(定義)
「ポリヌクレオチド」、「核酸」、および「オリゴヌクレオチド」という用語は互換的に使用され、ヌクレオチド(デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド)の任意の長さの重合体形態またはその類似体を指す。ポリヌクレオチドは任意の三次元構造を持ち、既知または未知の任意の機能を果たしてよい。ポリヌクレオチドの例としては以下が挙げられるが、これらに限定するものではない:遺伝子または遺伝子断片のコード領域または非コード領域、遺伝子間DNA、連鎖解析で定義された座位、エキソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、転移RNA、リボソームRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、核小体低分子RNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分岐ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意配列の単離DNA、任意配列の単離RNA、核酸プローブ、アダプター、およびプライマー。ポリヌクレオチドはメチル化ヌクレオチドなどの修飾ヌクレオチドおよびヌクレオチド類似体を含んでよい。ヌクレオチド構造への修飾を行う場合、修飾は重合体の構成の前に付与しても後に付与してもよい。ヌクレオチドの配列にヌクレオチド以外の成分を挟んでもよい。ポリヌクレオチドを重合後にたとえば標識成分、タグ、反応性部分、または結合パートナーと結合することでさらに修飾してもよい。ポリヌクレオチドの配列を示す場合、他の指定がない限り、5’→3’の方向に記載する。
本明細書で使用する場合、「標的ポリヌクレオチド」および「標的配列」という用語は互換的に用いられ、標的配列(本発明の1つ以上のオリゴヌクレオチドをこの配列にハイブリダイズするよう設計する)を有する核酸分子の集合に含まれる核酸分子またはポリヌクレオチドを指す。態様によっては、標的配列は、特定のゲノム配列、ミトコンドリア配列、細菌由来配列、ウイルス由来配列、またはRNA(たとえばmRNA、miRNA、初期miRNA、またはmiRNA前駆体)配列など、試料に由来する配列を一意的に識別する。態様によっては、標的配列は複数の異なる標的ポリヌクレオチドが共有する共通の配列(異なる標的ポリヌクレオチドに連結した共通のアダプター配列など)である。「標的ポリヌクレオチド」は、一方または両方の鎖に標的配列を有する二本鎖核酸分子または標的配列を有する一本鎖核酸分子を指すために用いてよく、核酸分子の供給源や単離または生成の方法については特に限定しない。標的ポリヌクレオチドは1個以上(たとえば1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個またはそれ以上)の標的配列を有してよく、標的配列は同じ配列でも異なる配列でもよい。一般に、異なる標的ポリヌクレオチドは異なる配列(1個以上の異なるヌクレオチドまたは1個以上の異なる標的配列など)を有する。
「ハイブリダイズする」および「アニーリング」は、1個以上のポリヌクレオチドが反応してヌクレオチド残基の塩基間の水素結合によって安定化した複合体を形成する反応を指す。水素結合は、ワトソン・クリック塩基対形成、フーグスティーン結合、または他の任意の配列特異的様式で起こり得る。複合体は、二重鎖構造を形成する2本の鎖、多重鎖複合体を形成する3本以上の鎖、自己ハイブリダイズする1本の鎖、またはこれらの任意の組み合わせを含んでもよい。ハイブリダイゼーション反応は、PCR反応の開始、またはリボザイムによるポリヌクレオチドの酵素的切断など、より広範な方法における工程を構成してよい。第一の配列が第二の配列のヌクレオチド残基の塩基との水素結合によって安定化できる場合、第二の配列に「ハイブリダイズできる」という。このような場合、第二の配列が第一の配列とハイブリダイズできるともいえる。
「相補体」、「相補的な」、および「相補性」は、ある配列に完全に相補的でありハイブリダイズできる配列を指す。一般に、第一の配列が第二の配列またはその集合にハイブリダイズできる場合、第一の配列は、ハイブリダイゼーション反応時に第二の配列またはその集合とのハイブリダイゼーションが非標的配列とのハイブリダイゼーションよりも優先される(たとえば、当技術分野で一般に利用されるストリンジェントな条件などのある一連の条件のもとで熱力学的により安定である)ように、特異的または選択的に第二の配列またはその集合にハイブリダイズできる。一般に、ハイブリダイズできる配列は、それぞれの長さの全体または一部に、たとえば25%〜100%の相補性(少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、および100%の配列相補性が挙げられる)など、ある程度の配列相補性を互いに有する。
「ハイブリダイズした」という用語をポリヌクレオチドに用いた場合、ヌクレオチド残基の塩基間の水素結合によって安定化した複合体のうちのポリヌクレオチドを指す。水素結合は、ワトソン・クリック塩基対形成、フーグスティーン結合、または他の任意の配列特異的様式で起こり得る。複合体は、二重鎖構造を形成する2本の鎖、多重鎖複合体を形成する3本以上の鎖、自己ハイブリダイズする1本の鎖、またはこれらの任意の組み合わせを含んでもよい。ハイブリダイゼーション反応は、PCR反応の開始、ライゲーション反応、配列決定反応、または切断反応など、より広範な方法における工程を構成してよい。
本発明は、様々な短鎖RNA分子および非コードRNA分子の増幅に利用できる。本明細書で使用する場合、「非コードRNA分子」または「短鎖RNA分子」という用語はタンパク質をコードしない任意のRNA分子を指す。非コードRNA分子の例としては以下が挙げられるが、この例に限定されるものではない:マイクロRNA(miRNA)、piwi結合RNA(piRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)、低分子核内RNA(snRNA)、核小体低分子RNA(snoRNA)、転移RNA(tRNA)、およびリボソームRNA(rRNA)。本明細書で使用する場合、「マイクロRNA」という用語は、成熟マイクロRNAの生合成における任意の形態のマイクロRNAを指すのに用いられ、初期マイクロRNA(初期miRNA)、マイクロRNA前駆体(miRNA前駆体)、および成熟マイクロRNAが挙げられる。存在するRNA標的のコピー数(または細胞あたりのコピー数)は1,000,000コピー未満、100,000コピー未満、10,000コピー未満、5,000コピー未満、2,500コピー未満、1,000コピー未満、500コピー未満、または100コピー未満であってよい。
本明細書で使用する場合、「成熟マイクロRNA」は19〜30ヌクレオチドの範囲の長さのRNA分子を指す。「マイクロRNA」および「miRNA」という用語は互換的に用いてよい。当技術分野で公知のmiRNAの例としては以下が挙げられるが、これらに限定されるものではない:
以上のマイクロRNA標的の配列と同じく本発明の方法を利用できる標的のさらなる例は、Griffith-Jones et al. (2004), Nucleic Acids Research 32:D109-D111およびGriffith-Jones et al. (2006), Nucleic Acids Research 34: D140-D144に記載されているように、「miRBase配列データベース」で見ることができる。
本明細書で使用する場合、「マイクロRNA前駆体」および「miRNA前駆体」という用語は互換的に用いられ、プロセシングにより成熟miRNAを発する任意の分子を指す。miRNA前駆体分子は、二本鎖RNAの領域とそれを形成する領域に挟まれた配列がなすループ領域とを含むことによりヘアピンのような構造をとる二次構造の領域を有する。「初期マイクロRNA」および「初期miRNA」という用語は互換的に用いられ、プロセシングにより前駆体miRNAになる任意の分子を指す。初期miRNAは様々なゲノムに由来してよく、例としては別個の転写物、遺伝子間領域、他の転写物の非翻訳領域、およびイントロンに由来するもの(いわゆる「ミュートロン(mirtron)」が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本明細書で使用する場合、「低分子干渉RNA」および「siRNA」という用語は互換的に用いられ、相補性に基づいて遺伝子標的のサイレンシングを誘導できる約50ヌクレオチド未満、約40ヌクレオチド未満、約35ヌクレオチド未満、約30ヌクレオチド未満、約25ヌクレオチド未満、約20ヌクレオチド未満、またはさらに短い任意のRNA分子を指す。サイレンシングは一般にはアルゴノートタンパク質によってもたらされ、一般には短鎖RNA分子に誘発されて開始する。サイレンシングは転写後サイレンシングでも転写型サイレンシングでもよい。siRNA分子は、発現抑制される単数または複数の遺伝子に完全に相補的であっても一部相補的であってもよく、サイレンシングが起こるにはmRNA転写物の切断を伴ってもよいし伴わなくてもよい。本明細書で使用する場合、「低分子ヘアピン型RNA」および「shRNA」という用語は互換的に用いられ、互いに塩基形成できる2個の領域が塩基対形成に関与しない領域で分離されており、プロセシングによって1つ以上のsiRNAを発する、任意の一本鎖RNA分子を指す。shRNAは細胞由来(内因性)であっても人工由来(外因性)であってもよい。内因性siRNAとしては「piRNA」(任意のクラスのPiwi結合RNA)が挙げられる。
当業者はよく理解していることであるが、いくつかのmiRNAは様々な生物や様々な組織での遺伝子制御に対する影響力に関してさらに特性評価できる。複数のmiRNAが単一の遺伝子を制御する場合があり、miRNAの制御は相乗的に作用する場合がある。単一のmiRNAが複数のmRNAを制御できる場合もある。たとえば、単一のヒトmiRNAが最大で100個〜200個の遺伝子を制御できると示唆した見解もある。最近では、ヒトの遺伝子のうち最大30%はmiRNAによる制御の対象であるとの記述もある。miRNAは様々な生物から単離でき、このような生物の例としては、哺乳類、両生類、昆虫類、線虫、植物、その他に後生動物からウイルスに及ぶ多くの生物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。miRNAの発現は生物間や同じ生物の組織間で異なってもよく、同じ生物のなかで時間的に制御されてもよい。miRNAによる制御は多くの過程に影響を及ぼす可能性がある。miRNAによる遺伝子制御の影響を受ける過程の例としては、分化、発生、老化、アポトーシス、腫瘍形成、代謝、細胞成長、および細胞増殖が挙げられるがこれらに限定されるものではない(Zhou et al. (2007), BMC Genomics 8: 396;およびLu et al. (2008), PLoS ONE 3(10): e3420)。これらの多くの経路が影響を受けた結果として、miRNAおよびその標的の制御不全が多くの疾患に関与するとされ、疾患の例としては循環器疾患、自己免疫障害、乾癬、ウイルス感染、統合失調症、脂質代謝障害、肥満、喘息、ダウン症候群、腎機能障害、体液恒常性障害、発生異常、真性赤血球増加症、アトピー性湿疹、筋強直性ジストロフィー、パーキンソン病、糖尿病、神経変性、トゥーレット症候群、脆弱X症候群などが挙げられる(Lu et al. (2008), PLoS ONE 3(10): e3420)がこれらに限定されるものではない。miRNAおよびその標的の制御不全は、多くのがんにも関与するとされ、がんの例としては、多発性骨髄腫、リンパ腫、バーキットリンパ腫、小児バーキットリンパ腫、成人バーキットリンパ腫、B細胞リンパ腫、固形がん、造血器悪性腫瘍、大腸がん、乳がん、子宮頚がん、卵巣がん、マントル細胞リンパ腫、下垂体腺腫、白血病、前立腺がん、胃がん、膵臓がん、甲状腺がん、肺がん、乳頭様甲状腺がん、膀胱がん、胚細胞腫瘍、脳腫瘍、精巣胚細胞腫瘍が挙げられるがこれらに限定されるものではない。すなわち、このため、miRNAは疾患の診断、予測、治療・診断の際のマーカーとして役立つ可能性がある。
本明細書で使用する場合、「相同性」という用語は、基準ヌクレオチド配列に類似の配列を指す。一方、「相補的」および「相補体」という用語は、PCR反応のハイブリダイゼーション段階などで基準ヌクレオチド配列と塩基対形成できるヌクレオチド配列を指す。「非相補的」は、所定の一連の条件のもと、PCR反応のハイブリダイゼーション段階などで基準配列と安定に塩基対形成するのに十分な相補性のない配列を指すのに用いられる。相同性および相補性の程度は与えられた用途に応じて変動してよく、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または95%を超えてよい。さらに、本明細書で使用する「実質的に非相補的」という用語は、基準配列に対する相補性が約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、約10%未満、または約5%未満であるヌクレオチド配列を指す。なお、構造の似た窒素塩基であるプリンとピリミジンはワトソン・クリック塩基対形成に関して同等に機能でき、同様の窒素塩基どうしをメチル化などで置換しても本質的な置換にはならない。
本明細書で使用する場合、「増幅する」、「増幅された」、「増幅」、「増幅産物」という用語は、プライマー依存性ポリメラーゼを用いて核酸を複製する任意の方法および/またはそれらの工程による産物を指す。好ましい態様では、増幅は上記の第一のプライマーおよび第二のプライマーを含むプライマー対を用いるPCRによって行われる。増幅産物を続いて融解曲線分析、ヌクレオチド配列決定、一本鎖高次構造多型試験、アレル特異的オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション、サザンブロット分析、および制限エンドヌクレアーゼ消化などの(ただしこれらに限定されるものではない)分析に供してもよい。
プローブを用いて増幅産物を検出してもよい。本明細書で使用する場合、「プローブ」という用語は、検出可能な部分を有し標的核酸に対し相補性を有することによってその標的とハイブリダイズし、検出可能な部分によって検出できるポリヌクレオチドを指す。ある態様では、プローブはワトソン・クリック型塩基または修飾塩基を含んでもよい。修飾塩基としては、たとえば米国特許第5,432,272号、第5,965,364号、および第6,001,983号明細書に記載されているAEGIS(商標)塩基(Eragen Biosciences)が挙げられるが、これに限定されるものではない。ある側面では、塩基は天然のリン酸ジエステル結合または他の化学結合により連結される。他の化学結合としては、ペプチド結合またはたとえば国際出願公開第00/56748号および第00/66604に記載の架橋型核酸(LNA)結合が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
本発明の実施には、他に指定のない限り、当技術分野の範囲に含まれる生化学、化学、分子生物学、微生物学、細胞生物学、ゲノム科学および組換えDNAの従来技術を採用する。たとえば、以下を参照のこと:Sambrook, Fritsch, Maniatis, MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, 2nd edition (1989); CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY (F. M. Ausubel, et al. eds., (1987)); METHODS IN ENZYMOLOGYのシリーズ(Academic Press, Inc.): PCR 2: A PRACTICAL APPROACH (M. J. MacPherson, B. D. Hames and G. R. Taylor eds. (1995))およびANIMAL CELL CULTURE (R. I. Freshney, ed. (1987))。
本発明は、試料中の標的ポリヌクレオチドに含まれる領域に相補的な配列を生成するための方法、組成物、反応混合物、キット、および/またはシステムを提供する。これらの方法、組成物、反応混合物、キット、および/またはシステムは短い核酸の検出に特に有用である。
(方法)
一側面では、本発明は、試料中の標的ポリヌクレオチドに含まれる領域に相補的な配列を生成する方法であって、標的ポリヌクレオチドの領域に対する全配列が得られる条件のもとに、反応混合物中で試料を核酸増幅反応に供する工程を含み、反応混合物は、(a)一本の鎖に5’→3’方向に配列A、リンカー配列D、および配列Bを含み、(i)該配列Aと該標的ポリヌクレオチドの配列A’との配列相補性および(ii)該配列Bと該標的ポリヌクレオチドの配列B’との配列相補性(該配列A’と該配列B’は該標的ポリヌクレオチドの5’→3’方向に位置する)によって該標的ポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズするループプライマーと;(b)鋳型特異的プライマー伸長のための鋳型として機能する該標的ポリヌクレオチドに沿ってループプライマーの配列Bを5’→3’方向に伸長して該標的ポリヌクレオチドの相補配列を生成するポリメラーゼを含む、方法を提供する。
別の側面では、本発明は、試料中の標的ポリヌクレオチドに含まれる領域に相補的な配列を生成する方法であって、該標的ポリヌクレオチドの該領域に対する全配列が得られる条件のもとに、該試料をループプライマーと順方向プライマーと逆方向プライマーとポリメラーゼとを含む核酸増幅反応に供する工程を含み、反応混合物は、(a)一本の鎖に5’→3’方向に配列A、リンカー配列D、および配列Bを含み、(i)該配列Aと該標的ポリヌクレオチドの配列A’との配列相補性および(ii)該配列Bと該標的ポリヌクレオチドの配列B’との配列相補性(該配列A’と該配列B’は該標的ポリヌクレオチドの5’→3’方向に位置する)によって該標的ポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズする該ループプライマーと;(b)鋳型特異的プライマー伸長のための鋳型として機能する該標的ポリヌクレオチドに沿って該ループプライマーの該配列Bを5’→3’方向に伸長して該標的ポリヌクレオチドの相補配列を生成する該ポリメラーゼと;(c)該標的ポリヌクレオチド内で該配列A’または該配列B’よりも5’側に位置する配列と配列相同性を示す該逆方向プライマーと;(d)該ループプライマーに相補的な配列に特異的にハイブリダイズする該順方向プライマーとを含む、方法を提供する。
本明細書に開示のいずれかの方法または組成物に用いるループプライマーは、標的ポリヌクレオチドに相補的な2つの配列を両末端側に有するポリヌクレオチドを指す。本方法で用いる配列Aはループプライマーの5’末端側、配列Bは3’末端側にある相補配列である。本方法で用いるこの2つの配列は、標的ポリヌクレオチドの配列A’および配列B’(配列A’は配列B’よりも5’側に位置する)と塩基対を形成する。本方法で用いる場合、標的ポリヌクレオチド上で配列A’と配列B’は互いに非常に近接しており、間にはN’の配列のみが存在する。配列Aと配列A’は、少なくとも2ヌクレオチド、少なくとも3ヌクレオチド、少なくとも4ヌクレオチド、少なくとも5ヌクレオチド、少なくとも6ヌクレオチド、少なくとも7ヌクレオチド、少なくとも8ヌクレオチド、少なくとも9ヌクレオチド、または少なくとも10ヌクレオチドであってよい。態様によっては、配列Aは、5〜15ヌクレオチド(たとえば、10ヌクレオチド)の長さである。配列Bと配列B’は、少なくとも5ヌクレオチド、少なくとも6ヌクレオチド、少なくとも7ヌクレオチド、少なくとも8ヌクレオチド、少なくとも9ヌクレオチド、少なくとも10ヌクレオチド、少なくとも11ヌクレオチド、少なくとも12ヌクレオチド、少なくとも13ヌクレオチド、少なくとも14ヌクレオチド、少なくとも15ヌクレオチド、少なくとも16ヌクレオチド、少なくとも17ヌクレオチド、少なくとも18ヌクレオチド、少なくとも19ヌクレオチド、または少なくとも20ヌクレオチドであってよい。態様によっては、配列Bは4〜6ヌクレオチドの長さである。配列N’は1ヌクレオチド、2ヌクレオチド、3ヌクレオチド、4ヌクレオチド、または5ヌクレオチドであってよい。本方法で用いる、ループプライマーの配列Aと配列Bとの間に介在するリンカー配列(配列D)は、配列Aが配列A’、配列Bが配列B’とそれぞれ同時にアニールできるような構造空間をループプライマーが有するのに十分な長さであってよい。
