JP6939430B2 - コイル状鋼板の内部酸化を抑制する方法 - Google Patents

コイル状鋼板の内部酸化を抑制する方法 Download PDF

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本発明は、Si,Mn,Alを含有するハイテン鋼板の熱間圧延での製造方法、特にコイル巻き取り方法に関係する。
ハイテン材は低温で硬く冷延困難なため、高温で巻き取られることが一般的である。
しかしながら、高温巻き取りしたハイテン材は酸洗性が極めてわるく、生産性を阻害するという課題がある。
酸洗性が悪い理由として下記が考えられる。Si,Mn,Alを含有するハイテン材は高温での巻き取り状態でSi,Mn,Alの内部酸化が生ずる。内部酸化とは鋼材表面から近傍の金属状態の鋼の内部にSi,Mn及びAlの酸化物が分散している状態である。Si,Mn,Alの酸化物はそれぞれ単独の酸化物の場合もあり、それらの二種以上が複合した酸化物の場合もある。それらの酸化物は鋼の結晶粒界に分布する場合や、結晶粒内に分布する場合もある。結晶粒界に分布する場合を粒界酸化と呼ぶこともあるが、ここでは粒界酸化も含めて内部酸化と総称する。この内部酸化は、酸化スケールが酸化源となって鋼内のSi,Mn,Alを酸化させることによって生じる(図1参照)。これらの酸化物が鋼内部に生成する内部酸化の形態をとる。このような酸化物を含む内部酸化層は、表面の酸化スケールより深い鋼内部にあって、これを除去するには長時間の酸洗が必要となる。例えば、低速での通板、あるいは2回以上の酸洗等が必要である。
熱延鋼板で生成する内部酸化に関して、これまでも様々な検討がされてきた。
特許文献1は、熱延鋼板や溶融めっき熱延鋼板の化成処理性や溶融めっき性の向上を図ろうとするものであるが、めっき不良の原因が、酸洗後の熱延鋼板の表面にSiやMn,P等の酸化物が残存することが本質的な原因であると考え、これを解決するために、鋼表層近傍に内部酸化層を形成させて、内部酸化層内部に鋼表面のSiやMn,P等を閉じこめることによって、めっき性等を向上させている。すなわち、特許文献1は、積極的に内部酸化層を生成させることを提案している。なお、具体的には、特許文献1では、熱延鋼板を黒皮スケールまま、還元の起きない雰囲気、例えば100%窒素の雰囲気で、650〜950℃で熱処理している。
特許文献2は、めっき後の外観およびめっきの密着性を鋼板の全面にわたって良好にするための溶融亜鉛めっき用の熱延鋼板の製造方法に関するものであり、めっき不良の原因が、内部酸化層の厚みにある(薄すぎるとSiの表面酸化が抑制できず、厚すぎると内部酸化層が除去しきれず、それが鋼板表面に疵を生じる)と考え、内部酸化層の厚さを1μm〜4μmの範囲に制御することを提案している。具体的には、熱延鋼板を430〜560℃でコイルに巻き取り、次いでコイルを温度保持設備に装入して、大気放冷よりも遅い冷却速度でコイルを冷却することにより、内部酸化層厚さを上記の範囲で均一化させている。
特許文献3は、Si及びMnを含む熱延鋼板の巻取時における粒界酸化物の発生を抑制できる熱延鋼板の製造方法に関するものであり、熱間圧延した鋼板の表面に糖化合物を積層することを提案している。糖化合物によって熱延鋼板表面のスケールを還元することができ、そのためにSi及びMnを酸化させる酸素の供給源を熱延鋼板表面から取り除くことができ、結果として巻取時に粒界酸化物が熱延鋼板に生成されることを抑制すると記載されている。なお、糖化合物は水溶液の形態で塗布されており、すなわち糖化合物は固形状態ではない。
特開2000−309847号公報 特開2015−28200号公報 特開2014−214374号公報
上述したとおり、高温巻き取りしたハイテン材は酸洗性が極めてわるく、生産性を阻害するという課題がある。特許文献1、2は内部酸化層を積極的に形成させたり、またはその厚さを制御したりするものであった。特許文献3は、鋼板の表面に塗布した糖化合物(水溶液であって固体ではない)によってスケールを還元しようとするものであった。本願発明は、全く新たな手法により、ハイテン鋼板の内部酸化の発生を抑制することができ、酸洗の負荷を減らすことができ、生産性を向上させられる方法を提供することを目的とする。
