JP6926570B2 - 粉体塗料及び静電粉体塗装方法 - Google Patents
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Description
<1>
粉体粒子と、無機粒子と、を含み、
基板上に付着させた付着量100g/m2の付着層における、付着終了から30秒後の電荷量をQ30、付着終了から300秒後の電荷量をQ300とした場合の「(Q30−Q300)/Q30」の絶対値により表される減衰率[30−300](%)が30%以上60%以下である粉体塗料。
前記付着層における付着終了から100秒後の電荷量をQ100とした場合の「(Q30−Q100)/Q30」の絶対値により表される減衰率[30−100](%)が5%以上20%以下である<1>に記載の粉体塗料。
前記粉体粒子の体積平均粒径が3μm以上10μm以下である<1>又は<2>に記載の粉体塗料。
前記無機粒子の体積平均粒径が10nm以上100nm以下である<1>〜<3>のいずれか1項に記載の粉体塗料。
前記無機粒子のアスペクト比が、1以上5以下である<1>〜<4>のいずれか1項に記載の粉体塗料。
前記無機粒子がチタニア粒子である<1>〜<5>のいずれか1項に記載の粉体塗料。
<1>〜<6>のいずれか1項に記載の粉体塗料であって、帯電した粉体塗料を噴出して、粉体塗料を被塗装物に付着させる工程と、
被塗装物に付着した粉体塗料を加熱して、塗装膜を形成する工程と、
を有する静電粉体塗装方法。
<2>に係る発明によれば、基板上に前記付着量で付着させた付着層における付着終了30秒後の電荷量Q30から付着終了100秒後の電荷量Q100までの減衰率[30−100]が5%未満である場合に比べ、被塗装物上に形成する塗装膜が厚くなり付着量が多い(例えば付着量120g/m2以上)場合であっても、塗装膜における塗膜荒れの発生を抑制し得る粉体塗料が提供される。
<3>に係る発明によれば、粉体粒子の体積平均粒径が10μmを超える場合に比べ、被塗装物上に付着させ加熱して形成された塗装膜において、高い平滑性を得つつかつ塗膜荒れの発生を抑制し得る粉体塗料が提供される。
<4>に係る発明によれば、無機粒子の体積平均粒径が10nm未満であるか、100nmを超える場合に比べ、被塗装物上に付着させ加熱して形成された塗装膜における塗膜荒れの発生を抑制し得る粉体塗料が提供される。
<5>に係る発明によれば、無機粒子のアスペクト比が5を超える場合に比べ、被塗装物上に付着させ加熱して形成された塗装膜における塗膜荒れの発生を抑制し得る粉体塗料が提供される。
<6>に係る発明によれば、無機粒子が酸化亜鉛粒子である場合に比べ、被塗装物上に付着させ加熱して形成された塗装膜における塗膜荒れの発生を抑制し得る粉体塗料が提供される。
本実施形態の粉体塗料は、粉体粒子と無機粒子とを含む。そして、基板上に付着量100g/m2の付着層を付着させた際における、付着終了から30秒後の電荷量をQ30、付着終了から300秒後の電荷量をQ300としたとき、「(Q30−Q300)/Q30」の絶対値により表される減衰率[30−300](%)が、30%以上60%以下である。
これに対し、本実施形態の粉体塗料によれば、被塗装物に対して付着させ加熱して形成された塗装膜での塗膜荒れ(はじけ痕)の発生を抑制し得る。
その理由は、以下のように推察される。
また、上記の減衰率[30−300]が60%以下である粉体塗料とは、前記の電荷漏れ(電荷リーク)が生じた後においても、付着層における電荷量が下がり過ぎないことを表している。これにより、被塗装物に対して噴出(吐出)されている最中の粉体塗料においても電荷が下がり過ぎず、静電的な付着性が得られるため、例えば噴出時の気流等の影響により粉体塗料が飛ばされてしまい被塗装物上の意図した箇所に付着しないことが抑制される。また、被塗装物に静電付着した粉体塗料においても電荷が下がり過ぎず、電荷の不足によって粉体塗料が付着層から取れて(剥がれ落ちて)しまうことが抑制される。これらにより、塗装膜の成膜性に優れるものと推察される。
・付着終了30秒後から300秒後にかけての減衰率[30−300]
本実施形態に係る粉体塗料は、基板上に付着量100g/m2で付着(塗着)させた付着層における、付着終了から30秒後の電荷量Q30と、付着終了から300秒後の電荷量Q300との、「(Q30−Q300)/Q30」の絶対値により表される減衰率[30−300](%)が、30%以上60%以下である。
減衰率[30−300]が30%以上であることで、粉体粒子が付着層からはじけ飛んで凹み(はじけ痕)が発生し塗装膜における塗膜荒れとなることが抑制される。一方、減衰率[30−300]が60%以下であることで、塗装膜の成膜性に優れる。
また、本実施形態では、基板上に前記付着量で付着(塗着)させた付着層における、付着終了から30秒後の電荷量Q30と、付着終了から100秒後の電荷量Q100との、「(Q30−Q100)/Q30」の絶対値により表される減衰率[30−100](%)が、5%以上20%以下であることが好ましい。
減衰率[30−100]が5%以上である粉体塗料とは、電荷漏れ(電荷リーク)が速やかに生じ易いことを意味し、つまり被塗装物に対して噴出する際や被塗装物上に静電付着させた後において電荷漏れ(電荷リーク)を速やかに生じさせ易い粉体塗料であることを表している。これにより、被塗装物上に形成する塗装膜が厚くなり付着量が多い(例えば付着量120g/m2以上)場合であっても、粉体粒子が付着層からはじけ飛んで凹み(はじけ痕)が発生し塗装膜における塗膜荒れとなることが抑制され易くなる。
一方、減衰率[30−100]が20%以下であることで、電荷量が急に下がり過ぎず、被塗装物に対して噴出(吐出)されている最中の粉体塗料において、例えば噴出時の気流等の影響により粉体塗料が飛ばされてしまい被塗装物上の意図した箇所に付着しないことが抑制され易くなる。また、被塗装物に静電付着した粉体塗料においても電荷が下がり過ぎず、電荷の不足によって粉体塗料が付着層から取れて(剥がれ落ちて)しまうことが抑制され易くなる。これらにより、塗装膜の優れた成膜性が得易くなる。
また、本実施形態では、基板上に前記付着量で付着(塗着)させた付着層における、付着終了から30秒後の電荷量Q30と、付着終了から200秒後の電荷量Q200との、「(Q30−Q200)/Q30」の絶対値により表される減衰率[30−200](%)が、15%以上30%以下であることが好ましい。
減衰率[30−200]が15%以上であることで、粉体粒子が付着層からはじけ飛んで凹み(はじけ痕)が発生し塗装膜における塗膜荒れとなることが抑制される。一方、減衰率[30−200]が30%以下であることで、塗装膜の優れた成膜性が得易くなる。
