以下、本発明の実施形態について図1から図7を参照して説明する。
図1に示すように、原子力発電プラントは、加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)を有する。この原子力発電プラントは、原子炉格納容器100内において、加圧水型原子炉の原子炉容器101、加圧器102、蒸気発生器103及び一次冷却水ポンプ104が、一次冷却水管105により順次接続されて、一次冷却水の循環経路が構成されている。
原子炉容器101は、内部に燃料集合体120を密閉状態で格納可能とされている。原子炉容器101は、燃料集合体120が挿抜できるように、原子炉容器本体101aと、その上部に装着される原子炉容器蓋101bとにより構成されている。原子炉容器本体101aは、上部に一次冷却水としての軽水を給排する入口側管台101c及び出口側管台101dが設けられている。出口側管台101dは、蒸気発生器103の入口側水室103aに連通するように一次冷却水管105が接続されている。また、入口側管台101cは、蒸気発生器103の出口側水室103bに連通するように一次冷却水管105が接続されている。
蒸気発生器103は、半球形状に形成された下部において、入口側水室103aと出口側水室103bとが仕切板103cによって区画されて設けられている。入口側水室103a及び出口側水室103bは、その天井部に設けられた管板103dによって蒸気発生器103の上部側と区画されている。蒸気発生器103の上部側には、逆U字形状の伝熱管103eが設けられている。伝熱管103eは、入口側水室103aと出口側水室103bとを繋ぐように端部が管板103dに支持されている。入口側水室103aは、入口側の一次冷却水管105が接続されている。出口側水室103bは、出口側の一次冷却水管105が接続されている。また、蒸気発生器103は、管板103dによって区画された上部側の上端に、出口側の二次冷却水管106aが接続されている。蒸気発生器103は、上部側の側部に、入口側の二次冷却水管106bが接続されている。
また、原子力発電プラントは、蒸気発生器103が、原子炉格納容器100外で二次冷却水管106a、106bを介して蒸気タービン107に接続されて、二次冷却水の循環経路が構成されている。
蒸気タービン107は、高圧タービン108及び低圧タービン109を有する。蒸気タービン107は、発電機110が接続されている。また、高圧タービン108及び低圧タービン109には、湿分分離加熱器111が、二次冷却水管106aから分岐して接続されている。また、低圧タービン109は、復水器112に接続されている。この復水器112は、二次冷却水管106bに接続されている。二次冷却水管106bは、上述したように蒸気発生器103に接続され、復水器112から蒸気発生器103に至る。その後、二次冷却水管106bには、復水ポンプ113、低圧給水加熱器114、脱気器115、主給水ポンプ116、及び高圧給水加熱器117が設けられている。
したがって、原子力発電プラントでは、一次冷却水が原子炉容器101にて加熱されて高温・高圧となる。その後、一次冷却水は、加圧器102にて加圧されて圧力を一定に維持されつつ、一次冷却水管105を介して蒸気発生器103に供給される。蒸気発生器103では、一次冷却水と二次冷却水との熱交換が行われることにより、二次冷却水が蒸発して蒸気となる。熱交換後の冷却した一次冷却水は、一次冷却水管105を介して一次冷却水ポンプ104側に回収され、原子炉容器101に戻される。一方、熱交換により蒸気となった二次冷却水は、蒸気タービン107に供給される。その後、湿分分離加熱器111は、高圧タービン108からの排気から湿分を除去する。湿分分離加熱器111は、除去した湿分をさらに加熱して過熱状態とした後に低圧タービン109に送る。蒸気タービン107は、二次冷却水の蒸気により駆動され、その動力が発電機110に伝達されて発電される。タービンの駆動に供された蒸気は、復水器112に排出される。復水器112は、取水管112aを介してポンプ112bにより取水した冷却水(例えば、海水)と、低圧タービン109から排出された蒸気とを熱交換し、当該蒸気を凝縮させて低圧の飽和液に戻す。熱交換に用いられた冷却水は、排水管112cから排出される。また、凝縮された飽和液は、二次冷却水となり、復水ポンプ113によって二次冷却水管106bを介して復水器112の外部に送り出される。さらに、二次冷却水管106bを経る二次冷却水は、低圧給水加熱器114で、例えば、低圧タービン109から抽気した低圧蒸気により加熱される。加熱された二次冷却水は、脱気器115で溶存酸素や不凝結ガス(アンモニアガス)などの不純物が除去される。その後、主給水ポンプ116により高圧給水加熱器117に送水される。高圧給水加熱器117では、例えば、高圧タービン108から抽気した高圧蒸気により加熱され、二次冷却水は蒸気発生器103に戻される。
