JP6928178B2 - 糖のプロピレングリコールまたはプロピレングリコールとエチレングリコールとの混合物への高度に選択的な変換のための連続プロセス - Google Patents

糖のプロピレングリコールまたはプロピレングリコールとエチレングリコールとの混合物への高度に選択的な変換のための連続プロセス Download PDF

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Description

[001]本発明は、プロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)の生産のためのプロセス、詳細には、糖のプロピレングリコールまたはプロピレングリコールとエチレングリコールとの混合物への変換のための高効率の連続プロセスに関する。
[002]プロピレングリコールは、有用な大量生産される化学物質であり、不凍液などの広範囲な用途を有する。現在、プロピレングリコールは、炭化水素原料からグリセリンの水素化分解によって製造される。
[003]Schreckらは、米国特許第9,399,610号で、炭水化物をエチレングリコールおよびプロピレングリコールに変換するための改善された連続プロセスを開示している。彼らは、レトロアルドール触媒を含む第1のゾーンと、レトロアルドールおよび還元触媒を含む第2のゾーンとを有する、炭水化物をグリコールに変換するための反応器の使用を開示している。フィードがアルドースである場合、レトロアルドール反応からのグリコールアルデヒドは、反応器の第2のゾーンでエチレングリコールに水素化される。彼らはまた、炭水化物としてケトースを使用して、プロピレングリコールを生産することも開示している。
米国特許第9,399,610号
[004]それにもかかわらず、炭水化物のグリコールへの変換の選択性をさらに強化するためにはなお課題が残っている。これらの課題は、レトロアルドール反応および水素化に必要な条件下で起こる可能性がある無数の反応、例えば、これらに限定されないが、ヘキシトールまたはペンチトール(本明細書ではアルキトール(alkitol)と称する)への糖の水素化、ならびにメタン、メタノール、エタノール、プロパノール、グリセリン、1,2−ブタンジオール、トレイトール、およびフミンなどの副産物の形成などのために無視できない。一部の副産物は売り物になる可能性があるが、商業的なグレードの仕様を満たすようにそれらを回収することは、コスト高になる可能性がある。
[005]本発明は、レトロアルドールの選択性を強化し、また、炭水化物のプロピレングリコールまたはプロピレングリコールとエチレングリコールとの混合物への水素化変換(hydrogenation conversion)を強化する連続プロセスを提供する。
[006]本発明によれば、反応ゾーンにフィードされる炭水化物の急速な加熱により、アルキトールおよび他の副産物の生産を低減することができる。炭水化物フィードの急速な加熱がプロピレングリコールまたはエチレングリコールとプロピレングリコールとの混合物への変換の選択性の強化をもたらすメカニズムは、十分理解されていない。理論に制限されることは望まないが、約225℃を超える、好ましくは230℃を超える温度で、レトロアルドール触媒の存在下において、レトロアルドール変換の速度は、中間体が副産物へと変換されるのに比べて、プロピレングリコールまたはエチレングリコールに変換される程度に十分に急速となると一部考えられる。
[007]炭水化物フィードの加熱の速度を直接測定することは、加熱が起こる速度に起因する問題がある。温度測定の問題はさらに、加熱されている流体を介した熱物質移動によって混乱を増す。所与の流体内の熱物質移動パラメーターは、これらに限定されないが、加熱方法、温度差、および加熱が起こっているゾーンの物理的構造などの多くの要因に依存すると予想される。さらに、流体の本質的に全ての領域で温度を測定する分析技術は、現実的に利用不可能である。したがって、加熱の速度が十分であるかどうかの確認は、現実的に、プロセスの実施で生成した特定の化合物の相対的な形成を参照することでしか行うことができない。それにもかかわらず、特に、要求される分子比率を有するプロピレングリコールまたはプロピレングリコールとエチレングリコールとの混合物への望ましい変換を確実にするのに対し、糖の異性化、例えばアルドースからケトースまたはケトースからアルドースへの異性化が有害となる場合には、加熱の速度は、炭水化物フィード全体の温度を、約10または15秒未満で、より好ましくは約5秒未満で、一部の場合において約3秒未満で、一部の他の例において約1秒未満で、約170℃から少なくとも225℃に、好ましくは少なくとも230℃に上昇させるのに十分であると考えられる。しかしながら、本発明のプロセスは、望ましいプロピレングリコールのエチレングリコールに対する質量比率を有する生成物を達成するために、炭水化物フィードの意図的な異性化、すなわち、アルドースからケトースまたはケトースからアルドースへの異性化も包含する。
[008]炭水化物フィードが本発明のプロセスに従って急速に加熱されることとなる温度範囲は、170℃未満から230℃を超える範囲である。一部の場合において、炭水化物フィードは、急速な加熱が始まるとき、約150℃未満の温度であってもよく、または約100℃未満の温度であってもよい。一部の場合において、炭水化物フィードがレトロアルドール触媒を含有する場合、炭水化物フィードの急速な加熱が約100℃以前に始まることが好ましい。
[009]本発明の1つの広範な形態によれば、炭水化物を含有するフィードを、プロピレングリコールまたはプロピレングリコールとエチレングリコールとの混合物に変換するための連続プロセスであって、前記フィードは、炭水化物を含有するフィード中の総炭水化物の質量に基づき少なくとも約40質量パーセントのアルドペントース、ヘキサケトース、およびペンタケトースの少なくとも1種を含有し、前記プロセスは、
a.前記炭水化物フィードを、レトロアルドール触媒、水素、および水素化触媒を含有する水性水素化媒体を有する反応ゾーンに連続的または間欠的に通過させる工程;
b.前記水性水素化媒体を、前記反応ゾーン中において水素化条件で維持して、プロピレングリコールと、ペンチトールおよびヘキシトールの少なくとも1種を含むアルキトールと、場合によってエチレングリコールとを含む生成物溶液を提供する工程であって、前記水素化条件は、約230℃から300℃の範囲の温度、レトロアルドール触媒の水素化触媒に対する比率、および水素分圧を含み、これらを組み合わせて前記炭水化物フィードの少なくとも約95パーセントを変換するのに十分である、工程;および
c.前記反応ゾーンから、連続的または間欠的に生成物溶液を引き出す工程
を含み、
前記炭水化物フィードは、少なくとも部分的に水和(hydrated)しており、部分的な水和を維持するのに十分な圧力下にあり;前記炭水化物フィードは、約170℃未満の温度であり;前記炭水化物フィードは、前記反応ゾーンの直前に、またはその中で230℃より高温に加熱され、前記炭水化物フィードを170℃未満から230℃より高温へと加熱する速度は、1:5より大きい、好ましくは約1:2より大きい、時には約1.5:1より大きいプロピレングリコールのエチレングリコールに対する質量比率と;約10:1より大きい、好ましくは約20:1より大きいプロピレングリコールとエチレングリコールとの合計の前記アルキトールに対する質量比率とを有する生成物溶液を提供する程度に十分急速である。
[010]本発明の別の広範な形態によれば炭水化物を含有するフィードを、プロピレングリコールまたはプロピレングリコールとエチレングリコールとの混合物に変換するための連続プロセスであって、前記フィードは、炭水化物を含有するフィード中の総炭水化物の質量に基づき、少なくとも約40、時には少なくとも約50質量パーセントのアルドヘキソースを含有し、前記プロセスは、
a.前記炭水化物フィードを、レトロアルドール触媒、水素、および水素化触媒を含有する水性水素化媒体を有する反応ゾーンに連続的または間欠的に通過させる工程;
b.前記水性水素化媒体を、前記反応ゾーン中において水素化条件で維持して、プロピレングリコールと、ペンチトールおよびヘキシトールの少なくとも1種を含むアルキトールと、場合によってエチレングリコールとを含む生成物溶液を提供する工程であって、前記水素化条件は、約230℃から300℃の範囲の温度、レトロアルドール触媒の水素化触媒に対する比率、および水素分圧を含み、これらを組み合わせて前記炭水化物フィードの少なくとも約95パーセントを変換するのに十分である、工程;および
