図1から図9を参照して、個人認証媒体を具体化した一実施形態を説明する。以下では、個人認証媒体の構成、個人認証媒体の製造方法、個人認証媒体を構成する各部の形成材料、および、実施例を順に説明する。
[個人認証媒体の構成]
図1から図5を参照して、個人認証媒体の構成を説明する。
図1が示すように、個人認証媒体10は板状を有し、個人認証媒体10を構成する面の1つとして表面10Fを含んでいる。表面10Fと対向する平面視において、個人認証媒体10は特定用画像PICを表示し、特定用画像PICは、第1画像要素PIC1、第2画像要素PIC2、および、第3画像要素PIC3から構成されている。すなわち、第1画像要素PIC1、第2画像要素PIC2、および、第3画像要素PIC3は、個人認証媒体10の所有者を特定するための情報を含む1つの特定用画像PICを形成している。
表面10Fと対向する平面視において、個人認証媒体10は、第1文字列CHA1、第2文字列CHA2、第3文字列CHA3、第4文字列CHA4、および、第5文字列CHA5を表示する。5つの文字列には、個人認証媒体10の所有者を特定するための情報を含む特定用文字列が含まれている。5つの文字列のうち、第1文字列CHA1、第2文字列CHA2、および、第3文字列CHA3がそれぞれ特定用文字列の一例である。第1文字列CHA1は、個人認証媒体10の所有者に固有の個人番号を特定用の情報として含み、第2文字列CHA2は所有者の氏名を特定用の情報として含み、第3文字列CHA3は所有者の国籍を特定用の情報として含んでいる。
なお、個人番号、氏名、および、国籍は、特定用文字列が含む情報の一例であり、特定用文字列が含む情報は、例えば、所有者の生年月日、所有者の性別、および、所有者の署名などであってもよい。また、特定用文字列を構成する文字は、アルファベットおよび数字に限らず、漢字、ひらがな、および、カタカナなどであってもよいし、日本語以外の言語に特有の文字であってもよい。
第4文字列CHA4および第5文字列CHA5は、特定用文字列以外の文字列であり、第4文字列CHA4は、例えば個人認証媒体10における有効期間の満了日を情報として含み、第5文字列CHA5は、個人認証媒体10の名称を情報として含んでいる。なお、個人認証媒体10は、特定用文字列以外の文字列として、これら以外の情報を含む文字列を表示するように構成されてもよい。
図2は、図1のI−I線に沿う個人認証媒体10の断面構造を示している。図2では、図示の便宜上、個人認証媒体10を構成する各層の厚さ、および、各部の大きさが誇張されている。
図2が示すように、個人認証媒体10は、画像表示層11、表面回折部12、および、裏面回折部13を備えている。画像表示層11は、上述した第1画像要素PIC1を表示する表示部11aを含み、表面11Fと裏面11Rとを含んでいる。表面回折部12は、画像表示層11の厚さ方向において、表示部11aと重なるように画像表示層11の表面11Fに位置している。裏面回折部13は、表面回折部12と裏面回折部13との間に表示部11aを挟み、かつ、表示部11aよりも外側に広がるように画像表示層11の裏面11Rに位置している。裏面回折部13は、表示部11aに重なる領域と、表示部11aに重ならない領域とを備えている。
個人認証媒体10は、さらに表面画像部21、および、裏面画像部22を備えている。表面画像部21は、画像表示層11の表面11Fのなかで、表面回折部12が位置する部位とは異なる部位に位置している。表面画像部21は、少なくとも1つの文字を含んでいる。裏面画像部22は、画像表示層11の裏面11Rのなかで、裏面回折部13が位置する部位とは異なる部位であり、かつ、画像表示層11の厚さ方向において表面画像部21とは重ならない部位に位置している。裏面画像部22は、少なくとも1つの文字を含んでいる。
画像表示層11に対して表面回折部12が位置する側が個人認証媒体10の観察側である。観察側から個人認証媒体10が観察されたとき、表面画像部21と裏面画像部22とが、所有者を特定するための情報を含む1つの特定用文字列に含まれる。表面画像部21に含まれる文字、および、裏面画像部22に含まれる文字の各々は、上述した第3文字列CHA3、第4文字列CHA4、および、第5文字列CHA5のいずれかに含まれる。
個人認証媒体10は、さらに第1基材14、第2基材15、および、第3基材16を備えている。個人認証媒体10において、第1基材14、第2基材15、画像表示層11、および、第3基材16が記載の順に積み重なっている。裏面回折部13は、第2基材15と画像表示層11との間に位置し、表面回折部12は、画像表示層11と第3基材16との間に位置している。
第1基材14は、第1基材14上に積み重なる第2基材15、画像表示層11、および、第3基材16を支持することができる程度の機械的な強度を有することが好ましい。第1基材14は例えば白色などの所定の色を有して光を透過しないが、光を透過してもよい。第1基材14のうち、第2基材15と接する面が表面14Fである。
第1基材14の表面14Fには、基材画像部23が位置している。基材画像部23は、表面画像部21および裏面画像部22の各々と同様、少なくとも1つの文字を含んでいる。基材画像部23が含む文字は、特定用文字列のいずれかに含まれる文字であってもよいし、特定用文字列以外の文字列に含まれる文字であってもよい。
第2基材15は、画像表示層11の裏面11Rに位置する裏面回折部13の全体と、裏面画像部22の全体とを覆っている。第2基材15は光透過性を有し、個人認証媒体10の表面10Fと対向する平面視において、基材画像部23が観察者によって視認されるように第2基材15は構成されている。
第3基材16は、画像表示層11の表面11Fに位置する表面回折部12の全体と、表面画像部21の全体とを覆っている。これにより、第3基材16は、表面回折部12および表面画像部21が、化学的あるいは物理的に損傷することを抑える保護層として機能している。第3基材16は光透過性を有し、個人認証媒体10の表面10Fと対向する平面視において、表面回折部12から射出される光、裏面回折部13から射出される光、表面画像部21、裏面画像部22、および、基材画像部23が観察者によって視認されるように第3基材16は構成されている。
