JP6905418B2 - 電子写真用の導電性部材、プロセスカートリッジおよび電子写真装置 - Google Patents

電子写真用の導電性部材、プロセスカートリッジおよび電子写真装置 Download PDF

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Description

本発明は、電子写真用の導電性部材、プロセスカートリッジおよび電子写真装置に関する。
電子写真画像形成装置(以降、「電子写真装置」ともいう)には、帯電部材の如き電子写真用の導電性部材が使用されている。電子写真感光体の如き被帯電体と接触させて該被帯電部材の表面を帯電させるための帯電部材に対しては、被帯電体を長期に亘って安定に帯電させることが求められている。
特許文献1には、長期に亘って繰り返し使用した場合にも、表面の汚れに起因する帯電不良や帯電能力の低下が生じ難い帯電部材が開示されている。具体的には、帯電部材の表面層に、導電性樹脂粒子に由来する凸部を設けてなる帯電部材を開示している。
また、特許文献2は、導電性被覆部材の表面自由エネルギーを30mN/m以上とし、かつ、その表面全面に粒子径が3.0μm以下の有機微粒子または無機微粒子の層を有する帯電ロールを開示している。
特開2008−276026号公報 特開2006−91495号公報
本発明の一態様は、電子写真装置を長期に亘って使用しても、安定した帯電能力を維持することができる電子写真用の導電性部材のお提供に向けたものである。
また、本発明の他の態様は、高品位な電子写真画像を安定して形成することのできるプロセスカートリッジおよび電子写真装置の提供に向けたものである。
本発明の一態様によれば、導電性支持体と、該導電性支持体の上に形成された表面層と、を有する電子写真用の導電性部材であって、
該表面層は3次元的に連続な骨格を有し、かつ、厚み方向に連通してなる細孔を有し、
該表面層の表面の、任意の150μm四方の領域を撮影し、該領域を縦に60等分、横に60等分して3,600個の正方形に等分割したときに、貫通孔が含まれている正方形の数が100個以下であり、
該骨格が非導電性であり、
該骨格が、ネックを介して互いに結合した複数の樹脂粒子で構成され、
該樹脂粒子が、放射線崩壊型の樹脂を含み、かつ
該樹脂粒子の円相当径の平均値D1が0.1μm以上20μm以下である、
ことを特徴とする電子写真用の導電性部材が提供される。
また本発明の他の態様によれば、
導電性支持体、中間層および表面層をこの順に有する電子写真用の導電性部材であって、
該表面層は3次元的に連続な骨格を有し、かつ、厚み方向に連通してなる細孔を有し、
該表面層の表面の、任意の150μm四方の領域を撮影し、該領域を縦に60等分、横に60等分して3,600個の正方形に等分割したときに、貫通孔が含まれている正方形の数が100個以下であり、
該骨格は、非導電性であり、
該骨格が、ネックを介して互いに結合した複数の樹脂粒子で構成され、
該樹脂粒子の円相当径の平均値D1が0.1μm以上20μm以下であり、かつ、
該中間層は、放射線崩壊型の樹脂を含み、かつ、非導電性である、ことを特徴とする電子写真用の導電性部材が提供される。
本発明の他の態様によれば、電子写真装置の本体に着脱可能に構成されるプロセスカートリッジであって、上記の導電性部材を具備しているプロセスカートリッジが提供される。
本発明の更に他の態様によれば、上記の導電性部材を具備している電子写真装置が提供される。
本発明の一態様によれば、異常放電の抑制と汚れ付着に起因する画像不良の抑制の両立を達成可能な導電性部材を提供することができる。さらに、本発明の他の態様によれば、長期間に亘って白抜け画像を抑制でき、汚れ付着に起因する画像不良を抑制するプロセスカートリッジおよび電子写真装置を提供することができる。
帯電部材の表面に静電的に汚れが付着する原理の説明図である。 帯電部材の表面層に電荷が蓄積する原理の説明図である。 ローラ形状の導電性部材の一例を示す断面図である。 中間層を有する、ローラ形状の導電性部材の一例を示す断面図である。 ネックの説明図である。 離間部材の一例を示す図である。 本発明の一態様に係るプロセスカートリッジの断面図である。 本発明の一態様に係る電子写真画像形成装置の断面図である。 粒子を塗布して表面層を形成する塗布装置の概略図である。 コロナ帯電器の概略図である。
本発明者らは、特許文献1および特許文献2に係る帯電部材について検討を行い、トナーや外添剤の付着を抑制する効果を有することを確認した。
しかしながら、近年、電子写真画像の高精細化に伴って、帯電部材と被帯電体との間に印加する帯電電圧が大きくなる傾向にある。すなわち、帯電電圧を大きくすることによって、現像コントラストを大きくでき、その結果、色の階調を増大させることができる。しかし、帯電電圧を大きくすると、局所的に放電電荷量が増加する異常放電が生じ易くなる。低温低湿環境下においては、異常放電が特に生じやすくなる。
帯電部材からの被帯電部材への放電はパッシェンの法則に従って発生する。また、放電現象とは、電離した電子が、空気中の分子や電極と衝突して電子と正イオンを生成する過程を繰り返しながら指数関数的に増加する電子雪崩の拡散現象と説明できる。この電子雪崩は電界に従って拡散し、この拡散の度合が最終的な放電電荷量を決定する。
また、異常放電は、パッシェンの法則よりも余剰な電圧が印加され、電子雪崩が大きく拡散して非常に大きい放電電荷量を有する場合に発生する。実際に高速度カメラとイメージインテンシファイアを用いて観察することが可能で、そのサイズは約200μm〜700μmのサイズを有しており、その放電電流量を測定すると、正常放電の放電電流量のおよそ100倍以上となる。したがって、異常放電を抑制するためには、印加電圧が大きい条件下において、電子雪崩の拡散により生成する放電電荷量を正常な範囲に抑制すればよいと考えられる。
次に、帯電部材の表面への静電的な汚れの付着に関して説明する。帯電部材の表面及び付着物には、放電により帯電電圧とは逆極性のイオンが付着する。そのため、放電を受けるにつれ静電的な付着力が増加する。特に、低温低湿環境下においては、空気中の水分によって汚れの荷電がキャンセルされにくい。そのため、帯電部材の表面には、トナーや外添剤がより付着しやすくなる。
以下、図1を用いて、帯電部材の表面をマイナス極性に帯電させる帯電装置を例に挙げて、帯電部材の表面への静電的な汚れの付着について具体的に説明する。
帯電部材10は電源13に接続され、アース14に接地された感光ドラム11と対向する。この帯電部材10と感光ドラム11との空隙で放電は生成し、電界に従ってマイナス極性の電子が感光ドラム11へ、プラス極性のイオンが帯電部材10の表面へひきつけられる。このとき、帯電部材10の表面に、トナーの如き汚れ12が存在すると、帯電部材10に引き付けられたプラス極性のイオンが汚れ12に付着し、汚れ12はプラスに帯電する。その結果、マイナス極性に帯電されている帯電部材10と汚れ12との静電引力が増加し、汚れ12は帯電部材10の表面に強力に付着することになる。また、使用の進行に対しこの現象は繰り返し発生するため、汚れ12の付着力は増大する。
そして、本発明者らは、帯電電圧を増加させた場合にも異常放電を生じ難く、かつ、表面へのトナーの如き汚れの静電的な付着を長期に亘って有効に抑制し得る帯電部材を得るべく検討を重ねた。その結果、下記第1の態様に係る導電性部材、および、下記第2の態様に係る導電性部材が、上記の要求をよく満たすことを見出した。
<第1の態様>
導電性支持体と、該導電性支持体の上に形成された表面層と、を有し、
該表面層は3次元的に連続な骨格を有し、かつ、厚み方向に連通してなる細孔を有し、
該表面層の表面の、任意の150μm四方の領域を撮影し、該領域を縦に60等分、横に60等分して3,600個の正方形に等分割したときに、貫通孔が含まれている正方形の数が100個以下であり、
該骨格が非導電性であり、
該骨格が、ネックを介して互いに結合した複数の樹脂粒子で構成され、
該樹脂粒子が、放射線崩壊型の樹脂を含み、かつ
該樹脂粒子の円相当径の平均値D1が0.1μm以上20μm以下である、電子写真用の導電性部材。
<第2の態様>
導電性支持体、中間層および表面層をこの順に有し、
該表面層は3次元的に連続な骨格を有し、かつ、厚み方向に連通してなる細孔を有し、
該表面層の表面の、任意の150μm四方の領域を撮影し、該領域を縦に60等分、横に60等分して3,600個の正方形に等分割したときに、貫通孔が含まれている正方形の数が100個以下であり、
該骨格は、非導電性であり、
該骨格が、ネックを介して互いに結合した複数の樹脂粒子で構成され、
該樹脂粒子の円相当径の平均値D1が0.1μm以上20μm以下であり、かつ、
該中間層は、放射線崩壊型の樹脂を含み、かつ、非導電性である、電子写真用の導電性部材。
(異常放電の抑制)
異常放電は上記した通り、概略200μm〜700μmのサイズを有する。このサイズは、正常放電が、空間内で電界に従って成長した結果である。つまり、異常放電を抑制するためには、正常放電の成長を抑制すればよい。正常放電は、異常放電と同様に高速度カメラとイメージインテンシファイアで確認でき、そのサイズは30μm以下である。
本発明に係る表面層は、3次元的に連続な骨格を有し、かつ、表面層の表面の、任意の150μm四方の領域を撮影し、該領域を縦に60等分、横に60等分して3600個の正方形に等分割したときに、貫通孔が含まれている正方形の数が100個以下である。このことにより、電子雪崩の拡散が空間的に制限され、正常放電が異常放電のサイズにまで成長することを抑制できているものと考えられる。すなわち、表面層は、厚み方向に連通している細孔を有するものの、電界と同じ方向に貫通する貫通孔の数が少ない。そのため、導電性支持体の表面からの放電が分断され、正常放電のサイズが大きくなることが制限されるものと考えられる。
本発明に係る電子写真用の導電性部材と感光ドラムとの間に生じる放電を、高感度カメラを用いて直接観察した結果、多孔質体である表面層が導電性部材表面に存在した場合、単発の放電が細分化する現象が確認できている。このことからも、上記の推定メカニズムが正しいものと考えられる。
(汚れ抑制)
次に、汚れ付着抑制について述べる。まず、汚れは、物理付着力あるいは静電引力によって導電性部材の表面に付着する。特に、帯電部材に突入してくる汚れは、プラスからマイナスまでの電荷分布を有するので、汚れの静電付着は避けられない。また、上述のように、従来の導電性部材においては、帯電部材の表面及び付着物には、放電により印加電圧とは逆極性のイオンが付着するため、放電を受けるにつれ静電的な付着力が増大するばかりで、一度付着した汚れの剥離は期待しにくい。
本実施態様に係る導電性部材は、物理的な汚れの付着、および、静電的な汚れの付着を抑制し得る。
まず、物理付着に関しては、表面層が、微細な骨格と細孔を有する多孔質体であるために、接触点を非常に小さくでき、汚れの物理付着を抑制できる。
次に静電付着の抑制に関して図2で説明する。
図2はマイナス帯電の場合の帯電部材21、感光ドラム22の模式図である。放電が生じると、マイナスの電荷24は感光ドラムの表面へ電界に従って進捗し、プラス極性の電荷23は表面層20へ進捗する。このとき、表面層20は非導電性であるため、プラス極性の電荷23を捕捉して、表面層20はプラスにチャージアップする。このとき、電界によって帯電部材の表面に付着しようとするプラスに帯電した汚れと静電的に反発するため、汚れに働く静電引力を低減できる。すなわち、従来全く抑制できなかった静電付着を低減することができる。
さらに、仮に表面層20の表面に汚れが付着したとしても、表面層20が多孔質体であるために、静電付着した汚れを吐き出すことができる。具体的には、細孔内で発生した多孔質体内部の放電が、表面層の表面に付着する汚れに照射されると、汚れが帯びる極性をマイナスに変化させられるため、汚れに働く静電引力の方向が逆転し、電界によって汚れが剥離する。
すなわち、汚れの物理付着と静電付着とを同時に、非常に効率よく抑制できるため、汚れ付着に由来する画像不良を低減できると予想される。
(非導電性の中間層)
蓄積された電荷の漏えいを抑制するためには、下記のような手段も有効である。つまり、導電性支持体、中間層および表面層をこの順に有する導電性部材に対し、中間層が非導電性であり、放射線崩壊型の樹脂を含む構成である。これにより、表面層の低抵抗化が進み、蓄積された電荷が漏えいしやすい状態であっても、放射線崩壊型の樹脂を含む中間層が放電による酸化や副生成物の発生が抑制されるため、中間層の低抵抗化が生じない。中間層が非導電性を維持できるため、表面層から導電性支持体への蓄積された電荷の漏えいが抑制される。その結果、表面層の蓄積された電荷が維持できるため、長期に亘って汚れ付着抑制効果を維持することができる。
<第1の実施形態>
