JP6910523B1 - 錆びにくい極軟質圧延鋼材の製造方法 - Google Patents
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一方古墳から発掘された古代鉄の一部には、耐食性環境でもないのに1500年以上腐蝕に耐え、刻印を残しているほど錆びにくい鉄がある。
同様にタタラ鉄の一部で錆が進みにくいことも良く知られていて、例として現在のタタラ鉄破片の研磨面はステンレス鋼のように室内で15年以上金属光沢のままである。薄い不導体膜(半透明)を形成していると推測される。
また大型木造建築の黒っぽい瓦釘は1000年以上使い回されている。
インドのチャンドラバルマンの鉄柱(440mm径×9m長)は1600年間、地中埋設部分も腐蝕に耐えている。Fe純度が99.8%で含P鉄であることが解明されている。
『鍛錬に際しても、加熱と空気酸化により昇温して表面が溶解し、多量の酸素を溶解させる。即時の凝固により多量の酸素を固溶する。』、
『平衡論では溶融鉄はFeOと平衡する場合、Oは1530℃において0.17%以上溶解する。急速凝固により過飽和固溶となる。固溶した酸素は加熱や湿気がトリガーになり分解して表面に緻密なマグネタイト(不導体)である『黒錆』を短時間で生成する。この黒錆が腐蝕の進行を防止している』、と記載されている。
不導体膜のマグネタイトは薄いとほぼ透明であり金属光沢を示すが、膜厚が成長して緻密黒褐色を示すのが鉄の黒錆と見なされる。なおネット情報には黒錆と黒染めを混同しているものがある。
以上から鋼の腐蝕には鋼の純度と酸素含有量が関わっていると推測される。
1)Cは明らかに腐蝕を進行させる。純鉄に近い鋼は錆びにくい。
2)冷延鋼板では腐蝕の進行が大きいが焼鈍材では大きく低下する。
残念ながらOの影響の研究例は見当たらない。
過飽和酸素により黒錆(不導体膜)が形成されて耐食性を発揮するが、黒錆が脱落した後は、無Cが耐食性を補助すると考えられる。
該琺瑯用鋼板には2種あって、古い方はアームコ鉄やリムド鋼を使用する高酸素鋼(非脱酸鋼で0.03〜0.1%O)であり、他方は極低炭素Ti添加清浄鋼(脱酸鋼でO≦0.003%)である。
炭素含有の高酸素鋼(例;リムド鋼)は現在製造されていない。COガス気泡の大量発生が連続鋳造を阻害するからである。
いずれも琺瑯処理時のCOガス気泡の発生防止のため極低炭素鋼である。前者では多量に介在するMn酸化物が被覆ガラス層の付着性を強化するとのことである。当該鋼種は強度・延靭性・加工性等に特に問題はなく使用されているが、高酸素鋼板が耐食性に優れるとの記述は見つからない。琺瑯処理材自体が超耐食性であるから、生地になる鋼の耐食性には何ら問題とすることがないからであろう。
1)当該成分の鋼種が琺瑯鋼以外に現行のどの様な製品に適合するか、
2)適合しても当該製品における現行コストと競争可能かと言うことになる。
第1の適合する製品については、極低炭素鋼であるから必然的に低強度であり、それが許容される製品に限定される。
同様に高酸素であるから非金属介在物が多く、それが問題とならない製品に限定される。簡単には見当たらない。
他方第2のコスト問題については、琺瑯用鋼他極低炭素鋼の製造には現在すべてRH方式等真空脱炭処理が適用されている。当該処理設備を保有しない電炉普通鋼ミルでは設備・コスト負担は大きな障害となる。
新鋼種・新製品の製造に当たっては通常の熔解精錬に、1)極低炭素への精錬と、2)通常の脱酸とは逆の酸素富化精錬が負荷されなければならない。高度の脱炭は今日RH法に代表される真空処理によってなされている。溶鋼の真空処理は本来脱ガス(H)用に開発され、高度脱酸に展開され、高度脱炭に拡張されてきた。
RH法は一般の深絞り用鋼板には極低炭素・低酸素へ向けて広く適用されている。
真空脱炭における問題は、
1) 長時間(例;20分以上)の処理による溶鋼温度低下に対処するため再加熱を後続又は先行させなければならない。
2) 真空処理は脱ガス促進のため、高真空度で且つスラグレス下でなされる。溶鋼面での気泡の破裂による飛散溶鋼が真空容器内面又はレードル上部内面へ付着することが避けられず、耐火物消費と付着地金処理の作業負担が大きい。
