JP6920681B2 - 移植用デバイス及びその製造方法並びにバイオ人工臓器の製造方法 - Google Patents
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Description
1cm角の前記半透膜を0.1%アルブミン溶液に90分浸漬した時のアルブミン吸着量が10μg/cm2以下である、移植用デバイス。
[2] 前記細胞固定基材は、ハイドロゲルである、[1]の移植用デバイス。
[3] 前記半透膜において、30分間でのアルブミンの透過率が30%以上である、[1]又は[2]の移植用デバイス。
[4] 前記移植用デバイスにおいて、30分間でのアルブミンの透過率が30%以上である、[1]〜[3]のいずれかの移植用デバイス。
[5] 前記半透膜が、前記半透膜を通して負圧約3±0.2kPaで水を吸引したとき、水の透過量が1,000L/(m2・時)以上で表される、[1]〜[4]のいずれかの移植用デバイス。
[6] 前記半透膜と血清とを接触させたとき、前記半透膜による、血清中の補体価(CH50)の減少率が25%以下である、[1]〜[5]のいずれかの移植用デバイス。
[7] 前記半透膜と血清とを接触させたとき、前記半透膜による、血清中の補体タンパク質の活性の増加率が30%以下であり、
前記活性の増加は、C1、C2、C3,C4、C5、C6、C7、C8及びC9の内、一以上の補体の量、前記補体が分解されて生じたタンパク質の量、並びに前記補体の複合体の内、一以上のものの測定の量に基づき、算出されたものである、[1]〜[6]のいずれかの移植用デバイス。
[8] 前記半透膜の厚さが50μm以上、200μm以下である、[1]〜[7]のいずれかの移植用デバイス。
[9] 前記移植用デバイスの表面にある半透膜を測定した際の平均表面孔径が0.1μm以上、3μm以下である、[1]〜[8]のいずれかの移植用デバイス。
[10] 前記半透膜が、エチレン-ビニルアルコール系共重合体を50質量%以上含有する、[1]〜[9]のいずれかの移植用デバイス。
[11] 細胞を細胞固定基材で固定し、前記細胞を前記移植用デバイスごと生体に移植することで、前記細胞を前記移植用デバイスの外部の生体環境から隔離するための、[1]〜[10]のいずれかの移植用デバイス。
[12] コラーゲン、ヘパリン、キチン、キトサン、アルギン酸塩、アガロース、寒天、トロンビン、ビニルアルコール系重合体、ジェランガムからなる群から選ばれる、少なくとも一つの高分子からなる細胞固定基材を、樹脂を含有する半透膜からなるバッグで包むことで、移植用デバイスを製造する方法であって、
1cm角の前記半透膜を0.1%アルブミン溶液に90分浸漬した時のアルブミン吸着量が10μg/cm2以下であり、前記半透膜において30分間でのアルブミンの透過率が30%以上である、移植用デバイスの製造方法。
[13] コラーゲン、ヘパリン、キチン、キトサン、アルギン酸塩、アガロース、寒天、トロンビン、ビニルアルコール系重合体、ジェランガムからなる群から選ばれる、少なくとも一つの高分子及び細胞が分散している分散液を、樹脂を含有する半透膜からなるバッグで包み、樹脂を含有する半透膜からなるバッグ内で前記高分子をゲル化することで、前記細胞をゲル内に固定する、バイオ人工臓器を製造する方法であって、
1cm角の前記半透膜を0.1%アルブミン溶液に90分浸漬した時のアルブミン吸着量が10μg/cm2以下であり、前記半透膜において30分間でのアルブミンの透過率が30%以上である、バイオ人工臓器の製造方法。
[14] 前記細胞が膵島である、[13]のバイオ人工臓器の製造方法。
本明細書に係る用語「細胞」には、付着性細胞及び浮遊細胞が含まれるが、これらに限らない。付着性細胞とは、細胞培養にあたり、担体に付着することで増殖する細胞をいう。浮遊性細胞とは細胞増殖において基本的に担体への付着を必要としない細胞をいう。浮遊性細胞には、担体に弱く付着することが可能な細胞を含む。
[樹脂]
本発明に用いる半透膜は樹脂を含有する物である。半透膜は、例えば、少なくとも一種類以上の樹脂を溶媒に溶解させ、溶解した樹脂を凝固させることで作製することができる。かかる樹脂は特に限定されるものではない。かかる樹脂として、例えば、エチレン−ビニルアルコール系共重合体、ポリスルホン系重合体、ポリアクリロニトリル系重合体、酢酸セルロースなどのセルロース系重合体、ポリアミド系重合体、ポリカーボネート系重合体などの樹脂を用いることが出来る。これらの樹脂の重量平均分子量は1万以上であることが好ましい。
本発明に用いる半透膜の厚さは50μm以上、200μm以下であることが好ましい。厚さが50μm以上であることで、半透膜の強度を高めることができる。厚さが200μm以下であることで、アルブミンなどのタンパク質の透過率や、水の透過量を所望の範囲に調整しやすい半透膜を提供することができる。
本発明に用いる半透膜は、微小な孔が複数設けられている多孔膜である。かかる孔の平均孔径は0.1μm以上、3μm以下であることが好ましく、0.3μm以上、3μm以下であることがさらに好ましく、0.5μm以上、2μm以下であることがより好ましい。平均孔径がかかる下限を有することで、タンパク質の透過率や、水の透過量を高めることができる。また平均孔径がかかる上限を有することで、外部細胞等の透過及び内部細胞の流出を抑制することができる。また、半透膜において、各孔の孔径は所定の分布を有する。このとき、外部細胞等の透過を防止するために、半透膜表面に孔径が20μm以上の孔が無いことが好ましい。