このように構成された原子力発電プラントの加圧水型原子炉において、図2に示すように、原子炉容器101は、その内部に燃料集合体120を含む炉内構造物が挿入可能とされている。本実施形態の原子炉容器101は、原子炉容器本体101aに対して原子炉容器蓋101bが複数のスタッドボルト121及びナット122により開閉可能に固定されている。
原子炉容器本体101aは、原子炉容器蓋101bを取り外すことで上部が開口可能とされている。原子炉容器本体101aは、下部が半球形状をなす下鏡101eにより閉塞された円筒形状をなしている。原子炉容器本体101aは、内部にて、入口側管台101c及び出口側管台101dより上方に上部炉心支持板123が固定される。原子炉容器本体101aは、内部の下方の下鏡101eの近傍に位置して下部炉心支持板124が固定されている。この上部炉心支持板123及び下部炉心支持板124は、円板形状をなして図示しない多数の連通孔が形成されている。そして、上部炉心支持板123は、複数の炉心支持ロッド125を介して、図示しない多数の連通孔が形成されて下方に配置された上部炉心板126が連結されている。
原子炉容器本体101aは、内部に円筒形状をなす炉心槽127が内壁面と所定の隙間をもって配置されている。この炉心槽127は、上部が上部炉心板126に連結されている。炉心槽127は、円板形状をなして図示しない多数の連通孔が形成された下部炉心板128が下部に連結されている。そして、下部炉心板128は、下部炉心支持板124に支持されている。即ち、炉心槽127は、原子炉容器本体101aの下部炉心支持板124に支持されることとなる。
この炉心槽127の外部側には、後述する試験カプセルユニット1を収容する収納容器160が設けられている。この収納容器160は、炉心槽127の周方向において、所定の間隔を空けて設けられている。この収納容器160に収容される試験カプセルユニット1は、後述する炉心129よりも径方向外側に位置すると共に、原子炉容器本体101aよりも径方向内側に位置することとなる。
上部炉心板126と炉心槽127と下部炉心板128とにより炉心129が形成されている。炉心129は、内部に多数の燃料集合体120が配置されている。燃料集合体120は、図示しないが、多数の燃料棒が支持格子により格子状に束ねられて構成されている。燃料集合体120は、上端部に上部ノズルが固定される一方、下端部に下部ノズルが固定されている。また、炉心129は、内部に多数の制御棒130が配置されている。この多数の制御棒130は、上端部がまとめられて制御棒クラスタ131となっている。制御棒130は、燃料集合体120内に挿入可能となっている。上部炉心支持板123を貫通して多数の制御棒クラスタ案内管132が固定されている。各制御棒クラスタ案内管132は、下端部が燃料集合体120内の制御棒クラスタ131まで延出されている。
原子炉容器101を構成する原子炉容器蓋101bは、上部が半球形状をなして磁気式ジャッキの制御棒駆動装置133が設けられている。原子炉容器蓋101bは、原子炉容器蓋101bと一体をなすハウジング134内に収容されている。多数の制御棒クラスタ案内管132は、上端部が制御棒駆動装置133まで延出されている。この制御棒駆動装置133から延出された制御棒クラスタ駆動軸135が、制御棒クラスタ案内管132内を通って燃料集合体120まで延出されることで、制御棒クラスタ131を把持可能となっている。
制御棒クラスタ駆動軸135は、上下方向に延設されて制御棒クラスタ131に連結されている。加えて、制御棒クラスタ駆動軸135の表面には、複数の周溝が長手方向に等ピッチで配設されている。制御棒駆動装置133は、制御棒クラスタ駆動軸135を磁気式ジャッキで上下動させることで、原子炉の出力を制御している。