減衰率[30−200]の値は、15%以上30%以下であることが好ましく、17%以上28%以下であることがより好ましく、20%以上25%以下であることがさらに好ましい。
上記の電荷量Q30及び電荷量Q300は、下記方法により測定される。
まず、以下の方法により旭サナック製コロナガンXR4−110Cを使用して付着層を形成する。基板として鏡面仕上げのアルミ板(30cm×30cm)を準備し、この基板に対して正面から20cmの距離(基板とコロナガンの吐出口との距離)で、コロナガンを上下左右にスライドさせて粉体塗料を吐出して基板に静電付着させ、付着量100g/m2の付着層を得る。このとき98g/m2以上102g/m2以下の付着層であれば100g/m2とみなす。コロナガンの印加電圧は100kV、入力エア圧は0.55MPa、吐出量100g/分とする。
次いで、電荷量を測定する。付着層の電荷量は、ファラデーゲージを用いて測定され、吸引式の小型帯電測定装置(ユーテック(株)製電荷量測定装置EA02システム)を用いて測定される。付着終了30秒後の付着層及び付着終了300秒後の付着層から、付着層に含まれる粉体粒子を吸引ノズルにてファラデーゲージ内フィルターに直接取り込み、電荷量及び質量を測定して、粉体粒子の単位質量あたりの電荷量を求める。付着層の任意の10箇所において上記粉体粒子の単位質量あたりの電荷量を測定し、その算術平均値を付着層の電荷量とする。
前記減衰率[30−300]、減衰率[30−200]、及び減衰率[30−100]は、粉体塗料における電荷漏れ(電荷リーク)の生じ易さの指標である。各減衰率は、例えば、粉体粒子の組成、粉体粒子の製造方法、無機粒子の組成や表面処理等によって制御し得る。
例えば、一例を挙げると、粉体粒子表面に外添される無機粒子として、疎水化処理された度合いが低い無機粒子(より好ましくは疎水化処理されていない無機粒子)を用いる程、上記の各減衰率を低下させ易くなる。
本実施形態に係る粉体塗料は、誘電損率が40×10−3以上150×10−3以下であることが好ましく、50×10−3以上100×10−3以下であることがより好ましく、50×10−3以上80×10−3以下であることがさらに好ましい。
粉体塗料の誘電損率は、以下の方法により測定する。
まず、粉体塗料5gをペレット状に成型し、20℃、相対湿度60%下において、電極〔SE−71型固体用電極、安藤電気(株)製〕間にセットし、LCRメーター(4274A型、横河ヒューレットパッカード製)にて、5V、周波数100kHzで測定する。
なお、誘電損率は下記の式(1)によって求められる。
(14.39/(W×D2))×Gx×Tx×1012 ・・・式(1)
ここで、W=2πf(f:測定周波数100kHz)、D:電極直径(cm)、Gx:電導度(S)、Tx:試料厚み(cm)を表す。
本実施形態に係る粉体塗料は、粉体粒子と無機粒子とを含む。
前記無機粒子は、粉体粒子の表面に外添外部添加(以下単に「外添」とも称す)される。
外添方法としては特に制限はなく、粉体塗料の分野で公知の外添方法を使用することが可能である
本実施形態において用いられる無機粒子としては、粉体塗料により得られる塗装膜の塗膜荒れを抑制する観点から、チタニア粒子及び酸化亜鉛粒子が好ましく、チタニア粒子がより好ましい。
上記チタニア粒子の結晶形態としては、主にルチル型とアナターゼ型が知られており、そのいずれであっても本実施形態において用いることが可能であるが、塗装膜の耐光性の観点から、ルチル型が好ましい。
本実施形態において、無機粒子は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
無機粒子の体積平均粒径(平均一次粒径)は、10nm以上100nm以下が好ましく、15nm以上90nm以下がより好ましく、20nm以上80nm以下がさらに好ましい。
無機粒子の体積平均粒径が上記範囲であれば、粉体粒子への付着性に優れ、粉体塗料により得られる塗装膜の塗膜荒れが抑制される。
まず、測定対象となる粉体塗料を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察する。そして、画像解析によって、測定対象となる無機粒子100個それぞれの円相当径を求め、その体積基準の分布における小径側から体積基準での累積50%の円相当径を体積平均粒径とする。
測定対象となる無機粒子100個の円相当径を求める画像解析は、解析装置(ERA−8900:エリオニクス社製)を用いて、倍率10,000倍の二次元画像を撮影し、画像解析ソフトWinROOF(三谷商事社製)を用いて、0.010000μm/pixel条件で投影面積を求め、式:円相当径=2×(投影面積/π)1/2で円相当径を求める。
なお、粉体塗料から、複数種類の外部添加剤の体積平均粒径を測定するには、各外部添加剤を区別する必要がある。具体的には、各種類の外部添加剤は、SEM−EDX(エネルギー分散型X線分析装置付きの走査型電子顕微鏡)による元素マッピングをおこない、各種類の外部添加剤に由来する元素を該当する外部添加剤に対応付けることで区別する。
無機粒子のアスペクト比は、1以上10以下であることが好ましい。
アスペクト比が上記範囲であれば、無機粒子が粉体粒子から遊離しにくく、かつ、得られる塗装膜の塗膜荒れがより抑制される。
上記アスペクト比は、粉体粒子の塗膜荒れをより抑制する観点からは、1以上2未満であることが好ましく、1以上1.5以下であることがより好ましい。
また、上記アスペクト比は、無機粒子の粉体粒子からの遊離を防ぐ観点からは、2以上5以下であることが好ましく、2.5以上4.5以下であることがより好ましい。
本実施形態において用いられる無機粒子は、表面が予め疎水化処理されていてもよい。ただし、粉体塗料における電荷を減衰させ易くし、その結果前述の減衰率[30−300]、減衰率[30−200]、及び減衰率[30−100]を前記範囲に制御し易くする観点からは、疎水化処理された度合いが低い無機粒子(より好ましくは疎水化処理されていない無機粒子)を用いることが好ましい。つまり、粉体塗料により得られる塗装膜の塗膜荒れを抑制する観点からは、過剰に疎水化処理されていないことが好ましい。
本実施形態において用いられる無機粒子は、体積固有抵抗が1×105Ω・cm以上1×1013Ω・cm以下であることが好ましく、1×106Ω・cm以上1×1012Ω・cm以下であることがより好ましく、1×107Ω・cm以上1×1011Ω・cm以下であることがさらに好ましい。
体積固有抵抗が上記範囲内であれば、粉体塗料により得られる塗装膜の塗膜荒れが抑制され易くなるため好ましい。
