以下、添付図面を参照して本発明を説明する。また、添付図面において同一又は類似の構成要素には同一の参照符号が付される。
以下、図1及び図2を参照して、筆記具1の構成について簡単に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る筆記具1の正面図である。図2は、図1の筆記具1の正面断面図である。本実施形態では、筆記具1はノック式ボールペンである。なお、本明細書では、図1に示されるように、筆記具1の軸線方向(長手方向)において、筆記具1の先端すなわちペン先側を「前」側と定義し、筆記具1のペン先とは反対側を「後」側と定義する。
筆記具1は、前軸筒2と、前軸筒2の後方に配置された後軸筒3と、後軸筒3の後方に配置された内筒4と、内筒4に揺動可能に連結されたクリップ5と、クリップ5を付勢する第1コイルスプリング6とを備える。前軸筒2、後軸筒3、内筒4及びクリップ5は樹脂材料から構成される。本明細書では、前軸筒2、後軸筒3及び内筒4を総じて軸筒と称する。なお、前軸筒2、後軸筒3及び内筒4、前軸筒2及び後軸筒3、又は後軸筒3及び内筒4は一体であってもよい。
筆記具1は、前軸筒2及び後軸筒3の内部に配置されたリフィル7と、リフィル7を後方に付勢する第2コイルスプリング8と、筆跡を消去するための消去部材9と、消去部材9を覆うカバー部材10とをさらに備える。消去部材9及びカバー部材10は筆記具1の後端に配置される。
リフィル7は、インクを収容したインク収容管を有し、インク収容管の前端部には筆記部71が装着される。筆記部71が前軸筒2内に没入した状態でカバー部材10が指で押圧されると、リフィル7は第2コイルスプリング8の付勢力に抗して前進し、筆記部71が前軸筒2から突出する。一方、筆記部71が前軸筒2から突出した状態でカバー部材10が指で再び押圧されると、リフィル7は第2コイルスプリング8の付勢力によって後退し、筆記部71が前軸筒2内に没入する。
以下、内筒4、クリップ5及び第1コイルスプリング6の構成について詳細に説明する。図3は、クリップ5が操作されていないときの内筒4、クリップ5及び第1コイルスプリング6の正面図である。図4は、クリップ5が操作されているときの内筒4、クリップ5及び第1コイルスプリング6の正面図である。図3及び図4では、筆記具1の他の部品は省略されている。なお、図3の状態は図1の状態と等しい。
第1コイルスプリング6は、内筒4とクリップ5との間に配置され、クリップ5の前端部が後軸筒3に近付くようにクリップ5を付勢する。第1コイルスプリング6は筆記具1の軸線方向に対して略垂直に延在する。図1に示されるように、クリップ5が操作されていないとき、クリップ5の前端部は第1コイルスプリング6の付勢力によって後軸筒3に当接する。
一方、図4に示されるように、クリップ5の後端部が指等で軸中心方向へ押圧により操作されると、第1コイルスプリング6が圧縮される。この結果、クリップ5が揺動し、クリップ5の前端部が後軸筒3から離間される。この状態では、クリップ5と後軸筒3との間に物品(紙、服等)を容易に挿入することができる。
クリップ5の前端部が後軸筒3から離間された状態からクリップ5と後軸筒3との間に物品を挿入した状態でクリップ5の後端部を離すと、クリップ5が第1コイルスプリング6の付勢力によって揺動し、クリップ5の前端部が物品を押圧する。この結果、物品がクリップ5と後軸筒3との間に狭持される。
図5は内筒4の斜視図であり、図6は内筒4の正面図であり、図7は内筒4の平面図である。内筒4は、後軸筒3に挿入される前筒部41と、後軸筒3の外側に配置される後筒部42と、クリップ5を保持するクリップ保持部43とを有する。
クリップ保持部43には、後述するクリップ5の係合孔53aに挿入される二つの係合突起44が設けられる。係合突起44は、略円柱形状を有し、クリップ保持部43から筆記具1の軸線方向に垂直な方向に突出する。クリップ5は係合突起44を介して内筒4に揺動可能に連結される。係合突起44は、クリップ5が揺動するとき、揺動支点として機能する。
後筒部42には、第1コイルスプリング6が外挿されるスプリング保持部45が設けられる。スプリング保持部45は、略円柱形状を有し、後筒部42から内筒4の径方向外側に突出する。また、スプリング保持部45は、二つに分割され、前部45a及び後部45bを有する。前部45aは後部45bよりも前方(前筒部41側)に位置する。
図8は、スプリング保持部45の拡大正面図である。スプリング保持部45の先端部は、スプリング保持部45の先端に向かって細くなるテーパー形状を有する。このことによって、第1コイルスプリング6のスプリング保持部45への外挿が容易となる。
