以下、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照して説明する。図1は第1実施の形態における点火プラグ10の軸線Oを境にした片側断面図である。図2(a)は図1のIIaで示す部分を拡大した部分拡大図であり、図2(b)は図1のIIbで示す部分を拡大した部分拡大図である。図1では、紙面下側を点火プラグ10の先端側、紙面上側を点火プラグ10の後端側という(図2から図6においても同じ)。
図1に示すように点火プラグ10は、絶縁体11と、導電体20と、絶縁体11を介して導電体20を絶縁保持する主体金具30と、導電体20と絶縁体11との間に配置された抵抗体50と、を備えている。
絶縁体11は、高温下の絶縁性や機械的特性に優れるアルミナ等により形成された有底円筒状の部材である。絶縁体11の内部表面12は、絶縁体11の後端に開口し先端が閉じている。絶縁体11の内部表面12は軸線Oに沿って形成されており、軸線Oに垂直な断面は円形である。内部表面12の先端側には、先端側へ向かって縮径する環状の後端向き面13が形成されている。
絶縁体11は、径方向の外側へ張り出す第1係止部14が、外周面に形成されている。絶縁体11は、第1係止部14よりも後端側の絶縁体11の外周面に、第2係止部15が形成されている。第1係止部14の先端の外径は、第2係止部15の先端の外径よりも小さい。本実施形態では、第1係止部14は絶縁体11の後端向き面13よりも後端側に位置する。
導電体20は複数の部位からなり、軸線Oに沿って先端側から後端側へと延び、絶縁体11の内部表面12の内側に配置されている。導電体20は、本実施形態では中心電極21、端子金具25及び接続部28を備えている。
中心電極21は導電性を有する金属材料(例えばニッケル基合金等)によって形成された棒状の部材である。中心電極21は軸線Oに沿って絶縁体11の内部表面12の先端側に配置されている。中心電極21は、絶縁体11の後端向き面13に係止され、軸線Oに沿って後端向き面13よりも先端側に第1軸部22が延び、後端向き面13よりも後端側に第2軸部23が延びている。絶縁体11の後端向き面13は、主体金具30の先端40よりも後端側に位置する。第2軸部23の後端は、主体金具30の後端41よりも後端側に位置する。
端子金具25は、交流電圧やパルス電圧が入力される棒状の部材であり、導電性を有する金属材料(例えば低炭素鋼等)によって形成されている。端子金具25は、先端部26が絶縁体11の内側に挿入され、後端部27が絶縁体11から後端側へ突出している。端子金具25は、先端部26が、導電性ガラス等の接続部28により中心電極21の第2軸部23に電気的に接続されている。
主体金具30は、導電性を有する金属材料(例えば低炭素鋼等)によって形成された略円筒状の部材である。主体金具30は、外周面の少なくとも一部におねじ31が形成された胴部32と、胴部32の後端側に隣接する座部33と、座部33の後端側に隣接する連結部34と、連結部34の後端側に隣接する拡径部35と、拡径部35の後端側に隣接する後端部36と、を備えている。
胴部32に形成されたおねじ31は、エンジン(図示せず)のねじ穴に螺合する。座部33は、エンジン(図示せず)のねじ穴とおねじ31との隙間を塞ぐための部位である。連結部34は、主体金具30を絶縁体11に組み付けるときに湾曲状に塑性変形した部位である。拡径部35は、エンジンのねじ穴におねじ31を締め付けるときに、レンチ等の工具が係合する工具係合部である。後端部36は径方向の内側へ向けて屈曲した部位であり、絶縁体11の第2係止部15よりも後端側に位置する。
胴部32の内周面に、パッキン37(図2(b)参照)を介して、絶縁体11の第1係止部14を先端側から係止する棚部38が形成されている。パッキン37は、主体金具30を構成する金属材料よりも軟質の軟鋼板等の金属製の円環状の板材である。
絶縁体11の第2係止部15よりも後端側の外周面の全周に亘って、第2係止部15と後端部36との間に、タルク等の粉末が充填されたシール部39が設けられている。主体金具30の棚部38から後端部36までの部位は、絶縁体11の第1係止部14から第2係止部15までの部位に、パッキン37及びシール部39を介して軸線方向の圧縮荷重を加える。これにより主体金具30は第1係止部14及び第2係止部15を係止し、絶縁体11を保持する。