本開示のいずれかの方法を実施する際、ループプライマーは一般に、配列Aと配列A’、および配列Bと配列B’の塩基対形成によって標的ポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズするよう設計される。次に、ポリメラーゼが標的ポリヌクレオチドを鋳型として配列Bの3’末端を伸長し、鋳型特異的プライマー伸長によって標的ポリヌクレオチドの領域N’、領域A’、およびそれ以外の部分に対する相補体が生成され(この順序で生成される)、標的ポリヌクレオチドに相補的な配列が生成される。鋳型特異的プライマー伸長中、ポリメラーゼが配列Bの3’末端から伸長する間は配列Aと配列A’とのハイブリダイゼーションは低減する。結果として、第一の相補配列は5’→3’の方向に領域A、D、B、N、およびAと、標的ポリヌクレオチドのそれ以外の部分を含む。配列Dの長さが加わるため、この相補配列の方が長い。また、この相補配列は標的ポリヌクレオチドよりも安定な形態である場合がある。たとえば、標的ポリヌクレオチドがmiRNAでポリメラーゼが逆転写酵素である場合、この相補配列はより長いDNAポリヌクレオチドであり、より安定である。
本発明の方法または組成物のいずれかに用いるループプライマーの設計について考慮すべき一つの点は、配列Aと配列A’、および配列Bと配列B’に選択する相補性領域である。鋳型特異的プライマー伸長は配列Bの3’末端で起こり、標的ポリヌクレオチドの配列B’の5’側の領域のみが増幅されることになるため、標的ポリヌクレオチドの3’末端に比較的近くなるようにA’領域およびB’領域を選択するのが望ましい。このように選択すれば、配列Aと配列A’、および配列Bと配列B’のハイブリダイゼーションの5’側に十分な数の標的ポリヌクレオチド配列が確実に存在し、第一の相補配列に含まれる。
ループプライマー、配列A、および配列Bの長さは、プライマーの所望のハイブリダイゼーション温度、標的核酸配列、増幅する様々な標的核酸配列の複雑さなど、当技術分野で公知の多くの因子に依存する。ループプライマーの核酸配列は、合成された第一の相補的核酸分子それぞれの配列に組み込まれる。態様によっては、ループプライマーの3’末端に位置する第一の相補的核酸(ポリヌクレオチド)は、第一の相補的核酸と相補的な標的核酸(ポリヌクレオチド)の少なくとも一部分と相補的であるためその部分とハイブリダイズでき、長さは少なくとも約3ヌクレオチド、少なくとも約4ヌクレオチド、少なくとも約5ヌクレオチド、少なくとも約6ヌクレオチド、少なくとも約7ヌクレオチド、少なくとも約8ヌクレオチド、少なくとも約9ヌクレオチド、少なくとも約10ヌクレオチド、少なくとも約11ヌクレオチド、少なくとも約12ヌクレオチド、少なくとも約13ヌクレオチド、少なくとも約14ヌクレオチド、少なくとも約15ヌクレオチド、少なくとも約16ヌクレオチド、少なくとも約17ヌクレオチド、少なくとも約18ヌクレオチド、少なくとも約19ヌクレオチド、少なくとも約20ヌクレオチド、またはそれよりも長くてよい。態様によっては、第一の相補的核酸分子は標的配列と一致しないヌクレオチドを1個以上(たとえば1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、またはそれよりも多く)含む。実質的に非相補的な配列の選択は、増幅する標的に依存する。この実質的に非相補的な配列は、人工的な配列または設計された配列(たとえば、他の生物に見られる配列、別の種に見られる配列、別の亜種に見られる配列、同じ種を構成する別の生物に由来する実質的に非相補的な配列、同じ対象に由来し標的に対して実質的に非相補的な領域から選択された配列、標的に対して実質的に非相補的だとわかっている不規則に生成された配列、標的に対して実質的に非相補的だとわかっている特異的に設計された配列)であってよい。
態様によっては、本発明の方法の実施に用いる配列Aは2nt〜約10ntの長さであり、配列Bは2nt〜約10ntの長さである。態様によっては、配列Aと配列Bの合計の長さは約5nt〜約20ntである。態様によっては、配列Aと配列Bの合計の長さは標的ポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズしてループプライマーを伸長させるのに十分な長さである。態様によっては、最適に整列した場合、配列Bと配列Aを直線状に連結した配列は、配列A’と配列B’を直線状に連結した配列と少なくとも80%の相補性を有する。態様によっては、配列Bと配列Aを直線状に連結した配列は配列A’と配列B’を直線状に連結した配列と少なくとも90%の相補性を有する。態様によっては、配列A’の3’末端は配列B’から1nt〜約5nt以内にある。
本方法で用いるループプライマーの設計について考慮すべきもう一つの点は、AとA’およびBとB’のハイブリダイゼーションの配列のヌクレオチド数である。ヌクレオチドの総数によってループプライマーと標的ポリヌクレオチドの複合体の特異性および安定性が増加する場合がある。この複合体の特異性および安定性は標的ポリヌクレオチドを後に増幅・定量する際の精度に有益である。必要に応じて、配列Bのヌクレオチド数を配列Aのヌクレオチド数よりも多くし、配列Bの3’末端からのプライマー伸長の間は配列Aと配列A’のハイブリダイゼーションが低減するように効率を上げてもよい。
態様によっては、配列Aと配列Bはヌクレオチド塩基数が等しい長さであり、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、または少なくとも10個(ただし約50個以下)のヌクレオチドを含む。別の態様では、配列Aは2ヌクレオチド、配列Bは3ヌクレオチドである。別の態様では、配列Aは2ヌクレオチド、配列Bは4ヌクレオチドである。別の態様では、配列Aは3ヌクレオチド、配列Bは4ヌクレオチドである。
ループプライマーの設計に関して考慮すべき点は配列Aと配列Bの長さの合計であり、これは一般に、標的ポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズできるのに十分な長さである。このハイブリダイゼーションは、その後に配列Bの3’末端が伸長する時間に耐えられるよう十分安定でなければならない。態様によっては、配列Aと配列Bの合計の長さは約5〜50ヌクレオチド、約5〜約10ヌクレオチド、または約5〜約15ヌクレオチドである。
ループプライマーの配列Aおよび配列Bの相補性の程度は、一般に標的ポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズするのに十分な相補性である。このハイブリダイゼーションは、その後に配列Bの3’末端が伸長する時間に耐えられるよう十分安定でなければならない。態様によっては、配列を最適に整列した場合、Aの配列とBの配列は、配列A’と配列B’を直線状に連結した配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の相補性を有する。
ループプライマーの配列Aと配列Bとの間のヌクレオチド数は、一般に配列N’および配列Nの長さに対応し、これは第一の相補鎖合成中の配列Bの3’末端のポリメラーゼ伸長の効率に影響する可能性がある。距離が大きいほどポリメラーゼはループプライマーに適合して鋳型特異的プライマー伸長を開始したり配列Aと配列A’のハイブリダイゼーションを低減したりしやすい。しかし、距離が長い場合、ループプライマーと標的ポリヌクレオチドの結合特異性が下がる場合がある、というのも、N’のヌクレオチドが多いとループプライマーの配列Aおよび配列Bの指定する配列と特異的に相互作用しないためである。態様によっては、配列A’の3’末端は配列B’の5’末端から1nt〜約10nt以内、1nt〜約5nt以内、または2nt〜約5nt以内にある。
ループプライマーは一塩基多様性を検出するように設計できる。たとえば、本発明の方法は、配列Aと配列Bのうち1個の塩基位置が異なるループプライマーの対(一方は標的配列の1つのアレルを認識し、もう一方は標的配列の別のアレルを認識する)を利用してもよい。また、ループプライマーは、ループ配列Dにも違いがあり、選択的に増幅かつ/または検出できる。
一態様では、1つのループプライマーはアレルのヌクレオチドとそれに近接する配列に結合し、別のループプライマーはそのアレルのヌクレオチドに直接隣接した配列に結合する。前者は一方のアレルのみを捕捉し、後者は両方のアレルを捕捉する。その後の検出、定量、および増幅の工程でこの2種類のループプライマー(異なるリンカー配列を有してもよい)を選択的に識別でき、それによって第一の相補配列から標的ポリヌクレオチドの異なるアレルを特異的に検出、定量、増幅できる。
本発明のループプライマーのリンカー配列Dは、一般に配列Aと配列A’、および配列Bと配列B’の両方がハイブリダイゼーションするのに十分な長さを有するよう設計され、それによってループプライマーが正しい低分子RNA標的に結合する特異性が高まる。一態様では、リンカー配列は、約5〜約100ヌクレオチド、10〜約80ヌクレオチド、または20〜約50ヌクレオチドである。他の一部の態様では、リンカー配列は、約10ヌクレオチド、約20ヌクレオチド、約30ヌクレオチド、約40ヌクレオチド、約50ヌクレオチド、約60ヌクレオチド、約70ヌクレオチド、約80ヌクレオチド、約90ヌクレオチド、または約100ヌクレオチドの長さである。
必要に応じて、本発明の方法または組成物に用いるリンカー配列は、1つ以上のバーコード配列;1つ以上の制限酵素認識配列;1つ以上のオリゴヌクレオチドプローブ結合配列またはその相補体;配列決定プライマーがアニールする1つ以上の配列またはその相補体;複数の異なるプライマーまたは異なるループプライマーの下位集合が共有する1つ以上の共通配列;ヘアピン構造を形成するための1対以上の相補配列;あるいはそれらの組み合わせなど(ただし、これらに限定されるものではない)の1つ以上の配列要素を含むことができる。態様によっては、リンカー配列は複数の異なるループプライマーに共通の汎用的な配列を含む。2つ以上の配列要素は互いに隣接していなくてもよい(たとえば、1個以上のヌクレオチドで隔てられている)し、互いに隣接していてもよく、一部が重複していてもよく、完全に重複していてもよい。たとえば、増幅プライマーにアニールする配列は配列決定プライマーにアニールする配列として機能することもできる。配列要素の長さは任意の適切な長さであってよく、約3ヌクレオチド、約4ヌクレオチド、約5ヌクレオチド、約6ヌクレオチド、約7ヌクレオチド、約8ヌクレオチド、約9ヌクレオチド、約10ヌクレオチド、約15ヌクレオチド、約20ヌクレオチド、約25ヌクレオチド、約30ヌクレオチド、約35ヌクレオチド、約40ヌクレオチド、約45ヌクレオチド、約50ヌクレオチドまたはそれ以上の(あるいはこれらのヌクレオチド長よりも短いか長い)長さが挙げられる。
態様によっては、リンカー配列はヘアピン構造を形成するための1対以上の相補配列を有する。配列の対のうち各配列を「ステム配列」と呼ぶことがある。1対のステム配列のうち各ステム配列は、全長にわたり完全に相補的であってもよく、1つ以上(たとえば1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上)の不一致を有してもよい。態様によっては、ステム配列対のステム配列どうしは、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%相補性である。ステム配列はたとえば約3ヌクレオチド以上、約4ヌクレオチド以上、約5ヌクレオチド以上、約6ヌクレオチド以上、約7ヌクレオチド以上、約8ヌクレオチド以上、約9ヌクレオチド以上、約10ヌクレオチド以上、約15ヌクレオチド以上、約20ヌクレオチド以上、約25ヌクレオチド以上、またはそれ以上の長さなど、任意の適切な長さであってよい。態様によっては、ステム配列は5〜10ヌクレオチド(たとえば7ヌクレオチド)の長さである。ステム配列を、ハイブリダイゼーションによって形成するステムが特定の融解温度(Tm)(35℃〜90℃、40℃〜75℃、45℃〜65℃、または50℃〜55℃など)を有するように設計してもよい。態様によっては、ステム配列のハイブリダイゼーションによって形成されるステムのTmは60℃〜72℃である。リンカー配列に含まれる各ステム配列の位置を変えてもよい。一般に、リンカー配列内でステム配列の間に挟まれた配列は、ステム配列がハイブリダイズするとループ構造を形成する。ステム配列間の距離はループを形成する配列の長さ(たとえば少なくとも約3ヌクレオチド、少なくとも約4ヌクレオチド、少なくとも約5ヌクレオチド、少なくとも約6ヌクレオチド、少なくとも約7ヌクレオチド、少なくとも約8ヌクレオチド、少なくとも約9ヌクレオチド、少なくとも約10ヌクレオチド、少なくとも約15ヌクレオチド、少なくとも約20ヌクレオチド、少なくとも約25ヌクレオチド、またはそれよりも長いループ配列など)に影響する可能性がある。態様によっては、ループ配列は、5〜10ヌクレオチド(たとえば5ヌクレオチド)の長さである。ループ配列は、標的に結合する配列(たとえばmiRNA標的に相補的な配列)を有さないように設計されてもよい。ステムは、ループプライマー配列Aおよび/または配列Bのヌクレオチドの直前のヌクレオチドを含んでもよい。あるいは、ループプライマーはステム配列の末端と配列Aと配列Bの一方または両方の始点との間に1個以上(たとえば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、25個、またはそれ以上)のヌクレオチドを含んでもよい。これらの配列を「アーム配列」と呼ぶことがある。ヘアピン構造を形成するリンカー配列を含むループプライマーは、0個、1個、または2個のアームを含んでもよく、各アームの長さはもう一方のアームとは独立して選択される。態様によっては、一方または両方のアームを5〜15ヌクレオチドの長さになるよう設計する。
態様によっては、リンカー配列は目的とする標的ポリヌクレオチドの相補配列を生成後に検出・定量しやすくする特有の配列を含む。第一の相補配列を生成した後、リンカー配列の一部分は順方向プライマーに相補的である。したがって、特異的なバーコードをリンカー配列に有することにより、順方向プライマーは異なるが逆方向プライマーは同じものを使って、異なるループプライマーを増幅、検出、または定量できる。態様によっては、1つのループプライマーの配列Aおよび配列Bは、別のループプライマーの配列Aおよび配列Bと同じ標的ポリヌクレオチドのうちのわずかに異なる領域に結合できることによって特異性がより高くなり、かつ/またはユーザによる検証が可能である。リンカー配列のバーコードの違いによって別のループプライマーと結合する異なる順方向プライマーにより、このような異なるループプライマーを後に増幅・検出・定量しやすくなる。
態様によっては、リンカーは1つ以上の制限酵素認識配列を含む。増幅後、第一の相補配列を基に増幅された、リンカー配列制限部位を含む真の増幅産物のみを切断して検出・定量の対象として表にまとめられるように、制限酵素消化により検出の精度を顕著に改善できる。
他の態様では、リンカー配列は、1つ以上のオリゴヌクレオチドプローブ結合配列、オリゴヌクレオチドプローブ結合配列の相補体、プライマーにアニールする配列、またはプライマーにアニールする配列の相補体を含む。増幅時、配列特異的な様式でハイブリダイズする追加のプローブ(TaqMan(登録商標)など)または増幅の特異性を付加する追加のプライマーは、これらの配列を利用して標的ポリヌクレオチドに対する第一の相補配列をより確実に正確に増幅できる。
他の態様では、リンカー配列は反応混合物に用いるすべてのループプライマーに共通する領域を含む。すべてのループプライマーに共通するこのようなリンカー配列により、検出および定量のコストを削減できる。というのも、その後のプローブ(たとえばTaqMan(登録商標)プローブ)、酵素消化とその配列、順方向プライマー、およびループプライマーに作用するその他の任意の試薬を、多くの異なる標的ポリヌクレオチドの検出に使用する多くの異なるループプライマーに広く使用できるためである。
態様によっては、複数のループプライマーのそれぞれを、各プライマーまたは各第一の相補的核酸分子の融解温度が35℃〜90℃(たとえば40℃〜75℃、45℃〜65℃、または50℃〜55℃)となるように設計する。態様によっては、複数のループプライマーのそれぞれを、各ループプライマーまたは各相補的核酸分子の融解温度が約40℃、約45℃、約50℃、約55℃、約60℃、約65℃、約70℃、約72℃、約75℃、約80℃またはそれ以上(あるいはこれらよりも低温または高温)となるように設計する。態様によっては、第一のプライマーは、少なくとも約10、約50、約100、約150、約200、約250、約300、約350nM、または最大で約300、約350、約400、約450、約500、約550、約600、約800、約10000μM(あるいは間に含まれると推測される任意の範囲または値)の濃度で存在してもよい。
標的ポリヌクレオチドを鋳型とし、ループプライマーを用いて配列Bの3’末端からの鋳型特異的プライマー伸長によって第一の相補的配列を生成した後、この第一の相補配列を後の増幅反応(定量および検出を目的とする増幅など)用の鋳型とする。第一の相補配列の追加のコピーを生成するため(特に標的ポリヌクレオチドに相補的な領域について)、順方向プライマーはリンカー配列Dに含まれる配列に特異的にハイブリダイズし、逆方向プライマーは標的ポリヌクレオチドで配列A’よりも5’側にある(第一の相補配列で配列Aよりも3’側にある)配列に特異的にハイブリダイズする。したがって、従来のPCRと同様に、選択したプライマーで挟んだこの特定領域を後の反応で指数関数的に増幅できる。
態様によっては、試料中の標的ポリヌクレオチドに含まれる領域に相補的な配列を生成する方法は、試料中の標的ポリヌクレオチドに含まれる領域に相補的な配列を逆方向プライマーおよび必要に応じて順方向プライマーの存在下で増幅する工程をさらに含み、この逆方向プライマーおよび順方向プライマーは、それぞれ増幅産物およびループプライマーに対して配列相補性を示す。態様によっては、順方向プライマーはリンカー配列に含まれる配列に特異的にハイブリダイズする。態様によっては、逆方向プライマーは標的ポリヌクレオチドの配列A’または配列B’より5’側に位置する部分に相補的な配列に特異的にハイブリダイズする。
順方向プライマーおよび逆方向プライマーは一般に、増幅反応の条件のもとで標的核酸配列の鋳型特異的増幅を開始するのに十分な長さを有する。第二のプライマーのセットのプライマーの長さは、プライマーの所望のハイブリダイゼーション温度、標的核酸配列、および増幅する様々な標的核酸配列の複雑さなど、当技術分野で公知の多くの因子に依存する。態様によっては、順方向プライマーおよび逆方向プライマーは、標的配列と一致しないヌクレオチドを1個以上(たとえば1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、またはそれ以上)有する。実質的に非相補的な配列の選択は、増幅される標的に依存する。このような実質的に非相補的な配列は、人工的な配列または設計された配列(たとえば、他の生物に見られる配列、別の種に見られる配列、別の亜種に見られる配列、同じ種を構成する別の生物に由来する実質的に非相補的な配列、同じ対象に由来し標的に対して実質的に非相補的な領域から選択された配列、標的に対して実質的に非相補的だとわかっている無作為に生成された配列、標的に対して実質的に非相補的だとわかっている特異的に設計された配列)であってよい。
