この反応は極めて反応性が高く、目的のマレイミドを利用した重合を起こす前にゲル化に至るため、目的の物性を得られず好ましくない。
従って本発明は、良好な熱安定性を有し、溶剤溶解性が良好であり、硬化時に優れた耐熱性と良好な靱性を有する硬化物を与えるマレイミド樹脂を提供することを目的としている。
上記の課題を解決すべく本発明者らは鋭意検討した結果、ビスマレイミド化合物とジアミン化合物よりなるプレポリマーの2級アミンを特定の保護剤により保護した3級アミンとすることにより、高い熱安定性を与えることを発見し、本発明を完成させた。
従って、本発明は、下記一般式(1)で表されるマレイミド樹脂を提供するものである。
Figure 0006948907

(式中、Xはそれぞれ独立に、少なくとも1個以上の芳香族基を含み、50個以下の炭素原子を含む2価の基を表し、Yはそれぞれ独立に1個以上50個以下の炭素原子を含む2価の基を表し、zはそれぞれ独立に、酸無水物残基又はハロゲン化物残基である1価の基を表し、nはそれぞれ独立に0〜20の整数を表す。但しnの平均値であるn’は0を超える値である。)
また本発明は、下記一般式(2)で表される1分子中に2つのマレイミド基を有するマレイミド化合物と、下記一般式(3)で表される1分子中に2つのアミノ基を有するジアミン化合物と、を反応させて下記一般式(4)で表されるマレイミド樹脂を得る工程と、該マレイミド樹脂と、酸無水物又はハロゲン化物から選択される保護剤とを反応させる工程と、を含む、前記一般式(1)で表されるマレイミド樹脂の製造方法を提供するものである。
Figure 0006948907

(式中Xは少なくとも1個以上の芳香族基を含み、50個以下の炭素原子を含む2価の基を表す。)
Figure 0006948907
(式中Yは1個以上50個以下の炭素原子を含む2価の基を表す。)
Figure 0006948907

(式中X、Y及びnは一般式(1)と同じである。)
また本発明は、下記一般式(1’)で表されるマレイミド樹脂を提供するものである。
Figure 0006948907
(式中、Xはそれぞれ独立に、少なくとも1個以上の芳香族基を含み、50個以下の炭素原子を含む2価の基を表し、Yはそれぞれ独立に1個以上50個以下の炭素原子を含む2価の基を表し、zはそれぞれ独立に、酸無水物残基又はハロゲン化物残基である1価の基を表し、nは1〜20の整数を表す。)
本発明によれば、溶剤溶解性が極めて良好で、単体での熱安定性に優れたマレイミド樹脂が得られる。また、本発明のマレイミド樹脂の使用により高耐熱性、優れた靭性を有する硬化物を与えるマレイミド樹脂組成物が提供される。また、前記マレイミド樹脂組成物からなるプリプレグ、積層板、半導体封止材、前記マレイミド樹脂組成物の硬化物、及び前記硬化物を含む回路基板、半導体装置も提供される。
本発明のマレイミド樹脂は、従来のビスマレイミド化合物、あるいはマレイミドプレポリマーと比較し、優れた溶剤溶解性、熱安定性を有することからワニス経由のプリプレグ、積層板製造において好適に用いることが可能であり、また得られる硬化物は優れた耐熱性、靭性を有することで厳しい環境下でも好適に用いることが可能であり、産業上の利用可能性が極めて高い。
実施例1で得られたマレイミド樹脂のGPCチャートである。 実施例2で得られたマレイミド樹脂のGPCチャートである。 実施例3で得られたマレイミド樹脂のGPCチャートである。 比較例2で得られたマレイミド樹脂のGPCチャートである。 比較例3で得られた生成物のGPCチャートである。
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明する。〈マレイミド樹脂〉
本発明のマレイミド樹脂は、下記一般式(1)で表される。
Figure 0006948907
(式中Xはそれぞれ独立に、少なくとも1個以上の芳香族基を含み、50個以下の炭素原子を含む2価の基を表し、Yはそれぞれ独立に1個以上50個以下の炭素原子を含む2価の基を表し、zはそれぞれ独立に、酸無水物残基又はハロゲン化物残基である1価の基を表し、nはそれぞれ独立に0〜20の整数を表す。但しnの平均値であるn’は0を超える。)
本発明のマレイミド樹脂は下記一般式(1’)で表されるマレイミド樹脂(化合物)を含むものである。以下、本発明のマレイミド樹脂という場合、特に断りがない場合、上記一般式(1)で表される樹脂及び一般式(1’)で表されるマレイミド樹脂の両方に該当する。
Figure 0006948907
(式中Xはそれぞれ独立に、少なくとも1個以上の芳香族基を含み、50個以下の炭素原子を含む2価の基を表し、Yはそれぞれ独立に1個以上50個以下の炭素原子を含む2価の基を表し、zはそれぞれ独立に、酸無水物残基又はハロゲン化物残基である1価の基を表し、nは1〜20の整数を表す。)
本発明のマレイミド樹脂において、Xはそれぞれ独立に、少なくとも1個以上の芳香族基を含み、50個以下の炭素原子を含む2価の基である。Xとしては例えば次の一般式:−(A−L1)−A−で表される基が挙げられる。ここでAは同一でも異なってもよく、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェビレン基、ジフェニレンエーテル基又はそれらの水素原子が炭素原子数1以上4以下のアルキル基又はアリル基等で置換された芳香族基が好ましく挙げられる。L1としては同一であっても異なってもよく、直接結合、−O−、−CR−(R及びRはそれぞれ独立に水素原子又は炭素原子数1以上4以下のアルキル基である)、炭素数1〜20のアルキル基が好ましく挙げられる。mとしては例えば0以上であって、Xの炭素原子数を50以下にする数が挙げられる。Xの炭素原子数としては6以上40以下が好ましく、6以上30以下がより好ましい。
更に具体的にはXは、本発明のマレイミド樹脂を用いた硬化物の耐熱性と靭性の観点から、例えば、下記式(a)〜(e)のいずれか1である2価の基であることが好ましい。
Figure 0006948907
Xは、より好ましくは上記(a)、(c)又は(e)の基であり、(e)の基であることが特に好ましい。
本発明のマレイミド樹脂において、Yはそれぞれ独立に1個以上50個以下の炭素原子を含む2価の基を表す。Yとしては、ヘテロ原子を非含有又は含有する炭化水素基又は芳香族基が挙げられる。限定されるものではないが、本発明のマレイミド樹脂を用いた硬化物の靭性の観点からは、Yは分岐鎖状、直鎖状、又は環状の脂肪族基であることが好ましく、分岐鎖を持たない直鎖の脂肪族基又は分岐鎖を持つ脂肪族基であることがより好ましく、直鎖の脂肪族基であることがより好ましい。脂肪族基としては飽和脂肪族基及び不飽和脂肪族基が挙げられる。マレイミド樹脂の溶解性向上、融点低下と硬化物の靭性向上との観点からは、Yは4個以上8個以下の炭素原子を含む2価の直鎖脂肪族基であることがさらに好ましく、5個以上7個以下の炭素原子を含む2価の直鎖脂肪族基であることが特に好ましい。最も好ましい態様の一つとして、例えば、Yは−(CH−で表される2価の直鎖脂肪族基を挙げることができる。これらの基の水素原子は置換基に置換されていてもよく、例えば置換基としては、炭素原子が1〜20のアルキル基、フェニル基等が挙げられる。
