以下、本発明を実施するための例示的な実施例を、図面を参照して詳細に説明する。ただし、以下の実施例で説明する寸法、材料、形状、及び構成要素の相対的な位置等は任意であり、本発明が適用される装置の構成又は様々な条件に応じて変更できる。また、図面において、同一であるか又は機能的に類似している要素を示すために図面間で同じ参照符号を用いる。なお、本明細書において、「同一位置」とは、完全に同一の位置及び略同一の位置を含む。ここで、略同一位置とは、モーションコントラスト画像(OCTA画像)を生成するのに許容できる程度に同一である位置をいう。また、「断層データ」とは、被検査物の断層に関する情報を含む信号のデータであり、OCTによる干渉信号に基づくデータ、及びこれに高速フーリエ変換(FFT)や任意の信号処理を行ったデータを含むものをいう。
(実施例1)
図1乃至7を参照して、実施例1によるOCT装置について説明する。本実施例によるOCT装置は、断層データの強弱に起因する明暗の発生を抑え、OCTA画像の生成を良好に行うことができる。なお、以下において、被検査物として被検眼を例として説明する。
(本体構成)
図1は、本実施例によるOCT装置1の概略的な全体構成を示す。OCT装置1には、撮影光学系200、ベース250、制御部300、入力部360及び表示部500が設けられている。
撮影光学系(撮影装置)200は、被検眼の前眼部像やSLO(Scanning Laser Ophothalmoscope:走査型検眼鏡)眼底像、断層像に関するデータを取得する。撮影光学系200は、ベース250上に設けられ、不図示の電動ステージ等によってベース250に対してXYZ方向に移動可能なように保持される。
制御部(情報処理装置)300は、撮影光学系200、入力部360、及び表示部500に接続される。制御部300は、撮影光学系200の撮影制御、取得した前眼部像やSLO眼底像、断層像に関するデータの解析・再構成、並びに前眼部画像、SLO画像、断層画像及びOCTA画像などの生成を行う。制御部300は、汎用のコンピュータを用いて構成されることができるが、OCT装置1の専用コンピュータとして構成されてもよい。入力部360は、制御部300への指示を行うための入力装置であり、例えば、キーボードやマウス等から構成される。
表示部500は、制御部300から送られる各種情報や各種画像、入力部360の操作に従ったマウスカーソル等を表示する。表示部500は任意のモニタを用いて構成されることができる。なお、本実施例においては、撮影光学系200、制御部300、入力部360、及び表示部500はそれぞれ別個に構成されているが、これらは一部又は全体が一体として構成されてもよい。
(撮影光学系及びベースの構成)
次に、図2を参照して撮影光学系200及びベース250の構成について説明する。図2は、撮影光学系200及びベース250の概略的な構成を示す。
まず、撮影光学系200の内部について説明する。被検眼Eに対向して対物レンズ201が設置されている。対物レンズ201の光軸上には、第1ダイクロイックミラー202及び第2ダイクロイックミラー203が設けられている。対物レンズ201からの光路は、第1及び第2ダイクロイックミラー202,203によって、OCT光学系の光路L1、SLO光学系と固視灯用の光路L2、及び前眼観察用の光路L3に、光路を通る光の波長帯域ごとに分岐される。本実施例では、第1ダイクロイックミラー202の透過方向にOCT光学系の光路L1並びにSLO光学系と固視灯用の光路L2が配置され、反射方向に前眼部観察用の光路L3が配置される。また、第2ダイクロイックミラー203の透過方向にSLO光学系と固視灯用の光路L2が配置され、反射方向にOCT光学系の光路L1が配置される。しかしながら、これらの光路の配置は当該配置に限られず、第1ダイクロイックミラー202及び第2ダイクロイックミラー203の透過方向並びに反射方向にそれぞれ逆の配置となるように各光路が配置されてもよい。
SLO光学系と固視灯用の光路L2は、SLO眼底像の取得と被検眼Eの固視の用途に用いられる。光路L2には、SLO走査手段204、レンズ205,206、ミラー207、第3ダイクロイックミラー208、フォトダイオード209、SLO光源210、及び固視灯211が設けられている。なお、光路L2上の固視灯211以外の構成要素はSLO光学系を構成する。
SLO走査手段204は、SLO光源210と固視灯211から発せられた光を被検眼E上で走査する。SLO走査手段204は、X方向に走査するXスキャナ、Y方向に走査するYスキャナから構成されている。本実施例では、Xスキャナはポリゴンミラーによって、Yスキャナはガルバノミラーによって構成されている。しかしながら、Xスキャナ及びYスキャナはこれに限られず、所望の構成に応じて任意の偏向手段を用いて構成することができる。
レンズ205は合焦レンズであり、SLO光学系及び固視灯の焦点合わせのため、制御部300によって制御される不図示のモータにより、図中矢印で示される光軸方向に沿って駆動される。
ミラー207は、穴あきミラーや中空のミラーが蒸着されたプリズムであり、SLO光源210による照明光及び固視灯からの光と、被検眼Eからの戻り光とを分離する。具体的には、ミラー207は、SLO光源210からの照明光及び固視灯からの光を通過させ、被検眼Eからの戻り光を反射してフォトダイオード209に導く。なお、ミラー207の通過方向にフォトダイオード209が設けられ、反射方向に第3ダイクロイックミラー208、SLO光源210及び固視灯211が設けられてもよい。
第3ダイクロイックミラー208は、光路L2をSLO光源210への光路と固視灯211への光路とに光路L2を通る光の波長帯域ごとに分岐する。具体的には、第3ダイクロイックミラー208の透過方向に固視灯211が設けられ、反射方向にSLO光源210が設けられている。なお、第3ダイクロイックミラー208の透過方向にSLO光源210が配置され、反射方向に固視灯211が設けられてもよい。
フォトダイオード209は、被検眼Eからの戻り光を検出し、戻り光に対応する信号を生成する。制御部300は、フォトダイオード209によって生成された信号(SLO信号)に基づいて被検眼Eの眼底の正面画像(SLO画像)を得ることができる。
SLO光源210は780nm付近の波長の光を発生する。SLO光源210から発せられた光は、第3ダイクロイックミラー208で反射され、ミラー207を通過し、レンズ206,205を通り、SLO走査手段204によって、被検眼E上で走査される。被検眼Eからの戻り光は、照明光と同じ経路を戻った後、ミラー207によって反射され、フォトダイオード209へと導かれる。フォトダイオード209の出力信号を制御部300によって処理することで、被検眼Eの眼底の正面画像を得ることができる。
固視灯211は、可視光を発生して被検者の固視を促すことができる。固視灯211から発せられた光は、第3ダイクロイックミラー208を透過し、ミラー207、及びレンズ206,205を通り、SLO走査手段204によって、被検眼E上で走査される。この時、制御部300によって、SLO走査手段204の動きに合わせて固視灯211を点滅させることで、被検眼E上の任意の位置に任意の形状をつくり、被検者の固視を促すことができる。
なお、本実施例では、眼底を観察するための眼底観察系としてSLOを用いているが、眼底観察系の構成はこれに限られない。例えば、眼底を撮影する眼底カメラ等の既知の観察系を用いて眼底観察系を構成してもよい。
次に、前眼部観察用の光路L3には、レンズ212,213、スプリットプリズム214、及び赤外光を検知する前眼部観察用のCCD215が設けられている。なお、前眼部観察用の光路L3に配置されるこれらの構成要素は、前眼部観察光学系を構成する。
光路L3では、不図示の前眼部観察用光源から970nm付近の波長を有する光が被検眼Eの前眼部に対して照射される。被検眼Eの前眼部からの反射光は対物レンズ201、第1ダイクロイックミラー202、及びレンズ212を介してスプリットプリズム214に入射する。
スプリットプリズム214は、被検眼Eの瞳孔と共役な位置に配置されている。スプリットプリズム214から出射された光はレンズ213を介してCCD215に入射する。
CCD215は、不図示の前眼部観察用光源からの照射光の波長、具体的には970nm付近に感度を持つ。CCD215は、前眼部からの反射光を検出し、前眼部からの反射光に対応する信号を生成する。制御部300は、CCD215によって生成された信号に基づいて、被検眼Eの前眼部画像を生成することができる。この際、制御部300は、CCD215によってスプリットプリズム214を通った反射光を検出することで、前眼部のスプリット像から被検眼Eに対する撮影光学系200のZ方向(深さ方向)の距離を検出することができる。生成される前眼部画像は、撮影光学系200と被検眼Eとのアライメント時などに用いられることができる。
次に、OCT光学系の光路L1について説明する。光路L1は、前述の通りOCT光学系用の光路を成しており、被検眼Eの断層画像を形成するための干渉信号の取得に用いられる。光路L1には、XYスキャナ216、及びレンズ217,218が設けられている。
XYスキャナ216は、測定光を被検眼E上で走査するためのOCT走査手段を構成する。XYスキャナ216は1枚のミラーとして図示されているが、X軸及びY軸方向の走査をそれぞれ行う2枚ガルバノミラーで構成されている。なお、XYスキャナ216の構成はこれに限られず、任意の偏向手段を用いて構成されることができる。また、XYスキャナ216は、MEMSミラー等の1枚で2次元方向に光を偏向させられる偏向ミラーによって構成されてもよい。
レンズ217は、光カプラー219に接続されている光ファイバー224から出射する測定光を被検眼Eに焦点合わせするために用いられる合焦レンズである。レンズ217は、制御部300によって制御される不図示のモータにより、図中矢印で示される測定光の光軸方向に駆動される。この焦点合わせによって、被検眼Eからの測定光の戻り光は同時に光ファイバー224の先端に、スポット状に結像されて入射される。なお、光ファイバー224、光路L1に配置される各光学部材、第1及び第2ダイクロイックミラー202,203、並びに対物レンズ201等は、OCT光学系において測定光が伝播するOCT測定光学系を構成する。
次に、OCT光源220からの光路と参照光学系、分光器230の構成について説明する。光ファイバー224は、光カプラー219に接続されている。光カプラー219には、OCT測定光学系の光ファイバー224、OCT光源220に接続された光ファイバー225、OCT参照光学系の光ファイバー226、及び分光器230に接続された光ファイバー227が接続されている。光カプラー219は、OCT光源220からの光を測定光と参照光に分割する分割器、及び被検眼Eからの測定光の戻り光と参照光とを干渉させ、干渉光を発生させる干渉部として機能する。本実施例において、光ファイバー224〜227は、光カプラー219に接続されて一体化しているシングルモードの光ファイバーである。
