以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1(A)は、本実施形態に係る噴霧器1の上面図であり、図1(B)は、噴霧器1の正面図であり、図1(C)は、噴霧器1の底面図である。図1(D)は、噴霧器1の右側面図である。以下、図1(B)の矢印で示すように、噴霧器1を水平な台に載置したときに鉛直方向の上に向かう方向を「上方向」といい、下に向かう方向を「下方向」という。
噴霧器1は、噴霧液をミスト化して噴霧する装置である。特に、本実施形態に係る噴霧器1は、3種類の噴霧液を貯留可能であり、1または複数の噴霧液に基づくミストを選択的に噴霧することができる。また、本実施形態に係る噴霧器1は、モバイル型の噴霧器であり、ユーザは、噴霧器1を所定の空間に持ち込んで使用することができる。モバイル型とは、持ち運び可能な程度に小さく、また、持ち込まれた空間で使用可能であることを単に意味するものであり、使用態様はどのようなものであってもよい。例えば、噴霧器1は、持ち込まれた空間に固定的に取り付けられ、使用されてもよい。
図1に示すように、噴霧器1は、筐体2を有する。筐体2は、下端領域に底面3を有し、上端領域に上端開口4が形成された有底筒状のケース部材5と、このケース部材5の内部に設けられた設置台6とを有する。図1に示すように、筐体2の底面3(図1(C))の外周形状は、円である。また、筐体2の上端開口4(図1(A))の外周形状は、3つの辺H(辺HA、辺HBおよび辺HC)と、3つの接続部T(接続部TA、接続部TBおよび接続部TC)を有する形状(以下、「個数対応形状」という)である。図1(A)に示すように、3つの辺Hの長さは同一であり、また、3つの接続部Tの形状は弧状であり、個数対応形状は、接続部Tが弧状の正三角形に近い形状である。
図1に示すように、筐体2の立体的形状は、底面3から上端開口4に向かうに従って、断面の外周形状が、円から個数対応形状へと徐々に変化していく形状である。図2は、筐体2の立体的形状を説明するため、底面3の外周形状、および、上端開口4の外周形状を、図1(B)のA−A断面の外周形状と共に示す図である。図2において、(A)は上端開口4の外周形状を示し、(B)は図1(B)のA−A断面の外周形状を示し、(C)は底面3の外周形状を示す。筐体2の立体的形状は、底面3から上端開口4に向かうに従って、円から個数対応形状へと徐々に変化していく形状であるため、筐体2の断面の外周形状は、下方向に位置する断面ほど円に近い形状であり、上方向に位置する断面ほど個数対応形状に近い形状となる。また、図2に示すように、筐体2の各断面の外接円は、底面3から上端開口4に向かって徐々に大きくなっていく。
図1(C)に示すように、筐体2の上端領域に係る個数対応形状の外接円の中心と、下端領域に係る円の中心との水平方向における位置は、位置P1で一致している。このため、筐体2の立体的形状が上方に向かって広がっていく形状にもかかわらず、筐体2を水平面に載置したときに、筐体2を転倒させる偏った力が働きにくく、筐体2を水平面に安定して載置可能である。本実施形態では、筐体2の上端領域に係る個数対応形状の3つの辺Hの長さが同一であるため、3つの辺Hの長さがばらばらである場合と比較して、単純な立体的形状により、筐体2の上端領域に係る個数対応形状の外接円の中心と、下端領域に係る円の中心との水平方向における位置を一致させることができる。また、上述したように、3つの接続部Tのそれぞれの形状は弧状であるため、3つの接続部Tが鋭い角である場合と比較して、底面3から上端開口4に向かって筐体2の形状が滑らかに変化していき、意匠性が高い。筐体2の底面3の直径は約70ミリであり、筐体の上端開口4の外接円の直径は約90ミリであり、筐体2の高さは約160ミリであり、噴霧器1は、成人が片手で把持できる程度の大きさである。
図1(B)に示すように、ケース部材5は、上下方向の中央部を境として、下方に位置する下部ケース8と、上方に位置する上部ケース9とに分けられている。下部ケース8には、3つの噴霧ユニット10のそれぞれに圧縮空気を供給する3つのエアポンプ11(図1(B))や、噴霧器1の各部を制御する制御基板(不図示)、電力を供給する電池が取り付けられる電池ホルダー(不図示)等が設けられている。なお、詳細な説明は省略するが、本実施形態に係る噴霧器1は、電池ホルダーに取り付けられた電池から電力の供給を受けて駆動することが可能であると共に、USBケーブルが接続されるコネクタを有しており、USBケーブルを介して外部から電力の供給を受けて駆動することも可能である。
上部ケース9の正面には、パネル13が設けられている。パネル13には、噴霧器1の電源をオン/オフする電源スイッチ14が設けられている。また、パネル13には、噴霧器1が駆動する時間長を設定するためのタイマースイッチ15が設けられている。本実施形態では、ユーザは、タイマースイッチ15を操作することにより、噴霧器1が駆動する時間長を5分/10分/15分のいずれかに切り替えることができる。また、パネル13には、3つの収納室16(第1収納室16A、第2収納室16Bおよび第3収納室16C)のうち、ミストの噴霧に利用する容器17(図5参照)が収納された収納室を選択するための容器選択スイッチ23が設けられている。容器17は、噴霧液が収納された容器であり、後に詳述するように、噴霧器1には、第1収納室16A、第2収納室16B、第3収納室16Cに最大で3個の容器17を収納することができる。ユーザは、容器選択スイッチ23を操作することにより、第1収納室16A、第2収納室16Bおよび第3収納室16Cのうち、いずれか1つの収納室16か、任意の2つの収納室16か、3つの収納室16の全てを選択することができる。
