以下、本発明を実施するための形態について添付図面を参照して説明する。まず、図1〜図3を参照して、本発明の一実施形態である潮流計12の概略について説明する。図1は、その潮流計12の構成を概略的に示す概略図であり、図2は、潮流計12が搭載された船舶11によって、水中の潮流の速度を計測する場合の状態を側面より示す模式図であり、図3は、同計測を行う場合の状態を斜視した模式図である。
潮流計12は、図1〜図3に示す通り船舶11に搭載され、使用者により設定された水中の深度での該船舶11の周囲における潮流の速度(速さと方向)を計測するものである。潮流計12は、海における潮流だけでなく、湖や池、川等における水中の水の流れの速度も計測できる。この潮流計12は、船舶11が旋回しても、潮流の速度を精度よく計測できることを特徴としている。以下、その詳細について説明する。
潮流計12は、本体13と、本体13に設けられた操作ボタン14と、本体13に一体形成された表示装置15と、超音波ビームTBを送受信する振動子31(図5参照)を有する送受波ユニット16と、送受波ユニット16を昇降させる昇降装置17とを有している。本体13と、操作ボタン14と、表示装置15とは、船舶11の操舵室内に配置されるとともに、送受波ユニット16と昇降装置17とは、船舶11の船底内に配置されている。
操作ボタン14は、使用者によって操作可能なボタンであり、使用者が潮流計12に対し各種設定を行う場合に操作されるものである。例えば、潮流の計測対象となる深度(以下「解析深度」という)が、操作ボタン14によって使用者により設定される。解析深度は複数設定可能に構成されており、解析深度が複数設定された場合には、各々の解析深度において潮流の速度が計測される。
送受波ユニット16は、昇降装置17によって昇降されることで、船舶11の船底から水中に対して出没自在となっている。潮流計12は、設定された解析深度における潮流の速度を計測する場合、昇降装置17を駆動して送受波ユニット16を船舶11の船底から突出させ、送受波ユニット16から細いビーム状の超音波ビームTBを送信(放射)する。潮流計12は、超音波ビームTBの送信方向にあるプランクトン等の散乱体Gから反射されたその超音波ビームTBの反射波を送受波ユニット16により受信する。
送受波ユニット16は、全周型ソナーによって構成されており、送受波ユニット16により送受信される超音波ビームTBの方位角δ(スキャン角、図3参照)と俯角θ(チルト角、図2参照)とを変更できる。
ここで、方位角δ(スキャン角)とは、船舶11が浮かぶ水面を上面視した場合の超音波ビームTBの送受信方向を表す角度である。本実施形態では、上記水面を上面視した場合に、船舶11の前方方向(船舶11が前進する方向、船首方向)に超音波ビームTBを送受信するときを0度とし、超音波ビームTBの送受信方向が船舶11の時計回りに変化するにつれて方位角δが増加するように、方位角δの大きさを定義する。
また、俯角θ(チルト角)とは、超音波ビームTBの送受信方向と船舶11が浮かぶ水面(水平面)とがなす角度であり、超音波ビームTBを水面(水平面)と平行に送受信する場合を0度とし、超音波ビームTBの送受信方向が水面(水平面)から離れて水面と垂直な方向に向くにつれて俯角θが増加するように、俯角θの大きさを定義する。
潮流計12は、潮流の速度を計測する場合、送受波ユニット16を駆動して直交する4つの方向に超音波ビームTBを送信する。このとき、潮流計12は、超音波ビームTBの俯角θを所定の角度(例えば、60°)に設定しつつ、水面を上面視した場合の超音波ビームTBの送受信方向が、東西南北を基準とした所定の方位(本実施形態では、北東/南東/南西/北西の4つの方位)となるように、各々に対して方位角δ1,δ2,δ3,δ4(以下、まとめてδm(m=1〜4)と称す)を設定して、各々の方向(4方向)に順次超音波ビームTBを送信する。
なお、本実施形態では、潮流の速度を計測する場合に、超音波ビームTBの俯角θを所定の角度に設定するが、このとき常に固定の角度に設定してもよいし、潮流の速度を計測する深度(解析深度)に応じて超音波ビームTBの俯角θを設定するようにしてもよい。例えば、解析深度が浅い場合は超音波ビームTBの俯角θを小さく設定し、解析深度が深い場合は超音波ビームTBの俯角θを大きく設定してもよい。
このように解析深度に応じて超音波ビームTBの俯角θを設定することにより、深度の深い位置での潮流の速度を計測する場合は超音波ビームTBを深度の深い位置まで届かせる一方、浅場の潮流の速度を計測する場合は、超音波ビームTBの俯角θを小さく設定することで、計測対象となる深度へ超音波ビームTBが届くまでの時間(距離)を長くすることできる。よって、超音波ビームTBのパルス幅やドップラシフト周波数を計測するために必要な周波数解析幅を長く設定できるので、浅場の潮流の速度を計測する場合であっても周波数分解能の低下を防ぐことができる。また、超音波ビームTBの俯角θを小さく設定することで、速度分解能そのものを高めることができる。その結果、深度の深い場所のみならず深度の浅い場所の潮流の速度を、精度よく計測できる。