OCT光源220は、代表的な低コヒーレント光源であるSLD(Super Luminescent Diode)である。本実施例では、OCT光源220として、中心波長が855nm、波長バンド幅が約100nmのものを用いている。ここで、バンド幅は、得られる断層画像の光軸方向の分解能に影響するため、重要なパラメータである。
なお、本実施例ではOCT光源220としてSLDを用いたが、OCT光源220としては、低コヒーレント光が出射できればよく、ASE(Amplified Spontaneous Emission)等を用いることもできる。また、眼を測定することを鑑みて中心波長が近赤外光のものを用いることができる。また、中心波長は得られる断層画像の横方向の分解能に影響し、なるべく中心波長が短波長のものを用いてもよい。本実施例では、上記双方の理由から中心波長855nmの光源を用いている。
OCT光源220から出射された光は、光ファイバー225を通じ、光カプラー219を介して、光ファイバー224等のOCT測定光学系を伝播する測定光と、光ファイバー226等のOCT参照光学系を伝播する参照光とに分割される。測定光は、偏光調整部228、前述のOCT光学系の光路L1を通じ、観察対象である被検眼Eに照射され、被検眼Eによる反射や散乱により、戻り光として同じ光路を通じて光カプラー219に到達する。
一方、参照光は光ファイバー226、偏光調整部229、レンズ223、及び測定光と参照光の分散を合わせるために挿入された分散補償ガラス222を介して参照ミラー221に到達し反射される。そして、同じ光路を戻り、光カプラー219に到達する。ここで、光ファイバー226、偏光調整部229、レンズ223、分散補償ガラス222、及び参照ミラー221はOCT参照光学系を構成する。
偏光調整部228は、光ファイバー224中に設けられた測定光側の偏光調整部である。偏光調整部229は、光ファイバー226中に設けられた参照光側の偏光調整部である。偏光調整部228,229は光ファイバーをループ状にひきまわした部分を幾つか有する。偏光調整部228,229では、このループ状の部分をファイバーの長手方向を中心として回動させることでファイバーに捩じりを加え、測定光と参照光の偏光状態を各々調整して合わせることができる。
被検眼Eからの測定光の戻り光と参照光は、光カプラー219によって合波され干渉光となる。ここで、測定光の光路長と参照光の光路長がほぼ等しい状態となったときに、測定光の戻り光と参照光は互いに干渉し、干渉光となる。参照ミラー221は、制御部300によって制御される不図示のモータ及び駆動機構により、図中矢印で示される参照光の光軸方向に調整可能に保持され、被検眼Eの被測定部によって変わる測定光の光路長に参照光の光路長を合わせることが可能である。干渉光は、光ファイバー227を介して分光器230に導かれる。
分光器230はベース250に設けられる。分光器230には、レンズ232,234、回折格子233、及びラインセンサ231が設けられている。光ファイバー227から出射された干渉光は、レンズ234を介して略平行光となった後、回折格子233で分光され、レンズ232によってラインセンサ231に結像される。なお、ラインセンサ231は、干渉光を受光して、干渉光に応じた出力信号を出力する受光素子の一例として示される。制御部300は、ラインセンサ231によって生成された信号に基づいて、被検眼Eの断層に関する情報を取得し、断層画像を生成することができる。
本実施例では、上記構成のように、干渉系としてマイケルソン干渉系を用いたが、マッハツェンダー干渉系を用いてもよい。例えば、測定光と参照光との光量差に応じて、光量差が大きい場合にはマッハツェンダー干渉系を、光量差が比較的小さい場合にはマイケルソン干渉系を用いることができる。
OCT装置1では、以上のような構成により、被検眼Eの断層画像を取得することができ、且つ、近赤外光であってもコントラストの高い被検眼EのSLO画像等を取得することができる。
(制御部の構成)
図3を参照して、制御部300の構成について説明する。図3は、制御部300の構成を概略的に示す。制御部300には、取得部310、画像生成部320、再構成部321、解析部322、目標取得部323、データ補正部324、モーションコントラスト生成部325、駆動制御部330、記憶部340、及び表示制御部350が設けられている。
取得部(第1取得手段)310は、撮影光学系200のフォトダイオード209、CCD215、及びラインセンサ231から各種信号を取得する。また、取得部310は、画像生成部320や再構成部321から、ラインセンサ231からの干渉信号に基づいて生成されたフーリエ変換後の信号やこれに何らかの信号処理を施した信号等を取得することもできる。
画像生成部(生成手段)320は、取得部310、再構成部321及びモーションコントラスト生成部325等からの信号に基づいて、前眼部画像、SLO画像、断層画像、及びモーションコントラスト画像(OCTA画像)を生成する。画像生成部320は、取得部310又は再構成部321から取得した被検眼Eのある一点における深さ方向(Z方向)の断層データを輝度或いは濃度情報に変換し、当該一点における深さ方向の断層画像を取得する。なお、被検査物の一点における深さ方向の干渉信号を取得するためのスキャン方式をAスキャンと呼び、得られる断層画像をAスキャン画像と呼ぶ。
XYスキャナ216によって測定光を被検査物の所定の横断方向に走査しながら、このようなAスキャンを繰り返し行うことにより、複数のAスキャン画像を取得することができる。例えば、測定光をXYスキャナ216によってX方向に走査すればXZ面における断層画像が得られ、Y方向に走査すればYZ面における断層画像が得られる。このように被検査物を所定の横断方向に走査する方式をBスキャンと呼び、得られる断層画像をBスキャン画像と呼ぶ。
再構成部321は、取得部310で取得したラインセンサ231からの干渉信号に基づいて、被検眼Eの三次元ボリュームデータを生成する。これにより、撮影光学系200で撮影された撮影データは、再構成部321で三次元ボリュームデータとして干渉信号のデータから再構成される。
具体的には、取得部310がラインセンサ231からの干渉信号を12ビットの整数形式データとして取得する。再構成部321は、このデータに対し、被検眼E上の1点毎に波数変換、高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)、及び絶対値変換(振幅の取得)を行い、深さ方向の断層データとして生成する。再構成部321は、撮影対象の領域における全断層データを変換し結合することで、三次元ボリュームデータ400を生成することができる。
ここでは、被検眼E上の任意の点(x、y)に対する断層データをAスキャンデータ、三次元ボリュームデータ400の中の1つの2次元断層画像に相当する第1の走査方向に対するAスキャンデータの集合をBスキャンデータと呼ぶ。なお、以下において、Bスキャンデータを断層像データと呼ぶ。三次元ボリュームデータ400は、図4に示すように、複数の断層像データ401〜40nを第2の走査方向に走査位置毎に並べたものに相当する。なお、三次元ボリュームデータ400に含まれる断層像データの数であるnは所望の構成に応じて任意の数に設定してよい。
ここで、図4を参照して、三次元ボリュームデータ400についてより詳細に説明する。図4は、本実施例に係る三次元ボリュームデータ400の構造を概略的に示す。再構成部321は、撮影光学系200で一走査線に沿って被検眼Eを撮影して取得された断層データを再構成することにより、Bスキャンに対応する断層像データ401を生成することができる。このBスキャンデータに関する干渉信号を取得した平面をxz軸平面とし、撮影光学系200でy軸方向に連続して被検眼Eを撮影することで、再構成部321は、特定の領域に対する複数の断層像データ401〜40nを生成することができる。そして、再構成部321は、生成した複数の断層像データ401〜40nをy軸方向に並べることによって三次元ボリュームデータ400を生成することができる。
撮影光学系200によって被検眼Eの同一箇所から複数のBスキャンデータを取得するように撮影を行うことで、再構成部321は被検眼Eの所定範囲(撮影範囲)における複数の三次元ボリュームデータ400を生成することができる。なお、別の方法として、再構成部321は、取得された干渉信号を波長帯域等に基づいて複数の組に分割し、それぞれの組の干渉信号に対してFFT処理を行うことで、撮影範囲を1回撮影することで複数の三次元ボリュームデータを取得することもできる。
また、画像生成部320は、再構成部321で生成した三次元ボリュームデータ400からxy軸平面の画像を生成することで正面画像410を取得することもできる。さらに、後述するように、モーションコントラスト生成部325が、複数の三次元ボリュームデータ400間の変化を計算することでモーションコントラストデータを生成する。そして、画像生成部320が、モーションコントラストデータから生成したxy軸平面の正面画像410がOCTA画像となる。
解析部322は、再構成部321で生成された三次元ボリュームデータを解析する。より具体的には、解析部322は三次元ボリュームデータの各断層像データ401〜40n(又は対応する断層画像)を解析し、各断層像データ401〜40nにおける、被検眼Eの網膜の層構造に基づく層境界の形状を検出する。解析部322が検出する層境界は、ILM、NFL/GCL、GCL/IPL、IPL/INL、INL/OPL、OPL/ONL、IS/OS、OS/RPE、RPE/Choroid、BMの10種類である。なお、検出される層境界はこれに限られず、所望の構成に応じて変更されてよい。
また、層境界の検出方法は既知の任意の方法によって行われてよい。例えば、解析部322は、断層像データに対応する断層画像に対して、メディアンフィルタとSobelフィルタをそれぞれ適用して画像を生成する(以下、それぞれメディアン画像、Sobel画像ともいう)。次に解析部322は、生成したメディアン画像とSobel画像から、Aスキャンに対応するデータ毎にプロファイルを生成する。生成されるプロファイルは、メディアン画像では輝度値のプロファイル、Sobel画像では勾配のプロファイルとなる。そして、解析部322は、Sobel画像から生成したプロファイル内のピークを検出する。解析部322は、検出したピークの前後やピーク間に対応するメディアン画像のプロファイルを参照することで、網膜層の各領域の境界を検出・抽出する。
目標取得部(第2取得手段)323、データ補正部324、及びモーションコントラスト生成部325は、モーションコントラストデータの生成するために機能する。目標取得部323は、データ補正部324によって補正すべき断層データの分布の目標を取得する。本実施例において、目標取得部323は、予め記憶部340に記憶された目標を取得する。当該目標は、被検者毎の過去の検査結果や複数の被検者の統計データ等から設定されることができる。
データ補正部(補正手段)324は、再構成部321で生成された三次元ボリュームデータに含まれる断層データの分布をモーションコントラストデータ生成の前処理として補正する。補正の方法については後述する。
