以下、本発明の一実施形態にかかる電動工具について図1乃至図10を参酌しつつ説明する。本実施形態における電動工具は、先端部に図示しない先端工具を取り付けて使用するインパクトドライバである。先端部外周面には前後に往復動可能に構成されたスリーブ9が設けられており、該スリーブ9を前方に引き出して先端工具の後端部をチャック孔10に差し込み、スリーブ9から手を離すとスリーブ9が自動的に後方に戻って先端工具が固定される構成になっている。先端工具は、ネジ締め作業を行うためのネジ締め用のビットのみならず、研磨パッドやミキサ等、種々存在し、チャック孔10に差し込み可能な取付部を有するものであれば種類は問わない。
図1及び図2に電池パック1を二点鎖線で示しているが、電動工具は、下面に電池パック1を着脱自在に装着するための電池装着部2を備えている。電池装着部2の上面後部から上方に向けてグリップ部3が延びていて、該グリップ部3の上側にはヘッド部4が設けられている。該ヘッド部4は全体として前後方向に長い形状であって、グリップ部3はヘッド部4の前後方向の中央部に位置している。ヘッド部4にはモータ21(図4参照)が内蔵されている。ヘッド部4の先端部に先端工具が取り付けられ、取り付けられた先端工具をモータ21によって回転させる。
グリップ部3の上端部ないしはグリップ部3とヘッド部4との境界部近傍には、モータ21の回転方向を正逆切り替えるための正逆切替スイッチ6が設けられている。該正逆切替スイッチ6の構成は任意であるが、本実施形態としては、左右に往復動する構成であって、左右の一方から他方に向けて正逆切替スイッチ6を押し込むと、一方側の突出量が小さくなって他方側の突出量が大きくなり、逆に、他方から一方に押し込むと、他方側の突出量が小さくなって一方側の突出量が大きくなる。正逆切替スイッチ6を図2の矢印Aの方向に押し込むと正位置となってモータ21は正転となり、正逆切替スイッチ6を図2の矢印Bの方向に押し込むと逆位置となってモータ21は逆転となる。尚、正転は、ヘッド部4を後方から見たときにおいて右回転(時計回り)であって、ネジを締め込んでいくときの回転方向であり、逆転は、ヘッド部4を後方から見たときにおいて左回転(反時計回り)であって、ネジを緩めていくときの回転方向である。尚、正位置と逆位置との間に中立位置があり、中立位置では左右の突出量は互いに略同じである。
グリップ部3の上部前面にはトリガ7(トリガスイッチ)が設けられている。該トリガ7は常時は前側に付勢されていて突出した状態にあり、その状態から後方に向けて押し込む構成、即ち、作業者側から言えば手前に引く構成となっており、トリガ7を引くと電源がONとなってモータ21が作動し、トリガ7を放すと元の突出位置まで戻って電源がOFFとなってモータ21が停止する。また、トリガ7の引き量に応じてモータ21の回転数が増減し、引き量が大きくなるとモータ21の回転数が大きくなり、引き量が小さくなるとモータ21の回転数は小さくなる。正逆切替スイッチ6を中立位置にすると、トリガ7を引いたとしても電源がONにはならず、モータ21の停止状態をキープできる。尚、正逆切替スイッチ6を中立位置にすると、トリガ7を引くこと自体ができないようにして、モータ21の停止状態をキープできるように構成することもできる。
尚、ヘッド部4の前部には前方を照らすためのライト8が設けられている。該ライト8は具体的にはLEDライトが好ましい。該ライト8は、左右方向の中央部に位置していて、トリガ7の上側に位置している。
電池装着部2の上面には操作パネル5が設けられている。図3(a)に第一の実施形態の操作パネル5の詳細を示している。操作パネル5には、向かって左側から順に、電池残量を示す電池残量表示部11と、インパクトドライバの作動のモードを切り替えるためのモード切替スイッチ13(モード切替ボタン)と、モード切替スイッチ13によって切り替えられたモードの種類を表示するためのモード表示部14と、ライト8のON/OFFスイッチ12とが設けられている。モード切替スイッチ13は押しボタン式であって、一回押す毎にモードが次のモードへと切り替わり、順次モードを切り替えていくことができる。従って、モード切替スイッチ13は、複数のモードから任意のモードを選択するためのスイッチとして機能している。