潮流計12は、各方向に送信された超音波ビームTBにおいて、一の解析深度付近にある水塊中の散乱体Gから反射された超音波ビームTBの反射波を送受波ユニット16にて受信する。そして、受信した各反射波のドップラシフト周波数を導出し、その導出したドップラシフト周波数に基づいて、その一の解析深度における潮流の速度を算出する。
潮流計12は、複数方向(本実施形態では4方向)に送受信された超音波ビームTBのドップラシフト周波数に基づいて潮流の速度を算出することにより、潮流の速度の速さと方向(ベクトル)が把握できる。このようにして、操作ボタン12により設定された解析深度における潮流の速度が算出されると、その算出された速度が、その他の情報(例えば、解析深度、船舶11の速度、船舶11下の水深、水温等)とあわせて表示装置15に表示され、使用者に示される。
潮流計12は、コンパス18及び傾斜計19と接続可能に構成されている。コンパス18及び傾斜計19は、船舶11内に固定して設置される。
コンパス18は、船舶11の船首が向く方角(東西南北を基準とした方位)を出力するものであり、ジャイロスコープを用いたジャイロコンパスにより構成される。潮流計12は、コンパス18より船舶11の船首が向いている方角を取得すると、その船舶11の船首の方角から、超音波ビームTBの送受信方向が北東/南東/南西/北西の4つの方位となるように、超音波ビームTBの方位角δmを設定する。これにより、船舶11が旋回したとしても、常に同一の水塊から反射波を得てドップラシフト周波数を導出し、潮流の速度を算出できる。従って、計測毎の計測結果のばらつきが抑えられ、長時間の平均処理も不要となるので、潮流の速度を精度よく計測できる。方位角δmの算出方法については、図7に示す潮流計測処理の説明の中で説明する。
なお、コンパス18は、必ずしも船舶11の船首が向く方角を出力するものである必要はなく、船舶11において所定の方向(例えば、船尾,右舷,左舷など)が向く方角を出力するものであればよい。また、コンパス18は、ジャイロコンパスに限らず、2つのGPS(Global Positioning System)用アンテナの相対的な位置関係から方角を計算するGPSコンパス、地磁気センサを利用した電子コンパス等によって構成されてもよい。
傾斜計19は、船舶11の傾きに関する情報を出力するものである。船舶11は波等の影響を受けて傾き(揺れ)が発生する。傾斜計19は、その船舶11の傾きに関する情報として、船舶11のロール角β及びピッチ角αを出力する。
ここで、図4を参照して、傾斜計19が出力するロール角β及びピッチ角αの定義を説明する。図4(a)は、ロール角β及びピッチ角αの定義を説明するために船舶11に設定したxyz軸を示した図であり、図4(b)は、船舶11を後ろ側から見た場合における傾斜計19から出力される船舶11のロール角βを説明するための図であり、図4(c)は、船舶11を左舷側から見た場合における傾斜計19から出力される船舶11のピッチ角αを説明するための図である。
なお、本説明において、図4(a)に示す通り、船舶11の左右方向(船舶11が浮かぶ水面を上面視した場合の、船舶11の船首船尾方向と直交する方向。以下同じ。)をx軸とし、船舶11の左舷方向を負の方向、船舶11の右舷方向を正の方向とする。また、船舶11の前後方向(船首船尾方向。以下同じ。)をy軸とし、船舶11の船尾方向を負の方向、船舶11の船首方向を正の方向とする。また、船舶11の上下方向(船舶11が浮かぶ水面と直行する方向)をz軸とし、船舶11の下方向を負の方向、船舶11の上方向を正の方向とする。
傾斜計19から出力されるロール角βは、図4(b)に示す通り、船舶11に設定されたy軸(船舶11の前後方向)を回転軸とする船舶11の回転角を示すもので、船舶11の右舷側(x軸の正側)が水平面よりも下側に傾いている場合を正とし、船舶11の右舷側が水平面よりも上側に傾いている場合を負とする。
傾斜計19から出力されるピッチ角αは、図4(c)に示す通り、船舶11に設定されたx軸(船舶11の左右方向)を回転軸とする船舶11の回転角を示すもので、船舶11の船首側(y軸の正側)が水平面よりも上側に傾いている場合を正とし、船舶11の船首側が水平面よりも下側に傾いている場合を負とする。
なお、傾斜計19により出力される船舶11の傾きに関する情報は、図4(b)及び(c)にて定義したピッチ角α及びロール角βである必要は必ずしもなく、船舶11の傾き(揺れ)を表す指標であれば任意のものであればよい。この場合、その傾斜計19から出力される船舶11の傾きに関する情報に基づいて、図4(b)及び(c)にて定義したピッチ角α及びロール角βを算出してもよい。
例えば、傾斜計19は、ピッチ角α及びロール角βの角速度(単位時間当たりの変化の度合い)を示すピッチレート及びロールレートを出力するものであってもよい。この場合、潮流計12は、傾斜計19より取得したピッチレート及びロールレートをそれぞれ積分することによって、船舶11のピッチ角α及びロール角βを得てもよい。