本発明に用いる半透膜の製膜方法に特に制限は無い。例えば、公知の方法で無孔膜を作製するとともに、かかる無孔膜に対してドリル加工により孔を開けることで半透膜を得ることができる。また、例えば以下の方法で半透膜を製造することもできる。
30℃における製膜原液の粘度は1,000mPa・s以上20,000mPa・s以下であることが好ましく、1,000mPa・s以上10,000mPa・s以下であることがより好ましい。
製膜原液の30℃における粘度は、BL型粘度計又はBH型粘度計を用いて、ロータ回転数6rpm、温度30℃の条件で測定できる。
製膜原液を構成する溶媒は、製膜に用いる樹脂の良溶媒であれば、特に限定されない。例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)等、あるいはこれらを成分とする混合溶媒を挙げることができる。製膜性や毒性が低いという観点から、なかでもジメチルスルホキシド(DMSO)が好ましい。
製膜原液を構成する添加剤は、水溶性高分子であることが好ましい。例えば、一般的に界面活性剤と呼ばれるものを添加剤として使用できる。界面活性剤は高分子界面活性剤であることが好ましい。添加剤の種類や量を調整することで、半透膜の孔の平均孔径を調節することができる。また、製膜原液の粘度を調整することができる。また、製膜原液の相分離温度(LST、Land Surface Temperature)を調整することができる。
本発明に用いる半透膜の表面は血清中の補体を活性化しにくいことが好ましい。半透膜の表面が補体を活性化しにくいことは以下の評価方法に基づき表される。
半透膜と新鮮ヒト血清とを接触させる。この時、血清補体価(CH50)の減少率が25%以下であれば、半透膜の表面は補体を活性化しにくいと評価される。血清補体価は、活性化を受けることなく残存している補体C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8及びC9の総量に比例する。血清補体価に基づき補体の活性化の度合いを評価することができる。
血液中の補体は通常、不活性な酵素前駆体として存在する。酵素前駆体は体内に侵入した異物により刺激を受けることで活性化する。酵素前駆体は活性化により部分的に分解され、分解物となる。この分解物は、一部は複合体を形成し、一部は遊離する。したがって、半透膜が異物として振る舞う場合には、半透膜の表面にて補体を活性化され、上記のような分解物が生成する。以下の評価方法により評価できる。
本発明に用いる半透膜の表面はタンパク質を吸着しにくいことが好ましい。半透膜の表面がタンパク質を吸着しにくいことは、以下のアルブミンを用いた評価方法に基づき評価することができる。
本発明に用いる半透膜の透水性は高いことが好ましい。半透膜の透水性は、半透膜を通して負圧3±0.2kPaで25℃の蒸留水を吸引したときの、半透膜の単位面積当たり及び単位時間当たりの水の透過量{L/(m2・時)}により評価する。かかる水の透過量が1,000{L/(m2・時)}以上であれば半透膜の透水性が高いと評価する。
本発明に用いる半透膜のアルブミンの透過率は30%以上である。本実施形態ではアルブミンの透過率を半透膜の物質透過性の指標として用いる。これにより、アルブミン以外の各種タンパク質の透過性も間接的に評価できる。またグルタミン等の各種アミノ酸、グルコース、ホルモン、ビタミン等の透過性も間接的に評価できる。これらの物質は、本発明の半透膜を透過することが望ましい。アルブミンの透過率は次の方法で測定できる。
本発明に用いる細胞固定基材は、細胞が細胞固定基材の外部へ脱離しないように固定するものである。
本発明に係る移植用デバイスは細胞を外部環境から隔離するために用いることができる。図1は本発明に係る移植用デバイスの使用の一態様であるバイオ人工臓器20を示す。半透膜10からなるバッグ中に、細胞固定用の基材11及び所望の細胞12が入れられている。細胞12はバッグによって密閉されている。ここで、バッグとは、半透膜10により閉じられた領域が設けられた部材である。バッグは、例えば、[物質(アルブミン)の透過性]の欄で述べた方法で作製できる。また、複数枚の半透膜を用いてバッグを作製しても良く、半透膜10の透過性を抑制しない範囲で、他素材の膜と重ね合せてバッグを作製しても良い。また、細胞をバッグ内に注入するためのチューブがバッグに接続されていてもよい。また移植用デバイスを生体内に配置した後に、細胞を移植用デバイス内に注入することでバイオ人工臓器を完成してもよい。また移植用デバイス内に細胞を配置することで予めバイオ人工臓器を完成した後に、当該バイオ人工臓器を生体内に移植してもよい。
発明者らは従来の体内埋め込み式のバイオ人工臓器に以下の課題があることを見出した。すなわち細胞を封入したバッグ及びバッグに封入された細胞をバイオ人工臓器として生体内に移植するとバッグ表面に生体中のタンパク質が付着する。また、そのタンパク質を足場として細胞が接着し、バッグ表面に細胞の層が形成される。このためバッグの物質透過性が低下する。物質透過性の低下によりバッグ内の細胞が分泌する物質の放出が抑制されるだけでなく、バッグ内の細胞が外部環境から十分な栄養分を受けられなくなる。このためバイオ人工臓器の機能を長期間維持することは難しい。