絶縁体11の先端部16は、主体金具30に保持された絶縁体11のうち主体金具30の先端40から先端側に突出する有底筒状の部位である。先端部16は、中心電極21の第1軸部22の先端24の周囲を取り囲む。先端部16は、先端側に位置する第1部16aと、第1部16aの後端に隣接する第2部16bと、からなる。第1部16aは、肉厚(径方向の厚さ)が、第2部16bの肉厚よりも薄い部位である。本実施形態では、第1部16aの肉厚は、先端の近傍を除き、軸線方向の全長に亘って同一である。
抵抗体50は、導電体20に印加された交流電圧やパルス電圧による電流が、導電体20と主体金具30との間に流れるのを抑制する部材である。抵抗体50は、絶縁体11の内部表面12と中心電極21の第2軸部23との間に配置されている。
抵抗体50は、骨材と導電性粉末とを混合したものが用いられる。抵抗体50の骨材としては、例えばガラス粉末、無機化合物粉末が挙げられる。ガラス粉末としては、例えばB2O3−SiO2系、BaO−B2O3系、SiO2−B2O3−CaO−BaO系、SiO2−ZnO−B2O3系、SiO2−B2O3−Li2O系およびSiO2−B2O3−Li2O−BaO系等の粉末が挙げられる。無機化合物粉末としては、例えばアルミナ、窒化ケイ素、ムライト及びステアタイト等の粉末が挙げられる。これらの骨材は1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
抵抗体50の導電性粉末としては、例えば半導性酸化物、金属および非金属導電性材料等からなる粉末が挙げられる。半導性酸化物としては、例えばSnO2が挙げられる。金属としては、例えばZn,Sb,Sn,Ag及びNi等が挙げられる。非金属導電性材料としては、例えば無定形カーボン(カーボンブラック)、グラファイト、炭化ケイ素、炭化チタン、窒化チタン、炭化タングステン及び炭化ジルコニウム等が挙げられる。これらの導電性粉末は、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
抵抗体50は、主体金具30と導電体20とが軸線方向に重なる領域42の少なくとも一部に配置される。本実施形態では、抵抗体50の先端は絶縁体11の後端向き面13に位置し、抵抗体50の後端は主体金具30の後端41よりも後端側に位置する。絶縁体11の後端向き面13は、主体金具30の先端40よりも後端側に位置するので、抵抗体50の先端は主体金具30の先端40よりも後端側に位置する。抵抗体50は、自身の先端から後端まで連続する円筒状に形成されている。
抵抗体50は、軸線方向において、主体金具30の内周面のうち内側に凸である部位の少なくとも一部に存在する。図2(a)及び図2(b)に示すように、主体金具30の内周面のうち内側に凸である部位としては、後端部36の内側の縁43、連結部34の内側の縁44,45、座部33の内側の縁46、棚部38の内側の縁49が挙げられる。
絶縁体11の第1係止部14に接触するパッキン37の角47,48も、内側に凸である。パッキン37の角47,48及び棚部38の縁49と導電体20との間の各々の距離は、縁43,44,45,46と導電体20との間の各々の距離よりも短い。本実施形態では、主体金具30の内周面のうち内側に凸である部位の全て、及び、パッキン37の径方向の内側に抵抗体50が配置されている。
点火プラグ10は、例えば以下のような方法によって製造される。まず、絶縁体11に中心電極21を挿入し、中心電極21を後端向き面13に係止する。次いで、抵抗体50の原料粉末を絶縁体11の内部表面12と中心電極21の第2軸部23との間に充填する。圧縮用棒材(図示せず)を用いて、絶縁体11の内部に充填した原料粉末を予備圧縮する。次に、接続部28の原料粉末を、抵抗体50の原料粉末の後端側に充填する。圧縮用棒材を用いて、絶縁体11の内部に充填した原料粉末を予備圧縮する。
