JP6940847B2 - 窒素元素を含んでなる球状炭素粒子および球状炭素粒子の製造方法 - Google Patents
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また、特許文献2には、(1)無機顔料を水性媒体中で湿式解砕し、無機顔料の水分散体を調製する工程、(2)水性分散体とアミノ樹脂初期反応物とを混合し、着色された樹脂液を調製する工程、(3)着色された樹脂液を水媒体中に乳化または懸濁分散させ、着色樹脂分散液を調製する工程、および(4)着色樹脂分散液を加熱下に縮合硬化した後に、分離して着色樹脂微粒子を得る工程を含む、着色樹脂球状微粒子の製造方法が開示されており、アミノ樹脂初期反応物がメラミンとホルムアルデヒドを重縮合反応して得られる樹脂であってよいことも開示されている。
また、特許文献3には、無粉砕で、真円度が0.9〜1.0で粒径が0.01μm〜10μmの形態を有することを特徴とする球状超微粒子が開示されており、その製造方法として、多数の貫通孔を有する基盤を定速度振動させることにより、圧送される無機物または有機物のスラリー状液状物を均一液状粒子に分断し、均一液状粒子を炭化、賦活、酸化、還元、脱アルカリ工程等に付すことを特徴とする、球状超微粒子の製造方法も開示されている。同文献には、有機物が、フェノール樹脂やメラミン樹脂のような熱硬化性樹脂であってよいことも開示されている。
上述した通り、特許文献3には、有機物の球状超微粒子は記載されている。しかし、同文献には、超微粒子状の炭素を得るためにはフェノール樹脂やフリフラール樹脂を使用すべきであることが記載されており、有機物としてはフェノール樹脂を使用した実施例のみが記載されている。また、同文献における球状超微粒子の製造には、特殊な装置が必要とされ、工程数も多いといった問題がある。
更に、高濃度で窒素元素を含む球状炭素粒子は、従来技術では知られていない。
[1]窒素元素の含有量が球状炭素粒子の質量に対して20質量%以上60質量%以下である、球状炭素粒子。
[2]上記球状炭素粒子に含まれる窒素元素の総質量に対して20質量%以上65質量%以下の窒素元素はピリジン型窒素元素である、上記[1]に記載の球状炭素粒子。
[3]上記球状炭素粒子の平均粒子径は100nm以上3.0μm以下である、上記[1]または[2]に記載の球状炭素粒子。
[4]メラミンを重合し、重合体を得る重合工程、および
得られた重合体に炭化処理を施す炭化工程
を含む、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の球状炭素粒子の製造方法。
[5]上記炭化工程を、300℃以上1800℃以下の温度で不活性ガス雰囲気下に行う、上記[4]に記載の製造方法。
本発明の球状炭素粒子に含まれる窒素元素の量は、球状炭素粒子を製造する際に使用する出発材料および炭化処理条件に依存し、球状炭素粒子の質量に対して、20質量%以上60質量%以下である。前記窒素元素の量が20質量%未満であると、炭素に由来する物性が支配し、窒素を導入した効果を得ることができず、前記窒素元素の量が60質量%より大きいと、熱安定性が低く形状を維持することができない。前記窒素元素の量は、球状炭素粒子の質量に対して、好ましくは25質量%以上60質量%以下、より好ましくは27質量%以上58質量%以下、より好ましくは30質量%以上56質量%以下、より好ましくは35質量%以上50質量%以下、特に好ましくは36質量%以上45質量%以下である。球状炭素粒子の出発材料としてメラミンを使用し、熱分解を抑制した温度で炭化することにより、球状炭素粒子に含まれる窒素元素の量が上記範囲内になりやすくなる。球状炭素粒子に含まれる窒素元素の量が上記範囲内であると、窒素元素含有の効果(例えば電気的効果)が好適に得られやすく、酸素に対する良好な安定性が得られやすい。本発明において窒素元素の含有量は、酸素・窒素・水素分析装置(例えば、堀場製作所製EMGA-930)を用いて測定される。
好ましくは、本発明の球状炭素粒子に含まれる窒素元素の総質量に対して20質量%以上65質量%以下の窒素元素は、ピリジン型窒素元素である。球状炭素粒子の出発材料としてメラミンを使用し、熱分解を抑制した温度で炭化することにより、球状炭素粒子に含まれる窒素元素におけるピリジン型窒素元素の割合が上記範囲内になりやすくなる。前記割合は、球状炭素粒子に含まれる窒素元素の総質量に対して、より好ましくは25質量%以上65質量%以下、より好ましくは30質量%以上65質量%以下、より好ましくは35質量%以上65質量%以下、より好ましくは40質量%以上65質量%以下、より好ましくは45質量%以上65質量%以下、より好ましくは50質量%以上65質量%以下、特に好ましくは55質量%以上65質量%以下である。球状炭素粒子に含まれる窒素元素におけるピリジン型窒素元素の割合が上記範囲内であると、導電性部材、電池またはキャパシタ等において球状炭素粒子を使用した際に電気容量が増加しやすい。球状炭素粒子に含まれる窒素元素におけるピリジン型窒素元素の割合が高いほど、電気容量は増加しやすい。本発明において各形態の窒素元素の割合は、X線光電子分光分析装置(例えば、アルバックファイ株式会社製PHI 5000 VersaProbe III)を用いて求められる。