必要であれば、ループプライマー、順方向プライマー、および逆方向プライマーはそれぞれ、修飾核酸などのヌクレオチド類似体またはその他の非標準ヌクレオチドを含んでもよい。ヌクレオチド類似体のその他の例としては、2−アミノプリン、2,6−ジアミノプリン、5−ブロモ−デオキシウリジン、デオキシウリジン、反転デオキシチミジン、ジデオキシヌクレオチド、5−メチルデオキシシチジン、デオキシイノシン、架橋型核酸(locked nucleic acids;LNA)、5−ニトロインドール、および2’−O−メチル−RNA塩基が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
態様によっては、順方向プライマーおよび逆方向プライマーをそれぞれの融解温度が35℃〜90℃(たとえば40℃〜75℃、45℃〜65℃、または50℃〜55℃)となるように設計してもよい。態様によっては、複数の順方向プライマーおよび逆方向プライマーのそれぞれを、それぞれの融解温度が約40℃、約45℃、約50℃、約55℃、約60℃、約65℃、約70℃、約72℃、約75℃、約80℃またはそれ以上(あるいはこれらよりも低温または高温)となるように設計する。さらなる態様では、増幅反応に存在するループプライマー、順方向プライマーおよび逆方向プライマーの濃度を少なくとも約10、約50、約100、約150、約200、約250、約300、約350nM、または最大で約300、約350、約400、約450、約500、約550、約600、約800、約10000μM(あるいは間に含まれると推測される任意の範囲または値)にしてよい。
上記のように、態様によっては、本発明の方法の第一の相補的核酸分子は、ループプライマーを本明細書に開示の順方向プライマーおよび逆方向プライマーを含む第二のプライマーセットと併用することによって増幅できる。第二のプライマーセットは、ループプライマーと同時に反応に添加してもよいし、ループプライマー伸長後に添加してもよい。さらに他の態様では、追加量のループプライマーを伸長反応後に添加してもよい。ある量のループプライマーを伸長反応後に添加するとき、第二のプライマーセットも共に添加してもよい。態様によっては、順方向プライマー(たとえばループプライマーに含まれる配列の相補体とハイブリダイズするプライマー)は約10ヌクレオチド以上、約15ヌクレオチド以上、約20ヌクレオチド以上、またはそれ以上の長さである。順方向プライマーを、55℃〜75℃(たとえば62℃)などの所望の融解温度(Tm)を有するように設計してもよい。逆方向プライマー(たとえばmiRNAなどの標的ポリヌクレオチドの相補体とハイブリダイズするプライマー)を、55℃〜75℃(たとえば62℃)のTmなどの1つ以上の性質を有するように設計してもよい。
態様によっては、反応は、標的ポリヌクレオチドの領域に対する全配列が得られる条件のもと、単一の反応混合物中で行われる。ここで、反応混合物は、(a)一本の鎖に5’→3’方向に配列A、リンカー配列D、および配列Bを含み、(i)配列Aと標的ポリヌクレオチドの配列A’との配列相補性および(ii)配列Bと標的ポリヌクレオチドの配列B’との配列相補性(配列A’と配列B’は標的ポリヌクレオチドの5’→3’方向に位置する)によって標的ポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズするループプライマーと;(b)鋳型特異的プライマー伸長のための鋳型として機能する標的ポリヌクレオチドに沿ってループプライマーの配列Bを5’→3’方向に伸長して標的ポリヌクレオチドの相補配列を生成するポリメラーゼと;(c)標的ポリヌクレオチド内で配列A’または配列B’よりも5’側に位置する配列と配列相同性を示す逆方向プライマーと;(d)ループプライマーに相補的な配列に特異的にハイブリダイズする順方向プライマーとを含む。
態様によっては、本発明の方法は、標的ポリヌクレオチドの量に比べて過剰に存在するループプライマー、順方向プライマー、および/または逆方向プライマーを利用する。たとえば、使用するループプライマー、順方向プライマー、および/または逆方向プライマーは、増幅反応に存在する標的ポリヌクレオチドの少なくとも約1倍、約10倍、約100倍、約200倍、約300倍、約400倍、約500倍、約600倍、約700倍、約800倍、約900倍、約1000倍、約1500倍、約2000倍、約3000倍、約5000倍、約7500倍、約10000倍、約20000倍、約50000倍、約100000倍、約106倍、約107倍、約108倍、またはそれ以上である。態様によっては、ループプライマー、順方向プライマー、および逆方向プライマーを用いることにより、増幅前に試料に存在する1つ以上の標的核酸分子が約5000コピー未満、約2500コピー未満、約1000コピー未満、約900コピー未満、約800コピー未満、約700コピー未満、約600コピー未満、約500コピー未満、約400コピー未満、約300コピー未満、約200コピー未満、約100コピー未満、約50コピー未満、約40コピー未満、約30コピー未満、約20コピー未満、約10コピー未満、約5コピー未満、またはさらに少ないコピー数であっても、この1つ以上の標的核酸分子を検出可能なレベルまで増幅できる。
第一の相補配列の生成は、一段階RT−PCRまたは二段階RT−PCRの一部であってもよく、ここで、反応混合物は第一鎖の合成のための試薬と増幅のための試薬を別々に含んでもよいし、両方の試薬を共に含んでもよい。さらに、その後の増幅のための反応混合物は、第一の相補配列産物とハイブリダイズして長さの異なる産物(すなわち第一の相補配列のうち異なる範囲をカバーする産物)を生成する異なるプライマーを含んでもよい。第一の相補配列に含まれる領域を定量または検出する特異的なプローブによって特異性を高めてもよい。たとえば、リンカー配列Dや標的ポリヌクレオチド配列に含まれる特定の領域またはそれらの2つの領域間にみられる重複部分も第一の相補配列で探索するTaqMan(登録商標)プローブを、標的核酸の第一の相補配列の生成と同時またはその前後に反応混合物に添加することができる。
第一の相補配列の生成は、ポリメラーゼによって行うことができる。当技術分野では様々なポリメラーゼが利用できる。例としては、逆転写酵素(RT)(たとえばモロニーマウス白血病ウイルス由来RT(MMLV−RT)、トリ骨髄芽球症ウイルス由来RT(AMV−RT)、ウシ白血病ウイルス由来RT(BLV−RT)、ラウス肉腫ウイルス由来RT(RSV−RT)、ヒト免疫不全ウイルス由来RT(HIV−RT)、ラウス関連ウイルス由来RT(RAV−RT)、骨髄芽球症関連ウイルス由来RT(MAV−RT)またはその他のトリ肉腫・白血病ウイルス由来RT(ASLV−RT)など)、テルムス属(Thermus)Z05ポリメラーゼ、ΔZ05ポリメラーゼ、それらの任意の修飾形態または誘導体などのRNA依存性DNAポリメラーゼが挙げられるが、これらに限定されるものではない。態様によっては、このRNA依存性DNAポリメラーゼはRNAseH活性を有さない(たとえばSUPERSCRIPT III(商標)(Invitrogen)(1600 Faraday Avenue, PO Box 6482, Carlsbad, Calif. 92008)。態様によっては、RNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有する酵素はDNA依存性DNAポリメラーゼ活性も有し、逆転写と増幅の両方の工程に使用される。
本発明の方法のいずれか1つの方法のループプライマーの伸長条件は、標的、第一のプライマーのハイブリダイゼーションの必要条件、ポリメラーゼ、その他の試薬に関する必要条件、所望の結果に応じて変更できる。プライマー伸長条件を変更する方法は当技術分野で公知である。多数の試薬が市販されており、所望の結果を得るために濃度を最適化することができる。一般的な逆転写の手順の例では、約42℃で約120分間かけて行うプライマー伸長工程と約80℃以上の温度で約5分間インキュベートすることによる酵素失活工程が含まれるが、この例に限定されるものではない。伸長のためのインキュベーション温度は記載した因子に応じて変動してもよく、約25℃、約30℃、約35℃、約40℃、約45℃、約48℃、約50℃、約52℃、約55℃、約60℃、約65℃、約70℃、約75℃またはそれ以上(あるいはこれらの温度よりも低温または高温)あるいは間に含まれる任意の温度が挙げられる。態様によっては、伸長のためのインキュベーション温度は48℃〜52℃である。伸長反応のインキュベーション時間も変動してよく、約1分、約2分、約3分、約4分、約5分、約10分、約15分、約20分、約30分、約40分、約50分、約60分、約70分、約80分、約100分、約120分、約140分、約180分またはそれ以上(あるいはこれらより短いまたは長い時間)が挙げられる。失活時間・温度は、酵素が失活するものであれば特に制限はなく、温度は約70℃、約75℃、約80℃、約85℃、約90℃、または約95℃(あるいはこれよりも低温または高温)、時間は約1分以上、約2分以上、約3分以上、約4分以上、約5分以上、約6分以上、約7分以上、約8分以上、約9分以上、約10分以上、約15分以上、約20分以上、約30分以上、またはそれ以上の時間を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。プライマー伸長の前にRNA分子の分子間および分子内の相互作用を阻害するため熱変性工程を行ってもよいし、行わなくてもよい。態様によっては、プライマー伸長の前に熱変性工程を行わない。態様によっては、逆転写の手順には熱失活工程を含まない。態様によっては、逆転写工程とPCR工程を組み合わせて単一のチューブで行う。ポリメラーゼ(ホットスタートポリメラーゼが好ましい)の活性が低い場合、続いて環境温度で逆転写を実施してもよい。逆転写酵素はモロニーマウス白血病ウイルス(M−MLV)またはトリ骨髄芽球症ウイルス(AMV)由来の天然または改変多様体の酵素であることが好ましい。両方の活性を有するPyroPhage(登録商標)(Lucigen Inc.)などの単一の酵素を用いてRT−PCRを実施することもできる。
必要であれば、第一の相補的核酸分子を、酵素を用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で増幅する。この方法は一般にDNA依存性DNAポリメラーゼ(DNAの重合を触媒できる酵素)を用いる。この方法の一つの用途は存在するコピー数の低い核酸の検出または単離である。ある側面では、ポリメラーゼは約20℃以上、約23℃以上、約25℃以上、約37℃以上、約42℃以上、約50℃以上、約60℃以上、約70℃以上、約80℃以上、約90℃以上、またはそれよりも高温で活性である。態様によっては、本発明の方法は熱安定性ポリメラーゼを用いる。熱安定性ポリメラーゼの例としては、テルムス・テルモフィルス(Thermus thermophilus)HB8(たとえば、米国特許第5,789,224号明細書および米国特許出願公開第2003/0194726号明細書を参照のこと);変異テルムス・オシマイ(Thermus oshimai);テルムス・スコトドゥクトゥス(Thermus scotoductus);テルムス・テルモフィルス1B21;テルムス・テルモフィルスGK24;テルムス・アクアティクス(Thermus aquaticus)ポリメラーゼ(AmpliTaq(登録商標)FSまたはTaq(G46D;F667Y)(たとえば米国特許第5,614,365号明細書を参照のこと)、Taq(G46D;F667Y;E6811)、Taq(G46D;F667Y;T664N;R660G));ピロコックス・フリオスス(Pyrococcus furiosus)ポリメラーゼ;テルモコックス・ゴルゴナリウス(Thermococcus gorgonarius)ポリメラーゼ;ピロコックス属(Pyrococcus)の種のGB−Dポリメラーゼ;テルモコックス属(Thermococcus)の種(9°N−7株)のポリメラーゼ;バチルス・ステアロテルモフィルス(Bacillus stearothermophilus)ポリメラーゼ;Tspポリメラーゼ;ThermalAce(商標)ポリメラーゼ(Invitrogen);テルムス・フラウス(Thermus flavus)ポリメラーゼ;テルムス・リトラリス(Thermus litoralis)ポリメラーゼ;テルムス属Z05ポリメラーゼ;ΔZ05ポリメラーゼ(たとえばΔZ05-Gold DNAポリメラーゼ;およびそれらの変異体、多様体、または誘導体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。熱安定性でないポリメラーゼの例としては、DNAポリメラーゼI;変異型DNAポリメラーゼI(クレノウ断片および3’→5’エキソヌクレアーゼ活性欠失型クレノウ断片などが挙げられるがこれらに限定されるものではない);T4DNAポリメラーゼ;変異型T4DNAポリメラーゼ;T7DNAポリメラーゼ;変異型T7DNAポリメラーゼ;phi29DNAポリメラーゼ;および変異型phi29DNAポリメラーゼが挙げられるがこれらに限定されるものではない。態様によっては、増幅工程に用いるDNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有する酵素は第一のプライマー伸長工程で第一のプライマーのプライマー伸長に用いる酵素と同じ酵素であり、RNA依存性DNAポリメラーゼ活性も有する。
態様によっては、本発明の方法はホットスタートポリメラーゼを利用する。ホットスタートポリメラーゼはDNAポリメラーゼの修飾形態で、熱活性化する必要がある(たとえば、米国特許第6,403,341号および第7,122,355号明細書を参照のこと;これらの全内容を参照によって援用する)。このようなポリメラーゼを用いて、たとえば感度、特異性、および収率をさらに高め、かつ/またはコピー数の低い標的の増幅をさらに改善することができる。一般に、ホットスタート酵素は不活性状態で提供される。熱活性化により修飾物が遊離して活性な酵素になる。多数のホットスタートポリメラーゼが様々な供給元から市販されている(Applied Biosystems;Bio-Rad;eEnzyme LLC;Eppendorf North America;Finnzymes Oy;GeneChoice, Inc.;Invitrogen;Jena Bioscience GmbH;MIDSCI;Minerva Biolabs GmbH;New England Biolabs;Novagen;Promega;QIAGEN;Roche Applied Science;Sigma-Aldrich;Stratagene;Takara Minis Bio;USB Corp.;Yorkshire Bioscience Ltd.など)。
本発明の方法を利用して配列の違う異なる標的ポリヌクレオチドの相補配列を同時に生成できる。2種以上の異なるループプライマーを伸長反応に使用することによって2種以上の異なる第一の相補的核酸分子を生成できる。異なるループプライマーはそれぞれ、複数の異なるポリヌクレオチド分子標的のうち1つの少なくとも一部分と相補的な異なる第一の配列を3’末端側に有する。態様によっては、これらの異なるループプライマー配列は、目的とする特定のポリヌクレオチド分子標的の少なくとも一部分と相補的な所定の配列を有するよう選択できる。他の態様では、ループプライマー配列は不規則かつ不確定であるか、ほぼ不規則(ループプライマー配列の特定の位置が1種以上のヌクレオチドに偏っており、たとえば、1個以上のヌクレオチドが2種以上の異なるヌクレオチドから不規則に選択される)である。複数の異なるループプライマーを組み合わせて(各ループプライマーの濃度は同じでも異なってもよい)ループプライマーの「プール」を作製できる。このようなループプライマーのプールを用いることにより、それぞれ複数の異なるポリヌクレオチド分子標的のうちの1つに対して相補的な複数の異なる第一の相補的核酸分子を同時に生成できる。
本発明の方法のさらなる態様では、2種以上の異なる第一の相補的ポリヌクレオチド分子を増幅のための鋳型として用いて複数のコピーを生成する。これは、増幅反応に順方向プライマーと逆方向プライマーのセットを2セット以上用いることによって実行でき、異なるプライマーはそれぞれ、複数の異なる第一の相補的ポリヌクレオチド標的のうち1つの少なくとも一部分に対して相補性を有する異なる第二の配列を3’末端に有する。態様によっては、これらの異なる順方向プライマーおよび逆方向プライマーは、目的とする特定の第一のDNA分子標的の少なくとも一部分に対し相補的な所定の配列を有するよう選択できる。他の側面では、異なる順方向プライマーおよび逆方向プライマーは、不規則かつ不確定であるか、ほぼ不規則(配列上の特定の位置が1種以上のヌクレオチドに偏っており、たとえば、1個以上のヌクレオチドが2種以上の異なるヌクレオチドから不規則に選択される)である。複数の異なる順方向プライマーおよび逆方向プライマーを組み合わせて(各プライマーの濃度は同じでも異なってもよい)第二のプライマーの「プール」を作製できる。このような第二のプライマーのプールをループプライマーのプールと併用することにより、それぞれが複数の異なるポリヌクレオチド分子標的のうちの1つの少なくとも一部分に対して相補性を有する複数の異なる第一の相補配列分子を同時に生成できる。
第一のDNA分子を生成または増幅するためのプールに含まれるプライマーの組み合わせは、多数の選択肢のうちの任意の組み合わせであってよい。第一のプライマーのプールを用いて第一のDNA分子を生成した後、選抜した1種以上の第一のDNA分子に対して相補的な第二の配列を有する、選抜した1つ以上の第二のプライマーを用いて増幅を行ってもよいし、プライマー伸長反応で得た目的の第一DNA分子産物のそれぞれに対して第二のプライマーを含む第二のプライマーのプールを用いて増幅を行ってもよい。さらに別の態様では、第一のプライマーと第二のプライマーの対を1対以上添加し、第一のプライマーのプールを用いたプライマー伸長で生成した1種以上の第一のDNA分子を増幅してもよい。プライマープールは、完全に重複するRNAおよび第一の相補的DNA分子標的の下位集合を含む必要はない。
本発明による標的ポリヌクレオチドに相補的な配列の生成方法および/または二本鎖標的ポリヌクレオチドの増幅方法を同じ反応場所で(たとえば容器に入れて)実施してもよい。相補配列を生成するための試薬とその後の増幅のための試薬は、同時に添加しても順次添加してもよい。態様によっては、ループプライマー伸長反応と増幅反応の両方を実施するためのすべての試薬を一度に添加することにより、試料をそれ以上操作することなく両方の反応を行うことができる。態様によっては、増幅反応を実施するための1つ以上の試薬をループプライマー伸長反応の後に添加する。態様によっては、第一の相補的分子の増幅を、ループプライマーの伸長による第一のDNA分子の生成に用いたものとは別の容器で実施する。ループプライマー伸長産物を移動する場合、全反応容量を用いてもよいし、その一部分を用いてもよい。一度のループプライマー伸長反応で得た複数の部分を複数の別個の容器に移動して複数の増幅反応を行ってもよい。別個の反応容器はプライマー伸長反応に用いたものと同じ種類のものでも異なってもよい。反応容器の例としては、微量遠心チューブ、円錐チューブ、薄壁チューブ、ストリップチューブ、マルチウェルプレート、微小流体装置、およびマイクロアレイが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