次いで、絶縁体11を炉内に移送し、例えば原料粉末に含まれるガラス成分の軟化点より高い温度まで加熱する。原料粉末を軟化させた後、絶縁体11に挿入した端子金具25によって、軟化した原料粉末を軸線方向へ圧縮する。この結果、原料粉末が圧縮・焼結され、絶縁体11の内部に抵抗体50及び接続部28が形成される。次に、主体金具30に絶縁体11を挿入し、連結部34及び後端部36を屈曲して主体金具30を絶縁体11に組み付け、点火プラグ10を得る。
エンジン(図示せず)に取り付けられた点火プラグ10の導電体20と主体金具30との間に交流電圧やパルス電圧が入力されると、絶縁体11の先端部16の表面に非平衡プラズマ(ストリーマ放電)が生じる。非平衡プラズマは熱エネルギーへの変換が少ないので、燃焼室(図示せず)内の可燃混合気の温度はあまり上がらないが、高いエネルギーをもつ電子が生成される。この高いエネルギーをもつ電子の衝突によりO,N,OH等のラジカルが大量に生成され、発熱反応による温度上昇およびラジカルによる連鎖反応が進行し点火に至る。
しかし、導電体20と主体金具30との間にコロナ放電等の不正な放電が生じ、導電体20に印加された交流電圧やパルス電圧による電流の一部が導電体20と主体金具30との間を流れると、導電体20に入力されたエネルギーの一部が失われる。そうすると、その分だけ、プラズマが生成する高いエネルギーをもつ電子の量が減少する。発熱反応による温度上昇およびラジカルによる連鎖反応が進行し難くなるので、点火し難くなるおそれがある。
これを防ぐために点火プラグ10は、導電体20と絶縁体11の内部表面12との間の、主体金具30と導電体20とが軸線方向に重なる領域42の少なくとも一部に抵抗体50が配置される。これにより導電体20に印加された交流電圧やパルス電圧による電流が導電体20と主体金具30との間を流れ難くなるので、先端部16にプラズマを生じさせるエネルギーの損失を抑制できる。よって、点火プラグ10の点火性能を向上できる。
抵抗体50の先端は主体金具30の先端40よりも後端側に位置するので、抵抗体50に妨げられることなく先端部16の表面にプラズマを発生できる。
抵抗体50は、軸線方向において、主体金具30の内周面のうち内側に凸である部位(縁43−46,49)の少なくとも一部に存在する。これらの各部位は電界が集中し易く不正な放電が生じ易いので、これらの少なくとも一部に抵抗体50が存在することにより、これらの各部位と導電体20との間に電流をより流れ難くできる。よって、先端部16にプラズマを生じさせるエネルギーの損失をより抑制できる。
抵抗体50は、軸線方向において、パッキン37の位置に存在する。パッキン37の位置(パッキン37の角47,48及び棚部38の縁49)は電界が集中し易いだけでなく、導電体20との間の距離が近く電流が流れやすい。軸線方向において、パッキン37の位置に抵抗体50を存在させることにより、先端部16にプラズマを生じさせるエネルギーの損失をより抑制できる。
図3を参照して第2実施の形態について説明する。第1実施形態では、抵抗体50の先端が主体金具30の先端40よりも後端側に位置する場合について説明した。これに対し第2実施形態では、抵抗体68の先端69が主体金具30の先端40よりも先端側に位置する場合について説明する。なお、第1実施形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図3は第2実施の形態における点火プラグ60の片側断面図である。
点火プラグ60は、絶縁体11の内部に配置された導電体61と、絶縁体11を保持する主体金具30と、導電体61と絶縁体11との間に配置された抵抗体68と、を備えている。導電体61は複数の部位からなり、軸線Oに沿って先端側から後端側へと延びている。導電体61は、本実施形態では中心電極62及び端子金具63を備えている。
中心電極62は導電性を有する金属材料(例えばニッケル基合金等)によって形成された棒状の部材である。中心電極62は、絶縁体11の内部表面12の内側に、内部表面12と隙間をあけて軸線Oに沿って配置されている。中心電極62の後端は、絶縁体11の後端向き面13よりも後端側に位置する。
端子金具63は、交流電圧やパルス電圧が入力される棒状の部材であり、導電性を有する金属材料(例えば低炭素鋼等)によって形成されている。端子金具63は、先端部64が絶縁体11の内側に挿入され、後端部65が絶縁体11から後端側へ突出している。端子金具63は、先端部64が、導電性ガラス等の接続部66により中心電極62に接続されている。