図1(A)、(B)に示すように、上部ケース9には、設置台6が設けられている。設置台6は、3つの噴霧ユニット10(第1噴霧ユニット10A、第2噴霧ユニット10Bおよび第3噴霧ユニット10C)、および、3つの液体供給ユニット18(第1液体供給ユニット18A、第2液体供給ユニット18Bおよび第3液体供給ユニット18C)が設置される台である。図1(A)に示すように、設置台6の上面6aは、筐体2の上端開口4よりも下方に位置しており、設置台6の上面6aと、筐体2の上端開口4との間には、ケース部材5により外周が取り囲まれた空間である上部空間19が形成されている。
図1(A)、(B)に示すように、設置台6には、3つの噴霧ユニット10の貯槽室20(第1貯槽室20A、第2貯槽室20Bおよび第3貯槽室20C)、および、3つの液体供給ユニット18の収納室16(第1収納室16A、第2収納室16Bおよび第3収納室16C)が穿設されている。より詳細には、3つの貯槽室20、および、3つの収納室16は、それぞれ、設置台6の上面6aから下方向に向かって延在する円柱状の空間を有しており、貯槽室20および収納室16は、それぞれ、上端領域が開口した穴(凹み)として、設置台6に設けられている。図1(B)では、噴霧器1を正面視したときの第1噴霧ユニット10Aの第1貯槽室20Aの位置、および、第1液体供給ユニット18Aの第1収納室16Aの位置を模式的に示している。設置台6において、貯槽室20が設けられている位置が噴霧ユニット10の位置であり、収納室16が設けられている位置が液体供給ユニット18の位置である。
上述したように、筐体2の上端開口4(上端領域)の外周形状は、同じ長さの3つの辺H(辺HA、辺HBおよび辺HC)と、弧状の3つの接続部T(接続部TA、接続部TBおよび接続部TC)とを有する個数対応形状である。図1(A)に示すように、設置台6において、3つの噴霧ユニット10は、それぞれ、3つの接続部Tに対応する位置に配置されている。より詳細には、3つの噴霧ユニット10は、それぞれ、仮想円KS1上に同一角度(120°)だけ離間した状態で、3つの接続部Tのそれぞれの近傍に配置されている。このような構成のため、3つの噴霧ユニット10のそれぞれを、設置台6に効率的に離間して配置できる。
また、本実施形態に係る噴霧器1は、3種類のミストを噴霧可能であるが、上端領域の外周形状が、噴霧可能なミストの種類の個数と同数の接続部Tを有する個数対応形状であるため、筐体2の上端部において、外側に向かって張り出した部分(接続部T)の数と、噴霧可能なミストの種類の個数とが一致する。これにより、噴霧器1の外観と、噴霧可能なミストの種類の個数とに関連性を持たせることができ、噴霧器1の外観を、3種類のミストを噴霧可能という特徴を活かした外観とすることができる。これにより、ユーザは、噴霧器1の外観を見るだけで、噴霧可能なミストの種類および個数を直感的に認識することができ、ユーザの利便性が高い。特に、本実施形態に係る噴霧器1では、各噴霧ユニット10が各接続部Tの近傍に設けられる構成のため、ユーザは、噴霧器1の外観を見るだけで、噴霧器1においてミストが噴霧される位置を直感的に認識できる。ユーザは、当該認識に基づいて、噴霧器1の向きを変更することができ、この点においてもユーザの利便性が高い。
上述したように、3つの噴霧ユニット10のそれぞれは、3つの接続部Tのそれぞれに対応する位置(3つの接続部Tのそれぞれの近傍)に配置されている。このため、設置台6において、1の噴霧ユニット10と、他の噴霧ユニット10とは、一定のスペースを空けた状態で、離間した状態となる。その上で、図1(A)に示すように、設置台6では、噴霧ユニット10と噴霧ユニット10との間のスペースに、1つの液体供給ユニット18が配置されている。この構成のため、3つの噴霧ユニット10のそれぞれが3つの接続部Tのそれぞれに対応する位置に配置されることに伴って必然的に生じるスペースに、3つの液体供給ユニット18が1つずつ配置されている状態となり、デッドスペースを有効活用して、液体供給ユニット18が効率よく配置されており、筐体2の大型化が抑制されている。
本実施形態では、第1噴霧ユニット10Aと、第1液体供給ユニット18Aとが1つの導入経路21(後述)で接続された一対の噴霧ユニット10と液体供給ユニット18との組み合わせであり、また、第2噴霧ユニット10Bと、第2液体供給ユニット18Bとが1つの導入経路21で接続された一対の噴霧ユニット10と液体供給ユニット18との組み合わせであり、また、第3噴霧ユニット10Cと、第3液体供給ユニット18Cとが1つの導入経路21で接続された一対の噴霧ユニット10と液体供給ユニット18との組み合わせである。
そして、図1(A)に示すように、一対の噴霧ユニット10と液体供給ユニット18とは、隣接した状態で設置台6に設けられる。このため、一対の噴霧ユニット10と液体供給ユニット18とを設置台6において離間して配置する場合と比較し、設置台6を小型化することができ、噴霧器1の小型化を実現できる。さらに、一対の噴霧ユニット10と液体供給ユニット18とが隣接した状態で設置台6に設けられ、一対ではない噴霧ユニット10と液体供給ユニット18とは離間して配置される構成のため、ユーザは、筐体2の上面を見たときに、互いに対応する一対の噴霧ユニット10と液体供給ユニット18との組み合わせを直感的に認識できる。後述するように、ユーザは、液体供給ユニット18の収納室16に容器17を収納することができるが、上記構成のため、収納室16に容器17を収納する際、一対の噴霧ユニット10と液体供給ユニット18との組み合わせを的確に認識した上で、適切な収納室16に容器17を収納できる。
図1(A)に示すように、設置台6の内部には、パネル13を駆動する基板を設置するためのスペース22が形成されている。噴霧ユニット10および液体供給ユニット18は、このスペース22を避けて、設置台6に設けられる。