本発明の上記球状炭素粒子の平均粒子径は、好ましくは100nm以上3.0μm以下、より好ましくは110nm以上2.9μm以下、より好ましくは550nm以上2.8μm以下、より好ましくは560nm以上2.7μm以下、特に好ましくは570nm以上2.6μm以下である。球状炭素粒子の出発材料としてメラミンを使用し、メチロール化し、後に記載するように重合工程を溶媒中で行う場合のメチレンまたはメチロール体の濃度を調整することにより、球状炭素粒子の平均粒子径が上記範囲内になりやすくなる。球状炭素粒子の平均粒子径が上記範囲内であると、球状炭素粒子の良好な機械的強度が得やすく、球状を維持しやすい。炭素粒子の形状が球状であれば、粒子径を小さくしつつも表面積を大きく、密度を小さくすることができることから、窒素元素を含有することによる特有の効果(例えば電気的効果)が得られやすい。本発明において平均粒子径は、透過電子顕微鏡(例えば、日本電子株式会社製JEM3200-FS)を用いて測定される。
本発明の球状炭素粒子は、例えば、
メラミンを重合し、重合体を得る重合工程、および
得られた重合体に炭化処理を施す炭化工程
を含む方法によって製造される。
重合工程では、メラミンを重合し、重合体を得る。
出発材料としてメラミンを使用することにより、核剤を使用しなくても、良好な炭化収率が達成され、高濃度の窒素元素を含む球状の炭素粒子が得られる。
出発材料として、いずれのメチロール体を使用しても、良好な炭化収率が達成され、高濃度の窒素元素を含む球状の炭素粒子が得られる。重合の安定性の観点からは、トリヒドロキシメチルメラミン、テトラヒドロキシメチルメラミン、ペンタヒドロキシメチルまたはヘキサヒドロキシメチルメラミンを使用することが好ましく、ヘキサヒドロキシメチルメラミンを使用することが特に好ましい。
本発明において使用されるラジカル開始剤は、特に限定されるものではないが、例えば、有機過酸化物、無機過酸化物、アゾ化合物等が使用される。
有機過酸化物としては、例えば、t-ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、過ギ酸、過酢酸、過安息香酸等が挙げられる。
無機過酸化物としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等が挙げられる。
アゾ化合物(R-N=N-R)は、熱または光により2個の炭素ラジカルと窒素分子に分解する。アゾ化合物としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)(ABCN)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕、2,2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕2塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオナミジン)2塩酸塩(AIBA)、2,2’−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオナミジン〕、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等が挙げられる。
ラジカル開始剤の開始効率および水への溶解性の観点から、2,2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕2塩酸塩、または2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオナミジン)2塩酸塩(AIBA)を使用することが好ましい。
次いで、重合工程において得られた重合体を炭化処理に付すことにより、本発明の球状炭素粒子が得られる。
球状炭素粒子における窒素元素の含有量は、堀場製作所製EMGA-930を用いて測定した。
X線光電子分光分析装置(アルバックファイ株式会社製PHI 5000 VersaProbe III)により得た窒素に関わる結合の結合エネルギーより、球状炭素粒子中に存在する各窒素元素の形態の割合を算出した。
透過電子顕微鏡(日本電子株式会社製JEM3200-FS)により得た球状炭素粒子の観察図を用いて、球状炭素粒子10個の粒子径を計測し、その平均値を球状炭素粒子の平均粒子径とした。
ヘキサヒドロキシメチルメラミン10gに、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオナミジン)2塩酸塩1.5g、および水100gを添加し、マイクロウェーブを照射しながら90℃で30分間反応させた。反応液を冷却した後、生成した粒子を遠心分離機により分離し、分離した粒子を100℃および13Paで4時間乾燥し、白色粒子6.75gを回収した。得られた粒子を高速炉(モトヤマ製)において窒素雰囲気下550℃で2時間、炭化処理した。室温まで冷却し、5.45gの球状炭素粒子を得た。
得られた球状炭素粒子の電子顕微鏡観察図を図1に示す。また、炭化温度、平均粒子径、および各元素の含有量を表1に示す。X線光電子分光分析装置(XPS)により得られた波形を図2に示し、この波形から求めた、球状炭素粒子に含まれる窒素元素の総質量に対する各形態の窒素元素の割合を表2に示す。