モーションコントラスト生成部325は、まず被検眼Eの同一範囲で撮影された複数の三次元ボリュームデータ間の位置ずれを、断層像データ毎に補正する。位置ずれの補正方法は任意の方法であってよい。
例えば、モーションコントラスト生成部325は、同一範囲をM回撮影し、取得したM個の三次元ボリュームデータにおける、同一箇所に相当する断層像データ同士について、眼底形状等の特徴等を利用して位置合わせを行う。具体的には、M個の断層像データのうちの1つをテンプレートとして選択し、テンプレートの位置と角度を変えながらその他の断層像データとの類似度を求め、テンプレートとの位置ずれ量を求める。その後、モーションコントラスト生成部325は、求めた位置ずれ量に基づいて、各断層像データを補正し、M個の三次元ボリュームデータ間の位置ずれを補正する。
次にモーションコントラスト生成部325は、各断層像データに関する撮影時間が互いに連続する、2つの三次元ボリュームデータの各断層像データ間で式1により脱相関値Mxyを求める。
ここで、Axyは断層像データAの位置(x、y)における輝度、Bxyは断層像データBの同一位置(x、y)における輝度を示している。なお、脱相関値Mxyを求める2つの三次元ボリュームデータは、互いに対応する各断層像データに関する撮影時間が所定の時間間隔以内であればよく、撮影時間が連続していなくてもよい。
脱相関値Mxyは0〜1の値となり、2つの輝度の差が大きいほどMxyの値は大きくなる。なお、モーションコントラスト生成部325は、同一位置で繰り返し取得した3つ以上の三次元ボリュームデータから複数の脱相関値Mxyを求めることができる。モーションコントラスト生成部325は、求めた複数の脱相関値Mxyの最大値演算や平均演算などの統計的な処理を行うことで、最終的なモーションコントラストデータを生成することができる。
一方、式1に示したモーションコントラストの計算式はノイズの影響を受けやすい傾向がある。例えば、複数の断層像データの無信号部分にノイズがあり、互いに値が異なる場合には、脱相関値が高くなり、モーションコントラスト画像にもノイズが重畳してしまう。
これを避けるために、モーションコントラスト生成部325は、前処理として、所定の閾値Dthを下回る断層データはノイズとみなして、ゼロに置き換えることができる。以下では、Dthをノイズ閾値と呼ぶ。また、ノイズ閾値Dthを下回る断層データをゼロに置き換える処理をノイズマスク処理と記述する。これにより、画像生成部320は、生成されたモーションコントラストデータに基づいて、ノイズの影響を低減したモーションコントラスト画像を生成することができる。ノイズ閾値Dthの算出法の例として、例えば被検査物がない状態で撮影したBスキャンデータ全体の輝度値の平均をBGa、該Bスキャンデータ全体の輝度値の標準偏差をσとした場合に、Dth=BGa+2σとして算出できる。その他、既知の任意のノイズ閾値の算出方法を用いることができる。
駆動制御部330は、SLO光源210、SLO走査手段204、OCT光源220、XYスキャナ216等の、撮影光学系200の各構成要素の駆動を制御する。記憶部340は、画像生成部320によって生成された各種画像や入力された被検者の情報、制御部300を構成するプログラム等を記憶する。表示制御部350は、表示部500を制御し、記憶部340に記憶された各種画像や被検者の情報等を表示部500に表示させる。
なお、制御部300の各構成要素は、制御部300のCPUやMPUで実行されるモジュールにて構成することができる。また、制御部300の各構成要素は、ASICなどの特定の機能を実現する回路等により構成されてもよい。記憶部340は、メモリや光学ディスク等の任意の記憶装置・記憶媒体を用いて構成することができる。
(ユーザーインターフェースの構成)
図5を参照して、本実施例に係るOCTA画像生成のためのユーザーインターフェースの構成について説明する。図5は、OCTA画像を生成する際に表示されるユーザーインターフェースの一例を示す。
表示部500は、撮影光学系200による撮影の終了後、画面上にOCTA画像を生成するためのユーザーインターフェース550を表示する。ユーザーインターフェース550には、眼底画像表示領域510、断層画像表示領域520、OCTA画像表示領域530の3つの表示領域が設けられている。
眼底画像表示領域510には、被検眼Eの眼底画像511が表示される。眼底画像511上には、撮影領域アノテーション512及び断層位置アノテーション513が表示される。撮影領域アノテーション512は、三次元のボリュームデータに対応する干渉信号を取得した撮影光学系200による撮影領域を示す。なお、本実施例では、眼底画像511として撮影光学系200から得られたSLO画像を表示する。しかしながら、眼底画像511として、撮影光学系200以外の眼底画像撮影機器で撮影された眼底画像を表示してもよい。その場合、撮影領域アノテーションの位置は、眼底画像と位置合わせを行い、適切な位置で表示される。
断層位置アノテーション513は、断層画像表示領域520に表示する断層画像521の眼底画像511上の位置を示す。操作者は、入力部360を介して断層位置アノテーション513を動かすことで、断層画像表示領域520に表示すべき断層画像521の被検眼E上での位置を決定することができる。画像生成部320は、三次元ボリュームデータに基づいて、決定された位置に対応する断層画像521を生成する。
断層画像表示領域520には、断層位置アノテーション513の位置に対応する断層画像521が表示される。断層画像521上には、OCTA画像の生成範囲を指定するための生成範囲上端522と生成範囲下端523が表示される。図5においては、生成範囲上端522は破線で示され、生成範囲下端523は二点鎖線で示されている。
制御部300は、指定された深度範囲となる生成範囲上端522と生成範囲下端523との間の範囲に対応する範囲のモーションコントラストデータを二次元平面上に投影し、OCTA画像を生成する。具体的には、画像生成部320が、全体のモーションコントラストデータのうち生成範囲上端522と生成範囲下端523の間の範囲に対応するモーションコントラストデータに基づいて、モーションコントラスト画像の正面画像であるOCTA画像を生成する。なお、モーションコントラスト生成部325が、生成範囲上端522と生成範囲下端523との間の範囲の断層データを用いてモーションコントラストデータを生成する構成としてもよい。この場合、画像生成部320は、生成されたモーションコントラストデータに基づいてOCTA画像を生成することで、指定された深度範囲の断層データに基づくOCTA画像を生成することができる。
操作者は、入力部360を介して、生成範囲上端522と生成範囲下端523の位置を決定することができる。なお、生成範囲上端522と生成範囲下端523の形状は特定の層形状、直線、又はフリーハンドで指定できる。また、生成範囲上端522と生成範囲下端523の位置も任意に設定することができ、入力部360を介して、自由に移動させてもよいし、ある特定の位置や層に設定してもよいし、これらから任意の距離に設定してもよい。また、OCTA画像生成範囲を予めプリセットとして設定し、選択できるようにしてもよい。
OCTA画像表示領域530には、指定したOCTA画像の生成範囲上端522及び生成範囲下端523の間の断層データに基づいて生成されたOCTA画像531が表示される。
上記のように、操作者はユーザーインターフェース550を用いて、OCTA画像の生成に用いる、断層データを決定することができる。より具体的には、操作者は、断層位置アノテーション513の位置を指定し、次いで断層画像表示領域520においてOCTA画像531の生成に用いる断層データの範囲を決定する。その後、決定された断層データに基づいて生成されたOCTA画像531がOCTA画像表示領域530に表示される。
なお、上記では、操作者がOCTA画像の生成に用いる断層データを決定したが、OCTA画像の元となる断層データの決定方法はこれに限られない。例えば、制御部300が、予め設定された検査部位や被検者の過去の検査内容、撮影モード等の情報に基づいて、OCTA画像の生成に用いる断層データを決定してもよい。この場合、制御部300は、解析部322で検出した層に基づいて、OCTA画像の生成に用いる断層データの範囲を特定することができる。
(本実施例に係るOCTA画像生成フロー)
次に、図6及び7を参照して本実施例に係るOCTA画像生成フローについて説明する。図6は、本実施例に係るOCTA画像生成処理のフローチャートを示す。
撮影光学系200で取得された干渉信号は、被検眼Eの状態や撮影条件が最適でない場合、部分的に低い信号強度を有する場合がある。信号強度が低い場合、再構成後の断層画像も暗い画像になるとともに、OCTA画像にも暗い部分が生じる。そこで、本実施例に係るOCTA画像生成処理では、データ補正部324が、三次元ボリュームデータに含まれる、モーションコントラストデータの算出に用いられる断層データのパラメータの分布を、理想的な目標の分布に近づけるように補正を行う。制御部300は、補正された断層データに基づいて、モーションコントラスト画像の正面画像であるOCTA画像を生成することで、断層信号の強弱に起因する明暗の発生を抑えたOCTA画像を生成することができる。なお、本実施例では、データ補正部324が、三次元ボリュームスキャンデータに含まれるAスキャンデータの分布毎に補正を行うものとする。
具体的には、OCTA画像生成処理が開始されると、ステップS601において、取得部310が再構成部321から三次元ボリュームデータを取得する。三次元ボリュームデータは、上述のように、再構成部321によって、撮影光学系200で取得された干渉信号に基づいて生成される。
ステップS602では、目標取得部323が、データ補正部で断層データを補正する際の目標を記憶部340から取得する。なお、目標は制御部300に接続される他の装置から取得してもよい。ここで、目標は、上述のように、被検者毎の過去の検査結果や複数の被検者の統計データ等から設定されることができる。
ステップS603では、データ補正部324が、三次元ボリュームデータから補正の対象となる断層データの、モーションコントラストデータの算出に用いられるパラメータの分布を抽出する。本実施例では、モーションコントラストデータの算出に用いられるパラメータとして、FFT後の複素数データの振幅に対応する断層データの輝度値を用いる。データ補正部324は、三次元ボリュームデータに含まれる各Aスキャンデータの分布を補正するため、三次元ボリュームデータに含まれる各Aスキャンデータの輝度値の分布を求める。なお、モーションコントラストデータの算出に用いられるパラメータは、輝度値に限られず、モーションコントラストデータの算出方法に応じて、位相値や、輝度値及び位相値の両方等であってもよい。
