JP6920681B2 - 移植用デバイス及びその製造方法並びにバイオ人工臓器の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は移植用デバイス及びバイオ人工臓器に関する。
近年、人工材料と細胞とを組み合わせて作られるバイオ人工臓器が研究されている。バイオ人工臓器は患者の疾病を予防又は治療することを目的とする装置である。バイオ人工臓器は、それ自身の中に細胞や生体組織を含有することで、患者の臓器あるいは組織の機能の一部あるいは全てを一時的あるいは半永久的に提供する。近年のバイオ人工臓器の研究は、人工材料及び細胞のお互いの長所を活かすことを目的としている。
バイオ人工臓器では、治療すべき疾患の種類に合わせて、バイオ人工臓器を構成する細胞の種類を選択できる。バイオ人工臓器の例としてばバイオ人工膵島がある。バイオ人工膵島は、インスリン分泌細胞、例えば膵島内の細胞で構成される。バイオ人工膵島では、膵島内の細胞から分泌されるインスリンホルモンを血糖値の異常な患者に供給する。このため患者の血糖値の是正が図られる。
また別のバイオ人工臓器は血液凝固因子を生産する。かかるバイオ人工臓器は、その内部に血液凝固因子を生産する肝細胞を有している。血液凝固因子としては、VIII因子やIX因子がある。かかるバイオ人工臓器は、これらの血液凝固因子の不足により血液の凝固障害を呈する血友病の患者の治療に用いられている。
別のバイオ人工臓器は成長ホルモンを生産する。かかるバイオ人工臓器は、ヒト成長ホルモン(hGH)の分泌細胞を有している。かかるバイオ人工臓器は、例えば成長ホルモンの分泌不足が原因で起こる下垂体小人症の治療に用いられている。
別のバイオ人工臓器は副甲状腺ホルモンを分泌する細胞を含有している。かかるバイオ人工臓器は、上皮小体機能低下症の治療に用いることができる。別のバイオ人工臓器はエリスロポエチンを分泌する細胞を含有している。かかるバイオ人工臓器は、貧血の治療に用いることができる。
別のバイオ人工臓器は肝細胞を含有する。かかるバイオ人工臓器は、先天性酵素欠損症、先天性代謝疾患等の治療に用いることができる。肝細胞には尿素サイクルが存在し、腸管内などで産生された有毒なアンモニアを無毒な尿素に変換する。尿素サイクルの酵素欠損症の一つであるオルニチントランスカルバミラーゼ欠損症の場合には、移植したかかるバイオ人工臓器にて尿素サイクルが働き、無毒な尿素を合成して高アンモニア血症を治療することが期待される。
バイオ人工臓器は患者の体内に移植される装置である。バイオ人工臓器の移植は、生体臓器移植に比べて優れた点を有する。生体臓器移植は、長期的な効能維持に適していない場合がある。これは生体臓器移植では、移植した細胞が生体の防御機構によって患者の体から拒絶されることによる。生体の防御機構としては主に移植後半年くらいまでに起こる急性拒絶反応と、それ以後の数年間の間に進行する慢性拒絶反応とが挙げられる。かかる問題は同種移植でも生じる。
生体臓器移植では、生体の防御機構から移植した細胞を隔離することが困難である。生体の防御機構は、液性免疫に関与する抗体タンパク質及び補体、あるいはマクロファージなどの食細胞およびヘルパーT細胞などの細胞性免疫によって機能する。同種移植における急性拒絶反応は細胞性免疫によるところが大きく、細胞性免疫から移植細胞を隔離することが重要と考えられている。これに対してバイオ人工臓器は、人工材料として免疫隔離膜を有する。免疫隔離膜はバイオ人工臓器を構成する細胞をこれらの免疫から保護できる。
バイオ人工臓器の研究では、液性免疫に関与する高分子に対して、透過選択性を有する免疫隔離膜の探索がなされてきた。免疫隔離膜は、透過選択性により、バイオ人工臓器を構成する細胞を液性免疫から隔離できる。
バイオ人工臓器においても長期的な効能を維持することが難しくなる問題がある。これは免疫隔離膜における透過部位の詰まり、あるいは線維性被膜による膜表面の被覆が生じることによる。透過部位の詰まりは、物理的にタンパク質が透過部位に詰まることによる。あるいは材料の生体適合性が良好でないために、材料表面にタンパク質が吸着、細胞が接着することで線維性被膜によって被覆される。上記のような現象が起こると膜内外の透過物質の移動が抑制され、効能が維持できなくなる。
バイオ人工臓器において細胞を隔離する方法として、(1)細胞を高分子ゲル内に封じ込める方法(包括固定化法あるいはカプセル化と呼ばれる場合もある)が試みられている。また、(2)細胞を高分子半透膜で隔離する方法も試みられている。さらに(3)細胞を高分子ゲル内に封じ込め、さらにその高分子ゲルを高分子半透膜で隔離する方法が試みられている。方法(3)は、すなわち(1)と(2)を組み合わせた方法と言える。このように、バイオ人工臓器内の細胞は体液から隔離された状態にある。このため、体内の血液と、バイオ人工臓器内の細胞と、は高分子半透膜等を介して互いに分離されている。ただし血液を含む体液のうち、高分子ゲルや半透膜を透過する成分はバイオ人工臓器内の細胞と接触する場合がある。以下、このような技術的特徴を単に隔離又は分離と言う。
以下に、バイオ人工臓器の一例としてバイオ人工膵臓の例を挙げる。バイオ人工膵臓ではインスリン分泌細胞が封じ込め又は封入により体液から隔離されている。(1)特許文献1にはインスリン分泌細胞を高分子ゲル内に封じ込める方法が記載されている。かかる方法では、高分子ゲルとして、アルギン酸のアルカリ金属塩やゼラチンなどを用いる。また特許文献2及び非特許文献1には、アガロース分解物から得られるカプセルにインスリン分泌細胞を封入する方法が提案されている。また特許文献3には、ポリビニルアルコールのゲルにインスリン分泌細胞を封じ込める方法が提案されている。
特許文献4並びに非特許文献2及び3には、(2)インスリン分泌細胞を高分子半透膜で隔離する方法が記載されている。かかる方法では体外装着型あるいは体内移植型のバイオ人工膵臓用のモジュールを用いる。かかるモジュールはエチレン−ビニルアルコール系共重合体からなる高分子半透膜を備える。特許文献5には、ポリグリコール酸(PGA)及びポリカプロラクトン(PCL)からなる高分子半透膜を備えるモジュールが記載されている。
特許文献6には(3)膵島に含まれるインスリン分泌細胞を高分子ゲル内に封じ込め、さらにその高分子ゲルを高分子半透膜で隔離する方法が記載されている。かかる方法では生きている膵島であるランゲルハンス島を寒天ゲルでカプセル化する。さらに、かかるカプセル化された細胞を半透性膜の中に含ませる。特許文献7ではカプセル化は行わない例が示されている。特許文献7ではカプセル化の代わりに、コラーゲンスポンジとゼラチンマイクロスフェアとをPETメッシュバッグ内に封入し、その後に膵島をバッグ内に移植している。
特開昭55−157502号公報 特開昭62−215530号公報 特開2004−331643号公報 特開2004−275718号公報 特開2004−307505号公報 特表平11−508477号公報 特開2001−299908号公報
岩田博夫、他、人工臓器、16巻、1263〜1266ページ、1987年 小林直哉、外1名,"体内埋め込み式バイオ人工膵臓",[online],平成23年12月19日,国立研究開発法人 科学技術振興機構,[平成28 年1月15日検索],インターネット<URL:http://www.jst.go.jp/chiiki/ikusei/seika/h22/h22_hiroshima01.pdf> 中路修平、外8名,"埋め込み式バイオ人工膵臓による新規糖尿病治療の開発",[online],岡山理科大学 学外連携推進室,[平成28 年1月15日検索],インターネット<URL:http://www.ous.ac.jp/renkei/wp-content/uploads/2012/01/C-5.pdf>
上記バイオ人工膵臓は、一定の代謝機能を提供することができる。しかしながら、上記バイオ人工膵臓では、血糖値変化に応じたインスリンの安定供給を行うことが困難である。同様の問題は人工膵臓以外の臓器でも見られる。すなわち既存のバイオ人工臓器では、代謝機能を生体の変化に応じて提供することが困難である。
本発明の発明者らは、上記の問題が、バイオ人工臓器の移植される生体の免疫系、及びバイオ人工臓器の物質透過性に起因することを見出した。本発明は、バイオ人工臓器技術において、免疫系からバイオ人工臓器内の細胞を隔離することを課題とする。本発明はまた、生体内に配置されたバイオ人工臓器の内と外との間の物質透過性の経時的な低下を抑制することを課題とする。
[1] 樹脂を含有する半透膜及び前記半透膜に包まれた細胞固定基材からなり、
1cm角の前記半透膜を0.1%アルブミン溶液に90分浸漬した時のアルブミン吸着量が10μg/cm以下である、移植用デバイス。
[2] 前記細胞固定基材は、ハイドロゲルである、[1]の移植用デバイス。
[3] 前記半透膜において、30分間でのアルブミンの透過率が30%以上である、[1]又は[2]の移植用デバイス。
[4] 前記移植用デバイスにおいて、30分間でのアルブミンの透過率が30%以上である、[1]〜[3]のいずれかの移植用デバイス。
[5] 前記半透膜が、前記半透膜を通して負圧約3±0.2kPaで水を吸引したとき、水の透過量が1,000L/(m・時)以上で表される、[1]〜[4]のいずれかの移植用デバイス。
[6] 前記半透膜と血清とを接触させたとき、前記半透膜による、血清中の補体価(CH50)の減少率が25%以下である、[1]〜[5]のいずれかの移植用デバイス。
[7] 前記半透膜と血清とを接触させたとき、前記半透膜による、血清中の補体タンパク質の活性の増加率が30%以下であり、