このような加圧水型原子炉は、制御棒駆動装置133により制御棒クラスタ駆動軸135を移動して燃料集合体120から制御棒130が所定量引き抜かれる。これにより、炉心129内での核***が制御され、発生した熱エネルギにより原子炉容器101内に充填された軽水が加熱される。高温の軽水は、出口側管台101dから排出される。即ち、燃料集合体120を構成する原子燃料が核***することで中性子を放出し、減速材及び一次冷却水としての軽水が、放出された高速中性子の運動エネルギを低下させて熱中性子とする。その結果、新たな核***を起こしやすくするとともに、軽水は発生した熱を奪って冷却される。一方、制御棒130を燃料集合体120に挿入することで、炉心129内で生成される中性子数が調整される。また、制御棒130を燃料集合体120に全て挿入することで、原子炉を緊急に停止することができる。原子炉容器101は、炉心129に対して、その上方に出口側管台101dに連通する上部プレナム152が形成されるとともに、下方に下部プレナム153が形成されている。そして、原子炉容器101と炉心槽127との間に入口側管台101c及び下部プレナム153に連通するダウンカマー部154が形成されている。したがって、軽水は、入口側管台101cから原子炉容器本体101a内に流入し、ダウンカマー部154を下向きに流れ落ちて下部プレナム153に至る。その後、軽水は、この下部プレナム153の球面状の内面により上向きに案内されて上昇し、下部炉心支持板124及び下部炉心板128を通過した後、炉心129に流入する。この炉心129に流入した軽水は、炉心129を構成する燃料集合体120から発生する熱エネルギを吸収することで、この燃料集合体120を冷却する。一方、燃料集合体120を冷却して高温となった軽水は、上部炉心板126を通過して上部プレナム152まで上昇し、出口側管台101dを通って排出される。原子炉容器101から排出された軽水は、上述したように、蒸気発生器103に送られる。
次に、図3から図5を参照して、試験カプセルユニット1について説明する。
試験カプセルユニット1は、内部に照射材24を収容している。この照射材24は、原子炉容器101の健全性を評価するための評価試験に用いられる。ここで、試験カプセルユニット1は、原子炉容器本体101aよりも径方向内側に位置していることから、照射材24に照射される中性子の照射量は、原子炉容器本体101aよりも大きくなる。このため、照射材24を用いて評価試験を行うことにより、原子炉容器101の先行監視を行うことが可能となっている。
図3に示すように、試験カプセルユニット1は、収納容器160に挿入される挿入方向の後端側から順に、保持部材11と、ステー部材12と、複数の試験カプセル13と、先端部材14とを備えている。ここで、挿入方向の後端側は、試験カプセルユニット1が原子炉容器101内に配置された場合に鉛直方向の上方となる。また、挿入方向の先端側は、試験カプセルユニット1が原子炉容器101内に配置された場合に鉛直方向の下方となる。
保持部材11は、試験カプセルユニット1の取り扱い時において、作業装置により保持される部材となっている。この保持部材11は、例えば、図示しないチャック装置に対して着脱自在な形状となっている。保持部材11は、挿入方向の先端側がステー部材12と接続されている。
ステー部材12は、挿入方向を長手方向とする棒状に形成されている。ステー部材12は、長手方向の一端に保持部材11が接続されている。ステー部材12は、長手方向の他端に試験カプセル13が連結されている。ステー部材12の連結部分には、試験カプセル13の凸部42が挿入可能とされている。このステー部材12は、長手方向における長さが調整されることで、試験カプセルユニット1の挿入方向における全長を調整することが可能となっている。
複数の試験カプセル13は、挿入方向に沿って並べて(直列に)連結されている。図3では、試験カプセル13を三つ連結しているが、連結数については、特に限定されず、いずれの数であってもよい。連結された複数の試験カプセル13は、挿入方向の後端側の端部にステー部材12が連結されている。連結された複数の試験カプセル13は、挿入方向の先端側の端部に先端部材14が連結されている。この試験カプセル13は、その内部に照射材24を気密に封止した状態で収容している。試験カプセル13は、その内部が不活性ガス(置換ガス)で充満している。試験カプセル13は、実機環境を模擬したオートクレーブに収容可能な大きさで形成されている。なお、試験カプセル13の詳細については、後述する。
