以下の記載は、変異型非触媒性DNAポリメラーゼ(「機能欠損」ポリメラーゼ)の使用に依拠するsequencing−by−binding(SBB)技術に関する。この技術の実施に有用である機能欠損DNAポリメラーゼ酵素は、プライマー結合鋳型核酸のプライマー鎖と、後続する次の正しいヌクレオチドとの間のホスホジエステル結合のマグネシウム依存的な形成を触媒することが実質的に不可能である。この触媒活性はないものの、この変異型酵素は同種を非同種ヌクレオチドと識別する能力を保持する。いくつかの実施形態では、変異型ポリメラーゼは、触媒能に通常必要とされる2価カチオンと結合することができない。以下の記載は、SBBに関する機能欠損ポリメラーゼの有用な態様を例示したものであるが、このポリメラーゼは、核酸において個々のヌクレオチドを同定する(例えば、一塩基多型を検出する)こと、または特定の配列に結合して、その配列を備える核酸のポリメラーゼ媒介性アフィニティー分離を提供することを含むが、これらに限定されない他の用途を有し得るものと理解される。有利な点として、機能欠損DNAポリメラーゼの使用は、洗浄工程後に残存し得る残留ヌクレオチドの望ましくない取り込み、またはポリメラーゼ活性を阻害する非触媒金属イオンの使用により起こり得る不完全な阻害に起因した望ましくない取り込みに関連する問題を解決する。このように機能欠損DNAポリメラーゼの使用は、望ましくないヌクレオチドの取り込みに関連する配列決定時のアーチファクトを減少させることができる。
簡潔には、プライマー結合鋳型核酸、同種ヌクレオチド、及び機能欠損DNAポリメラーゼを含む安定な複合体の形成を、触媒2価カチオンの存在下でも検出することができる。プライマーは伸長ブロック基を有する必要はなく、ヌクレオチドはプライマーへの取り込みを阻害する部分を有する必要はない。特定位置の同種ヌクレオチドが同定された後、または少なくとも同定を行うために必要なモニタリング情報または測定情報が収集された後、プライマー結合鋳型核酸を、機能欠損DNAポリメラーゼの代わりに第2のDNAポリメラーゼを含んだ異なる反応混合物と接触させることができる。第2のDNAポリメラーゼは、同種ヌクレオチド及び適切な2価カチオンがさらに供給されたとき、遊離3’ヒドロキシル基の位置で同種ヌクレオチドをプライマーと結合させることができる。この工程で可逆的ターミネーターヌクレオチドを使用すると、取り込みが1回のみ行われることになる。
有利な点として、この技術は、天然(例えば、非標識)のヌクレオチド、検出可能な標識を有するヌクレオチド(例えば、蛍光標識または他の光学的に検出可能な標識)、または標識したもしくは非標識のヌクレオチド類似体(例えば、可逆的ターミネーター部分を含む修飾ヌクレオチド)を含む、様々な種類のヌクレオチドを使用して実施することができる。さらに、この技術は、反応条件の制御、配列の明瞭な決定、試薬の総費用の低減、及び機器費用の低減をもたらす。
開示される技術は、いかなる手段及びいかなる理由を問わず、プライマー結合鋳型核酸の次の塩基の同一性を決定するために使用される結合反応に利用することができる。この技術を利用すると、プライマー結合鋳型核酸に相補的な次の正しいヌクレオチド(例えば、dNTP)とDNAポリメラーゼとの特異的結合をモニタリングし、特異的結合を非特異的結合と区別することができる。この技術は、単一ヌクレオチドの決定(例えば、SNPの決定)にも、またはその代わりに反復サイクルを用いて一度に1ヌクレオチドずつ同定する広範な核酸配列決定手順にも利用することができる。例えば、本明細書で提供される方法は、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる、シリアル番号14/805,381によって識別される保有者共通の米国特許出願(米国特許出願公開第2017/0022553 A1号として公開)に記載されるsequencing−by−binding手順と関連して使用することができる。
定義
特に定義しない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語はすべて、当業者に共通して理解されているものと同じ意味を有する。明確性のため、以下の具体的な用語は記載された意味を有する。それ以外の用語は、本明細書の別の箇所で定義する。
単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈によって特に明示されない限り、複数の指示対象物を包含する。明細書及び特許請求の範囲に使用されている近似を表す語を任意の定量表現の修飾に用いることができ、その場合、それが関連する基本機能に変更を生じさせることなく許容可能な変動が可能である。したがって、「約」などの用語によって修飾された値は、指定された厳密な値に限定されない。特段の指定がない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される、成分量、分子量などの特性、反応条件などを表すすべての数値は、いずれの場合においても「約」という語で修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、それに反する指示がない限り、以降の明細書及び添付の特許請求の範囲内に示される数値パラメーターは、本開示の組成物、装置、または方法によって得ようとする所望の特性に応じて変動し得る近似値である。最低限、各数値パラメーターは、少なくとも報告された有効桁数に照らし、通常の丸め技法を適用することによって解釈されるべきである。
本明細書で使用される場合、「sequencing−by−binding」とは、プライマー結合鋳型核酸へのポリメラーゼの特異的結合が、プライマー結合鋳型核酸のプライマー鎖に取り込まれるべき次の正しいヌクレオチドの同定に使用される配列決定技術を指す。特異的結合相互作用がヌクレオチドのプライマー鎖への化学的取り込みに先行するので、次の正しいヌクレオチドの同定を、次の正しいヌクレオチドを取り込まずに、または取り込む前に行うことができる。
本明細書で使用される場合、「核酸」または「オリゴヌクレオチド」または「ポリヌクレオチド」または本明細書で使用される文法上の等価表現は、互いに共有結合している少なくとも2つのヌクレオチドを意味する。したがって、「核酸」は、核酸合成中に重合酵素が作用し得るDNA、RNA、またはそれらの任意の組み合わせなどのポリヌクレオチドである。用語「核酸」は、一本鎖、二本鎖、または複数鎖のDNA、RNA、及びそれらの類似体(誘導体)を含む。二本鎖核酸は、核酸合成を妨害し得る二次構造を最小限にすることができるという利点がある。二本鎖核酸は、ニックまたは一本鎖ギャップを有する場合がある。
本明細書で使用される場合、「鋳型核酸」とは、本明細書に開示される任意の配列決定方法を用いて検出または配列決定される核酸である。
本明細書で使用される場合、「プライマー結合鋳型核酸」(またはそれに代わり「プライマー結合鋳型核酸分子」)とは、プライマーとプライマー結合された(すなわち、ハイブリダイズされた)鋳型核酸であり、プライマーは、3’末端が鋳型核酸の一部と相補的な配列であるオリゴヌクレオチドである。プライマーは場合により、遊離5’末端を有していてもよく(例えば、非共有結合的に鋳型と会合しているプライマー)、またはプライマーは(例えば、ヘアピン構造を介して)鋳型とつながっていてもよい。プライマー結合鋳型核酸は、相補的なプライマー及びそれが結合している鋳型核酸を含む。明記されていない限り、プライマー結合鋳型核酸は、ポリメラーゼによって伸長可能な3’末端、または伸長がブロックされる3’末端のいずれかを有することができる。
本明細書で使用される場合、「ブロックされたプライマー結合鋳型核酸」(またはそれに代わり「ブロックされたプライマー結合鋳型核酸分子」)とは、プライマーの3’末端でのホスホジエステル結合の形成を妨げるか、または阻止するように修飾されたプライマー結合鋳型核酸である。ブロッキングは、例えば、プライマーの3’末端にある5炭素糖の3’位または2’位のいずれかにブロック基を付加する化学修飾によって達成することができる。それに代わり、またはそれに加えて、ホスホジエステル結合形成を妨げるかまたは阻止する化学修飾をヌクレオチドの窒素塩基に対して行ってもよい。これらの各種類のブロック基を含む可逆的ターミネーターヌクレオチド類似体は、当業者によく知られているであろう。プライマー結合鋳型核酸分子のプライマーの3’末端にこれらの類似体が取り込まれると、ブロックされたプライマー結合鋳型核酸分子が生じる。ブロックされたプライマー結合鋳型核酸は、3’末端の伸長をブロックする相補的なプライマー、及びそれが結合している鋳型核酸を含む。
本明細書で使用される場合、「ヌクレオチド」とは、窒素塩基、5炭素糖(リボースまたはデオキシリボース)、及び少なくとも1つのリン酸基を含む分子である。この用語は、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、外部標識または可逆的ターミネーターを含むように修飾されたヌクレオチド、及びヌクレオチド類似体を包含するが、これらに限定されない。
本明細書で使用される場合、「天然」ヌクレオチドとは、ヌクレオチド類似体を特性決定できるような外部標識(例えば、蛍光色素または他の標識)または化学修飾を含まない天然型ヌクレオチドを指す。本明細書に記載のsequencing−by−binding手順の実施に有用な天然ヌクレオチドの例として、dATP(2’−デオキシアデノシン−5’−三リン酸);dGTP(2’−デオキシグアノシン−5’−三リン酸);dCTP(2’−デオキシシチジン−5’−三リン酸);dTTP(2’−デオキシチミジン−5’−三リン酸);及びdUTP(2’−デオキシウリジン−5’−三リン酸)が挙げられる。
本明細書で使用される場合、「ヌクレオチド類似体」は、天然ヌクレオチドの成分のいずれか(例えば、窒素塩基、5炭素糖、またはリン酸基(複数可))を置換、欠失、及び/または変更する1つ以上の修飾、例えば化学部分を有している。核酸重合反応において、ヌクレオチド類似体はポリメラーゼによって取り込み可能であっても取り込み不可能であってもよい。場合により、ヌクレオチド類似体の3’−OH基は、部分で修飾される。この部分は、ポリメラーゼ伸長の3’可逆的または不可逆的ターミネーターであり得る。ヌクレオチドの塩基は、アデニン、シトシン、グアニン、チミン、もしくはウラシルのいずれか、またはそれらの類似体であり得る。場合により、ヌクレオチドは、イノシン塩基、キサンチン塩基、ヒポキサンチン塩基、イソシトシン塩基、イソグアニン塩基、ニトロピロール(3−ニトロピロールを含む)塩基、またはニトロインドール(5−ニトロインドールを含む)塩基を有する。ヌクレオチドには、ATP、UTP、CTP、GTP、ADP、UDP、CDP、GDP、AMP、UMP、CMP、GMP、dATP、dTTP、dUTP、dCTP、dGTP、dADP、dTDP、dCDP、dGDP、dAMP、dTMP、dCMP、及びdGMPを含み得るが、これらに限定されない。ヌクレオチドはまた、DNAポリメラーゼを転写終結させる阻害物質、すなわちddNTPと略記されるジデオキシヌクレオチドまたは2’,3’ジデオキシヌクレオチド(ddGTP、ddATP、ddTTP、ddUTP、及びddCTP)を含み得る。
本明細書で使用される場合、「次の鋳型ヌクレオチド」(または「次の鋳型塩基」)とは、ハイブリダイズされたプライマーの3’末端のすぐ下流に位置する鋳型核酸にある次のヌクレオチド(または塩基)を指す。すなわち、次の鋳型ヌクレオチドは、プライマーの3’末端とハイブリダイズされた鋳型のすぐ5’側の塩基に位置する。
本明細書で使用される場合、ヌクレオチド類似体に関して使用される「ブロック部分」とは、核酸重合反応の取り込み工程中に、ヌクレオチドが(例えば、プライマーのヌクレオチドの3’−OHを介して)第2のヌクレオチドとの共有結合を形成することを阻害または阻止するヌクレオチド部分である。「可逆的ターミネーター」ヌクレオチドのブロック部分がヌクレオチド類似体から除去されると、ヌクレオチド取り込みを可能にすることができる。そのようなブロック部分を本明細書では「可逆的ターミネーター部分」と呼ぶ。例示的な可逆的ターミネーター部分は、米国特許第7,427,673号;同第7,414,116号;及び同第7,057,026号、ならびにPCT公開WO91/06678及びWO07/123744に記載されており、それぞれが参照により組み込まれる。
本明細書で使用される場合、「試験ヌクレオチド」とは、それが、プライマー結合鋳型核酸及びポリメラーゼをさらに含む三元複合体の形成に関与する能力を調べるヌクレオチドである。
本明細書で使用される場合、「ポリメラーゼ」とは、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、逆転写酵素、プライマーゼ、及びトランスフェラーゼを含むがこれらに限定されない核酸合成酵素の総称である。通常、ポリメラーゼは、ヌクレオチド結合及び/またはヌクレオチド重合の触媒作用が起こり得る1つ以上の活性部位を含む。ポリメラーゼは、その相補的核酸鎖に結合したプライマーの3’末端とのヌクレオチドの重合を触媒することができる。例えば、ポリメラーゼは、ホスホジエステル結合によるプライマーの3’酸素への次の正しいヌクレオチドの付加を触媒し、それによりヌクレオチドをプライマーに化学的に取り込むことができる。場合により、提供される方法で使用されるポリメラーゼは、前進型ポリメラーゼである。場合により、提供される方法で使用されるポリメラーゼは、分配型ポリメラーゼである。場合により、ポリメラーゼは、本明細書に記載の方法で使用される1つ以上の条件下で、ヌクレオチドを取り込み可能である必要はない。例えば、変異型ポリメラーゼは、三元複合体を形成することはできるが、ヌクレオチドの取り込みを触媒できなくてもよい。
本明細書で使用される場合、「1価カチオンを与える塩」とは、水溶液中で解離して単一の正電荷を有するカチオンを生成するイオン性化合物である。例えば、カチオンは、酸化状態が+1である金属カチオンであり得る。
本明細書で使用される場合、「グルタミン酸塩」とは、水溶液中で解離してグルタミン酸アニオンを生成するイオン性化合物である。
本明細書で使用される場合、「二相性」とは、プライマー結合鋳型核酸をポリメラーゼ及び試験ヌクレオチドと接触させる2段階のプロセスを指す。このプロセスの第1段階は、飽和レベル以下のヌクレオチド(複数可)の存在下で、またはヌクレオチドの非存在下でも、プライマー結合鋳型核酸をポリメラーゼと接触させることを含む。受容体に結合するリガンド(例えば、ポリメラーゼに結合するヌクレオチド)に関して使用される用語「飽和以下」とは、平衡状態で少なくとも90%の受容体がリガンドに結合するのに必要な濃度よりもリガンド濃度が低いことを意味する。例えば、飽和以下量のヌクレオチドにより、少なくとも90%、95%、99%、またはそれ以上のポリメラーゼをヌクレオチドと結合させることができる。このプロセスの第2段階は、第1段階で使用されたものよりも高濃度のヌクレオチド(複数可)の存在下で、第1段階のプライマー結合鋳型核酸をポリメラーゼと接触させることを含む。この場合の高濃度とは、反応物中のヌクレオチドが次の正しいヌクレオチドである場合に、最大限の三元複合体の形成を得るのに十分な濃度である。
本明細書で使用される場合、鋳型、プライマー、プライマー結合鋳型核酸、またはブロックされたプライマー結合鋳型核酸を「供給する」とは、1つまたは多数の核酸ポリマーを調製して、例えば反応混合物または反応槽に送ることを指す。
本明細書で使用される場合、「モニタリング」(または場合によって「測定」)とは、2つの分子種間の測定可能な相互作用または結合を検出するプロセスを指す。例えば、モニタリングには、ポリメラーゼとプライマー結合鋳型核酸との間の測定可能な相互作用を、通常は手順を通じた様々な時点で検出することを含み得る。モニタリングは、間欠的(例えば、周期的)であっても、連続的(例えば、中断なし)であってもよく、定量的結果の取得を含み得る。モニタリングは、結合イベント中のある期間にわたって複数のシグナルを検出することによって、あるいは結合イベント中または結合イベント後のある一時点でのシグナル(複数可)を検出することによって実施することができる。
本明細書で使用される場合、「接触させる」とは、物理的結合反応または化学反応が起こり得るように、試薬を一緒に混合すること(例えば、固定化鋳型核酸と、ポリメラーゼを含む緩衝溶液、またはポリメラーゼ及び試験ヌクレオチドの組み合わせのいずれかとの混合)を指す。
本明細書で使用される場合、プライマー結合鋳型及びヌクレオチドに関して使用される「取り込み」または「化学的取り込み」とは、ホスホジエステル結合の形成による同種ヌクレオチドのプライマーへの結合プロセスを指す。
本明細書で使用される場合、「伸長」とは、オリゴヌクレオチドプライマーと鋳型核酸が互いにアニーリングした後のプロセスを指し、そのプロセスではポリメラーゼ酵素がプライマーの3’末端への1つ以上のヌクレオチドの付加を触媒する。伸長によって核酸に付加されるヌクレオチドは、核酸に「取り込まれる」と呼ばれる。したがって、用語「取り込み」は、ホスホジエステル結合の形成によりヌクレオチドがプライマーの3’末端に結合するプロセスを指す際に使用することができる。
本明細書で使用される場合、「二元複合体」とは、ポリメラーゼとプライマー結合鋳型核酸(またはブロックされたプライマー結合鋳型核酸)との間の分子間会合であり、この複合体は次の正しいヌクレオチドのようなヌクレオチド分子を含まない。
本明細書で使用される場合、「三元複合体」とは、ポリメラーゼ、プライマー結合鋳型核酸(またはブロックされたプライマー結合鋳型核酸)、及びプライマーのすぐ下流に位置し、プライマー結合鋳型核酸またはブロックされたプライマー結合鋳型核酸の鋳型鎖に相補的な次の正しいヌクレオチドとの間の分子間会合である。プライマー結合鋳型核酸には、例えば、遊離3’−OHを有するプライマーまたはブロックされたプライマー(例えば、3’末端ヌクレオチドの塩基部分または糖部分に化学修飾を有するプライマー。この場合の修飾は、酵素的ホスホジエステル結合の形成を妨げる)を含み得る。用語「安定化された三元複合体」とは、促進状態もしくは持続状態にある三元複合体、または破壊が阻止されている三元複合体を意味する。一般に、三元複合体の安定化は、三元複合体のヌクレオチド成分が三元複合体のプライマー結合核酸成分に共有結合的に取り込まれるのを阻止する。
本明細書で使用される場合、「触媒金属イオン」とは、核酸(例えば、プライマー)の3’−OHと、後続するヌクレオチドのリン酸との間のポリメラーゼによるホスホジエステル結合の形成を促進する金属イオンを指す。「2価の触媒金属カチオン」とは、価数2の触媒金属イオンである。触媒金属イオンは、ポリメラーゼ、ヌクレオチド、及びプライマー結合鋳型核酸との間の複合体の形成を安定化させるのに必要な濃度で存在してもよく、この濃度を金属イオンの非触媒濃度と呼ぶ。金属イオンの触媒濃度とは、核酸(例えば、プライマー)の3’−OH基と、後続するヌクレオチドのリン酸基との間の反応をポリメラーゼが触媒するのに十分な金属イオン量を指す。
本明細書で使用される場合、「非触媒金属イオン」とは、ポリメラーゼ酵素の存在下で、プライマーへのヌクレオチドの化学的取り込みに必要なホスホジエステル結合の形成を促進しない金属イオンを指す。通常、非触媒金属イオンはカチオンである。非触媒金属イオンは、ポリメラーゼによるホスホジエステル結合の形成を阻害することができ、それによってヌクレオチドの取り込みを阻止して三元複合体を安定化することができる。触媒金属イオンと比較して、非触媒金属イオンは、例えば競合結合によってポリメラーゼと相互作用することができる。「2価の非触媒金属イオン」とは、価数2の非触媒金属イオンである。2価の非触媒金属イオンの例としては、Ca2+、Zn2+、Co2+、Ni2+、及びSr2+が挙げられるが、これらに限定されない。3価のEu3+及びTb3+イオンは、価数3の非触媒金属イオンである。
本明細書で使用される場合、「外部標識」とは、ヌクレオチドまたはポリメラーゼ(例えば、DNAポリメラーゼ)などの配列決定試薬に付加された検出可能な化学的部分を指す。天然のdNTPは特徴的な限定された蛍光プロファイルを有し得ると同時に、天然のdNTPはいかなる付加された比色部分または蛍光部分も含まない。それに対して、ガンマリン酸に結合した化学リンカー及び蛍光部分を含むように修飾されたdATP(2’−デオキシアデノシン−5’−三リン酸)分子は、結合した化学成分が通常、ヌクレオチドの一部ではないため、外部標識を含むと言われる。言うまでもなく、検出可能な標識をヌクレオチド塩基に付加するための化学修飾も、外部標識とみなされる。同様に、ヌクレオチド結合の際にその特性が変化する構造感受性の蛍光色素を含むように修飾されたDNAポリメラーゼもまた、標識が通常、ポリメラーゼの一部ではないため外部標識を含むと言われる。
本明細書で使用される場合、「非標識」とは、付加されたまたは外部の標識(複数可)またはタグ(複数可)を含まない分子種を指す。言うまでもなく、非標識ヌクレオチドには、外部蛍光標識またはラマン散乱法の外部タグのいずれも含まないことになる。天然ヌクレオチドは、非標識分子種の別の例である。非標識分子種は、核酸の配列決定または分析生化学に関連して、本明細書に記載されているまたは当技術分野で知られている1つ以上の標識を除外することができる。
本明細書で使用される場合、用語「固体支持体」とは、水性液体に不溶性である剛性基材を指す。基材は、非多孔質または多孔質であり得る。基材は、場合により、(例えば多孔性ゆえに)液体を取り込むことができるが、通常は液体を取り込んだときには実質的に基材が膨張せず、液体が乾燥によって除去されたときには実質的に収縮しない程度に十分な剛性である。非多孔性の固体支持体は、一般に、液体または気体を通さない。例示的な固体支持体としては、ガラス及び改質または機能化ガラス、プラスチック(アクリル、ポリスチレン及びスチレンと他の材料とのコポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリウレタン、テフロン(登録商標)、環状オレフィン、ポリイミドなどを含む)、ナイロン、セラミックス、樹脂、ゼオノア、シリコン及び変性シリコンを含むシリカまたはシリカ系材料、炭素、金属、無機ガラス、光ファイバー束、ならびにポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書で使用される場合、「天然DNAポリメラーゼ」とは、同種ヌクレオチドと非同種ヌクレオチドを識別する能力と、2価触媒金属イオン(例えば、Mg2+またはMn2+)も与えられた場合には、2つの種を結合するホスホジエステル結合を形成することにより、プライマー伸長鎖に同種ヌクレオチドを取り込む能力とを有する修飾または非修飾DNAポリメラーゼ酵素である。
本明細書で使用される場合、「機能欠損DNAポリメラーゼ」とは、DNA重合酵素の変異型であり、この変異体は、次の正しいヌクレオチドと誤ったヌクレオチドとを識別することができる(例えば、プライマー結合鋳型核酸及び同種ヌクレオチドと鋳型依存性複合体を形成することができる)が、プライマーと同種ヌクレオチドとの間のホスホジエステル結合の形成を触媒することができない。例えば、天然DNAポリメラーゼの1つ以上のアミノ酸位置を(例えば、ポリメラーゼをコードするポリヌクレオチドの部位特異的突然変異誘発及び/またはポリヌクレオチドの1つ以上の部位の化学修飾によって)修飾して、機能欠損DNAポリメラーゼを作製することができる。
本明細書で使用される場合、「キット」とは、本明細書で開示される機能欠損DNAポリメラーゼを使用して検出反応及び/または配列決定反応を行うために使用できる1つ以上の成分を含んでいるパッケージ単位である。一般的なキットには、1つ以上の容器またはバイアルにパッケージされた、手順に使用される試薬の組み合わせを含み得る。
Sequencing−by−Binding
本明細書では、プライマー結合鋳型核酸分子及び次の正しいヌクレオチドに遭遇したときに、機能欠損DNAポリメラーゼが構造転移を受ける、ポリメラーゼによる核酸のsequencing−by−binding(SBB)反応について記載する。機能欠損DNAポリメラーゼは、ホスホジエステル結合の形成を触媒することができず、そのため本明細書で「三元」複合体と呼ばれる複合体のまま存続する。手法を問わず三元複合体の検出は、同種ヌクレオチド検出の代用法となる。
開示される手法は、一般用語で以下に説明する従来のSBB技術(シリアル番号14/805,381によって識別される保有者共通の米国特許出願に開示される)と共通する特徴を数多く有する。言うまでもなく、試験工程に使用される同じ酵素によるマグネシウム系触媒に関する言及は、機能欠損DNAポリメラーゼには該当しない。
