以下に、本発明の一実施形態を、図面とともに詳細に説明する。
(実施の形態1)
図1は、薬剤注入装置1を示し、この薬剤注入装置1は、長筒状の筐体2を備えている。筐体2の前端側(図1における左側で、一端側とも称する)には、図2に示すように、開口部3が設けられている。そして、薬剤カートリッジアダプタ4が、開口部3から薬剤注入装置1内に挿入され、薬剤注入装置1内で開口部3の後方側(図2における右側で、他端側とも称する)に設けられた収納空間に収納される。その後、薬剤カートリッジアダプタ4の前端側に設けられている針装着部5に注射針6が装着されると、図1に示す状態になる。
なお、注射針6の周囲には、皮膚当てカバー7が設けられており、注射時には、皮膚当てカバー7の前端側が筐体2の皮膚当接部8と共に、使用者の皮膚に当てられて注射が行われる。
また、筐体2の表面には、注射を実施する注射ボタン9、注射の案内表示を行う表示部10、薬剤注入装置1に電源を投入する電源ボタン11、注射時に各種操作を行う操作ボタン12が設けられている。
本実施形態においては、薬剤注入装置1と薬剤カートリッジアダプタ4とで、薬剤注入システムを構成している。
図3は、薬剤カートリッジアダプタ4を示している。
図3(a)に示すように、薬剤カートリッジアダプタ4の本体ケース13は長筒形状をしており、前方側(図3における下側)には長筒状のカートリッジホルダ14が設けられ、後方側には、長筒状のピストンホルダ15がカートリッジホルダ14に連結して設けられている。
また、カートリッジホルダ14の後方側には、薬剤注入装置1への装着部16(外部機器への装着部の一例で、図4参照)が凹部状に設けられている。
さらに、図3(b)に示すように、薬剤カートリッジ17を収納する収納部18が、カートリッジホルダ14の側面に開閉自在に設けられている。このカートリッジホルダ14に薬剤カートリッジ17を挿入して収納部18を閉成すると、図5、図6に示すように、薬剤カートリッジ17は、カートリッジホルダ14の所定の位置に装着される。
なお、図5は、図4に示す薬剤カートリッジアダプタ4から外装を外した状態となっている。また、図6は、薬剤カートリッジアダプタ4の断面図となっている。
図6に示すように、薬剤カートリッジ17の後方には、ピストン19が配置されている。すなわち、本体ケース13内に、薬剤カートリッジ17とピストン19を二つとも収納できる構成となっている。
薬剤カートリッジ17は、円筒形状で、先端側にゴム(弾性体の一例)製の注射針挿入部20、後端内側にゴム(弾性体の一例)製のガスケット21を有している。薬剤カートリッジ17の内部には、薬剤22が、注射針挿入部20とガスケット21に栓をされた状態で封入されている。
また、本体ケース13内では、薬剤カートリッジ17の後方側に、円柱形状の細長いピストン19が、その中心軸を薬剤カートリッジ17の中心軸に一致させた状態で配置されている。このピストン19は、前端部を薬剤カートリッジ17のガスケット21に対向させている。
また、ピストン19は、後方側がピストンホルダ15内に配置され、前方側はカートリッジホルダ14内に配置されている。このピストン19は、ピストンホルダ15内およびカートリッジホルダ14内を、ピストン19の長手方向に摺動自在となっている。
ピストン19の外周面には、図5に示すように、その長手方向に沿ってネジ23が設けられている。そして、このピストン19に、ピストンギア24が係合されている。
このピストンギア24は円筒状で、図7、図8に示すように、内周面側には、ピストン19を摺動させるピストン駆動ネジ25が設けられている。このピストン駆動ネジ25が、ピストン19外周面のネジ23と係合している。
また、ピストンギア24は、外周面側に、外部機器(本実施形態においては薬剤注入装置1)に接続される接続歯26が設けられている。そして、図4に示すように、本体ケース13には、接続用開口部27が設けられており、ピストンギア24の接続歯26の一部を本体ケース13外に露出させている。そして、図9、図10に示すように、この露出した部分で、ピストンギア24は、薬剤注入装置1の駆動歯車28に接続される。その後、薬剤注入装置1が駆動歯車28を回転させると、ピストンギア24に回転力が伝達される。
ピストンギア24が回転すると、図7のピストン駆動ネジ25、ネジ23を介してピストン19に動力が伝達され、ピストン19が軸方向に摺動する。
