以下では、図1及び図2を用いて、第一実施形態に係る給湯システム1の構成について説明する。
給湯システム1は、ヒートポンプを用いて発生させた熱を蓄えると共に、当該熱を用いて沸かされた湯を供給するものである。給湯システム1は、住宅その他の建物や施設に適宜設けられる。給湯システム1は、主として浴槽10、貯湯槽20、ヒートポンプユニット30、給湯機構40及び制御装置50を具備する。
浴槽10は、入浴のための湯を入れる槽である。浴槽10は、浴室に設けられる。
貯湯槽20は、内部に貯溜された熱媒体を介して熱を蓄えるものである。具体的には、貯湯槽20内には、熱媒体として水(湯)が満たされる。
ヒートポンプユニット30は、電力を消費して熱を発生させる(製造する)ものである。ヒートポンプユニット30は、主として第一配管31、圧縮機32、熱交換器33、膨張弁34、蒸発器35、ファン36、第二配管37及びポンプ38を具備する。
第一配管31は、熱媒体(冷媒)が循環するための流路を形成するものである。第一配管31は環状に形成される。第一配管31内には、熱媒体(冷媒)が満たされる。
圧縮機32は、電力を消費して、第一配管31を流通する熱媒体を圧縮するものである。圧縮機32は、第一配管31の中途部に配置される。
熱交換器33は、温度差のある流体間で熱(熱エネルギー)を交換するものである。熱交換器33は、第一配管31の中途部に配置される。より具体的には、熱交換器33は、第一配管31を流通する熱媒体の流通方向において、圧縮機32の下流側に配置される。
膨張弁34は、第一配管31を流通する熱媒体を膨張させるものである。膨張弁34は、第一配管31の中途部に配置される。より具体的には、膨張弁34は、第一配管31を流通する熱媒体の流通方向において、熱交換器33の下流側に配置される。
蒸発器35は、熱媒体を蒸発させるための熱交換器である。蒸発器35は、第一配管31の中途部に配置される。より具体的には、蒸発器35は、第一配管31を流通する熱媒体の流通方向において、膨張弁34の下流側に配置される。
ファン36は、蒸発器35へと風(外気)を送るためのものである。
第二配管37は、熱交換器33と貯湯槽20との間で水が循環するための流路を形成するものである。第二配管37の一端は、貯湯槽20における下部に接続される。第二配管37の中途部は、熱交換器33の内部を通るように配置される。第二配管37の他端は、貯湯槽20における上部に接続される。
ポンプ38は、第二配管37内の水を循環させるものである。ポンプ38は、第二配管37の中途部に配置される。ポンプ38が駆動すると、第二配管37内の水は、当該第二配管37の一端(貯湯槽20の下部側)から他端(貯湯槽20の上部側)に向かって流通する。
このように構成されたヒートポンプユニット30において、圧縮機32によって圧縮された熱媒体は、高温の気体となる。当該高温の熱媒体は、第一配管31を介して熱交換器33を流通する。熱交換器33を流通する熱媒体の熱は、第二配管37を流通する熱媒体(水)に移動する。これによって、熱交換器33を流通する熱媒体の温度は低下し、当該熱媒体は液体になる。熱交換器33を流通した第一配管31内の熱媒体は、膨張弁34において膨張することで、低温の液体(又は気体)になる。膨張弁34を流通した低温の熱媒体は、蒸発器35において外気から熱を受け取って蒸発し、再び気体になる。外気から熱を受け取った熱媒体は、再び圧縮機32へと供給される。
また第二配管37を流通する水は、熱交換器33を通過することで、ヒートポンプユニット30で発生した熱を受け取り、温度が上昇する。このように温度が上昇した水を貯湯槽20に戻すことで、ヒートポンプユニット30で得られた熱を貯湯槽20に集めることができる。
給湯機構40は、貯湯槽20に貯溜された水(高温水又は中温水)を浴槽10へと供給するものである。給湯機構40は、主として注水配管41、給湯配管42、混合配管43、第一戻り配管44、排出配管46、ポンプ47及び三方弁48を具備する。
注水配管41は、上水を貯湯槽20へと案内する配管である。注水配管41の一端は、貯湯槽20における下部に接続される。