図7(a)乃至(c)は三次元ボリュームデータに含まれるAスキャンデータのヒストグラムを説明するための図である。図7(a)乃至(c)において、横軸は輝度値で、縦軸は各輝度での頻度数を示す。図7(a)は干渉信号の信号強度が十分高い場合、図7(b)は干渉信号の信号強度が低い場合のAスキャンデータのヒストグラムの例を模式的に示している。以下、説明のため、補正するAスキャンデータのヒストグラムを図7(b)に示すヒストグラムとし、目標となるAスキャンデータのヒストグラムを図7(a)に示すヒストグラムとする。
ステップS604では、データ補正部324は、図7(c)において矢印で示すように、破線で示される補正するAスキャンデータの分布を、実線で示される目標に近づけるように補正する。
データ補正部324は、各Aスキャンデータの平均値Av_0と標準偏差σ0が、目標取得部323で取得した目標であるAスキャンデータの平均値Av_tと標準偏差σtに近づくように、各Aスキャンデータの分布を変換する。具体的には以下の式2により、対象のAスキャンデータの分布が、目標となるAスキャンデータの分布に近づくように変換を行う。
ここで、yは補正後のAスキャンデータであり、xが補正前のAスキャンデータである。
データ補正部324は、式2に従った演算を行うことで、補正前のAスキャンデータの分布を目標であるAスキャンデータの平均値と標準偏差を持つ分布に変換することができる。
次に、ステップS605において、モーションコントラスト生成部325が、補正された断層データを用いて、上述のようにモーションコントラストデータを生成する。
ステップS606では、画像生成部320が、生成されたモーションコントラストデータに基づいて、モーションコントラスト画像の正面画像であるOCTA画像を生成する。当該OCTA画像生成処理により、制御部300は、補正された断層データに基づいてOCTA画像を生成するため、断層画像の部分的な明暗に影響されず、高画質なOCTA画像を得ることができる。
なお、本実施例では、目標の取得(ステップS602)を三次元ボリュームデータの取得(ステップS601)の後に行ったが、目標はデータ分布の補正(ステップS604)の前に行われていればよい。そのため、データ分布の抽出(ステップS603)の後に行ってもよいし、三次元ボリュームデータの取得(ステップS601)やデータ分布の抽出(ステップS603)と同時に行われてもよい。
上記のように、本実施例による制御部300は、取得部310と、目標取得部323と、データ補正部324と、画像生成部320とを備える。取得部310は、被検眼Eの眼底の同一位置を走査するように制御された測定光に基づいて得られた眼底の断層の情報を示す断層データを複数取得する。目標取得部323は、モーションコントラストを算出するために用いられる、断層データにおけるパラメータの分布の目標を取得する。なお、本実施例では、当該パラメータとして断層データの輝度を用いる。目標取得部323は、目標として、被検者ごとに定められた分布又は複数の被検者について統計的に定められた分布である所定の分布を取得する。データ補正部324は、複数の断層データのうち少なくとも1つの断層データにおけるパラメータの分布を目標に近づけるように補正する。画像生成部320は、データ補正部324により補正された少なくとも1つの断層データを含む複数の断層データを用いて算出されたモーションコントラストに基づいて、モーションコントラスト画像を生成する。
制御部300では、モーションコントラストを生成するための元データである断層データにおけるパラメータの分布を目標に近づけるように補正する。このため、当該パラメータ毎の強弱が抑えられる。従って、制御部300は、モーションコントラストの算出に用いられる断層データの強弱に起因するOCTA画像の明暗を抑制し、高画質なOCTA画像を得ることができる。
なお、上記方法で補正を行う際、補正するAスキャンデータの平均値や標準偏差が目標に対して著しく小さい場合には、式2におけるゲインGa,Gbの値が大きくなり、OCTA画像上にノイズが目立つ可能性がある。また、補正するAスキャンデータの平均値や標準偏差が目標に対して著しく大きい場合には、OCTA画像における血管網が不明瞭になる可能性がある。これらの対策としては、ゲインGa,Gbの上限及び下限を設定し、ゲインGa,Gbがそれら上限や下限を超える場合には、ゲインGa,Gbを上限値又は下限値で置き換えることができる。
さらに、本実施例ではAスキャンデータ毎での補正を例に挙げたが、補正の対象はこれに限られない。例えば、Bスキャンデータや三次元ボリュームデータ全体での分布を目標の分布に近づくように補正してもよい。また、Bスキャンデータを短冊状に分割した複数の連続したAスキャンデータのセットの分布を補正してもよいし、同様に複数の連続したBスキャンデータのセットの分布を補正してもよい。さらに、モーションコントラストデータを生成する際に用いる複数の三次元ボリュームデータを組み合わせた、例えば加算平均した分布を補正してもよい。また、モーションコントラストデータ生成方法の一つであるSSADAを用いることで生成できる複数の断層画像を組み合わせた分布を補正してもよい。ここでは、これらの分布も断層データの分布に含まれるものとする。なお、これらの場合には、目標となる分布もこれら断層データの分布に対応する分布、すなわちBスキャンデータや三次元ボリュームデータ、複数の連続したAスキャンデータのセット等の分布とする。このような方法を実施することでも、制御部300は、断層データの強弱に起因するOCTA画像の明暗を抑制し、高画質なOCTA画像を生成することができる。さらに、比較的広い範囲のデータについてまとめて補正することで、局所的な補正に比べ、断層データの過補正を低減することができる。
また、本実施例では、三次元ボリュームデータに含まれる各Aスキャンデータの分布を補正するとしたが、補正の対象はこれに限られない。例えば、三次元ボリュームデータに含まれるAスキャンデータのうち、Aスキャンデータに含まれる輝度の統計値が所定の閾値未満であるAスキャンデータの分布のみを補正するようにしてもよい。なお、当該統計値は、合計値、平均値、中央値、最大値、分散値、又は最頻値及びこれらの組み合わせ等であってよい。なお、補正対象がBスキャンデータ等の分布である場合には、データ補正部324は、補正対象の単位(Bスキャンデータ等)に応じて、補正対象に含まれる輝度の統計値が所定の閾値未満である補正対象の分布のみを補正することができる。なお、所望の構成に応じて、下限の閾値だけでなく、上限の閾値を設定し、上限を上回る場合にも補正を行うこととしてもよい。
また、データ補正部324が、補正対象の候補となるAスキャンデータの分布と目標の分布とを比較し、分布間の統計値の差が所定の閾値より大きい場合にのみ、対象のAスキャンデータの分布を補正してもよい。分布間の統計値の差としては、例えば対比する断層データの分布における平均値、最大値、最頻値、分散値、及び頻値幅等のうちの少なくとも1つの差を用いてよい。この場合には、目標の分布に対して、断層データの分布がある程度以上異なる断層データに対してのみ補正を行うため、補正に係る計算量を少なくし、処理時間を短くすることができる。なお、データ補正部は、補正対象の候補となるAスキャンデータの分布と比較するものとして目標の分布以外に、三次元ボリュームデータから選択された任意のテンプレートとなる断層データの分布と比較してもよい。この場合のテンプレートとなる断層データは、三次元ボリュームデータのうち、輝度値の平均値が三次元ボリュームデータ全体の輝度の平均値より高いものや、三次元ボリュームデータ全体のうち最も輝度値が高いもの等とすることができる。
さらに、本実施例では、データ補正部324は、Aスキャンデータ全体の分布を補正したが、解析部322で解析された網膜の深度範囲のみのAスキャンデータの分布を補正してもよい。また、データ補正部324は、生成範囲上端522及び生成範囲下端523の間の範囲のAスキャンデータの分布を補正してもよい。
また、OCTによる撮影では、被検眼Eが撮影中に動いた場合などには所望の位置での正確な撮影が行えないため、当該所望の位置を再スキャンする場合がある。この場合には、再スキャン時の撮影状況が元のスキャン時の撮影状況から変化し、断層画像の明るさに明暗が生じる可能性がある。そこで、再スキャンにより断層画像の明るさに明暗が発生することの対策として、再スキャン部分のみに本実施例による補正処理を実施してもよい。この場合であっても、補正する対象はAスキャンデータの分布に限られず、Bスキャンデータの分布であってもよいし、再スキャン部分を含んだ複数のAスキャンデータやBスキャンデータ、その他上記の断層データの分布であってよい。
本実施例では、目標とする平均値及び標準偏差を設定して、Aスキャンデータの分布における平均値及び標準偏差を目標に近づけるように補正したが、目標に近づける対象はこれに限られない。例えば、標準偏差を維持して平均のみを補正してもよい。また、平均値、中央値、最大値、最頻値、分散値、及び頻度幅のうちの少なくとも1つを目標に近づけるように補正してもよい。なお、目標は、予め用意された値として設定する以外に、制御部300の外部から入力して設定する方法でもよい。
(実施例2)
実施例1では、データ補正部324が、対象のAスキャンデータの分布全体の平均値と標準偏差を目標の平均値と標準偏差に近づけるように補正した。これに対し、実施例2では、対象のAスキャンデータの分布内の無信号部分を除いた部分を補正対象とする。以下、図8(a)乃至(c)を参照して、実施例2に係る制御部について説明する。なお、本実施例に係る制御部の構成要素は、実施例1に係る制御部300と同様であるため、同じ参照符号を用いて説明を省略する。以下、本実施例に係る制御部について、実施例1に係る制御部300との違いを中心に説明する。
図8(a)乃至(c)は、実施例2に係る補正の対象を説明するための図である。図8(a)乃至(c)は図7(a)乃至(c)にそれぞれ対応する。また、本実施例による補正の対象を説明するため、図8(a)乃至(c)には、ノイズ閾値Dthが示されている。図8(a)乃至(c)において、横軸は輝度値で、縦軸は各輝度での頻度数を示す。
網膜断層の撮影では、取得される断層データに多くの無信号部分が含まれる。このような無信号部分にはノイズが含まれている。上述のように、断層データにノイズが含まれると、断層データに基づくモーションコントラストもノイズ部分を測定対象の時間的な変化として表してしまう。ここで、断層データに含まれるノイズ部分もデータ補正部で補正してしまうと、当該ノイズ部分に含まれるノイズを増幅してしまう場合がある。この場合には、補正後のデータに基づくOCTA画像においてもノイズが増大してしまう。そこで、本実施例では、断層データの分布における無信号部分以外の部分を補正対象とし、ノイズ部分の分布を補正してノイズを増幅することを防ぐ。
本実施例に係るデータ補正部324は、対象のAスキャンデータの分布に対して目標とするAスキャンデータの平均値Av_tを設定し、各Aスキャンデータの分布を目標に近づくように補正する。その際、下記式3に従って、図8(c)に示すように、ノイズ閾値Dth以上の輝度値のデータのみを補正する。
