以下、図面等を用いて、本発明の実施形態について説明する。以下の説明は本発明の内容の具体例を示すものであり、本発明がこれらの説明に限定されるものではなく、本明細書に開示される技術的思想の範囲内において当業者による様々な変更および修正が可能である。また、本発明を説明するための全図において、同一の機能を有するものは、同一の符号を付け、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
また、以下、本明細書では、屈曲式作業車両として、ホイールローダを例にあげて説明する。
<<第一の実施形態>>
本実施形態では、車両の横転(転倒)可能性の判定に、車体の傾斜量に加え、車両の走行状態に応じた慣性力を考慮する。慣性力は、車両の加速、減速、旋回等の状態量から算出される加速度を用いて算出する。算出や判定に用いる車体の重心には、設計値を用いる。
まず、本実施形態のホイールローダを説明する。図1は、本実施形態のホイールローダ100の側面図である。本図に示すように、ホイールローダ100は、前輪104および後輪105を備える車輪式の作業車両である。ホイールローダ100は、その車体として、作業機130を備える前フレーム101と、運転席113やエンジンを備える後フレーム102とを備える。
前フレーム101と後フレーム102とは、センターピン103により屈曲可能に接続される。前フレーム101と後フレーム102との成す角度である屈曲角は、屈曲用油圧シリンダ112により制御される。
ホイールローダ100は、前フレーム101および後フレーム102にそれぞれ固定された前輪104および後輪105を駆動して前後に走行する。また、センターピン103を中心とした車体の屈曲によって前輪104および後輪105に角度を付けることで操舵を行う。このとき、屈曲角の制御によって旋回半径を自由に設定することができる。
運転席113の操縦者はアクセルペダルやブレーキペダルによって制駆動力を、ハンドルによって屈曲角を制御する。
ホイールローダ100の前フレーム101に設けられる作業機130は、積荷を載せたり掘削を行ったりする。作業機130は、リフトアーム107と積荷を載せる積載部であるバケット109とを備える。リフトアーム107およびバケット109は、それぞれ、支点106および支点108を回転中心に回動可能に設置される。
リフトアーム107は、支点106で前フレーム101に接続される。リフトアーム107は、その回転角を油圧シリンダ110により支持することで、バケット109の荷重を支えると共に高さを変化させる。バケット109は、支点108でリフトアーム107に接続される。バケット109も、リフトアーム107と同様に、その回転角を図示しない油圧シリンダにより可変できる。この構成により、積載部であるバケット109の高さや角度は、自由に操作される。
また、本実施形態のホイールローダ100は、リフト角検出センサ201と、バケット角検出センサ202と、積荷荷重検出センサ203と、車体屈曲角検出センサ204と、車体速度検出センサ205と、車体傾斜角検出センサ206とを備える。
リフト角検出センサ201は、リフトアーム107の、前フレーム101に対する角度(リフト角)を検出する。リフト角検出センサ201は、例えば、支点106に設けられる。
バケット角検出センサ202は、バケット109の、リフトアーム107に対する角度(バケット角)を検出する。バケット角検出センサ202は、例えば、支点108に設けられる。
リフト角検出センサ201とバケット角検出センサ202とにより、積荷を乗せる積載部(バケット109)の位置および姿勢が検出される。
積荷荷重検出センサ203は、バケット109の重量を検出する。積荷荷重検出センサ203は、例えば、油圧シリンダ110に設置される。リフトアーム107および積荷を載せたバケット109は支点106で前フレーム101に接続され、油圧シリンダ110により支持することでバケット109の荷重を支える。このため、油圧シリンダ110に設置された積荷荷重検出センサ203によってその荷重を検出することができる。積荷荷重検出センサ203には、例えば、油圧シリンダ110のボトム側(荷重を支える側)のシリンダ圧を計測する圧力センサなどが用いられる。
車体屈曲角検出センサ204は、屈曲角を検出する。車体屈曲角検出センサ204は、例えば、センターピン103または屈曲用油圧シリンダ112に設けられる。車体屈曲角検出センサ204は、例えば、センターピン103の回転角を検出するロータリーエンコーダで実現される。また、センターピン103の左右に設けられる屈曲用油圧シリンダ112それぞれのシリンダ長を検出し、屈曲角に変換する検出器であってもよい。