以下、図面を参照して第1の態様に係る導電性部材について本説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、以下、電子写真用の導電性部材を、その代表例である帯電部材によって説明するが、本態様に係る電子写真用の導電性部材はその用途が、帯電部材のみに限定されるものではない。
(部材構成例)
図3(a)および図3(b)に、本発明に係るローラ形状の導電性部材の一例の断面図を示す。この導電性部材は、導電性支持体と、該導電性支持体の外側に形成された表面層とを備えており、該表面層は多孔質体である。該表面層が有する骨格は複数の樹脂粒子によって構成され、該樹脂粒子は放射線崩壊型の樹脂を含む。
図3(a)に示す導電性部材は、導電性支持体と、表面層31とによって構成されている。導電性支持体は、導電性の軸芯体(基体)としての芯金32からなる。表面層31は、導電性支持体の外周に形成されている。
図3(b)に示す導電性部材も、導電性支持体と、表面層31とによって構成されている。図3(b)の導電性支持体は、導電性の軸芯体(基体)としての芯金32と、その外周に設けられた導電性樹脂層33とからなる。表面層31は、導電性樹脂層33の外周に形成されている。なお、導電性部材は、必要に応じて本発明の効果を疎外しない範囲で当該導電性樹脂層33を複数配置した多層構成であってもよい。また、導電性部材はローラ形状に限られず、例えばブレード形状であってもよい。
図4(a)および図4(b)に、本発明に係る、放射線崩壊型の樹脂を含む中間層を有する、ローラ形状の導電性部材の一例の断面図を示す。この導電性部材は、導電性支持体と、中間層と、表面層とを備えており、該表面層は多孔質体である。
図4(a)に示す導電性部材は、導電性支持体と、中間層43と、表面層41とによって構成されている。導電性支持体は、導電性の軸芯体としての芯金42からなる。中間層43は、導電性支持体の外側に形成されており、放射線崩壊型の樹脂を含む。表面層41は、中間層43の外周に形成されている。
図4(b)に示す導電性部材は、導電性支持体と、中間層43と、表面層41によって構成されている。導電性支持体は、導電性の軸芯体としての芯金42と、その外周に設けられた導電性樹脂層44とを備える。中間層43は、放射線崩壊型の樹脂を含む。表面層41は、中間層43の外周に形成されている。なお、導電性部材は、必要に応じて本発明の効果を疎外しない範囲で当該導電性樹脂層44を複数配置した多層構成であってもよい。また、導電性部材はローラ形状に限られず、例えばブレード形状であってもよい。
〔導電性の軸芯体〕
導電性の軸芯体としては、電子写真用の導電性部材の分野で公知なものから適宜選択して用いることができる。例えば炭素鋼合金の表面に5μm程度の厚さのニッケルメッキを施した円柱を用いることができる。金属製の軸芯体が好ましい。放電時のエネルギーが、一部熱エネルギーに変換される場合、熱伝導率の高い金属製の軸芯体は熱エネルギーを逃がしやすく、導電性部材へのダメージが減少して、耐久性が高くなる。
〔導電性樹脂層〕
導電性樹脂層を構成する材料としては、ゴム材料、樹脂材料等を用いることが可能である。ゴム材料としては、特に限定されるものではなく、電子写真用の導電性部材の分野において公知のゴムを用いることができ、具体的には以下のものが挙げられる。エピクロルヒドリンホモポリマー、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル3元共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体の水素添加物、シリコーンゴム、アクリルゴム及びウレタンゴム等。樹脂材料としても、電子写真用の導電性部材の分野において公知の樹脂を用いることができる。具体的には、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。
中でも、アクリロニトリル系ゴムであることが好ましい。アクリロニトリル系ゴムである場合、放電に際してエネルギーが印加された場合も、本発明の表面層との反応性が乏しく、副生成物の発生、それに伴う放電劣化が起こりにくいためである。
上記導電性樹脂層を形成するゴムに対して、電気抵抗値の調整のため、必要に応じて、電子導電性付与剤やイオン導電性付与剤を配合することができる。電子導電性付与剤としては、電子導電性を示すカーボンブラック、グラファイト;酸化錫等の酸化物;銅、銀等の金属;酸化物や金属を粒子の表面に被覆して導電性を付与した導電性粒子が挙げられる。またイオン導電性付与剤としては、イオン導電性を示す第四級アンモニウム塩、スルホン酸塩等のイオン交換性能を有するイオン導電性付与剤が挙げられる。
また、本発明の効果を損なわない範囲で、樹脂の配合剤として一般的に用いられている充填剤、軟化剤、加工助剤、粘着付与剤、粘着防止剤、分散剤、発泡剤、粗し粒子等を添加することができる。
導電性樹脂層の電気抵抗値の目安としては、体積抵抗率が1×10Ω・cm以上1×10Ω・cm以下である。なお、本発明に係る表面層は、導電性支持体の電気抵抗値が十分に低い場合においても、過剰な放電に起因する画像弊害を抑制できることを確認している。
<表面層>
表面層は、3次元的に連続な骨格を有し、かつ、厚み方向に連通してなる細孔を有する。該表面層の表面の、任意の150μm四方の領域を撮影し、該領域を縦に60等分、横に60等分して3,600個の正方形に等分割したときに、貫通孔が含まれている正方形の数は100個以下である。該骨格は非導電性であり、かつ、該骨格は、ネックを介して互いに結合した複数の粒子で構成されている。該粒子の円相当径の平均値D1は0.1μm以上20μm以下である。
〔(1)3次元的に連続した骨格および厚み方向に連通した細孔〕
表面層は、3次元的に連続な骨格を有する。ここで、3次元的に連続な骨格とは、複数の分岐を有しており、導電性部材の表面から導電性支持体の表面につながる箇所を複数個有する骨格のことをいう。
また、表面層は、上記の骨格内で生成した放電を感光ドラムの表面に輸送するために、厚み方向に連通してなる細孔を有する。ここで、厚み方向に連通してなる細孔とは、表面のある開口から導電性支持体の表面にまで到達している細孔をいう。また、当該細孔は、表面層の表面の複数の開口部を繋いでおり、かつ、複数の分岐を有していることが好ましい。このように、複数の開口部を繋ぐと共に、複数の分岐を有する細孔は、表面層内における電子雪崩をより確実に分散させ得る。
さらに、連通してなる細孔によって、導電性支持体の表面から表面層の表面に至る放電の経路が確保される。そのため、非導電性の表面層を具備している本態様に係る導電性部材は、帯電部材として、電子写真画像の形成に必要な放電を行なうことができる。
ここで、放電は電界の方向に従って円錐状に拡散するため、電界の方向に太くて直線的な孔が存在すると、異常放電まで成長し、白抜け画像が発生する可能性がある。したがって、電界と同じ方向、すなわち、厚み方向に直線的に配置される孔、すなわち貫通孔は極力少なく、かつ、微細であることが好ましい。
表面層の骨格が3次元的に連続であり、細孔が厚み方向に連通してなることは、走査型電子顕微鏡(SEM)で得られるSEM像や、3次元透過型電子顕微鏡やX線CT検査装置等で得られる多孔質体の3次元像において確認できる。すなわち、当該SEM像や当該3次元像において、骨格が複数の分岐を有し、表面層の表面から導電性支持体の表面に繋がる箇所を複数有すればよい。さらに、細孔が表面層の表面の複数の開口部を繋いでおり、かつ、複数の分岐を有し、表面層の表面から導電性支持体の表面に到達していることを確認すればよい。
〔(2)均一さ 貫通孔〕
表面層は、多孔質体の構造に由来する画像不良を抑制するために、均一な構造を有する必要がある。上述のように、電界の方向に直線的な貫通孔が存在すると、放電が異常放電に成長しやすくなる。また微小な貫通孔であっても、貫通孔が無い箇所とは電子雪崩の分断の程度が異なり、放電の均一性が低減する可能性がある。従って、表面層が有する貫通孔を下記の範囲に限定する必要がある。ここで、貫通孔とは、表面層の表面に正対したときに、導電性支持体の表面が直接観察できる、直線的に繋がる孔のことである。この貫通孔は表面層内部で分岐しているものも含むが、導電性支持体の表面が直接観察できるか否かで判断する。
具体的には、表面層の表面の、任意の150μm四方の領域を撮影し、該領域を縦に60等分、横に60等分して3,600個の正方形群に等分割したときに、貫通孔が含まれている正方形群の数が100個以下にする必要がある。貫通孔を含む正方形群の数を100個以下にすることで、貫通孔が表面層の欠陥として画像不良に現れることを抑制できる。
放電の拡散を抑制し、異常放電を抑制できる効果が大きくなるため、貫通孔が含まれている正方形群が25個以下になることがより好ましい。なお、該貫通孔を含む正方形群の数の下限は特に限定されず、値が小さい方が好ましい。
表面層の、貫通孔の確認は次のようにすればよい。まず、表面層を当該表面層に正対した方向から観察し、当該表面層の表面の、任意の150μm四方の領域を撮影する。このとき、レーザー顕微鏡、光学顕微鏡、電子顕微鏡等、150μm四方の領域を観察できる方法を適宜使用すればよい。
次いで、該領域を縦に60等分、横に60等分して3,600個の正方形群に等分割したときに、貫通孔を含む正方形の数を数えればよい。
〔(3)非導電性〕
表面層の骨格は非導電性であることが必要である。非導電性とは体積抵抗率が1×1010Ω・cm以上であることを示す。表面層が非導電性であることで、表面層の骨格が、放電により帯電電圧とは逆極性のイオンを捕捉し、チャージアップすることができる。表面層がチャージアップすると、静電的な反発により汚れの付着を低減し、さらに、付着した汚れに細孔内の放電が照射されることにより、汚れの電荷を反転させて剥離させることが可能となる。
表面層の骨格の体積抵抗率は1×1012Ω・cm以上1×1017Ω・cm以下であることが好ましい。体積抵抗率を1×1012Ω・cm以上とすることで、骨格がチャージアップし始め、汚れの付着を抑制できる。一方で、体積抵抗率を1×1017Ω・cm以下とすることで、表面層の細孔内の放電の生成を促進し、汚れの静電的な剥離が可能となる。さらに、体積抵抗率が1×1015Ω・cm以上1×1017Ω・cm以下であることで、表面層のチャージアップのばらつきの影響が低減でき、汚れの静電的な剥離をより一層促進できるので、より好ましい。
なお、表面層の体積抵抗率の測定方法は次のようにして行う。まず、導電性部材の表面に存在する表面層から、細孔を含まない領域を試験片としてピンセットを用いて取り出す。次いで、走査型プローブ顕微鏡(SPM)のカンチレバーを接触させ、カンチレバーと導電性基板との間に当該試験片を挟むことで体積抵抗率を測定する。導電性部材の長手方向を10等分し、得られた10領域の各領域における任意の1箇所(合計10箇所)において前記体積抵抗率の測定を行い、その平均値を表面層の体積抵抗率とする。
〔(4)ネック〕
表面層の骨格は、ネックを介して互いに結合した複数の粒子からなることが必要である。ここでネックとは、粒子間において、粒子の構成物質の物質移動により形成された、不連続点のないなだらかな曲面で、1葉双曲面状(鼓状)にくびれた部分のことを言う。
図5は表面層の骨格の一例として、球状の粒子を使用して製造した表面層の骨格の一部を2次元的に模式的に示した図である。図5において、粒子51はネック52を介して結合している。ネック52は図5においては、直線として表現されているが、実際は、図5で示した破線によって切断された断面を示す。
図5(a)〜(c)は結合した複数の粒子の切断面を示し、図5(d)はネック部の切断面を示す。図示しやすいように、図5では球形の粒子で説明しているが、球形でない粒子でも同様の説明が可能である。
図5(a)および図5(b)は導電性支持体50の表面に平行な切断面を示し、図5(c)および図5(d)は導電性支持体50の表面に垂直な切断面を示す。
図5(a)および図5(b)は、図5(c)および図5(d)に示す矢印58の向きから見た断面図を示す。図5(c)は、図5(d)に示す矢印501の向きから見た断面図を示す。図5(d)は、図5(c)に示す矢印59の向きから見た断面図を示す。
図5(a)に実線で示す切断面53は、図5(c)に示す面56で切断することによって得られる切断面である。図5(b)に実線で示す切断面54は、図5(c)に示す面57で切断することによって得られる切断面であり、図5(b)に示す二点破線55は、図5(a)に実線で示す切断面53に対応する。図5(a)〜(c)に示すように、表面層の骨格を切断する面の導電性支持体50の表面からの高さによって、切断面の面積が変化し、その切断面に現れるネック52の長さも変化する。具体的には、図5(a)に示すネック52aは、図5(b)に示すネック52bよりも長い。
複数の粒子を、ネックを介して3次元的に連結させることで、細孔を構成する壁が凹凸を有することとなり、細孔の形状が、より複雑化する。その結果、電子雪崩の拡散を抑制する効果を、より一層高めることができ、異常放電の発生を抑制する効果を、より一層高められる。