本実施形態では、汎用モードと専用モードとを備えている。具体的には、三種類の汎用モードと二種類の専用モードとからなる合計五種類のモードを備えている。上述のようにモータ21の回転数はトリガ7の引き量に応じて0から所定の最大回転数まで変化するが、そのモータ21の最大回転数を大(強)、中、小(弱)と三段階に切り替えることができる三つの汎用モードを備えている。即ち、最大回転数が三つのモードの中で最も大きい強モードと、最大回転数が中程度である中モードと、最大回転数が三つのモードの中で最も小さい弱モードとを備えている。一例を挙げると、強モードの場合には最大回転数が毎分2400回転となり、中モードの場合には最大回転数が毎分2200回転となり、弱モードの場合には最大回転数が毎分1900回転となる。強モードでは0〜2400回転の間で可変であって、中モードでは0〜2200回転の間で可変であり、弱モードでは0〜1900回転の間で可変である。専用モードは、木ネジやタッピングネジ等のように部材にネジ切りしながらねじ込んでいく種類のネジを締結する作業に適した木ネジモードと、モータ21の回転数を所定のロック回転数に保持するオンロックモードである。
これらの複数のモードの切り替えをモード切替スイッチ13で行う。モード切替スイッチ13を押していくと、強モードから中モード、中モードから弱モード、弱モードから木ネジモード、木ネジモードからオンロックモードへと順番に切り替えていくことができ、そしてオンロックモードから強モードへと元に戻って切り替えることができる。モード表示部14には各モード毎のインジケータ141,142,143,144,145(ランプ)が設けられており、従って、本実施形態では合計五つのインジケータ141,142,143,144,145が設けられていて、それらは縦方向に一列で配置されており、選択されたモードに対応したインジケータ141,142,143,144,145が点灯あるいは点滅する。モード切替スイッチ13を押す毎にモードが順番に切り替わっていくと共にインジケータ141,142,143,144,145も順番に点灯あるいは点滅していき、選択された現在のモードを作業者に知らせる。
即ち、操作パネル5のモード表示部14には、強モードのインジケータ141、中モードのインジケータ142、弱モードのインジケータ143が、その順で配置され、その隣には「強」「中」「弱」という文字が印字されている。また、弱モードのインジケータ143の次に木ネジモードのインジケータ144が配置され、その横には「テクス」という文字が印字されている。木ネジモードのインジケータ144の次にオンロックモードのインジケータ145が配置され、その横には「回転数保持」という文字が印字されている。尚、操作パネル5における文字の表記は任意であって、種々変更可能である。
図4に電動工具の駆動制御系の概略ブロック図を示している。電動工具は、モータ21を駆動制御するための制御部20を備えており、該制御部20は、トリガ7、モード切替スイッチ13、正逆切替スイッチ6からそれぞれ信号を受け、その信号に基づいてモータ21を駆動制御する。
制御部20は、トリガ7が引かれると、電源をONの状態としてモータ21を作動させ、トリガ7が元の状態に戻ると、電源をOFFの状態としてモータ21を停止させる。また、トリガ7はトリガ7の引き量に応じた信号を制御部20に送り、制御部20はその信号を受けてモータ21を駆動する駆動電圧を増減させてモータ21の回転数を増減させる。尚、モータ21の駆動制御はPWM制御である。トリガ7の引き量とモータ21の回転数との関係、即ち、ストローク特性は、予め制御パターンとして記憶されていて、その記憶されている制御パターンに基づいて制御部20はモータ21を駆動制御する。