車体速度検出センサ205は、ホイールローダ100の速度を検出する。車体速度検出センサ205は、例えば、後輪105に設けられ、車輪の回転速度を検出し、速度に換算する。
車体傾斜角検出センサ206は、ホイールローダ100の車体の傾斜角を検出する。車体傾斜角検出センサ206は、例えば、後フレーム102の運転席113の下部等に設けられる。
なお、リフト角検出センサ201と、バケット角検出センサ202と、積荷荷重検出センサ203とは、本実施形態の後述する横転検出装置では用いない。このため、本実施形態では、これらのセンサを備えなくてもよい。
また、図中、x、zで示すように、本実施形態では、重力方向と逆方向をz方向とし、z方向に直交する平面において、後輪105の車軸方向をy方向、同平面上においてy方向に直交する方向をx方向とする座標系を用いる。原点は、例えば、設計上の車体重心点等とする。なお、他の実施形態も同様の座標系を用いる。
また、本実施形態のホイールローダ100は、操舵制御、車速制御、作業機制御、位置検出、通信、横転防止等の各種制御を行う制御システムを備える。制御システムは、車体各部に設けられるセンサからのセンサ信号を取り込み、所定の制御アルゴリズムに従って処理を行い、各種のアクチュエータ(制御部)に駆動信号を出力する。
本実施形態の制御システムは、CPUとメモリと記憶装置とを備える。CPUは、記憶装置に記憶されたプログラムを、メモリに展開し、実行することにより、上記処理を実現する。なお、全部または一部の機能は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(field−programmable gate array)などのハードウェアによって実現されてもよい。
以下、制御システムのうち、横転検出機能に主眼をおいて説明する。本実施形態の横転検出機能を実現する横転検出装置200は、ホイールローダ100に取り付けられた上記各センサから出力される信号に基づき、処理を行い、横転の可能性を判定し、判定結果を出力する。
具体的には、本実施形態では、車両の走行状態、すなわち車体速度検出センサ205により検出された当該車両の速度、車体屈曲角検出センサ204により検出された屈曲角に基づく旋回半径等の状態量に基づき、車両重心点に作用する慣性力を算出する。そして、慣性力を加味して横転の可能性を判定する。
図2は、上記機能を実現する本実施形態の横転検出装置200の機能ブロック図である。本図に示すように、本実施形態の横転検出装置200には、車両に取り付けられた、車体屈曲角検出センサ204と、車体速度検出センサ205と、車体傾斜角検出センサ206とが接続される。
本実施形態の横転検出装置200は、慣性力算出部208と、作用点算出部209と、支持範囲算出部210と、判定部211と、を備える。
慣性力算出部208は、車両重心点に作用する慣性力を算出する。算出には、車体屈曲角検出センサ204で検出された、車両の速度と、車体速度検出センサ205で検出された車体の屈曲角とを用いる。
慣性力は、まず車両重心点の加速度を算出し、そこに車両重量を積算することにより算出される。加速度には制駆動力により発生する前後方向の加速度と、旋回に伴い横方向に発生する遠心加速度とがある。
前後方向の加速度は、例えば、車体速度検出センサ205により検出された当該車両の速度を疑似微分して得る。なお、例えば、エンジントルク出力やブレーキ液圧などに基づき制駆動トルクを推定し、それを用いて加速度を算出してもよい。
遠心加速度aは、車両が円運動を行う場合の旋回速度vと旋回半径rとを用いて、以下の式(1)で算出される。
a=v2/r ・・・(1)
慣性力算出部208は、これらの前後方向の加速度および遠心加速度をベクトルとして加算し、車両重量を積算し、慣性力ベクトルを算出する。なお、車両重量には、設計情報を用いる。
作用点算出部209は、慣性力と重力との合力の方向を支持力作用点として算出する。本実施形態では、まず、作用点算出部209は、車体傾斜角検出センサ206が検出した車体の傾斜角を用いて、鉛直方向に作用する重力の車体に対する方向を算出する。そして、重力の方向と慣性力ベクトルとを用いて、合力の方向を算出する。
そして、車両の重心点から合力の方向に路面まで延長した線の路面との交点として、支持力作用点を得る。
支持範囲算出部210は、車体屈曲角検出センサ204により検出された屈曲角を用い、4つのタイヤによる接地点を得る。ホイールローダ100の車体はこの4つの接地点によって支持される。この4つの接地点を支持点とし、それらの支持点で囲まれる多角形領域を支持範囲とする。