図6に戻って、注射時において、針装着部5に図2の注射針6が装着されると、注射針6が注射針挿入部20を貫通して薬剤22に到達する。そして、ピストンギア24が回転してピストン19をガスケット21方向に摺動させると、ピストン19は、その前端で、ガスケット21を注射針挿入部20側に押し込んでいく。これにより、薬剤カートリッジ17内の薬剤22は、注射針6を介して薬剤カートリッジ17外へと吐出される。つまり、注射が行われる。
以上説明したように、本実施形態の薬剤カートリッジアダプタ4は、本体ケース13内に、薬剤カートリッジ17とピストン19を収納する構成を備えている。
このため、注射後に、薬剤注入装置1から薬剤カートリッジアダプタ4を取り出した時に、本体ケース13内に、薬剤カートリッジ17とピストン19を二つとも収納できる。したがって、注射直後の薬剤カートリッジ17とピストン19の位置関係を維持しながら、薬剤カートリッジアダプタ4を保管できる。
そして、次回の注射時に、この薬剤カートリッジアダプタ4を薬剤注入装置1に装着すると、薬剤カートリッジアダプタ4内では前回の注射直後の薬剤カートリッジ17とピストン19の位置関係が維持されているので、注射の準備のためにピストン19をガスケット21まで移動させる必要がない。したがって、すぐに注射を行うことができるので、利便性の高いものとなる。
なお、薬剤カートリッジアダプタ4は、薬剤注入装置1から取り出されると、図4に示すように、薬剤注入装置1に接続されていたピストンギア24が外部に露出された状態となる。この時、使用者が誤ってピストンギア24に触れてしまうと、ピストンギア24によってピストン19が動かされてしてしまうので、薬剤カートリッジ17とピストン19の位置関係を維持できないおそれがあった。
そこで、本実施形態においては、図11に示すように、ピストンギア24の動き停止させるギアストッパ29を設けている。
ギアストッパ29は、ストッパ30と、このストッパ30を操作する解除レバー31を有している。
ストッパ30は、三角柱形状に形成されており、ピストンギア24外周の接続歯26と噛み合うように、接続歯26の歯間に差し込まれている。また、ストッパ30は解除レバー31と共に樹脂で一体的に成形されており、解除レバー31によりストッパ30を操作する構成となっている。
解除レバー31は、本体ケース13の外表部分に、本体ケース13の長手方向に摺動自在に設けられており、解除レバー31を摺動させると、ストッパ30が本体ケース13の長手方向に摺動する。
すなわち、薬剤注入装置1から取り出された薬剤カートリッジアダプタ4では、ストッパ30がピストンギア24外周の接続歯26の歯間に差し込まれているので、ピストンギア24の動きが停止され、ピストンギア24が回転できない状態になっている。
このため、使用者が誤ってピストンギア24に触れてしまっても、ピストンギア24が停止しているので、ピストンギア24と係合されているピストン19が動いてしまうことがない。したがって、薬剤カートリッジアダプタ4内で薬剤カートリッジ17とピストン19の位置関係を維持することができる。
その結果として、保管時における薬剤カートリッジアダプタ4の取り扱いが容易になり、この点からも、利便性を高めることができる。
さらに、本実施形態において、解除レバー31の前方側には、この解除レバー31を後方(つまり、ストッパ30を接続歯26の歯間に差し込む方向)に向けて付勢しているバネ32(付勢体の一例)を、本体ケース13に設けている。
このため、バネ32によって解除レバー31が後方側に押されるとストッパ30も後方側に押されるので、ギアストッパ29は、ストッパ30がピストンギア24の歯間に差し込まれた状態を維持できる。
その結果として、ピストンギア24の動きを適切に停止させることができる。
さらに、本実施形態においては、ギアストッパ29によるピストンギア24の動き停止状態を解除する解除レバー31が設けられており、解除レバー31は本体ケース13の長手方向に摺動自在に設けられている。
そして、解除レバー31を前方側に摺動させると、ストッパ30はピストンギア24外周の接続歯26の歯間から抜き出す方向に摺動する構成としている。
このため、図11からも理解されるように、解除レバー31を前方側に摺動させると、三角柱形状のストッパ30が接続歯26の歯間から抜き出されるので、ピストンギア24の動き停止状態が解除される。つまり、ピストンギア24は動ける状態(回転できる状態)となる。