本発明のマレイミド樹脂において、zはそれぞれ独立に、酸無水物残基又はハロゲン化物残基である1価の基を表す。
ここで、本発明のzにおいて、酸無水物残基とは、酸無水物に由来する基であって、酸無水物と窒素原子とにおいて生成する化学結合の構造以外の部分構造をいう。
酸無水物残基は、限定されるものではないが、本発明のマレイミド樹脂を首尾よく得るための観点から、カルボン酸無水物の残基であることが好ましく、また炭素原子数が2以上20以下のものが好ましく、2以上10以下のものがより好ましい。またなかでも、無水酢酸の残基である−CO−CH(アセチル基)、無水プロピオン酸の残基である−CO−CH−CH、無水コハク酸の残基である−CO−CH−CH−COOH、無水マレイン酸の残基である−CO−C=C−COOH、又は無水フタル酸の残基である−CO−@−COOH(−@−はベンゼン環構造を有する2価の基−(C)−を表す)、又はこれら基中の水素原子が炭素数1以上20以下(特に炭素数1以上10以下)のアルキル基で置換された基であることがより好ましい。これらの中でも−CO−CH(アセチル基)が特に好ましい。
また、本発明のzにおいて、ハロゲン化物残基とは、ハロゲン化物に由来する基であって、ハロゲン化物と窒素原子とにおいて生成する化学結合の構造以外の部分構造をいう。
ハロゲン化物残基は、限定されるものではないが、本発明のマレイミド樹脂を首尾よく得るための観点から、飽和若しくは不飽和脂肪族基のハロゲン化物の残基であるこれらの脂肪族基、又はカルボン酸ハロゲン化物の残基であることが好ましい。ハロゲン化物残基は炭素原子数が2以上20以下のものが好ましく、2以上10以下のものがより好ましい。中でも、ハロゲン化アリルの残基である−CH−CH=CH(アリル基)又はハロゲン化アセチルの残基である−CO−CH(アセチル基)であることがより好ましい。
本発明のマレイミド樹脂において、zは窒素原子に結合し、窒素原子を3級アミンとして反応性を安定化する。よって、本発明のマレイミド樹脂は、硬化温度以下では高分子量化やゲル化を生じず、熱安定性に優れる。また、硬化時間の調整を容易に行うことが出来る。
本発明のマレイミド樹脂において、zはカルボニル基を有し、窒素原子と結合してアミド結合を形成する構造であることが、マレイミド樹脂の熱安定性の観点からは好ましい。具体的には、−CO−CH(アセチル基)、−CO−CH−CH、−CO−CH−CH−COOH、−CO−C=C−COOH、−CO−@−COOH(−@−はベンゼン環構造を有する2価の基−(C)−を表す)であることがより好ましく、中でも−CO−CH(アセチル基)が特に好ましい。
本発明のマレイミド樹脂において、nは繰り返し数を表し、一般式(1)のnはそれぞれ独立に0〜20の整数を表す。但しnの少なくとも1つ(1分子)は1以上の整数である。
すなわち、本発明のマレイミド樹脂はnが1以上のマレイミド化合物のみからなるものやnが同じである化合物からなる純物質であってもよいが、好ましくは、一般式(1)で表されるマレイミド樹脂はn=0の化合物を含みうる、様々な繰り返し数nのマレイミド化合物(分子種)の混合物である。この混合物はnが1以上のマレイミド化合物(分子種)を含むことにより、溶剤溶解性が極めて良好な可溶性マレイミド樹脂となる。
本発明の一般式(1)で表されるマレイミド樹脂は、マレイミド樹脂自体の溶剤溶解性を優れたものとする観点からは、n=0の成分が90%以下であることが好ましく、n=0の成分が85%以下であることがより好ましく、80%以下であることが特に好ましい。また一般式(1)で表されるマレイミド樹脂における、n=0の成分は、溶剤溶解性の観点からは、少ないほうが好ましいが、マレイミド樹脂の高分子量化を抑制し、作業時の取扱い性等を優れたものとする観点からは、例えば、n=0の成分が5%以上であることが好ましく、n=0の成分が10%以上であることがより好ましく、15%以上であることが特に好ましい。n=0成分量は後述する実施例に記載の方法で求めることができる。
本発明のマレイミド樹脂は、様々な分子量を有する高分子の集合体であることが好ましいところ、nの値は、該集合体における平均値n’として表すことができる。
前記平均値n’は好ましくは0.1以上2.0以下であり、更に好ましくは0.2以上1.5以下であり、特に好ましくは0.2以上1.0以下である。n’の値を上記下限以上とすることで溶剤溶解性を一層高めることができる。また、n’の値を上記上限以下とすることで、作業時の取扱い性等において有利なものとなる。樹脂中の全ての式(1)で表される分子のnを特定してそれらの算術平均をとることは容易でない。このため、本発明では、この算術平均をとるのではなく、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)分析により各nに対応する面積比を求め、この面積比に基づいてn’を算出可能としている。n’は具体的には実施例の記載の方法にて測定できる。
また本発明のマレイミド樹脂の重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比であるMw/Mn(分散度)は好ましくは1.0以上3.0以下であり、更に好ましくは1.1以上2.0以下である。数平均分子量Mnの値を上記下限以上とすることで溶剤溶解性を一層高めることができる。また、数平均分子量Mnの値を上記上限以下とすることで、作業時の取扱い性等において有利なものとなる。なお、本発明のマレイミド樹脂の重量平均分子量Mw、数平均分子量Mnはゲル透過クロマトグラフィー分析によるポリスチレン換算値として求めることができ、下記の実施例に記載の方法で求めることができる。
本発明のマレイミド樹脂は、保管時の耐ブロッキング性や作業時の取扱い性等を優れたものとする観点からは、示差走査熱量測定による融点が150℃以下であることが好ましく、70℃以上150℃以下であることがより好ましく、80℃以上110℃以下であることが更に好ましい。上記範囲より低い場合は保管時のブロッキングが発生し、高い場合は使用時に高温が必要となるため好ましくない。この融点は下記の実施例に記載の方法で求めることができる。
本発明のマレイミド樹脂は、保管時の耐ブロッキング性や作業時の取扱い性等を優れたものとする観点からは、メトラー軟化点測定による軟化点が150℃以下であることが好ましく、90℃以上150℃以下であることがより好ましく、100℃以上140℃以下であることが更に好ましい。上記下限以上である場合は保管時のブロッキングを防止しやすいため好ましく、上記上限以下である場合は使用時の高温を不要としやすいため好ましい。
本発明において、マレイミド樹脂の溶剤溶解性は、25℃においてメチルエチルケトン100gに対して50g以上溶解することが好ましく、更に好ましくは100g以上である。溶解重量が上記下限以上であることは、ワニス製造時に多量の溶媒を要さないため、経済性の面から好ましく、またプリプレグ製造やそのプリプレグを用いた積層板製造においてボイドの発生等を防止できる点から好ましい。溶剤溶解性はできるだけ高いことが好ましい。
〈マレイミド樹脂の製造方法〉
本発明のマレイミド樹脂の製造方法は、