図1(A)に示すように、各貯槽室20には、貯槽室20の上部開口を塞ぐ蓋部24が脱着可能に取り付けられる。図3は、蓋部24の構造を説明するため、蓋部24を横から見た様子を貯槽室20と共に簡略化して模式的に示す図である。図3(A)は、蓋部24が取り外されている状態を示し、図3(B)は、蓋部24が取り付けられている様子を示している。図3(B)では、筐体2に取り付けられた状態のカバー部材25(後述)も併せて示している。また、図3(B)では、蓋部24内でミストが通るミスト放出孔26を単純化し、模式的に示している。
図3に示すように、蓋部24は、第1蓋部28と、第2蓋部29とを備える。第1蓋部28は、蓋嵌合部30と、蓋フランジ31と、上方に向かって突出した円柱状の蓋接続部32とを有し、設置台6の上面6aに蓋フランジ31が接触し支持された状態で、蓋嵌合部30が貯槽室20に嵌合することによって、貯槽室20に取り付けられる。第1蓋部28の蓋嵌合部30の下面には、分離板33が接続されている。分離板33については後述する。
また、第2蓋部29は、蓋筐体35と、蓋突出部36と、蓋位置決め部材37とを備える。蓋筐体35は、第1蓋部28の蓋接続部32が嵌合する蓋嵌合孔38を有しており、第2蓋部29は、第1蓋部28の蓋接続部32が蓋嵌合孔38に挿入されることにより、回動自在に第1蓋部28に取り付けられる。蓋突出部36は、蓋筐体35から水平方向に突出する部材であり、先端部に、ミスト放出孔26に連通し、ミストが噴霧される噴霧口39(図3(B))が形成されている。
蓋位置決め部材37は、蓋突出部36から上方に向かって突出する部材であり、筐体2にカバー部材25を取り付けた場合に、カバー部材25を位置決めする。図4は、カバー部材25が取り付けられた状態の噴霧器1の上面図である。カバー部材25は、筐体2の上端領域の上端開口4を覆う円板状の部材であり、図3(B)および図4に示すように、3つの噴霧ユニット10の蓋部24の蓋筐体35の上面に載置され、支持されると共に、3つの蓋位置決め部材37により、上端開口4における位置が位置決めされる。図4に示すように、カバー部材25は、各接続部Tに対応する位置に、上部空間19に連通する間隙41が形成された状態で、筐体2に取り付けられる。また、図4に示すように、筐体2にカバー部材25が取り付けられた状態においては、3つの噴霧口39が、それぞれ、接続部Tを介して外側へ向かう方向(図4において矢印Y1で示す方向)に向かった状態となるように、第2蓋部29のそれぞれの位置が位置決めされる。
蓋部24およびカバー部材25に関連する構成が以上の構成のため、以下の効果を奏する。すなわち、噴霧口39が形成された蓋突出部36が、設置台6の上面6aと、筐体2の上端領域との間に形成された上部空間19の内部に位置する構成のため、噴霧器1を正面視したときに、噴霧口39や、噴霧口39が形成された部材(蓋突出部36)が外部に露出せず、このような部材が露出する場合と比較して、噴霧器1の見た目がシンプルになり、意匠性が高い。特に、筐体2にカバー部材25を取り付けた状態では、設置台6の上面6aが平らな面を有するカバー部材25で覆い隠され、噴霧器1が1つのケースにより構成されているような一体感が生じ、より意匠性が高まる。また、本実施形態では、カバー部材25が取り付けられた状態であっても、各接続部Tに対応する位置に、上部空間19に連通する間隙41が形成されるため、噴霧口39から噴霧されるミストは、カバー部材25に阻害されることなく、噴霧器1が設けられた空間に放出される。特に、本実施形態では、筐体2の上端開口4が3つの辺Hと3つの接続部Tとを有する個数対応形状であるため、カバー部材25を、上端開口4の辺Hのそれぞれに外周が接する程度のサイズの円板状の部材とすることにより、間隙41を適切に形成することができる。
次に、噴霧ユニット10および液体供給ユニット18について詳述する。図5は、図1(A)のB−B断面図である。なお、図5は、ミストが噴霧される原理を説明することを目的とする図であり、説明の便宜を考慮して、各部材の形状を非常に単純化して表すと共に、各部材の尺度を実際とは異ならせている。
図5に示すように、液体供給ユニット18の収納室16には、容器17を収納可能である。容器17は、中空容器であり、噴霧液を貯留する液体貯留ケース42と、液体貯留ケース42の首部43に挿入されたパイプ44とを有する。パイプ44の先端部には、液体供給口45が形成されている。容器17が上下逆の状態となると、容器17内に残留する噴霧液が、重力に従って首部43側に滞留し、噴霧液がパイプ44を通って液体供給口45から少しずつ吐出される。
図5に示すように、収納室16の底部には、一時貯留部46が設けられる。一時貯留部46は、中央部に下方に向かって凹んだ凹み部47が形成されると共に、内部に容器17から供給される噴霧液を貯留可能な空間が形成された部材である。一時貯留部46の凹み部47には、保持機構48が形成される。保持機構48は、容器17が脱着可能に取り付けられる機構であり、収納室16における容器17の位置を位置決めしつつ上下逆の状態で容器17を保持する。図5では詳細な図示を省略しているが、保持機構48には、容器17の首部43が螺着可能な雌ネジ部が形成されており、容器17は、上下逆の状態で保持機構48に対して螺着されることにより保持機構48に取り付けられ、螺着が解除されることにより保持機構48から取り外される。図5に示すように、容器17は、容器17の液体貯留ケース42の外周と、収納室16の内周との間に間隙α1が形成された状態で、保持機構48に取り付けられる。