本方法を普通鋼に適用しようとすると、熱源(Crの酸化)が無いのでアーク炉の下流にAOD炉と再加熱炉とが必要になり設備費・操業費の問題が大きく実用例は無い。
当該方法によりコスト負担が小さく高級弁ばね材等が製造されてきた。問題は極低炭素鋼の製造が可能かどうかについては開示が無い。さらに脱酸用の設備であって、逆の高酸素鋼の製造に適切かどうかも不明である。
本発明の解決すべき課題の第1は、錆にくいことを特徴とする成分が極低炭素であり且つ高酸素である鋼種を効果的に活かせる用途を探索すること、
第2は、探索された適切な製品をコスト上問題なく製造することであり、
具体的には、特にコスト負担の大きい高度脱炭精錬を普通鋼並みに、経済的に処理し得る方法を提供することである。
50torr以上200torr以下に減圧しつつ吹込みを継続してC量とO量を第1発明に記載した範囲に制御することを特徴とする高耐蝕性で極軟質の制御冷却鋼材の製造方法である。
『熱間加工』とは、実質熱間圧延であり、鋼管の対しては熱間押出しも含む。
『熱間加工の温度』は加工直前の温度とする。
『徐冷』とは空冷よりも小さい冷却速度であり、5.5mm径の線材では空冷が約7℃/sに対して半減を目安に4℃/s以下とする。径が大きいと空冷でも徐冷になる。
(冷却速度は900℃から500℃までの平均とする)
『制御冷却』とは通常オーステナイトから所望の金属組織と機械的性質を得るための冷却条件を制御することである。第3発明では直接焼鈍に該当した熱処理と言える。
成分の濃度を示す『%』は、本明細書においてはすべて質量%とする。
高耐食性鋼材の経済的な応用事例として、蛇篭用鉄線が挙げられる。該製品は線材を所望径に伸線し次いで亜鉛メッキが施されるが、本発明の熱間圧延線材がそのまま、又は線径が通常の線材よりも小さい場合は再度熱間圧延して所望径とした鉄線を亜鉛メッキせずに蛇篭用鉄線として使用することができ、コスト上大いに有利になる。
グレーチングやガス管、薄板等においても同様の効果が得られる。
今後の改良次第ではステンレス鋼製品の一部が本発明の鋼材に代替される可能性を秘める。
図1において、アーク炉(図示せず)により原料のスクラップを熔解し、酸素吹錬して溶鋼中のC濃度を0.05%以下とした後、レードル台車1上のレードル2に該溶鋼をスラグとともに出鋼する。酸化精錬によりSiは0.01%以下、Mnは0.2%以下、P,Sは約0.03%、Oは約0.06%となる。スラグ組成は石灰投入量を加減して塩基度を1.0以上1.5以下としておく。スラグ中のFeO濃度は酸素吹錬により約20%以上となっている。
受鋼後、レードル台車1を減圧装置に誘導するが、その間も吹込みを継続してCO反応を進める。
該ガス供給系12は真空ポンプ11の排気ガスの一部を吸引しコンプレッサー13によって加圧した排ガス管14と酸素ガス管15と不活性ガス管16と上記3種のガスを適宜混合させるガス混合機17と混合ガスを溶鋼に吹き込むプラグ3とから成る。
直ちに真空ポンプ11を稼働させ、該空間を約100Torrに向かって減圧する。減圧に伴い、スラグ浮遊の溶鋼表面の性状は、それまでのガス吹込みによる局所噴出状から平坦な発泡状に変容して液面全体がが500mm以上上昇する。
該上昇部分には溶鋼・スラグ・気泡の混合体が形成される。それはオーバーフローした際の噴出物に鉄粒が多量に混合していることから解る。溶鋼・スラグ・気泡間の激しい攪拌により、起こるべき化学反応が急速に進行する。
吹込みO2 はC%が多いときは主にCと反応しFeとはほとんど反応しないが、C%が0.05%以下となると反応はFe優先に移行し、溶鋼中O%の増加と酸化熱による溶鋼の昇温が発現する。
必要に応じて副資材ホッパー7から溶鋼中にMn合金等を添加して所定成分とする。
所定時間の精錬後、熱電対による溶鋼測温と固体電解質の酸素濃淡電池を原理とする酸素センサーによりO%を測定し、微調整後レードル2をビレット用連続鋳造機に移送し、連続鋳造に供する。