1回の工程で、ポリメラーゼがプライマー結合鋳型核酸に結合して、本明細書で挿入前構造とも呼ばれる二元複合体を形成する。続く工程で、後続のヌクレオチドが結合し、ポリメラーゼフィンガーが閉じて、ポリメラーゼ、プライマー結合鋳型核酸、及びヌクレオチドを含む化学反応前構造を形成する。結合したヌクレオチドは取り込まれていない。本明細書で「試験」工程とも呼ばれるこの工程に続いて、付随するピロリン酸のヌクレオチドからの切断に伴ってホスホジエステル結合が形成される化学反応工程(すなわち、ヌクレオチドの取り込み)を行うことができる。ポリメラーゼ、プライマー結合鋳型核酸、及び新たに取り込まれたヌクレオチドは、化学反応後で翻訳前の構造を形成する。化学反応前構造及び転位前構造はいずれも、ポリメラーゼ、プライマー結合鋳型核酸、及びヌクレオチドを含み、ポリメラーゼが閉鎖状態であるため、いずれの構造も本明細書で閉鎖複合体または閉鎖三元複合体と呼ばれる場合がある。挿入前の閉鎖状態では、2価の触媒金属イオン、例えばMg2+が、プライマーの3’ヒドロキシルによるピロリン酸(PPi)の求核置換を含む迅速な化学反応を媒介する。PPiが脱離してポリメラーゼが開鎖状態に戻り、転位後の工程になると、転位により次回の反応が開始される。閉鎖複合体は2価触媒金属イオン(例えばMg2+)の非存在下で形成することができるが、閉鎖複合体のポリメラーゼは、利用可能な3’ヒドロキシル基を有する適切な基質が供給されると2価金属イオンの存在下でヌクレオチドの化学的付加を達成できる。Mg2+などの触媒金属イオンのレベルが低いかまたは不足していると、閉鎖複合体において次の正しいヌクレオチドの非共有結合的(例えば、物理的)な隔離が起こる。この閉鎖複合体を、安定化または捕捉された閉鎖複合体と呼ぶ場合がある。上記のいずれの反応工程においても、試験工程中にポリメラーゼの立体配置及び/または核酸との相互作用をモニタリングして、鋳型核酸配列の次の正しい塩基を同定することができる。取り込み前または取り込み後に、反応条件を変更してプライマー結合鋳型核酸からポリメラーゼを解離させ、さらに再度、反応条件を変更してポリメラーゼ結合を阻害する任意の試薬を局所環境から除去することができる。
一般的に、SBB手順は、次の鋳型塩基を同定する「試験」工程、及び場合により、プライマー結合鋳型核酸のプライマー成分の3’末端に1つ以上の相補的ヌクレオチドを付加する「取り込み」工程を含む。付加されるべき次の正しいヌクレオチドの同一性は、そのヌクレオチドを共有結合を介してプライマーの3’末端に化学結合せずに、または化学結合する前に決定される。試験工程は、手順で使用されるプライマー結合鋳型核酸を供給すること、ならびにプライマー結合鋳型核酸をポリメラーゼ酵素(例えば、DNAポリメラーゼ)及び可能性のある次の正しいヌクレオチドであるかを調べる1つ以上の試験ヌクレオチドと接触させることを含み得る。さらに、試験ヌクレオチドの存在下で、ポリメラーゼとプライマー結合鋳型核酸との間の相互作用をモニタリングまたは測定することを含む工程がある。場合により、相互作用は安定化剤の存在下で行うことができ、それによって次の正しいヌクレオチドの存在下でポリメラーゼ−核酸相互作用が安定化される。この場合も、試験工程で、そのヌクレオチドの取り込みを必要とせずに次の正しいヌクレオチドの同一性が同定または決定される。別の言い方をすれば、標識ヌクレオチドまたは非標識ヌクレオチドを使用して1回以上の試験サイクルを実施する場合に、プライマーへのヌクレオチドの化学的取り込みを伴わずに、次の正しいヌクレオチドの同一性を確定することができる。
便宜上、単一の鋳型核酸分子に関する方法が記載されている場合があるが、これらの方法は例示的なものである。本明細書で提供される配列決定方法は、複数の鋳型核酸を問題なく包含する。その場合、複数の核酸は、単一の核酸をクローン増幅したコピーであっても、または組み合わせを含む異種核酸、例えばクローン増幅された異種核酸の集団であってもよい。したがって、そのような配列決定方法を本明細書で完全に開示する。
試験工程
本明細書に記載の技術による試験工程は通常、以下の副工程を含む:(1)プライマー結合鋳型核酸(すなわち、場合により3’末端で伸長をブロックされていてもよいプライマーとハイブリダイズされた鋳型核酸分子)を供給する工程;(2)プライマー結合鋳型核酸を、機能欠損DNAポリメラーゼ及び少なくとも1つのヌクレオチドを含む反応混合物と接触させる工程;(3)ヌクレオチド(複数可)の存在下で、プライマー結合鋳型核酸への任意のヌクレオチドの化学的取り込みを伴わずに、機能欠損DNAポリメラーゼとプライマー結合鋳型核酸分子との相互作用をモニタリングする工程;及び(4)モニタリングした相互作用を利用して、鋳型核酸の次の塩基(すなわち、次の正しいヌクレオチド)を同定する工程。場合により、任意のヌクレオチドを接触させる前に、ヌクレオチド(複数可)の非存在下で、プライマー結合鋳型核酸分子を最初に機能欠損DNAポリメラーゼと接触させることができる。プライマー結合鋳型核酸のプライマーは、伸長可能なプライマーであり得る。プライマー結合鋳型核酸、機能欠損DNAポリメラーゼ、及び試験ヌクレオチドは、試験ヌクレオチドの塩基がプライマー結合鋳型核酸分子の次の塩基と相補的である場合に三元複合体を形成することができる。プライマー結合鋳型核酸及び機能欠損DNAポリメラーゼは、試験ヌクレオチドの塩基がプライマー結合鋳型核酸分子の次の塩基と相補的でない場合に二元複合体を形成することができる。場合により、接触は、二元複合体の形成よりも三元複合体の形成に有利な条件下で起こる。同定工程には、プライマー結合鋳型核酸の次の塩基と相補的であるヌクレオチドの塩基を同定することを含み得る。場合により、この工程には、三元複合体を選択的に維持または解離させる異なるヌクレオチド組成を有する1つ以上の洗浄溶液と三元複合体を接触させることを含む。
これらの全工程を1回以上繰り返して、広範な配列情報を得ることができる。例えば、最初に、プライマー結合鋳型核酸(場合により、ブロックされた3’末端を含む)を機能欠損DNAポリメラーゼ(場合により、外部標識で標識される)及び1つ以上のヌクレオチド(場合により、1種以上の外部標識を含む)と接触させることによって三元複合体を形成することができる。三元複合体の形成に使用されるヌクレオチドの一部のみを含む洗浄溶液と三元複合体が接触するように、緩衝液条件を変更することができる。場合により、この緩衝液には、三元複合体の形成に使用されるものと同じ機能欠損DNAポリメラーゼを含む。三元複合体中での機能欠損DNAポリメラーゼ及び/またはヌクレオチドの相互作用のモニタリングを実施することにより、三元複合体が安定したままである(それによって洗浄緩衝液中のヌクレオチドの1つが同種ヌクレオチドに対応することを示す)か、不安定になっている(それによって緩衝液に同種ヌクレオチドがもう含まれていないことを示す)かを決定することができる。前の洗浄サイクル中に存在したヌクレオチドを1つずつ順次除外していき、三元複合体が不安定になるまで洗浄工程を繰り返すことができる。場合により、1つまたは複数の試薬を交換した後、第2のDNAポリメラーゼによって同種ヌクレオチドを取り込むことができる。
これらの全工程を1回以上繰り返して、広範な配列情報を得ることができる。例えば、接触工程及びモニタリング工程を1回以上繰り返すことができる。場合により、接触工程及びモニタリング工程は、機能欠損DNAポリメラーゼ及び第1の試験ヌクレオチドを含む反応混合物を使用して繰り返される。場合により、接触工程及びモニタリング工程は、機能欠損DNAポリメラーゼ及び第2のヌクレオチドを含む反応混合物を使用して繰り返される。場合により、接触工程及びモニタリング工程は、機能欠損DNAポリメラーゼ及び第3のヌクレオチドを含む反応混合物を使用して繰り返される。場合により、接触工程及びモニタリング工程は、機能欠損DNAポリメラーゼ及び第4のヌクレオチドを含む反応混合物を使用して繰り返される。
本明細書で提供される配列決定方法において、三元複合体の形成に使用され、機能欠損DNAポリメラーゼ及び少なくとも1つの試験ヌクレオチドを含む反応混合物は、少なくとも1種類、2種類、3種類、または4種類のヌクレオチド分子(例えば、標識ヌクレオチドまたは非標識ヌクレオチドのいずれか)を含み得る。それに代わり、またはそれに加えて、反応混合物は多くとも4種類、3種類、2種類、または1種類のヌクレオチド分子を含み得る。場合により、ヌクレオチドは、dATP、dTTP、dCTP、及びdGTPから選択される天然ヌクレオチドである。場合により、反応混合物は、1つ以上の三リン酸ヌクレオチド及び1つ以上の二リン酸ヌクレオチドを含む。場合により、反応混合物に含まれるプライマー結合鋳型核酸、機能欠損DNAポリメラーゼ、及び4種のうち1種のヌクレオチド分子との間に閉鎖複合体が形成される。
提供される方法の特定の例では、プライマー結合鋳型核酸(場合により、3’末端でブロックされている)を、1つ以上のヌクレオチドを加えたポリメラーゼを含む反応混合物と接触させる。三元複合体は、1つ以上のヌクレオチドが、調査位置に関して同種ヌクレオチドである場合に形成される。
提供される方法の別の特定の例では、プライマー結合鋳型核酸(場合により、3’末端でブロックされている)を、試験ヌクレオチドを添加していない機能欠損DNAポリメラーゼを含む反応混合物と最初に接触させる。その後、プライマー結合鋳型核酸を、三元複合体の形成に関与し得る機能欠損DNAポリメラーゼ及び1つ以上の試験ヌクレオチドを含む反応混合物と接触させる。その後、場合によりブロックされたプライマー結合鋳型核酸を、ポリメラーゼ及び先の反応混合物よりも1つ少ないヌクレオチドを含む反応混合物と接触させる。どの三元複合体の維持または不安定化のモニタリングも、逐次、または各反応混合物の変更後に行うことができる。
ヌクレオチドの取り込みは試験工程中に行われないので、次の正しいヌクレオチドの同一性を決定した後に、または少なくとも決定を行うのに必要な結果を取得した後に、個別に取り込み工程を行ってもよい。同種ヌクレオチドが試験工程中に既に同定されているため、モニタリングを必要とせずに個別の取り込み工程を行うことができる。後続のヌクレオチドの付加を阻止するために、可逆的に転写終結されるヌクレオチドを使用することもできる。SBB法は、ヌクレオチドでの標識の有無にかかわらず機能欠損DNAポリメラーゼと鋳型核酸との間の相互作用をモニタリングできるので、標識ヌクレオチドの使用の有無にかかわらず、鋳型核酸塩基の制御された決定を可能にする。ただし、明記しておくと、本明細書で開示される手順を実施して、結合したヌクレオチドを蛍光検出する場合に標識ヌクレオチド(例えば、蛍光ヌクレオチド)を使用することは任意である。
本明細書で提供される配列決定方法では、試験ヌクレオチド(例えば、少なくとも1つの試験ヌクレオチド)は、3’ヒドロキシル基、またはプライマーの3’末端でのホスホジエステル結合の形成を阻止するブロック部分を含み得る。3’ターミネーター部分または2’ターミネーター部分は、可逆的ターミネーターまたは不可逆的ターミネーターのいずれであってもよい。場合により、少なくとも1つのヌクレオチド分子の可逆的ターミネーターは、可逆的ターミネーターを含む試験ヌクレオチドを用いた試験工程後のある時点で置換または除去される。
接触工程
機能欠損DNAポリメラーゼ及び1つ以上の試験ヌクレオチド分子を含む反応混合物と、プライマー結合鋳型核酸分子との接触は、三元複合体の形成を安定化する条件下及び/または二元複合体の形成を不安定化する条件下で行うことができる。場合により、反応混合物はグルタミン酸カリウムを含む。場合により、三元複合体の形成を安定化する条件には、プライマー結合鋳型核酸を安定化剤と接触させることを含む。場合により、反応混合物は安定化剤を含む。安定化剤は、ポリメラーゼ媒介性の取り込みを阻害する1つ以上の非触媒金属イオンであり得る。この目的に有用である例示的な非触媒金属イオンとしては、ストロンチウムイオン、スズイオン、ニッケルイオン、及びユーロピウムイオンが挙げられる。例えば、プライマー結合鋳型核酸、ポリメラーゼ、及び試験ヌクレオチドを含む試験工程の反応混合物はまた、安定化剤として0.01mM〜30mMの塩化ストロンチウムを含み得る。
それに代わり、試験工程においてブロックされたプライマー結合鋳型核酸を使用して三元複合体を形成する場合は特に、試験工程及びモニタリング工程を実施するため使用する反応混合物に、場合により触媒金属イオン(例えば、Mg2+またはMn2+)を含み得る。未修飾(すなわち、3’ブロックされていない)プライマーを使用する場合に重合活性を助けるのに必要な触媒金属イオンの濃度は、当業者によく知られている。
ある特定の実施形態では、プライマー結合鋳型核酸は、固体支持体の表面に固定される。固定には、プライマー結合鋳型核酸の一方もしくは他方の鎖、または両方の鎖と、固体支持体との間に共有結合または非共有結合のいずれを用いてもよい。例えば、プライマー結合鋳型核酸の鋳型鎖とプライマー鎖が異なる分子である場合、鋳型鎖は、例えばその5’末端を介して固定することができる。ただし、ポリメラーゼと相互作用するためにプライマーの3’末端を利用できる必要がある。
プライマー結合鋳型核酸を固体支持体に固定する場合、接触工程の実施方法に選択肢がある。例えば、種々の試薬溶液を入れた別々の容器(例えば、マルチウェルプレートの個々のウェル)間で固体支持体を物理的に移動させることができる。これは、自動装置またはロボット装置を使用して行うと便利である。別の例では、プライマー結合鋳型核酸は、フローセルまたはチャンバー内の固体支持体に固定される。この場合、種々の液体試薬のフローを制御してチャンバーに通す、すなわち固定されたプライマー結合鋳型核酸を横断させることによって、異なった接触工程を実施することができる。
モニタリング工程
ヌクレオチド分子の存在下で、機能欠損DNAポリメラーゼとプライマー結合鋳型核酸分子との相互作用をモニタリングまたは測定する工程は、多様な方法で行うことができる。例えば、モニタリングには、プライマー結合鋳型核酸、機能欠損DNAポリメラーゼ、及びヌクレオチド間の相互作用に関わる会合反応速度を測定することを含み得る。ヌクレオチド分子の存在下で、機能欠損DNAポリメラーゼとプライマー結合鋳型核酸分子との相互作用をモニタリングする工程には、機能欠損DNAポリメラーゼとプライマー結合鋳型核酸分子との間の平衡結合定数(すなわち、ヌクレオチド存在下での鋳型核酸に対するポリメラーゼの平衡結合定数)を測定することを含み得る。したがって、例えば、モニタリングには、ヌクレオチド存在下でのプライマー結合鋳型核酸に対する機能欠損DNAポリメラーゼの平衡結合定数を測定することを含む。ヌクレオチド分子の存在下で、機能欠損DNAポリメラーゼとプライマー結合鋳型核酸分子との相互作用をモニタリングする工程には、4つのヌクレオチドのいずれか1つの存在下でプライマー結合鋳型核酸からのポリメラーゼの解離反応速度を測定することを含む。場合により、ヌクレオチド分子の存在下で、機能欠損DNAポリメラーゼとプライマー結合鋳型核酸分子との相互作用をモニタリングする工程には、閉鎖複合体の解離(すなわち、プライマー結合鋳型核酸、ポリメラーゼ、及びヌクレオチドの解離)反応速度の測定を含む。場合により、測定された会合反応速度は、ヌクレオチド分子の同一性に応じて異なる。場合により、機能欠損DNAポリメラーゼは、使用されるヌクレオチドの種類ごとに異なる親和性を有する。場合により、機能欠損DNAポリメラーゼは、各種類の閉鎖複合体におけるヌクレオチドの種類ごとに異なる解離定数を有する。会合、平衡、及び解離の反応速度は既知であり、当業者によって容易に決定することができる。例えば、Markiewicz et al.,Nucleic Acids Research 40(16):7975−84(2012);Xia et al.,J.Am.Chem.Soc.135(1):193−202(2013);Brown et al.,J.Nucleic Acids,Article ID 871939,11 pages(2010);Washington,et al.,Mol.Cell.Biol.24(2):936−43(2004);Walsh and Beuning,J.Nucleic Acids,Article ID 530963,17 pages(2012);及びRoettger,et al.,Biochemistry 47(37):9718−9727(2008)を参照のこと。各文献はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
モニタリング工程には、プライマー結合鋳型核酸のプライマーに第1のヌクレオチドを化学的に取り込むことなく、第1のヌクレオチドの存在下でのポリメラーゼとプライマー結合鋳型核酸との定常状態の相互作用をモニタリングすることを含み得る。場合により、モニタリングには、プライマー結合鋳型核酸のプライマーに第1のヌクレオチドを化学的に取り込むことなく、第1のヌクレオチドの存在下でのプライマー結合鋳型核酸からのポリメラーゼの解離をモニタリングすることを含む。場合により、モニタリングには、プライマー結合鋳型核酸のプライマーに第1のヌクレオチドを化学的に取り込むことなく、第1のヌクレオチドの存在下でのポリメラーゼとプライマー結合鋳型核酸との会合をモニタリングすることを含む。この場合も、各手順の試験ヌクレオチドは、天然ヌクレオチド(すなわち、非標識)、標識ヌクレオチド(例えば、蛍光標識ヌクレオチド)、またはヌクレオチド類似体(例えば、可逆的または不可逆的なターミネーター部分を含むように修飾されたヌクレオチド)であってよい。
機能欠損DNAポリメラーゼは、ホスホジエステル結合の形成を実質的に触媒することができないので、試験反応混合物に触媒金属イオンを含めるかどうかは任意である。言うまでもなく、反応混合物に触媒金属イオンが存在しないか、またはポリメラーゼの活性部位に触媒金属イオンが存在しない場合、プライマー結合鋳型核酸のプライマーへのヌクレオチドの化学的取り込みが阻止される。
ヌクレオチドの化学的取り込みを阻止する反応条件を与える一方で、機能欠損DNAポリメラーゼとプライマー結合鋳型核酸との間の相互作用のモニタリングを可能にすることによって、部分的に試験工程を制御することができ、それにより核酸鋳型鎖の次の塩基の同一性の決定が可能になる。そのような反応条件を「試験反応条件」と呼ぶ場合がある。場合により、試験条件下で三元複合体または閉鎖複合体が形成される。場合により、試験条件下、すなわち化学反応前構造で、安定化された三元複合体または閉鎖複合体が形成される。場合により、安定化された閉鎖複合体は、内包されたヌクレオチドは取り込まれているが、閉鎖複合体が後続のヌクレオチドを取り込みできない転位前構造の状態である。場合により、試験条件は、種々のヌクレオチドの存在下でのプライマー結合鋳型核酸に対するポリメラーゼの親和性の差を明確にするものである。場合により、試験条件によって、種々のヌクレオチドの存在下でのプライマー結合鋳型核酸に対する機能欠損DNAポリメラーゼの親和性に差が生じる。一例として、種々のヌクレオチドの存在下でのプライマー結合鋳型核酸に対する機能欠損DNAポリメラーゼの親和性に差を生じさせる試験条件として、高塩濃度及びグルタミン酸カリウムの含有が挙げられるが、これらに限定されない。プライマー結合鋳型核酸に対するポリメラーゼの親和性を変化させるために使用できるグルタミン酸カリウムの濃度は、10mM〜1.6Mのグルタミン酸カリウム、すなわち10mM〜1.6Mの間の任意の量を含む。場合により、高塩とは、50mM〜1,500mMの塩濃度をいう。
試験は通常、モニタリング工程において、鋳型核酸との、または鋳型核酸とヌクレオチドの組み合わせとの機能欠損DNAポリメラーゼの相互作用を検出することを含む。検出には、光学的手段、電気的手段、熱的手段、音響的手段、化学的手段、及び機械的手段が含まれ得る。場合により、モニタリングは、緩衝液交換後または洗浄工程後に行われ、洗浄工程では、観察領域から何らかの非結合試薬(例えば、非結合ポリメラーゼ及び/またはヌクレオチド)を除去する。場合により、モニタリングは、緩衝液交換時または洗浄工程時に行われ、それによりポリメラーゼ−核酸複合体またはポリメラーゼ−核酸−ヌクレオチド複合体の解離反応速度を利用して次の塩基の同一性を決定することができる。場合により、モニタリングは、試験反応混合物または第1の反応混合物の添加期間にわたって行われ、それによりポリメラーゼの核酸との会合反応速度を利用して核酸上の次の塩基の同一性を決定することができる。場合により、モニタリングには、ポリメラーゼ及びプライマー結合鋳型核酸の二元複合体と閉鎖複合体を区別することを含む。場合により、モニタリングは平衡条件下で行われ、その場合、測定される親和性は平衡親和性である。異なるまたは類似する試験試薬を含む複数の試験工程を順次実行して、次の鋳型塩基の同一性を確認することができる。異なった核酸が種々の試験試薬に対して違う反応をする1回の配列決定反応で、複数の鋳型核酸を同時に配列決定する場合に複数の試験工程を利用することができる。場合により、複数の試験工程により、次の塩基決定の精度を改善することができる。
例示的な配列決定反応において、試験工程には、機能欠損DNAポリメラーゼ、プライマー結合鋳型核酸、及び次の正しいヌクレオチドを含む閉鎖複合体の形成及び/または安定化を含む。閉鎖複合体の形成及び/または解離の特性をモニタリングして、内包されたヌクレオチド、すなわち結果として鋳型核酸の次の塩基を同定する。閉鎖複合体の特性は、配列決定反応成分(例えば、機能欠損DNAポリメラーゼ、プライマー、鋳型核酸、ヌクレオチド)及び/または反応混合物の成分及び/または条件に依存し得る。場合により、閉鎖複合体は、化学反応前構造の状態にある。場合により、閉鎖複合体は、転位前構造の状態にある。場合により、閉鎖複合体は、転位後構造の状態にある。
試験工程には、試験ヌクレオチドの存在下で、機能欠損DNAポリメラーゼとプライマー結合鋳型核酸との相互作用をモニタリングすることを含む。閉鎖複合体の形成をモニタリングすることができる。場合により、閉鎖複合体が形成されていないことがモニタリングされる。場合により、閉鎖複合体の解離がモニタリングされる。場合により、取り込み工程には、ヌクレオチドの取り込みをモニタリングすることを含む。場合により、取り込み工程には、ヌクレオチドが取り込まれないことをモニタリングすることを含む。
試験工程及び/または取り込み工程の任意のプロセスをモニタリングすることができる。場合により、機能欠損DNAポリメラーゼは、外部標識すなわち「タグ」を有する。場合により、機能欠損DNAポリメラーゼの検出可能なタグまたは標識は除去可能である。場合により、ヌクレオチドまたは機能欠損DNAポリメラーゼは検出可能な標識を有するが、その標識は配列決定中に検出されない。場合により、配列決定反応のどの成分も外部標識で検出可能に標識されない。
ヌクレオチドの取り込みを可能にしない条件下で、正しいヌクレオチドの存在下と誤ったヌクレオチドの存在下での鋳型核酸に対する機能欠損DNAポリメラーゼの親和性の変化をモニタリングして、核酸の配列決定に利用することができる。修飾または標識ヌクレオチドを含む種々のヌクレオチドの存在下での鋳型核酸に対する機能欠損DNAポリメラーゼの親和性を、様々なヌクレオチド存在下でのポリメラーゼ−核酸相互作用の解離速度としてモニタリングすることができる。様々な一致する/正しいヌクレオチド、一致しない/誤ったヌクレオチド、及び修飾ヌクレオチドに対する多くの標準ポリメラーゼの親和性及び解離速度は、当技術分野で既知である。クレノーポリメラーゼの1分子イメージングは、取り込みが阻止されるヌクレオチド型である種々のヌクレオチド型に対する鋳型核酸の解離速度が明確にかつ測定可能に異なることを明らかにしている。
場合により、プライマー結合鋳型核酸の存在下で機能欠損DNAポリメラーゼに特定の種類のヌクレオチドが供給される。反応がモニタリングされ、ヌクレオチドが次の正しいヌクレオチドである場合、ポリメラーゼは安定化されて閉鎖複合体を形成することができる。ヌクレオチドが誤ったヌクレオチドである場合も、引き続き閉鎖複合体を形成できるが、安定化剤または反応条件(例えば、触媒イオンの不在、ポリメラーゼ阻害剤、塩)による補助を加えないと、閉鎖複合体が解離する可能性がある。解離速度は、ポリメラーゼ、鋳型核酸、及びヌクレオチドの具体的な組み合わせの親和性、ならびに反応条件に依存する。場合により、親和性は解離速度として測定される。場合により、親和性は、閉鎖複合体の種々のヌクレオチド間で異なる。例えば、プライマーの3’末端の下流にある鋳型核酸中の次の塩基がGである場合、解離速度として測定されるポリメラーゼ−核酸の親和性は、付加されるのがdATP、dCTP、dGTP、またはdTTPであるかに応じて異なると予想される。この場合、dCTPの解離速度が最も遅く、他のヌクレオチドは相互作用に関して異なる解離速度を示す。場合により、解離速度は、反応条件、例えば安定化剤の存在(例えば、阻害化合物)または反応条件(例えば、ヌクレオチド修飾または修飾ポリメラーゼ)に応じて異なる場合がある。次の正しいヌクレオチドの同一性が決定された後、閉鎖複合体の形成を特異的に標的とする条件下で、1種類、2種類、3種類、4種類、またはそれ以上の種類のヌクレオチドを反応混合物に同時に投入することができる。過剰のヌクレオチドを反応混合物から除去し、閉鎖複合体の次の正しいヌクレオチドを取り込むように、反応条件を(例えば、可逆的ターミネーターヌクレオチドの使用によって)調節することができる。この配列決定反応では、配列決定サイクルごとに1つのヌクレオチドのみが確実に取り込まれる。
ヌクレオチド存在下での鋳型核酸に対する機能欠損DNAポリメラーゼの親和性は、当業者に既知の複数の方法で測定することができる。場合により、親和性は解離速度として測定され、解離速度は、反応物を洗浄緩衝液で洗浄したとき、鋳型核酸から解離される機能欠損DNAポリメラーゼをモニタリングすることによって測定される。機能欠損DNAポリメラーゼが十分に低濃度であればポリメラーゼの結合速度を拡散律速させることができ、機能欠損DNAポリメラーゼがDNA−ポリメラーゼ複合体から脱離した場合、すぐには再充填されず、ポリメラーゼが複合体から解離したことを検出するまで十分な時間が得られる。高親和性相互作用の場合、機能欠損DNAポリメラーゼは核酸からゆっくりと解離し、対する低親和性相互作用では、ポリメラーゼが迅速に解離される結果となる。この場合の親和性の幅は、動的洗浄条件または平衡状態で解離速度を測定したときの解離速度の差を意味する。最小解離速度は、付加ヌクレオチドに相補的な塩基に当てはまり、他の解離速度は、機能欠損DNAポリメラーゼと選択されたヌクレオチドとの組み合わせに応じて既知の方法で変化する。
