以下、添付の図面を参照して、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態において示す構成は一例に過ぎず、本発明は図示された構成に限定されるものではない。
[実施形態1]
図1は、実施形態1における無線通信システムの構成例を示す図である。本無線通信システムは、移動局100と、固定局103〜133と、パーソナルコンピュータ(PC)107で構成される。移動局100は、ビーム形成可能な指向性アンテナ101を備え、固定局103〜133と無線通信が可能なように構成される。固定局103〜133はそれぞれ、ビーム形成可能な指向性アンテナ104〜134を備える。PC107は、スイッチングハブ105を介して受信したデータに対して所定の処理を行う。
移動局100は、撮像機能付きHMD(Head Mounted Display)102を備える。HMD102は、HMD102の装着者の左右の視線と略一致する周辺環境をステレオ撮像し、撮像画像に撮像画像を示すフレーム番号を付与したデータ信号を生成する。そして、移動局100は、生成されたデータ信号を、指向性アンテナ101を介して固定局103〜133のいずれかに無線送信する。また、移動局100は、CG(Computer Graphics)画像が重畳されたMR(Mixed Reality)画像を、固定局103〜133のいずれかから指向性アンテナ101を介して受信し、受信したCG画像をHMD102に重畳して表示する。これにより、HMD102の装着者にMR体験が提供される。なお、移動局100は、無線通信帯域の管理および割り当てを行う制御局としての役割も有する。
固定局103は、指向性アンテナ104を介して移動局100および他の固定局113〜133と無線通信を行う。固定局103は、他の固定局113〜133とはスイッチングハブ105を介して有線通信手段106で有線通信が可能である。有線通信手段106は、Gigabit Ethernetなどの有線通信方式が挙げられる。さらに固定局103は、スイッチングハブ105を介して、PC107と有線通信が可能であり、移動局100とPC107が撮像画像やMR画像を通信するための中継局としての役割を果たす。また、固定局103は、移動局100が管理するネットワーク傘下の子機として機能する。なお、固定局113〜133も固定局103と同様の機能を有する。また、以下の説明において、固定局103の動作および機能は、固定局113〜133にも同様に適用可能とする。
PC107は、スイッチングハブ105を介して有線通信手段106で、移動局100から送信された撮像画像を受信する。PC107は、受信した撮像画像に基づき、HMD102の装着者の位置姿勢を推定し、撮像画像にCG画像を重畳したMR画像を生成する。ここで、PC107は、例えば、撮像画像の特徴点を検出することで、HMD装着者の位置姿勢を検出する。特徴点検出技術としては、例えば公知の特徴点検出技術であるFAST(Features from Accelerated Segment Test)が挙げられるが、HMD装着者の位置姿勢が特定できる方式であればこれに限定されない。PC107は、生成したMR画像を、スイッチングハブ105を介して固定局103に送信し、固定局103は当該MR画像を移動局100に送信する。
反射物108〜128は、ミリ波帯電磁波の反射・透過・吸収する物体である。反射物108〜128は、例えば壁面や家具、人体である。反射物108〜128の性質により反射率・透過率・吸収率は異なるが、反射物108〜128が存在することで、見通し内伝搬以外の通信経路が移動局100と固定局103の間および移動局100と固定局133の間に存在することになる。
続いて、移動局100と固定局103の構成について、それぞれ図2と図3を参照して説明する。
図2は、本実施形態における移動局100の構成例を示す図である。アンテナ200は、任意の方向にビーム形成可能なアンテナである。本実施形態では、アンテナ200はアンテナ毎に移相器を備えるフェーズドアレイアンテナとして説明する。なお、固定ビームを複数備えスイッチごとにビームが選択できるスイッチドアレイアンテナや、固定ビームを備え機械的にビームを走査することで特定の方向にビームを指向するアンテナでも、本実施形態は実施可能である。