モード切替スイッチ13が切り替え操作されると、制御部20は選択されたモードに応じてモータ21を駆動制御する。上述のように本実施形態においては、強モード、中モード、弱モードという三つの汎用モードと、木ネジモード、オンロックモードという二つの専用モードを備えている。それらの各モードに対応した制御パターンが予め記憶部22(メモリ)に記憶されており、制御部20は、モードに対応した制御パターンを記憶部22から読み出し、その制御パターンに基づいてモータ21を駆動制御する。
図5に汎用モードの制御パターンを概念的に示している。図5の横軸はトリガ7の引き量であり、縦軸はモータ21の回転数である。図5に、強モードの制御パターン30、中モードの制御パターン31、弱モードの制御パターン32のそれぞれを示している。何れの制御パターンにおいても、トリガ7の引き量が一定以上になるとそれ以上モータ21の回転数は増加せずに一定の最大回転数を維持する。そのモータ21の最大回転数は制御パターン毎に異なっている。また、最大回転数に至るまでの区間における引き量に対する回転数の増加率も制御パターン毎に異なっている。三つのモードのうち、強モードにおける最大回転数が最も大きく、引き量に対する回転数の増加率(勾配)も強モードが最も大きい。弱モードの最大回転数が最も小さく弱モードの増加率が最も小さい。中モードは強モードと弱モードの間に位置する中間程度のものである。
尚、正逆切替スイッチ6が切り替え操作されると、正逆切替スイッチ6の位置に対応して制御部20はモータ21を駆動制御する。即ち、正逆切替スイッチ6が正位置にある場合、制御部20は、トリガ7が引き込まれるとモータ21を正転させる。正逆切替スイッチ6が逆位置にある場合、制御部20は、トリガ7が引き込まれるとモータ21を逆転させる。尚、正逆切替スイッチ6が中立位置にある場合には、トリガ7を引いたとしても電源がONにならず、モータ21は停止状態のままである。
また、制御部20は、モータ21の回転負荷を検出する回転負荷検出部を備えている。回転負荷としては、モータ21の電流値やモータ21の回転数をパラメータとすることができ、その何れか一方を用いてもよいし、両方とも用いるようにしてもよい。電流値の場合、電流値が所定値になると、回転負荷が所定値に達したと判断する。回転数の場合、回転数が第一の回転数から第二の回転数まで低下すると、回転負荷が所定値に達したと判断する。このように、制御部20は、モータ21の電流値を検出する電流値検出部と、モータ21の回転数を検出する回転数検出部を備えることができる。
<木ネジモード>
次に木ネジモードについて説明する。モード切替スイッチ13によって木ネジモードが選択されると、制御部20は、木ネジモードに対応した制御パターンに基づいてモータ21を駆動制御する。木ネジモードは、低速モードと高速モードという二つのモードを有している。低速モードは、モータ21の最大回転数が相対的に小さい第一最大回転数としてモータ21を制御するモードであり、高速モードは、モータ21の最大回転数が相対的に大きい、即ち第一最大回転数よりも大きい第二最大回転数としてモータ21を制御するモードである。図6に木ネジモードの制御パターンを示している。図6の横軸はトリガ7の引き量を所定のカウント数(PWM)に置き換えたものであり、縦軸はモータ21の回転数を所定のカウント数(PWM)に置き換えたものである。木ネジモードの制御パターンには、図6のように低速モードの制御パターン40と、高速モードの制御パターン41という二つの制御パターンがある。図6において、低速モードの制御パターン40を実線で示しており、高速モードの制御パターン41を二点鎖線で示している。