判定部211は、ホイールローダ100の横転の可能性の有無を判定する。本実施形態では、判定部211は、作用点算出部209が算出した支持力作用点と、支持範囲算出部210が算出した支持範囲とを比較し、支持力作用点が支持範囲の内部にあるか否かで横転の可能性を判定する。すなわち、支持力作用点が支持範囲の内部にあれば、横転可能性無し、と判定し、外部であれば、横転可能性有りと判定する。
図3(a)および図3(b)は、判定部211による判定手法の一例を模式的に示す図である。図3(a)では簡単のために、ホイールローダ100の正面から見た図を用いて説明する。また、図3(b)では、上面から見た図を用いて説明する。
支持範囲305は、支持範囲算出部210が、車体屈曲角検出センサ204が検出した屈曲角に基づいて算出した4つの車輪の位置、すなわち、4つの支持点308で定まる。
また、支持力作用点307は、慣性力303と重力304とのベクトルを加算した合力306の方向を路面311まで延長した線の路面311との交点である。なお、302は、車両の重心点(車両重心)である。
なお、支持範囲305は前述したように4つの支持点により囲まれる多角形領域である。このため、紙面奥行き方向(x方向)についても同様に考慮し、合力306の方向を得る。
上述のように、判定部211は、支持力作用点307が支持範囲305の内部にあるか否かで横転の可能性を判定する。図3(a)の例では、支持力作用点307が支持範囲305(支持点308)の内側(車体重心側)にある。従って、判定部211は、横転可能性無し、と判定し、判定結果を出力する。
しかしながら、図3(a)に示す状態から、少しでも慣性力や車体傾斜角が増大すると、支持力作用点307は、支持範囲305の外に出てしまう。この場合の様子を図3(b)に示す。
図3(b)に示すように、支持力作用点307が、支持範囲305(支持点308)の外側にある場合は、判定部211は、横転可能性有り、と判定し、判定結果を出力する。
なお、本実施形態では、判定部211による判定結果は、例えば、報知手段、各種の車体制御手段等に出力されてもよい。
以上説明したように、本実施形態の屈曲式作業車両であるホイールローダ100は、前フレーム101と後フレーム102とが互いにセンターピン103により結合され、シリンダ(油圧シリンダ110)の駆動により屈曲するように設けられた車体と、前記前フレーム101に設けられた前輪104と、前記後フレーム102に設けられた後輪105と、前記前フレーム101に設けられた作業機130と、路面311(車両支持面)に対する前記車体の傾斜角である車体傾斜角を検出する車体傾斜角センサ(車体傾斜角検出センサ206)と、前記車体傾斜角センサで検出した車体傾斜角に基づき前記車体の姿勢を制御する制御装置と、を備えたホイールローダ100において、前記前フレーム101と前記後フレーム102とが成す屈曲角を検出する屈曲角センサ(車体屈曲角検出センサ204)と、前記ホイールローダ100の速度を検出する速度センサ(車体速度検出センサ205)と、を備え、前記制御装置は、前記屈曲角センサにより検出された屈曲角および前記速度センサにより検出された速度に基づき、前記車体に働く慣性力である車体慣性力を算出する慣性力算出部208と、予め記憶された前記車体の寸法及び重量により算出された前記作業車両の重心点と、前記慣性力算出部208により算出された車体慣性力と、前記車体傾斜角センサにて検出した車体傾斜角とに基づき、前記慣性力と前記車体に働く重力との合力の延長線が車両支持面と交差する点を、支持力作用点307として算出する作用点算出部209と、前記前輪104および前記後輪105が前記車両支持面と接する点を結んで形成される支持多角形によって規定される支持範囲と前記作用点算出部209により算出された支持力作用点307とに基づいて横転可能性を判定し、判定結果を出力する判定部211と、を備える。
このように、本実施形態によれば、ホイールローダ100の走行状態、すなわち当該車両が加速減速をしているのか、旋回を行っているのかといった状態量に基づき、車両重心点まわりの加速度を算出する。さらに、その加速度と車両重量とを積算し、車両重心点に作用する慣性力を算出する。この時用いる車両重心点の位置および車両重量は、設計情報として得る。
一方、車両重心点には重力も作用する。しかし、その方向は車両の傾斜により変化する。本実施形態では、車体傾斜角を検出することで重力の方向も算出する。