まず、粉体粒子から無機粒子を分離する。そして、20cm2の電極板を配した円形の治具の表面に、測定対象となる分離した無機粒子を1mm以上3mm以下程度の厚さになるように載せ、無機粒子層を形成する。この上に前記と同じ20cm2の電極板を載せ無機粒子層を挟み込む。無機粒子間の空隙をなくすため、無機粒子層上に設置した電極板の上に4kgの荷重をかけてから無機粒子層の厚み(cm)を測定する。無機粒子層上下の両電極は、エレクトロメーター及び高圧電源発生装置に接続されている。両電極に高電圧を印加し、このとき流れた電流値(A)を読み取ることにより、無機粒子の体積固有抵抗(Ω・cm)を計算する。上記測定は、温度20℃、相対湿度50%の条件下において行う。無機粒子の体積固有抵抗(Ω・cm)の計算式は、下式に示す通りである。
なお、式中、ρは無機粒子の体積固有抵抗(Ω・cm)、Eは印加電圧(V)、Iは電流値(A)、I0は印加電圧0Vにおける電流値(A)、Lは無機粒子層の厚み(cm)をそれぞれ表す。本実施形態においては、印加電圧が1000Vの時の体積固有抵抗を用いる。
・式:ρ=E×20/(I−I0)/L
無機粒子の含有量としては、得られる塗装膜の塗膜荒れをより抑制する観点から、粉体粒子の全質量に対し、0.1質量%以上3質量%以下が好ましく、0.3質量%以上1.5質量%以下がより好ましい。
粉体塗料に含まれる粉体粒子は、熱硬化性樹脂及び熱硬化剤を含むことが好ましい。粉体粒子は、必要に応じて、着色剤、その他の添加剤を含んでもよい。
熱硬化性樹脂は、熱硬化反応性基を有する樹脂である。熱硬化性樹脂としては、従来、粉体塗料の粉体粒子として使用される様々な種類の樹脂が挙げられる。
熱硬化性樹脂は、非水溶性(疎水性)の樹脂であることがよい。熱硬化性樹脂として非水溶性(疎水性)の樹脂を適用すると、粉体塗料(粉体粒子)の帯電特性の環境依存性が低減される。また、粉体粒子を凝集合一法により作製する場合、水性媒体中で乳化分散を実現する点からも、熱硬化性樹脂は、非水溶性(疎水性)の樹脂であることがよい。なお、非水溶性(疎水性)とは、25℃の水100質量部に対する対象物質の溶解量が5質量部未満であることを意味する。
熱硬化性ポリエステル樹脂に含まれる熱硬化反応性基としては、エポキシ基、カルボキシル基、水酸基、アミド基、アミノ基、酸無水物基、及び、ブロックイソシアネート基等が挙げられるが、合成が容易な点から、カルボキシル基、及び水酸基が好ましい。
熱硬化性ポリエステル樹脂は、硬化反応性基を有するポリエステル樹脂である。熱硬化性ポリエステル樹脂に含まれる熱硬化反応性基としては、エポキシ基、カルボキシル基、水酸基、アミド基、アミノ基、酸無水物基、ブロックイソシアネート基等が挙げられるが、合成が容易な点から、カルボキシル基、及び水酸基が好ましい。
熱硬化性ポリエステル樹脂の熱硬化反応性基の導入は、ポリエステル樹脂を合成する際の多塩基酸と多価アルコールとの使用量を調整することにより行う。この調整により、熱硬化反応性基として、カルボキシル基、及び水酸基の少なくとも一方を有する熱硬化性ポリエステル樹脂が得られる。
また、ポリエステル樹脂を合成した後、熱硬化性反応基を導入して、熱硬化性ポリエステル樹脂を得てもよい。
他の単量体としては、例えば、1分子中にカルボキシル基と水酸基とを併せ有する化合物(例えばジメタノールプロピオン酸、ヒドロキシピバレート等)、モノエポキシ化合物(例えば「カージュラE10(シェル社製)」等の分岐脂肪族カルボン酸のグリシジルエステル)など)、種々の1価アルコール(例えばメタノール、プロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール等)、種々の1価の塩基酸(例えば安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸等)、種々の脂肪酸(例えばひまし油脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、大豆油脂肪酸の等)等が挙げられる。
酸価と水酸基価との合計を上記範囲内にすると、塗装膜の平滑性及び機械的物性が向上しやすくなる。数平均分子量を上記範囲内にすると、塗装膜の平滑性及び機械的物性が向上すると共に、粉体塗料の貯蔵安定性も向上しやすくなる。
熱硬化性(メタ)アクリル樹脂は、熱硬化反応性基を有する(メタ)アクリル樹脂である。熱硬化性(メタ)アクリル樹脂への熱硬化反応性基の導入は、熱硬化反応性基を有するビニル単量体を用いることがよい。熱硬化反応性基を有するビニル単量体は、(メタ)アクリル単量体((メタ)アクリロイル基を有する単量体)であってもよいし、(メタ)アクリル単量体以外のビニル単量体であってもよい。
他のビニル単量体としては、各種のα−オレフィン(例えばエチレン、プロピレン、ブテン−1等)、フルオロオレフィンを除く各種のハロゲン化オレフィン(例えば塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、各種の芳香族ビニル単量体(例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等)、各種の不飽和ジカルボン酸と炭素数1以上18以下の1価アルコールとのジエステル(例えばフマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジブチル、フマル酸ジオクチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジオクチル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチル、イタコン酸ジオクチル等)、各種の酸無水物基含有単量体(例えば無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水(メタ)アクリル酸、無水テトラヒドロフタル酸等)、各種の燐酸ステル基含有単量体(例えばジエチル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、ジブチル−2−(メタ)アクリロイルオキシブチルフォスフェート、ジオクチル−2−(メアクリロイルオキシエチルフォスフェート、ジフェニル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート等)、各種の加水分解性シリル基含有単量体(例えばγ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等)、各種の脂肪族カルボン酸ビニル(例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、炭素原子数9以上11以下の分岐状脂肪族カルボン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等)、環状構造を有するカルボン酸の各種のビニルエステル(例えばシクロヘキサンカルボン酸ビニル、メチルシクロヘキサンカルボン酸ビニル、安息香酸ビニル、p−tert−ブチル安息香酸ビニル等)などが挙げられる。