下記一般式(2)で表される1分子中に2つのマレイミド基を有するビスマレイミド化合物と、
Figure 0006948907

(式中Xは、少なくとも1個以上の芳香族基を含み、50個以下の炭素原子を含む2価の基を表す。)
下記一般式(3)で表される1分子中に2つのアミノ基を有するジアミン化合物と、
Figure 0006948907
(式中Yは1個以上50個以下の炭素原子を含む2価の基を表す。)を反応させて、下記一般式(4)で表される、分子中に2級アミン構造を有するマレイミド樹脂を得る工程と、
Figure 0006948907

(式中X、Y及びnは一般式(1)と同じである。)
前記一般式(4)で表されるマレイミド樹脂と、酸無水物、又はハロゲン化物から選択される保護剤とを反応させることにより2級アミンを保護し、3級アミンへ変換する工程と、を含むことを特徴とする、下記一般式(1)で表されるマレイミド樹脂(及び上記一般式(1’)で表されるマレイミド樹脂)の製造方法である。
Figure 0006948907

(式中Xはそれぞれ独立に、少なくとも1個以上の芳香族基を含み、50個以下の炭素原子を含む2価の基を表し、Yはそれぞれ独立に1個以上50個以下の炭素原子を含む2価の基を表し、zはそれぞれ独立に、酸無水物残基又はハロゲン化物残基である1価の基を表し、nはそれぞれ独立に0〜20の整数を表す。但しnの平均値であるn’は0を超える値である。)
<マレイミド化合物>
本発明のマレイミド樹脂の製造方法に使用するビスマレイミド化合物は、下記一般式(2)で表される1分子中に2つのマレイミド基を有するビスマレイミド化合物を使用する。
Figure 0006948907

(式中Xは、少なくとも1個以上の芳香族基を含み、50個以下の炭素原子を含む2価の基を表す。)
一般式(2)で表されるビスマレイミド化合物としては、特に限定は無いが、本発明のマレイミド樹脂におけるXとして例示した基を与える基を挙げることができ、ジアミンとの反応性の点から、マレイミド基が芳香族基に結合した芳香族ビスマレイミド化合物が好ましい。具体例としては4,4‘−ジフェニルメタンビスマレイミド、m−フェニレンビスマレイミド、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、4−メチル−1,3−フェニレンビスマレイミド、及び3.3’−ジメチル−5,5‘−ジエチルー4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド等、公知のビスマレイミド化合物を挙げることができ、これらを単独で、又は2種類以上組み合わせて使用することができる。本発明のマレイミド樹脂の製造方法により得られるマレイミド樹脂を用いた硬化物の耐熱性向上と靭性向上の観点からは、下記式で表される2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパンが特に好ましい。
Figure 0006948907
<ジアミン化合物>
本発明のマレイミド樹脂の製造方法に使用するジアミン化合物としては、下記一般式(3)で表される1分子中に2つのアミノ基を有するジアミン化合物を使用する。
Figure 0006948907

(式中Yは1個以上50個以下の炭素原子を含む2価の基を表す。)
一般式(3)で表されるジアミン化合物としては特に限定は無いが、本発明のマレイミド樹脂におけるYとして例示した基を与える基を挙げることができ、具体的にはジアミノエタン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ヘキサメチレンジアミン、ジアミノオクタン、ジアミノデカン、ジアミノドデカン、m−キシレンジアミンp−キシレンジアミン、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4‘―ジアミノジフェニルエーテル、1,4―ビス(4―アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2’−ビス[4―(4―アミノフェノキシ)フェニル]プロパン等、種々のジアミン化合物を挙げることができ、これらを単独で、又は2種類以上組み合わせて使用することができる。硬化物の靭性向上、マレイミド樹脂の溶解性向上と融点低下、及びビスマレイミド化合物との反応性の観点からは、脂肪族ジアミンを用いることが好ましく、直鎖の脂肪族ジアミンであるヘキサメチレンジアミンが特に好ましい。
本発明のマレイミド樹脂の製造方法は、前記一般式(2)で表されるビスマレイミド化合物と前記一般式(3)で表されるジアミン化合物とをマイケル付加反応させて下記一般式(4)で表される分子中に2級アミン構造を有するマレイミド樹脂を得る工程(I)を含む。工程(I)では、通常、前記一般式(2)で表されるビスマレイミド化合物と前記一般式(3)で表されるジアミン化合物とを溶媒中に均一に溶解した後、触媒存在下又は無触媒でマイケル付加反応させる。
Figure 0006948907

(式中X、Y及びnは一般式(1)と同じである。)
分子中に2級アミン構造を有するマレイミド樹脂を得る工程(I)において、前記一般式(2)で表されるビスマレイミド化合物と前記一般式(3)で表されるジアミン化合物とのモル比(前記一般式(3)で表されるジアミン化合物とのモル数/前記一般式(2)で表されるビスマレイミド化合物のモル数)は、好ましくは0.01以上1.00以下であり、より好ましくは0.05以上0.50以下であり、さらに好ましくは0.10以上0.25以下であり、特に好ましくは0.12以上0.25以下である。モル比をこの範囲とすることにより、本発明のマレイミド樹脂の製造方法により得られるマレイミド樹脂の溶剤溶解性及び保管時の耐ブロッキング性や作業時の取扱い性等を優れたものとすることができる。
分子中に2級アミン構造を有するマレイミド樹脂を得る工程(I)において、使用する溶媒は、各種有機溶媒あるいはフェノール類等、マレイミドやジアミンを溶解せしめ、且つこれらに対して反応性を有しないものであれば特に制限は無い。有機溶媒の例としてはジオキサン、ジメチルホルムアミド等が使用でき、フェノール類としてはフェノール、クレゾール等が使用できる。好ましくは、ジオキサン、フェノールである。
分子中に2級アミン構造を有するマレイミド樹脂を得る工程(I)において、前記一般式(2)で表されるビスマレイミド化合物と前記一般式(3)で表されるジアミン化合物と溶媒との添加順序に特に制限はなく、これらを均一に混合できれば良い。
分子中に2級アミン構造を有するマレイミド樹脂を得る工程(I)において、前記一般式(2)で表されるビスマレイミド化合物と前記一般式(3)で表されるジアミン化合物とのマイケル付加反応は、触媒存在下、又は無触媒で行うことができる。触媒存在下で反応を行う場合、使用可能な触媒としては特には限定は無く、塩酸、蓚酸、硫酸、リン酸、パラトルエンスルホン酸など公知のものを単独あるいは2種以上併用して使用することができるが、硫酸、パラトルエンスルホン酸が特に好ましい。なお、使用する触媒量は、ビスマレイミド化合物とアミン化合物との反応性から適宜調整することができる。