本実施形態では、車両重心点に作用する慣性力と重力との合力の延長線が路面311と交差する点を支持力作用点307とする。これら慣性力と重力との合力は、車両の支持点308、すなわち、4つのタイヤによる接地点によって支えられる。従って、本実施形態では、支持力作用点307が、この4つの支持点308により囲まれる多角形領域である支持範囲305の内部にあるか否かで横転可能性を判定する。
このため、本実施形態によれば、車両が走行する斜面の傾斜の大きさはもとより、車両の加減速や旋回など走行状態も加味した精度の高い横転可能性判定が可能になる。そして、車両が傾斜地を走行する際、傾斜度合いや傾斜への進入角度,車体屈曲角,積み荷の高さによらず、早期に転倒可能性を察知できる。
すなわち、本実施形態によれば、慣性力も加味して横転可能性を判定する。このため、特に、傾斜地で稼働中のホイールローダに関し、高精度に横転可能性を判定できる。
なお、本実施形態では、横転可能性の判定を、支持力作用点307が支持範囲305内か否かにより行っているが、これに限定されない。例えば、支持範囲305より内側に所定の判定範囲を設定し、支持力作用点307が当該判定範囲内か否かにより行ってもよい。
<<第二の実施形態>>
次に、本発明の第二の実施形態を説明する。第一の実施形態では、車両重心点として車体の寸法及び車体の重量に基づいた設計値を用いた。一方、第二の実施形態では、車体の寸法及び車体の重量に加えて積荷の荷重、積載部であるバケットの状態(位置および姿勢)も考慮して算出した重心(計算重心)を用いる。
本実施形態のホイールローダ100は、基本的に第一の実施形態と同様の構成を有する。ただし、横転検出装置の機能が異なる。以下、本実施形態のホイールローダ100について、第一の実施形態と異なる構成に主眼をおいて説明する。
図4は、本実施形態の横転検出装置200aの機能ブロック図である。本図に示すように、本実施形態の横転検出装置200aは、慣性力算出部208と、作用点算出部209と、支持範囲算出部210と、判定部211と、重心算出部207を備える。
また、本実施形態の横転検出装置200aには、車両に取り付けられた、車体屈曲角検出センサ204と、車体速度検出センサ205と、車体傾斜角検出センサ206と、に加え、リフト角検出センサ201と、バケット角検出センサ202と、積荷荷重検出センサ203と、が接続される。
慣性力算出部208の機能および判定部211の機能は、第一の実施形態と同様である。
重心算出部207は、積荷を積載した、稼働姿勢における、ホイールローダ100の重心を算出する。本実施形態では、まず、バケット109の位置および姿勢を算出する。そして、バケット109の位置と、積荷の重量と、前フレーム101の重心点位置および重量とを用い、積荷や作業機130を含めた前フレーム101全体の重心点の位置および重量を算出する。その後、さらに、後フレーム102の重心点の位置および重量を加味し、車両全体の重量と重心位置とを算出する。なお、前フレーム101の重心点の位置および重量、後フレーム102の重心点の位置および重量には、設計情報を用いる。
作用点算出部209は、設計情報の重心位置に変えて、重心算出部207が算出した重心点の位置を用いる。その他の処理は、第一の実施形態と同様である。
以下、重心算出部207による重心算出手順を説明する。
重心算出部207は、まず、リフト角とバケット角とリフトアーム107のリンク長とを用い、幾何学的にバケット109の位置および姿勢を算出する。なお、リフトアーム107のリンク長には、設計情報を用いる。
次に、重心算出部207は、積荷荷重検出センサ203が検出した積荷荷重と、バケット109の位置および姿勢等を用いて前フレーム101全体の重心点の位置および重量を算出する。
ここで、バケット109の重心点(図1の点120)の位置の座標値(以下、単に位置と呼ぶ。)をG0(x0,z0)とし、前フレーム101の重心点(図1の点121)の位置をG1(x1,z1)とする。また、バケット109の積荷の重量をM0、前フレーム101の重量をM1とする。
なお、M0は、積荷荷重検出センサ203が検出した値である。また、M1には、設計情報を用いる。
前フレーム101全体の重量Mfおよび重心点Gf(xf,zf)の位置は、G0とG1との内分点で表される。すなわち、以下の式(2)〜(4)により求められる。
Mf=M0+M1 ・・・(2)
xf=(M0・x0+M1・x1)/Mf ・・・(3)
zf=(M0・z0+M1・z1)/Mf ・・・(4)
なお、車両横方向(y軸方向;図1中の奥行き方向)についても同様に求められる。例えば、積荷が均等に積載されていると仮定すれば、車両横方向の重心の位置(ここではy座標yf)は、車両中心としてよい。