一時貯留部46の凹み部47の中央部には、保持機構48に容器17が取り付けられたときに、一時貯留部46の内部空間に液体供給口45が入り込んだ状態でパイプ44が貫通する貫通孔が設けられている。図5では詳細な図示は省略しているが、一時貯留部46において、凹み部47を取り囲む環状の環状部50の上面には、一時貯留部46の内部の空間に連通する開口が適切に形成されており、この開口を介して一時貯留部46の内部空間と、収納室16の内部空間とは連通している。上述したように、容器17が保持機構48に取り付けられると、容器17の液体貯留ケース42の外周と収納室16の内周との間に間隙α1が形成されるため、一時貯留部46の内部空間は大気圧に開放された状態となる。
図5に示すように、筐体2の設置台6には、導入経路21が設けられる。導入経路21は、一時貯留部46に貯留する噴霧液を貯槽室20に導入するための経路である。導入経路21は、収納室側接続部51で一時貯留部46に接続され、貯槽室側接続部52で貯槽室20に接続される。導入経路21は、一時貯留部46から貯槽室20に向かうに従って下方に向かうように傾斜している。導入経路21と一時貯留部46との接続部である収納室側接続部51は、一時貯留部46の下端部に接続されている。また、導入経路21と貯槽室20との接続部である貯槽室側接続部52は、貯槽室20内に設けられた外管53の吸液口54(後述)よりも上方に位置している。
以上の構成の下、容器17を収納室16に収納した場合(容器17を保持機構48に取り付けた場合)、容器17に貯留された噴霧液は、以下の態様で貯槽室20に供給される。すなわち、噴霧液が十分に貯留する容器17を上下逆の状態で保持機構48に螺着により取り付けると、パイプ44の液体供給口45を介して、容器17に貯留する噴霧液が少しずつ一時貯留部46に供給される。上述したように、収納室側接続部51は、一時貯留部46の下端部に位置しているため、一時貯留部46に供給された噴霧液は、最初のうちは、導入経路21を通って、貯槽室20に導入され、貯槽室20内に貯留する。また、容器17には、容器17内に残留する噴霧液の液面より上方に、密閉空間55(図6参照)が形成される。
容器17から一時貯留部46への噴霧液の供給が進むにつれ、徐々に貯槽室20に貯留する噴霧液の水位が上昇し、貯槽室20における液面が一時貯留部46の底面を上方に向かって超えた状態となる。この状態となった後は、一時貯留部46と貯槽室20とは導入経路21を介して接続されているため、貯槽室20における液面の高さと、一時貯留部46における液面の高さとが一致し、容器17からの液体の供給に応じて、これら液面の高さが同じである状態が維持されつつ、これら液面が一体的に上昇していく。一時貯留部46における液面の上昇に応じて、容器17のパイプ44の液体供給口45は、一時貯留部46に貯留する噴霧液に浸かった状態となる。容器17からの噴霧液の供給に応じて、さらに液面の上昇が続くと、ある位置で液面の上昇が停止する。
図6は、図5において液面の上昇が停止したときの噴霧液の状態を模式的に示す図である。上述したように、一時貯留部46の内部空間は、大気圧に開放された空間であり、また、貯槽室20も蓋部24に形成されたミスト放出孔26に連通する空間であるため、大気圧に開放された空間である。従って、一時貯留部46および貯槽室20の液面には、大気圧が作用する。そして、容器17において、一時貯留部46および貯槽室20の液面に作用する大気圧と、「容器17の内部において、液面よりも上方に滞留する噴霧液に由来して液面に作用する圧および容器17の密閉空間55に滞留する空気層に由来して液面に作用する圧」と、がつりあったときに、貯槽室20および一時貯留部46における液面の上昇は停止し、貯槽室20に貯留する噴霧液の消費が無い状況では、容器17からの噴霧液の供給が停止する。
このように、収納室16に容器17が収納された後、しばらくの間、容器17からの噴霧液の供給に応じて一時貯留部46および貯槽室20における液面が一体的に上昇し、大気圧に関連する圧力バランスがつりあったときに、液面の上昇が停止すると共に、容器17からの噴霧液の供給が停止する。そして、本実施形態では、容器17に貯留する噴霧液の残量にかかわらず、貯槽室20に貯留される噴霧液の液面の位置が、貯槽室20における位置P2(図6参照)よりも低い状態のときに、大気圧に関連する圧力バランスがつりあい、液面の上昇が停止すると共に、容器17からの噴霧液の供給が停止する構成となっている。つまり、本実施形態では、容器17に貯留する噴霧液の残量にかかわらず、貯槽室20における液面の位置は、必ず、位置P2よりも低い位置に位置した状態とされる。そして、位置P2は、外管53の吸液口54よりも高い位置という条件を満たした上で、貯槽室20における低い位置とされる。具体的には、貯槽室20の上下方向の長さを「1」とした場合に、貯槽室20の底面から「1/3」だけ上方の位置よりも低い位置とされる。以上の構成に基づく効果については後述する。
噴霧ユニット10による噴霧液の消費が進むと、いずれ容器17は、空になる。上述したように、導入経路21は、一時貯留部46から貯槽室20に向かうに従って下方に向かうように傾斜しており、また、導入経路21と貯槽室20との接続部である貯槽室側接続部52は、貯槽室20内に設けられた外管53の吸液口54よりも上方に位置している。このため、容器17が空となった後、さらに、噴霧ユニット10による噴霧液の消費が進むと、まず、一時貯留部46が空になり、その後、貯槽室20が空になる。このような構成のため、貯槽室20に噴霧液が残留しておらず、噴霧ユニット10によるミストの噴霧ができなくなったときに、一時貯留部46に液体が残量したままとなることを防止でできる。