分子中に2級アミン構造を有するマレイミド樹脂を得る工程(I)において、前記一般式(2)で表されるビスマレイミド化合物と前記一般式(3)で表されるジアミン化合物とのマイケル付加反応の反応温度は、高分子量化等を防ぐ観点から、好ましくは室温(25℃)〜150℃、より好ましくは室温〜80℃、さらに好ましくは室温〜60℃である。付加反応の時間は、ビスマレイミド、ジアミンの組み合わせ、あるいは溶媒種、触媒種等により変動するが、1〜24時間程度である。反応圧力は通常常圧下にて行うが、若干の加圧下あるいは減圧下で行っても何ら問題は無い。
本発明のマレイミド樹脂の製造方法は、前記工程(I)において得られる前記一般式(4)で表される分子中に2級アミン構造を有するマレイミド樹脂と、酸無水物、又はハロゲン化物から選択される保護剤とを反応させることにより2級アミンを保護し、3級アミンへ変換する工程(II)を含む。
この保護剤により2級アミンを保護し、3級アミンへ変換する工程(II)を含むことにより、本発明のマレイミド樹脂を、硬化温度以下では高分子量化やゲル化を生じず、熱安定性に優れたものとすることができる。
<保護剤>
本発明のマレイミド樹脂の製造方法において、2級アミン保護に使用する保護剤としては、2級アミンと反応する官能基を有する化合物として酸無水物、ハロゲン化物を使用することができる。酸無水物としては特に限定は無いが、本発明のマレイミド樹脂の酸無水物残基として上記で例示した基を与えるものが挙げられ、具体的には無水酢酸、無水プロピオン酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸又はこれらのアルキル基等による置換体等のカルボン酸無水物が挙げられる。またハロゲン化物としては、本発明のマレイミド樹脂におけるハロゲン化物残基として上記で例示した基を与えるものが挙げられ、具体的には塩化アセチル、塩化アリル等が挙げられる。特に好ましくは保護剤はカルボン酸無水物であり、とりわけ好ましくは無水酢酸である。
前記保護剤の使用量は、前記工程(I)により得られた、前記一般式(4)で表されるマレイミド樹脂の構造に含まれる2級アミンのモル数と等しいモル数の保護剤を使用することが好ましい。具体的には、(保護剤のモル数/一般式(4)で表されるマレイミド樹脂の構造に含まれる2級アミンのモル数)との比は1.0以上3.0以下であることが好ましく、1.0以上2.0以下であることがより好ましい。保護剤の使用量は前記工程(I)で使用した前記一般式(3)で表されるジアミン化合物のモル数の2倍量相当のモル数の保護剤を使用することが好ましい。
保護剤により、2級アミンを保護し、3級アミンへ変換する工程(II)は、前記工程(I)に使用した溶媒と同一の溶媒を用いて行うことが出来る。
また、保護剤により、2級アミンを保護し、3級アミンへ変換する工程(II)の反応温度は、高分子量化等を防ぐ観点から、好ましくは室温(25℃)〜150℃、より好ましくは室温〜80℃、さらに好ましくは室温〜60℃である。反応の時間は、ビスマレイミド、ジアミンの組み合わせ、あるいは溶媒種、使用する保護剤により変動するが、1〜24時間程度である。反応圧力は通常常圧下にて行うが、若干の加圧下あるいは減圧下で行っても何ら問題は無い。
なお、保護剤により、2級アミンを保護し、3級アミンへ変換する工程(II)は、分子中に2級アミン構造を有するマレイミド樹脂を得る工程(I)に引き続いて、同一系内で行うことが可能である。製造上の取扱いの観点からは、工程(I)のマイケル付加反応後、引き続き、工程(II)の保護反応を行うことが好ましい。
保護剤により、2級アミンを保護し、3級アミンへ変換する工程(II)の反応後、溶媒及び酸触媒を除去することにより、前記一般式(1)で表される本発明のマレイミド樹脂を得ることができる。なお、溶媒の除去方法としては減圧により除去することができ、溶媒にフェノール類を使用した場合には更に不活性ガスや水蒸気を吹き込みながら加熱し、フェノール類を蒸留し系外へ除去する方法が一般的である。その際の加熱温度は150℃以下であることが好ましい。酸触媒の除去方法としては水洗などによる洗浄が挙げられる。
本発明のマレイミド樹脂の製造方法において、原料であるビスマレイミド化合物及びジアミン化合物の主鎖構造をコントロールすることで溶剤溶解性が優れ、融点の低いマレイミド化合物を得ることができる。
[マレイミド樹脂組成物]
本発明のマレイミド樹脂は単独で加熱重合により硬化物を与えることができるが、公知の硬化剤や硬化促進剤等と組み合わせてマレイミド樹脂組成物とすることが出来る。
本発明のマレイミド樹脂組成物は、公知の硬化剤を含有することが出来る。公知の硬化剤は、特に限定されるものではないが、例えば、1分子中に1つ以上の不飽和2重結合基を有する化合物を挙げることが出来る。不飽和2重結合基を有する化合物の例としては、特に限定はないが、2,2’−ジアリルビスフェノールA、アリルフェノール樹脂、プロペニルフェノール樹脂等が挙げられる。作業性、入手の容易さを考慮するとアリルフェノール樹脂を使用することが好ましい。アリルフェノール樹脂は、アリルフェノールと種々の架橋剤により得られるものを使用することができるが、フェノールノボラック樹脂を塩基性触媒存在下、ハロゲン化アリル等によりアリル化した樹脂を使用することもできる。
硬化剤として、不飽和2重結合基がアリル基である化合物を含有する場合、その含有量は、本発明のマレイミド樹脂のマレイミド基当量数と、アリル基を有する化合物のアリル基当量数との割合[マレイミド基当量数/アリル基当量数]が、好ましくは0.80〜2.00、より好ましくは0.80〜1.60の範囲となる量である。
なお、マレイミド基当量数やアリル基当量数などの官能基当量数は、当該官能基当量をA(g/eq)、仕込み量をB(g)としたときに、B/A(当該化合物の純度がC%の場合には[B×C/100]/A)によって求めることができる。すなわち、マレイミド基当量やアリル基当量などの官能基当量とは、官能基1個当たりの化合物の分子量を表し、官能基当量数とは、化合物質量(仕込み量)当たりの官能基の個数(当量数)を表す。
また、本発明のマレイミド樹脂は、前記不飽和2重結合基を有する化合物の存在下又は不存在下、本発明の効果を損なわない範囲でエポキシ樹脂と併用することが可能であり、エポキシ樹脂としてはビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂等のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ハロゲン化エポキシ型樹脂等、分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂が挙げられる。これらエポキシ樹脂は単独で使用しても、2種類以上を併用しても良い。
また、前記エポキシ樹脂を使用する際には、前述の不飽和2重結合基を有する化合物以外にも本発明の効果を損なわない範囲で、フェノール樹脂を使用することができる。使用できるフェノール樹脂はフェノール類モノマーと種々の架橋剤により得られる分子中にフェノール性水酸基を2個以上有するものを使用することができる。これらフェノール樹脂は単独で使用しても2種以上併用しても良い。