アンテナ200は、3種類の異なる半値角を持った指向性の形成が可能である。3種類の指向性は、広指向角の順に、DMG(Directional Multi Gigabit)指向性アンテナ、セクター指向性アンテナ、AWV(Antenna Weight Vector)指向性アンテナである。異なる指向角のアンテナを形成する方式として、アレイアンテナの駆動数を変える方式がある。例えば、アンテナ200が16素子のアレイアンテナであった場合に、DMG指向性アンテナ、セクター指向性アンテナ、およびAWV指向性を形成するときに、それぞれ駆動数を1、8、16とする。他にも、半値角(幅)の異なるアンテナを3種類用意して駆動するアンテナを切り替える方式でも実現できる。
アンテナ200は、複数のアンテナ素子を備える。アンテナ素子毎に、移相器と、移相器に接続するDAC(Digital Analog Converter)回路を備える。移相器は、アナログ電圧による制御で、入力信号に対する出力信号の移相量を変える回路である。アンテナ200は、アンテナ設定部201が出力したアンテナ素子毎の移相量を示すデジタル信号を、移相器に接続するDAC回路がアナログの電圧信号に変換し、移相器毎に電圧を印加することで電気的にビームを走査する。
アンテナ200は、送信信号生成部202が生成した無線パケットをIEEE802.11adのチャネルアクセス形式に則り送信する。また、アンテナ200は、アンテナ設定部201が設定した指向性で、固定局103〜133が送信する無線パケットを受信し、無線受信部206に出力する。
アンテナ設定部201は、アンテナ200のアレイアンテナの配置を示すステアリングベクトルと、アンテナ200の(ビームを指向する)指向角度とに基づき、アンテナウエイティングベクトルを計算する。アンテナウエイティングベクトルは、アンテナ200のアンテナ素子それぞれに給電する電気信号の振幅および位相を示す。例えば、アンテナを指向する角度をθ0、駆動するアンテナの数をNとすると、アンテナのステアリングベクトルをa(θ)、アンテナウエイティングベクトルwは、以下の式で与えられる。
また、アンテナの指向角度は、送信信号生成部202が指示する指向角度および指向性の種類である。経路探索要求信号を送信した直後の移動局100は、経路探索応答信号の受信動作を行う。ここで、移動局100は、経路探索要求信号を送信したセクター指向性アンテナと略一致する方向を指向するセクター指向性アンテナで、受信動作を行う。送受信で略一致するセクター指向性アンテナを選択することで、DMG指向性アンテナなどのオムニ指向性アンテナを選択する場合に比べ、移動局100が高いSNRで受信できるため受信品質を高めることができる。撮像画像データの送信およびMR画像データの受信にも略一致するAWV指向性アンテナを選択することで、受信品質を高めることができる。
送信信号生成部202は、要求信号生成部203が生成する経路探索要求信号や、起動信号生成部210が生成する経路探索起動信号、経路情報管理部212が生成する経路情報管理テーブル、画像データ生成部204が生成する撮像画像データをIEEE802.11adのパケット形式に変換しアンテナ200に出力する。また、送信信号生成部202は、アンテナ設定部201に、送信する信号に応じたアンテナ指向性種類とアンテナ指向性角度を出力する。例えば、送信信号生成部202は、撮像画像データや経路情報管理テーブルをアンテナ200に出力する場合、データ宛先局である固定局103を指向したAWV指向性アンテナをアンテナ設定部201に通知する。また、送信信号生成部202は、経路探索要求信号をアンテナ200に出力する場合は、経路探索要求信号内で指定されているセクター指向性アンテナをアンテナ設定部201に通知する。
要求信号生成部203は、経路探索要求信号を生成する。本実施形態において、経路探索要求信号はIEEE802.11adのGrantフレームである。Grantフレームを同報送信する制御局に対して、子機が肯定応答であるGrant ACKフレームを経路探索応答信号として送信することで、一つの子機に対して排他的に無線帯域を割り当てることが可能になる。本実施形態では、移動局100は、固定局103〜133のいずれとも経路が発見できていない方向に規定の回数同報送信し、固定局が現在見つかっている通信経路とは異なる方向に受信アンテナを指向した状態で受信動作を行う。これにより、移動局100は、全ての固定局103〜133に対して同時にアンテナトレーニングを実行することができる。