c.前記反応ゾーンから、連続的または間欠的に生成物溶液を引き出す工程
を含み、
前記炭水化物フィードは、少なくとも部分的に水和しており、部分的な水和を維持するのに十分な圧力下にあり;前記炭水化物フィードは、約170℃未満の温度であり;前記炭水化物フィードは、前記反応ゾーンの直前に、またはその中で230℃より高温に加熱され、前記炭水化物フィードを170℃未満から230℃より高温へのと加熱する速度は、1:5より大きい、好ましくは約1:2より大きい、時には約1.5:1より大きいプロピレングリコールのエチレングリコールに対する質量比率と;約10:1より大きい、好ましくは約20:1より大きいプロピレングリコールとエチレングリコールとの合計の前記アルキトールに対する質量比率を有する生成物溶液を提供する程度に十分遅い。
[011]炭水化物フィードは、それが水性水素化媒体と接触するとき、アルドペントースおよびケトースを生じる炭水化物の少なくとも1つを含有する。アルドペントースは、レトロアルドールで切断されると、グリコールアルデヒドおよびグリセルアルデヒド(glyceraldhyde)を生じる。グリセルアルデヒドは、最終的にプロピレングリコールに変換され得る。ケトースを生じる炭水化物は、ケトースそれ自体であってもよいし、または加水分解されるとケトースまたはケトース前駆体を生じる二糖または多糖またはヘミセルロースであってもよい。本発明の広範な範囲内において、炭水化物フィードはまた、アルドースを生じる炭水化物または他のアルドースを生じる炭水化物を含んでいてもよい。アルドースはケトースに異性化することができ、したがってアルドースは、ケトースを生じる炭水化物であることが理解される。逆に言えば、ケトースは、アルドースと平衡に達するまで異性化することができる。異性化反応の平衡および速度論は、異性化触媒の存在およびタイプ、異性化しようとするアルドースまたはケトースの化学種、温度、存在する他の成分との相互作用、例えば接触異性化条件、及び当業界において周知のフィードの他の条件の影響を受ける。本発明のプロセスの任意選択の実施態様において、炭水化物フィードは、望ましい程度の異性化が達成されるのに十分な時間にわたり異性化条件下で維持される。一般的に、レトロアルドール触媒は異性化も触媒する。したがって、異性化は、必ずしもそうでなくてもよいが、レトロアルドール触媒の存在下で実行することができる。異性化の温度は、約170℃未満であることが多く、好ましくは約100℃から約150℃または160℃までの範囲内である。
[012]多くの例において、アルドペントース、ケトースを生じる炭水化物およびアルドースを生じる炭水化物の合計の、少なくとも約60質量パーセント、一部の場合において少なくとも約70質量パーセントが、プロピレングリコールおよびエチレングリコールに変換される。プロピレングリコールのエチレングリコールに対する質量比率は、炭水化物フィード中の、ケトースを生じるアルドペントースとアルドースを生じる炭水化物の相対的な存在、および異性化の程度に依存するだろう。プロピレングリコールのエチレングリコールに対する質量比率は、約1:5より大きいことが多く、例えば、約1:2より大きく、時には1:1より大きい。炭水化物を含有するフィードが、少なくとも約40または50質量パーセントのケトースを生じる炭水化物、例えばスクロースである場合、プロピレングリコールのエチレングリコールに対する質量比率は、約1.5:1より大きく、例えば、約3:1より大きい。水性水素化媒体1リットル当たり、約120グラムと700または800グラムとの間、好ましくは約150グラムと500グラムの間、例えば、200グラムから400グラムの総炭水化物を提供する炭水化物フィードは、プロピレングリコールのエチレングリコールに対する有利な比率を有し、また、アルキトールと1,2−ブタンジオールとの共生産が低減された生成物溶液を提供することが多い。
[013]多くの例において、生成物中の1,2−ブタンジオールのプロピレングリコールとエチレングリコールとの合計に対する質量比率は、約1:30より小さく、より好ましくは約1:50より小さい。
[014]炭水化物フィードは、少なくとも225℃、好ましくは少なくとも約230℃の温度に加熱される前に、レトロアルドール触媒と混合されていてもよいし、または実質的にレトロアルドール触媒をまったく含んでいなくてもよい。本発明の一部の態様において、炭水化物フィードは、レトロアルドール触媒を含有するであろう。これらの形態において、レトロアルドール反応は、加熱中に起こる可能性がある。
[015]炭水化物フィードの加熱は、間接熱交換、直接熱交換、または両方の組合せによって実行することができる。炭水化物フィードが少なくとも部分的に直接熱交換によって加熱される本発明のプロセスの実施態様において、加熱は、反応ゾーンの直前に、またはその中で行ってもよい。直接熱交換のための高温のほうの流体は、あらゆる好適な流体であってもよく、水を含むことが多い。高温のほうの流体の温度および量は、炭水化物フィードが、他のあらゆる加熱源と組み合わせて、少なくとも230℃の温度に達することを可能にするのに十分な温度および量である。高温のほうの流体は、しばしば230℃より高温でもよく、一部の場合において235℃より高温でもよい。炭水化物フィードは、水素化のための反応ゾーンに導入してもよいし、または、本質的に水素化触媒を含まない先行するレトロアルドール反応ゾーンを使用する場合、そこに導入してもよい。このような反応ゾーンに含有される水性媒体は、高温のほうの流体として役立つ。代替として、高温のほうの流体を炭水化物フィードと合わせた後、その組合せを、レトロアルドール反応ゾーンに導入してもよいし、またはその組合せをレトロアルドールおよび水素化反応ゾーンに導入してもよい。
[016]炭水化物フィードとレトロアルドール触媒との接触の開始は、水素化触媒を含有する反応ゾーン中で行われてもよいし、または別の反応ゾーン中で行われてもよい。別の反応ゾーンで接触が開始される場合、炭水化物の全部または一部を、別の反応ゾーンで反応させることができる。一部の場合において、ケトースの全部または一部、および存在する場合はアルドースの全部または一部は、水素化触媒を含有する反応ゾーン中でレトロアルドール変換を受ける。例えば、炭水化物フィード中のケトースの、少なくとも約10質量パーセント、時には少なくとも約20質量パーセントから本質的に全部までが、水素化触媒を含有する反応ゾーン中でレトロアルドール変換を受ける。ここで開示されたプロセスの特定の実施態様において、レトロアルドール触媒は、均一系触媒であり、水素化触媒は、不均一系である。したがって、水素化触媒によって占められる領域内のレトロアルドール触媒の分散は、水素化部位の近傍にプロピレングリコールを供給できる中間体を供給することができる。
[017]所与の環境に必要な水素化触媒の量は、触媒の相対的な活性と、水素およびグリコールアルデヒドおよび中間体の触媒への物質移動とに依存すると予想される。好ましい水素化触媒は、担持されたニッケル含有水素化触媒、特に、レニウムとイリジウムの一方または両方を含有するニッケル触媒である。レトロアルドール触媒の水素化触媒に対する比率は、好ましくは、アルキトールの生産、例えばケトースを生じる炭水化物およびアルドースを生じる炭水化物の水素化によるアルキトールの生産が最小化されるのに十分な比率である。しかしながら、水素化触媒は、中間体の競合反応がプロピレングリコールおよびエチレングリコール以外の生成物を生成する可能性が生じる前に、反応ゾーン中でグリコールアルデヒドおよび他の中間体の水素化を引き起こすのに十分な密度を有することが好ましい。
[018]一部の場合において、炭水化物フィードは、融解した固体であってもよく、その場合、加熱中のカラメル化反応を回避するために、炭水化物フィードは、少なくとも部分的に水和している方がよい。好ましくは、炭水化物フィードは、水溶液として提供される。
[019]図1は、特定の実施態様により本発明のプロセスを使用することが可能な設備の概略図である。
[020]本明細書において参照される全ての特許、公開された特許出願および論文は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
定義