本実施形態においてトリガ7を最大限まで引いたときの引き量のカウント数、即ち、引き量のカウント数の最大値は「255」であり、また、モータ21の許容最大回転数のカウント数は「255」である。トリガ7の引き量が小さい初期段階では、低速モードの制御パターン40と高速モードの制御パターン41は同じであって、その引き初めの領域におけるモータ21の回転数のカウント数は例えば「5」である。そのカウント数「5」は引き量のカウント数が例えば「30」まで一定である。また、低速モードと高速モードは最大回転数が異なっている。低速モードの最大回転数(第一最大回転数)のカウント数は例えば「65」であり、高速モードの最大回転数(第二最大回転数)のカウント数は例えば「200」である。そして、引き初めの領域のカウント数「5」からそれぞれの最大回転数に至るまでの増加率も低速モードと高速モードとで異なっており、高速モードの方が増加率は大きい。低速モードと高速モードの何れにおいてもトリガ7が所定の引き量になると、モータ21の回転数は最大となる。トリガ7のカウント数が例えば「175」になると、低速モードと高速モードの何れにおいてもモータ21は各モードにおける最大回転数となり、それ以上、トリガ7を引いてもモータ21の回転数は上昇せずそれぞれ一定のままである。
制御部20は、正逆切替スイッチ6が正位置にあるときに木ネジモードが選択されると、以下のようにモータ21を制御する。即ち、モータ21の回転負荷が所定値未満のときには、トリガ7の引き量に関わらず低速モードとする。モータ21の回転負荷が所定値以上となっているけれども、トリガ7の引き量が所定量未満のときには、低速モードとする。そして、モータ21の回転負荷が所定値以上になっていて、更にトリガ7の引き量が所定量以上になると、高速モードとする。木ネジを部材にねじ込んでいく際、ねじ込み初期の段階ではモータ21の回転負荷は小さい。その後、ある程度ねじ込んでいくと、回転負荷が大きくなっていってやがて所定値に達する。回転負荷が増加したことを判断する要素としては上述のように例えば電流値の増加や回転数の低下があり、それらを検出することで回転負荷が所定値になったか否かを判断することができる。
具体的には、トリガ7の引き量のカウント数が「210」以上になったか否かを判断して、トリガ7の引き量のカウント数が「210」未満の場合には低速モードで制御する。トリガ7の引き量のカウント数が「210」以上になると、そのときのモータ21の回転数を読み込んで、モータ21の回転数のカウント数が「60」以下であるか否かを判断する。低速モードにおいて最大回転数のときのモータ21の回転数のカウント数は「65」であるから、モータ21の回転数のカウント数「60」は、低速モードにおいて最大回転数のときのモータ21の回転数のカウント数である「65」からカウント数「5」だけ低下したものである。モータ21の回転数のカウント数が「60」よりも大きい場合には、モータ21の回転数が所定値まで低下していない、即ち、回転負荷が所定値に達していないと判断して、低速モードを継続する。モータ21の回転数のカウント数が「60」になると、モータ21の回転数が所定値まで低下した、即ち、回転負荷が所定値以上に増加したと判断して、制御部20は、低速モードから高速モードへ移行する。図6に示しているように高速モードにおける最大回転数のカウント数は「200」である。従って、モータ21の回転数のカウント数を「60」から「200」まで上昇させる。そして、トリガ7の引き量のカウント数が「210」未満となった場合には、高速モードから元の低速モードへと戻す。
<オンロックモード>
次に、オンロックモードについて説明する。制御部20は、モード切替スイッチ13によってオンロックモードが選択されると、オンロックモードに対応した制御パターンに基づいてモータ21を駆動制御する。図7にオンロックモードの制御パターン(ストローク特性)を示している。但し、オンロックモードでは、トリガ7が引かれていない状態でも、モータ21の回転数を所定の回転数に保持して連続的に回転させる。そのときの所定の回転数をロック回転数と称することにする。
以下、図8に示すフローチャートに基づいてオンロックモードの第一の実施形態の詳細について説明する。モード切替スイッチ13によってオンロックモードが選択されると(S100)、制御部20は、記憶部22に記憶されているオンロックモード用の制御パターンを読み出し、その制御パターンをトリガ7のストローク特性として設定すると共に(S102)、モード表示部14におけるオンロックモードのインジケータ145を点滅させる(S104)。インジケータ145を点滅させることで、作業者にオンロックモードが待機状態にあることを知らせる。