次いで、図5を参照して、送受波ユニット16の詳細構成について説明する。図5は、送受波ユニット16の断面を模式的に示した断面図である。送受波ユニット16は、上端が開口され下端部が半球状をなす有底円筒状の下ケース21と、下端が開口され上端部が円板状をなす有蓋円筒状の上ケース22と、上ケース22の下端開口及び下ケース21の上端開口を閉塞する円板状の蓋体23とにより構成される。蓋体23の上面と上ケース22とで上側収納空間24が形成され、蓋体23の下面と下ケース21とで下側収納空間25が形成されている。
蓋体23の中央部には、貫通孔26が形成されている。蓋体23上の中央部にはステッピングモータによって構成されたスキャンモータ27が固着され、スキャンモータ27の下面からはスキャンモータ27の出力軸27aが、貫通孔26に回転可能に挿通された状態で真下に向かって延びている。出力軸27aの先端(下端)は、下側収納空間25の上部まで達している。
出力軸27aの先端には、円板状の支持板28が設けられており、支持板28の上面の中心部が出力軸27aの先端に接続されている。支持板28の下面には、略逆U字状をなす支持フレーム29が設けられており、支持フレーム29の下端部間には、水平に延びる回転軸30が回転可能に架設されている。
回転軸30の中央部には、細いビーム状の超音波ビームTBを1つの方向に送信し、その送信した超音波ビームTBの反射波を受信可能な振動子31が固着されている。回転軸30における振動子31と隣り合う位置には、略半円状のチルト歯車32が固着されており、回転軸30、振動子31及びチルト歯車32は、互いに一体して回転するように構成されている。
支持フレーム29の上端部には、ステッピングモータによって構成されたチルトモータ33が固着されている。チルトモータ33は、チルト歯車32側に向かって延びる出力軸33aを備えている。出力軸33aの先端には、小歯車33bが設けられ、小歯車33bは、チルト歯車32と噛合している。
スキャンモータ27が駆動されると、出力軸27aが回転し、それに伴って支持板28、支持フレーム29、及び、回転軸30が出力軸27aを軸として一体して回転することで、回転軸30に固着された振動子31が、やはり出力軸27aを軸として回転する。
これにより、振動子31による超音波ビームTBの送信方向は、船舶11が浮かぶ水面を上面視した場合に時計回り又は反時計回りに変化させることができる。即ち、スキャンモータ27を駆動することにより、振動子31によって送信される超音波ビームTBの方位角δ(スキャン角)が変更される。
一方、チルトモータ33が駆動されると、出力軸33aが回転し、それに伴って小歯車33bが回転して、その小歯車33bと噛合するチルト歯車32が回転することで、チルト歯車32が固着された回転軸30がチルト歯車32の回転に合わせて回転し、その回転軸30に固着された振動子31が回転軸30を軸として回転する。
これにより、振動子31の向く方向(振動子31から送信される超音波ビームTBの送信方向)と船舶11が浮かぶ水面(水平面)とのなす角度である俯角θ(チルト角)が、チルトモータ33を駆動することによって、変更される。
次いで、図6を参照して、潮流計12の電気的構成について説明する。図6は、潮流計12の電気的構成を示したブロック図である。潮流計12の本体13(図1参照)は、制御装置50を有している。制御装置50は、潮流計12の動作を制御するものである。制御装置50は、図6に示す通り、CPU(Central Proccesing Unit)51と、ROM(Read Only Memory)52と、RAM(Random Access Memory)53とを有しており、それらがバスライン55を介して入出力ポート54に接続されている。
入出力ポート54には、潮流計12を構成する操作ボタン14、表示装置15及び昇降装置17のほか、コンパス18及び傾斜計19(図1参照)が接続される。また、送受波ユニット16を構成する上述のスキャンモータ27及びチルトモータ33(図5参照)が、モータドライバ61を介して入出力ポート54と接続され、振動子31(図5参照)が、送受信回路62を介して入出力ポート54と接続される。
CPU51は、ROM52に記憶されたプログラムデータ52aに従って、潮流計12の動作を制御するための各種演算を実行する演算装置であり、例えば、図7に示す潮流計測処理を実行する。潮流計測処理の詳細については、図7を参照して後述する。
ROM52は、CPU51によって実行されるプログラムデータ52aを記憶するほか、固定値データ等を記憶するための書き換え不能な不揮発性のメモリである。なお、書き換え不能なROMに代えて、書き換え可能な不揮発性のメモリ(例えば、フラッシュメモリ)を用いてもよい。
RAM53は、書き換え可能な揮発性のメモリであり、CPU51によるプログラムの実行時に各種のデータを一時的に記憶する。RAM53は、船首方位データ53a,設定方位角データ53b,ロール角データ53c,ピッチ角データ53d,補正方位角データ53e,補正俯角データ53f,潮流データ53gを少なくとも記憶する。船首方位データ53a,設定方位角データ53b,ロール角データ53c,ピッチ角データ53d,補正方位角データ53e,補正俯角データ53fは、いずれも、潮流の速度を計測するための超音波ビームTBを送受信する毎に更新される。また、潮流データ53gは、潮流の速度の計測が行われる毎に更新される。
