上述した通り、本発明のトナーは、ビニル樹脂、非晶性ポリエステル、着色剤を含有するトナー母粒子を有するトナーであって、該トナー断面において、マトリクス−ドメイン構造が観察され、該非晶性ポリエステルがドメインを形成していて、該ドメインがトナー表面近傍により存在していることに加えて、該トナー母粒子の理論比表面積Aと実際の比表面積Bが特定の範囲に調整したトナーであることを特徴とする。
本発明が上記課題を解決した理由について本発明者等は以下のように考えている。
まず、本発明の課題を解決するうえで、ビニル樹脂中に非晶性ポリエステルを有し、且つ、ビニル樹脂に非晶性ポリエステルが複数のドメインを有することが重要である。
ビニル樹脂は、例えば、トナーの剛性を制御しやすく、トナーの機械的な耐ストレス性を向上させやすい樹脂である。また、非晶性ポリエステルは特定の温度領域で溶融する部位を容易に導入しやすいため、モノマー構成を変えることなどでトナーの溶融特性を改善しやすい傾向がある。
つまり、上記のマトリクス−ドメイン構造とすることで、トナーに耐ストレス性と定着性の両方の特性を持たせることが可能となる。
また、平滑性の低いメディアにおいて細線の様なトナーが密に存在しない画像を出力する場合には、トナーを紙の凹凸に関係なくきちんとメディアに転写できるような優れた帯電均一性と熱と圧のかかりにくい凹部においてもトナー間の優れた溶融接着性が必須である。
そこで本発明では溶融接着性においては、前述した非晶性ポリエステルのドメインの存在状態を表面近傍に存在させることで熱溶融性を促進させると共に、トナー自体の凹凸性を制御することでトナーの帯電分布を均一化させ、上記課題を解決した。
水系媒体中でトナー母粒子を生成する、例えば懸濁重合法よるトナー母粒子の生成を考えると、重合性単量体組成物は造粒工程において合一、剪断、合一を繰り返す。この二つの現象の中で、剪断が合一に比べて起きやすい状況になると、非晶性ポリエステルがドメイン形状として、トナー液滴の表面近傍に存在することで、液滴が不安定化しやすくなり、微小粒子の生成や液滴自体が不安定になりやすい。結果として、トナー粒径の表面に極微細な凹凸が形成される。
本発明では、トナー母粒子表面をビニル樹脂との親和性の高い極性樹脂で均一に覆うことで微細な凹凸を抑制することが必要である。さらに、該極性樹脂と該非晶性ポリエステルの水相に対する界面張力を制御することで造粒時における該非晶性ポリエステルのトナー間又はトナー内部でのバラツキを抑制しやすくできる。そのため、造粒工程における重合性単量体組成物で形成される油滴の剪断と合一のバランスをある程度制御することができるため、微小粒子の発生やトナーの不安定化を抑制しやすくなり、表面の凹凸を抑制できたと考えている。
トナー間の溶融時の接着性を高める観点から非晶性ポリエステルのドメインが、断面の輪郭から、輪郭と断面の中心点間の距離の25%以内に、該ドメインの総面積を基準として、30面積%以上70面積%以下存在していることが必要である。
トナー断面の輪郭から、輪郭と断面の中心点間の距離の25%以内に存在する非晶性ポリエステルのドメインの面積割合(以下、「25%面積率」ともいう)は溶融時のトナーの溶融変形に相関性が高いパラメータであり、高ければ溶融時のトナー間又はトナーと紙間の接着力が高まる。
25%面積率が30面積%以上であると、上述した溶融時における凹部でのトナー間、トナーと紙間の接着力が上昇傾向であり細線の再現性が高まる。また、70面積%以下であると表層の非晶性ポリエステルの割合を所望の範囲に制御できるためトナーの脆性性や帯電性を維持しやすく、特に高湿環境下で顕著になりやすい傾向がある。なお、上記効果をさらに良化させる観点から25%面積率は好ましくは45面積%以上70面積%である。
次に非晶性ポリエステルとしてはトナーに加熱変形の容易さから、非晶性ポリエステルの軟化点が85℃以上105℃以下であることが重要である。非晶性ポリエステルの軟化点が85℃以上であるとトナーの脆性が維持しやすく、トナーの割れ欠けが発生しにくくなり、長期に渡る画像印字に対して安定して細線の再現性が得られやすい傾向がある。また、軟化点が105℃以下であると、熱による溶融変形しやすいため、凹部でのトナー間の接着力が向上しやすく、平滑性の低い紙での細線の再現性が得られやすい傾向がある。
非晶性ポリエステルの軟化点を本発明の好ましい範囲に制御する手段としては、炭素数8以上14以下の直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するモノマーユニットと、ジアルコールに由来するモノマーユニットを有し、炭素数8以上14以下の直鎖脂肪族ジカルボン酸由来するモノマーユニットの含有割合が、非晶性ポリエステルのカルボン酸由来の全モノマーユニットに対して10mol%以上50mol%以下を用いることが好ましい。
また、本発明のトナーは、トナー母粒子の個数基準の粒度分布、真密度から得られる理論比表面積A(m2/g)と、BET法によって測定される比表面積B(m2/g)が以下の式(1)、(2)を満たすことが必須である。
0.450≦B≦1.500・・・(1)
1.00≦B/A≦1.26・・・(2)
この、B/A(以後、表面凹凸指数と呼ぶ)は、BET多点法によって測定されるBET比表面積から算出された値の為、ナノメートルオーダーの極微細な凹凸形状を数値化した値である。理論比表面積Aは、粒子すべてが真球であった場合の数値である。したがって、表面凹凸指数が1.00から乖離するほど、粒子表面に凹凸が形成されていることになる。本発明者らが検討したところ、この極微細な凹凸の発生をトナー母粒子表面から抑制することによって、トナー母粒子に均一な帯電性を付与することができるため、平滑性の低いメディアにおいても、高精度で転写しやすい傾向が得られるため、細線の高再現性が得られやすい傾向がある。
Bが0.450以上であると粒径を大粒径にせずに、ある程度の範囲に制御でき、表面凹凸指数を上記範囲内に制御しやすい傾向がある。また帯電も維持しやすいため、上述した細線再現性が得られやすい傾向がある。また、Bが1.500以下であると粒径を小粒径せず維持できるため、帯電分布がシャープ化しやすくなるため紙に対して均一にトナーを転写しやすくなるため、細線再現性が得られやすい傾向がある。
また、表面凹凸指数に関して理想とする状態としては極微細な凹凸が極少である1.00に近い状態が最も好ましい。
なお、本発明に必要とされる表面凹凸指数としては1.26以下である。1.26以下であると微細な凹凸を抑制できているため、帯電性を均一にしやすい傾向があり、平滑性の低いメディアに対するドットが再現性しやすい傾向があり、細線の再現性が得られやすい傾向がある。なお、表面凹凸指数として好ましくは1.00以上1.19以下であると高湿環境においても安定した均一帯電性が得られやすい傾向がある。
表面凹凸指数を上記範囲とするためには、マトリクスを形成しているビニル樹脂と親和性の高い材料を表面近傍に存在させることが好ましく、トナー母粒子の帯電性を考慮すると極性樹脂がビニル樹脂の表面に存在していることが好ましい。
また、極性樹脂と非晶性ポリエステルのリン酸三カルシウム水溶液中における界面張力を制御することや、トナー母粒子の加熱工程など、例えば懸濁重合法における蒸留工程の制御をすることで表面凹凸指数を制御することが好ましい。
また、BET法によって測定される比表面積Bに関しては、トナー母粒子径の制御や粒子の微細な凹凸度合いによって調整することが好ましい。
以下、本発明のトナーに関して、好ましい形態について説明する。
上述した通り、本発明のトナーはビニル樹脂と非晶性ポリエステルを含有する。
ビニル樹脂としては、以下のものが挙げられる。
ポリスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の単重合体;
スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−アクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体;
ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂を用いることができ、これらは単独で又は複数種を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、特にスチレン系共重合体、さらにはスチレン−アクリル酸ブチル共重合体が、現像特性、定着性の制御のしやすさといった観点で好ましい。
本発明のトナーに用いることができる非晶性ポリエステルは任意のジカルボン酸とジアルコールの縮合体を利用できるが、低温定着性と種々の環境における帯電安定性を両立させる観点からトナー中の非晶性ポリエステルの存在状態を任意の範囲に制御することが好ましい。
具体的には、上述した通り、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察されるトナー断面において、マトリクス−ドメイン構造が観察され、ビニル樹脂がマトリクスを形成し、非晶性ポリエステルが複数のドメインを形成しており、25%面積率が30面積%以上70面積%以下存在していることが好ましい。
次に、非晶性ポリエステルのドメインが、該断面の輪郭から、該輪郭と該断面の中心点間の距離の50%以内に、ドメインの総面積を基準として、80面積%以上100面積%以下存在していることが好ましい。より好ましくは、90面積%以上100面積%以下である。
トナー断面の輪郭から、輪郭と断面の中心点間の距離の50%以内に存在する非晶性ポリエステルのドメインの面積割合(以下、「50%面積率」ともいう)が、80面積%以上であると、定着時に瞬時に溶融できるため、低温定着性や凹部での細線再現性が良好になりやすい。また、ドメインが80面積%以上存在するということは、トナーの中心点からトナー断面の輪郭の50%までの領域にドメインの存在量が20面積%以下と言い換えることができる。このような状態であると、長期使用時での脆性を維持しやすく、長期使用に置いても良好な細線再現性が得られやすい。また、非晶性ポリエステル成分によって形成された該ドメインは、ドメイン径が0.3μm以上3.0μm以下であることが好ましく、0.3μm以上2.0μm以下であることがより好ましい。
非晶性ポリエステルのドメインの個数平均径が、0.3μm以上である場合、定着時に溶融した際に紙やトナー間の接着力が向上し、細線再現性をより向上しやすくなる。
一方、非晶性ポリエステルのドメインの個数平均径が、3.0μm以下である場合、トナー母粒子内での非晶性ポリエステルのドメインの存在状態を制御しやすくなる。また、トナー母粒子間における、非晶性ポリエステルのドメインのバラつきも低減できるようになる。そのため、細線再現性をより向上しやすくなる。
トナー表面近傍に非晶性ポリエステルのドメインを形成し、非晶性ポリエステルのドメインの個数平均径を制御するための手法として、非晶性ポリエステルの酸価の調整、非晶性ポリエステルの分子鎖末端に親油性部位の付与、非晶性ポリエステル及びトナーの軟化点の調整、並びに、トナー母粒子の製造条件の調整が挙げられる。
非晶性ポリエステルの含有量は、ビニル樹脂100質量部に対して5.0質量部以上30.0質量部以下が好ましい。5.0質量部以上であると、ビニル樹脂中でのドメイン状態を制御しやすく、表層近傍に分布させることができれば、溶融時の表層近傍の溶融効果を発揮しやすく、低温定着性が良化傾向となる。また、30.0質量部以下であると、脆性向上につながりやすい。
さらに、非晶性ポリエステルは、スチレン/ブチルアクリレート=80/20(質量比)に溶解させた該非晶性ポリエステルのpH6.0のリン酸三カルシウム水溶液中での界面張力C(mN/m)と非晶性ポリエステルを極性樹脂に変更して測定した界面張力D(mN/m)が
13≦C−D≦25・・・(4)
であることが、トナー母粒子表面の極微細な凹凸形状を制御するといった観点で好ましい。