給湯配管42は、貯湯槽20における上部に貯溜された水(湯)を取り出し、浴槽10へと供給する配管である。給湯配管42の一端は、貯湯槽20における上部に接続される。給湯配管42の他端は、浴槽10に接続される。
混合配管43は、給湯配管42を流通する水(湯)に上水を混合させるための配管である。混合配管43の一端は、注水配管41の中途部に接続される。混合配管43の他端は、給湯配管42の中途部に接続される。
第一戻り配管44は、浴槽10から排水された湯が流通する配管である。第一戻り配管44は、追いだき循環路の一部として形成される。追いだき循環路は、浴槽10内の湯を追いだきするための流路である。追いだき循環路は、第一戻り配管44及び後述する第二戻り配管45の他に、当該浴槽10内の湯と貯湯槽20内の湯との間で熱交換を行うための流路(不図示)、及び当該熱交換によって温められた湯を再び浴槽10へと供給するための流路(不図示)等を有している。浴槽10内の湯が追いだき循環路を循環することにより、貯湯槽20内の湯との熱交換によって温められた湯を再び浴槽10へと供給することができる。第一戻り配管44の一端は、浴槽10に接続される。
第二戻り配管45は、浴槽10から排水された湯が流通する配管である。第二戻り配管45は、追いだき循環路の一部として形成される。第二戻り配管45の一端は、第一戻り配管44の他端と接続される。
排出配管46は、第一戻り配管44を流通する湯を外部へ案内する(排出する)配管である。排出配管46の一端は、第一戻り配管44と第二戻り配管45との接続部に接続される。
ポンプ47は、第一戻り配管44内の湯を流通させるものである。ポンプ47は、第一戻り配管44の中途部に配置される。ポンプ47が駆動すると、第一戻り配管44内の湯は、当該第一戻り配管44の一端(浴槽10側)から他端に向かって流通する。
三方弁48は、配管同士を接続すると共に、水の流通の可否を切り替えるものである。三方弁48は、第一戻り配管44と第二戻り配管45と排出配管46との接続部に設けられる。三方弁48は、第一戻り配管44から第二戻り配管45及び排出配管46への湯の流通の可否を適宜切り替えることができる。具体的には、三方弁48は、第一戻り配管44から供給される湯を第二戻り配管45に案内する状態と、第一戻り配管44から供給される湯を排出配管46に案内する状態とを切り替えることができる。
このように構成された給湯機構40において、浴槽10が設けられた浴室には、利用者(入浴者)が操作するための設定パネル(不図示)が設置されている。当該設定パネルには、自動お湯はりボタンやたし湯ボタン等の種々のボタンが設けられている。
自動お湯はりボタンが押下されると、図示せぬポンプが駆動され、貯湯槽20から給湯配管42を介して取り出された湯に、混合配管43を介して供給される上水が混合される。このように、貯湯槽20からの水(湯)と上水を適宜混合することで、要求に応じた温度の水(湯)を得ることができる。このように混合された水(湯)は、給湯配管42を介して浴槽10へと供給される。この場合、給湯配管42を介して貯湯槽20に貯溜された水(湯)が取り出されると共に、注水配管41を介して上水が貯湯槽20に供給される。このようにして、貯湯槽20内は常に水で満たされる。
また、たし湯ボタンが押下されると、図示せぬポンプが駆動され、貯湯槽20から給湯配管42を介して取り出された湯が浴槽10へと供給(たし湯)される。なお、たし湯の制御の詳細については後述する。
なお、自動お湯はりボタンは、例えば、浴槽10内に湯がない状態で一から給湯する場合に使用することができる。一方、たし湯ボタンは、例えば、一旦浴槽10にお湯はりがなされ、浴槽10内の湯の温度(浴槽湯温)が低下してきたときに使用することができる。たし湯ボタンが押下されると、浴槽湯温よりも温度が高い貯湯槽20内の湯が給湯されるので、浴槽湯温を上昇させることができる。
図2に示す制御装置50は、給湯システム1の動作を制御するものである。制御装置50は、主としてCPU等の演算処理装置、RAMやROM等の記憶装置、I/O等の入出力装置、並びにモニター等の表示装置等により構成される。制御装置50には、給湯システム1の動作を制御するための種々の情報やプログラム等が予め記憶される。制御装置50は、上部温度センサ51、下部温度センサ52、入水温度センサ53、流量センサ54及び排水温度センサ55に接続される。