絶縁体11の内部表面12と中心電極62との間に第1導体67が充填されている。本実施形態では、第1導体67は先端部16の内部表面12と中心電極62とに接触している。第1導体67は少なくとも第1部16aに存在する。第1導体67は導電性粉末やろう材等により形成される。ろう材としては、例えば金ろう、銀ろう、白金ろう、ニッケルろう、銅ろう、りん青銅ろう、黄銅ろう、りん銅ろう等が挙げられる。
第1導体67の導電性粉末としては、例えば半導性酸化物、金属および非金属導電性材料等からなる粉末が挙げられる。半導性酸化物としては、例えばSnO2が挙げられる。金属としては、例えばAu,Ag,Cu,W,Ni及びPt等が挙げられる。金属は磁気モーメントによるエネルギー損失を抑制するため、Cu等の非磁性金属が好ましい。非金属導電性材料としては、例えば無定形カーボン(カーボンブラック)、グラファイト、炭化ケイ素、炭化チタン、窒化チタン、炭化タングステン及び炭化ジルコニウム等が挙げられる。
抵抗体68は第1導体67の後端に隣接し、後端向き面13よりも後端側まで軸線Oに沿って延びている。抵抗体68は略円筒状に形成されている。抵抗体68の材質は、第1実施形態の抵抗体50の材質と同様なので、説明を省略する。抵抗体68は、軸線方向において、パッキン37(図2(a)参照)の位置に少なくとも存在する。抵抗体68の先端69は、主体金具30の先端40よりも先端側であって、第1部16aと第2部16bとの境界に位置する。
点火プラグ60は、例えば以下のような方法によって製造される。まず、絶縁体11の内部表面12の先端に、第1導体67の粉末等の原料を少量供給する。第1導体67にろう材を用いる場合、ろう材は箔、線材、箔、粉末、ペースト等の種々の状態で供給できる。絶縁体11に中心電極62を挿入し、第1導体67の原料の後端側に中心電極62を配置した後、第1導体67の残りの原料を、中心電極62と先端部16の内部表面12との間に充填する。
次いで、抵抗体68の原料粉末を絶縁体11の内部表面12と中心電極62との間に充填する。圧縮用棒材(図示せず)を用いて、絶縁体11の内部に充填した原料粉末を予備圧縮する。次に、接続部66の原料粉末を、抵抗体68の原料粉末の後端側に充填する。圧縮用棒材を用いて、絶縁体11の内部に充填した原料粉末を予備圧縮する。その後、第1実施形態と同様に絶縁体11を加熱し、絶縁体11の内部に抵抗体68及び接続部66を形成した後、主体金具30を絶縁体11に組み付け、点火プラグ60を得る。
点火プラグ60の導電体61と絶縁体11の内部表面12との間に配置された抵抗体68は、軸線方向において、少なくともパッキン37の位置(パッキン37の角47,48及び棚部38の縁49(図2(b)参照))に存在する。これらの各部位は電界が集中し易く不正な放電が生じ易いので、抵抗体68によって放電の発生を抑制することにより、先端部16にプラズマを生じさせるエネルギーの損失を抑制できる。これにより抵抗体68の体積を小さくできると共に、点火プラグ60の点火性能を向上できる。
点火プラグ60は、抵抗体68の先端69よりも先端側の絶縁体11(先端部16)の内部に第1導体67が充填されており、第1導体67は導電体61に電気的に接続されている。先端部16の内部表面12と導電体61(中心電極62)との隙間が第1導体67に埋められるので、第1導体67により先端部16の表面の広い範囲にプラズマを発生できる。
第1導体67により中心電極62と絶縁体11の内部表面12との隙間(空気層)をなくすことができる。隙間(空気層)があると点火プラグの見かけの誘電率が低下するので、その分だけ絶縁体の表面に蓄えられる電荷が少なくなる。そのため、点火プラグに投入された電力に対して出力(プラズマの発生量)が低下する、即ちエネルギーの損失が生じるという問題点がある。これに対し点火プラグ60によれば、中心電極62と絶縁体11の内部表面12との隙間(空気層)が見かけの誘電率に与える影響を抑制できるので、エネルギーの損失を抑制できる。