船首方位データ53aは、船舶11の船首が向いている方角を示すデータである。潮流の速度の計測の処理が開始されると、CPU51により、コンパス18から船舶11の船首が向いている方角に関する情報が取得され、その情報が船首方向データ53aとしてRAM53に格納される。
設定方位角データ53bは、潮流の速度の計測を行うために4方向に送受信する超音波ビームTBの各々の方位角δmを示すデータである。潮流の速度の計測が行われる場合に、船首方位データ53aにより示される船舶11の船首が向いている方角に基づいて、潮流の速度の計測のために送受信する4方向の超音波ビームTBの各方位角δmが、CPU51により決定され、その決定された方位角δmを示すデータが、設定方位角データ53bとしてRAM53に格納される。
ロール角データ53cは、船舶11のロール角βを示すデータである。ピッチ角データ53dは、船舶11のピッチ角αを示すデータである。潮流の速度を計測するために超音波ビームTBを一方向へ送受信する毎に、傾斜計19より出力される船舶11のロール角β及びピッチ角αがCPU51により取得され、取得したロール角β及びピッチ角αを示すデータが、それぞれロール角データ53c及びピッチ角データ53dとしてRAM53に格納される。
補正方位角データ53eは、設定方位角データ53bとして設定された、潮流の速度を計測するために送信される4方向の超音波ビームTBのうち、これから送信すべき方向の方位角δmに対して、船舶11のロール角β及びピッチ角αを考慮して算出(補正)した、船舶11の船体を基準とする各放射方位角δm´を示すデータである。補正俯角データ53fは、該超音波ビームTBの俯角θ(例えば、60°)に対して、船舶11のロール角β及びピッチ角αを考慮して算出(補正)した、船舶11の船体を基準とする放射俯角θ´を示すデータである。
潮流の速度の計測が行われる場合に、計測のために送信される4方向の超音波ビームTBの方位角δmがCPU51により設定方位角データ53bとしてRAM53に設定され、また、それらの超音波ビームTBの俯角θが所定の角度に設定されるが、船舶11は波の影響等による揺れによって傾くと、設定された方位角δm及び俯角θで超音波ビームTBを送受信しても、所望の方向に超音波ビームTBを送受信できない。そこで、CPU51は、超音波ビームTBを各方向へ送受信する場合に、各々の方向において超音波ビームTBを送信する直前に船舶11のロール角β及びピッチ角αを傾斜計19より取得する。そして、当該送受信方向に対して設定された方位角δmと俯角θとに対し、船舶11のロール角β及びピッチ角αを考慮した補正を行い、船舶11の船体を基準とした超音波ビームTBの放射方位角δm´及び放射俯角θ´を、それぞれ補正方位角データ53e及び補正俯角データ53fとしてRAM53に格納する。これにより、潮流計12は、放射方位角δm´及び放射俯角θ´の方向に超音波ビームTBを送受信することで、所望の方向に超音波ビームTBを送受信する。
潮流データ53gは、計測された潮流の速度を示すデータである。潮流の速度が計測される場合、CPU51により、俯角が補正俯角データ53fにて示される放射俯角θ´とされつつ、放射方位角が補正方位角データ53eにて示されるδ1´→δ2´→δ3´→δ4´と順次変えられながら、4方向に超音波ビームTBが送受信される。そして、各方向における反射波のドップラシフト周波数に基づいて潮流の速度が算出される。この算出された潮流の速度を示すデータが、潮流データ53gとしてRAM53に格納される。この潮流データ53gに基づいて、計測した潮流の速度がCPU51により表示装置81へ表示される。
次に、図7を参照して、制御装置50が実行する潮流計測処理の詳細について説明する。図7は、潮流計測処理を示すフローチャートである。潮流計測処理は、電源がオンされた場合、または、潮流の速度の計測が開始される場合にCPU51によって実行が開始される。この潮流計測処理は、電源がオフされるまで、または、使用者による操作ボタン14の操作などによって潮流の速度の計測を終了するまで、継続して実行され続ける。
潮流計測処理では、まず、昇降装置17を駆動し、送受波ユニット16を降下させる(S11)。これにより、送受波ユニット16が船舶11の船底から水中に突出され、振動子31による超音波ビームTBの送受信が可能となる。
次に、RAM53に変数mの領域を確保して、該変数mに1を代入する(S12)。ここで、変数mは、潮流の速度を計測する場合に、4つの放射方位角δm´(m=1〜4)で超音波ビームTBを送受信するために用意されたものである。
次いで、超音波ビームTBの送受信タイミングとなったか否かを判断する(S13)。本実施形態では、所定の時間間隔毎(例えば、1秒毎)に一方向へ超音波ビームTBの送受信を実行する。S13の処理では、前回の超音波ビームTBの送受信タイミングから所定の時間が経過したかを判断することによって超音波ビームTBの送受信タイミングとなったか否かを判断し、所定の時間が経過していないと判断される間は(S13:No)、S13の処理を繰り返し実行する。一方、S13の処理の結果、前回の超音波ビームTBの送受信タイミングから所定の時間が経過したと判断される場合は、超音波ビームTBのの送受信タイミングとなったと判断し(S13:Yes)、S14の処理へ移行する。