また、粒子同士が、ネックを介して結合することで、粒子間の電気的な界面が無くなり、表面層を構成する骨格は、1個の誘電体として機能する。骨格が1個の誘電体として機能することで、電荷の蓄積量の部分的なばらつきを抑制でき、表面層全体で均一な放電を形成することができる。
さらに、細孔の壁面の凹凸は、放電の契機を与えやすいと考えられる。すなわち、ネックに起因する、複雑な形状を有する細孔は、当該細孔内での放電の発生確率を増大させ、電荷の蓄積量を増大させ得る。その結果、帯電部材の表面への汚れの付着低減、剥離の促進の効果を増大させ得る。
また、ネックで樹脂粒子同士が結合し、界面がない一体の状態になることで、粒子が放電を受けた際に化学構造内で生成されるラジカルによる連鎖的な反応が起こりやすくなる。放射線崩壊型の樹脂のラジカルは不安定なため、連鎖的な反応が容易になることで、ラジカルが主鎖切断を起こす確率を向上できる。これらの結果、酸化や副生成物が生成され、表面層が低抵抗化する現象を抑制できる。
なお、粒子同士がネックを介して結合していることの確認は、X線CTによる測定によって得られる3次元像や、レーザー顕微鏡、光学顕微鏡、電子顕微鏡等によって、粒子の結合部を観察すればよい。このとき、骨格及びネックを撮影し、粒子の結合部が不連続点のないなだらかな曲面で、1葉双曲面状(鼓状)にくびれていることを確認すればよい。
また、別のネックの確認の方法として、ピンセットによって表面層をくずすことで、結合していた粒子を分解することができる。分解して別れた粒子をさらに観察すると、結合していた痕跡が確認でき、粒子同士がネックを介して結合していたことが確認できる。
〔粒子形状〕
表面層の骨格を形成するための粒子の形状は、3次元的に連続な骨格と厚み方向に連通した細孔を形成できればよく、その形状は、球形、楕円体、立方体などの多面体、半円体または任意の形状を有することができる。その中でも、粉砕・破砕等によって形成される複雑な形状の粒子が、表面積が増大し、表面層のチャージアップを増大できるため、好ましい。さらには、表面層の表面形状に凹凸を有するため、放射線崩壊型の樹脂の分子切断によって表面にごく微細な凹凸が形成されても、全体の表面積の変化量がごく微量になるため、形状の変化による機能の変化を抑制可能となる。
粒子の形状は、X線CTによる測定によって得られる3次元像や、レーザー顕微鏡、光学顕微鏡、電子顕微鏡等によって、粒子の結合部を観察すればよい。このとき、骨格及びネックを撮影し、画像処理において、ネックによって切断される粒子の形状を目視で確認し、粒子形状とすればよい。
また、別の粒子形状の確認の方法として、ピンセットによって表面層をくずすことで、結合していた粒子を分解することができる。分解して別れた粒子をさらに観察することで確認できる。
〔粒子の円相当径の平均値D1〕
表面層の骨格を形成する粒子の円相当径の平均値D1は0.1μm以上20μm以下である必要がある。0.1μm以上であると細孔が適度に形成され、表面層内の放電を促進できるので、汚れを剥離することができる。20μm以下にすることで、非導電性の構造に由来する画像不良を抑制することができる。より好ましくは、0.1μm以上6.0μm以下である。6.0μm以下にすることで、表面層の表面の細孔にはまる汚れを低減し、汚れ付着に由来する画像不良を抑制することができる。
なお、粒子の円相当径の平均値D1は、X線CTによる測定によって得られる3次元像や、レーザー顕微鏡、光学顕微鏡、電子顕微鏡等によって、粒子の結合部を観察すればよい。特に、X線CTによる測定が、3次元的に表面層の測定ができるので好ましい。例えば、X線CT検査装置(商品名:TOHKEN−SkyScan2011(線源:TX−300)、マース東研X線検査(株)製)を用い、骨格及びネックのスライス像を撮影する。そして得られたスライス像に対し、Image−pro plus(製品名、Media Cybernetics社製)などの画像処理ソフトによって計測すればよい。
具体的には、あるネックを介して結合した2つの粒子に対し、得られたスライス像を利用する。そして、図5(a)又は(b)のような、ネック断面に垂直な断面であり、導電性支持体の表面に平行な複数の切断面の中で当該切断面に含まれるネックの長さが最も長くなる切断面を探し、大津法によって2値化する。次に、例えばwatershed処理を施し、輪郭線の最も凹んだ部分を結ぶネックを作成する。次いで、このネックによって切断された粒子の重心を計算し、この重心を中心とし、粒子の境界線に接する外接円の半径を、粒子の円相当径として測定すればよい。これを、導電性部材の長手方向を10等分し、得られた10領域の各領域内の任意の画像内の、任意の50個の粒子(合計500個)において粒子の円相当径の測定をし、その算術平均値(以下、「平均値」とも記載する。)を粒子の円相当径の平均値D1とする。
また、別の粒子形状の確認の方法として、ピンセットによって表面層をくずすことで、結合していた粒子を分解することができる。そして導電性支持体の表面上で、分解して別れた粒子の画像をレーザー顕微鏡、光学顕微鏡、電子顕微鏡等によって取得し、上記と同様の方法で円相当径の平均値D1を測定すればよい。
〔ネック断面の円相当径と粒子の円相当径との比〕
表面層の骨格を形成するための、ネックの断面の円相当径の平均値D2は粒子の円相当径の平均値D1の0.1倍以上0.7倍以下であることが好ましい。0.1倍以上であることで放電空間を分断し、異常放電を抑制する効果を生むことができる。0.7倍以下にすることで、細孔内の電界が、入り組んだ複雑な分布になり、細孔内で放電の発生する確率が上昇し、細孔内の放電電荷が増大する結果、汚れ剥離の効果および画質の向上が得られる。
〔ネックの断面の円相当径の平均値D2〕
なお、ネックの断面の円相当径の測定は、X線CTによる測定によって得られる3次元像や、レーザー顕微鏡、光学顕微鏡、電子顕微鏡等によって、粒子の結合部を観察すればよい。特に、X線CTによる測定が、3次元的に表面層の測定ができるので好ましい。
具体的には、あるネックを介して結合した2つの粒子に対し、前記X線CTで得られたスライス像を利用し、図5(d)に示すようなネック52の断面像を作成し、大津法によって2値化する。次に、ネック断面の重心を計算し、この重心を中心とし、ネック断面の境界線に接する外接円の半径を、ネック断面の円相当径として測定すればよい。これを、導電性部材の長手方向を10等分し、得られた10領域の各領域内の任意の画像内の、任意の20個の粒子(合計200個)においてネックの断面の円相当径の測定をし、平均値D2を算出する。
また別のネック断面の円相当径の測定方法としては、ピンセットによって表面層をくずすことで、結合していた粒子を分解することができる。そして導電性支持体の表面上で分解して別れた粒子の画像を取得し、粒子の円相当径および、ネックの断面に当たる結合部だった箇所の円相当径を測定すればよい。
〔表面層の厚さ〕
表面層の厚さ(膜厚)は、1μm以上30μm以下であることが好ましい。表面層の厚さが1μm以上である場合、骨格がチャージアップし始め、異常放電の抑制効果が発現する。また、表面層の厚さが30μm以下であることで、細孔内の放電が感光ドラムへ到達し、帯電不足が発生しない画像形成を行うことができる。さらに好ましくは、1μm以上20μm以下である。20μm以下であることで、表面層に付着した汚れの極性を好適に反転し、汚れ付着に由来する画像不良をより抑制することができる。
また、粒子の円相当径の平均値と膜厚との比は1.5以上10以下であることが好ましい。ここで、「粒子の円相当径の平均値と膜厚との比」とは{(膜厚)/(粒子の円相当径の平均値D1)}によって算出される値を意味する。
粒子の円相当径の平均値と膜厚との比が1.5以上であれば、貫通孔が少ないため、放電の分断効果や、汚れ付着の抑制効果が低下することはほとんどないと考えられる。また、粒子の円相当径の平均値と膜厚との比が10以下であれば、細孔内の放電電荷量が汚れ剥離のために必要な値よりも少なくなることはほとんどないと考えられる。
なお、表面層の厚さは次のようにして確認する。導電性部材から、導電性支持体及び当該表面層を含む切片を切り出し、X線CT測定を行うことで表面層の厚さを測定する。具体的には、前記のX線CTの測定で得られた2次元のスライス画像を大津法により2値化し、骨格部と細孔部とを識別した。2値化したスライス画像それぞれにおいて、骨格部の占める割合を数値化し、導電性支持体側から表面層側へ数値の確認を行い、骨格部の占める割合が2%以上になる領域を表面層とし、最表面部と最下部を定義した。ここで、「骨格部の占める割合」とは{(骨格部の面積)/(骨格部の面積+細孔部の面積)}によって算出される値を意味する。導電性部材の長手方向を10等分し、得られた10領域の各領域における任意の1箇所(合計10箇所)において前記表面層の厚さの測定を行い、その平均値を表面層の厚さとする。
〔空孔率〕
表面層の空孔率は、20%以上80%以下であることが好ましい。該空孔率が20%以上であることで画像形成に十分な量の細孔内の放電を発生させることができる。また、該空孔率が80%以下であることで、放電の拡散を低減する効果が発現し異常放電を抑制できる。該空孔率は50%以上75%以下がより好ましい。
表面層の空孔率は次のようにして確認する。導電性部材から、導電性支持体及び当該表面層を含む切片を切り出し、X線CT測定を行うことで空孔率を測定する。具体的には、前記のX線CTによる測定で得られた2次元のスライス画像を大津法により2値化し、骨格部と細孔部とを識別した。2値化したスライス画像それぞれにおいて、骨格部の面積および細孔部の面積を数値化し、導電性支持体側から表面層側へ数値の確認を行い、骨格部の占める割合が2%以上になる領域を表面層とし、最表面部と最下部を定義した。
次いで、骨格部と細孔部の体積をそれぞれ算出し、細孔部の体積を両者の合計体積で除することで空孔率を得た。これを、導電性部材の長手方向を10等分し、得られた10領域の各領域における任意の1箇所(合計10箇所)において前記表面層の空孔率の測定を行い、その平均値を表面層の空孔率とする。
〔樹脂粒子の材料の性質〕
表面層の樹脂粒子は、非導電性であり、放射線崩壊型の樹脂を含む樹脂粒子で形成されることが重要である。
(放射線崩壊型の樹脂を含む樹脂粒子の使用による、長期に亘る耐汚れ付着性の向上)
電子写真画像形成装置においては、帯電部材に対して、数百から数千ボルトの高電圧が印加される。そのため放電時には、正常放電の範囲の帯電電荷量であっても、帯電部材表面の局所に大きなエネルギーが加わる。特に、本態様に係る導電性部材は、表面層が、表面積が大きい微細な多孔質構造を有するため、単位面積あたりにうけるエネルギーは大きい。
表面層を形成する樹脂粒子に上記のような大きい放電エネルギーが継続的に印加されると、分子化学構造における高分子骨格中の炭素−水素など一部結合が外れ、ラジカルが生成する。通常、このラジカルとなった部分が空気中に存在する酸素や水と反応することで、化学構造内に酸素を取り込むこととなり、酸化が進む。または、分子周辺に存在する他のラジカルと新たな結合を形成し、副生成物が生じる。特に、高温高湿条件では、この酸化や副生成物の発生が大きくなる。高温では樹脂分子の運動性が増して周囲分子との反応が進み、高湿では、水分子が増加することによる酸化が促進されるためである。これらの結果、表面層の非導電性が低下して、蓄積された電荷が導電性支持体に漏えいし、チャージアップによる汚れ付着抑制効果が妨げられるおそれがある。
本発明者らは、表面層が、長時間に亘って放電エネルギーに曝された場合であっても、表面層の導電性が向上し難く、表面層への静電的な汚れが長期に亘って付着し難くするための検討を重ねた。その結果、骨格を構成する樹脂粒子として、放射線崩壊型の樹脂を含む非導電性の樹脂粒子を使用することが有効であることを見出した。
理由は以下のように考えている。
放射線崩壊型の樹脂は、放電の曝露に因って生成するラジカルが不安定で、生成した箇所では安定的に滞留できず、周囲に移動し、周辺の化学構造に連鎖的な化学反応を生じさせ、発生源のラジカル自体は即時に反応を終息させる傾向にある。
樹脂粒子においては、化学構造内で生じたラジカルが主鎖骨格上を移動し、主鎖骨格を切断する分子切断が起きやすくなる。この分子切断は、骨格末端近傍で起こりやすく、切断が起こることで、切断後の主骨格(分子鎖が長い方の骨格)のラジカル反応は終息する。切断後に主骨格から離れた骨格(非常に短くなった方の骨格)は、更なる反応で分解が進み、ガス化により消失して、全体のラジカル反応が終息する。切断後の主骨格は、僅かながら分子量の低下が起こるが、それ以外はもとの高分子骨格構造と比較して大きな変化がない。
このようにラジカル発生から反応終息までが即座に起こるために、使用条件に関わらず酸化や副生成物の発生が進みにくい。その結果、放射線崩壊型の樹脂を含む樹脂粒子を使用すると、高温高湿環境でも、長時間に亘って表面層が放電に曝露されても、材料の酸化や副生成物の発生が抑制される。従って、表面層の低抵抗化が抑制され、蓄積された電荷の漏えいを低減し、汚れ付着抑制効果を長期に亘って維持することができる。