前述した通り、水系媒体中でトナー母粒子を生成する例えば懸濁重合法よるトナー母粒子の生成を考えると、重合性単量体組成物は造粒工程において合一、剪断、合一を繰り返す。この二つの現象の中で、剪断が合一に比べて起きやすい状況になると、非晶性ポリエステルがドメイン形状として、トナー液滴の表面近傍に存在することで、液滴が不安定化しやすくなり、微小粒子の生成や液滴自体が不安定になりやすい。結果として、トナー粒径の表面がゴツゴツとした粒子が形成される。理由は定かではないが、該非晶性ポリエステルのスチレン/ブチルアクリレート=80/20(質量比)に溶解させた該非晶性ポリエステルのpH6.0のリン酸三カルシウム水溶液中での界面張力Cと該非晶性ポリエステルを極性樹脂に変更して測定した界面張力Dの差が13mN/m以上25mN/m以下であると、トナー母粒子表面を極性樹脂で均一に覆いつつ、非晶性ポリエステルのトナー間又はトナー内部でのバラツキを抑制させることができる。そのため造粒工程における重合性単量体組成物で形成される油滴の剪断と合一のバランスを制御することができるため、微小粒子の発生やトナーの不安定化を抑制することができると考えている。
非晶性ポリエステルは、容易に分子鎖中に特定の部位を導入することができるため、上記界面張力の関係を制御する手法としては、非晶性ポリエステルとしては鎖中の分子鎖構造や組成比を変更させることや、末端構造を変更させることが好ましい。また、極性樹脂に関しては後述するが、極性樹脂中の極性部位により制御することが可能である。
したがって、非晶性ポリエステルとしてはトナー母粒子の表面凹凸指数の制御、脆性及び低温定着性の観点から、炭素数8以上14以下の直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するモノマーユニットと、ジアルコールに由来するモノマーユニットを有し、炭素数8以上14以下の直鎖脂肪族ジカルボン酸由来するモノマーユニットの含有割合が、非晶性ポリエステルのカルボン酸由来の全モノマーユニットに対して10mol%以上50mol%以下であることが好ましい。
炭素数が8以上であると界面張力Cの値を所望の範囲に制御しやすく、また、疑似結晶状態のような構造を有しやすい。そのため、表面の凹凸を抑制しつつも、樹脂が可塑しやすい傾向となるため細線再現性が良化しやすい。また、炭素数が14以下であると界面張力Cの値を所望の範囲に制御しやすく、また、非晶性ポリエステルのピーク分子量を高くした状態で、非晶性ポリエステルの軟化点を低下させやすいため、樹脂としての耐久性を維持しつつも定着時の可塑を向上しやすく、トナー表面の凹凸性を抑制することが可能である。
次に、該非晶性ポリエステルは直鎖脂肪族ジカルボン酸を全カルボン酸成分に対して10mol%以上50mol%以下含有したカルボン酸成分を有することが好ましい。直鎖脂肪族ジカルボン酸を全カルボン酸成分に対して10mol%以上であると、軟化点を低下しやすくなるため好ましい。また、直鎖脂肪族ジカルボン酸が全カルボン酸成分に対して50mol%以下であると、非晶性ポリエステルのピーク分子量を低下させにくいため、トナーの耐久性向上をするといった観点で好ましい。
非晶性ポリエステルを得るためのカルボン酸成分としては、炭素数8以上14以下の直鎖脂肪族ジカルボン酸とその他のカルボン酸が挙げられる。炭素数8以上14以下の直鎖脂肪族ジカルボン酸としては、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸などが挙げられる。炭素数8以上14以下の直鎖脂肪族ジカルボン酸以外のカルボン酸としては、下記のものが挙げられる。2価のカルボン酸成分としては、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、グルタル酸、n−ドデセニルコハク酸、及びこれらの酸の無水物、もしくは低級アルキルエステル等が挙げられる。3価以上の多価カルボン酸成分としては、例えば1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸及びこれらの酸無水物、低級アルキルエステル等が挙げられる。これらの中で、テレフタル酸がピーク分子量を高く維持でき、耐久性を維持しやすくなるため好ましく用いられる。
非晶性ポリエステルを得るためのアルコール成分としては、例えば、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物及びビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物が挙げられ、それ以外のアルコールとして下記のものが挙げられる。2価のアルコール成分としては、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等が挙げられる。3価以上のアルコール成分としては、ソルビトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。上記2価のアルコール成分及び3価以上の多価アルコール成分は、単独で、又は複数の化合物を組み合わせて用いることができる。この中で、アルコール成分として、ビスフェノールA由来のアルコール成分が、トナー中の存在状態制御のしやすさといった観点で好ましく用いられる。
非晶性ポリエステルは、上記のアルコール成分及びカルボン酸成分を用いて、エステル化反応、又はエステル交換反応によって製造することができる。重縮合の際には、反応を促進させるため、酸化ジブチル錫等の公知のエステル化触媒等を適宜使用してもよい。
非晶性ポリエステル樹脂の原料モノマーであるアルコール成分とカルボン酸成分とのモル比(カルボン酸成分/アルコール成分)は、0.60以上1.00以下であることが好ましい。
非晶性ポリエステルの製造方法は、特に限定されることなく、上記の各単量体等を用いて、エステル化反応、又はエステル交換反応によって製造することができる。原料モノマーを重合させる際には、反応を促進させるため、酸化ジブチル錫等の通常使用されているエステル化触媒等を適宜使用してもよい。
非晶性ポリエステルのガラス転移温度(Tg)は、定着性及び脆性の観点から45℃以上75℃以下であることが好ましい。
非晶性ポリエステルのピーク分子量(Mp(P))は、8000以上13000以下であることが好ましい。ピーク分子量(Mp(P))が8000以上であると、長期使用時でのトナーの割れやつぶれを抑制しやすくなる。また、ピーク分子量(Mp(P))が13000以下であると、熱による溶融が瞬時に起きるようになるため、紙上にトナー層を十分に接着させることができる。
非晶性ポリエステルの酸価AvAは後述する極性樹脂の酸価AvBに比べて低いことが好ましい。また、AvAは1.0mgKOH/g以上10.0mgKOH/g以下であることが好ましく、3.0mgKOH/g以上8.0mgKOH/g以下であるとより好ましい。上記範囲であると、極性樹脂のシェル形成を阻害することなく、トナー母粒子表面近傍に存在しやすくなりやすい。
次に、非晶性ポリエステルの水酸基価OHvが40.0mgKOH/g以下であることが好ましい。例えば、トナーを懸濁重合法で得る場合、非晶性ポリエステルの水酸基価OHvが40.0mgKOH/g以下であると、トナー表面近傍に非晶性ポリエステルが複数のドメインを形成しやすくなるため好ましい。
非晶性ポリエステルの酸価Avを1.0mgKOH/g以上10.0mgKOH/g以下で、かつ水酸基価OHvを40.0mgKOH/g以下に制御するためには、非晶性ポリエステルの分子鎖の末端に親油性部位を持たせることが好ましい。
非晶性ポリエステルの分子鎖の末端が親油性部位を有することで、ビニル樹脂と相互作用しやすくなるため、ドメインの大きさを制御しやすくなる。
非晶性ポリエステルは、酸価や水酸基価の調整及び、該界面張力Cの制御の観点から、非晶性ポリエステルの末端にアルキル部位を有するほうが好ましい。
また、非晶性ポリエステルの末端には、炭素数のピーク値が25以上102以下の脂肪族モノカルボン酸及び炭素数のピーク値が25以上102以下の脂肪族モノアルコールの少なくともいずれか(以下、これら2つを総称して「長鎖モノマー」ともいう)に由来する構造を末端に有することが好ましい、これら長鎖モノマーは、末端に縮合していることが好ましい。具体的には、長鎖モノマーが結合する前の非晶性ポリエステルの末端に、カルボキシル基が存在する場合には、モノアルコールとの縮合反応が起こり結合が生じる。また、長鎖モノマーが結合する前の非晶性ポリエステルの末端に、ヒドロキシ基が存在する場合には、モノカルボン酸との縮合反応が起こり結合が生じる。ここで“炭素数のピーク値”とは、長鎖モノマーのメインピーク分子量から算出される炭素数のことである。
また、ここで、「末端」とは、非晶性ポリエステルが分岐鎖を有している場合は、その分岐鎖の末端も含む。本発明において、非晶性ポリエステルが分岐鎖を有しており、該分岐鎖の末端に縮合した形態は好ましい態様の一つである。
非晶性ポリエステルの末端に長鎖モノマーを結合することで、非晶性ポリエステルの末端にアルキル部位を導入することができる。その結果、該アルキル部位が折りたたみやすい構造をとることで、非晶性ポリエステルも疑似結晶化状態をとるためドメインを形成しやすくなると推測される。さらに、該非晶性ポリエステルの上述した界面張力Cの制御が容易となり表面凹凸指数を制御しやすくなる傾向がある。
また、非晶性ポリエステルの軟化点や界面張力Cの制御の観点から上記脂肪族モノカルボン酸、及び、脂肪族モノアルコールの炭素数のピーク値が、25以上102以下が好ましい。
長鎖モノマーの合計の含有割合は、該非晶性ポリエステルの酸価の調整や界面張力の観点から全モノマーユニットを基準として、2.0mol%以上10.0mol%以下であると好ましい。
なお、長鎖モノマーは、工業的には原料となる脂肪族炭化水素をアルコール又は酸変性することで得られる。例えば、アルコール変性品に関しては、炭素数が27以上102以下の脂肪族炭化水素を、硼酸、無水硼酸、もしくはメタ硼酸の如き触媒の存在下に分子状酸素含有ガスで液相酸化することによりアルコールに転化できることが知られている。使用される触媒添加量は、原料脂肪族炭化水素1molに対して0.01mol以上0.5mol以下が好ましい。
反応系に吹き込む分子状酸素含有ガスとしては、酸素、空気またはそれらを不活性ガスで希釈した広範囲のものが使用可能であるが、酸素濃度3%以上20%以下が好ましい。また、反応温度は、100℃以上200℃以下である。
また、長鎖モノマーをアルコール又は酸で変性した際には、各々の未変性成分も発生する場合がある。この未変性成分により帯電量が低下することを防ぐため、脂肪族炭化水素成分の変性率の好ましい範囲は、85%以上であり、より好ましくは90%以上である。反応条件の最適化や、変性反応後に精製作業を行うことで、未変性の脂肪族炭化水素成分を除去し、変性率を制御することができる。
トナー母粒子には、必要に応じて、帯電特性向上のために荷電制御剤を含有させてもよい。荷電制御剤としては各種のものが利用できるが、帯電スピードが速く、かつ、一定の帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が特に好ましい。さらに、トナーを後述するような懸濁重合法を用いて製造する場合には、重合阻害性が低く、水系分散媒体への可溶化物が実質的にない荷電制御剤が特に好ましい。
荷電制御剤としては、
サリチル酸、アルキルサリチル酸、ジアルキルサリチル酸、ナフトエ酸、ダイカルボン酸などの芳香族カルボン酸の金属化合物;
アゾ染料又はアゾ顔料の金属塩又は金属錯体;
スルホン酸又はカルボン酸基を側鎖に持つ高分子型化合物;
ホウ素化合物;
尿素化合物;
ケイ素化合物;
カリックスアレーン
などが挙げられる。
なお、懸濁重合法によりトナーを製造する際に、荷電制御剤としてスルホン酸又はカルボン酸基を側鎖に持つ高分子型化合物(以下、極性樹脂ともいう)を用いると、種類及び酸価などの極性を調整することで、様々な構造を有するトナー母粒子を形成することが可能であるためより好ましい。例えば、極性樹脂の酸価を非晶性ポリエステルの酸価よりも高く調製することで、トナー母粒子に極性樹脂による薄層のシェルを形成しながらも非晶性ポリエステルのドメインを表層近傍に形成することができる。その結果、トナー母粒子に優れた帯電性と低熱量での溶融特性を付与することができる。
また、前述した通り、トナー母粒子の表面凹凸指数を所望の範囲にするためには非晶性ポリエステルの界面張力Cと非晶性ポリエステルを極性樹脂に変更して測定した界面張力Dの差が13mN/m以上25mN/m以下にすることが好ましい。