本発明のマレイミド樹脂組成物(以下「本発明の組成物」ともいう)は、硬化促進剤を含有することができる。硬化促進剤は、マレイミド樹脂の硬化や、硬化剤を含有する場合にはマレイミド樹脂と硬化剤との硬化を促進するものであればよく、一般にラジカル開始剤として用いるものも含む。そのような硬化促進剤としては、アシル過酸化物、ハイドロパーオキサイド、ケトン過酸化物、t−ブチル基を有する過酸化物、クミル基を有する過酸化物などの有機過酸化物などを挙げることができる。例えばベンゾイルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、カプリルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ビス(1−ヒドロキシシクロヘキシルパーオキサイド)、ヒドロキシヘプチルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、p−メタンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド(DCPOと略記することもある)、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキサイド)ヘキサン、2,5−ジメチルヘキシル−2,5−ジ(パーオキシベンゾエート)、t−ブチルパーベンゾエート、t−ブチルパーアセテート、t−ブチルパーオクトエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、ジ−t−ブチル−ジ−パーフタレート等の有機過酸化物を挙げることができ、これらの1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。硬化促進剤を用いる場合、その添加量は、本発明の組成物中、本発明のマレイミド樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上10質量部以下が好ましく、1質量部以上8質量部以下がより好ましい。
また、本発明のマレイミド樹脂組成物は、その他の任意成分を含有していてもよい。そのような任意成分としては、本発明の組成物の用途によるが、例えば、充填剤、硬化促進用のイミダゾール化合物、カップリング剤、顔料、染料などの添加剤を好適に用いることができる。また、有機溶剤等の溶剤を用いることもできる。
充填剤としては、有機充填剤又は無機充填剤のいずれも使用できる。無機充填剤としては例えば非晶性シリカ、結晶性シリカ、アルミナ、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、硫酸バリウムなどが使用できる。特に非晶性シリカ及び結晶性シリカを用いることが好ましい。無機充填剤の粒径に特に制限はないが、充填率を考慮すると0.01μm以上150μm以下であることが望ましい。無機充填剤の配合割合に特に制限はないが、マレイミド樹脂組成物に占める無機充填剤の割合が70質量%以上95質量%以下であることが好ましく、70質量%以上90質量%以下であることが更に好ましい。無機充填剤の配合割合をこの範囲に設定することで、組成物の硬化物の吸水率が増加しにくくなるので好ましい。
本発明のマレイミド樹脂組成物における、本発明のマレイミド樹脂の量は、本発明の組成物の用途によって異なるが、例えば本発明の組成物が充填剤を含有しない場合は、本発明の組成物中10質量%以上90質量%以下であることが好ましく、30質量%以上60質量%以下であることがより好ましい。また例えば本発明の組成物が充填剤を含有する場合は本発明の樹脂の量は、本発明の組成物中5質量%以上25質量%以下であることが好ましく5質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。
本発明のマレイミド樹脂組成物における、本発明のマレイミド樹脂、硬化剤、硬化促進剤及び充填剤以外の他の成分の合計量は、本発明の組成物の用途によって異なるが、一般に、本発明の樹脂に対して15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることが特に好ましい。
本発明の組成物を調製するには、例えば本発明のマレイミド樹脂、更に必要に応じて加える硬化剤、硬化促進剤、無機充填剤、他の添加剤等を、ミキサー等を使用して均一に混合し、加熱ロール、ニーダー又は押出機等の混練機を用いて溶融状態で混練し、混練物を冷却し、必要に応じて粉砕すればよい。
本発明の組成物は、常法の加熱処理によって好適に硬化物を得ることができる。例えば、加熱処理は、ラジカル開始剤や硬化促進剤の有無によって影響を受けるが、好ましくは150〜280℃、より好ましくは150〜250℃で、好ましくは1〜24時間、より好ましくは1〜12時間、常圧下或いはオートクレーブなどを用いて加圧下で行うのがよい。
本発明のマレイミド樹脂、及びこれを用いたマレイミド樹脂組成物は、特に限定するものではないが、その硬化物の耐熱性等を生かし、半導体素子を封止する封止材料として好適に用いることができる。例えば、該半導体素子を搭載したリードフレーム等を金属キャビティ内に設置した後に、マレイミド樹脂組成物をトランスファーモールド、コンプレッションモールド又はインジェクションモールド等の成形方法で成形し、120℃から300℃程度の温度で加熱処理等をすることにより組成物を硬化させることで、半導体装置を好適に得ることができる。
また、本発明のマレイミド樹脂及びこれを用いたマレイミド樹脂組成物は、好ましくはメチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジメチルホルムアミドなどの公知の溶媒に均一に溶解してワニス溶液を製造することができる。そのワニス溶液を、ガラス等の多孔質ガラス基材やガラス繊維、紙、アラミド繊維等に塗布或いは含浸し、次いで加熱処理(半硬化)することでプリント基板用プリプレグを製造することができる。更に、得られたプリント基板用プリプレグの複数枚を積層し、必要に応じて加圧しながら加熱処理を行なって硬化させることによって、本発明の組成物を用いてマトリックス樹脂を形成した積層板を好適に製造することができる。
また、積層板或いはプリプレグは、片面または両面に金属箔を重ね合わせて、必要に応じて加圧しながら加熱処理を行なって金属張積層板を得ることができる。この金属張積層板は、エッチング処理によって回路パターンを形成し、プリント配線板として好適に用いることができる。
本発明のマレイミド樹脂、及びこれを用いたマレイミド樹脂組成物は、特に限定するものではないが、その硬化物の耐熱性等を生かし、半導体素子の封止材料やプリント配線基板材料等の電気・電子部品用途のほか、構造用材料、接着剤、塗料等として用いることができる。
以下に、本発明を、その具体的な実施例に基づき詳しく説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
以下のマレイミド樹脂の調製の例で用いた分析方法や評価方法について説明する。
(1) 軟化点
機器:自動滴点装置 METTLER TOLEDO製FP83HT
昇温速度 ;2 ℃/min.
