JP6912044B2 - 耐熱性多軸ステッチ基材 - Google Patents

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Description

本発明は、繊維強化プラスチック(FRP:Fiber-Reinforced-Plastics)の繊維補強基材として用いる多軸ステッチ基材の改良、更に詳しくは、プリフォーム作製工程や成形加工工程、あるいはFRP製品において高温環境に晒されても、ステッチ糸が熱収縮や熱溶融を起こすことがなく、かつ、裁断や積層の際に起こるステッチ糸のほつれを防止して多軸ステッチ基材の形態を保つことができる取扱いやすい耐熱性多軸ステッチ基材に関するものである。
炭素繊維やガラス繊維などを補強材とした繊維強化プラスチック(FRP:Fiber-Reinforced-Plastics)は、繊維方向には高い強度、弾性率を発揮するが、繊維方向に直交する角度に対しては急激に低下するために、機械的特性が擬似等方性となるように、繊維軸方向が0°/90°や0°/±45°、あるいは0°/+45°/−45°/90°など、繊維軸が多軸となるように積層して成形する方法が用いられている。
しかしながら、成形時に繊維軸を正確に合わせながら積層するには手間が掛かり、生産能率が非常に低くなることから、<特許文献1>で提案されているように、予め所定の繊維配向角度で複数枚のシートを積層して、これらのシートをステッチ糸で貫通して縫合一体化した多軸ステッチ基材が知られている。
このような多軸ステッチ基材の一体化技術は、基材を貫通したニードルにステッチ糸が給糸され、ステッチ糸が基材厚み方向に引き込まれながら順次編目を形成して積層体を一体化するものであるから、このステッチ糸としては、通常、靭性に富んだポリアミド繊維やポリエステル繊維などの合成繊維糸が使われている。
しかしながら、プリフォーム作製のためには、粘着剤を塗布して高温で付着させる工程や、プリプレグ工程、あるいは成形工程において、基材が高温に晒されるケースがあることから、合成繊維からなるステッチ糸では、熱収縮を起こして皺が発生したり、熱溶融して積層体の一体化機能が失われるという問題があった。
また、前記のようなプリプレグ工程や成形工程以外にも、耐熱性の高い樹脂によりFRPとした後に高温に晒されると、FRPの耐熱温度以下の領域でステッチ糸の溶融もしくは分解が起こり、FRP内部でステッチ糸が存在していた箇所が空隙(ボイド)となり、機械的特性が低下する問題もある。
更にまた、合成繊維糸には吸水性があり、特に吸水性が大きな繊維をステッチ糸に使用した強化繊維基材からFRPを成形すると、水分により樹脂の硬化が不十分になったり、成形品内の水分が氷解を繰り返すことによる「マイクロクラック」が発生し、信頼性のある材料に成り得ない問題があり、特に航空機用としては不向きとされている。
そこで、<特許文献2>では、ステッチ糸をガラス繊維のヨリ糸を使用することで、高温に晒されても、合成繊維糸のように熱収縮を起こして皺が発生したり、熱溶融して積層体の一体化機能が失われることを防げることや、吸水性が大きな繊維をステッチ糸に使用した強化繊維基材からFRPを成形すると、水分により樹脂の硬化が不十分になったり、成形品内の水分が氷解を繰り返すことによる「マイクロクラック」の発生を防ぐことを提案している。
しかしながら、<特許文献2>の提案においては、耐熱性や吸水の問題は解決できたが、ステッチ糸にガラス繊維のヨリ糸を使用しているために合成繊維糸に比べて高弾性であることから、ステッチ糸により形成されたニードルループが真直ぐになろうとする力が働き、剛性が高く糸自体がつぶれにくい。そのため、強化繊維との接触や、ニードルループにおけるステッチ糸自体の接触は、点で接触するため摩擦が小さくなることから、ステッチ基材を裁断したときの裁断面からほつれてしまい、ステッチによる一体化機能が失われてしまうといった問題があった。
国際公開第01/63033号 特開2016−164320号公報