抵抗体68の先端69は、軸線方向において、主体金具30の先端40よりも先端側に位置するので、主体金具30の先端40と導電体61との間に不正な放電を生じ難くできる。抵抗体68の先端69は、先端部16の第1部16aと第2部16bとの境界に位置し、第2部16bよりも肉厚が薄くプラズマが生じ易い第1部16aに抵抗体68は存在しないので、抵抗体68に妨げられることなく第1部16aの表面にプラズマを発生できる。
絶縁体11の内部表面12と中心電極62との間に充填された第1導体67の後端に隣接して抵抗体68が配置される。第1導体67によって、抵抗体68の先端69の位置を定めることができる。抵抗体68の先端69は主体金具30の先端40よりも先端側に位置するので、第1導体67及び抵抗体68により、プラズマが発生し易い部位と発生し難い部位とを先端部16の表面に区画できる。
図4及び図5を参照して第3実施の形態について説明する。第3実施形態では、主体金具30に接地電極71,74が接続された点火プラグ70について説明する。なお、第1実施形態および第2実施形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図4は第3実施の形態における点火プラグ70の片側断面図であり、図5は先端部16の軸線Oを含む断面図である。
図4に示すように点火プラグ70は、絶縁体11の内部に配置された導電体61と、絶縁体11を保持する主体金具30と、主体金具30に接続された接地電極71,74と、導電体61と絶縁体11との間に配置された抵抗体68と、を備えている。
接地電極71,74は、主体金具30の胴部32に接合された棒状の金属製(例えばニッケル基合金製)の部材である。本実施形態では、接地電極71,74は軸線Oに沿って配置されており、軸線Oに垂直な断面が矩形状である。接地電極71の一端部72及び接地電極74の一端部75は主体金具30に接続されている。接地電極74の他端部76は、接地電極71の他端部73よりも先端側に位置する。接地電極71の他端部73及び接地電極74の他端部76は、軸線Oを中心にして互いに180°離れた位置に存在する。
図5に示すように、接地電極71,74は他端部73,76を除き、軸線Oに平行に配置されている。他端部73,76は絶縁体11の先端部16へ向かって屈曲しているので、接地電極71,74の中で他端部73,76は先端部16との距離が最も短い。接地電極71,74の他端部73,76は、先端部16のうち中心電極62と軸線方向に重なる部位との間に、放電ギャップ77,78をそれぞれ形成する。
絶縁体11は、先端部16の内部表面12に導電層79が形成されている。導電層79は、化学的または物理的な力によって絶縁体11の内部表面12に結合した導電性を有する層である。本実施形態では、第1部16aの内部表面12の先端から第1部16aと第2部16bとの境界までの全面が導電層79で覆われている。導電層79は、例えばめっき、導電ペースト等の導電性樹脂材料の塗布、溶射、蒸着などにより形成される。本実施形態では、無電解ニッケルめっきにより導電層79が形成されている。
導電層79と中心電極62との間に第2導体80が充填されている。第2導体80は導電層79と中心電極62とに接触している。第2導体80の材質は、第2実施形態の第1導体67の材質と同様なので、説明を省略する。抵抗体68は第2導体80の後端に隣接する。抵抗体68の先端69は、導電層79の後端よりも後端側に位置する。また、抵抗体68の先端69は、接地電極71,74の他端部73,76よりも後端側に位置する。
点火プラグ70は、例えば、以下のような方法によって製造される。まず、絶縁体11の先端部16の内部表面12に導電層79を形成する。次に、先端部16の内部表面12の先端に形成された導電層79の上に、第2導体80の粉末等の原料を少量供給する。第2導体80にろう材を用いる場合、ろう材は箔、線材、箔、粉末、ペースト等の種々の状態で供給できる。絶縁体11に中心電極62を挿入し、第2導体80の原料の後端側に中心電極62を配置した後、第2導体80の残りの原料を、中心電極62と先端部16の内部表面12との間に充填する。その後、第1実施形態と同様に絶縁体11を加熱し、絶縁体11の内部に抵抗体68及び接続部66を形成した後、主体金具30を絶縁体11に組み付け、点火プラグ70を得る。