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
各実施例及び比較例に使用する半透膜を、以下に示す製造例1の方法を基本として作製する。製膜原液の組成及び凝固液の組成を変えることで 、孔径及び内部構造の異なる半透膜(多孔膜)を得ることができる。各製造例において、製造例1から変更する点は後述する。
2.熱風乾燥機を調整することで、製膜原液の温度を80℃に調整した。
3.成形器具としてガラス板を用いた。ホットプレート上にガラス板を設置し、ガラス板の表面が30℃になるようにホットプレートの温度を調節した。製膜時の厚み調整のため、ガラス板の一方端と他方端にテープを貼った。
4.ガラス板の一方端に80℃の製膜原液を垂らした。ガラス板上の製膜原液をガラス棒で均一に引き伸ばした。
5.大気中、室温(25℃)環境下で1分間放置した。
6.製膜原液が塗布されたガラス板を30℃の温水が入った凝固浴に浸漬した。
7.製膜原液のうち添加剤及び溶媒が凝固浴中に拡散し、さらに樹脂成分が凝固することで半透膜が生じた。浸漬開始から10分後、水中にてガラス板から半透膜を剥がした。
8.水中にて半透膜を二枚の四角形の金枠で挟み、さらに、それぞれの辺で二箇所ずつ固定することで、半透膜の四辺を固定した。
9.浸漬開始から15分後、半透膜を30℃の温水に移し、一晩水に浸漬した。
10.半透膜を水から取り出した。半透膜をアセトン及び水の混合液に移した。アセトン及び水の体積比は8/2で、温度は25℃であった。半透膜を15分間、当該混合液に浸漬した。
11.半透膜を混合液から取り出した。半透膜をアセトンに移し、15分間25℃のアセトンに浸漬した。
12.半透膜をアセトンから取り出し、大気中、室温(25℃)環境下で1時間静置した。
13.半透膜を40℃に設定した乾燥機中で一時間乾燥することで、長辺150mm×短辺120mm×厚み100μmの半透膜E−1を得た。
製造例3においては、上記1.に示すEVOH−1をエチレン−ビニルアルコール系共重合体(株式会社クラレ製、クラレエバール(登録商標)F101B、エチレン構造単位の含有率32モル%、けん化度98モル%、本明細書においてEVOH−2)に変更した。また、各組成を表1のように変更した。
製造例4においては、上記1.に示すEVOH−1をポリスルホン系重合体(PS)(アモコ社製、UDEL P−1700)に変更し、溶媒をジメチルアセトアミド(DMAc)に変更した。また、各組成を表1のように変更した。
製造例5においては、上記1.に示すEVOH−1、DMSO及びPEOの質量の比を15:85:0に変更した。
製造例6においては、特開2001−314736号公報の実施例3に準拠して半透膜を作製した。すなわち、上記1.に示す添加剤を水及び塩化リチウムに変更した。また、各組成を表1のように変更した。
血清補体価(CH50)の測定は市販の測定試薬を用いて行うことができる。測定試薬としては例えば、和光純薬株式会社の補体価−HAテストワコー及び日本ビーシージー製造株式会社の免疫比濁テストCH50オート(KW)がある。
個別の補体の活性の測定は、BD Biosciences社のHuman OPtEIA ELISA Set C3a(Cat.No 550499)を用いて行った。かかる測定では、測定対象となるのは、補体から脱離するタンパク質C3aとなる。C3aは補体系の活性化の開始の指標として有効に利用できる。
2.個片化した半透膜を25℃のエタノールに30分以上浸漬し、半透膜の孔内の気泡を追い出した。次いでPBS(−)で洗浄した。PBS(−)の用語はマグネシウム及びカルシウムの含まれていないPBS(リン酸緩衝生理食塩水)を表す。
3.試験管に個片化した半透膜と、新鮮ヒト血清を2.0mL入れた。半透膜と血清との比は1(cm2/mL)とした(厚み部分の面積は微小のため無視している)。なお、試験管の内面はあらかじめアルブミンでブロッキングして使用した。
4.陰性コントロール用に、個片化した半透膜を入れていない新鮮ヒト血清を同様に試験管に入れた。陽性コントロール用に、個片化した半透膜を入れていないが20mgのザイモザン(SIGMA製 Z4350-1G)を添加した新鮮ヒト血清を試験管に入れた。これらの試験管を撹拌しながら加温して90分間37℃でインキュベートした。
5.試験管から個片化した半透膜を引き上げた。各血清中の補体の活性を測定した。測定はBD Bioscience社の品番550499のELISAキットを使用して行った。同キットに付属のプロトコルに従い測定を行った。
6.活性化率を以下の式により求めた。製造例に係る個片化した半透膜を入れた新鮮ヒト血清中の補体の活性の値をXnとした。陰性コントロールの活性の値をXminとした。陽性コントロールの活性の値をXmaxとした。活性化率は以下の式で算出できる。
1.各製造例に係る半透膜を切断して、厚みはそのままで10mm×10mmの大きさに個片化した。個片化した半透膜を25℃のエタノールに30分以上浸漬した。次いでPBS(−)で洗浄した。
2.個片化した膜をヒトアルブミン(SIGMA製 A1653-10G)溶液に浸漬した。アルブミン溶液の濃度は0.1%(1mg/mL)で、温度は30℃で、溶液の体積は2.4mLとした。浸漬は90分間行った。
3.浸漬後、溶液中から個片化した半透膜を取り出した。