なお、例えば、以下の構成とすることにより、容器17に貯留する噴霧液の残量にかかわらず、貯槽室20における液面の上限位置を位置P2よりも低くすることが可能である。すなわち、貯槽室20に液面の位置を検出するセンサーを設ける。さらに、容器17の液体供給口45と、貯槽室20とを流路によって接続すると共に、この流路上にポンプを設け、ポンプが駆動している間、容器17から貯槽室20に噴霧液が供給され、ポンプが停止している間、容器17から貯槽室20への噴霧液の供給が停止する構成とする。そして、センサーの検出値により、センサーの液面の位置を管理し、液面の位置が位置P2を上方に向かって超えないように、ポンプの駆動を制御する構成とすることにより、容器17に貯留する噴霧液の残量にかかわらず、貯槽室20における液面の上限位置を位置P2よりも低くすることが可能である。しかしながら、この場合、センサーや、ポンプを設ける必要があり、製造コストの増大や、装置構造の複雑化、消費電力の増大、筐体2の大型化を招いてしまう。一方、本実施形態によれば、大気圧に関連する圧力バランスのつり合いにより、貯槽室20における液面の上限位置を位置P2よりも低くしているため、センサーや、ポンプを設けることに伴うデメリットが発生しない。
また、本実施形態では、容器17を保持機構48に装着すれば、自動で、噴霧液が一時貯留部46を介して貯槽室20に供給される構成のため、貯槽室20への噴霧液の供給に際し、ユーザは、容器17を取り付ける以外の特別な作業を行う必要が無く、ユーザの利便性が高い。
図5に示すように、噴霧ユニット10は、内管56を有する。内管56は、貯槽室20の底面を貫通した状態で、貯槽室20の中央部に立設される。内管56には、給気路57が貫設されており、この給気路57の下端部は、エアポンプ11から圧縮空気が供給される空気供給路(不図示)に接続されている。エアポンプ11が吐出する圧縮空気は、内管56の給気路57に導入される。内管56の先端部には、給気路57に連通する給気口58が設けられている。
内管56には、噴霧液が流通する液体流路59となる隙間が形成された状態で、外管53が外装されている。液体流路59の幅は、1〜2ミリ程度である。外管53は、内管56を内部に挿入可能な中空の円柱状に形成され、所定の機構により、貯槽室20における位置が位置決めされた状態で、その位置が固定されている。外管53の先端部には、液体流路59と連通するミスト噴出口60が形成され、外管53の基端部には、吸液口54が形成されている。図5に示すように、吸液口54は、貯槽室20の最下端部において、貯槽室20に露出しており、噴霧液が貯槽室20に貯留している状態の場合、噴霧液は、吸液口54を介して外管53内に導入される。図5に示すように、内管56の給気口58と、外管53のミスト噴出口60との間には、空間である外管内空間61が形成されている。
上述したように、蓋部24は、貯槽室20の上端開口を覆う蓋部材であり、貯槽室20で発生したミストが通るミスト放出孔26が設けられると共に、ミスト放出孔26に連通しミストを噴霧する噴霧口39が設けられる。蓋部24と外管53との間であって、外管53のミスト噴出口60が対向する位置には、分離板33が設けられている。分離板33の下面には、上方に向かって凹むように湾曲した湾状曲面33aが形成されている。
以上の構成の下、噴霧ユニット10は、以下の態様でミストを噴霧する。なお、以下の説明では、噴霧液が十分に残留する容器17が収納室16に収納されている状態であるものとする。ミストの噴霧に際し、まず、エアポンプ11が駆動し、エアポンプ11から内管56の給気路57に圧縮空気が導入される。内管56の給気路57に導入された圧縮空気は、給気口58から上方へ向かって吐出され、さらに外管53のミスト噴出口60を通って貯槽室20内へ吐出される。このとき、圧縮空気がミスト噴出口60から吐出されることにより、内管56の給気口58と外管53のミスト噴出口60との間の外管内空間61は負圧となる。これにより、外管53の吸液口54から外管53内へ浸入した噴霧液が液体流路59を通り上方に向かって吸い上げられ(図5の矢印Y2参照)、給気口58の上部開口面に沿って液膜が形成され、これが内管56の給気口58から吐出される空気により引きちぎられて一次ミスト化する。
このようにして外管内空間61内に噴出された一次ミストは、外管53の内周壁面に衝突し、その衝撃およびオリフィス効果による空気流のシェアにより引きちぎられ、さらに微細な二次ミストが生成される。この二次ミストは、外管53のミスト噴出口60から貯槽室20へと噴出される(図5の矢印Y3参照)。ミスト噴出口60から上方に噴出された二次ミストは、ミスト噴出口60の上方に設けられた分離板33の湾状曲面33aに衝突する。ここで、粒子径の大きいミスト(以下、「粗大ミスト」という)は、慣性力が大きいため下方へと跳ね返り、貯槽室20に貯留する噴霧液に還流される(図5の矢印Y4参照)。このように、粗大ミストは、貯槽室20外の空気に触れることなく、貯槽室20に貯留する噴霧液に速やかに環流する。このため、貯槽室20に貯留する噴霧液の酸化促進が抑制される。
一方、貯槽室20に貯留する噴霧液に還流しない粒子径が微細なミスト(以下、「微細ミスト」という)は、慣性力が小さいため、分離板33の湾状曲面33aに衝突しても下方へ跳ね返らず、空気流に乗って分離板33の縁を超えて水平方向に拡散する(図5の矢印Y5参照)。分離板33の縁を超えて水平方向に拡散した微細ミストは、空気流に乗って蓋部24のミスト放出孔26へ流入し、ミスト放出孔26を通って噴霧口39から系外へと噴霧される。
ここで、本実施形態に係る噴霧器1は、モバイル型の噴霧器であり、駆動するために必要なエアポンプ11の出力風量ができるだけ小さいことが求められる。小さい出力風量で駆動することが可能であれば、エアポンプ11として、出力の小さいものを用いることができ、噴霧器1の省電力化および小型化を実現できるからである。特に本実施形態に係る噴霧器1は、商用電源から電力の供給を受けて駆動する構成ではないため、省電力化が強く求められる。上述した通り、本実施形態に係る噴霧器1は、エアポンプ11から内管56に圧縮空気を導入することによって、ベンチュリー効果を利用して、内管56の外周と外管53の内周との間に形成された液体流路59を通して噴霧液を吸い上げ、ミストを生成する構成ため、内管56および外管53の長さが短く、液体流路59の長さが短いほど、噴霧液を吸い上げるために必要な力が小さくて済み、エアポンプ11の出力風量を小さくできる。