(2)n=0成分量、Mw/Mn(分子量分布):ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)分析によって得られた組成比より算出した。
[GPCの測定条件]
機器:ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(Waters 製)
カラム:以下のSHODEX製カラム5本を、上流から下流に向けて下記の順序となるように直列に連結して用いた。
KF-804×1本
KF-803×1本
KF-802.5×1本
KF-802×1本
KF-801×1本
また、ガードカラムとしてSHODEX製KF-Gを1本用いた。
カラムオーブン温度:40℃
溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
流量:1.00mL/分
検出器:Waters 2487 Dual λAbsorbance Detector
検出波長:254nm
(3)平均値n’:ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)分析により得られる各n数毎の面積比より求めることが出来る。
{(n=0面積比)×0}+{(n=1面積比)×1}+{(n=2面積比)×2}+{(n=3面積比)×3}・・・の合算値で平均n数を求めることが出来る。但し、面積比の合計は1とする。
(4)マレイミド当量:ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)分析により得られる各n数毎の面積比と各n数のマレイミド当量とより求めることができる。
例えば、前記一般式(1)で表されるマレイミド樹脂のマレイミド当量は、
〔(n=0面積比)×{n=0のマレイミド当量(285g/eq)}〕
+〔(n=1面積比)×{n=1のマレイミド当量(670g/eq)}〕
+〔(n=2面積比)×{n=2のマレイミド当量(1055g/eq)}〕
+〔(n=3面積比)×{n=3のマレイミド当量(1440g/eq)}〕
+〔(n=4面積比)×{n=4のマレイミド当量(1825g/eq)}〕
・・・の合算値で求めることが出来る。但し、面積比の合計は1とする。
[マレイミド樹脂の合成]
(実施例1)
冷却管、攪拌機を具備した四つ口フラスコに、ビスマレイミド化合物として2,2'-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン 160.00g ( 0.56 モル)、ジアミンとして、1,6−ヘキサメチレンジアミン8.14g (0.14 モル) 及び溶媒としてのフェノール 640.00g を加え、50℃に昇温し均一に溶解させた。溶解後50℃で1時間マイケル付加反応を行い、ビスマレイミドとジアミンのマイケル付加体を含む反応液を得た。得られたマイケル付加体を含む反応液に2級アミンの保護剤としての無水酢酸 28.63 g (0.28 モル)を投入し、保護反応を3時間行った。反応終了後、反応液を150℃まで加熱し、減圧下フェノールを除去し、本発明のマレイミド樹脂(樹脂A)を得た。得られたマレイミド樹脂の軟化点は135℃であり、GPC分析によるn=0成分は52%、であった。また、平均値n’は0.77であり、ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量Mwは1180、数平均分子量Mnは697であり、分子量分布(分散度)Mw/Mnは1.69であった。また、マレイミド当量は586g/eqであった。得られたマレイミド樹脂のGPCチャートを図1に示す。
(実施例2)
実施例1のジアミンとしての1,6−ヘキサメチレンジアミンを4.07g(0.07モル)、保護剤としての無水酢酸を 14.32 g (0.14モル)とした以外は、実施例1と同様にして本発明のマレイミド樹脂(樹脂B)を得た。得られたマレイミド樹脂の軟化点は117℃であり、GPC分析によるn=0成分は72%、であった。また、平均値n’は0.37であり、ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量Mwは783、数平均分子量Mnは572であり、分子量分布(分散度)Mw/Mnは1.37であった。また、マレイミド当量は425g/eqであった。得られたマレイミド樹脂のGPCチャートを図2に示す。
(実施例3)
実施例1のジアミンとしての1,6−ヘキサメチレンジアミンを2.71g (0.05モル)、保護剤としての無水酢酸を10.20 g (0.10モル)とした以外は、実施例1と同様にして本発明のマレイミド樹脂(樹脂C)を得た。得られたマレイミド樹脂の軟化点は112℃であり、GPC分析によるn=0成分は82%であった。また、平均値n’は0.23であり、ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量Mwは666、数平均分子量Mnは533であり、分子量分布(分散度)Mw/Mnは1.25であった。また、マレイミド当量は361g/eqであった。得られたマレイミド樹脂のGPCチャートを図3に示す。
(比較例1)
冷却管、攪拌機を具備した四つ口フラスコに、ビスマレイミド化合物として2,2'-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン 160.00g ( 0.56 モル)、ジアミンとして、1,6−ヘキサメチレンジアミン8.14g (0.14 モル) を溶媒としてのフェノール 640.00g を加え、50℃に昇温し均一に溶解させた。溶解後50℃で1時間マイケル付加反応を行い、ビスマレイミドとジアミンのマイケル付加体を含む反応液を得た。得られたマイケル付加体を含む反応液を150℃まで加熱し、減圧下フェノールを除去する過程でゲル化し、樹脂が得られなかった。
(比較例2)
比較例1の溶媒をフェノールからテトラヒドロフラン(THF)に変更し、同様の条件でマイケル付加体を含む反応液を得、50℃で減圧下THFを除去し、2級アミンが保護されていないマレイミド樹脂(樹脂D)を得た。得られたマレイミド樹脂のGPC分析によるn=0成分は52%であった。また、平均値n’は0.85であり、ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量Mwは1240、数平均分子量Mnは704であり、GPCの分子量分布Mw/Mnは1.76であった。また、マレイミド当量は554g/eqであった。得られたマレイミド樹脂のGPCチャートを図4に示す。軟化点測定中の加熱によりゲル化が生じたため軟化点は測定できなかった。
(比較例3)
冷却管、攪拌機を具備した三つ口フラスコに、ジアミンとして1,6−ヘキサメチレンジアミン 8.14g (0.14 モル)を溶媒としてのフェノール 40.00g に溶解させ、保護剤としての無水酢酸 28.63 g (0.28モル)を加え、室温で3時間アセチル化反応を行い、ジアミンの2級アミン化反応を行った。得られた2級アミンを含む反応液にビスマレイミド化合物としての2,2'-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン 160.00g( 0.56 モル)と溶媒としてのフェノール 600 g を加え50℃に昇温し、均一に溶解させ、さらに1時間反応させたが、反応進行しなかった。さらに、反応温度を150℃に昇温し、3時間反応させたが、2級アミンとビスマレイミドのマイケル付加は進行せず、一部ビスマレイミドの自己重合が進行したのみであり、本発明のマレイミド樹脂は得られなかった。このことを示す反応生成物のGPCチャートを図5に示す。
上記実施例1〜3及び比較例1〜3のそれぞれについて、合成条件、得られた樹脂の形状、n=0成分含有量、軟化点を表1にまとめた。
Figure 0006948907
[マレイミド樹脂の融点/溶解性]
実施例1〜3で得られた樹脂A〜C及びそれらの原料でありマイケル付加反応をしていないビスマレイミドである2,2'-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン(化合物A)の融点と25℃におけるメチルエチルケトン(MEK)への溶解性の比較を表2にまとめた。
[融点評価条件]
機器:示差走査熱量計(DSC) TAインスツルメント製Q-2000
昇温速度 ; 10℃/min.