先端部材14は、挿入方向の先端側の端部が先細りとなる形状に形成されている。先端部材14は、挿入方向の後端側の端部に試験カプセル13が連結されている。先端部材14の連結部分には、後述する試験カプセル13と同様の凸部42が形成されている。先端部材14は、挿入方向に向かって先細りとなる先端部91aによって、試験カプセルユニット1の挿入を案内している。
したがって、収納容器160へ試験カプセルユニット1を収容する場合、試験カプセルユニット1は、保持部材11がチャック装置に保持(装着)された状態で、収納容器160へ向けて移動させられる。そして、試験カプセルユニット1は、先端部材14によって案内されながら、収納容器160に収容された後、チャック装置による保持部材11の保持が解除されることで、収納容器160への収容が完了する。
一方で、収納容器160から試験カプセルユニット1を取り出す場合、試験カプセルユニット1は、保持部材11がチャック装置に保持(装着)された状態で、収納容器160から取り出される。そして、試験カプセルユニット1は、収納容器160から取り出された後、チャック装置による保持部材11の保持が解除されることで、収納容器160からの取り出しが完了する。これにより、試験カプセル13に収容された照射材24が原子炉から取り出される。
次に、試験カプセル13について説明する。試験カプセル13は、図4に示すように、カプセル本体21と、上部プラグ(プラグ)22と、下部プラグ(被連結プラグ)23と、照射材24と、スペーサ25とを有している。
カプセル本体21は、筒状をなして延びている。カプセル本体21は、延在方向の一端に開口部が形成されている。カプセル本体21は、挿入方向を延在方向として延びている。本実施形態のカプセル本体21は、両端が開口した角筒状に形成されている。本実施形態では、延在方向の一端の開口部を第一開口部31とし、延在方向の他端の開口部を第二開口部32とする。カプセル本体21は、ステンレス等の磁化しづらい材料で形成されている。
上部プラグ22は、カプセル本体21の一端の第一開口部31を閉塞している。上部プラグ22は、カプセル本体21の延在方向の一端(挿入方向の後端側の端部)に設けられ、溶接により接合される。上部プラグ22は、他の試験カプセル13の下部プラグ23が連結可能とされている。また、上部プラグ22の中で、試験カプセルユニット1において挿入方向の最も後端側に位置する上部プラグ22は、下部プラグ23ではなくステー部材12に連結される。上部プラグ22は、上部プラグ本体41と、上部プラグ本体41から挿入方向に突出する凸部42と、不活性ガスを注入するためのガス注入孔43とを有している。
上部プラグ本体41は、挿入方向から見た断面形状が方形となる四角柱の形状となっている。上部プラグ本体41は、その端部が第一開口部31に嵌め合わされた状態で溶接によりカプセル本体21に接合される。したがって、上部プラグ本体41とカプセル本体21との間に溶接部が形成された状態で、上部プラグ22とカプセル本体21とが一体に形成される。
凸部42は、挿入方向から見た形状が方形となる四角柱の形状となっている。凸部42は、上部プラグ本体41よりも小さい方形に形成されている。凸部42は、カプセル本体21と溶接された溶接部とは反対側となる上部プラグ本体41の端部から突出している。凸部42は、他の試験カプセル13の下部プラグ23に嵌め合わされる。
ガス注入孔43は、カプセル本体21の内部と連通するように上部プラグ本体41に形成されている。ガス注入孔43は、上部プラグ本体41の側面から第一開口部31に挿入される上部プラグ本体41の端部まで上部プラグ本体41内を貫通して形成されている。ガス注入孔43は、カプセル本体21の内部雰囲気を、不活性ガス(例えば、ヘリウムガス)に置換するために用いられる。なお、不活性ガスの置換後、ガス注入孔43は、気密に封止される。具体的には、例えば、ガス注入孔43は、上部プラグ本体41の側面を溶かすことで開口部分を閉塞させて気密に封止される。または、ガス注入孔43は、図示しない栓を設け、その栓を溶接により接合することで気密に封止される。
下部プラグ23は、カプセル本体21の延在方向の他端(挿入方向の先端側の端部)に設けられている。カプセル本体21の延在方向の他端は、第一開口部31が形成されたカプセル本体21の一端に対して反対側の端部である。下部プラグ23は、他の試験カプセル13の上部プラグ22が連結可能とされている。また、下部プラグ23の中で、試験カプセルユニット1において挿入方向の最も先端側に位置する下部プラグ23は、上部プラグ22ではなく先端部材14に連結される。下部プラグ23は、カプセル本体21の挿入方向の他端と溶接により接合されている。下部プラグ23の挿入方向の長さは、後述するスペーサ25の挿入方向の長さよりも長く成形されている。下部プラグ23は、下部プラグ本体51と、下部プラグ本体51から挿入方向に窪む凹部52とを有している。