スプリング保持部45の側面には、スプリング保持部45からスプリング保持部45の径方向外側に突出する突起が設けられる。具体的には、前部45a及び後部45bの側面には、それぞれ、二つの第一突起45cが設けられ、前部45aの側面には一つの第二突起45dが設けられる。第一突起45cはスプリング保持部45の基端に設けられる。一方、第二突起45dは、スプリング保持部45の基端から離間した位置、具体的にはスプリング保持部45の基端と先端との間に設けられる。また、第二突起45dはスプリング保持部45の前端に配置される。
第一突起45cは、スプリング保持部45に外挿された第1コイルスプリング6の端部と係合する。第二突起45dは、第1コイルスプリング6がスプリング保持部45から外れようとすると、第1コイルスプリング6と係合する。したがって、第一突起45c及び第二突起45dは、第1コイルスプリング6がスプリング保持部45から外れること、すなわち第1コイルスプリング6が筆記具1から外れることを抑制することができる。
また、クリップ5の操作によって第1コイルスプリング6が圧縮されるとき、第1コイルスプリング6の後端部により多くの力が加えられるため、第1コイルスプリング6の前端部がスプリング保持部45の基端から浮く傾向にある。これに対して、本実施形態では、第二突起45dがスプリング保持部45の前部45aに設けられている。このため、第1コイルスプリング6の前端部がスプリング保持部45の基端から浮くことを抑制することができ、ひいては第1コイルスプリング6がスプリング保持部45から外れることをより一層抑制することができる。
また、図7から分かるように、第一突起45c及び第二突起45dはスプリング保持部45の周方向において離間されている。このことによって、スプリング保持部45の周方向の広い範囲で第1コイルスプリング6の保持力を高めることができる。このため、第1コイルスプリング6がスプリング保持部45から外れることをより一層抑制することができる。
また、第一突起45c及び第二突起45dの先端部(スプリング保持部45の先端側の部分)は、スプリング保持部45の先端に向かって細くなるテーパー形状を有する。このため、第1コイルスプリング6のスプリング保持部45への装着性が第一突起45c及び第二突起45dによって悪化することを抑制することができる。
なお、第二突起45dは、前部45aだけでなく、前部45a及び後部45bの側面に設けられてもよい。また、第一突起45c又は第二突起45dは省略されてもよい。また、スプリング保持部45は、前部45a及び後部45bに分割されることなく、一体的な形状を有していてもよい。この場合も、スプリング保持部45の前方側(前筒部41側)に位置する部分はスプリング保持部45の前部と称される。また、スプリング保持部45は略多角柱形状を有していてもよい。
図9はクリップ5の斜視図であり、図10はクリップ5の正面図であり、図11はクリップ5の底面図である。クリップ5は、クリップ本体51と、二つの突出部52と、突出部52に隣接する二つの側壁部53とを有する。突出部52は後軸筒3に接触するようにクリップ本体51から後軸筒3に向かって突出する。突出部52及び側壁部53の板厚はクリップ本体51の板厚と略等しい。
側壁部53には、内筒4の係合突起44が挿入される係合孔53aが設けられる。側壁部53の後端部は第1コイルスプリング6の側部を覆う。このことによって、第1コイルスプリング6の径方向の動きを抑制することができる。このため、第1コイルスプリング6がスプリング保持部45から外れることをより一層抑制することができる。
クリップ本体51は、内筒4に装着されると、軸筒(内筒4及び後軸筒3)に沿って延在する。クリップ本体51には、揺動規制部51a及びスプリング支持部51bが設けられる。
揺動規制部51aは、円柱形状を有し、クリップ本体51から内筒4に向かって突出する。図12は、クリップ5が操作されているときの内筒4、クリップ5及び第1コイルスプリング6の正面断面図である。図12に示されるように、揺動規制部51aは、クリップ5が操作されたときにクリップ保持部43に当接し、クリップ5が後軸筒3から離れるときのクリップ5の揺動範囲を規制する。
図11から分かるように、スプリング支持部51bは、第1コイルスプリング6の延在方向と垂直な断面において円弧形状を有し、クリップ本体51から内筒4に向かって突出する。円弧の内径は第1コイルスプリング6の外径に略等しい。スプリング支持部51bは、第1コイルスプリング6の前側(筆記具1のペン先側)に配置され、第1コイルスプリング6の前端部を支持する。このことによって、第1コイルスプリング6の径方向の動きを抑制することができる。このため、第1コイルスプリング6がスプリング保持部45から外れることをより一層抑制することができる。