潮流計測処理の実行が開始されてから初めてS13の処理が実行される場合は、S13の処理では超音波ビームTBの送受信タイミングとなったと判断し(S13:Yes)、S14の処理へ移行する。
なお、潮流の計測を実行する所定の時間間隔は、予めプログラム等により固定されたものであってもよいし、操作ボタン14により使用者によって変更可能なものであってもよい。
S14の処理では、コンパス18より船舶11の船首が向いている方角に関する情報を取得し、その情報を船首方位データ53aとしてRAM53に格納する(S14)。そして、潮流の速度を計測するためにこれから送受信する方向の超音波ビームTBの方位角δm(mは、S12及び後述するS23の処理にて設定された値)を、船首方位データ53aにより示される船舶11の船首が向いている方角に基づいて設定する(S15)。S15の処理で設定される方位角δmは、上述した通り船舶11の船首方向を基準とした方位角である。
ここで、図8を参照して、超音波ビームTBの方位角δmの設定方法について説明する。図8(a)は、潮流の速度を計測する場合の超音波ビームTBの送受信方向を説明する図であり、図8(b)は、船舶11が旋回した場合に北東へ超音波ビームTBを送受信するために設定すべき方位角δmの算出方法を説明するための図である。
図8(a),(b)に示す通り、潮流計12は、船舶11の船首がどの向きに向いていたとしても、潮流の速度の計測を行う場合に、超音波ビームTBを北東/南東/南西/北西の4方向へ送受信する。そこで、S14では、超音波ビームTBの方位角δmを、船首方位データ53aに格納された船舶11の船首が向いている方角に基づいて算出する。例えば、方角を示す角度として、北の方角を0°、東の方角を90°、南の方角を180°、西の方角を270°とし、北→東→南→西→北へと方角が変化するにつれて0°以上360°未満の範囲で増加するように定義した場合、北東の方角はδA1=45°と表される。そして、船首方位データ53aに格納された船舶11の船首が向いている方角をδBとすると、図8(b)に示すように、変数mが1の場合に北東へ超音波ビームTBを送信するための方位角δ1は、次の式(1)で算出される。また、変数mが2の場合に超音波ビームTBを南東へ送信するための方位角δ2、変数mが3の場合に超音波ビームTBを南西へ送信するための方位角δ3、変数mが4の場合に超音波ビームTBを北西へ送信するための方位角δ4は、それぞれ式(2)〜(4)で算出される。
算出された方位角δ
mは、設定方位角データ53bとしてRAM53に格納される。
このように超音波ビームTBの方位角δmを算出する必要があるのは、方位角が船舶11の船首方向を基準として定義されているためである。上記の式(1)〜(4)で示した式を用いて、船舶11の船首が向いている方角に基づき、送受信する超音波ビームTBの方位角δmを算出することによって、図8(b)に示す通り、その超音波ビームTBを常に北東/南東/南西/北西の方角へ送受信することができる。
これにより、潮流計12が搭載された船舶11が旋回したとしても、同一の水塊から発生する超音波ビームTBの反射波を利用して、ドップラシフト周波数を導出できる。よって、計測毎の計測結果のばらつきが抑えられ、長時間の平均処理も不要となるので、船舶11が旋回した場合であっても、潮流の速度を精度よく計測できる。
S15の処理が終了すると、次いで、傾斜計19より船舶11のロール角β及びピッチ角αを取得する(S16)。そして、S15の処理により設定された超音波ビームTBの方位角δmと、所定の角度が設定される俯角θとを、S16の処理にて取得したロール角β及びピッチ角αを考慮して補正し、船舶11の船体を基準とした超音波ビームTBの放射方位角δ´と放射俯角θ´とを算出する(S17)。
具体的には、以下に説明する演算を行うことにより、超音波ビームTBの方位角δm及び俯角θの補正が行われる。この演算では、図4(a)に示す通り、船舶11の左右方向をx軸とし、船舶11の前後方向をy軸とし、船舶11の上下方向をz軸とする。そして、超音波ビームTBの送信源(超音波ビームTBを送信するときの振動子31の位置)を原点として、船舶11の右舷側をx軸の正とし、船舶11の前方をy軸の正とし、船舶11の上方をz軸の正とする。
ここで、超音波ビームTBを長さ「1」のベクトルとして考え、超音波ビームTBの目標放射角をxyz直交座標に変換すると、以下の式(5)の通りになる。
船舶11がロール角β及びピッチ角αで傾いていた(回転していた)場合、その船舶11の傾きに合わせて超音波ビームTBも傾いて送受信されることになる。そこで、船舶11から送受信される超音波ビームTBの方位角δ
m及び俯角θを、その船舶11のロール角β及びピッチ角αだけ逆回転させる、つまり、β´=−β,α´=−αだけ回転させる補正を行うことで、予定していた方向に超音波ビームTBを送受信させることができる。即ち、補正後の超音波ビームTBは、XYZ直交座標において次の式(6)で表される。