データ補正部324は、このように補正を行うことで、補正前のAスキャンデータの分布におけるノイズ閾値Dth未満の値を変えずに、ノイズ閾値Dth以上の値を目標とする平均の分布を持つデータへ変換することができる。このため、本実施例に係る制御部は、データの補正によってOCTA画像におけるノイズが増大することを防ぐことができる。
上記のように、本実施例に係るデータ補正部324は、断層データのパラメータの分布のうち、ノイズ閾値以上の値を有するパラメータの部分の分布を補正する。制御部は、このように補正した断層データに基づいてモーションコントラストデータを生成することで、ノイズを増幅することなく、断層画像の明るさに起因するOCTA画像への影響を抑制し、より高画質なOCTA画像を得ることができる。なお、ノイズ閾値未満の信号をモーションコントラストデータの算出から除去してもよい。
ノイズ閾値Dthは、被検眼Eを断層撮影する撮影光学系200毎(撮影装置毎)に予め記憶部340に記憶されていてもよいし、撮影光学系200の起動時や撮影開始時に測定光を遮断して取得したバックグラウンドデータに基づいて設定されてもよい。さらに、ノイズ閾値Dthは、複数の三次元ボリュームデータに含まれる断層データの、モーションコントラストデータの算出に用いられるパラメータの値及び該パラメータの頻度のいずれか一方に基づいて設定されてもよい。この場合、例えば、データ補正部324は、補正対象の断層データのパラメータの値又は頻度の下位10パーセンタイルを閾値として設定してもよい。なお、当該パーセンタイルの値は例示であり、所望の構成に応じて任意に設定されてよい。
また、実施例1と同様に、データ補正部324が補正する対象はAスキャンデータに限られず、Bスキャンデータや三次元ボリュームデータ等であってもよい。
(実施例3)
実施例1及び2では、データ補正部324は、予め設定された目標となる平均値と標準偏差に近づくように断層データの分布の補正を行った。これに対し、実施例3では、再構成部321で生成した三次元ボリュームデータ内から、目標となる平均値と標準偏差を算出し、算出した目標に近づくように断層データの分布を補正する。以下、図9を参照して、本実施例に係る制御部について説明する。なお、本実施例に係る制御部の構成要素は、実施例1に係る制御部300と同様であるため、同じ参照符号を用いて説明を省略する。以下、本実施例に係る制御部について、実施例1に係る制御部300との違いを中心に説明する。
図9は、実施例3に係るOCTA画像生成処理のフローチャートである。なお、図9に示すフローチャートのうち、ステップS902及びS903以外の工程は、実施例1に係るOCTA画像生成処理の工程と同様であるため、説明を省略する。
ステップS901で、取得部310が三次元ボリュームデータを取得すると、処理はステップS902に移行する。ステップS902では、目標取得部323が、三次元ボリュームデータの中から、信号強度が低いBスキャンデータを除外した、Bスキャンデータを参考データとして選出する。本実施例では、Bスキャンデータの網膜部分(ILMからBM)の輝度の平均値が、三次元ボリュームデータにおける全ての網膜部分の輝度の平均値よりも大きいBスキャンデータを参考データとして選出する。
最初に、目標取得部323は、式4に従って、三次元ボリュームデータに含まれる各AスキャンデータのILMからBMまでの輝度の平均値を求める。A_av(x、y)はy番目のBスキャンの中のx番目のAスキャンの平均値を表す。各Aスキャン内の各深度データZ(i,x,y)をILMの位置Pilm(x,y)からBMの位置Pbm(x,y)まで足し合わせる。その足し合わせた合計を、データ数で割ることでA_av(x,y)を算出する。
次に、目標取得部323は、式5に従って、各Bスキャンデータの輝度の平均値を求める。B_av(y)は三次元ボリュームデータ内のy番目のBスキャンデータの輝度の平均値を表す。ここでは、式4で求めた、y番目のBスキャンデータ内の全てのAスキャンデータの輝度の平均値を足し合わせ、Bスキャンデータ内のAスキャンデータ数mで割ることでB_av(y)を算出する。
また、目標取得部323は、数6に従って、三次元ボリュームデータ全体のILMからBMまでの輝度の平均値Av_allを求める。ここでは、数5で求めた、三次元ボリュームデータ内の全てのBスキャンの輝度の平均値を足し合わせて、三次元ボリュームデータ内のBスキャンの数nで割ることでAv_allを求める。
最後に、目標取得部323は、式7を満たす、すなわち、Bスキャンデータの平均値B_av(y)が三次元ボリュームデータ全体の平均値Av_allよりも大きい場合、そのBスキャンを参考データとして選出する。
これにより、三次元ボリュームデータに含まれるn個のBスキャンデータから、信号強度が低いBスキャンデータを除外したBスキャンデータを参考データとして選出できる。特に、網膜部分のみの輝度値を上記演算に使用することで、黄斑や視神経乳頭など非網膜部分が多くなるBスキャンデータが除外されることなく、参考データを選出することができる。
次に、ステップS903において、目標取得部323は、参考データとして選出したBスキャンデータを用いて、目標となるAスキャンデータの平均値Av_tや標準偏差σ_tを算出する。目標取得部323は、式8に従って、選出された各Bスキャンデータの輝度の平均値B_av’の合計を選出されたBスキャン数sで割ることで、目標となる平均値Av_tを算出することができる。
また、目標取得部323は、式9に従って、参考データとして選出された各Bスキャンデータの輝度の各平均値と式8で求めた平均値Av_tの差の2乗を全て合計して、選出されたBスキャン数sで割ることで、標準偏差δ_tを算出する。
以上により、目標取得部323は、目標となる平均値Av_t及び標準偏差σ_tを求める。目標となる平均値Av_t及び標準偏差σ_tが求められたら、処理はステップS904に移行する。ステップS904以降の処理は、実施例1に係る処理と同様であるため、説明を省略する。
なお、目標取得部323が求める平均値Av_tや標準偏差σ_tは、後に実施するデータ分布の補正(S905)で使用するデータと同じ範囲のデータを使って求めることができる。例えば、目標取得部323は、データ補正部324が網膜部分のみの断層データの分布を補正する場合は網膜部分の平均値や標準偏差を求め、非網膜部分も含めた分布を補正する場合は非網膜部分も含めた全体の平均値や標準偏差を求めることができる。
また、目標の算出に関する工程(ステップS902及びS903)は、データ分布の抽出(ステップS904)に関する工程と同時又は当該工程の後に行われてもよい。
上記のように、本実施例に係る目標取得部323は、複数の三次元ボリュームデータのうちの少なくとも1つの断層データに基づいて目標を設定する。本実施例に係る制御部は、このように設定された目標(平均値Av_t、標準偏差σ_t)に近づくようにAスキャンデータの分布を補正する。この場合には、三次元ボリュームデータ内の断層データの分布を、同じ三次元ボリュームデータ内の信号強度の高い理想的なデータの分布を目標として補正することで、三次元ボリュームデータ内の断層データ毎の強弱が抑えられる。そのため、制御部は、断層データの強弱に起因する明暗の発生をより抑えたOCTA画像を生成することができる。また、取得された三次元ボリュームデータから目標を求めることで、疾病眼や撮影条件の違いによる断層データの変化に対し、より実際の状況に沿った効果的な補正を行うことができる。
なお、本実施例によるOCTA画像生成処理に実施例2で補正方法を適用する場合には、ノイズ閾値Dth以上の輝度を有する断層データの平均値Av_tや標準偏差σ_tを算出して補正を行うことで、補正の対象についてより適切な目標を設定できる。
また、本実施例に係るBスキャンデータの選出において、網膜部分の輝度の平均値を算出したが、輝度の平均値は、網膜内の特定の層から算出してもよいし、非網膜部分を含むAスキャンデータ全体から算出してもよい。
また、本実施例では、三次元ボリュームデータにおける全ての網膜部分の輝度の平均値よりも大きいBスキャンデータを参考データとして選出した。しかしながら、参考データの選出方法はこれに限られず、例えば、輝度値の高い順における上位のBスキャンデータを選出してもよい。また、輝度分布を求めて分布が最も多く集中しているBスキャンデータを選出してもよい。これら方法によっても、信号強度の低い断層データを含まない部分の断層データを選出することができる。他にも、再スキャンにより、断層画像の明るさに明暗が発生することの対策として、再スキャン部分又は元のスキャンの部分のみから参考データを選出してもよい。
さらに、本実施例では、Bスキャンデータの輝度の平均値が、三次元ボリュームデータにおける全ての輝度の平均値よりも大きいBスキャンデータを参考データとして選出した。しかしながら、目標を求めるための参考データの選出の基準はこれに限られない。例えば、目標取得部323は、三次元ボリュームデータのうち、輝度の値の平均値、中央値、最大値、最頻値、分散値、及び頻度幅のうちのいずれか1つが閾値より高いBスキャンデータを参考データとして選出してよい。当該閾値は、所定の閾値でもよいし、本実施例における三次元ボリュームデータにおける全ての輝度の平均値のように、三次元ボリュームデータのうちから算出された閾値でもよい。
なお、実施例1と同様に、本実施例に係る補正の対象はAスキャンデータに限られず、上述のようにBスキャンデータや三次元ボリュームデータ全体等での分布を目標の分布に補正してもよい。
また、実施例1と同様に、データ補正部324は、三次元ボリュームデータに含まれるAスキャンデータのうち、Aスキャンデータに含まれる輝度の統計値が所定の閾値未満であるAスキャンデータの分布のみを補正するようにしてもよい。なお、当該統計値は、合計値、平均値、中央値、最大値、分散値、又は最頻値等であってもよい。また、データ補正部324は、補正対象がBスキャンデータ等の分布である場合には、補正対象の分布の単位に応じて、補正対象に含まれる輝度の統計値が所定の閾値未満である補正対象の分布のみを補正することができる。
さらに、本実施例では、目標取得部323が、Bスキャンデータの平均値を求めて、目標の算出に用いる参考データとなるBスキャンデータの選出を行ったが、参考データの選出を行う際に平均値を求めるデータの単位はこれに限られない。例えば、目標取得部323は、Aスキャンデータ毎や三次元ボリュームデータ毎に平均値を求めて参考データを選出してもよい。また、目標取得部323は、Bスキャンデータを短冊状に分割した複数の連続したAスキャンデータ毎や、同様の複数の連続したBスキャンデータ毎に平均値を算出して参考データを選出してもよい。さらに、目標取得部323は、同一範囲を複数回撮影して得られた複数の三次元ボリュームデータの平均値を求めて参考データを選出してもよい。これらの場合にも、目標取得部323は、選出された参考データに基づいて目標を算出する。