上述の範囲に調整することで懸濁重合法における造粒時での微小粒子の発生やトナー液滴の不安定化を抑制することができ、表面凹凸指数を低下させることができる。
さらに、極性樹脂はビニル重合体であると、トナー母粒子表面をより均一に覆うことができ、帯電性が均一になりやすいため好ましい。
ビニル重合体においては、スチレン共重合体がより好ましい。スチレン共重合体を形成するために、スチレンモノマーと共に用いられる重合性単量体としては、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドのような二重結合を有するモノカルボン酸もしくはその置換体;マレイン酸、マレイン酸ブチル、マレイン酸メチル、マレイン酸ジメチルのような二重結合を有するジカルボン酸及びその置換体;塩化ビニル、酢酸ビニル、安息香酸ビニルのようなビニルエステル;エチレン、プロピレン、ブチレンのようなエチレン系オレフィン;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトンの如きビニルケトン;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルの如きビニルエーテル;スチレンスルホン酸のようなスルホン酸基含有モノマーが挙げられる。
また、極性樹脂に架橋剤を添加することも可能である。架橋剤としては、2個以上の重合可能な二重結合を有する化合物が用いられる。例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンのような芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレートのような二重結合を2個有するカルボン酸エステル;ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホンの如きジビニル化合物;3個以上のビニル基を有する化合物が挙げられる。これらの架橋剤は、単独もしくは混合物として用いることができる。
極性樹脂の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、0.10質量部以上10.0質量部以下が好ましく、より好ましくは0.10質量部以上3.0質量部以下である。
0.10質量部以上含有することでトナー母粒子表面の凹凸性が制御しやすくなると共に、優れた帯電性を付与できるため、多様な環境において長期使用を通じて優れた帯電安定性を得られるため、細線再現性が優れる。また、3.0質量部以下含有することで低温低湿の環境においてもチャージアップを抑制しつつ、優れた帯電安定性を得ることができる。
また、前述した通り、極性樹脂の酸価AvB(mgKOH/g)は非晶性ポリエステルの酸価AvA(mgKOH/g)よりも高く調製することが好ましい。例えば、水系媒体で製造されるトナーにおいて、極性樹脂をよりトナーの表面に均一に存在させやすくなるため好ましい。また、極性樹脂の酸価AvBは好ましくは5.0mgKOH/g以上20.0mgKOH/g以下であり、より好ましくは10.0mgKOH/g以上20.0mgKOH/g以下である。上記範囲内であると、シェルとしての遮蔽性が高まるため帯電性が安定しやすい。
次に、離型剤について説明する。離型剤としては、離型性と可塑性を付与する目的のワックスであれば公知のワックスを用いることができる。
例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムなどの石油系ワックス及びその誘導体;
モンタンワックス及びその誘導体;
フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体;
ポリエチレンなどのポリオレフィンワックス及びその誘導体;
カルナバワックス、キャンデリラワックスなどの天然ワックス及びその誘導体などが挙げられる。誘導体には、酸化物や、ビニルモノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物が含まれる。また、高級脂肪族アルコール、ステアリン酸、パルミチン酸などの脂肪酸、酸アミドワックス、エステルワックス、硬化ヒマシ油およびその誘導体、植物系ワックス、動物性ワックスなども使用できる。
これらのワックスの中では、ビニル樹脂との相溶性や離型性の観点から、パラフィンワックスが好ましく用いられる。
離型剤の含有量は、ビニル樹脂100質量部に対して、1.0質量部以上30.0質量部以下であることが好ましく、3.0質量部以上25.0質量部以下であることがより好ましい。
次に、着色剤について説明する。黒色着色剤としては、カーボンブラック、磁性微粒子、並びに後述のイエロー、マゼンタ及びシアン着色剤を用い黒色に調色されたものが利用される。
一成分現像方式で磁性一成分現像を採用する場合には、マグネットローラを内包したトナー担持体に対して搬送性の高い磁性微粒子を黒色着色剤として使用することが好ましい。また、カートリッジ内のトナーをトナー担持体へと供給する供給ローラを省略する際にも、搬送性の高い磁性微粒子を黒色着色剤として使用することが好ましい。
また、外添剤の均一付着性と高い固着性を得るためには、比重の大きい磁性微粒子を用いた磁性トナーを用いることがより好ましい。この高い固着性が得られる理由を我々は以下のように推測している。
トナー母粒子に外添剤を付着させる方法としては、混合性やせん断力の観点から、撹拌翼等を用いた混合装置を用いることが好ましい。このような外添工程においては、主に処理される部分は撹拌翼近傍である。比重の大きい磁性トナーは、非磁性トナーに比べて撹拌翼近傍での外添処理時の負荷が大きく、より処理される確率が高くなると考えられる。したがって、磁性トナーは非磁性トナーに比して、より高い固着性を得ることができると考えている。
磁性微粒子は、四三酸化鉄やγ−酸化鉄などの磁性酸化鉄を主成分とするものであり、リン、コバルト、ニッケル、銅、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、珪素などの元素を含んでもよい。これら磁性微粒子は、窒素吸着法によるBET比表面積が2〜30m2/gであることが好ましく、3〜28m2/gであることがより好ましい。また、モース硬度が5〜7のものが好ましい。磁性微粒子の形状としては、多面体、8面体、6面体、球形、針状、鱗片状などがあるが、多面体、8面体、6面体、球形等の異方性の少ないものが、画像濃度を高める上で好ましい。
磁性微粒子は、個数平均粒径が0.10μm以上0.40μm以下であることが好ましい。個数平均粒径が0.10μm以上であると、磁性微粒子が凝集しにくくなり、トナー母粒子中での磁性微粒子の均一分散性が向上する。また個数平均粒径が0.40μm以下ではトナーの着色力が向上する。
なお、磁性微粒子の個数平均粒径は、透過型電子顕微鏡を用いて測定できる。具体的には、エポキシ樹脂中へ観察すべきトナーを十分に分散させた後、温度40℃の雰囲気中で2日間硬化させ得られた硬化物を得る。得られた硬化物をミクロトームにより薄片状のサンプルとして、透過型電子顕微鏡(TEM)において1万倍〜4万倍の拡大倍率の写真で視野中の100個の磁性微粒子径を測定する。そして、磁性微粒子の投影面積に等しい円の相当径を基に、個数平均粒径の算出を行う。また、画像解析装置により粒径を測定することも可能である。
磁性微粒子は、例えば下記の方法で製造することができる。第一鉄塩水溶液に、鉄成分に対して当量又は当量以上の水酸化ナトリウム等のアルカリを加え、水酸化第一鉄を含む水溶液を調製する。調製した水溶液のpHを7以上に維持しながら空気を吹き込み、水溶液を70℃以上に加温しながら水酸化第一鉄の酸化反応を行い、磁性酸化鉄粉体の芯となる種晶をまず生成する。
次に、種晶を含むスラリー状の液に前に加えたアルカリの添加量を基準として約1当量の硫酸第一鉄を含む水溶液を加える。液のpHを5〜10に維持しながら空気を吹き込みながら水酸化第一鉄の反応を進め、種晶を芯にして磁性酸化鉄粉体を成長させる。この時、任意のpH及び反応温度、撹拌条件を選択することにより、磁性微粒子の形状及び磁気特性をコントロールすることが可能である。酸化反応が進むにつれて液のpHは酸性側に移行していくが、液のpHは5未満にしない方が好ましい。このようにして得られた磁性微粒子を定法によりろ過、洗浄、乾燥することにより磁性微粒子を得ることができる。
また、懸濁重合法にてトナーを製造する場合、磁性微粒子表面を疎水化処理することがトナー中に磁性微粒子を内包化させやすいといった点で非常に好ましい。乾式にて表面処理をする場合、洗浄・ろ過・乾燥した磁性微粒子にカップリング剤処理を行う。湿式にて表面処理を行う場合、酸化反応終了後、乾燥させたものを再分散させる、又は酸化反応終了後、洗浄、濾過して得られた酸化鉄体を乾燥せずに別の水系媒体中に再分散させ、カップリング処理を行う。具体的には、再分散液を十分撹拌しながらシランカップリング剤を添加し、加水分解後温度を上げる、又は、加水分解後に分散液のpHをアルカリ域に調整することでカップリング処理を行う。この中でも、均一な表面処理を行うという観点から、酸化反応終了後、ろ過、洗浄後に乾燥させずそのままリスラリー化し、表面処理を行うことが好ましい。
磁性微粒子の表面処理を湿式で、すなわち水系媒体中において磁性微粒子をカップリング剤で処理するには、まず水系媒体中で磁性微粒子を一次粒径となるよう十分に分散させ、沈降、凝集しないように撹拌羽根等で撹拌する。次いで上記分散液に任意量のカップリング剤を投入し、カップリング剤を加水分解しながら表面処理するが、この時も撹拌を行いつつピンミル、ラインミルなどの装置を使いながら凝集しないように十分に分散させつつ表面処理を行うことがより好ましい。
ここで、水系媒体とは、水を主要成分としている媒体である。具体的には、水そのもの、水に少量の界面活性剤を添加したもの、水にpH調整剤を添加したもの、水に有機溶剤を添加したものが挙げられる。界面活性剤としては、ポリビニルアルコールなどのノンイオン系界面活性剤が好ましい。界面活性剤は、水に対して0.1質量%以上5.0質量%以下添加することが好ましい。pH調整剤としては、塩酸等の無機酸が挙げられる。有機溶剤としてはアルコール類等が挙げられる。
本発明における磁性微粒子の表面処理において使用できるカップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤、シラン化合物、チタンカップリング剤等が挙げられる。より好ましく用いられるのはシランカップリング剤、シラン化合物であり、一般式(1)で示されるものである。
RmSiYn 一般式(1)
[式中、Rはアルコキシ基を示し、mは1〜3の整数を示し、Yはアルキル基、フェニル基、ビニル基、エポキシ基、アクリル基、メタクリル基などの官能基を示し、nは1〜3の整数を示す。但し、m+n=4である。]
一般式(1)で示されるシランカップリング剤、シラン化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
この中で、高い疎水性を磁性微粒子に付与するという観点では、下記一般式(2)で示されるアルキルトリアルコキシシランカップリング剤を用いることが好ましい。
CpH2p+1−Si−(OCqH2q+1)3 一般式(2)
[式中、pは2〜20の整数を示し、qは1〜3の整数を示す。]
上記式におけるpが2以上であると、磁性微粒子に疎水性を十分に付与しやすい。またpが20以下であると、疎水性が十分になり、磁性微粒子同士の合一も防ぐことができる。qが3以下であると、シランカップリング剤の反応性が良好であり、疎水化が十分に行われる。よって、式中のpが2〜20の整数(より好ましくは、3〜15の整数)を示し、qが1〜3の整数(より好ましくは、1又は2の整数)を示すアルキルトリアルコキシシランカップリング剤を使用することが好ましい。
上記シランカップリング剤を用いる場合、単独で処理する、又は複数の種類を併用して処理することが可能である。複数の種類を併用する場合、それぞれのカップリング剤で個別に処理してもよいし、同時に処理してもよい。
本発明では、磁性微粒子以外に他の着色剤を併用してもよい。併用し得る着色剤としては、上記した公知の染料及び顔料の他、磁性又は非磁性の無機化合物が挙げられる。具体的には、コバルト、ニッケルなどの強磁性金属粒子、又はこれらにクロム、マンガン、銅、亜鉛、アルミニウム、希土類元素などを加えた合金。ヘマタイトなどの粒子、チタンブラック、ニグロシン染料/顔料、カーボンブラック、フタロシアニン等が挙げられる。これらもまた、表面を処理して用いることが好ましい。