4.残された溶液中のアルブミンの濃度を測定することで、個片化した半透膜へのアルブミン吸着量を算出した。測定はELISA法で行った。ELISA法による測定はHuman Albumin ELISA Quantitation Set(Bethyl Laboratories,Inc.)を用いて実施した。
製造例1〜6に係る半透膜へのアルブミン吸着量は10μg/cm2以下であった。このため当該半透膜の表面はタンパク質を吸着しにくいと評価された。
1.各製造例に係る半透膜を切断することで、厚みはそのままで3cm×3cmの大きさに個片化した。
2.個片化した膜を25℃のエタノールに30分以上浸漬した。
3.その後、個片化した膜を30℃の蒸留水に30分以上浸漬した。
4.上記膜を目盛付きフィルターホルダー(FILTER HOLDER:ADVANTEC製25 mm、フィルター面積3.14cm2)に装着した。フィルターホルダーは下部部品、スペーサー、上部部品及びクリップからなる。上部部品は外枠及び半透膜の支えとして機能する部品である。下部部品の上にスペーサーを置き、スペーサーの上に半透膜、半透膜の上に上部部品を置いた。上部部品と下部部品とをクリップで挟み固定した。下部部品は、吸引瓶に接続した。
5.目盛付きフィルターホルダーの上部部品内に11mLの蒸留水を入れた。
6.目盛付きフィルターホルダーにアスピレーターを接続した後、アスピレーターを稼働し、半透膜が蒸留水と接していない下部部品側を減圧した。このときの水温は25℃、負圧の大きさは3±0.2kPaとした。
7.上部部品内の蒸留水の体積が10mLから5mLになった時間を記録した。当該時間が10分以上であった場合は、減圧開始後10分間での水の濾過量を記録した。
8.半透膜の透水性を上記負圧における、フィルターホルダーに装着された膜の実効単位面積当たり及び単位時間当たりの水の透過量{L/(m2・時)}で表す。各製造例において、4枚の半透膜を用意し、測定を4回行った。その平均値を代表値として水の透水性とした。
1.各製造例に係る半透膜を切断することで、厚みはそのままで、短辺25mm×長辺40mmの大きさに個片化した。個片化した半透膜を25℃のエタノールに30分以上浸漬し、次いでPBS(−)で洗浄した。
2.長辺部を折り曲げ、ヒートシーラーで、元の長辺部の2辺を各々溶融接着した。これにより、元の短辺部が解放されている袋状の部材を作製した。
3.当該部材内部に20mg/Lのヒトアルブミン溶液を200μL注入した後、元の短辺部をヒートシーラーで封じてバッグを作製した。
4.前記アルブミン溶液入りのバッグを15mLチューブ内のハンクス緩衝液10mLに浸漬し、37℃で30分間振とうした。
5.一時間後、バッグ外側のハンクス緩衝液を採取した。
6.採取したハンクス緩衝液内のアルブミン濃度をELISA法により測定した。ELISA法による測定はHuman Albumin ELISA Quantitation Set(Bethyl Laboratories,Inc.)を用いて実施した。
7.透過率を以下の式により求めた。バッグからハンクス緩衝液に移行したアルブミン透過量をXnとした。バッグに注入したアルミブミン量をXmaxとした。Xmaxはすなわち、20mg/L×200μLで、4000ngである。
膜厚を膜厚計で測定し、製膜された半透膜の四隅における測定値の平均をその半透膜の膜厚とした。各製造例の膜の膜厚を表1に示す。
半透膜の孔の孔径は半透膜の表面を観察することで測定した。半透膜の一方の表面を走査型電子顕微鏡にて倍率2,000倍で写真撮影し、撮影後、無作為に30個の孔、すなわち空隙を選択し、各空隙の直径を測定した。測定値の平均を半透膜の孔の平均孔径とした。
1.後述する各実施例及び比較例の[移植用デバイスにおけるアルブミン透過率評価]で記載したとおりに、アルブミン透過率の評価用デバイスを得た。なお本評価法の実施にあたってはゲルの洗浄、浸漬処理は全て省略した。これは以下に述べるとおり評価用デバイスを液に浸漬した際に透過するデバイス内部のアルブミンを測定することが本評価法の実施の目的だからである。
2.前記アルブミン溶液入りのバッグを15mLチューブ内のハンクス緩衝液10mLに浸漬し、37℃で30分間振とうした。
3.一時間後、バッグ外側のハンクス緩衝液を採取した。
4.採取したハンクス緩衝液内のアルブミン濃度をELISA法により測定した。ELISA法による測定はHuman Albumin ELISA Quantitation Set(Bethyl Laboratories,Inc.製)を用いて実施した。
5.透過率を以下の式により求めた。バッグからハンクス緩衝液に移行したアルブミン透過量をXnとした。バッグに注入したアルミブミン量をXmaxとした。Xmaxはすなわち、200mg/L×5μL又は20mg/L×50μLで、1000ngである。
<膵島の調製>
10〜14週齢、体重約300gのWisterラット(Shimizu animal Co. Ltd. Kyoto, Japan)から、下記コラゲナーゼ消化法により膵島を分離した。
1.開腹したラットの胆管より、XI型コラゲナーゼ(Sigma aldrich製、C7657-100MG)1000U/mlを含有するコラゲナーゼ/ハンクス液を一匹あたり12mL注入した後、膵臓を切除し、50mLのコニカルチューブに移した。