次に、重心算出部207は、積荷、作業機130を含む前フレーム101全体の重心点の位置および重量と、後フレーム102の重心点の位置および重量とを用いて、車体総重量と車両全体の重心点とを算出する。
後フレーム102の重心点(図1の点122)の位置をG1(xr,zr)とし、後フレーム102の重量をMrとする。これらは、設計情報を用いる。これらを用いて、車体総重量Mcおよび車両重心点Gc(xc,zc)は、以下の式(5)〜(7)で求められる。
Mc=Mf+Mr ・・・(5)
xc=(Mf・xf+Mr・xr)/Mc ・・・(6)
zc=(Mf・zf+Mr・zr)/Mc ・・・(7)
なお、センターピン103で車体が屈曲している場合、車両の左右方向で対称性が崩れる。この場合、上記、前フレーム101全体のy座標yfと、後フレーム102の重心点の位置G1のy座標yrとを用いて、車両重心点Gcのy座標ycは、式(6)(7)等と同様に内分点の式によって、以下の式(8)で算出される。
yc=(Mf・yf+Mr・yr)/Mc ・・・(8)
以上の手順で、重心算出部207は、重心の座標を算出する。そして、本実施形態の作用点算出部209は、支持力作用点307の算出に、当該重心を用いる。
以上説明したように、本実施形態のホイールローダ100では、前記作業機130はリフトアーム107とバケット109とを備える。また、前記ホイールローダ100は、さらに、前記リフトアーム107の前記車体に対する角度であるリフト角を検出するリフト角検出センサ201と、前記バケット109の前記リフトアーム107に対する角度であるバケット角を検出するバケット角検出センサ202と、前記バケット109に積載された積荷の荷重を検出する積荷荷重検出センサ203と、前記リフト角と前記バケット角と前記荷重と前記屈曲角とに基づき、当該ホイールローダ100の車両重心を計算重心として算出する重心算出部207と、を備える。そして、前記作用点算出部209は、前記重心として前記計算重心を用いる。
このように、本実施形態によれば、積荷を載せる積載部であるバケット109の位置及び姿勢を検出するリフト角検出センサ201とバケット角検出センサ202とをさらに備える。積載部であるバケット109を有する作業機130部分は、リンク機構によりバケット109の位置及び姿勢が変えられるように構成されている。その位置及び姿勢は、車体に対するリフトアーム107の角度およびリフトアーム107に対するバケットの角度によって一意に算出できる。
本実施形態では、まず、リフト角検出センサ201およびバケット角検出センサ202により得られる各々の角度を用いて前フレーム101を基準とした積荷の位置を算出する。さらに、作業機130部分に積荷荷重検出センサ203を備えることで積荷の重量を検出する。前フレーム101を基準とした積荷の位置と重量、および、設計情報として既知の前フレーム101の重心点位置と重量を用いて、積荷を含めた前フレーム101全体の重心点の位置および重量を算出する。
一方、後フレーム102の重心点位置と重量は同様に設計情報として既知であり、その位置関係は車体屈曲角検出センサ204による角度と前フレーム101および後フレーム102を連結するセンターピン103の位置とにより一意に算出可能である。よって、本実施形態では、車体屈曲角および車体前後部の重心点位置と重量を用いて、車両全体の重心点位置と重量とを高精度に算出できる。
横転可能性の判定では、慣性力と重力とを用いる。これらは、いずれも車両の重心点位置に対して車両重量に比例した大きさで作用する。そのため、車両の重心点位置と重量を高精度に算出することにより、積載部であるバケット109の位置及び姿勢、車体屈曲角の大きさに寄らず精度の高い横転危険性判定が可能になる。
このように、本実施形態によれば、第一の実施形態同様、慣性力も加味して横転可能性を判定する。このため、特に、稼働中のホイールローダ100に関し、高精度に横転可能性を判定できる。
さらに、本実施形態によれば、このようにリフト角検出センサ201およびバケット角検出センサ202、積荷荷重検出センサ203の検出値に基づいて重心を算出する。このため、高精度に重心位置を算出できる。そして、この重心位置を用いて横転可能性を判定するため、より精度よく横転可能性を判定できる。
なお、慣性力算出部208も、慣性力を算出する際、車両重量として積荷荷重を加算した値を用いてもよい。
<<第三の実施形態>>
次に、本発明の第三の実施形態を説明する。本実施形態では、判定部の判定結果に応じて、出力を変更する。以下、本実施形態について、上記第一の実施形態と異なる構成に主眼をおいて説明する。