さらにまた、本実施形態においては、図7に示すように、解除レバー31は、本体ケース13が薬剤注入装置1に装着される動作に伴って、薬剤注入装置1のリリースバー33と当接し、リリースバー33によって前方側(つまり、ストッパ30がピストンギア24の接続歯26の歯間から抜き出す方向)に操作される構成としている。
なお、解除レバー31の後端側には、薬剤注入装置1のリリースバー33に当接させる当接面34が設けられており、この当接面34をリリースバー33に対向させている。
このため、薬剤カートリッジアダプタ4が薬剤注入装置1に装着される動作に伴って、解除レバー31の当接面34がリリースバー33と当接する。そして、解除レバー31は、リリースバー33によって前方側に押されて、図7の状態から図8の状態に、本体ケース13上を摺動し、ストッパ30を前方側に摺動させる。この摺動により、ストッパ30をピストンギア24外周の接続歯26の歯間から抜き出す。
すると、ピストンギア24は動ける状態(つまり、回転できる状態)になる。
その後、図9から図10のごとく、動ける状態となったピストンギア24は、薬剤注入装置1の駆動歯車28に接続される。
さらに、本実施形態においては、ピストンギア24が薬剤注入装置1の駆動歯車28に接続される前に、解除レバー31がリリースバー33と当接し、このリリースバー33によって操作される構成としている。
このため、駆動歯車28に接続される前にピストンギア24を動ける状態にできるので、ピストンギア24と駆動歯車28の接続を適切に行うことができる。
さらにまた、本実施形態においては、図7に示すように、解除レバー31は、ピストンギア24を露出させる接続用開口部27とは反対の位置(異なる位置)に設けられている。
このため、解除レバー31を操作しながら、ピストンギア24を回転させて、初めてピストン19が動くものとなっている。すなわち、使用者が両手を使って初めてピストン19が動くものとなる。
その結果として、この点からも、使用者が誤ってピストン19を動かすことを防止できる。
さらに、本実施形態においては、図7、図13からも理解されるように、解除レバー31は、本体ケース13の外表面から非突出の状態で設けられている。
このため、解除レバー31は本体ケース13から突出していないので、使用者が誤って解除レバー31に触れてしまうのを防止することができる。
さらにまた、本実施形態においては、図11に示すように、解除レバー31の摺動方向に直交する方向の幅は、ピストンギア24の外径よりも小さく形成されている。すなわち、解除レバー31の幅は小さく形成されている。
このため、使用者の指が解除レバー31に掛かることがなく、使用者が誤って解除レバー31を操作してしまうことを防止できる。
さらに、本実施形態においては、図4に示すように、本体ケース13には、ピストンギア24の接続歯26に対向する部分に凹部を設け、この凹部の底部に接続用開口部27を設けている。
すなわち、接続歯26が凹部内に配置されているので、使用者が誤ってピストンギア24に触れてしまうのを防止できる。
以上説明したように、本実施形態においては、ピストンギア24の動きを停止させるギアストッパ29を設けている。
このため、使用者が誤ってピストンギア24に触れてしまっても、ギアストッパ29がピストンギア24の動きを停止させるので、ピストン19が動いてしまうことがない。したがって、薬剤カートリッジアダプタ4内で、薬剤カートリッジ17とピストン19の位置関係を維持することができる。
その結果として、保管時における薬剤カートリッジアダプタ4の取り扱いが容易になり、この点からも、利便性を高めることができる。
以下では、この薬剤カートリッジアダプタ4を使用する薬剤注入装置1について説明する。
図1に示す薬剤注入装置1は、上述のごとく、長筒状の筐体2、薬剤カートリッジアダプタ4が挿入される開口部3、皮膚当てカバー7、注射ボタン9、表示部10、電源ボタン11、操作ボタン12を有している。
この薬剤注入装置1における各部の電気的な接続を示す制御ブロック図を、図12に示す。
制御部35には、図1の注射ボタン9、表示部10、電源ボタン11、操作ボタン12が電気的に接続されている。さらに、制御部35には、記憶部36、充電式の電池37、ピストン駆動モータ38が電気的に接続されている。
この制御部35は、接続された各部の動作制御を行うもので、その制御プログラムが記憶部36に記憶されている。また、電池37は、制御部35に接続された各部に電力を供給する。ピストン駆動モータ38は、制御部35によって制御され、薬剤カートリッジアダプタ4のピストンギア24に回転力を供給する。