前記活性の増加は、C1、C2、C3,C4、C5、C6、C7、C8及びC9の内、一以上の補体の量、前記補体が分解されて生じたタンパク質の量、並びに前記補体の複合体の内、一以上のものの測定の量に基づき、算出されたものである、[1]〜[6]のいずれかの移植用デバイス。
[8] 前記半透膜の厚さが50μm以上、200μm以下である、[1]〜[7]のいずれかの移植用デバイス。
[9] 前記移植用デバイスの表面にある半透膜を測定した際の平均表面孔径が0.1μm以上、3μm以下である、[1]〜[8]のいずれかの移植用デバイス。
[10] 前記半透膜が、エチレン-ビニルアルコール系共重合体を50質量%以上含有する、[1]〜[9]のいずれかの移植用デバイス。
[11] 細胞を細胞固定基材で固定し、前記細胞を前記移植用デバイスごと生体に移植することで、前記細胞を前記移植用デバイスの外部の生体環境から隔離するための、[1]〜[10]のいずれかの移植用デバイス。
[12] コラーゲン、ヘパリン、キチン、キトサン、アルギン酸塩、アガロース、寒天、トロンビン、ビニルアルコール系重合体、ジェランガムからなる群から選ばれる、少なくとも一つの高分子からなる細胞固定基材を、樹脂を含有する半透膜からなるバッグで包むことで、移植用デバイスを製造する方法であって、
1cm角の前記半透膜を0.1%アルブミン溶液に90分浸漬した時のアルブミン吸着量が10μg/cm以下であり、前記半透膜において30分間でのアルブミンの透過率が30%以上である、移植用デバイスの製造方法。
[13] コラーゲン、ヘパリン、キチン、キトサン、アルギン酸塩、アガロース、寒天、トロンビン、ビニルアルコール系重合体、ジェランガムからなる群から選ばれる、少なくとも一つの高分子及び細胞が分散している分散液を、樹脂を含有する半透膜からなるバッグで包み、樹脂を含有する半透膜からなるバッグ内で前記高分子をゲル化することで、前記細胞をゲル内に固定する、バイオ人工臓器を製造する方法であって、
1cm角の前記半透膜を0.1%アルブミン溶液に90分浸漬した時のアルブミン吸着量が10μg/cm以下であり、前記半透膜において30分間でのアルブミンの透過率が30%以上である、バイオ人工臓器の製造方法。
[14] 前記細胞が膵島である、[13]のバイオ人工臓器の製造方法。
本発明は、バイオ人工臓器技術において、免疫系からバイオ人工臓器内の細胞を隔離することができる。本発明はまた、生体内に配置されたバイオ人工臓器の内と外との間の物質透過性の経時的な低下を抑制することができる。
半透膜からなるバイオ人工臓器の模式図である。 実施例1におけるバイオ人工臓器の表面の観察写真 比較例1におけるバイオ人工臓器の表面の観察写真
本発明の一態様は、細胞を外部環境から隔離するための半透膜と、液性免疫から細胞を隔離するゲルであって、細胞を該ゲル内に分散した状態で保持できるゲルとを備える移植用デバイスである。また本発明の一態様は移植用デバイス及び細胞を備えるバイオ人工臓器である。
本明細書において、バイオ人工臓器とは、半透膜と、当該半透膜に包まれた細胞固定基材と、当該細胞固定基材で固定された細胞とを備える人工臓器である。
バイオ人工臓器の一例はバイオ人工膵臓である。バイオ人工膵臓の備える細胞はインスリン分泌細胞が含まれる。インスリン分泌細胞はヒトあるいはブタなどから採取された膵島、あるいはES細胞またはiPS細胞から分化した膵島、膵臓様細胞、膵前駆細胞のいずれかでもよい。本明細書ではバイオ人工膵臓のことをバイオ人工膵島という場合がある。
本明細書において、移植用デバイスとは、生体内に移植すべき細胞を、生体内に移植するためのデバイスである。移植用デバイスは半透膜と、当該半透膜に包まれた細胞固定基材とを備えるデバイスである。移植用デバイスは、細胞固定基材で固定された細胞を備えていてもよいし、備えていなくてもよい。移植用デバイスは、バイオ人工臓器作製用のキットとして提供することもできる。
<細胞>
本明細書に係る用語「細胞」には、付着性細胞及び浮遊細胞が含まれるが、これらに限らない。付着性細胞とは、細胞培養にあたり、担体に付着することで増殖する細胞をいう。浮遊性細胞とは細胞増殖において基本的に担体への付着を必要としない細胞をいう。浮遊性細胞には、担体に弱く付着することが可能な細胞を含む。
付着性細胞としては、例えば、骨芽細胞、軟骨細胞、造血細胞、上皮細胞(乳腺上皮細胞など)、内皮細胞(血管内皮細胞など)、表皮細胞、繊維芽細胞、間葉由来細胞、心筋細胞、筋原細胞、平滑筋細胞、生体由来骨格筋細胞、ヒト腫瘍細胞、繊維細胞、EBウイルス変異細胞、肝細胞、腎細胞、骨髄細胞、マクロファージ、肝実質細胞、小腸細胞、乳腺細胞、唾液腺細胞、甲状腺細胞、及び皮膚細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
浮遊性細胞としては、例えば、T細胞、B細胞、キラー細胞、リンパ球、及びリンパ芽細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
上記細胞は互いに凝集していてもよく、分化していてもよい。凝集した細胞は器官としての機能を有していてもよい。細胞は生体から採取された直後のものでもよく、培養したものでもよい。生体から採取した細胞は組織、あるいは器官を形作っていてもよい。組織としては、膵島のような内分泌組織、あるいは外分泌組織が挙げられる。移植される細胞は単一種類の細胞でもよく、また複数種類の細胞でもよい。複数種類の細胞が細胞固定基材内で共存していてもよい。単一種類の細胞は細胞固定基材内で偏りなく分散していてもよい。複数種類の細胞はそれぞれ細胞固定基材内で偏りなく分散していてもよい。複数種類の細胞の数は相互に等しくてもよく、相互に異なっていてもよい。複数種類の細胞は2、3又は4種類以上の種類の細胞でもよい。
<半透膜>
[樹脂]
本発明に用いる半透膜は樹脂を含有する物である。半透膜は、例えば、少なくとも一種類以上の樹脂を溶媒に溶解させ、溶解した樹脂を凝固させることで作製することができる。かかる樹脂は特に限定されるものではない。かかる樹脂として、例えば、エチレン−ビニルアルコール系共重合体、ポリスルホン系重合体、ポリアクリロニトリル系重合体、酢酸セルロースなどのセルロース系重合体、ポリアミド系重合体、ポリカーボネート系重合体などの樹脂を用いることが出来る。これらの樹脂の重量平均分子量は1万以上であることが好ましい。
本発明に用いる半透膜における樹脂の含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上である。半透膜には樹脂以外に、製膜に用いる添加剤や溶媒が残存していても良いが、その含有量は20%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
本発明に用いる半透膜が含有する樹脂としては、エチレン−ビニルアルコール系共重合体又はポリスルホン系重合体を用いることが好ましい。これらの樹脂は補体を活性化しにくく、また生体適合性及び化学安定性に優れているため、医療用途に好適である。また、これらの樹脂は、生体内で生分解しにくく、また溶出物の発生量が少ない。
半透膜が含有することのできるエチレン−ビニルアルコール系共重合体は、ランダム重合体、ブロック重合体及びグラフト重合体のいずれであってもよい。エチレン−ビニルアルコール系共重合体における、エチレン構造単位の含有率は、10モル%以上90モル%以下であることが好ましい。エチレン構造単位の含有率を10モル%以上とすることで、半透膜が補体を活性化してしまうことを抑制することができる。補体活性化をさらに抑制するため、エチレン構造単位の含有率は、30モル%以上であることがより好ましい。エチレン構造単位の含有率を90モル%以下とすることで、半透膜の柔軟性の低下を抑制することができる。柔軟性の低下をさらに抑制するため、エチレン構造単位の含有率は、60モル%以下であることがより好ましい。またエチレン−ビニルアルコール系共重合体のけん化度は95モル%以上であることが好ましい。
エチレン−ビニルアルコール系共重合体は、主としてエチレン系単量体とビニルアルコール系単量体とを構造単位として構成される。エチレン−ビニルアルコール系共重合体には構造単位として他の単量体が含まれてもよい。またエチレン−ビニルアルコール系共重合体には他の単量体が含まれていなくてもよい。他の単量体として例えば、メタクリル酸、ビニルクロライド、メチルメタクリレート、アクリロニトリルが挙げられる。エチレン−ビニルアルコール系共重合体における、他の単量体の配合率は本発明の主旨を損なわない範囲で適宜調整できる。かかる配合率は15モル%以下の範囲であることが好ましい。
[膜厚]
本発明に用いる半透膜の厚さは50μm以上、200μm以下であることが好ましい。厚さが50μm以上であることで、半透膜の強度を高めることができる。厚さが200μm以下であることで、アルブミンなどのタンパク質の透過率や、水の透過量を所望の範囲に調整しやすい半透膜を提供することができる。
[孔径]
本発明に用いる半透膜は、微小な孔が複数設けられている多孔膜である。かかる孔の平均孔径は0.1μm以上、3μm以下であることが好ましく、0.3μm以上、3μm以下であることがさらに好ましく、0.5μm以上、2μm以下であることがより好ましい。平均孔径がかかる下限を有することで、タンパク質の透過率や、水の透過量を高めることができる。また平均孔径がかかる上限を有することで、外部細胞等の透過及び内部細胞の流出を抑制することができる。また、半透膜において、各孔の孔径は所定の分布を有する。このとき、外部細胞等の透過を防止するために、半透膜表面に孔径が20μm以上の孔が無いことが好ましい。
[製膜]