作業者は、インジケータ145の点滅状態を見てオンロックモードが待機状態にあることを確認したうえで、トリガ7を引いてモータ21を回転させ、所望の回転数まで回転数を上昇させる。制御部20はトリガ7が引かれたか否かをチェックし(S106)、再度、トリガ7が引かれている状態にあるかどうかを確認する(S108)。その後、作業者は、所望の回転数になったところでモード切替スイッチ13を押す。制御部20は、モード切替スイッチ13が押されたことを確認すると(S110)、モード切替スイッチ13が押されたときのモータ21の回転数をロック回転数に設定し、モータ21の回転数をロック回転数に維持してモータ21を連続回転させる(S112)。また、制御部20は、モード切替スイッチ13が押されると、インジケータ145を点灯させて(S114)、オンロックモードが待機状態から作動状態に移行したことを作業者に知らせる。作業者は、モード切替スイッチ13を押した後、トリガ7の引き操作を停止してトリガ7をリリースする。トリガ7をリリースしても、モータ21はロック回転数で回転し続ける。従って、作業者はトリガ7を引き続けなくても研磨作業や撹拌作業等を連続して行うことができる。
制御部20は、トリガ7が完全にリリースされたことを確認し(S116)、トリガ7がリリースされた状態で所定時間経過すると(S118)、モータ21を自動的に停止させる(S122)。その時間は任意であるが、例えば、オンロックモードが作動してから5分経過すると、モータ21を強制的に停止させる。そして、トリガ7が完全にリリースされていることを確認したうえで(S124)、オンロックモードの待機状態に戻る(S102,S104)。一方、オンロックモードの作動中に作業者がトリガ7を引いた場合には(S120)、制御部20はトリガ7が引かれたという信号をトリガ7から受け取って、モータ21を停止させる(S122)。そして、上記と同様に、トリガ7が完全にリリースされていることを確認したうえで(S124)、オンロックモードの待機状態に戻る(S102,S104)。
以上のように構成された電動工具にあっては、三つの汎用モードの他に木ネジモードを備えているので、例えば、作業者は木ネジやタッピングネジを部材にねじ込んでいく締結作業を行う際には、木ネジモードを選択してねじ込み作業を容易に行うことができる。
また、作業者はモード切替スイッチ13を押してオンロックモードを選択することができる。そして、オンロックモードでは、モータ21がロック回転数を維持して回転し続けるので、研磨作業を行う際に、トリガ7を引き続けなくてもよく、楽に研磨作業等を連続して行うことができる。また、モータ21の回転数が変動せずに一定の回転数が維持されるので、研磨作業等を安定して行うことができ、作業バラツキを抑制できる。このように、作業者はトリガ7を引き続けなくても済み、研磨作業等の作業性が向上する。
しかも、作業者はトリガ7の引き操作を行うことでロック回転数を設定できるので、例えば操作パネル5でロック回転数を設定等する構成に比して、作業者の感覚とのマッチングに優れている。即ち、作業者は、トリガ7を操作してロック回転数を設定できるので、今から行う作業に適応していると判断する回転数にロック回転数を容易に設定できるのである。
特に、トリガ7を引いてモータ21を回転させた状態でモード切替スイッチ13を押せばよく、モード切替スイッチ13を押したときのモータ21の回転数をロック回転数に設定できるので、ロック回転数の設定が容易である。しかも、モータ21を実際に回転させてその回転状況を確認したうえでその回転数をロック回転数とすることができるので、実際の作業状況に適したロック回転数に容易に設定できる。更に、ロック回転数の設定後に、トリガ7をリリースして直ちに作業を開始することができる。また、トリガ7の引き量によって任意のロック回転数に設定できるので、作業者の好みに細かく対応できる。