点火プラグ70は、抵抗体68の先端69が、接地電極71,74の他端部73,76よりも後端側に位置する。接地電極71,74の他端部73,76に電界を集中させ易くできるので、他端部73,76と先端部16との間に放電を生じさせ易くできる。その結果、抵抗体68に妨げられることなく先端部16と接地電極71,74との間にプラズマを発生できる。
先端部16の内部表面12の少なくとも一部に、化学的または物理的な力によって内部表面12に結合する導電層79が形成され、導電層79は導電体61に電気的に接続される。導電層79により中心電極62と絶縁体11の内部表面12との隙間(空気層)をなくすことができるので、隙間(空気層)が見かけの誘電率に与える影響を抑制できる。よって、先端部16にプラズマを生じさせるエネルギーの損失を抑制できる。
先端部16のうち導電層79が形成された部位に少なくとも第2導体80が充填され、第2導体80は導電体61と接続されるので、第2導体80により抵抗体68の先端69の位置を定めることができる。その結果、第2導体80及び抵抗体68により、プラズマが発生し易い部位と発生し難い部位とを先端部16の表面に区画できる。
図6を参照して第4実施の形態について説明する。第1実施形態から第3実施形態では、抵抗体50,68が軸線方向に連続する場合について説明した。これに対し第4実施形態では、第1抵抗体92及び第2抵抗体94(抵抗体)が軸線方向に離間する場合について説明する。なお、第1実施形態から第3実施形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図6は第4実施の形態における点火プラグ90の先端部16の軸線Oを含む断面図である。
図6に示すように点火プラグ90は、絶縁体11の内部に配置された導電体61(中心電極62)と、絶縁体11を保持する主体金具30と、主体金具30に接続された接地電極71,74と、導電体61と絶縁体11との間に配置された第1抵抗体92及び第2抵抗体94と、を備えている。
点火プラグ90は、絶縁体11の内部表面12と中心電極62との間に、先端側から後端側へ順に、第1導体91、第1抵抗体92、第1導体93及び第2抵抗体94が充填されている。第2抵抗体94の後端の位置は、第2実施形態の抵抗体68の後端と同じ位置である。第1導体91,93は、絶縁体11の内部表面12及び中心電極62に接触している。第1導体91,93の材質は、第2実施形態の第1導体67の材質と同様であり、第1抵抗体92及び第2抵抗体94の材質は、第1実施形態の抵抗体50の材質と同様なので、いずれも説明を省略する。
軸線方向において、第1導体91は先端部16の内部表面12の先端に位置し、第1抵抗体92は第1導体91の後端に隣接する。第1導体93は第1抵抗体92の後端に隣接し、第2抵抗体94は第1導体93の後端に隣接する。第2抵抗体94の先端94aは、主体金具30の先端よりも先端側であって、接地電極71の他端部73よりも後端側に位置する。第1導体93の先端93aは、接地電極71の他端部73よりも先端側に位置し、第1抵抗体92の先端92aは、接地電極74の他端部76よりも後端側に位置する。中心電極62及び第1導体91は、接地電極74の他端部76と重なる位置に配置されている。
点火プラグ90は、例えば以下のような方法によって製造される。まず、絶縁体11の内部表面12の先端に、第1導体91の粉末等の原料を供給する。絶縁体11に中心電極62を挿入し、第1導体91の原料の後端側に中心電極62を配置した後、第1抵抗体92の原料を、中心電極62と先端部16の内部表面12との間に充填する。次いで、第1導体93の原料、第2抵抗体94の原料を順に充填する。その後、第1実施形態と同様に絶縁体11を加熱し、絶縁体11の内部に接続部66を形成した後、主体金具30を絶縁体11に組み付け、点火プラグ90を得る。
点火プラグ90は、第1抵抗体92の先端92aが、接地電極74の他端部76よりも後端側に位置し、第1導体91が、接地電極74の他端部76と重なる位置に配置されている。第1導体91は中心電極62に接続されているので、第1導体91と接地電極74との間にストリーマ放電を生じさせることができる。