必要であれば、担体に結合させた1つ以上のプライマー(たとえばループプライマー、順方向プライマーまたは逆方向プライマー)を用いて反応の様々な工程を行うことができる。態様によっては、1つ以上のループプライマーを固相担体に結合する。態様によっては、ループプライマーのうち1つ以上を順方向プライマーおよび逆方向プライマーと共に担体に結合する。結合は様々な方法で実行でき、例としては、共有結合、静電気的相互作用、2つ以上の分子の分子間相互作用が挙げられるが、これらに限定されるものではない。様々な種類の固相担体が当技術分野で公知であり、例としては、様々なサイズの薄片、チップ、ビーズ、ウェル、プレート、微小流体装置、マイクロアレイ、およびチューブが挙げられるが、これらに限定されるものではない。固相担体はこの結合を支持できる様々な材料で構成でき、例としてはケイ素、プラスチック、ガラス、高分子材料、金属、半導体材料が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明の1つ以上の方法を実施する際、複数の異なる標的ポリヌクレオチド分子を同時に増幅するように設計した反応容器を利用して、異なる標的分子をそれぞれ異なる場所で増幅してもよい。これは様々な方法で実行できる。一態様では、複数の異なる場所はそれぞれ、たとえばアレイのように、特定の第一の相補配列分子の少なくとも一部分に対して相補的な第二の配列を有する1種以上のプライマーを含む。異なる場所はそれぞれ、特定の標的ポリヌクレオチドを生成・増幅するために、対応するループプライマーをさらに含んでもよい。プライマーをそれぞれの異なる場所に物理的に結合してもしなくてもよい。あるいは、特定の第一の相補配列分子の少なくとも一部分に対して相補的な第二の配列を有する1種以上のプライマーと結合したビーズを、異なる第二の配列を有する1種以上の第二のプライマーと結合した他のビーズとは別の場所に分離する。たとえば脂質を水に溶解した乳剤によって、または脂質をビーズ表面に配置することによって分離を行う。態様によっては、溶液中で自由にプライマー伸長による第一の相補配列分子の生成を行った後、別個の場所で増幅を行う。他の態様では、プライマー伸長による第一の相補配列分子の生成を別個の場所で実施する(たとえば、ループプライマーと第二のプライマーのセット(順方向プライマーおよび逆方向プライマー)が別の場所にある場合)。
標的ヌクレオチド配列またはそのうちのある領域の増幅は、ポリメラーゼ連鎖反応時に複数のサイクルで実施できる。望ましい増幅サイクル数は1〜45増幅サイクル(たとえば1〜25増幅サイクル、5〜35増幅サイクル、10〜45増幅サイクル)であってよい。サイクルのパラメータは多くの因子に基づいて変動し、最適化してもよい。このような因子の例としては、プライマー配列、プライマー融解温度、標的分子の長さ、標的配列、標的の複雑さ、標的集合の複雑さ、ポリメラーゼ酵素の最適な活性、その他の試薬の必要条件が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一般的なPCRプロトコールの例としては以下が挙げられるが、この例に限定されるものではない:すなわち、(1)95℃で10分(初期の融解)(2)95℃で20秒(サイクル中の融解)、(3)50℃で20秒(ハイブリダイゼーション)、(4)72℃で1分(伸長)、(5)工程2〜4を40回反復(サイクル数)、(6)72℃で10分(最終伸長)。各工程の温度と時間は反応毎に最適化でき、ある工程から次の工程への温度変化率も同様である。態様によっては、工程(3)(アニーリング)と工程(4)(伸長)を組み合わせてもよく、工程(6)を完全に除外してもよい。このようなPCRプロトコールの例としては以下が挙げられるが、この例に限定されるものではない:すなわち、(1)95℃で10分、(2)95℃で15秒、(3)60℃で1分、(4)工程2〜3を39回反復。態様によっては、ハイブリダイゼーション温度は、約20℃、約25℃、約30℃、約35℃、約40℃、約45℃、約50℃、約55℃、約60℃、約65℃、約70℃、約75℃またはそれ以上(あるいはこれらの温度以上または以下)である。態様によっては、ハイブリダイゼーション工程の時間は約0秒、約1秒、約2秒、約3秒、約4秒、約5秒、約6秒、約7秒、約8秒、約9秒、約10秒、約15秒、約20秒、約30秒、約45秒、約60秒、約90秒、約120秒またはそれ以上(あるいはこれらの秒数以上または以下)である。態様によっては、融解曲線分析を含むのが望ましい場合がある。融解曲線分析パラメータの例としては以下が挙げられるが、この例に限定されるものではない:すなわち、(1)95℃で15秒、(2)60℃で15秒、(3)95℃で15秒。
増幅反応の成功は、プローブまたは標識などの検出可能なマーカーを用いて増幅工程中(たとえばリアルタイムで)または増幅工程後に増幅産物を検出することで確認できる。たとえば、本発明の方法のPCR増幅工程の間、二本鎖DNAに優先的または排他的に結合する色素(たとえばSYBR(登録商標)Green)を用いて、増幅したDNA分子を検出・定量できる。たとえば、Molecular Probes, Inc.(29851 Willow Creek Road, Eugene, Oreg. 97402)はSYBR(登録商標)Green色素を含む定量PCR用反応混合物を販売している。さらに例を挙げると、リアルタイムPCR中に生成された二本鎖DNAを標識するのに使用できる別の色素(「BEBO」という)がBengtsson, M., et al., Nucleic Acids Research 31(8):e45 (Apr. 15, 2003)に記載されている。この出版物を参照により本明細書に援用する。例としては、蛍光物質と消光剤を含む第一および/または第二のプライマーを用いて本発明の方法のPCR増幅工程を開始することができる。PCR中、標識したプライマーの伸長後に蛍光物質と消光剤が物理的に分離されることで蛍光物質は蛍光を発することができ、その蛍光を利用してPCR増幅産物量を測定できる。蛍光物質および消光剤を含む市販のプライマーの例としては、Scorpion(商標)プライマーおよびUniprimer(商標)(共にMolecular Probes, Inc.より販売)が挙げられる。
態様によっては、オリゴヌクレオチドプローブの存在下で多重増幅を行うと、生成した増幅産物の量を時間関数として監視するのに適している。このようなオリゴヌクレオチドプローブとしては以下が挙げられるがこれらに限定されるものではない:5’−エキソヌクレアーゼ試験(たとえばTaqMan(登録商標))プローブ(上記の他、米国特許第5,538,848号明細書を参照のこと)、ステムループ分子ビーコン(たとえば米国特許第6,103,476号および第5,925,517号明細書ならびにTyagi & Kramer, 1996を参照のこと)、ステムのないビーコンまたは直鎖状ビーコン(たとえば国際出願公開第99/21881号を参照のこと)、PNA分子ビーコン(たとえば米国特許第6,355,421号および第6,593,091号明細書を参照のこと)、直鎖状PNAビーコン(たとえばKubista et al., 2001を参照のこと)、非FRET(蛍光共鳴エネルギー移動)プローブ(たとえば米国特許第6,150,097号明細書を参照のこと)、Sunrise(登録商標)/Amplifluor(登録商標)プローブ(たとえば米国特許第6,548,250号明細書を参照のこと)、ステムループ・二重鎖構造のScorpion(商標)プローブ(たとえば、Solinas et al., 2001および米国特許第6,589,743号明細書を参照のこと)、バルジループ構造のプローブ(たとえば米国特許第6,590,091号明細書を参照のこと)、偽結び目構造の(pseudo knot)プローブ(たとえば米国特許第6,548,250号を参照のこと)、サイクリコン(cyclicon=2種類のDNAのそれぞれの5’末端が結合したプライマー)(たとえば米国特許第6,383,752号明細書を参照のこと)、MGB Eclipse(商標)プローブ(Epoch Biosciences)、ヘアピン構造のプローブ(たとえば米国特許第6,596,490号明細書を参照のこと)、ペプチド核酸(PNA)発光プローブ、自己組織化微粒子プローブ、およびフェロセン修飾プローブ(たとえば米国特許第6,485,901号明細書;Mhlanga et al., 2001;Whitcombe et al., 1999;Isacsson et al., 2000;Svanvik et al., 2000;Wolffs et al., 2001;Tsourkas et al., 2002;Riccelli et al., 2002;Zhang et al., 2002;Maxwell et al., 2002;Broude et al., 2002;Huang et al., 2002;およびYu et al., 2001などに記載)。
ある態様では、1つ以上のプローブに標識を結合し、標識は以下のうち1つ以上の性質を有する:(i)検出可能なシグナルを発する;(ii)第二の標識と相互作用して第二の標識からの検出可能なシグナル(たとえば蛍光共鳴エネルギー移動(FRET; Fluorescent Resonance Energy Transfer))を修飾する;(iii)ハイブリダイゼーション(たとえば二重鎖の形成)を安定化する;および(iv)結合複合体または親和性のある組み合わせを構成する成分を提供する(たとえば、親和性、抗体/抗原、イオン複合体、ハプテン/リガンド(たとえばビオチン/アビジン))。さらに他の側面では、公知の標識、結合、連結基、試薬、反応条件、分析法、精製法を利用する多数の公知技術のいずれかを用いて標識を利用できる。
標識の例をさらに挙げると、検出可能な蛍光シグナル、化学発光シグナル、または生物発光シグナルを発光または消光する発光性化合物、光散乱性化合物、および光吸収性化合物(たとえばKricka, 1992およびGarman, 1997)が挙げられるがこれらに限定されるものではない。標識として有用な蛍光レポーター色素としては以下が挙げられるがこれらに限定されるものではない:フルオレセイン(たとえば米国特許第5,188,934号;第6,008,379号;および第6,020,481号明細書を参照のこと)、ローダミン(たとえば米国特許第5,366,860号;第5,847,162号;第5,936,087号;第6,051,719号;および第6,191,278号明細書を参照のこと)、ベンゾフェノキサジン(たとえば米国特許第6,140,500号明細書を参照のこと)、ドナーとアクセプターの対を含むエネルギー移動性蛍光色素(たとえば米国特許第5,863,727号;第5,800,996号;および第5,945,526号明細書を参照のこと)、シアニン(たとえばKubistaの文献および国際出願公開第97/45539号明細書を参照のこと)、および検出可能なシグナルを発することのできるその他の任意の蛍光性成分。フルオレセイン色素の例としては、6−カルボキシフルオレセイン;2’,4’,1,4,−テトラクロロフルオレセイン;および2’,4’,5’,7’,1,4−ヘキサクロロフルオレセインが挙げられるがこれらに限定されるものではない。ある側面では、蛍光標識をSYBR(登録商標)Green、6−カルボキシフルオレセイン(「FAM」)、TET、ROX(商標)、VIC(商標)、JOEから選択する。ある態様では、標識は放射標識である。
さらなる態様では、標識はハイブリダイゼーションによる二重鎖形成に対して促進、安定化、または作用するハイブリダイゼーション安定化成分であり、たとえば、挿入物質および挿入色素(臭化エチジウム、EvaGreen(登録商標)、SYBR(登録商標)Greenが挙げられるがこれらに限定されるものではない)、副溝結合剤、および架橋官能基などである(たとえばBlackburn, G.およびGait, M. Eds. "DNA and RNA structure", Nucleic Acids in Chemistry and Biology (1996)を参照のこと)。標識としては特異的または非特異的な捕捉により分子を分離または固定化するものが挙げられ、たとえば、ビオチン、ジゴキシゲニン、その他のハプテン(たとえばAndrus, 1995を参照のこと)などである。
態様によっては、異なるプローブは互いに区別できる検出可能な異なる標識を含む。たとえば、ある態様では、標識は異なる波長にスペクトル分解できる発光を示す蛍光物質(たとえば4色の異なる蛍光物質)である。いくつかのこのような標識付きプローブは当技術分野で公知であり上記や米国特許第6,140,054号明細書およびSaiki et al., 1986にも記載されている。
態様によっては、増幅反応の終了後、検出可能なマーカーを用いて標的核酸分子の有無、相対的な多さ、および/または量を確認する。態様によっては、この検出可能なマーカーはプローブである。態様によっては、複数の異なるプローブを用いて複数の異なる標的核酸分子増幅産物を同時に検出する。プローブはビーズまたはアレイなどの固相表面に結合できる。アレイ上のプローブは、各プローブの位置がわかり、プローブと増幅産物のハイブリダイゼーションを検出することで増幅産物を識別できるように配置できる。非コードRNA分子の検出および/または定量に有用なプローブおよびアレイの例は、米国特許出願公開第2008/0045418号および第2008/0312099号明細書に記載されている。これらの文献を参照により本明細書に援用する。
本明細書に開示する方法は、DNAなど(ただし、これに限定するものではない)の任意の種類の標的核酸分子の相補配列の生成に応用できる。態様によっては、標的ポリヌクレオチドはRNA分子である。態様によっては、標的ポリヌクレオチドは非コードRNA分子である。態様によっては、非コードRNA分子は、成熟マイクロRNA分子、マイクロRNA前駆体分子、初期マイクロRNA分子、siRNA分子、piRNA分子、piwiRNA分子、lncRNA分子、rRNA分子、およびshRNA分子からなる群より選択される。態様によっては、標的ポリヌクレオチドは100nt未満の長さである。態様によっては、標的ポリヌクレオチドは50nt未満の長さである。
開示する方法のいずれかで増幅の標的として有用な非コードRNA分子は、任意の生物(たとえば真核生物)、あるいはその一部(器官、組織、および/または培養細胞などの個別細胞)から単離できる。標的RNAを含む任意の適切な調製物(全RNA、精製した低分子RNA、またはRNAとDNAの両方を含む試料など)が利用できる。RNAは細胞の溶解を含む手順によって細胞から単離でき、細胞に含まれるタンパク質の変性をさらに含んでもよい。RNAを抽出する細胞は野生型の細胞、野生型の細胞を操作した細胞、改変細胞、操作した改変細胞であってよく、操作としては医薬による処置が挙げられるがこれに限定されるものではない。
本発明の方法で増幅する標的として有用な短鎖DNA分子は、任意の生物(たとえば真核生物)、あるいはその一部(器官、組織、および/または培養細胞などの個別細胞)から、DNAの一部または全体を取り出すための当技術分野で公知の標準的な工程をさらに用いて単離できる。当技術分野では細胞溶解および核酸抽出のための手順が公知である。このような手順の例としては以下が挙げられる(ただし、これらに限定されるものではない)。たとえば非イオン性界面活性剤で細胞溶解を行った後、微量遠心分離で核(すなわち細胞のDNAの大部分)を取り出すことができる。チオシアン酸グアニジニウムで溶解後、CsCl(塩化セシウム)を用いて遠心分離を行い、RNAをDNAから分離する(Chirgwin et al., 1979, Biochemistry 18:5294-5299を参照のこと)ことにより、目的とする様々な種類の細胞からRNAを抽出できる。RNAの抽出とDNAからの単離(必要な場合)は、たとえばフェノール、フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール、またはこれらに似た製剤(TRIzol(商標)(Invitrogen)およびTriReagent(商標)(Applied Biosystems))を用いた有機抽出によっても実行できる。抽出技術の他の例としては以下が挙げられるがこれらに限定されるものではない:(1)有機抽出の後、たとえばフェノール/クロロホルム有機試薬(Ausubel et al., 1993)でエタノール沈殿を行う(ある態様では自動核酸抽出装置(たとえばApplied Biosystems(Carlsbad, Calif)製のModel 341 DNA Extractorなど)を用いる);(2)固定相吸着法(米国特許第5,234,809号明細書;Walsh et al., 1991);(3)塩で核酸沈殿を誘導する方法(Miller et al.(1988)(一般に「塩析」法という))。ある態様では、上記の単離方法の前に不要なタンパク質を試料から除去しやすくする酵素消化工程(たとえばプロテイナーゼK、またはプロテアーゼなどのその他の酵素による消化)を行ってもよい。たとえば、米国特許第7,001,724号明細書を参照のこと。必要に応じて、RNAse阻害剤を溶解緩衝剤に添加してもよい。特定の細胞型では、タンパク質の変性/消化の工程をプロトコールに加えるのが望ましい場合がある。RNAを含む試料は、それぞれヌクレオチド配列が違う多数の異なるRNA分子を含むことができる。
本発明の方法は、短鎖RNA分子などの短い標的配列の増幅に特に有用である。ループプライマーのリンカー配列Dの長さを長くすると、後に増幅する第一の相補配列も長くなる。態様によっては、標的ポリヌクレオチドは100nt未満、90nt未満、80nt未満、70nt未満、60nt未満、50nt未満、40nt未満、30nt未満、20nt未満、または15nt未満の長さである。
(組成物)
別の側面では、本発明は、試料中の標的ポリヌクレオチドに含まれる領域に相補的な配列を生成するための組成物であって、ループプライマーと順方向プライマーと逆方向プライマーとを含み、(a)ループプライマーは一本の鎖に5’→3’方向に配列A、リンカー配列、および配列Bを含み、(i)配列Aと標的ポリヌクレオチドの配列A’との配列相補性および(ii)配列Bと標的ポリヌクレオチドの配列B’との配列相補性(配列A’と配列B’は標的ポリヌクレオチドの5’→3’方向に位置する)によって標的ポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズし;(b)逆方向プライマーは標的ポリヌクレオチドで配列A’よりも5’側に位置する配列に対し配列相同性を示し;かつ(c)順方向プライマーはリンカー配列に含まれる配列に特異的にハイブリダイズする、組成物を提供する。
本発明の組成物で具体化するループプライマーは先の項で開示した1つ以上の特性を有する任意のループプライマーであってよい。たとえば、ループプライマーは標的ポリヌクレオチドに相補的な2つの配列を両末端側に有する。本組成物で用いる配列Aはループプライマーの5’末端側、配列Bは3’末端側にある相補配列である。本組成物で用いるこの2つの配列は、標的ポリヌクレオチドの配列A’および配列B’(配列A’は配列B’よりも5’側に位置する)と塩基対を形成する。別の例では、標的ポリヌクレオチド上で配列A’と配列B’は互いに非常に近接しており、間にはN’の配列のみが存在する。他の態様では、配列Aと配列A’は、少なくとも2ヌクレオチド、少なくとも3ヌクレオチド、少なくとも4ヌクレオチド、少なくとも5ヌクレオチド、少なくとも6ヌクレオチド、少なくとも7ヌクレオチド、少なくとも8ヌクレオチド、少なくとも9ヌクレオチド、または少なくとも10ヌクレオチドであってよい。他の例では、配列Bと配列B’は、少なくとも5ヌクレオチド、少なくとも6ヌクレオチド、少なくとも7ヌクレオチド、少なくとも8ヌクレオチド、少なくとも9ヌクレオチド、少なくとも10ヌクレオチド、少なくとも11ヌクレオチド、少なくとも12ヌクレオチド、少なくとも13ヌクレオチド、少なくとも14ヌクレオチド、少なくとも15ヌクレオチド、少なくとも16ヌクレオチド、少なくとも17ヌクレオチド、少なくとも18ヌクレオチド、少なくとも19ヌクレオチド、または少なくとも20ヌクレオチドであってよい。配列N’は1ヌクレオチド、2ヌクレオチド、3ヌクレオチド、4ヌクレオチド、または5ヌクレオチドであってよい。