本発明は、従来のFRP成形用の多軸ステッチ基材に上記のような問題があったことに鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、プリフォーム作製工程や成形加工工程、あるいはFRP製品において高温環境に晒されても、ステッチ糸が熱収縮や熱溶融を起こすことがなく、かつ、裁断や積層の際に起こるステッチ糸のほつれを防止して多軸ステッチ基材の形態を保つことができる取扱いやすい耐熱性多軸ステッチ基材に関するものである。
本発明者が上記技術的課題を解決するために採用した手段を、添付図面を参照して説明すれば、次のとおりである。
即ち、本発明は、強化繊維糸条を互いに並行に配列してなる強化繊維シートが、それぞれ異なった配向方向で複数枚積層され、これらのシートを貫通するステッチ糸により縫合一体化された多軸ステッチ基材であって、
前記ステッチ糸は、繊度が100〜500dtexである一方、破断ひずみエネルギーが30MJ/m以上のガラス繊維糸と、繊度が30〜120dtexの熱可塑性ポリマー糸からなる複合糸であり、
加熱することで、ステッチ糸を構成する熱可塑性ポリマー糸をガラス繊維糸と強化繊維糸条とに融着して一体化するという技術的手段を採用したことによって、耐熱性多軸ステッチ基材を完成させた。
また、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、前記ステッチ糸を、ガラス繊維糸を芯糸とし、熱可塑性ポリマー糸を鞘糸としたカバーリング糸とするという技術的手段を採用することもできる。
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、前記熱可塑性ポリマー糸を、低融点ポリマーからなる糸、または低融点ポリマーを鞘にした芯鞘複合糸とするという技術的手段を採用することもできる。
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、ステッチ糸を、構成する鞘糸の熱可塑性ポリマー糸が2本で、芯糸のガラス繊維糸にそれぞれS方向とZ方向に二重に巻き付けたダブルカバーリング糸にするという技術的手段を採用することもできる。
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、ステッチ糸を構成する鞘糸の熱可塑性ポリマー糸を、芯糸のガラス繊維糸1cmあたり2〜10回の巻き回数でカバーリング加工されたカバーリング糸にするという技術的手段を採用することもできる。
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、ステッチ糸により形成されたニードルループの曲率半径を0.3〜2mmの範囲にするという技術的手段を採用することもできる。
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、ステッチ糸によるステッチのコース密度を2〜4コース/cmにするという技術的手段を採用することもできる。
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、強化繊維糸条を炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、シリカ繊維、セラミック繊維のうちから選択される何れかの単独または混合繊維にするという技術的手段を採用することもできる。
本発明にあっては、強化繊維糸条を互いに並行に配列してなる強化繊維シートが、それぞれ異なった配向方向で複数枚積層され、これらのシートを貫通するステッチ糸により縫合一体化された多軸ステッチ基材において、
前記ステッチ糸は繊度を100〜500dtexにする一方、破断ひずみエネルギーが30MJ/m以上のガラス繊維糸と、繊度が30〜120dtexの熱可塑性ポリマー糸からなる複合糸にして、加熱することで熱可塑性ポリマーがガラス繊維糸と強化繊維糸条とに融着して一体化し、しかも耐熱性、および難燃性に優れたガラス繊維を主とするステッチ糸で一体化したことによって、
プリフォーム作製工程や成形加工工程、あるいはFRP製品において高温環境に晒されても、ステッチ糸が熱収縮や熱溶融を起こすことがなく、寸法安定性を有し、かつ裁断時にステッチ糸のほつれを確実に防ぐことが出来る。