一方、オンロックモードを一旦待機状態としたうえで、再度モード切替スイッチ13を押すことでオンロックモードが作動状態となるので、安全性が高い。即ち、再度のモード切替スイッチ13の押し動作という作業者の意思確認を行う構成であるため、作業者の意に反してオンロックモードが作動するということがなく、安全性にも優れている。
また、オンロックモードにおいてトリガ7が引かれていない状態が所定時間経過するとモータ21が自動的に停止するので、高い安全性が確保される。また、所定時間経過しなくても、作業者が作業を停止したいと思えばトリガ7を引けばよく、トリガ7を引き操作することでモータ21を瞬時に停止させることができる。従って、モータ21を直ちに停止させて作業を中断、終了したい場合にはトリガ7を引けばよい。しかも、モータ21が自動停止した後には自動的にオンロックモードの待機状態に戻るので、再度オンロックモードで作業を継続する場合には待機状態から再開すればよく、作業を容易に再開したり、繰り返し行ったりすることができる。
尚、本実施形態では、オンロックモードにおいてロック回転数を設定するためのスイッチとしてモード切替スイッチ13を使用する構成について説明した。即ち、モード切替スイッチ13が、ロック回転数を設定するためのスイッチを兼ねた構成であったが、モード切替スイッチ13とは別にロック回転数を設定するための専用スイッチを別途設けるようにしてもよく、また他のスイッチをロック回転数を設定するためのスイッチとして兼用するようにしてもよい。
また、トリガ7の引き操作によってロック回転数を設定する構成についても種々変更可能であって、例えば、モード切替スイッチ13を押す操作を必要としない構成であってもよい。モード切替スイッチ13を押す操作を必要としない構成としては、トリガ7の引き操作によってロック回転数を設定する構成がある。その構成を採用した第二の実施形態の詳細について図9及び図10に示すフローチャートに基づいて説明する。尚、操作パネル5は図3(b)のように構成されており、図3(a)に示した構成と基本的には同様であるが、オンロックモードが選択されたことを示すインジケータ145の隣に「長押し」の文字が追加されている点が異なっている。
第二の実施形態においては、オンロックモードへの切替を行うためには、作業者は、モード切替スイッチ13を長押し操作することが必要となる。即ち、木ネジモードからオンロックモードに切り替える際、モード切替スイッチ13を長押ししてモードを切り替えるようにする。図9のように、第二の実施形態におけるオンロックモードにおいては(S200)、制御部20は、モード切替スイッチ13が長押しされたか否かを判断する(S202)。長押しの時間は任意であるが、例えば1秒間とすることができる。従って、モード切替スイッチ13が1秒間押し続けられたか否かを判断し、モード切替スイッチ13が1秒間押し続けられると、制御部20は、オンロックモードのインジケータ145を点滅させて(S204)、作業者にオンロックモードが待機状態になったことを知らせる。一方、仮に作業者がモード切替スイッチ13を長押しせずに、例えばモード切替スイッチ13を瞬間的に押しただけのような場合には、制御部20はインジケータ145を点滅させず、従って、オンロックモードは待機状態にはならない。
次に制御部20は、インジケータ145が点滅した状態でトリガ7が引かれているかどうかをチェックする(S206)。作業者は、インジケータ145が点滅している状態を見てオンロックモードが待機状態にあることを確認でき、その状態でトリガ7を引いてモータ21を回転させて所望の回転数まで回転数を上昇させる。仮に、オンロックモードの待機状態になったにも関わらずトリガ7が引かれずに、その状態が所定時間継続した場合には、制御部20はオンロックモードの待機状態を解除して、前に動作していたモードに戻す(S208、S210)。即ち、作業者がモード切替スイッチ13を長押ししてオンロックモードの使用の意思表示をしたにも関わらず、その後、トリガ7を引くことなく放置された場合には、制御部20は、オンロックモードの使用意思がキャンセルされたものと判断して、オンロックモードの待機状態を解除して前のモードに戻すようにする。尚、トリガ7を引いていない状態が継続する時間は任意であって例えば10秒間とすることができる。また、制御部20は、動作したモードの種類をその都度記憶部22に記憶している。従って、オンロックモードの待機状態を解除して前のモードに戻す場合には、記憶部22に記憶している直近のモードを読み出す。