また、本実施例に係る目標の設定方法では、目標取得部323は、三次元ボリュームデータ内の断層データについて1つの目標を求めているが、特定の範囲毎の断層データについて別個の目標を求めてもよい。例えば、目標取得部323は、補正する対象のAスキャンデータ又はBスキャンデータと隣接する1つ以上のAスキャンデータ群又はBスキャンデータ群から目標を求めてもよい。同様に、補正する対象の複数のAスキャンデータ又はBスキャンデータに隣接する複数のAスキャンデータの群又は複数のBスキャンデータの群から目標を求めてもよい。これらの場合の例を図10(a)乃至(d)を参照して説明する。なお、図10(a)乃至(c)における各スキャンラインの幅は説明のために実際より広く記載している。実際には、各隣接するスキャンライン同士の間隔は非常に狭いため、隣接するスキャンライン又はスキャンライン群間での断層データの分布は、本来、略等しくなる。
図10(a)は、補正する対象のAスキャンデータと隣接するAスキャンデータ群から目標を求める場合を示す。この場合、目標取得部323は、補正する対象であるAスキャンデータLa2に隣接するAスキャンデータ群La1,La3を参考データとして選出する。すなわち、AスキャンデータLa2を取得したAスキャンラインに隣接するAスキャンライン群から取得したAスキャンデータ群La1,La3を参考データとして選出する。そして、Aスキャンデータ群La1,La3から目標となる平均値及び標準偏差を求める。なお、平均値及び標準偏差は上記方法と同様に求める。同様に、図10(b)は、補正する対象のBスキャンデータと隣接するBスキャンデータ群から目標を求める場合を示す。この場合、BスキャンデータLb2を取得したBスキャンラインに隣接するBスキャンライン群から取得したBスキャンデータ群Lb1,Lb3を参考データとして選出する。そして、Bスキャンデータ群Lb1,Lb3から目標となる平均値及び標準偏差を求める。
同様に、図10(c)は、補正する対象の複数のAスキャンデータと隣接する複数のAスキャンデータの群から目標を求める場合を示す。この場合、目標取得部323は、補正する対象である複数のAスキャンデータAa2に隣接する複数のAスキャンデータの群Aa1,Aa3を参考データとして選出する。すなわち、複数のAスキャンデータAa2を取得した領域に隣接する当該領域に対応する大きさ領域から取得したAスキャンデータ群Aa1,Aa3を参考データとして選出する。そして、複数のAスキャンデータの群Aa1,Aa3から目標となる平均値及び標準偏差を求める。同様に、図10(d)は、補正する対象の複数のBスキャンデータと隣接する複数のBスキャンデータの群から目標を求める場合を示す。この場合、目標取得部323は、複数のBスキャンデータAb2を取得した領域に隣接する当該領域に対応する大きさ領域から取得したBスキャンデータの群Ab1,Ab3を参考データとして選出する。そして、複数のBスキャンデータの群Ab1,Ab3から目標となる平均値及び標準偏差を求める。
このように、目標取得部323は、目標を、補正するパラメータの分布を有する断層データに隣接する断層データに基づいて設定することができる。この場合、データ補正部324は、黄斑部や乳頭部を含むBスキャンデータ等の、断層データの分布が他箇所の断層データの分布と少し異なる部分の補正において、黄斑部や乳頭部の分布の特徴を考慮して補正を行うことができる。このため、制御部は、より実際の状況に沿った効果的な補正を行うことができる。
なお、これらの場合には、データ補正部324が、補正対象の候補となる断層データの分布と隣接する断層データ群の分布を比較し、分布間の統計値の差が所定の閾値より大きい場合にのみ、対象の断層データの分布を補正してもよい。分布間の統計値の差としては、例えば対比する断層データの分布における平均値、最大値、最頻値、分散値、及び頻値幅等のうちの少なくとも1つの差を用いてよい。この場合には、隣接する断層データ群に対して、断層データの分布がある程度以上異なる断層データに対してのみ補正を行うため、補正に係る計算量を少なくし、処理時間を短くすることができる。
また、上記の場合と同様に、目標取得部323は、補正する対象の三次元ボリュームデータと撮影時間が時間的に連続する1つ以上の三次元ボリュームデータ群から目標を求めてもよい。
なお、上記実施例による断層データの分布の補正は、撮影光学系200で取得した干渉信号から直接生成された断層データの分布の補正に限られない。断層データの他の補正、例えば、撮影装置のロールオフ特性により生じる深度方向の信号減衰を補償するための補正処理(以下、ロールオフ補正という。)を適用した後の断層データの分布を補正してもよい。
以下、ロールオフ補正の処理について簡単に説明する。ロールオフ補正を行うための深度方向の補正係数H(z)は、深度位置zを引数とする正規化ロールオフ特性関数をRoF(z)とした場合に、例えば式11のように表せる。
ここで、BGa及びσは、それぞれ、被検査物がない状態で取得したBスキャンデータ全体の輝度分布BGに関する統計値である平均値及び標準偏差を示す。また、BGa(z)及びσ(z)は、被検査物がない状態で取得したBスキャンデータにおいて各深度位置(z)で算出した、z軸に直交する方向に関する輝度分布の平均値及び標準偏差を示す。さらに、z0はBスキャン範囲に含まれる基準の深度位置を示す。なお、z0は任意の定数を設定してよいが、ここではzの最大値の1/4の値に設定するものとする。なお、BGa及びσは、それぞれ、被検査物がない状態で複数回取得したAスキャンデータ全体の輝度分布BGに関する統計値である平均値及び標準偏差を示してもよい。同様に、BGa(z)及びσ(z)は、被検査物がない状態で複数回取得したAスキャンデータにおいて各深度位置(z)で算出した、z軸に直交する方向に関する輝度分布の平均値及び標準偏差を示してもよい。
被検査物がない状態で取得したBスキャンデータにおける各深度位置(z)での輝度の平均値BGa(z)の一例を図11(a)に示す。また、平均値BGa(z)に対して補正係数H(z)を乗じて深度方向の輝度減衰を補償した結果の一例を図11(b)に示す。図11(a)及び(b)において、横軸は深度位置z、縦軸は輝度に対応する複素数データの振幅を示している。
なお、ロールオフ補正後の三次元ボリュームデータIh(x,y,z)は以下の式12のように表せる。
このようなロールオフ補正を行うことで、撮影装置のロールオフ特性により生じる深度方向の信号減衰を低減した断層データを取得することができる。なお、上記実施例に係る制御部300では、再構成部321から取得した断層データに基づいて、目標取得部323が補正係数H(z)を求める。その後、データ補正部324が補正係数H(z)に基づいてロールオフ補正を行い、ロールオフ補正後の断層データの分布に対して上記実施例に係る補正を行う。
このように、上記実施例に係る断層データの分布の補正をロールオフ補正等の他の補正手法と組み合わせて行ってもよい。なお、ロールオフ補正の式は上記に限らず、任意の公知の補正式を用いてよい。また、ロールオフ補正に用いる断層データのパラメータも、モーションコントラストの算出に用いるパラメータに応じたものを用いることができる。
(実施例4)
実施例3では再構成部321で生成した三次元ボリュームデータ内からパラメータの分布の目標(平均値及び標準偏差)を算出し、目標に近づくように断層データのパラメータの分布を補正した。これに対し、実施例4では、三次元ボリュームデータに基づいて眼底の正面方向に投影した断層データの概略値を算出して補正係数を求め、求めた補正係数に基づいて断層データのパラメータを補正する。
OCTによる断層画像の撮影では、スキャン順序や固視不良等の要因で本来のスキャンから再スキャンまでの時間間隔が長くなり、その間に被検眼の状態(瞼や睫毛、瞳孔の位置等)が変化することがある。この場合には、撮影状況の変化等に応じて、取得される干渉信号の信号強度が変化し、干渉信号に基づいて生成される断層画像において画素値の強弱が生じてしまう。このような干渉信号に基づく断層データを用いると、画素値の強弱に起因した低輝度領域を含む断層像やモーションコントラストデータが生成され、観察や解析の妨げになる。
そこで、本実施例では、断層データの概略値の分布に基づいて断層データの補正係数を求め、補正係数を用いて断層データのパラメータを補正することで、断層画像の部分的な明暗に影響されず、高画質なOCTA画像を得る。
より具体的には、本実施例では、第1の概略パラメータとして、三次元ボリュームデータに基づく眼底正面の投影像を二次元方向に平滑化した断層データのパラメータを求める。さらに、第2の概略パラメータとして、当該投影像を一次元方向(主走査の軸方向)に平滑化した断層データのパラメータを求める。その後、第1の概略パラメータを第2の概略パラメータで除算して補正係数を算出する。算出した補正係数を用いて断層データのパラメータを補正し、補正された断層データのパラメータを用いてモーションコントラストを算出する。これにより、低輝度領域に対応する断層データが概略パラメータに基づく補正係数で補正されるため、断層画像の部分的な明暗に影響されず高画質なOCTA画像を得ることができる。
以下、図12乃至14(c)参照して、本実施例に係る制御部について説明する。なお、本実施例に係る制御部の構成要素は、実施例3に係る制御部300と同様であるため、同じ参照符号を用いて説明を省略する。以下、本実施例に係る制御部について、実施例3に係る制御部300との違いを中心に説明する。
図12は、実施例4に係るOCTA画像生成処理のフローチャートである。なお、図12に示すフローチャートのうち、ステップS1210、ステップS1270、及びステップS1280の工程は実施例3に係るOCTA画像生成処理の対応する工程と同様であるため、説明を省略する。
図13(a)乃至(f)は、それぞれ、本実施例に係るOCTA画像生成処理に関するOCTA画像や投影像等の一例を示す。なお、図13(a)乃至(f)に示される画像はそれぞれ同一の三次元ボリュームデータに基づいて生成されるものとする。図13(a)は本実施例による処理を適用せずに生成したOCTA画像1301を示す。図13(b)は、眼底正面に対応するOCT投影像Phを示す。図13(c)はOCT投影像Phを二次元方向に平滑化した第1の概略パラメータS2d(x,y)を示す。図13(d)はOCT投影像Phを一次元方向(主走査方向)に平滑化した第2の概略パラメータS1d(x,y)を示す。図13(e)は、第1の概略パラメータS2d(x、y)を第2の概略パラメータS1d(x,y)で除算して得られる補正係数C(x,y)を示す。図13(f)は、本実施例に係るOCTA画像生成処理によって生成されたOCTA画像1304を示す。ここで、(x,y)は眼底正面に対応するxy平面内の各画素位置を示す。
図13(b)を参照すると、白矢印で指し示すようにOCT投影像Ph内に低輝度領域1312が存在しており、副走査方向(縦方向)に輝度の段差が生じている。このような低輝度領域1312を含む断層データを用いると、図13(a)の白矢印に示すような低輝度領域1311を含むOCTA画像1301が生成され、観察や解析の妨げになる。そのため、本実施例では、断層データの概略値分布を算出して得られる概略パラメータを用いて補正係数を求め、補正係数を用いて断層データを補正することで、低輝度領域の発生を低減させる。ここで、断層データの概略値分布とは、断層データを平滑化又は後述のモルフォロジー演算によって変換した断層データを指し、例えば、図13(c)や図13(d)に示される概略パラメータ等に相当する。