即ち、ステッチ糸の繊度を100〜500dtex、ガラス繊維糸の破断歪みエネルギーを30MJ/m以上にしたことにより、ステッチ加工工程においてステッチ糸切れや毛羽が生じたりすることなく加工でき、ステッチ糸による表面凹凸も最小限に抑えることができる。
また、破断歪みエネルギーが30MJ/m以上のガラス繊維糸によるステッチ糸をステッチ基材の厚み方向に貫通させたことにより、層間補強効果を発揮することができる。
更に、必要に応じて、ステッチ糸をガラス繊維糸を芯糸とし、熱可塑性ポリマー糸を鞘糸としたカバーリング糸にすることにより、ステッチ加工の準備作業などにおいて取り扱い易く生産性を向上することができる。
また、高温雰囲気下でFRP内部のステッチ糸が分解せず、使用している熱可塑性ポリマーも少量であることから、ボイドの発生も極めて少なく、樹脂の耐熱温度以下であれば高い機械的特性を発揮することができる。
更にまた、必要に応じて、ステッチ糸の鞘糸とした熱可塑性ポリマー糸を低融点ポリマーとすることで、低温度で熱可塑性ポリマーを融着させることができるので、熱処理加工容易となると同時に強化繊維に付着するにサイジング剤やカップリング剤への熱的影響を軽減させることができる。
更にまた、必要に応じて、ステッチ糸により形成されたニードルループの曲率半径を0.3〜2mmの範囲として、ニードルループの糸長に余裕を持たせることによって、ニードルループの形成時、あるいはループ形成後において、基材の縦方向の伸長に伴ってループが伸長された際に生じるループ先端の屈曲によるステッチ糸の破損を抑止できるとともに、基材への締めつけ力が強くなり過ぎず、強化繊維の真直性が維持でき、また、±45°のようなバイアス配向基材においては賦形性を向上させることができることから、産業上の利用価値は頗る大きい。
本発明の実施形態の多軸ステッチ基材の構造を表わす概略図である。 本発明の実施形態のステッチ糸の構造を表わす概略図である。 本発明の実施形態のステッチ糸のニードルループの形状を表わす拡大図である。
本発明を実施するための形態を、具体的に図示した図面に基づいて、更に詳細に説明すると、次のとおりである。
本発明の実施形態を図1から図3に基づいて説明する。図1において符号1で指示するものは多軸ステッチ基材であり、符号2で指示するものはステッチ糸である。
また、符号3(3a、3b、3c、3d)で指示するものは強化繊維シートであり、これら各強化繊維シート3は、強化繊維糸条を互いに並行に配列してシート状に形成されている。
本実施形態の多軸ステッチ基材1を構成するにあっては、まず、各強化繊維シート3の強化繊維の配向方向が異なるように積層する。例えば、多軸ステッチ基材1の長さ方向を0°としたとき、シート3aを−45°、シート3bを90°、シート3cを+45°、シート3dを90°の方向で積層する。そして、これらのシートにステッチ糸2を貫通させて縫合一体化する(図1参照)。
この際、強化繊維シート3の積層構成は、上記の積層構成に限定されることはなく、少なくとも強化繊維の配向角が異なる2層が積層されていれば良く、例えば、0°/90°、0°/+45°の2軸配向や、0°/+45°/−45°/90°の4軸配向、あるいは0°/±45°、更には、60°交錯角で積層されたものであっても良い。
また、本実施形態では、強化繊維シート3の一層あたりのシートの目付として、50〜400g/mの範囲のものを採用する。目付が50g/m未満となると非常に薄いシートとなるために強化繊維を均一に拡げることが難しくて空隙部が生じたりする問題があるためである一方、目付が400g/mより大きいと、繊維同士が緻密で分厚い層をなすので樹脂含浸が難しくなる問題があるためである。なお、より好ましい目付は70〜300g/mの範囲である。
なお、ステッチ糸2の編み組織は、鎖編、1/1トリコット編、あるいは鎖編と1/1トリコット編の変化組織などの通常の経編組織を採用することができる。
本実施形態において、ステッチ糸2として強化繊維を使用する場合、炭素繊維やガラス繊維などの従来から一般的に使用されているものが考えられるが、耐熱性および難燃性を持ち合わせた繊維の多くは非常に脆く、ステッチ加工性や加工製品の品位、性能に問題があるために、そのままの使用では、ステッチ糸としての用途に適合しない。