[021]以下の定義および方法は、本発明をよりよく定義し、本発明の実施において当業者をガイドするために提供される。別段の規定がない限り、用語は、関連分野における当業者による慣例的用法に従って理解されるものとする。
[022]本明細書において範囲が使用される場合、詳細に述べる必要性を回避するように範囲の端点が述べられ、その範囲内に含まれるありとあらゆる値が示される。列挙された端点の間のあらゆる適切な中間値および範囲を選択することができる。一例として、0.1から1.0の間の範囲が列挙される場合、全ての中間値(例えば、0.2、0.3、6.3、0.815など)が含まれ、同様に全ての中間範囲(例えば、0.2〜0.5、0.54〜0.913など)も含まれる。
[023]用語「1つの(a)」および「1つの(an)」の使用は、記載された要素の1つまたはそれより多くを含むことが意図される。
[024]混合または混合されたは、2種またはそれより多くの要素の物理的な組合せの形成を意味し、このような組合せは、全体が均質な、または均質ではない組成を有していてもよく、その例としては、これらに限定されないが、固体混合物、溶液、および懸濁液が挙げられる。
[025]アルドースは、分子1つ当たり単一のアルデヒド基(−CH=O)のみを含有し、一般化学式C(H2O)を有する単糖を意味する。アルドースの非限定的な例としては、アルドヘキソース(全部で6個の炭素を有する、アルデヒドを含有する糖であり、例えば、グルコース、マンノース、ガラクトース、アロース、アルトロース、イドース、タロース、およびグロースなどがある);アルドペントース(全部で5個の炭素を有するアルデヒドを含有する糖であり、例えば、キシロース、リキソース、リボース、およびアラビノースなどがある);アルドテトロース(全部で4個の炭素を有するアルデヒドを含有する糖であり、例えば、エリトロースおよびトレオースなどがある)およびアルドトリオース(全部で3個の炭素を有するアルデヒドを含有する糖であり、例えば、グリセルアルデヒドなどがある)が挙げられる。
[026]アルドースを生じる炭水化物は、アルドースを意味するか、または加水分解されるとアルドースを生成し得る二糖もしくは多糖またはヘミセルロースを意味する。ほとんどの糖は、周囲条件下で環構造であり、したがってアルドースの形態は、本発明のプロセスの条件下で生じる。例えばスクロースは、加水分解されるとケトースも生じるが、アルドースを生じる炭水化物である。
[027]アルキトールは、ペンチトール、およびヘキシトールを意味する。ヘキシトールは、C14の実験式を有し、炭素1個当たり1個のヒドロキシルを有する6個の炭素の化合物を意味する。ヘキシトールは、異なる立体配置を有する場合があり、例えば、ソルビトールおよびマンニトールである。ペンチトールは、C12の実験式を有し、炭素1個当たり1個のヒドロキシルを有する5個の炭素の化合物を意味する。ペンチトールは、異なる立体配置を有する場合がある。この定義は、ペンチトールおよびヘキシトールに限定されているが、炭水化物フィードは、1種またはそれより多くの、より多くの、およびより少ない炭素数の糖アルコール、例えば、単糖、二糖および三糖アルコール(「他の糖アルコール」)などを含有していてもよいことが理解されるものとする。これらの他の糖アルコールは、プロピレングリコールおよび/またはエチレングリコールへの変換のための追加の炭水化物を提供する。
[028]水性および水溶液は、水が存在するが、水が優勢の成分であることを必要としないことを意味する。例証の目的で、限定されないが、90体積パーセントのエチレングリコールおよび10体積パーセントの水の溶液は、水溶液であると予想される。水溶液は、例えば、これらに限定されないが、コロイド懸濁液およびスラリーなどの、溶解または分散された成分を含有する液状媒体を含む。
[029]生物学的起源の炭水化物原料は、全体が、または相当部分が、生物学的な生成物もしくは再生可能な農業材料(これらに限定されないが、植物、動物、細菌および海洋材料など)または山林材料が起源の、それらから誘導された、またはそれらから合成された炭水化物を含む生成物を意味する。
[030]接触の開始は、流体が、成分、例えば、均一系または不均一系触媒を含有する媒体と接触し始めることを意味するが、その流体の全ての分子が触媒と接触することを必要としない。
[031]水溶液の組成は、比較的低沸点の成分、通常3個またはそれ未満の炭素を有する成分、および約300℃未満の通常の沸点の成分にについてはガスクロマトグラフィーを使用して決定され、比較的高い沸点の成分、通常3個またはそれより多くの炭素を有する成分については高速液体クロマトグラフィーを使用して決定される。
[032]ケトースからプロピレングリコールまたはアルドヘキソースからエチレングリコールへの変換効率は、質量パーセントで報告され、生成物溶液に含有されるグリコールの質量を、炭水化物フィードによって理論上提供されるケトース、または場合によってはアルドースの質量で割った値として計算される。
[033]高剪断混合は、隣接する領域に対して異なる速度で移動する流体を提供することを含み、これは、剪断を行い混合を促進するための静的または動的な機械的手段を介して達成することができる。本明細書で使用される場合、高剪断混合に供される成分は、不混和性であってもよいし、部分的に不混和性であってもよいし、または混和性であってもよい。
[034]水力学的分布は、そこに含有されるあらゆる触媒との接触を含む容器中の水溶液の分布を意味する。
[035]直前とは、1分より長い滞留時間を必要とする介入する単位操作が存在しないことを意味する。
[036]間欠的とは、時々を意味し、規則的な時間間隔であってもよいし、または不規則な時間間隔であってもよい。
[037]ケトースは、分子1個当たり1個のケトン基を含有する単糖を意味する。ケトースの非限定的な例としては、ケトヘキソース(全部で6個の炭素を有する、ケトンを含有する糖であり、例えば、フルクトース、プシコース、ソルボース、およびタガトースなどがある)、セドヘプツロース(7個の炭素を有するケトンを含有する糖)、ケトペントース(全部で5個の炭素を有する、ケトンを含有する糖であり、例えば、キシルロースおよびリブロースなどがある)、ケトテトロース(全部で4個の炭素を有する、ケトースを含有する糖であり、例えば、エリトルロースなどがある)、およびケトトリオース(全部で3個の炭素を有する、ケトースを含有する糖であり、例えば、ジヒドロキシアセトンなどがある)が挙げられる。
[038]ケトースを生じる炭水化物は、ケトースを意味するか、または加水分解されるとケトースまたはケトース前駆体を生じ得る二糖または多糖またはヘミセルロースを意味する。ほとんどの糖は、周囲条件下で環構造であり、したがってケトースの形態は、本発明のプロセスの条件下で生じる。例えばスクロースは、加水分解されるとアルドースを生じるとしても、ケトースを生じる炭水化物である。本明細書における目的に関して、アルドースとケトースの両方を生産する炭水化物は、文脈上そうではないことを要しない限り、ケトースを生じる炭水化物とみなされることとする。
[039]水溶液のpHは、周囲気圧および周囲温度で決定される。例えば水性水素化媒体または生成物溶液のpHを決定することにおいて、液体を冷却し、pH決定の前に周囲気圧および周囲温度で2時間置く。
[040]pH制御剤は、緩衝液および酸または塩基の1種またはそれより多くを意味する。
[041]炭水化物の少なくとも部分的な水和を維持するのに十分な圧力は、圧力が、炭水化物上の水和の十分な水分を維持してカラメル化反応を阻止するのに十分な圧力であることを意味する。水の沸点を超える温度では、圧力は、炭水化物上に水和の水分を保持することを可能にするのに十分な圧力である。
[042]急速な拡散混合とは、混合しようとする2つまたはそれより多くの流体の少なくとも1つが、実質的に均質な組成物を形成するための物質移動が容易になるように微細に分割されている混合である。フラクタル混合とは、急速な拡散混合である。
[043]反応器は、直列または並列の1つまたはそれより多くの容器であってもよく、容器は、1つまたはそれより多くのゾーンを含有していてもよい。反応器は、連続操作のためのあらゆる好適な設計を有していてもよく、その例としては、これらに限定されないが、タンクおよびパイプまたはチューブ型反応器などが挙げられ、必要に応じて流体混合する性能を有していてもよい。反応器のタイプとしては、これらに限定されないが、層流反応器、固定床反応器、スラリー反応器、流動床反応器、移動床反応器、疑似移動床反応器、トリクルベッド反応器、気泡塔およびループ型反応器が挙げられる。