硬化性反応性基を有さないアクリル単量体としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルオクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等)、各種の(メタ)アクリル酸アリールエステル(例えば(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル等)、各種のアルキルカルビトール(メタ)アクリレート(例えばエチルカルビトール(メタ)アクリレート等)、他の各種の(メタ)アクリル酸エステル(例えばイソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル等)、各種のアミノ基含有アミド系不飽和単量体(例えばN−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等)、各種のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート(例えばジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等)、各種のアミノ基含有単量体(例えばtert−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、tert−ブチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、アジリジニルエチル(メタ)アクリレート、ピロリジニルエチル(メタ)アクリレート、ピペリジニルエチル(メタ)アクリレート等)。
数平均分子量を上記範囲内にすると、塗装膜の平滑性及び機械的物性が向上しやすくなる。
なお、後述するように、粉体粒子がコア・シェル型粒子である際、樹脂被覆部の樹脂として熱硬化性樹脂を適用する場合には、上記の熱硬化性樹脂の含有量は、芯部及び樹脂被覆部の全熱硬化性樹脂の含有量を意味する。
熱硬化剤は、熱硬化性樹脂の熱硬化反応性基の種類に応じて選択する。
ここで、熱硬化剤とは、熱硬化性樹脂の末端基である熱硬化反応性基に対して、反応可能な官能基を有している化合物を意味する。
なお、後述するように、粉体粒子がコア・シェル型粒子である際、樹脂被覆部の樹脂として熱硬化性樹脂を適用する場合には、上記の熱硬化剤の含有量は、芯部及び樹脂被覆部の全熱硬化性樹脂に対する含有量を意味する。
着色剤としては、例えば、顔料が挙げられる。着色剤は、顔料と共に染料を併用してもよい。
顔料としては、例えば、酸化鉄(例えばベンガラ等)、酸化チタン、チタン黄、亜鉛華、鉛白、硫化亜鉛、リトポン、酸化アンチモン、コバルトブルー、カーボンブラック等の無機顔料;キナクリドンレッド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、パーマネントレッド、ハンザイエロー、インダンスレンブルー、ブリリアントファーストスカーレット、ベンツイミダゾロンイエロー等の有機顔料などが挙げられる。
顔料としては、その他、光輝性顔料も挙げられる。光輝性顔料としては、例えば、パール顔料、アルミニウム粉、ステンレス鋼粉等の金属粉;金属フレーク;ガラスビーズ;ガラスフレーク;雲母;リン片状酸化鉄(MIO)等が挙げられる。
例えば、着色剤の含有量は、粉体粒子を構成する全樹脂に対して、1質量%以上70質量%以下が好ましく、2質量%以上60質量%以下がより好ましい。
粉体粒子には、2価以上の金属イオン(以下、単に「金属イオン」とも称する)を含むことがよい。この金属イオンは、後述するように、粉体粒子がコア・シェル型粒子である際には、粉体粒子の芯部及び樹脂被覆部のいずれにも含まれる成分である。
粉体粒子に2価以上の金属イオンを含むと、粉体粒子で金属イオンによるイオン架橋を形成する。例えば、熱硬化性樹脂の官能基(例えば、熱硬化性樹脂として、熱硬化性ポリエステル樹脂を使用した場合、熱硬化性ポリエステル樹脂のカルボキシル基又は水酸基)と金属イオンとが相互作用し、イオン架橋を形成する。このイオン架橋により、粉体粒子の内包物(熱硬化剤、及び熱硬化剤以外に必要に応じて添加される着色剤、その他の添加剤等)が粉体粒子の表面に析出する現象(所謂、ブリード)が抑制され、保管性が高まりやすくなる。また、このイオン架橋は、粉体塗料の塗装後、熱硬化をするときの加熱により、イオン架橋の結合が切れることで、粉体粒子の溶融粘度が低下し、平滑性の高い塗装膜を形成しやすくなる。
金属塩としては、例えば、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化鉄(II)、塩化亜鉛、塩化カルシウム、硫酸カルシウム等が挙げられる。
無機金属塩重合体としては、例えば、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、ポリ硫酸鉄(II)、多硫化カルシウム等が挙げられる。
金属錯体としては、例えば、アミノカルボン酸の金属塩等が挙げられる。金属錯体として、具体的には、例えば、エチレンジアミン4酢酸、プロパンジアミン4酢酸、ニトリル3酢酸、トリエチレンテトラミン6酢酸、ジエチレントリアミン5酢酸等の公知のキレートをベースにした金属塩(例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩、鉄塩、アルミニウム塩等)などが挙げられる。
金属イオンの含有量を0.002質量%以上とすると、金属イオンによる適度なイオン架橋が形成され、粉体粒子のブリードを抑え、塗装塗料の保管性が高まりやすくなる。一方、金属イオンの含有量を0.2質量%以下とすると、金属イオンによる過剰なイオン架橋の形成を抑え、塗装膜の平滑性が高まりやすくなる。
その他の添加剤としては、粉体塗料に使用される各種の添加剤が挙げられる。
具体的には、その他の添加剤としては、例えば、発泡(ワキ)防止剤(例えば、ベンゾイン、ベンゾイン誘導体等)、硬化促進剤(アミン化合物、イミダゾール化合物、カチオン重合触媒等)、表面調整剤(レベリング剤)、可塑剤、帯電制御剤、酸化防止剤、顔料分散剤、難燃剤、流動付与剤等が挙げられる。