式(6)で求められた各座標を次の式(7),(8)によって極座標に戻すことにより、船舶11の船体を基準とした超音波ビームTBの放射方位角δ
m´及び放射俯角θ´を算出できる。
算出された放射方位角δ
m´及び放射俯角θ´は、それぞれ補正方位角データ53e及び補正俯角データ53fとしてRAM53に格納される。
上述した通り、潮流計12は、潮流の速度を計測する場合に、超音波ビームTBの俯角θを所定の角度に設定しつつ、水面を上面視した場合の超音波ビームTBの送受信方向が北東/南東/南西/北西の4つの方位となるように各方位角δmを設定して、各々の方向に順次超音波ビームTBを送信する。しかしながら、波の影響等により船舶11に揺れが生じて傾くと、設定した方位角δm及び俯角θで超音波ビームTBを送受信したとしても、その方位角δm及び俯角θを設定した場合に予定していた水塊からずれた位置に、超音波ビームTBが送信されてしまう。
そこで、潮流計12は、傾斜計19より取得したピッチ角α及びロール角βを考慮して、設定した超音波ビームTBの各方位角δm及び俯角θを補正し、当所予定した水塊へ超音波ビームTBが送信されるように、船舶11の船体を基準とした放射方位角δm´及び放射俯角θ´にて超音波ビームTBを送信するようにしている。これにより、船舶11が揺れながら旋回したとしても、常に同一の水塊から発生する反射波を利用してドップラシフト周波数を導出できるので、潮流の速度を精度よく計測できる。
S17の処理が終了すると、次いで、補正方位角データ53eにて示される船舶11の船体基準の放射方位角δm´及び補正俯角データ53fにて示される同船体基準の放射俯角θ´で超音波ビームTBが送受信されるように、モータドライバ61を介してスキャンモータ27及びチルトモータ33を駆動する(S18)。これにより、振動子31が出力軸27a(図5参照)を軸として回転され、振動子31から送受信される超音波ビームTBの方位角を放射方位角δm´とし、且つ、振動子31が回転軸30(図5参照)を軸として回転され、振動子31から送受信される超音波ビームTBの俯角を放射俯角θ´とすることができる。
その後、送受信回路62を介して振動子31から超音波ビームTBを送信し、その超音波ビームTBに対して、散乱体Gから反射された反射波を該振動子31にて受信する(S19)。振動子31にて受信された反射波は送受信回路62に入力され、送受信回路62により受信信号が生成される。その受信信号が制御装置50に入力され、RAM53に一時的に格納される。
次いで、S19の処理によって送受信された超音波ビームTBについて、その反射波の受信によって生じる受信信号に基づき、解析深度付近の水塊中にある散乱体Gから反射された反射波の周波数解析を実行し、ドップラシフト周波数を算出して、当該解析深度における潮流の速度vmを算出する(S20)。ここで潮流の速度vmは、変数mに対応する方角に送受信された超音波ビームTBに基づいて算出した潮流の速度であることを示す。
S20により算出された潮流の速度vmは、水面基準でみた場合の俯角θと、放射方位角δm´とをもつ超音波ビームTBの送受信によって算出されたものであり、それによって算出された潮流の速度vmは、俯角θと放射方位角δm´との方向によって示される成分である。
そこで、S21の処理では、水面(水平面)に対して平行に流れる潮流の速度を求めるために、S23の処理で算出した各超音波ビームTBに対応する潮流の速度vmに対して、以下の式(9)による俯角補正を行い、潮流の速度の俯角0度(水平方向)と対応する放射方位角δm´とで示される方向の成分vm’を算出して、RAM53に保持する(S21)。
vm´=vm/cosθ ・・・(9)
次いで、変数mが4か否かを判断し(S22)、変数mが4でなければ(S22:No)、変数mに1加算して(S23)、S13の処理に戻る。そして、S13〜S23の処理を、S22の処理により変数mが4であると判断されるまで繰り返す。これにより、俯角が水面基準で所定の角度θとなるように船体基準の放射俯角θ´を設定しつつ、放射方位角をδ1´,δ2´,δ3´,δ4´と変化させながら、4方向に超音波ビームTBが送受信される。そして、各方向において、俯角0度(水平方向)と、対応する放射方位角δm´とで示される方向の、潮流の速度の成分vm´が算出され、RAM53に保持される。
一方、S22の判断により、変数mが4であると判断されると(S22:Yes)、S24の処理へ移行する。S24の処理では、S21の処理によって算出された俯角0度と各方位角δm´とで示される4つの方向の潮流の速度の成分vm´をベクトル合成し、解析深度での潮流の速度(速さと方向)を算出して、その算出した潮流の速度を示すデータを潮流データ53gとしてRAM53に格納する(S24)。
その後、S24の処理にてRAM53に格納された潮流データ53gにより示される潮流の速度を解析深度と共に表示装置15に表示する(S25)。そして、S12の処理に戻り、再び超音波ビームTBの送受信タイミングとなると、S12〜S25の処理が実行され、潮流の速度の計測が実行される。