必要に応じて、ループプライマーは先の項で開示したその他の任意の特徴を有してよい。たとえば、領域A’と領域B’が標的ポリヌクレオチドの3’末端に近くなるように設計するのが望ましい場合がある。このように選択すれば、配列Aと配列A’、および配列Bと配列B’のハイブリダイゼーションの5’側に十分な数の標的ポリヌクレオチド配列が確実に存在し、第一の相補配列に含まれる。たとえば、配列Aは約2nt〜約10ntまたは2nt〜約5ntの長さであり、配列Bは約2nt〜約10ntの長さまたは2nt〜約5ntである。態様によっては、配列Aと配列Bの合計の長さは約5nt〜約20nt、5nt〜約15nt、または5nt〜約10ntである。態様によっては、配列Aと配列Bの合計の長さは標的ポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズしてループプライマーを伸長させるのに十分な長さである。態様によっては、最適に整列した場合、配列Bと配列Aを直線状に連結した配列は、配列A’と配列B’を直線状に連結した配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%の相補性を有する。態様によっては、配列Bと配列Aを直線状に連結した配列は配列A’と配列B’を直線状に連結した配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%の相補性を有する。態様によっては、配列A’の3’末端は配列B’から1nt〜約5nt以内にある。
態様によっては、配列Bのヌクレオチド数を配列Aのヌクレオチド数よりも多くし、配列Bの3’末端からのプライマー伸長の間は配列Aと配列A’のハイブリダイゼーションが低減するように効率を上げてもよい。態様によっては、配列Aと配列Bはヌクレオチド塩基数が等しい長さであり、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、または少なくとも10個(ただし約50個以下)のヌクレオチドを含む。別の態様では、配列Aは2ヌクレオチド、配列Bは3ヌクレオチドである。別の態様では、配列Aは2ヌクレオチド、配列Bは4ヌクレオチドである。別の態様では、配列Aは3ヌクレオチド、配列Bは4ヌクレオチドである。
ループプライマーの配列Aと配列Bとの間のヌクレオチド数は、一般に配列N’および配列Nの長さに対応し、これは第一の相補鎖合成中の配列Bの3’末端のポリメラーゼ伸長の効率に影響する可能性がある。態様によっては、配列A’の3’末端は配列B’の5’末端から1nt〜約10nt以内、1nt〜約5nt以内、または2nt〜約5nt以内にある。
態様によっては、ループプライマーは一塩基多様性を検出するように設計できる。たとえば、1対のループプライマーは、配列Aと配列Bのうち1個の塩基位置が異なり、一方は標的配列の1つのアレルを認識し、もう一方は標的配列の別のアレルを認識する。また、ループプライマーは、ループ配列Dにも違いがあり、選択的に増幅かつ/または検出できる。
本発明のループプライマーのリンカー配列Dは、一般に配列Aと配列A’、および配列Bと配列B’の両方がハイブリダイゼーションするのに十分な長さを有するよう設計され、それによってループプライマーが正しい低分子RNAに結合する特異性が高まる。一態様では、リンカー配列は、約5〜約100ヌクレオチド、10〜約80ヌクレオチド、または20〜約50ヌクレオチドである。他の一部の態様では、リンカー配列は、約10ヌクレオチド、約20ヌクレオチド、約30ヌクレオチド、約40ヌクレオチド、約50ヌクレオチド、約60ヌクレオチド、約70ヌクレオチド、約80ヌクレオチド、約90ヌクレオチド、または約100ヌクレオチドの長さである。
必要に応じて、本発明の方法または組成物に用いるリンカー配列は、1つ以上のバーコード配列;1つ以上の制限酵素認識配列;1つ以上のオリゴヌクレオチドプローブ結合配列またはその相補体;配列決定プライマーがアニールする1つ以上の配列またはその相補体;およびそれらの組み合わせからなる群より選択される1つ以上の配列要素を含む。態様によっては、リンカー配列は複数の異なるループプライマーに共通の汎用的な配列を含む。
態様によっては、リンカー配列は、標的ポリヌクレオチドに相補的な目的の配列を生成後に検出・定量しやすくする特有の配列を含む。第一の相補配列を生成した後、リンカー配列の一部分は順方向プライマーに相補的である。したがって、特異的なバーコードをリンカー配列に有することにより、順方向プライマーは異なるが逆方向プライマーは同じものを使って、異なるループプライマーを増幅、検出、または定量できる。態様によっては、1つのループプライマーの配列Aおよび配列Bは、別のループプライマーの配列Aおよび配列Bと同じ標的ポリヌクレオチドのうちのわずかに異なる領域に結合できることによって特異性がより高くなり、かつ/またはユーザによる検証が可能である。リンカー配列のバーコードの違いによって別のループプライマーと結合する異なる順方向プライマーにより、このような異なるループプライマーを後に増幅・検出・定量しやすくなる。
態様によっては、リンカーは1つ以上の制限酵素認識配列を含む。増幅後、第一の相補配列を基に増幅された、リンカー配列制限部位を含む真の増幅産物のみを切断して検出・定量の対象として表にまとめるように、制限酵素消化により検出の精度を顕著に改善できる。
他の態様では、リンカー配列は、1つ以上のオリゴヌクレオチドプローブ結合配列、オリゴヌクレオチドプローブ結合配列の相補体、プライマーがアニールする配列、またはプライマーがアニールする配列の相補体を含む。増幅時、配列特異的な様式でハイブリダイズする追加のプローブ(TaqMan(登録商標)など)または増幅の特異性を付加する追加のプライマーは、これらの配列を利用して標的ポリヌクレオチドに対する第一の相補配列をより確実に正確に増幅できる。
他の態様では、リンカー配列は反応混合物に用いるすべてのループプライマーに共通する領域を含む。すべてのループプライマーに共通するこのようなリンカー配列により、検出および定量のコストを削減できる。というのも、その後のプローブ(たとえばTaqMan(登録商標))、酵素消化とその配列、順方向プライマー、およびループプライマーに作用するその他の任意の試薬を、多くの異なる標的ポリヌクレオチドの検出に使用する多くの異なるループプライマーに広く使用できるためである。
態様によっては、本発明の組成物を無水形態で調製する。態様によっては、本発明の組成物を容器に入れる。たとえば、容器はウェル、プレート、チューブ、チャンバー、フラスコ、瓶、シリンジ、フローセル、チップなどであってよい。
態様によっては、本発明の組成物を、上記の方法、組成物、反応混合物、試験、および/またはシステムで開示した構成要素のいずれか1つ以上を含むキットとして組み合わせる。態様によっては、キットは1個以上の容器に入った本発明の組成物を含む。たとえば、キットは以下のうち1つ以上を含んでよい:オリゴヌクレオチドを結合させた1つ以上の固相担体、固相担体に結合させる1種以上のオリゴヌクレオチド、1種以上のループプライマー、1種以上の増幅プライマー、これらのうちいずれかを利用するための試薬、およびこれらのうちいずれかを使用するための説明書。態様によっては、このキットは以下のうち1つ以上をさらに含む:(a)DNAリガーゼ、(b)DNA依存性DNAポリメラーゼ、(c)RNA依存性DNAポリメラーゼ、(d)ランダムプライマー、(e)3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を有する依存性DNAポリメラーゼ、(f)複数の選択された配列のうち1つの配列をそれぞれ有する複数のプライマー(g)DNAキナーゼ、(h)DNAエキソヌクレアーゼ、(i)磁気ビーズ、および(j)キットに含まれる構成要素の1つ以上に適した1種以上の緩衝剤。プライマー、他のオリゴヌクレオチド、および試薬は本明細書に開示するもののいずれでもよいが、これらに限定されるものではない。さらに、キットの構成要素は限定なく任意の量および/または組み合わせ(同じキットまたは同じ容器で)で提供できる。キットは、本発明の方法に従って使用される追加の薬剤をさらに含んでもよい。キットの構成要素は任意の適切な容器に入れて提供できる。容器の例としては、試験管、バイアル、フラスコ、瓶、アンプル、シリンジなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。薬剤は本発明の方法ですぐ使用できる形態でも使用前に調製(凍結乾燥した薬剤の再構成など)が必要な形態でも提供できる。薬剤は単回使用のための一定分量として提供されてもよく、複数回(複数の反応など)使用できる原液として提供されてもよい。
一態様では、前記キットは以下のうち1つ以上の成分を含む反応混合物を含んでもよい:標的ポリヌクレオチド、本明細書に開示するループプライマー、順方向プライマー、逆方向プライマー、および検出可能量の増幅産物を生成するポリメラーゼ。ここで、標的ポリヌクレオチドは約100nt未満の長さである。
必要であれば、本発明のキットの成分を水性媒体に溶解した形態または凍結乾燥形態で容器に包装してもよい。2種以上の成分がキットに含まれる場合、キットは一般に、追加の成分を別個に入れられる第二、第三、またはその他の追加の容器も含む。しかし、成分の様々な組み合わせを1個以上のバイアルに入れてもよい。本発明のキットは一般に、市販のために厳重に管理されるプライマー、プローブ、緩衝剤、希釈剤および/またはその他の任意の試薬の容器を入れる容器をさらに含む。このような容器としては、所望のバイアルを保存する射出成形またはブロー成形したプラスチック容器を挙げることができる。標的ポリヌクレオチドに含まれる領域に相補的な配列を生成するための組成物を含むキットの成分が1つ以上の溶液として提供される場合、この溶液は一般に水溶液であり、滅菌水溶液が特に好ましい。しかし、本キットの成分は乾燥粉末として提供されてもよい。試薬および/または成分を乾燥粉末として提供する場合、粉末は適切な溶媒を添加することによって再構成できる。溶媒も別の容器で提供してよいことが想定される。
態様によっては、本発明のキットは、キットの成分を用いて標的ポリヌクレオチドに含まれる領域に相補的な配列を生成する方法について、使用者に向けた説明書を含む。
必要であれば、本発明のキットは増幅産物の蓄積をたとえばリアルタイムで監視できる1種以上の検出可能なマーカーをさらに含んでもよい。検出可能なマーカーの例は上述したようにPCR増幅工程の間、二本鎖DNAに優先的または排他的に結合する色素(SYBR(登録商標)Green色素またはBEBO色素など)が挙げられるがこれらに限定されるものではない。他の態様では、このキットは、PCR増幅産物の量を測定するための蛍光物質と消光剤を含む第一および/または第二のプライマーを含んでもよい。態様によっては、このキットは、増幅反応の進行または産物を検出するために上記のいずれかの種類のプローブをさらに含む。
本発明のキットは、標的ポリヌクレオチドに含まれる領域に相補的な配列を生成するために必要な1つ以上の試薬をさらに含んでもよい。たとえば、キットは、第一のDNA分子の合成に使用できる任意のRNA依存性DNAポリメラーゼを含んでもよい。その例としては、モロニーマウス白血病ウイルス由来RT(MMLV−RT)、トリ骨髄芽球症ウイルス由来RT(AMV−RT)、ウシ白血病ウイルス由来RT(BLV−RT)、ラウス肉腫ウイルス由来RT(RSV−RT)、ヒト免疫不全ウイルス由来RT(HIV−RT)、ラウス関連ウイルス由来RT(RAV−RT)、骨髄芽球症関連ウイルス由来RT(MAV−RT)またはその他のトリ肉腫・白血病ウイルス由来RT(ASLV−RT)、テルムス属(Thermus)Z05ポリメラーゼ、ΔZ05ポリメラーゼ、ならびにそれらの任意の修飾形態または誘導体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。態様によっては、このRNA依存性DNAポリメラーゼはRNAseH活性を有さない(たとえばSUPERSCRIPT III(商標)(Invitrogen)(1600 Faraday Avenue, PO Box 6482, Carlsbad, Calif. 92008)。態様によっては、RNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有する酵素はDNA依存性DNAポリメラーゼ活性も有し、反応混合物中で逆転写と増幅の両方の工程に使用される。
別の側面では、本発明は、ループプライマーと順方向プライマーと逆方向プライマーを含む、試料中の標的ポリヌクレオチドに含まれる領域に相補的な配列を生成するための反応混合物であって、(a)ループプライマーは一本の鎖に5’→3’方向に配列A、リンカー配列、および配列Bを含み、(i)配列Aと標的ポリヌクレオチドの配列A’との配列相補性および(ii)配列Bと標的ポリヌクレオチドの配列B’との配列相補性(配列A’と配列B’は標的ポリヌクレオチドの5’→3’方向に位置する)によって標的ポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズし;(b)逆方向プライマーは標的ポリヌクレオチドで配列A’よりも5’側に位置する配列に対し配列相同性を示し;かつ(c)順方向プライマーはリンカー配列に含まれる配列に特異的にハイブリダイズする、反応混合物を提供する。
反応混合物中で使用する標的ポリヌクレオチドは、短鎖非コードRNAまたはその他の任意の短鎖RNA(マイクロRNAなど)、あるいは上記の方法の項で説明したその他の標的ポリヌクレオチドであってよい。同様に、本明細書中に開示するループプライマーは、いずれも反応混合物中で使用できる。ループプライマーの特定配列の選択は、生成する標的ポリヌクレオチド配列に依存する。
反応混合物は、試料中の標的ポリヌクレオチドに含まれる領域に相補的な配列を生成するために必要な試薬(酵素、緩衝剤など)を含んでもよい。たとえば、反応混合物は、第一のDNA分子の合成に使用できる任意のRNA依存性DNAポリメラーゼを含んでもよい。その例としては、モロニーマウス白血病ウイルス由来RT(MMLV−RT)、トリ骨髄芽球症ウイルス由来RT(AMV−RT)、ウシ白血病ウイルス由来RT(BLV−RT)、ラウス肉腫ウイルス由来RT(RSV−RT)、ヒト免疫不全ウイルス由来RT(HIV−RT)、ラウス関連ウイルス由来RT(RAV−RT)、骨髄芽球症関連ウイルス由来RT(MAV−RT)またはその他のトリ肉腫・白血病ウイルス由来RT(ASLV−RT)、テルムス属(Thermus)Z05ポリメラーゼ、ΔZ05ポリメラーゼ、それらの任意の修飾形態または誘導体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。態様によっては、このRNA依存性DNAポリメラーゼはRNAseH活性を有さない(たとえばSUPERSCRIPT III(商標)(Invitrogen)(1600 Faraday Avenue, PO Box 6482, Carlsbad, Calif. 92008)。態様によっては、RNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有する酵素はDNA依存性DNAポリメラーゼ活性も有し、反応混合物中で逆転写と増幅の両方の工程に使用される。
態様によっては、本発明の反応混合物は、カリウム塩(たとえば塩化カリウム)、マグネシウム塩(たとえば塩化マグネシウム)、還元剤(たとえばジチオスレイトール)、デオキシヌクレオシド三リン酸(deoxynucleoside triphosphates;dNTP)、界面活性剤、ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体、および増幅産物の蓄積をリアルタイムで監視するための1つ以上の検出可能なマーカーを含む緩衝剤をさらに含む。
態様によっては、試料中の標的ポリヌクレオチドに含まれる領域に相補的な配列を生成するための反応混合物は、本明細書に開示する容器に入っている。態様によっては、容器はウェル、プレート、チューブ、チャンバー、フローセル、またはチップである。
本発明の方法および組成物は、miRNA分子などの小さな核酸標的分子からcDNA分子を生成・増幅するのに特に有用である。DNA分子の量を測定することができ、それによって出発材料に含まれるその標的核酸分子の量の測定値が得られる。たとえば、本発明の方法、組成物、反応混合物、試験、キット、および/またはシステムを用いて、生細胞に含まれる特定の非コードRNA分子(たとえばmiRNA分子)の量を測定できる。たとえば、本発明を利用して、生体の様々な細胞型で特定の非コードRNA分子(たとえばmiRNA分子)の量を測定することにより、特定の非コードRNA分子の体内分布の「図」を作成できる。また、本発明を利用して、刺激に対する(たとえば、生細胞集団への薬物処置に対する)特定の非コードRNA分子(たとえばmiRNA分子)の量の変化を測定できる。
本発明の方法、組成物、反応混合物、試験、キット、および/またはシステムの態様は、患者から採取した試料中の1種以上の低分子核酸(miRNAなど)の発現を測定する工程を含む、患者の状態または潜在的な状態の診断および/または評価に有用となる可能性がある。患者から採取した試料と基準(正常試料すなわち病的でない試料など)における発現の違いは、病態、病状、またはがん性の状態、あるいはそれらのリスクを示す可能性がある。疾患または病的状態を有する、あるいはその疑いのある患者から試料を採取してよい。ある側面では、試料は、組織(たとえば生検、特に細針生検)、血液、血清、血漿、膵液、またはその他の体液であってよいが、これらに限定されるものではない。試料は新たに採取した試料、凍結試料、固定化(たとえばホルマリン固定)した試料、包埋(たとえばパラフィン包埋)した試料、あるいはそれらの組み合わせ(たとえばホルマリン固定パラフィン包埋試料)であってよい。
本発明の方法、組成物、反応混合物、試験、キット、および/またはシステムは、多くの疾患または状態の低分子核酸試料の診断検査に特に重要である。ある態様では、診断方法は、疾患または状態を示す試料(非正常試料)で発現の異なる1種以上のRNA(miRNAなど)の特定を含む。ある態様では、疾患または状態の診断は、発現した非コードRNA(および必要に応じて1種以上のコードRNA)の検出および/または定量を含む。態様によっては、本発明の方法を用いて、状態に関連する1つ以上の試料と状態に関連しない1つ以上の試料の間で非コードRNAの有無、相対的な多さ、および/または量を比較することによって、1種以上の非コードRNAの有無、相対的多さ、および/または量とその状態との相関性を確認する。疾患の表現型に関連するRNAを「バイオマーカー」という。ある態様では、本発明は、より長い増幅産物(たとえば60〜200nt)に依存する従来の定量逆転写PCR(qRT−PCR)に比べて短い(たとえば30nt未満)増幅産物を検出できる。臨床試料は大規模なRNA分解を起こしやすく、そのため、標的の増幅産物のサイズが分解後のRNAとほぼ同じかそれより大きい場合、検出感度が制限される可能性がある。より短い増幅産物を用いて標的を検出することによって、標的がかなり分解されていても指数関数的に増幅される可能性が高まる。さらに、より短い標的特異的増幅産物を用いてRNAを検出することにより、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)試料(RNAが固定処理での共有結合修飾によって損傷したり包埋処理に用いる高温によって分解されたりする可能性がある)に存在するRNAを高感度で定量できる。
本発明は、RNAウイルス(ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、C型肝炎ウイルス(HCV))やその他の微生物などの感染性疾患で核酸を検出するのにも利用できる。本発明は、的確なバイオマーカーを知ることが予測上重要であり、疾患管理における治療上の判断やその他の側面(選択した治療への応答の予測など)の指標となる可能性のある疾患(白血病など)で疾患特異的な非コードRNAを検出するのにも有用となる可能性がある。
特に、本発明の方法、組成物、反応混合物、試験、キット、および/またはシステムは、疾患または状態に関して試料を評価するのに利用できる。このような疾患の例としては以下が挙げられるがこれらに限定されるものではない:アルツハイマー病、黄斑変性症、慢性膵炎;膵臓がん;AIDS、自己免疫疾患(関節リウマチ、多発性硬化症、インスリン依存性糖尿病およびインスリン非依存型糖尿病、全身性エリテマトーデス、およびグレーブス病);がん(たとえば悪性、良性、転移性、前がん);循環器疾患(心疾患または冠状動脈疾患、虚血性卒中および出血性卒中、リウマチ性心疾患);神経系疾患;ならびに病原微生物による感染症(足白癬、水痘、かぜ、下痢性疾患、インフルエンザ、性器ヘルペス、マラリア、髄膜炎、肺炎、副鼻腔炎、皮膚疾患、連鎖球菌性咽頭炎、結核、***症、膣感染症、ウイルス性肝炎);炎症(アレルギー、喘息);プリオン病(たとえばクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、クールー病、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー症候群(GSS)、致死性家族性不眠症(FFI))。