2.上記チューブを37℃の恒温槽に移し 、20分間の酵素処理を施した。
3.4℃のハンクス液35mLを添加し、酵素反応を停止した。ピペットを用いて膵臓組織を分散し、遠心により組織ペレットとして回収した。その後、さらに二回、ハンクス液40mLを添加し、ピペッティングにより組織ペレットを再度分散し遠心、洗浄した。なお、遠心は400G、1分間とした。
4.ハンクス液10mLを加え、ピペッティングにより分散し、組織懸濁液を得た。
5.組織懸濁液を800μmサイズのメッシュを有するふるいを用いてろ過した。ろ過液を50mLコニカルチューブに回収し、該チューブを遠心(400G、3分間)して膵島含有ペレットを得た。
6.前記ペレットを、デキストラン(Sigma aldrich製, MW 70,000, 31390-500G)を溶解した4℃のハンクス液(密度1.094 g/cm3)10mLに懸濁した。その後、密度1.094g/mlデキストラン溶液(A)、その上層に密度1.081g/mlデキストラン溶液(B)及び密度1.041g/mlデキストラン溶液(C)を静かに添加し、3層とした。不連続密度勾配遠心処理を実施した。不連続密度勾配遠心は、40Gで4分間、更に800Gで16分間行った。
7.遠心後、最上2層の(B)、(C)間の界面より膵島含有画分をパスツールピぺットを用いて採取した。
8.得られた膵島を4℃のハンクス液を用いて3回洗浄した。
9.37℃のCMRL−1066培地(Life technologies/Gibco製、製品番号11530037)に懸濁し、37℃、5%CO2下で一晩インキュベートした。ラット一匹あたり約500個の膵島を得た。
<バッグ作製>
1.製造例1で作製した半透膜E−1を20mm×30mmの大きさに切断し、長辺を二つに折り曲げ、二辺をヒートシーラーで溶着した。
2.70%エタノールに3分浸漬した後、滅菌した蒸留水に一晩浸漬した。
1.PVA0.48g(重合度18,000、けん化度98.5モル%)を9.52mLの蒸留水に溶解させた後、オートクレーブ(121℃、15分)による加熱溶解滅菌処理を2回施した。
2.得られた無菌PVA溶液を15mLコニカルチューブに6.3mL採り、5倍濃度ET−Kyoto電解質液(以降、ETK液と略す)2mL、DMSO(SIGMA aldrich製、D4540-100ML)0.5mL、FBS(Biological industries製、Cat.04−121−1A)1mL及び1Mニコチンアミド(SIGMA aldrich製、N0636-100G)水溶液0.1mL、Antibiotics−Antimycotic(Thermo Fisher Scientific製、製品番号15240-062)0.1mLを無菌的に滴下、混合することで、滅菌3%PVA−ETK液10mLを得た。
1.上記で得られた膵島を800個集め、37℃のCMRL−1066培地に懸濁した。その懸濁液を15mLコニカルチューブ内に入れ、800Gで1分間遠心、培地を除去した。
2.得られた膵島の沈殿物にセルバンカー(CELLBANKER 1、日本全薬工業株式会社製)100μLを添加し、膵島を懸濁した後、氷冷した状態で5分間静置した。
3.再度遠心して、セルバンカーを除去したのち、膵島をペレットとして1.5mLチューブ内に回収した。
4.上記ペレットと上記の滅菌3%PVA−ETK液100μLとを混合することで、回収した膵島を、PVA−ETK液中に懸濁した。これによりPVA−ETK膵島懸濁液を得た。
1.上記で得られたPVA−ETK膵島懸濁液を上記バッグ内に全量注入し、ヒートシーラーにて、残る1辺を溶着することで、PVA−ETK膵島懸濁液を密封した。
2.上記密閉したバッグを専用容器内で−80℃、24時間保存した。これによりバッグ内のPVA−ETK液において、PVAの膨潤を進め、膵島分散系をゲル化した。
3.24時間後、37℃のCMRL−1066培地中で速やかに解凍して、バイオ人工膵島を得た。
4.解凍されたバイオ人工膵島を、5mLの4℃のETK液中に5分間浸漬した。5分後、ETK液を除去し、新たに5mLのETK液を加え、バイオ人工膵島を浸漬した。この浸漬と除去の操作を累計で3回繰り返し、該バイオ人工膵島に含有されるDMSOを除去した。
5.4℃のETK液にバイオ人工膵島を浸漬し、4℃で24時間保管した。
6.24時間後、CMRL−1066培地に移し、24時間(37℃、5%CO2)培養した。得られたバイオ人工膵島を、以降の試験に用いた。
アルブミン透過率評価の場合は、移植用デバイス調製時、上記操作における<膵島分散系の調製>中1、2、3を行わず、4のペレットの代わりに200mg/Lのヒトアルブミン溶液5μLを用い、3%PVA−ETK溶液150μLと混合し、PVA−ETK膵島懸濁液の代わりとして調製した。その後、<バイオ人工膵島の作製>中の1、2の操作によりアルブミン透過率評価用デバイスを作製した。
実施例2においては、実施例1の<膵島分散系の調製>の手順を下記のとおり変更した。
1.0.5gのキトサン(417963, Sigma, USA)を0.1Mに調整した酢酸(017-00256, Wako, Japan)溶液20mLに溶解してオートクレーブで滅菌し、キトサン溶液を得た。
2.12gのβ−グリセロりん酸二ナトリウム水和物(G6251, Sigma, USA)を純水15mLに溶解し、0.22μmのフィルター(Millex-HA, Millipore, USA)で濾過滅菌し、溶液を得た。これをGP溶液とする。