また、第2抵抗体94の先端94aが、接地電極71の他端部73よりも後端側に位置し、第1導体93が、接地電極71の他端部73と重なる位置に配置されている。第1導体93は中心電極62に接続されているので、第1導体93と接地電極71との間にストリーマ放電を生じさせることができる。
第2抵抗体94の先端94aは主体金具30の先端よりも先端側に位置するので、接地電極71の他端部73以外の部位と中心電極62との間に放電を生じ難くできる。また、第1導体93と第1導体93との間に第1抵抗体92が存在するので、接地電極74の他端部76以外の部位と中心電極62との間に放電を生じ難くできる。これにより接地電極71,74の他端部73,76と絶縁体11の先端部16との間に、局所的にプラズマを生じさせ易くできる。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
実施形態では、絶縁体11の先端部16のうち第1部16aの外径が、軸線方向の全長に亘って同一の場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、第1部16aの先端側の外径が後端側の外径よりも小さくなるように第1部16aの外周面を先端側へ向けて縮径させたり、第1部16aの先端側の外径が後端側の外径よりも大きくなるように第1部16aの外周面を先端側へ向けて拡径させたりすることは当然可能である。また、第1部16aの軸線方向の中央付近の外径が先端側の外径や後端側の外径よりも大きくなるように第1部16aの外周面を中央が膨らんだ円筒状にすることは当然可能である。先端部16の外周面の形状を適宜変更することより、絶縁体11の先端部16の径方向の厚さ等との関係で、先端部16の周囲の電界強度を適宜設定できる。
実施形態では、絶縁体11の先端部16の先端が平面状に形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、先端部16の先端を球冠状にすることは当然可能である。
実施形態では、抵抗体50,68、第1抵抗体92及び第2抵抗体94が、円筒状に形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。軸線Oに垂直な断面が円弧状となるように抵抗体を形成することは当然可能である。この場合、絶縁体11の内部表面12と導電体20との間に配置できる抵抗体を予め準備しておき、絶縁体11の内部に導電体20,61を配置するときに、絶縁体11の内部に抵抗体を挿入する。予め準備しておいた抵抗体を絶縁体11の内部に配置するので、抵抗体を任意の形状にできる。この場合も抵抗体が配置された部位で不正放電の発生を抑制できるので、エネルギー損失を抑制できる。
第3実施形態で説明した導電層79を、第1実施形態、第2実施形態および第4実施形態の先端部16の内部表面12に形成することは当然可能である。第1実施形態、第2実施形態および第4実施形態の先端部16に導電層79を形成した場合、中心電極21,62を導電層79に直接接触させても良いし、中心電極21,62と導電層79との間に第2導体を充填し、第2導体を介して中心電極21,62を導電層79に接続しても良い。
第3実施形態および第4実施形態では、接地電極の数が2つの場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。接地電極の数は適宜設定できるので、接地電極の数を1つ、3つ又はそれ以上にすることは当然可能である。
第3実施形態および第4実施形態では、接地電極71,74が直線状に形成され、さらに各電極の他端部側の部位が軸線Oと平行に配置される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。軸線Oを含む平面に接地電極が含まれるように各電極の端部側の部位を傾け、各電極の他端部と先端部16との間に放電ギャップを形成することは当然可能である。また、軸線Oに対してねじれの位置に接地電極を配置したり、接地電極を曲線状にしたりすることは当然可能である。
第4実施形態では第1導体91,93間に第1抵抗体92が配置される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第1抵抗体92の代わりに導体を充填して、第1導体91から第1導体93まで連続させることは当然可能である。