上部温度センサ51は、貯湯槽20における上部に貯溜された水(高温水)の温度を検出するものである。上部温度センサ51は、貯湯槽20内の上部に配置される。
下部温度センサ52は、貯湯槽20における下部に貯溜された水(低温水)の温度を検出するものである。下部温度センサ52は、貯湯槽20内の下部に配置される。
入水温度センサ53は、第二配管37を介して貯湯槽20の下部からヒートポンプユニット30の熱交換器33へと供給される水の温度を検出するものである。入水温度センサ53は、第二配管37の中途部(熱交換器33より上流側)に配置される。
流量センサ54は、給湯配管42を流通する湯の流量を検知するものである。流量センサ54は、給湯配管42の中途部に配置される。より詳細には、流量センサ54は、給湯配管42を流通する水(湯)の流通方向において、給湯配管42と混合配管43との接続部の下流側に配置される。
排水温度センサ55は、第一戻り配管44を流通する湯の温度を検出するものである。排水温度センサ55は、第一戻り配管44の中途部に配置される。これにより、排水温度センサ55は、浴槽10から排水された湯の温度を検知する。
また、制御装置50は、ヒートポンプユニット30(圧縮機32等)に接続され、当該ヒートポンプユニット30の動作を制御することができる。具体的には、制御装置50は、ヒートポンプユニット30を稼働(運転)又は停止させることができる。
また制御装置50は、ヒートポンプユニット30を運転させることで得られる水(具体的には、第二配管37を流通することによって、熱交換器33で温められる水)の温度の目標値(以下、「設定貯湯温度」と称する)を制御することができる。本実施形態においては、制御装置50は、設定貯湯温度を段階的に制御することができる。具体的には、本実施形態に係る制御装置50は、設定貯湯温度の最低値を45℃として、当該設定貯湯温度を5℃ずつ(すなわち、50℃、55℃、60℃・・・等)段階的に変更することが可能である。なお、設定貯湯温度の最低値は、給湯機構40による給湯温度以上の値に設定することが可能である。
また、制御装置50は、給湯機構40(当該給湯機構40のポンプ47等)に接続され、当該給湯機構40の動作を制御することができる。具体的には、制御装置50は、給湯機構40を稼働(運転)又は停止させることができる。
また制御装置50は、浴槽10にお湯はりされる湯(具体的には、貯湯槽20から給湯配管42を介して取り出された水(湯)と混合配管43を介して供給される上水とが混合された水(湯))の温度の目標値(以下、「設定お湯はり温度」と称する)を制御することができる。本実施形態においては、制御装置50は、設定お湯はり温度を段階的に制御することができる。
また制御装置50は、浴槽10にお湯はりされる湯の量(以下、「設定お湯はり湯量」と称する)及びたし湯される湯の量(以下、「設定たし湯量」と称する)を制御することができる。当該制御は、流量センサ54による給湯配管42を流通する湯の流量の検知結果に基づいて行われる。制御装置50は、流量センサ54で検知された流量が設定された湯量となると、浴槽10への給湯を停止させる。
次に、図3を用いてたし湯に係る制御について説明する。なお、以下では、既に自動お湯はりボタンが押下され、浴槽10にお湯はりが行われていることを前提として説明を行う。
ステップS11において、制御装置50は、設定パネルのたし湯ボタンが押下されたか否かを判定する。制御装置50は、たし湯ボタンからの信号を受信したか否かに基づいてこの判定を行う。制御装置50は、たし湯ボタンが押下されたと判定された場合(ステップS11で「YES」)、ステップS12に移行する。一方、制御装置50は、たし湯ボタンが押下されたと判定されなかった場合(ステップS11で「NO」)、最初のステップに処理を戻す。
ステップS12において、制御装置50は、目標温度T1を検知する。目標温度T1とは、利用者が所望する浴槽湯温(浴槽10内の湯の温度)を示すものである。つまり、目標温度T1とは、利用者がたし湯によって浴槽10内の湯をどの温度まで温めたいかを示す温度である。目標温度T1は、利用者によって設定パネルを操作することにより設定される。また、目標温度T1は、利用者が設定しない場合は、予め定められた値(例えば40℃)に設定される。制御装置50は、当該ステップS12の処理を行った後、ステップS13に移行する。