[044]可溶性は、単一の液相を形成できること、またはコロイド懸濁液を形成できることを意味する。
炭水化物フィード
[045]本発明のプロセスは、ケトースを生じる炭水化物を含有する炭水化物フィードを使用する。一部の場合において、炭水化物フィードは、フィード中の総炭水化物に基づき、少なくとも約40質量パーセント、好ましくは少なくとも約50質量パーセントのケトースを生じる炭水化物を含む。プロピレングリコールのエチレングリコールに対する高い質量比率を有する生成物溶液が求められる場合、フィード中の炭水化物は、少なくとも約90質量パーセント、好ましくは少なくとも約95または99質量パーセントのケトースを生じる炭水化物を含む。炭水化物フィードは、炭水化物ポリマー、例えばデンプン、セルロース、もしくはこのようなポリマーの部分的に加水分解された部分、またはポリマーの混合物、もしくは部分的に加水分解された部分を有するポリマーの混合物を含むことが多い。好ましいケトースは、ケトヘキソースおよびケトペントースである。炭水化物を含有するフィードはまた、他の成分、例えば、本発明のプロセスの条件下でエチレングリコールまたはプロピレングリコールに変換できる成分などを含有していてもよい。最終的にプロピレングリコールに変換できる非炭水化物の例は、グリセリンである。
[046]ほとんどの生物学的起源の炭水化物原料は、加水分解されるとグルコースを生じる。本発明のプロセスは、グルコースおよびグルコース前駆体をプロピレングリコールおよびプロピレングリコールならびにエチレングリコールの混合物に変換するのに効果的に使用することができる。ケトースは、炭水化物ポリマーおよびオリゴマー、例えばヘミセルロース、ヘミセルロースの部分的に加水分解された形態、二糖、例えばスクロース、ラクツロース、ラクトース、ツラノース、マルツロース(maltulose)、パラチノース、ゲンチオビウロース、メリビオース、およびメリビウロースから得ることができ、またはそれらの組合せが使用される可能性がある。しかしながら、これらの性質によって、エチレングリコールおよびプロピレングリコールの一定ではない混合物が生じる可能性がある。
[047]上述したように、炭水化物を含有するフィードを、異性化条件に供することができる。したがってアルドースリッチなフィードは、より高い濃度のケトースを有するフィードに変換される場合もあり、またはケトースリッチなフィードは、より高い濃度のアルドースを有するフィードに変換される場合もある。一部の場合において、レトロアルドール触媒は異性化も促進する。したがって、作業者は、必要に応じて、異なる原料を使用したり、プロピレングリコールのエチレングリコールに対するモル比を調節したり柔軟に対応してよい。異性化が求められる場合、それは、典型的には、約1から120分までの時間で、約100℃または120℃から約220℃までの間の温度が有効である。それにもかかわらず、炭水化物を含有するフィードは、170℃の温度またはそれより高温に約10秒未満の期間維持することが一般的に好ましい。本発明の形態において、異性化は、プロピレングリコールと生産しようとするエチレングリコールとの望ましいモル比を可能にする条件下で実行されるが、この条件は、より穏やかな条件、例えば、約120℃から170℃までの範囲内の温度であることが多い。次いでフィードを少なくとも225℃または少なくとも230℃に急速に加熱して、さらなる異性化を減衰させる。
[048]炭水化物フィードは、固体であってもよいし、または液体懸濁液の形態であってもよいし、または水などの溶媒中に溶解されていてもよい。炭水化物フィードが非水性環境中にある場合、炭水化物は、少なくとも部分的に水和していることが好ましい。最も好ましくは、炭水化物フィードは、水溶液中に提供される。炭水化物フィード中における水の炭水化物に対する質量比率は、好ましくは4:1から1:4の範囲内である。1リットル当たり600グラムまたはそれより多くの特定の炭水化物、例えばグルコースおよびスクロースの水溶液が、商業的に入手できる場合がある。一部の場合において、再循環される水性水素化溶液またはそのアリコートもしくは分離した部分が、炭水化物フィード中に含有されてもよい。炭水化物フィードがエチレングリコールまたはプロピレングリコールを含有する場合、エチレングリコールおよびプロピレングリコールの合計の炭水化物に対する質量比率は、約20:1から1:20の範囲内である。水性水素化媒体に導入する前に、水を炭水化物フィードに添加することは、本発明の範囲内である。炭水化物フィード中に含有される炭水化物は、水性水素化媒体1リットル当たり、約120グラムから700または800グラムまでの間、しばしば約150グラムから500グラムまでの量で提供される。任意選択で、水素化触媒の本質的に非存在下でレトロアルドール触媒を含有する別の反応ゾーンを使用することができる。レトロアルドール触媒を含有する別の反応ゾーンが使用される場合、このような反応ゾーンへの炭水化物フィード中に含有される炭水化物は、その別のゾーンにおいて、水性媒体1リットル当たり、約120グラムから700または800グラムまでの間、しばしば約150グラムから500グラムまでの間の総炭水化物を提供することが好ましい。
急速な温度増加
[049]本発明の第1の広範なプロセスによれば、炭水化物フィードは、170℃から、225℃または230℃まで、好ましくは少なくとも約240℃の温度までの温度ゾーンを急速に移行する。急速な温度増加は、炭水化物のカラメル化反応のリスク、またはプロピレングリコールへの変換を低減しもしくはプロピレングリコールのエチレングリコール生成物に対する望ましい比率を低減する生成物の生成を減じる。一部の場合において、170℃から230℃までの温度ゾーンにわたる急速な加熱は、グリセリンのプロピレングリコールに対する相対的に低い質量比率をもたらすことが見出されている。このような例において、グリセリンのプロピレングリコールに対する質量比率は、約0.5:1より小さいことが多い。グリセリンの市場価値は、エチレングリコールおよびプロピレングリコールと比較して比較的に低いことから、副産物としてのグリセリンの生産が少ないことは有利である。
[050]炭水化物フィードは、加熱中、他の化学物質の存在下にあってもよい。例えば、水素化のための水素が、少なくとも部分的に炭水化物フィードと共に供給されてもよい。必要に応じて、他の補助剤、例えばpH制御剤も存在していてもよい。一実施態様において、炭水化物フィードは、レトロアルドール触媒を含有し、このような例において、炭水化物の触媒による変換は加熱中に起こる。加熱中における炭水化物の変換の程度は、中でも、加熱の持続時間、炭水化物とレトロアルドール触媒の相対濃度、およびレトロアルドール触媒の活性の影響を受けると予想される。
[051]上記で論じられたように、炭水化物フィードの加熱は、あらゆる好適な方式で達成でき、1種またはそれより多くのタイプの加熱が使用されてもよい。炭水化物フィードが水性水素化媒体に導入される前に、炭水化物フィードの加熱の全部が行われてもよいし、炭水化物フィードの加熱が行われなくてもよいし、または炭水化物フィードの加熱の一部が行われてもよい。例えば、それに限定されないが、炭水化物フィードの170℃から225℃または230℃までの温度ゾーンにわたる加熱は、水性水素化媒体を導入する前に行われてもよい。水性水素化媒体に導入される前に加熱される炭水化物フィードがレトロアルドール触媒と接触した状態で維持される実施態様において、水性水素化媒体に導入する前のこのような接触の持続時間は、一般的には約15秒未満、好ましくは約10秒未満、一部の場合において約5秒未満である。典型的には、加熱される炭水化物フィードを水性水素化媒体に導入する前のいずれの保持時間も、配管の距離などの器具の配置、および熱交換ゾーンから水素化ゾーンへの流体分配器などの補助的な器具での滞留時間の結果である。認識される通り、上方調整および下方調整操作が、固有の保持時間に影響を与えると予想される。
[052]170℃から225℃または230℃までの温度ゾーンにわたる炭水化物フィードの加熱に使用される熱源は、重要ではない。例えば、加熱は、放射熱またはマイクロ波励起、他のプロセスストリームとの間接熱交換、もしくは同様に水性水素化媒体に通過させるプロセスストリームとの直接熱交換、またはそれらの組合せによって提供することができる。