放射線崩壊型の樹脂に対して、放射線の照射によって、分子架橋など新たな結合が形成され、分子構造が大きくなる放射線架橋型の樹脂がある。放射線架橋型の樹脂は、安定ラジカルを生成するため、周囲の酸素、水等と反応する機会が増え、酸化や副生成物の形成が進む。よって、放電中に表面層が低抵抗化し、蓄積された電荷が漏えいする。従って、放射線架橋型の樹脂の樹脂粒子は、蓄積された電荷の漏えいが起こりやすくなる。特に、高温高湿下では、樹脂分子の運動性が増して周囲分子との反応が進みやすい。
〔放射線崩壊型の樹脂の判定〕
放射線崩壊型の樹脂の例は、篠原健一ほか著「放射線と高分子」(槇書店, 1968発行)第89〜91ページに記載されている。本発明においては、放射線崩壊型の樹脂であるか否かの判定は、放射線、またはそれに相当するエネルギーを印加する処理前後での分子量変化を測定することによって行う。具体的には、樹脂に対し、コロナ放電を実施して、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定による分析を行う。
GPC測定には、対象樹脂を溶媒に入れて溶液にする必要がある。ここで、溶媒は、トルエン、クロロベンゼン、テトラヒドロフラン(THF)、トリフロロ酢酸、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール(HFIP)、ギ酸など対象樹脂によって、最も溶解しやすい溶媒の選択が可能である。コロナ放電で架橋反応が進行し、分子量が非常に大きくなった場合、どの溶媒を用いても溶解しないため、GPC測定で分子量測定ができない。こういった、不溶成分が樹脂全量に対し10質量%以上である場合、不溶成分以外でも架橋成分が多く、放射線架橋型と判断される。一方、10質量%を下回った場合には、溶液側を用いて溶解している樹脂成分のGPC測定を行う。分子量がコロナ放電処理前の分子量以下となった場合は、分子骨格の切断が優先して起こっていることを示し、放射線崩壊型と判断される。分子量が増加する場合は、放射線架橋型である。
〔樹脂粒子の材料のガラス転移温度Tg〕
放射線崩壊型の樹脂は、ガラス転移温度Tgが−150℃以上100℃以下であることが好ましい。ガラス転移温度Tgが−150℃以上だと、放電によるエネルギーが加わっても樹脂粒子の形状が変化して空孔率が低下したりせず、帯電不良に繋がったりしない。一方で、ガラス転移温度Tgが100℃以下であれば、ネックを形成する処理温度が高すぎたりしない。
高温での処理において、ネックが十分に均一に形成されるため、表面層の不均一性が原因で黒ポチが出たりしない。またさらには、分子運動を活発にして、ネックが形成する際の結合反応を促進して、表面層の連続性を向上させるために、ガラス転移温度Tgが−150℃以上0℃以下であることがより好ましい。
これらの特性を考慮し、ネックを好適に形成できるガラス転移温度Tgを有し、さらに、放射線崩壊型の樹脂であるポリイソブチレンを使用することが好ましい。
〔ガラス転移温度Tgの測定〕
なお、表面層を形成する樹脂粒子のガラス転移温度Tgは、導電性部材から表面層を、ピンセット等を用いて回収し、例えば、示差走査熱量分析(DSC)により測定可能である。また、同様に、導電性部材から表面層を回収し加熱、或いは溶剤を用いて溶融し、シート化した後に、DSC測定を行っても良い。
〔添加剤〕
表面層には、電気抵抗率の調整のため、発明の効果を損なわない範囲で、かつ、表面層を形成できる限りにおいて、骨格の材料に添加剤を加えてもよい。添加剤の例としては、以下のものが挙げられる。電子導電性を示すカーボンブラック、グラファイト、酸化錫などの酸化物、銅、銀などの金属、酸化物や金属を粒子の表面に被覆して導電性を付与した導電性粒子。イオン導電性を示す第四級アンモニウム塩、スルホン酸塩などのイオン交換性能を有するイオン導電性付与剤等。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。また、本発明の効果を損なわない範囲で、樹脂の配合剤として一般的に用いられている充填剤、軟化剤、加工助剤、粘着付与剤、粘着防止剤、分散剤などを添加してもよい。
〔ラジカル添加材〕
樹脂粒子に、ラジカル捕捉剤を添加しても良い。ラジカル捕捉剤はそれ自身の周辺に、安定して存在するラジカルを捕捉し、その反応を終息させる機能を持つ。これにより、放電エネルギーが印加された際に、放射線崩壊型の樹脂の構造内において、安定なラジカルが発生したとしても、ラジカル反応を早期に終息に向かわせることができる。そのため、安定なラジカルが残存することによる、酸化を抑制できる。具体的なラジカル捕捉剤として、p−ヒドロキノン、3,5−ジブチル−4−ヒドロキシトルエンといった空気酸化などで過酸化物の生成を抑制する効果も持つ酸化防止剤が好ましい。
〔放射線崩壊型の樹脂の分子量〕
放射線崩壊型の樹脂の重量平均分子量(Mw)は、5万以上150万以下であることが好ましい。重量平均分子量が、5万以上150万以下であると、樹脂粒子が、分子量が高いことによる硬さを持つため、長期に使用した場合でも表面層の形状が変化しなくなり、安定的な放電を維持できる。
より好ましくは、30万以上150万以下である。また、重量平均分子量が、30万以上となると、他部材と接触しながら長時間使用した場合でも、表面層の破壊を抑制することができる。
なお、表面層を形成する非導電性の放射線崩壊型の樹脂の重量平均分子量は、次のようにして測定可能である。導電性部材から網目状構造体の層を、ピンセット等を用いて回収し、例えば、マイクロサンプリング質量分析(μ−MS)、ゲル浸透クロマトグラフィー分析(GPC)により測定可能である。また、同様に、導電性部材から表面層を回収し加熱、或いは溶剤を用いて溶融し、シート化した後に、前記質量分析を行っても良い。
〔表面層の形成方法およびネック径の制御〕
表面層の形成方法は、表面層を形成できる限りにおいて特に制限はなく、粒子を導電性支持体上に堆積させた後に、後工程によってネックを介して粒子同士を結合すればよい。粒子を導電性支持体上に堆積させる方法としては、以下の方法が挙げられる。微粒子をブラシローラあるいはスポンジローラに含ませロールトゥロールで塗布する方法、静電粉体塗装法、流動浸漬塗装法、静電流動浸漬塗装法、溶射粉体塗装法などの直接塗装、エレクトロスプレー法、微粒子分散液のスプレー塗装により吹き付ける方法等。その中でも、微粒子のはぎとりと塗布とが同時に起きるため、表面層の膜厚制御が好適に実現でき、さらに、塗布と同時に圧縮も実現できる、微粒子をブラシローラあるいはスポンジローラに含ませロールトゥロールで塗布する方法が好ましい。ロールの回転数、回転時間により、塗布量を好適に制御することが可能である。
ネックを介して粒子同士を結合する方法としては、加熱、加熱圧着、赤外線放射、決着樹脂によって結合させる方法等が挙げられる。その中でも、表面層内部の粒子まで好適に融着することができるため、粒子を堆積させた粒子堆積膜を加熱あるいは加熱圧着する方法が好ましい。
下記ネック比Rの制御に関しては、結合する工程での条件、例えば、加熱温度および加熱時間で制御すればよい。
<第2の実施形態>
本発明に係る導電性部材の第2の実施形態について説明する。
第2の実施形態に係る導電性部材は、以下の構成を有する。
導電性支持体、中間層および表面層をこの順に有し
該表面層は3次元的に連続な骨格を有し、かつ、厚み方向に連通してなる細孔を有し、
該表面層の表面の、任意の150μm四方の領域を撮影し、該領域を縦に60等分、横に60等分して3,600個の正方形に等分割したときに、貫通孔が含まれている正方形の数が100個以下であり、
該骨格は、非導電性であり、
該骨格が、ネックを介して互いに結合した複数の樹脂粒子で構成され、
該樹脂粒子の円相当径の平均値D1が0.1μm以上20μm以下であり、かつ、
該中間層は、放射線崩壊型の樹脂を含み、かつ、非導電性である。
〔放射線崩壊型の樹脂を含む中間層〕
これまで説明してきたように、表面層に放電のエネルギーが印加された際に、酸化や副生成物が付着すると、表面層から蓄積された電荷が漏えいし、汚れ付着を抑制する効果が低減する。
本発明者らは鋭意検討の結果、表面層を構成する樹脂粒子に放射線崩壊型の樹脂を含有させなくても、放射線崩壊型の樹脂を含む非導電性の中間層を設けることで、表面層から導電性支持体への蓄積された電荷の漏えいを抑制できることを見出した。
表面層からの蓄積された電荷の漏えいを抑制することによっても、導電性部材の表面への汚れ付着抑制の効果を長期に亘って維持することができる。
蓄積された電荷の漏えいを抑制できる理由は次のように考えている。
表面層は、連通してなる細孔を有するため、表面層の最表面の細孔から、導電性支持体側の最下層まで放電は生じている。即ち、表面層は厚み方向の全域に亘って、放電に曝露されていることになる。従って、放電エネルギーによる酸化や副生成物の付着による表面層の低抵抗化、即ち蓄積された電荷の漏えいは、表面層全面に生じる可能性がある。この蓄積された電荷の漏えいは、蓄積された電荷が導電性支持体に印加される電圧の極性とは逆の極性であるため、静電引力によって導電性支持体へ漏えいする。
従って、表面層と導電性支持体との間に、表面層から漏えいする蓄積された電荷を遮る効果を持つ中間層を持たせることで、表面層の蓄積された電荷の漏えいを抑制することができる。さらに、放電の影響は、表面層の導電性支持体側の最下端まで到達することが考えられるため、その表面は放電に曝されることとなる。従って、中間層は、放電によって酸化や副生成物を生じない放射線崩壊型の樹脂であり、さらに、電荷の漏えいを遮るために非導電性である必要がある。
また、下記に示すが、中間層の体積抵抗率を最適化することで、当該中間層もチャージアップが可能となる。これにより、導電性部材としてのチャージアップの量の底上げが可能となり、異常放電抑制効果および汚れ付着抑制効果が向上される。
〔中間層の体積抵抗率〕
中間層は蓄積された電荷の導電性支持体への漏えいを抑制するために、非導電性であることが必要である。非導電性とは体積抵抗率が1×1010Ω・cm以上であることを示す。
中間層の体積抵抗率は1×1012Ω・cm以上1×1017Ω・cm以下であることが好ましい。体積抵抗率を1×1012Ω・cm以上とすることで、表面層の蓄積された電荷の漏えいを抑制できる。一方で、体積抵抗率を1×1017Ω・cm以下とすることで、表面層の細孔内放電の電荷の供給が十分に可能となる。これよりも体積抵抗率が大きくなると放電電荷量が不足し、帯電不良を生じる。
さらに、体積抵抗率が1×1015Ω・cm以上1×1017Ω・cm以下であることで、中間層が放電を受けてチャージアップが可能となる。中間層は一体化しているため、チャージアップさせるとそのばらつきを低減でき、汚れ付着を抑制する効果を均一化できるためより好ましい。
中間層の体積抵抗率の測定方法は次のようにして行う。剥離した後の中間層が最表面にある状態の導電性部材に対し、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、導電性モードによって測定した測定値を採用することができる。中間層を、マニュピレーターを用いてシートに切り出し、中間層の片面に金属蒸着を施す。金属蒸着を施した面に直流電源を接続し、電圧を印加し、中間層のもう一方の面にはカンチレバーの自由端を接触させ、AFM本体を通して電流像を得る。無作為に選んだ100箇所の表面における電流値を測定し、測定された低電流値の上位10箇所の平均電流値と、平均膜厚とカンチレバーの接触面積から、体積抵抗率を算出できる。
耐久評価後の中間層の体積抵抗率は、メンディングテープやピンセット等により、中間層を傷付けないように表面層を剥離した後に、上記と同様にして測定することができる。
〔中間層の厚さ〕
中間層の厚さ(膜厚)は、1μm以上5μm以下であることが好ましい。膜厚が1μm以上で、表面層の蓄積された電荷が導電性支持体へ漏えいすることを抑制でき、汚れ付着抑制の効果が維持できる。膜厚の最大値が5μm以下であれば、放電電荷量が不足することに起因した帯電不良を抑制できる。
中間層の膜厚の測定は、カミソリ、あるいはマニュピレーターなどの鋭利な刃物で中間層の断面が露出するようなシートを切りだし、これを光学顕微鏡、または、電子顕微鏡視野内での測定を行う。膜厚の最大値をA、最小値をBとしたとき、1μm≦BでありA≦5μmであることが好ましい。なお、導電性部材の長手方向を10等分し、得られた10領域の各領域における任意の1箇所(合計10箇所)において前記中間層の厚さの測定を行い、その平均値を中間層の厚さとする。
〔中間層の材質〕