表面回折部12は、透過部12aと隠蔽部12bとを含み、個人認証媒体10の表面10Fと対向する平面視において、隠蔽部12bは透過部12aの周りを取り囲んでいる。表面回折部12のより詳しい構成を、図3を参照して以下に説明する。
図3は、図2が示す個人認証媒体10の断面構造のうち、表面回折部12の断面構造、裏面回折部13の断面構造、および、画像表示層11の断面構造における一部を拡大して示している。
図3が示すように、表面回折部12は、回折層31と接着層32とを備えている。回折層31は透過部31aと隠蔽部31bとを含み、隠蔽部31bが上述した隠蔽部12bを構成している。回折層31は、反射光として回折光を射出して、この回折光によって上述した第2画像要素PIC2を形成する表面回折格子31cを含んでいる。透過部31aは表面回折格子31cを含み、透過性を有している。画像表示層11の表面11Fと対向する平面視において、隠蔽部31bは透過部31aの外側に位置して表面回折部12の縁を構成し、かつ、表面回折部12の下層によって形成される画像を隠蔽する。
回折層31において、接着層32に接する面が裏面31Rであり、表面回折格子31cは、回折層31の裏面31Rの一部に含まれる凹凸面である。表面回折格子31cは回折層31の裏面31Rにおける一部のみに位置しているが、裏面31Rの全体に位置してもよい。
表面回折格子31cは、画像表示層11に対して表面回折部12が位置する側において、個人認証媒体10の表面10Fに対する所定の定点に観察者の視点が位置するときに、視点に向けて回折光を射出する。表面回折格子31cにおいて、所定の方向に沿って延びる溝である格子パターンが、格子パターンが延びる方向と直交する方向に沿って所定の間隔で繰り返されている。格子パターンが繰り返される方向は、上述した定点に回折光を射出する方向に設定されている。
単位長さ当たりの溝の本数が、表面回折格子31cの空間周波数である。表面回折格子31cの全体において空間周波数が一定であってもよいし、表面回折格子31cは、空間周波数が互いに異なる複数の部分を含んでもよい。
画像表示層11の表面11Fと対向する平面視において、隠蔽部31bは透過部31aの周りを取り囲んでいる。隠蔽部31bは、隠蔽部31bよりも下層、すなわち、画像表示層11、裏面回折部13、第2基材15、および、第1基材14の各々が形成する画像を隠蔽する。隠蔽部31bは所定の色を有することによって、隠蔽部31bの下層によって形成された画像を隠蔽してもよいし、隠蔽部31bに入射した光のほとんどを反射することによって、隠蔽部31bの下層によって形成された画像を隠蔽してもよい。また、隠蔽部31bは、隠蔽部31bに入射する光を散乱させることによって、隠蔽部31bの下層によって形成された画像を隠蔽してもよい。
接着層32は回折層31を画像表示層11に接着させる機能を有し、かつ、光透過性を有している。表面回折部12において、回折層31の透過部31aと接着層32とが、表面回折部12における透過部12aの一例を構成している。
裏面回折部13は、回折層41と接着層42とを備えている。回折層41は裏面回折格子41aを含み、裏面回折格子41aは、反射光として回折光を射出して、この回折光によって上述した第3画像要素PIC3を形成する。回折層41において、接着層42に接する面が裏面41Rである。裏面回折格子41aは、回折層41の裏面41Rにおける全体に位置し、言い換えれば、裏面41Rの全体が凹凸面である。なお、裏面回折格子41aは裏面41Rの全体に位置しているが、裏面41Rの一部のみに位置してもよい。
また、裏面回折格子41aは、第3画像要素PIC3を内部に含み、第3画像要素PIC3の基となる基本画像を形成する。画像表示層11の表面11Fと対向する平面視において、基本画像は、表面回折部12の透過部12aからはみ出し、かつ、表面回折部12の縁以下の大きさを有している。画像表示層11の表面11Fと対向する平面視において、裏面回折部13は表面回折部12とほぼ同じ大きさを有し、かつ、裏面回折部13の全体が表面回折部12に重なっている。そのため、画像表示層11の表面11Fと対向する平面視において、裏面回折格子41aが形成する基本画像のなかで、表面回折部12における回折層31の透過部31aからはみ出す部分が、隠蔽部31bによって隠蔽される。
裏面回折格子41aは、上述した定点に観察者の視点が位置するときに、視点に向けて回折光を射出する。裏面回折格子41aにおいて、所定の方向に沿って延びる溝である格子パターンが、格子パターンが延びる方向と直交する方向に沿って所定の間隔で繰り返されている。格子パターンが繰り返される方向は、上述した定点に回折光を射出する方向に設定されている。
裏面回折格子41aでは、裏面回折格子41aの全体において空間周波数が一定であってもよいし、裏面回折格子41aは、空間周波数が互いに異なる複数の部分を含んでもよい。
画像表示層11は、レーザー光線の照射によって発色する特性を有している。表示部11aは、レーザー光線の照射によって画像表示層11にて発色した部分である。発色部は例えば黒色を有しているが、黒色以外の色を有してもよい。表示部11aは複数の発色部から構成され、各発色部は、画像表示層11の表面11Fに露出し、かつ、画像表示層11の厚さ方向において、画像表示層11の裏面11Rよりも表面11F寄りの位置まで延びている。なお、各発色部は、画像表示層11の裏面11Rに露出し、かつ、画像表示層11の厚さ方向において、画像表示層11の表面11Fよりも裏面11R寄りの位置まで延びていてもよいし、表面11Fと裏面11Rとの両方に露出するように、画像表示層11の厚さ方向の全体に位置してもよい。