場合により、解離速度は、機能欠損DNAポリメラーゼ及びヌクレオチドが反応混合物に供給された後の平衡シグナル強度として測定され、その場合、最も遅い解離速度(最も高親和性)のヌクレオチドとの相互作用が最も強いシグナルを生じ、それ以外の様々な解離速度のヌクレオチドとの相互作用は、測定可能な異なる強度のシグナルを生成する。非限定的な例として、好ましくは全内部反射(TIRF)条件下で測定した蛍光標識ポリメラーゼは、適切に選択された時間枠で表面固定化核酸分子に結合したポリメラーゼ分子の数によって決定される種々の測定蛍光強度を生じる。ポリメラーゼの内部蛍光、例えばトリプトファン蛍光も利用することができる。解離速度が速い相互作用では、選択された時間枠で結合する機能欠損DNAポリメラーゼ分子の数が非常に少ないので、低い測定強度を生じる。ここでの速い解離速度とは、ポリメラーゼの大部分が核酸から解離されていることを示す。標識法または蛍光法を含むが、これに限定されない任意の表面局在測定法を用いることができる。平衡条件下での親和性を測定する適切な測定法として、結合質量、屈折率、表面電荷、誘電率、及び当技術分野で既知の他の方法が挙げられるが、これらに限定されない。場合により、結合速度と解離速度を組み合わせた技術により、先に提示した方法でより高い忠実度が得られる。非限定的な例として、均一な遅い結合速度、塩基に依存して変化する解離速度により、未結合のポリメラーゼが長期間結合しないままとなり、解離速度及び測定強度の変動の識別を強化できる。結合速度は、添加される機能欠損DNAポリメラーゼ、ヌクレオチド、またはポリメラーゼとヌクレオチド両方の濃度を低下させることによって操作することができる。
場合により、機能欠損DNAポリメラーゼと核酸との間の相互作用は、ポリメラーゼに結合された検出可能なタグによってモニタリングされる。タグは、光学、電気、熱、質量、大きさ、電荷、振動、及び圧力を含むがこれらに限定されない検出方法によってモニタリングすることができる。標識は、磁気、蛍光、または電荷であり得る。外部標識法及び内部標識法では、蛍光異方性を利用して、閉鎖複合体における機能欠損DNAポリメラーゼの核酸への安定な結合を決定することができる。
一例として、機能欠損DNAポリメラーゼをフルオロフォアで標識し、閉鎖複合体の形成を安定な蛍光シグナルとしてモニタリングする。誤ったヌクレオチドの存在下での機能欠損DNAポリメラーゼと鋳型核酸との不安定な相互作用は、次の正しいヌクレオチドの存在下で形成される閉鎖複合体と比較して、測定可能な程度の弱いシグナルを生じる。ただし、特定の好ましい実施形態では、sequencing−by−binding手順は、機能欠損DNAポリメラーゼに結合された任意の外部標識(例えば、蛍光標識)の検出に依存しない。
場合により、試験工程中に、プライマー結合鋳型核酸分子(場合により、3’末端でブロックされている)を、機能欠損DNAポリメラーゼ及び1つ以上の外部標識したヌクレオチドと接触させる。標識ヌクレオチドが存在する結果として生成されるシグナルのモニタリングは、標識ヌクレオチドを含む三元複合体の形成及び安定化/不安定化に関する情報を提供する。例えば、外部標識が蛍光標識であり、プライマー結合鋳型核酸が特定の座位で固体支持体に固定されている場合、その座位に関連する蛍光シグナルのモニタリングを利用して、異なる反応混合物条件下での三元複合体の形成及び安定性をモニタリングすることができる。
同定工程
次の正しい塩基またはヌクレオチドの同一性を、三元複合体または閉鎖複合体の有無、形成、及び/または解離をモニタリングすることによって決定することができる。次の塩基の同一性は、プライマーの3’末端に次の正しいヌクレオチドを化学的に取り込むことなく決定することができる。場合により、次の塩基の同一性は、添加されたヌクレオチドの存在下でのプライマー結合鋳型核酸に対する機能欠損DNAポリメラーゼの親和性をモニタリングすることによって決定される。場合により、次の正しいヌクレオチドの存在下でのプライマー結合鋳型核酸に対するポリメラーゼの親和性を利用して、鋳型核酸上の次の正しい塩基を決定することができる。場合により、誤ったヌクレオチドの存在下でのプライマー結合鋳型核酸に対する機能欠損DNAポリメラーゼの親和性を利用して、鋳型核酸上の次の正しい塩基を決定することができる。
ある特定の実施形態では、プライマー結合鋳型核酸(またはブロックされたプライマー結合鋳型核酸)を含む三元複合体は、機能欠損DNAポリメラーゼ及び複数のヌクレオチドの存在下で形成される。三元複合体に関与する同種ヌクレオチドは、場合により、例えば、ある反応混合物を別の反応混合物と交換することによって同種ヌクレオチドが反応混合物から除外されたときに生じる複合体の消失を観察することによって同定される。このとき、複合体の不安定化が同種ヌクレオチドの同一性の指標となる。プライマー結合鋳型核酸が同種ヌクレオチドを含まない反応混合物に晒されると、結合シグナル(例えば、固体支持体上の特定の座位に関連する蛍光結合シグナル)の消失が起こり得る。場合により、反応混合物中での単一ヌクレオチドの存在下で三元複合体が維持されることによっても、同種ヌクレオチドの同一性を示すことができる。
取り込み工程
場合により、本明細書で提供される方法は、取り込み工程をさらに含む。一例として、取り込み工程には、鋳型核酸の次の塩基に相補的な単一のヌクレオチド(例えば、非標識ヌクレオチド、可逆的ターミネーターヌクレオチド、または検出可能に標識されたヌクレオチド類似体)を、プライマー結合鋳型核酸分子のプライマーに取り込むことを含む。場合により、取り込み工程には、プライマー結合鋳型核酸分子、ポリメラーゼ(試験工程で使用される機能欠損DNAポリメラーゼ以外)、及びヌクレオチドを取り込み反応混合物と接触させることを含む。取り込み反応混合物は通常、触媒金属イオンを含む。
提供される方法には、取り込み工程後に次の試験工程のためプライマー結合鋳型核酸分子を調製することをさらに含んでもよい。場合により、調製には、プライマー結合鋳型核酸または核酸/ポリメラーゼ複合体に、1回以上の洗浄工程;温度の変更;機械的振動;pHの変更;塩もしくは緩衝液の組成の変更;光学的刺激、またはそれらの組み合わせを施すことを含む。場合により、洗浄工程には、プライマー結合鋳型核酸またはプライマー結合鋳型核酸/ポリメラーゼ複合体を、1種以上の緩衝液、界面活性剤、タンパク質変性剤、プロテアーゼ、酸化剤、還元剤、またはポリメラーゼ内の内部架橋もしくはポリメラーゼと核酸との間の架橋を開裂できる他の薬剤と接触させることを含む。
場合により、この方法は、鋳型核酸分子を配列決定するために試験工程及び取り込み工程を繰り返すことをさらに含む。試験工程は、取り込み工程を実施する前に1回以上繰り返すことができる。場合により、2回の連続する試験工程は、異なるヌクレオチド分子(例えば、標識されたまたは非標識の異なるヌクレオチド)を有する反応混合物を含む。場合により、プライマー結合鋳型核酸分子に単一のヌクレオチドを取り込む前に、第1の反応混合物を、ホスホジエステル結合形成が可能なポリメラーゼ及び1種類、2種類、3種類、または4種類のヌクレオチド分子(例えば、異なる非標識ヌクレオチド)を含む第2の反応混合物に置き換える。場合により、ヌクレオチド分子は、dATP、dTTP、dCTP、及びdGTPから選択される天然ヌクレオチドである。
取り込み反応混合物によって取り込み反応を実行することができる。場合により、取り込み反応混合物は、試験反応とは異なるヌクレオチド組成を含む。例えば、試験反応ではある1種類のヌクレオチドを含み、取り込み反応では別の種類のヌクレオチドを含む。別の例として、試験反応ではある1種類のヌクレオチドを含み、取り込み反応では4種類のヌクレオチドを含むか、またはその逆である。場合により、試験反応混合物は、取り込み反応混合物に変更されるか、または置き換えられる。場合により、取り込み反応混合物は、触媒金属イオン、塩化カリウム、またはそれらの組み合わせを含む。
場合により、取り込み工程には、試験工程からのヌクレオチドを置き換え、別のヌクレオチドを鋳型核酸プライマーの3’末端に取り込むことを含む。取り込み工程には、閉鎖複合体(例えば、ヌクレオチドが修飾ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体である)の内部からヌクレオチドを解離させ、鋳型核酸プライマーの3’末端に異なる種類のヌクレオチドを取り込むことをさらに含み得る。場合により、解離したヌクレオチドが除去され、次の正しいヌクレオチドを含む取り込み反応混合物に置き換えられる。
取り込みに適した反応条件には、試験反応混合物を取り込み反応混合物に置き換えることを含んでもよい。場合により、試験反応混合物中に存在するヌクレオチドが、取り込み反応混合物中の1つ以上のヌクレオチドに置き換えられる。場合により、試験工程時に存在するポリメラーゼは、取り込み工程時に置き換えられる。場合により、試験工程時に存在するポリメラーゼは、取り込み工程時に変更される。場合により、試験工程時に存在する1つ以上のヌクレオチドは、取り込み工程時に変更される。試験工程時に存在する反応混合物及び/または反応条件を、取り込み工程時に任意の手段によって変更することができる。このような手段として、試薬の除去、試薬のキレート化、試薬の希釈、試薬の添加、誘電率またはpHなどの反応条件の変更、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。ポリメラーゼ、プライマー結合鋳型核酸、及びヌクレオチドの任意の組み合わせを含む反応混合物中の試薬を、試験工程及び/または取り込み工程時に変更することができる。
場合により、取り込み工程の反応混合物は競合阻害剤を含み、この競合阻害剤は複数の取り込みの発生を低減させる。ある特定の実施形態では、競合阻害剤は、取り込み不可能なヌクレオチドである。ある特定の実施形態では、競合阻害剤はアミノグリコシドである。競合阻害剤は、活性部位でヌクレオチドまたは触媒金属イオンのいずれかを置換することができ、それによって第1の取り込み後に競合阻害剤が活性部位を占有し、第2の組み込みを阻止する。いくつかの実施形態では、取り込み可能なヌクレオチドと競合阻害剤の両方を取り込み工程に導入することで、取り込み可能なヌクレオチドと阻害剤の比を調節して、プライマーの3’末端に確実に単一のヌクレオチドを取り込むことができる。
場合により、取り込み反応混合物を含め、供給される反応混合物は、取り込み不可能なヌクレオチドである少なくとも1つの非標識ヌクレオチド分子を含む。言い換えれば、供給される反応混合物は、プライマー結合鋳型核酸分子のプライマーに取り込むことができない1つ以上の非標識ヌクレオチド分子を含み得る。取り込みできないヌクレオチドは、例えば二リン酸ヌクレオチドを含む。例えば、ヌクレオチドは、ヌクレオチドを取り込み不可能にする三リン酸基の修飾を含み得る。取り込み不可能なヌクレオチドの例は、米国特許第7,482,120号で参照することができ、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。場合により、プライマーはその3’末端に遊離ヒドロキシル基を含まなくてもよく、それによりプライマーはどのヌクレオチドも取り込むことができず、その結果、どのヌクレオチドも取り込み不可能となる。
場合により、ポリメラーゼ阻害剤を試験工程において試験ヌクレオチドを含有する反応混合物に加えることで、次の正しいヌクレオチドが結合すると核酸上のポリメラーゼを捕捉することができる。場合により、ポリメラーゼ阻害剤はピロリン酸類似体である。場合により、ポリメラーゼ阻害剤はアロステリック阻害剤である。場合により、ポリメラーゼ阻害剤はDNAまたはRNAアプタマーである。場合により、ポリメラーゼ阻害剤は、ポリメラーゼ中の触媒イオン結合部位と競合する。場合により、ポリメラーゼ阻害剤は逆転写酵素阻害剤である。ポリメラーゼ阻害剤は、HIV−1逆転写酵素阻害剤またはHIV−2逆転写酵素阻害剤であってもよい。HIV−1逆転写酵素阻害剤は、(4/6−ハロゲン/MeO/EtO−置換ベンゾ[d]チアゾール−2−イル)チアゾリジン−4−オンであってもよい。
提供される配列決定方法では、取り込み工程の前に次の正しいヌクレオチドが同定されるため、取り込み工程で標識試薬及び/またはモニタリングを必要としない。したがって、提供される方法において、ヌクレオチドは、場合により、結合された検出可能なタグまたは標識を含まない。場合により、ヌクレオチドは検出可能な標識を含むが、この方法では標識は検出されない。場合により、正しいヌクレオチドは検出可能な標識を含まないが、誤ったヌクレオチドまたは次の塩基と相補的でないヌクレオチドは、検出可能な標識を含む。
配列決定反応の試験工程は、取り込み工程の前に1回、2回、3回、4回、またはそれ以上繰り返すことができる。試験工程及び取り込み工程は、所望する鋳型核酸の配列が得られるまで繰り返すことができる。
反応混合物
核酸配列決定反応混合物、または単に「反応混合物」は通常、ポリメラーゼによる核酸合成反応によく使用される試薬を含む。反応混合物試薬には、酵素(例えば、機能欠損DNAポリメラーゼ、または取り込み工程で使用されるポリメラーゼ)、dNTP、鋳型核酸、プライマー核酸、塩、緩衝液、小分子、補因子、金属、及びイオンが含まれるが、これらに限定されない。イオンは、触媒イオン、2価触媒イオン、非触媒イオン、非共有結合金属イオン、またはそれらの組み合わせであり得る。反応混合物には、NaCl、KCl、酢酸カリウム、酢酸アンモニウム、グルタミン酸カリウム、NH4Cl、またはNH4HSO4などの塩を含み得る。反応混合物には、Mg2+もしくはMn2+酢酸マグネシウム、Co2+、またはBa2+などのイオン源を含み得る。反応混合物には、スズイオン、Ca2+、Zn2+、Cu2+、Co2+、Fe2+、Ni2+、またはEu+3を含み得る。緩衝液として、Tris、トリシン、HEPES、MOPS、ACES、MES、リン酸系緩衝液、及び酢酸系緩衝液を含み得る。反応混合物には、EDTA、EGTAなどのキレート剤を含み得る。場合により、反応混合物は架橋試薬を含む。本明細書では、場合により、試験工程中に使用される反応混合物、ならびに上記薬剤の1つ以上を含み得る、ヌクレオチド取り込み中に使用される取り込み反応混合物を提供する。試験中に使用される場合、本明細書で反応混合物を試験反応混合物と呼ぶ場合がある。場合により、試験反応混合物は、高濃度の塩;高pH;1種類、2種類、3種類、4種類、またはそれ以上の種類の非標識ヌクレオチド;グルタミン酸カリウム;キレート剤;ポリメラーゼ阻害剤;触媒金属イオン;ポリメラーゼ媒介性取り込みを阻害する非触媒金属イオン;またはそれらの任意の組み合わせを含む。試験反応混合物は、10mM〜1.6Mのグルタミン酸カリウム、すなわち10mM〜1.6Mの間の任意の量を含む。場合により、取り込み反応混合物は、触媒金属イオン;1種類、2種類、3種類、4種類、またはそれ以上の種類のヌクレオチド(例えば、非標識ヌクレオチド);塩化カリウム;ポリメラーゼ媒介性取り込みを阻害する非触媒金属イオン;またはそれらの任意の組み合わせを含む。
場合により、開示される技術による反応混合物は、試験工程中に閉鎖複合体の形成及び安定化を調節する。例えば、試験工程の反応条件は、場合により、ヌクレオチドを内包する閉鎖複合体の形成及び/または安定化に有利なものであり、二元複合体の形成及び/または安定化を妨げることができる。ポリメラーゼと鋳型核酸との二元相互作用は、イオン強度、pH、温度、またはそれらの任意の組み合わせなどの配列決定反応パラメーターを調節することによって、あるいは二元複合体の不安定化剤を反応物に添加することによって操作することができる。場合により、高塩(例えば、50mM〜1,500mM)及び/またはpH変化を利用して、二元複合体を不安定化する。場合により、ヌクレオチドの存在に関係なく、配列決定反応の試験工程または取り込み工程の間に、ポリメラーゼと鋳型核酸との二元複合体が形成される場合がある。場合により、反応条件は、閉鎖三元複合体の安定化及び二元複合体の不安定化に有利である。一例として、試験反応混合物のpHを、閉鎖三元複合体の安定化及び二元複合体の不安定化に有利になるようにpH4.0〜pH10.0に調整することができる。場合により、試験反応混合物のpHは、pH4.0〜pH6.0である。場合により、試験反応混合物のpHは、pH6.0〜pH10.0である。
本明細書で開示する、提供される反応混合物及び配列決定方法は、ヌクレオチドの化学的付加を制御しながら、次の塩基の同一性を明らかにする方法でヌクレオチドと鋳型核酸とのポリメラーゼ相互作用を促進する。場合により、この方法は、検出可能に標識されたヌクレオチドの非存在下で、または標識が検出されない標識ヌクレオチドの存在下で行われる。場合により、反応混合物は、検出可能な外部標識(例えば、蛍光標識)を有するヌクレオチドを含む。場合により、反応混合物中の複数のヌクレオチドは、同じ検出可能な外部標識を有する。場合により、反応混合物中の複数のヌクレオチドは、異なる検出可能な外部標識を有する。場合により、反応混合物は、1種以上の外部標識ポリメラーゼ酵素を含んでもよい。
本明細書では、試験反応混合物条件下で、プライマー結合鋳型核酸に結合したポリメラーゼ、及びポリメラーゼ−鋳型核酸複合体内に内包されるヌクレオチドを含む閉鎖複合体の形成及び/または安定化を促進する反応混合物及び方法を提供する。試験反応条件は、ヌクレオチドの取り込みを阻害または減弱することができる。場合により、内包されたヌクレオチドの取り込みを阻害し、複合体を化学反応前構造または三元複合体の状態で安定化または捕捉する。場合により、内包されたヌクレオチドが取り込まれ、後続のヌクレオチドの取り込みが阻害される。この場合、複合体は、転位前構造の状態で安定化または捕捉される。本明細書で提供される配列決定反応の場合、閉鎖複合体が試験工程中に安定化され、制御されたヌクレオチドの取り込みが可能になる。場合により、安定化された閉鎖複合体とは、内包されたヌクレオチドの取り込みが、試験工程中に一時的(例えば、複合体を試験した後、ヌクレオチドを取り込む場合)または永続的(例えば、試験のみの場合)に減弱される複合体である。場合により、安定化された閉鎖複合体は、内包されたヌクレオチドの取り込みは可能であるが、後続のヌクレオチドの取り込みは不可能である。場合により、ヌクレオチド存在下で鋳型核酸との何らかのポリメラーゼ相互作用をモニタリングして鋳型核酸の次の塩基を同定するために、閉鎖複合体を安定化させる。
場合により、内包されたヌクレオチドは、閉鎖複合体中の鋳型核酸への結合を著しく減少させるか、または無効にする。場合により、内包されたヌクレオチドは、次の塩基で鋳型核酸と塩基対形成される。場合により、ポリメラーゼ、ヌクレオチド、プライマー、鋳型核酸、またはそれらの任意の組み合わせの同一性は、閉鎖複合体に内包されたヌクレオチドと鋳型核酸との間の相互作用に影響を及ぼす。
場合により、内包されたヌクレオチドは閉鎖複合体のポリメラーゼに結合される。場合により、内包されたヌクレオチドは、閉鎖複合体のポリメラーゼと弱く会合している。場合により、ポリメラーゼ、ヌクレオチド、プライマー、鋳型核酸、またはそれらの任意の組み合わせの同一性は、閉鎖複合体に内包されたヌクレオチドとポリメラーゼとの間の相互作用に影響を及ぼす。所与のポリメラーゼに関して、各ヌクレオチドは、そのポリメラーゼに対して別のヌクレオチドとは異なる親和性を有する。場合により、この親和性は、鋳型核酸及び/またはプライマーに部分的に依存する。
閉鎖複合体は一時的に形成されてもよい。場合により、内包されたヌクレオチドは、次の正しいヌクレオチドである。いくつかの方法では、次の正しいヌクレオチドの存在は、閉鎖複合体の安定化に部分的に寄与する。場合により、内包されたヌクレオチドは、次の正しいヌクレオチドではない。
場合により、試験反応条件には、複数のプライマー結合鋳型核酸、ポリメラーゼ、ヌクレオチド、またはそれらの任意の組み合わせを含む。場合により、複数のヌクレオチドは、1種類、2種類、3種類、4種類、またはそれ以上の種類の異なるヌクレオチド、例えばdATP、dTTP、dGTP、及びdCTPを含む。場合により、複数の鋳型核酸は鋳型核酸のクローン集団である。
閉鎖複合体の安定性を調節できる反応条件として、触媒金属イオンの供給量、最適下限または阻害性の金属イオン、イオン強度、pH、温度、ポリメラーゼ阻害剤、架橋試薬、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。閉鎖複合体の安定性を調節できる反応試薬として、取り込み不可能なヌクレオチド、誤ったヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、修飾ポリメラーゼ、非伸長性重合開始部位を有する鋳型核酸、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
試験反応混合物には、酵素を含むが、これに限定されない他の分子を含み得る。場合により、試験反応混合物は、核酸重合反応時に一般に存在する任意の試薬または生体分子を含む。反応成分には、塩、緩衝液、小分子、金属、及びイオンを含み得るが、これらに限定されない。場合により、反応混合物の特性は、例えば、電気的に、磁気的に、及び/または振動により操作することができる。
ヌクレオチド及びヌクレオチド類似体
本明細書に記載のsequencing−by−binding手順を実施するのに有用なヌクレオチドは、天然ヌクレオチド、標識ヌクレオチド(例えば、天然ヌクレオチドには見られない外部蛍光色素または他の標識を含むヌクレオチド)、及びヌクレオチド類似体(例えば、可逆的ターミネーター部分を有するヌクレオチド)を含む。
本明細書に記載する技術に関連して使用することができるヌクレオチドの性質には柔軟性がある。ヌクレオチドは、窒素塩基としてアデニン、シトシン、グアニン、チミン、またはウラシルのいずれを含んでもよい。場合により、ヌクレオチドは、イノシン塩基、キサンタニン(xanthanine)塩基、ヒポキサンタニン(hypoxanthanine)塩基、イソシトシン塩基、イソグアニン塩基、ニトロピロール(3−ニトロピロールを含む)塩基、またはニトロインドール(5−ニトロインドールを含む)塩基を含む。有用なヌクレオチドとして、ATP、UTP、CTP、GTP、ADP、UDP、CDP、GDP、AMP、UMP、CMP、GMP、dATP、dTTP、dCTP、dGTP、dUTP、dADP、dTDP、dCDP、dGDP、dUDP、dAMP、dTMP、dCMP、dGMP、及びdUMPが挙げられるが、これらに限定されない。場合により、リン酸基は部分で修飾される。この部分は、検出可能な標識を含んでもよい。場合により、ヌクレオチドの3’OH基は部分で修飾され、その部分は、3’可逆的または不可逆的ターミネーター部分であり得る。場合により、ヌクレオチドの2’位は部分で修飾され、その部分は、2’可逆的または不可逆的ターミネーター部分であり得る。場合により、ヌクレオチドの塩基は、可逆的ターミネーター部分を含むように修飾される。ヌクレオチドはまた、DNAポリメラーゼを転写終結させる阻害物質、すなわちddNTPと略記されるジデオキシヌクレオチドまたは2’,3’ジデオキシヌクレオチド(ddGTP、ddATP、ddTTP、ddCTP、及びddUTP)を含み得る。
場合により、試験工程の閉鎖複合体は、閉鎖複合体の安定化を容易にするヌクレオチド類似体または修飾ヌクレオチドを含む。場合により、ヌクレオチド類似体は、窒素塩基、5炭素糖、及びリン酸基を含み、そのヌクレオチドの任意の成分が修飾及び/または置換されていてもよい。ヌクレオチド類似体は、取り込み不可能なヌクレオチドであってもよい。取り込み不可能なヌクレオチドは、配列決定方法の任意の時点で取り込み可能になるように修飾することができる。
ヌクレオチド類似体として、アルファ−リン酸修飾ヌクレオチド、アルファ−ベータヌクレオチド類似体、ベータ−リン酸修飾ヌクレオチド、ベータ−ガンマヌクレオチド類似体、ガンマ−リン酸修飾ヌクレオチド、ケージドヌクレオチド、またはddNTPが挙げられるが、これらに限定されない。ヌクレオチド類似体の例は、米国特許第8,071,755号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
ヌクレオチド類似体は、プライマーの3’末端へのヌクレオチドの取り込みを可逆的に阻止するターミネーターを含み得る。可逆的ターミネーターの種類の一つは、3’−Oブロックされた可逆的ターミネーターである。ターミネーターは、ヌクレオチドの5炭素糖の3’OH末端の酸素原子に結合している。可逆的ターミネーターの別の種類は、3’ブロックされていない可逆的ターミネーターである。ターミネーターは、ヌクレオチドの窒素塩基に結合している。ターミネーターを有するヌクレオチド類似体の概説については、例えば、Mu,R.,et al.,“The History and Advances of Reversible Terminators Used in New Generations of Sequencing Technology,” Genomics,Proteomics & Bioinformatics 11(1):34−40(2013)を参照のこと。本文献はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