まず、ステップS1210において、取得部310が三次元ボリュームデータを取得したら、処理はステップS1220に移行する。ステップS1220では、目標取得部323が、OCT装置1のロールオフ特性による信号減衰を補償するために、上述の手法によりロールオフ補正のための深度方向の補正係数H(z)を算出する。
次に、ステップS1230では、目標取得部323が、三次元ボリュームデータに基づく眼底正面の投影像を二次元方向に平滑化し、第1の概略パラメータを算出する。具体的には、目標取得部323は、ロールオフ補正を適用した後の三次元ボリュームデータIh(x,y,z)を深度方向に投影して、図13(b)に示されるような眼底正面に対応するOCT投影像Phを生成する。目標取得部323は、生成したOCT投影像Phの各画素に対し二次元方向に平滑化を行うことにより、図13(c)に示されるような断層データのパラメータの第1の概略パラメータS2d(x,y)を算出する。
なお、本実施例では、三次元ボリュームデータの投影処理として、眼底正面に対応する面内の各画素に対応する深さ方向の断層データの平均値を該画素の画素値としている。しかしながら、投影処理はこのような平均値投影に限られず、任意の公知の投影方法を用いてよい。例えば、各画素に対応する深さ方向の断層データの、中央値や最大値、最頻値等を画素値としてもよい。さらに、背景輝度値に相当するノイズ閾値を超えた画素の輝度値のみを投影することで、背景領域の影響を除いた(眼底組織の輝度値に由来する)画素値を取得できる。また、本実施例では概略値分布を算出する処理の例として平滑化処理を行ったが、後述するようにClosing処理やOpening処理等のモルフォロジー演算を行ってもよい。また平滑化処理は任意の空間フィルタを用いて平滑化もよいし、高速フーリエ変換(FFT)等を用いて断層データを周波数変換した上で、高周波成分を抑制することで平滑化してもよい。FFTを用いる場合、畳み込み演算が不要になるため、高速に平滑化処理を実行できる。
ステップS1240では、目標取得部323が、OCT投影像Phの各画素に対し測定光の主走査方向(一次元方向)に関する概略値分布を算出する処理(平滑化処理やモルフォロジー演算)を行い、第2の概略パラメータS
1d(x,y)を算出する。その後、ステップS1250では、目標取得部323は、式13に従って、第1の概略パラメータS
2d(x,y)を第2の概略パラメータS
1d(x,y)で除算することで、図13(c)に示されるような補正係数C(x,y)を算出する。
図14(a)、(b)、及び(c)は、それぞれ図13(c)、(d)、及び(e)において副走査方向(縦方向)に引いた白点線1321,1322,1323に沿った断層データのパラメータのプロファイルを示している。図14(a)乃至(c)においては、OCT投影像Phの低輝度領域1312に対応する位置のプロファイルが円1401,1402,1403によって示されている。目標取得部323は、上記処理で、円1402で囲まれるOCT投影像Phの低輝度領域1312に対応する位置のプロファイルが円1401で囲まれる第1の概略パラメータS2d(x,y)のプロファイルに近づくように、補正係数C(x,y)を決定する。円1403は、低輝度領域1312に対応する位置の補正係数C(x,y)のプロファイルを示している。
ステップS1260では、データ補正部324が、ステップS1220で決定した深度方向の補正係数H(z)とステップS1250で算出した面内方向の補正係数C(x,y)を用いて断層データのパラメータを補正する。具体的には、データ補正部324は、元の三次元ボリュームデータ(断層データ)をIo(x,y,z)、補正後の断層データをIc(x,y,z)とすると、式14に従って断層データのパラメータを補正する。
以降の処理は、実施例3と同様であるため説明を省略する。本実施例によるOCTA画像生成処理によれば、図13(f)に示すような断層データの強弱に起因する明暗の発生を抑えたモーションコントラスト画像であるOCTA画像を生成できる。
上記のように、本実施例に係る制御部300は、取得部310と、目標取得部323と、データ補正部324と、画像生成部320とを備える。取得部310は、被検眼Eの眼底の同一位置を走査するように制御された測定光に基づいて得られた眼底の断層の情報を示す断層データを複数取得する。目標取得部323は、断層データにおけるモーションコントラストを算出するために用いられるパラメータを第1の次元で平滑化又はモルフォロジー演算により変換した第1の概略パラメータを算出する。また、目標取得部323は、断層データにおけるパラメータを第1の次元よりも低い第2の次元で平滑化又はモルフォロジー演算により変換した第2の概略パラメータを算出する。その後、目標取得部323は、第1の概略パラメータと第2の概略パラメータとの演算により、補正係数を取得する。なお、本実施例では、当該パラメータとして断層データの輝度を用いる。データ補正部324は、補正係数を用いて複数の断層データのうち少なくとも1つの断層データのパラメータを補正する。画像生成部320は、データ補正部324により補正された前記少なくとも1つの断層データを含む複数の断層データを用いて算出されたモーションコントラストに基づいて、モーションコントラスト画像を生成する。
より具体的には、目標取得部323は、眼底の正面に対応する断層データにおけるパラメータを二次元方向に平滑化又はモルフォロジー演算により変換して第1の概略パラメータを算出する。また、目標取得部323は、眼底の正面に対応する断層データにおけるパラメータを測定光の主走査方向に(一次元方向に)平滑化又はモルフォロジー演算により変換して第2の概略パラメータを算出する。その後、目標取得部323は、第1の概略パラメータを第2の概略パラメータで除算することで、補正係数を取得する。
ここで、断層データにおけるパラメータを平滑化又はモルフォロジー演算すると、隣接する断層データ同士のパラメータの値の差が減少したパラメータに変換することができる。そのため、目標取得部323は、上記構成により、断層データにおけるパラメータを第1の方向及び第2の方向において隣接するパラメータの値の差が減少するように変換した第1の変換後パラメータを算出することができる。また、目標取得部323は、断層データにおけるパラメータを第1の方向において隣接するパラメータの値の差が減少するように変換した第2の変換後パラメータを算出することができる。その後、目標取得部323は、第1の概略パラメータとして求めた第1の変換後パラメータを第2の概略パラメータとして求めた第2の変換後パラメータで除算することで、補正係数を取得することができる。
本実施例による制御部300によれば、モーションコントラストを生成するための元データである断層データにおけるパラメータを、パラメータの概略値分布に基づいて補正する。このため、パラメータ毎の強弱が抑えられる。従って、断層データの強弱に起因する明暗の発生を抑えたモーションコントラスト画像であるOCTA画像を生成できる。
また、本実施例では、目標取得部323は、眼底を撮影する撮影光学系200のロールオフ特性に基づく深度方向の信号減衰を補償するロールオフ補正処理後の断層データを用いて補正係数を取得する。このため、撮影光学系200のロールオフ特性に基づく深度方向の信号減衰の影響も低減された、モーションコントラスト画像であるOCTA画像を生成することができる。
なお、本実施例では、ステップS1220において深度方向の補正係数H(z)の算出に止め、ステップS1260で元の三次元ボリュームデータIo(x,y,z)に対して式14に従って補正処理を行う場合について説明した。しかしながら、ロールオフ補正のタイミングはこれに限られるものではない。例えば、ステップS1220で式12に従ってロールオフ補正を行った三次元ボリュームデータIh(x,y,z)を生成しておき、ステップS1250で三次元ボリュームデータIh(x,y,z)に対して式15に従った補正処理を行ってもよい。
また、本実施例では、低輝度領域を低減するための補正とともにロールオフ補正を行っているが、ロールオフ補正は行わなくてもよい。この場合には、ステップS1220を省略するとともに、ステップS1260において、深度方向の補正係数H(z)を省略する。また、ステップS1230及びステップS1240において、ロールオフ補正がされていない、三次元ボリュームデータに基づいて第1の概略パラメータ及び第2の概略パラメータを算出することとなる。
また、本実施例では、OCT投影像Phを生成し、補正係数C(x,y)を二次元の係数として生成したが、本発明はこれに限定されない。例えば、三次元ボリュームデータを三次元で平滑化処理することにより得られる断層データのパラメータの概略値分布を第1の概略パラメータとして設定してもよい。この場合、補正したい輝度の明暗(y軸方向の輝度差)に対する補正効果が高くなるように断層データをx軸方向及び深度(z軸)方向の二次元方向に平滑化処理することで得られる断層データのパラメータの概略値分布を第2の概略パラメータとして設定する。その後、第1の概略パラメータを第2の概略パラメータで除算した値に基づき三次元の補正係数を生成し、断層データを補正してもよい。
なお、本実施例では概略値分布を算出する処理の例として平滑化処理を実施したが、概略値分布を算出する処理はこれに限られない。本明細書における概略値分布算出処理には、例えば、FFTを用いた平滑化処理やモルフォロジー演算を用いた処理等の既知の任意の概略値分布算出処理が含まれる。例えば、平滑化処理の代わりにモルフォロジー演算の1種であるClosing処理(最大値演算後に最小値演算を実施する処理)を行い、モルフォロジー処理後のパラメータを概略パラメータとして設定してもよい。例えば低輝度領域の幅が広い場合には、該Closing処理に基づいて概略パラメータを設定することにより概略パラメータが過度に低く設定されることを防止できる。また、概略値分布を算出する処理として、平滑化処理やモルフォロジー演算等を組み合わせて実施してもよい。
また、本実施例では、補正したいパラメータの変動パターンとして副走査方向にのみ生じる輝度の明暗を例に説明したが、補正できるパラメータの変動パターンはこれに限定されるものではない。第1の概略パラメータに対してより小さな局所変化を示す変動パターンであれば、任意の位置又は方向に生じる変動パターンを補正することができる。この場合には、補正したい変動パターンに応じて第2の概略パラメータを算出する際の平滑化又はモルフォロジー演算を行う位置や方向を変更することで、任意の位置や方向のパラメータの変動パターンを補正することができる。
さらに、本実施例では、補正係数C(x,y)を求める際の演算として、第1の概略パラメータS2d(x,y)を第2の概略パラメータS1d(x,y)で除算することとしているが、当該演算は除算に限られず、任意の演算を実施してよい。例えば、演算処理として差分処理を実施してもよい。