本発明の方法、組成物、反応混合物、試験、キット、および/またはシステムで評価できるがんは、膀胱、血液、骨、骨髄、脳、***、結腸、食道、胃腸、歯肉、頭部、腎臓、肝臓、肺、上咽頭、頚部、卵巣、膵臓、前立腺、皮膚、胃、精巣、舌、または子宮に由来するがん細胞(細胞とがん細胞を含む)を含む。また、このようながんは、具体的には以下の組織型であってよい(ただし、これらに限定されるものではない):悪性腫瘍;がん;未分化がん;巨細胞・紡錘細胞がん;小細胞がん;乳頭状がん;扁平上皮がん;リンパ上皮がん;基底細胞がん;毛母がん;移行上皮がん;乳頭状移行上皮がん;腺がん;悪性ガストリノーマ;胆管細胞がん;肝細胞がん;肝細胞がんと胆管細胞がんの混合型;索状腺がん;腺様嚢胞がん;腺腫性ポリープ内腺がん;大腸腺腫性ポリポーシス内腺がん;固形がん;悪性カルチノイド腫瘍;細気管支肺胞腺がん;乳頭状腺がん;嫌色素性がん;好酸性がん;好酸性腺がん; 好塩基性がん;明細胞腺がん;顆粒細胞がん;濾胞腺がん;乳頭状・濾胞腺がん;非被包性硬化がん;副腎皮質がん;類内膜がん;皮膚付属器がん;アポクリン腺がん;皮脂腺がん;耳道腺がん;粘表皮がん;嚢胞腺がん;乳頭状嚢腺がん;乳頭状漿液性嚢胞腺がん;粘液性嚢胞腺がん;粘液性腺がん;印環細胞がん;浸潤性乳管がん;髄様がん;小葉がん;炎症性がん;***パジェット病;膵腺房細胞がん;腺扁平上皮がん;扁平上皮化生を伴う腺がん;悪性胸腺腫;悪性卵巣間質腫瘍;悪性莢膜細胞腫;悪性顆粒膜細胞腫;悪性アンドロブラストーマ;セルトリ細胞がん;悪性ライデッヒ細胞腫;悪性脂質細胞腫瘍;悪性傍神経節腫;悪性***外傍神経節腫;褐色細胞腫;グロムス血管肉腫;悪性黒色腫;無色素性黒色腫;表在性拡大型黒色腫;巨大色素性母斑に合併した悪性黒色腫;類上皮細胞黒色腫;悪性青色母斑;肉腫;線維肉腫;悪性線維性組織球腫;粘液肉腫;脂肪肉腫;平滑筋肉腫;横紋筋肉腫;胎児性横紋筋肉腫;胞状横紋筋肉腫;間質肉腫;悪性混合腫瘍;ミューラー管混合腫瘍;腎芽腫;肝芽腫;がん肉腫;悪性間葉腫;悪性ブレンナー腫瘍;悪性葉状腫瘍;滑膜肉腫;悪性中皮腫;未分化胚細胞腫;胎児性がん;悪性奇形腫;悪性卵巣甲状腺腫;絨毛がん;悪性中腎腫;血管肉腫;悪性血管内皮腫;カポジ肉腫;悪性血管周皮腫;リンパ管肉腫;骨肉腫;傍骨性骨肉腫;軟骨肉腫;悪性軟骨芽細胞腫;間葉性軟骨肉腫;骨巨細胞腫;ユーイング肉腫;悪性歯原性腫瘍;エナメル上皮歯牙肉腫;悪性エナメル上皮腫;エナメル上皮線維肉腫;悪性松果体腫;脊索腫;悪性神経膠腫;上衣腫;星細胞腫;形質性星細胞腫;線維性星細胞腫;星状芽細胞腫;膠芽腫;乏突起神経膠腫;乏突起膠芽腫;原始神経外胚葉性腫瘍;小脳肉腫;神経節神経芽腫;神経芽腫;網膜芽細胞腫;嗅神経腫瘍;悪性髄膜腫;神経線維肉腫;悪性神経鞘腫;悪性顆粒細胞腫;悪性リンパ腫;ホジキン病;ホジキンリンパ腫;側肉芽腫;悪性小リンパ球性リンパ腫;悪性びまん性大細胞型リンパ腫;悪性濾胞性リンパ腫;菌状肉芽腫;その他の特定の非ホジキンリンパ腫;悪性組織球症;多発性骨髄腫;肥満細胞肉腫;免疫増殖性小腸疾患;白血病;リンパ性白血病;形質細胞性白血病;赤白血病;リンパ肉腫細胞白血病;骨髄性白血病;好塩基球性白血病;好酸球性白血病;単球性白血病;肥満細胞白血病;巨核芽球性白血病;骨髄肉腫;および有毛細胞白血病。さらに、異形成、形成異常、過形成などの前がん状態でもRNAを評価できる。
本発明は、疾患の病期(過形成、腫瘍形成、前がん状態およびがん、あるいは原発性腫瘍と転移腫瘍)の違いを評価するのに利用できることが具体的に期待される。さらに、特定の経路の活性に違いのある試料を比較することもできると期待される。このような経路としては、以下の経路および以下の因子に関与する経路が挙げられる:抗体応答、アポトーシス、カルシウム/活性化T細胞核内因子(NFAT)シグナル伝達、細胞周期、細胞移動、細胞接着、細胞***、サイトカインおよびサイトカイン受容体、薬物代謝、成長因子および成長因子受容体、炎症性反応、インスリンシグナル伝達、核内因子κB(NFκ−B)シグナル伝達、血管形成、脂肪生成、細胞接着、ウイルス感染、細菌感染、老化、運動性、グルコース輸送、ストレス反応、酸化、老化、テロメア伸長、テロメア短縮、神経伝達、血液凝固、幹細胞分化、Gタンパク質共役受容体(GPCR)シグナル伝達、およびp53活性化。
本発明の方法、組成物、反応混合物、試験、キット、および/またはシステムを用いて評価できる細胞経路としては以下も挙げられるがこれらに限定されるものではない:接着経路または運動性経路(たとえば、環状アデノシン一リン酸(AMP)、タンパク質キナーゼA、Gタンパク質共役受容体、アデニル酸環化酵素、L−セレクチン、E−セレクチン、血小板内皮細胞接着分子(PECAM)、血管細胞接着分子1(VCAM−1)、α−アクチニン、パキシリン、カドヘリン、Akt、インテグリンα、インテグリンβ、Raf−1、細胞外シグナル制御キナーゼ(ERK)、ホスファチジルイノシトール3(PI−3)キナーゼ、ビンキュリン、マトリックスメタロプロテイナーゼ、GTPアーゼRho、p85、トレフォイル因子、プロフィリン、接着斑キナーゼ(FAK)、微小管結合タンパク質(MAP)キナーゼ、Ras、カベオリン、カルパイン−1、カルパイン−2、上皮成長因子受容体、細胞接着分子(ICAM)−1、ICAM−2、コフィリン、アクチン、ゲルゾリン、RhoA、Rac1、ミオシン軽鎖キナーゼ、血小板由来成長因子受容体またはエズリンに関与するものが挙げられるが、これらに限定されるものではない);任意のアポトーシス経路(Akt、Fasリガンド、核内因子(NF)−κB、カスパーゼ9、PI3キナーゼ、カスパーゼ3、カスパーゼ7、カスパーゼ活性化DNA分解酵素阻害剤(ICAD)、カスパーゼ活性化DNA分解酵素(CAD)、エンドヌクレアーゼG(EndoG)、グランザイムB、Bad、Bax、Bid、Bak、アポトーシスプロテアーゼ活性化因子(APAF)1、シトクロムC、p53、血管拡張性失調症変異タンパク質(ATM)、Bcl−2、ポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)、Chk1、Chk2、p21、c−Jun、p73、Rad51、Mdm2、Rad50、c−Abl、BRCA−1、パーフォリン、カスパーゼ4、カスパーゼ8、カスパーゼ6、カスパーゼ1、カスパーゼ2、カスパーゼ10、Rho、Junキナーゼ、Junキナーゼキナーゼ、R1p2、ラミンA、ラミンB1、ラミンB2、Fas受容体、H2O2、グランザイムA、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)オキシダーゼ、HMG2、CD4、CD28、CD3、TNF受容体関連細胞死ドメイン(TRADD)、IκBキナーゼ(IKK)、Fas結合細胞死ドメイン(FADD)、増殖停止およびDNA損傷誘導性(GADD)タンパク質45、細胞死受容体(DR)3、細胞死受容体(DR)4/5、FLICE抑制タンパク質(FLIP)、APO−3、増殖因子受容体結合タンパク質(GRB2)、SHC、ERK、MEK、RAF−1、環状AMP、タンパク質キナーゼA、E2F、網膜芽細胞腫タンパク質、Smac/Diablo、アセチルコリン(ACH)受容体、14−3−3、FAK、細胞死ドメインのサイレンサー(SODD)、腫瘍壊死因子(TNF)受容体、受容体共役タンパク質(RIP)、サイクリンD1、増殖細胞核抗原(PCNA)、Bcl−XL、ホスファチジルイノシトール二リン酸(PIP2)、ホスファチジルイノシトール三リン酸(PIP3)、PTEN、ATM、Cdc2、タンパク質キナーゼC、カルシニューリン、IKKα、IKKβ、IKKγ、SOS−1、c−FOS、TNF受容体関連因子(TRAF)−1、TRAF−2、IκΒβまたはプロテアソームに関与するものが挙げられるがこれらに限定されるものではない);任意の細胞活性化経路(タンパク質キナーゼA、一酸化窒素、カベオリン1、アクチン、カルシウム、タンパク質キナーゼC、Cdc2、サイクリンB、Cdc25、GRB2、ステロイド受容体活性化補助因子(SRC)タンパク質キナーゼ、ADPリボシル化因子(ARF)、ホスホリパーゼD、Aキナーゼアンカータンパク質(AKAP)95、p68、オーロラキナーゼB、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)1、Eg7、ヒストンH3、タンパク質キナーゼAのサブユニットc(PKAc)、CD80、PI3キナーゼ、ウィスコット・アルドリッチ症候群タンパク質(WASP)、Arp2、Arp3、p16、p34、p20、タンパク質ホスファターゼ2A(PP2A)、アンジオテンシン、アンジオテンシン変換酵素、プロテアーゼ活性化受容体1、プロテアーゼ活性化受容体4、Ras、Raf−1、ホスホリパーゼ(PLC)β、PLCγ、シクロオキシゲナーゼ(COX)−1、Gタンパク質共役受容体、ホスホリパーゼA2、IP3、低分子ユビキチン様修飾因子(SUMO)1、SUMO2/3、ユビキチン、Ran、Ran−GTPase活性化タンパク質(Ran−GAP)、Ran−グアニンヌクレオチド交換因子(Ran−GEF)、p53、グルココルチコイド、グルココルチコイド受容体、SWI/SNF複合体の成分、RanBP1、RanBP2、インポーチン、エキスポーチン、染色体凝縮調節因子(RCC)1、CD40、CD40リガンド、p38、IKKα、IKKβ、NFκB、TRAF2、TRAF3、TRAF5、TRAF6、インターロイキン(IL)−4、IL−4受容体、CDK5、AP−1転写因子、CD45、CD4、T細胞受容体、MAPキナーゼ、神経成長因子、神経成長因子受容体、c−Jun、c−Fos、Junキナーゼ、GRB2、SOS−1、ERK−1、ERK、ヤヌスキナーゼ(JAK)2、シグナル伝達性転写因子(STAT)4、IL−12、IL−12受容体、一酸化窒素合成酵素、チロシンキナーゼ(TYK)2、インターフェロン(IFN)γ、エラスターゼ、IL−8、エピセリン、IL−2、IL−2受容体、CD28、SMAD3、SMAD4、トランスフォーミング増殖因子(TGF)βまたはTGFβ受容体に関与するものが挙げられるがこれらに限定されるものではない);任意の細胞周期制御、シグナル伝達、または分化経路(TNF、SRCタンパク質キナーゼ、Cdc2、サイクリンB、Grb2、Sos−1、SHC、p68、オーロラキナーゼ、タンパク質キナーゼA、タンパク質キナーゼC、Eg7、p53、サイクリン、サイクリン依存性キナーゼ、神経成長因子、上皮成長因子、網膜芽細胞腫タンパク質、活性化転写因子(ATF)−2、ATM、毛細血管拡張性運動失調症およびRad3関連タンパク質(ATR)、AKT、チェックポイントキナーゼ(CHK)1、CHK2、14−3−3、WEE1、CDC25、CDC6、複製開始点認識複合体タンパク質、p15、p16、p27、p21、ABL、c−ABL、SMAD、ユビキチン、SUMO、熱ショックタンパク質、Wnt、グリコーゲン合成酵素キナーゼ(GSK)−3、アンジオテンシン、p73、任意のペルオキシソーム増殖剤活性化受容体(PPAR)、TGFα、 TGFβ、p300、Mdm2、GADD45、ノッチ、cdc34、BRCA−1、BRCA−2、S期キナーゼ関連タンパク質(SKP)1、プロテアソーム、CUL1、E2F、p107、ステロイドホルモン、ステロイドホルモン受容体、IκBα、IκBβ、Sin3A、熱ショックタンパク質、Ras、Rho、ERK、IKK、PI3キナーゼ、Bcl−2、Bax、PCNA、MAPキナーゼ、ダイニン、RhoA、PKAc、サイクリンAMP、FAK、PIP2、PIP3、インテグリン、トロンボポエチン、Fas、Fasリガンド、polo様キナーゼ(PLK)3、MEK、JAK、STAT、アセチルコリン、パキシリン、カルシニューリン、p38、インポーチン、エキスポーチン、Ran、Rad50、Rad51、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、Ran−GAP、Ran−GEF、核有糸***装置タンパク質(NuMA)、Tpx2、RCC1、ソニックヘッジホッグ、Crml、パッチト(Patched;Ptc)−1、M期促進因子(MPF)、CaMキナーゼ、チューブリン、アクチン、動原体関連タンパク質、セントロメア結合タンパク質、テロメラーゼ、テロメラーゼ逆転写酵素(TERT)、PP2A、c−Myc、インスリン、T細胞受容体、B細胞受容体、カルシウム結合タンパク質(CBP)、IKβ、NFκB、RAC1、Raf−1、エリスロポエチン(EPO)、ジアシルグリセロール、c−Jun、c−Fos、Junキナーゼ、低酸素誘導因子、GATA4、βカテニン、αカテニン、カルシウム、アレスチン、サバイビン、カスパーゼ、プロカスパーゼ、サイクリックAMP応答配列結合タンパク質(CREB)、サイクリックAMP応答配列調節因子(CREM)、カドヘリン、PECAM、コルチコステロイド、コロニー刺激因子、カルパイン、アデニル酸環化酵素、成長因子、一酸化窒素、膜貫通受容体、レチノイド、Gタンパク質、イオンチャンネル、転写活性化因子、転写活性化補助因子、転写抑制因子、インターロイキン、ビタミン、インターフェロン、転写抑制補助因子、核孔、窒素、毒素、タンパク質分解、またはリン酸化に関与するものが挙げられるがこれらに限定されるものではない);任意の代謝経路(アミノ酸類の生合成、脂肪酸の酸化、神経伝達物質およびその他の細胞シグナル伝達分子の生合成、ポリアミンの生合成、脂質およびスフィンゴ脂質の生合成、アミノ酸類および栄養素の異化、ヌクレオチド合成、エイコサノイド、電子伝達反応、小胞体(ER)関連分解、解糖、線維素溶解、ケトン体の生成、ファゴソームの生成、コレステロール代謝、食物摂取量の制御、エネルギー恒常性、プロトロンビン活性化、ラクトースおよびその他の糖の合成、多剤耐性、ホスファチジルコリン生合成、プロテアソーム、アミロイド前駆体タンパク質、Rab−GTPase、デンプン合成、グリコシル化、ホスホグリセリドの合成、ビタミン、クエン酸回路、インスリン様成長因子(IGF)−1受容体、尿素回路、小胞輸送、または再利用経路に関与するものが挙げられるがこれらに限定されるものではない)。本発明の核酸分子は、上記のうち任意の経路または因子に関する診断方法および治療方法に採用できることがさらに期待される。したがって、本発明の態様によっては、非コードRNAは上記の経路または因子のうち1つ以上について発現が異なるものでもよい。
また、表現型形質としては寿命、罹患、外見(たとえば脱毛症、肥満)、強度、速度、耐久性、生殖能、特定の薬物または治療処置に対する感受性または受容性(薬物の効能)、および薬物毒性のリスクなどの特性が挙げられる。これらの表現型形質に違いがある試料を本明細書に記載の方法で評価することもできる。
本発明の方法、組成物、反応混合物、試験、キット、および/またはシステムの特定の態様では、核酸分析表を作成してそれらの分析表を評価し、薬物動態と関連づけてもよい。たとえば、患者の治療前または治療中に患者の腫瘍および血液の試料についてRNA分析表を作成して評価し、発現がその患者の予後と関連するRNAの有無を決定してもよい。判断の目安となるRNAを特定することにより、そのRNAを含む診断試験を導くことができ、その方法を利用して腫瘍および/または血液試料を評価し、患者に提供すべき薬物投与計画を決定できる。また、この方法を用いて特定の臨床試験に適した患者を特定または選択できる。RNA特性が薬物の効能または毒性と相関性があると判断した場合、そのことは、その患者がその薬物またはその薬物の特定の用量を受けるのに適切な患者であるかどうかと関連する可能性がある。
別の側面では、本発明は、試料中の標的ポリヌクレオチドを検出するシステムであって、(a)試料で検出反応を実施するようにとの顧客の要求を受けるよう構成されたコンピュータと;(b)請求項37に記載の反応混合物中で核酸増幅反応を実施して増幅産物を生成する増幅系と;(c)増幅産物量に対応する検出シグナルの検出結果を含む報告書を受取人に送る報告書作成部とを含む、システムを提供する。一態様では、受取人は顧客である。態様によっては、本発明は、1つ以上のプロセッサで実行すると試料中の標的ポリヌクレオチドを検出する方法を実施するコードを含む、コンピュータ可読媒体であって、該方法は、(a)試料で検出反応を実施するようにとの顧客の要求を受ける工程と;(b)請求項40に記載の反応混合物中で核酸増幅反応を実施して増幅産物を生成する工程と;(c)増幅産物量に対応する検出シグナルの検出結果を含む報告書を作成する工程とを含む、媒体を提供する。
態様によっては、前記システムは、核酸の検出、定量、または増幅のサービスの購入の提案を受けるよう構成されたウェブページをさらに含む。態様によっては、表示は電子的であり、たとえばウェブページである。態様によっては、前記システムは、販売された情報に基づいてカウンセラーおよび/または他の医療従事者(たとえば医療遺伝学者または産科医/婦人科医)を紹介する表示をさらに備える。
インターネットおよびワールドワイドウェブによって情報の利用および配信ができる。態様によっては、ウェブサイトを、顧客が核酸の検出、定量、または増幅サービスを購入できるように効率的に提供される様々な機能に特に適合させることができる。このシステムは一般にウェブサイトが存在するサーバを含む。ユーザは、サーバ接続されたコンピュータモニターや電話画面などのインターフェースを用いて、情報を表示したり別のウェブページへユーザを誘導したりするリンクをクリックしたりカーソルを合わせたりしてウェブサイトと相互通信する。ウェブサイトは一般に対話型であり、ユーザは情報や問い合わせを入力してインターフェース上で応答を得ることができる。
システムおよびビジネス方法の態様によっては、ウェブサイトにより、顧客が核酸の検出、定量、または増幅の結果を購入、管理、および閲覧でき、さらにはその結果の意義についてさらに概要を知ることができる。たとえば、顧客は自分の低分子RNA特性が疾患の特性を示すかどうかを知りたい患者である場合がある。顧客は以下のうち1つ以上を決定できる核酸の検出、定量、または増幅サービスの購入の提案を受けることができる:(i)顧客の遺伝的状態;(ii)顧客に1つ以上の疾患または形質が現れる可能性;(iii)顧客の核酸試料で特定された病因となる遺伝的多様体に基づいて顧客に1つ以上の疾患または形質が現れる確率。
本発明の方法、組成物、反応混合物、試験、キット、および/またはシステムを使用した核酸検出、定量または増幅サービスの購入することを顧客が選択した場合、顧客はたとえばオンラインクレジットカード取引によって、サービス、企業のスタッフとの直接電話相談、および/または関連する医療従事者の紹介と交換に料金を支払うことができる。試験および紹介については購入時点の料金によって支払うことも、最初のユーザ登録料に含めることもできる。態様によっては、サービスは無料であり、特定の製品と共に他の製品を宣伝することによって企業は収益を得る。たとえば、顧客がオンラインで注文した後、その注文はサーバへ送られ処理される。支払が確認されると、注文処理サーバは、核酸採取キットを顧客に郵送するようにとの電子通知を配送業者に送ることができる。一態様では、採取キットは検出、定量および/または増幅サービスとは別個であるか、ユーザまたは顧客は核酸採取キットを他の供給元から既に有しているか入手する。注文確認と注文・出荷の状況に関する更新情報を含む通知を定期的に顧客に電子送信することもできる。本発明のビジネス方法の態様によっては、顧客は試料を採取キットに入れることができる。当業者には明らかだと思われる任意の試料を採取キットに入れるか置くことができる。試料は、分析対象の核酸を含む、体液(唾液または血液など)などの当業者には明らかだと思われる任意の物質であってよい。その後、処理を行うため、採取キットを研究所に送るよう企業に返送するか研究所へ直接返送できる。研究所(企業で働く契約をした社内研究所でも社外研究所でもよい)は、提供された試料から顧客の核酸を単離できる。核酸を試料から単離した後、装置(たとえば本明細書に記載の装置など)で核酸の存在を検出、増幅、かつ/または定量できる。態様によっては、検出、定量、および/または増幅のために試料から核酸を単離する必要はない。