本発明に用いる半透膜の製膜方法に特に制限は無い。例えば、公知の方法で無孔膜を作製するとともに、かかる無孔膜に対してドリル加工により孔を開けることで半透膜を得ることができる。また、例えば以下の方法で半透膜を製造することもできる。
まず樹脂と、溶媒と、添加剤とを混合して50℃〜120℃の範囲で加温溶解し、各成分が互いに混ざり合ったものを製膜原液とする。製膜原液は20℃〜95℃、より好ましくは、50〜90℃の温度に保持することが好ましい。次いで、20℃〜80℃の温度で製膜原液を凝固させることで膜を形成する。
一例として、樹脂と、添加剤と、溶媒とを混合して50℃〜120℃、より好ましくは50℃〜80℃で加温溶解して製膜原液とする。さらに20℃〜95℃、より好ましくは20℃〜80℃に加温した製膜原液を、板状の成形器具に塗布する。20℃〜80℃、より好ましくは20℃〜60℃の凝固浴中にて成形器具上の製膜原液を凝固させ、添加剤及び溶媒が凝固浴中に拡散することで、主として樹脂からなる半透膜を得る。その後、適宜、精製工程、乾燥工程を設けることができる。
製膜原液中の質量比は、樹脂の比率が7.5質量%〜25質量%であることが好ましく、10質量%〜20質量%であることが好ましい。溶媒の比率が55質量%〜87.5質量%であることが好ましく、60質量%〜80質量%であることが好ましい。添加剤の比率が5質量%〜20質量%であることが好ましい。膜の形成を促進するために、添加剤の比率は樹脂の比率よりも少ないことが好ましい。
本発明に用いる半透膜の製膜に関しては、特許文献3の日本国特許出願公開2001−314736号公報の開示の全てをここに取り込む。
[製膜原液]
30℃における製膜原液の粘度は1,000mPa・s以上20,000mPa・s以下であることが好ましく、1,000mPa・s以上10,000mPa・s以下であることがより好ましい。
製膜原液の粘度が1,000mPa・s未満の場合、または20,000mPa・sよりも高い場合、製膜原液の凝固時間の調整がし難く、製膜が困難なことがある。また製膜原液が凝固した後に膜が破損しやすい場合がある。
[製膜原液の粘度測定]
製膜原液の30℃における粘度は、BL型粘度計又はBH型粘度計を用いて、ロータ回転数6rpm、温度30℃の条件で測定できる。
[製膜用の溶媒]
製膜原液を構成する溶媒は、製膜に用いる樹脂の良溶媒であれば、特に限定されない。例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)等、あるいはこれらを成分とする混合溶媒を挙げることができる。製膜性や毒性が低いという観点から、なかでもジメチルスルホキシド(DMSO)が好ましい。
[製膜用の添加剤]
製膜原液を構成する添加剤は、水溶性高分子であることが好ましい。例えば、一般的に界面活性剤と呼ばれるものを添加剤として使用できる。界面活性剤は高分子界面活性剤であることが好ましい。添加剤の種類や量を調整することで、半透膜の孔の平均孔径を調節することができる。また、製膜原液の粘度を調整することができる。また、製膜原液の相分離温度(LST、Land Surface Temperature)を調整することができる。
高分子界面活性剤とは、分子量が1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000及び9000のいずれか以上である界面活性剤を指す。界面活性機能はノニオン性、アニオン性、及びカチオン性のいずれによるものであってもよい。なかでも、ノニオン性高分子界面活性剤が好ましい。
ノニオン性高分子界面活性剤としては、例えば以下のものが挙げられる:ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレングリコール、及びポリプロピレンオキサイドに代表される重合体;ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリブチレングリコール、及びポリエチレングリコール−ポリペンチレングリコールに代表されるジブロック共重合体又はランダム共重合体;ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリテトラメチレングリコール−ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリブチレングリコール−ポリエチレングリコール、及びポリエチレングリコール−ポリペンチレンレングリコール−ポリエチレングリコールに代表されるトリブロック共重合体;ポリプロピレングリコール−硫酸エステルナトリウム塩、ポリテトラメチレングリコール−硫酸エステルナトリウム塩、ポリブチレングリコール−硫酸エステルナトリウム塩、及びポリペンチレングリコール−硫酸エステルナトリウム塩;並びにポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−アルキルエーテルが挙げられる。
上記した一般的に界面活性剤と呼ばれるもの以外にも、添加剤として使用できる水溶性高分子が挙げられる。例えば、公知の各種ビニルアルコール系重合体、澱粉、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、及びデキストランに代表される多糖類が挙げられる。
[補体の活性化]
本発明に用いる半透膜の表面は血清中の補体を活性化しにくいことが好ましい。半透膜の表面が補体を活性化しにくいことは以下の評価方法に基づき表される。
<方法A:血清補体価(CH50)測定に基づく評価>
半透膜と新鮮ヒト血清とを接触させる。この時、血清補体価(CH50)の減少率が25%以下であれば、半透膜の表面は補体を活性化しにくいと評価される。血清補体価は、活性化を受けることなく残存している補体C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8及びC9の総量に比例する。血清補体価に基づき補体の活性化の度合いを評価することができる。
<方法B:個別の補体の活性の測定に基づく評価>
血液中の補体は通常、不活性な酵素前駆体として存在する。酵素前駆体は体内に侵入した異物により刺激を受けることで活性化する。酵素前駆体は活性化により部分的に分解され、分解物となる。この分解物は、一部は複合体を形成し、一部は遊離する。したがって、半透膜が異物として振る舞う場合には、半透膜の表面にて補体を活性化され、上記のような分解物が生成する。以下の評価方法により評価できる。
半透膜と新鮮ヒト血清とを接触させる。この時、半透膜による、血清中の補体の活性化率が30%以下であれば、半透膜の表面は補体を活性化しにくいと評価される。
一態様において、活性化タンパク質の増加は、当該膜と接触させた新鮮ヒト血清中の各補体量の測定に基づき算出される。測定対象とする補体はC1、C2、C3,C4、C5、C6、C7、C8及びC9の内、一以上の補体であることが好ましく、C3及びC4の内、一以上の補体であることがさらに好ましい。
一態様において、活性の増加は、上記補体が分解されて生じたタンパク質量の測定に基づき算出される。測定対象とする補体が分解されて生じたタンパク質は、補体が活性化することで補体から脱離するタンパク質であることが好ましい。
測定対象とする補体から脱離するタンパク質はC1r、C1q、C2b、C3a、C4a及びC5aの内一以上のタンパク質であることが好ましく、補体から脱離するタンパク質はC3a及びC5aの内一以上のタンパク質であることがさらに好ましい。C3a及びC5aは炎症性白血球を呼び寄せる作用を有する。特にC3aは補体系の活性化の開始の指標として有効に利用できる。
一態様において、活性の増加は、上記補体の複合体の量の測定に基づき算出される。測定対象とする複合体は補体が活性化することで補体が互いに結合して形成されることが好ましい。複合体はSC5b−9であることが好ましい。SC5b−9は、補体系活性化反応の最終生成物である。
補体の活性の増加を定量するための手法の一例を以下に示す。所定の大きさの半透膜を所定量の新鮮ヒト血清に浸漬する。半透膜の表面積1cm当たり血清の体積を1mLとする。ここで孔により生じた膜内部の表面積は無視してもよい。以下同様である。半透膜と血清とを撹拌しながら37℃で90分間インキュベートする。インキュベート用の容器の内面は予めアルブミンでブロッキングしておくことが好ましい。リファレンスとして半透膜を浸漬させない新鮮ヒト血清も用意する。また半透膜に換えて所定量のザイモザンを添加した新鮮ヒト血清も用意する。これらを撹拌しながら37℃で90分間インキュベートする。
インキュベート後、それぞれの新鮮ヒト血清に活性化反応停止剤としてエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA)を10mMとなるよう添加する。反応停止後、血清中の補体量を測定する。測定はELIZA法で行うことができる。半透膜を浸漬した血清の補体量をXとする。半透膜を浸漬させなかった血清の補体量をXminとする。ザイモザンを添加した血清の補体量をXmaxとする。活性化率を下記式に従い算出する。
活性化率(%)={(X−Xmin)/(Xmax−Xmin)}×100
[タンパク質(アルブミン)の吸着性]
本発明に用いる半透膜の表面はタンパク質を吸着しにくいことが好ましい。半透膜の表面がタンパク質を吸着しにくいことは、以下のアルブミンを用いた評価方法に基づき評価することができる。