下部プラグ本体51は、挿入方向から見た断面形状が上部プラグ本体41と同じ大きさの方形となる四角柱の形状となっている。下部プラグ本体51は、カプセル本体21側の端部が、第二開口部32に嵌め合わされた状態でカプセル本体21に対して溶接により接合される。したがって、下部プラグ本体51とカプセル本体21との間に溶接部が形成された状態で、下部プラグ23とカプセル本体21とが一体に形成される。下部プラグ本体51は、挿入方向の長さがカプセル本体21の挿入方向の長さの半分以上の長さで形成されている、本実施形態の下部プラグ本体51は、後述するスペーサ25よりも長くカプセル本体21よりも短い長さで形成されている。
凹部52は、挿入方向から見た形状が方形となる中空の角孔となっている。凹部52は、カプセル本体21と溶接された溶接部とは反対側となる下部プラグ本体51の端部から窪んでいる。凹部52は、他の試験カプセル13の上部プラグ22の凸部42が嵌め込まれる。
照射材24は、カプセル本体21内で第一開口部31から離れた位置に配置されている。照射材24は、放射線を放射している。照射材24は、中性子が照射されることで放射線を放射する材料で形成されている。照射材24は、原子炉を構成する材料と同じ低合金鋼で形成されている。本実施形態の照射材24は、カプセル本体21よりも磁化し易い複数の分割照射材24aによって構成されている。照射材24は、既に加圧水型原子炉の収納容器160に装荷された後に評価試験が実施された試験片を用いている。したがって、分割照射材24aは、運転開始時に原子炉に投入されて原子炉から取り出された後に評価試験を実施された試験片の欠片である。本実施形態の分割照射材24aは、評価試験を実施後の試験片の欠片の中で比較的大きく、評価試験に再度利用可能な大きさを有する試験片の欠片である。
スペーサ25は、カプセル本体21内で照射材24と第一開口部31との間に配置されている。スペーサ25は、挿入方向に延びる棒状部材である。スペーサ25は、中性子が照射されることで放射線を放射する材料で形成されている。本実施形態のスペーサ25は、例えば、照射材24と同じ材料で形成されている。スペーサ25は、カプセル本体21内で摺動可能な形状をなしている。本実施形態のスペーサ25は、図5に示すように、カプセル本体21の内周面に対して、僅かに隙間が形成されるような大きさの断面方形状をなしている。スペーサ25は、照射材24の収容されている位置がずれないように、第一開口部31に対する照射材24の挿入方向の降誕側の端面までの距離と同じ長さで形成されている。本実施形態では、スペーサ25は、照射材24と同程度の長さで形成されている。スペーサ25は、ガス注入孔43から照射材24に向かって連通するガス流通路25aが形成されている。本実施形態のガス流通路25aは、挿入方向にスペーサ25を貫通する複数の溝として形成されている。
次に、図6及び図7を参照し、上記の試験カプセルユニットの製造方法S1について説明する。試験カプセルユニットの製造方法S1は、図6に示すように、ユニット部材準備工程S2、試験カプセル製造工程S3、及びユニット部材連結工程S4を有している。
ユニット部材準備工程S2は、試験カプセルユニット1の部品となる部材を事前に準備する。本実施形態のユニット部材準備工程S2は、保持部材11、ステー部材12、及び先端部材14を事前に準備する。
試験カプセル製造工程S3は、試験カプセルの製造方法S10で試験カプセル13を複数製造する。本実施形態の試験カプセル製造工程S3は、カプセル部材準備工程S11と、照射材収容工程S12と、スペーサ収容工程S13と、開口部閉塞工程S14と、を有している。
カプセル部材準備工程S11は、試験カプセル13の部品となる部材を事前に準備する。本実施形態のカプセル部材準備工程S11は、カプセル本体21、上部プラグ22、下部プラグ23、照射材24、及びスペーサ25を事前に準備する。カプセル部材準備工程S11では、カプセル本体21と下部プラグ23とを溶接して連結させる。これにより、カプセル本体21と下部プラグ23との間に溶接部が形成された状態で、カプセル本体21の第二開口部32が下部プラグ23によって閉塞される。