本発明の方法、組成物、反応混合物、試験、キット、および/またはシステムを用いて検出、定量、かつ/または増幅された核酸に関する情報は、保存および処理のためサーバへ電子送信できる。サーバ上のコンピュータコードが核酸情報に対して実行し、顧客の医療情報を推測し、かつ/または病因となる遺伝的多様体および/または非対象配列が存在する場合、その存在を確認できる。次に処理後の核酸情報をサーバへ電子送信でき、そこでサーバ上のコンピュータコードを処理後の核酸情報で実行し、顧客の処理後の核酸情報で存在が認められた病因となる遺伝的多様体によって起こる複数の形質のそれぞれを顧客が有する確率を予測できる。その後、結果を保管のためサーバへ電子送信できる。
一例では、顧客に通知を送信して結果の有効性について知らせることができる。通知は電子通知(例としてはテキストメッセージ、電子メール、または他のデータパケットなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない)でも電子的でないもの(例としてはカウンセラーからの電話または郵送される報告書などの印刷物による通信手段が挙げられるが、これらに限定されるものではない)でもよい。顧客に提供される結果は、1つまたは複数の疾患または形質に関する顧客の保因状態および/または顧客に1つ以上の疾患または形質が現れる見込みを顧客に知らせることができる。顧客が結果および紹介を受け取ると、顧客の注文は完了したと見なすことができ、顧客はオンラインウェブサイトのアカウントを通じて結果および紹介に引き続きアクセスできる。その後、顧客は希望に応じてオフラインで紹介をさらに求めることを選択できるが、ウェブサイトの範囲外である。
以下の実施例は本発明の様々な態様を例示する目的で記載するものであり、本発明を何ら限定しない。本実施例および本明細書に記載の方法は、現時点の好ましい態様を代表する例示的なものであり、本発明の範囲を限定しない。当業者は特許請求の範囲によって定義される本発明の精神の範囲内の変更や他の使用法を発想するであろう。
(実施例1:miRNA定量のための新規方針の概要説明)
本発明の相補配列増幅スキームの例示的な概略図を図1に示す。RTループプライマーは3つの部分を含む。すなわち、汎用的な配列(配列Aと配列Bを結ぶ線で示す)、RTループプライマーの5’末端側に位置するmiRNA相補配列(配列A)、およびRTループプライマーの3’末端側に位置するmiRNA相補配列(配列B)である。RT反応は、このRTループプライマーの3’末端(配列B)から開始され、miRNA配列と汎用的配列の両方を含むハイブリッドcDNA鎖を生成する。特異的なループプライマーを用いるこのRTでは、RNAが標的の場合には逆転写酵素、DNAが標的の場合にはポリメラーゼによるプライマー伸長を利用する。ポリメラーゼは、配列Bのハイブリダイゼーション領域である標的ポリヌクレオチドの5’末端側の領域に対する相補配列の生成中、配列Aと標的ポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションを低減する。RT後、汎用配列に相補的な順方向プライマーと、miRNAに特異的な配列に相補的な逆方向プライマーを用いて定量PCRでこのハイブリッドcDNAを定量する。
(実施例2:標的miRNAおよびプライマー)
miRNAの配列hsa−let−7a−5p(UGAGGUAGUA
GGUUGUAU
AGUU)(受入番号MIMAT0000062、22nt))およびhsa−let−7c(UGAGGUAGUAGGUUGUAU
GGUU(受入番号MIMAT0000064、22nt))をmiRBASEのサイトから入手した(http://www.mirbase.org/index.shtml)。hsa−let−7a−5pのグアニンをシトシンに置換してhsa−let−7x−testの配列を生成した(UGAGGUAGUA
CGUUGUAUAGUU、22nt)。報告ではこの3種の合成miRNAをlet−7a、let−7c、およびlet−7xと簡略化する。合成miRNAオリゴヌクレオチドとプライマーはIntegrated DNA Technologies(IDT)より購入した。プライマーの名称と配列(5’→3’方向に記載)は以下のとおりである。
(実施例3:逆転写および定量PCR)
RT反応溶液は合成miRNAオリゴヌクレオチド0.25μgとRTプライマー0.7μMを含有するものとした。RT緩衝剤、dNTP、MgCl2、RNaseOUT、およびSuperscript(登録商標)III RTはSuperscript(登録商標)III First-Strand Synthesis System(Invitrogen(商標)(Life Technologies)、18080-051)のキットから得た。RTを製造業者の指示に従い実施した。簡単に説明すると、10μlの反応溶液を、37℃、42℃または50℃で50分間、続いて75℃で15分間、Bio-Rad CFXの装置を用いてインキュベートした後、RT産物を4℃で保持した。
RT産物をキャピラリー電気泳動(CE)装置(Fragment Analyzer(Advanced Analytical Technologies))とSensitivity RNA Analysis Kit(DNF-489-0500)を用いて製造業者の指示に従い分析した。RTプライマーを含むがmiRNA鋳型を含まない反応をRT対照とした。
TATAA SYBR(登録商標)Grandmaster(登録商標)Mixを製造者の指示に従って使用し、定量PCRを実施した。RTにより生成したcDNAを、約106コピー/μlになるようTE−LPA緩衝剤(8μlのLPAを10mlの1×Tris−EDTAに懸濁したもの)により希釈した。次に、PCR反応液に希釈cDNAを1μlとPCRプライマー5+5Fp(汎用、CTACTGTTGCAGTGG、22nt)と5+5Rp(miRNA特異的、TGAGGTAGTAGGTTG、22nt)を200nM添加した。反応液中の標的cDNAのコピー数は以下の式で計算した:cDNAのコピー数=miRNA鋳型の濃度(nM)×6.022×1023/(miRNAの長さ×650×109)。反応液10μlを95℃で1分間インキュベートした後、95℃で5秒間、52℃で30秒間、および72℃で10秒間のサイクルを45サイクル行った。すべての反応を2回行った。
(実施例4:RT工程の確認)
miRNAの定量の特異性を最適にするため、発明者らは図1に例示する新規方針を提案した。まず、40ntの汎用配列と5〜10ntのmiRNA特異的配列を含むプライマーを用いた逆転写によってハイブリッドcDNA鋳型を得た。次に、汎用的な順方向プライマーおよびmiRNA特異的な逆方向プライマーを用いて定量PCRを実施した。
この試験では、RTプライマーの5’末端と3’末端の両方が標的miRNAと重複していた。そこである疑問が生じた。すなわち、miRNA鋳型と連動する逆転写酵素の性能を妨害せずに標的miRNAとハイブリダイズさせるにはどれくらいの数のヌクレオチドのRTプライマーが必要かという問題である。この問題に対処するため、標的miRNAの5’末端側および3’末端側に相補的な様々なヌクレオチド数の様々なRTプライマーを実施例2で試験した。
RTプライマー「5+5」の場合、効率的なRTが得られた。まず、RT反応を50℃で実施した。合成miRNAであるlet−7aを鋳型として用い、RT産物をCEで分析した。プライマー「5+5」を用いたRTの後、図2(A)では、図2(B)のRT対照(miRNA鋳型なし)と比較して、RTプライマーよりも18nt多い追加のピークが検出された。図2(A)に約74ntのハイブリッドcDNAのピークを矢印で示す。図2(B)には、プライマー5+5を含むがmiRNAを含まないRT対照の結果を示す。LMは20ntのラダーマーカーを示す。この結果から、プライマー「5+5」によってハイブリッドcDNAがRT生成されたことがわかった。
図3(A)に示すように、PCRプライマー5+5Fpおよび5+5Rpを用いた定量PCRでもハイブリッドcDNAの存在を確認した。RTプライマーの濃度もmiRNAの定量精度に重要であった。発明者らはRTプライマー5+5の濃度を1.4μMから0.7μMに下げても図3(AおよびB)のRT工程に影響はなく下流の定量PCRにほとんど干渉しないことを見出した。図3(A)ではRTプライマー5+5が0.7μMのときRT産物が生成された。図3(B)では、RTプライマー5+5が1.4Mの場合にRT産物が生成された。図3(A)および(B)について、増幅曲線IはハイブリッドcDNAの増幅産物であり、増幅曲線IIはRT対照の増幅産物である。
実施例2で挙げた他のプライマーを用いてRTを実施したところ、どのプライマーでも50℃ではハイブリッドcDNAは生成されなかった。温度がRTの結果に影響する可能性を考慮し、実験で一般に使用する別の2種類のRT温度、37℃と42℃でRTを実施した。図4に示すように、いずれの温度でもプライマー5+5によってcDNAが生成された。一方、他のプライマー対ではやはりこの2種類の試験温度のいずれでもハイブリッドcDNAは生成されなかった。図4(A)についてはRTを42℃で行い、図4(B)では37℃で行った。図4(C)について、RT対照はプライマー5+5を含むがmiRNAを含んでいない。図4では新たに生成したcDNAを矢印で示す。LMはラダーメーカーを示し、20ntのRNAが示されている。
RTプライマーの濃度が高い場合、cDNA産物のシグナルが圧縮され低RFUになるため、CEの読み取り値が偽陰性になる可能性がある。そこで、RTプライマーの濃度を0.7Mから0.28Mに下げたところ、図5(AおよびB)のRTプライマー3+3を用いたRT後、ハイブリッドcDNA産物を表す可能性のある追加のピークが観察された。ハイブリッドcDNAの存在を確認するため、プライマー5+5Fpおよび5+5Rpを用いた定量PCRでRT産物を検証したところ、図5(C)に見られるようにCq値はRT対照の場合よりわずか2.3サイクルだけ多かった。図5(A)では、RTプライマー3+3の濃度が1.4μMのとき、CE分析でハイブリッドcDNA産物を表す追加のピークが観察された。図5(B)では、RTプライマー3+3の濃度が2.8μMのとき、CE分析でハイブリッドcDNA産物を表す追加のピークが観察された。図5(C)の定量PCR分析結果から、増幅曲線Iはプライマー3+3が0.28Mのときに生成されたRT産物の増幅配列、増幅曲線IIはRTプライマー3+3を0.28M含むRT対照(miRNA鋳型を含まないRT)の増幅産物を表すことがわかる。結論として、標的miRNA配列を含むハイブリッドcDNAはプライマー対5+5によって逆転写できる。これらの結果は、この標的と試験した条件の場合、RTプライマーの3’末端側のmiRNA配列が5nt重複していることがRT工程の開始に最適であると示している。
(実施例5:特異性の検証)
この試験の特異性を、let−7aと1ヌクレオチドしか違わないlet−7cおよびlet−7xの合成miRNAを用いて評価した。まず、RTの特異性を評価する。RTは、let−7aと完全に一致するRTプライマー5+5を用いて行った。RT産物をCEによって調査した。結果は、図6(A〜C)に示すように、異なるmiRNA鋳型から同様の量のRT産物が生成されたことを示した。図6(A)ではlet−7a、図6(B)ではlet−7c、図6(C)ではlet−7xをRT鋳型として使用した。LMは20ntのRNAラダーマーカーを示す。
次に定量PCRの特異性を評価した。RT産物をPCRプライマー5+5Fpおよび5+5Rpで増幅した。完全に一致する標的と一致しない標的の間のCq値差を基に、完全に一致する場合の効率を100%とした場合の相対検出効率を次の式で計算した:2-(Cq(非特異的)-Cq(特異的))。図7に示すように、let−7aとlet−7xの増幅結果を比較すると、観察された非特異的シグナルのレベルはわずか1.48%であった。しかし、let−7cをlet−7aと区別する特異性は低く、let−7cのlet−7aに対する相対検出効率は21.8%であった。別のバッチのRT産物を用いて実験を繰り返しても同様の結果が得られた。図7では、let−7aの増幅効率を100%とし、let−7cおよびlet−7xの増幅Cq値をlet−7aと比較し、相対検出効率を計算した。
let−7cとlet−7xはいずれもlet−7aと一致しないヌクレオチドを1個有するが、両者のlet−7aに対する相対検出効率はかなり違っていた。この差は一致しないヌクレオチドの位置によって決まる可能性がある。let−7xの場合、一致しないヌクレオチドはmiRNAの3’末端側に位置し、定量PCR工程の間miRNA特異的PCRプライマー5+5Rpの対象範囲に入ることができる。したがって、RTと定量PCR両方の工程でlet−7aをlet−7xと区別できた。let−7xとは異なり、let−7cでは、一致しないヌクレオチドはlet−7cの5’末端側に突出し、let−7xのように定量PCR工程で増幅対象として選択されることはなかった。さらに、非特異的シグナルが比較的高いのはRT工程中のG−Tの交差反応によるものである可能性がある。この観点から、RTプライマーおよび定量PCRプライマーを最適化すればこのmiRNA定量方針の特異性は有意に高くなる可能性がある。
(実施例6:代替的なmiRNA定量方針の概要説明)
ループプライマーの代替的構造(ループの一部が折りたたまれヘアピン構造をとっている)の概略図の例を図9に示す。このプライマーは、5’側認識配列(配列A)と、5’側アーム配列(配列D)と、ステム(配列E・G)およびループ(配列F)を有するヘアピンと、3’側アーム配列(配列H)と、3’側認識配列(配列B)とを含む。ヘアピンによってループ構造は安定し、大部分の塩基が試料中の他の核酸との相互作用から隔離されるため、バックグラウンドシグナルが減少する。ステム構造を調節してシステムの特性を変更することができる。ループプライマーにヘアピン構造を導入してバックグラウンドシグナルを低減する例を図12に示す。
(実施例7:ヘアピンを含むループプライマーを用いた特異性の検証)
図10は、let7ファミリーの最初の5つのメンバー(let−7a〜e)を標的とする指定のループプライマーに基づいて7つの試験の交差反応性をRTおよび定量PCRで測定した分析結果を示す。hsa−let−7a−5p〜hsa−let−7e−5pの配列はmiRBASE(www.mirbase.org/)で得た。使用したRTプライマーおよび定量PCRプライマーを図10(A)に示す。let−7bとlet−7cそれぞれに対して2種類のループプライマーを設計した。
合成miRNAオリゴヌクレオチド12pgとRTプライマー50nMを含む10μlの反応容量でTATAA GrandScript(登録商標)Flex cDNA Synthesis Kitを使用し、製造者の指示に従ってRT反応を実施した。各miRNA標的について、逆転写酵素の代わりにヌクレアーゼを含まない水を添加してRT対照を実施した。反応溶液をBio-Rad CFX96装置を用いて31℃で45分間インキュベートした後、85℃で5分間インキュベートし、次いで4℃で保持した。
プライマー400nMを含む10μlの反応容量でTATAA SYBR(登録商標)GrandMaster(登録商標)Mixを使用し、製造者の指示に従って定量PCRを実施した。RTで得たcDNAをヌクレアーゼを含まない水で5倍に希釈し、各定量PCRに2μl添加した。ただし、鋳型なしの対照(NTC)にはcDNAの代わりにヌクレアーゼを含まない水を添加した。反応液をBio-Rad CFX384装置を用いて95℃で30秒間インキュベートした後、95℃で5秒間、60℃で15秒間、72℃で10秒間のサイクルを45サイクル行い、次いで0.5℃/秒の温度上昇で65℃〜95℃の融解曲線を得た。すべての反応を2回行った。
定量PCRで得たCq値を図10(B)に示し、図10(C)に式2-(Cq(非特異的)-Cq(特異的))で計算した相対検出効率を示す。標的が完全に一致する場合のCq値は実質的に変動するが、これはRNAのcDNAへの逆転写を開始する際の鋳型濃度の変動および/またはループプライマーの効率の変動による可能性がある。標的配列のうちいくつかが単一の塩基位置しか違わない場合でも交差反応性が見られた(ただし、2%未満という例外もあった)。let−7cを標的とするよう設計したループプライマーのうち一方はLet−7bと20.1%の交差反応性を示したが、もう一方のlet−7cループプライマーの交差反応性は1.3%まで低下した。Let−7bを標的とするよう設計したループプライマーのうち一方についても、Let−7cに対し交差反応が12.4%というより低い特異性が観察された。しかし、Let−7bに対するもう一方のループプライマーの交差反応性はわずか1.6%であった。
(実施例8:本発明のヘアピンループプライマーを用いた試験効率の検証)
ヘアピンループプライマーを用いた様々な試験結果を図11に示す。miRNA(hsp−let−7a−5p)の使用量を2.5×1010−250コピー/RT反応から変動させた。研究した範囲内では、試験は優れた直線性を示し、定量PCRシステムの効率は約86%であった。
RTプライマー(TACTACCTCAACTCCCTCGCGTTCGTTGTTCGACCGCACTCCGTCAACTA)を50nM含む10μlの反応溶液で、TATAA GrandScript(登録商標)Flex cDNA Synthesis Kitを使用して製造者の指示に従いRT反応を実施した。バックグラウンドシグナルを測定するため、逆転写酵素の代わりにヌクレアーゼを含まない水を用いたRT陰性対照を含めた。反応溶液をBio-Rad CFX96装置を用いて25℃で45分間、続いて85℃で5分間インキュベートした後4℃で保持した。
順方向プライマー(CCTCAACTCCCTCGCGTT)および逆方向プライマー(GCCCATGAGGTAGTAGGTTGTATA)を400nM含む10μlの反応容量で、TATAA SYBR(登録商標)GrandMaster(登録商標)Mixを使用し製造者の指示に従って定量PCRを実施した。RTで得たcDNAを、ヌクレアーゼを含まない水で4倍に希釈し、各定量PCRに2μlを加えた。ただし、鋳型なしの対照にはcDNAの代わりにヌクレアーゼを含まない水を添加した。Bio-Rad CFX384装置を用いて反応液を95℃で30秒間インキュベートした後、95℃で5秒間、60℃で15秒間、72℃で10秒間のサイクルを45サイクル行い、0.5℃/秒の温度上昇で65℃〜95℃までの融解曲線を得た。すべての反応を2回行った。
(実施例9:ヘアピンを含むループプライマーを用いたバックグラウンドシグナル低減の検証)
ループプライマーのヘアピン構造を変更し、バックグラウンドシグナルへの影響を試験した。3’側および5’側の認識配列は同じでヘアピンとアームとループの配列をわずかに変えた4種のループプライマーを設計した(図12)。陽性を示した反応のCq値は16.07(RT18)〜16.44(RT19)の範囲で非常に似ており、変更が効率に与える影響はごくわずかであることが証明された。一方、陰性対照のCq値は、RT10プライマーの場合の34.86からRT18の場合の45未満(45サイクル実行したとき交差が観察されない)までの範囲であり、陽性の場合よりも有意に大きな変動を示した。このことから、構造を微調整することによって陽性シグナルを損なわずに試験のバックグラウンドシグナルを排除できることがわかる。
合成miRNAオリゴヌクレオチド12pgとRTプライマー50nMを含む10μlの反応容量で、TATAA GrandScript(登録商標)Flex cDNA Synthesis Kitを使用し、製造者の指示に従いRT反応を実施した。各標的について、逆転写酵素の代わりにヌクレアーゼを含まない水を添加してRT対照とした。Bio-Rad CFX96装置を用いて反応溶液を31℃で45分間、続いて85℃で5分間インキュベートした後、4℃で保持した。