アルブミンを用いた評価方法においては、まず1cm角の半透膜を0.1%ヒトアルブミン溶液に90分間浸漬する。この時、半透膜へのアルブミン吸着量が10μg/cm以下であれば、半透膜の表面がタンパク質を吸着しにくいと評価する。さらに当該アルブミン吸着量が9、8、7、6、5、4、3、2及び1μg/cmのいずれかの値以下であれば、より好ましい。当該アルブミン吸着量は半透膜を作製するために用いる樹脂の選択により、調整することができる。半透膜の表面がタンパク質を吸着しにくい場合、半透膜の物質透過性の経時的な低下を抑制でき、生体適合性が高いと評価できる。
[透水性]
本発明に用いる半透膜の透水性は高いことが好ましい。半透膜の透水性は、半透膜を通して負圧3±0.2kPaで25℃の蒸留水を吸引したときの、半透膜の単位面積当たり及び単位時間当たりの水の透過量{L/(m・時)}により評価する。かかる水の透過量が1,000{L/(m・時)}以上であれば半透膜の透水性が高いと評価する。
[物質(アルブミン)の透過性]
本発明に用いる半透膜のアルブミンの透過率は30%以上である。本実施形態ではアルブミンの透過率を半透膜の物質透過性の指標として用いる。これにより、アルブミン以外の各種タンパク質の透過性も間接的に評価できる。またグルタミン等の各種アミノ酸、グルコース、ホルモン、ビタミン等の透過性も間接的に評価できる。これらの物質は、本発明の半透膜を透過することが望ましい。アルブミンの透過率は次の方法で測定できる。
所定の大きさの半透膜を半分に折り曲げてその2辺を溶融接着することで1辺が未接着の袋状の部材を作製する。かかる袋状の部材の内部に所定量のヒトアルブミン溶液を注入した上で、袋状の部材の未接着の1辺を溶融接着して封を閉じることで、袋状の部材からバッグを形成する。かかるヒトアルブミン溶液入りのバッグを、所定容積、例えば15mLのチューブ内に存在する所定量、例えば10mLのハンクス緩衝液に浸漬する。チューブを37℃で30分間振とうする。30分後、バッグ外側のハンクス緩衝液を採取する。採取したハンクス緩衝液内のアルブミン濃度をELISA法により測定する。ELISA法による測定はHuman Albumin ELISA Quantitation Set(Bethyl Laboratories,Inc.)を用いて実施すればよい。透過率を以下の式により算出することができる。バッグ内からハンクス緩衝液に移行したアルブミンの透過量をXnとする。バッグに注入した量と同量のアルミブミン量をXmaxとする。
透過率(%)=Xn/Xmax×100
<細胞固定基材>
本発明に用いる細胞固定基材は、細胞が細胞固定基材の外部へ脱離しないように固定するものである。
細胞固定基材は、例えば、シート状、不織布などの繊維状、ゲル状などが挙げられる。細胞固定基材としては、ハイドロゲルが好ましい。本明細書においてハイドロゲルとは、水に不溶な三次元の網目構造をもつ高分子及びその水による膨潤体を指すものとする。以下、ハイドロゲルのことを単に、ゲルという場合がある。
本実施形態の一態様では、ゲル内に細胞を封入あるいは包埋することにより、細胞をゲルによりカプセル化する。カプセル化により細胞同士の凝集を抑制するとともに、細胞をゲル内に均一に分散させる。また、ゲルの物質透過特性により補体タンパク質、抗体タンパク質の透過が抑制されることで、液性免疫からゲル内の細胞が隔離される。
上記ゲルは、以下のような高分子からなることが好ましい。例えば、コラーゲン、ヒアルロナン、ゼラチン、フィブロネクチン、エラスチン、テナシン、ラミニン、ビトロネクチン、ポリペプチド、ヘパラン硫酸、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、ケラタン、ケラタン硫酸、デルマタン硫酸、カラギーナン、ヘパリン、キチン、キトサン、アルギン酸塩、アガロース、寒天、セルロース、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、グリコーゲン及びこれらの誘導体、加えて、フィブリン、フィブリノゲン、トロンビン、及びポリグルタミン酸、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸−グリコール酸共重合体、ビニルアルコール系重合体、ジェランガム、キサンタンガム、ガラクトマンナン、グアガム、ローカストビーンガム及びタラガム等が挙げられる。
中でも、水と親和性があり、細胞毒性が低いという観点から、コラーゲン、ヘパリン、キチン、キトサン、アルギン酸塩、アガロース、寒天、トロンビン、ビニルアルコール系重合体、ジェランガムが好ましい。
ゲルを作る時に使用する、高分子の濃度を変化させることにより、このゲルの網目元構造を通過できる分子の分子量を大きく自由に変化させることができる。すなわち、ゲルの網目構造は高分子の濃度の濃い場合にはメッシュが小さく、高分子の濃度が薄い場合にはメッシュが大きくなることが考えられる。網目構造のメッシュが大き過ぎると、抗体等が網目構造内に侵入する。この場合、ゲル内の生きた細胞に対して拒絶反応が起こりやすくなる。拒絶反応はインシュリン等の必要物質の産生を阻害する。
本発明において、細胞固定基材であるゲルは、上述の半透膜で包まれている。ゲルの一部のみでも半透膜により包まれていれば良い。好ましくはゲルの表面積の50%以上、より好ましくは80%以上、さらにより好ましくは90%以上が半透膜により覆われている状態が好ましい。ゲルの全体が半透膜で覆われていても良い。
[移植用デバイス]
本発明に係る移植用デバイスは細胞を外部環境から隔離するために用いることができる。図1は本発明に係る移植用デバイスの使用の一態様であるバイオ人工臓器20を示す。半透膜10からなるバッグ中に、細胞固定用の基材11及び所望の細胞12が入れられている。細胞12はバッグによって密閉されている。ここで、バッグとは、半透膜10により閉じられた領域が設けられた部材である。バッグは、例えば、[物質(アルブミン)の透過性]の欄で述べた方法で作製できる。また、複数枚の半透膜を用いてバッグを作製しても良く、半透膜10の透過性を抑制しない範囲で、他素材の膜と重ね合せてバッグを作製しても良い。また、細胞をバッグ内に注入するためのチューブがバッグに接続されていてもよい。また移植用デバイスを生体内に配置した後に、細胞を移植用デバイス内に注入することでバイオ人工臓器を完成してもよい。また移植用デバイス内に細胞を配置することで予めバイオ人工臓器を完成した後に、当該バイオ人工臓器を生体内に移植してもよい。
半透膜10は細胞12の活動に必要な栄養分15を透過する。栄養分は例えばアミノ酸や、アルブミンに吸着された物質などである。栄養分15は外部環境からバッグ内部に向かって移動する。半透膜10は細胞12から出た分泌物質16を透過する。分泌物質16はバッグ内部から外部環境に向かって移動する。基材11は細胞同士の凝集を抑制するとともに、細胞をバッグ内に均一に分散させる。また、基材11により液性免疫が抑制される。また、本実施形態の効果を損ねない範囲でバッグと他の素材とを組み合わせてもよい。例えば、各種メッシュ素材などで移植用デバイス内部あるいは外部を補強してもよい。
本発明に係る移植用デバイスにおいて、移植用デバイス内部から移植用デバイス外部への、30分間でのアルブミンの透過率は30%以上であることが好ましい、移植用デバイスにおける当該[アルブミンの透過率]は、例えば、半透膜で形成したバッグ(評価用デバイス)内から、バッグ外へのアルブミンの透過量に基づき測定できる。半透膜の場合と同様に、アルブミンの透過率が高ければ、物質透過性が高く、移植用デバイスとして良好であると言える。
[効果]
発明者らは従来の体内埋め込み式のバイオ人工臓器に以下の課題があることを見出した。すなわち細胞を封入したバッグ及びバッグに封入された細胞をバイオ人工臓器として生体内に移植するとバッグ表面に生体中のタンパク質が付着する。また、そのタンパク質を足場として細胞が接着し、バッグ表面に細胞の層が形成される。このためバッグの物質透過性が低下する。物質透過性の低下によりバッグ内の細胞が分泌する物質の放出が抑制されるだけでなく、バッグ内の細胞が外部環境から十分な栄養分を受けられなくなる。このためバイオ人工臓器の機能を長期間維持することは難しい。
図1に示すようにバッグを構成する半透膜10は、栄養分15及び分泌物質16を透過するのに十分な大きさの孔を有する一方で、貪食細胞を含む白血球18を初めとする外部細胞を透過しない。このため、バッグ内への白血球18の侵入を防止しつつ栄養分15及び分泌物質16の拡散を促進する。
また、バッグの表面は補体を活性化しにくいため白血球18を初めとする外部細胞は半透膜10に付着しにくい。また、バッグの表面はタンパク質を吸着しにくい。したがって、バッグ表面に細胞の層が形成されにくい。このため、生体内におけるバッグの物質透過性の経時的な低下を抑制できる。このため半透膜10はバイオ人工臓器の機能を長期間維持することに資する。図1に示すように細胞固定用の基材11は細胞の周囲を取り巻いている。このため基材11は補体タンパク質あるいは抗体タンパク質の細胞12への接近を防ぐことができる。あるいは基材11は、細胞12自身が分解して生じた物がバッグ外に流出することを防ぐ。そのため、基材11は液性免疫による拒絶反応を抑制する。半透膜10と基材11を組み合わせて用いることで、物質透過性の経時的な低下を抑制し、液性免疫による拒絶反応を抑制しつつ、栄養分及び分泌物質の拡散を実現できる。