本発明により、以下の手段が提供される。
[1]
質量%で0.5%≦Si≦3.5%, 0.5%≦Mn≦5.0%, 0.5%≦Al≦5.0%,の1種または2種以上を合計で0.5%以上5.0%以下の範囲で含有し、さらに0.05〜0.8質量%のCを含有する鋼板を、熱間圧延し600〜900℃の温度範囲でコイル状に巻き取り冷却する際に、鋼板間にスペーサーを挿入して、鋼板間に50μm〜1000μmの厚さの隙間を形成して鋼板を巻き取ることを特徴とする、コイル状鋼板の冷却方法。
[2]
前記スペーサーは、平均粒径が50μm〜1000μmの粉体を含んでなることを特徴とする項目1に記載の方法。
[3]
前記鋼板間に100μm〜1000μmの厚さの隙間を形成することを特徴とする、項目1に記載の方法。
[4]
前記スペーサーは、平均粒径が100μm〜1000μmの粉体を含んでなることを特徴とする項目3に記載の方法。
本発明により、ハイテン鋼板の内部酸化の生成を抑制することができ、酸洗の負荷を減らすことができ、生産性が向上する。
図1は、Si,MnおよびAlの内部酸化の進行を概念的に示す図である。
本発明によって、質量%で0.5%≦Si≦3.5%, 0.5%≦Mn≦5.0%, 0.5%≦Al≦5.0%,の1種または2種以上を合計で0.5%以上5.0%以下の範囲で含有し、さらに0.05〜0.8質量%のCを含有する鋼板を、熱間圧延し600〜900℃の温度範囲でコイル状に巻き取り冷却する際に、鋼板間にスペーサーを挿入して、鋼板間に50μm〜1000μmの厚さの隙間を形成して鋼板を巻き取ることを特徴とする、コイル状鋼板の冷却方法、が提供される。
本願発明が対象とする鋼板は、0.5〜3.5質量%のSi、0.5〜5質量%のMn、0.5〜5質量%のAlの1種または2種以上を含有し、ここでSi、Mn、Alの含有量の合計が0.5〜5.0質量%であり、さらに0.05〜0.8質量%のCを含有する鋼板であり、いわゆるハイテン鋼である。ハイテン鋼の品質の観点から、Si、MnおよびAlの各元素の含有量は規定されるが、一方でこれらの元素は内部酸化を生じ得る。すなわち、Siは、強度を確保するために添加する元素であるが、質量%で0.5%以上のSi含有量で内部酸化を生成させる。またSiは3.5%を超えると加工性を劣化させるので、Si量は3.5質量%以下とする。Mnも強度の改善のために添加する元素であるが、質量%で0.5%以上のMn含有量で内部酸化を生成させる。またMnは5.0質量%を超えて添加すると加工性が劣化するので、Mn量は5.0質量%以下とする。Alも強度や耐食性を向上させるために添加する元素であるが、質量%で0.5%以上のAl含有量で内部酸化を生成させる。またAlも5.0質量%を超えて添加すると加工性が劣化するので、Al量は5.0質量%以下とする。またSi、MnおよびAlは、複合酸化物を形成して内部酸化層を形成し得る元素である。そのため、これら3種の元素の含有量合計も規定される。Si、MnおよびAlの含有量合計が0.5質量%未満であれば、複合酸化物は形成されず、内部酸化層も形成されない。また、Si、MnおよびAlの含有量の合計が5.0質量%超であれば、Si,Mn,Alの酸化物からなる外部酸化層を形成し、内部酸化層は形成されない。そのため、本願発明では、0.5〜3.5質量%のSi、0.5〜5.0質量%のMn、0.5〜5質量%のAlを1種または2種以上含有し、ここでSi、Mn、Alの含有量の合計が0.5〜5.0質量%である鋼板を対象とする。
また、本発明ではC濃度が0.05%以上、0.8%以下の鋼が対象となる。Cに関して後段で詳述するとおり、内部酸化は、酸化スケール(FeO等)が酸化源となって鋼内のSi,Mn,Alを酸化させることによって生じると考えられるが、スケールの酸素が直接内部酸化を生じるのではなく、COやCOのガスを経由して内部酸化が生じることを本願発明者が見出した。COやCOは鋼板中のCがスケール中の酸素(O)と反応して発生し、鋼板中のC濃度が0.05%以上でCOやCOの発生が顕著にみられ、内部酸化の問題が顕在化するため、C濃度が0.05%以上の鋼を本発明の対象とする。C濃度が0.8%超では過共析鋼のC濃度範囲となり、本発明の対象とするSi,Mn,Al含有ハイテン材の領域ではなくなるため、本発明の対象外とする。