本実施形態のホイールローダ100は、基本的に第一の実施形態と同様である。ただし、本実施形態のホイールローダ100は、車体屈曲角制御部213と、駆動力制御部214と、報知部215と、をさらに備える。
また、本実施形態の横転検出装置200bは、図5に示すように、第二の実施形態と同様の構成を有する。ただし、判定部211の処理内容および出力先が異なる。
車体屈曲角制御部213は、横転検出装置200bからの出力に応じて、車体屈曲角を制御する。具体的には、屈曲用油圧シリンダ112に制御指令を出力する。
駆動力制御部214は、横転検出装置200からの出力に応じて、駆動力を制御する。本実施形態では、例えば、最高速度を制御する。駆動力の制御は、具体的には、アクセル、ブレーキ等の駆動部を制御することによりなされる。
判定部211は、転倒の可能性を判定し、判定結果を出力する。第一の実施形態では、支持力作用点307が支持範囲305内であるか否かのみを判定している。しかし、本実施形態では、支持範囲305内に、複数の範囲(領域)をさらに設定し、各範囲と支持力作用点307との位置関係に応じて異なる出力先に判定結果を出力する。
図6(a)、図6(b)および図7を用いて、判定部211の判定手法を説明する。図6(a)および図6(b)は、本実施形態の複数の範囲を説明するための図であり、図7は、判定処理の処理フローである。
本実施形態では、図6(a)に示すように、支持範囲305内に、第一の範囲610と第二の範囲620とを設定する。第二の範囲620は、その外周が、第一の範囲610の外周と、支持範囲305との間に配されるよう、設定される。
判定部211は、作用点算出部209から支持力作用点307を、支持範囲算出部210から支持範囲305を受信すると、図7に示す判定処理を開始する。
まず、判定部211は、支持力作用点307が第一の範囲610内に有るか否かを判別する(ステップS1101)。そして、支持力作用点307が第一の範囲610内に有る場合、横転可能性無しとして、何も出力せず、判定処理を終了する。なお、この判定において、第一の範囲610内とは、支持力作用点307が、第一の範囲610と第二の範囲620との境界線上にある場合を含む。以下、本実施形態の各判定において、同様とする。支持力作用点307が境界線上にある場合の判定については、これに限定されず、予め定めておけばよい。
次に、判定部211は、支持力作用点307が第一の範囲610外である場合、第二の範囲620内に有るか否かを判別する(ステップS1102)。第二の範囲620内に有る場合(S1102;Yes)、判定部211は、報知部215に第一の判定結果を出力し(ステップS1103)、処理を終了する。例えば、第一の判定結果を受信した報知部215は、警報を出力する。
次に、判定部211は、支持力作用点307が第二の範囲620外である場合、支持範囲305内に有るか否かを判別する(ステップS1104)。支持範囲305内に有る場合(S1104;Yes)、判定部211は、駆動力制御部214に第二の判定結果を出力し(ステップS1105)、処理を終了する。なお、第二の判定結果は、例えば、最高速度を制限する駆動指令とする。駆動指令を受信した駆動力制御部214は、車両が駆動指令で特定された最高速度以上の速度とならないよう、駆動制御を行う。
そして、判定部211は、支持力作用点307が支持範囲305外である場合(S1104;No)、車体屈曲角制御部213に第三の判定結果を出力し(ステップS1106)、処理を終了する。なお、第三の判定結果は、たとえば、車体屈曲角の最大値を制限する屈曲角制御指令等とする。屈曲角指令を受信した車体屈曲角制御部213は、車体屈曲角が当該最大値以上とならないよう屈曲用油圧シリンダ112の動作を制御する。
判定部211は、以上の処理を、作用点算出部209から支持力作用点307を受信する毎に繰り返す。
判定部211で判定する支持範囲と支持力作用点307との関係を、図6(b)に示す。図6(b)は、図6(a)のxy平面上への車両重心の射影301と支持力作用点307とを含む直線で切り出し、縦軸に転倒危険度をプロットした模式図である。ここで、支持範囲305は4つのタイヤの接地面312で規定される転倒限界を示し、最も高い危険度を示す。第二の範囲620および第一の範囲610は、支持範囲305より内側で、内側に行くほど危険度が低減していくことを示す。支持力作用点307は、支持範囲305より外側であるので危険度も高く、それが、図7の第三の判定結果に相当する。
以上説明したように、本実施形態のホイールローダ100は、外部に警告を出力する報知部215をさらに備え、前記判定部211は、前記支持力作用点307が、前記支持範囲305内部の第一の範囲610外である場合、前記判定結果として第一判定を前記報知部215に出力し、前記報知部215は、前記第一判定を受信すると、前記警告を出力する。