ここで、移動局100が一つのセクター指向性アンテナでGrantフレームを同報送信する回数は、全ての固定局103〜133がセクター指向性アンテナを走査するのに十分な期間でなければならない。例えば、全ての固定局103〜133が同一のセクター指向性アンテナ数を持つ場合は、移動局100は、固定局103〜133それぞれのセクター指向性アンテナ数と一致する回数、同報送信を行う。また、固定局103〜133毎にセクター指向性アンテナ数が異なる場合、移動局100は、固定局103〜133のセクター指向性アンテナ数の中で最も多い値と一致する回数同報送信を行う。これにより全ての固定局103〜133がセクター指向性アンテナを走査することができる。
他にも、固定局103〜133が同一のセクター指向性アンテナ数で、固定局103〜133のいずれかだけセクター指向性アンテナ数が多いケースがある。これは例えば、壁の四隅それぞれに固定局を配置し天井に一つの固定局を配置する場合である。この配置の場合、四隅に配置する固定局はカバーする領域は水平方向に90度であるためセクター指向性数が少なく、天井に配置する固定局はカバーする領域が下方全体であるためセクター指向性数が多くなる。この場合には、移動局100は、天井に配置する固定局のセクター指向性アンテナの数と一致する回数同報送信をしてもよい。また、この場合には、移動局100は、経路探索期間を2つに分け四隅に配置する固定局に対して経路探索した後に、天井に配置する固定局のみに対して経路探索してもよい。
同じセクター指向性アンテナで経路探索信号を送信する回数と、経路探索期間で経路探索信号を送信する全回数は、全ての固定局103〜133により認識されれば、どのような方法で送信されてもよい。例えば、移動局100がビーコンフレーム内に記載したり、固定局103に対して送信するデータ信号に付与し、固定局103が有線通信手段106で他の固定局113〜133に対して転送してもよい。移動局100は、一つのセクター指向性アンテナで規定の回数同報送信を行っても経路探索応答信号を受信しない場合は、他のセクター指向性アンテナに切り替え、同様に経路探索起動信号を規定の回数同報送信を行う。移動局100は、経路探索応答信号を受信するか、全てのセクター指向性アンテナで送信を完了するまで、同様の動作を続ける。
経路探索要求信号であるGrantフレームは、
‐フレーム制御フィールド、
‐割り当てる通信期間を記載する通信期間フィールド、
‐送信権を持つ無線局のMACアドレスを記載する送信局アドレスフィールド、
‐受信局のMACアドレスを記載する受信局アドレスフィールド、
‐経路探索要求信号を送信するのに使用しているセクター指向性アンテナを記載する送信指向性フィールド、
を含む。
フレーム制御フィールドは、フレーム全体を制御するためのフィールドである。本実施形態では、Grantフレームを送信するのは制御局である移動局100であるため、送信局アドレスフィールドは移動局100のMACアドレスを記載する。受信局アドレスフィールドに記載するアドレスは、ブロードキャストアドレスを示すMACアドレス値でも、全ての固定局103〜133に予め通知したアドレス値でもよく、PC107に接続した固定局のみがGrantフレームに対する応答が可能であることを認識できればよい。
送信指向性フィールドには、移動局100が使用しているセクター指向性アンテナを固定局103〜133が識別し、固定局103〜133が経路探索応答信号を送信するために、アンテナ識別番号が記載される。これにより、固定局103はどのセクター指向性アンテナの方向でGrantフレームが送信されたか判別でき、既に発見している経路とは異なる経路か否かを決定できる。また、移動局100も同様の情報が取得でき、各固定局との経路を管理することができる。
次に、経路探索起動信号と経路探索信号を用いたアンテナトレーニング方法について説明する。経路探索起動信号および経路探索信号はIEEE802.11adのBRP(Beam Refinement Protocol)フレームである。BRPフレームは、アンテナトレーニングの起動に加え、アンテナトレーニングにも用いるフレームである。経路探索起動信号と経路探索信号に同一のフレーム形式を割り当てることで、アンテナトレーニングの要求・応答とアンテナトレーニングが同時に行えるため、通信帯域の利用効率を向上することができる。
BRPフレームは、
‐フレーム制御フィールド、
‐割り当てる通信期間を記載する通信期間フィールド、