前記の含有量でSi、Mn、AlおよびCを含む鋼は、いわゆるハイテン鋼であって、低温で硬く冷延困難なため、熱間圧延の後速やかに巻き取られる。そのため、巻き取り温度は、600℃〜900℃である。600℃未満では、鋼板が硬くなり巻き取りが困難になる場合がある。概して、巻き取り温度が高くなるほど、鋼板は軟化し、巻き取りは容易になる。巻き取りを容易にするために、650℃以上で巻き取りを行ってもよい。巻き取り温度を高くしすぎても、巻き取りの容易性は頭打ちになり、加熱エネルギーの無駄になるので、巻き取り温度の上限は900℃とする。
上記の巻き取り温度範囲では、Si、MnおよびAlは酸素が供給されると容易に酸化される。鋼板の表面には酸化スケールが存在しており、酸化スケール中の酸素が鋼内へ内方拡散し、鋼中のMn、SiおよびAlと反応して、酸化物を生成する(図1参照)。この酸化物を含む層が内部酸化層であり、酸洗が容易でない。このことは、従来から知られていることであり、従来技術である特許文献1〜3でもこの内部酸化層を制御することを試みている。
本願発明者は、驚くべきことに、内部酸化の進行はCOやCOのガスを経由していることを発見した。内部酸化進行の機構について説明する。
スケールが付着した600℃以上の鋼材では、スケール(FeO等を含む)に含まれる酸素(O)と鋼に含まれる炭素(C)とが、スケール/鋼界面で反応して、COやCOのガスが発生する。界面で生成したCOガスとCOガスは、スケールを透過し、コイル状で巻かれた熱延鋼板の板どうしの間に滞留する。
これらのCOやCOのガスはスケールとの間で酸素(O)を授受しながら、スケールの主組成であるFeOとの間で下記の化学平衡に達する。
CO+FeO = CO+Fe
ここで、Fe(綱材)とFeO(スケール)が十分に存在しているため、FeとFeOは化学平衡に達し、これに応じてCOとCOも化学平衡に達する。即ちCOガスの分圧とCOガスの分圧の比は、FeOとFeが平衡するCO分圧とCO分圧の比になる。この化学平衡反応を通じて、酸素(O)の授受が安定的に行われ、酸素分圧または酸素ポテンシャルが高く維持される。
この高い酸素分圧または酸素ポテンシャルのために、酸素(O)が鋼内部へ内方拡散し、鋼中のSi、MnおよびAlと反応して、内部酸化が深く進行する。
本発明者は、上記の内部酸化進行の機構の中で、COとCOを強制的に排除することにより、内部酸化進行を抑えることができることに着想した。
COとCOが存在しない場合には、CO、COを介して酸素(O)が供給されず、酸素(O)はスケール(FeO)から鋼に直接的に供給されることになる。鋼中に存在するSi、MnおよびAlが、スケール(FeO)から供給された酸素(O)と反応して、すなわち酸素(O)は消費され、スケールと鋼の界面では酸素分圧または酸素ポテンシャルが低い状態になる。このような状態では、Feが安定的に存在することができ、スケール/鋼界面には還元されたFeが分布する。Feは当然のことながら酸素(O)を有しておらず、酸素(O)を供給することもできない。その結果、内部酸化が進行しなくなる。このように、コイル状に巻かれた鋼板の板間に滞留するCOとCOのガスを、系外に排出することにより、内部酸化を抑制できることを本発明者が知見した。
コイル状に巻かれた板間に滞留しているCO、COガスを排出、除去するには、コイルの板間にスペーサーを入れることによって達成できる。スペーサーによって、コイル状に巻き取られた鋼板どうしの間に最低でも50μm以上、望ましくは100μm以上の厚さの隙間を保つことができる。これによりコイルの鋼板間(隙間)と雰囲気との間でのガスの連通が確保できる。この時の雰囲気のガス種はCO,COをほとんど含まないガスであればよい。簡便なのが大気である。また窒素や不活性ガスのような非酸化性のガスを用いてもよい。