ステップS13において、制御装置50は、現状温度T2を検知する。現状温度T2とは、浴槽10内の現在の湯温(現在の浴槽湯温)のことをいう。制御装置50は、現状温度T2を検知するためのさぐり運転を行う。具体的には、制御装置50は、ポンプ47を駆動させて浴槽10内の湯を第一戻り配管44に流通(排水)させる。そして、制御装置50は、排水温度センサ55によって第一戻り配管44に流通する湯の温度を検知することで、現状温度T2を検知することができる。なお、第一戻り配管44を流通する湯は、そのまま追いだき循環路を流通して浴槽10に戻される。また、さぐり運転は、現状温度T2を検知することが目的であるので、非常に短い時間で行われる。制御装置50は、当該ステップS13の処理を行った後、ステップS14に移行する。
ステップS14において、制御装置50は、必要熱量Qを算出する。必要熱量Qとは、浴槽湯温を現状温度T2から目標温度T1まで上昇させるために必要な熱量を示すものである。
具体的には、必要熱量Qは、以下の数1を用いて算出される。
Q=(T1−T2)×C×V1 (数1)
ここで、Cは、水(湯)の比熱である。また、V1は浴槽湯量(浴槽10内の湯量)である。なお、浴槽湯量V1としては、最初のお湯はり時の設定お湯はり湯量の値が用いられる。
制御装置50は、当該ステップS14の処理を行った後、ステップS15に移行する。
ステップS15において、制御装置50は、ステップS14で算出された必要熱量Qと、貯湯槽湯温T3とに基づいて、必要たし湯量V2を算出する。なお、貯湯槽湯温T3とは、貯湯槽20に貯溜された湯の温度のことをいう。より詳細には、貯湯槽湯温T3は、貯湯槽20の上部に貯溜された湯(給湯配管42を介して浴槽10に供給される湯)の温度のことをいう。また、必要たし湯量V2とは、浴槽湯温を現状温度T2から目標温度T1まで上昇させるために必要なたし湯量のことをいう。
具体的には、必要たし湯量V2は、以下の数2を用いて算出される。
V2=Q/{(T3−T1)×C} (数2)
制御装置50は、当該ステップS15の処理を行った後、ステップS16に移行する。
ステップS16において、制御装置50は、必要たし湯量V2が閾値を超えているか否かを判定する。ここでは閾値を50Lとする。すなわち、制御装置50は、必要たし湯量V2>50Lであるか否かを判定する。閾値は、たし湯の許容時間(利用者によって許容されるたし湯の所要時間)に基づいて設定される。例えば、たし湯速度を10L/分とし、たし湯の許容時間を5分とした場合、必要たし湯量V2が50Lを超えるとたし湯の所要時間が5分を超えるため、閾値は50Lに設定される。制御装置50は、必要たし湯量V2>50Lであると判定されなかった場合(ステップS16で「NO」)、ステップS19に移行する。一方、制御装置50は、必要たし湯量V2>50Lであると判定された場合(ステップS16で「YES」)、ステップS17に移行する。
ここで、ステップS16でYESの場合とは、貯湯槽湯温T3が比較的低いため、貯湯槽湯温T3と現状温度T2との温度差が小さいことを示している。具体的には、当該温度差が小さいことにより、浴槽湯温を現状温度T2から目標温度T1まで上昇させるための必要たし湯量V2を多く必要とすることを示している。
ステップS17において、制御装置50は、ヒートポンプユニット30を稼動させる。ヒートポンプユニット30が稼動することにより、貯湯槽20内の水(湯)が温められる。制御装置50は、ヒートポンプユニット30を所定の時間稼動させる。
制御装置50は、当該ステップS17の処理を行った後、ステップS18に移行する。
ステップS18において、制御装置50は、必要たし湯量V2を修正する。具体的には、修正後の必要たし湯量V2は、以下の数3を用いて算出される。
V2=Q/{(T4−T1)×C} (数3)