トナー母粒子中の磁性微粒子の含有量は、重合性単量体又はビニル樹脂100質量部に対し、好ましくは20質量部以上200質量部以下、より好ましくは40質量部以上150質量部以下である。
イエロー着色剤としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が挙げられる。具体的には、以下の、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、73、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、128、129、138、147、150、151、154、155、168、180、185、214が挙げられる。
マゼンタ着色剤としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が挙げられる。具体的には、以下の、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、238、254、269、C.I.ピグメントバイオレッド19が挙げられる。
シアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物が挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66が挙げられる。
これらの着色剤は、単独又は混合し更には固溶体の状態で用いることができる。着色剤は、色相角、彩度、明度、耐光性、OHP透明性、トナー母粒子中への分散性の点から選択される。着色剤の添加量は、ビニル樹脂を生成する重合性単量体又はビニル樹脂100質量部に対し1質量部以上20質量部以下が好ましい。
本発明において、トナー母粒子は、公知のいずれの方法によっても製造することが可能である。まず、粉砕法により製造する場合を説明する。
トナー母粒子を粉砕法により製造する場合は、例えば、ビニル樹脂、着色剤、離型剤、非晶性ポリエステル及び結晶性ポリエステルなどのトナーの成分並びにその他の添加剤をヘンシェルミキサ、ボールミルなどの混合機により十分混合する。その後、加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーのような熱混練機を用いて溶融混練して、上記材料を分散又は溶解させ、冷却固化させ、粉砕した後、分級し、必要に応じて表面処理を行って、トナー母粒子を得ることができる。分級及び表面処理の順序はどちらが先でもよい。分級工程においては、生産効率の観点から、多分割分級機を用いることが好ましい。
粉砕工程は、機械衝撃式、ジェット式などの各種の粉砕装置を用いた方法により、行うことができる。また、本発明に用いる好ましい円形度を有するトナー(トナー母粒子)を得るためには、さらに熱をかけて粉砕したり、補助的に機械的衝撃を加える処理を行ったりすることが好ましい。また、微粉砕(必要に応じて、分級)されたトナー母粒子を熱水中に分散させる湯浴法や、熱気流中を通過させる方法などを用いてもよい。
機械的衝撃力を加える方法としては、例えば、川崎重工社製のクリプトロンシステムやターボ工業社製のターボミルなどの機械衝撃式粉砕機を用いる方法が挙げられる。また、ホソカワミクロン社製のメカノフージョンシステムなどの装置が採用している方法のように、高速回転する羽根によりトナーをケーシングの内側に遠心力により押しつけ、トナーに機械的衝撃力を加える方法が挙げられる。
粉砕法により、ビニル樹脂と非晶性ポリエステルの分散状態を制御するには、非晶性ポリエステルを外添するなどの処理を行うことが好ましい。
トナー母粒子は、上述のように粉砕法によって製造することも可能であるが、この粉砕法で得られるトナー母粒子は一般的に不定形のものであり、規制部での流動性が低くなる傾向にある。また、先述のトナー母粒子中の樹脂の存在状態制御が達成しにくい。また例えば、磁性体を用いる場合には磁性体が表面に露出しやすくなるため、帯電安定性が低下し濃度低下が発生しやすくなる。そこで、本発明では、分散重合法、会合凝集法、溶解懸濁法、懸濁重合法など、水系媒体中でトナー母粒子を製造することが好ましく、それらの中でも、懸濁重合法がより好ましい。
懸濁重合法とは、重合性単量体および着色剤(さらに、必要に応じて、重合開始剤、架橋剤、荷電制御剤、その他の添加剤)を溶解または分散させて重合性単量体組成物を得る。その後、この重合性単量体組成物を連続相(例えば、水系媒体(必要に応じて、分散安定剤を含有させてもよい。))中に加える。そして、連続相中(水系媒体中)で重合性単量体組成物の粒子を形成し、該粒子に含有される重合性単量体を重合させる。こうすることによって、トナーを得る方法である。懸濁重合法で得られるトナー(以下「重合トナー」ともいう。)は、個々のトナー母粒子の形状がほぼ球形に揃っているため、規制部での流動性が向上しやすく、均一な摩擦帯電がしやすくなるため、画質が向上しやすくなる。
重合トナーの製造に用いる重合性単量体としては、以下のものが挙げられる。
重合性単量体としては、
スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−エチルスチレンなどのスチレン系単量体;
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニルなどのアクリル酸エステル類;
メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルなどのメタクリル酸エステル類;
などが挙げられる。その他、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドなども挙げられる。これらは単独でまたは複数種を組み合わせて用いることができる。
上述の重合性単量体の中でも、スチレンまたはスチレン誘導体、を単独でまたは複数種組み合わせて使用することが、トナーの現像特性および耐久性の観点から好ましい。
本発明に用いるトナーの重合法による製造において使用される重合開始剤としては、重合反応時における半減期が0.5時間以上30.0時間以下であるものが好ましい。また、重合性単量体100質量部に対して0.5質量部以上20.0質量部以下の添加量で用いて重合反応を行うと、トナーに望ましい強度と適当な溶融特性を与えることができる。
具体的な重合開始剤の例としては、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ系またはジアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレートなどの過酸化物系重合開始剤が挙げられる。
本発明に用いるトナーを重合法により製造する際は、架橋剤を添加してもよく、好ましい添加量としては、重合性単量体100質量部に対して0.01質量部以上5.00質量部以下である。
ここで架橋剤としては、主として2個以上の重合可能な二重結合を有する化合物が用いられ、例えば、
ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンなどのような芳香族ジビニル化合物;
エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレートなどのような二重結合を2個有するカルボン酸エステル;
ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホンなどのジビニル化合物;
3個以上のビニル基を有する化合物
が単独で、または2種以上の混合物として用いられる。
本発明に用いるトナーを重合法で製造する方法では、必要に応じて、上述のトナー組成物などを加えて、分散機によって均一に溶解または分散させて重合性単量体組成物を得る。分散機としては、ホモジナイザー、ボールミル、超音波分散機などが挙げられる。得られた重合性単量体組成物を、分散安定剤を含有する水系媒体中に懸濁する。このとき、高速撹拌機もしくは超音波分散機のような高速分散機を使用して一気に所望のトナーのサイズとする方が、得られるトナー母粒子の粒径がシャープになる。重合開始剤の添加時期としては、重合性単量体中に他の添加剤を添加するときに同時に加えてもよいし、水系媒体中に懸濁する直前に混合してもよい。また、造粒直後、重合反応を開始する前に重合開始剤を加えることもできる。
造粒後は、通常の撹拌機を用いて、粒子状態が維持されかつ粒子の浮遊・沈降が防止される程度の撹拌を行えば良い。
本発明に用いるトナーを製造する場合には、分散安定剤として各種の界面活性剤や有機分散剤・無機分散剤が使用できる。中でも無機分散剤は、有害な超微粉を生じにくく、その立体障害性により分散安定性を得ているので好ましく使用できる。こうした無機分散剤の例としては、燐酸三カルシウム、燐酸マグネシウム、燐酸アルミニウム、燐酸亜鉛、ヒドロキシアパタイトなどの燐酸多価金属塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの炭酸塩、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの無機塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの無機化合物が挙げられる。
これらの無機分散剤は、重合性単量体100質量部に対して0.2質量部以上20.0質量部以下を用いることが望ましい。また、上記分散安定剤は単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。さらに、界面活性剤を併用してもよい。
上記重合性単量体を重合する工程において、重合温度は40℃以上、一般的には50℃以上90℃以下の温度に設定される。この温度範囲で重合を行うと、内部に封じられるべき離型剤が相分離により析出して内包化がより完全となる。
本発明の好ましい非晶性ポリエステルのドメインを有したトナーを懸濁重合法で得るためには、以下の工程が重要である。
また、重合工程終了後、残存する未反応の重合性単量体を効率よく除去するため、及び表面凹凸指数を所望の範囲に調整するため、蒸留工程を実施することが好ましい。
該蒸留工程においては、トナーの結着樹脂のガラス転移温度以上の温度で実施することが好ましく、60℃以上100℃以下で行うことが好ましく、より好ましくは80℃以上100℃以下で行うことが好ましい。
また、蒸留工程の保持時間としては表面凹凸指数を所望の範囲に制御するためにはトナー母粒子の粗大が発生しない範囲で保持することが好ましい。好ましくは60分以上であり、より好ましくは120分以上である。
非晶性ポリエステルのドメインを形成させるためには、以下の工程を実施することが好ましい。
上記重合性単量体の重合を終了して着色粒子を得た後、着色粒子が水系媒体に分散した状態で、非晶性ポリエステルの軟化点近辺(軟化点〜軟化点+10℃)、具体的には100℃程度まで昇温させ、その温度で、30分以上保持することが好ましい。該保持時間は、60分以上であることがより好ましく、120分以上であることがさらに好ましい。該保持時間の上限は、製造効率の関係から24時間以下程度である。
また、先述したような非晶性ポリエステルの分散状態を達成するためには、その後の冷却工程で次のような操作を行うことが好ましい。具体的には、トナーのTg以下まで水系媒体を冷却速度5.00℃/分以上で冷却することが好ましく、冷却速度20℃/分以上で冷却することがより好ましく、冷却速度100℃/分以上で冷却することがさらに好ましい。冷却速度の上限は、特に制限されないが、好ましくは500℃/分以下である。
上記冷却速度で冷却した後に、その温度で30分以上保持することが好ましい。該保持時間は、60分以上であることがより好ましく、120分以上であることがさらに好ましい。該保持時間の上限は、製造効率の関係から24時間以下程度である。なお、Tg以下とは、TgからTg−5℃程度までを指す。
得られた重合体粒子を、濾過し、洗浄し、乾燥させることによりトナー母粒子が得られる。