そして、本実施形態に係る噴霧器1では、上述したように、貯槽室20における液面の上限位置が、位置P2を下回る位置とされており、貯槽室20における液面の上限位置が低い。つまり、容器17に残留する噴霧液の量にかかわらず、貯槽室20における液面の位置は、位置P2を下回った低い状態が維持される。このため、ベンチュリー効果によって噴霧液を吸い上げてミスト化することが可能であり、かつ、位置P2よりも内管56の先端が上方に位置するという条件を満たす範囲で、内管56および外管53の長さを短くすることができ、エアポンプ11の出力風量を小さくできる。
さらに、本実施形態に係る噴霧器1は、モバイル型の噴霧器であるため、噴霧器1の持ち込み先において噴霧液を供給する作業が頻繁に発生することを防止するため、噴霧液を供給する作業を行うことなくミストが継続して噴霧される時間をできるだけ長時間化することが求められる。噴霧時間の長時間化は、噴霧ユニット10が1回の使用で消費可能な噴霧液の最大量を増大することにより達成可能である。そして、本実施形態に係る噴霧器1では、噴霧ユニット10と別体として液体供給ユニット18が設けられ、液体供給ユニット18の収納室16に収納される容器17から、噴霧ユニット10の貯槽室20に噴霧液が供給される構成である。このため、貯槽室20に貯留可能な噴霧液の最大量にかかわらず、容器17に貯留可能な噴霧液の最大量が、噴霧ユニット10が使用可能な噴霧液の最大量となり、ミストの噴霧時間の長時間化を実現できる。
なお、ミストの噴霧時間の長時間化は、液体供給ユニット18を設けることなく、貯槽室20に貯留可能な噴霧液の最大量を多くすることでも実現可能であるが、貯槽室20に貯留可能な噴霧液の最大量を増大させるためには、内管56および外管53の長さを長くする必要があり、エアポンプ11の出力風量の低下が阻害されてしまう。一方、本実施形態では、内管56および外管53の長さを長くすることなく、換言すれば、エアポンプ11の出力風量を大きくすることなく、ミストの噴霧時間の長時間化を実現できる。
次に、噴霧器1の使用態様の例について説明する。上述したように、本実施形態に係る噴霧器1は、モバイル型の噴霧器であり、所定の空間に持ち込まれて使用されるものであるが、本実施形態に係る噴霧器1は、特に、車両の車内に持ち込まれて使用されることが想定されている。以下、噴霧器1が車両で使用されるものとして、噴霧器1の使用態様について説明する。また、ユーザは、車両を運転する者であるものとする。
まず、ユーザは、容器17として、以下の3種類の噴霧液が貯留された3つの容器17を準備する。1つ目は、眠気を覚醒する効果を有する噴霧液であり、例えば、ペパーミント精油を含むミント系のアロマオイルである。以下、眠気を覚醒する効果を有する噴霧液を「眠気覚醒液」といい、眠気覚醒液を貯留する容器17を「眠気覚醒容器」といい、眠気覚醒液に基づくミストを「眠気覚醒ミスト」という。2つ目は、疲労を回復する効果を有する噴霧液であり、例えば、オレンジや、柚子の柑橘系の果物に由来する精油を含むアロマオイルである。以下、疲労を回復する効果を有するアロマオイルを「疲労回復液」といい、疲労回復液を貯留する容器17を「疲労回復容器」といい、疲労回復液に基づくミストを「疲労回復ミスト」という。3つ目は、噴霧器1が設けられた空間を消臭する効果を有する噴霧液である。以下、消臭効果を有する噴霧液を「消臭液」といい、消臭液を貯留する容器17を「消臭容器」といい、消臭液に基づくミストを「消臭ミスト」という。なお、液体供給ユニット18の保持機構48の構造や、収納室16のサイズは、現状、広く販売され、普及しているアロマテラピー用の容器17の形状に対応しており、ユーザは、市販の容器17を購入することにより、上記3種類の噴霧液に係る容器17を購入できる。上記の3種類の噴霧液に係る3つの容器17のセットを、噴霧器1の提供者等がセットで提供してもよい。
ユーザは、車両の車内に、噴霧器1および3つの容器17を持ち込み、噴霧器1をホルダーに取り付ける。以下、噴霧器1のホルダーへの取り付けについて、噴霧器1の構造的特徴と共に説明する。ここで、近年、ドリンクホルダーが広く普及している。ドリンクホルダーは、ジュースの缶や、コップ等、円筒状の物体が装着され、装着された円筒状の物体を支持する部材である。多くの車両では既に実際にドリンクホルダーが設けられており、また、このようなドリンクホルダーは店舗での販売や通信販売等の様々な手段で販売されており、ユーザはドリンクホルダーを簡単に入手することができる。
図7は、ドリンクホルダーの一例を示す図である。図7(A)は、ドリンクホルダー70を横から見た図を、ドリンクホルダー70に装着された円筒状の物体と共に示す図であり、図7(B)はドリンクホルダー70を上から見た図である。図7(A)で示す円筒状の物体の高さは、本実施形態に係る噴霧器1の高さと同じであるものとする。
図7で例示するドリンクホルダー70は、円筒状の物体が載置される載置台71と、この載置台71に立設され、当該物体が装着されたときに、当該物体の側面に接触し、当該物体の水平方向の動きを規制する規制部材72と、この規制部材72に取り付けられ、当該物体が装着されたときに、当該物体を把持し、規制部材72に対して、当該物体を押圧して、載置台71に対する当該物体の位置を位置決めする一対の支持部73とを備える。図7(B)に示すように、一対の支持部73のそれぞれには、弧状に湾曲した湾曲面73aが形成されており、湾曲面73aが円筒状の物体の側面に接触して、円筒状の物体を支持し、円筒状の物体を安定的に固定する。一方、ドリンクホルダー70に、三角柱や、四角柱の物体を装着した場合には、支持部73の湾曲面が接触する部分が少なくなり、円筒状の物体を装着した場合と比較して、安定的に固定されない状態となる。