場合により、ヌクレオチドは、プライマーの3’末端へのヌクレオチドの取り込みを不可逆的に阻止するターミネーターを有する修飾ヌクレオチド類似体に置き換えられる。不可逆的ヌクレオチド類似体として、ジデオキシヌクレオチド、ddNTP(ddGTP、ddATP、ddTTP、ddCTP)が挙げられる。ジデオキシヌクレオチドは、ポリメラーゼ媒介性合成に必須であるdNTPの3’−OH基を欠いている。
場合により、取り込み不可能なヌクレオチドは、核酸重合反応の取り込み工程中に、ヌクレオチドが第2のヌクレオチド(プライマーの3’−OH)との共有結合を形成することを阻害または阻止するブロック部分を含む。ブロック部分をヌクレオチドから除去して、ヌクレオチドの取り込みを可能にすることができる。
場合により、閉鎖複合体中に存在するヌクレオチド類似体は閉鎖複合体を安定にする。場合により、ヌクレオチド類似体は取り込み不可能である。場合により、ヌクレオチド類似体が解離され、天然ヌクレオチドが取り込まれる。場合により、閉鎖複合体が解離されて、ヌクレオチド類似体が修飾され、その修飾ヌクレオチド類似体が取り込まれる。場合により、閉鎖複合体は、閉鎖複合体中のヌクレオチド類似体を修飾及び/または不安定化する反応条件下で解離される。
場合により、閉鎖複合体中に存在するヌクレオチド類似体が取り込まれ、閉鎖複合体が安定化される。閉鎖複合体は、ヌクレオチド類似体によって、または例えば、本明細書に開示される任意の安定化方法によって安定化することができる。場合により、ヌクレオチド類似体は、後続のヌクレオチドの取り込みが可能ではない。例えば、本明細書に記載される任意の方法によって閉鎖複合体を解離することができ、ヌクレオチド類似体が修飾される。修飾ヌクレオチド類似体は、後続のヌクレオチドの3’末端への取り込みを可能にすることができる。
場合により、ヌクレオチド類似体は、試験工程時に反応混合物中に存在する。例えば、1種、2種、3種、4種以上のヌクレオチド類似体が、試験工程時に反応混合物中に存在する。場合により、ヌクレオチド類似体は、取り込み工程時に置換、希釈、または隔離される。場合により、ヌクレオチド類似体は、天然ヌクレオチドで置換される。天然ヌクレオチドは、次の正しいヌクレオチドを含み得る。場合により、ヌクレオチド類似体は、取り込み工程時に修飾される。修飾ヌクレオチド類似体は、天然ヌクレオチドと類似していても同じであってもよい。
場合により、ヌクレオチド類似体は、機能欠損DNAポリメラーゼに対して天然ヌクレオチドとは異なる結合親和性を有する。場合により、ヌクレオチド類似体は、天然ヌクレオチドとは異なる次の塩基との相互作用性を有する。ヌクレオチド類似体及び/または取り込み不可能なヌクレオチドは、鋳型核酸の相補的塩基と塩基対形成することができる。
場合により、ヌクレオチド類似体は、ポリメラーゼに融合された修飾ヌクレオチドまたは天然ヌクレオチドである。場合により、複数のヌクレオチド類似体には、複数のポリメラーゼとの融合体を含み、その場合、各ヌクレオチド類似体は異なるポリメラーゼを含む。
ヌクレオチドは、二元複合体の形成よりも閉鎖複合体の形成に有利になるように修飾することができる。機能欠損DNAポリメラーゼに対して高親和性を有するようにヌクレオチドを選択または修飾することができ、そのポリメラーゼは鋳型核酸に結合する前にヌクレオチドに結合する。
閉鎖複合体に機能欠損DNAポリメラーゼを捕捉する任意のヌクレオチド修飾を、本明細書に開示する方法に使用することができる。ヌクレオチドは、永続的にまたは一時的に捕捉することができる。場合により、ヌクレオチド類似体は、閉鎖複合体を安定化する手段ではない。ヌクレオチド類似体を利用する反応において、任意の閉鎖複合体の安定化方法を組み合わせることができる。
場合により、閉鎖複合体の安定化を可能にするヌクレオチド類似体は、通常は閉鎖複合体を解離する反応条件で組み合わされる。この条件には、解離試薬(例えば、マグネシウムまたはマンガンなどの触媒金属イオン)の存在が含まれるが、これに限定されない。場合により、閉鎖複合体は触媒金属イオンの存在下でも安定化される。場合により、閉鎖複合体はヌクレオチド類似体の存在下でも解離される。場合により、閉鎖複合体の安定化は、安定化試薬及び/または解離試薬の濃度及び/または同一性、ならびにそれらの任意の組み合わせに部分的に依存する。場合により、ヌクレオチド類似体を使用した閉鎖複合体の安定化は、触媒金属イオンの金属イオン封鎖、除去、還元、省略、及び/またはキレート化;ポリメラーゼ阻害剤、架橋剤の存在;ならびにそれらの任意の組み合わせを含むがこれらに限定されない、閉鎖複合体を安定化するように機能する追加の反応条件と組み合わされる。
場合により、1つ以上のヌクレオチドは、識別及び/または検出可能なタグまたは標識で標識することができるが、そのようなタグまたは標識は、試験、塩基の同定、または塩基の取り込み時に検出されず、本明細書に開示される配列決定方法の間は検出されない。タグは、蛍光、ラマンスペクトル、電荷、質量、屈折率、発光、長さ、または任意の他の測定可能な特性の差によって区別することができる。タグは、ポリメラーゼ−核酸複合体への結合の忠実度が十分に維持され、鋳型核酸上の相補的塩基の正確な同定が可能である限り、ヌクレオチドの1つ以上の異なる位置に結合することができる。場合により、タグは、ヌクレオチドの核酸塩基位置に結合される。適切な反応条件下で、標識したヌクレオチドを、ポリメラーゼ及びプライマー結合鋳型核酸との閉鎖複合体に内包することができる。あるいは、タグは、ヌクレオチドのガンマリン酸の位置に結合される。
ポリメラーゼ
開示されるsequencing−by−binding技術を実施するのに有用な機能欠損DNAポリメラーゼには、変異体、組換え体、融合体、遺伝子改変体、化学修飾体、合成体、及び類似体を含むが、これらに限定されない天然ポリメラーゼの修飾変異体を含む。場合により、修飾変異体は、核酸に対する結合親和性の増強、核酸に対する結合親和性の低減、触媒速度の上昇、触媒速度の低下などを含むDNAの配列能力を高める特有の特性を有する。変異型ポリメラーゼには、1つ以上のアミノ酸が他のアミノ酸(天然または非天然)で置換されたポリメラーゼ、1つ以上のアミノ酸が化学修飾されたポリメラーゼ、及び/または1つ以上のアミノ酸が挿入または欠失されているポリメラーゼを含む。修飾ポリメラーゼには、ポリメラーゼの存在及び相互作用をモニタリングするために使用できる外部タグを含むポリメラーゼが含まれる。場合により、ポリメラーゼからの固有のシグナルを利用して、ポリメラーゼの存在及び相互作用をモニタリングすることができる。したがって、提供される方法には、ポリメラーゼからの固有のシグナルの検出によってポリメラーゼ、ヌクレオチド、及び鋳型核酸の相互作用をモニタリングすることを含み得る。場合により、固有のシグナルは光散乱シグナルである。例えば、固有のシグナルには、トリプトファンなどの特定のアミノ酸の天然蛍光を含み、その場合、ポリメラーゼからの固有のシグナルの変化が、閉鎖複合体の形成を示すことができる。したがって、提供される方法において、ポリメラーゼは非標識ポリメラーゼであってもよく、ポリメラーゼに関連する検出可能な標識の非存在下でモニタリングを実施することができる。
本明細書で使用される場合、ポリメラーゼ及びその変異体という用語はまた、互いに連結された少なくとも2つの部分を含む融合タンパク質を指し、例えば、その場合、ヌクレオチドの核酸鎖への重合を触媒できるポリペプチドを含むある部分が、レポーター酵素またはプロセッシビティ改変ドメインなどの第2の部分を含む別の部分に連結されている。例えば、T7DNAポリメラーゼは、核酸重合ドメイン及びチオレドキシン結合ドメインを含み、チオレドキシン結合はポリメラーゼのプロセッシビティを高める。チオレドキシン結合が存在しない場合、T7DNAポリメラーゼは、わずか1塩基〜数塩基のプロセッシビティを有する分配ポリメラーゼである。DNAポリメラーゼは細部が異なっているが、フィンガー、パーム、及びサムと呼ばれる詳細な領域を有するハンドの形状は全体的に類似しており、また核酸合成中のサムドメイン及び/またはフィンガードメインの移動を含む全体的な構造転移も類似している。
機能欠損DNAポリメラーゼを生じるように修飾され得るDNAポリメラーゼとして、細菌DNAポリメラーゼ、真核生物DNAポリメラーゼ、古細菌DNAポリメラーゼ、ウイルスDNAポリメラーゼ、及びファージDNAポリメラーゼが挙げられるが、これらに限定されない。細菌DNAポリメラーゼとしては、E.coli DNAポリメラーゼI、II及びIII、IV及びV、E.coli DNAポリメラーゼのクレノー断片、Clostridium stercorarium(Cst)DNAポリメラーゼ、Clostridium thermocellum(Cth)DNAポリメラーゼ、ならびにSulfolobus solfataricus(Sso)DNAポリメラーゼが挙げられる。真核生物DNAポリメラーゼとしては、DNAポリメラーゼα、β、γ、δ、ε、η、ζ、λ、σ、μ及びκ、ならびにRev1ポリメラーゼ(末端デオキシシチジルトランスフェラーゼ)及び末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)が挙げられる。ウイルスDNAポリメラーゼとしては、T4DNAポリメラーゼ、phi−29DNAポリメラーゼ、GA−1、phi−29様DNAポリメラーゼ、PZA DNAポリメラーゼ、phi−15DNAポリメラーゼ、Cp1DNAポリメラーゼ、Cp7DNAポリメラーゼ、T7DNAポリメラーゼ、及びT4ポリメラーゼが挙げられる。他のDNAポリメラーゼとしては、Thermus aquaticus(Taq)DNAポリメラーゼ、Thermus filiformis(Tfi)DNAポリメラーゼ、Thermococcus zilligi(Tzi)DNAポリメラーゼ、Thermus thermophilus(Tth)DNAポリメラーゼ、Thermus flavusu(Tfl)DNAポリメラーゼ、Pyrococcus woesei(Pwo)DNAポリメラーゼ、Pyrococcus furiosus(Pfu)DNAポリメラーゼ及びTurbo Pfu DNAポリメラーゼ、Thermococcus litoralis(Tli)DNAポリメラーゼ、Pyrococcus sp.GB−Dポリメラーゼ、Thermotoga maritima(Tma)DNAポリメラーゼ、Bacillus stearothermophilus(Bst)DNAポリメラーゼ、Pyrococcus Kodakaraensis(KOD)DNAポリメラーゼ、Pfx DNAポリメラーゼ、Thermococcus sp.JDF−3(JDF−3)DNAポリメラーゼ、Thermococcus gorgonarius(Tgo)DNAポリメラーゼ、Thermococcus acidophilium DNAポリメラーゼ;Sulfolobus acidocaldarius DNAポリメラーゼ;Thermococcus sp.go N−7 DNAポリメラーゼ;Pyrodictium occultum DNAポリメラーゼ;Methanococcus voltae DNAポリメラーゼ;Methanococcus thermoautotrophicum DNAポリメラーゼ;Methanococcus jannaschii DNAポリメラーゼ;Desulfurococcus strain TOK DNAポリメラーゼ(D.Tok Pol);Pyrococcus abyssi DNAポリメラーゼ;Pyrococcus horikoshii DNAポリメラーゼ;Pyrococcus islandicum DNAポリメラーゼ;Thermococcus fumicolans DNAポリメラーゼ;Aeropyrum pernix DNAポリメラーゼ;ならびにヘテロ二量体DNAポリメラーゼDP1/DP2から単離されたDNAポリメラーゼなどの熱安定性及び/または好熱性のDNAポリメラーゼが挙げられる。開示される技術に関連して、遺伝子操作して改変されたポリメラーゼも有用である。例えば、極めて好熱性の海洋古細菌Thermococcus species 9°Nの改変型(New England BioLabs Inc.;Ipswich,MA製のTherminator DNAポリメラーゼ)を使用することができる。3PDXポリメラーゼを含む、さらに他の有用なDNAポリメラーゼは、米国第8,703,461号に記載されており、その開示内容全体が参照により組み込まれる。
RNAポリメラーゼとしては、T7RNAポリメラーゼ、T3ポリメラーゼ、SP6ポリメラーゼ、及びK11ポリメラーゼなどのウイルスRNAポリメラーゼ;RNAポリメラーゼI、RNAポリメラーゼII、RNAポリメラーゼIII、RNAポリメラーゼIV、及びRNAポリメラーゼVなどの真核生物RNAポリメラーゼ;ならびに古細菌RNAポリメラーゼが挙げられるが、これらに限定されない。
逆転写酵素としては、ヒト免疫不全ウイルス1型(PDB 1HMV)由来のHIV−1逆転写酵素、ヒト免疫不全ウイルス2型由来のHIV−2逆転写酵素、モロニーマウス白血病ウイルス由来のM−MLV逆転写酵素、トリ骨髄芽球症ウイルス由来のAMV逆転写酵素、及び真核生物染色体のテロメアを維持するテロメラーゼ逆転写酵素が挙げられるが、これらに限定されない。
触媒不活性ポリメラーゼ変異体のモデリング
Bacillus stearothermophilus(Bst−f)の熱安定性ファミリー株由来のDNAポリメラーゼI(polI)大断片変異体の調製について以下に記載する。この変異体は同種ヌクレオチドと三元複合体を適切に形成するが、Mg2+イオンの存在下でこれらのヌクレオチドを取り込みできない。Bst−f酵素は、E.coli DNA polI(KF)、T.aquaticus DNA polI(Taq)、及びBacillus subtilis DNA polI(Bsu−f)を含む、他の十分に特性決定された高忠実度ポリメラーゼと相同性を有するファミリーAポリメラーゼである。このようなポリメラーゼは、ヌクレオチド結合及び重合を含む、異なった機能を果たすために必要とされる保存タンパク質配列モチーフを共有する。
さらに、ファミリーAポリメラーゼは、フィンガーサブドメイン、サムサブドメイン、及びパームサブドメインとして知られる共通の形態的構造を共有する。パームサブドメインは、当業者によく知られている触媒コアを含んでいるため、DNAポリメラーゼ間で高度に保存されている。パームはまた、モチーフA及びCからの触媒型カルボキシレートを含有する。モチーフA及びCにおいて、保存された酸性アミノ酸残基であるアスパラギン酸(D)及びグルタミン酸(E)は、ポリメラーゼが触媒するホスホリル転移反応中に2価カチオンに対する金属配位子として機能すると考えられる。モチーフAは、ベータ鎖とアルファヘリックスとの接合部に厳密に保存されたアスパラギン酸を含み、モチーフCは、ベータターン−ベータ二次構造内に位置する負電荷のダブレットを有する。
変異体の調製に使用される親酵素(「CBT」)は、システイン含量に関して最適化され、N末端配列がタンパク質精製及びプロセッシングを促進するBstポリメラーゼの改変型であった。具体的には、配列番号1として同定されるポリペプチド配列は、(1)5〜10位に遺伝子操作された「Hisタグ」モチーフ;(2)17位と18位との間にトロンビン切断部位;及び(3)23位にシステイン残基を有する修飾N末端を含んでいた。天然型Bstポリメラーゼ配列は、27位からC末端まで伸長していた(天然型システイン残基の除去を条件とする)。本開示による遺伝子操作ポリメラーゼは、場合により、上記のN末端修飾が含まれているか、または除外されていると理解すべきである。例えば、有用なポリメラーゼは、配列番号2(トロンビン切断部位の上流にある配列を除外)または配列番号3(天然Bstポリメラーゼの最初のアミノ酸の上流にある配列を除外)である親足場に構築することができる。したがって、これらのタンパク質配列足場を基準として、ホスホジエステル結合の形成能に影響を及ぼす有用な修飾を推定することができる。
従来のAモチーフ及びCモチーフの配置を以下に示す。いずれのアライメントも、標準ポリペプチド配列アライメントソフトウェアツールを使用して作成した。モチーフAの下線のある太字のアスパラギン酸(D)残基は、Bstポリメラーゼ(UniProt番号P52026、Protein Data Bank番号3EZ5)の結晶構造において653アミノ酸位に対応する。モチーフCの下線のある太字のアスパラギン酸及びグルタミン酸(DE)残基は、Bstポリメラーゼ(UniProt番号P52026、Protein Data Bank番号3EZ5)の結晶構造において830〜831アミノ酸位に対応する。
モチーフA
モチーフC
太字の下線モチーフAアスパラギン酸(D)残基のBst−fの番号は、配列番号1の残基381(または配列番号2の残基364または配列番号3の残基355)である。モチーフCのアスパラギン酸(D)残基及びグルタミン酸(E)の番号は、それぞれ、配列番号1の558及び559(または配列番号2の残基541及び542;または配列番号3の残基532及び533)である。ほとんどのDNAポリメラーゼは、モチーフA及びCに3つのカルボキシレート側鎖をもたらすアミノ酸を含むことが知られているが、一部は触媒作用時に2つのカルボキシレート側鎖しか必要としない。配列番号1の残基381及び558を突然変異誘発のために抽出し、それがポリメラーゼ活性に及ぼす影響を調べた。これらの残基を、部位特異的突然変異誘発及びポリメラーゼタンパク質をコードする発現ベクターを用いて、グルタミン酸(E)またはアスパラギン(N)のいずれかに置換した。この場合も、DNA及びdNTP結合特性の維持を可能にすると同時に、重合化学工程を阻害することを目的とした。主要な変異の概要を表1に示す。
以下で簡単に説明するように、TDE及びBDE変異体ポリメラーゼは、実質的に同様に挙動した。より具体的には、いずれの変異体も、取り込みせずに試験反応中に同種ヌクレオチドを結合及び同定するのに有用であった。同様に、いずれの変異体もMg2+イオンの存在下で触媒取り込み活性をもたなかった。対照的に、TDN変異体は不活性であった(すなわち、試験工程で同種ヌクレオチドを同定することができない)。
機能欠損DNAポリメラーゼレポーター
場合により、機能欠損DNAポリメラーゼを発光タグで標識し、適切な発光誘発物(例えば、放射線誘発物、または化学発光タグの場合は化学反応誘発物)の存在下で、閉鎖複合体の形成を安定な蛍光シグナルとしてモニタリングする。誤ったヌクレオチドの存在下での機能欠損DNAポリメラーゼと鋳型核酸との不安定な相互作用は、次の正しいヌクレオチドの存在下で形成される閉鎖複合体と比較して、測定可能な程度の弱いシグナルを生じる。さらに、発光を誘発する前の洗浄工程により、安定した閉鎖複合体に結合していないすべてのポリメラーゼ分子を除去することができる。
場合により、機能欠損DNAポリメラーゼを光散乱タグで標識し、閉鎖複合体の形成を安定な光散乱シグナルとしてモニタリングする。誤ったヌクレオチドの存在下での機能欠損DNAポリメラーゼと核酸との不安定な相互作用は、次の正しいヌクレオチドの存在下で形成される閉鎖複合体と比較して、測定可能な程度の弱いシグナルを生じる。
場合により、機能欠損DNAポリメラーゼをプラズモニックナノ粒子タグで標識し、閉鎖複合体の非存在下、または誤ったヌクレオチドを含む閉鎖複合体の存在下でのプラズモン共鳴とは異なるプラズモン共鳴のシフトとして閉鎖複合体の形成をモニタリングする。プラズモン共鳴の変化は、閉鎖複合体における局所的な誘電環境の変化によるものであっても、あるいはクローン増幅された核酸分子のクラスター上でのプラズモニックナノ粒子の同期的凝集、または閉鎖複合体の立体配置によってプラズモンに異なる影響を及ぼす別の手段によるものであってもよい。
場合により、機能欠損DNAポリメラーゼをラマン散乱タグで標識し、閉鎖複合体の形成を安定なラマン散乱シグナルとしてモニタリングする。誤ったヌクレオチドの存在下での機能欠損DNAポリメラーゼと核酸との不安定な相互作用は、次の正しいヌクレオチドの存在下で形成される閉鎖複合体と比較して、測定可能な程度の弱いシグナルを生じる。
場合により、ヌクレオチドに対して高親和性を有するように選択または修飾された機能欠損DNAポリメラーゼのタグによって次の正しいヌクレオチドを同定する。その場合のポリメラーゼは、鋳型核酸に結合する前にヌクレオチドに結合する。例えば、アフリカ豚コレラウイルス由来のDNAポリメラーゼXは、ポリメラーゼが最初にヌクレオチドに結合し、次に鋳型核酸に結合するように基質結合の順序が変化する。場合により、ポリメラーゼは別々の区画でヌクレオチドの種類ごとにインキュベートされる。その場合、それぞれの区画に異なる種類のヌクレオチドが収容され、インキュベートされるとポリメラーゼがヌクレオチドに応じて異なるタグで標識される。この条件では、非標識ヌクレオチドは、標識ポリメラーゼとは異なった結合をする。各種類のヌクレオチドに結合されるポリメラーゼが同じ種類のポリメラーゼであっても、各種類のヌクレオチドに結合されるポリメラーゼが異なっていてもよい。異なる標識がされたポリメラーゼ−ヌクレオチド複合体は、配列決定反応のどの工程でも同時に添加することができる。各ポリメラーゼ−ヌクレオチド複合体は、次の塩基がポリメラーゼ−ヌクレオチド複合体中のヌクレオチドと相補的である鋳型核酸に結合する。次の正しいヌクレオチドは、ヌクレオチドを運搬するポリメラーゼのタグによって同定される。標識されたポリメラーゼ−ヌクレオチド複合体による次の鋳型塩基の調査は、非取り込み条件及び/または試験条件下で実施することができ、その場合、次の鋳型塩基の同一性が決定されると、複合体が不安定化されて、除去、隔離、及び/または希釈され、独立した取り込み工程が、確実に1つのヌクレオチドのみが取り込まれるような方法で実行される。
ポリメラーゼに検出可能なタグを導入する一般的な方法は、場合により、ポリメラーゼの非活性領域に存在するアミンまたはシステインに対する化学的コンジュゲーションを必要とする。そのようなコンジュゲーション法は当技術分野で周知されている。非限定的な例として、n−ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHSエステル)が、酵素で検出できるアミン基の標識に一般的に使用される。システインはチオール基またはマレイミド基と容易に反応するが、カルボキシル基はEDC(1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩)で活性化することによってアミンと反応させることができる。場合により、ポリメラーゼごとに1つのタグのみが付加されるように、N末端アミンのみが反応性であるpH範囲(例えば、pH7)で化学物質N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を使用する。
場合により、機能欠損DNAポリメラーゼに結合したタグは電荷タグであり、それにより鋳型核酸周辺の局所的な電荷密度の変化を測定することによって電気的手段により安定な閉鎖複合体の形成を検出することができる。電荷を検出する方法は当技術分野で周知であり、特に電界効果トランジスタ、誘電分光法、インピーダンス測定、及びpH測定などの方法を含む。電界効果トランジスタとしては、イオン感受性電界効果トランジスタ(ISFET)、電荷変調電界効果トランジスタ、絶縁ゲート電界効果トランジスタ、金属酸化物半導体電界効果トランジスタ、及び半導体単層カーボンナノチューブを用いて製造された電界効果トランジスタが挙げられるが、これらに限定されない。
場合により、電荷タグは、約4以下または約10以上の等電点を有するペプチドタグである。場合により、ペプチドタグを含む機能欠損DNAポリメラーゼは、合計で約5以下または約9以上の等電点を有する。電荷タグは、正または負に荷電した任意の部分であってよい。電荷タグは、質量及び/または色素などの標識を含む追加の部分を含んでもよい。場合により、電荷タグは、pHの変化などの特定の反応条件下でのみ正または負の電荷を有する。
機能欠損DNAポリメラーゼは、フルオロフォア及び/または消光剤で標識してもよい。場合により、核酸は、フルオロフォア及び/または消光剤で標識される。場合により、1つ以上のヌクレオチドが、フルオロフォア及び/または消光剤で標識される。例示的なフルオロフォアとしては、蛍光ナノ結晶;量子ドット;ジクロロ[R110]、ジクロロ[R6G]、ジクロロ[TAMRA]、ジクロロ[ROX]などのd−ローダミン受容体色素;フルオレセイン、6−FAMなどを含むフルオレセイン供与体色素;Cy3Bなどのシアニン色素;Alexa色素、SETA色素、Cy3BなどとFRET対を形成するatto 647NなどのAtto色素が挙げられるが、これらに限定されない。フルオロフォアとしては、MDCC(7−ジエチルアミノ−3−[([2−マレイミジル)エチル]アミノ)カルボニル]クマリン)、TET、HEX、Cy3、TMR、ROX、Texas Red、Cy5、LCレッド705、及びLCレッド640が挙げられるが、これらに限定されない。フルオロフォア、ならびにポリメラーゼ及び他の分子への結合を含むその使用方法は、Molecular Probes(登録商標)Handbook(Life Technologies;Carlsbad Calif)及びFluorophores Guide(Promega;Madison,WI)に記載されており、これらの文献はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。例示的な消光剤としては、ZEN、IBFQ、BHQ−1、BHQ−2、DDQ−I、DDQ−11、Dabcyl、Qxl消光剤、Iowa Black RQ、及びIRDye QC−1が挙げられるが、これらに限定されない。