また、炭素繊維やガラス繊維を用いる場合、高弾性であることから、ステッチ糸により形成されたニードルループが真直ぐになろうとする力が働き、剛性が高く糸自体がつぶれにくい。そのため、補強繊維との接触や、ニードルループにおけるステッチ糸自体の接触は、点で接触するため摩擦が小さくなることから、ステッチ基材を裁断したときの裁断面からほつれて、ステッチによる一体化機能が失われてしまい、ステッチ基材の取扱性が非常に悪かった。
そこで、本実施形態ではステッチ糸は繊度を100〜500dtexとした破断ひずみエネルギーが30MJ/m(M(メガ)=10、J/m=N・m/m=N/m)以上のガラス繊維糸5と、熱可塑性ポリマーからなる30〜120dtexの糸6を採用した。なお、この破断歪みエネルギーWは次式で導かれる値である。
W=σ×ε/2
σ:引っ張り強度(Pa=N/m)、ε:引っ張り破断歪み
こうすることにより、所望の耐熱性および難燃性を満足し、かつ、ステッチ加工性や加工製品の品位や性能においても問題のない多軸ステッチ基材を完成させることができる。
即ち、ガラス繊維は、耐熱性や難燃性を有した繊維種が種々存在する中でも、細繊度糸が安価で入手可能であり、かつ、繊維自体が透明であるために成形品の外観に悪影響を及ぼさないという点から最適である。
ステッチ糸としては、ガラス繊維糸5と熱可塑性ポリマー糸6の引きそろえ糸または、ヨリ糸であってもよいが、図2に示すようにガラス繊維糸5を芯糸とし、熱可塑性ポリマー糸6をカバーリングしたカバーリング糸を採用することもできる。そしてまた、カバーリング加工としては、1本の熱可塑性ポリマー糸6を用いてガラス繊維糸5にS方向またはZ方向にカバーリングしたシングルカバーリング糸でも良いが、繊維の剛性によってカバーリングした方向とは逆方向のトルクが生じ、ステッチ加工の準備作業などにおいて取り扱い難いという問題があるので、具体的には、2本の熱可塑性ポリマー糸6を用いてガラス繊維糸5にS方向とZ方向にカバーリングしたダブルカバーリング糸とすることで、S方向とZ方向のトルクが打ち消し合うので、取り扱い易いステッチ糸2を構成することができる。
本実施形態におけるガラス繊維糸5の繊度の適用範囲については、500dtexより大きな太繊度糸であると、平坦な基材表面に太いステッチ糸2が突出してしまい表面が平滑な成形品が得られないので、500dtex以下の細繊度であることが好ましく、一方、100dtex未満の細繊度糸では、ステッチ加工時のループ形成に必要な強度が不足し、ステッチ工程中に切断したり毛羽が生じたりする問題があるため、好適なガラス繊維糸5の繊度は100〜500dtexの範囲である。
そして、一般的に、ガラス繊維は引っ張り破断強度が高いものの、引っ張り破断伸度が小さくて圧縮強度が高いため、繊維を曲げると内周(圧縮側)が座屈することなく外周(引っ張り側)が破壊してしまい、簡単に切断し易いという欠点を有していることから、本実施形態のガラス繊維は、破断歪みエネルギーWが30MJ/m以上有するものを採用する。
更に、30〜120dtexの熱可塑性ポリマー糸6を鞘糸としてガラス繊維糸5にカバーリング加工したステッチ糸2を採用し、ステッチした後のいずれかの工程において加熱することにより、カバーリングされた熱可塑性ポリマー糸6がステッチ糸2の芯糸であるガラス繊維糸5と強化繊維糸条とに融着して一体化されるため、プリフォーム作製工程や成形加工工程、あるいはFRP製品において高温環境に晒されても、ステッチ糸2が熱収縮や熱溶融を起こすことがなくシワの発生を抑制して寸法安定性を有し、更にボイドの発生も抑え、かつ裁断時にステッチ糸2のほつれを防ぎ高い形態保持性を発揮する。
ガラス繊維糸5にカバーリングする熱可塑性ポリマー糸6の繊度の適用範囲は、120dtexより大きいと熱可塑性ポリマーの量が多くなり、ガラス繊維に比べて吸水性が高いため強化繊維基材からFRPを成形すると、水分により樹脂の硬化が不十分になったり、成形品内の水分が氷解を繰り返すことによる「マイクロクラック」が発生し、信頼性のある材料に成り得ない問題があることや、ステッチ糸2自体が全体として太くなるため、成形した際にFRP表面に凹凸ができて表面平滑性が得られない問題があり、細繊度糸であることが好ましい。一方、30dtexより小さい場合は、加熱融着させる際に十分な接着性が得られず、ステッチ糸2のほつれ防止効果が得られない。従ってガラス繊維糸5にカバーリングする熱可塑性ポリマー糸6の好ましい繊度は30〜120dtexであり、より好ましくは30〜60dtexである。