観察側から個人認証媒体10が観察されたとき、表面回折部12は、表示部11aと裏面回折格子41aとに重なる部位にて透過性を有している。より詳しくは、画像表示層11の表面11Fと対向する平面視において、表面回折部12の回折層31における透過部31aは、表示部11aを取り囲む大きさを有し、透過部31aは、個人認証媒体10において、裏面回折格子41aの一部に重なる部位に位置している。また、画像表示層11のなかで表示部11a以外の部分は、観察側から個人認証媒体10が観察されたとき、裏面回折格子41aと重なる部位にて透過性を有している。より詳しくは、画像表示層11は、裏面回折格子41aと重なる部分の全体において透過性を有しているが、裏面回折格子41aと重なる一部において光透過性を有してもよい。
なお、表面回折部12および裏面回折部13は、各回折部が有する層間に位置する中間層を有してもよい。また、表面回折部12が備える回折層31の裏面31Rのなかで、少なくとも表面回折格子31cが位置する部位には、透明な反射層が位置してもよい。裏面回折部13が備える回折層41の裏面回折格子41aにも、透明な反射層が位置してもよい。各回折部が透明な反射層を有する構成によれば、各回折光から射出される反射層の輝度を高めることができる。透明な反射層の形成材料には、例えば硫化亜鉛(ZnS)、および、酸化チタン(TiO2)などを用いることができる。
図4は、図2が示す個人認証媒体10の断面構造のうち、第1基材14の断面構造、第2基材15の断面構造、画像表示層11の断面構造、および、第3基材16の断面構造における一部を拡大して示している。
図4が示すように、基材画像部23は、第1基材14の表面14Fと第2基材15の裏面15Rとの間に位置している。裏面画像部22は、第2基材15の表面15Fと画像表示層11の裏面11Rとの間に位置している。表面画像部21は、画像表示層11の表面11Fと第3基材16の裏面16Rとの間に位置している。なお、基材画像部23において、第1基材14と第2基材15とのうち、剛性が低い基材に食い込む量が、他の基材に食い込む量よりも大きい。また、表面画像部21および裏面画像部22の両方においても同様である。
個人認証媒体10において、第3基材16の表面16Fが個人認証媒体10の表面10Fであり、第1基材14の裏面14Rが個人認証媒体10の裏面10Rである。
図5は、個人認証媒体10を3つの層に分解して示す斜視図である。なお、図5では、図示の便宜上、表面回折部12および表面画像部21を第3基材16とともに1つの層として示し、裏面画像部22を画像表示層11とともに1つの層として示し、裏面回折部13および基材画像部23を第1基材14および第2基材15とともに1つの層として示している。
図5が示すように、画像表示層11が表示する第1画像要素PIC1は、個人認証媒体10の所有者の顔画像を含んでいる。第1画像要素PIC1は、所有者の上半身像であるが、所有者の顔画像のみから構成されてもよい。第1画像要素PIC1の全体が、レーザー光線の照射によって発色した部分であり、画像表示層11のなかで第1画像要素PIC1以外の部分よりも透過性が低い部分である。そのため、画像表示層11の下層である裏面回折部13が形成する画像のなかで、第1画像要素PIC1が重なる部分は、個人認証媒体10の表面10Fと対向する平面視において視認されない。
なお、第1画像要素PIC1は、第1画像要素PIC1の輪郭によって囲まれる全体が、レーザー光線の照射によって発色した部分でなくてもよく、少なくとも、第1画像要素PIC1の輪郭が、レーザー光線の照射によって発色した部分であればよい。
画像表示層11の厚さ方向、すなわち個人認証媒体10の厚さ方向において、顔画像が一対の回折部によって挟まれるため、個人認証媒体10の有する顔画像を他の顔画像にすり替えることが難しい。それゆえに、個人認証媒体10の偽造を抑えることができる。
第2画像要素PIC2は、表面回折格子31cが反射光として射出した回折光によって形成される画像であり、上述したように、個人認証媒体10の表面10Fに対する所定の定点に観察者の視点が位置するときに、観察者によって視認される画像である。第2画像要素PIC2は、個人認証媒体10の表面10Fと対向する平面視において、第1画像要素PIC1を取り囲む枠状を有した部分と、枠状を有する部分の一部に位置し、所有者の国籍に対応する国旗を示す形状を有した部分とから構成されている。このように、第2画像要素PIC2は、個人認証媒体10の所有者を特定するための特定用画像を含んでもよい。
第1画像要素PIC1に加えて第2画像要素PIC2も特定用画像を含むことによって、個人認証媒体10において、第2画像要素PIC2の特定用画像が含む情報を改竄しようとした場合には、第2画像要素PIC2も改竄する内容に合わせて変更する必要がある。そのため、第2画像要素PIC2が含む情報に関わる改竄が難しくなる。
個人認証媒体10の表面10Fと対向する平面視において、隠蔽部12bは、第2画像要素PIC2の周方向における全体を取り囲む枠状を有している。個人認証媒体10の表面10Fと対向する平面視では、表面回折部12のなかで、隠蔽部12bよりも内側に位置する部分が透過部12aであり、表面回折部12よりも下層を透過する。
第3画像要素PIC3は、第3画像要素PIC3の縁から外側に向かって拡がる基本画像PICBに含まれている。基本画像PICBは、裏面回折格子41aが反射光として射出した回折光によって形成される画像であり、上述した定点に観察者の視点が位置するときに、観察者によって視認される画像である。基本画像PICBのうち、個人認証媒体10の表面10Fと対向する平面視において、隠蔽部12bの内側に含まれる部分が第3画像要素PIC3である。基本画像PICBは、個人認証媒体10の表面10Fと対向する平面視において、隠蔽部12bをはみ出ない大きさを有している。
個人認証媒体10の観察者には、裏面回折格子41aが形成する基本画像PICBの一部である第3画像要素PIC3のみが視認される。そのため、個人認証媒体10が偽造される場合には、観察時に視認が可能な第3画像要素PIC3のみを形成する回折格子のみが偽造される可能性が高い。それゆえに、個人認証媒体10の表面10Fと対向する平面視において、裏面回折部13が第3画像要素PIC3よりも大きい基本画像PICBを形成することが可能な構成であるか否かによって、真正の個人認証媒体10であるか否かを判別することが可能にもなる。