雰囲気;N2(50ml/min)
測定温度領域 ;-20℃〜150℃
吸熱ピークのピークトップのときの温度を融点とした。
[溶解性試験条件]
以下に示す方法で溶解性試験によって評価した。
溶媒:メチルエチルケトン(以下MEKと略記)
溶解条件:密閉容器にMEK 100gを加え、室温(25℃)で溶解しなくなるまで樹脂を少量ずつ添加し、最終的に溶解した量を溶解性として記録した。
Figure 0006948907
[硬化性評価]
以下の機器を用いて硬化性を測定した。
使用機器:株式会社サイバー製 自動硬化時間測定装置
測定条件:150℃ 600rpm
測定方法:マレイミド樹脂単独、またはマレイミド樹脂と硬化剤及び硬化促進剤とを含むマレイミド組成物を50質量%MEK溶液に調製する。調整したMEK溶液を約0.6mL量り取り装置の熱板上に乗せ測定する。トルクが装置の測定上限トルク値の20%になった時間をゲル化時間として計測した。
実施例1で得られた樹脂Aと比較例2で得られた樹脂Dについて、樹脂単体の170℃におけるゲル化時間を測定し、表3にまとめた。
実施例1で得られた樹脂Aと比較例2で得られた樹脂Dについて、硬化剤、硬化促進剤を含むマレイミド組成物を調製し、150℃におけるゲル化時間を測定し、表3にまとめた。
・硬化剤:アリルフェノール樹脂(o-アリルフェノール樹脂 明和化成株式会社製 MEH-8000H アリル基当量:141g/eq)
・マレイミド樹脂/硬化剤比率:等当量数にて配合
・硬化促進剤:ジクミルパーオキサイド
・硬化促進剤添加量:対アリル基当量数0.5mol%、2.0mol%
Figure 0006948907
[本発明のマレイミド樹脂を用いた硬化物作成及び物性評価]
以下に硬化物の作成で用いた材料について説明する。
(1)アリルフェノール樹脂
o-アリルフェノール樹脂:明和化成株式会社製「MEH-8000H」、アリル基当量:141g/eq(2)硬化促進剤
ジクミルパーオキサイド(DCPO)
(3)銅箔:電解銅箔(福田金属箔粉工業社製 CF-T9B-THE、厚さ35μm)
以下に硬化物評価方法について説明する。なお、以下(1)の評価では、下記実施例8並びに比較例6及び7で得られた樹脂組成物を下記(1)に記載の方法にて硬化させた。また下記(2)及び(3)の評価では実施例8並びに比較例6及び7で得られた樹脂組成物を下記実施例8並びに比較例6及び7に記載の方法にて硬化させた。
(1)接着性(ピール強度)
マレイミド樹脂組成物を130℃で溶融しガラスクロス((株)有沢製作所 M2116)に含浸させプリプレグを作成した。このプリプレグを8枚重ねた後、銅箔(福田金属箔粉工業
(株) CF-T9B-THE)で両面を挟み130℃でプレスした。さらに200℃で1.5時間、次いで230度で1.5時間加熱することで銅張り積層板を得た。この積層体の銅箔をエッチングし、10mmの帯状のパターンを形成し試験片とした。試験片の90°ピール強度をオートグラフ(株式会社島津製作所製 AG-5000D)を用いて下記の条件にて測定した。
(測定条件)
引き剥し速度:50mm/分
(2)熱特性
得られた硬化物を厚さ2mm×幅5mm×長さ5mmの形状に切削加工して試験片とした。試験片のガラス転移温度を熱機械分析装置(島津製作所製 TA-600)を用いて下記の条件にて測定した。昇温速度5℃/minにて、ガラス転移温度(Tg)を測定した。
(測定条件)
昇温条件:5℃/分
測定上限:350℃
雰囲気 :30mL/分の窒素流下
(3)機械物性
得られた硬化物を厚さ2mm×幅25mm×長さ40mmの形状に切削加工して試験片とした。試験片の3点曲げ試験による応力及び弾性率を恒温槽付万能試験機(エー・アンド・デイ社製)を用いて下記の条件にて測定を行った。
(測定条件)
試験速度 :2mm/分
支点間距離:60mm
温度 :25℃
(実施例8)
MEH-8000H 9.62 g (仕込み量当たりのアリル基の数(当量数)0.07モル)を130℃で加熱攪拌し、樹脂A 40.00 g(仕込み量当たりのマレイミド基の数(当量数)0.07モル)を添加して、攪拌しながら溶融混合した。樹脂Aが完全に溶融し、混入した気泡がなくなるまで攪拌した。さらに、硬化促進剤としてのジクミルパーオキサイド 0.18gを加えて攪拌し、樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物を真空脱泡した後、金型に注型し、200℃で1.5時間、次いで230℃で1.5時間加熱処理することによって、硬化物を得た。
(比較例6)
MEH-8000H 7.64 g (仕込み量当たりのアリル基の数(当量数)0.05モル)を110℃で加熱攪拌し、樹脂D 30.00 g(仕込み量当たりのマレイミド基の数(当量数)0.05モル)を添加して、攪拌しながら溶融混合した。樹脂Dが完全に溶融し、混入した気泡がなくなるまで攪拌した。さらに、硬化促進剤としてのジクミルパーオキサイド 0.44 gを加えて攪拌し、樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物を真空脱泡した後、金型に注型し、200℃で1.5時間、次いで230℃で1.5時間加熱処理することによって、硬化物を得た。
(比較例7)
MEH-8000H 49.47 g (仕込み量当たりのアリル基の数(当量数)0.35モル)を130℃で加熱攪拌し、化合物A 100.00 g (仕込み量当たりのマレイミド基の数(当量数)0.35モル)を添加して、攪拌しながら溶融混合した。化合物Aが完全に溶融し、混入した気泡がなくなるまで攪拌した。さらに、硬化促進剤としてのジクミルパーオキサイド2.84gを加えて攪拌し、樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物を真空脱泡した後、金型に注型し、200℃で1.5時間、次いで230℃で1.5時間加熱処理することによって、硬化物を得た。
実施例8及び比較例6、7の硬化物について、ガラス転移温度、曲げ弾性、曲げ強度、曲げ最大点歪み、ピール強度を測定した。結果を表4に示す。
Figure 0006948907