中間層が放射線崩壊型の樹脂を含み、かつ非導電性であれば、放電を受けても低抵抗化しないため、表面層と導電性支持体の間に常に蓄積された電荷の漏えいを遮断することが可能となる。これにより、長期に亘って汚れ付着を抑制する効果を維持可能となる。放射線崩壊型の樹脂としては、表面層の樹脂と同様に、放射線崩壊型の樹脂の例は、先に述べた通り、篠原健一ほか著「放射線と高分子」(槇書店, 1968)で紹介されている。
具体的には、ポリアセタール樹脂や、ポリアルファスチレン、セルロース樹脂などが挙げられる。特に、式(1)に示される構成単位を有するアクリル樹脂で形成されることが好ましい。
Figure 0006905418
なお、式(1)中のRは、炭素数1〜6の炭化水素基を表す。Rが炭素数1〜6の炭化水素基であると、放電時にラジカル化し得る部分が多すぎたりせず、周囲の酸素や水と反応する酸化や副生成物の形成が進行しやすくなったりしない。
なお、これらのポリマーの原料となる単量体の2種以上の組み合わせから製造される共重合体としてもよい。前記樹脂材料としては例えば以下のものが挙げられる。ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸プロピル、ポリメタクリル酸イソプロピル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリメタクリル酸ターシャリーブチル、ポリメタクリル酸イソブチル、ポリメタクリル酸ベンジルなどである。繰り返し単位が式(1)で示される場合に考えられる反応機構について、反応式(1)を用いて説明する。
反応式(1)中でnは繰り返し量を表し、ドットはラジカルを表す。放電によるエネルギーが加えられると、主鎖となる高分子骨格に結合するメチル基上の水素が離れて、ラジカルが発生する。このラジカル発生箇所は骨格の末端近傍で起こりやすい。発生したラジカルはエステル結合の電子吸引的な作用による影響により、非常に不安定である。このため、次の反応、つまりラジカルが他の部分に移動しようとする。その際、エステル結合の影響により、主鎖骨格方向へ動くこととなる。メチル基が結合している第4級炭素と、主鎖骨格方向に隣接する炭素との結合が切れ、該隣接炭素がラジカル化することで、分子切断が起こる。分子切断後は、主骨格と分子鎖が非常に短くなった骨格とに分かれ、主骨格側は反応が終息し、短くなった骨格側にラジカルが残る。ラジカルが残った側の骨格では、更なる反応で分解が進み、ガス化によりラジカルが消失して、全体のラジカル反応が終息する。つまり、不安定なラジカルが形成され、反応終息も急速に行われるため、周囲の酸素や水と反応する機会がより少なくなり、酸化が抑制されると考えられる。
Figure 0006905418
前記式(1)中のRが炭素数2以上6以下の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基である材料であることがより好ましい。環状構造でないために共鳴等による安定ラジカル形成が抑制される上、炭素が複数となり立体的な障害が増えることでこの部分における放電生成物との反応機会が少なくなり、酸化が抑制される。
更に好ましくは、前記Rが、下記式(2)から(5)で示される基からなる材料である。
(2)−C(CH
(3)−CH(CH
(4)−CH(CH)−C(CH
(5)−C(CH−CH(CH
前記R上にラジカルとなりやすい第2級炭素がなく、立体障害が大きくなることで酸化が抑制される。
また、更に好ましくは、(2)−C(CHからなる材料である。第3級炭素がなくなり、第4級炭素および第1級炭素からなることで、安定ラジカルがより形成されにくくなり、酸化による放電劣化が抑制されるためである。「第4級炭素」とは炭素原子に結合する隣の炭素原子の数が3で、かつ水素原子以外の原子(具体的には、酸素原子)に結合する炭素原子を意味するものとする。
〔中間層の製法〕
中間層は、導電性支持体上に、均一膜を形成できればよく、次のような公知の方法によって形成可能である。ディッピング、ロールコート法、スプレー法、静電塗布方法等のコーティング方法、押し出しや多色成形等のチューブ成形方法、インフレーション成形方法、ブロー成形方法、ラミネート等。全面に亘って、1μm以上5μm以下の膜厚で、より確実に電荷を蓄積させることが可能となる点で、ディッピング法で中間層を形成することが好ましい。
〔表面層も放射線崩壊型の樹脂〕
第2の実施形態に係る導電性部材において、表面層の骨格を構成する樹脂粒子は、放射線崩壊型の樹脂を含む必要はない。
しかし、当該樹脂粒子として、放射線崩壊型の樹脂を含有させた場合、表面層自体が、蓄積された電荷を維持でき、かつ、中間層も蓄積された電荷の漏えいを抑制できる。これにより、汚れ付着を抑制する効果をより一層向上させることができる。
<第1の実施形態および第2の実施形態に係る導電性部材に共通の構成>
〔表面層を保護する剛体構造体〕
表面層に付着しようとする汚れは、物理的にあるいは静電的に付着する。表面層を保護する剛体構造体を導入すると、表面層が感光ドラムに接触しなくなるため、物理的に汚れが付着する現象をほとんど回避することができる。
また、表面層の構造が変化すると、放電特性も変化する可能性がある。したがって、特に長期に亘る使用を目的とした場合、表面層を保護する剛体構造体を導入することで、感光ドラムの表面と表面層との摩擦、摩耗を低減し、表面層の構造の変化を抑制することが好ましい。ここで、剛体構造体とは、感光ドラムとの当接によって生じる当該剛体構造体の変形量が1μm以下である構造体のことを指す。当該剛体構造体を設ける方法は、本発明の効果を妨げない限りにおいて制限はなく、例えば導電性支持体の表面に凸部を形成する方法、導電性部材に離間部材を導入する方法等が挙げられる。
〔導電性支持体の表面の凸部〕
導電性支持体が図4(a)のような構成の場合、芯金42の表面を、凸部を有する形状に加工する方法が挙げられる。例としては、サンドブラスト、レーザー加工、研磨等により、芯金42の表面に凸部を形成する方法が挙げられる。なお、これ以外の方法により凸部を形成してもよい。
導電性支持体が図4(b)のような構成の場合、導電性樹脂層44の表面を、凸部を有する形状に加工する方法が挙げられる。例としては、当該導電性樹脂層44をサンドブラスト、レーザー加工、研磨等により加工する方法、当該導電性樹脂層44に有機粒子、無機粒子などのフィラーを分散させる方法等が挙げられる。
有機粒子の構成材料の例としては、以下のものが挙げられる。ナイロン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、スチレン−アクリル共重合体、ポリメチルメタクリレート樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、セルロース樹脂、ポリオレフィン樹脂、シリコーン樹脂等。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
また無機粒子の構成材料の例としては、以下のものが挙げられる。シリカなどの酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸ストロンチウム、ケイ酸バリウム、タングステン酸カルシウム、粘土鉱物、マイカ、タルク、カオリン等。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。また、有機粒子と無機粒子の両方ともを用いてもよい。
上記のような導電性支持体を加工する方法に加え、導電性支持体とは独立した凸部を導入する方法が挙げられる。例えば、ワイヤーなどの糸状の部材を巻きつける方法等が挙げられる。
当該凸部の密度としては、多孔質体を保護する効果を得るために、表面層に正対した方向から観察したときに、該表面層の表面の任意の位置における1辺が1.0mmの正方形の領域内に、少なくとも当該剛体構造体の一部が必ず観察される状態が好ましい。当該凸部の大きさ、太さは、本発明の効果を妨げない限りにおいて制限はない。具体的には、凸部が存在することに起因する画像不良が生じない範囲であることが好ましい。当該凸部の高さは、表面層の厚さよりも大きく、かつ、本発明の効果を妨げない限りにおいて制限はない。具体的には、少なくとも表面層の厚さよりも大きい高さを有し、かつ、放電ギャップが大きいことに起因する帯電不良が生じない範囲であることが好ましい。
〔離間部材〕
当該離間部材は、感光ドラムと表面層とを離間でき、かつ、本発明の効果を妨げない限りにおいて制限はなく、例えばリング、スペーサ等が挙げられる。
当該離間部材を導入する方法の一例としては、以下の方法が挙げられる。導電性部材がローラ形状の場合は、導電性部材よりも外径が大きく、かつ、感光ドラムと導電性部材との空隙を保持できる硬度を有するリングを、リングと導電性部材との回転中心が同じ位置になるように配置する方法。導電性部材がブレード形状である場合は、導電性部材と感光ドラムとが摩擦、摩耗しないように、両者を離間できるようなスペーサを導入する方法。
当該離間部材を構成する材料は、本発明の効果を妨げない範囲で制限はなく、かつ、当該離間部材を介した通電を防ぐために、非導電性の公知の材料を適宜使用すればよい。例えばポリアセタール樹脂、高分子量ポリエチレン樹脂、ナイロン樹脂などの摺動性に優れた高分子材料、酸化チタン、酸化アルミニウムなどの金属酸化物材料が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
当該離間部材を導入する位置としては、本発明の効果を妨げない範囲で制限はなく、例えば導電性支持体の長手方向の端部に設置等すればよい。
図6に、当該離間部材を導入した場合の導電性部材の一例(ローラ形状)を示す。図6中、60は導電性部材、61は離間部材、62は導電性の軸芯体を示す。
<プロセスカートリッジ>
図7は導電性部材を帯電ローラとして具備している電子写真用のプロセスカートリッジの概略断面図である。このプロセスカートリッジは、現像装置と帯電装置とを一体化し、電子写真装置の本体に着脱可能に構成されたものである。現像装置は、少なくとも現像ローラ73とトナー容器76とを一体化したものであり、必要に応じてトナー供給ローラ74、トナー79、現像ブレード78、および攪拌羽710を備えていても良い。帯電装置は、感光ドラム71、クリーニングブレード75、および帯電ローラ72を少なくとも一体化したものであり、廃トナー容器77を備えていても良い。帯電ローラ72、現像ローラ73、トナー供給ローラ74、および現像ブレード78は、それぞれ電圧が印加されるようになっている。
<電子写真装置>
図8は、導電性部材を帯電ローラとして用いた電子写真装置の概略構成図である。この電子写真装置は、四つの前記プロセスカートリッジが着脱可能に装着されたカラー電子写真装置である。各プロセスカートリッジには、ブラック、マゼンダ、イエロー、シアンの各色のトナーが使用されている。感光ドラム81は矢印方向に回転し、帯電バイアス電源から電圧が印加された帯電ローラ82によって一様に帯電され、露光光811により、その表面に静電潜像が形成される。
一方、トナー容器86に収納されているトナー89は、攪拌羽810によりトナー供給ローラ84へと供給され、トナー供給ローラ84から現像ローラ83上に搬送される。そして現像ローラ93と接触配置されている現像ブレード88により、現像ローラ83の表面上にトナー89が均一にコーティングされるとともに、摩擦帯電によりトナー89へと電荷が与えられる。
上記静電潜像は、感光ドラム81に対して接触配置される現像ローラ83によって搬送されるトナー89が付与されて現像され、トナー像として可視化される。
可視化された感光ドラム上のトナー像は、一次転写バイアス電源により電圧が印加された一次転写ローラ812によって、テンションローラ813と中間転写ベルト駆動ローラ814に支持、駆動される中間転写ベルト815に転写される。各色のトナー像が順次重畳されて、中間転写ベルト上にカラー像が形成される。
転写材819は、給紙ローラ(不図示)により装置内に給紙され、中間転写ベルト815と二次転写ローラ816の間に搬送される。二次転写ローラ816は、二次転写バイアス電源(不図示)から電圧が印加され、中間転写ベルト815上のカラー像を、転写材819に転写する。カラー像が転写された転写材819は、定着器818により定着処理され、装置外に排紙されプリント動作が終了する。
一方、転写されずに感光ドラム上に残存したトナーは、クリーニングブレード85により掻き取られて廃トナー収容容器87に収納され、クリーニングされた感光ドラム81は、上述の工程に繰り返し使用される。また転写されずに中間転写ベルト815上に残存したトナーもクリーニング装置817により掻き取られる。
本発明の一態様によれば、電子写真装置を長期に亘って使用しても、異常放電および汚れ付着を抑制でき、良好な画像形成をなす導電性部材を提供できる。また、本発明の他の態様によれば、長期間に亘って白抜け画像の発生を抑制し、さらに、帯電部材への汚れの付着で生じる帯電電位の低下を抑え、画像不良を抑制できるプロセスカートリッジおよび電子写真装置を提供できる。
<実施例1>
〔1.導電性支持体の作製〕