しかし本発明ではC%は0.01%以下であって、CO反応は抑制され、問題なく鋳造することができる。
圧延後は図2に示すように、線材ミルには通常制御冷却装置(例;ステルモア・プロセス)が付設されている。本発明Aでは該装置による制御冷却を適用するが、送風を停止し、平行リング列のリングピッチを小さくして冷却速度を空冷Bよりも小さくし軟質化を補助する。
図3はFe−P状態図のγループの部分を示す。炭素鋼と異なり、A3 温度は合金量に従って低下するのではなく上昇する。図から濃縮部の濃度を0.06%Pと想定すると、A3 温度は約950℃、希薄部は約910℃になる。従って上記の共存域温度910〜950℃で圧延を行うと、帯状高P部が先行して、微量Cを排出しつつPを集め、無C高Pのα相を成長させ、残部は微量Cを含み低Pのγ相と成っている。Pの偏析を鮮明化する。 最終の金属組織は、精密に観察すると高Pフェライトと低Pフェライトが帯状に分布し厳密には均質ではない。γループ形成元素固有の組織問題が含まれる。
本発明ではCとPの分化を避け、より軟質化するため、熱間圧延温度はα又はγ単一域、即ち910℃以下又は950℃以上とし、より均一なフェライトを得る。軟化と耐食性に多少有利となる。
平衡論から[C%]と[O%]とは反比例の関係にある。
図5は酸素吹錬し、出鋼後の[C%]と[O%]との関係を示す。高酸素鋼を溶製するには、低炭素への脱炭精錬が前提となる。
図から[O%]を500ppm(0.05%)とするには[C%]は約0.05%以下としなければならない。当該[C%],[O%]濃度下で減圧処理を行うと[C]と[O]の反応が再活性され、激しい沸騰のため溶鋼はレードルから溢れ出し危険である。当問題に対して減圧前に0.03%C以下に脱炭しておかねばならない。[C%]の低下とともに沸騰強度も低下してくる。
吹込みガスの組成が不活性でも脱炭反応が進行するが、その場合脱酸反応を伴う。酸素含有ガスはCO反応による脱酸に対して新たな酸化を付加し、脱炭と酸化を並進させるだけでなく、Feの酸化による溶鋼の加熱が付随して、冷却過程である精錬において溶鋼温度低下を補償する。出鋼温度を多少高めに設定しておくと連続鋳造に向かって再加熱は不要になって大変好都合である。
極軟質を確保するため、適切な成分として、C;0.01%以下、Si;0.01%以下、Mn;0.5%以下、O;0.05以上0.13%以下、P;0.03%以下、S;0.03%以下、残りはFeと不可避不純物とする。
鋼の強化元素であるC、Siが含有せず、Mnについても必要最小限としている。
上記成分と既述の制御冷却により抗張力を300MPa未満とすることができる。
(Rimming action)が発現しないように少なくとも0.02%以下が必要だが軟質化のため一層低位に設定した。
もう一つの理由は、図4に示し、且つ段落[0004]で既述したように冷延鋼板ではC%の増加に対応して腐蝕速度が増大するのでC%は少ないほど良い。
図4からもう一つの大きな結論は、焼鈍材の腐蝕速度は極めて小さいことである。これが段落[0032]において熱間圧延後徐冷する根拠となっている。
O%は琺瑯鋼の範囲を参考に、下限は琺瑯の付着性が問題となる0.05%とし、耐食性から上限は拡張した。
非特許文献5には純鉄の機械的性質に及ぼすOの影響が示され、0.013%Oまでは特に不都合が無いと解釈され、当該範囲とした。
以上、高耐食性を確保するための条件として、1)タタラを踏襲する高酸素(O;0.05〜0.13%O)、2)低炭素鋼(≦0.01%C)、3)焼鈍組織(<300MPa)の3要因を組み合わせて特定した。
スラグ組成は溶鋼の脱炭・酸化に影響を及ぼし、酸素含有ガスの吹込みによる脱炭・酸化を補助する。そのためにはスラグ中のFeO濃度は15%以上が必要である。
本発明におけるスラグのもう一つの役割は、真空処理に伴う気密カバーやレードル側壁への地金付着を防止することである。
通常の真空脱炭ではスラグレス下で高真空(1Torr以下)とするので、溶鋼表面での気泡の破裂により溶鋼が飛散して真空容器やレードル側壁に地金付着が堆積し、品質及び作業上の問題が大きい。