場合により、構造的感受性の色素は、ポリメラーゼの重合能力または忠実度に影響を及ぼすことなく、機能欠損DNAポリメラーゼの活性部位近傍に結合することができる。その場合、構造の変化、または閉鎖複合体の形成による極性環境の変化が、色素の蛍光特性または吸光特性の変化に反映される。Cy3及びフルオレセインなどの一般的なフルオロフォアは、閉鎖複合体の形成がポリメラーゼ−核酸二元複合体と明確に区別できる程度に、ポリメラーゼ結合及び閉鎖複合体形成に対して強いソルバトクロマチック応答を有することが知られている。場合により、閉鎖複合体は、構造的感受性色素からの蛍光シグナルまたは吸光シグナルの差に基づいて二元複合体と区別することができる。場合により、ソルバトクロマチック色素を用いて、構造転移をモニタリングすることができ、構造変化によって誘発された局所的な極性環境の変化をレポーターシグナルとして使用することができる。ソルバトクロマチック色素としては、Reichart色素、IR44、メロシアニン色素(例えば、メロシアニン540)、4−[2−N−置換−1,4−ヒドロピリジン−4−イリジン)エチリデン]シクロヘキサ−2,5−ジエン−1−オン、赤色ピラゾロン色素、アゾメチン色素、インドアニリン色素、ジアザメロシアニン色素、インディゴに例示されるインジゴイド色素、及びその他、ならびにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。ポリメラーゼの特異的部位に色素またはフルオロフォアを導入する方法は、当技術分野に周知されている。非限定的な例として、色素を用いたT7DNAポリメラーゼの部位特異的標識のための手順は、Tsai et al.,in “Site−Specific Labeling of T7 DNA Polymerase with a Conformationally Sensitive Fluorophore and Its Use in Detecting Single−Nucleotide Polymorphisms,” Analytical Biochemistry 384:136−144(2009)に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
場合により、ポリメラーゼは、反応を妨害することなく閉鎖複合体の形成を感知することができる位置にフルオロフォアで標識される。ポリメラーゼは、天然ポリメラーゼであっても、修飾ポリメラーゼであってもよい。修飾ポリメラーゼには、1つ以上のアミノ酸の化学修飾、変異、付加、及び/または欠失をもつものが含まれる。場合により、1つ以上だが、すべてではないシステインアミノ酸がアラニンなどの別のアミノ酸に変異されている。この場合、残りの1つ以上のシステインは、フルオロフォアへの部位特異的コンジュゲーションに使用される。あるいは、1つ以上のアミノ酸が、フルオロフォアのコンジュゲーションに適した反応性アミノ酸、例えばシステインまたは第一級アミンを含むアミノ酸に変異されている。
場合により、正しいヌクレオチドの存在下での機能欠損DNAポリメラーゼと鋳型核酸との間の結合が蛍光の減少を誘導し得るのに対して、誤ったヌクレオチドとの結合は蛍光の増加を引き起こす。正しいヌクレオチドの存在下でのポリメラーゼと鋳型核酸との間の結合が蛍光の減少を誘導し得るのに対して、誤ったヌクレオチドとの結合は蛍光の減少を引き起こす。蛍光シグナルを利用して、ヌクレオチド誘導性の構造変化の反応速度をモニタリングし、鋳型核酸配列中の次の塩基を同定することができる。
場合により、機能欠損DNAポリメラーゼ/核酸相互作用を、ポリメラーゼにより生じる散乱シグナルまたはポリメラーゼに結合したタグ、例えばナノ粒子タグによってモニタリングすることができる。
閉鎖複合体を形成及び操作するための条件
本明細書で使用される場合、閉鎖複合体は、機能欠損DNAポリメラーゼ、プライマー結合鋳型核酸、及びヌクレオチドを含む三元複合体であり得る。閉鎖複合体は、ヌクレオチドが隔離されているが取り込まれていない化学反応前構造の状態であり得る。あるいは、閉鎖複合体は、プライマー結合鋳型核酸中のプライマーの3’末端とのホスホジエステル結合の形成によってヌクレオチドが取り込まれる、転位前構造の状態であり得る。触媒金属イオンの非存在下、または触媒金属イオンのレベル不足時に、閉鎖複合体が形成され、それによって化学的取り込みを伴わずにポリメラーゼ活性部位内に次の正しいヌクレオチドを物理的に隔離することができる。場合により、隔離されたヌクレオチドは、取り込み不可能なヌクレオチドであり得る。閉鎖複合体は触媒金属イオンの存在下で形成することができ、そのとき閉鎖複合体は取り込まれたヌクレオチド類似体を含むが、PPiは脱離することができない。この場合、閉鎖複合体は、転位前構造の状態で安定化される。場合により、転位前構造は、ポリメラーゼを化学的に架橋することによって安定化される。場合により、閉鎖複合体は外部手段によって安定化されてもよい。場合によって、閉鎖複合体は、小分子、または抗体もしくはアプタマーなどの巨大分子のアロステリック結合によって安定化されてもよい。場合により、閉鎖複合体は、高親和性で活性部位の近傍に結合し、ポリメラーゼの転位を阻止するピロリン酸類似体によって安定化されてもよい。
本明細書で使用される場合、安定化された閉鎖複合体または安定化された三元複合体とは、ポリメラーゼが、プライマー結合鋳型核酸の重合開始部位(プライマーの3’末端)に捕捉されたものを指し、その方法は、閉鎖構造におけるサムドメイン及びフィンガードメインの架橋、ポリメラーゼが開鎖構造に戻るのを阻止するアロステリック阻害剤の結合、転位前段階でポリメラーゼを捕捉するピロリン酸類似体の結合、ポリメラーゼ活性部位での触媒金属イオンの不在、ならびに触媒金属イオンに代わるニッケル、スズ、及びSr2+などの金属イオンの添加を含むが、これらに限定されない手段の1つまたは組み合わせによる。このように、ヌクレオチドの取り込み後でも重合開始部位でポリメラーゼを捕捉することができる。したがって、化学反応前構造、転位前工程、転位後工程、またはそれらの任意の中間工程でポリメラーゼを捕捉することができる。その結果、次の正しいヌクレオチドまたは塩基の十分な試験及び同定が可能になる。
本明細書に記載するように、ポリメラーゼを用いたsequencing−by−binding反応は一般に、プライマー結合鋳型核酸にポリメラーゼ及び1種類以上のヌクレオチド(その場合、ヌクレオチドはプライマー結合鋳型核酸の次の塩基と相補的であってもなくてもよい)を供給することと、化学反応前構造においてプライマー結合鋳型核酸へのヌクレオチドの化学的取り込みが無効であるかまたは著しく阻害されるか、あるいは1つ以上の相補的なヌクレオチド取り込みが、プライマーの3’末端で発生しない条件下で、ポリメラーゼとプライマー結合鋳型核酸との相互作用を試験することを含む。ヌクレオチドの取り込み前に好ましくは安定化剤を使用して化学反応前構造を安定化する場合、場合により、試験工程に続いてプライマーの3’末端に単一のヌクレオチドを取り込む独立した取り込み工程を実施してもよい。場合により、単一のヌクレオチド取り込みが発生するとき、転位前構造を安定化すると、試験を容易にする及び/または後続のヌクレオチド取り込みを阻止することができる。
上記に示したように、本明細書に記載の核酸の配列決定方法は試験工程を含む。試験工程には、1つ以上のヌクレオチドを含む反応混合物中のプライマー結合鋳型核酸の重合開始部位にポリメラーゼを結合させることと、相互作用をモニタリングすることを含む。場合により、内包されたヌクレオチドのポリメラーゼによる取り込みを減弱または阻害する条件下で、ヌクレオチドをポリメラーゼ−プライマー結合鋳型核酸複合体内に隔離し、閉鎖複合体を形成する。場合により、安定化剤を添加して、次の正しいヌクレオチドの存在下で三元複合体を安定化させる。この閉鎖複合体は、安定化された、またはポリメラーゼが捕捉された化学反応前構造の状態にある。閉鎖複合体は、内包されたヌクレオチドの取り込みは可能であるが、後続のヌクレオチドの取り込みは不可能である。この閉鎖複合体は、安定化されたまたは捕捉された転位前構造の状態にある。場合により、ポリメラーゼは、ポリメラーゼドメインの架橋、ポリメラーゼの核酸への架橋、小分子によるアロステリック阻害、不競合結合剤、競合阻害剤、非競合阻害剤、及び変性を含むが、これらに限定されない手段の1つまたは組み合わせによって、閉鎖複合体の重合部位で捕捉される。この捕捉された閉鎖複合体の形成により、核酸鋳型上の次の塩基の同一性に関する情報が得られる。
場合により、閉鎖複合体がその捕捉または安定化された構造から解離され、鋳型核酸プライマーの3’末端へのヌクレオチドの取り込みを可能にすることができる。反応条件の組成を調節することによって、閉鎖複合体を不安定化及び/または解離させることができる。加えて閉鎖複合体は、電気的手段、磁気的手段、及び/または機械的手段によって不安定化することができる。機械的手段には、例えば、超音波撹拌を用いることによる機械的撹拌を含む。機械的振動は閉鎖複合体を不安定にし、ポリメラーゼのDNAへの結合を抑制する。したがって、試験反応混合物を取り込み混合物と置き換える洗浄工程の代わりに、機械的撹拌を使用して鋳型核酸からポリメラーゼを除去することができ、1工程ごとに1つのヌクレオチドを連続して取り込む工程をサイクル化することができる。
閉鎖複合体を安定化または閉鎖複合体を解離する反応条件及び/または方法の任意の組み合わせを組み合わせることができる。例えば、試験反応時に、閉鎖複合体を安定化するポリメラーゼ阻害剤が、閉鎖複合体を解離するように機能する触媒イオンと共に存在してもよい。上記の例では、ポリメラーゼ阻害剤の特性及び濃度、触媒金属イオンの濃度、他の試薬及び/または反応混合物の条件、ならびにそれらの任意の組み合わせに応じて、閉鎖複合体を安定化または解離させることができる。
閉鎖複合体は、プライマー結合鋳型核酸のプライマーの3’末端へのヌクレオチドの共有結合が減弱される反応条件下で安定化させることができる。場合により、閉鎖複合体は、化学反応前構造または三元複合体の状態にある。場合により、閉鎖複合体は、転位前構造の状態にある。この閉鎖複合体の形成は、閉鎖複合体の解離及び/または反応混合物中のプライマーへのヌクレオチドの化学的取り込みを可能にする触媒金属イオンの供給量を調節することによって、開始及び/または安定化させることができる。例示的な金属イオンとしては、マグネシウム、マンガン、コバルト、及びバリウムが挙げられるが、これらに限定されない。触媒イオンは、例えばMgCl2、Mg(CH3CO2)2、及びMnCl2などの塩であればどの製剤であってもよい。
触媒金属イオンの選択及び/または濃度は、配列決定反応するポリメラーゼ及び/またはヌクレオチドに基づき得る。例えば、HIV逆転写酵素は、ヌクレオチド取り込みのためにマグネシウムを利用する(N Kaushik,Biochemistry 35:11536−11546(1996)及びH P Patel,Biochemistry 34:5351−5363(1995)。各文献はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。マグネシウムを使用した場合とマンガンを使用した場合の閉鎖複合体の形成速度比は、ポリメラーゼ及びヌクレオチドの同一性に応じて異なる可能性がある。したがって、閉鎖複合体の安定性は、触媒金属イオン、ポリメラーゼ、及び/またはヌクレオチドの同一性に応じて異なる場合がある。さらに、閉鎖複合体の安定化に必要な触媒イオンの濃度は、触媒金属イオン、ポリメラーゼ、及び/またはヌクレオチドの同一性に応じて異なる場合があるが、本明細書で示すガイドラインを用いて容易に決定することができる。例えば、ヌクレオチドの取り込みは、ある金属イオンの触媒イオン濃度が高い場合には生じ得るが、同じ金属イオンの濃度が低い場合には生じないか、あるいはその逆である。したがって、金属イオンの同一性、金属イオン濃度、ポリメラーゼの同一性、及び/またはヌクレオチドの同一性を変更することにより、試験反応条件の制御が可能になる。
閉鎖複合体は、閉鎖複合体の解離及び/または化学的取り込みが起こらないように、配列決定反応の試験工程中に触媒金属イオンを金属イオン封鎖、除去、還元、省略、及び/またはキレート化することによって形成及び/または安定化させることができる。キレート化には、EDTA及び/またはEGTAの使用を含め、触媒金属イオンをヌクレオチドの取り込みに利用できないようにする任意の手順が含まれる。還元には、反応混合物中の触媒金属イオンの濃度を希釈することを含む。閉鎖複合体の形成を可能にするが、ヌクレオチドの取り込みを阻害する非触媒イオンを含む溶液で、反応混合物を希釈または置換することができる。非触媒イオンとしては、カルシウム、ストロンチウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ヒ素、セレン、ロジウム、及びストロンチウムが挙げられるが、これらに限定されない。場合により、閉鎖複合体の形成を促進するため、Ni2+が試験反応に使用される。場合により、閉鎖複合体の形成を促進するため、Sr2+が試験反応に使用される。場合により、ポリメラーゼ媒介性取り込みを阻害する非触媒金属イオンと、触媒金属イオンの両方が反応混合物中に存在し、一方のイオンが他方よりも高い有効濃度で存在する。提供される方法において、コバルトなどの非触媒イオンは、高濃度では触媒になり得る(すなわち、ヌクレオチドの取り込みを促進する)。したがって、場合により、ポリメラーゼ媒介性取り込みを阻害する低濃度の非触媒金属イオンを使用して三元複合体の形成を促進し、高濃度の非触媒金属イオンを使用して取り込みを促進する。
非触媒イオンは、試験条件下で反応混合物に添加してもよい。この反応物にすでにヌクレオチドが含まれていてもよい。場合により、非触媒イオンを1つ以上のヌクレオチドと複合体化させ、複合体化したヌクレオチドを反応混合物に添加する。非触媒イオンは、高温(約80℃)でヌクレオチドを非触媒イオンと混合することによってヌクレオチドと複合体化することができる。例えば、クロムヌクレオチド複合体を混合物に添加して、閉鎖複合体の形成及び安定化を促進することができる。場合により、クロムヌクレオチド複合体は、クロムの単座、二座、または三座複合体である。場合により、クロムヌクレオチド複合体は、α単座、またはβ−γ−二座のヌクレオチドである。
場合により、Sr2+を含み、Sr2+が閉鎖複合体の形成を促進する反応条件下で、機能欠損DNAポリメラーゼ、プライマー結合鋳型核酸、及びヌクレオチドとの間で閉鎖複合体が形成される。Sr2+の存在は、誤ったヌクレオチドを含む複合体の形成よりも、次の正しいヌクレオチドを含む閉鎖複合体の形成を有利にすることができる。Sr2+イオンは、約0.01mM〜約30mMの濃度で存在し得る。場合により、Sr2+は10mMのSrCl2として存在する。試験条件下で閉鎖複合体の形成をモニタリングして、閉鎖複合体の鋳型核酸の次の塩基を同定する。Sr2+の存在下でのdNTP(例えば、dATP、dTTP、dCTP、dGTP)のそれぞれに対するポリメラーゼ(例えば、E.coli DNAポリメラーゼI、Bstのクレノー断片)の親和性は異なる可能性がある。したがって、試験には、dNTPに対するポリメラーゼ−鋳型核酸の結合親和性を測定することを含み得る。その場合、結合親和性は鋳型核酸の次の塩基を示す。場合により、結合相互作用は、機能欠損DNAポリメラーゼとプライマー結合鋳型核酸との二元相互作用を不安定化させる条件下で行われる場合がある。場合により、結合相互作用は、ポリメラーゼ、プライマー結合鋳型核酸、及び次の正しいヌクレオチドとの間の三元相互作用を安定化させる条件下で行われる場合がある。試験後、洗浄工程によって、未結合のヌクレオチドを除去し、反応物にMg2+を加えて、ピロリン酸(PPi)の切断及びヌクレオチドの取り込みを誘導する。場合により、三元複合体の安定性を維持し、三元複合体の解離を阻止するため、洗浄工程でSr2+を加える。目的とする配列読み取り長が得られるまで反応を繰り返すことができる。
場合により、Ni2+を含み、Ni2+が閉鎖複合体の形成を促進する反応条件下で、機能欠損DNAポリメラーゼ、プライマー結合鋳型核酸、及びヌクレオチドとの間で閉鎖複合体が形成される。Ni2+の存在は、誤ったヌクレオチドを含む複合体の形成よりも、次の正しいヌクレオチドを含む閉鎖複合体の形成を有利にすることができる。Ni2+イオンは、約0.01mM〜約30mMの濃度で存在し得る。場合により、Ni2+は10mMのNiCl2として存在する。試験条件下で閉鎖複合体の形成をモニタリングして、閉鎖複合体の鋳型核酸の次の塩基を同定する。Sr2+の存在下でのdNTP(例えば、dATP、dTTP、dCTP、dGTP)のそれぞれに対するポリメラーゼ(例えば、E.coli DNAポリメラーゼI、Bstのクレノー断片)の親和性は異なる可能性がある。したがって、試験には、dNTPに対するポリメラーゼ−鋳型核酸の結合親和性を測定することを含み得る。その場合、結合親和性は鋳型核酸の次の塩基を示す。場合により、結合相互作用は、ポリメラーゼとプライマー結合鋳型核酸との二元相互作用を不安定化させる条件下で行われる場合がある。場合により、結合相互作用は、ポリメラーゼ、プライマー結合鋳型核酸、及び次の正しいヌクレオチドとの間の三元相互作用を安定化させる条件下で行われる場合がある。試験後、洗浄によって、未結合のヌクレオチド及びポリメラーゼを除去し、反応物にMg2+を加えて、ピロリン酸(PPi)の切断及びヌクレオチドの取り込みを誘導する。場合により、三元複合体の安定性を維持し、三元複合体の解離を阻止するため、洗浄緩衝液にNi2+を加える。目的とする配列読み取り長が得られるまで反応を繰り返すことができる。
場合により、非触媒濃度のCo2+を含み、Co2+が閉鎖複合体の形成を促進する反応条件下で、機能欠損DNAポリメラーゼ、プライマー結合鋳型核酸、及びヌクレオチドとの間で閉鎖複合体が形成される。非触媒濃度のCo2+の存在は、誤ったヌクレオチドを含む複合体の形成よりも、次の正しいヌクレオチドを含む閉鎖複合体の形成を有利にすることができる。Co2+イオンは、約0.01mM〜約0.5mMの濃度で存在し得る。場合により、Co2+は0.5mMのCoCl2として存在する。試験条件下で閉鎖複合体の形成をモニタリングして、閉鎖複合体の鋳型核酸の次の塩基を同定する。Co2+の存在下でのdNTP(例えば、dATP、dTTP、dCTP、dGTP)のそれぞれに対するポリメラーゼ(例えば、E.coli DNAポリメラーゼI、Bstのクレノー断片)の親和性は異なる可能性がある。したがって、試験には、dNTPに対するポリメラーゼ−鋳型核酸の結合親和性を測定することを含み得る。その場合、結合親和性は鋳型核酸の次の塩基を示す。場合により、結合相互作用は、ポリメラーゼとプライマー結合鋳型核酸との二元相互作用を不安定化させる条件下で行われる場合がある。場合により、結合相互作用は、ポリメラーゼ、プライマー結合鋳型核酸、及び次の正しいヌクレオチドとの間の三元相互作用を安定化させる条件下で行われる場合がある。試験後、洗浄によって、未結合のヌクレオチド及びポリメラーゼを除去し、反応物にCo2+を非触媒濃度で加え、ピロリン酸(PPi)の切断及びヌクレオチドの取り込みを誘導する。場合により、三元複合体の安定性を維持し、三元複合体の解離を阻止するため、洗浄緩衝液に非触媒量のCo2+を加える。目的とする配列読み取り長が得られるまで反応を繰り返すことができる。
場合により、触媒金属イオンは、後続のヌクレオチド取り込み及び閉鎖複合体の解離を伴うことなく閉鎖複合体の形成を促進することができる。場合により、反応混合物中の濃度0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10μMのMg2+は、ポリメラーゼの構造変化を誘導して、後続のヌクレオチドの取り込み、PPi、及び閉鎖複合体の解離を伴うことなく閉鎖複合体を形成することができる。場合により、Mg2+の濃度は、約0.5μM〜約10μM、約0.5μM〜約5μM、約0.5μM〜約4μM、約0.5μM〜約3μM、約μΜ〜約5μM、約1μM〜約4μM、及び約1μM〜約3μMである。
場合により、配列決定反応において、ヌクレオチドの取り込みを可能にするために必要な触媒金属イオンの供給濃度は、約0.001mM〜約10mM、約0.01mM〜約5mM、約0.01mM〜約3mM、約0.01mM〜約2mM、約0.01mM〜約1mM、約0.05mM〜約10mM、約0.05mM〜約5mM、約0.05mM〜約3mM、約0.05mM〜約2mM、または約0.05mM〜約1mMである。場合により、触媒金属イオンの濃度は、5mM〜50mMである。場合により、触媒金属イオンの濃度は、5mM〜15mM、または約10mMである。
非触媒イオンは、プライマー結合鋳型核酸の供給、ポリメラーゼの供給、二元複合体の形成、ヌクレオチドの供給、化学反応前閉鎖複合体の形成、ヌクレオチドの取り込み、転位前閉鎖複合体の形成、及び転位後構造の形成からなる反応工程いずれかの前、間、または後を含む任意の段階で反応混合物に添加することができる。非触媒イオンは、洗浄工程中に反応混合物に添加することができる。非触媒イオンは、反応の間、反応混合物に存在し得る。例えば、触媒イオンは、ポリメラーゼ媒介性取り込みを阻害する非触媒金属イオンを希釈し、ヌクレオチドの取り込みを可能にする濃度で反応混合物に添加される。
触媒イオン及び非触媒イオンがヌクレオチドの取り込みを調節する能力は、pH、イオン強度、キレート剤、化学的架橋、修飾ポリメラーゼ、取り込み不可能なヌクレオチド、機械的エネルギーまたは振動エネルギー、及び電場を含むが、これらに限定されない反応混合物の条件に依存し得る。
場合により、ヌクレオチドの取り込みを伴わずに閉鎖複合体の形成を可能にするために必要となる、配列決定反応においてポリメラーゼ媒介性取り込みを阻害する非触媒金属イオンの濃度は、約0.1mM〜約50mM、約0.1mM〜約40mM、約0.1mM〜約30mM、約0.1mM〜約20mM、約0.1mM〜約10mM、約0.1mM〜約5mM、約0.1〜約1mM、約1mM〜約50mM、約1mM〜約40mM、約1mM〜約30mM、約1mM〜約20mM、約1mM〜約10mM、約1mM〜約5mM、約2mM〜約30mM、約2mM〜約20mM、約2mM〜約10mM、またはこれらの範囲内の任意の濃度である。
試験反応混合物にポリメラーゼ阻害剤を添加することにより、閉鎖複合体を形成及び/または安定化することができる。阻害分子ホスホノアセテート(ホスホノ酢酸)及びホスホノホルメート(ホスホノギ酸、一般名ホスカルネット)、スラミン、アミノグリコシド、INDOPY−1、及びタゲチトキシンは、ポリメラーゼ活性の不競合または非競合阻害剤の非限定的な例である。酵素の活性部位近傍での阻害分子の結合は、ヌクレオチド取り込みサイクルの転位前段階または転位後段階のいずれかでポリメラーゼを捕捉し、ヌクレオチドの取り込み前または取り込み後にポリメラーゼをその閉鎖複合体構造内で安定化させ、阻害分子が除去、希釈、またはキレート化によって反応混合物中に供給されなくなるまでポリメラーゼを鋳型核酸に強制的に結合させる。
したがって、プライマーとプライマー結合された鋳型核酸分子を供給すること;プライマー結合鋳型核酸分子を、ポリメラーゼ、ポリメラーゼ阻害剤、及び少なくとも1つの非標識ヌクレオチド分子を含む第1の反応混合物と接触させること;非標識ヌクレオチド分子の存在下で、プライマー結合鋳型核酸分子のプライマーにヌクレオチドを取り込むことなく、ポリメラーゼとプライマー結合鋳型核酸分子との相互作用をモニタリングすること;及びプライマー結合鋳型核酸分子の次の塩基と相補的であるヌクレオチドを、モニタリングした相互作用によって同定すること、を含む試験工程を含む、鋳型核酸分子の配列決定方法を提供する。ポリメラーゼ阻害剤は、プライマー鋳型核酸のプライマーへの非標識ヌクレオチド分子の取り込みを阻止する。場合により、阻害剤は、非競合阻害剤、アロステリック阻害剤、または非競合アロステリック阻害剤である。場合により、ポリメラーゼ阻害剤は、ポリメラーゼ中の触媒イオン結合部位と競合する。
検出プラットフォーム:閉鎖複合体を検出するための計測方法
ヌクレオチド存在下での機能欠損DNAポリメラーゼと鋳型核酸との相互作用は、外部標識を使用せずにモニタリングすることができる。例えば、配列決定反応は、屈折率の変化の検出、蛍光放出、電荷検出、ラマン散乱検出、偏光解析検出、pH検出、サイズ検出、質量検出、表面プラズモン共鳴、導波モード共鳴、ナノポア光学干渉法、ウィスパリングギャラリーモード共振、ナノ粒子散乱、フォトニック結晶、水晶振動子マイクロバランス法、バイオレイヤー干渉法、振動検出、圧力検出、及び閉鎖複合体のポリメラーゼと鋳型核酸との結合によって付加される質量または屈折率を検出する他の無標識検出法によってモニタリングすることができる。