一方、制御部20は、オンロックモードの待機状態においてトリガ7が引かれている状態を確認すると、図7に示したようなオンロックモード用の制御パターンを記憶部22から読み出して、その制御パターンをトリガ7のストローク特性として設定する(S212)。そして、作業者が引いたトリガ7の引き量に対応した回転数をロック回転数とするが、そのロック回転数の設定は以下のようにして行う。まず、予めトリガ7の引き量の全範囲を複数に分割しておき、各分割範囲に対応した回転数の代表値を予め設定しておく。尚、記憶部22に記憶しておいてもよい。設定可能なロック回転数は分割数に応じた個数となり、例えば、トリガ7の引き量の全範囲を三つに分割した場合には、大、中、小の三つのロック回転数を設定しておくことになる。そして、実際にトリガ7が引かれたとき、トリガ7の引き量が何れの分割範囲にあるかを判断して、所定の分割範囲にあると判断した場合には、その分割範囲に対応した回転数をロック回転数とする。尚、トリガ7の引き量が所定の分割範囲にあるかを判断するにあたっては、トリガ7の引き量が所定時間継続して所定の分割範囲内に留まっているか否かで判断し、所定時間に亘って所定の分割範囲内にあればその分割範囲が作業者によって選択されたものであるとみなして、その分割範囲に対応した回転数をロック回転数とする。尚、図9のフローチャートでは、トリガ7の引き量の全範囲を三つに等分割した場合を例示しているが、分割数は任意であって二以上であればよく、四つ以上に分割してもよいし、また、等分割でなくてもよい。
図9に示す場合を詳細に説明すると、制御部20は、トリガ7の引き量のカウント数が1〜85の範囲を第一の分割範囲とし、同じくカウント数が86〜170の範囲を第二の分割範囲とし、同じくカウント数が171〜255の範囲を第三の分割範囲とする。第一の分割範囲に対応した回転数のカウント数は例えば「35」とされ、第二の分割範囲に対応した回転数のカウント数は例えば「106」とされ、また、第三の分割範囲に対応した回転数のカウント数は例えば「170」とされる。この回転数のカウント数「170」は、オンロックモードにおける最大回転数に相当するものである。従って、第三の分割範囲に対応した回転数は、オンロックモード用の制御パターンにおける最大回転数である。尚、分割数によらず、複数の分割範囲のうち最もトリガ7の引き量が大きい分割範囲に対応した回転数を、オンロックモード用の制御パターンにおける最大回転数としてよい。
制御部20は、トリガ7の引き量が第一の分割範囲にあるか、第二の分割範囲にあるか、あるいは、第三の分割範囲にあるかを判断する(S214、S220、S226)。トリガ7の引き量が第一の分割範囲内である場合には(S214)、その第一の分割範囲内にトリガ7の引き量が一定時間留まっているか否かをチェックする(S216)。その時間は任意であるが、例えば数秒間とすることができ、一例としては3秒間とすることができる。そして、トリガ7の引き量が第一の分割範囲内に存在している状態が一定時間経過すると、制御部20は、第一の分割範囲が選択されたものと判断して、その第一の分割範囲に対応付けられた回転数(カウント数:35)をロック回転数として設定し(S218)、インジケータ145を点滅状態から点灯状態に変更して(S232)、作業者にオンロックモードが待機状態から作動状態に変わったことを知らせる。