以上説明した通り、本実施形態における潮流計12によれば、潮流の速度を計測する場合、振動子31により所定の方向へ超音波ビームTBが送信され、計測対象となる解析深度に位置する水塊にある散乱体G等からの反射波が、該振動子31によって受信される。その振動子31が反射波を受信して生じる受信信号に基づいて、ドップラシフト周波数がCPU51により導出され、そのドップラシフト周波数に基づいて潮流の速度が算出される。
ここで、潮流の速度を計測する場合に、前記所定の方向として東西南北を基準とした所定の方位、即ち、北東/南東/南西/北西の方角に超音波ビームTBが送受信されるように、振動子31が駆動される。これにより、潮流の速度を計測する場合に超音波ビームTBが、東西南北を基準とした所定の方位に固定されるので、たとえ船舶31が旋回したとしても、旋回前と旋回後とで同一の水塊から発生する反射波を利用してドップラシフト周波数を導出できる。よって、計測毎の計測結果のばらつきが抑えられ、長時間の平均処理も不要となるので、潮流計12が搭載された船舶11が旋回する場合であっても、潮流の速度を精度よく計測できる。
また、潮流計12の搭載される船舶11の船首が向いている方角に関する情報が、コンパス18より取得され、潮流の速度を計測する場合に、その取得された船舶の方位に関する情報に基づいて、北東/南東/南西/北西の方角に超音波ビームTBが送受信されるように、振動子31が駆動される。これにより、船舶11が旋回したとしても、潮流の速度を計測する都度、船舶11の船首が向いている方角に関する情報が取得されるので、その船舶11の船首が向いている方角に基づいて、容易に且つ正確に、超音波ビームTBが送受信される所定の方向を、東西南北を基準とした所定の方位に固定させることができる。
また、潮流計が搭載される船舶11の傾きに関する情報としてロール角βとピッチ角αとが、船舶11に搭載された傾斜計19よりCPU51によって取得される。そして、ピッチ角α及びロール角βを考慮して、予定した水塊へ超音波ビームTBが送信されるように、振動子31が駆動される。これにより、船舶11が揺れながら旋回したとしても、常に同一の水塊から発生する反射波を利用してドップラシフト周波数を導出できるので、潮流の速度を精度よく計測できる。
また、潮流の速度を計測する場合に、北東/南東/南西/北西と複数の方角に超音波ビームTBが送受信されるように、振動子31が駆動される。そして、その振動子31の駆動により複数の方角でそれぞれ受信された各反射波のドップラシフト周波数に基づき、潮流の速度が算出される。このように、潮流の速度を高い精度で計測するために、複数の方角に超音波ビームTBを送受信するように構成した場合に、各々の超音波ビームTBの送受信は東西南北を基準とした所定の方位に固定される。よって、たとえ船舶11が旋回したとしても、各方向に送受信された超音波ビームTBのそれぞれにおいて、同一の水塊から発生する反射波を利用してドップラシフト周波数を導出できるので、計測される潮流の速度の精度を高く維持できる。
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、上記実施形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。
上記実施形態では、潮流の速度を計測する場合の超音波ビームTBの送受信方向が、北東/南東/南西/北西の方角となるように振動子31を制御する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、超音波ビームTBの送受信方向が東西南北を基準とした所定の方位となるように振動子31を制御すればよい。例えば、超音波ビームTBの送受信方向が北/東/南/西の方角となるように振動子31を制御してもよい。
また、上記実施形態では、1回の潮流の速度の計測で4方向に超音波ビームTBを送受信する場合について説明したが、超音波ビームTBを送受信する方向は必ずしも4方向に限られるものではなく、2以上の方向に超音波ビームTBが送受信されれば、方向を含む潮流の速度を測定できる。ここで、例えば1回の潮流の速度の計測で2方向に超音波ビームTBを送信する場合は、その超音波ビームTBの送受信方向が、例えば北と南といった東西南北を基準とした所定の方角となるように、振動子31を制御すればよい。これにより、船舶11が旋回したとしても、同一の水塊から発生する反射波を利用してドップラシフト周波数を導出できるので、潮流の速度を精度よく計測できる。
また、上記実施形態では、潮流の速度を計測する場合の超音波ビームTBの送受信方向が、必ず北東/南東/南西/北西に固定される場合について説明した。これに対し、次のようにして、潮流の速度を計測する場合の超音波ビームTBの送受信方向を決定してもよい。即ち、潮流計12の電源がオンされたとき、または、図7に示す潮流計測処理が開始されたときに、船舶11の船首(又は右舷,左舷,船尾といった特定の方向)が向いている方角δini(以下、初期方角と称す)をコンパス18より取得する。そして、潮流の速度を計測する場合の超音波ビームTBの送受信方向が、初期方角δiniを基準とし、例えば方角(δini+φ),(δini+φ+90°),(δini+φ+180°),(δini+φ+270°)となるように、振動子31を制御する(φは、例えば0°以上90°未満の任意の値とする)。これによっても、超音波ビームTBの送受信方向が、東西南北を基準とした所定の方位に固定されるので、船舶11が旋回したとしても、同一の水塊から発生する反射波を利用してドップラシフト周波数を導出でき、潮流の速度を精度よく計測できる。