そして、コイルの巻き取り温度が600〜900℃であるため、特殊な状況(例えば、コイルを600〜900℃の巻き取り温度のままで保熱する等)を除いて、コイルの鋼板間(隙間)はコイルの周囲の雰囲気との間に温度差が生じており、対流によってガスの流れが確保できる。巻き取ったコイルを、一般的な環境温度(−40℃〜40℃程度)の雰囲気中に置くことによって、コイルと周囲の雰囲気との間の温度差を十分に確保して、対流を生じさせてもよい。なお、巻き取られたコイル内での鋼板温度が高いほど、内部酸化の進行速度は速く、特に、鋼板温度650℃以上での内部酸化の酸化速度が速いが、鋼板温度650℃未満では内部酸化の進行が遅くなり、600℃未満になると内部酸化は進行しなくなる。鋼板温度が600℃以上であれば、コイルの周囲の雰囲気との間に十分な温度差を確保することができ、対流を生じさせることは容易である。
このようにして、鋼材から発生したCO,COガスを、コイルの鋼板間(隙間)から系外(コイルの周囲)に速やかに放出することができる。この作用を利用して、鋼板コイルの板間に滞留するCO、COガスを排出、除去を行うことにより、スケール/鋼界面の酸素分圧または酸素ポテンシャルを低減して、内部酸化の生成を抑制できることを、本願発明者は知見し、本願発明を完成させた。
本願発明は、内部酸化を抑制するためにはコイル状に巻かれた鋼板の板間に滞留するCOとCOのガスを系外に排出すればよいとの新たな知見に基づくものであり、以下の構成により、COとCOのガスの排出、それに伴う内部酸化の抑制を具現化している。
本願発明では、熱延鋼板を600℃〜900℃の巻取り温度でコイル状に巻き取り、冷却する際に、鋼板間にスペーサーを挿入して、鋼板間に50μm〜1000μmの厚さの隙間を形成して鋼板を巻き取る。
鋼板間の隙間(空間)の厚さが大きいほど、鋼材から発生したCO,COガス流れの圧力損失が小さくなるので、これらのガスをコイルの鋼板間(隙間)から系外(コイルの周囲)に速やかに放出することができる。ただし、隙間(空間)の最大厚さが1mm(1000μm)以下とする。隙間(空間)の最大厚さが1mmを超えると、このスペーサーを含んだコイル(全体部)の肉厚が厚くなるとともに、コイル(全体部)としての剛性が低下し、コイルが潰れるまたは変形するなどの危険性が増すからである。
また、隙間(空間)は、最小厚さが50μm以上とする。隙間(空間)の厚さが小さすぎると、コイルの鋼板間(隙間)と雰囲気との間でのガスの連通が十分に確保できないおそれがあり、その結果、コイル板間のCO、COガスは板間から放出されにくくなり、内部酸化を抑制できない場合がある。隙間(空間)の厚さが50μm以上であれば、ガスの連通が十分に確保でき、内部酸化を抑制できる。
なお、隙間の厚さとは、鋼板どうしの間の距離を指しており、より詳しくは或る鋼板表面からその法線方向で最も近隣の鋼板表面までの距離を指す。コイル状に巻かれた鋼板どうしは、微細な鋼板表面の凹凸を無視すれば、略平行の位置関係を有していると考えることができる。
本発明による作用効果の一つは、鋼板間のガスの通気性を上げることである。本発明によれば、スペーサーを挿入することにより、鋼板間に50〜1000μmの厚さの隙間(空間)が形成される。
通気性の観点から、鋼板間の隙間(空間)がスペーサーで占有されることは好ましくない。鋼板間に形成される隙間(空間)の90体積%以上をスペーサーのない空間とすることが好ましい。一方で、鋼板間の隙間(空間)を保つように鋼板どうしを支持するために、鋼板間の隙間(空間)の0.3体積%以上をスペーサーの体積が占めることが好ましい。
従って、鋼板間の隙間(空間)においてスペーサーが上記の体積比率を保つように、鋼板面積あたりのスペーサーの量(密度)を調整することが好ましい。
スペーサーの材質について説明する。スペーサーは、600〜900℃で巻き取られたコイル状の鋼板間に挿入されるため、この温度域での耐熱性があり、且つこの温度域で鋼やスケールと反応しない安定な物質であることが好ましい。スペーサーの材質として、酸化物や金属を用いてもよい。それらは概ね、安価であり、入手が容易であり、且つ取扱いが簡便であるためである。酸化物としてはAl,SiO,FeやFeの酸化鉄などの安定な酸化物を用いることが好ましい。金属では鋼やステンレスが安価で簡便である。ショットブラストに用いられるショット粒は安価に購入することができる。