本実施形態の移植用デバイスは、上記の態様の他に、チューブ状、中空糸状など様々な態様で用いることができる。本実施形態の移植用デバイスは、バイオ人工臓器の作製を含む医療用途や、創薬研究用途等に幅広く利用することができる。また、本発明の移植用デバイスはデバイス表面に生体適合性の良好な半透膜を使用していることを特徴とする。また、本発明の移植用デバイスは、栄養分等の物質がデバイス内外に移動する際の透過性が良好であることを特徴とする。これらの特徴を生かして、移植用デバイスを、バイオ人工臓器の移植前の処理用デバイスとしても使用することが出来る。また特許文献7で提案されているように、デバイス内部にbFGF等の血管誘導因子を封入しておいてもよい。これにより、移植部位に血管が新生するとともに、細胞の移植に適した領域を予め生体内に作製することが出来る。あるいは表面に血管誘導因子を含むコラーゲンシート等を貼り付けた移植用デバイスを皮下に移植してもよい。
[実施形態の変形]
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において、特に断りがない場合、部及び%はそれぞれ質量部及び質量%を示す。
[半透膜の作製]
各実施例及び比較例に使用する半透膜を、以下に示す製造例1の方法を基本として作製する。製膜原液の組成及び凝固液の組成を変えることで 、孔径及び内部構造の異なる半透膜(多孔膜)を得ることができる。各製造例において、製造例1から変更する点は後述する。
1.製膜原液を調製ために耐圧試験管に下記の材料を全て入れた。材料は全体で12gであった。材料は、樹脂としてエチレン−ビニルアルコール系共重合体(株式会社クラレ製、クラレエバール(登録商標)G110B、エチレン構造単位の含有率47モル%、けん化度98モル%、本明細書においてEVOH−1)、溶媒としてジメチルスルホキシド(DMSO)及び添加剤としてポリエチレンオキサイド(PEO、分子量約60,000)からなり、これらの質量比は15:75:10であった。耐圧試験管に栓をして、材料を密封した。100℃の熱風を供給する熱風乾燥機で試験管を加熱することで、試験管内の温度を90℃にした。試験管を振とうしながら三日間試験管内の温度を90℃に維持し、製膜原液を得た。
2.熱風乾燥機を調整することで、製膜原液の温度を80℃に調整した。
3.成形器具としてガラス板を用いた。ホットプレート上にガラス板を設置し、ガラス板の表面が30℃になるようにホットプレートの温度を調節した。製膜時の厚み調整のため、ガラス板の一方端と他方端にテープを貼った。
4.ガラス板の一方端に80℃の製膜原液を垂らした。ガラス板上の製膜原液をガラス棒で均一に引き伸ばした。
5.大気中、室温(25℃)環境下で1分間放置した。
6.製膜原液が塗布されたガラス板を30℃の温水が入った凝固浴に浸漬した。
7.製膜原液のうち添加剤及び溶媒が凝固浴中に拡散し、さらに樹脂成分が凝固することで半透膜が生じた。浸漬開始から10分後、水中にてガラス板から半透膜を剥がした。
8.水中にて半透膜を二枚の四角形の金枠で挟み、さらに、それぞれの辺で二箇所ずつ固定することで、半透膜の四辺を固定した。
9.浸漬開始から15分後、半透膜を30℃の温水に移し、一晩水に浸漬した。
10.半透膜を水から取り出した。半透膜をアセトン及び水の混合液に移した。アセトン及び水の体積比は8/2で、温度は25℃であった。半透膜を15分間、当該混合液に浸漬した。
11.半透膜を混合液から取り出した。半透膜をアセトンに移し、15分間25℃のアセトンに浸漬した。
12.半透膜をアセトンから取り出し、大気中、室温(25℃)環境下で1時間静置した。
13.半透膜を40℃に設定した乾燥機中で一時間乾燥することで、長辺150mm×短辺120mm×厚み100μmの半透膜E−1を得た。
製造例2においては、上記1.に示す添加剤をポリエチレングリコール(PEG、分子量約20,000)に変更した。
製造例3においては、上記1.に示すEVOH−1をエチレン−ビニルアルコール系共重合体(株式会社クラレ製、クラレエバール(登録商標)F101B、エチレン構造単位の含有率32モル%、けん化度98モル%、本明細書においてEVOH−2)に変更した。また、各組成を表1のように変更した。
製造例4においては、上記1.に示すEVOH−1をポリスルホン系重合体(PS)(アモコ社製、UDEL P−1700)に変更し、溶媒をジメチルアセトアミド(DMAc)に変更した。また、各組成を表1のように変更した。
製造例5においては、上記1.に示すEVOH−1、DMSO及びPEOの質量の比を15:85:0に変更した。
製造例6においては、特開2001−314736号公報の実施例3に準拠して半透膜を作製した。すなわち、上記1.に示す添加剤を水及び塩化リチウムに変更した。また、各組成を表1のように変更した。
Figure 0006920681
上記半透膜を用いて血清補体価、個別の補体の活性、アルブミンの吸着性を測定した。測定方法を以下に示す。
[方法A:血清補体価(CH50)の測定]
血清補体価(CH50)の測定は市販の測定試薬を用いて行うことができる。測定試薬としては例えば、和光純薬株式会社の補体価−HAテストワコー及び日本ビーシージー製造株式会社の免疫比濁テストCH50オート(KW)がある。
製造例1〜6に係る半透膜による、新鮮ヒト血清の血清補体価(CH50)の減少率(補体価減少率)が25%以下であった。このため当該半透膜の表面は補体を活性化しにくいと評価された。
[方法B:個別の補体の活性の測定]
個別の補体の活性の測定は、BD Biosciences社のHuman OPtEIA ELISA Set C3a(Cat.No 550499)を用いて行った。かかる測定では、測定対象となるのは、補体から脱離するタンパク質C3aとなる。C3aは補体系の活性化の開始の指標として有効に利用できる。
1.各製造例に係る半透膜を切断して、厚さはそのままで、10mm×10mmの大きさに個片化した。
2.個片化した半透膜を25℃のエタノールに30分以上浸漬し、半透膜の孔内の気泡を追い出した。次いでPBS(−)で洗浄した。PBS(−)の用語はマグネシウム及びカルシウムの含まれていないPBS(リン酸緩衝生理食塩水)を表す。
3.試験管に個片化した半透膜と、新鮮ヒト血清を2.0mL入れた。半透膜と血清との比は1(cm/mL)とした(厚み部分の面積は微小のため無視している)。なお、試験管の内面はあらかじめアルブミンでブロッキングして使用した。
4.陰性コントロール用に、個片化した半透膜を入れていない新鮮ヒト血清を同様に試験管に入れた。陽性コントロール用に、個片化した半透膜を入れていないが20mgのザイモザン(SIGMA製 Z4350-1G)を添加した新鮮ヒト血清を試験管に入れた。これらの試験管を撹拌しながら加温して90分間37℃でインキュベートした。
5.試験管から個片化した半透膜を引き上げた。各血清中の補体の活性を測定した。測定はBD Bioscience社の品番550499のELISAキットを使用して行った。同キットに付属のプロトコルに従い測定を行った。
6.活性化率を以下の式により求めた。製造例に係る個片化した半透膜を入れた新鮮ヒト血清中の補体の活性の値をXnとした。陰性コントロールの活性の値をXminとした。陽性コントロールの活性の値をXmaxとした。活性化率は以下の式で算出できる。
活性化率(%)={(Xn−Xmin)/(Xmax−Xmin)}×100
製造例1〜6に係る半透膜による、血清中の個別の補体、すなわちC3aの活性化率(補体活性化率)が30%以下であった。このため当該半透膜の表面は補体を活性化しにくいと評価された。
[アルブミンの吸着性の測定]
1.各製造例に係る半透膜を切断して、厚みはそのままで10mm×10mmの大きさに個片化した。個片化した半透膜を25℃のエタノールに30分以上浸漬した。次いでPBS(−)で洗浄した。
2.個片化した膜をヒトアルブミン(SIGMA製 A1653-10G)溶液に浸漬した。アルブミン溶液の濃度は0.1%(1mg/mL)で、温度は30℃で、溶液の体積は2.4mLとした。浸漬は90分間行った。
3.浸漬後、溶液中から個片化した半透膜を取り出した。
4.残された溶液中のアルブミンの濃度を測定することで、個片化した半透膜へのアルブミン吸着量を算出した。測定はELISA法で行った。ELISA法による測定はHuman Albumin ELISA Quantitation Set(Bethyl Laboratories,Inc.)を用いて実施した。
製造例1〜6に係る半透膜へのアルブミン吸着量は10μg/cm以下であった。このため当該半透膜の表面はタンパク質を吸着しにくいと評価された。
[透水性の測定]
1.各製造例に係る半透膜を切断することで、厚みはそのままで3cm×3cmの大きさに個片化した。
2.個片化した膜を25℃のエタノールに30分以上浸漬した。
3.その後、個片化した膜を30℃の蒸留水に30分以上浸漬した。
4.上記膜を目盛付きフィルターホルダー(FILTER HOLDER:ADVANTEC製25 mm、フィルター面積3.14cm)に装着した。フィルターホルダーは下部部品、スペーサー、上部部品及びクリップからなる。上部部品は外枠及び半透膜の支えとして機能する部品である。下部部品の上にスペーサーを置き、スペーサーの上に半透膜、半透膜の上に上部部品を置いた。上部部品と下部部品とをクリップで挟み固定した。下部部品は、吸引瓶に接続した。
5.目盛付きフィルターホルダーの上部部品内に11mLの蒸留水を入れた。
6.目盛付きフィルターホルダーにアスピレーターを接続した後、アスピレーターを稼働し、半透膜が蒸留水と接していない下部部品側を減圧した。このときの水温は25℃、負圧の大きさは3±0.2kPaとした。
7.上部部品内の蒸留水の体積が10mLから5mLになった時間を記録した。当該時間が10分以上であった場合は、減圧開始後10分間での水の濾過量を記録した。
8.半透膜の透水性を上記負圧における、フィルターホルダーに装着された膜の実効単位面積当たり及び単位時間当たりの水の透過量{L/(m・時)}で表す。各製造例において、4枚の半透膜を用意し、測定を4回行った。その平均値を代表値として水の透水性とした。