なお、本実施形態では、第1コイルスプリング6の後側には、第1コイルスプリング6を支持する部材が設けられていない。このため、第1コイルスプリング6を筆記具1に装着するために第1コイルスプリング6を大きく圧縮させる必要がない。したがって、第1コイルスプリング6の筆記具1への装着性を確保することができる。
また、内筒4のスプリング保持部45の高さh(図8参照)は、クリップ5が操作されていないときの第1コイルスプリング6の長さ、すなわちクリップ5が操作されていないときの内筒4の後筒部42とクリップ本体51との間の距離の1/2未満であることが好ましい。このことによって、スプリング保持部45への第1コイルスプリング6の挿入を容易にすることができ、ひいては第1コイルスプリング6の筆記具1への装着性を向上させることができる。本実施形態では、内筒4のスプリング保持部45の高さhは、クリップ5が操作されていないときの第1コイルスプリング6の長さの約1/3である。
クリップ5の突出部52は、側壁部53に接続され、筆記具1の軸線方向に略平行に延在する。図13はクリップ5の左側面図である。図14は、突出部52が後軸筒3に接触しているときの図13におけるA部の拡大図である。
突出部52には、パーティングラインPLが形成されている。クリップ5は、図13の平面において左右及び下の三方向に開く三方割の金型を用いて成形される。下に開くブロックは、揺動規制部51a、スプリング支持部51b等のクリップ5の内面を成形するために用いられるスライド金型である。図14に示されたパーティングラインPLは、下に開くブロックと左に開くブロックとの合わせ面である。
パーティングラインPLには線状の突起が残される。また、パーティングラインPLが形成される位置にはバリが生じやすい。このため、パーティングラインPL又はバリが後軸筒3に接触すると、後軸筒3の外面が傷つくことがある。本実施形態では、後軸筒3の外面に、転写印刷、塗装、装飾等の表面処理が施されている。このため、後軸筒3の外面がクリップ5の突出部52によって傷つきやすい。しかしながら、本実施形態では、突出部52の後軸筒3に接触しない部分にパーティングラインPLが形成されている。このため、パーティングラインPLに生じたバリが後軸筒3に接触することを抑制することができ、ひいては突出部52によって後軸筒3の外面が傷つくことを抑制することができる。
また、突出部52の内側端部52a及び外側端部52bはR形状を有する。突出部52の内側端部52aは、突出部52の後軸筒3に接触する部分に相当する。このため、後軸筒3に接触する部分がR形状であるので、突出部52によって後軸筒3の外面が傷つくことを抑制することができる。なお、本明細書では、筆記具1の軸線方向及び突出部52の突出方向に垂直な方向(図13及び図14における左右方向)において、筆記具1の軸線に近い側を「内」側と定義し、筆記具1の軸線から離れた側を「外」側と定義する。
また、本実施形態では、内側端部52aのR形状とパーティングラインPLとの間がストレート部52dである。このことによってパーティングラインPLを後軸筒3から離すことができ、パーティングラインPL及びパーティングラインPLに生じたバリが後軸筒3に接触することをより一層抑制することができる。
また、本実施形態では、パーティングラインPLに段差52cが設けられる。このことによって、突出部52の底面(突出部52の突出方向において筆記具1の軸線に近い面)からバリが突出することが抑制される。また、段差52cは、筆記具1の軸線方向及び突出部52の突出方向に垂直な方向において、突出部52の後軸筒3に接触する部分と反対側に面する。このことによって、段差52cが後軸筒3に接触して後軸筒3が傷つくことを抑制することができる。本実施形態では、段差52cの高さは20μm〜30μmである。
なお、二つの突出部52は図13のX−X平面に対して対称形である。このため、図14に示されない他方の突出部52にも、下に開くブロックと右に開くブロックとの合わせ面であるパーティングラインが形成され、パーティングラインに段差が設けられている。
以上、本発明に係る好適な実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載内で様々な修正及び変更を施すことができる。例えば、筆記具1は、シャープペンシル等の他の筆記具であってもよい。
また、第1コイルスプリング6は省略されてもよい。この場合、クリップ5は軸筒(内筒4)と一体であってもよい。また、クリップ5は、筆記具1の軸線方向に摺動可能なスライド式のクリップであってもよい。また、クリップ5の突出部52の数は一つ又は三つ以上であってもよい。