なお、制御部35、記憶部36は電子回路で構成され、筐体2内の制御基板(図示せず)上に設けられている。
そして、使用者が、電源ボタン11を押して薬剤注入装置1を起動した後、図1に示すように、薬剤カートリッジアダプタ4が薬剤注入装置1に装着され、注射針6が装着されると、注射準備が整う。
その後、筐体2の皮膚当接部8を注射部位に当てて、注射ボタン9を押すと、注射動作が開始される。
具体的には、制御部35が、図10の状態から、ピストン駆動モータ38を回転させると、その回転力が、モータ歯車39、駆動歯車28を介して、ピストンギア24に伝えられる。
すると、上述のごとく、図6において、ピストンギア24がピストン19を前方側へ摺動させる。ピストン19が薬剤カートリッジ17内のガスケット21を押し込むと、薬剤カートリッジ17内の薬剤22は注射針6を介して薬剤カートリッジ17外へと吐出させる。
これにより、注射が行われる。
以上の説明で薬剤注入装置1の基本的な構成と動作が理解されたところで、以下に本実施形態における特徴点について説明する。
本実施形態における薬剤注入装置1は、図7、図8、図13に示すように、ピストンギア24の回転停止状態を解除するリリースバー33を設けている。
なお、図13は、図9および図10の薬剤注入装置1を反対側から見た図となっている。
このため、図13(a)に示すように、薬剤注入装置1に薬剤カートリッジアダプタ4が装着される動作に伴って、リリースバー33が解除レバー31と当接し、図13(b)に示すように、リリースバー33が解除レバー31を前方側へと操作する(摺動させる)。
その結果として、ピストンギア24の回転停止が解除され、ピストン19が動ける状態となる。つまり、注射ができる状態となる。
より詳細に説明すると、薬剤注入装置1の筐体2の内部には、長筒形状のリリースバー33を、筐体2の長手方向に摺動自在に設けている。
また、リリースバー33は、薬剤カートリッジアダプタ4が薬剤注入装置1に挿入された状態で、薬剤カートリッジアダプタ4の解除レバー31に対向する位置に設けられている。そして、リリースバー33の前端部は、その中央部を前方側に突出させており、この突出部33aを解除レバー31に対向させている。
このため、リリースバー33の突出部33aを解除レバー31に適切に当接させることができるので、この突出部33aが解除レバー31を前方側へと摺動させる。
なお、リリースバー33の前端には、突出部33aの両側に当接部33bを設けており、この当接部33bを薬剤カートリッジアダプタ4の本体ケース13に当接させる構成としている。
このため、当接部33bを薬剤カートリッジアダプタ4に当接させると、解除レバー31は、突出部33aによって、突出部33aの突出長さ分だけ前方側へ摺動させられる。
図14から図17は、薬剤注入装置1の要部の断面図となっている。
図14に示すように、リリースバー33の内部には、このリリースバー33を前方側(図13におけるB方向)に付勢しているバネ40が配置されている。このバネ40は筐体2に設けられた軸41とリリースバー33の軸42とを連結しており、軸41に連結されたバネ40がリリースバー33を前方側に引っ張っている状態となっている。
これにより、リリースバー33は解除レバー31方向に付勢される。
なお、図14は、リリースバー33と解除レバー31が当接する直前の図である。
この時、薬剤カートリッジアダプタ4内では、ギアストッパ29のストッパ30が接続歯26の間に差し込まれ、ピストンギア24の動き(回転)が停止されている。
ここから、図15に示すように、薬剤カートリッジアダプタ4が更に挿入されると、リリースバー33がギアストッパ29の解除レバー31に当接する。
その後、図16に示すように、薬剤カートリッジアダプタ4が更に挿入されると、リリースバー33が解除レバー31を前方側(図16におけるB方向)へと摺動させる。つまり、解除レバー31をピストンギア24の動き停止状態を解除する方向に摺動させる。
ここで、本実施形態においては、リリースバー33を付勢するバネ40は、解除レバー31を付勢するバネ32よりも付勢力を強くしている。
このため、バネ40は縮まずリリースバー33は動かない。動かないリリースバー33は、バネ32を縮ませながら、解除レバー31を前方側へと摺動させる。
したがって、リリースバー33によって、解除レバー31を前方側へと適切に摺動させることができる。