ヘキサヒドロキシメチルメラミン10gに、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオナミジン)2塩酸塩1.5g、および水200gを添加し、マイクロウェーブを照射しながら90℃で30分間反応させた。反応液を冷却した後、生成した粒子を遠心分離機により分離し、分離した粒子を100℃および13Paで4時間乾燥し、白色粒子5.85gを回収した。得られた粒子を高速炉(モトヤマ製)において窒素雰囲気下550℃で2時間、炭化処理した。室温まで冷却し、4.82gの球状炭素粒子を得た。
炭化温度、平均粒子径、および各元素の含有量を表1に示す。X線光電子分光分析装置(XPS)により得られた波形から求めた、球状炭素粒子に含まれる窒素元素の総質量に対する各形態の窒素元素の割合を表2に示す。
炭化温度を700℃に変更したこと以外は実施例1と同様にして、4.78gの球状炭素粒子を得た。
炭化温度、平均粒子径、および各元素の含有量を表1に示す。X線光電子分光分析装置(XPS)により得られた波形から求めた、球状炭素粒子に含まれる窒素元素の総質量に対する各形態の窒素元素の割合を表2に示す。
炭化温度を850℃に変更したこと以外は実施例1と同様にして、4.59gの球状炭素粒子を得た。
炭化温度、平均粒子径、および各元素の含有量を表1に示す。X線光電子分光分析装置(XPS)により得られた波形から求めた、球状炭素粒子に含まれる窒素元素の総質量に対する各形態の窒素元素の割合を表2に示す。
2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオナミジン)2塩酸塩を添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして、炭化物を得た。
すなわち、ヘキサヒドロキシメチルメラミン10gに、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオナミジン)2塩酸塩を添加せず、水100gを添加し、マイクロウェーブを照射しながら90℃で30分間反応させた。反応液を冷却した後、生成物を遠心分離機により分離し、分離した生成物を100℃および13Paで4時間乾燥し、白色固体3.12gを回収した。得られた白色固体を高速炉(モトヤマ製)において窒素雰囲気下550℃で2時間、炭化処理した。室温まで冷却し、3.07gの炭化物を得た。
得られた炭化物の電子顕微鏡観察図を図5に示す。球状炭素粒子は得られなかった。
炭化温度を1850℃に変更したこと以外は実施例1と同様にして、炭化物を得た。
すなわち、ヘキサヒドロキシメチルメラミン10gに、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオナミジン)2塩酸塩1.5g、および水100gを添加し、マイクロウェーブを照射しながら90℃で30分間反応させた。反応液を冷却した後、生成した粒子を遠心分離機により分離し、分離した粒子を100℃および13Paで4時間乾燥し、白色粒子6.75gを回収した。得られた粒子を高速炉(モトヤマ製)において窒素雰囲気下1850℃で2時間、炭化処理した。室温まで冷却し、4.45gの球状炭素粒子を得た。
炭化温度、平均粒子径、および各元素の含有量を表1に示す。X線光電子分光分析装置(XPS)により得られた波形から求めた、球状炭素粒子に含まれる窒素元素の総質量に対する各形態の窒素元素の割合を表2に示す。
3−アミノフェノール10gに、17%アンモニア水溶液10mLおよびエタノール100gを添加した。混合液を撹拌しながらホルムアルデヒド30%溶液9.40g(3−アミノフェノールと等モル量)を添加し、マイクロウェーブを照射しながら150℃で30分間反応させた。反応液を冷却した後、遠心分離機を用いて、硬化された粒子を分取した。この硬化粒子を、100℃および13Paで4時間乾燥した後、高速炉(モトヤマ製)において窒素雰囲気下550℃で2時間、熱処理および炭化処理した。室温まで冷却し、6.18gの球状炭素粒子を得た。
得られた球状炭素粒子の電子顕微鏡観察図を図3に示す。また、炭化温度、平均粒子径、および各元素の含有量を表1に示す。X線光電子分光分析装置(XPS)により得られた波形を図4に示し、この波形から求めた、球状炭素粒子に含まれる窒素元素の総質量に対する各形態の窒素元素の割合を表2に示す。
本発明の球状炭素粒子は、導電性部材、電池材料、触媒担持体、医療用材料、活性炭、および各種塗料または樹脂組成物のための充填材等に極めて有用に使用することができる。
Claims (4)
- 窒素元素の含有量が球状炭素粒子の質量に対して20質量%以上60質量%以下である、球状炭素粒子であって、上記球状炭素粒子に含まれる窒素元素の総質量に対して20質量%以上65質量%以下の窒素元素はピリジン型窒素元素である、球状炭素粒子。
- 上記球状炭素粒子の平均粒子径は100nm以上3.0μm以下である、請求項1に記載の球状炭素粒子。
- メラミンとホルムアルデヒドとをラジカル開始剤の存在下で重合して重合体を得る重合工程またはメラミンとホルムアルデヒドとを予め反応させて得られたメチロール体をラジカル開始剤の存在下で重合して重合体を得る重合工程、および
得られた重合体に炭化処理を施す炭化工程
を含む、請求項1または2に記載の球状炭素粒子の製造方法。 - 上記炭化工程を、300℃以上1800℃以下の温度で不活性ガス雰囲気下に行う、請求項3に記載の製造方法。
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