また、スプリング保持部45はクリップ5又は軸筒(内筒4)及びクリップ5に設けられてもよい。すなわち、スプリング保持部45は軸筒(内筒4)及びクリップ5の少なくとも一方に設けられる。また、スプリング支持部51bは省略され又は軸筒(内筒4)に設けられてもよい。
また、リフィル7は、熱変色性色材を含有する熱変色性インクを収容してもよい。この場合、筆記具1は熱変色性筆記具であり、消去部材9としての摩擦体によって擦過した際に生じる摩擦熱によって、筆記具1の筆跡を熱変色可能である。
ここで、熱変色性インクとは、常温(例えば25℃)で所定の色彩(第1色)を維持し、所定温度(例えば60℃)まで昇温させると別の色彩(第2色)へと変化し、その後、所定温度(例えば−20℃)まで冷却させると、再び元の色彩(第1色)へと復帰する性質を有するインクを言う。熱変色性インクを用いた筆記具1では上記第2色を無色とし、第1色(例えば赤)で筆記した描線を昇温させて無色とすることを、ここでは「消去する」ということとする。したがって、描線が筆記された筆記面等に対して摩擦体によって擦過して摩擦熱を生じさせ、それによって描線を無色に変化、すなわち消去させる。なお、当然のことながら上記第2色は、無色以外の有色でもよい。また、第1色から第2色への温度差を70℃以上とすることが好ましい。
熱変色性色材となる熱変色性マイクロカプセル顔料としては、摩擦熱等の熱により変色するもの、例えば、有色から無色、有色から有色、無色から有色などとなる機能を有するものであれば、特に限定されず、種々のものを用いることができ、少なくともロイコ色素、顕色剤、変色温度調整剤を含む熱変色性組成物を、マイクロカプセル化したものが挙げられる。
用いることができるロイコ色素としては、電子供与性染料で、発色剤として機能するものであれば、特に限定されものではない。具体的には、発色特性に優れるインクを得る点から、トリフェニルメタン系、スピロピラン系、フルオラン系、ジフェニルメタン系、ローダミンラクタム系、インドリルフタリド系、ロイコオーラミン系等従来公知のものが、単独(1種)で又は2種以上を混合して(以下、単に「少なくとも1種」という。)用いることができる。
具体的には、6−(ジメチルアミノ)−3,3−ビス[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−1(3H)−イソベンゾフラノン、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−クロロ−3−メチル−6−ジメチルアミノフルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−キシリジノフルオラン、2−(2−クロロアニリノ)−6−ジブチルアミノフルオラン、3,6−ジメトキシフルオラン、3,6−ジ−n−ブトキシフルオラン、1,2−ベンツ−6−ジエチルアミノフルオラン、1,2−ベンツ−6−ジブチルアミノフルオラン、1,2−ベンツ−6−エチルイソアミルアミノフルオラン、2−メチル−6−(N−p−トリル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−(N−フェニル−N-−メチルアミノ)−6−(N−p−トリル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−(3’−トリフルオロメチルアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、3−クロロ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−メチル−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メトキシ−7−アニリノフルオラン、3,6−ビス(ジフェニルアミノ)フルオラン、メチル−3’,6’−ビスジフェニルアミノフルオラン、クロロ−3’,6’−ビスジフェニルアミノフルオラン、3−メトキシ−4−ドデコキシスチリノキノリン、などが挙げられる。
これらのロイコ染料は、ラクトン骨格、ピリジン骨格、キナゾリン骨格、ビスキナゾリン骨格等を有するものであり、これらの骨格(環)が開環することで発色を発現するものである。
用いることができる顕色剤は、上記ロイコ色素を発色させる能力を有する成分となるものであり、例えば、フェノール樹脂系化合物、サリチル酸系金属塩化物、サリチル酸樹脂系金属塩化合物、固体酸系化合物等が挙げられる。