製造例1にかかる膜においては、蒸留水の体積が10mLから5mLになった時間の4回の測定の平均が22.9秒であったので、水の透過量は5mL/(3.14cm・22.9sec)、すなわち、一桁目を四捨五入して2500L/(m・時)であった。
各製造例の半透膜の透水性は表1に示す通りであり、製造例1〜4に係る半透膜の透水性は1000L/(m・時)以上であった。このため当該半透膜は透水性が高いと評価された。
[アルブミンの透過率の測定]
1.各製造例に係る半透膜を切断することで、厚みはそのままで、短辺25mm×長辺40mmの大きさに個片化した。個片化した半透膜を25℃のエタノールに30分以上浸漬し、次いでPBS(−)で洗浄した。
2.長辺部を折り曲げ、ヒートシーラーで、元の長辺部の2辺を各々溶融接着した。これにより、元の短辺部が解放されている袋状の部材を作製した。
3.当該部材内部に20mg/Lのヒトアルブミン溶液を200μL注入した後、元の短辺部をヒートシーラーで封じてバッグを作製した。
4.前記アルブミン溶液入りのバッグを15mLチューブ内のハンクス緩衝液10mLに浸漬し、37℃で30分間振とうした。
5.一時間後、バッグ外側のハンクス緩衝液を採取した。
6.採取したハンクス緩衝液内のアルブミン濃度をELISA法により測定した。ELISA法による測定はHuman Albumin ELISA Quantitation Set(Bethyl Laboratories,Inc.)を用いて実施した。
7.透過率を以下の式により求めた。バッグからハンクス緩衝液に移行したアルブミン透過量をXnとした。バッグに注入したアルミブミン量をXmaxとした。Xmaxはすなわち、20mg/L×200μLで、4000ngである。
透過率(%)=Xn/Xmax×100
製造例1〜4に係る半透膜のアルブミンの透過率は30%以上であった。このため当該半透膜はタンパク質等の物質透過性が高いと評価された。
[膜厚の測定]
膜厚を膜厚計で測定し、製膜された半透膜の四隅における測定値の平均をその半透膜の膜厚とした。各製造例の膜の膜厚を表1に示す。
[平均孔径の測定]
半透膜の孔の孔径は半透膜の表面を観察することで測定した。半透膜の一方の表面を走査型電子顕微鏡にて倍率2,000倍で写真撮影し、撮影後、無作為に30個の孔、すなわち空隙を選択し、各空隙の直径を測定した。測定値の平均を半透膜の孔の平均孔径とした。
[移植用デバイスにおけるアルブミン透過率の測定]
1.後述する各実施例及び比較例の[移植用デバイスにおけるアルブミン透過率評価]で記載したとおりに、アルブミン透過率の評価用デバイスを得た。なお本評価法の実施にあたってはゲルの洗浄、浸漬処理は全て省略した。これは以下に述べるとおり評価用デバイスを液に浸漬した際に透過するデバイス内部のアルブミンを測定することが本評価法の実施の目的だからである。
2.前記アルブミン溶液入りのバッグを15mLチューブ内のハンクス緩衝液10mLに浸漬し、37℃で30分間振とうした。
3.一時間後、バッグ外側のハンクス緩衝液を採取した。
4.採取したハンクス緩衝液内のアルブミン濃度をELISA法により測定した。ELISA法による測定はHuman Albumin ELISA Quantitation Set(Bethyl Laboratories,Inc.製)を用いて実施した。
5.透過率を以下の式により求めた。バッグからハンクス緩衝液に移行したアルブミン透過量をXnとした。バッグに注入したアルミブミン量をXmaxとした。Xmaxはすなわち、200mg/L×5μL又は20mg/L×50μLで、1000ngである。
透過率(%)=Xn/Xmax×100
各実施例に対応する評価用デバイスのアルブミンの透過率は30%以上であった。このため各実施例に係る移植用デバイスはタンパク質等の物質透過性が高いと評価された。
[バイオ人工臓器の評価]
<膵島の調製>
10〜14週齢、体重約300gのWisterラット(Shimizu animal Co. Ltd. Kyoto, Japan)から、下記コラゲナーゼ消化法により膵島を分離した。
1.開腹したラットの胆管より、XI型コラゲナーゼ(Sigma aldrich製、C7657-100MG)1000U/mlを含有するコラゲナーゼ/ハンクス液を一匹あたり12mL注入した後、膵臓を切除し、50mLのコニカルチューブに移した。
2.上記チューブを37℃の恒温槽に移し 、20分間の酵素処理を施した。
3.4℃のハンクス液35mLを添加し、酵素反応を停止した。ピペットを用いて膵臓組織を分散し、遠心により組織ペレットとして回収した。その後、さらに二回、ハンクス液40mLを添加し、ピペッティングにより組織ペレットを再度分散し遠心、洗浄した。なお、遠心は400G、1分間とした。
4.ハンクス液10mLを加え、ピペッティングにより分散し、組織懸濁液を得た。
5.組織懸濁液を800μmサイズのメッシュを有するふるいを用いてろ過した。ろ過液を50mLコニカルチューブに回収し、該チューブを遠心(400G、3分間)して膵島含有ペレットを得た。
6.前記ペレットを、デキストラン(Sigma aldrich製, MW 70,000, 31390-500G)を溶解した4℃のハンクス液(密度1.094 g/cm)10mLに懸濁した。その後、密度1.094g/mlデキストラン溶液(A)、その上層に密度1.081g/mlデキストラン溶液(B)及び密度1.041g/mlデキストラン溶液(C)を静かに添加し、3層とした。不連続密度勾配遠心処理を実施した。不連続密度勾配遠心は、40Gで4分間、更に800Gで16分間行った。
7.遠心後、最上2層の(B)、(C)間の界面より膵島含有画分をパスツールピぺットを用いて採取した。
8.得られた膵島を4℃のハンクス液を用いて3回洗浄した。
9.37℃のCMRL−1066培地(Life technologies/Gibco製、製品番号11530037)に懸濁し、37℃、5%CO下で一晩インキュベートした。ラット一匹あたり約500個の膵島を得た。
実施例及び比較例に係るバイオ人工臓器を、以下に示す実施例1の方法に準じて作製する。なお実施例2〜7及び比較例1〜4において、実施例1から変更する点は後述する。
実施例1.
<バッグ作製>
1.製造例1で作製した半透膜E−1を20mm×30mmの大きさに切断し、長辺を二つに折り曲げ、二辺をヒートシーラーで溶着した。
2.70%エタノールに3分浸漬した後、滅菌した蒸留水に一晩浸漬した。
<PVA含有細胞固定液の調製>
1.PVA0.48g(重合度18,000、けん化度98.5モル%)を9.52mLの蒸留水に溶解させた後、オートクレーブ(121℃、15分)による加熱溶解滅菌処理を2回施した。
2.得られた無菌PVA溶液を15mLコニカルチューブに6.3mL採り、5倍濃度ET−Kyoto電解質液(以降、ETK液と略す)2mL、DMSO(SIGMA aldrich製、D4540-100ML)0.5mL、FBS(Biological industries製、Cat.04−121−1A)1mL及び1Mニコチンアミド(SIGMA aldrich製、N0636-100G)水溶液0.1mL、Antibiotics−Antimycotic(Thermo Fisher Scientific製、製品番号15240-062)0.1mLを無菌的に滴下、混合することで、滅菌3%PVA−ETK液10mLを得た。
<膵島分散系の調製(実施例1)>
1.上記で得られた膵島を800個集め、37℃のCMRL−1066培地に懸濁した。その懸濁液を15mLコニカルチューブ内に入れ、800Gで1分間遠心、培地を除去した。
2.得られた膵島の沈殿物にセルバンカー(CELLBANKER 1、日本全薬工業株式会社製)100μLを添加し、膵島を懸濁した後、氷冷した状態で5分間静置した。
3.再度遠心して、セルバンカーを除去したのち、膵島をペレットとして1.5mLチューブ内に回収した。
4.上記ペレットと上記の滅菌3%PVA−ETK液100μLとを混合することで、回収した膵島を、PVA−ETK液中に懸濁した。これによりPVA−ETK膵島懸濁液を得た。
<バイオ人工膵島の作製>
1.上記で得られたPVA−ETK膵島懸濁液を上記バッグ内に全量注入し、ヒートシーラーにて、残る1辺を溶着することで、PVA−ETK膵島懸濁液を密封した。
2.上記密閉したバッグを専用容器内で−80℃、24時間保存した。これによりバッグ内のPVA−ETK液において、PVAの膨潤を進め、膵島分散系をゲル化した。
3.24時間後、37℃のCMRL−1066培地中で速やかに解凍して、バイオ人工膵島を得た。
4.解凍されたバイオ人工膵島を、5mLの4℃のETK液中に5分間浸漬した。5分後、ETK液を除去し、新たに5mLのETK液を加え、バイオ人工膵島を浸漬した。この浸漬と除去の操作を累計で3回繰り返し、該バイオ人工膵島に含有されるDMSOを除去した。
5.4℃のETK液にバイオ人工膵島を浸漬し、4℃で24時間保管した。
6.24時間後、CMRL−1066培地に移し、24時間(37℃、5%CO)培養した。得られたバイオ人工膵島を、以降の試験に用いた。
[移植用デバイスにおけるアルブミン透過率評価]
アルブミン透過率評価の場合は、移植用デバイス調製時、上記操作における<膵島分散系の調製>中1、2、3を行わず、4のペレットの代わりに200mg/Lのヒトアルブミン溶液5μLを用い、3%PVA−ETK溶液150μLと混合し、PVA−ETK膵島懸濁液の代わりとして調製した。その後、<バイオ人工膵島の作製>中の1、2の操作によりアルブミン透過率評価用デバイスを作製した。
実施例2.