このトナー母粒子をトナーとしてそのまま用いてもよいが、後述するような無機微粒子を外添して、トナー母粒子の表面に無機微粒子が付着したトナーとしてもよい。また、製造工程(無機微粒子の混合前)に分級工程を入れ、トナー母粒子中に含まれる粗粉や微粉をカットすることも可能である。
また、本発明のトナーには、流動化剤として、一次粒子の個数平均径が4nm以上80nm以下、より好ましくは6nmから40nmの無機微粒子がトナー母粒子に添加(外添)されていることが好ましい。さらに、一次粒子の個数平均径が80nm以上200nm以下の無機微粒子を併用することがより好ましい。外添することで、耐久を通してトナーの流動性が確保でき、均一且つ安定した摩擦帯電性が得られ、濃度が良化しやすくなる。無機微粒子は、トナーの流動性改良およびトナーの帯電均一化のために添加されるが、無機微粒子を疎水化処理するなどの処理によってトナーの帯電量の調整、環境安定性の向上などの機能を付与することも好ましい形態である。
本発明において、無機微粒子の一次粒子の個数平均径の測定法は、走査型電子顕微鏡により拡大撮影したトナーの写真を用いて行う。
本発明で用いられる無機微粒子としては、シリカ、酸化チタン、アルミナなどの微粒子が使用できる。シリカ微粒子としては、例えば、ケイ素ハロゲン化物の蒸気相酸化により生成されたいわゆる乾式法またはヒュームドシリカと称される乾式シリカ、および、水ガラスなどから製造されるいわゆる湿式シリカが挙げられる。
しかしながら、表面およびシリカ微粒子の内部にあるシラノール基が少なく、またNa2O、SO3 2-などの製造残滓の少ない乾式シリカの方が好ましい。また、乾式シリカにおいては、製造工程において、例えば、塩化アルミニウム、塩化チタンなど他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物とともに用いることによって、シリカと他の金属酸化物の複合微粒子を得ることも可能であり、それらも包含する。
無機微粒子の添加量は、トナー母粒子100質量部に対して0.1質量部以上3.0質量部以下であることが好ましい。無機微粒子の含有量は、蛍光X線分析を用い、標準試料から作成した検量線を用いて定量できる。
本発明において、無機微粒子は、疎水化処理されたものであることが、トナーの環境安定性を向上させることができるため好ましい。無機微粒子の疎水化処理に用いる処理剤としては、シリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シラン化合物、シランカップリング剤などが挙げられる。また、その他の有機ケイ素化合物、有機チタン化合物などの処理剤などが挙げられる。これらは、単独でまたは複数種を組み合わせて用いることができる。
上記処理剤の中でも、シリコーンオイルにより処理したものが好ましく、無機微粒子をシラン化合物で疎水化処理すると同時にまたは処理した後に、シリコーンオイルにより処理したものがより好ましい。このような無機微粒子の処理方法としては、例えば、第一段反応として、シラン化合物でシリル化反応を行い、シラノール基を化学結合により消失させた後、第二段反応としてシリコーンオイルにより、表面に疎水性の薄膜を形成することができる。
上記シリコーンオイルは、25℃における粘度が10mm2/s以上200,000mm2/s以下のもの好ましく、3,000mm2/s以上80,000mm2/s以下のものがより好ましい。
使用されるシリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、α−メチルスチレン変性シリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイルなどが特に好ましい。
無機微粒子をシリコーンオイルで処理する方法としては、例えば、シラン化合物で処理された無機微粒子とシリコーンオイルとをヘンシェルミキサなどの混合機を用いて直接混合する方法や、無機微粒子にシリコーンオイルを噴霧する方法が挙げられる。あるいは、適当な溶剤にシリコーンオイルを溶解または分散させた後、無機微粒子を加えて混合し、溶剤を除去する方法でもよい。無機微粒子の凝集体の生成が比較的少ない点で噴霧する方法がより好ましい。
シリコーンオイルの処理量は、無機微粒子100質量部に対し1質量部から40質量部、好ましくは3質量部から35質量部が好ましく、良好な疎水性が得られやすい。
本発明で用いられる無機微粒子は、トナーに良好な流動性を付与させるために、窒素吸着によるBET法で測定した比表面積が20m2/g以上350m2/g以下のものが好ましく、25m2/g以上300m2/g以下のものがより好ましい。比表面積は、BET法にしたがって、比表面積測定装置「ジェミニ2375 Ver.5.0」(島津製作所社製)を用いて試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて算出される。
本発明のトナーには、さらに他の添加剤、例えば、
フッ素樹脂粒子、ステアリン酸亜鉛粒子、ポリフッ化ビニリデン粒子のような滑剤粒子;
酸化セリウム粒子、炭化ケイ素粒子、チタン酸ストロンチウム粒子などの研磨剤;
酸化チタン粒子、酸化アルミニウム粒子などの流動性付与剤;
ケーキング防止剤;
逆極性の有機微粒子および無機微粒子を現像性向上剤として少量用いることもできる。これらの添加剤の表面を疎水化処理して用いることも可能である。
本発明のトナーを好ましく適用できる現像装置について図面を用いて詳細に説明する。
図1は、現像装置の一例を示す模式的断面図である。また、図2は、現像装置が組み込まれた画像形成装置の一例を示す模式的断面図である。
図1又は図2において、静電潜像が形成された像担持体である静電潜像担持体45は、矢印R1方向に回転される。トナー担持体47は矢印R2方向に回転することによって、トナー担持体47と静電潜像担持体45とが対向している現像領域にトナー57を搬送する。また、トナー担持体にはトナー供給部材48が接しており、矢印R3方向に回転することによって、トナー担持体表面にトナー57を供給している。
静電潜像担持体45の周囲には帯電ローラー46、転写部材(転写ローラー)50、定着器51、ピックアップローラー52等が設けられている。静電潜像担持体45は帯電ローラー46によって帯電される。そして、レーザー発生装置54によりレーザー光を静電潜像担持体45に照射することによって露光が行われ、目的の画像に対応した静電潜像が形成される。静電潜像担持体45上の静電潜像は現像器49内のトナーで現像されてトナー画像を得る。トナー画像は転写材を介して静電潜像担持体45に当接された転写部材(転写ローラー)50により転写材(紙)53上へ転写される。トナー画像を載せた転写材(紙)53は定着器51へ運ばれ転写材(紙)53上に定着される。
<トナーおよび非晶性ポリエステルの軟化点(Tm)の測定方法>
トナーおよび非晶性ポリエステルの軟化点の測定は、定荷重押し出し方式の細管式レオメータ「流動特性評価装置 フローテスターCFT−500D」(島津製作所社製)を用い、装置付属のマニュアルに従って行なう。本装置では、測定試料の上部からピストンによって一定荷重を加えつつ、シリンダに充填した測定試料を昇温させて溶融し、シリンダ底部のダイから溶融された測定試料を押し出し、この際のピストン降下量と温度との関係を示す流動曲線を得ることができる。
本発明においては、「流動特性評価装置 フローテスターCFT−500D」に付属のマニュアルに記載の「1/2法における溶融温度」を軟化点とする。尚、1/2法における溶融温度とは、次のようにして算出されたものである。まず、流出が終了した時点におけるピストンの降下量Smaxと、流出が開始した時点におけるピストンの降下量Sminとの差の1/2を求める(これをXとする。X=(Smax−Smin)/2)。そして、流動曲線においてピストンの降下量がXとSminの和となるときの流動曲線の温度が、1/2法における溶融温度である(流動曲線の模式図を図3に示す)。
測定試料は、約1.0gのトナーまたは非晶性ポリエステルを、25℃の環境下で、錠剤成型圧縮機(例えば、NT−100H、エヌピーエーシステム社製)を用いて約10MPaで、約60秒間圧縮成型し、直径約8mmの円柱状としたものを用いる。
CFT−500Dの測定条件は、以下の通りである。
試験モード:昇温法
開始温度:50℃
到達温度:200℃
測定間隔:1.0℃
昇温速度:4.0℃/min
ピストン断面積:1.000cm2
試験荷重(ピストン荷重):10.0kgf(0.9807MPa)
予熱時間:300秒
ダイの穴の直径:1.0mm
ダイの長さ:1.0mm
<トナーの重量平均粒径(D4)、個数平均粒径(D1)の測定方法>
トナーの重量平均粒径(D4)、個数平均粒径(D1)は、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いて、測定、解析を行ない、算出した。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量部となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
なお、測定、解析を行なう前に、以下のように専用ソフトの設定を行なった。
専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れる。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)ultisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行なう。そして、専用ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れ、この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス社製)の水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)電解水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行なう。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行ない、重量平均粒径(D4)、個数平均粒径(D1)を算出する。なお、専用ソフトでグラフ/個数%、グラフ/体積%とそれぞれ設定したときの、分析/個数統計値(算術平均)、分析/体積統計値(算術平均)画面の「算術径」がそれぞれ個数平均粒径(D1)、重量平均粒径(D4)である。
<トナー母粒子の真密度の測定方法>
トナー母粒子に外添剤が外添されているトナーにおいてトナー母粒子の真密度を測定する場合には、外添剤を取り除く必要があり、具体的な方法としては、後述する<表面凹凸指数B/Aの計算方法>にて記載している通りである。
トナー母粒子の真密度は、乾式自動密度計オートピクノメーター(ユアサアイオニクス社製)により測定した。条件は下記の通りである。
セル:SMセル(10ml)
サンプル量:約2.0g
この測定方法は、気相置換法に基づいて、固体・液体の真密度を測定するものである。液相置換法と同様、アルキメデスの原理に基づいているが、置換媒体としてガス(アルゴンガス)を用いるため、微細孔への精度が高い。
<表面凹凸指数B/Aの計算方法>
表面凹凸指数は、トナー母粒子の理論比表面積AとBET比表面積Bから求められる(=B/A)。なお、トナー母粒子に外添剤が外添されているトナーにおいてトナー母粒子の表面凹凸指数を測定する場合には、外添剤を取り除く必要があり、具体的な方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。
・トナーが磁性トナーの場合
(1)磁性トナー45mgをサンプル瓶に入れ、メタノールを10mL加える。
(2)超音波洗浄機で1分間試料を分散させて外添剤を分離させる。
(3)吸引ろ過(10μmメンブランフィルター)して磁性トナー母粒子と外添剤を分離する。または、磁石をサンプル瓶の底にあてて磁性トナー母粒子を固定して上澄み液だけ分離させても構わない。