また、当該ホイールローダ100の駆動を制御する駆動力制御部214をさらに備え、前記判定部211は、前記支持力作用点307が、前記支持範囲305内部の第一の範囲610外であり、かつ、第二の範囲620内である場合、前記判定結果として第二判定を前記駆動力制御部214に出力し、前記駆動力制御部214は、前記第二判定を受信すると、最高速度を制限し、前記第二の範囲620は、前記支持範囲305内かつ前記第一の範囲610外の範囲である。
さらに、前記屈曲角を制御する車体屈曲角制御部213を備え、前記判定部211は、前記支持力作用点が、前記第二の範囲620外の場合、前記判定結果として第三判定を前記車体屈曲角制御部213に出力し、前記車体屈曲角制御部213は、前記第三判定を受信すると、上限屈曲角を制限する。
このように、本実施形態によれば、第一の実施形態同様、慣性力も加味して横転可能性を判定する。このため、特に、稼働中のホイールローダに関し、高精度に横転可能性を判定できる。
さらに、本実施形態よれば、支持範囲305の内部にあるか否かの二値判定でなく、支持範囲305内部に複数の範囲を設け、支持範囲305の境界からの距離に応じて複数段階で横転可能性を判断する。そして、段階に応じて最適な出力を行い、車両を制御する。このため、本実施形態によれば、安全性と稼働性とを両立した制御を実現できる。
なお、本実施形態では、警報出力、最高速度制限、屈曲角制限、全てを行うものとして記載したが、これに限定されない。この中の1または2の制御のみ行うよう構成してもよい。また、ステップS1105において、屈曲角制限を行い、S1106において最高速度制限処理を行ってもよい。また、最高速度制限、屈曲角制限を行う際、同時に警報出力も行ってもよい。このとき、出力する警報の態様を、それぞれ変えてもよい。
また、支持範囲305内に、2つの範囲を設けた場合を例にあげて説明したが、設定する範囲の数はこれに限定されない。
<<第四の実施形態>>
次に、本発明の第四の実施形態について説明する。本実施形態では、支持力作用点307と支持範囲305との位置関係に応じて、制御量を算出し、支持力作用点307が支持範囲305内に収まるようホイールローダ100を制御する。制御対象は、例えば、駆動力と車体屈曲角とする。これらを変更することにより、支持力作用点307を支持範囲305の内側になるように、すなわち、支持力作用点307をできるだけ車両重心に近付けるようにする。
以下、本実施形態を実現する構成について、第三の実施形態と異なる構成に主眼をおいて説明する。
本実施形態のホイールローダ100は、基本的に第一の実施形態と同様の構成を有する。また、本実施形態のホイールローダ100の横転検出装置200cは、基本的に第三の実施形態と同様の構成を備える。ただし、後述するように、制御量算出部212をさらに備え、また、判定部211の処理内容および出力先が異なる。
図8は、本実施形態の横転検出装置200cの機能ブロック図である。本図に示すように、本実施形態の横転検出装置200cは、第二の実施形態の構成に、さらに、制御量算出部212を備える。
制御量算出部212は、支持力作用点307が支持範囲305の外側と判定された場合、支持力作用点307が支持範囲305内になるよう、駆動力および車体屈曲角の少なくとも一方の変更量を算出する。このとき、制御量算出部212は、車体傾斜角検出センサ206の出力と、慣性力算出部208の出力とを用いる。
本実施形態では、制御量算出部212は、まず、支持力作用点307を車両重心302からずらしている影響度を、慣性力および重力それぞれについて算出する。算出手法の概要を、図9を用いて説明する。
まず、図9に示すように、ホイールローダ100の車体を基準とした車体水平面(図9中のx−y平面)内において、車両重心および支持力作用点それぞれの射影501、507を結ぶ方向の単位ベクトルを定義する。そして、慣性力503、重力504それぞれの単位ベクトル方向の成分の大きさを算出し、それを影響度とする。具体的には、単位ベクトルと慣性力503、重力504それぞれの内積で得られるスカラ値が前述の影響度である。
そして、制御量算出部212は、慣性力の影響度と重力の影響度とを比較し、影響度の大きい方を優先的に低減させるよう制御を行う。
まず、慣性力の低減手法について説明する。慣性力の低減手法は、慣性力を発生させている主な力が、遠心力であるか、加速度であるかによって異なる。
慣性力を発生させている主な力が遠心力である場合、遠心力を低減させるため、車体速度を低減する、または、旋回半径を大きくする。