表1に示すように、比較例1、2より、ビスマレイミドとジアミンのマイケル付加反応によるマレイミド樹脂は、2級アミンを保護していなければ僅かな熱で自己重合を起こすため、処理/使用が困難である。比較例3ではジアミンを先に2級アミン化させてビスマレイミドとのマイケル付加を試みたがマイケル付加反応が進行しない。したがって、ビスマレイミド化合物とジアミン化合物をマイケル付加反応させた中間生成物の2級アミンを保護することにより、本発明のマレイミド樹脂を好適に得ることが出来る。
表2に示すように、実施例4〜6より、本発明のマレイミド樹脂は従来のビスマレイミド(比較例4)と比較して溶剤溶解性が大幅に改良されており、エポキシ樹脂等と共に有機溶媒に溶解させる工程を持つワニス用途等へ好適に使用することが出来る。また、融点も大幅に低下していることから比較的低温で溶解が求められる半導体封止材料等への使用も可能である。
表3中、マレイミド樹脂単体における硬化性評価により、2級アミン保護をしていない比較例5はゲル化を生じているが、2級アミンを保護した実施例7では単体での反応が進行していない。したがって2級アミンの保護による熱安定性が付与されている。
また、アリルフェノール化合物及び硬化促進剤を含む組成物の硬化性評価では、実施例7において良好な硬化性を与える。比較例5の組成物のゲル化時間が長いことは、2級アミンを保護していない樹脂Dの熱時安定性が悪く、マレイミドの自己重合が優先して進行し、アリルフェノールノボラックとの共重合が進まないことが原因として考えられる。したがって、本発明のマレイミド樹脂は単体での自己重合性を抑制した熱安定性を有しており、アリルフェノール樹脂と好適に硬化物を与えることが出来る。
表4に示す硬化物評価においては、本発明のマレイミド樹脂を用いた実施例8において優れた靱性と銅箔への密着強度を示す。マイケル付加反応によりマレイミド樹脂中に柔軟ユニットを導入することにより靱性向上、あるいは基材への濡れ性向上に伴い銅箔への密着性が向上した。表4において比較例6に比して実施例8の硬化物の靭性が向上していることは、マレイミド樹脂構造中のジアミン由来の窒素原子を、保護剤により2級アミンから安定な3級アミンとしたことで、硬化反応において樹脂構造中のジアミン由来の窒素原子とマレイミド基との反応等が抑制されたことが理由と考えられる。また実施例8の硬化物は一定のTgを有し、十分な耐熱性を有することが示された。
以上の通り、本発明によって、硬化物の靱性、密着性が改良され耐熱性の高いマレイミド樹脂組成物を与えるマレイミド樹脂を提供することができる。更に、本発明により、溶剤溶解性が優れるので溶媒に均一に容易に溶解でき、例えば積層板や層間絶縁材料を製造する用途に好適に用いることができるマレイミド樹脂及びそれを用いたマレイミド樹脂組成物、及び硬化物を提供できる。また本発明のマレイミド樹脂は、従来のビスマレイミド化合物と比較して融点も低くなっているため、比較的低温で融解させることが容易であり、例えば半導体封止材料等においても好適に用いることが出来る。

Claims (10)

  1. 下記一般式(1)で表されるマレイミド樹脂。
    Figure 0006948907
    (式中、Xは、下記式(e)の基を表し、Yはそれぞれ独立に1個以上50個以下の炭素原子を含む2価の基を表し、zはそれぞれ独立に、酸無水物残基又はハロゲン化物残基である1価の基を表し、nはそれぞれ独立に0〜20の整数を表す。但しnの平均値であるn’は0を超える値である。)
    Figure 0006948907
  2. n=0成分が90%以下である請求項1に記載のマレイミド樹脂。
  3. 示差走査熱量測定による融点が150℃以下である請求項1又は2に記載のマレイミド樹脂。
  4. 25℃におけるメチルエチルケトン100gあたりの溶解性が100g以上である請求項1〜3の何れか1項に記載のマレイミド樹脂。
  5. 下記一般式(2)で表される1分子中に2つのマレイミド基を有するマレイミド化合物と、
    Figure 0006948907
    (式中Xは、下記式(e)の基を表す。)
    Figure 0006948907
    下記一般式(3)で表される1分子中に2つのアミノ基を有するジアミン化合物と、
    Figure 0006948907
    (式中Yは1個以上50個以下の炭素原子を含む2価の基を表す。)を反応させて下記一般式(4)で表されるマレイミド樹脂を得る工程と、
    Figure 0006948907
    (式中Xは、前記式(e)の基を表し、Yはそれぞれ独立に1個以上50個以下の炭素原子を含む2価の基を表し、nはそれぞれ独立に0〜20の整数を表す。但しnの平均値であるn’は0を超える値である。)
    前記一般式(4)で表されるマレイミド樹脂と、酸無水物又はハロゲン化物から選択される保護剤とを反応させる工程と、を含む、下記一般式(1)で表されるマレイミド樹脂の製造方法。
    Figure 0006948907
    (式中X、Y及びnは一般式(4)と同じである。zはそれぞれ独立に、酸無水物残基又はハロゲン化物残基である1価の基を表す。)
  6. 一般式(3)で表される1分子中に2つのアミノ基を有するジアミン化合物が、直鎖脂肪族ジアミンである請求項5に記載のマレイミド樹脂の製造方法。
  7. 保護剤が無水酢酸であることを特徴とする請求項5又は6に記載のマレイミド樹脂の製造方法。
  8. 請求項1〜4の何れか1項に記載のマレイミド樹脂を含むマレイミド樹脂組成物。
  9. 請求項8のマレイミド樹脂組成物の硬化物。
  10. 下記一般式(1’)で表されるマレイミド樹脂。
    Figure 0006948907
    (式中、Xは、下記式(e)の基を表し、Yはそれぞれ独立に1個以上50個以下の炭素原子を含む2価の基を表し、zはそれぞれ独立に、酸無水物残基又はハロゲン化物残基である1価の基を表し、nは1〜20の整数を表す。)
    Figure 0006948907
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