(4)上記(2)、(3)を計3回行い、得られた磁性トナー母粒子を室温で真空乾燥機にて十分に乾燥させる。外添剤を取り除いた磁性トナー母粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、外添剤がなくなっているのを確認することができる。外添剤が十分に取り除ききれていない場合には、外添剤が十分に取り除かれるまで、(2)、(3)を繰り返し行う。上記(2)、(3)に代わる外添剤を取り除く他の方法としては、アルカリ溶液で外添剤を溶解させる方法が挙げられる。アルカリとしては水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。
・非磁性トナーの場合
イオン交換水100mLにスクロース(キシダ化学製)160gを加え、湯せんをしながら溶解させショ糖濃厚液を調製する。遠心分離用チューブに該ショ糖濃厚液31gと、6mLのコンタミノンNを入れ、分散液を作製する。この分散液にトナー1gを添加し、スパチュラなどでトナーのかたまりをほぐす。
遠心分離用チューブを上記シェイカーにて1分当たり350往復の条件で20分間振盪する。振盪後、溶液をスイングローター用ガラスチューブ(50mL)に入れ替えて、遠心分離機にて、3500rpm、30分間の条件で遠心分離を行う。遠心分離後のガラスチューブ内においては、最上層にはトナー母粒子が存在し、下層の水溶液側にはシリカ微粒子が存在するため、最上層のトナー母粒子のみを回収する。
なお、外添剤が十分に取り除ききれていない場合には、必要に応じて遠心分離を繰り返し行い、分離を十分に行った後、トナー液を乾燥しトナー母粒子を採集する。
それぞれの算出方法は以下の通りである。
≪トナー母粒子の理論比表面積Aの計算方法≫
上記個数平均粒径(D1)の測定と同様にして、トナー母粒子の個数基準の粒度分布を測定した。但し、「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いた解析においては、2.0μmから32.0μmまでを測定対象とし、12チャンネル(2.000〜2.520μm、2.520〜3.175μm、3.175〜4.000μm、4.000〜5.040μm、5.040〜6.350μm、6.350〜8.000μm、8.000〜10.079μm、10.079〜12.699μm、12.699〜16.000μm、16.000〜20.159μm、20.159〜25.398μm、25.398〜32.000μm)に区分けして、個数基準の粒度分布を求めた。
その後、各チャンネルの中央値(例えば、2.000〜2.520μmであれば、中央値は2.260μmとなる)を用いて、それぞれの各チャンネル中央値のトナー母粒子が真球であると仮定した場合の理論表面積(=4×π×(各チャンネルの中央値)2)を求める。その理論表面積と、先に求めた各チャンネルに属する粒子の個数割合を掛け合わせることによって、測定したトナー母粒子が真球であると仮定した場合の一粒子の平均理論表面積(a)を求める。
次に、同様にして各チャンネルの中央値と測定したトナー母粒子の真密度からそれぞれの各チャンネル中央値のトナー母粒子が真球であると仮定した場合の理論質量(=4/3×π×(各チャンネルの中央値)3×真密度)を求める。その理論質量と、先に求めた各チャンネルに属する粒子の個数割合から、一粒子の平均理論質量(b)を求める。
以上、一粒子の平均理論表面積と平均理論質量より、トナー母粒子の理論比表面積A(=a/b)を算出する。
≪トナー母粒子のBET比表面積Bの測定方法≫
トナー母粒子の比表面積BETは、BET法(好ましくはBET多点法)に従って、動的定圧法による低温ガス吸着法により求めることができる。例えば、比表面積測定装置「ジェミニ2375 Ver.5.0」(島津製作所社製)を用いて、試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて測定することにより、BET比表面積(m2/g)を算出した。具体的には、以下のような手順で測定する。
空のサンプルセルの質量を測定した後、サンプルセルに測定試料を1.0g充填する。さらに、脱ガス装置に、試料が充填されたサンプルセルをセットし、室温で7時間脱ガスを行う。脱ガス終了後、サンプルセル全体の質量を測定し、空サンプルセルとの差から試料の正確な質量を算出する。次に、BET測定装置のバランスポートおよび分析ポートに空のサンプルセルをセットする。所定の位置に液体窒素の入ったデュワー瓶をセットし、飽和蒸気圧(P0)測定コマンドにより、P0を測定する。P0測定終了後、分析ポートに脱ガス調製されたサンプルセルをセットし、サンプル質量およびP0を入力後、BET測定コマンドにより測定を開始する。後は自動でBET比表面積が算出される。
<25%面積率、50%面積率の測定方法>
(25%面積率)
可視光硬化性樹脂(商品名、アロニックスLCRシリーズD−800;東亞合成社製)中にトナーを十分に分散させた後、短波長光を照射し硬化させる。得られた硬化物を、ダイアモンドナイフを備えたウルトラミクロトームで切り出し、250nmの薄片状サンプルを作製する。次いで、切り出したサンプルを透過型電子顕微鏡(日本電子社製電子顕微鏡JEM−2800)(TEM―EDX)を用いて40000〜50000倍の倍率で拡大し、粒子の断面を観察し、EDXを用いて元素マッピングを行う。
なお、観察するトナー断面は以下のように選択する。まずトナー断面画像から、トナーの断面積を求め、その断面積と等しい面積を持つ円の直径(円相当径)を求める。この円相当径とトナーの重量平均粒径(D4)との差の絶対値が1.0μm以内のトナー断面画像についてのみ観察する。
マッピング条件としては、保存レート:9000〜13000、積算回数:120回とする。観察画像より確認される樹脂由来の各ドメインの中でC元素に由来するスペクトル強度と、O元素に由来するスペクトル強度を測定し、O元素に対するC元素のスペクトル強度が0.05以上のドメインが非晶性ポリエステルのドメインである。非晶性ポリエステルドメインを特定後、二値化処理により、トナー断面に存在する非晶性ポリエステルドメインの総面積に対する、トナーの断面の輪郭から、該輪郭と該断面の中心点間の距離の25%以内に存在する非晶性ポリエステルドメインの面積比率(面積%)を計算する。なお、二値化処理には、Image Pro PLUS(日本ローパー株式会社製)を用いる。
算出方法は、以下の通りである。上記TEM画像において、トナー断面の輪郭及び中心点を求める。トナー断面の輪郭は、上記TEM画像で観察されるトナーの表面に沿ったものとする。また、トナー断面の中心点は、トナー断面の重心とする。
得られた中心点から、トナー断面の輪郭上の点に対して線を引く。該線上において、輪郭から、該輪郭と該断面の中心点間の距離の25%の位置を特定する。
そして、トナー断面の輪郭に対して一周分、この操作を行い、トナー断面の輪郭から、該輪郭と該断面の中心点間の距離の25%の境界線を明示する。
該25%の境界線が明示されたTEM画像をもとに、トナーの断面の輪郭と、該25%の境界線とで囲まれた領域に存在する非晶性ポリエステルのドメインの面積を計測する。そして、トナー断面に存在する非晶性ポリエステルドメインの総面積を計測し、該総面積を基準とした面積%を算出する。
(50%面積率)
上述の25%面積率の測定と同様にして、トナー断面の輪郭から該輪郭と該断面の中心点間の距離の50%の境界線を明示する。トナーの断面の輪郭と、該50%の境界線とで囲まれた領域に存在する非晶性ポリエステルのドメインの面積を計測し、ドメイン総面積を基準とした面積%を算出する。
<非晶性ポリエステルのドメインの個数平均径の測定方法>
上記と同様にEDXを用いて元素マッピングを行い、非晶性ポリエステルドメインを特定する。ドメイン径は、ドメインの面積から円相当径を求めて得られる。測定数は100個とし、100個のドメインの円相当径の算術平均値を、ドメインの個数平均径とする。なお、ドメイン径を算出するドメインは以下のように決定する。
まずトナー断面画像から、トナーの断面積を求め、その断面積と等しい面積を持つ円の直径(円相当径)を求める。この円相当径とトナーの重量平均粒径(D4)との差の絶対値が1.0μm以内のトナー断面画像についてのみ、ドメイン径の算出を行う。ドメイン径はトナーの粒径によって変わる場合があるため、この様にすることで、平均的なドメイン径を算出することができる。
<非晶性ポリエステル及び極性樹脂の酸価Avの測定方法>
酸価は試料1gに含まれる酸を中和するために必要な水酸化カリウムのmg数である。試料の酸価はJIS K 0070−1992に準じて測定されるが、具体的には、以下の手順に従って測定する。
(1)試薬の準備
フェノールフタレイン1.0gをエチルアルコール(95vol%)90mlに溶かし、イオン交換水を加えて100mlとし、フェノールフタレイン溶液を得る。
特級水酸化カリウム7gを5mlの水に溶かし、エチルアルコール(95vol%)を加えて1lとする。炭酸ガス等に触れないように、耐アルカリ性の容器に入れて3日間放置後、ろ過して、水酸化カリウム溶液を得る。得られた水酸化カリウム溶液は、耐アルカリ性の容器に保管する。該水酸化カリウム溶液のファクターは、0.1モル/l塩酸25mlを三角フラスコに取り、該フェノールフタレイン溶液を数滴加え、該水酸化カリウム溶液で滴定し、中和に要した該水酸化カリウム溶液の量から求める。該0.1モル/l塩酸は、JIS K 8001−1998に準じて作成されたものを用いる。
(2)操作
(A)本試験
粉砕した試料2.0gを200mlの三角フラスコに精秤し、トルエン/エタノール(2:1)の混合溶液100mlを加え、5時間かけて溶解する。次いで、指示薬として該フェノールフタレイン溶液を数滴加え、該水酸化カリウム溶液を用いて滴定する。尚、滴定の終点は、指示薬の薄い紅色が約30秒間続いたときとする。
(B)空試験
試料を用いない(すなわちトルエン/エタノール(2:1)の混合溶液のみとする)以外は、上記操作と同様の滴定を行う。
(3)得られた結果を下記式に代入して、酸価を算出する。
A=[(C−B)×f×5.61]/S
ここで、A:酸価(mgKOH/g)、B:空試験の水酸化カリウム溶液の添加量(ml)、C:本試験の水酸化カリウム溶液の添加量(ml)、f:水酸化カリウム溶液のファクター、S:試料(g)である。
<非晶性ポリエステル、長鎖モノマーの水酸基価OHvの測定方法>
水酸基価とは,試料1gをアセチル化するとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数である。試料の水酸基価はJIS K 0070−1992に準じて測定されるが、具体的には、以下の手順に従って測定する。
(1)試薬の準備
特級無水酢酸25gをメスフラスコ100mlに入れ、ピリジンを加えて全量を100mlにし、十分に振りまぜてアセチル化試薬を得る。得られたアセチル化試薬は、湿気、炭酸ガス等に触れないように、褐色びんにて保存する。
フェノールフタレイン1.0gをエチルアルコール(95vol%)90mlに溶かし、イオン交換水を加えて100mlとし、フェノールフタレイン溶液を得る。
特級水酸化カリウム35gを20mlの水に溶かし、エチルアルコール(95vol%)を加えて1lとする。炭酸ガス等に触れないように、耐アルカリ性の容器に入れて3日間放置後、ろ過して、水酸化カリウム溶液を得る。得られた水酸化カリウム溶液は、耐アルカリ性の容器に保管する。該水酸化カリウム溶液のファクターは、0.5モル/l塩酸25mlを三角フラスコに取り、該フェノールフタレイン溶液を数滴加え、該水酸化カリウム溶液で滴定し、中和に要した該水酸化カリウム溶液の量から求める。該0.5モル/l塩酸は、JIS K 8001−1998に準じて作成されたものを用いる。
(2)操作
(A)本試験
粉砕したサンプル1.0gを200ml丸底フラスコに精秤し、これに該のアセチル化試薬5.0mlをホールピペットを用いて正確に加える。この際、試料がアセチル化試薬に溶解しにくいときは、特級トルエンを少量加えて溶解する。
フラスコの口に小さな漏斗をのせ、約97℃のグリセリン浴中にフラスコ底部約1cmを浸して加熱する。このときフラスコの首の温度が浴の熱を受けて上昇するのを防ぐため、丸い穴をあけた厚紙をフラスコの首の付根にかぶせることが好ましい。
1時間後、グリセリン浴からフラスコを取り出して放冷する。放冷後、漏斗から水1mlを加えて振り動かして無水酢酸を加水分解する。さらに完全に加水分解するため、再びフラスコをグリセリン浴中で10分間加熱する。放冷後、エチルアルコール5mlで漏斗およびフラスコの壁を洗う。