順方向プライマー(TCACCCACCACGTACGG)および逆方向プライマー(GCGGCTGAGGTAGTAGGTTGTA)を400nM含む10μlの反応容量で、TATAA SYBR(登録商標)GrandMaster(登録商標)Mixを使用し、製造者の指示に従って定量PCRを実施した。RTで得たcDNAを、ヌクレアーゼを含まない水で4倍に希釈し、各定量PCRに2μlを加えた。ただし、鋳型なしの対照にはcDNAの代わりにヌクレアーゼを含まない水を添加した。反応液をBio-Rad CFX384装置を用いて95℃で30秒間インキュベートした後、95℃で5秒間、60℃で15秒間、72℃で10秒間のサイクルを45サイクル行い、0.5℃/秒の温度上昇で65℃〜95℃までの融解曲線を得た。すべての反応を2回行った。
本発明の好ましい態様を本明細書で図示・説明したが、これらの態様が単なる例として記載されたことは当業者には明らかであり、当業者は本発明から逸脱することなく多数の変形、変更、および代替を発想するであろう。なお、本明細書に記載した本発明の態様に対する様々な代替物を本発明の実施に使用してもよい。以下の特許請求の範囲は本発明の範囲を定義し、その範囲内の方法および構造ならびにそれらの均等物を包含するものとする。
本発明は以下のものに関する:
[1] 試料中の標的ポリヌクレオチドに含まれる領域に相補的な配列を生成する方法であって、該標的ポリヌクレオチドの該領域に対する全配列を生成する条件のもとに、反応混合物中で該試料を核酸増幅反応に供する工程を含み、該反応混合物は、
(a)一本の鎖に5’→3’方向に配列A、リンカー配列D、および配列Bを含み、(i)該配列Aと該標的ポリヌクレオチドの配列A’との配列相補性および(ii)該配列Bと該標的ポリヌクレオチドの配列B’との配列相補性(該配列A’と該配列B’は該標的ポリヌクレオチドの5’→3’方向に位置する)によって該標的ポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズする、ループプライマーと;
(b)鋳型特異的プライマー伸長のための鋳型として機能する該標的ポリヌクレオチドに沿って該ループプライマーの該配列Bを5’→3’方向に伸長して該標的ポリヌクレオチドの相補配列を生成するポリメラーゼと
を含む、方法。
[2] 試料中の標的ポリヌクレオチドに含まれる領域に相補的な配列を生成する方法であって、該標的ポリヌクレオチドの該領域に対する全配列を生成する条件のもとに、該試料をループプライマーと順方向プライマーと逆方向プライマーとポリメラーゼとを含む核酸増幅反応に供する工程を含み、反応混合物は、
(a)一本の鎖に5’→3’方向に配列A、リンカー配列D、および配列Bを含み、(i)該配列Aと該標的ポリヌクレオチドの配列A’との配列相補性および(ii)該配列Bと該標的ポリヌクレオチドの配列B’との配列相補性(該配列A’と該配列B’は該標的ポリヌクレオチドの5’→3’方向に位置する)によって該標的ポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズする該ループプライマーと;
(b)鋳型特異的プライマー伸長のための鋳型として機能する該標的ポリヌクレオチドに沿って該ループプライマーの該配列Bを5’→3’方向に伸長して該標的ポリヌクレオチドの相補配列を生成する該ポリメラーゼと;
(c)該標的ポリヌクレオチド内で該配列A’または該配列B’よりも5’側に位置する配列と配列相同性を示す該逆方向プライマーと;
(d)該ループプライマーに相補的な配列に特異的にハイブリダイズする該順方向プライマーと
を含む、方法。
[3] 項目1の方法で得られる産物を逆方向プライマーおよび必要に応じて順方向プライマーの存在下で増幅する工程をさらに含み、該逆方向プライマーおよび該順方向プライマーは、それぞれ増幅産物および前記ループプライマーに対して配列相補性を示す、項目1に記載の方法。
[4] 前記順方向プライマーは前記リンカー配列に含まれる配列に特異的にハイブリダイズする、項目3に記載の方法。
[5] 前記逆方向プライマーは前記標的ポリヌクレオチドの前記配列A’または前記配列B’より5’側に位置する部分に相補的な配列に特異的にハイブリダイズする、項目3に記載の方法。
[6] 前記核酸増幅の産物を検出する工程をさらに含む、項目2または3に記載の方法。
[7] 前記検出工程は前記反応混合物に含まれ前記産物に相補的な配列を有するプローブからのシグナルを検出する工程を含む、項目6に記載の方法。
[8] 前記配列Aは2nt〜約10ntの長さであり、前記配列Bは2nt〜約10ntの長さである、項目1または2に記載の方法。
[9] 前記配列Aと前記配列Bの合計の長さは約5nt〜約20ntである、項目1または2に記載の方法。
[10] 前記配列Aと前記配列Bの合計の長さは前記標的ポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズして前記ループプライマーを伸長させるのに十分な長さである、項目1または2に記載の方法。
[11] 最適に整列した場合、前記配列Bと前記配列Aを直線状に連結した配列は、前記配列A’と前記配列B’を直線状に連結した配列と少なくとも80%の相補性を有する、項目1または2に記載の方法。
[12] 前記配列Bと前記配列Aを直線状に連結した配列は前記配列A’と前記配列B’を直線状に連結した配列と少なくとも90%の相補性を有する、項目1または2に記載の方法。
[13] 前記配列A’の3’末端は前記配列B’から1nt〜約5nt以内にある、項目1または2に記載の方法。
[14] 前記標的ポリヌクレオチドはDNA分子である、項目1または2に記載の方法。
[15] 前記標的ポリヌクレオチドはRNA分子である、項目1または2に記載の方法。
[16] 前記標的ポリヌクレオチドは非コードRNA分子である、項目1または2に記載の方法。
[17] 前記非コードRNA分子は、成熟マイクロRNA分子、マイクロRNA前駆体分子、初期マイクロRNA分子、低分子干渉RNA(siRNA)分子、piwi結合RNA(piRNA)分子、piwiRNA分子、長鎖非コードRNA(lncRNA)分子、リボソームRNA(rRNA)分子、および低分子ヘアピン型RNA(shRNA)分子からなる群より選択される、項目16に記載の方法。
[18] 前記標的ポリヌクレオチドは100nt未満の長さである、項目1または2に記載の方法。
[19] 前記標的ポリヌクレオチドは50nt未満の長さである、項目1または2に記載の方法。
[20] 前記リンカー配列は、1つ以上のバーコード配列;1つ以上の制限酵素認識配列;1つ以上のオリゴヌクレオチドプローブ結合配列またはその相補体;配列決定プライマーがアニールする1つ以上の配列またはその相補体;およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、1つ以上の配列要素を含む、項目1または2に記載の方法。
[21] 前記リンカー配列は複数の異なるループプライマーに共通の汎用的な配列を含む、項目1または2に記載の方法。
[22] 前記リンカー配列はヘアピン型構造を有する、項目1または2に記載の方法。
[23] 試料中の少数アレルすなわち対応する多数アレルと単一の塩基位置が異なる配列多様体の存在を検出する方法であって、該配列多様体を含む少数アレルと多数アレルの領域がループプライマー対を用いて増幅される条件のもとに、反応混合物中で該試料を核酸増幅反応に供する工程を含み、該反応混合物は、
(a)一本の鎖に5’→3’方向に配列A1、リンカー配列D1、および配列B1を含み、(i)該配列A1と該少数アレルの配列A1’との配列相補性および(ii)該配列B1と該少数アレルの配列B1’との配列相補性(該配列A1’と配列B1’は該少数アレルの5’→3’方向に位置する)によって該少数アレルに特異的にハイブリダイズする第一のループプライマーと;(b)一本の鎖に5’→3’方向に配列A2、リンカー配列D2、および配列B2を含み、(i)該配列A2と該多数アレルの配列A2’との配列相補性および(ii)該配列B2と該少数アレルの配列B2’との配列相補性(該配列A2’と該配列B2’は該多数アレルの5’→3’方向に位置する)によって該多数アレルに特異的にハイブリダイズする第二のループプライマーと;(c)鋳型特異的プライマー伸長のための鋳型として機能する各アレルに沿って該第一のループプライマーの該配列B1と該第二のループプライマーの該配列B2を5’→3’方向に伸長して各アレルの相補配列を生成するポリメラーゼとを含む、方法。
[24] 試料中の標的ポリヌクレオチドに含まれる領域に相補的な配列を生成するための組成物であって、ループプライマーと順方向プライマーと逆方向プライマーとを含み、
(a)該ループプライマーは一本の鎖に5’→3’方向に配列A、リンカー配列、および配列Bを含み、(i)該配列Aと該標的ポリヌクレオチドの配列A’との配列相補性および(ii)該配列Bと該標的ポリヌクレオチドの配列B’との配列相補性(該配列A’と該配列B’は該標的ポリヌクレオチドの5’→3’方向に位置する)によって該標的ポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズし;
(b)該逆方向プライマーは該標的ポリヌクレオチドで該配列A’よりも5’側に位置する配列に対し配列相同性を示し;かつ
(c)該順方向プライマーは該リンカー配列に含まれる配列に特異的にハイブリダイズする、組成物。
[25] 前記逆方向プライマーまたは前記順方向プライマーの伸長により生成された前記標的ポリヌクレオチドに相補的な配列に対して配列相補性を有する検出プローブをさらに含む、項目24に記載の組成物。
[26] 前記配列Aは2nt〜約10ntの長さであり、前記配列Bは2nt〜約10ntの長さである、項目24に記載の組成物。
[27] 前記配列Aと前記配列Bの合計の長さは約5nt〜約20ntである、項目24に記載の組成物。
[28] 前記配列Aと前記配列Bの合計の長さは前記標的ポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズして前記ループプライマーを伸長させるのに十分な長さである、項目24に記載の組成物。
[29] 最適に整列した場合、前記配列Bと前記配列Aを直線状に連結した配列は前記配列A’と前記配列B’を直線状に連結した配列と少なくとも80%の相補性を有する、項目24に記載の組成物。
[30] 前記配列Bと前記配列Aを直線状に連結した配列は前記配列A’と前記配列B’を直線状に連結した配列と少なくとも90%の相補性を有する、項目24に記載の組成物。
[31] 前記配列A’の3’末端は前記配列B’から1nt〜約5nt以内にある、項目24に記載の組成物。
[32] 前記標的ポリヌクレオチドはDNA分子である、項目24に記載の組成物。
[33] 前記標的ポリヌクレオチドはRNA分子である、項目24に記載の組成物。
[34] 前記標的ポリヌクレオチドは非コードRNA分子である、項目24に記載の組成物。
[35] 前記非コードRNA分子は、成熟マイクロRNA分子、マイクロRNA前駆体分子、初期マイクロRNA分子、siRNA分子、piRNA分子、piwiRNA分子、lncRNA分子、rRNA分子、およびshRNA分子からなる群より選択される、項目34に記載の組成物。
[36] 前記リンカー配列は、1つ以上のバーコード配列;1つ以上の制限酵素認識配列;1つ以上のオリゴヌクレオチドプローブ結合配列またはその相補体;配列決定プライマーがアニールする1つ以上の配列またはその相補体;およびそれらの組み合わせからなる群より選択される1つ以上の配列要素を含む、項目24に記載の組成物。
[37] 前記リンカー配列は複数の異なるループプライマーに共通の汎用的な配列を含む、項目24に記載の組成物。
[38] 前記組成物は容器に入っている、項目24に記載の組成物。
[39] 前記容器はウェル、プレート、チューブ、チャンバー、フローセル、またはチップである、項目38に記載の組成物。
[40] 前記組成物は無水形態である、項目24に記載の組成物。
[41] ループプライマーと順方向プライマーと逆方向プライマーとポリメラーゼとを含む、試料中の標的ポリヌクレオチドに含まれる領域に相補的な配列を生成するための反応混合物であって、
(a)該ループプライマーは一本の鎖に5’→3’方向に配列A、リンカー配列、および配列Bを含み、(i)該配列Aと該標的ポリヌクレオチドの配列A’との配列相補性および(ii)該配列Bと該標的ポリヌクレオチドの配列B’との配列相補性(該配列A’と該配列B’は該標的ポリヌクレオチドの5’→3’方向に位置する)によって該標的ポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズし;
(b)該逆方向プライマーは該標的ポリヌクレオチドで該配列A’よりも5’側に位置する配列に対し配列相同性を示し;かつ
(c)該順方向プライマーは該リンカー配列に含まれる配列に特異的にハイブリダイズする、反応混合物。
[42] 前記逆方向プライマーまたは前記順方向プライマーの伸長により生成された前記標的ポリヌクレオチドに相補的な配列に対して配列相補性を有する検出プローブをさらに含む、項目41に記載の反応混合物。
[43] 前記配列Aは2nt〜約10ntの長さであり、前記配列Bは2nt〜約10ntの長さである、項目41に記載の反応混合物。
[44] 前記配列Aと前記配列Bの合計の長さは約5nt〜約20ntである、項目41に記載の反応混合物。
[45] 前記配列Aと前記配列Bの合計の長さは前記標的ポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズして前記ループプライマーを伸長させるのに十分な長さである、項目41に記載の反応混合物。
[46] 最適に整列した場合、前記配列Bと前記配列Aを直線状に連結した配列は前記配列A’と前記配列B’を直線状に連結した配列と少なくとも80%の相補性を有する、項目41に記載の反応混合物。
[47] 前記配列Bと前記配列Aを直線状に連結した配列は前記配列A’と前記配列B’を直線状に連結した配列と少なくとも90%の相補性を有する、項目41に記載の反応混合物。
[48] 前記配列A’の3’末端は前記配列B’から1nt〜約5nt以内にある、項目41に記載の反応混合物。
[49] 前記標的ポリヌクレオチドはDNA分子である、項目41に記載の反応混合物。
[50] 前記標的ポリヌクレオチドはRNA分子である、項目41に記載の反応混合物。
[51] 前記標的ポリヌクレオチドは非コードRNA分子である、項目41に記載の反応混合物。
[52] 前記非コードRNA分子は、成熟マイクロRNA分子、マイクロRNA前駆体分子、初期マイクロRNA分子、siRNA分子、piRNA分子、piwiRNA分子、lncRNA分子、rRNA分子、およびshRNA分子からなる群より選択される、項目51に記載の反応混合物。
[53] 前記リンカー配列は、1つ以上のバーコード配列;1つ以上の制限酵素認識配列;1つ以上のオリゴヌクレオチドプローブ結合配列またはその相補体;配列決定プライマーがアニールする1つ以上の配列またはその相補体;およびそれらの組み合わせからなる群より選択される1つ以上の配列要素を含む、項目41に記載の反応混合物。
[54] 前記リンカー配列は複数の異なるループプライマーに共通の汎用的な配列を含む、項目41に記載の反応混合物。
[55] 前記反応混合物は容器に入っている、項目41に記載の反応混合物。
[56] 前記容器はウェル、プレート、チューブ、チャンバー、フローセル、またはチップである、項目55に記載の反応混合物。
[57] 前記反応混合物は無水形態である、項目41に記載の反応混合物。
[58] キットの形態に梱包された項目24の組成物。
[59] 項目58に記載のキットの使用法であって、標的ポリヌクレオチドと前記ループプライマーと前記順方向プライマーと前記逆方向プライマーと検出可能量の増幅産物を生成するポリメラーゼとを含む反応混合物中で核酸増幅反応を実施する工程を含み、該標的ポリヌクレオチドは約100nt未満の長さである、使用法。
[60] 試料中の標的ポリヌクレオチドを検出するシステムであって、
(a)試料で検出反応を実施するようにとの顧客の要求を受けるよう構成されたコンピュータと;
(b)項目37に記載の反応混合物中で核酸増幅反応を実施して増幅産物を生成する増幅系と;
(c)増幅産物量に対応する検出シグナルの検出結果を含む報告書を受取人に送る報告書作成部と
を含む、システム。
[61] 前記受取人は前記顧客である、項目60に記載のシステム。
[62] 1つ以上のプロセッサで実行すると試料中の標的ポリヌクレオチドを検出する方法を実施するコードを含む、コンピュータ可読媒体であって、該方法は、
(a)試料で検出反応を実施するようにとの顧客の要求を受ける工程と;
(b)項目40に記載の反応混合物中で核酸増幅反応を実施して増幅産物を生成する工程と;
(c)増幅産物量に対応する検出シグナルの検出結果を含む報告書を作成する工程と
を含む、媒体。
[63] 試料中の標的ポリヌクレオチドに含まれる領域に相補的な配列を、該標的ポリヌクレオチドの該領域に対する全配列を生成する条件のもとに、単一の反応混合物中で生成する工程をさらに含み、該反応混合物は、
(a)一本の鎖に5’→3’方向に配列A、リンカー配列D、および配列Bを含み、(i)該配列Aと該標的ポリヌクレオチドの配列A’との配列相補性および(ii)該配列Bと該標的ポリヌクレオチドの配列B’との配列相補性(該配列A’と該配列B’は該標的ポリヌクレオチドの5’→3’方向に位置する)によって該標的ポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズするループプライマーと;
(b)鋳型特異的プライマー伸長のための鋳型として機能する該標的ポリヌクレオチドに沿って該ループプライマーの該配列Bを5’→3’方向に伸長して該標的ポリヌクレオチドの相補配列を生成するポリメラーゼと;
(c)該標的ポリヌクレオチド内で該配列A’または該配列B’よりも5’側に位置する配列と配列相同性を示す逆方向プライマーと;
(d)該ループプライマーに相補的な配列に特異的にハイブリダイズする順方向プライマーと
を含む、項目2に記載の方法。
[64] 標的ポリヌクレオチドと前記ループプライマーと前記順方向プライマーと前記逆方向プライマーと検出可能量の増幅産物を生成するポリメラーゼとを含む反応混合物中で核酸増幅反応を実施する工程をさらに含み、該標的ポリヌクレオチドは約100nt未満の長さであり、該核酸増幅反応のサイクル閾値(CT)は30未満である、項目59に記載の方法。
[65] 試料中の少数アレルすなわち対応する多数アレルと単一の塩基位置が異なる配列多様体の存在を検出する方法であって、該配列多様体を含む該少数アレルと該多数アレルの領域をループプライマー対を用いて増幅する条件のもとに、複数の反応混合物中で該試料のうち複数の部分を複数の核酸増幅反応に供する工程を含み、第一の反応混合物は第一のループプライマーとポリメラーゼを含み、第二の反応混合物は第二のループプライマーとポリメラーゼを含み、さらに、
(a)該第一のループプライマーは一本の鎖に5’→3’方向に配列A1、リンカー配列D1、および配列B1を含み、(i)該配列A1と該少数アレルの配列A1’との配列相補性および(ii)該配列B1と該少数アレルの配列B1’との配列相補性(該配列A1’と該配列B1’は該少数アレルの5’→3’方向に位置する)によって該少数アレルに特異的にハイブリダイズし;
(b)該第二のプライマーは一本の鎖に5’→3’方向に配列A2、リンカー配列D2、および配列B2を含み、(i)該配列A2と該多数アレルの配列A2’との配列相補性および(ii)該配列B2と該少数アレルの配列B2’との配列相補性(該配列A2’と該配列B2’は該多数アレルの5’→3’方向に位置する)によって該多数アレルに特異的にハイブリダイズし;かつ
(c)ポリメラーゼは鋳型特異的プライマー伸長のための鋳型として機能する各アレルに沿って該第一のループプライマーの該配列B1または該第二のループプライマーの該配列B2を5’→3’方向に伸長して各アレルの相補配列を生成する、方法。