また、潮流の速度を計測するタイミングにおける船舶11の船首方向(または、右舷,左舷,船尾といった特定の方向)について、潮流計12の電源がオンされたとき、または、図7に示す潮流計測処理が開始されたときからの変化量χを取得し、4方向へ送受信する超音波ビームTBの方位角δm(m=1〜4)を以下の式(10)〜(13)を用いて設定してもよい。
δ1=φ−χ ・・・(10)
δ2=φ+90°−χ ・・・(11)
δ3=φ+180°−χ ・・・(12)
δ4=φ+270°−χ ・・・(13)
ここで、φは例えば0°以上90°未満の任意の値とする。これにより、潮流の速度を計測するために4方向に送受信される超音波ビームTBの送受信方向は、常に、潮流計12の電源がオンされたとき、または、図7に示す潮流計測処理が開始されたときの船首が向く方角からφだけ時計回りに回った方角と、その方角から90°,180°,及び270°に時計回りに回った方角とに固定される。即ち、この場合も、超音波ビームTBの送受信方向が、東西南北を基準とした所定の方位に固定されるので、船舶11が旋回したとしても、同一の水塊から発生する反射波を利用してドップラシフト周波数を導出でき、潮流の速度を精度よく計測できる。
なお、この場合、変化量χはコンパス18の出力によって算出してもよい。また、コンパス18に代えて又はコンパス18とは別に、船舶11のヨーレートを出力するヨーレートセンサを船舶11に設け、ヨーレートセンサが出力するヨーレートを積分することにより、変化量χを算出してもよい。また、傾斜計19がヨーレートを出力するように構成し、そのヨーレートを積分することにより、変化量χを算出してもよい。
上記実施形態では、超音波ビームTBを送受信する毎に、その送受信の直前に船舶11が向いている方角を取得し、その取得した船舶11が向いている方向に基づいて、これから送信する超音波ビームTBの送受信方向が東西南北を基準とした所定の方角となるように、その超音波ビームTBの方位角を設定する場合について説明した。これに対し、1回の潮流の計測を行う毎に船舶11が向いている方角を取得し、その取得した船舶11が向いている方角に基づいて、4方向に送受信する超音波ビームTBの送受信方向が東西南北を基準とした所定の方角となるように設定してもよい。これによっても、ほぼ同一の水塊から発生する反射波を利用してドップラシフト周波数を導出できるので、潮流の速度を精度よく計測できる。
この場合であっても、超音波ビームTBを送受信する毎に、その時の船舶11のピッチ角α及びロール角βを傾斜計19より取得して、設定した方位角及び所定の俯角を補正してもよい。これにより、船舶11の旋回速度が速く且つ船舶11の揺れが激しい場合であっても、潮流の速度を精度よく計測できる。また、1回の潮流の計測を行う毎に船舶11が向いている方角を取得し、その取得した船舶11が向いている方角に基づいて、4方向に送受信する超音波ビームTBの送受信方向が東西南北を基準とした所定の方角となるように設定した後、その時の船舶11のピッチ角α及びロール角βを傾斜計19より取得して、設定した方位角及び所定の俯角を補正してもよい。これによっても、ほぼ同一の水塊から発生する反射波を利用してドップラシフト周波数を導出できるので、潮流の速度を精度よく計測できる。
上記実施形態では、傾斜計19より取得したピッチ角α及びロール角βを考慮して、設定した超音波ビームTBの各方位角δm及び俯角θを補正し、当所予定した水塊へ超音波ビームTBが送信されるように、船舶11の船体を基準とした各放射方位角δm´及び放射俯角θ´にて超音波ビームTBを送信する場合について説明した。これに対し、傾斜計19より船舶11のピッチ角α及びロール角βのいずれか一方を取得し、取得したピッチ角α及びロール角βのいずれか一方を考慮して、設定した超音波ビームTBの各方位角δm及び俯角θを補正してもよい。この場合は、ピッチ角α及びロール角βを考慮して超音波ビームTBの各方位角δm及び俯角θを補正する場合と比べると精度は低くなるものの、船舶11が旋回したとしても、ほぼ同一の水塊から発生する反射波を利用してドップラシフト周波数を導出でき、潮流の速度を精度よく計測できる。
また、船舶11の傾き(ピッチ角α,ロール角β)を考慮(補正)せず、予め設定された超音波ビームTBの俯角θと方位角δmとで超音波ビームTBを送受信してもよい。この場合も、ピッチ角α及びロール角βを考慮して設定した超音波ビームTBの各方位角δm及び俯角θを補正する場合と比して精度は低くなるものの、船舶11が旋回したとしても、ほぼ同一の水塊から発生する反射波を利用してドップラシフト周波数を導出できるので、潮流の速度を精度よく計測できる。