照射材収容工程S12は、カプセル本体21内に複数の分割照射材24aによって構成された照射材24を第一開口部31から挿入して収容する。照射材収容工程S12は、照射材24を用いることから、放射線が漏れないホットセル内において遠隔操作により行われる。図7に示すように、本実施形態の照射材収容工程S12では、複数(本実施形態では四つ)の分割照射材24aを位置決め部材92によってまとめて照射材24としている。分割照射材24aは、板状の位置決め部材92によって直方状に成形されている。照射材収容工程S12では、複数の分割照射材24aが磁力を調整可能な挿入治具91によってカプセル本体21内に収容される。ここで、挿入治具91は、例えば、電磁石が先端部91aに設けられている。挿入治具91は、電磁石への電力の供給を制御することで、電磁石に生じる磁力のON及びOFFを切替可能とされている。照射材収容工程S12では、挿入治具91の先端部91aに生じる磁力によって分割照射材24a及び位置決め部材92を押し込み工具にまとめて吸着された状態としてカプセル本体21内に第一開口部31から挿入する。分割照射材24aがカプセル本体21内の奥まで挿入された後に、挿入治具91の磁力を切って挿入治具91から複数の分割照射材24aが脱離される。これにより、カプセル本体21内の任意の位置に照射材24が収容される。
スペーサ収容工程S13は、照射材収容工程S12の後に実施される。スペーサ収容工程S13は、ホットセル内において遠隔操作により行われる。スペーサ収容工程S13は、照射材24が収容されたカプセル本体21内に第一開口部31からスペーサ25を挿入する。スペーサ25は、照射材24よりも第一開口部31側に収容される。本実施形態では、スペーサ25は、照射材24に対して挿入方向に僅かに間隔を空けた状態で、第一開口部31からはみ出さないようにカプセル本体21内に収容される。
開口部閉塞工程S14は、スペーサ収容工程S13の後に実施される。開口部閉塞工程S14は、ホットセル内において作業者が直接実施する。開口部閉塞工程S14は、カプセル本体21の一端に上部プラグ22を溶接して連結させる。これにより、開口部閉塞工程S14では、カプセル本体21の第一開口部31が閉塞される。第一開口部31が閉塞された状態のカプセル本体21に対して、ガス注入孔43から不活性ガスを注入することで、カプセル本体21の内部の雰囲気を不活性ガスに置換する。不活性ガスへの置換後、ガス注入孔43が形成された上部プラグ本体41の側面を溶かし、カプセル本体21の内部を、気密に封止する。これらにより、試験カプセル13の作製が完了する。作製が完了した試験カプセル13は、引き続いて、各種検査が行われる。
ユニット部材連結工程S4は、複数の試験カプセル13を連結させる。また、ユニット部材連結工程S4は、試験カプセル13にステー部材12及び先端部材14を連結させる。
本実施形態のユニット部材連結工程S4は、試験カプセル13の下部プラグ23に、他の試験カプセル13の上部プラグ22を溶接によって接合する。ユニット部材連結工程S4では、これを複数回繰り返すことで、複数の試験カプセル13を挿入方向に直列に連結する。この際、一方の試験カプセル13の下部プラグ23と、他方の試験カプセル13の上部プラグ22とは、凸部42が凹部52に挿入された状態で連結され、溶接により接合される。
その後、ユニット部材連結工程S4では、保持部材11にステー部材12の一端が接続される。また、ステー部材12の他端には、連結された試験カプセル13の中で、挿入方向の最も後端側の試験カプセル13の上部プラグ22が連結される。このとき、ステー部材12と試験カプセル13とは、溶接によりに接合される。
連結された試験カプセル13の中で、挿入方向の最も線端側の試験カプセル13の下部プラグ23に、先端部材14が連結される。試験カプセル13と先端部材14とは、溶接により接合される。以上により、試験カプセルユニット1の作製が完了する。
作成された試験カプセルユニット1は、原子炉の内部、つまり、収納容器160に収納される。試験カプセルユニット1は、保持部材11がチャック装置に保持(装着)され、収納容器160へ向けて移動させられる。その後、試験カプセルユニット1は、先端部材14によって案内されながら、収納容器160に収容される。収容された後、チャック装置による保持部材11の保持が解除されることで、収納容器160への試験カプセルユニット1の収容が完了する。これにより、カプセル本体21に収容された試験片5が原子炉内に再装荷される。