実施例2においては、実施例1の<膵島分散系の調製>の手順を下記のとおり変更した。
<膵島分散系の調製(実施例2)>
1.0.5gのキトサン(417963, Sigma, USA)を0.1Mに調整した酢酸(017-00256, Wako, Japan)溶液20mLに溶解してオートクレーブで滅菌し、キトサン溶液を得た。
2.12gのβ−グリセロりん酸二ナトリウム水和物(G6251, Sigma, USA)を純水15mLに溶解し、0.22μmのフィルター(Millex-HA, Millipore, USA)で濾過滅菌し、溶液を得た。これをGP溶液とする。
3.クリーン・ベンチ内で上記キトサン溶液を撹拌しつつ、上記GP溶液を滴下してpHを7.4に調整した後、4℃で保存した。これをゲル調製液とする。
4.上記で得られた膵島を800個集め、37℃のCMRL−1066培地に懸濁した。その懸濁液を15mLコニカルチューブ内に入れ、800Gで1分間遠心、培地を除去し、ペレットを得た。
5.ゲル調製液200μLに上記ペレットを懸濁し、膵島懸濁液を得た。
<バイオ人工膵島の作製>
1.上記膵島懸濁液をバッグ内に封入後、37℃のインキュベータ内に10分間静置してゲル化させ、バイオ人工膵島を得た。
2.これをCMRL−1066培地に浸漬し、24時間(37℃、5%CO)培養し、以降の実験に用いた。
[移植用デバイスにおけるアルブミン透過率評価]
アルブミン透過率評価の場合は、移植用デバイス調製時、上記操作における<膵島分散系の調製>中、1,2、3を実施し、4は実施せず、5のペレットの代わりに200mg/Lヒトアルブミン溶液5μLを用い、ゲル調製液150μLと混合し、膵島懸濁液の代わりとして調製した。その後、<バイオ人工膵島の作製>中の1の操作によりアルブミン透過率評価用デバイスを作製した。
実施例3.
実施例3においては、上記に示す<膵島分散系の調製>及び<バイオ人工膵島の作製>を下記に変更した。
<膵島分散系の調製(実施例3)>
1.乾燥したオートクレーブ耐性ボトルに入れたアガロース粉末(ナカライテスク製、アガロースLGT)に、滅菌CMRL−1066培地を加え、12%の懸濁液とした後、オートクレーブにかけて滅菌した(121℃、20分間)。
2.40℃で保温したアガロース溶液0.1mLに、膵島800個を分散した滅菌CMRL−1066培地0.1mLを添加し、緩やかに混合し、膵島懸濁液を得た。
<バイオ人工膵島の作製>
1.上記膵島懸濁液を作製したバッグ内に0.2mL全量注入し、ヒートシーラーにて溶着し密封した。
2.滅菌した20mm×15mm×10mmの型内に上記バッグを置いた。
3.型及びバッグを4℃の冷蔵庫内で10分保管し、アガロースをゲル化させ、バイオ人工膵島を得た。
4.これを37℃のCMRL−1066培地に浸漬し、24時間(37℃、5%CO)培養し、以降の実験に用いた。
[移植用デバイスにおけるアルブミン透過率評価]
アルブミン透過率評価の場合は、移植用デバイス調製時、上記操作における<膵島分散系の調製>中、1を実施し、2の膵島の代わりに20mg/Lヒトアルブミン溶液50μLを用い、アガロース溶液50μLと混合し、膵島懸濁液の代わりとして調製した。その後、<バイオ人工膵島の作製>中の1、2,3の操作によりアルブミン透過率評価用デバイスを作製した。
実施例4.
実施例4においては、上記に示す<膵島分散系の調製>及び<バイオ人工膵島の作製>を下記に変更した。
<膵島分散系の調製(実施例4)>
1.アルギン酸ナトリウム(和光純薬製)を生理食塩水(大塚製薬工場製)に溶解し、2.0%アルギン酸ナトリウム溶液を得た。
2.上記で得た膵島800個を滅菌CMRL−1066培地0.1mLに分散し、上記2.0%アルギン酸ナトリウム溶液0.1mLと混合し、膵島懸濁液を得た。
<バイオ人工膵島の作製>
1.上記膵島懸濁液を作製したバッグ内に0.2mL全量注入し、ヒートシーラーにて溶着し密封した。
2.滅菌した20mm×15mm×10mmの型内に上記バッグを置いた。
3.1.5%塩化カルシウム(和光純薬製)水溶液20mLを注ぎ、膵島含有アルギン酸カルシウムをゲル化させ、バイオ人工膵島を得た。
4.5分後、上澄み液をアスピレーションにより除去した。
5.1.0%塩化カルシウム溶液10mLに浸漬し、5分静置した。
6.塩化カルシウム溶液をアスピレーションにより除去し、ハンクス液20mLに1分浸漬した。
7.ハンクス液をアスピレーションにより除去し、再度ハンクス液20mLに1分浸漬した。
8.バイオ人工膵島を型から取り出し、CMRL−1066培地に浸漬し、24時間(37℃、5%CO)培養し、これを以降の実験に用いた。
[移植用デバイスにおけるアルブミン透過率評価]
アルブミン透過率評価の場合は、移植用デバイス調製時、上記操作における<膵島分散系の調製>中、1を実施し、2の膵島の代わりに20mg/Lヒトアルブミン溶液50μLを用い、アガロース溶液50μLと混合し、膵島懸濁液の代わりとして調製した。その後、<バイオ人工膵島の作製>中の1、2,3、4,5の操作によりアルブミン透過率評価用デバイスを作製した。
実施例5〜7.
実施例5においては、上記に示す<バッグ作製>における半透膜をE−1からE−2に変更した。
実施例6においては、上記に示す<バッグ作製>における半透膜をE−1からE−3に変更した。
実施例7においては、上記に示す<バッグ作製>における半透膜をE−1からP−1に変更した。
比較例1.
比較例1においては、上記に示す<バッグ作製>を実施せず、下記の方法でバイオ人工膵島(ただし、半透膜は有さない)を作製した。
<PVAゲルの成形(比較例1)>
1.滅菌した、15mm×20mmのPET製メッシュシート(株式会社サンプランテック製:TN70, 115)2枚を、予め滅菌3%PVA−ETK液に浸漬し、この内の一枚を滅菌したガラスプレート上に置いた。
2.実施例1に係る操作で得られたPVA−ETK膵島懸濁液をメッシュシート上に均一に塗布し、もう一枚のメッシュシートを上から被せ、(PETメッシュシート)/(PVA−ETK膵島懸濁液)/(PETメッシュシート)の3層構成とした。更に上から別の滅菌したガラスプレートを被せ、約1mm厚の3層構成シートとなるよう調整し、これを2枚のガラスプレートで挟んだ状態のまま−80℃の冷凍庫内で、24時間保存して液内のPVAをゲル化し、バイオ人工膵島を得た。
3.24時間後、37℃のCMRL−1066培地中で速やかに解凍した。
4.解凍したバイオ人工膵島を、5mLの4℃のETK液中に5分間浸漬した。5分後、ETK液を除去し、新たに5mLのETK液を加え、バイオ人工膵島を浸漬した。この浸漬と除去の操作を累計3回繰り返し、該バイオ人工膵島に含有されるDMSOを除去した。
5.4℃のETK液にバイオ人工膵島を浸漬し、4℃で24時間保管した。
6.24時間後CMRL−1066培地に移し、24時間(37℃、5%CO)培養し、これを以降の実験に用いた。
[移植用デバイスにおけるアルブミン透過率評価]
アルブミン透過率評価の場合は、実施例1の方法に準じてPVA−ETK液とヒトアルブミン溶液との混合液を作製し、上記方法に準じてPET製メッシュシートを用いて、半透膜を用いずに、評価用デバイスを作製した。
比較例2.
比較例2においては、上記に示す<バッグ作製>を実施せず、下記の方法でバイオ人工膵島(ただし、半透膜は有さない)を作製した。
<膵島分散系の調製>
1.乾燥したオートクレーブ耐性ボトルに入れたアガロース粉末(ナカライテスク製、アガロースLGT)に、滅菌CMRL−1066培地を加え、12%の懸濁液とした後、オートクレーブ(121℃、20分間)にかけて滅菌し、アガロース溶液を得た。
2.40℃で保温したアガロース溶液0.1mLに、膵島800個を分散した滅菌CMRL−1066培地0.1mLを添加し、緩やかに混合し、懸濁液を得た。
<バイオ人工膵島の作製>
1.上記懸濁液を滅菌した20mm×15mm×10mmの型内に置いた。
2.型を4℃の冷蔵庫内で10分保管し、アガロースをゲル化させ、バイオ人工膵島を得た。
3.バイオ人工膵島を37℃のCMRL−1066培地に浸漬し、24時間(37℃、5%CO)培養し、これを以降の実験に用いた。
[移植用デバイスにおけるアルブミン透過率評価]
アルブミン透過率評価の場合は、実施例4の方法に準じてアガロース溶液とヒトアルブミン溶液との混合液を作製し、半透膜を用いずに評価用デバイスを作製した。
比較例3〜4.