上述したように、個人認証媒体10では、画像表示層11の表面11Fおよび裏面11Rにそれぞれ回折部が位置するため、画像表示層11のうち、表示部11aが形成された部位のみを取り除くことが難しい。さらには、第1画像要素PIC1、第2画像要素PIC2、および、第3画像要素PIC3が1つの特定用画像PICを形成するため、偽の画像表示層に対する表面回折部12および裏面回折部13の位置を合わせなければ、偽の個人認証媒体によって、真正の個人認証媒体10が表示する特定用画像PICと同じ画像を表示させることが難しい。それゆえに、こうした個人認証媒体10によれば、個人認証媒体10の偽造を抑えることができる。
第1文字列CHA1は複数の第1文字1Cから構成され、複数の第1文字1Cは「MDSSS79020887」から構成されている。第2文字列CHA2は複数の第2文字2Cから構成され、複数の第2文字2Cは「TARO SUZUKI」から構成されている。第3文字列CHA3は複数の第3文字3Cから構成され、複数の第3文字3Cは「JAPAN」から構成されている。第4文字列CHA4は複数の第4文字4Cから構成され、複数の第4文字4Cは「29 APR 2020」から構成されている。第5文字列CHA5は複数の第5文字5Cから構成され、複数の第5文字5Cは「PASSPORT CARD」から構成されている。
各文字列のうち、少なくとも1つの文字が第3基材16とともに示され、少なくとも1つの文字が画像表示層11とともに示され、かつ、少なくとも1つの文字が第2基材15とともに示されている。つまり、各文字列のうち、少なくとも1つの文字が表面画像部21に含まれ、少なくとも1つの文字が裏面画像部22に含まれ、かつ、少なくとも1つの文字が基材画像部23に含まれている。
より具体的には、特定用文字列である第1文字列CHA1、第2文字列CHA2、および、第3文字列CHA3において、互いに隣り合う文字は表面画像部21、裏面画像部22、および、基材画像部23のなかで、互いに異なる画像部に含まれている。そのため、各画像部は文字列が含む情報のうちの一部しか含まず、3つの画像部が互いに積み重ねられて初めて個人認証媒体10の所有者に固有の情報を含む単一の文字列が形成される。
なお、第1文字列CHA1、第2文字列CHA2、および、第3文字列CHA3の各々を構成する複数の文字では、互いに隣り合う複数の文字が、表面画像部21、裏面画像部22、および、基材画像部23のなかで、互いに同じ画像部に含まれてもよい。また、第1文字列CHA1、第2文字列CHA2、および、第3文字列CHA3の各々を構成する複数の文字は、表面画像部21および裏面画像部22のいずれかに含まれていればよく、基材画像部23には含まれていなくてもよい。
こうした構成によれば、偽の特定用文字列を真正の特定用文字列に似せて形成するためには、画像表示層11の表面11Fと対向する平面視において特定用文字列を形成する各文字の位置を合わせるだけでなく、個人認証媒体10の厚さ方向においても各文字の位置を合わせる必要がある。それゆえに、特定用文字列を形成する全ての文字が同一の面上に位置する構成よりも、特定用文字列の偽造が難しく、ひいては、個人認証媒体10の偽造を抑えることができる。
特定用文字列以外の文字列である第4文字列CHA4は、互いに隣り合う複数の文字が、表面画像部21、裏面画像部22、および、基材画像部23のなかで、互いに異なる画像部に含まれる部分と、互いに同じ画像部に含まれる部分とから構成されている。第4文字列CHA4は、互いに隣り合う複数の文字が、互いに異なる画像部に含まれる部分のみから構成されてもよいし、互いに同じ画像部に含まれる部分のみから構成されてもよい。
特定用文字列以外の文字列である第5文字列CHA5では、上述した特定用文字列と同様、互いに隣り合う文字が、表面画像部21、裏面画像部22、および、基材画像部23のなかで、互いに異なる画像部に含まれている。そのため、各画像部は文字列が含む情報のうちの一部しか含まず、3つの画像部が互いに積み重ねられて初めて所定の情報を含む単一の文字列が形成される。なお、第5文字列CHA5を構成する複数の文字では、特定用文字列と同様、互いに隣り合う複数の文字が、表面画像部21、裏面画像部22、および、基材画像部23のなかで、互いに同じ画像部に含まれてもよい。
[個人認証媒体の製造方法]
図6から図9を参照して、個人認証媒体10の製造方法を説明する。以下では、個人認証媒体10を製造するための工程を説明する前に、個人認証媒体10の製造に用いられる転写箔を説明する。なお、個人認証媒体10の製造には、表面回折部12を形成するための転写箔と裏面回折部13を形成するための転写箔とが用いられる。2つの転写箔の間では、各転写箔から被転写体である画像表示層11に転写される部位の構成は上述したように互いに異なるものの、それ以外の部分は共通している。そのため、以下では、表面回折部12を形成するための転写箔について詳しく説明し、裏面回折部13を形成するための転写箔の詳しい説明を省略する。
図6が示すように、転写箔50は、表面回折部12を形成するために用いられる転写箔であり、上述した表面回折部12と表面回折部12を支持する支持層51とを備えている。転写箔50が形成されるときには、まず、支持層51を準備し、支持層51は例えば樹脂製のフィルムによって具体化することができる。支持層51のうち、表面回折部12が形成される面には、支持層51から表面回折部12を剥がれやすくするための処理を施してもよい。
次いで、支持層51の1つの面に回折層31を形成する。回折層31が有する隠蔽部31bが金属膜から形成されるときには、所定の形状を有した金属膜が支持層51に形成される。隠蔽部31bは、支持層51の1つの面のほぼ全体を覆う金属膜が形成された後に、金属膜における不要な部分が取り除かれることによって形成されてもよいし、隠蔽部31bの形状に応じたマスクを用いた成膜によって形成されてもよい。
そして、透過部31aを形成するための塗膜を支持層51に形成した後、塗膜のなかで支持層51に接する面とは反対側の面に表面回折格子31cを形成するための原版を押し当てる。これにより、裏面31Rに表面回折格子31cを有した回折層31が形成される。次いで、回折層31のうち、支持層51に接する面とは反対側の面に、接着層32を形成する。これにより、転写箔50を得ることができる。