ここで、貯湯槽湯温T4は、ヒートポンプユニット30稼動後(ステップS17)の貯湯槽20に貯溜された湯の温度のことをいう。ヒートポンプユニット30が稼動することによりT4>T3となるので、修正後の必要たし湯量V2は、修正前の必要たし湯量V2よりも少なくなる。制御装置50は、この処理を行った後、ステップS16に処理を戻す。つまり、制御装置50は、必要たし湯量V2が閾値(50L)以下となるまで、ステップS16からステップS18までの処理を繰り返す。
ステップS19において、制御装置50は、算出された必要たし湯量V2と同じ量だけ、浴槽10内の湯を排水する。制御装置50は、ポンプ47を駆動させることにより排水を行う。このとき、制御装置50は、第一戻り配管44から供給される湯を排出配管46に案内する状態に三方弁48を切り替える。これにより、浴槽10から排水された湯は、第一戻り配管44及び排出配管46を介して外部に排出される。制御装置50は、当該ステップS19の処理を行った後、ステップS20に移行する。制御装置50は、算出された必要たし湯量V2と同量の排水が完了すると、第一戻り配管44から供給される湯を第二戻り配管45に案内する状態に三方弁48を切り替える。
ステップS20において、制御装置50は、算出された必要たし湯量V2と同じ量だけ、貯湯槽20内の湯を浴槽10内にたし湯する。当該ステップS20の処理が終わると、図2に示す制御は終了する。
このように本実施形態に係る給湯システム1においては、予め定められた所定量をたし湯するのではなく、浴槽湯温を目標温度T1とするための必要たし湯量V2をその都度算出し、当該必要たし湯量V2だけたし湯を行うので、たし湯によって浴槽湯温が上がりすぎたり、これとは逆に浴槽湯温が十分に上がらなかったりすることを防止することができる。
また、本実施形態に係る給湯システム1においては、自動的に、算出した必要たし湯量V2と同じ量だけ浴槽10内の湯を排出する(ステップS19)。これにより、浴槽10内の冷めた湯の量が減少する。そして、冷めた湯の排出後に高温の湯でたし湯を行うため(ステップS20)、浴槽10内の湯温(浴槽湯温)を目標温度T1まで上昇させるための所要時間を短縮することができる。また、仮に排水を行わない場合は、たし湯により浴槽湯量が増えるため、浴槽湯温を目標温度T1まで上昇させるための熱量(たし湯量)を多く必要とする。一方、本実施形態に係る給湯システム1においては、算出した必要たし湯量V2と同じ量だけ浴槽10内の湯を排出してからたし湯するので、浴槽湯量がたし湯の前後で変化しない。よって、排水を行わない場合と比べて、浴槽湯温を目標温度T1まで上昇させるための熱量(たし湯量)を低減させることができる。
図4(a)は、追いだき、たし湯(排水なし)及びたし湯(排水あり)のそれぞれの方法で、浴槽湯温を3℃昇温させるのに必要な所要時間を実際に比較したものである。なお、追いだきとは、浴槽10内の湯を追いだき循環路内に循環させて、当該浴槽10内の湯と貯湯槽20内の湯との間で熱交換を行い、当該熱交換によって温められた湯を再び浴槽10へと供給する方法である。なお、追いだき、たし湯(排水なし)及びたし湯(排水あり)のいずれの場合も、貯湯槽湯温T3を50℃として比較を行った。図4(a)に示すように、浴槽10内の湯の排出後にたし湯を行うことにより、追いだきと比べて所要時間を20分から4.2分へと短縮することができた。また、排水を行わない場合と比べても、所要時間を5.5分から4.2分へと短縮することができた。
このように、特に貯湯槽湯温T3が低い場合は、追いだきを行うと、浴槽湯温を目標温度T1まで上昇させるための所要時間が長くなる。一方、本実施形態に係る給湯システム1においては、通常の追いだきと比較して前記所要時間を短縮することができる。
図4(b)は、追いだき、たし湯(排水なし)及びたし湯(排水あり)のそれぞれの方法における時期ごと(冬季、中間期、夏季)の消費電力量を実際に比較したものである。なお、貯湯槽湯温T3は、追いだきの場合65℃、追いだき以外の場合は50℃で比較を行った。図4(b)に示すように、浴槽10内の湯の排出後にたし湯を行うことにより、排水を行わない場合と比べて消費電力を低減することができた。また、図4(b)のグラフには示していないが、浴槽10内の湯の排出後にたし湯を行うことにより、排水を行わない場合と比べて水の消費量を低減することができた。