段階的に外径が異なっている全長252mmの丸棒状の快削鋼を用意した。前記丸棒の両端部11mmずつを除く中央230mmの範囲は外径8.5mmであり、両端部11mmの部分は、外径6mmである。実施例1では、前記丸棒状の快削鋼を導電性支持体A1とした。
〔2.樹脂粒子の準備〕
ポリイソブチレン(重量平均分子量100万、シグマアルドリッチ製)を、冷凍粉砕機(JFC−2000(日本分析工業(株)製))を使用して凍結粉砕した。次いで、分級機内蔵メディア撹拌型乾式連続超微粉砕機(商品名:ファインミル(SF型);日本コークス工業社製)を用いて、解砕分級を行い、50μm以上の粗粉を除去した。次いで、風力分級機(商品名:エルボジェットラボEJ−L3;日鉄鉱業社製)を用いて、粒径が2μm以下の微粉、および、粒径が8μm以上の粗粉を分級除去したポリイソブチレン粒子を得た。
〔3.表面層の形成〕
図9に粒子を塗布して表面層を形成する塗布装置の概略図を示す。当該粉塗布装置は粒子90、粒子貯蓄部91、粒子塗布ローラ92、および粒子被塗布部材93からなり、粒子被塗布部材93として導電性支持体A1を設置することで、表面層を形成できる。
粒子塗布ローラ92は、導電性芯金の外周に発泡層が形成された弾性スポンジローラであり、粒子被塗布部材93との対向部において所定の接触領域(ニップ部)を形成して配設され、図示矢印方向(時計まわり)に回転する。このとき、粒子塗布ローラ92は粒子被塗布部材に対し、所定の侵入量、すなわち、粒子塗布ローラ92が粒子被塗布部材93により凹状とされる、凹みを持って接触している。粒子を塗布する際には、接触領域において互いに逆方向に移動するよう回転しており、この動作により、粒子塗布ローラ92による粒子被塗布部材93への粒子塗布、及び粒子被塗布部材93上の粒子の剥ぎ取りを行っている。
表面層を形成する粒子90として凍結粉砕によって作製したポリイソブチレン粒子を、粒子塗布ローラ92を90rpm、導電性支持体A1を100rpmで10秒間駆動回転し、導電性支持体A1に塗布し、未加熱導電性部材a1を得た。
次いで、未加熱導電性部材a1をオーブンに搬入し、温度80℃で2時間の加熱を行って電子写真用の導電性部材(帯電ローラ)A1を得た。
(4.特性評価)
本実施例の導電性部材A1を以下の評価試験に供した。評価結果を表6に示す。なお、導電性部材がローラ形状の導電性部材である場合、x軸方向、y軸方向、及びz軸方向は、それぞれ以下の方向を意味する。
x軸方向は、ローラ(導電性部材)の長手方向である。
y軸方向は、x軸に直交するローラ(導電性部材)の横断面(すなわち、円形断面)における接線方向である。
z軸方向は、x軸に直交するローラ(導電性部材)の横断面における直径方向である。また「xy平面」とはz軸に直交する平面を意味し、「yz断面」とはx軸に直交する断面を意味する。
[評価4−1.3次元的に連続な骨格と厚み方向に連通した細孔の確認、および、骨格を構成する複数の樹脂粒子間のネックの有無の確認]
表面層が共連続構造を有するか否かは以下の方法により確認した。導電性部材A1の表面層に対して、収束イオンビーム法を使用して、x軸方向及びy軸方向に各250μmの長さ、z軸方向には導電性支持体A1を含む700μmの深さで切片を切り出した。次に、X線CT検査装置(商品名:TOHKEN−SkyScan2011(線源:TX−300)、マース東研X線検査(株)製)を用い、この切片に対して3次元再構築を行った。得られた3次元像から、z軸に対して間隔1μmで2次元のスライス画像(xy平面と平行)を切り出した。次に、これらのスライス画像を2値化し、骨格部と細孔部とを識別した。当該スライス画像をz軸に対して順に確認していき、骨格部が3次元的に連続で細孔部が厚み方向に連通しているか否かを確認した。なお、本評価の結果を示す表において、骨格部が3次元的に連続で細孔部が厚み方向に連通している場合には「Y」、骨格部が3次元的に連続で細孔部が厚み方向に連通していない場合には「N」と表記した。
また、当該骨格部が、ネックを介して互いに結合した複数の樹脂粒子で構成されているか否かを確認した。本評価の結果を示す表において、骨格部が、ネックを介して互いに結合した複数の樹脂粒子で構成されている場合には「Y」、骨格部が、ネックを介して互いに結合した複数の樹脂粒子で構成されていない場合には「N」と表記した。
[評価4−2.貫通孔の評価]
前記切片の表面に白金を蒸着させて蒸着切片を得た。次いで当該蒸着切片の表面をz軸方向から、走査型電子顕微鏡(SEM)(商品名:S−4800、(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて1000倍で撮影し、表面画像を得た。
次に当該表面画像を画像処理ソフトImage−pro plus(製品名、Media Cybernetics社製)で、150μm四方の領域に2.5μm間隔で分割線を縦に59本、横に59本作製し、合計3,600個の正方形群を形成し、評価画像を得た。
次いで、当該評価画像において、3,600個のグリッド(正方形)のうち、導電性支持体の表面を含む正方形の数を目視で数えた。評価は以下の基準で行った。評価結果を表6に示す。なお、「導電性支持体の表面を含む正方形」とは、「表面層の表面から導電性支持体の表面が目視で確認できる正方形」という意味である。
<評価基準>
ランクA:導電性支持体の表面を含む正方形の数の合計が5個以下である。
ランクB:導電性支持体の表面を含む正方形の数の合計が6個以上25個以下である。
ランクC:導電性支持体の表面を含む正方形の数の合計が26個以上100個以下である。
ランクD:導電性支持体の表面を含む正方形の数の合計が101個以上である。
[評価4−3.表面層の非導電性の評価]
表面層の体積抵抗率は、走査型プローブ顕微鏡(SPM)(商品名:Q−Scope250、Quesant Instrument Corporation社製)を用い、コンタクトモードで測定した。
まず、導電性部材A1(長手方向の長さ:230mm)を長手方向に10個の領域に等分した。各領域における表面層から、当該表面層を形成している骨格をピンセットで回収し、10個の試験片を用意した。該試験片の各々を、ステンレス鋼製の金属プレート上に設置して、10個の測定切片を作製した。次に、各測定切片について、金属プレート上の試料にSPMのカンチレバーを接触させ、カンチレバーに50Vの電圧を印加し、電流値を測定した。
また、該SPMで、各測定切片における試料の、電流値を測定した部分の厚さを算出し、試験片とカンチレバーとの接触面積を算出した。当該厚さと当該接部面積とから体積抵抗率を算出した。各測定切片から得られた体積抵抗率の平均値を、本評価における表面層の体積抵抗率とした。
上記測定を耐久評価前、耐久評価後に行い、これら2つの値の商から体積抵抗率の低下率を算出した。
[評価4−4.表面層のチャージアップ量の評価]
コロナ放電による導電性部材(帯電部材)の表面電位の測定は、帯電量測定装置(商品名:DRA−2000L、(株)QEA製)を用いて測定した。具体的には、当該帯電量測定装置のコロナ放電器を、そのグリッド部と、導電性部材A1の表面との間隙が1mmとなるように配置する。次いで、該コロナ放電器に8kVの電圧を印加して放電を発生させて、導電性部材の表面を帯電させ、放電終了後、10秒経過後の導電性部材の表面電位を測定する。長期使用による汚れ付着の抑制効果の確認のために、耐久評価前、耐久評価後に測定を行った。
[評価4−5.粒子の円相当径の平均値D1の評価]
1,000倍の実体顕微鏡で観察しながら、前記切片の表面にある表面層をピンセットによって崩し、導電性支持体の表面上で、粒子が変形しないように留意し、1つ1つにまで分解した。次に白金を蒸着させて蒸着切片を得た。次いで当該蒸着切片の表面をz軸方向から、走査型電子顕微鏡(SEM)(商品名:S−4800、(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて1,000倍で撮影し、表面画像を得た。
次いで、当該表面画像を画像処理ソフトImage−pro plus(製品名、Media Cybernetics社製)を使用して、粒子が白、導電性支持体の表面、が黒くなるように処理し、カウント機能で任意の50個の粒子の円相当径を測定した。これを、導電性部材A1の長手方向を10等分し、得られた10領域に対して上記の測定を行い、任意の合計500個の粒子の円相当径の測定をし、この500個の円相当径の算術平均を粒子の円相当径の平均値D1とした。
[評価4−6.ネック断面の円相当径の平均値D2の評価]
前記粒子の円相当径の平均値D1を測定した50個の粒子のうち、20個のネックの円相当径を画像処理ソフトImage−pro plus(製品名、Media Cybernetics社製)の距離測定機能を使用して測定した。次いで、上記粒子の円相当径D1と、ネックの円相当径D2との比を20個の粒子に対して算出した。
上記作業を、導電性部材A1を長手方向に10等分して得られる10個の領域の各領域内の任意の1点(合計200点)で行い、この200個の粒子の円相当径D1とネックの円相当径D2との比の算術平均をネック比Rとした。
[評価4−7.表面層の厚さの評価]
前記のX線CTの測定で得られた2次元のスライス画像を2値化し、骨格部と細孔部とを識別した。2値化したスライス画像それぞれにおいて、骨格部の占める割合を数値化し、導電性支持体側から表面層側へ至る各領域の数値の確認を行い、骨格部の占める割合が2%以上になった領域を表面層の最表面部とした。以上の方法で、表面層の厚さ(導電性支持体の表面から表面層の最表面部までの厚さ)を測定した。
上記作業を、導電性部材A1を長手方向に10等分して得られる10個の領域の各領域内の任意の1点(合計10点)で行い、その平均厚さを表面層の厚さとした。
[評価4−8.表面層の空孔率の評価]
前記のX線CTの評価で得られる3次元像において、細孔部の占める割合を数値化し、表面層の空孔率を求めた。上記作業を、導電性部材A1を長手方向に10等分して得られる10個の領域の各領域内の任意の1点(合計10点)で行い、その平均値を表面層の空孔率とした。
[評価4−9.ガラス転移温度Tgの測定]
先ず、導電性部材A1の表面層をピンセットで剥離し、3mgのサンプル量を得た。前記サンプルについて、示差走査熱量測定装置(ヤマト科学(株)製、DSC7020AS)を用いて、示差走査熱量測定を行った。温度−150℃にて30分間静置した後、10℃/分の昇温速度にて250℃まで変化させながら熱エネルギーの出入りを測定した。装置付属の解析ソフトにより、測定データよりガラス転移温度Tgを得た。
[評価4−10.非導電性の樹脂粒子の放射線崩壊性の確認]
この評価は、本発明に係る表面層を構成する樹脂粒子が、放射線崩壊型の樹脂で形成されているか否かを判定するものである。放射線崩壊型の樹脂であることの確認は、まず、コロナ放電に曝されていない、製造直後の電子写真用導電性部材から、表面層を構成している樹脂粒子をサンプリングし、該樹脂粒子を構成する樹脂の分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定する。次いで、所定の方法で、該電子写真用導電性部材について、コロナ放電処理を施した後、該電子写真用導電性部材の表面層を構成する樹脂粒子をサンプリングし、GPCにて分子量を測定する。そして、コロナ王電の前後における分子量の差異から、樹脂粒子中の樹脂が、放射線崩壊型であるか否かを判定する。以下、詳細に述べる。
まず、製造直後の、コロナ放電に一度も曝されていない、導電性部材A1から表面層から、5mgの試料を採取する。該試料を、トルエン、クロロベンゼン、テトラヒドロフラン(THF)、トリフルオロ酢酸、1,1,1,3,3,3‐ヘキサフルオロ‐2‐プロパノール(HFIP)のうち、溶解しやすい溶媒を選択して、濃度が、1質量%の試料溶液を調製する。なお、導電性部材A1の表面層から採取した試料については、溶媒にクロロベンゼンを用いた。
調製した試料溶液を用いて以下の条件にて分子量を測定した。温度40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定させ、この温度におけるカラムに溶離液として、試料の溶解に用いた溶媒を毎分1mLの流速で流す。該試料溶液の100μLをカラムに注入する。試料の分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を数種の単分散ポリスチレン標準試料(商品名:TSKgel標準ポリスチレン「0005202」〜「0005211」、東ソー社製)により作成された検量線の対数値とリテンションタイムとの関係から算出する。
また、GPC装置には、GPCゲル浸透クロマトグラフ装置(商品名:HLC−8120、東ソー社製)、検出器には、示差屈折率検出器(商品名:RI−8020、東ソー社製)を用いる。カラムには、市販のポリスチレンゲルカラム(商品名:TSK−GELSUPER HM−M、東ソー社製)を3本組み合わせる。