なお、表面回折部12が透明な反射層を有するときには、回折層31の裏面31Rに接着層32を形成する前に、回折層31の裏面31Rに透明な反射層を形成すればよい。透明な反射層は、例えば真空蒸着法やスパッタ法などを用いて形成される。
図7が示すように、個人認証媒体10を製造するときには、まず、画像表示層11を準備する。画像表示層11は、例えば樹脂製のフィルムによって具体化することができる。次いで、画像表示層11の表面11Fに上述した転写箔50を用いて表面回折部12を転写し、画像表示層11の裏面11Rに裏面回折部13を形成するための転写箔を用いて裏面回折部13を転写する。なお、表面回折部12の転写が裏面回折部13の転写よりも先に行われてもよいし、裏面回折部13の転写が表面回折部12の転写よりも先に行われてもよい。
図8が示すように、第1基材14と第2基材15とを準備する。第1基材14および第2基材15の各々は、例えば樹脂製のフィルムによって具体化することができる。なお、第1基材14は、樹脂製のフィルム以外に例えば各種の紙によって具体化することも可能である。そして、画像表示層11の表面11Fに表面画像部21を形成し、第2基材15の表面15Fに裏面画像部22を形成し、第1基材14の表面14Fに基材画像部23を形成する。
なお、第3基材16の裏面16Rに表面画像部21を形成してもよいし、画像表示層11の表面11Fに表面画像部21の一部を形成し、第3基材16の裏面16Rに表面画像部21の残りの一部を形成してもよい。また、画像表示層11の裏面11Rに裏面画像部22を形成してもよいし、第2基材15の表面15Fに裏面画像部22の一部を形成し、画像表示層11の裏面11Rに裏面画像部22の残りの一部を形成してもよい。また、第2基材15の裏面15Rに基材画像部23を形成してもよいし、第1基材14の表面14Fに基材画像部23の一部を形成し、第2基材15の裏面15Rに基材画像部23の残りの一部を形成してもよい。
図9が示すように、第3基材16を準備し、第1基材14、第2基材15、画像表示層11、および、第3基材16を記載の順に積み重ねた状態で、これらの層が一体化された積層体を形成する。これにより、表面回折部12と裏面回折部13とが内部に含まれた積層体を得ることができる。そして、画像表示層11に対して第3基材16側から、第3基材16と表面回折部12とを介して照射装置61を用いてレーザー光線LBを照射することによって、画像表示層11に表示部11aを形成する。これにより、図1から図5を参照して先に説明した個人認証媒体10を得ることができる。
[各部の形成材料]
個人認証媒体10を構成する各部の形成材料を説明する。
[基材]
第1基材14、第2基材15、および、第3基材16には、樹脂製のフィルムを用いることができる。フィルムを形成する樹脂には、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PP(ポリプロピレン)、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、非晶性ポリエステル樹脂(PET‐G)、および、ポリカーネート樹脂(PC)などを用いることができる。このうち、個人認証媒体用のカードやパスポートの基材として従来から用いられるPCV、PET‐G、および、PCから形成されたフィルムは、熱や圧力などによって一体化する加工が容易である点で好ましい。
各基材の厚さは、50μm以上400μm以下であることが好ましい。各基材の厚さが50μm以上であることによって、各基材が取り扱いやすくなる程度に各基材の物理的な強度が高まるため、表面画像部21、裏面画像部22、および、基材画像部23を形成するときなどに各基材に皺が生じることが抑えられる。また、各基材の厚さが400μm以下であることによって、個人認証媒体10を製造するときに、各基材が有する厚さのばらつきや撓みの影響が大きくなることが抑えられる。なお、各基材の厚さは75μm以上100μm以下であることがより好ましい。
[画像表示層]
画像表示層11には、所定の波長を有したレーザー光線の照射によって発色する特性を有した樹脂製のフィルムを用いることができる。画像表示層11には、例えば、ポリカーボネート樹脂と、ポリカーボネート樹脂に対して添加されたレーザー光線を吸収するエネルギー吸収体とによって形成されたフィルムを用いることができる。こうしたフィルムには、例えばSABIC社のLEXANシリーズSD8B94などが挙げられる。
画像表示層11の厚さも、上述した各基材と同様の理由から、50μm以上400μm以下であることが好ましく、75μm以上100μm以下であることがより好ましい。
[画像部]
表面画像部21、裏面画像部22、および、基材画像部23は、個人認証媒体10に所定の情報を与えるために、任意の色みを有し、また、文字や絵柄などのパターンを有している。
各画像部は、例えばインキを用いて形成される。各画像部を形成するためのインキには、印刷方法に応じて、オフセットインキ、活版インキ、および、グラビアインキなどを用いることができ、組成の違いに応じて、例えば、樹脂インキ、油性インキ、および、水性インキを用いることができる。また、各画像部を形成するためのインキには、乾燥方式の違いに応じて、例えば、酸化重合型インキ、浸透乾燥型インキ、蒸発乾燥型インキ、および、紫外線硬化型インキを用いることができる。
また、各画像部を形成するインキには、個人認証媒体10に対する光の入射角度、または、個人認証媒体10を観察する角度に応じて色が変わる機能性インキを用いることができる。機能性インキには、例えば、光学的変化インキ(Optical Variable Ink)、カラーシフトインキ、および、パールインキなどが挙げられる。