以下の説明では、車両に図7で例示したドリンクホルダー70が事前に設けられているものとする。なお、図7で例示したドリンクホルダー70は、あくまでドリンクホルダーの一例であり、現状では、さまざまな形状のドリンクホルダーが普及している。ただし、各種形状のドリンクホルダーは、基本的には、図7で例示したドリンクホルダー70のように、円筒状の物体を支持する支持部(例えば、円筒状の物体が挿入される有底円筒状の支持部)を備えており、この支持部により円筒状の物体が安定的に支持される構造となっている。
ユーザは、車内に持ち込んだ噴霧器1をドリンクホルダー70に装着する。ここで、上述したように、噴霧器1の筐体2の立体的形状は、下端領域から上端領域に向かうに従って、円から個数対応形状に徐々に変化する形状である。このため、筐体2について、ドリンクホルダー70の支持部が接触すると想定される範囲の立体的形状は、円筒に近い形状である。図7で例示したドリンクホルダー7070では、噴霧器1の上下方向の中央部が支持部73によって把持されることになるが、支持部73が接触する範囲の各断面は円に近い形状であり、支持部73が接触される範囲の立体的形状は、円筒に近い形状である。上述したように、ドリンクホルダー70は、円筒状の物体が装着された場合に、当該物体を安定的に支持するが、本実施形態に係る噴霧器1は、ドリンクホルダー70の支持部が接触すると想定される範囲の立体的形状が円筒に近い形状であるため、噴霧器1をドリンクホルダー70に装着した場合、円筒状の物体を装着した場合と同様、支持部により安定的に支持される。
ユーザは、ドリンクホルダー70に噴霧器1を装着した後、眠気回復容器、疲労回復容器および消臭容器を、噴霧器1の収納室16のそれぞれに収納する。なお、噴霧器1のドリンクホルダー70への装着と、各容器17の各収納室16への収納は前後して行われてもよい。上述したように、容器17の収納室16への収納に応じて、容器17から貯槽室20への噴霧液の供給が適切に行われ、ミストの噴霧を開始可能な状態となる。
ここで、車両の運転中は、運転手に「眠気」または「疲労」という身体的、心理的な状態が発生し得ることが広く知られている。眠気は、一例として、睡眠不足のときや、代わり映えのしない景色の中を相当の時間走行しているときに発生し、また、疲労は、一例として、車両を長時間運転しているときや、頻繁に運転に関する操作が発生した場合に発生する。そして、本実施形態に係る噴霧器1は、眠気覚醒容器、疲労回復容器および消臭容器が収納されている状態において、運転手に生じた眠気を覚醒し、または、疲労を回復することが可能なディフューザーとして機能する。
詳述すると、ユーザは、眠気を感じた場合、パネル13を操作して、眠気覚醒液に基づく眠気覚醒ミストの噴霧を開始させる。眠気覚醒ミストは、眠気を覚醒する効果を有する成分を含むミストであり、車内に眠気覚醒ミストが噴霧され、ユーザが眠気覚醒ミストを嗅ぐことができる状態となることによって、ユーザの眠気の覚醒が促される。同様に、ユーザは、疲労を感じた場合、パネル13を操作して、疲労回復液に基づく疲労回復ミストの噴霧を開始させる。疲労回復ミストは、疲労を回復する効果を有する成分を含むミストであり、車内に疲労回復ミストが噴霧され、ユーザが疲労回復ミストを嗅ぐことができる状態となることによって、ユーザの疲労の回復が促される
ここで、ユーザが、眠気覚醒や疲労回復の効果を期待して、噴霧器1によるミストの噴霧を開始させるタイミングは、ユーザが運転中の場合も多く、ミストの噴霧に応じて眠気覚醒や疲労回復の効果ができるだけ早くユーザに現れることが求められる。そして、ミストの噴霧に応じてできるだけ早く眠気覚醒や疲労回復の効果がユーザに現れるためには、噴霧器1により、粒子径が微細なミストが単位時間あたりに十分な量、噴霧される必要がある。また、噴霧されるミストの酸化ができるだけ進んでいない方が、眠気覚醒や疲労回復の効果を的確にユーザにもたらすことができる。
そして、上述のとおり、本実施形態に係る噴霧器1は、ミストを噴霧する方法として、圧縮空気を導入してベンチュリー効果によって噴霧液を吸い上げ、ミスト化して噴霧する方法(以下、「対応方法」という)を採用すると共に、分離板33により、粒子径が微細なミストのみが系外に放出される構成であるため、粒子径が微細なミストを単位時間あたりに十分な量、噴霧できる。また、本実施形態に係る噴霧器1は、分離板33により、粗大なミストは、速やかに噴霧液に還流するため、噴霧液の酸化の促進を抑制でき、酸化ができるだけ進んでいないミストを噴霧できる。
その上で、本実施形態に係る噴霧器1は、上述した構造的特徴により、筐体2の小型化、エアポンプ11の出力風量の縮小化に伴う省電力化が実現されており、そのサイズ、および、消費電力の点で、車両で使用される噴霧器1として非常に適している。ここで、噴霧器がミストを噴霧する方法は、対応方法以外にも、液体を超音波によって振動させることによってミストを発生し噴霧する方法や、微細な噴霧孔が形成されたミストノズルによってミストを発生し噴霧する方法等がある。しかしながら、対応方法以外の方法で、本実施形態に係る噴霧器1と同等の眠気覚醒や疲労回復の効果を得ることができる程度に、微細なミストを十分に噴霧しようとする場合、本実施形態に係る噴霧器1と同等の消費電力、同等の小ささでは、極めて困難である。