[053]170℃から225℃または230℃までの温度ゾーンを通る炭水化物フィードが、水性水素化媒体との直接熱交換によって少なくとも部分的に加熱される例において、レトロアルドール触媒がすでに水性水素化媒体中に存在していることが一般的に好ましい。上記で論じられたように、加熱の速度は、熱物質移動パラメーターによる影響を受けると予想される。一般的に、加熱中に炭水化物フィードの混合を促進して、物質と熱の移動の両方を容易にし、それによって炭水化物フィードが完全にこの温度ゾーンを通過するのに必要な時間を低減することが望ましい。この混合は、これらに限定されないが、機械による静止型の混合および急速な拡散混合などのあらゆる好適な方式で実行することができる。また混合の徹底も、反応物、中間体、触媒および生成物の物質移動に影響を与える可能性があり、したがってプロピレングリコールおよびエチレングリコールへの変換の選択性および副産物の形成速度に影響を与える。
[054]炭水化物フィードとの直接熱交換にとって特に有用なストリームは、引き出された生成物溶液(再循環物)である。水性水素化媒体に可溶性レトロアルドール触媒が使用される場合、再循環物は、反応系へのレトロアルドール触媒の実質的なリターンをもたらす。再循環物は、少なくとも約180℃の温度であってもよく、例えば、約230℃から300℃までの範囲の温度であってもよい。再循環物の炭水化物フィードに対する質量比率は、2つのストリームの相対的な温度および求められる温度の組合せに依存すると予想される。再循環物が使用される場合、再循環の炭水化物フィードに対する質量比率は、約1:1から100:1の範囲であることが多い。再循環物は、引き出された生成物溶液のアリコート部分であってもよいし、または再循環物を、例えば、これらに限定されないが、脱気して水素を除去すること、およびろ過して例えばあらゆる同伴された不均一系触媒を除去することなどの単位操作に供して、再循環ストリームから1種またはそれより多くの成分を分離してもよい。生成物溶液を脱気して水素の少なくとも一部を回収する場合、再循環物は、多くの場合、脱気した生成物溶液のアリコート部分である。稼働中の直接熱交換で炭水化物フィードと合せる前に、再循環物に、1種またはそれより多くの成分を添加することができる。これらの成分としては、これらに限定されないが、レトロアルドール触媒、pH制御剤、および水素が挙げられる。引き出された生成物溶液の再循環を使用することによって、組み合わされた炭水化物フィードおよび再循環物は、未反応のアルドースを生じる炭水化物、エチレングリコールまでの中間体、およびエチレングリコールを含有する可能性がある。水溶液中ではない炭水化物フィードが使用される場合、例えば、炭水化物フィードが固体であるか、または溶融物である場合、再循環物は、炭水化物を溶解させ、カラメル化反応から炭水化物を安定化させるための水を提供する。
[055]加熱の速度は、動力学的な影響を介して、炭水化物フィードにおけるアルドースまたはケトースの平衡に向かう異性化の程度に影響を与える可能性があり、したがって生成物中のプロピレングリコールのエチレングリコールに対する比率に影響を与える。加熱の速度が遅いほど、炭水化物を平衡へと誘導する高温を得る時間がより長くなる。一般的に、より高い温度は平衡に達する速度を増加させるが、平衡それ自体がシフトする可能性がある。したがって、作業者は、各温度における炭水化物フィードの相対的な持続時間を考慮に入れることが必要である。例えば、炭水化物フィードとしてケトースを用い、生成物溶液においてプロピレングリコールに対してより多くのエチレングリコールの含量が求められる場合、より高い濃度のアルドースで平衡が起こるより低い温度でのより長い滞留時間が望ましいといえる。次いで、炭水化物フィードを非常に急速に加熱し、水素化条件に供することにより、アルドースからケトースへの不適当な逆戻りを防止する。さもないと、より低い濃度のアルドースを有するより高温での平衡が起こるとであろう。異性化触媒の存在は、フィードが平衡に進む速度を強化する。レトロアルドール触媒は、典型的には、異性化触媒として作用する。したがって、炭水化物を含有するフィードは、急速な加熱中における異性化の望ましい程度に応じて、レトロアルドール触媒を含有していてもよいし、または含有していなくてもよい。レトロアルドール触媒と組み合わせて、またはその代わりに、他の異性化触媒を使用してもよい。異性化のための化学触媒としては、周知の通り、均一または不均一な酸または塩基が挙げられる。酵素的なプロセスも炭水化物を異性化することが周知であるが、これらのプロセスは、酵素に有害作用を与える温度未満の温度で操作しなければならない。したがって、耐熱性酵素の場合、好ましい温度は、約80℃未満または85℃未満である。
変換プロセス
[056]本発明のプロセスにおいて、炭水化物フィードは、レトロアルドール触媒、水素、および水素化触媒を含有する水性水素化媒体に導入される。炭水化物フィードは、水性水素化媒体に導入される前に、レトロアルドール条件に供されてもよいし、または供されなくてもよく、炭水化物フィードは、水性水素化媒体と接触させるとき、170℃から225℃または230℃までの温度ゾーンを通って加熱されてもよいし、または加熱されなくてもよい。したがって、一部の場合において、炭水化物フィードが水性水素化媒体に導入されるまで、レトロアルドール反応が行われなくてもよく、他の例において、炭水化物フィードが水性水素化媒体に導入される前に、レトロアルドール反応が少なくとも部分的に行われてもよい。特に、炭水化物フィードに直接熱交換を提供するために水性水素化媒体が使用される場合、水性水素化媒体中に炭水化物フィードを迅速に分散させることが一般的に好ましい。この分散は、これらに限定されないが、機械による静止型のミキサーの使用および急速な拡散混合などのあらゆる好適な手順によって達成することができる。
[057]レトロアルドール反応にとって好ましい温度は、典型的には約225℃または230℃から300℃までの間、より好ましくは約240℃から280℃までの間である。圧力(ゲージ)は、典型的には約15から200bar(1500から20,000kPa)の範囲内であり、例えば、約25から150bar(2500から15000kPa)の範囲内である。レトロアルドール反応条件は、レトロアルドール触媒の存在を含む。レトロアルドール触媒は、レトロアルドール反応を触媒する触媒である。レトロアルドール触媒を提供できる化合物の例としては、これらに限定されないが、不均一系および均一系触媒、例えば、タングステンおよびその酸化物、硫酸塩、リン化物、窒化物、炭化物、ハロゲン化物などを含む担体に担持された触媒などが挙げられる。ジルコニア、アルミナ、およびアルミナ−シリカに担持された、炭化タングステン、可溶性ホスホタングステン、酸化タングステンも挙げられる。好ましい触媒は、可溶性タングステン化合物、例えばメタタングステン酸アンモニウムよって提供される。可溶性タングステン酸塩の他の形態は、例えばパラタングステン酸アンモニウム、部分的に中和されたタングステン酸およびメタタングステン酸ナトリウムである。理論に制限されることは望まないが、触媒活性を示す化学種は、触媒として導入される可溶性タングステン化合物と同じであってもよいし、または同じでなくてもよい。それよりむしろ、触媒活性種は、レトロアルドール反応の過程で形成されてもよい。使用されるレトロアルドール触媒の濃度は、広く変更が可能であり、触媒の活性ならびにレトロアルドール反応の他の条件、例えば酸性度、温度、および炭水化物の濃度に依存すると予想される。典型的には、レトロアルドール触媒は、水性水素化媒体1リットル当たりの元素金属として計算して、約0.05グラムから100グラムまでの間、例えば、約0.1グラムから50グラムまでの間のタングステンを提供する量で提供される。レトロアルドール触媒は、炭水化物フィードとの混合物として、または水性水素化媒体への別のフィードとして、またはその両方で添加することができる。
[058]炭水化物フィードが、水性水素化媒体に導入される前にレトロアルドール条件に供される場合、好ましくは、水性水素化媒体への導入は、炭水化物フィードをレトロアルドール条件に供することを開始してから、1分未満、時には約0.5分未満、一部の場合において約0.1分未満で行われる。水性水素化媒体に導入されるとき、炭水化物フィード中の、少なくとも約10パーセント、好ましくは少なくとも約20パーセントのアルドースを生じる炭水化物が残存することが多い。水性水素化媒体中の炭水化物のレトロアルドール変換を継続することによって、ケトースまたはアルドペントースのレトロアルドール変換から水素化触媒との接触の開始までの時間の持続時間は低減される。