‐送信権を持つ無線局のMACアドレスを記載する送信局アドレスフィールド、
‐受信局のMACアドレスを記載する受信局アドレスフィールド、
‐送信アンテナと受信アンテナ各々に対してトレーニングを要求するトレーニング要求フィールド、
‐トレーニング要求に対する応答を示すトレーニング応答フィールド、
‐送信アンテナと受信アンテナ各々に対するトレーニングフィールド、
‐トレーニングフィールドにおける受信結果を通知するフィードバックフィールド、
を含む。
フレーム制御フィールドは、フレーム全体を制御するためのフィールドである。BRPフレームを経路探索起動信号として使用する場合は、送信局アドレスフィールドは、制御局である移動局100のMACアドレスを記載する。受信局アドレスフィールドは、経路探索応答信号を送信した固定局103のMACアドレスを記載する。トレーニング要求フィールドは、送信アンテナおよび受信アンテナそれぞれについて、最善のAWV指向性が決定するまで、トレーニング要求を示す値を記載する。トレーニングを要求する際には、送信アンテナトレーニングか受信アンテナトレーニングのどちらを要求するかと、トレーニングフィールドの個数を記載する。
移動局100の送信アンテナをトレーニングするためには、移動局100が送信する次のBRPフレームで、各トレーニングフィールドで送信アンテナ指向性を切り替えながらBRPフレームを送信し、固定局103は受信アンテナ指向性を固定する必要がある。固定局103の受信アンテナをトレーニングするためには、移動局100は、次に送信するBRPフレームで、各トレーニングフィールドで送信アンテナ指向性を固定してBRPフレームを送信し、固定局103は受信アンテナ指向性を切り替えながら受信する必要がある。トレーニング要求フィールドに送信アンテナ・受信アンテナのどちらのトレーニングを要求するかと、その個数を記載することで、移動局100および固定局103はBRPフレーム受信後の動作を決定することができる。
トレーニング応答フィールドには、直前に受信したトレーニング要求フィールドに対する応答として肯定応答か否定応答のいずれかを記載する。直前のBRPフレームをエラー無く受信できた場合には、トレーニング応答フィールドには、肯定応答を記載する。トレーニングフィールドの個数は、送信アンテナをトレーニングする場合は、直前に自局が送信したトレーニング要求フィールド内に記載したトレーニングフィールド数である。受信アンテナをトレーニングする場合は、直前に相手局が送信したトレーニング要求フィールド内に記載されたトレーニングフィールド数である。
フィードバックフィールドは、直前に受信したBRPフレームが送信アンテナをトレーニングするBRPフレームであった場合、アンテナ指向性を固定して受信した当該フレームのSNRを受信結果として記載する。このフィードバックフィールドを相手局が受信することで、最善の送信アンテナ指向性を選択することができる。
アンテナトレーニングは、移動局100と固定局103が両方ともに、アンテナトレーニングフィールドでトレーニングを要求しないBRPフレームを送信した段階で終了する。この段階で、移動局100と固定局103は、移動局100が送信側で固定局103が受信側である通信リンクにおける最善の送信AWV指向性と受信AWV指向性を決定する。また、移動局100と固定局103は、移動局100が受信側で固定局103が送信側である通信リンクにおける最善の送信AWV指向性と受信AWV指向性を決定することができる。
画像データ生成部204は、撮像部205が生成した撮像画像に撮像時刻を示すフレーム番号を付与して、撮像画像データを生成する。撮像画像データは、非圧縮画像でも圧縮画像でもよい。撮像画像のデータ量と通信伝送レートに基づき、撮像画像のデータ量に対して通信伝送レートが低い場合には、画像データ生成部204は、圧縮画像を選択するように構成されてもよい。また、画像データ生成部204は、ユーザー数×撮像画像データ量が一定の値以下になるように、ユーザー数が増える場合に撮像画像を圧縮画像に切り替えるなど、撮像画像のデータ量を低減するように動作してもよい。画像データ生成部204は、通信伝送レートを、経路情報管理部212により通知される経路情報に基づき推測する。
無線受信部206は、固定局103が送信した経路探索応答信号や経路探索信号、MR画像信号を受信する。無線受信部206は、経路探索応答信号を応答信号取得部209に出力し、経路探索信号を経路探索信号取得部211に出力し、MR画像信号をMR画像取得部207に出力する。また、無線受信部206は、MR画像信号を受信したときの受信信号品質を経路情報管理部212に出力する。