具体的には、o−クレゾール、ターシャリーブチルカテコール、ノニルフェノール、n−オクチルフェノール、n−ドデシルフェノール、n−ステアリルフェノール、p−クロロフェノール、p−ブロモフェノール、o−フェニルフェノール、ヘキサフルオロビスフェノール、p−ヒドロキシ安息香酸n−ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸n−オクチル、レゾルシン、没食子酸ドデシル、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4−ジヒドロキシジフェニルスルホン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、1−フェニル−1,1−ビス( 4’−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−ヘキサン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−オクタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−ノナン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−デカン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−ドデカン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)エチルプロピオネート、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−ノナンなどの少なくとも1種が挙げられる。
用いる顕色剤の使用量は、所望される色彩濃度に応じて任意に選択すればよく、特に限定されるものではないが、通常、上述したロイコ色素1質量部に対して、0.1〜100質量部程度の範囲内で選択するのが好適である。
用いることができる変色温度調整剤は、上記ロイコ色素と顕色剤の呈色において変色温度をコントロールする物質である。用いることができる変色温度調整剤は、従来公知のものが使用可能である。具体的には、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類、酸アミド類、アゾメチン類、脂肪酸類、炭化水素類などが挙げられる。
より具体的には、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタンジカプリレート(C7H15)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタンジラウレート(C11H23)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタンジミリステート(C13H27)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルエタンジミリステート(C13H27)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタンジパルミテート(C15H30)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタンジベヘネート(C21H43)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルエチルヘキシリデンジミリステート(C13H27)等の少なくとも1種が挙げられる。
この変色温度調整剤の使用量は、所望されるヒステリシス幅及び発色時の色彩濃度等に応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、通常、ロイコ色素1質量部に対して、1〜100質量部程度の範囲内で使用するのが好ましい。
熱変色性マイクロカプセル顔料は、少なくとも上記ロイコ色素、顕色剤、変色温度調整剤を含む熱変色性組成物を、平均粒子径が0.2〜3μmとなるように、マイクロカプセル化することにより製造することができる。マイクロカプセル化法としては、例えば、界面重合法、界面重縮合法、insitu重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライニング法などを挙げることができ、用途に応じて適宜選択することができる。
例えば、水溶液からの相分離法では、ロイコ色素、顕色剤、変色温度調整剤を加熱溶融後、乳化剤溶液に投入し、加熱攪拌して油滴状に分散させ、次いで、カプセル膜剤として、樹脂原料などを使用、例えば、アミノ樹脂溶液、イソシアネート系樹脂溶液などを徐々に投入し、引き続き反応させて調製後、この分散液を濾過することにより目的の熱変色性のマイクロカプセル顔料を製造することができる。