スペーサーの大きさ(粒径等)について説明する。スペーサーとしては、粒径分布が規定されたもの(粉体等)を用いることが好ましい。粒径が規定されたスペーサーを用いることにより、鋼板間に形成される隙間の厚さを容易に調整することができるからである。スペーサー(粉体等)の大きさ(粒径等)によって、鋼材板間の隙間が決定されるので、スペーサー(粉体等)の大きさ(粒径等)は重要である。平均粒径50〜1000μmのものを用いることで、鋼板間に形成される隙間の厚さを50〜1000μmとすることができ、コイル板間のCO、COガスは板間から放出され、内部酸化を抑制できる。さらに平均粒径を100〜1000μmとすると、鋼板間に形成される隙間の厚さを100〜1000μmとすることができ、内部酸化をより完全に抑えることができ、より好ましい。
なお、上記では、スペーサーの一例として粉体を用いて説明しているが、スペーサーは粉体に限られるものではない。スペーサーは、鋼板間に挿入でき、鋼板間の隙間(空間)を形成できるものであればよく、鋼材ワイヤーや板状スペーサー等を用いることもできる。
スペーサーに粉体を用いる場合、スペーサーの大きさ(厚み)は粉体の粒径分布から求めることができる。顕微鏡で粉体を観察し、視野内の粉体の粒径を全て測定する。得られた粒度分布から細かい側の8割をカットし、大きい側2割の粉体の粒度分布からその平均粒径を求める。この平均粒径がスペーサーとしての実質的な大きさ(厚み)とすることができる。
また、鋼材ワイヤーをスペーサーとして用いる場合、ワイヤーの外径をスペーサーの実質的な大きさ(厚み)としてもよい。板状スペーサーをスペーサーとして用いる場合、板状スペーサーの厚さをスペーサーの実質的な大きさ(厚み)としてもよい。
スペーサーの挿入方法について説明する。
鋼材の熱間圧延の終了時に鋼材をコイル状に巻き取る際、または巻き取る直前に、巻き取られる鋼板の表面にスペーサー(粉体やワイヤー等)を供給し、鋼板どうしの間にスペーサーが挿入されるようにする方法が好ましい。スペーサーは、スペーサーのみで、または水等の液体と混合したスラリー状で、鋼板巻き取り時の鋼板間に供給することができる。スラリー状とすることで、スペーサーの輸送が容易になり、スペーサーの密度調整が容易になり、スペーサー挿入を均等に行うことができるため、スラリー状で供給することがより好ましい。
内部酸化の有無は次のように判定することができる。コイルが常温になった後に回収し、コイルからサンプル片を切り出して、サンプル片断面を、SEM(Scannning electron microscope)で観察し、EDX(Energy Dispersive X-ray)分析でC、Si、O(酸素)、Mn、Al、Feのマッピングおよび定量分析を行い、内部酸化層の厚さを求めることができる。本願明細書では、内部酸化層の厚みが1μmまたはそれ未満の場合、内部酸化層は問題なしと評価する。
なお、鋼板をコイル状に巻き取る前は、通常、鋼板表面が大気に晒されており、内部酸化は限定的であると考えられる。大気中では大気中の酸素により鋼材表面には鉄酸化物からなるスケールが生成する。スケール成長している間はスケール/鋼界面では鋼表面が常に酸化されて鋼表面が順次酸化により消費されている。これは鋼の主成分である鉄が酸化でスケールに変わるためである。このような状態では鋼表面には内部酸化は生成しない。内部酸化が生成しようとしてもすぐに周囲の鋼が酸化により失われるためである。従って、主に内部酸化は、巻き取られたコイル内で進行すると考えられる。巻き取られたコイル内では板の間に大気が侵入しにくくスケールの成長がほとんど止まるためである。そして、コイル状に巻き取られた鋼板間に本発明で規定される適度な隙間がないと、コイル内の鋼板の間にはCOやCOが滞留し、酸素分圧または酸素ポテンシャルが高く維持され、内部酸化が進行する。
以下、実施例を用いて、本願発明について説明する。ただし、本願発明は、実施例によって限定的に解釈されるべきものではない。