MR画像取得部207は、MR画像情報が非圧縮画像または圧縮画像であるため、後段の表示制御部208がHMD102に表示できる形式に変換し、表示制御部208に出力する。
表示制御部208は、MR画像取得部207が出力したMRステレオ画像を、HMD102における左右の目それぞれに対応した表示デバイスに表示して、HMD装着者にMR体験を提供する。表示デバイスとして、小型の液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどが使用される。
応答信号取得部209は、経路探索要求信号を受信した固定局103が送信した経路探索応答信号に記載されている固定局のMACアドレスと、固定局103が経路探索要求信号を受信したときの受信指向性アンテナを識別する情報と、移動局100が経路探索要求信号を送信したときの送信指向性アンテナを識別する情報を、起動信号生成部210および経路情報管理部212に出力する。
経路探索信号取得部211は、固定局103が送信した経路探索信号を取得する。経路探索信号がトレーニングフィールドを含み、送信アンテナのトレーニングの場合は、受信結果を固定局に通知する必要がある。そのため、経路探索信号取得部211は、起動信号生成部210に受信結果を出力する。直前にBRPフレームを受信した場合で、BRPフレームのトレーニング要求フィールドにトレーニングを要求する値が記載されていたら、経路探索信号取得部211は、起動信号生成部210に受信したBRPフレームを出力する。直前のBRPフレームのトレーニング要求フィールドにトレーニングを要求する値が記載されていない場合で、自局のアンテナトレーニングが必要な場合は、経路探索信号取得部211は、送信アンテナと受信アンテナのいずれのトレーニングを要求するかと、トレーニングフィールドの個数を、起動信号生成部210に出力する。アンテナのトレーニングが完了した場合には、経路探索信号取得部211は、経路情報管理部212に、固定局103の識別情報と、最善セクター指向性アンテナと最善AWV指向性アンテナのそれぞれの組み合わせを出力する。
起動信号生成部210は、BRPフレームの生成を行う。起動信号生成部210は、応答信号取得部209が出力した経路探索応答信号を受信した場合、BRPフレームの通信期間フィールドにはアンテナトレーニングを完了するのに十分な期間を記載する。移動局100の送信指向性アンテナをトレーニングするには、セクター指向性内のAWV指向性アンテナ数と一致するトレーニングフィールドを含むBRPフレームを送信する必要がある。同様に、固定局103の受信指向性アンテナをトレーニングする場合も、セクター指向性内のAWV指向性アンテナ数と一致するトレーニングフィールドを含むBRPフレームを送信する必要がある。
また、移動局100の受信指向性アンテナをトレーニングするには、セクター指向性内のAWV指向性アンテナ数と一致するトレーニングフィールドを含むBRPフレームを送信する必要がある。同様に、固定局103の送信指向性アンテナをトレーニングするには、セクター指向性内のAWV指向性アンテナ数と一致するトレーニングフィールドを含むBRPフレームを送信する必要がある。通信期間フィールドには、上記のBRPフレームを送信するのに十分な通信期間を設定する。送信局アドレスフィールドには、移動局100のMACアドレスを記載する。受信局アドレスフィールドには、直前の経路探索応答信号の送信局フィールドに一致する値を記載する。トレーニング要求フィールドには、送信アンテナ指向性をトレーニングする場合には、送信アンテナのトレーニング要求とセクター指向性内のAWV数と一致する値を記載する。同様に、受信アンテナ指向性をトレーニングする場合には、受信アンテナのトレーニング要求とセクター指向性内のAWV数と一致する値を記載する。BRPフレームの生成が完了したら、起動信号生成部210は、送信信号生成部202に出力する。
起動信号生成部210は、経路探索信号取得部211が出力した経路探索信号を受信した場合、通信期間フィールドにはアンテナトレーニングを完了するのに十分な期間を記載する。送信局アドレスフィールドには、移動局100のMACアドレスを記載する。受信局アドレスフィールドには、直前のBRPフレームの送信局フィールドに一致する値を記載する。移動局100の送信指向性アンテナのトレーニングが完了していない場合は、トレーニング要求フィールドに送信指向性アンテナのトレーニング要求とセクター指向性内のAWV指向性数に一致する値を記載する。