[059]典型的には、水性水素化媒体は、少なくとも約95質量パーセント、好ましくは少なくとも約98質量パーセント、または一部の場合において実質的に全ての、アルドペントース、ケトースを生じる炭水化物、およびアルドースを生じる炭水化物が反応するまで、少なくとも約225℃または230℃の温度で維持される。その後、必要に応じて、水性水素化媒体の温度を低減することができる。しかしながら、これらのより高い温度では、水素化は急速に進行する。したがって、水素化反応のための温度は、多くの場合、約225℃または230℃から300℃までの間であり、例えば、約235℃または240℃から280℃までの間である。圧力(ゲージ)は、典型的には約15から200bar(1500から20,000kPa)の範囲内であり、例えば、約25から150bar(2500から15,000kPa)の範囲内である。水素化反応は、水素に加えて水素化触媒の存在を必要とする。水素の水溶液への低い溶解性のために、水性水素化媒体中の水素濃度は、主として反応器中の水素分圧によって決定されるだろう。水性水素化媒体のpHは、少なくとも約3であることが多く、例えば、約3.5から8までの間、一部の場合において約4から7までの間である。pHを調節する作用を有する補助剤も使用することができる。
[060]水素化は、水素化触媒の存在下で実行される。水素化触媒はまた、還元金属触媒と称することもでき、カルボニル還元のための触媒である。多くの場合、水素化触媒は、不均一系触媒である。水素化触媒は、これらに限定されないが、固定床、流動床、トリクルベッド、移動床、スラリー層、および構造化層などのあらゆる好適な方式で配置することができる。中でも、ニッケル、パラジウムおよび白金が、より広く使用される還元金属触媒である。しかしながら、多くの還元触媒が、この用途において機能するであろう。還元触媒は、多種多様の担持された遷移金属触媒から選択することができる。第一次還元金属成分としてのニッケル、Pt、Pd、およびルテニウムが、カルボニルを還元するそれらの能力に関して周知である。このプロセスにおける還元触媒のための1つの特に好ましい触媒は、シリカアルミナに担持されたNi−Re触媒である。形成されたグリコールアルデヒドのエチレングリコールへの変換に関して優れた選択性を有する類似の種類のNi/ReまたはNi/Irを使用することができる。ニッケル−レニウムは、好ましい還元金属触媒であり、アルミナ−シリカ、シリカ、または他の支持体に担持されていてもよい。プロモーターとしてBを含む担持されたNi−Re触媒が有用である。過度に活性な触媒部位を減じたりまたは不活化したりするために、還元触媒を前処理してもよいし、または水素化中に処理してもよい。処理は、限定的な焼結、コークス化、または活性部位を不活化または遮断できるモリブデン、タングステン、およびレニウムなどの物質との接触のうちの1つまたはそれより多くを含んでいてもよい。このような処理が水素化プロセス中に実行される場合、これらの物質の可溶性の塩は、初期に、連続的に、または間欠的に添加することができる。一部の場合において、補助剤は、レトロアルドール触媒を活性型で維持することを助けることができる。
[061]多くの場合、水素化触媒は、スラリー反応器において、水性水素化媒体1リットル当たり、約0.1グラムから100グラムまでの間、より多くの場合、約0.5または1グラムから50グラムまでの間の量で提供され、水素化触媒は、充填層反応器において、反応器の約20から80体積パーセントを構成する。
[062]典型的には、レトロアルドール反応は、水素化反応より迅速に進行し、結果として、水素化反応器中での炭水化物フィードの滞留時間は、水素化の求められる程度がもたらされるように選択される。一部の場合において、単位時間当たりの重量空間速度は、フィード中の総炭水化物に基づき、約0.01から20hr−1までの間、多くの場合、約0.02から5hr−1までの間である。一部の場合において、そこに含まれるエチレングリコールの中間体の相対的に均質な濃度が保持されるように、水性水素化媒体がよく分散された状態を維持することが望ましい。
[063]レトロアルドールおよび水素化環境は、望ましくない反応に至る可能性がある。例えば、Green Chem.、2014、16、695〜707を参照されたい。この論文の697頁の表1および700頁の表4は、様々なアルドースをレトロアルドールおよび水素化条件に供したことによる生成物組成を報告している。彼らが報告する一次副産物としては、ソルビトール、エリスリトール、プロピレングリコールおよびグリセロールが挙げられる。
[064]本発明のプロセスにおいて、反応条件(例えば、温度、水素分圧、触媒濃度、水力学的分布、および滞留時間)の組合せは、フィード中の、少なくとも約95質量パーセント、多くの場合、少なくとも約98質量パーセントの、時には本質的に全ての、アルドペントース、ケトースを生じる炭水化物、およびアルドヘキソースを生じる炭水化物を変換するのに十分である。炭水化物の求められる変換を提供するであろう条件の1つまたは複数の設定を決定することは、本明細書に記載の開示の利益を有する当業者の技術の範囲内である。
[065]理論に制限されることは望まないが、レトロアルドール反応による中間体の形成は、競合反応で顕著な量の中間体の消費され得る前にそれらが水素化されるように、その中間体のプロピレングリコールへの水素化と極めて近接した時間になされる必要があると考えられる。したがって、レトロアルドール触媒と水素化触媒とのバランスは、プロピレングリコール、およびプロピレングリコールとエチレングリコールとの混合物への高い変換効率を達成するための反応条件下で、所与のレトロアルドール触媒および所与の水素化触媒につき確定することができる。加えて、炭水化物フィードの急速な加熱は、レトロアルドール反応速度をより容易に水素化反応速度に適合できる温度でフィードを提供すると考えられる。
[066]レトロアルドール触媒の水素化触媒に対する比率はまた、炭水化物の存在を最小化することと、優先的に活性水素化部位に向かうプロピレングリコールおよびエチレングリコールへの中間体の濃度を提供することの両方によってアルキトールの生産を減じることにも役立つ可能性があると考えられる。特定の実施態様によるプロセスの操作の1つの様式は、レトロアルドール触媒を物理的に水素化触媒の近傍に配置できるように、均一系レトロアルドール触媒および不均一系水素化触媒を使用することである。中間体は、より小さい分子であり、より大きい炭水化物分子より迅速に触媒部位に拡散し、また、水性水素化媒体中での水素の溶解性は限定的であることから、水素の水素化触媒への物質移動速度が水素化反応を調節すると考えられる。好ましくは、生成物溶液中でのプロピレングリコールとエチレングリコールとの合計のアルキトールに対する質量比率は、約10:1より大きく、一部の場合において、約20:1または25:1より大きく、またはさらに約40:1または50:1より大きい。上記で論じられたように、炭水化物フィード中の総炭水化物を、約120から700または800グラム/リットルまで、または150から500グラム/リットルまでの水性水素化媒体の量で提供することは、1,2−ブタンジオールの生産速度を減じるのに役立つ可能性がある。
[067]レトロアルドール触媒と水素化触媒との好適な比率を決定することは、本明細書に記載の開示の利益を有する当業者の技術の範囲内である。この比率は、中でも、定常状態条件下での2つの触媒の相対的な活性に依存すると予想される。相対的な活性は、触媒の固有の活性、および触媒の物理的な配置の影響を受ける。したがって、これらの触媒の比率は、様々なレトロアルドール触媒および水素化触媒にわたり広く変更することができる。しかしながら、所与のレトロアルドール触媒および水素化触媒につき、望ましい比率を決定することができる。水素化触媒を本質的に含まないレトロアルドール反応ゾーンが使用される場合、米国特許第9,399,610号でSchreckらにより教示される通り、これらに限定されないが、水力学的滞留時間およびレトロアルドール触媒濃度などの条件を調整して、求められる変換効率を達成することができる。必要に応じて、水素化触媒を含有する反応ゾーンは、レトロアルドール触媒の水素化触媒に対する比率が異なっていてもよい。例えば、水性水素化媒体の表面に、またはその真下に導入される、均一系レトロアルドール触媒および不均一系水素化触媒および炭水化物フィードを使用する連続撹拌タンク反応器において、撹拌速度は、水素化触媒の密度勾配が存在するような撹拌速度であり得る。水性水素化媒体の上面における水素化触媒の濃度が低いほど、顕著な量の水素化が起こる前に、炭水化物をレトロアルドール反応に供することが可能になる。