比較例3においては、上記にしめす<バッグ作製>における半透膜E−1をE−4に変更した。
比較例4においては、上記にしめす<バッグ作製>における半透膜E−1をE−5に変更した。
[バイオ人工臓器の移植評価]
バイオ人工膵島内の膵島に対する免疫隔離がなされているかどうかを確認した。さらに体液由来の線維性皮膜によってなされるバイオ人工臓器に対する被覆を抑制することができるかどうかを確認した。
<移植試験:in vivo評価>
糖尿病モデルマウスの作製:
1.C57BL/6マウス(7週齢、オス)に、クエン酸緩衝液(pH4.5)に溶解したストレプトゾトシン(Sigma aldrich製、S0130-50MG)をマウスの体重あたり200mg/kgを腹腔内投与した。
2.投与後1週間の時点で血糖を3回測定し、2回以上血糖600mg/dL以上になったマウスを糖尿病が成立したものと判断し、実験に使用した。なお、ストレプトゾトシン投与を行わないマウスを正常マウス群Pとし、ストレプトゾトシン投与後にバイオ人工膵島の移植を行わないマウスを糖尿病マウス群Nとした。
移植:
1.エーテル麻酔下、糖尿病モデルマウス(糖尿病成立したもの)にペントバルビタールをマウスの体重あたり40mg/kg腹腔投与した。
2.正中切開にて約2cm開腹し、実施例1で得たバイオ人工膵島を腹腔内に留置した後、腹壁を2層に閉鎖した。このマウスを移植マウス群PE1とした。
同様に、実施例2〜7で得たバイオ人工膵島を移植したマウスを、それぞれ移植マウス群PE2〜PE7とした。比較例1〜4で得たバイオ人工膵島を移植したマウスを移植マウス群CE1〜CE4とした。
<移植後の評価>
血糖値の測定は以下の通り行った。移植一週間後、及び四週間後にマウス尾部より血液を採取し、富士フイルム製DRI−CHEMNX500を用いて、血糖値を測定した。各群とも三匹のマウスから得られた値の平均を、下記の基準により判定した。
A:血糖値が200mg/dL未満
B:血糖値が200mg/dL以上300mg/dL未満
C:血糖値が300mg/dL以上400mg/dL未満
D:血糖値が400mg/dL以上
体重の測定は以下の通り行った。移植一週間後、及び四週間後にマウスの体重測定を実施した。体重の増減率は、以下の式により算出した。各群とも三匹のマウスから得られた増減率の値の平均を、下記基準により判定した。
式:〔増減率(%)〕=(〔移植後の体重〕−〔移植前の体重〕)/〔移植前の体重〕
<基準>
A:+5%以上
B:+0%以上+5%未満
C:−10%以上0%未満
D:−10%未満
組織反応性の評価は以下の通り行った。八週間後あるいは死亡後にマウス体内よりバイオ人工膵島を摘出した。摘出方法は以下のとおり行った。
1.左側腹腔にペントバルビタールをマウスの体重あたり25mg/kgを注射した。
2.麻酔による意識混濁を確認後、剃毛し、仰向けに四足を固定した。
3.正中線に沿って、約4cm皮膚を切開した。
4.埋植したバイオ人工膵島の表面及び周辺組織の目視観察を実施した。
5.周辺組織を傷つけることなく、バイオ人工膵島をピンセットで剥離できるか試みた。
代表的な観察例を図2A,Bに示す。図2Aは実施例1にかかるものであり、図2Bは比較例1にかかるものである。図2A,B中、バイオ人工臓器20,21に向けられている定規の目盛は0.5mm刻みである。観察結果に対して下記の基準により判定した。
<基準>
バイオ人工臓器の表面の評価の基準は以下の通りである。
A:バイオ人工臓器の表面に薄い線維性被膜形成はあるが、バイオ人工臓器の表面から線維性被膜を剥離可能である。
B:バイオ人工臓器の表面に厚い線維性被膜形成があり、バイオ人工臓器の表面から線維性被膜を剥離不可能である。
移植部位周辺の炎症の評価の基準は以下の通りである。
A:軽微であり、バイオ人工臓器自体の周辺組織からの剥離が可能である。
B:重度の炎症が見られ、バイオ人工臓器自体の周辺組織からの剥離が不可能である。
実施例1〜7、比較例1〜4の主な構成と評価結果を表2に示す。また、正常マウス群P及び糖尿病マウス群Nについて移植を行わなかったもの(参考例1及び2)の評価結果を表2に示す。
Figure 0006920681
[評価]
上述の通り、実施例1に係る半透膜の表面はアルブミン、すなわちタンパク質を吸着しにくかった。したがって実施例1に係る半透膜は生体適合性が良好であることが示唆された。また実施例1にかかる半透膜の表面は補体を活性化しにくかった。したがって実施例1に係る膜は生体内における半透膜の物質透過性の経時的な低下を抑制することが示唆された。実施例2〜7において同様である。また、マウスを用いたバイオ人工膵島移植試験の評価結果から、上記半透膜を用いた実施例1〜7のバイオ人工臓器は、分泌物質を長期的に透過することが分かった。
比較例1、2では半透膜を有さないため、組織反応性評価に劣った。比較例3,4においては、アルブミンの透過率が低いバイオ人工膵島であったため、血糖値や体重測定において、マウスの良好な経過が得られなかった。したがって実施例1〜7のバイオ人工臓器は、バイオ人工臓器内の細胞をレシピエントの免疫系から隔離可能であるという特徴を有することが分かった。
以上の結果より、本発明のバイオ人工臓器は、生体内における物質透過性の経時的な低下に対して耐性を有することが分かった。このため、本発明のバイオ人工臓器は、移植した細胞による代謝機能を長期間にわたって維持することができることが分かった。
10 半透膜、11 基材、12 細胞、15 栄養分、16 分泌物質、18 白血球、20,21 バイオ人工臓器

Claims (13)

  1. 樹脂を含有する半透膜及び前記半透膜に包まれた細胞固定基材からなり、
    1cm角の前記半透膜を0.1%アルブミン溶液に90分浸漬した時のアルブミン吸着量が10μg/cm以下であり、
    前記半透膜において、30分間でのアルブミンの透過率が30%以上であり、
    前記細胞固定基材は、キトサンからなり、
    前記細胞固定基材で固定された細胞を備えていない移植用デバイスであって、
    当該移植用デバイスにおいて、30分間でのアルブミンの透過率が30%以上である
    移植用デバイス。
  2. 樹脂を含有する半透膜及び前記半透膜に包まれた細胞固定基材からなり、
    1cm角の前記半透膜を0.1%アルブミン溶液に90分浸漬した時のアルブミン吸着量が10μg/cm以下であり、
    前記半透膜において、30分間でのアルブミンの透過率が30%以上であり、
    前記細胞固定基材は、アルギン酸塩、アガロース及びビニルアルコール系重合体からなる群から選ばれる、少なくとも一つの高分子からな
    前記細胞固定基材で固定された細胞を備えていない移植用デバイスであって、
    当該移植用デバイスにおいて、30分間でのアルブミンの透過率が30%以上である、
    移植用デバイス。
  3. 前記細胞固定基材は、ハイドロゲルである、請求項1又は2に記載の移植用デバイス。
  4. 前記半透膜が、前記半透膜を通して負圧約3±0.2kPaで水を吸引したとき、水の透過量が1,000L/(m・時)以上で表される、請求項1〜のいずれかに記載の移植用デバイス。
  5. 前記半透膜と血清とを接触させたとき、前記半透膜による、血清中の補体価(CH50)の減少率が25%以下である、請求項1〜のいずれかに記載の移植用デバイス。
  6. 前記半透膜と血清とを接触させたとき、前記半透膜による、血清中の補体タンパク質の活性の増加率が30%以下であり、
    前記活性の増加は、C1、C2、C3,C4、C5、C6、C7、C8及びC9の内、一以上の補体の量、前記補体が分解されて生じたタンパク質の量、並びに前記補体の複合体の内、一以上のものの測定の量に基づき、算出されたものである、請求項1〜のいずれかに記載の移植用デバイス。
  7. 前記半透膜の厚さが50μm以上、200μm以下である、請求項1〜のいずれかに記載の移植用デバイス。
  8. 前記移植用デバイスの表面にある半透膜を測定した際の平均表面孔径が0.1μm以上、3μm以下である、請求項1〜のいずれかに記載の移植用デバイス。
  9. 前記半透膜が、エチレン-ビニルアルコール系共重合体を50質量%以上含有する、請求項1〜のいずれかに記載の移植用デバイス。
  10. 細胞を細胞固定基材で固定し、前記細胞を前記移植用デバイスごと生体に移植することで、前記細胞を前記移植用デバイスの外部の生体環境から隔離するための、請求項1〜のいずれかに記載の移植用デバイス。
  11. 高分子からなる細胞固定基材を、樹脂を含有する半透膜からなるバッグで包むことで、前記細胞固定基材で固定された細胞を備えていない移植用デバイスを製造する方法であって、
    1cm角の前記半透膜を0.1%アルブミン溶液に90分浸漬した時のアルブミン吸着量が10μg/cm以下であり、前記半透膜において30分間でのアルブミンの透過率が30%以上であり、
    前記高分子はキトサンであ、又はアルギン酸塩、アガロース及びビニルアルコール系重合体からなる群から選ばれる、少なくとも一つの高分子であ
    当該移植用デバイスにおいて、30分間でのアルブミンの透過率が30%以上である、
    移植用デバイスの製造方法。
  12. 高分子及び細胞が分散している分散液を、樹脂を含有する半透膜からなるバッグで包み、樹脂を含有する半透膜からなるバッグ内で前記高分子をゲル化することで、前記細胞をゲル内に固定する、バイオ人工臓器を製造する方法であって、
    1cm角の前記半透膜を0.1%アルブミン溶液に90分浸漬した時のアルブミン吸着量が10μg/cm以下であり、前記半透膜において30分間でのアルブミンの透過率が30%以上であり、
    前記高分子はキトサンであ、又はアルギン酸塩、アガロース及びビニルアルコール系重合体からなる群から選ばれる、少なくとも一つの高分子であり、
    前記高分子からなる細胞固定基材を、前記樹脂を含有する前記半透膜からなる前記バッグで包むことで、前記細胞固定基材で固定された細胞を備えていないアルブミン透過率評価用デバイスを製造した時、当該アルブミン透過率評価用デバイスにおいて、30分間でのアルブミンの透過率が30%以上である、
    バイオ人工臓器の製造方法。
  13. 前記細胞が膵島である、請求項12に記載のバイオ人工臓器の製造方法。
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