また、上述したように、本例では、噴霧器1に、眠気覚醒容器および疲労回復容器のほか、消臭液を貯留する消臭容器が収納される。消臭液に基づく消臭ミストは、例えば、以下の場合に、噴霧される。すなわち、眠気覚醒ミストや、疲労回復ミストの噴霧後、眠気の覚醒や疲労の回復の効果を得た場合に、ユーザは、車内を速やかに消臭し、一旦、特定の香りがない空間としたいと考える場合があり、このような場合に、ユーザは、噴霧器1に消臭ミストを噴霧させて、車内の空間を消臭する。また、車両は、特定のユーザが運転するだけでなく、異なるユーザが運転する場合がある。特に、車両が、レンタカーや、カーシェアリングで用いられるものである場合には、基本的には、車両は、不特定の者に運転される。そして、一のユーザが車両において噴霧器1を使用してミストを噴霧した後、当該一のユーザに代えて、他のユーザが車両を運転する場合に、当該他のユーザが、一旦、特定の香りがない空間としたいと考える場合があり、このような場合に、当該他のユーザは、噴霧器1に消臭ミストを噴霧させて、車内の空間を消臭する。
すなわち、車両の車内は、密閉された狭い空間であり、噴霧器1によるミストの噴霧が行われた後に、一旦、車内の空間を無臭としたいとするニーズが現実に生じることが想定される。そして、噴霧器1に消臭液を貯留する消臭容器を収容することにより、このようなニーズに的確に応えることができる。
ここで、本実施形態では、噴霧器1は、3つの収納室16を備え、最大で3つの容器17を収納可能である。なお、収納室16の個数が多ければ大きいほど、噴霧器1のサイズは大きくなってしまう。上述したように、運転中、運転手には、「眠気」または「疲労」という身体的、心理的な状態が発生し得るが、「眠気」および「疲労」は、運転に悪影響を及ぼし、誰にでも発生し得るという点で、運転中に発生する代表的な症状であり、運転中に少なくもこれら症状が緩和されるようにしたいとするニーズが現実にある。また、上述した通り、車両の車内は、密閉された狭い空間であり、噴霧器1によるミストの噴霧が行われた後に、一旦、車内の空間を無臭にできるようにしたいとするニーズがある。そして、本実施形態に係る噴霧器1は、これらニーズを満たすために必要最小限の個数(3つ)の収納室16が設けられた構成のため、噴霧器1の小型化を図りつつ、これらニーズを満たすことが可能である。
以上、噴霧器1の使用態様の一例を説明したが、噴霧器1の使用態様は例示した態様に限られないことは勿論である。例えば、噴霧器1が使用される場所は、車両の車内に限られず、例えば、家屋の部屋であってもよい。また、噴霧器1に収納される容器17は、例示した眠気覚醒容器、疲労回復容器および消臭容器に限らず、様々な種類の噴霧液に係る容器17を収容可能である。特に、本実施形態では、異なる複数(2個〜3個)の種類の噴霧液に基づくミストを同時に噴霧可能であり、このような態様でミストを噴出し、香りを楽しむことができる。
<変形例>
次に、変形例について説明する。上述した実施形態では、筐体2の上端領域の外周形状は、同じ長さの3つの辺Hと3つの接続部Tを有する形状であった。この点に関し、筐体2の上端領域の外周形状は、上述した実施形態に係る形状に限らない。例えば、円であってもよく、また例えば、M個(Mは4以上の整数)の噴霧ユニット10を有する場合に、M個の辺Hと、各辺Hを接続するM個の接続部Tを有する形状であってもよい。
図8は、筐体2の上端領域の外周形状が、円の場合に、筐体2を上から見た様子を単純化して模式的に示す図である。図8では、第1実施形態で説明した構成要素と対応する構成要素については、同一の符号を付し、その説明を省略する。図8では、設置台6に、3つの噴霧ユニット10に係る3つの貯槽室20、および、3つの液体供給ユニット18に係る3つの収納室16が形成された様子を示している。上述したように、貯槽室20の位置は噴霧ユニット10の位置に相当し、収納室16の位置は液体供給ユニット18の位置に相当する。
図8に示すように、筐体2の上端領域の外周形状が円の場合も、噴霧ユニット10のそれぞれを一つの仮想円KS2上で同一角度(図8の例の場合、120°)だけ離間して配置することにより、各噴霧ユニット10を効率よく離間して配置できる。また、噴霧ユニット10と噴霧ユニット10とのスペースに、1つの液体供給ユニット18を配置することにより、噴霧ユニット10と噴霧ユニット10との間に必然的に生じるデッドスペースを有効活用して、液体供給ユニット18を効率的に配置することができ、筐体2の小型化を図ることができる。図示は省略するが、筐体2の上端領域の外周形状が、M個の辺Hと、各辺Hを接続するM個の接続部Tを有する形状の場合、仮想円上に同一角度(360°/M)だけ離間した状態で、M個の接続部Tのそれぞれの近傍に配置することにより、M個の噴霧ユニット10のそれぞれを、設置台6に効率的に離間して配置できる。その際、噴霧ユニット10と噴霧ユニット10とのスペースに、1つの液体供給ユニット18を配置することにより、筐体2の小型化を図ることができる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
例えば、上述した実施形態では、適宜、噴霧器1に係る部材の寸法の具体的な値を記したが、噴霧器1に係る部材の寸法は、例示した具体的な値に限定されるものではない。また、噴霧器1に係る各部材の形状や、配置は、実施形態で例示した各部材の形状や、配置に限定されるものではないことは言うまでもない。例えば、筐体2の立体的形状は、上方に向かうに従って、断面の外接円が徐々に大きくなっていく形状であったが、例示した筐体2程には外接円が大きくなっていかない構成であってもよく、各断面の外接円の大きさが同じ構成であってもよい。また例えば、接続部Tの形状は、弧状であったが、例示した筐体2よりも鋭い弧状であってもよく、また、切り立った角であってもよい。