なお、トナーを用いた電子写真法によって各画像部を形成することもできる。電子写真法によって各画像部を形成するときには、帯電性を有したプラスチック粒子に黒鉛および顔料などの色粒子を付着させたトナーを準備し、帯電による静電気を利用して、トナーを被印刷体に転写させる。そして、トナーが転写された被印刷体を加熱することによって、被印刷体にトナーを定着させる。これにより、上述した各基材や画像表示層11に各画像部を形成することができる。
[支持層]
表面回折部12を形成するための転写箔50が備える支持層51、および、裏面回折部13を形成するための転写箔が備える支持層は、以下の材料を用いて形成することができる。
支持層には樹脂製のフィルムを用いることができ、フィルムの形成材料には、例えば、PET、PEN、および、PPなどを用いることができる。フィルムの形成材料は、支持層上に回折層が形成されるときに、支持層にかかる熱や支持層が接する溶剤によって、支持層の変形や変質が起こりにくい材料であることが好ましい。なお、支持層には、紙、合成紙、プラスチック複層紙、および、樹脂含浸紙などを用いることもできる。
支持層の厚さは4μm以上であることが好ましく、12μm以上50μm以下であることがより好ましい。支持層の厚さが4μm以上であることによって、支持層が取り扱いやすい程度に支持層の物理的な強度が高まる。
[回折層]
表面回折部12における回折層31が備える透過部31a、および、裏面回折部13が備える回折層41の各々は、以下の材料を用いて形成することができる。
透過部31aおよび回折層41の形成材料には、例えば、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂には、例えば、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂、および、ビニル系樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂には、例えば、ウレタン樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ樹脂、および、フェノール系樹脂などが挙げられる。
透過部31aおよび回折層41の形成材料には、フォトポリマーを用いることもできる。フォトポリマーには、エチレン性不飽和結合またはエチレン性不飽和基を持つモノマー、オリゴマー、および、ポリマーなどが挙げられる。このうち、モノマーには、例えば、1,6‐ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、および、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどが挙げられる。オリゴマーには、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、および、ポリエステルアクリレートなどが挙げられる。ポリマーには、ウレタン変性アクリル樹脂、および、エポキシ変性アクリル樹脂が挙げられる。なお、透過部31aおよび回折層41の形成材料には、上述した以外のフォトポリマーを用いることも可能である。
[接着層]
表面回折部12が備える接着層32、および、裏面回折部13が備える接着層42の各々は、以下に記載の材料を用いて形成することができる。
接着層32,42は、例えば、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、および、塩化ビニル樹脂などを主成分とする接着剤によって形成される。接着層を形成するための接着剤には、接着性付与剤、充填剤、軟化剤、熱光安定剤、および、酸化防止剤などを配合することができる。
接着性付与剤には、ロジン系樹脂、テルペンフェノール樹脂、テルペン樹脂、芳香族炭化水素変性テルペン樹脂、石油樹脂、クマロン・インデン樹脂、スチレン系樹脂、フェノール系樹脂、および、キシレン樹脂などが挙げられる。充填剤には、亜鉛華、酸化チタン、シリカ、炭酸カルシウム、および、硫酸バリウムなどが挙げられる。軟化剤には、プロセスオイル、液状ゴム、および、可塑剤などが挙げられる。熱光安定剤には、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、および、ヒンダードアミン系などが挙げられ、酸化防止剤には、アニリド系、フェノール系、ホスファイト系、および、チオエステル系などが挙げられる。
接着層32,42の厚さは、例えば0.1μm以上10μm以下であり、1μm以上5μm以下であることが好ましい。
[実施例]
個人認証媒体の実施例を説明する。
個人認証媒体を製造する前に、表面回折部を形成するための転写箔と、裏面回折部を形成するための転写箔とを準備した。表面回折部を形成するための転写箔を形成するときには、支持層として25μmの厚さを有したPETフィルム(ルミラー25T60、東レ(株)製)(ルミラーは登録商標)を準備した。そして、PETフィルムの1つの面に、マスクを用いた真空蒸着法によって2μmの厚さを有したアルミニウム層を形成し、これにより隠蔽部を形成した。
次いで、以下の組成を有した回折層用インキを、PETフィルムのなかで隠蔽部が形成された面にグラビア印刷法を用いて塗布することによって、2μmの厚さを有した塗膜を形成した。そして、塗膜に含まれる溶剤を揮発させることによって塗膜から除去した後、塗膜のなかで支持層に接する面とは反対側の面に金属円筒板を押し当てることによって、ロール形成加工を行った。これにより、表面回折部を形成した。このとき、プレス圧力を2Kgf/cm2に設定し、プレス温度を240℃に設定し、プレススピードを10m/minに設定した。
回折層のうち、支持層に接する面とは反対側の面に、真空蒸着法によって透明な反射層として厚さが600ÅであるZnS膜を形成した。次いで、透明な反射層のなかで、回折層に接する面とは反対側の面に、以下の組成を有した接着層用インキを塗布することによって、4μmの厚さを有した塗膜を形成した。その後、塗膜に含まれる溶剤を揮発させることによって塗膜から除去することで接着層を形成した。これにより、表面回折部を含む転写箔を得た。
また、隠蔽部を形成する工程以外は、表面回折部を含む転写箔を形成する方法と同じ方法によって、裏面回折部を含む転写箔を得た。