場合により、屈折率の変化の検出は、表面プラズモン共鳴検出、局在プラズモン共鳴検出、プラズモン−光子結合検出、サブ波長ナノホールを通る透過光の検出(光透過率の増強)、フォトニック結晶検出、干渉分光検出、屈折検出、導波モード共鳴検出、リング共振器検出、または偏光解析検出を含むが、これらに限定されない手段の1つまたは組み合わせによって行われる。場合により、核酸分子を表面に局在させることができ、その場合、様々なヌクレオチドの存在下でのポリメラーゼと核酸との相互作用を局所屈折率の変化として測定することができる。
場合により、鋳型核酸は、ヌクレオチド存在下でのポリメラーゼと鋳型核酸との相互作用が、表面を越えて透過する光または表面から反射される光を変化させるように、表面または表面近傍に適切に係留されるかまたは配置される。表面にはナノ構造を含んでもよい。場合により、表面はプラズモンまたはプラズモン共鳴を維持することができる。場合により、表面は、共振キャビティ、共振リング、またはフォトニック結晶スラブに限定されないフォトニック物質である。場合により、表面は導波モード共鳴センサーである。場合により、核酸は、ヌクレオチド存在下でのポリメラーゼと鋳型核酸との相互作用が、微粒子またはナノ粒子と相互作用する光の吸収、散乱、反射、または共鳴を変化させるように、ナノホールアレイ、ナノ粒子、または微粒子に、またはそれらの近傍に適切に係留されるかまたは配置される。
場合により、金表面のナノホールアレイが屈折率センサーとして使用される。DNAを増幅するPCR反応に使用されるプライマーの1つにチオール基を組み込んだ、標準的なチオール化学物質によって鋳型核酸を金属表面に結合することができる。ナノホールアレイの寸法が入射光に合わせて適切に調整されている場合、ヌクレオチド存在下での鋳型核酸へのポリメラーゼの結合を、ナノホールを透過する光の変化としてモニタリングすることができる。標識法と無標識法いずれの場合も、平衡シグナル強度の簡単かつ直接的な測定により、安定した閉鎖複合体の形成を明らかにすることができる。
場合により、表面プラズモンを維持することができる表面に核酸分子を局在させ、局在した核酸とポリメラーゼとの相互作用によって引き起こされる屈折率の変化を表面プラズモン特性の変化によってモニタリングすることができる。さらに表面プラズモンの上記特性は表面プラズモン共鳴を含み得る。表面プラズモン、局在表面プラズモン(LSP)、または表面プラズモンポラリトン(SPP)は、電磁波と表面電荷のプラズマ振動との結合から生じる。LSPはナノ粒子表面に閉じ込められ、対するSPPは高電子移動度表面と誘電媒体との間の界面で高電子密度表面に閉じ込められる。表面プラズモンは界面方向に沿って伝搬でき、エバネッセント方式でのみ誘電媒体内に浸透する。表面プラズモン共鳴条件は、入射電磁放射線の周波数が表面電子の固有振動周波数に一致するときに成立する。界面における誘電特性の変化、例えば結合または分子の密集による変化は、表面電子の振動に影響を与え、その結果、表面プラズモン共鳴波長が変化する。表面プラズモン共鳴が可能な表面としては、非限定的に、ナノ粒子、ナノ粒子のクラスター及び凝集体、連続した平面、ナノ構造の表面、及び微細構造の表面が挙げられる。金、銀、アルミニウム、高導電性金属酸化物(例えば、酸化インジウムスズ、酸化亜鉛、酸化タングステン)などの物質は、それらの表面での表面プラズモン共鳴を持続させることができる。
場合により、ポリメラーゼと核酸との結合が局在表面プラズモン共鳴(LSPR)のシフトを引き起こすように、単一の核酸分子または核酸の複数のクローンコピーがナノ粒子に結合される。ナノ粒子に入射する光は、ナノ粒子の大きさ、形状、及び組成に応じた共鳴周波数で集合振動する伝導電子を粒子内に誘導する。対象となるナノ粒子は、球状ナノ粒子、ナノロッド、ナノピラミッド、ナノダイヤモンド、及びナノディスクを含む様々な形状を呈することができる。このようなLSPRモードの結果として、ナノ粒子が光を非常に強く吸収して散乱させるため、暗視野(光学散乱)顕微鏡を用いて個々のナノ粒子を目視で容易に観察できる。例えば、単一の80nm銀ナノスフェアは、フルオレセイン分子の蛍光断面積よりも百万倍大きく、フルオレセインを自己消光限界まで充填した同等サイズのナノスフェアの断面積よりも1000倍大きい3x10−2m2の散乱断面積で445nmの青色光を散乱させる。場合により、ナノ粒子は、可視スペクトルのどこにでも散乱ピークを有する超高輝度のナノサイズ光散乱体として構成されたプラズモン共鳴粒子である。プラズモン共鳴粒子は、退色しないので有利である。場合により、プラズモン共鳴粒子を調製し、鋳型核酸で被覆して、ポリメラーゼと1つ以上のヌクレオチドを含む反応混合物中に供給し、ポリメラーゼ−鋳型核酸−粒子の相互作用を検出する。上述の1つ以上の工程は、Schultz et al.,in PNAS 97:996−1001(2000)に開示される1つ以上の方法に基づくかまたは派生するものであってよく、本文献はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
貴金属ナノ粒子は、共鳴波長における吸光係数が非常に大きいため、表面近接相互作用に関する極めて強力な標識として機能することができる。場合により、ナノ粒子に局在するDNAとのポリメラーゼの相互作用は、共鳴波長のシフトをもたらす。結合または結合相互作用に起因する共鳴波長の変化は、数ある方法のいずれか1つで測定することができる。場合により、ある範囲の波長にわたって照射を走査し、イメージングデバイスで最大散乱が観察される波長を特定する。場合により、広帯域照明を、イメージングデバイスに近接する分光素子と併用し、共鳴ピークを分光学的に特定する。場合により、ナノ粒子系はその共鳴波長またはその共鳴波長付近で照射することができ、何らかの結合相互作用を、新たな共鳴波長が照射波長から離れるにつれて低下する散乱光の強度として観察することができる。波長を照射する位置によっては、共鳴ピークが照射波長に近づくにつれ、相互作用がナノ粒子の散乱の増加として現れることもある。場合により、DNA結合ナノ粒子が表面に局在していてもよく、またはその代わりにDNA結合ナノ粒子が溶液に懸濁されていてもよい。ナノ粒子を使用するバイオセンシングの包括的な概説は、Anker et al.,in Nature Materials 7:442−453(2008)に記載されており、この文献はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
場合により、LSPRが可能なナノ形状は、平面基板にリソグラフィによりパターン形成される。ナノ形状の2次元パターニングは、多数の異なる核酸分子の多重的かつ高速な分析に有利である。場合により、金ナノポストを基材として、核酸をナノポストに結合させ、ポリメラーゼ−鋳型核酸の相互作用を表面プラズモン共鳴によりイメージング検出する。ナノ構造の大きさ及び周期は表面プラズモン共鳴のシグナル増強に影響を与え、場合により、対照フィルムと比較して2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍またはそれ以上のシグナル増幅をもたらすことができる。
場合により、表面プラズモン共鳴を平面で持続させることができる。クレッチマン配置に基づく市販装置(例えば、Biacore,Uppsala,Sweden)及び表面プラズモン共鳴イメージングに基づく市販装置(例えば、GWC Technologies;Madison,WI;またはHoriba;Kyoto,Japan)をいくつか入手できる。このような装置は、単一のスポットとして、及び多重アレイパターンで、その表面にDNAを結合させるためのプロトコールが十分に確立されている。クレッチマン配置では、金属膜、通常は金をプリズムの側面に蒸着させ、表面プラズモンを励起する角度で入射光を照射する。エバネッセント波は、金属膜を貫通し、膜の裏側でプラズモンを励起する。これを利用して、金膜に近接する表面付近及び表面の相互作用をモニタリングすることができる。共鳴角では、プリズム−金界面からの反射光が極度に減衰する。固定波長光源の場合、共鳴角に近い一定角度での反射光の強度のモニタリングに加え、表面プラズモン共鳴条件(最小反射率)を成立させるのに必要な入射角の変化をモニタリングすることによって、結合相互作用を調べることができる。CCDカメラまたはCMOSカメラなどの2Dイメージングデバイスを利用して反射光をモニタリングすると、照射領域全体を高解像度で撮像することができる。この方法は、表面プラズモン共鳴イメージング(SPRi)と呼ばれている。この方法では、表面の独立領域を同時に高速で解析することが可能である。一定角度の構成では、広帯域照明を使用することもでき、その場合、表面プラズモン共鳴に結合される波長を、反射スペクトルのディップを観測することによって分光法により特定する。表面の相互作用は、共鳴波長のシフトによってモニタリングする。
表面プラズモン共鳴は、タンパク質−核酸相互作用をモニタリングするための方法として十分に確立されており、核酸の結合とデータ解析の両方に関して多数の標準プロトコールが存在する。文献からの例示的な参照として、Cho et al.,“Binding Kinetics of DNA−Protein Interaction Using Surface Plasmon Resonance,” Protocol Exchange,May 22,2013;及びBrockman et al.,“A Multistep Chemical Modification Procedure To Create DNA Arrays on Gold Surfaces for the Study of Protein−DNA Interactions with Surface Plasmon Resonance Imaging,” Journal of the American Chemical Society 121:8044−51(1999)が挙げられ、いずれの文献もその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
ポリメラーゼ/核酸相互作用を、局在表面プラズモンを持続することができるナノ構造表面でモニタリングすることができる。場合により、ポリメラーゼ/核酸相互作用を、表面プラズモンを持続することができるナノ構造表面でモニタリングしてもよい。
場合により、ポリメラーゼ/核酸相互作用を、局在表面プラズモンを持続することができるナノ構造表面でモニタリングしてもよい。場合により、ポリメラーゼ/核酸相互作用を、表面プラズモンを持続することができるナノ構造表面でモニタリングしてもよい。
場合により、ナノホールアレイを用いた異常光透過(EOT)を利用して、核酸/ポリメラーゼ相互作用をモニタリングしてもよい。プラズモニック金属膜のサブ波長ナノホールを透過する光は、古典的な電磁気理論による予想よりも増強される。この光透過の増強は、プラズモン共鳴と入射光との結合により、共鳴波長で、予測より大きい割合の光が金属ナノホールを透過すると考えることで説明することができる。光透過の増強は、ナノホールの寸法及びピッチ、金属の特性、ならびにナノホールのある金属膜両面の媒体の誘電特性に応じて異なる。バイオセンサーに関しては、金属ナノホールアレイの透過率が、金属膜に接触する媒体の屈折率に応じて異なり、それによって、例えば、金属表面に結合する核酸とポリメラーゼとの相互作用を、ナノホールアレイを透過する光の強度の変化としてモニタリングすることができる。表面プラズモン共鳴のEOT/プラズモニックナノホールアレイの手法を利用するときの計測及びアライメントの要件を、非常にコンパクトな光学素子及び撮像素子の使用時に用いることができる。堅牢なEOTプラズモニックセンサーを実装するには、低出力LED照明とCMOSまたはCCDカメラで十分な場合がある。例示的なナノホールアレイを用いた表面プラズモン共鳴検出デバイスは、Escobedo et al.,in “Integrated Nanohole Array Surface Plasmon Resonance Sensing Device Using a Dual−Wavelength Source,” Journal of Micromechanics and Microengineering 21:115001(2011)に記載されており、本文献はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
プラズモニックナノホールアレイは、ガラス表面に堆積した光学的に不透明な金の層(50nm厚より大きい)にパターン形成することができる。場合により、プラズモニックナノホールアレイは、ガラスに堆積した光学的に厚いアルミニウム膜または銀膜にパターン形成することができる。場合により、ナノホールアレイは、低屈折率プラスチックに堆積した光学的に厚い金属層にパターン形成される。低屈折率プラスチックにプラズモニックナノホールアレイをパターン形成すると、金属層の両側での屈折率が適切に一致することで屈折率変化に対するデバイスの感度が高まる。場合により、ナノホールアレイの屈折率感度は、ホール間の距離を広げることによって増加する。場合により、ナノホールアレイは、複製、例えば、エンボス加工、キャスティング、インプリントリソグラフィ、または鋳型ストリッピングにより製造される。場合により、ナノホールアレイは、コロイドを用いた自己組織化によって製造される。場合により、ナノホールアレイは、レーザー干渉リソグラフィなどの投影法による直接パターン形成によって製造される。
ナノホール構造よりも、ナノバケット構造が好ましい場合がある。ナノホール構造では、ナノ形状の底部はガラスもしくはプラスチックまたは他の適切な誘電体であるが、ナノバケット構造ではナノ形状の底部にプラズモニック金属を含む。ナノバケットアレイは、製造が比較的簡単であると同時に、局所屈折率に対する透過感度が維持されるという利点がある。
場合により、ナノホールアレイプラズモニック検出をレンズフリーのホログラフィックイメージングと組み合わせることで、安価な方法で大面積イメージングが可能になる。場合により、プラズモニックバイオセンシングプラットフォームは、ナノホールアレイを有するプラズモニックチップ、チップを照射するように構成された発光ダイオード光源、及び表面での分子結合事象によって変調されるナノホールの回折パターンを記録するCMOSイメージャーチップを含む。この結合事象は、ヌクレオチド存在下でのポリメラーゼと鋳型核酸との閉鎖複合体の形成であり得る。
いずれの検出法も核酸を結合させる必要がある表面に同様の金属表面を使用しているため、表面プラズモン共鳴検出のために(核酸が結合する)表面を官能化する方法をEOTナノホールアレイにそのまま応用することができる。
場合により、ポリメラーゼ/核酸相互作用に伴う屈折率変化を、プラズモンを持続させないナノ構造表面でモニタリングしてもよい。場合により、導波モード共鳴を利用して、ポリメラーゼ/核酸相互作用をモニタリングしてもよい。導波モード共鳴または導波路モード共鳴とは、回折格子またはプリズムなどの位相整合素子の導入によって光導波路の導波モードを励起し、同時に抽出できる現象である。このような導波モードは、導波が維持されないため「漏洩モード」とも呼ばれ、1次元及び2次元のフォトニック結晶スラブで観察される。導波モード共鳴は、互いに隣接してまたは互いに重ね合わせて配置された2つの光学構造である、回折モードと導波モードとの結合と考えることができる。例えば、光導波路の上部に配置された回折格子の場合、回折モードの1つは、光導波路の導波モードに正確に結合でき、その結果、導波路に沿ってそのモードが伝搬される。非共鳴状態の場合、光は導波路に結合されないので、構造は完全に透明に見える場合がある(誘電体導波路が使用される場合)。共鳴時には、共鳴波長は導波路に強く結合され、グレーティング−導波路界面から下流側の素子によっては構造外で結合する場合がある。グレーティングカプラが導波路の全面にわたって延在する場合、結合入力された光が次のグレーティング素子で結合出力するため、光を導波することができない。したがって、グレーティング導波路構造では、共鳴が強い反射ピークとして観測され、非共鳴状態に対して構造は透過的である。共鳴状態は、入射光の角度、グレーティング特性、偏光、及び波長に依存する。例えば導波路全面へのグレーティングの結合により、導波モードの伝搬が存在しない場合、この共鳴モードは、強度の光閉じ込め及び導波路層から横方向のエバネッセント光の伝搬という観点から、漏洩モード共鳴と呼ばれる場合もある。例えば生体分子の結合に起因するグレーティング付近の誘電特性の変化は、導波路内の結合に影響を及ぼし、それによって共鳴状態を変化させる。場合により、核酸分子がグレーティング導波路構造の表面に結合する場合、ポリメラーゼ/核酸相互作用を、漏洩モード共鳴の波長の変化としてモニタリングすることができる。
回折素子は透明基板上に直接使用することができ、導波路素子を明確に必要とするわけではない。グレーティングナノ構造付近での相互作用による共鳴状態の変化は、反射光または透過光の共鳴波長シフトとしてモニタリングすることができる。
核酸が結合する導波モード共鳴センサーからの反射光を利用して、ポリメラーゼ/核酸相互作用をモニタリングすることができる。照射用に広帯域照明源を使用することができ、反射光の分光試験により、ポリメラーゼ結合に起因する局所屈折率の変化を明らかにすることができる。
場合により、広帯域照明を使用して透過光を調べることで、ポリメラーゼ相互作用に起因する共鳴シフトを同定することができる。直線偏光された狭帯域照明を使用してもよく、その透過光を交差偏光子に通してフィルタリングすることができる。その場合、透過光は、偏光が変化する漏洩モード応答を除いて、交差偏光子によって完全に減衰される。この実施態様では、屈折率のモニタリングを、安価なイメージングシステムでモニタリングすることができる単純な透過アッセイに換えている。公開資料に光学部品のアセンブリが記載されている。その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Nazirizadeh et al.,“Low−Cost Label−Free Biosensors Using Photonic Crystals Embedded between Crossed Polarizers,” Optics Express 18:19120−19128(2010)を参照のこと。
ナノ構造表面に加えて、平坦な非構造化表面も、屈折率変調のモニタリングに有利に利用することができる。場合により、干渉法を用いて、非構造化された光学的に透明な基材に結合した核酸とのポリメラーゼの相互作用をモニタリングすることができる。核酸分子は、当技術分野で既知の任意の手段によってスライドガラスの上面に結合させることができ、そのシステムではスライドガラスの底面から照射される。この構成には2つの反射面があり、一方はスライドガラスの底面からの反射であり、他方は核酸分子が結合した上面からの反射である。2つの反射波は相互に干渉して、経路長差に基づいて建設的干渉または相殺的干渉を引き起こし得る。そのとき上面からの反射波は、核酸分子の結合(及びその後のポリメラーゼと結合核酸分子との相互作用)に起因する誘電率の変化によって変調される。底面からの反射は変化せず、核酸分子への何らかの結合は、上面からの反射光と底面からの反射光との位相差で表すことができ、さらにはこの位相差が観察される干渉パターンに影響を及ぼす。場合により、核酸/ポリメラーゼ相互作用のモニタリングにバイオレイヤー干渉法が用いられる。バイオレイヤー干渉法は、Pall Forte Bio corporation(Menlo Park,CA)による販売品などの市販装置で実施することができる。
場合により、上面からの反射光は、集束光学系を使用することによって選択的に選別される。底面からの反射光は、焦点面にはないため無視される。核酸が結合した上面のみに着目すると、集束レンズによって集められた光は、部分的に反射された入射光に対応する平面波と、焦点面において分子によって収集方向に散乱された照射に対応する散乱波を含む。入射光がコヒーレントである場合、これらの2成分が干渉する場合がある。この散乱系の干渉検出は極めて感度が高く、これを利用して、単一のタンパク質分子まで検出することができる。
場合により、電界効果トランジスタ(FET)が、閉鎖複合体を検出するためのバイオセンサーとして構成される。FETのゲート端子が鋳型核酸の付加によって変更される。荷電タグを含むポリメラーゼの結合は、電気化学的シグナルの変化をもたらす。次の正しいヌクレオチドをもつポリメラーゼの鋳型核酸との結合は、他の誤ったヌクレオチドの存在下で鋳型核酸に結合するポリメラーゼとは異なるシグナルを示し、誤ったヌクレオチドのそれぞれはまた異なるシグナルを示し得る。場合により、鋳型核酸とのポリメラーゼの相互作用は、ポリメラーゼ、プライマー結合鋳型核酸、またはヌクレオチドに外部標識を使用することなく、FETを用いてモニタリングされる。場合により、取り込み反応中のH+イオンの放出により生じるpHの変化は、FETを用いて検出される。場合により、ポリメラーゼは、FETによって検出される持続的なH+イオンを生成するタグを含む。場合により、持続的なH+イオンを生成するタグはATPシンターゼである。場合により、持続的なH+イオンを生成するタグは、パラジウム、銅、または別の触媒である。場合により、ヌクレオチド取り込み後のPPiの脱離は、FETを用いて検出される。例えば、一度に1種類のヌクレオチドを反応物に供給することができる。次の正しいヌクレオチドが付加され、条件が取り込み可能になると、PPiが切断されて脱離し、これをFETを使用して検出することで、次の正しいヌクレオチド及び次の塩基を同定する。場合により、鋳型核酸はナノチューブ壁に結合される。場合により、ポリメラーゼはナノチューブ壁に結合される。FETは配列決定センサーとしての使用に有利であり、小型かつ軽量であることからポータブル配列決定モニタリング部品としての使用に適している。分子相互作用のFET検出の詳細は、Kim et al.による“An FET−Type Charge Sensor for Highly Sensitive Detection of DNA Sequence,” Biosensors and Bioelectronics,Microsensors and Microsystems 20:69−74(2004),doi:10.1016/j.bios.2004.01.025;及びStar et al.による“Electronic Detection of Specific Protein Binding Using Nanotube FET Devices,” Nano Letters 3:459−63(2003),doi:10.1021/nl0340172に記載されており、これらの文献はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
場合により、機能欠損DNAポリメラーゼは蛍光タグを含む。シグナル対ノイズ比の高いポリメラーゼ−核酸相互作用をモニタリングするには、エバネッセント照射または共焦点イメージングを用いることができる。局在する鋳型核酸での閉鎖複合体の形成は、例えば、バックグラウンドと比較した蛍光の増加として観察することができるが、場合によって、消光または局所的な極性環境の変化による蛍光の減少として観察することもできる。場合により、同じ反応混合物中で、ポリメラーゼ分子の一部をフルオロフォアで標識し、別の部分を消光剤で標識してもよい。その場合、核酸の局在化クローン集団での閉鎖複合体の形成は、バックグラウンドと比較した蛍光の減少として現れる。核酸のクローン集団は、平面基材、微粒子、またはナノ粒子などの支持体表面に結合することができる。場合により、ポリメラーゼは、フルオロフォア、ルミノフォア、ケミルミノフォア、クロモフォア、またはバイオルミノフォアで標識される。プライマー結合鋳型核酸分子、同種ヌクレオチド、及び蛍光タグまたは蛍光標識ポリメラーゼを含む三元複合体は、ポリメラーゼに結合した蛍光標識部分を検出することによって検出またはモニタリングすることができる。
場合により、複数の鋳型核酸が表面に、引き続いてその後ろに1つ(またはそれ以上)のdNTPが係留される。親和性のスペクトルは、次の正しいヌクレオチド、したがって鋳型核酸の次の塩基の同一性を明らかにする。場合により、反応混合物の条件(すなわち、洗浄工程)を除外する及び置き換える必要なく親和性が測定される。例えば、測定された結合相互作用強度の自己相関により、核酸配列の動態を容易に明らかにすることができる。場合により、試験には、ヌクレオチド存在下でのプライマー結合鋳型核酸に対するポリメラーゼの親和性をモニタリングすることを含む。場合により、ポリメラーゼを核酸と一時的に結合させ、その結合反応速度及び親和性から、鋳型核酸の次の塩基の同一性に関する情報を得る。場合により、閉鎖複合体を形成し、閉鎖複合体の形成に関与する反応条件から、核酸の次の塩基に関する情報を得る。場合により、ポリメラーゼを、それが相互作用する重合部位に捕捉し、それによって解離速度を測定するための洗浄工程を必要とせずに親和性を明らかにする。
機能欠損DNAポリメラーゼと核酸との間の動的相互作用を測定できる技術であれば、いずれを用いても親和性を測定し、本明細書に開示する配列決定反応方法を実現することができる。
ヌクレオチド特異的三元複合体の形成を検出するシステム