また、熱可塑性ポリマー糸6のポリマーとしては、通常、ナイロン、共重合ナイロン、ポリエステル、変成ポリエステル、塩化ビニリデン、塩化ビニル、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリウレタンなどから選ばれたものを採用でき、中でも低温度でポリマーを溶融でき、かつFRPのマトリックス樹脂との接着性が良好な共重合ナイロンが好ましい。そして、融点は180℃以下のものを採用することが好ましい。180℃より融点が高いと、熱融着させる際に、炭素繊維やガラス繊維などの補強繊維のサイジング剤やカップリング剤への熱的影響が大きく、劣化させてしまい、FRPにした時の強度発現が低下する問題がある。なお、より好ましい融点としては、150℃以下である。
本実施形態では、ステッチ糸2はカバーリング加工を施した糸束であるために糸が集束して曲げ剛性が増すので、ループ形成時におけるループ先端の曲率が大きくなるのを抑えることができループ形成時におけるガラス繊維の切れを防ぐことができる。
また、ステッチ糸2の芯糸を成すガラス繊維糸5に僅かな撚りを施し、その撚り方向と逆方向に熱可塑性ポリマー糸6をカバーリングすることで芯糸の解撚トルクを相殺させることができ、しかも各単繊維は糸束内で螺旋状に配列されてステッチ糸2の曲げに対して各単繊維が引っ張り側または圧縮側に固定されず、各単繊維に生じる応力が略均一となるので、ループ形成時におけるガラス繊維の切れを防ぐことができる。
更に、カバーリング加工の条件としては、ステッチ糸を構成する鞘糸の熱可塑性ポリマー糸が、芯糸のガラス繊維糸5の1cmあたり2回より少ない巻き回数でカバーリング加工されたカバーリング糸であるとガラス繊維糸5との集束力が得られず、ガラス繊維糸5と熱可塑性ポリマー糸6が分かれてステッチ加工の準備作業などにおいて取り扱い難い問題や、ステッチ加工においてステッチ糸2全体がニードルのフックに掛かり難いといった問題がある。また、芯糸のガラス繊維糸5の1cmあたり10回より多い巻き回数でカバーリング加工されたカバーリング糸であると、糸の剛性が高すぎてステッチ糸2を供給するライン上において糸道が屈曲する箇所の馴染が悪く給糸し難いことや、ステッチ加工においてループを形成し難いといった問題や、ステッチ糸2の断面が真円状で固く集束した状態となり、成形加工品の表面が凹凸化するといった問題がある。従ってカバーリング加工の条件として好ましいカバーリングの巻き回数は、芯糸のガラス繊維糸5の1cmあたり2〜10回である。
本実施形態おけるステッチ加工のループ形成方法は、強化繊維シート3の積層体を貫通したニードル4にステッチ糸2を供給し、次いで、このステッチ糸2をニードルフックに引っ掛けた状態で強化繊維シート3の積層体内を通過させて新たなループに必要な糸長を引き出すという工程を繰り返しながらステッチ加工する。
従って、ループ形成時におけるステッチ糸2は、強化繊維シート3の積層体とニードルフックとの摩擦抵抗による高い応力が生じた状態でループ先端が大きな曲率で屈曲するので、破断歪みエネルギーWが30MJ/m未満の脆いガラス繊維では、その屈曲部で糸切れまたは単糸切れが生じ易く、満足なステッチ加工性が得られない。
また、ガラス繊維糸5のサイジングは、澱粉サイジングとプラスチックサイジングとがあるが、澱粉サイズのガラス繊維糸5を使用すると、FRPにした時に界面接着が悪く十分な機械的特性が得られないため、プラスチックサイジングのガラス繊維を採用することが好ましい。
次に、本実施形態の多軸ステッチ基材1のステッチ糸2によるループ部分の拡大図を図3に示す。符号rはステッチ糸2の中心軸の曲率半径を示し、この曲率半径rはステッチ糸2の太さや曲げ剛性、そしてステッチ加工条件などにより任意に制御できるが、本実施形態ではこの曲率半径rが0.3〜2mmの範囲であることが好ましい。