また、図4(b)に示すように、たし湯(排水あり)の消費電力量は、追いだきの消費電力量と略同一であり、光熱費メリットは得られていない。しかしながら、追いだき量が多い場合は、追いだきによる中温水が貯湯槽20内に多く滞留するため、ヒートポンプユニット30の運転時のCOP(成績係数:Coefficient Of Performance)が低下する。よって、この場合には、たし湯(排水あり)の方が、追いだきと比べて光熱費メリットを得られる可能性がある。
また、本実施形態に係る給湯システム1においては、算出した必要たし湯量V2が閾値を超える場合には、ヒートポンプユニット30を稼動させて貯湯槽20内の湯の温度(貯湯槽湯温T3)を上昇させるので(ステップS17)、浴槽湯温を現状温度T2から目標温度T1まで上昇させるための所要時間を短縮することができる。
また、一般的に、単価の安い深夜電力のみで貯湯槽20内の湯を沸かす場合には、深夜から給湯需要が発生する時間(夕方〜夜間)まで、貯湯槽20内の湯を長時間貯湯する必要がある。貯湯槽20内に長時間貯湯すると、放熱による貯湯損失が増加する。一方、本実施形態に係る給湯システム1においては、給湯需要時に必要に応じて、ヒートポンプユニット30を稼動させて貯湯槽湯温T3を上昇させるので(ステップS17)、貯湯槽湯温T3を比較的低い温度で維持しても問題なく浴槽10内の湯を温めることができる。よって、貯湯損失を低減することができ、これにより光熱費の低減を図ることができる。
以上の如く、本実施形態に係る給湯システム1は、内部に浴槽10内の湯を温めるための湯(熱媒体)が貯溜された貯湯槽20(蓄熱槽)と、現状温度T2(浴槽湯温)を検知する排水温度センサ55(浴槽湯温検知手段)と、浴槽湯量V1を検知する流量センサ54(浴槽湯量検知手段)と、貯湯槽湯温T3(蓄熱槽熱媒体温度)を検知する上部温度センサ51(熱媒体温度検知手段)と、前記現状温度T2及び前記浴槽湯量V1に基づいて前記現状温度T2を目標温度T1まで上昇させるための必要熱量Qを算出し、前記貯湯槽湯温T3及び算出された前記必要熱量Qに基づいて前記現状温度T2を前記目標温度T1まで上昇させるための必要たし湯量V2(必要熱媒体量)を算出する制御装置50(算出手段)と、を具備するものである。
このように構成することにより、現状温度T2(浴槽湯温)を精度良く目標温度T1にすることができる。
また、前記貯湯槽20内の前記湯を温め可能に形成されたヒートポンプユニット30と、算出された前記必要たし湯量V2が所定の値を超えた場合には、前記貯湯槽20内の前記湯を温めるように前記ヒートポンプユニット30の動作を制御する制御装置50(算出手段)と、を具備するものである。
このように構成することにより、現状温度T2(浴槽湯温)を目標温度T1まで上昇させるための必要時間を短縮することができる。
また、前記制御装置50は、算出された前記必要たし湯量V2が前記所定の値を超えたことにより前記ヒートポンプユニット30が動作した後の前記貯湯槽湯温T3に基づいて、算出された前記必要たし湯量V2を修正するものである。
このように構成することにより、現状温度T2(浴槽湯温)を目標温度T1まで上昇させるための必要時間を短縮することができる。
また、前記給湯システム1は、前記貯湯槽20内の湯を排水する給湯機構40(排水手段)と、前記貯湯槽20内の湯を前記浴槽10にたし湯する給湯機構40(たし湯手段)と、を具備し、前記制御装置50は、必要熱媒体量として、前記現状温度T2を前記目標温度T1まで上昇させるための必要たし湯量V2を算出し、前記給湯機構40(排水手段)は、算出された前記必要たし湯量V2と同じ量だけ前記浴槽10内の湯を排水し、前記給湯機構40(たし湯手段)は、算出された前記必要たし湯量V2と同じ量だけ前記浴槽10にたし湯するものである。
このように構成することにより、現状温度T2(浴槽湯温)を目標温度T1まで上昇させるための必要時間を短縮することができる。