車体速度は、エンジン出力を絞って駆動力を低減したりブレーキを作動させて制動力を増加させたりすることにより、低減できる。従って、この場合、制御量算出部212は、駆動力制御部214に制御量を制御指令として出力する。
制御量は、支持力作用点307が支持範囲305に収まるよう算出する。まず、支持力作用点307の射影507が、支持範囲305内に収まる慣性力503の大きさを算出する。そして、それを実現する車体速度を目標速度として算出する。制御量は、現在速度と目標速度との差分として得られる。なお、現在速度は、車体速度検出センサ205の検出値を、慣性力算出部208を介して取得する。
旋回半径を大きくするためには、車体屈曲角を低減させる。この場合、制御量算出部212は、車体屈曲角制御部213に、制御量を制御指令として出力する。制御量は、支持力作用点307が支持範囲305に収まるよう算出する。上記車体速度と同様に、現在旋回半径と目標旋回半径との差分を、制御量として算出する。なお、現在の旋回半径算出の基となる車体屈曲角は、車体屈曲角検出センサ204の検出値を、慣性力算出部208を介して取得する。
なお、式(1)で示すように、遠心力は速度の自乗に比例し、旋回半径に反比例する。従って、この場合、車体速度の低減を優先させることが望ましい。
慣性力が加減速度である場合、制駆動力による加減速を制限する。これが適用される状況としては、例えば急な下り坂を制動しながら降坂する場合などである。この場合、制御量算出部212は、駆動力制御部214に制御量を制御指令として出力する。制御量は、支持力作用点307が支持範囲305に収まるよう、上述の手法で算出する。
一方、重力の影響度が慣性力の影響度より小さい場合は、車体傾斜角の影響を低減するための制御を実施する。
この場合、車体傾斜角の影響を低減するため、車体の方向を最大傾斜方向に向け、車両左右方向の勾配を小さくする。これを実現するためには、例えば、重力504の向きと逆方向に車体を屈曲させる。従って、制御量算出部212は、車体屈曲角制御部213に、制御量を制御指令として出力する。制御量は、支持力作用点307が支持範囲305に収まるよう算出する。この時用いる、現在の車体傾斜角は、車体傾斜角検出センサ206から取得する。
以上説明したように、本実施形態によれば、当該ホイールローダ100の駆動を制御する駆動力制御部214と、前記屈曲角を制御する車体屈曲角制御部213と、当該ホイールローダ100の駆動力および屈曲角を制御する制御量算出部212と、をさらに備え、前記制御量算出部212は、前記判定結果に応じて、前記支持力作用点が前記支持範囲内の所定の領域内になるよう前記駆動力および前記屈曲角の少なくとも一方を制御する。
このように、本実施形態によれば、横転可能性の判定を行った結果、その可能性が高いと判定された場合、慣性力と重力との合力である支持力の作用点が支持範囲305の内側になる方向に駆動力と車体屈曲角との少なくとも一方を変更する。
例えば、遠心力は、旋回走行により旋回中心から離れる向きに生じる慣性力である。また、遠心力の大きさは、車体速度の自乗に比例し、旋回半径に反比例する。この遠心力によって支持力作用点が支持範囲の外側に移動している場合、第一の対処として車体速度を低下させる。この場合、駆動力を低下させるか負の値にする(制動力を発生する)。また、第二の対処として旋回半径を大きくする。この場合、車体屈曲角を小さくすることで、横転危険性を減少させる。
さらに、車体傾斜角が過大であるために支持力作用点307が支持範囲305の外側に移動している場合、それが許容範囲内になるように車体屈曲角を変更して車体の向きを変える。
このように、本実施形態によれば、車体慣性力と車体傾斜角に基づいて駆動力と車体屈曲角との変更を行うことにより、的確かつ効果的に横転可能性を低減できる。
また、本実施形態では、判定部211は、さらに報知部215に判定結果を出力してもよい。この場合、上記制御がなされるとともに、警報も出力される。判定結果の段階、制御内容に応じて、異なる態様で警報が出力されるよう構成してもよい。
第三、第四の実施形態は、第二の実施形態と組み合わせる場合を例にあげて説明したが、これに限定されない。例えば、第一の実施形態と組み合わせてもよい。
さらに、第四の実施形態は、第三の実施形態と組み合わせてもよい。この場合、支持作用点が、支持範囲305、第二の範囲620、および第一の範囲610のいずれかの範囲外となった場合、上記制御を実施する。
以上、図面を用いて本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。