同様に、トリガ7の引き量が第二の分割範囲内である場合には(S220)、その第二の分割範囲内にトリガ7の引き量が一定時間留まっているか否かをチェックして(S220)、その状態が一定時間経過すると、制御部20は、第二の分割範囲が選択されたものと判断して、その第二の分割範囲に対応して予め定められた回転数(カウント数:106)をロック回転数として設定し(S224)、インジケータ145を点滅状態から点灯状態に変える(S232)。トリガ7の引き量が第三の分割範囲内である場合には(S226)、その第三の分割範囲内にトリガ7の引き量が一定時間留まっているか否かをチェックして(S228)、その状態が一定時間経過すると、制御部20は、第三の分割範囲が選択されたものと判断して、その第三の分割範囲に対応して予め定められた回転数(カウント数:170)をロック回転数として設定し(S230)、インジケータ145を点灯状態に変更する(S232)。
その後、図10のように、制御部20は、第一の実施形態と同様に、トリガ7が完全にリリースされたことを確認し(S234)、トリガ7がリリースされた状態が所定時間継続されると(S236)、モータ21を自動的に停止させる(S240)。オンロックモードの作動中に作業者がトリガ7を引いた場合も(S238)、同様にモータ21を停止させる(S240)。そして、トリガ7が完全にリリースされていることを確認したうえで(S242)、オンロックモードの前に行われていたモードに戻す(S244)。上述のように前のモードに戻す際には、直近のモードを記憶部22から読み出して戻す。このように第二の実施形態では、モータ21を停止させた後にオンロックモードの待機状態には戻さず、オンロックモードを終了させる。
以上のように第二の実施形態では、作業者はトリガ7を引くことで所望のロック回転数に設定できので、容易にオンロックモードのロック回転数を設定して作業を行うことができる。特に、トリガ7の引き操作とは別のスイッチ操作が不要であるため、片手のみでもロック回転数を設定できる。特に、高い場所を研磨等する作業等、厳しい作業姿勢の場合に好適であって、片手で電動工具を持って行う作業に適しており、作業姿勢によらずロック回転数を設定できるという利点がある。また、ロック回転数を設定する際に作業者はトリガ7の引き量を何れかの分割範囲内に維持すれば足りるため、トリガ7の引き量が僅かに増減してもロック回転数を設定することができ、また片手でも容易に設定できる。また、モード切替スイッチ13の長押しを条件としてオンロックモードの待機状態となるので、作業者の意思確認も確実に行うことができ、高い安全性も確保される。しかも、オンロックモードの待機状態のままトリガ7が引かれずに放置されたような場合にはその待機状態を解除して前のモードに戻すようにしているので、モード切替スイッチ13を一旦長押ししたとしても、オンロックモードをキャンセルしたい場合には、その後の操作をしなければよく、キャンセルのための別途の操作は不要である。また、オンロックモードが作動状態となる前に二重の安全対策が採られることになるので、高い安全性が確保される。更に、モータ21を自動停止させた後も待機状態に戻るのではなくオンロックモードを終了して前のモードに戻すようにしているので、オンロックモードを作動させる際にはその都度モード切替スイッチ13を長押しすることになる。そのため、作業者の意思に反してオンロックモードが継続することが防止される。尚、第二の実施形態ではモード切替スイッチ13の長押しを条件としたがそれを条件としなくてもよい。
尚、トリガ7の引き操作ではなく操作パネル5でロック回転数を設定するようにしてもよい。例えば、複数のロック回転数の中から作業者が任意に選択できるようにしてもよく、操作パネル5に例えば複数種類の回転数を表示しておき、その中からボタン操作によって選択できるようにしてもよい。その場合、いわゆるソフトスタート制御を採用して、ゆっくりと回転し始めるようにすることも好ましい。
また、上記実施形態では、汎用モードとして強中弱の三種類のモードを備えている場合を説明したが、これに限られず、二種類であってもよいし、四種類以上であってもよい。また、インパクトドライバ以外の種々の電動工具であってよい。