反応後の処理
[068]生成物溶液は、反応ゾーンから連続的または間欠的に引き出される。反応器の後、引き出された生成物溶液の一部は、上述したように再循環させてプロセスの前部に戻すために分離することができる。好ましくは、レトロアルドール触媒の少なくとも一部を、再循環のために、引き出された生成物溶液から再循環させるかまたは回収する。引き出された生成物溶液は、水素の回収や、メタンおよび二酸化炭素などの不要なガス状の副産物の除去のためにガスを捕獲することで減圧することができる。
[069]冷却により、ベッドから可溶化するまたは反応器にフィードされる触媒の可溶性がより低い部分が、低温で除去され、そして、残存する液体はプロセスの回収部分に移される。触媒の安定性および溶解性に応じて、脱気した反応器の流出物を回収にまわすことも可能であり、そこで揮発性生成物の一部が回収され、重質の底部は、例えば反応器で再使用するためのタングステン触媒の回収のために、処理される。
[070]回収において、エタノールおよびメタノールなどの低沸点成分は、蒸留により除去される。水も蒸留により除去され、続いて、プロピレングリコールおよびエチレングリコールが回収される。
[071]プロピレングリコールまたは他の沸点が近いグリコールからのエチレングリコールの分離は、追加の、より洗練された分離技術を必要とする場合がある。疑似移動床技術は、使用可能なこのような選択肢の1つである。選択は、生成物の望ましい最終用途に要求される生成物の品質に依存する。
図面
[072]発明の理解を容易にするために提供される図面が参照されるが、本発明の限定を意図するものではない。図面は、本明細書で開示されたプロセスの実施に好適な、全体的に100と指定された装置の概略的な描写である。図面は、重要ではない器具、例えば、それらの設置およびそれらの操作が化学工学における当業者に周知であるポンプ、圧縮機、バルブ、機器および他のデバイスを省略している。図面はまた、補助的な単位操作も省略している。
[073]炭水化物フィードは、ライン102によって提供される。炭水化物フィードは、固体または液体であってもよく、水との溶液の形態などであってもよい。検討の目的のために言えば、炭水化物フィードは、水性スクロース溶液である。レトロアルドール触媒は、ライン104を介して提供される。プロセスにおけるこの時点で、レトロアルドール触媒の添加は任意である。検討の目的のために言えば、レトロアルドール触媒は、水溶液の形態のメタタングステン酸アンモニウムであり、メタタングステン酸アンモニウムは、メタタングステン酸アンモニウムの濃度を約10グラム/リットルにするのに十分な量で提供される。
[074]次いで炭水化物フィードは、以降で説明される通り、引き出された生成物溶液のより高温の再循環ストリームと組み合わされる。この組合せは、直接熱交換に影響を与えて、炭水化物フィードの温度を増加させ、組み合わされたストリームを提供する。次いでこの組み合わされたストリームは、ライン106を通って分配器108および反応器110に移動する。分配器108は、あらゆる好適な設計を有していてもよい。検討の目的のために言えば、分配器108は、反応器110において、組み合わされたストリームを水性水素化媒体112の表面上へと微細な液滴として分配するスプレーヘッドである。反応器110は、水性水素化媒体112の機械的な混合を提供するための撹拌機114を含有する。この機械的な混合は、水性水素化媒体内に組み合わされたストリームの微細な液滴の分散を助けて、組み合わされたストリームが水性水素化媒体の温度になる速度をさらに強化する。これはまた、レトロアルドール反応からの中間体の水素化触媒への物質移動も助ける。また反応器110は、微粒子、不均一系水素化触媒、一例として、シリカ支持体上のニッケル/レニウム/ホウ素水素化触媒も含有し、これらの触媒は、機械的な混合によって水性水素化媒体中に分散される。
[075]水素は、ライン116を通って反応器110に供給される。水素は、ノズルを介して供給してもよく、それにより、水素の水性水素化媒体への物質移動を容易にするために、水素の小さい気泡を提供することができる。必要に応じて、追加のレトロアルドール触媒および他の補助剤を、ライン118を通って反応器に供給してもよい。
[076]水性水素化媒体は、生成物溶液として、ライン120を介して反応器110から引き出される。示した通り、生成物溶液の一部は、炭水化物フィード102と組み合わされる再循環物として、ライン122を通ってライン106に移動する。この再循環物は、均一系レトロアルドール触媒を含有すると予想される。任意選択で、ライン122中の再循環ストリームを間接熱交換器124で加熱してもよく、それによりライン106中の組み合わされたストリームをより高温にすることができる。
[077]以下の実施例は、本発明をさらに例示するために提供され、本発明の限定ではない。全ての部およびパーセンテージは、別段の指定がない限り質量に基づく。実施例1および2において、以下の一般的な手順が使用される。
[078]300mlのハステロイC Parr反応器は、撹拌機および1または2つのフィード供給ラインおよびサンプル噴霧容器に取り付けられた浸漬管を備えている。浸漬管の端部は、反応器中に約100ミリリットルの溶液が残るように配置される。反応器には、不均一系水素化触媒およびタングステン酸アンモニウムの水溶液(1.0質量パーセント)が投入される。投入量は、およそ170ミリリットルの水溶液である。次いで反応器を密封し、パージして、酸素を除去する。パージは、反応器を窒素で50psig(345kPaゲージ)に加圧すること、次いで大気圧までベントすることを3サイクル行うことによって達成される。反応器中の液体レベルは、浸漬管を介して排水することにより約100ミリリットルに低減される。水溶液を撹拌しながらの追加の3サイクルのパージを水素を使用して実行して、窒素濃度を低減し、次いで大気圧までベントする。
[079]撹拌を開始し、撹拌は、スラリー分散液中に不均一系水素化触媒を維持するのに十分な速度である。反応器は、245℃に加熱され、水素下で、10700キロパスカルのゲージ圧に加圧される。反応器が作動温度および圧力に達したら、スクロース溶液のフィードを開始し、試行の持続時間中、一定の1.0ミリリットル/分に維持する。レトロアルドール触媒は、試行の持続時間中、1リットル当たり1質量パーセントの一定速度で連続的に添加される。ほぼ連続の操作は、浸漬管の位置によって決定される一定の液体レベルに反応器を定期的に排水することによって達成される。浸漬管の端部に取り付けられたフィルターは、全ての不均一系触媒粒子が確実に反応器の内部に保持されるようにするものである。10から15分毎に、反応器の圧力は、水素の添加またはベントのいずれかによって10700キロパスカルに調整される。
[080]4時間の操作に達したとき、水性媒体のサンプルは、浸漬管およびサンプル噴霧容器を介して操作中に採取され、室温に冷却される。サンプルは、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)およびガスクロマトグラフィー(GC)によって分析される。HPLCは、屈折率検出器を備えており、アジレント・テクノロジー(Agilent Technologies)、カリフォルニア州サンタクララより入手可能なHi−Plex H樹脂カラムを使用する。GC分析は、25:1のスプリットインジェクションを備えた水素炎イオン化検出器を使用するHP5890GC(アジレント・テクノロジー、サンタクララ、カリフォルニア州)を用いて実行される。J&W DB−WAXの30m×0.32mm×0.5マイクロメートルのキャピラリーカラム(アジレント・テクノロジー、カリフォルニア州サンタクララ)が使用される。
[081]水素化触媒は、米国特許第6,534,441号の第8列第62行から第9列第27行に記載の手順を使用して調製された、シリカアルミナ触媒上のニッケル、レニウムおよびホウ素である。シリカアルミナ支持体は、3ミリメートルの押出し物であり、約125平方メートル/グラムの表面積および約0.7から0.9ミリリットル/グラムの細孔容積を有する。触媒は、別段の指定がない限り、約6.8質量パーセントのニッケルを含有し、ニッケル:レニウム:ホウ素の原子の質量比率は、約5:1.3:1である。