3.クリーン・ベンチ内で上記キトサン溶液を撹拌しつつ、上記GP溶液を滴下してpHを7.4に調整した後、4℃で保存した。これをゲル調製液とする。
4.上記で得られた膵島を800個集め、37℃のCMRL−1066培地に懸濁した。その懸濁液を15mLコニカルチューブ内に入れ、800Gで1分間遠心、培地を除去し、ペレットを得た。
5.ゲル調製液200μLに上記ペレットを懸濁し、膵島懸濁液を得た。
<バイオ人工膵島の作製>
1.上記膵島懸濁液をバッグ内に封入後、37℃のインキュベータ内に10分間静置してゲル化させ、バイオ人工膵島を得た。
2.これをCMRL−1066培地に浸漬し、24時間(37℃、5%CO2)培養し、以降の実験に用いた。
アルブミン透過率評価の場合は、移植用デバイス調製時、上記操作における<膵島分散系の調製>中、1,2、3を実施し、4は実施せず、5のペレットの代わりに200mg/Lヒトアルブミン溶液5μLを用い、ゲル調製液150μLと混合し、膵島懸濁液の代わりとして調製した。その後、<バイオ人工膵島の作製>中の1の操作によりアルブミン透過率評価用デバイスを作製した。
実施例3においては、上記に示す<膵島分散系の調製>及び<バイオ人工膵島の作製>を下記に変更した。
1.乾燥したオートクレーブ耐性ボトルに入れたアガロース粉末(ナカライテスク製、アガロースLGT)に、滅菌CMRL−1066培地を加え、12%の懸濁液とした後、オートクレーブにかけて滅菌した(121℃、20分間)。
2.40℃で保温したアガロース溶液0.1mLに、膵島800個を分散した滅菌CMRL−1066培地0.1mLを添加し、緩やかに混合し、膵島懸濁液を得た。
1.上記膵島懸濁液を作製したバッグ内に0.2mL全量注入し、ヒートシーラーにて溶着し密封した。
2.滅菌した20mm×15mm×10mmの型内に上記バッグを置いた。
3.型及びバッグを4℃の冷蔵庫内で10分保管し、アガロースをゲル化させ、バイオ人工膵島を得た。
4.これを37℃のCMRL−1066培地に浸漬し、24時間(37℃、5%CO2)培養し、以降の実験に用いた。
アルブミン透過率評価の場合は、移植用デバイス調製時、上記操作における<膵島分散系の調製>中、1を実施し、2の膵島の代わりに20mg/Lヒトアルブミン溶液50μLを用い、アガロース溶液50μLと混合し、膵島懸濁液の代わりとして調製した。その後、<バイオ人工膵島の作製>中の1、2,3の操作によりアルブミン透過率評価用デバイスを作製した。
実施例4においては、上記に示す<膵島分散系の調製>及び<バイオ人工膵島の作製>を下記に変更した。
1.アルギン酸ナトリウム(和光純薬製)を生理食塩水(大塚製薬工場製)に溶解し、2.0%アルギン酸ナトリウム溶液を得た。
2.上記で得た膵島800個を滅菌CMRL−1066培地0.1mLに分散し、上記2.0%アルギン酸ナトリウム溶液0.1mLと混合し、膵島懸濁液を得た。
1.上記膵島懸濁液を作製したバッグ内に0.2mL全量注入し、ヒートシーラーにて溶着し密封した。
2.滅菌した20mm×15mm×10mmの型内に上記バッグを置いた。
3.1.5%塩化カルシウム(和光純薬製)水溶液20mLを注ぎ、膵島含有アルギン酸カルシウムをゲル化させ、バイオ人工膵島を得た。
4.5分後、上澄み液をアスピレーションにより除去した。
5.1.0%塩化カルシウム溶液10mLに浸漬し、5分静置した。
6.塩化カルシウム溶液をアスピレーションにより除去し、ハンクス液20mLに1分浸漬した。
7.ハンクス液をアスピレーションにより除去し、再度ハンクス液20mLに1分浸漬した。
8.バイオ人工膵島を型から取り出し、CMRL−1066培地に浸漬し、24時間(37℃、5%CO2)培養し、これを以降の実験に用いた。
アルブミン透過率評価の場合は、移植用デバイス調製時、上記操作における<膵島分散系の調製>中、1を実施し、2の膵島の代わりに20mg/Lヒトアルブミン溶液50μLを用い、アガロース溶液50μLと混合し、膵島懸濁液の代わりとして調製した。その後、<バイオ人工膵島の作製>中の1、2,3、4,5の操作によりアルブミン透過率評価用デバイスを作製した。
実施例5においては、上記に示す<バッグ作製>における半透膜をE−1からE−2に変更した。
実施例6においては、上記に示す<バッグ作製>における半透膜をE−1からE−3に変更した。
実施例7においては、上記に示す<バッグ作製>における半透膜をE−1からP−1に変更した。
比較例1においては、上記に示す<バッグ作製>を実施せず、下記の方法でバイオ人工膵島(ただし、半透膜は有さない)を作製した。
1.滅菌した、15mm×20mmのPET製メッシュシート(株式会社サンプランテック製:TN70, 115)2枚を、予め滅菌3%PVA−ETK液に浸漬し、この内の一枚を滅菌したガラスプレート上に置いた。
2.実施例1に係る操作で得られたPVA−ETK膵島懸濁液をメッシュシート上に均一に塗布し、もう一枚のメッシュシートを上から被せ、(PETメッシュシート)/(PVA−ETK膵島懸濁液)/(PETメッシュシート)の3層構成とした。更に上から別の滅菌したガラスプレートを被せ、約1mm厚の3層構成シートとなるよう調整し、これを2枚のガラスプレートで挟んだ状態のまま−80℃の冷凍庫内で、24時間保存して液内のPVAをゲル化し、バイオ人工膵島を得た。