本実施形態において、粉体粒子は、熱硬化性樹脂及び熱硬化剤を含有する芯部と、該芯部の表面を被覆する樹脂被覆部と、を有するコア・シェル型粒子であってもよい。
この際、芯部は、熱硬化性樹脂及び熱硬化剤の他、必要に応じて、前述した、着色剤のその他の添加剤を含有してもよい。
樹脂被覆部は、樹脂のみで構成されていてもよいし、他の成分(芯部を構成する成分として説明した熱硬化剤、その他の添加剤等)を含んでいてもよい。
但し、ブリードを低減させる点から、樹脂被覆部は、樹脂のみで構成されていることがよい。なお、樹脂被覆部が、樹脂以外の他の成分を含む場合でも、樹脂は樹脂被覆部全体の90質量%以上(好ましくは95質量%以上)を占めることがよい。
樹脂被覆部の樹脂として、熱硬化性樹脂を適用する場合、この熱硬化性樹脂としては、芯部の熱硬化性樹脂と同様なものが挙げられ、好ましい例も同様である。但し、樹脂被覆部の熱硬化性樹脂は、芯部の熱硬化性樹脂と同じ種類の樹脂であってもよいし、異なる樹脂であってもよい。
なお、樹脂被覆部の樹脂として、非硬化性樹脂を適用する場合、非硬化性樹脂としては、アクリル樹脂、及びポリエステル樹脂からなる群から選択される少なくとも1種が好適に挙げられる。
具体的には、XPS測定は、測定装置として日本電子(株)製、JPS−9000MXを使用し、X線源としてMgKα線を用い、加速電圧を10kV、エミッション電流を30mAに設定して実施する。
上記条件で得られたスペクトルから、粉体粒子表面の芯部の材料に起因する成分と被覆樹脂部の材料に起因する成分をピーク分離することによって、粉体粒子表面の樹脂被覆部の被覆率を定量する。ピーク分離は、測定されたスペクトルを、最小二乗法によるカーブフィッティングを用いて各成分に分離する。
分離のベースとなる成分スペクトルは、粉体粒子の作製に用いた熱硬化性樹脂、硬化剤、顔料、添加剤、被覆用樹脂を単独に測定して得られたスペクトルを用いる。そして、粉体粒子で得られた全スペクトル強度の総和に対しての被覆用樹脂に起因するスペクトル強度の比率から、被覆率を求める。
樹脂被覆部の厚さは、次の方法により測定された値である。粉体粒子をエポキシ樹脂などに包埋し、ダイヤモンドナイフなどで切削することで薄切片を作製する。この薄切片を透過型電子顕微鏡(TEM)などで観察、複数の粉体粒子の断面画像を撮影する。粉体粒子の断面画像から樹脂被覆部の厚みを20か所測定して、その平均値を採用する。クリア粉体塗料などで断面画像において樹脂被覆部の観察が難しい場合は、染色を行って観察することで、測定を容易にすることもできる。
・体積粒度分布指標GSDv
粉体粒子の体積粒度分布指標GSDvは、塗装膜の平滑性、及び粉体塗料の保管性の点で、1.50以下であることが好ましく、1.40以下がより好ましく、1.30以下がさらに好ましい。体積粒度分布指標GSDvが1.40以下であれば、塗装膜の平滑性の悪化が抑制される。
また、粉体粒子の体積平均粒径D50vは、少量で平滑性の高い塗装膜を形成する点から、1μm以上25μm以下が好ましく、2μm以上20μm以下がより好ましく、3μm以上15μm以下がさらに好ましい。
なお、粉体塗料に含まれる粉体粒子の粒径が小さい(例えば体積平均粒径が10μm以下である)と、より平滑性に優れた塗装膜を形成し得る一方で、粉体塗料全体としての表面積が粒径がより大きい場合に比べて増えるために電荷の蓄積の影響がより大きく、塗膜荒れ(はじけ痕)も発生し易くなる。しかし、本実施形態によれば、上記の通り付着層における電荷の蓄積が低減され、塗膜荒れ(はじけ痕)の発生が抑制される。こうした観点から、粉体粒子の体積平均粒径D50vは、さらに3μm以上10μm以下の範囲が好ましい。
さらに、粉体粒子の平均円形度は、0.97以上であることが好ましく、0.98以上がより好ましく、0.99以上がさらに好ましい。
粉体粒子の平均円形度が0.97以上であれば、塗膜荒れの発生が抑制された粉体塗料を得ることが可能である。
塗膜荒れの発生が抑制された粉体塗料が得られる機構の詳細は不明であるが、粉体粒子の平均円形度が0.97以上であれば、塗布膜の形成時に、塗布膜における粉体粒子の密度が高くなり、粉体粒子の単位質量当たりの表面積が小さくなることから塗布膜中の粉体粒子の電荷保持量も小さくなるため、粉体粒子同士の静電反発が抑制され、塗膜荒れの発生が抑制されると推測している。
測定に際しては、分散剤として、界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい)の5%水溶液2ml中に測定試料を0.5mg以上50mg以下加える。これを電解液100ml以上150ml以下中に添加する。
試料を懸濁した電解液は超音波分散器で1分間分散処理を行い、コールターマルチサイザーIIにより、アパーチャー径として100μmのアパーチャーを用いて2μm以上60μm以下の範囲の粒径の粒子の粒度分布を測定する。なお、サンプリングする粒子数は50,000個である。
測定される粒度分布を基にして分割された粒度範囲(チャンネル)に対して体積をそれぞれ小径側から累積分布を描いて、累積16%となる粒径を体積粒径D16v、累積50%となる粒径を体積平均粒径D50v、累積84%となる粒径を体積粒径D84vと定義する。
そして、体積粒度分布指標(GSDv)は(D84v/D16v)1/2として算出される。
次に、本実施形態に係る粉体塗料の製造方法について説明する。
本実施形態に係る粉体塗料は、粉体粒子を製造後、粉体粒子に対して無機粒子を含む外部添加剤を外添することにより得られる。
一方、湿式製法には、例えば、1)熱硬化性樹脂を得るための重合性単量体を乳化重合させた分散液と、他の原料の分散液とを混合し、凝集、加熱融着させ、粉体粒子を得る凝集合一法、2)熱硬化性樹脂を得るための重合性単量体と、他の原料の溶液とを水系溶媒に懸濁させて重合する懸濁重合法、3)熱硬化性樹脂と、他の原料の溶液とを水系溶媒に懸濁させて造粒する溶解懸濁法等がある。なお、湿式製法の方が、熱的な影響が小さいことから好適に使用できる。
また、上記製法により得られた粉体粒子を芯部(コア)にして、さらに樹脂粒子を付着、加熱融合して、コア・シェル型粒子である粉体粒子を得てもよい。
具体的には、
熱硬化性樹脂を含む第1樹脂粒子、及び熱硬化剤が分散された分散液中で、前記第1樹脂粒子と前記熱硬化剤とを凝集して、又は、熱硬化性樹脂、及び熱硬化剤を含む複合粒子が分散された分散液中で、前記複合粒子を凝集して、第1凝集粒子を形成する工程(第1凝集粒子形成工程)と、