コロナ放電処理前の導電性部材A1に係る表面層からサンプリングされた試料のMwは100万であった。
続いて、導電性部材A1のコロナ放電処理は、春日電機(株)製のコロナ放電表面処理装置を用いて行った。実施環境はH/H環境(温度30℃、相対湿度80%の環境)であった。
コロナ放電の詳細な方法を、図10を用いて説明する。
導電性部材101の両端部102を支持部103で固定し、アルミニウム製のコロナ電極104の長手方向が、導電性部材101の長手方向と平行になるよう、そしてコロナ電極104の表面が導電性部材101の表面に向くよう位置を調整した。コロナ電極104の表面と導電性部材101の表面との最近接部分の距離は1mmとした。支持部103を毎分30回転の速度で回転させることで導電性部材101を回転させ、電極側に電源105から8KVを印加した状態を2時間継続した。
その後、導電性部材101の表面層から5mgの試料をサンプリングし、上記と同じ方法にてGPCによって重量平均分子量(Mw)を測定する。そして、コロナ放電後に係る導電性部材からサンプリングした試料のMwが、コロナ放電前の導電性部材からサンプリングした試料のMwよりも減少している場合には放射線崩壊型の樹脂であると判定した。
また、Mwが、コロナ放電後に上昇した場合には、放射線架橋型の樹脂であると判定した。各実施例および比較例に係る表面層および/または中間層を構成する樹脂粒子が「放射線崩壊型樹脂」であった場合は「Y」と表記し、「放射線架橋型樹脂」であった場合は「N」と表記した。
(5.画像評価)
導電性部材A1を以下の評価試験に供した。
[評価5−1.画質の評価 黒ポチ]
導電性部材A1の初期(耐久試験(繰り返し使用試験)前)の非導電性の骨格に由来する画像不良(黒ポチ)を抑制する効果を以下の方法により確認した。電子写真装置として、電子写真方式のレーザープリンタ(商品名:Laserjet CP4525dn、HP社製)を用意した。ただし、導電性部材を、より過酷な評価環境に置くために、当該レーザープリンタを、単位時間当たりの出力枚数が、オリジナルの出力枚数よりも多い、A4サイズの用紙で、50枚/分となるように改造した。その際、記録メディアの出力スピードは300mm/秒、画像解像度は1,200dpiとした。
次に、当該レーザープリンタ専用のトナーカートリッジに、帯電ローラとして導電性部材A1を装着した。このトナーカートリッジを上記のレーザープリンタに装填し、H/H環境(温度30℃、相対湿度80%の環境)下で、ハーフトーン画像(感光ドラムの回転方向と垂直方向に幅1ドット、間隔2ドットの横線を描く画像)を出力した。このときの帯電ローラと電子写真感光体との間の印加電圧を−1,200Vとした。得られた画像を、目視で観察し、帯電部材起因の画像不良の有無、および、画像不良が認められる場合にはその程度を下記基準に基づいて評価した。
<<評価基準>>
ランクA:黒点画像が無い。
ランクB:一部に軽微な黒点が見られる。
ランクC:全面に軽微な黒点が見られる。
ランクD:スジ状の黒い線が見られ、目立つ。
[評価5−2.白抜け画像の評価 白抜け画像発生電圧]
[評価5−1.画質の評価 黒ポチ]において得られた画像を目視で観察し、帯電部材からの局所的な強い放電に起因する画像ムラ(白抜け画像)の有無を観察した。
次いで、印加電圧を−1,010V、−1,020V、−1,030V・・・と10V毎に変えた以外は、上記と同様にして電子写真画像の出力、目視での評価を繰り返した。そして、帯電部材からの局所的な強い放電に起因する画像ムラ(白抜け画像)が目視にて確認できる電子写真画像が形成されたときの印加電圧を耐久試験前の白抜け画像発生電圧とした。
[評価5−3.耐久試験後の汚れ付着に由来する画像不良の評価 白ポチ]
次に耐久試験を行い、汚れ付着に由来する画像不良の評価を行った。
耐久試験は[評価5−1.画質の評価 黒ポチ]に記述の、プロセスカートリッジ、および電子写真装置を使用してH/H環境下で実施した。
耐久試験は、2枚の画像を出力した後、感光ドラムの回転を完全に約3秒間停止させ、画像出力を再開するという間欠的な画像形成動作を繰り返して80000枚の電子写真画像を出力するものである。この際の出力画像は、サイズが4ポイントのアルファベットの「E」の文字が、A4サイズの紙の面積に対し被覆率が4%となるように印字されるような画像とした。
耐久後、ハーフトーン(感光ドラムの回転方向と垂直方向に幅1ドット、間隔2ドットの横線を描く画像)画像を出力した。このハーフトーン画像に対し、汚れ付着に由来する画像不良を以下の基準で評価した。
<<評価基準>>
ランクA:汚れ付着に由来する画像欠陥が無い。
ランクB:一部に軽微な汚れ付着に由来する画像欠陥(白ポチ)が見られる。
ランクC:全面に軽微な汚れ付着に由来する画像欠陥(白ポチ)が見られる。
ランクD:全面に汚れ付着に由来する画像欠陥(白ポチ)が見られ、かつ、縦スジとして観察される。
<実施例2〜11>
〔1.導電性支持体の作製〕
実施例1に係る導電性支持体A1と同様にして導電性支持体を作製した。
〔2.樹脂粒子の準備〕
実施例2〜3に係る導電性部材の形成に用いる樹脂粒子は、50μmの粗粉を除去した後、風力分級機を用いて3μm以上の粒子を分級除去した以外は、実施例1に係るポリイソブチレン粒子と同様にして作製した。
また、実施例7〜8に係る導電性部材の形成に用いる樹脂粒子は、50μmの粗粉を除去した後、風力分級機を用いて15μm以下の粒子を分級除去した以外は、実施例1に係るポリイソブチレン粒子と同様にして作製した。
実施例4〜6、9〜11に係る導電性部材の形成に用いる樹脂粒子は、実施例1に係るポリイソブチレン粒子と同様にして作製した。
〔3.表面層の形成〕
上記2.で準備した樹脂粒子を用い、導電支持体の回転時間(塗布時間)を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして導電性部材A2〜A12を作製した。
Figure 0006905418
<実施例12〜19>
〔1.導電性支持体の作製〕
実施例1に係る導電性支持体A1と同様にして導電性支持体を作製した。
〔2.樹脂粒子の準備〕
樹脂粒子の材料を表2−1に記載の材料に変更した。また、実施例15に係る導電性部材の作製に用いる樹脂粒子は、50μmの粗粉を除去した後、風力分級機を用いて3μm以上の粒子を分級除去した。
また、実施例17に係る導電性部材の形成に用いる樹脂粒子は、50μmの粗粉を除去した後、風力分級機を用いて15μm以下の粒子を分級除去した。
それら以外は、実施例1に係るポリイソブチレン粒子と同様にして、実施例12〜19に係る導電性部材の形成に用いる樹脂粒子を作製した。
〔3.表面層の形成〕
上記2.で準備した樹脂粒子を用い、加熱温度ならびに加熱時間を表2−1に記載したように変更した以外は、実施例1と同様にして導電性部材A12〜A19を作製した。なお、表2−1中の分子量は重量平均分子量である。
Figure 0006905418
PIB:ポリイソブチレン;PαMS:ポリαメチルスチレン;PBMA:ポリメタクリル酸ブチル;PIBMA:ポリメタクリル酸イソブチル;POM:ポリアセタール
<実施例20>
解砕分級する際に、50℃で加熱しながら分級した、このとき、粒子の最表面が若干溶融されながら転がるため、球状粒子を得ることができる。当該球状粒子を使用した以外は、実施例1と同様にして導電性部材A20を製造した。
<実施例21>
まず、ポリイソブチレン樹脂をクロロベンゼンに溶解させてポリイソブチレン溶液を得た後、このポリイソブチレン溶液に対し、5質量%となるようラジカル捕捉剤であるp−ヒドロキノン(シグマアルドリッチ製)を添加した。十分に撹拌したのち、加熱によってクロロベンゼンを蒸発させ、ラジカル捕捉剤添加済のポリイソブチレン樹脂を得た。
次いで、ラジカル捕捉剤添加済のポリイソブチレン樹脂を使用した以外は実施例1と同様にして導電性部材A21製造した。
<実施例22>
リイソブチレン(重量平均分子量40万、シグマアルドリッチ製)を用いた以外は実施例20と同様にして導電性部材A22を製造した。
<実施例23>
表3に示す種類と量の各材料を加圧式ニーダーで混合してA練りゴム組成物を得た。さらに、前記A練りゴム組成物166質量部と、表2−2に示す種類と量の各材料をオープンロールにて混合し未加硫ゴム組成物を調製した。
Figure 0006905418
Figure 0006905418
快削鋼の表面に無電解ニッケルメッキ処理を施した全長252mm、外径6mmの丸棒を用意した。次に前記丸棒の両端部11mmずつを除く230mmの範囲に全周にわたって、接着剤を塗布した。接着剤は、導電性のホットメルトタイプのものを使用した。また、塗布にはロールコータ―を用いた。前記接着剤を塗布した丸棒を導電性の軸芯体(芯金)として使用した。その芯金表面に導電性樹脂層を設けた。導電性の軸芯体の供給機構、未加硫ゴムローラの排出機構を有するクロスヘッド押出機を用意し、クロスヘッドには内径12.5mmのダイスを取付け、押出機とクロスヘッドを80℃に、導電性の軸芯体の搬送速度を60mm/秒に調整した。
この条件で、押出機より未加硫ゴム組成物を供給して、クロスヘッド内にて導電性の軸芯体の外周面に未加硫ゴム組成物を弾性層として形成し、未加硫ゴムローラを得た。次に、170℃の熱風加硫炉中に前記未加硫ゴムローラを投入し、60分間加熱することで未研磨導電性ローラを得た。その後、弾性層の端部を切除、除去した。最後に、弾性層の表面を回転砥石で研磨した。これによって、中央部から両端部側へ各90mmの位置における各直径が8.4mm、中央部直径が8.5mmの導電性ローラを得た。
導電性支持体としてNBRゴムのついた導電性ローラを用いたこと以外は、実施例1と同様にして導電性部材A23を製造した。
<実施例24>
表4に記載の材料をオープンロールにて混合して、実施例23と同様の操作で未加硫ゴム組成物から製造した導電性基体を作製し、導電性ローラを得た。
導電性支持体としてヒドリンゴムの付いた導電性ローラを用いたこと以外は、実施例1と同様にして導電性部材A24を製造した。
Figure 0006905418
<実施例25>
先ず、カプロラクトン変性アクリルポリオール溶液にメチルイソブチルケトンを加え、固形分が10質量%となるように調整した。このアクリルポリオール溶液1000質量部(固形分100質量部)に対して、表5に示す材料を用いて混合溶液を調製した。このとき、ブロックHDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)とブロックIPDI(イソホロンジイソシアネート)との混合物は、イソシアネート基とヒドロキシル基とのモル比(NCO/OH)が1.0であった。
Figure 0006905418
次いで、450mLのガラス瓶に上記混合溶液210gと、メディアとして平均粒径0.8mmのガラスビーズ200gとを混合し、ペイントシェーカー分散機を用いて24時間前分散を行った。その後、非架橋アクリル粒子(型式:MX−500 総研化学(株)製)10phrと、メディアとして平均粒径0.8mmのガラスビーズ200gとを混合し、ペイントシェーカー分散機を使用して10分間分散を行い、導電性樹脂層形成用の塗料を得た。なお、「phr」は、未加硫ゴム組成物100質量部に対する添加量(質量部)を意味する。
前記導電性支持体A1を、その長手方向を鉛直方向にして、前記導電性樹脂層形成用の塗料中に浸漬してディッピング法で塗工した。ディッピング塗布の浸漬時間は9秒間、引き上げ速度は、初期速度が20mm/秒、最終速度が2mm/秒、その間は時間に対して直線的に速度を変化させた。得られた塗工物を常温で30分間風乾し、次いで温度90℃に設定した熱風循環乾燥機中において1時間乾燥し、さらに温度160℃に設定した熱風循環乾燥機中において1時間乾燥した。
その後、実施例1と同様にして表面層を形成し、導電性部材A25を製造した。
<実施例26>
導電性部材A1に対し、離間部材(導電性樹脂層端部に、外径8.6mm、内径6mm、幅2mmのリング)を取り付け、導電性部材A26を製造した。
<比較例1>
表面層を形成しなかったこと以外は、実施例25と同様にして導電性部材C1を製造した。
<比較例2>
表面層を形成後に、加熱をしなかったこと以外は、実施例1と同様にして導電性部材C2を製造した。
<比較例3>
粒子として炭素粒子(日本カーボン製PC1020)を使用した以外は、実施例1と同様にして導電性部材C3を製造した。
<比較例4>
ファインミルによる分級の際に、表面層の粒子の円相当径の平均値が35μmとなるようにした以外は実施例1と同様にして導電性部材C4を製造した。
<比較例5>
表面層の加熱温度を150℃にした以外は、実施例1と同様にして導電性部材C5を製造した。
<比較例6>
表面層の粒子の材料をポリスチレン(シグマアルドリッチ、重量平均分子量26万品)にした以外は、実施例1と同様にして導電性部材C6を製造した。