これらのロイコ色素、顕色剤、変色温度調整剤の含有量は、用いるロイコ色素、顕色剤、変色温度調整剤の種類、マイクロカプセル化法などにより変動するが、当該色素1に対して、質量比で顕色剤0.1〜100、変色温度調整剤1〜100である。また、カプセル膜剤は、カプセル内容物に対して、質量比で0.1〜1である。
熱変色性マイクロカプセル顔料は、上記ロイコ色素、顕色剤及び変色温度調整剤の種類、量などを好適に組み合わせることにより、各色の発色温度(例えば、0℃以上で発色)、消色温度(例えば、50℃以上で消色)を好適な温度に設定することができ、摩擦熱等の熱により有色から無色となることが好ましい。
熱変色性マイクロカプセル顔料では、描線濃度、保存安定性、筆記性の更なる向上の点から、壁膜がウレタン樹脂、ウレア/ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、あるいはアミノ樹脂で形成されることが好ましい。ウレタン樹脂としては、例えば、イソシアネートとポリオールとの化合物が挙げられる。エポキシ樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂とアミンの化合物が挙げられる。アミノ樹脂としては、メラミン樹脂、ウレア樹脂、ベンゾグアナミン樹脂などが挙げられる。マイクロカプセル色材の壁膜の厚さは、必要とする壁膜の強度や描線濃度に応じて適宜決められる。
熱変色性マイクロカプセル顔料の平均粒子径は、着色性、発色性、易消色性、安定性、インク中での流動性の点、並びに、筆記性への悪影響を抑制、後述する光変色性マイクロカプセル顔料との相用性などの点から、好ましくは、0.2〜5μm、さらに好ましくは、0.3〜3μmである。なお、ここで規定する「平均粒子径」は、粒度分析計〔マイクロトラックHRA9320−X100(日機装社製)〕にて、平均粒子径(50%径)を測定(屈折率1.8)した値である。
この平均粒子径が0.2μm未満であると、十分な描線濃度が得られず、一方、5μmを越えると、筆記性の劣化、熱変色性マイクロカプセル顔料の分散安定性の低下、振動によるインクバックが発生しやすくなり好ましくない。さらには90%径が8μm以下、好ましくは6μm以下である。径が大きい粒子が一定割合以上存在すると、上述した影響がより顕著になる傾向がみられる。なお、上述した平均粒子径の範囲(0.2〜5μm)となるマイクロカプセル顔料は、マイクロカプセル化法により変動するが、水溶液からの相分離法などでは、マイクロカプセル顔料を製造する際の攪拌条件を好適に組み合わせることにより調製することができる。
熱変色性マイクロカプセル顔料の比重は、0.9〜1.3、好ましくは1.0〜1.2の範囲である。比重がこの範囲外であると、マイクロカプセル顔料の分散安定性が低下しやすい。また、比重が1.3を超えるマイクロカプセル顔料は、振動によってインクバックが発生しやすい。
筆記具用水性インク組成物において、上記熱変色性マイクロカプセル顔料の他、残部として溶媒である水(水道水、精製水、蒸留水、イオン交換水、純水等)の他、各筆記具用(ボールペン用、マーキングペン用等)の用途に応じて、その効果を損なわない範囲で、水溶性有機溶剤、増粘剤、潤滑剤、防錆剤、防腐剤もしくは防菌剤などを適宜含有することができる。
用いることができる水溶性有機溶剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、3−ブチレングリコール、チオジエチレングリコール、グリセリン等のグリコール類や、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、単独或いは混合して使用することができる。
これらのうち、インクバックによる筆記部でのインク固化を抑制する目的として、グリセリンを用いることが好ましく、その添加量はインク全量に対して1〜10質量%であることが好ましい。グリセリンによる作用のメカニズムは不明だが、乾燥状態における顔料及びインク成分との凝集力を低下させる効果があるものと推察される。
用いることができる増粘剤としては、例えば、合成高分子、セルロースおよび多糖類からなる群から選ばれた少なくとも一種が好ましい。具体的には、アラビアガム、トラガカントガム、グアーガム、ローカストビーンガム、アルギン酸、カラギーナン、ゼラチン、キサンタンガム、ウェランガム、サクシノグリカン、ダイユータンガム、デキストラン、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプングリコール酸及びその塩、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸及びその塩、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレシオキサイド、酢酸ビニルとポリビニルピロリドンの共重合体、架橋型アクリル酸重合体及びその塩、非架橋型アクリル酸重合体及びその塩、スチレンアクリル酸共重合体及びその塩などが挙げられる。