移動局100の受信指向性アンテナのトレーニングが完了していない場合は、トレーニング要求フィールドに、送信指向性アンテナのトレーニング要求とセクター指向性内のAWV指向性数と一致する値を記載する。直前のBRPフレームのトレーニング要求フィールドで受信アンテナのトレーニング要求が記載されていた場合、トレーニング応答フィールドに肯定応答を示す値を記載する。
起動信号生成部210はさらに、トレーニング要求フィールドのトレーニングフィールドの要求個数に一致するトレーニングフィールドを含むBRPフレームを生成する。直前のBRPフレームのトレーニング要求フィールドで受信アンテナのトレーニングが要求されておらず送信アンテナのトレーニングが完了していない場合、起動信号生成部210は、送信アンテナのトレーニングを行うために、セクター指向性内のAWV指向性数に一致するトレーニングフィールドを含むBRPフレームを生成する。直前のBRPフレームのトレーニング要求フィールドで受信アンテナのトレーニングが要求されておらず、移動局の送信アンテナ指向性および受信アンテナ指向性が完了した場合、起動信号生成部210は、トレーニング要求フィールドに、トレーニングを要求しないことを示す値を記載する。BRPフレームの生成が完了したら、起動信号生成部210は、送信信号生成部202に出力する。
経路情報管理部212は、経路探索信号取得部211が出力する経路探索信号の受信結果および、無線受信部206が出力する受信品質結果に基づき、経路情報管理テーブルを管理する。
図4に、通信経路状況の一例と、当該状況に対応する経路情報管理テーブル410を示す。図4では、移動局100と、固定局103〜133、反射物108で構成するシステムを想定する。移動局100と、固定局113および固定局123の間には、通信経路406および通信経路408がそれぞれ存在する。移動局100と固定局133の間には、通信経路は存在しない。移動局100と固定局103の間には、見通し内伝搬である通信経路407と反射物108を介する通信経路409が存在する。
経路情報管理テーブル410の行411が通信経路406に、行412が通信経路407に、行413が通信経路408に、行414が通信経路409にそれぞれ該当する。経路情報管理テーブル410は、固定局103〜133の識別情報と、経路を構成する固定局103〜133のAWV指向性アンテナとセクター指向性アンテナと、移動局100のAWV指向性アンテナとセクター指向性アンテナと、BRPフレームのトレーニングフィールドのSNRを記載する。経路情報管理部212は、BRPフレームによるアンテナトレーニングを完了したタイミングや、撮像画像およびMR画像などのペイロードデータの受信品質に基づき、経路情報管理テーブル410の行追加・削除を行う。経路情報管理テーブル410には、固定局、固定局指向性、移動局指向性の全てが一致する行は存在せず、経路情報管理テーブル410の行数がそのまま移動局100が持つ経路数である。経路情報管理部212は、各通信経路の品質情報を送信信号生成部202に通知する。
次に、固定局103の構成について、図3を参照して説明する。図3は、本実施形態における固定局103構成例を示す図である。
アンテナ300の構成は、図2に示す移動局100のアンテナ200と同様である。すなわち、アンテナ300は、アンテナ設定部301が設定した指向性で、IEEE802.11adのチャネルアクセス形式に則り無線パケットの送受信を行う。アンテナ設定部301の構成は、図2のアンテナ設定部201と同様である。アンテナ設定部301は、アンテナ300がビームを指向する指向角度に基づき、アンテナ300のアンテナ素子それぞれに給電する電気信号の振幅および位相を示すアンテナウエイティングベクトルを計算する。
無線受信部302は、移動局100が送信した経路探索要求信号を受信した場合、受信したアンテナ指向性の情報を付与して、要求信号取得部304に出力する。無線受信部302は、移動局100が送信した撮像画像情報を受信すると、有線通信部309に出力する。無線受信部302は、経路探索起動信号を受信した場合は、前述のアンテナトレーニングを移動局100と行うため、経路探索起動信号に記載されている項目に基づきアンテナ設定部301にアンテナ指向性を出力する。また、無線受信部302は、経路情報管理部303に、アンテナ設定部301に通知しているアンテナ指向性を出力する。また、無線受信部302は、経路探索起動信号のトレーニングフィールドのSNRを、経路情報管理部303に出力する。