実施例1〜26に係る導電性部材A1〜A26および比較例1〜6に係る導電性部材C1〜C6を、実施例1に記載した評価4−1〜4−10および評価5−1〜5−3に供した。その結果を表6−1〜表6−6、および表7に示した。各表の内容は以下の通りである。
表6−1:実施例1〜18の評価4−1〜4−4の結果を示す。
表6−2:実施例1〜18の評価4−5〜4−10の結果を示す。
表6−3:実施例19〜26の評価4−1〜4−4の結果を示す。
表6−4:実施例19〜26の評価4−5〜4−10の結果を示す。
表6−5:比較例1〜6の評価4−1〜4−4の結果を示す。
表6−6:比較例1〜6の評価4−5〜4−10の結果を示す。
表7:実施例1〜26および比較例1〜6の評価5−1〜5−3の結果を示す。
なお、比較例1にかかる導電性部材C1表面層を有さないため、評価4−1〜4−10に供さなかった。後述する表6−5、表6−6では、「−」と表記した。
さらに、比較例5に係る導電性部材C5については、表面層がネックを有さない膜であるため、表6−6中の評価4−6に係る「ネック断面の円相当径の平均値D2」の欄は「−」と表記した。
Figure 0006905418
Figure 0006905418
Figure 0006905418
Figure 0006905418
Figure 0006905418
Figure 0006905418
Figure 0006905418
<実施例27>
実施例27から実施例40は放射線崩壊型の樹脂を含む中間層を有する構成の実施例である。
〔中間層の形成〕
中間層は下記の様にして形成した。
まず、ポリメタクリル酸ターシャリーブチル(シグマアルドリッチ製、重量平均分子量17万品)をジメチルアセチルアミドに1質量%溶解し、塗工液1を得た。
前記導電性支持体A1を、その長手方向を鉛直方向にして、塗工液1中に浸漬してディッピング法で塗工した。ディッピング塗布の浸漬時間は9秒間、引き上げ速度は、初期速度が20mm/秒、最終速度が2mm/秒、その間は時間に対して直線的に速度を変化させた。得られた塗工物を常温で30分間風乾し、温度160℃に設定した熱風循環乾燥機中において1時間乾燥して導電性支持体B1を得た。
〔評価6−1;中間層の非導電性の評価〕
中間層の非導電性の評価は以下の方法により行った。中間層の体積抵抗率は、走査型プローブ顕微鏡(SPM)(商品名:Q−Scope250、Quesant Instrument Corporation社製)を用い、コンタクトモードで測定した。
まず、導電性支持体B1を長手方向に10個の領域に等分した。そして、各領域から、当該中間層を、収束イオンビーム法によって、x軸方向に1mm、y軸方向に各500μmの長さ、z軸方向には導電性支持体A1を含む700μmの深さで切片を切り出して、10個の試験片を作製した。次いで、該試験片の各々を、ステンレス鋼製の金属プレート上に、導電性支持体A1の部分が、金属プレートと接するように置いて、10個の測定切片を得た。
次に、各測定切片の中間層の部分に、SPMのカンチレバーを接触させ、カンチレバーに50Vの電圧を印加し、電流値を測定した。
次に、各試験片のyz断面を観察し、中間層の厚さを測定した。さらに、当該厚さと電流値から体積抵抗率を算出した。各試験片から得られた体積抵抗率の平均値を、本評価における中間層の体積抵抗率とした。
〔評価6−2;中間層の厚さの測定〕
上記評価6−1において、各試験片から測定した中間層の厚みの平均値を、本評価における中間層の厚さとした。
〔評価6−3;中間層が放射線崩壊型の樹脂であることの評価・ガラス転移温度Tgの評価〕
中間層を導電性支持体B1から剥離して試験片とした以外は、表面層における評価の方法と同様にして、放射線崩壊型の樹脂の判定、およびガラス転移温度Tgの評価を行った。
〔中間層の外周への表面層の形成〕
導電性支持体A1の代わりに導電性支持体B1を使用し、さらに、表面層の粒子としてポリスチレン(シグマアルドリッチ製、重量平均分子量26万)を使用し、粒子堆積後の加熱温度を140℃、加熱時間を3時間にした。これらの点以外は、実施例1と同様にして導電性部材B1を製造した。
本実施例で得られた導電性部材B1を、実施例1に記載の評価4−1〜4−10、評価5−1〜5−3に供した。
<実施例28〜40>
塗工液1を、下記表8に示す塗工液2〜14に変更した以外は、実施例27と同様にして導電性部材B2〜B14を製造した。導電性部材B2〜B14に係る中間層について、実施例27に記載の評価6−1〜6−3に供した。
また、導電性部材B2〜B14を、実施例1に記載の評価4−1〜4−10、評価5−1〜5−3に供した。
Figure 0006905418
表8中、「材料」欄に記載の分子量は重量平均分子量である。また、同欄に記載の材料の略称の詳細は、下記の通りである。
PtBMA:ポリメタクリル酸ターシャリーブチル(R:−C(CH)、PMMA:ポリメタクリル酸メチル(R:−CH)、
PEMA:ポリメタクリル酸エチル(R:−CHCH)、
PBMA:ポリメタクリル酸ブチル(R:−CHCHCHCH)、
PiBMA:ポリメタクリル酸イソブチル(R:−CHCH(CH)、
PiPMA:ポリメタクリル酸イソプロピル(R:−CH(CH)、
P(B−iB)MA:メタクリル酸ブチル−メタクリル酸イソブチル共重合体、
P(B−E)MA:メタクリル酸ブチル−メタクリル酸エチル共重合体、
PαMS:ポリアルファメチル酸スチレン
PCMA:ポリメタクリル酸シクロヘキシル(R:−Cy)、
POM:ポリアセタール
HFIP:1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール。
<実施例41>
実施例27と同様にして中間層を製造し、その後に実施例1と同様にして表面層を形成して導電性部材B15を製造した。導電性部材B15に係る中間層について、実施例27に記載の評価6−1〜6−3に供した。
また、導電性部材B15を、実施例1に記載の評価4−1〜4−10、評価5−1〜5−3に供した。
<比較例7>
表面層の粒子の材料と中間層の材料を共に、ポリスチレン(シグマアルドリッチ、重量平均分子量26万品)を使用した以外は、実施例27と同様にして導電性部材C7を製造した。導電性部材C7に係る中間層について、実施例27に記載の評価6−1〜6−3に供した。
また、導電性部材C7を実施例1に記載の評価4−1〜4−10、評価5−1〜5−3に供した。
<比較例8>
塗工液1にイオン導電性付与剤として、第四級アンモニウム塩(商品名:アデカサイザーLV70、旭電化工業(株)製)を5質量%添加した以外は、実施例27と同様にして導電性部材C8を製造した。導電性部材C8に係る中間層について、実施例27に記載の評価6−1〜6−3に供した。
また、導電性部材C8を、実施例1に記載の評価4−1〜4−10、評価5−1〜5−3に供した。
実施例27〜41、比較例7〜8についての評価6−1〜6−3の評価結果を表9に示す。また、評価4−1〜4−10の評価結果を表10−1及び表10−2に示す。さらに、評価5−1〜5−3の評価結果を表11に示す。
Figure 0006905418
Figure 0006905418
Figure 0006905418
Figure 0006905418
10 帯電部材
11 感光ドラム
12 汚れ
13 電源
14 アース
20 表面層
21 帯電部材
22 感光ドラム
23 プラス極性のイオン
24 マイナスの電荷
31 表面層
32 芯金
33 導電性樹脂層

Claims (20)

  1. 導電性支持体と、該導電性支持体の上に形成された表面層と、を有する電子写真用の導電性部材であって、
    該表面層は3次元的に連続な骨格を有し、かつ、厚み方向に連通してなる細孔を有し、該表面層の表面の、任意の150μm四方の領域を撮影し、該領域を縦に60等分、横に60等分して3,600個の正方形に等分割したときに、貫通孔が含まれている正方形の数が100個以下であり、
    該骨格は、非導電性であり、
    該骨格が、ネックを介して互いに結合した複数の樹脂粒子で構成され、
    該樹脂粒子が、放射線崩壊型の樹脂を含み、かつ、
    該樹脂粒子の円相当径の平均値D1が0.1μm以上20μm以下である、
    ことを特徴とする電子写真用の導電性部材。
  2. 前記放射線崩壊型の樹脂のガラス転移温度Tgが−150℃以上100℃以下である請求項1に記載の電子写真用の導電性部材。
  3. 前記放射線崩壊型の樹脂が、ポリイソブチレン、ポリαメチルスチレン、ポリメタクリル酸ブチル、ポリメタクリル酸イソブチル、および、ポリアセタールからなる群から選択される何れかである請求項1または2に記載の電子写真用の導電性部材。
  4. 前記ネックの断面の円相当径の平均値D2が前記平均値D1の0.1倍以上0.7倍以下である請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子写真用の導電性部材。
  5. 前記表面層の厚さが1μm以上30μm以下である請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子写真用の導電性部材。
  6. 前記表面層の体積抵抗率が1×1012Ω・cm以上1×1017Ω・cm以下である請求項1〜5のいずれか一項に記載の電子写真用の導電性部材。
  7. 前記表面層の空孔率が20%以上80%以下である請求項1〜6のいずれか一項に記載の電子写真用の導電性部材。
  8. 導電性支持体、中間層および表面層をこの順に有する電子写真用の導電性部材であって、
    該表面層は3次元的に連続な骨格を有し、かつ、厚み方向に連通してなる細孔を有し、
    該表面層の表面の、任意の150μm四方の領域を撮影し、該領域を縦に60等分、横に60等分して3,600個の正方形に等分割したときに、貫通孔が含まれている正方形の数が100個以下であり、
    該骨格は、非導電性であり、
    該骨格が、ネックを介して互いに結合した複数の樹脂粒子で構成され、
    該樹脂粒子の円相当径の平均値D1が0.1μm以上20μm以下であり、かつ、
    該中間層は、放射線崩壊型の樹脂を含み、かつ、非導電性である、ことを特徴とする電子写真用の導電性部材。
  9. 前記中間層の体積抵抗率が、1×1012Ω・cm以上1×1017Ω・cm以下である請求項8に記載の電子写真用の導電性部材。
  10. 前記中間層の体積抵抗率が、1×1015Ω・cm以上1×1017Ω・cm以下である請求項9に記載の電子写真用の導電性部材。
  11. 前記放射線崩壊型の樹脂が、式(1)で示される構成単位を有するアクリル樹脂である請求項8〜10のいずれか一項に記載の電子写真用の導電性部材:
    Figure 0006905418
    式(1)中、Rは、炭素数1〜6の炭化水素基を表す。
  12. 前記Rが炭素数2以上6以下の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基である請求項11に記載の電子写真用の導電性部材。
  13. 前記Rが、下記式(2)から(5)で示される基からなる群から選択される少なくとも1つである請求項11または12に記載の電子写真用の導電性部材:
    (2)−C(CH
    (3)−CH(CH
    (4)−CH(CH)−C(CH
    (5)−C(CH−CH(CH
  14. 前記Rが−C(CHである請求項11〜13のいずれか一項に記載の電子写真用の導電性部材。
  15. 前記放射線崩壊型の樹脂が、ポリメタクリル酸ターシャリーブチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリメタクリル酸イソブチル、ポリメタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸ブチル−メタクリル酸イソブチル共重合体、メタクリル酸ブチル−メタクリル酸エチル共重合体、ポリアルファメチルスチレン、ポリメタクリル酸シクロヘキシル、およびポリアセタールからなる群から選択される何れかである請求項8〜10のいずれか一項に記載の電子写真用の導電性部材。
  16. 前記中間層の厚さが、1μm以上5μm以下である請求項8〜1のいずれか一項に記載の電子写真用の導電性部材。
  17. 前記骨格を構成する樹脂粒子が、放射線崩壊型の樹脂を含む請求項8〜1のいずれか一項に記載の電子写真用の導電性部材。
  18. 前記導電性部材が前記表面層を保護する剛体構造体を備える請求項1〜1のいずれか一項に記載の電子写真用の導電性部材。
  19. 電子写真装置の本体に着脱可能に構成されているプロセスカートリッジであって、請求項1〜1のいずれか一項に記載の導電性部材を具備していることを特徴とするプロセスカートリッジ。
  20. 請求項1〜1のいずれか一項に記載の導電性部材を具備していることを特徴とする電子写真装置。
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