指示薬として該フェノールフタレイン溶液を数滴加え、該水酸化カリウム溶液で滴定する。尚、滴定の終点は、指示薬の薄い紅色が約30秒間続いたときとする。
(B)空試験
試料を用いない以外は、上記操作と同様の滴定を行う。
(3)得られた結果を下記式に代入して、水酸基価を算出する。
A=[{(B−C)×28.05×f}/S]+D
ここで、A:水酸基価(mgKOH/g)、B:空試験の水酸化カリウム溶液の添加量(ml)、C:本試験の水酸化カリウム溶液の添加量(ml)、f:水酸化カリウム溶液のファクター、S:試料(g)、D:サンプルの酸価(mgKOH/g)である。
<懸滴法による、スチレン/ブチルアクリレート=80/20(質量比)に溶解させた該非晶性ポリエステルのpH6.0のリン酸三カルシウム水溶液中での界面張力Cと極性樹脂に変更して測定した界面張力Dの測定>
(1)水相の準備
イオン交換水720部に0.1モル/L−Na3PO4水溶液450部を投入して60℃に加温した後、1.0モル/L−CaCl2水溶液67.7部を添加して、分散安定剤を含む水系媒体を得る。(以下、水相ともいう)pHを測定し、6.0±0.2であることを確認する。
(2)油相の準備
スチレン8g、nーブチルアクリレート2gに試料1gを加えて溶解させ、スチレン/ブチルアクリレート分散液(以下、油相ともいう)を作製する。
(2)界面張力測定
界面張力を、以下に述べる懸滴法により測定した。具体的には温度25℃の環境下にて協和界面科学(株)製のFACE 固液界面解析装置 Drop Master700を用い、レンズ部の視野としてWIDE1にて測定した。まず、鉛直方向下向きに内径が0.4mmの細管の先端部分を水相に入れる。次に細管はシリンジ部に接続する。シリンジ部にはあらかじめ調製した油相を入れる。次にシリンジ部を協和界面科学(株)製 AUTO DISPENSER AD−31に接続して油相を細管から押し出すことにより、水相中で細管先端部に液滴を作成することができる。そして、この液滴の形状から界面張力を計算する。液滴を作成する上での制御や計算方法については協和界面科学(株)製の測定解析システムを用いて行った。なお、計算に必要な水相と油相の密度差は水とスチレンの密度差である0.10g/cm3として行った。最終的な界面張力の測定結果は10回の測定値の平均値とした。
以上本発明の基本的な構成と特色について述べたが、以下実施例に基づいて具体的に本発明について説明する。しかしながら、これによって本発明の実施の態様がなんら限定されるものではない。実施例中の部数や%は特に断りのない限り質量基準である。
<トナー担持体1の作製>
(基体1の用意)
基体1として、SUS304製の直径6mmの芯金にプライマー(商品名、DY35−051;東レダウコーニング社製)を塗布し、焼き付けしたものを用意する。
(弾性ローラーの作製)
上記のように用意した基体1を金型に配置し、以下の材料を混合した付加型シリコーンゴム組成物を金型内に形成されたキャビティに注入する。
・液状シリコーンゴム材料(商品名、SE6724A/B;東レ・ダウコーニング社製)
100部
・カーボンブラック(商品名、トーカブラック#4300;東海カーボン社製)
15部
・耐熱性付与剤としてのシリカ粒子 0.2部
・白金触媒 0.1部
続いて、金型を加熱してシリコーンゴムを温度150℃で15分間加硫して硬化させる。周面に硬化したシリコーンゴム層が形成された基体1を金型から脱型した後、該基体1を、さらに温度180℃で1時間加熱して、シリコーンゴム層の硬化反応を完了させる。こうして、基体の外周面を被覆するように直径12mmのシリコーンゴム弾性層が形成された弾性ローラーを作製する。
(表面層1の調製)
(イソシアネート基末端プレポリマー1の合成)
窒素雰囲気下、反応容器中でトリレンジイソシアネート(TDI)(商品名:コスモネートT80;三井化学社製)17.7部に対し、ポリプロピレングリコール系ポリオール(商品名:エクセノール4030;旭硝子社製)100.0部を反応容器内の温度を65℃に保持しつつ、徐々に滴下する。滴下終了後、温度65℃で2時間反応させる。得られた反応混合物を室温まで冷却し、イソシアネート基含有量3.8質量%のイソシアネート基末端プレポリマー1を得る。
(アミノ化合物1の合成)
撹拌装置、温度計、還流管、滴下装置及び温度調整装置を取り付けた反応容器中で、撹拌しながらエチレンジアミン100.0部(1.67mol)、純水100部を40℃まで加温する。次に、反応温度を40℃以下に保持しつつ、プロピレンオキシド425.3部(7.35mol)を30分かけて徐々に滴下する。さらに1時間撹拌して反応を行い、反応混合物を得る。得られた反応混合物を減圧下加熱して水を留去し、アミノ化合物1 426gを得る。
表面層の材料として、
・イソシアネート基末端プレポリマー1 617.9部
・アミノ化合物1 34.2部
・カーボンブラック(商品名、MA230;三菱化学社製) 117.4部
・ウレタン樹脂微粒子(商品名、アートパールC−400;根上工業社製)
130.4部
を撹拌し、混合する。
次に、総固形分比が30質量%となるようにメチルエチルケトン(以下「MEK」ともいう。)を加えた後、サンドミルにて混合する。次いで、さらに、MEKで粘度を10cps以上13cps以下に調整して表面層形成用塗料を調製する。
先に作製した弾性ローラー1を、表面層形成用塗料に浸漬して、弾性ローラー1の弾性層の表面に当該塗料の塗膜を形成し、乾燥させる。さらに、温度150℃にて1時間加熱処理することで弾性層外周に膜厚15μmの表面層を設け、トナー担持体1を作製する。
<長鎖モノマー1の製造例>
炭素数のピーク値が35の脂肪族炭化水素1200gをガラス製の円筒型反応容器に入れ、硼酸38.5gを温度140℃で添加し、直ちに空気50容量%と窒素50容量%の酸素濃度約10容量%の混合ガスを毎分20リットルの割合で吹き込み、200℃で3.0時間反応させた後、反応液に温水を加え、95℃で2時間加水分解を行い、静置後上層の反応物を取った。変性品を20部をn−ヘキサン100部に加え、未変性成分を溶解除去させた、長鎖モノマー1を得た。得られた長鎖モノマー1の変性率は93.5%で水酸基価は92.4mgKOH/gであった。
<非晶性ポリエステル1の製造例>
窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した反応槽中に、表1に示す使用量の原料モノマーを、カルボン酸成分とアルコール成分が表1に示すように調整し、入れた後、触媒としてジブチル錫をモノマー総量100部に対して1.5部添加する。次いで、窒素雰囲気下にて常圧で180℃まで素早く昇温後、180℃から210℃まで10℃/時間の速度で加熱しながら水を留去して重縮合を行う。210℃に到達してから反応槽内を5kPa以下まで減圧し、210℃、5kPa以下の条件下にて重縮合を行い、非晶性ポリエステル1を得る。その際、得られる非晶性ポリエステル1のピーク分子量が表1の値となるように重合時間を調整する。非晶性ポリエステル1の物性を表1に示す。
<非晶性ポリエステル2〜13の製造例>
原料モノマー及び使用量を表1に記載の様に変更し、それ以外は、非晶性ポリエステル1と同様にして非晶性ポリエステル2〜13を得る。これらの非晶性ポリエステルの物性を表1に示す。
<非晶性ポリエステル14の製造例>
窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した四つ口フラスコに、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物100mol部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物173.6mol部、テレフタル酸97.1mol部、フマル酸166.2mol部、アジピン酸54.1mol部及び、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物100部に対してエステル化触媒(オクチル酸スズ)2部入れ、230℃で8時間縮重合反応させ、さらに、8kPaで1時間反応させ、160℃まで冷却した後、アクリル酸6部、スチレン70部、n−ブチルアクリレート31部及び重合開始剤(ジ−t−ブチルパーオキサイド)20部の混合物を滴下ロートにより1時間かけて滴下し、滴下後、160℃に保持したまま、1時間付加重合反応を継続させた後、200℃に昇温し、10kPaで1時間保持し、その後、未反応のアクリル酸、スチレン及びブチルアクリレートを除去することにより、ビニル重合セグメントとポリエステル重合セグメントとが結合してなる複合樹脂である非晶性ポリエステル14を得た。
<処理磁性体の製造例>
硫酸第一鉄水溶液中に、鉄元素に対して1.00から1.10当量の苛性ソーダ溶液、鉄元素に対しリン元素換算で0.15部となる量のP2O5、鉄元素に対して珪素元素換算で0.50部となる量のSiO2を混合し、水酸化第一鉄を含む水溶液を調製する。水溶液のpHを8.0とし、空気を吹き込みながら85℃で酸化反応を行い、種晶を有するスラリー液を調製する。
次いで、このスラリー液に当初のアルカリ量(苛性ソーダのナトリウム成分)に対し0.90から1.20当量となるよう硫酸第一鉄水溶液を加え、スラリー液をpH7.6に維持して、空気を吹込みながら酸化反応をすすめ、磁性酸化鉄を含むスラリー液を得る。濾過、洗浄した後、この含水スラリー液を一旦取り出す。この時、含水サンプルを少量採取し、含水量を計っておく。次に、この含水サンプルを乾燥せずに別の水系媒体中に投入し、撹拌すると共にスラリーを循環させながらピンミルにて再分散させ、再分散液のpHを約4.8に調整する。そして、撹拌しながらn−ヘキシルトリメトキシシランカップリング剤を磁性酸化鉄100部に対し1.6部(磁性酸化鉄の量は含水サンプルから含水量を引いた値として計算した)添加し、加水分解を行う。その後、撹拌を十分行い、分散液のpHを8.6にして表面処理を行う。生成した疎水性磁性体をフィルタープレスにてろ過し、多量の水で洗浄した後に100℃で15分、90℃で30分乾燥し、得られる粒子を解砕処理して体積平均粒径が0.21μmの処理磁性体を得る。
<トナー母粒子1の製造例>
イオン交換水720部に0.1モル/L−Na3PO4水溶液473部を投入して60℃に加温した後、1.0モル/L−CaCl2水溶液71.1部を添加して、分散安定剤を含む水系媒体を得る。
・スチレン 74.0部
・n−ブチルアクリレート 26.0部
・非晶性ポリエステル1 10.0部
・ジビニルベンゼン 0.6部
・モノアゾ染料の鉄錯体(T−77:保土ヶ谷化学社製) 1.5部
・処理磁性体 65.0部
・極性樹脂1
(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸を3%含有するスチレン−2−エチルへキシルアクリレート共重合体、Tg=78℃) 2.0部
上記処方をアトライタ(三井三池化工機(株))を用いて均一に分散混合して単量体組成物を得た。この単量体組成物を63℃に加温し、そこにパラフィンワックス(融点78℃)15部を添加混合し、溶解する。その後重合開始剤tert−ブチルパーオキシピバレート5.0部を溶解する。
上記水系媒体中に上記単量体組成物を投入し、60℃、N2雰囲気下においてT.K.ホモミクサー(特殊機化工業(株))にて12000rpmで10分間撹拌し、造粒する。その後パドル撹拌翼で撹拌しつつ70℃で4時間反応させる。反応終了後、ここで得られた水系媒体中には、着色粒子が分散しており、着色粒子表面には無機分散剤として、リン酸カルシウムが付着していることを確認する。
この時点で、水系媒体に、塩酸を加えてリン酸カルシウムを洗浄して除去した後に濾過・乾燥して着色粒子を分析した。その結果、結着樹脂のガラス転移温度Tgは55℃であった。
続いて、着色粒子が分散した水系媒体を100℃まで昇温させ、240分保持する。その後、水系媒体に5℃水を投入し、100℃/分の冷却速度で100℃から50℃に冷却する。続いて、水系媒体を50℃で120分、保持を行った。
その後、水系媒体に、塩酸を加えてリン酸カルシウムを洗浄して除去した後に濾過・乾燥してトナー母粒子1を得る。トナー母粒子1の製造条件を表2に示す。
<トナー母粒子2〜26の製造例>