[回折層用インキ]
高分子メタクリル(PMMA)樹脂 2質量部
低粘性ニトロセルロース 12質量部
シクロヘキサノン 10質量部
[接着層用インキ]
ポリエステル樹脂 20質量部
メチルエチルケトン 40質量部
トルエン 50質量部
100μmの厚さを有した画像表示層(LEXAN SD8B94、SABIC(株)製)(LEXANは登録商標)を準備し、画像表示層の表面にホットスタンプ転写機を用いて表面回折部を転写し、画像表示層の裏面に裏面回折部を転写した。このとき、転写温度を120℃に設定し、転写時間を1秒間に設定した。
400μmの厚さを有した第1基材(LEXAN SD8B24、SABIC(株)製)、200μmの厚さを有した第2基材(LEXAN SD8B14、SABIC(株)製)、および、100μmの厚さを有した第3基材(LEXAN SD8B14、SABIC(株)製)を準備した。そして、第1基材の表面に黒色のインキを用いて基材画像部を形成し、第2基材の表面に黒色のインキを用いて裏面画像部を形成し、画像表示層の表面に黒色のインキを用いて表面画像部を形成した。
次いで、第1基材、第2基材、画像表示層、および、第3基材を記載の順に積み重ね、これらに熱圧を加えてラミネートし、カード状に整形することによって表面回折部と裏面回折部とを内部に含む積層体を得た。
1064nmの波長を有したレーザー光線を出力するファイバーレーザー型のレーザー照射装置を用いて、積層体が有する画像表示層に対して、第3基材が位置する側からレーザー光線を照射した。これにより、画像表示層の内部に表示部を形成し、実施例の個人認証媒体を得た。
個人認証媒体の表面と対向する平面視において、第1画像要素、第2画像要素、および、第3画像要素が互いに重なり、これらによって所有者の上半身像を含む特定用画像が形成されることが認められた。また、個人認証媒体の裏面から所有者の上半身像である第1画像要素を取り除こうとすると、第1画像要素が取り除かれることに加えて、第3画像要素も消失することが認められた。
以上説明したように、個人認証媒体の一実施形態によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)画像表示層11の表面11Fおよび裏面11Rにそれぞれ回折部が位置するため、画像表示層11のうち、表示部11aが形成された部位のみを取り除くことが難しい。さらには、第1画像要素PIC1、第2画像要素PIC2、および、第3画像要素PIC3が1つの特定用画像PICを形成するため、偽の画像表示層に対する表面回折部12および裏面回折部13の位置を合わせなければ、偽の個人認証媒体によって、真正の個人認証媒体10が表示する特定用画像PICと同じ画像を表示させることが難しい。それゆえに、こうした個人認証媒体10によれば、個人認証媒体10の偽造を抑えることができる。
(2)個人認証媒体10の厚さ方向において、顔画像が一対の回折部によって挟まれるため、個人認証媒体10の有する顔画像を他の顔画像にすり替えることが難しい。それゆえに、個人認証媒体10の偽造を抑えることができる。
(3)偽の特定用文字列を真正の特定用文字列に似せて形成するためには、画像表示層11の表面11Fと対向する平面視において特定用文字列を形成する各文字の位置を合わせるだけでなく、個人認証媒体10の厚さ方向においても各文字の位置を合わせる必要がある。それゆえに、特定用文字列を形成する全ての文字が同一の面上に位置する構成よりも、特定用文字列の偽造が難しく、ひいては、個人認証媒体10の偽造を抑えることができる。
(4)個人認証媒体10の観察者には、裏面回折格子41aが形成する基本画像PICBの一部である第3画像要素PIC3のみが視認される。そのため、個人認証媒体10が偽造された場合には、観察時に視認が可能な第3画像要素PIC3のみを形成する回折格子のみが偽造される可能性が高い。それゆえに、個人認証媒体10の表面10Fと対向する平面視において、裏面回折部13が第3画像要素PIC3よりも大きい基本画像PICBを形成することが可能な構成であるか否かによって、真正の個人認証媒体10であるか否かを判別することが可能にもなる。
なお、上述した実施形態は、以下のように適宜変更して実施することができる。
・図10が示すように、個人認証媒体70が備える画像表示層11は、第2表示部11bを備えてもよい。第2表示部11bは、レーザー光線LBの照射によって画像表示層11にて発色した部分であり、かつ、画像表示層11の厚さ方向において、表面画像部21と裏面画像部22との両方に重ならず、かつ、少なくとも1つの文字を含んでいる。第2表示部11bは、画像表示層11の厚さ方向において、基材画像部23にも重ならない。上述したように、表面画像部21と裏面画像部22とはインキによって形成されている。観察側から個人認証媒体70が観察されたとき、表面画像部21、裏面画像部22、および、第2表示部11bが、特定用文字列に含まれる。
第2表示部11bは、画像表示層11の表面11Fに露出し、画像表示層11の厚さ方向において、裏面11Rよりも表面11F寄りの部位まで延びている。第2表示部11bは、画像表示層11の裏面11Rに露出し、画像表示層11の厚さ方向において、表面11Fよりも裏面11R寄りの部位まで延びていてもよい。また、第2表示部11bは、画像表示層11の表面11Fおよび裏面11Rの両方に露出するように、画像表示層11の厚さ方向の全体に位置してもよい。
こうした構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(5)1つの特定用文字列が、互いに異なる形成材料によって形成された文字を含むため、個人認証媒体70が有する特定用文字列を偽造するためには、特定用文字列に互いに異なる形成材料によって形成された文字を含めることが必要である。それゆえに、特定文字列が単一の形成材料によって形成される構成と比べて、特定用文字列の偽造に工数や時間が掛かる分だけ、個人認証媒体70の偽造を抑えることができる。
・表面画像部21および裏面画像部22は、図11を参照して以下に説明する構成であってもよい。なお、図11では、裏面回折部13を含む第2基材15と、第3基材16との図示が省略されている。