前記第1凝集粒子が分散された第1凝集粒子分散液と、樹脂を含む第2樹脂粒子が分散された第2樹脂粒子分散液とを混合し、前記第1凝集粒子の表面に前記第2樹脂粒子を凝集し、前記第2樹脂粒子が前記第1凝集粒子の表面に付着した第2凝集粒子を形成する工程(第2凝集粒子形成工程)と、
前記第2凝集粒子が分散された第2凝集粒子分散液に対して加熱し、前記第2凝集粒子を融合及び合一する工程(融合合一工程)と、
を経て、粉体粒子を製造することが好ましい。
なお、この凝集合一法により製造された粉体粒子は、第1凝集粒子が融合合一した部分が芯部となり、第1凝集粒子の表面に付着した第2樹脂粒子が融合合一した部分が樹脂被覆部となる。
そのため、第1凝集粒子形成工程で形成された第1凝集粒子を、第2凝集粒子形成工程を経ず、融合合一工程へと供し、第2凝集粒子の代わりに融合及び合一すれば、単層構造の粉体粒子が得られる。
なお、以下の説明では、着色剤を含む粉体粒子の製造方法について説明するが、着色剤は必要に応じて含有するものである。
まず、凝集合一法において使用する各分散液を準備する。
具体的には、芯部の熱硬化性樹脂を含む第1樹脂粒子が分散された第1樹脂粒子分散液、熱硬化剤が分散された熱硬化剤分散液、着色剤が分散された着色剤分散液、樹脂被覆部の樹脂を含む第2樹脂粒子が分散された第2樹脂粒子分散液を準備する。
また、第1樹脂粒子分散液、及び熱硬化剤分散液に代えて、芯部用の熱硬化性樹脂、及び熱硬化剤を含む複合粒子が分散された複合粒子分散液を準備する。
なお、粉体塗料の製造方法の各工程において、第1樹脂粒子、第2樹脂粒子、及び複合粒子を、総じて「樹脂粒子」と称し、これらの樹脂粒子の分散液を「樹脂粒子分散液」と称して説明する。
水性媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の水;アルコール類等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。界面活性剤を2種以上用い、その水に対する溶解性の違いから一部の界面活性剤をわずかに残留させ粉体塗料の電荷を調整することができる。
なお、転相乳化法とは、分散すべき樹脂を、その樹脂が可溶な疎水性有機溶剤中に溶解せしめ、有機連続相(O相)に塩基を加えて、中和したのち、水性媒体(W相)を投入することによって、W/OからO/Wへの、樹脂の変換(いわゆる転相)が行われて不連続相化し、樹脂を水性媒体中に粒子状に分散する方法である。
例えば、樹脂粒子分散液が、ポリエステル樹脂粒子が分散されたポリエステル樹脂粒子分散液の場合、かかるポリエステル樹脂粒子分散液は、原料単量体を加熱溶融及び減圧下重縮合した後、得られた重縮合体を、溶剤(例えば酢酸エチル等)を加えて溶解し、さらに、得られた溶解物に弱アルカリ性水溶液を加えながら撹拌、及び転相乳化することによって得られる。
なお、樹脂粒子の体積平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、堀場製作所製、LA−700)の測定によって得られた粒度分布を用い、分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、体積について小粒径側から累積分布を引き、全粒子に対して累積50%となる粒径を体積平均粒径D50vとして測定される。なお、他の分散液中の粒子の体積平均粒径も同様に測定される。
塩基性化合物としてはアンモニア、沸点が250℃以下の有機アミン化合物等が挙げられる。好ましい有機アミン化合物の例としては、トリエチルアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、アミノエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、イソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン等が挙げられる。
塩基性化合物は、熱硬化性ポリエステル樹脂中に含まれるカルボキシル基に応じて、少なくとも部分中和し得る量、すなわち、カルボキシル基に対して0.2倍当量以上9.0倍当量以下を添加することが好ましく、0.6倍当量以上2.0倍当量以下を添加することがより好ましい。0.2倍当量以上であれば、塩基性化合物添加の効果が認められ易い。9.0倍当量以下であれば、油相の親水性が過剰に増すことが抑制されるためと思われるが、粒径分布が広くなりにくく良好な分散液を得られ易い。
次に、第1樹脂粒子分散液と、熱硬化剤分散液と、着色剤分散液と、を混合する。
そして、混合分散液中で、第1樹脂粒子と熱硬化剤と着色剤とをヘテロ凝集させ、目的とする粉体粒子の径に近い径を持つ、第1樹脂粒子と熱硬化剤と着色剤とを含む第1凝集粒子を形成する。
なお、凝集終了後、凝集剤の金属イオンと錯体又は類似の結合を形成する添加剤を必要に応じて用いてもよい。この添加剤としては、キレート剤が好適に用いられる。このキレート剤の添加により、凝集剤を過剰に添加した場合、粉体粒子の金属イオンの含有量の調整が実現される。
キレート剤の添加量としては、例えば、樹脂粒子100質量部に対して0.01質量部以上5.0質量部以下がよく、0.1質量部以上3.0質量部未満が好ましい。
次に、得られた第1凝集粒子が分散された第1凝集粒子分散液と、第2樹脂粒子分散液とを混合する。
なお、第2樹脂粒子は第1樹脂粒子と同種であってもよいし、異種であってもよい。
そして、混合分散液のpHを、例えば6.5以上8.5以下程度の範囲にすることにより、凝集の進行を停止させる。
次に、第2凝集粒子が分散された第2凝集粒子分散液に対して、例えば、第1及び第2樹脂粒子のガラス転移温度以上(例えば第1及び第2樹脂粒子のガラス転移温度より10から30℃高い温度以上)に加熱して、第2凝集粒子を融合合一し、粉体粒子を形成する。
洗浄工程は、帯電性の点から充分にイオン交換水による置換洗浄を施すことがよい。また、固液分離工程は、特に制限はないが、生産性の点から吸引ろ過、加圧ろ過等を施すことがよい。また、乾燥工程も特に方法に制限はないが、生産性の点から凍結乾燥、気流式乾燥、流動乾燥、振動型流動乾燥等を施すことがよい。
なお、上記の混合は、例えばVブレンダー、ヘンシェルミキサー、レーディゲミキサー等によって行うことがよい。
さらに、必要に応じて、振動篩分機、風力篩分機等を使って粉体粒子の粗大粒子を取り除いてもよい。
本実施形態に係る静電粉体塗装方法は、前述の本実施形態に係る粉体塗料であって、帯電した粉体塗料を噴出して、粉体塗料を被塗装物に付着(塗着)させる工程(以下「塗着工程」とも称す)と、被塗装物に付着した粉体塗料を加熱して、塗装膜を形成する工程(以下「焼き付け工程」とも称す)と、を有する。
以下、各工程について説明する。