3.24時間後、37℃のCMRL−1066培地中で速やかに解凍した。
4.解凍したバイオ人工膵島を、5mLの4℃のETK液中に5分間浸漬した。5分後、ETK液を除去し、新たに5mLのETK液を加え、バイオ人工膵島を浸漬した。この浸漬と除去の操作を累計3回繰り返し、該バイオ人工膵島に含有されるDMSOを除去した。
5.4℃のETK液にバイオ人工膵島を浸漬し、4℃で24時間保管した。
6.24時間後CMRL−1066培地に移し、24時間(37℃、5%CO2)培養し、これを以降の実験に用いた。
アルブミン透過率評価の場合は、実施例1の方法に準じてPVA−ETK液とヒトアルブミン溶液との混合液を作製し、上記方法に準じてPET製メッシュシートを用いて、半透膜を用いずに、評価用デバイスを作製した。
比較例2においては、上記に示す<バッグ作製>を実施せず、下記の方法でバイオ人工膵島(ただし、半透膜は有さない)を作製した。
1.乾燥したオートクレーブ耐性ボトルに入れたアガロース粉末(ナカライテスク製、アガロースLGT)に、滅菌CMRL−1066培地を加え、12%の懸濁液とした後、オートクレーブ(121℃、20分間)にかけて滅菌し、アガロース溶液を得た。
2.40℃で保温したアガロース溶液0.1mLに、膵島800個を分散した滅菌CMRL−1066培地0.1mLを添加し、緩やかに混合し、懸濁液を得た。
1.上記懸濁液を滅菌した20mm×15mm×10mmの型内に置いた。
2.型を4℃の冷蔵庫内で10分保管し、アガロースをゲル化させ、バイオ人工膵島を得た。
3.バイオ人工膵島を37℃のCMRL−1066培地に浸漬し、24時間(37℃、5%CO2)培養し、これを以降の実験に用いた。
アルブミン透過率評価の場合は、実施例4の方法に準じてアガロース溶液とヒトアルブミン溶液との混合液を作製し、半透膜を用いずに評価用デバイスを作製した。
比較例3においては、上記にしめす<バッグ作製>における半透膜E−1をE−4に変更した。
比較例4においては、上記にしめす<バッグ作製>における半透膜E−1をE−5に変更した。
バイオ人工膵島内の膵島に対する免疫隔離がなされているかどうかを確認した。さらに体液由来の線維性皮膜によってなされるバイオ人工臓器に対する被覆を抑制することができるかどうかを確認した。
糖尿病モデルマウスの作製:
1.C57BL/6マウス(7週齢、オス)に、クエン酸緩衝液(pH4.5)に溶解したストレプトゾトシン(Sigma aldrich製、S0130-50MG)をマウスの体重あたり200mg/kgを腹腔内投与した。
2.投与後1週間の時点で血糖を3回測定し、2回以上血糖600mg/dL以上になったマウスを糖尿病が成立したものと判断し、実験に使用した。なお、ストレプトゾトシン投与を行わないマウスを正常マウス群Pとし、ストレプトゾトシン投与後にバイオ人工膵島の移植を行わないマウスを糖尿病マウス群Nとした。
1.エーテル麻酔下、糖尿病モデルマウス(糖尿病成立したもの)にペントバルビタールをマウスの体重あたり40mg/kg腹腔投与した。
2.正中切開にて約2cm開腹し、実施例1で得たバイオ人工膵島を腹腔内に留置した後、腹壁を2層に閉鎖した。このマウスを移植マウス群PE1とした。
血糖値の測定は以下の通り行った。移植一週間後、及び四週間後にマウス尾部より血液を採取し、富士フイルム製DRI−CHEMNX500を用いて、血糖値を測定した。各群とも三匹のマウスから得られた値の平均を、下記の基準により判定した。
B:血糖値が200mg/dL以上300mg/dL未満
C:血糖値が300mg/dL以上400mg/dL未満
D:血糖値が400mg/dL以上
式:〔増減率(%)〕=(〔移植後の体重〕−〔移植前の体重〕)/〔移植前の体重〕
<基準>
A:+5%以上
B:+0%以上+5%未満
C:−10%以上0%未満
D:−10%未満
1.左側腹腔にペントバルビタールをマウスの体重あたり25mg/kgを注射した。
2.麻酔による意識混濁を確認後、剃毛し、仰向けに四足を固定した。
3.正中線に沿って、約4cm皮膚を切開した。
4.埋植したバイオ人工膵島の表面及び周辺組織の目視観察を実施した。
5.周辺組織を傷つけることなく、バイオ人工膵島をピンセットで剥離できるか試みた。
代表的な観察例を図2A,Bに示す。図2Aは実施例1にかかるものであり、図2Bは比較例1にかかるものである。図2A,B中、バイオ人工臓器20,21に向けられている定規の目盛は0.5mm刻みである。観察結果に対して下記の基準により判定した。
<基準>
バイオ人工臓器の表面の評価の基準は以下の通りである。
A:バイオ人工臓器の表面に薄い線維性被膜形成はあるが、バイオ人工臓器の表面から線維性被膜を剥離可能である。
B:バイオ人工臓器の表面に厚い線維性被膜形成があり、バイオ人工臓器の表面から線維性被膜を剥離不可能である。
A:軽微であり、バイオ人工臓器自体の周辺組織からの剥離が可能である。
B:重度の炎症が見られ、バイオ人工臓器自体の周辺組織からの剥離が不可能である。
上述の通り、実施例1に係る半透膜の表面はアルブミン、すなわちタンパク質を吸着しにくかった。したがって実施例1に係る半透膜は生体適合性が良好であることが示唆された。また実施例1にかかる半透膜の表面は補体を活性化しにくかった。したがって実施例1に係る膜は生体内における半透膜の物質透過性の経時的な低下を抑制することが示唆された。実施例2〜7において同様である。また、マウスを用いたバイオ人工膵島移植試験の評価結果から、上記半透膜を用いた実施例1〜7のバイオ人工臓器は、分泌物質を長期的に透過することが分かった。