これらのうち、多糖類を使用することが好ましい。多糖類はそのレオロジー特性から、振動による流動性への影響を受けにくい傾向があり、インクバックに起因する筆記不良等の不具合が生じにくい。特にキサンタンガムは、筆記具インクに要求されるその他の特性とのバランスに優れており好ましい。
潤滑剤としては、顔料の表面処理剤にも用いられる多価アルコールの脂肪酸エステル、糖の高級脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン高級脂肪酸エステル、アルキル燐酸エステル、高級脂肪酸アミドのアルキルスルホン酸塩、アルキルアリルスルホン酸塩、ポリアルキレングリコールの誘導体やフッ素系界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーンなどが挙げられる。また、防錆剤としては、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ジシクロへキシルアンモニウムナイトライト、サポニン類などが挙げられる。防腐剤もしくは防菌剤としては、フェノール、ナトリウムオマジン、安息香酸ナトリウム、ベンズイミダゾール系化合物などが挙げられる。
この筆記具用水性インク組成物を製造するには、従来から知られている方法が採用可能であり、例えば、上記熱変色性、光変色性マイクロカプセル顔料の他、上記水性における各成分を所定量配合し、ホモミキサー、もしくはディスパー等の攪拌機により攪拌混合することによって得られる。さらに必要に応じて、ろ過や遠心分離によってインク組成物中の粗大粒子を除去してもよい。
筆記具用水性インク組成物の粘度値は、25℃、剪断速度3.83/sにおいて、500〜2000mPa・s、剪断速度383/sにおいて20〜100mPa・sであることが好ましい。上記粘度範囲に設定することによって、筆記性と経時安定性に優れたインクとすることができる。さらに、S=αDn(但し、1>n>0)(Sは剪断応力(dyn/cm2)、Dは剪断速度(s-1)、αは非ニュートン粘性係数)で示される粘性式で求められる非ニュートン粘性指数nが、0.2〜0.6であることが好ましい。上記粘度範囲に加えて非ニュートン粘性指数nを上記範囲とすることで、振動に対するインクの流動性を適切に設定することが可能となり、インクバックの発生を防止することが可能となる。
筆記具用水性インク組成物の表面張力は、25〜45mN/m、さらには30〜40mN/mであることが好ましい。この範囲内であれば、ペン先内部とインクの濡れ性のバランスが適切となり、インクバックの発生を防止することが可能となる。
リフィル内においては、インクのすぐ後方にインク追従体を配置してもよい。追従体を構成する材料としては、少なくとも、不揮発性若しくは難揮発性有機溶剤と、増粘剤とにより構成することができる。インク追従体に使用する不揮発性若しくは難揮発性有機溶剤は、インク追従体の基油として用いるものであり、例えば、流動パラフィンが用いられる。流動パラフィンには、鉱物油、化学合成油が用いられ、化学合成油としては、ポリブテン、ポリα−オレフィン、エチレンα−オレフィンオリゴマーなどを用いることができる。
用いることができる具体的な鉱物油としては、例えば、市販品のダイアナプロセスオイルNS−100、PW−32、PW−90、NR−68、AH−58(出光興産社製)などが挙げられる。
用いることができる具体的なポリブテンとしては、例えば、市販品のニッサンポリブテン200N、ポリブテン30N、ポリブテン10N、ポリブテン5N、ポリブテン3N、ポリブテン015N、ポリブテン06N、ポリブテン0N(以上、日本油脂社製)、ポリブテンHV−15(日本石油化学社製)、35R(出光興産社製)などが挙げられる。
用いることができる具体的なポリα−オレフィンとしては、例えば、市販品のバーレルプロセス油P−26、P−46,P−56、P−150,P−350,P−1500、P−2200、(P−10000、P−37500)(松村石油社製)などが挙げられる。
用いることができる具体的なエチレンα−オレフィンオリゴマーとしては、例えば、市販品のルーカント HC−10、HC−20、HC−100、HC−150、(HC−600、HC−2000) (以上、三井化学社製)などが挙げられる。
これらの不揮発性若しくは難揮発性有機溶剤は、1種または2種以上を合わせて使用することができる。