その後、図13(b)に示すように、リリースバー33の当接部33bが薬剤カートリッジアダプタ4に当接すると、解除レバー31は、突出部33aによって所定の位置まで押し込まれた状態となる。
この状態では、図16に示すように、ストッパ30は接続歯26の間から引き抜かれ、これによりピストンギア24の動き停止が解除され、ピストンギア24は動ける状態になる。
この時、ピストンギア24の接続歯26は、薬剤注入装置1の駆動歯車28と接続直前の状態となっている。
そして、図17に示すように、薬剤カートリッジアダプタ4が更に挿入されると、リリースバー33の当接部33bが薬剤カートリッジアダプタ4に当接しているので、今度はリリースバー33が後方側へと動かされる。つまり、リリースバー33は、薬剤カートリッジアダプタ4に押されて、バネ40を引き伸ばしながら、後方側(図17におけるA方向)に摺動する。
なお、バネ40は引き伸ばされて畜力される。
この時、動ける状態となったピストンギア24は、駆動歯車28と、適切に接続される。
また、薬剤カートリッジアダプタ4の後方側では、凹部状の装着部16に薬剤注入装置1に設けられた係合部43の爪44が挿入される。これにより、薬剤カートリッジアダプタ4は薬剤注入装置1への装着された状態となり、注射が可能な状態となる。
なお、係合部43は、筐体2に回動自在に軸支されており、その爪44がバネ(図示せず)によって装着部16側に付勢されている。
すなわち、本実施形態において、薬剤カートリッジアダプタ4は、ピストンギア24の動きを停止させるストッパ30と、その動き停止状態を解除する解除レバー31とを有している。一方、薬剤注入装置1は解除レバー31を操作するリリースバー33を有している。
このため、薬剤カートリッジアダプタ4の保管時には、ストッパ30によりピストンギア24の動きが停止されるので、ピストン19は動かない。
そして、注射時には、薬剤カートリッジアダプタ4が薬剤注入装置1に装着される動作に伴って、リリースバー33によって解除レバー31が操作され、ピストンギア24の動き停止状態が解除される。
したがって、薬剤カートリッジアダプタ4は、保管時にピストン19が動かず、注射時にピストン19が動くものとなる(注射ができるものとなる)。
その結果として、薬剤カートリッジアダプタ4の取り扱いが容易になり、利便性を高めることができる。
その後、制御部35がピストン駆動モータ38を回転させると、上述のごとく、モータ歯車39、駆動歯車28を介して、ピストンギア24が回転し、これにより、ピストン19が動かされて注射動作が行われる。
注射後、使用者が、排出レバー45を前方側(図17におけるC方向)にスライドさせると、薬剤カートリッジアダプタ4の排出動作が開始される。この排出動作では、排出レバー45後方の爪46が動力伝達レバー47を回動させると、係合部43が回動し、係合部43の爪44が薬剤カートリッジアダプタ4の装着部16から引き抜かれる。
すると、バネ40の畜力が開放され、リリースバー33が、自由になった薬剤カートリッジアダプタ4を筐体2外へと押し出す。その結果、薬剤カートリッジアダプタ4が薬剤注入装置1外へと排出される。
すなわち、リリースバー33は、薬剤カートリッジアダプタ4を薬剤注入装置1にセットする時には、解除レバー31を操作して薬剤カートリッジアダプタ4を装着させるものとなる。さらに、リリースバー33は、注射後は、薬剤カートリッジアダプタ4を排出するものとなる。
その結果として、薬剤カートリッジアダプタ4の取り扱いが容易になり、利便性を高めることができる。
(実施の形態2)
実施の形態2においては、実施の形態1の薬剤注入装置1に代えて、図18に示すように、緊急用アダプタ48(薬剤注入アダプタの一例)を用いて薬剤注入システムを構成している。
すなわち、例えば、使用者が10日間の旅行をする場合、薬剤注入装置1、薬剤カートリッジアダプタ4、および薬剤注入装置1の充電器(図示せず)を、同じポーチ(図示せず)に入れて持ち運ぶ。
この時、例えば、使用者がホテルで薬剤注入装置1を充電し、充電器をそのまま置き忘れてしまった場合、旅行の途中で薬剤注入装置1が電池切れになるおそれがあり、このため、適切に薬剤を投与できなくなるおそれがあった。
そこで本実施形態においては、緊急用アダプタ48を用い、手動で薬剤を投与できるようにした。
以下に、詳細に説明する。
図18、図19は、本実施形態の薬剤投与システムを示し、薬剤カートリッジアダプタ4は、図19に示すように、緊急用アダプタ48に装着されて使用される。この緊急用アダプタ48は、通常は、薬剤カートリッジアダプタ4、薬剤注入装置1、充電器と共に、例えば、同じポーチに入れられる。