比較例1、2では半透膜を有さないため、組織反応性評価に劣った。比較例3,4においては、アルブミンの透過率が低いバイオ人工膵島であったため、血糖値や体重測定において、マウスの良好な経過が得られなかった。したがって実施例1〜7のバイオ人工臓器は、バイオ人工臓器内の細胞をレシピエントの免疫系から隔離可能であるという特徴を有することが分かった。
Claims (13)
- 樹脂を含有する半透膜及び前記半透膜に包まれた細胞固定基材からなり、
1cm角の前記半透膜を0.1%アルブミン溶液に90分浸漬した時のアルブミン吸着量が10μg/cm2以下であり、
前記半透膜において、30分間でのアルブミンの透過率が30%以上であり、
前記細胞固定基材は、キトサンからなり、
前記細胞固定基材で固定された細胞を備えていない移植用デバイスであって、
当該移植用デバイスにおいて、30分間でのアルブミンの透過率が30%以上である、
移植用デバイス。 - 樹脂を含有する半透膜及び前記半透膜に包まれた細胞固定基材からなり、
1cm角の前記半透膜を0.1%アルブミン溶液に90分浸漬した時のアルブミン吸着量が10μg/cm2以下であり、
前記半透膜において、30分間でのアルブミンの透過率が30%以上であり、
前記細胞固定基材は、アルギン酸塩、アガロース及びビニルアルコール系重合体からなる群から選ばれる、少なくとも一つの高分子からなり、
前記細胞固定基材で固定された細胞を備えていない移植用デバイスであって、
当該移植用デバイスにおいて、30分間でのアルブミンの透過率が30%以上である、
移植用デバイス。 - 前記細胞固定基材は、ハイドロゲルである、請求項1又は2に記載の移植用デバイス。
- 前記半透膜が、前記半透膜を通して負圧約3±0.2kPaで水を吸引したとき、水の透過量が1,000L/(m2・時)以上で表される、請求項1〜3のいずれかに記載の移植用デバイス。
- 前記半透膜と血清とを接触させたとき、前記半透膜による、血清中の補体価(CH50)の減少率が25%以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の移植用デバイス。
- 前記半透膜と血清とを接触させたとき、前記半透膜による、血清中の補体タンパク質の活性の増加率が30%以下であり、
前記活性の増加は、C1、C2、C3,C4、C5、C6、C7、C8及びC9の内、一以上の補体の量、前記補体が分解されて生じたタンパク質の量、並びに前記補体の複合体の内、一以上のものの測定の量に基づき、算出されたものである、請求項1〜5のいずれかに記載の移植用デバイス。 - 前記半透膜の厚さが50μm以上、200μm以下である、請求項1〜6のいずれかに記載の移植用デバイス。
- 前記移植用デバイスの表面にある半透膜を測定した際の平均表面孔径が0.1μm以上、3μm以下である、請求項1〜7のいずれかに記載の移植用デバイス。
- 前記半透膜が、エチレン-ビニルアルコール系共重合体を50質量%以上含有する、請求項1〜8のいずれかに記載の移植用デバイス。
- 細胞を細胞固定基材で固定し、前記細胞を前記移植用デバイスごと生体に移植することで、前記細胞を前記移植用デバイスの外部の生体環境から隔離するための、請求項1〜9のいずれかに記載の移植用デバイス。
- 高分子からなる細胞固定基材を、樹脂を含有する半透膜からなるバッグで包むことで、前記細胞固定基材で固定された細胞を備えていない移植用デバイスを製造する方法であって、
1cm角の前記半透膜を0.1%アルブミン溶液に90分浸漬した時のアルブミン吸着量が10μg/cm2以下であり、前記半透膜において30分間でのアルブミンの透過率が30%以上であり、
前記高分子はキトサンであり、又はアルギン酸塩、アガロース及びビニルアルコール系重合体からなる群から選ばれる、少なくとも一つの高分子であり、
当該移植用デバイスにおいて、30分間でのアルブミンの透過率が30%以上である、
移植用デバイスの製造方法。 - 高分子及び細胞が分散している分散液を、樹脂を含有する半透膜からなるバッグで包み、樹脂を含有する半透膜からなるバッグ内で前記高分子をゲル化することで、前記細胞をゲル内に固定する、バイオ人工臓器を製造する方法であって、
1cm角の前記半透膜を0.1%アルブミン溶液に90分浸漬した時のアルブミン吸着量が10μg/cm2以下であり、前記半透膜において30分間でのアルブミンの透過率が30%以上であり、
前記高分子はキトサンであり、又はアルギン酸塩、アガロース及びビニルアルコール系重合体からなる群から選ばれる、少なくとも一つの高分子であり、
前記高分子からなる細胞固定基材を、前記樹脂を含有する前記半透膜からなる前記バッグで包むことで、前記細胞固定基材で固定された細胞を備えていないアルブミン透過率評価用デバイスを製造した時、当該アルブミン透過率評価用デバイスにおいて、30分間でのアルブミンの透過率が30%以上である、
バイオ人工臓器の製造方法。 - 前記細胞が膵島である、請求項12に記載のバイオ人工臓器の製造方法。
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