インク追従体に使用する増粘剤としては、例えば、リン酸エステルのカルシウム塩、微粒子シリカ、ポリスチレン−ポリエチレン/ブチレンゴム−ポリスチレンのブロックコポリマー、ポリスチレン−ポリエチレン/プロピレンゴム−ポリスチレンのブロックコポリマー、水添スチレン−ブタジエンラバー、スチレン−エチレンブチレン−オレフィン結晶のブロックコポリマー、オレフィン結晶−エチレンブチレン−オレフィン結晶のブロックコポリマー及びアセトアルコキシアルミニウムジアルキレートなどが挙げられ、これらは1種もしくは2種以上用いることができる。
用いることができるリン酸エステルのカルシウム塩の好ましい市販品としては、CrodaxDP−301LA(クローダジャパン社製)等が挙げられる。用いることができる微粒子シリカは、親水性微粒子シリカと疎水性微粒子シリカがあり、親水性シリカの好ましい市販品としては、AEROSIL−300、AEROSIL−380(日本アエロジル社製)等が挙げられ、また、疎水性シリカの好ましい市販品としては、AEROSIL−974D、AEROSIL−972(日本アエロジル社製)等が挙げられる。
また、ポリスチレン−ポリエチレン/ブチレンゴム−ポリスチレンのブロックコポリマーの好ましい市販品としては、クレイトンGFG−1901X、クレイトンGG−1650(以上、シェルジャパン社製)、セプトン8007、セプトン8004(以上、クラレ社製)などが挙げられる。さらに、ポリスチレン−ポリエチレン/プロピレンゴム−ポリスチレンのブロックコポリマーの好ましい市販品としては、クレイトンGG−1730(シェルジャパン社製)、セプトン2006、セプトン2063(以上、クラレ社製)などが挙げられる。
水添スチレン−ブタジエンラバーの好ましい市販品としては、DYNARON1320P、DYNARON1321P(以上、JSR社製)、タフテックHl041、タフテックHl141(以上、旭化成工業社製)などが挙げられる。
スチレン−エチレンブチレン−オレフィン結晶のブロックコポリマーの好ましい市販品としては、DYNARON4600P(JSR社製)等が挙げられ、オレフィン結晶−エチレンブチレン−オレフィン結晶のブロックコポリマーの好ましい市販品としては、DYNARON6200P、DYNARON6201B(JSR社製)等が挙げられる。
アセトアルコキシアルミニウムジアルキレートの好ましい市販品としては、プレンアクトAL−M(味の素ファインテクノ社製)などが挙げられる。
これらの増粘剤の中で、スチレン−エチレンブチレン−オレフィン結晶のブロックコポリマー、オレフィン結晶−エチレンブチレン−オレフィン結晶のブロックコポリマーなどの熱可塑性オレフィン系エラストマーの使用が好ましい。
さらに、インクバックの発生を防止するインク追従体を得る点から、周波数領域1〜63rad/sで指数関数的に増加させながら周波数毎に測定したtanδ値の平均値が1.0以上とすることが好ましく、1.7〜3.4とすることがさらに好ましい。
ここで、tanδは、損失弾性率/貯蔵弾性率を意味する値であり、従来では、周波数領域「1〜63rad/s」で指数関数的に増加させながら周波数毎に測定したtanδ値の平均値が1.0以下のものが好ましいことが知られていた。本発明では、上記1〜63rad/sで各周波数毎に測定したtanδ値の平均値が1.0以上とすることにより、振動を吸収してインクバックの発生を防止することが可能となる。
摩擦体を形成する材料として、シリコーンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム等の熱硬化性ゴムやスチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等の熱可塑性エラストマーといったゴム弾性材料、2種以上のゴム弾性材料の混合物、及び、ゴム弾性材料と合成樹脂との混合物を用いることができ、これを、JIS K7204に規定された摩耗試験(ASTM D1044)で荷重9.8N、1000rpm環境下において、テーバー摩耗試験機の摩耗輪H−22でのテーバー摩耗量が15mg未満となるように構成し、摩擦体を形成する。
さらに、摩擦体は、JIS K6203に規定されたデュロメータA硬度が70以上であることが好ましい。それによって、所定の硬さが確保でき、より安定した擦過動作が可能となる。なお、摩擦体は、タッチペン、スタイラスペンとしても適用可能であり、導電性を付与してもよい。
また、摩擦体の輝度値を70以下とすることによって、摩擦体の使用に伴う表面の汚れも目立たなくすることができる。
輝度値は、範囲を0〜100としたHLS色空間系を使用し、汎用型色差計(TC−8600A、東京電色株式会社製)等の測定装置を用いて、摩擦体の表面を測定することによって求められる。