図6は転炉における酸素吹錬時の発泡高さに及ぼすガス量とFeO%の影響を示す。
図から、発泡高さは当然ながらガス量に比例して増大し、他方FeO濃度が大きいほど低下することが解る。ここからFeO濃度は20%以上とした。
通常の極低炭素鋼では0.005%C以下とするため高真空が条件となっている。攪拌ガス量にも制限があって反応速度は大きくない。
本発明では反応速度に比例的である攪拌エネルギー密度(kW/ton)を重視し、真空度よりもガス量に重点を置いている。
真空度の適正範囲として下限は、ポンプの型式によって多少異なるが、1段の真空ポンプによって容易に得られる50Torr、上限は効果的な発泡が発現する200Torrとした。 真空装置とその動力費は極めて経済的になる。ちなみに高真空ではどの型式においても多段(3〜6)の排気装置が必要となる。
なお攪拌エネルギー密度は溶鋼容量に反比例し、ガス量に比例し、0.1気圧程度までは溶鋼上下の圧力比の対数に比例する。
一例として、蛇篭用鉄線の製造工程は、軟鋼線材を素材として、所定径に伸線し、次いで亜鉛メッキして製品となっている。一部の金網も同様である。本発明の低炭素・高酸素の焼鈍鋼材は耐食性に優れるので亜鉛メッキが不要になる。
同様に、通常Znメッキされているグレーチング・ガス管・鋼板等もメッキが不要になる。
鉄心を形成するに際して、厚板や平鋼を2次熱間圧延して所望厚として従来通り薄板を積層しても良いが、他に、厚板・平鋼・棒鋼をそのまま打ち抜き又は冷間成型後焼鈍すればよい。コストは従来よりも削減される。
平鋼・形鋼・厚板・鋼管の場合も線材・棒鋼と同様に処理すればよい。特に問題は無い。
排気能力; 500Nm3/h×3台
吹込みガス量; 0.2〜0.5Nm3/分
処理圧力; 70〜200Torr
攪拌エネルギー密度; 0.1〜0.3kW/t
処理時間; 5〜7分
到達C%; 0.010%以下
一般のLF(アーク加熱保有のレードル精錬装置)よりも低コストで操業可能である。
仕上げ圧延温度; 920℃
制御冷却; 徐冷
以上の条件により鋼材の抗張力は280MPaが得られる。
Claims (3)
- 錆びにくい鋼材の製造方法であって、組成成分を質量%において、Cが0.01%以下、Siが0.01%以下、Oが0.05%以上0.13%以下、Mnが0.5%以下、Pが0.03%以下、Sが0.03%以下、残部がFeと不可避不純物(主にCu+Ni+Cr)であり、鉄の純度を99.0%以上とし、圧延温度を910℃以上950℃以下の範囲を避けてγ又はα単相域で圧延することによりPの偏在を緩和し、圧延後徐冷して抗張力を300MPa未満とし、亜鉛メッキを必要としないことを特徴とする蛇篭用熱延線材、又はグレーチング用熱延平鋼、又は熱延ガス管、又はZnメッキ鋼板の代替鋼板の製造方法。
- 錆びにくい鋼材の製造方法であって、組成成分を質量%において、Cが0.01%以下、Siが0.01%以下、Oが0.05%以上0.13%以下、Mnが0.5%以下、Pが0.03%以下、Sが0.03%以下、残部がFeと不可避不純物(主にCu+Ni+Cr)であり、鉄の純度を99.0%以上とし、圧延温度を910℃以上950℃以下の範囲を避けてγ又はα単相域で圧延することによりPの偏在を緩和し、圧延後徐冷して抗張力を300MPa未満とし、表面が酸化膜のままであることを特徴とする電磁鉄心材料の製造方法。
- 請求項1又は請求項2において、溶解炉中の溶鋼のC濃度を0.05%以下に酸化し、FeO濃度が20%以上で塩基度が1.0以上1.5以下の浮遊スラグとともに該溶鋼をレードルに排出し、該レードル底部から酸素含有ガスを吹き込んでCO反応の促進とFeの酸化を進め、次いで該レードル上部開口に気密カバーを取り付け、該気密カバー内空間を真空ポンプにより50torr以上、200torr以下に減圧しつつ吹込みを継続してC量を0.01%以下、O量を0.05%以上0.13%以下に誘導することを特徴とするC量とO量の制御方法。
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