図20は、緊急用アダプタ48の分解斜視図で、長方形状のギアホルダ(筐体の一例)49には、アダプタ挿入孔50が、長手方向に貫通して設けられている。このアダプタ挿入孔50には、薬剤カートリッジアダプタ4が装着部16側から挿入される。
また、駆動歯車51の片側には、細長形状のシャフト52が設けられており、ギアホルダ49には、シャフト52が挿入されるシャフト挿入孔53が、長手方向に貫通して設けられている。
シャフト52には、駆動歯車51とは反対側の端部にいわゆるDカット54が設けられている。このDカット54が設けられた端部は、シャフト挿入孔53、コイルバネ(付勢体の一例)55、および円筒状のクリックリング56に通されて、円柱状のグリップ57の中心軸部分に圧入されている。
このため、グリップ57を回転させると、その回転力がシャフト52を介して駆動歯車51に伝達され、駆動歯車51が回転する。
ギアホルダ49の駆動歯車51側には、薬剤カートリッジアダプタ4の解除レバー31(図13)を操作するリリースバー58が設けられている。このリリースバー58は、薬剤注入装置1のリリースバー33の突出部33a(図13)と同形状となっている。また、駆動歯車51は、薬剤注入装置1の駆動歯車28(図9、図10)と同形状となっている。
さらに、図18に示すように、ギアホルダ49の駆動歯車51側で、リリースバー58と駆動歯車51の位置関係は、薬剤注入装置1の突出部33aと駆動歯車28の位置関係と同じになっている。
このため、薬剤カートリッジアダプタ4を緊急用アダプタ48に装着する動作は、普段行っている動作(つまり、薬剤カートリッジアダプタ4を薬剤注入装置1に装着する動作)と同じになる。したがって、使用者は、違和感なく緊急用アダプタ48を使用することができる。
具体的に使用方法を説明すると、図21に示すように、使用者が、緊急用アダプタ48のアダプタ挿入孔50に、薬剤カートリッジアダプタ4の装着部16側を挿入すると、図22に示すように、リリースバー58が解除レバー31を操作するので、薬剤カートリッジアダプタ4は、緊急用アダプタ48に適切に装着される。
そして、この状態から、図19に示すように、使用者が針装着部5に注射針6を装着し、所定の部位に注射針6を穿刺する。ここで、使用者がグリップ57を回転させると、駆動歯車51が回転し、薬剤カートリッジアダプタ4のピストンギア24(図18)が回転する。すると、上述のごとく、薬剤カートリッジ17内の薬剤22は、注射針6を介して薬剤カートリッジ17外へと吐出される。つまり、注射が行われる。
すなわち、緊急時においては、薬剤注入装置1に代えて緊急用アダプタ48を用い、手動で薬剤を投与できるものとなる。
さらに本実施形態においては、図20に示すように、ギアホルダ49とグリップ57の間には、円筒状のクリックリング56と、このクリックリング56をグリップ57側に付勢しているコイルバネ55と、を備えている。
このため、クリックリング56は、コイルバネ55によってグリップ57に適切に押し付けられる。
このクリックリング56のグリップ57側には、6個(複数個)の三角形状をした凸部59が等間隔で環状に形成されている。また、グリップ57のクリックリング56側には、3個(複数個)の三角形状をした凸部60が等間隔で環状に形成されている。グリップ57の凸部60は、クリックリング56の凸部59上を摺動する。
このため、グリップ57を回転させると、凸部60が凸部59をコイルバネ55側に押し返しながら摺動するので、いわゆるクリック感が発生する。したがって、使用者は、クリック感を感じながら、グリップ57を適切に操作することができる。
なお、本実施形態においては、凸部59を6個設けているので、使用者が6回のクリックを感じれば、グリップ57を1回転させたことになる。そして、例えば、グリップ57を3回転させれば、適切な量の注射が行われることになる。
さらに本実施形態においては、グリップ57の表面に、凹部で形成された第1の目印61が設けられ、ギアホルダ49には、この第1の目印61に対応する位置に、凹部で形成された第2の目印62が設けられている。
このため、使用者は、目印61および目印62によって、グリップ57を何回転させたかが目視できるものとなるので、薬剤を適切に注入することができる。その結果として、利便性を高めることができる。
(実施の形態3)
実施の形態3は、実施の形態1の薬剤注入装置1において、薬剤カートリッジアダプタ4の排出を工夫したものである。