塗着工程においては、帯電した粉体塗料を吐出して、粉体塗料を被塗装物に静電的に付着(塗着)させて付着層を形成する。
具体的には、塗着工程では、例えば、静電粉体塗装機の吐出口と被塗布物の塗装面(導電性を有する面)との間に静電界を形成した状態で、静電粉体塗装機の吐出口から、帯電した粉体塗料を吐出し、粉体塗料を被塗装物の被塗装面に静電付着して、付着層を塗着する。つまり、例えば、接地した被塗布物の被塗装面を陽極、静電粉体塗装機を陰極として電圧を印加し、両極に静電界(静電場)を形成し、帯電した粉体塗料を飛翔させて、被塗布物の塗装面に静電付着して、粉体塗料の膜を形成する。
なお、塗着工程では、静電粉体塗装機の吐出口と被塗装物の塗装面とを相対的に移動しつつ、実施してもよい。
一方で、被塗装物上に形成する塗装膜が厚くなりつまり付着量が多くなる(例えば付着量120g/m2以上)と、より電荷が蓄積し易くなるため、塗膜荒れ(はじけ痕)も発生し易くなる。しかし、本実施形態によれば、上記の通り付着層における電荷の蓄積が低減され、塗膜荒れ(はじけ痕)の発生が抑制される。
焼き付け工程では、付着層を加熱して、塗装膜(塗装膜)を形成する。具体的には、加熱により、粉体塗料の膜の粉体粒子を溶融すると共に硬化させることで、塗装膜を形成する。
加熱温度(焼付温度)は、粉体塗料の種類に応じて選択される。一例として、加熱温度(焼き付け温度)は、例えば、90℃以上250℃以下が好ましく、100℃以上220℃以下がより好ましく、120℃以上200℃以下がさらに好ましい。なお、加熱時間(焼き付け時間)は、加熱温度(焼き付け温度)に応じて調節する。
ここで、粉体塗料を塗装する対象物品である被塗装物は、特に、制限はなく、各種の金属部品、セラミック部品、樹脂部品等が挙げられる。これら対象物品は、板状品、線状品等の各物品への成形前の未成形品であってもよいし、電子部品用、道路車両用、建築内外装資材用等に成形された成形品であってもよい。また、対象物品は、被塗装面に、予め、プライマー処理、めっき処理、電着塗装等の表面処理が施された物品であってもよい。
<白色顔料分散液(W1)の調製>
・酸化チタン(石原産業製 A−220):100部
・アニオン界面活性剤(第一工業製薬社製:ネオゲンRK):15部
・ノニオン界面活性剤(日本乳化剤社製:ニューコール2310):0.2部
・イオン交換水:400部
・0.3mol/lの硝酸:4部
以上を混合し、溶解し、高圧衝撃式分散機アルティマイザー((株)スギノマシン製、HJP30006)を用いて3時間分散して酸化チタンを分散させてなる白色顔料分散液を調製した。レーザー回折粒度測定器を用いて測定したところ顔料分散液における酸化チタンの体積平均粒径は、0.25μm、白色顔料分散液固形分比率は25%であった。
コンデンサー、温度計、水滴下装置、アンカー翼を備えたジャケット付き3リットル反応槽(東京理化器械(株)製:BJ−30N)を水循環式恒温槽にて40℃に維持しながら、該反応槽に酢酸エチル180部とイソプロピルアルコール80部との混合溶剤を投入し、これに下記組成物を投入した。
・ポリエステル樹脂(PES1)[テレフタル酸/エチレングリコール/ネオペンチルグリコール/トリメチロールプロパンの重縮合体(モル比=100/60/38/2(mol%)、ガラス転移温度=62℃、酸価(Av)=12mgKOH/g、水酸基価(OHv)=55mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)=12,000、数平均分子量(Mn)=4,000]:240部
・ブロックイソシアネート硬化剤VESTAGONB1530(EVONIK社製):60部
・ベンゾイン:1.5部
・アクリルオリゴマー(アクロナール4F、BASF社):3部
すぐに、得られた乳化液800部とイオン交換水700部とを2リットルのナスフラスコに入れ、トラップ球を介して真空制御ユニットを備えたエバポレーター(東京理化器械(株)製)にセットした。ナスフラスコを回転させながら、60℃の湯バスで加温し、突沸に注意しつつ7kPaまで減圧し溶剤を除去した。溶剤回収量が1100部になった時点で常圧(1気圧)に戻し、ナスフラスコを水冷して分散液を得た。得られた分散液に溶剤臭は無かった。この分散液における樹脂粒子の体積平均粒径は145nmであった。その後、アニオン性界面活性剤(ダウケミカル製、Dowfax2A1、有効成分量45質量%)を、分散液中の樹脂分に対して有効成分として2質量%添加混合し、イオン交換水を加えて固形分濃度が25質量%になるように調整した。これをポリエステル樹脂・硬化剤複合分散液(E1)とした。
−凝集工程−
・ポリエステル樹脂・硬化剤複合分散液(E1):180部(固形分45部)
・白色顔料分散液(W1):160部(固形分40部)
・イオン交換水:200部
以上を丸型ステンレス製フラスコ中においてホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて混合及び分散した。次いで、1.0質量%硝酸水溶液を用い、pHを3.5に調整した。これに10質量%ポリ塩化アルミニウム水溶液0.40部を加え、ウルトラタラックスで分散操作を継続した。
撹拌機、マントルヒーターを設置し、スラリーが充分に撹拌するように撹拌の回転数を調整しながら、50℃まで昇温し、50℃で15分保持した後、10質量%ポリ塩化アルミニウム水溶液0.10部を添加した。コールターカウンター[マルチサイザー−II]型(アパーチャー径:50μm、ベックマン−コールター社製)にて凝集粒子の粒径を測定し、体積平均粒径が5.5μmとなったところで、シェルとしてポリエステル樹脂・硬化剤複合分散液(E1)60部をゆっくりと投入した。
投入後30分間保持した後、5%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを7.0とした。その後、85℃まで昇温し、2時間保持した。
反応終了後、フラスコ内の溶液を3℃/分で冷却し、ろ過することにより固形分を得た。次に、この固形分を、イオン交換水で洗浄した後、ヌッチェ式吸引ろ過で固液分離し、再度固形分を得た。
次に、この固形分を40℃のイオン交換水3リットル中に再分散し、15分、300rpmで撹拌、洗浄した。この洗浄操作を5回繰り返し、ヌッチェ式吸引ろ過で固液分離して得られた固形分を12時間真空乾燥させて白色粉体粒子(PC1)を得た。
上述の凝集工程において白色顔料を添加せず、つまり白色顔料分散液(W1)を用いずにポリエステル樹脂・硬化剤複合分散液(E1)及びイオン交換水のみを使用したこと以外は、白色粉体粒子(1)の作製と同様の方法により、クリア粉体粒子(1)を作製した。