実施例1:
[082]この実施例において、スクロースは、炭水化物フィードとして使用され、別段の記載がない限り、水溶液中、約32.4質量パーセントの濃度で提供される。スクロースを含有するフィードは、レトロアルドール触媒を含有する。使用される供給ラインは、1/16インチ(1.6ミリメートル)の外径および5センチメートルの長さを有する。1ミリリットル/分のフィード速度で、長さ2.5センチメートル当たりの滞留時間は、1/16インチ(1.6ミリメートル)の供給ラインにおいて約0.4秒である。
[083]サンプルは、プロピレングリコールとエチレングリコールとを、約3:1より大きい質量比率で含有し;約20:1より大きいプロピレングリコールとエチレングリコールとの合計の1,2−ブタンジオールに対する比率で含有し;約10:1より大きいプロピレングリコールとエチレングリコールとの合計のアルキトールに対する比率で含有する。
実施例2
[084]この実施例において、グルコースは、炭水化物フィードとして使用され、別段の指定がない限り、水溶液中、約32.4質量パーセントの濃度で提供される。グルコースを含有するフィードは、単一のフィード供給ラインが使用される場合、レトロアルドール触媒を含有する。使用される供給ラインは、1/16インチ(1.6ミリメートル)の外径および20センチメートルの長さを有する。1ミリリットル/分のフィード速度で、長さ2.5センチメートル当たりの滞留時間は、1/16インチ(1.6ミリメートル)の供給ラインについて約0.4秒である。
[085]サンプルは、プロピレングリコールとエチレングリコールとを、約1:2より大きい質量比率で;約20:1より大きいプロピレングリコールとエチレングリコールとの合計の1,2−ブタンジオールに対する比率で;約10:1より大きいプロピレングリコールとエチレングリコールとの合計のアルキトールに対する比率で含有する。
102、104、106 ライン
108 分配器
110 反応器
112 水性水素化媒体
114 撹拌機
116、118、120 ライン
102 炭水化物フィード
122、122 ライン
124 間接熱交換器

Claims (15)

  1. 炭水化物を含有するフィードを、プロピレングリコールまたはプロピレングリコールとエチレングリコールとの混合物に変換するための連続プロセスであって、前記フィードは、炭水化物を含有するフィード中の総炭水化物の質量に基づき少なくと40質量パーセントのアルドペントース、ヘキサケトース、およびペンタケトースのうちの少なくとも1種を含有し、前記プロセスは、
    a.前記炭水化物フィードを、レトロアルドール触媒、水素、および水素化触媒を含有する水性水素化媒体を有する反応ゾーンに連続的または間欠的に通過させる工程;
    b.前記水性水素化媒体を、前記反応ゾーン中において水素化条件で維持して、プロピレングリコールと、ペンチトールおよびヘキシトールの少なくとも1種を含むアルキトールと、場合によってエチレングリコールとを含む生成物溶液を提供する工程であって、前記水素化条件は230℃から300℃の範囲の温度、レトロアルドール触媒の水素化触媒に対する比率、および水素分圧を含み、これらの条件を組み合わせて前記炭水化物フィードの少なくと95パーセントを変換するのに十分である、工程;および
    c.前記反応ゾーンから、連続的または間欠的に生成物溶液を引き出す工程
    を含み、
    前記炭水化物フィードは、少なくとも部分的に水和しており、部分的な水和に十分な圧力下にあり、
    前記炭水化物フィードは170℃未満の温度であり、
    前記炭水化物フィードは、前記反応ゾーンの直前に、または前記反応ゾーンの中で230℃より高温に加熱され、前記炭水化物フィードを170℃未満から230℃より高温へと加熱する速度は、1:5より大きいプロピレングリコールのエチレングリコールに対する質量比率およ10:1より大きいプロピレングリコールとエチレングリコールとの合計の前記アルキトールに対する質量比率を有する生成物溶液を提供する速度である、上記プロセス。
  2. 前記フィードが、ケトースを生じる炭水化物およびアルドースを生じる炭水化物を含み、プロピレングリコールとエチレングリコールとの混合物が前記生成物溶液中に含有される、請求項1に記載のプロセス。
  3. 前記生成物溶液中のプロピレングリコールのエチレングリコールに対する質量比率が1.5:1より大きい、請求項2に記載のプロセス。
  4. 前記フィードが、スクロースを含む、請求項3に記載のプロセス。
  5. 前記生成物溶液が1:10より小さい、1,2-ブタンジオールのプロピレングリコールとエチレングリコールとの合計に対する質量比率を有する、請求項1に記載のプロセス。
  6. 前記炭水化物フィードが、前記水性水素化媒体に通過させる前に170℃より高く230℃未満の温度15秒未満維持される、請求項1に記載のプロセス。
  7. 前記炭水化物フィードの170℃未満から230℃より高温への加熱が、前記炭水化物が、水素化触媒を実質的に含まずレトロアルドール触媒を含有する水性レトロアルドール溶液と接触した後に起こる、請求項1に記載のプロセス。
  8. 前記炭水化物フィードが、前記水性水素化媒体に通過させる前に170℃より高く230℃未満の温度5秒未満維持される、請求項7に記載のプロセス。
  9. 炭水化物を含有するフィードを、プロピレングリコールまたはプロピレングリコールとエチレングリコールとの混合物に変換するための連続プロセスであって、前記フィードは、炭水化物を含有するフィード中の総炭水化物の質量に基づき少なくと40質量パーセントのアルドヘキソースを含有し、前記プロセスは、
    a.前記炭水化物フィードを、レトロアルドール触媒、水素、および水素化触媒を含有する水性水素化媒体を有する反応ゾーンに連続的または間欠的に通過させる工程;
    b.前記水性水素化媒体を、前記反応ゾーン中において水素化条件で維持して、プロピレングリコールと、ペンチトールおよびヘキシトールの少なくとも1種を含むアルキトールと、場合によってエチレングリコールとを含む生成物溶液を提供する工程であって、前記水素化条件は230℃から300℃の範囲の温度、レトロアルドール触媒の水素化触媒に対する比率、および水素分圧を含み、これらの条件を組み合わせて前記炭水化物フィードの少なくと95パーセントを変換するのに十分である、工程;および
    c.前記反応ゾーンから、連続的または間欠的に生成物溶液を引き出す工程
    を含み、
    前記炭水化物フィードは、少なくとも部分的に水和しており、部分的な水和に十分な圧力下にあり、
    前記炭水化物フィードは170℃未満の温度であり、
    前記炭水化物フィードは、前記反応ゾーンの直前に、または前記反応ゾーンの中で230℃より高温に加熱され、前記炭水化物フィーを170℃未満から230℃より高温へと加熱する速度は、1:5より大きいプロピレングリコールのエチレングリコールに対する質量比率およ10:1より大きいプロピレングリコールとエチレングリコールとの合計の前記アルキトールに対する質量比率を有する生成物溶液を提供する速度である
    上記プロセス。
  10. 前記フィードが、ケトースを生じる炭水化物およびアルドースを生じる炭水化物を含み、プロピレングリコールとエチレングリコールとの混合物が前記生成物溶液中に含有される、請求項9に記載のプロセス。
  11. 前記生成物溶液中のプロピレングリコールのエチレングリコールに対する質量比率が1.5:1より大きい、請求項10に記載のプロセス。
  12. 前記フィードが、スクロースを含む、請求項11に記載のプロセス。
  13. 前記生成物溶液が1:10より小さい、1,2-ブタンジオールのプロピレングリコールとエチレングリコールとの合計に対する質量比率を有する、請求項9に記載のプロセス。
  14. 前記炭水化物フィードが、前記水性水素化媒体に通過させる前に170℃より高く230℃未満の温度5秒より長く維持される、請求項9に記載のプロセス。
  15. 前記炭水化物フィードの170℃未満から230℃より高温への加熱が、前記炭水化物が、水素化触媒を実質的に含まずレトロアルドール触媒を含有する水性レトロアルドール溶液と接触した後に起こる、請求項14に記載のプロセス。
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