なお、本実施例では、三次元ボリュームデータの全体について断層データの補正を行う構成を説明したが、補正処理はこれに限られない。例えば、生成すべきモーションコントラスト画像であるOCTA画像の生成範囲に含まれる断層データのみを対象として補正処理を行ってもよい。この場合には、補正係数の算出にもOCTA画像の生成範囲に含まれる断層データのみを用いてもよい。そのため、OCT投影像を生成する際に当該OCTA画像の生成範囲に含まれる断層データのみを用いることもできる。このような場合には、演算に用いるデータ数が減少するため、計算量を低減できる。
(実施例5)
実施例4では、三次元ボリュームデータの2種類の概略パラメータを用いて算出した断層データの補正係数を用いて、断層データのパラメータを補正する場合について説明した。これに対し、実施例5では、同様の補正係数を用いて、モーションコントラスト算出時に断層データに適用される閾値を補正することで、断層データの強弱に起因する明暗の発生を抑えたモーションコントラスト画像を生成する場合について説明する。具体的には、実施例4と同様に補正係数C(x,y)を算出後、モーションコントラスト算出時に用いるノイズ閾値Dthを補正係数C(x,y)で除算することでノイズ閾値Dthを補正する。その後、得られた新たなノイズ閾値を用いてモーションコントラストを算出し、モーションコントラスト画像を生成する。
以下、図15を参照して、本実施例に係る制御部について実施例4に係る制御部300との違いを中心に説明する。図15は、本実施例に係るOCTA画像生成処理のフローチャートである。なお、図15に示すフローチャートのうち、ステップS1560、S1570以外の工程は実施例4に係るOCTA画像生成処理の工程と同様であるため、説明を省略する。
本実施例では、ステップS1550において補正係数C(x,y)が算出されると、処理はステップS1560に移行する。ステップS1560では、モーションコントラスト生成部325が、ロールオフ補正用の補正係数H(z)及び面内方向の補正係数C(x,y)を用いて、モーションコントラスト算出時に用いるノイズマスク処理用のノイズ閾値Dthを補正する。具体的には、モーションコントラスト生成部325は、ノイズ閾値Dthを式16に従って補正し、ノイズ閾値Dthcを算出する。
補正されたノイズ閾値Dthcは、断層データのパラメータが小さいほど、すなわち、補正係数C(x,y)が大きいほど、及び深度位置zが大きいほど小さくなる。
ステップS1560において、モーションコントラスト生成部325は、三次元ボリュームデータIo(断層データ)に対してノイズ閾値Dthcを用いてノイズマスク処理を行う。その後、モーションコントラスト生成部325は、ノイズマスク処理を行った三次元ボリュームデータを用いてモーションコントラストを算出し、モーションコントラストデータを生成する。
以降の処理は実施例4等と同様であるため省略する。本実施例によるOCTA画像生成処理によっても、断層データの強弱に起因する明暗の発生を抑えたモーションコントラスト画像であるOCTA画像を生成できる。
上記のように、本実施例に係る制御部300は、取得部310と、目標取得部323と、データ補正部324と、画像生成部320とを備える。取得部310は、被検眼Eの眼底の同一位置を走査するように制御された測定光に基づいて得られた眼底の断層の情報を示す断層データを複数取得する。目標取得部323は、断層データにおけるモーションコントラストを算出するために用いられるパラメータを第1の次元で平滑化又はモルフォロジー演算により変換した第1の概略パラメータを算出する。また、目標取得部323は、断層データにおけるパラメータを第1の次元よりも低い第2の次元で平滑化又はモルフォロジー演算により変換した第2の概略パラメータを算出する。その後、目標取得部323は、第1の概略パラメータと第2の概略パラメータとの演算により、補正係数を取得する。なお、本実施例では、当該パラメータとして断層データの輝度を用いる。データ補正部324は、補正係数を用いて、断層データのパラメータに対して適用する閾値処理の閾値を補正する。画像生成部320は、データ補正部324により補正された閾値を用いて閾値処理した、複数の断層データのうち少なくとも1つの断層データのパラメータを用いて算出されたモーションコントラストに基づいて、モーションコントラスト画像を生成する。
本実施例に係る制御部300によれば、モーションコントラストの算出の際に用いるノイズ閾値を、断層データを平滑化又はモルフォロジー演算した概略パラメータに基づいて補正することで、有意な信号まで閾値処理することを低減することができる。そのため、断層データの強弱に起因する明暗の発生を抑えたモーションコントラスト画像であるOCTA画像を生成できる。
なお、本実施例ではステップS1520において、深度方向の補正係数H(z)の算出に止め、ステップS1560で三次元ボリュームデータIo(x,y,z)に対して適用するノイズ閾値Dthを式16に従って補正する場合について説明した。しかしながら、ロールオフ補正の対象はノイズ閾値Dthに限られず、三次元ボリュームデータIo(x,y,z)に適用してもよい。例えば、ステップS1520で式12を用いてロールオフ補正を行った三次元ボリュームデータIh(x,y,z)を生成しておき、ステップS1560では以下の式17に従ってノイズ閾値Dthを補正する。その後、ステップS1570において、ロールオフ補正後の三次元ボリュームデータIh(x,y,z)に対して補正後のノイズ閾値Dthc’を適用してもよい。なお、ノイズ閾値Dthc’は、断層データのパラメータが小さいほど、すなわち、補正係数C(x,y)が大きいほど小さくなる。
また、本実施例では、低輝度領域を低減するための補正とともにロールオフ補正を行っているが、ロールオフ補正は行わなくてもよい。この場合には、ステップS1520を省略するとともに、ステップS1560において、深度方向の補正係数H(z)を省略する。また、ステップS1530及びステップS1540において、ロールオフ補正がされていない、三次元ボリュームデータに基づいて第1の概略パラメータ及び第2の概略パラメータを算出する。
なお、本実施例では、三次元ボリュームデータの全体を用いて補正係数を算出する構成を説明したが、補正係数の算出方法はこれに限られない。例えば、生成すべきモーションコントラスト画像であるOCTA画像の生成範囲に含まれる断層データのみを用いて補正係数を算出してもよい。この場合には、OCT投影像を生成する際にも当該OCTA画像の生成範囲に含まれる断層データのみを用いることができる。このような場合には、演算に用いるデータ数が減少するため、計算量を低減できる。
また、上記実施例におけるデータの補正は所望の構成に応じて、三次元ボリュームデータ、Bスキャンデータ若しくはAスキャンデータ、又はそれらの一部毎に行われることができる。また、補正係数の算出も例えば複数の三次元ボリュームデータについて、別々の補正係数を求めてもよいし、共通の補正係数を求めてもよい。
なお、上記実施例1乃至5は、モーションコントラストデータを生成する断層データのパラメータとして、三次元ボリュームデータに含まれるFFT後の複素数データの輝度(パワー)を用いている。しかしながら、モーションコントラスト生成部325は、既知の任意の手法に基づいて、FFT後の複素数データの位相情報、輝度と位相の両方の情報、又は実部や虚部の情報等を当該パラメータとしてモーションコントラストデータを生成してもよい。これらの場合には、データ補正部324は、モーションコントラストデータを生成する際に用いる位相情報等の情報の分布、当該情報自体、又はノイズ閾値を補正する。その後、モーションコントラスト生成部325が補正された情報やノイズ閾値に基づいてモーションコントラストデータを生成する。これにより、上記実施例と同様の効果を奏することができる。
また、データ補正部324は、波数変換前、FFT前、又は絶対値変換前などの断層データの分布、断層データ又はノイズ閾値を補正してもよい。この場合であっても、モーションコントラスト生成部325が、補正後の断層データの輝度等やノイズ閾値に基づいてモーションコントラストデータを生成することで、上記実施例と同様の効果を奏することができる。なお、これらの場合、目標取得部323は、補正する対象に応じた目標を取得する。
さらに、上記実施例では、モーションコントラストデータを生成する際に、2つの三次元ボリュームデータの脱相関値Mxyを求めることで、モーションコントラストデータを生成した。しかしながら、モーションコントラストデータを生成する方法はこれに限られない。例えば、モーションコントラスト生成部325は、2つの三次元ボリュームデータの差や比率を求める方法等の既知の任意の方法によってモーションコントラストデータを生成することができる。なお、脱相関値Mxyを求める式も上記式1に限られず、既知の任意の式であってよい。
また、上記実施例では、取得部310は、撮影光学系200で取得された干渉信号や画像生成部320で生成された断層データ、再構成部321で生成された三次元ボリュームデータを取得した。しかしながら、取得部310がこれらの信号を取得する構成はこれに限られない。例えば、取得部310は、制御部とLAN、WAN、又はインターネット等を介して接続されるサーバや撮影装置からこれらの信号を取得してもよい。
なお、被検査物として被検眼を例に挙げたが、被検査物はこれに限られない。例えば、被検査物は、被検体の皮膚や臓器等でもよい。このとき、上記実施例によるOCT装置は、眼科装置以外に、内視鏡等の医療機器に適用することができる。
さらに、上記実施例では、分割手段としてカプラーを使用したファイバー光学系を用いているが、コリメータとビームスプリッタを使用した空間光学系を用いてもよい。また、撮影光学系200の構成は、上記の構成に限られず、撮影光学系200に含まれる構成の一部を撮影光学系200と別体の構成としてもよい。
また、上記実施例では、OCT装置の干渉光学系としてマイケルソン干渉計の構成を用いているが、干渉光学系の構成はこれに限られない。例えば、OCT装置1の干渉光学系はマッハツェンダー干渉計の構成を有していてもよい。
さらに、上記実施例では、OCT装置として、SLDを光源として用いたスペクトラルドメインOCT(SD−OCT)装置について述べたが、本発明によるOCT装置の構成はこれに限られない。例えば、出射光の波長を掃引することができる波長掃引光源を用いた波長掃引型OCT(SS−OCT)装置等の他の任意の種類のOCT装置にも本発明を適用することができる。
(その他の実施例)
本発明は、上述の実施例の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
以上、実施例を参照して本発明について説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではない。本発明の趣旨に反しない範囲で変更された発明、及び本発明と均等な発明も本発明に含まれる。また、上述の各実施例及び変形例は、本発明の趣旨に反しない範囲で適宜組み合わせることができる。