上記のような試験カプセル13及び試験カプセルの製造方法S10によれば、カプセル本体21内に照射材24を封入するために上部プラグ22とカプセル本体21とを溶接する溶接位置と照射材24の配置されている位置とが、スペーサ25によって一定の距離だけ確実に離れることとなる。そのため、溶接時に作業者が照射材24から受ける被ばく量を低減することができる。また、溶接時の熱の影響が照射材24に及ぶことが抑えられる。したがって、溶接時に生じる影響を抑えるように溶接位置と照射材24との位置を離すことができる。
また、照射材24と同じ材料でスペーサ25を形成することで、スペーサ25を評価試験に用いることができる。照射材24とスペーサ25とで評価結果を比較することで、試験カプセル13に照射材24及びスペーサ25を装荷した時点から試験カプセル13から照射材24及びスペーサ25を取り出した時点までの期間における同じ材料の経時的な特性の変化を把握することができる。
また、下部プラグ23がスペーサ25よりも長く形成されている。そのため、他の試験カプセル13と溶接する場合のように、下部プラグ23の端部を溶接する際に、溶接位置と照射材24との位置を離すことができる。
また、ガス注入孔43を介してカプセル本体21の内部にヘリウムガス等の置換ガスを供給することで、カプセル本体21の内部を置換ガスに置換することができる。この際、スペーサ25にガス流通路25aが形成されていることで、照射材24が配置された領域まで置換ガスを行き渡らせることができる。
また、照射材収容工程S12において、照射材24が複数の分割照射材24aで構成されていても、分割照射材24aを挿入治具91に吸着させて、まとめてカプセル本体21内に収容させることができる。したがって、評価試験後の細かな試験片の欠片のように複数の分割照射材24aを、ホットセル内であっても容易かつ確実にカプセル本体21内に収容させることができる。
また、試験カプセルユニット1が試験カプセル13を挿入方向に複数連結した構造となっているため、連結した分だけ、単体の試験カプセル13の挿入方向における長さを短くすることができる。このため、評価試験の試験片として、中性子が照射された照射材24を用いる場合であっても、試験カプセル13単位で取り扱うことができる。よって、使用されるオートクレーブ装置等の機器の制限を満足しつつ、ホットセル内において、試験片5の取り扱いを容易なものとすることができる。
また、本実施形態によれば、上部プラグ22を他の試験カプセル13の下部プラグ23に溶接することにより、試験カプセル13同士を強固に連結することができる。
また、本実施形態によれば、凸部42と凹部52とを面接触させて、上部プラグ22と下部プラグ23とを嵌め合わせることができるため、ホットセル内で上部プラグ22に対する下部プラグ23の位置を適切に規制することができる。
(実施形態の他の変形例)
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
なお、本実施形態では、スペーサ25に形成されるガス流通路25aを複数の溝としたが、ガス流通路25aはこのような構成に限定されるものではない。ガス流通路25bは、例えば、図8に示すように、図7に行ける複数の溝を繋げた側面から大きく窪む一つの溝として形成してもよい。また、ガス流通路25cは、例えば、図9に示すように、スペーサ25ーの内部を貫通する貫通孔として形成してもよい。また、ガス流通路25dは、例えば、図10に示すように、スペーサ25自体をカプセル本体21の内周面と隙間を大きく開けるように小さく形成し、スペーサ25の外周面とカプセル本体21の内周面との間で形成される構成であってもよい。したがって、ガス流通路25aは、照射材24が配置されている領域まで不活性ガスを供給可能な形状で形成されていればよい。
また、本実施形態では、上部プラグ22にガス注入孔43を形成したが、下部プラグ23にガス注入孔43を形成してもよく、特に限定されるものではない。
また、本実施形態では、複数の試験カプセル13を連結することができるため、必要な照射材24の収容量に応じて、連結する試験カプセル13の数を変えてもよい。このとき、試験カプセルユニット1の挿入方向における全長を所定の長さに維持する場合には、ダミーの試験カプセル13を連結してもよいし、ステー部材12の長さを調整してもよい。さらに、原子炉から照射材24を取り出す場合、必要な試験カプセル13だけ取り出し、残りの試験カプセル13を原子炉内へ再装荷してもよい。