ループの曲率半径rが小さいと、ステッチ糸2による基材への締めつけが強い状態にあり、特にガラス繊維のように弾性率の高いステッチ糸2では、ステッチ糸2が基材の厚み方向から基材表面方向に向かうコーナー部、またはその逆方向のコーナー部において直角とならずに円弧状となって強化繊維糸を締めつけることになるために、強化繊維糸に屈曲部を生じさせる問題があるし、また、±45°のようなバイアス配向基材においては、ループが縦伸びする余裕がないために基材が縦方向の伸長を受けた際にループ先端に応力集中が生じてステッチ糸2が切断するおそれがあるため、曲率半径rは0.3mm以上が好ましい。
一方、ループの曲率半径rが大きいと、上記問題点は改善でき、±45°のようなバイアス配向基材では賦形性も増すが、曲率半径rが2mmよりも大きくなると、ステッチ加工においてステッチ糸2の送り出し量が大きくなり過ぎて、ステッチ糸供給ビームと編成部との間で緩みが生じ、ニードルへの供給ミスが生じるおそれがあるため、ループの曲率半径rは2mm以下であることが好ましい。
なお、各強化繊維シート3をなす強化繊維の種類としては、高強度・高弾性率であって、中でも耐熱性および難燃性を有した繊維が好ましく、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、シリカ繊維、セラミック繊維のうちから選択される何れかの単独または混合繊維を用いることができ、そのような選択によりステッチ糸2とともに多軸ステッチ基材1全体が耐熱性、難燃性を有するので、プリフォーム作製時やプリプレグ工程、あるは成形過程における熱処理に対して熱収縮を起こすことがなく寸法安定性を有し、また成形製品における難燃効果を発揮することができる。
また、本実施形態では、ステッチのコース密度が2〜4コース/cmであること好ましい。コース密度が2コース/cm未満であると、長いループを形成するためにステッチ糸2を一度に沢山の量を引き出す必要があるため、ステッチ糸2に高い張力が加わって糸切れを起こしやすいという問題があり、一方、コース密度が4コース/cmより大きいと、ステッチ糸3の使用量が増えると同時に生産性が低下することからコストアップとなる。
次に、本発明品および比較例の多軸ステッチ基材を具体的に作製したサンプルについての評価を以下に説明する。
[本発明品]
多軸ステッチ基材としては、引張強度が4900MPa、引張弾性率が235GPa、繊度が800tex(フィラメント数が12000本)の炭素繊維糸条を強化繊維として用い、目付が100g/mとなるよう互いに並行に配列したシートを、ステッチ糸2の編み込み進行方向に対して±45°に積層した。
そして、ステッチ糸として、繊度が112dtex、引っ張り強度が3.2GPa、破断伸度が4.8%、破断歪エネルギーが76.8MJ/mのガラス繊維糸(ガラスヤーン)を芯糸として用い、56dtexのナイロン繊維糸を鞘糸として2本用いてそれぞれS方向とZ方向に5ターン/cmのダブルカバーリングをしてカバーリング糸を得た後、そのカバーリング糸を用いて、ウエール密度が5W/inch(=1.97W/cm:1inch=2.54cm)、コース密度が8.5C/inch(=3.35コース/cm)の鎖編みでステッチした。
更に、ステッチした後、ステッチ基材を加熱してナイロン繊維糸を溶融させて冷却することで、炭素繊維糸条とガラス繊維糸とに融着させて一体化したステッチ基材を得た。
[評価]
こうして得られた炭素繊維ステッチ基材は、ニードルループの曲率半径が0.4mmで無理のない丸みのあるループ形状であり、また、編成するときにステッチ糸が切れることなく製造することができ、隣接する炭素繊維糸条間に隙間を生じることもなく、また、炭素繊維の配向も所定の配向角でステッチされていた。また、この炭素繊維ステッチ基材をハサミでカットしても切断面からステッチ糸がほつれることがなく、炭素繊維ステッチ基材の形態保持性は良好で取扱性が良好であった。
[比較例]