無線受信部302は、他の固定局113〜133が送信した経路探索応答信号か、移動局100が他の固定局113〜133のMACアドレスを受信局アドレスに指定した経路探索起動信号を受信した場合、残りの経路探索期間は受信動作を行わない為に受信動作を中止する。これら2つの信号を受信することは、他の、他の固定局113〜133が経路探索を移動局と行っていることを示しており、固定局103は受信動作を中止することで消費電力の低減になる。なお、これら2つの信号は無線メディアを介して受信したものでも、有線通信部309を介して受信したものでもいずれでもよい。
無線受信部302は、経路探索期間には経路探索要求信号を、アンテナ300の指向性を切り替えながら受信動作を行う。そのため、無線受信部302は、経路探索期間の開始から、経路探索要求信号とそのフィードバック信号のフレーム期間の間に受信動作を行い、信号が受信できない場合には、次の指向性に切り替える。ここで、無線受信部302は、指向性の切り替え順を、システムが要求する経路数に対して移動局が現在発見できている経路の数に応じて決定する。
システムが要求する経路数が多い場合、同一のデータを送信する回数が増えるため画像データの伝送レートは低下する。しかしこの場合では、通信環境が大きく変化した場合でも複数の経路で送信するため通信が遮断する可能性を低減することができる。システムの要求する経路数は、システム稼働時に固定的に決定してもよい。また、システム稼働後の通信環境に応じ、通信遮断が生じる確率が一定の値以下になるまで要求する経路数を増やすように決定してもよい。また、システムに参加しているユーザー数に応じ、ユーザー数が多い場合に要求する経路数を減らすように決定してもよい。
固定局103が経路探索要求信号の受信動作を行う受信指向性については、既に発見できている経路を除外して探索する。これにより、まだ見つかっていない経路を早期に発見でき、さらに探索回数の抑制および受信動作に伴う消費電力を低減することができる。
図5は、本実施形態における通信経路状況(経路数<要求経路数)と当該状況に対応する経路情報管理テーブル516を示す。図5では、移動局100は指向性507を、固定局113は指向性508を、固定局133は指向性509を、固定局123は指向性510を、固定局103は指向性511をそれぞれ有する。
移動局100と固定局123との間に経路505が存在し、固定局103との間に経路506が存在する。経路505は、経路情報管理テーブル516の行517に該当し、経路506は、行518に該当する。経路505は、移動局100のセクター指向性アンテナ512に存在するAWV指向性アンテナと、固定局123のセクター指向性アンテナ514に存在するAWV指向性アンテナに基づいて構成される。経路506は、移動局100のセクター指向性アンテナ513に存在するAWV指向性アンテナと、固定局103のセクター指向性アンテナ515に存在するAWV指向性アンテナに基づいて構成される。
システムの要求経路数を3とした場合、現在の経路数は2であるため、移動局100は、新しい経路を探索する必要がある。新しい経路を探索するため、移動局100は、セクター指向性アンテナ512、513以外のセクター指向性アンテナで経路探索要求信号を順次送信する。
固定局113と固定局133は、移動局100との間に発見できている経路が存在しない。そのため、固定局113は、指向性508の中の全ての指向性で、固定局133は指向性509の中の全てのセクター指向性アンテナで、経路探索信号の受信動作を行う。固定局123は、セクター指向性アンテナ514で経路505を既に発見しているため、指向性510の中でセクター指向性アンテナ514を除く指向性で経路探索信号の受信動作を行う。固定局103も同様に、セクター指向性アンテナ515で経路506を既に発見しているため、指向性511の中でセクター指向性アンテナ515を除く指向性で経路探索要求信号の受信動作を行う。これにより、全ての固定局103〜133を対象とし、既に発見している経路とは異なる新しい経路に対して探索が可能になる。