すなわち、例えば、薬剤の投与中に、使用者が誤って、図1に示す薬剤注入装置1の排出レバー45を摺動させると、薬剤カートリッジアダプタ4が排出されてしまう。
そこで、本実施形態においては、排出レバー45の摺動を規制し、不適切時における薬剤カートリッジアダプタ4の排出を防止するようにした。
以下に、詳細に説明する。
図23は、薬剤カートリッジアダプタ4と、その係合および排出に関わる薬剤注入装置1の要部を示している。
上述したごとく、排出レバー45が、薬剤カートリッジアダプタ4の排出動作方向(前方向であって、図23のC方向)へ摺動することで、薬剤カートリッジアダプタ4の排出動作を行う。
本実施形態においては、薬剤注入装置1の内部に、排出レバー45が排出動作方向へ摺動することを規制している長板状のスライドロック(規制体の一例)63が設けられている。
図24は、スライドロック63と排出レバー45を、図23のD方向から見た図である。
排出レバー45とその爪46は、図24(a)から(b)のように、前方(C方向)へ摺動し、排出動作を行う。なお、排出レバー45は、排出レバーバネ64により後方に引かれている。
また、スライドロック63は、排出レバー45の摺動方向に対して垂直な方向に摺動自在となっている。
スライドロック63は、樹脂で形成された長形状の板体で、一端側の端部には、排出レバー45の爪46に当接させる排出レバー当接部65が設けられている。この排出レバー当接部65は排出レバー45に対向させられている。さらに、排出レバー当接部65と反対側(他端側)の端部には、薬剤カートリッジアダプタ4に当接させるアダプタ当接部66が設けられている。このアダプタ当接部66は薬剤カートリッジアダプタ4に対向させられている。
スライドロック63は、排出レバー45方向、および薬剤カートリッジアダプタ4方向(図24の上方向)に摺動する。
このため、スライドロック63は以下の2つの状態をとることができる。
図24(a)は、第1の状態を示し、薬剤カートリッジアダプタ4の排出が不適切である時(例えば注射中)の状態である。
この第1の状態では、スライドロック63が排出レバー45に向かって摺動しており、排出レバー当接部65は排出レバー45の爪46の摺動路(以下、排出レバー45の摺動路とも称する)内に配置されている。
このため、使用者が排出レバー45を前方へ摺動させようとしても、爪46が排出レバー当接部65に当接し、排出レバー45は摺動が規制されて前方へ動けない。したがって、排出動作が行われず、薬剤カートリッジアダプタ4は排出されない。
すなわち、第1の状態では、排出レバー45が排出動作方向へ摺動することが規制される。
図24(b)は、第2の状態を示し、薬剤カートリッジアダプタ4の排出が適切である時(例えば注射後)の状態である。
この第2の状態では、スライドロック63が排出レバー45から離れる方向(図24の上方向)に摺動しており、排出レバー当接部65は排出レバー45の爪46の摺動路から外れた位置に配置されている。
このため、排出レバー45は摺動が規制されることなく前方へ動けるので、排出動作が行われて、薬剤カートリッジアダプタ4が排出される。
すなわち、第2の状態では、排出レバー45が排出動作方向へ摺動できる。
スライドロック63が第1および第2の状態を形成および保持するために、スライドロック63の駆動機構として、図25に示すように、スライドロック63には、軸67を介してソレノイド68の可動子69が接続されている。さらに、可動子69には、ソレノイドバネ70が接続されている。
なお、ソレノイド68は、図12の制御部35に電気的に接続されており、この制御部35によって制御される。このソレノイド68は、一般的な自己保持型であるため詳細な説明は省略するが、図25(a)に示すように、金属製の可動子69がソレノイド内部の磁石(図示せず)によって保持されている状態で、制御部35がソレノイド68のコイル(図示せず)に通電すると、磁石の磁界が弱められ、図25(b)に示すように、可動子69およびスライドロック63がソレノイドバネ70に引かれて摺動する。
図24(a)に示す第1の状態の時には、可動子69は、図25(a)に示すようにソレノイドの磁石に保持される。このため、可動子69が接続されたスライドロック63は、第1の状態を維持できる。
この第1の状態で制御部35がソレノイド68に通電すると、上述のごとく可動子69およびスライドロック63が排出レバー45から離れる方向に摺動し、図24(b)に示す第2の状態になる。