比較例として、ステッチ糸においてナイロン繊維でカバーリングせず、ガラスヤーンのヨリ糸を使用した。具体的には繊度が112dtex、引っ張り強度が3.2GPa、破断伸度が4.8%、破断歪エネルギーが76.8MJ/mのガラス繊維糸(ガラスヤーン)を用い、下ヨリとしてZ方向に590ターン/m(=単糸ヨリ数)のヨリをかけた単糸を得た後、その単糸を2本合わせてS方向に前記単糸ヨリ数の80%の472ターン/mの上ヨリ数でヨリ掛けした、繊度が225dtexのガラス繊維糸のヨリ糸を用いて、本発明品の実施例と同様にウエール密度が5W/inch(=1.97W/cm:1inch=2.54cm)、コース密度が8.5C/inch(=3.35コース/cm)の鎖編みでステッチした。
[評価]
こうして得られた炭素繊維ステッチ基材は、編成時には本発明品と同様にステッチすることができたが、炭素繊維ステッチ基材をハサミでカットすると切断面からステッチ糸がほつれ、更にカットした炭素繊維ステッチ基材を手で持ち上、取扱性が非常に悪いといった問題があった。
本発明は、概ね上記のように構成されるが、図示の実施形態に限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内において種々の変更が可能であって、例えば、ステッチ糸2のカバーリング糸は、シングルカバーリングやダブルカバーリングに限定するものではなく、3本以上の熱可塑性ポリマー糸によるカバーリング糸を採用することができ、本発明の技術的範囲に属する。
1 多軸ステッチ基材
2 ステッチ糸
3 強化繊維シート
3a +45°配向強化繊維シート
3b 90°配向強化繊維シート
3c −45°配向強化繊維シート
3d 0°配向強化繊維シート
4 ニードル
5 ガラス繊維糸
6 熱可塑性ポリマー糸
r 曲率半径

Claims (8)

  1. 強化繊維糸条を互いに並行に配列してなる強化繊維シートが、それぞれ異なった配向方向で複数枚積層され、これらのシートを貫通するステッチ糸により縫合一体化された多軸ステッチ基材であって、
    前記ステッチ糸は、繊度が100〜500dtexである一方、破断ひずみエネルギーが30MJ/m以上のガラス繊維糸と、繊度が30〜120dtexの熱可塑性ポリマー糸からなる複合糸であり、
    加熱されたことで、ステッチ糸を構成する熱可塑性ポリマー糸がガラス繊維糸と強化繊維糸条とに融着して一体化されていることを特徴とする耐熱性多軸ステッチ基材。
  2. 前記ステッチ糸が、ガラス繊維糸を芯糸とし、熱可塑性ポリマー糸を鞘糸としたカバーリング糸であることを特徴とする請求項1記載の耐熱性多軸ステッチ基材。
  3. 前記熱可塑性ポリマー糸が、低融点ポリマーからなる糸、または低融点ポリマーを鞘にした芯鞘複合糸であることを特徴とする請求項1記載の耐熱性多軸ステッチ基材。
  4. 前記ステッチ糸は、構成する鞘糸の熱可塑性ポリマー糸が2本で、芯糸のガラス繊維糸にそれぞれS方向とZ方向に二重に巻き付けたダブルカバーリング糸であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載の耐熱性多軸ステッチ基材。
  5. 前記ステッチ糸は、構成する鞘糸の熱可塑性ポリマー糸が、芯糸のガラス繊維糸1cmあたり2〜10回の巻き回数でカバーリング加工されたカバーリング糸であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載の耐熱性多軸ステッチ基材。
  6. ステッチ糸により形成されたニードルループの曲率半径が0.3〜2mmの範囲であることを特徴とする請求項1〜5の何れか一つに記載の耐熱性多軸ステッチ基材。
  7. ステッチ糸によるステッチのコース密度が2〜4コース/cmであることを特徴とする請求項1〜6の何れか一つに記載の耐熱性多軸ステッチ基材。
  8. 強化繊維糸条が炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、シリカ繊維、セラミック繊維のうちから選択される何れかの単独または混合繊維であることを特徴とする請求項1〜7の何れか一つに記載の耐熱性多軸ステッチ基材。
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