提供する方法は、核酸重合反応の何らかの成分が表面に局在されるプラットフォームを使用して実施することができる。場合により、鋳型核酸は、平面基材、ナノホールアレイ、微粒子、またはナノ粒子に結合される。場合により、全反応成分が反応混合物中に遊離懸濁され、固体支持基材に固定されない。
場合により、鋳型核酸は表面に固定される。表面は、平面基材、ヒドロゲル、ナノホールアレイ、微粒子、またはナノ粒子であり得る。場合により、反応混合物は、複数のクローン増幅された鋳型核酸分子を含有する。場合により、反応混合物は、複数の識別可能な鋳型核酸を含有する。
本明細書では、とりわけ、ポリメラーゼドメインの架橋、ポリメラーゼの核酸への架橋、小分子によるアロステリック阻害、不競合結合剤、競合阻害剤、非競合阻害剤、及び変性を含むが、これらに限定されない手段の1つまたは組み合わせによって、ヌクレオチド存在下でのポリメラーゼとプライマー結合鋳型核酸との相互作用を試験して、鋳型閉鎖複合体の次の塩基を同定することを含む配列決定反応を行うためのシステムを提供する。この捕捉されたポリメラーゼ複合体の形成により、核酸鋳型の次の塩基の同一性に関する情報が得られる。
本明細書に開示される任意の配列決定方法の1つ以上の工程を行うためのシステムもまた提供される。場合により、システムは、ヌクレオチド存在下でのポリメラーゼと鋳型核酸との結合アッセイを実施するために必要な成分及び試薬を含み、その鋳型核酸はナノ構造体上に提供される。場合により、システムは、鋳型DNA分子をナノ構造体に結合させるのに必要な1つ以上の試薬及び指示書を含む。例えば、システムは、結合反応速度を決定するための表面プラズモン共鳴で使用するように構成された、チップなどのナノ構造体を提供する。そのようなチップの一例は、CM5 Sensor Sチップ(GE Healthcare;Piscatawany,NJ)である。システムは、表面プラズモン共鳴装置などの計測装置を備えてもよい。システムは、ストレプトアビジン及び/またはビオチンを備えてもよい。場合により、システムは、ビオチン化鋳型DNAを調製するためのビオチン−DNA、DNAリガーゼ、緩衝液、及び/またはDNAポリメラーゼを備える。場合により、システムは、ビオチン化DNA精製のためのゲルまたは試薬(例えば、フェノール:クロロホルム)を備える。あるいは、システムは、ビオチン化鋳型DNAの特性決定、例えば、質量分析またはHPLCのための試薬を備える。場合により、システムは、ストレプトアビジン、チップ、試薬、計測装置、及び/またはチップにストレプトアビジンを固定する際の指示書を含む。場合により、システムには鋳型DNA被覆用に予め構成されたチップが備わっており、このチップは鋳型核酸または修飾鋳型核酸(例えば、ビオチン化鋳型DNA)を結合することができる試薬と共に固定されている。場合により、システムはチップ再生のための試薬を備える。
本明細書に開示される任意の配列決定方法の1つ以上の工程を行うためのシステムもまた提供される。場合により、システムは、ヌクレオチド存在下でのポリメラーゼと鋳型核酸との結合アッセイを実施するために必要な成分及び試薬を含み、その鋳型核酸はナノ粒子上に提供される。場合により、システムは、鋳型DNA分子をナノ粒子に結合させるのに必要な1つ以上の試薬及び指示書を含む。ナノ粒子は、例えば、金ナノ粒子を使用した、核酸−ポリメラーゼ相互作用の電気化学的検出に合わせて構成することができる。場合により、DNA−ナノ粒子コンジュゲートは、金コロイド水溶液と、例えば、その末端に遊離チオール基またはジスルフィド基を含む鋳型DNA分子との間で形成される。コンジュゲートは、同じ核酸配列を含んでもよい。場合により、ナノ粒子コンジュゲートは、高温(例えば、60℃超)及び高イオン強度(例えば、1M Na+)での凝集及び沈殿に対して安定である。場合により、システムは、ジスルフィドまたはチオールをもつ鋳型DNA分子の生成を含め、ナノ粒子に結合する鋳型DNA分子を調製するための試薬を備える。ジスルフィドを含む鋳型核酸は、例えば、3’−チオール修飾CPG(controlled−pore glass)を使用して、または汎用支持体CPGを出発物質とし、配列内の最初の単量体としてジスルフィド修飾ホスホロアミダイトを添加することによって合成することができる。システムは、ジスルフィド修飾鋳型核酸を得るための核酸合成試薬及び/または指示書を備えてもよい。チオールを含む鋳型核酸はまた、5’−トリチルチオール修飾ホスホロアミダイトによる核酸合成時に生成することができる。システムは、例えば電気泳動または遠心分離を使用した、ナノ粒子コンジュゲート精製のための試薬及び/または指示書を備えてもよい。場合により、ナノ粒子コンジュゲートを使用して、ポリメラーゼ−鋳型核酸相互作用を比色分析する。この場合、ナノ粒子コンジュゲートの融解温度は、強力なポリメラーゼ結合の存在下では増加する。したがって、DNA結合の強度は、色の変化によって観察されるこの融解転移の変化によって決定することができる。システムは、場合により、融解転移を検出するための試薬及び装置を含む。
本明細書に開示される任意の配列決定方法の1つ以上の工程を行うためのシステムもまた提供される。場合により、システムは、検出可能なポリメラーゼを使用して、ヌクレオチド存在下でのポリメラーゼと鋳型核酸との結合アッセイを実施するために必要な成分及び試薬を含む。場合により、ポリメラーゼは検出可能に標識される。場合により、ポリメラーゼは、ポリメラーゼの固有の特性、例えば芳香族アミノ酸を利用して検出される。場合により、システムに存在するポリメラーゼ及び鋳型核酸は、支持体にコンジュゲートせずに、溶液で使用するように構成されている。ポリメラーゼの検出可能な標識はフルオロフォアであってもよく、その場合、蛍光を利用してポリメラーゼ−鋳型核酸結合事象をモニタリングする。場合により、検出可能なポリメラーゼを、溶液中の鋳型核酸、または支持構造体にコンジュゲートされた鋳型核酸と組み合わせて使用することができる。場合により、ポリメラーゼの1つ以上のシステイン残基がCy3−マレイミドで標識される。場合により、システムは、蛍光標識されたポリメラーゼ分子を調製するのに必要な試薬及び/または指示書を含む。システムは、蛍光標識されたポリメラーゼ精製のための試薬及び/または指示書を含み得る。
各方法の手順上の特徴
試験工程で、閉鎖複合体の形成を通じて次の塩基の同一性を確認した後、任意の取り込み工程または追加の試験工程に備え、反応条件を必要に応じて再設定、再充填、または変更することができる。場合により、ヌクレオチドを化学的に取り込まなくても、次の塩基の同一性が確認される。場合により、後続のヌクレオチドの取り込みが阻害された状態で、次の塩基の同一性が、ヌクレオチドの化学的取り込みによって確認される。場合により、配列決定される鋳型核酸を除いて試験工程の全成分を除去または洗い流し、システムを試験前の条件に戻す。場合により、試験工程の一部成分を除去する。場合により、試験工程に追加成分を加える。
場合により、取り込み工程に可逆的ターミネーターヌクレオチドを使用して、1サイクルあたり1つのヌクレオチドのみが確実に取り込まれるようにする。塩基同一性が試験工程から判明するため、可逆的ターミネーターヌクレオチドに標識は必要ない。蛍光標識されていない可逆的ターミネーターは、商業的供給業者から容易に入手可能である。非標識の可逆的ターミネーターヌクレオチドは、立体構造上のフットプリントが小さく、また天然ヌクレオチドと同等の大きさであるため、標識された可逆的ターミネーターと比較して取り込み速度がはるかに高速であると予想される。
本明細書では、試験及び/または取り込みのサイクルごとに配列決定試薬を次々に導入する試薬サイクルシーケンシング法を部分的に開示する。場合により、配列決定反応混合物は、ポリメラーゼ、プライマー結合鋳型核酸、及び少なくとも1種類のヌクレオチドを含む。場合により、ヌクレオチド及び/またはポリメラーゼは、配列決定反応混合物に周期的に導入される。場合により、配列決定反応混合物は、複数のポリメラーゼ、プライマー結合鋳型核酸、及びヌクレオチドを含む。場合により、複数のヌクレオチド及び/または複数のポリメラーゼが、配列決定反応混合物に周期的に導入される。場合により、配列決定反応の試験工程は、配列決定反応の取り込み工程とは異なる組成を有する。
場合により、1つ以上のヌクレオチドが配列決定反応に順次添加され、配列決定反応から順次除外される。場合により、1種類、2種類、3種類、4種類、またはそれ以上の種類のヌクレオチドが反応混合物に添加され、反応混合物から除外される。例えば、1種類のヌクレオチドが配列決定反応に添加され、除去され、別の種類のヌクレオチドと置き換えられる。場合により、試験工程時に存在するヌクレオチドの種類は、取り込み工程時に存在するヌクレオチドの種類とは異なる。場合により、1回の試験工程時に存在するヌクレオチドの種類は、一連の試験工程時(すなわち、一連の試験工程は取り込み工程前に実施される)に存在するヌクレオチドの種類とは異なる。場合により、1種類、2種類、3種類、4種類、またはそれ以上の種類のヌクレオチドが試験反応混合物中に存在し、1種類、2種類、3種類、4種類、またはそれ以上の種類のヌクレオチドが取り込み反応混合物中に存在する。
場合により、機能欠損DNAポリメラーゼが配列決定反応に周期的に添加され、配列決定反応から周期的に除外される。1つ以上の種類の異なるポリメラーを配列決定反応に周期的に添加してもよく、配列決定反応から周期的に除外してもよい。場合により、試験工程時に存在するポリメラーゼの種類は、取り込み工程時に存在するポリメラーゼの種類とは異なる。1回の試験工程時に存在するポリメラーゼの種類は、一連の試験工程時(すなわち、一連の試験工程は取り込み工程前に実施される)に存在するポリメラーゼの種類と異なってもよい。
場合により、試薬の有無、pH、温度、及びイオン強度などの条件は、配列決定反応を通して変化する。場合により、金属が配列決定反応に周期的に添加され、配列決定反応から周期的に除外される。例えば、触媒金属イオンが、試験工程時に存在せず、取り込み工程時に存在してもよい。あるいは、ポリメラーゼ阻害剤が、試験工程時に存在し、取り込み工程時に存在しなくてもよい。場合により、配列決定反応時に消費される反応成分が、配列決定反応中の任意の時点で新しい成分の添加により補充される。
一度に1種類のヌクレオチドを機能欠損DNAポリメラーゼと共に加え、閉鎖複合体の形成に有利な反応条件にすることができる。次の正しいヌクレオチドが存在する場合、ポリメラーゼは鋳型核酸にのみ結合する。毎回のヌクレオチド添加後の洗浄工程により、閉鎖複合体に関与しない過剰のポリメラーゼ及びヌクレオチドがすべて反応混合物から確実に除去される。ヌクレオチドが既知の順序で一度に1つずつ添加される場合、添加されたヌクレオチドが次の正しいヌクレオチドであるときに閉鎖複合体が形成されることによって、鋳型核酸の次の塩基が決定される。閉鎖複合体は、構造変化によっても、ポリメラーゼ−鋳型核酸−ヌクレオチド相互作用の安定性の増加によっても確認することができる。場合により、次の正しいヌクレオチドの存在下で形成される閉鎖複合体の安定性は、誤ったヌクレオチドの存在下でのポリメラーゼと鋳型核酸との不安定な相互作用よりも少なくとも1桁大きくなる。洗浄工程の使用により、未結合のヌクレオチド及びポリメラーゼが存在しないこと、及び反応物に存在する唯一のヌクレオチドが、ポリメラーゼ及び鋳型核酸との閉鎖複合体に隔離されたものであることが保証される。鋳型核酸の次の塩基が決定されると、閉鎖複合体に隔離された次の正しいヌクレオチドは、閉鎖複合体の解離または不安定化に有利な反応条件で流入され、鋳型核酸プライマー鎖を1塩基伸長させる(取り込み)ことにより取り込むことができる。したがって、洗浄工程により、取り込まれたヌクレオチドのみが閉鎖複合体からの次の正しいヌクレオチドであることが保証される。この試薬サイクリング法を繰り返し、核酸配列を決定することができる。この試薬サイクリング法は、単一鋳型核酸分子、またはPCR産物もしくはローリングサークル増幅DNAなどのクローン集団のコレクションに適用することができる。多数の異なる鋳型が、例えば固体支持体上に配列されている場合、それらを並行して配列決定することができる。場合により、洗浄工程は、二元複合体の形成を不安定化する。場合により、洗浄は、安定化された閉鎖複合体が反応混合物中に残り、二元複合体が確実に除去されるような時間で行われる。場合により、洗浄工程は、反応物を高イオン強度または高pHの溶液で洗浄することを含む。
場合により、取り込み工程には3段階のプロセスがある。第1段階では、閉鎖複合体の形成に有利な反応条件下で、機能欠損DNAポリメラーゼと共に、プライマー結合鋳型核酸を含む反応物に4種類のヌクレオチドすべてが導入され、次の正しいヌクレオチドが鋳型核酸との安定な閉鎖複合体を形成する。第2段階では、機能欠損DNAポリメラーゼ及び存在し得る何らかの同種ヌクレオチドが除去され、次いで、除去された成分が第2のポリメラーゼ及び1つ以上のヌクレオチド(例えば、可逆的ターミネーターヌクレオチド)に置き換えられる。第3段階では、同種ヌクレオチドが鋳型核酸プライマーの3’末端に取り込まれる。取り込み工程での強固なポリメラーゼ−核酸複合体の形成は、非特異的DNA結合ドメインとポリメラーゼ(例えば、Thermo Fisher Scientific;Waltham,MAから入手可能なPhusionポリメラーゼ)との融合、及び高濃度ヌクレオチドを利用して閉鎖複合体中に常に正しいヌクレオチドを存在させることなどの標準技術によって可能となり得る。
ポリメラーゼ分子は、ポリメラーゼ合成反応に通常必要とされる2価金属イオンが存在しなくても、次の正しいヌクレオチドの存在下でプライマー結合鋳型核酸分子にフィンガー閉鎖構造で結合する。構造変化により、ポリメラーゼ活性部位内の次の鋳型塩基に相補的なヌクレオチドが捕捉される。場合により、閉鎖複合体の形成を利用して、鋳型核酸の次の塩基の同一性を決定することができる。場合により、ポリメラーゼの存在下、2価触媒金属イオンの非存在下で、プライマー結合鋳型核酸を異なるヌクレオチドに順次接触させることができる。その場合、閉鎖複合体の形成は、鋳型核酸と現在接触しているヌクレオチドが、核酸の次の塩基に相補的なヌクレオチドであることを示す。(ポリメラーゼ存在下及び触媒金属イオン非存在下で)鋳型核酸と接触させるヌクレオチドの順序がわかっていれば、閉鎖複合体形成を誘導する順序に従って個々の位置に基づいた相補的ヌクレオチドを容易に同定することができる。場合により、毎回のヌクレオチド添加後に適切な洗浄工程を実施し、次の正しいヌクレオチドとの閉鎖複合体である核酸に活性部位で結合するポリメラーゼのみを残して過剰な酵素及びヌクレオチドをすべて確実に除去することができる。閉鎖複合体は、閉鎖構造中のポリメラーゼの構造変化を明らかにする手段によって、またはポリメラーゼ/核酸/次の正しいヌクレオチドの複合体の安定性の増加をポリメラーゼ−核酸二元複合体と比較して、もしくはポリメラーゼ、プライマー結合鋳型核酸、及び誤ったヌクレオチドとの間の不安定な相互作用と比較して明らかにする手段によって同定することができる。
場合により、次の相補的ヌクレオチドを同定するプロセス(試験工程)は、ヌクレオチドの化学的取り込みを阻害する条件下で、1種類のポリメラーゼ及びヌクレオチドを含む試験混合物に、固定されたプライマー結合鋳型核酸を接触させる工程と、洗浄工程によって未結合試薬を除去する工程と、固定された核酸でのポリメラーゼ閉鎖複合体の有無を検出する工程と、閉鎖複合体の形成が検出されるまで異なる種類のヌクレオチドを用いて、各段階を順次繰り返す工程を含む。閉鎖複合体は、構造変化によっても、ポリメラーゼ/核酸/次の正しいヌクレオチドの複合体の安定性の増加によっても確認することができる。順次ヌクレオチドを添加するごとの洗浄工程は、閉鎖複合体の形成を高忠実度で検出できる検出メカニズム、例えば、エバネッセント波検出方法または閉鎖複合体からのシグナルを選択的にモニタリングする方法を使用することで省略することができる。上記の試験工程に続いて、閉鎖複合体を触媒金属イオン(例えば、Mn2+)と接触させて、閉鎖複合体に隔離されたヌクレオチドをプライマーの3’末端に共有結合させることを含む取り込み工程を行うことができる。場合により、取り込み工程には、ヌクレオチドの化学的取り込みを阻害する条件下で、複数の種類のヌクレオチドとポリメラーゼとの組み合わせを含む取り込み前混合物に、固定された核酸を接触させることを含んでもよい。この取り込み前混合物は、添加剤、及び高効率で閉鎖複合体を確実に形成する条件(例えば、低塩条件)の溶液を含み得る。この方法はまた、未結合試薬を除去するための洗浄工程を実施し、触媒金属イオンを含む取り込み混合物を固定化複合体に供給して、ポリメラーゼの活性部位内に隔離されたヌクレオチドを化学的に取り込むことを含み得る。取り込み前混合物は高効率で閉鎖複合体を確実に形成する一方、洗浄工程及び取り込み混合物はプライマーの3’末端に単一のヌクレオチドを確実に付加する。場合により、取り込み工程は、試験後すぐに1種類のヌクレオチドを添加して行ってもよい。例えば、配列決定に使用される繰り返しパターンは、(i)dATP+/ポリメラーゼ、(ii)洗浄、(iii)Mn+2、(iv)洗浄、(v)dTTP+/ポリメラーゼ、(vi)洗浄、(vii)Mn+2、(viii)洗浄、(ix)dCTP+/ポリメラーゼ、(x)洗浄、(xi)Mn+2、(xii)洗浄、(xiii)dGTP+/ポリメラーゼ、(xiv)洗浄、(xv)Mn+2、(xvi)洗浄のフローパターンを含み得る。場合により、配列決定に使用される繰り返しパターンは、(i)dATP+/ポリメラーゼ、(ii)洗浄、(iii)dTTP+/ポリメラーゼ、(iv)洗浄、(v)dGTP+/ポリメラーゼ、(vi)洗浄、(vii)dCTP+/ポリメラーゼ、(viii)洗浄、(ix)取り込み前混合物、(x)洗浄、(xi)Mn2+、(xii)洗浄を含み得る。洗浄工程には、場合により、金属イオンキレート剤、及び試験工程中の偶発的な取り込みを防止する他の小分子を含む。取り込み工程後、プライマー鎖は通常、1塩基伸長される。このプロセスを繰り返すことにより、核酸の一連の核酸塩基を同定し、核酸配列を効率的に決定することができる。場合により、試験工程は、高塩条件、例えば、50mM〜1,500mMの塩濃度条件下で実施される。
配列決定用途の場合、流体交換及び試薬交換が最小限であるかまたは不要になる点で有利であり得る。ポンプ、バルブ、及び試薬容器が不要になることで、より小型のデバイスを簡易に製造することができる。本明細書では、試験及び/または取り込みのサイクルごとに試薬を次々に導入する必要性をなくした「オールイン型」シーケンシング法を部分的に開示する。試薬は反応物に一度だけ添加され、配列決定反応物に既に内包された試薬を操作することによってsequencing−by−synthesis法を実施する。このような方法には、異なるヌクレオチドを区別する方法、核酸のクローン集団及び/または異なる核酸分子にわたってヌクレオチドの取り込みを同時に進行する方法、ならびに1サイクルごとに1ヌクレオチドのみを確実に付加する方法が必要である。
場合により、配列決定反応混合物は、機能欠損DNAポリメラーゼ、プライマー結合鋳型核酸、及び少なくとも1種類のヌクレオチドを含む。場合により、配列決定反応混合物は、複数のポリメラーゼ、プライマー結合鋳型核酸、及びヌクレオチドを含む。本明細書で示される場合、ポリメラーゼとは、単一のポリメラーゼまたは複数のポリメラーゼを指す。本明細書で示される場合、プライマー結合鋳型核酸または鋳型核酸とは、単一のプライマー結合鋳型核酸または単一の鋳型核酸、あるいは複数のプライマー結合鋳型核酸または複数の鋳型核酸を指す。本明細書で示される場合、ヌクレオチドとは、1つのヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドを指す。本明細書で示される場合、単一のヌクレオチドとは1つのヌクレオチドである。場合により、配列決定反応ヌクレオチドとしては、ヌクレオチドdATP、dGTP、dCTP、dTTP、及びdUTPのうち1つ、2つ、3つ、または4つが挙げられるが、これらに限定されない。
場合により、1種類、2種類、3種類、4種類、またはそれ以上の種類のヌクレオチド(例えば、dATP、dGTP、dCTP、dTTP)が同時にまとめて反応混合物中に存在し、1種類のヌクレオチドが次の正しいヌクレオチドである。反応混合物はさらに、少なくとも1つの機能欠損DNAポリメラーゼ及び少なくとも1つのプライマー結合鋳型核酸を含む。場合により、鋳型核酸は鋳型核酸のクローン集団である。場合により、機能欠損DNAポリメラーゼ、プライマー結合鋳型核酸、及びヌクレオチドは、試験反応条件下で閉鎖複合体を形成する。
提供される方法では、4種類のヌクレオチドが別個の異なった濃度で存在する可能性があり、それらが次の正しいヌクレオチドである場合には、4つのヌクレオチドの濃度の違いによって、ポリメラーゼの拡散時間及び鋳型核酸への結合時間が4つのヌクレオチドそれぞれで異なる。例えば、最も高濃度のヌクレオチドは、それと相補的な鋳型核酸の塩基に早い時点で結合し、最も低濃度のヌクレオチドは、それと相補的な鋳型核酸の塩基に最も遅く結合する。このとき、鋳型核酸の相補的塩基への結合は、閉じた閉鎖複合体における次の正しいヌクレオチドを有する鋳型核酸へのポリメラーゼの結合を意味する。したがって、次の正しいヌクレオチドの同一性は、閉鎖複合体における鋳型核酸へのポリメラーゼの結合速度または結合時間をモニタリングすることによって決定される。場合により、4種類のヌクレオチドをその濃度によって区別することができ、ヌクレオチドの濃度差によって、ポリメラーゼが核酸に結合する際に測定可能な結合速度差が生じる。場合により、4種類のヌクレオチドをその濃度によって区別することができ、ヌクレオチドの濃度差によって、安定した閉鎖複合体の形成時に測定可能な結合速度差が生じる。
場合により、機能欠損DNAポリメラーゼは標識される。場合によっては、ポリメラーゼは標識されず(すなわち、蛍光標識などの外部標識を有さず)、本明細書に開示されるかまたは当技術分野で既知である任意の無標識検出方法が用いられる。場合により、ポリメラーゼの核酸への結合は、機能欠損DNAポリメラーゼの検出可能な特徴によってモニタリングされる。場合により、安定した閉鎖複合体の形成は、ポリメラーゼの検出可能な特徴によってモニタリングされる。ポリメラーゼの検出可能な特徴には、光学的、電気的、熱的、比色、質量、及びそれらの任意の組み合わせを含み得るが、これらに限定されない。
場合により、1種類、2種類、3種類、4種類、またはそれ以上の種類のヌクレオチド(例えば、dATP、dTTP、dCTP、dGTP)を1種類、2種類、3種類、4種類、またはそれ以上の種類の機能欠損DNAポリメラーゼに係留する。その場合、ヌクレオチドは種類ごとに異なるポリメラーゼに係留され、各ポリメラーゼは同定が可能であるように他のポリメラーゼとは異なる外部標識または検出可能な特徴を有する。係留されたヌクレオチド型はすべて、係留したヌクレオチド−ポリメラーゼを含む閉鎖複合体を形成する配列決定反応混合物に一緒に添加することができる。その場合、閉鎖複合体をモニタリングしてポリメラーゼを同定し、それによってポリメラーゼが係留されている次の正しいヌクレオチドを同定する。係留は、多重リン酸基及びリンカー分子を介して、ヌクレオチドのガンマリン酸で起こり得る。そのようなガンマ−リン酸連結方法は、当技術分野で標準的であり、フルオロフォアがガンマリン酸リンカーに結合される。場合により、ヌクレオチドの種類の違いは、区別可能な外部標識によって同定される。場合により、識別可能な外部標識は、各ヌクレオチドのガンマリン酸位置に結合される。
場合により、配列決定反応混合物は、触媒金属イオンを含む。場合により、触媒金属イオンはMn2+イオンである。場合により、触媒金属イオンは、配列決定反応の任意の時点で一時的に機能欠損DNAポリメラーゼと反応させするために利用できる。強固な配列決定を確保するには、触媒金属イオンを短時間利用して、取り込み工程時に、鋳型核酸の次の塩基に相補的な単一のヌクレオチドがプライマーの3’末端に取り込まれるようにする。この場合、例えば、鋳型核酸の次の塩基の下流にある塩基に相補的なヌクレオチドといった他のヌクレオチドは一切取り込まれない。場合により、触媒金属イオンのマグネシウムは、局所的UV照射によりマグネシウムを放出し、ヌクレオチドの取り込みの際にポリメラーゼに供給できるように、配列決定反応混合物中に光ケージド複合体(例えば、DM−ニトロフェン)として存在する。さらに、配列決定反応混合物にはEDTAを含有してもよく、その場合、触媒性のヌクレオチド取り込み後にマグネシウムがポリメラーゼ活性部位から脱離し、配列決定反応混合物中のEDTAによって捕捉され、その結果、マグネシウムは後続のヌクレオチド取り込みを触媒することができなくなる。