この第2の状態では。ソレノイドバネ70に引かれて、第2の状態を維持できる。
このスライドロック63を用いた排出動作について、以下に説明する。
図26は、図24(a)に、動力伝達レバー47、係合部43、薬剤カートリッジアダプタ4等の部品を重ねた図である。
薬剤カートリッジアダプタ4の排出が不適切な時(例えば注射中)は、図24(a)に示すように、スライドロック63を第1の状態とし、スライドロック63の排出レバー当接部65を排出レバー45の爪46の摺動路内に配置している。
このため、使用者が、排出レバー45を、図26(a)の位置から前方へ摺動しようとしても、図26(b)に示すように、爪46が排出レバー当接部65に当接して停止する。この停止位置では、爪46は動力伝達レバー47を回動させることができず、薬剤カートリッジアダプタ4の排出動作は開始されない。
したがって、不適切時における薬剤カートリッジアダプタ4の排出が防止できるものとなる。
また、薬剤カートリッジアダプタ4の排出が適切な時(例えば注射後)は、制御部35がソレノイド68に通電することで、スライドロック63を第2の状態とする。
この第2の状態では、上述のごとく、使用者は、排出レバー45を前方へ摺動させることができるので、図27(a)に示すように、排出動作が行われる。具体的には、爪46が動力伝達レバー47を回動させ、爪44が装着部16から引き抜かれると、バネ40の付勢力により、薬剤カートリッジアダプタ4が前方へ排出される。
この時、使用者が薬剤カートリッジアダプタ4の前側を下に向けていると、薬剤カートリッジアダプタ4が薬剤注入装置1から落下してしまうおそれがある。
そこで、本実施形態においては、図24に示すように、スライドロック63の他端側には、薬剤カートリッジアダプタ4に当接させるアダプタ当接部66を設け、このアダプタ当接部66を薬剤カートリッジアダプタ4に対向させている。
そして、一端側の排出レバー当接部65が排出レバー45の動きを規制していない時、つまり、スライドロック63の第2の状態であって、図24(b)に示す状態の時に、このアダプタ当接部66を薬剤カートリッジアダプタ4に当接させる構成としている。
このため、スライドロック63が排出レバー45から離れる方向に摺動すると、アダプタ当接部66は薬剤カートリッジアダプタ4に向かって摺動し、薬剤カートリッジアダプタ4に設けられた凹部状の係合部71(図4)の前方側に挿入されるのである。
その後、図27(a)(b)に示すように、爪44が薬剤カートリッジアダプタ4から引き抜かれると、薬剤カートリッジアダプタ4は前方側へ摺動するが、この時、図27(c)に示すように、係合部71の後方側の斜面が排出レバー当接部65と当接するのである。
このように、薬剤カートリッジアダプタ4は、当接により前方への動きが止められるので、使用者が薬剤カートリッジアダプタ4の前側を下に向けていても、薬剤カートリッジアダプタ4が薬剤注入装置1から落下してしまうことがない。
この点からも、薬剤注入装置1の取り扱いが容易になり、その結果として、利便性を高めることができる。
なお、係合部71は、図4からも理解されるように、装着部16に隣接した凹部で形成されており、その長手方向の長さをアダプタ当接部66の幅よりも大きくしている。
このため、薬剤カートリッジアダプタ4は、その排出時に係合部71の長手方向の長さ分だけ前方側に摺動することとなり、図1の皮膚当てカバー7を所定の距離(例えば3ミリ)だけ前方に突出させて停止する。
したがって、使用者は、突出した皮膚当てカバー7を見て、薬剤カートリッジアダプタ4が取り出せる状態になったことを認識することができる。また、皮膚当てカバー7が前方に突出するので、使用者は、皮膚当てカバー7をつかみやすくなり、薬剤カートリッジアダプタ4の取り出しが容易になる。
図28は、薬剤カートリッジアダプタ4の取り出しを示す図で、使用者は、皮膚当てカバー7をつかみ、薬剤カートリッジアダプタ4を、図28(a)から(b)に示すように、引き抜いていく。
この時、図28(a)に示すように、アダプタ当接部66は係合部71の斜面に押され、スライドロック63が排出レバー45に向かって摺動する。すると、図25の可動子69がソレノイド68内に戻されるので、制御部35がソレノイド68への通電を止めると、排出レバー当接部65は排出レバー45の摺動路内で維持される。つまり、ソレノイド68を第2の状態から、第1の状態へと移行させることができる。