0.2質量%のC、1.0質量%のSiおよび2.3質量%のMnを含む鋼スラブを、熱間圧延して熱延鋼板とし、熱延鋼板を表1に示す温度(700〜900℃)で積層して、鋼板がコイル状に巻き取られた状態を模擬的に再現した。積層する際に、表1に示す条件でさまざまなスペーサーを鋼板間に挿入した。その後、鋼板を窒素雰囲気にて室温環境下(25±15℃)で徐冷した。なお、鋼板の温度は、接触式の熱電対を用いて測定した。内部酸化の状況は鋼板が室温程度に冷却された後に、鋼板からサンプル片を切り出して、サンプル片断面を、SEM(scannning electron microscope)で観察し、EDX(Energy Dispersive X-ray)分析でC、Si、O(酸素)、Mn、Al、Feのマッピングおよび定量分析を行い、内部酸化層の厚さを求めた。結果を、表1に示す。内部酸化層の厚みが1μmまたはそれ未満の場合を良好な表面品質である○と評価した。内部酸化が1μmを超える場合は表面品質が不良であるとして×と評価した。内部酸化層まったくみられないものは「なし」とした。また積層した状態の厚み(t)と鋼板板厚(d)と積層した鋼板枚数(n)から下記式より板間の隙間厚(S)を求めた。
S=(t-n×d)/(n-1)
板間の隙間が0,35,33μmの場合(No.1、2、5)に内部酸化が生成しており×の評価となった。50μm以上の隙間を確保することで内部酸化の生成を抑制することができた。
Figure 0006939430
また、実操業運転でコイルに巻き取った場合に内部酸化の問題を生じることのあった、0.2質量%のC、1.2質量%のSiおよび1.9質量%のMnを含む熱延鋼板を供試材として、スペーサーによる隙間の効果の確認も行った。
まず、スペーサーのない条件での内部酸化について調査した。具体的には、30×30mmに切断した鋼板の四隅に穴を開け、2枚重ね合わせてボルトで締めることで、巻取り時の板の重なりを模擬した状態とした。さらに、加熱雰囲気自体を無酸化雰囲気とした。N雰囲気中、900℃(γ相域)に加熱して2分間保持した後、10℃/秒で750℃(α相域)に降温して1時間保持し、急冷した。冷却後に、鋼板からサンプル片を切り出して、サンプル片断面を、光学顕微鏡により観察し、内部酸化層の厚みが20μmであることを確認した。
次に、スペーサーを用いて、板間に隙間を作った状態での実験を行った。板間の四隅に厚さ約35μmのステンレス箔を1枚(板間約35μm)あるいは5枚(板間約175μm)挟み、スペーサーを用いない場合と同様に板を2枚重ね合わせた状態とし、スペーサーを用いない場合と同様の条件で加熱、保持、急冷を行った。その結果、箔1枚を挟んだ場合(板間約35μm)には、10μm 近くの内部酸化層の生成が確認された。一方、箔5枚を挟んだ場合(板間約175μm)には、内部酸化層の生成は確認されなかった。板間の隙間が大きくなる程、内部酸化層は薄くなっており、CO、COガスの滞留防止の効果が生じていることが確認された。
Figure 0006939430

Claims (6)

  1. 質量%で0.5%≦Si≦3.5%,0.5%≦Mn≦5.0%,0.5%≦Al≦5.0%,の1種または2種以上を合計で0.5%以上5.0%以下の範囲で含有し、さらに0.05〜0.8質量%のCを含有する鋼板を、熱間圧延し600〜900℃の温度範囲でコイル状に巻き取り冷却する際に、鋼板間にスペーサーを挿入して、鋼板間に50μm〜1000μmの厚さの隙間を形成して鋼板を巻き取ることを特徴とする、コイル状鋼板の内部酸化を抑制する方法。
  2. 前記スペーサーは、平均粒径が50μm〜1000μmの粉体を含んでなることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 前記鋼板間に100μm〜1000μmの厚さの隙間を形成することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  4. 前記スペーサーは、平均粒径が100μm〜1000μmの粉体を含んでなることを特徴とする請求項3に記載の方法。
  5. 前記鋼板間の前記隙間(空間)の90体積%以上を前記スペーサーのない空間とすることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記鋼板間の前記隙間(空間)の0.3体積%以上を前記スペーサーの体積が占めることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
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