したがって、提供される方法では、触媒金属イオンは、誘発物によって放出できるキレート化形態またはケージド形態で配列決定反応物に存在し得る。例えば、触媒金属イオンは閉鎖複合体の次の正しいヌクレオチドの取り込みを触媒するが、触媒金属イオンが活性部位から脱離すると、第2のキレート剤またはケージング剤によって金属イオン封鎖され、金属イオンは後続の取り込みを触媒できない。エバネッセント波照射または構造化照明などの局所アンケージング法または非キレート化法を用いることによって、触媒金属イオンがそのキレート複合体またはケージド複合体から確実に局所放出される。触媒金属イオンの制御放出は、例えば、熱的手段によって起こり得る。触媒金属イオンのその光ケージド複合体からの制御放出を、閉じ込められた光学場、例えば導波路または全内部反射顕微鏡などのエバネッセント照射によって鋳型核酸付近に局所的に放出することができる。触媒金属イオンの制御放出は、例えば、鋳型核酸付近に近接する溶液のpHを変化させることによって起こり得る。EDTA及びEGTAなどのキレート剤はpH依存性である。pH5未満では、2価カチオンMg2+及びMn2+は、EDTAによって効果的にキレート化されない。鋳型核酸付近のpHを制御可能に操作する方法により、触媒金属イオンをキレート剤から制御放出することが可能になる。場合により、局所的なpH変化は、核酸が結合する表面に電圧を印加することにより誘導される。pH法は、pHがキレート化範囲に戻ったときに金属がそのキレート化形態に戻るという利点をもたらす。
核酸配列を同定するためのポリメラーゼ−核酸結合反応が上記に記載されている。しかしながら、核酸配列の同定には、メチル化及びヒドロキシメチル化を含む核酸修飾に関する情報を伴う場合がある。メチル化は、鋳型核酸のシトシン塩基で起こり得る。DNAメチル化は、遺伝子の発現を安定に変化させる場合がある。DNAメチル化はまた、様々な種類のがん、アテローム性動脈硬化症、及び老化の進行にも現れる。したがって、DNAメチル化は、ヒト疾患のエピジェネティックバイオマーカーとして機能することができる。
場合により、鋳型核酸に対する1つ以上のシトシンメチル化は、本明細書で提供される結合方法による配列決定中に同定される。鋳型核酸は、配列決定前にクローン増幅することができ、アンプリコンにはその鋳型核酸と同じメチル化が含まれる。鋳型核酸の増幅は、DNAメチルトランスフェラーゼを使用したアンプリコンのメチル化を含み得る。鋳型核酸または増幅された鋳型核酸を、ポリメラーゼ及び1つ以上のヌクレオチド型を含む反応混合物に供給し、ポリメラーゼと核酸との間の相互作用をモニタリングする。場合により、メチル化シトシンの存在下でのポリメラーゼと鋳型核酸との間の相互作用は、未修飾シトシンの存在下での相互作用とは異なっている。したがって、ポリメラーゼ−核酸相互作用の試験に基づいて、修飾ヌクレオチドの同一性が決定される。
場合により、1つ以上の試験工程及び/または取り込み工程に続いて、ヌクレオチドの一部を添加してフェージングを減少またはリセットする。したがって、この方法には、ヌクレオチドの一部、及び核酸分子の鋳型鎖の対向鎖にヌクレオチドを取り込むための酵素を含む組成物と、配列決定される鋳型核酸分子とを接触させる1つ以上の工程を含み得る。接触は、核酸分子中のフェージングを減少させる条件下で行うことができる。場合により、鋳型核酸分子を接触させる工程は、取り込み工程後及び/または試験工程後に行われる。場合により、接触は、1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、15回、20回、25回、30回、35回、40回、45回、50回、60回、65回、70回、75回、80回、85回、90回、95回、または100回以上の配列決定(すなわち、試験及び取り込みの回)後に行われる。場合により、接触は30〜60回の配列決定後に行われる。場合により、接触は、各回の配列決定後(すなわち、1セットの試験工程及び取り込み工程後)に行われる。場合により、複数の接触工程が各回の配列決定後に行われ、その場合、各接触工程はヌクレオチドの異なる一部を含み得る。場合により、この方法は、接触後に1つ以上の洗浄工程をさらに含む。場合により、一部には2つまたは3つのヌクレオチドを含む。場合により、一部には3つのヌクレオチドを含む。場合により、ヌクレオチドの一部は、dATP、dGTP、dCTP、dTTP、またはそれらの誘導体のうち3つから選択される。場合により、3つのヌクレオチドは、アデノシン、シトシン、及びグアニンを含む。場合により、3つのヌクレオチドは、アデノシン、シトシン、及びチミンを含む。場合により、3つのヌクレオチドは、シトシン、グアニン、及びチミンを含む。場合により、3つのヌクレオチドは、アデノシン、グアニン、及びチミンを含む。場合により、各回の接触は、ヌクレオチドの同じ一部または異なる一部を含む。場合により、核酸鋳型の配列決定をモニタリングし、フェージング検出時にヌクレオチドの一部との接触が行われる。例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第8,236,532号も参照のこと。
場合により、配列決定反応は、鋳型核酸、ポリメラーゼ、及び/またはヌクレオチドを複数含み、その場合、複数の閉鎖複合体がモニタリングされる。クローン増幅された鋳型核酸を一緒に配列決定することができ、その場合、配列決定時のモニタリングを向上させるためクローンはごく近接して配置される。場合により、閉鎖複合体の形成によって、複数のクローン増幅された鋳型核酸にわたる塩基伸長の同時性が確保される。塩基伸長の同時性により、配列決定サイクルごとに1塩基の付加が可能になる。
ジェノタイピング用途
開示される機能欠損DNAポリメラーゼの例示的な用途は、広範な配列決定を必要としないSNP検出用途及びジェノタイピング用途に関する。この場合、機能欠損DNAポリメラーゼを使用して、取り込みせずに試験対象のプライマー結合鋳型核酸分子に対する次の正しいヌクレオチドの同一性を決定することができる。場合により、この手順は、プライマー結合鋳型核酸分子を生じるようにプライマーを標的核酸にハイブリダイズさせることを含む。その後、プライマー結合鋳型核酸を、機能欠損DNAポリメラーゼ及び1つ以上のヌクレオチドを含む組成物と接触させることができる。場合により、機能欠損DNAポリメラーゼは、検出可能な標識、例えば、蛍光検出可能な標識を含む。場合により、2つ以上の機能欠損DNAポリメラーゼが組成物に含まれ、機能欠損DNAポリメラーゼの少なくとも2つが識別可能に標識される。場合により、組成物は、検出可能な標識、例えば検出可能な蛍光標識を有する少なくとも1つのヌクレオチドを含む。場合により、組成物中の2つ以上のヌクレオチドが、検出可能な標識を含む。場合により、組成物中の2つの異なるヌクレオチドが、それぞれを互いに区別できる異なる検出可能な標識を有する。その開示内容が参照により組み込まれる、シリアル番号62/448,630によって識別される保有者共通の米国特許出願(2017年1月20日出願)には、本発明の機能欠損DNAポリメラーゼを使用できる多数のジェノタイピング法が記載されている。
機能欠損DNAポリメラーゼを用いた例示的な配列決定方法
開示される技術による試験反応は、場合により、Mg+2イオンの存在下で実施することができる。このイオンの存在下で機能欠損DNAポリメラーゼがホスホジエステル結合の形成を触媒できないということは、そのポリメラーゼを、試験工程中に一時的な結合(すなわち、取り込みを伴わない結合)を損なうことなく加えることができることを意味する。触媒金属イオンの存在は、DNA重合反応時に通常重要となる識別活性を高めることができる。非触媒イオンを含んでも、または触媒イオンの代わりに置き換えてもよいが、ポリメラーゼ媒介性取り込みを阻害する非触媒金属イオンの含有は任意である。
開示される技術を用いた試験反応は、場合により、天然ヌクレオチドを使用して実施することができる。一般に、機能欠損DNAポリメラーゼを含む三元複合体を検出する方法はいずれも、ヌクレオチドの配列決定プロトコールに有用となる。屈折率の変化を検出する光学技術(例えば、干渉法または表面プラズモン共鳴検出)は、無標識の検出が可能であり、試験工程において非標識の天然ヌクレオチドを使用してこれを実施することもできる。場合により、機能欠損DNAポリメラーゼが外部標識(例えば、蛍光標識)を有する場合、固体支持体または表面の規定された位置(例えば、平面アレイまたはビーズアレイ上の座)に局在する三元複合体の形成を、従来の蛍光モニタリング技術を用いて検出することができる。
機能欠損ポリメラーゼを使用して実施する試験反応は、場合により、外部標識(例えば、蛍光標識)を有するヌクレオチドを使用して実施することができる。蛍光検出プラットフォームと共に使用する場合、プライマー結合鋳型核酸及び機能欠損ポリメラーゼと共局在する蛍光化学部分を有するヌクレオチド類似体は、三元複合体の形成を呈し得る。
試験はプライマー結合鋳型核酸を使用して実施することができるが、その場合、二重鎖のプライマー鎖は遊離3’ヒドロキシル部分を有しており、この部分を利用して、同種ヌクレオチド、及びホスホジエステル結合を形成する能力を有する天然DNAポリメラーゼの存在下でのホスホジエステル結合の形成に関与することができる。
配列決定技術に関する例示的なワークフローは、最初にプライマー結合鋳型核酸を1つ以上の試験ヌクレオチド(すなわち、同種ヌクレオチド候補として試験されるヌクレオチド)及び機能欠損ポリメラーゼと接触させることを含む。試験ヌクレオチドが次の正しいヌクレオチドである場合、3つの成分すべてを含む三元複合体が形成される。三元複合体の検出結果が肯定的である場合、試験ヌクレオチドが、鋳型鎖に沿ってその位置が相補的である塩基を有する同種ヌクレオチドであることを示す。機能欠損DNAポリメラーゼはホスホジエステル結合を触媒することができないため、同種ヌクレオチドをプライマーに取り込まなくても必然的に次の正しいヌクレオチドの同定が行われることになる。同種ヌクレオチドの取り込みによるプライマーの伸長は、別の手法によって行うことができる。例えば、次の正しいヌクレオチドの同定に必要な情報が収集されたら、反応混合物の交換を行い、それによって、機能欠損ポリメラーゼをホスホジエステル結合の形成を促進することができる第2のポリメラーゼと交換することができる。同種ヌクレオチド及び2価カチオンも供給された場合、第2のポリメラーゼは同種ヌクレオチドのプライマーへの取り込みを生じさせることができる。
開示される技術には、伸長プライマーに同種ヌクレオチドを取り込むための活性DNA重合酵素が必要であると理解すべきである。
開示される技術の特定の実施形態では、同種ヌクレオチドの同一性の確定に必要な情報が収集されたら、同種ヌクレオチドに対応する可逆的ターミネーターヌクレオチドを伸長プライマーに取り込むことができる。
一態様では、開示される技術は、機能欠損DNAポリメラーゼの使用に依拠する手順によってヌクレオチドを同定することを特徴とする。場合により、プライマー結合鋳型核酸、機能欠損DNAポリメラーゼ、及び試験ヌクレオチドをさらに含む試験反応混合物にMg2+イオンを加えることができる。場合により、プライマー結合鋳型核酸は、平面またはビーズ上の定位置に固定することができる。場合により、試験工程で使用される試験ヌクレオチドは天然ヌクレオチドである。場合により、試験ヌクレオチドは、蛍光標識などの外部標識を含む。場合により、異なる試験ヌクレオチドが、互いに区別可能な異なる外部標識で標識される。場合により、プライマー結合鋳型核酸のプライマーは遊離3’ヒドロキシル基を含む。場合により、機能欠損DNAポリメラーゼは、蛍光標識などの外部標識を有する。場合により、プライマー結合鋳型核酸、機能欠損DNAポリメラーゼ、及びヌクレオチドを含む三元複合体に存在する同種ヌクレオチドを同定するための十分な情報が収集されたら、機能欠損DNAポリメラーゼ及びヌクレオチドを、プライマー結合鋳型核酸から(例えば、EDTA及び高イオン強度条件を利用して)除去し、第2のポリメラーゼ及び1種類または別の種類のヌクレオチドに置き換えることができる。第2のDNAポリメラーゼは、場合により、ホスホジエステル結合の形成を触媒することが可能である。第2のDNAポリメラーゼと共に使用されるヌクレオチドは、天然ヌクレオチドであっても、ヌクレオチド類似体(例えば、可逆的ターミネーターヌクレオチド)であってもよい。場合により、機能欠損DNAポリメラーゼ及び第2のDNAポリメラーゼをサイクリングプロトコールで使用することにより、1つ以上のヌクレオチドの取り込みによってプライマーを伸長させることができる。場合により、第2のDNAポリメラーゼを可逆的ターミネーターヌクレオチドと組み合わせて使用すると、取り込みが単一のヌクレオチドに制限される。場合により、可逆的ターミネーター部分を除去して、後続の別のヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体の取り込みを可能にすることができる。
実施例1は、蛍光標識ヌクレオチドを用いたDNA配列決定方法で機能欠損ポリメラーゼをどのように使用できるかを示す。
実施例1
機能欠損DNAポリメラーゼ及び蛍光ヌクレオチドを使用したDNA配列決定
最初に、同種ヌクレオチドの結合活性及び識別活性を有するが、ホスホジエステル結合の形成能を有しない機能欠損DNAポリメラーゼを得る。アレイ形式のフローセルの固体支持体上の規定位置に固定されたプライマー結合鋳型核酸を、機能欠損ポリメラーゼ、及びガンマリン酸に蛍光部分が標識されたdATPを含む第1の反応混合物と接触させる。蛍光をモニタリングすると、バックグラウンドを超える蛍光シグナルを示さない。これは、dATPが次の正しいヌクレオチドではないことを示す。フローセル内の第1の反応混合物を、機能欠損ポリメラーゼ、及びガンマリン酸に蛍光部分が標識されたdGTPを含む第2の反応混合物と置き換える。蛍光をモニタリングすると、バックグラウンドを超える十分な蛍光を示す。これは、dGTPが次の正しいヌクレオチドであることを示す。第2の反応混合物をフローセルから洗い流し、Therminator DNAポリメラーゼ(New England BioLabs)、及びそれぞれが3’−ONH2ブロック基を有する4つの可逆的ターミネーターヌクレオチドを含む取り込み反応混合物に置き換える。塩基としてグアニンを有する可逆的ターミネーターヌクレオチドが取り込まれる。場合により、得られるブロックされたプライマー結合鋳型核酸分子を、機能欠損DNAポリメラーゼを用いた後続回のヌクレオチド試験でそのまま使用して、より広範な配列情報を得る。場合により、可逆的ターミネーター部分を標準的な手順で化学的に切断して本来のプライマーを露出させ、得られるプライマー結合鋳型核酸分子を、機能欠損DNAポリメラーゼを用いた後続回のヌクレオチド試験で使用して、より広範な配列情報を得る。
実施例2は、機能欠損ポリメラーゼが蛍光標識されている場合に、DNA配列決定方法で機能欠損ポリメラーゼをどのように使用できるかを示す。
実施例2
蛍光標識した機能欠損DNAポリメラーゼを使用したDNA配列決定
最初に、同種ヌクレオチドの結合活性及び識別活性を有するが、ホスホジエステル結合の形成能を有しない機能欠損DNAポリメラーゼを得る。機能欠損DNAポリメラーゼは、表面が接触可能なシステインアミノ酸の官能基に蛍光部分が標識されている。アレイ形式のフローセルの固体支持体上の規定位置に固定されたプライマー結合鋳型核酸を、蛍光機能欠損ポリメラーゼ及び天然dATPを含む第1の反応混合物と接触させる。蛍光をモニタリングすると、バックグラウンドを超える蛍光シグナルを示さない。これは、dATPが次の正しいヌクレオチドではないことを示す。フローセル内の第1の反応混合物を、蛍光機能欠損ポリメラーゼ及び天然dGTPを含む第2の反応混合物と置き換える。蛍光をモニタリングすると、バックグラウンドを超える十分な蛍光を示す。これは、dGTPが次の正しいヌクレオチドであることを示す。第2の反応混合物をフローセルから洗い流し、Therminator DNAポリメラーゼ(New England BioLabs)、及びそれぞれが3’−ONH2ブロック基を有する4つの可逆的ターミネーターヌクレオチドを含む取り込み反応混合物に置き換える。塩基としてグアニンを有する可逆的ターミネーターヌクレオチドが取り込まれる。
上記のTDE変異型ポリメラーゼは、当業者によく知られる標準技術を用いて調製及び精製した。手順で使用されるBst−fタンパク質骨格(すなわち、配列番号1)は、最適化されたシステイン(cys)残基を23位に、タンパク質精製を補助するヒスチジンタグ配列をN末端(すなわち、5〜10位)に、及びトロンビン切断部位を16位と17位との間に含むように修飾されている。天然のBst DNAポリメラーゼの最初のメチオニン(すなわち、配列番号1の27位)の上流にあるタンパク質配列の修飾は、Mg2+触媒による取り込みをせずに正しいヌクレオチドの望ましい組み合わせを同定する上で必須であるとはみなさなかった。したがって、これらの修飾の付加は実用生成物において任意であり、したがって表1に示す(すなわち、配列番号1〜3のいずれかの親足場を使用する)3つのTDE変異体を、場合により、検出手順または配列決定手順の実施に使用してもよい。
実施例3は、同種ヌクレオチドを同定する試験サイクルを含むsequencing−by−bindingプロトコールにおける機能欠損DNAポリメラーゼの使用について記載し、その変異体が、通常は触媒性であるMg2+金属イオンの存在下で同種ヌクレオチドを取り込まないことを実証する。上記のように、TDE変異体は、Bst−f酵素(配列番号1)の381位に単一のアミノ酸変化を含む。したがって、TDE変異体は、モチーフA内のDYSQIELR(配列番号13)の代わりに配列EYSQIELR(配列番号12)を含んでいた。BDE変異体は、モチーフC内のQVHDEL(配列番号15)の代わりに配列QVHEEL(配列番号14)を含んでいた。外部システイン残基及びN末端Hisタグを含むが、重合切断型変異を何も含まない親酵素は、この手順において対照としての役割を果たした。代わりに、この手順では修飾モチーフAを含む遺伝子操作ポリメラーゼを置き換えることができる。例えば、遺伝子操作ポリメラーゼには、355位がグルタミン酸で置換された配列番号3の配列内に含まれる配列番号12の配列を含み得る。一例は、364位がグルタミン酸で置換された配列番号2の配列であり、別の例は、381位がグルタミン酸で置換された配列番号1の配列である。同様に、この手順では修飾モチーフCを含む遺伝子操作ポリメラーゼを置き換えることができる。例えば、遺伝子操作ポリメラーゼには、532位がグルタミン酸で置換された配列番号3の配列内に含まれる配列番号14の配列を含み得る。一例は、541位がグルタミン酸で置換された配列番号2の配列であり、別の例は、558位がグルタミン酸で置換された配列番号1の配列である。
実施例3
機能欠損DNAポリメラーゼを使用した、取り込みを伴わない同種ヌクレオチド同定の実証
バイオレイヤー干渉法を用いて光ファイバーチップ表面での結合反応を測定するFORTEBIO(登録商標)(Menlo Park,CA)Octet装置をマルチウェルプレート形式で使用し、この配列決定技術を説明する。鋳型鎖の5’末端でビオチン化されたプライマー結合鋳型核酸分子を、標準的な手順を用いてストレプトアビジン(SA)で官能化した光ファイバーチップ上に固定した。この手順のプライマー結合鋳型核酸分子は、プライマーの下流に次の正しいヌクレオチドとしてCGを有していた。
サイクリング手順には、(1)センサーチップを洗浄/再生する工程;(2)ポリメラーゼ及び同種ヌクレオチドを含む三元複合体を形成する工程;及び(3)EDTA溶液で洗浄して、プライマー結合鋳型核酸分子から複合体を除去する工程を含んでいた。それに続く取り込み工程は、一度に1つずつ、4種のdNTPを使用して結合及び試験の全ラウンドを行った。サイクリングプロトコールを開始する前に、センサーチップを、KCl、グルタミン酸カリウム、及び0.01%Tween−20を含むTris緩衝液(pH8.0)で洗浄/再生した。第1の後続ヌクレオチドを、試験緩衝液(30mM Tris−HCl(pH8.0)、420mM KCl、160mMグルタミン酸カリウム、2mM SrCl2、0.01%Tween−20、0.1mg/mLアセチル化BSA、及び1mM β−メルカプトエタノール)の存在下で500nMのTDEまたは500nMのCBTを用いて調べた。この手順では、天然ヌクレオチドを使用し、dATP、dCTP、dTTP、及びdGTPの順でセンサーチップに接触させた。各dNTPは、dTTPを200μMの濃度で使用した以外は、濃度100μMであった。ヌクレオチド結合工程は、30℃で約30秒間行った。各ヌクレオチドの結合工程及び試験工程の終了時に、形成された複合体があれば、KClを含有するEDTA溶液を使用して45秒間センサーチップから洗い流し、2価カチオンをキレート化した。その後、30秒間でバイオセンサーを再生した後、次のdNTP試験に移った。
4種のdNTPすべてを試験して三元複合体が形成されたかどうかを決定した後、取り込み反応を行ってTDE変異体の残存可能性のあるポリメラーゼ活性を調べた。このとき、親CBT酵素を、ヌクレオチド結合及び取り込み活性に関する陽性対照として利用した。まず、センサーチップを濃度100μMの同種ヌクレオチド(すなわち、dCTP)と30秒間接触させることによって三元複合体を調製した。次に、バイオセンサーチップを取り込み緩衝液(30mM Tris−HCl(pH8.0)、50mM KCl、50mM Mg2+)に移し、30秒間置いた。最後に、KClを含有するEDTA溶液を使用して45秒間センサーチップから複合体を洗い流し、2価カチオンをキレート化した。再度、30秒間でバイオセンサーを再生した後、一度に1つずつ4種のdNTPすべてを使用する次の一連の試験に移った。この後半の一連の試験反応の結果から、変異酵素の結合活性及び取り込み活性に関する有益な情報が得られた。
図1に示す、この手順から得た結果により、機能欠損ポリメラーゼは同種ヌクレオチドを正確に同定したが、触媒Mg2+金属イオンの存在下でも、そのヌクレオチドを取り込むことはできなかったことが確認された。この図は、TDE及びCBTポリメラーゼを使用して実施した4種のヌクレオチドすべてについての試験トレースを示す。比較としてヌクレオチド添加前の二元複合体の形成はベースライン値を示した。dNTPの存在下で生成された三元複合体は、両方のポリメラーゼがdCTPを同種ヌクレオチドとして正しく同定したことを示した。どの場合にも、非同種ヌクレオチドは、実質的にベースラインの結合シグナルと相関していた。取り込みが可能である工程後は、親CBT酵素のみが触媒活性を有することが示された。具体的には、変異体TDE酵素はここでも、プライマー結合鋳型核酸分子の同種ヌクレオチドとしてdCTPを同定した。これは、取り込み条件下で変異体酵素によって取り込まれたヌクレオチドがなかったことを示していた。逆に、親CBT酵素は、取り込み後に、次の正しいヌクレオチドとしてdGTPを同定した。したがって、機能欠損ポリメラーゼは、同種ヌクレオチドを取り込む能力がなくても試験工程を適切に実行した。言うまでもなく、広範な配列決定を行うための反復サイクリング手順には、取り込み工程に異なる酵素を使用することができる。可逆的ターミネーターヌクレオチド(例えば、非標識の可逆的ターミネーターヌクレオチド)を取り込み手順に使用することができる。
低濃度の触媒金属イオンで行う追加試験を実施して、機能欠損TDEポリメラーゼが同種ヌクレオチドをホスホジエステル結合の形成により取り込む能力を調べた。ここでは、取り込み工程で10mM濃度のMgCl2またはMnCl2を試験した。機能欠損TDE変異体は、ここでも触媒Mg2+金属イオンの存在下で同種ヌクレオチドを取り込むことができなかった。しかしながら、TDE変異体は、触媒Mn2+金属イオンの存在下で同種ヌクレオチドを取り込んだ。重要な点として、並行試験は、BDE変異体が試験工程で同種ヌクレオチドを正しく同定したが、TDE変異体と同様に、Mg2+の存在下で触媒的に不活性でもあったことを示した。TDN変異体は、同種ヌクレオチドの同定も、ホスホジエステル結合形成の触媒もできなかった。
開示する方法及び組成物に使用できるか、それと組み合わせて使用できるか、その調製に使用できるか、またはその生成物である、物質、組成物、及び成分を上記に開示している。こうした物質の組み合わせ、部分集合、相互作用、群などが開示されている場合、これらの化合物の様々な個別の及び集合的な組み合わせならびに順列のそれぞれに対する具体的な言及が明示的に開示されていない場合であっても、それぞれが具体的に企図され、本明細書に記載されているものと理解される。例えば、方法が開示及び考察され、その方法を含む多数の分子に対してなされ得る多数の変形例について考察されている場合、これに反する明示のない限り、方法のあらゆる組み合わせ及び順列ならびに可能である変形例が具体的に企図される。同様に、これらの任意の部分集合または組み合わせもまた具体的に企図され開示される。この考え方は、開示される組成物を使用する方法での各工程を含む、本開示のすべての態様に適用される。したがって、実施可能である様々な追加工程が存在する場合、これらの追加工程それぞれを、開示される方法の任意の具体的な方法の工程または方法の工程の組み合わせにより実施でき、そのような組み合わせまたは組み合わせの部分集合のそれぞれが具体的に企図され、開示されるとみなされるべきであると理解される。
本明細書に引用される刊行物及びそれらを引用する資料は、その全体が参照により具体的に本明細書に組み込まれる。本明細書で言及される刊行物、特許、及び特許出願はすべて、個別の刊行物、特許、または特許出願がそれぞれ具体的かつ個別に参照により本明細書に組み込まれた場合と同様に、参照により本明細書に組み込まれる。
本明細書で使用される見出しは、構成のみを目的としており、説明または特許請求の範囲を限定することを意図しないと理解すべきである。
実施形態がいくつか記載されているが、様々な変更がなされ得ることが理解されるであろう。したがって、他の実施形態も請求項の範囲内である。