なお、本実施形態に係る貯湯槽20は、蓄熱槽の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る給湯機構40は、排水手段の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る給湯機構40は、たし湯手段の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る制御装置50は、算出手段の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る上部温度センサ51は、熱媒体温度検知手段の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る流量センサ54は、浴槽湯量検知手段の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る排水温度センサ55は、浴槽湯温検知手段の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る現状温度T2は、浴槽湯温の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る貯湯槽湯温T3は、蓄熱槽熱媒体温度の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る必要たし湯量V2は、必要熱媒体量の実施の一形態である。
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
例えば、本実施形態においては、浴槽10内の湯を排水した後(ステップS19)、たし湯を行う(ステップS20)ものとしたが、必ずしも排水を行わなくてもよい。
また、本実施形態においては、ステップS20においてたし湯を行うものとしたが、追いだきを行うものであってもよい。追いだきを行う場合は、ステップS15で現状温度T2を目標温度T1まで上昇させるために必要な追いだき時間(必要追いだき時間)を算出し、ステップS16で当該必要追いだき時間が閾値を超える場合に、ヒートポンプユニット30を稼動させる。これにより、たし湯と同様に、浴槽湯温を精度良く目標温度T1にすることができる。また、本実施形態においては、貯湯槽20は熱媒体として水(湯)を貯溜するものとしたが、追いだきを行うものである場合には、熱媒体として他の流体を貯溜するものであってもよい。
また、本実施形態においては、浴槽10内の湯を排出配管46を介して外部に排出するものとしたが、熱交換により貯湯槽20の下部に貯溜された水を温めた後、外部に排出されるものであってもよい。これにより、排水の熱を無駄にせず、有効利用することができる。
また、本実施形態においては、浴槽湯量V1として最初のお湯はり時の設定お湯はり湯量を用いるものとしたが、浴槽10に水圧センサを設けて、当該水圧センサにより浴槽湯量V1を検知してもよい。
また、本実施形態においては、ヒートポンプユニット30は、所定の時間稼動するものとしたが、これに限定されるものではなく、貯湯槽湯温T3が所定の温度だけ上昇するまで(又は所定の温度に到達するまで)稼動するものであってもよいし、また、ヒートポンプユニット30の稼働時間は、必要たし湯量V2が閾値に対してどれだけ足りていないかに応じて変動するものであってもよい。
また、本実施形態においては、ステップS16において、制御装置50は、必要たし湯量V2が閾値を超えているか否かを判定するものとしたが、光熱費の大小を判定するものであってもよい。具体的には、制御装置50は、ヒートポンプユニット30を稼動させてからたし湯を行った場合の光熱費(光熱費A)と、ヒートポンプユニット30を稼動させないでたし湯を行った場合の光熱費(光熱費B)とを比較して、光熱費Aの方が光熱費Bよりも低いと判定した場合にはステップS17に移行し、光熱費Aの方が光熱費Bよりも高いと判定した場合にはステップS19に移行するものであってもよい。また、制御装置50は、必要たし湯量V2が閾値を超えているかの判定、及び光熱費の大小の判定の両方を行ってもよい。具体的には、制御装置50は、必要たし湯量V2が閾値を超えており、且つ(又は)、光熱費Aの方が光熱費Bよりも低いと判定した場合には、ステップS17に移行し、それ以外の場合はステップS19に移行するものとしてもよい。