このクリア粉体粒子(PC2)の粒径を測定したところ、体積平均粒径D50vは6.4μm、体積粒度分布指標GSDvは1.24であった。平均円形度は、0.97であった。
・酸化チタン(石原産業製 A−220):200部
・ポリエステル樹脂(PES1)[テレフタル酸/エチレングリコール/ネオペンチルグリコール/トリメチロールプロパンの重縮合体(モル比=100/60/38/2(mol%)、ガラス転移温度=62℃、酸価(Av)=12mgKOH/g、水酸基価(OHv)=55mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)=12,000、数平均分子量(Mn)=4,000]:240部
・ブロックイソシアネート硬化剤VESTAGONB1530(EVONIK社製):60部
・ベンゾイン:1.5部
・アクリルオリゴマー(アクロナール4F、BASF社):3部
以上をミキサーにて予備混合をし、次にエクストルーダーにて100℃に加熱しながら混練を行い、粗粉砕しフレーク上にする。次にターボミルを用いて粒径6μmを狙いに微粉砕を行い、分級を実施し混練粉砕白色粉体塗料(PC3)を得た。
この混練粉砕白色粉体粒子(PC3)の粒径を測定したところ、体積平均粒径D50vは6.8μm、体積粒度分布指標GSDvは1.33であった。
(油相1の調製)
・フッ素系樹脂ルミフロン(登録商標)LF710F(旭硝子社製、ガラス転移温度=51℃、水酸基価(OHv)=46mgKOH/g):100.0部
・ブロックイソシアネート硬化剤VESTAGONB1530(EVONIK社製):20部
・酢酸エチル:100部
上記材料をビーカーに入れ、ディスパー(プライミクス(株)製)を用い3000rpmで1分間攪拌し油相1を調製した。
・ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの50%水溶液(エレミノールMON−7、三洋化成工業製):30.0部
・カルボキシメチルセルロース1%水溶液:100.0部
・イオン交換水:400.0部
上記材料を容器に入れ、TKホモミキサー(プライミクス(株)製)にて5000rpmで1分攪拌し、水相1を調製した。
また、実施例において使用した無機粒子の詳細を下記表1に記載した。
白色粉体粒子(PC1):100部と、無機粒子(M1):1.2部と、体積平均粒径12nmの疎水性シリカ粒子(R974、日本アエロジル社製):0.5部と、をヘンシェルミキサーを用い周速32m/s、10分間で混合した後、45μm網目の篩を用いて粗大粒子を除去し、白色粉体塗料を得た。
使用する粉体粒子及び無機粒子を下記表2に記載のように変更した以外は実施例1と同様にして、粉体塗料を得た。
各粉体塗料を旭サナック製コロナガンXR4−110Cに装填した。
鏡面仕上げのアルミ板の30cm×30cmの四角形テストパネル(被塗装物)に対して、パネル正面から20cmの距離(パネルとコロナガンの吐出口との距離)で、旭サナック製コロナガンXR4−110Cを上下左右にスライドさせて、粉体塗料を吐出して、パネルに静電付着させ、付着層を得た。コロナガンの印加電圧は80kV、入力エア圧は0.55MPa、吐出量100g/分とし、パネルに付着させる粉体塗料の付着量を50g/m2、90g/m2、180g/m2、又は、220g/m2とした4回の塗装を実施した。
その後、各パネルを180℃に設定した高温チャンバーに入れて30分加熱(焼付)した。
付着量100g/m2で付着(塗着)させた付着層における、付着終了30秒後の電荷量Q30と、付着終了300秒後の電荷量Q300との、「(Q30−Q300)/Q30」の絶対値により表される減衰率[30−300](%)を前述の方法により測定した。
また、付着終了30秒後の電荷量Q30と、付着終了200秒後の電荷量Q200との、「(Q30−Q200)/Q30」の絶対値により表される減衰率[30−200](%)、付着終了30秒後の電荷量Q30と、付着終了100秒後の電荷量Q100との、「(Q30−Q100)/Q30」の絶対値により表される減衰率[30−300](%)を前述の方法により測定した。
各付着量で付着層を形成し、上記方法により焼付を行った後の塗装膜表面を観察し、下記4段階の評価により評価した。なお、評価「1」又は「2」であれば実用に耐え得る。評価結果は表2に記載した。
−評価基準−
1:塗装膜表面に塗膜荒れ(はじけ痕)が認められない。
2:わずかな塗膜荒れ(はじけ痕)が認められる。
3:塗膜荒れ(はじけ痕、塗着ムラ)が認められる。
4:塗布面において、塗装膜が形成できていない箇所があり、そのため四角形テストパネルが視認される箇所がある。
塗膜荒れの評価において製造した、粉体塗料の付着量が50.0g/m2であるパネルに対して、200時間、光照射(光源:キセノンランプ、放射照度:540W/m2=100kルクス、UVカットフィルタなし)を行った。
光照射終了後、水を含んだ布により塗装膜表面を拭き取った後に、上記と同様に塗膜荒れの評価を行った。評価結果は表2に記載した。
Claims (6)
- 粉体粒子と、無機粒子と、を含み、
前記粉体粒子の体積平均粒径が3μm以上10μm以下であり、
基板上に付着させた付着量100g/m2の付着層における、付着終了から30秒後の電荷量をQ30、付着終了から300秒後の電荷量をQ300とした場合の「(Q30−Q300)/Q30」の絶対値により表される減衰率[30−300](%)が30%以上60%以下である粉体塗料。 - 前記付着層における付着終了から100秒後の電荷量をQ100とした場合の「(Q30−Q100)/Q30」の絶対値により表される減衰率[30−100](%)が5%以上20%以下である請求項1に記載の粉体塗料。
- 前記無機粒子の体積平均粒径が10nm以上100nm以下である請求項1又は請求項2に記載の粉体塗料。
- 前記無機粒子のアスペクト比が、1以上5以下である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の粉体塗料。
- 前記無機粒子がチタニア粒子である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の粉体塗料。
- 請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の粉体塗料であって、帯電した粉体塗料を噴出して、粉体塗料を被塗装物に付着させる工程と、
被塗装物に付着した粉体塗料を加熱して、塗装膜を形成する工程と、
を有する静電粉体塗装方法。
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