トナー母粒子1の製造において、非晶性ポリエステル、極性樹脂、着色剤、Na3PO4水溶液の部数、CaCl2水溶液の部数、製造条件を変更すること以外は同様にして、トナー母粒子2〜26の製造を行う。得られるトナー母粒子の製造条件を表2に示す。
<トナー母粒子27の製造例>
《各分散液の調製》
−樹脂粒子分散液(1)−
・スチレン(和光純薬社製):325部
・nブチルアクリレート(和光純薬社製):100部
・アクリル酸(ローディア日華社製):13部
・1,10−デカンジオールジアクリレート(新中村化学社製):1.5部
・ドデカンチオール(和光純薬社製):3.0部
上記成分を予め混合し、溶解して溶液を調製しておき、アニオン性界面活性剤(ダウケミカル社製、ダウファックスA211)9部をイオン交換水580部に溶解した界面活性剤溶液をフラスコに収容し、上記の溶液のうち400部を投入して分散し乳化して10分間ゆっくりと撹拌・混合しながら、過硫酸アンモニウム6部を溶解したイオン交換水50部を投入した。
次いで、フラスコ内を窒素で十分に置換した後、フラスコを撹拌しながらオイルバスでフラスコ内が75℃になるまで加熱し、5時間そのまま乳化重合を継続して樹脂粒子分散液(1)を得た。
樹脂粒子分散液(1)から樹脂粒子を分離して物性を調べたところ、個数平均粒径は195nm、分散液中の固形分量は42%、ガラス転移点は51.5℃、重量平均分子量Mwは32000であった。
−樹脂粒子分散液(2)−
前記非晶性ポリエステル14をキャビトロンCD1010(株式会社ユーロテック製)高温高圧型に改造した分散機を用いて分散した。具体的には、イオン交換水79%、アニオン系界面活性剤(第一工業製薬(株):ネオゲンRK)が1%(有効成分として)、固形分の濃度が20%の組成比で、アンモニアによりpHを8.5に調整し、回転子の回転速度が60Hz、圧力が5kg/cm2、熱交換器による加熱140℃、の条件でキャビトロンを運転し、個数平均粒径が200nmの樹脂微粒子分散液(2)を得た。
−着色剤分散液−
・カーボンブラック 20部
・アニオン系界面活性剤(第一工業製薬社製、ネオゲンR) 2部
・イオン交換水 78部
上記成分をホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて、3000rpmで2分間、顔料を水になじませ、さらに5000回転で10分間分散後、通常の撹拌器で1昼夜撹拌させて脱泡した後、高圧衝撃式分散機アルティマイザー((株)スギノマシン社製、HJP30006)を用いて、圧力240MPaで約1時間分散させて着色剤分散液を得た。さらに分散液のpHを6.5に調節した。
−離型剤分散液−
・炭化水素系ワックス 45部
(フィッシャートロプシュワックス、最大吸熱ピーク=78℃、Mw=750)
・カチオン性界面活性剤(ネオゲンRK、第一工業製薬) 5部
・イオン交換水 200部
上記成分を95℃に加熱して、ホモジナイザー(IKA製、ウルトラタラックスT50)にて十分に分散後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーで分散処理し、個数平均径190nm、固形分量25%の離型剤分散液を得た。
《トナー母粒子の製造例》
・イオン交換水 400部
・樹脂粒子分散液(1)620部(樹脂粒子濃度:42%)
・樹脂粒子分散液(2)279部(樹脂粒子濃度:20%)
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)、ネオゲンRK、有効成分量:60%)
1.5部(有効成分として0.9部)
以上の成分を、温度計、pH計、撹拌機を具備した3リットルの反応容器に入れ、外部からマントルヒーターで温度制御しながら、温度30℃、撹拌回転数150rpmにて、30分間保持した。その後、着色剤分散液88部、離型剤分散液60部を投入し、5分間保持した。そのまま、1.0%硝酸水溶液を添加し、pHを3.0に調整した。次いで、撹拌機、マントルヒーターをはずし、ホモジナイザー(IKAジャパン社製:ウルトラタラクスT50)にて、3000rpmで分散しながら、ポリ塩化アルミニウム0.33部、0.1%硝酸水溶液37.5部の混合溶液を、そのうちの1/2を添加した後、分散回転数を5000rpmにして、残りの1/2を1分間かけて添加し、分散回転数を6500rpmにして、6分間分散した。
反応容器に、撹拌機、マントルヒーターを設置し、スラリーが充分に撹拌するように撹拌機の回転数を適宜調整しながら、42℃まで、0.5℃/分で昇温し、42℃で15分保持した後、0.05℃/分で昇温しながら、10分ごとに、コールターマルチサイザーにて粒径を測定し、重量平均粒径が7.4μmとなったところで、5%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを9.0にした。その後、5℃ごとにpHを9.0に調整しながら、昇温速度1℃/分で96℃まで昇温し、96℃で保持した。30分ごとに光学顕微鏡と走査電子顕微鏡(FE−SEM)にて粒子形状及び表面性を観察したところ、2時間目でほぼ球形化したので、1℃/分で20℃まで降温して粒子を固化させた。
その後、反応生成物をろ過し、イオン交換水で通水洗浄し、ろ液の伝導度が50mS以下となったところで、ケーキ状になった粒子を取り出し、粒子重量の10倍量のイオン交換水中投入し、スリーワンモータで撹拌し充分に粒子がほぐれたところで、1.0%硝酸水溶液でpHを3.8に調整して10分間保持した。その後再度ろ過、通水洗浄し、ろ液の伝導度が10mS以下となったところで、通水を停止し、固液分離した。得られたケーキ状になった粒子をサンプルミルで解砕して、40℃のオーブン中で24時間乾燥した。さらに得られた粉体をサンプルミルで解砕した後、40℃のオーブン中で5時間追加真空乾燥して、トナー母粒子27を得た。
<トナー母粒子28の製造例>
特開2006−184746号公報の実施例1に従ってトナー母粒子を製造し、トナー母粒子28を得た。
<トナーの作製>
<トナー1の製造例>
トナー母粒子1を100部に、一次粒子の個数平均径115nmのゾルゲルシリカ微粒子を0.3部添加し、三井ヘンシェルミキサ(三井三池化工機(株))を用い混合した。その後、さらに一次粒子の個数平均径12nmのシリカにヘキサメチルジシラザンで処理をした後シリコーンオイルで処理し、処理後のBET比表面積値が120m2/gの疎水性シリカ微粒子0.9部を添加し、同様に三井ヘンシェルミキサ(三井三池化工機(株))を用い混合し、トナー1を調製した。得られたトナー1の物性を表3に示す。
<トナー2〜23、比較用トナー1〜5の製造例>
トナー1の製造において、表3に示すようにトナー母粒子を変更し、トナー2〜23、比較用トナー1〜5を得た。得られたトナー2〜23、比較用トナー1〜5の物性を表3に示す。
〔実施例1〕
定着方式がフィルム定着によるオンデマンド定着方式であるプリンターLBP7700C(キヤノン株式会社製)を改造して画像出力評価に用いた。改造点としては、トナー担持体1に変更し、現像装置のトナー供給部材(図1に示しているトナーの供給ローラ:48)をはずし、トナー供給部材への電圧印加をオフにした。なお、トナー担持体と感光ドラムの当接部の幅が1.0mmとなるように当接圧を調整した。
このように、供給ローラをはずすことで、トナーの担持体への搬送性を厳しくすると共に、トナー担持体と静電潜像担持体の当接部の面積を小さくすることで、トナーに対する耐久中のストレスを高くすることができるため、細線再現性及び耐久による細線再現性の変化を厳しく評価することが可能となる。
上記のように改造した現像装置に評価するトナー1を100g充填し、トナー担持体1を用いて現像装置を作製した。作製した現像装置をシアンステーション及び又はブラックステーションにセットし、画像評価を行った。なお、耐久印字画像としては印字率が1%となるような横線を用い、耐久条件としては2枚間欠通紙にて試験を行った。評価結果を表4に示す。
[細線再現性の評価] (1)〜(3)において、チェック画像は坪量が90g/m2のFOX RIVER BOND(FOX RIVER Paper社製)を、3000枚の印字画像は坪量が75g/m2のbusiness4200(Xerox社製)を用いて行う。
(1)常温常湿環境における初期画像と3000枚印字後の画像の細線再現性の評価
トナーが充填された現像装置を常温常湿環境下(23℃/50%RH)にて48時間放置する。
前記改造機にて、初期チェック画像と3000枚横線を印字後のチェック画像について細線再現性を評価した。
100μm(潜像)ラインでの格子パターン(1cm間隔)を画出しし、その飛び散りを、光学顕微鏡を用いて目視で評価した。
A:ラインが非常にシャープで飛び散りはほとんどない
B:わずかに飛び散っている程度でラインは比較的シャープ
C:飛び散りがやや多くラインがぼんやりした感じになる
D:Cのレベルに満たない
(2)常温高湿環境における初期画像の細線再現性の評価
トナーが充填された現像装置を常温高湿環境下(23℃/85%RH)にて48時間放置する。
前記改造機にて初期チェック画像について細線再現性を評価した。100μm(潜像)ラインでの格子パターン(1cm間隔)を画出しし、その飛び散りを、光学顕微鏡を用いて目視で評価した。
A:ラインが非常にシャープで飛び散りはほとんどない
B:わずかに飛び散っている程度でラインは比較的シャープ
C:飛び散りがやや多くラインがぼんやりした感じになる
D:Cのレベルに満たない
(3)低温低湿環境における3000枚印字後のチェック画像の細線再現性の評価
前記改造機にて常温常湿環境下において、3000枚印字した現像装置を低温低湿環境下(15℃、10%RH)に48時間放置し、チェック画像を印字し、細線再現性を評価した。100μm(潜像)ラインでの格子パターン(1cm間隔)を画出しし、その飛び散りを、光学顕微鏡を用いて目視で評価した。
A:ラインが非常にシャープで飛び散りはほとんどない
B:わずかに飛び散っている程度でラインは比較的シャープ
C:飛び散りがやや多くラインがぼんやりした感じになる
D:Cのレベルに満たない
[低温定着性(テープ剥離)]
トナーが充填された現像装置を常温常湿環境下(23℃/50%RH)にて48時間放置する。その後、シアンステーション及び又はブラックステーションに該現像装置をセットし、画像形成装置から一旦定着器を取り外し、未定着画像が流せるように改造する。画像は、GF−104(坪量104g/m2、キヤノン製A4サイズ)評価紙上に先端余白10mm、50mm×50mmのベタ画像を出力し、トナー載り量が0.90mg/cm2となるようにベタ黒の未定着画像を調整した。
シアンステーション及び又はブラックステーションにセットし、前記評価機から定着器を取り外し、定着装置の定着温度を任意に設定できるようにした「外部定着器」を、前記評価機に取り付けた。
上記環境下で、前記外部定着器のスリーブ表面温度を170℃から220℃までの温度域で設定温調を5℃おきに変化させながら、定着性の評価を行った。
得られた未定着画像のベタ黒画像部の画像濃度を5点測定して平均し、「初期濃度」とした。その後、前記ベタ黒画像部にポリエステルテープ(No.5515 ニチバン社製)を張り付け、前記ポリエステルテープ上において、100gの荷重を3往復して、前記ポリエステルテープを画像に密着させた。その後、前記ポリエステルテープをはがした後、前記定着画像の画像濃度を5点測定して平均し、「テープ剥離後濃度」とした。なお画像濃度の測定はエックスライト(エックスライト社製、500シリーズ、濃度測定モード)を使用した。
そして、初期濃度とテープ剥離後濃度との差を初期濃度で除して100倍することにより、テープ剥離後濃度維持率(%)を求めた。テープ剥離後濃度維持率が10%未満となる温度を定着性が優れている温度とし、以下の基準でA〜Dにランク付けした。
A:180℃でもテープ剥離後濃度維持率(%)が10.0%未満である。
B:190℃でもテープ剥離後濃度維持率(%)が10.0%未満である。
C:200℃でもテープ剥離後濃度維持率(%)が10.0%未満である。
D:210℃でもテープ剥離後濃度維持率(%)が10.0%未満である。
〔実施例2〜23〕
表4に従いトナーを変更し、実施例1と同様に画出し評価を行った。評価結果を表4に示す。
〔比較例1〜5〕
表4に従いトナーを変更し、実施例1と同様に画出し評価を行った。評価結果を表4に示す。