図11が示すように、個人認証媒体80において、第1文字1C、第2文字2C、および、第3文字3Cの各々は、特定用文字の一例であり、特定用文字列に含まれて、個人認証媒体80の所有者を特定するための情報を含んでいる。
表面画像部21は、表面要素2CFを含み、表面要素2CFは、画像表示層11の表面11Fのなかで、表面回折部12が位置する部位とは異なる部位に位置し、所有者を特定するための情報に含まれる1つの特定用文字の一部である。裏面画像部22は、画像表示層11の裏面11Rのなかで、裏面回折部13が位置する部位とは異なる部位であり、かつ、画像表示層11の厚さ方向において表面画像部21とは重ならない部位に位置し、特定用文字の他の一部である裏面要素2CRを含んでいる。画像表示層11に対して表面回折部12が位置する側から個人認証媒体10が観察されたとき、表面要素2CFと裏面要素2CRとが、特定用文字を形成する。
例えば、第2文字列CHA2を構成する第2文字2Cのなかで、特定用文字の1つである「T」の一部が表面要素2CFであり、「T」の他の一部が裏面要素2CRである。また、第2文字2Cのなかで、特定用文字の1つである「A」の一部が表面要素2CFであり、「A」の他の一部が裏面要素2CRである。また、第2文字2Cのなかで、特定用文字の1つである「K」の一部が表面要素2CFであり、他の一部が裏面要素2CRである。特定用文字のなかで、表面要素2CFと裏面要素2CRとは、観察側から個人認証媒体80が観察されたときに互いに連なる部位である。
こうした構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(6)偽の特定用文字を真正の特定用文字に似せて形成するためには、画像表示層11の表面11Fと対向する平面視において表面要素2CFと裏面要素2CRとの位置を合わせるだけでなく、画像表示層11の厚さ方向においても各要素の位置を合わせる必要がある。それゆえに、特定用文字を形成する全ての要素が同一の面上に位置する構成よりも、特定用文字の偽造が難しく、ひいては、個人認証媒体80の偽造を抑えることができる。
(7)画像表示層11の表面11Fと対向する平面視において、表面要素2CFの位置に対する裏面要素2CRの位置の精度が高くなければ、表面要素2CFと裏面要素2CRとの間に隙間が形成されたり、裏面要素2CRの一部が表面要素2CFの一部に重なることで、特定用文字の形状が所望とする形状からずれたりする。そのため、特定用文字が有する形状によって、特定用文字が偽造された文字であるか否かを判別することができる。
なお、表面要素2CFと裏面要素2CRとは、特定用文字のなかで互いに連ならない部分であってもよい。こうした構成であっても、上述した(6)に準じた効果を得ることはできる。
・裏面回折部13が形成する基本画像PICBは、個人認証媒体10の表面10Fと対向する平面視において、隠蔽部31bの内側に位置することが可能な大きさであってもよい。この場合には、基本画像PICBの全体が、第3画像要素PIC3である。こうした構成であっても、第1画像要素PIC1、第2画像要素PIC2、および、第3画像要素PIC3の重なりによって1つの特定用画像PICが形成される以上は、上述した(1)に準じた効果を得ることはできる。
・表面回折部12は隠蔽部31bを備えていなくてもよく、こうした構成であっても、第1画像要素PIC1、第2画像要素PIC2、および、第3画像要素PIC3の重なりによって1つの特定用画像PICが形成される以上は、上述した(1)に準じた効果を得ることはできる。
・特定用文字列の一例である第1文字列CHA1、第2文字列CHA2、および、第3文字列CHA3の少なくとも1つにおいて、各文字列を構成する全ての文字が、同一の平面上に位置してもよい。具体的には、1つの特定用文字列を構成する全ての文字が、画像表示層11の表面11F、画像表示層11の裏面11R、および、第2基材15の裏面15Rのいずれかに位置してもよい。こうした構成であっても、第1画像要素PIC1、第2画像要素PIC2、および、第3画像要素PIC3の重なりによって1つの特定用画像PICが形成される以上は、上述した(1)に準じた効果を得ることはできる。
・表面画像部21、裏面画像部22、および、基材画像部23の少なくとも1つは、文字列に加えて、あるいは、文字列に代えて、所定の記号、図形、および、絵柄から構成されてもよい。こうした記号、図形、および、絵柄は、個人認証媒体10の所有者を特定するための情報を含んでもよいし、含んでいなくてもよい。
・表示部11aによって表示される第1画像要素PIC1は、個人認証媒体10の所有者の顔画像を含んでいなくてもよい。第1画像要素PIC1は、文字、数字、記号、図形、および、絵柄の少なくとも1つであってもよい。こうした構成であっても、第1画像要素PIC1、第2画像要素PIC2、および、第3画像要素PIC3の重なりによって1つの特定用画像PICが形成される以上は、上述した(1)に準じた効果を得ることはできる。
・第1画像要素PIC1、第2画像要素PIC2、および、第3画像要素PIC3のなかで、少なくとも1つの画像要素が、個人認証媒体10の所有者を特定するための情報を含んでいればよく、また、所有者を特定するための情報は第1画像要素PIC1が含んでいなくてもよい。こうした構成であっても、第1画像要素PIC1、第2画像要素PIC2、および、第3画像要素PIC3の重なりによって1つの特定用画像PICが形成される以上は、上述した(1)に準じた効果を得ることはできる。
・第1画像要素PIC1を表示する表示部11aは、画像表示層11の発色によって形成された部分でなくてもよい。表示部は、例えば、上述した表面画像部21、裏面画像部22、および、基材画像部23と同様、インキやトナーによって形成されてもよい。この場合には、画像表示層11は、レーザー光線の照射によって発色する特性を有しなくてよく、また、表示部は、第1基材14、第2基材15、画像表示層11、および、第3基材16をラミネートする前に、画像表示層に形成されればよい。