図6は、本実施形態における通信経路状況(経路数>要求経路数)と当該状況に対応する経路情報管理テーブル623を示す。ここで、移動局100は指向性609を、固定局113は指向性610を、固定局133は指向性611を、固定局123は指向性612を、固定局103は指向性613をそれぞれ有する。
移動局100は、固定局113との間に経路605が存在し、固定局123との間に経路606が存在し、固定局103との間に見通し内伝搬である経路607と反射物622による経路608が存在する。経路605は、経路情報管理テーブル623の行624に該当し、経路606は、行625に該当し、経路607は、行626に該当し、経路608は、行627に該当する。経路605は、移動局100のセクター指向性アンテナ614に存在するAWV指向性アンテナと、固定局113のセクター指向性アンテナ618に存在するAWV指向性アンテナに基づいて構成される。経路606は、移動局100のセクター指向性アンテナ615に存在するAWV指向性アンテナと、固定局123のセクター指向性アンテナ619に存在するAWV指向性アンテナに基づいて構成される。経路607は、移動局100のセクター指向性アンテナ616に存在するAWV指向性アンテナと、固定局103のセクター指向性アンテナ620に存在するAWV指向性アンテナに基づいて構成される。経路608は、移動局100のセクター指向性アンテナ617に存在するAWV指向性アンテナと、固定局103のセクター指向性アンテナ621に存在するAWV指向性アンテナに基づいて構成される。
このような状態は、システムの要求経路数3に対して現在の経路数は4であり経路数が要求経路数以上であるため、十分に冗長伝送が可能な状態である。保持する経路数が多ければ多いほど、通信環境の変換に伴い通信遮断が生じた場合でも切り替える経路の候補が多くなり、通信品質を高めることができる。しかしながら、各経路を管理するには、移動局100と固定局103〜133間で定期的にテスト信号を送受信して経路の品質を確認する必要があるため、帯域の利用効率が悪化する。最大で保持する経路数は、システム稼働時に固定的に設定しても、システム稼働後の通信状況で決定してもよい。例えば、要求通信経路を経路数が下回る期間が閾値よりも高い場合は、最大で保持する経路数を増やすようにしてもよい。
経路数が要求経路数以上の状況では、移動局100は、新たな経路が発見できた場合に、新たな経路の通信品質と現在発見している通信経路の品質を比較する。そして、移動局は、新たな経路の通信品質が現在発見している経路の品質より良好な場合、通信経路の入れ替えを行う。通信経路の入れ替えをするには、移動局100は、詳細アンテナトレーニングを実行してデータ伝送時と同一のAWV指向性アンテナでのSNRを比較する必要がある。そのためには、移動局100が固定局103〜133のいずれかを指定して帯域を占有して、経路探索起動信号により詳細なアンテナトレーニングが必要となる。新たな通信経路であったとしても現在発見している通信経路より通信品質が劣る場合には経路の入れ替えは行われない。したがって、一つの固定局が帯域を占有する詳細アンテナトレーニングを実行した後に経路の入れ替えが行われないのは、通信帯域の利用効率を大きく損ねることになる。
通信帯域の利用効率を損ねないようにするため、固定局103〜133は、経路探索要求信号を受信したときのSNRからAWV指向性アンテナでのSNRを推定する。そして、固定局103〜133は、現在発見している経路よりもSNRが改善すると推測される場合のみ、経路探索応答信号を送信し、詳細なアンテナトレーニングを実行するように動作する。AWV指向性アンテナでのSNRは、移動局のセクター指向性アンテナのアンテナ駆動数、AWV指向性アンテナのアンテナ駆動数と、固定局のセクター指向性アンテナのアンテナ駆動数、AWV指向性アンテナのアンテナ駆動数から推定できる。例えば、セクター指向性アンテナのアンテナ駆動数が8でAWV指向性アンテナのアンテナ駆動数が16である場合、AWV指向性アンテナでの推定SNRは移動局と固定局がともにセクター指向性からAWV指向性アンテナに切り替えているため経路探索要求信号のSNRに(3dB+3dB=)6dBを加えた値である。
いま、発見できている経路で最も通信品質が悪いのが経路608の20dBであるため、マージンを3dBとり経路探索要求信号を受信したSNRが11dB以上である場合に、固定局103は経路探索応答信号を送信するように動作する。これにより、AWV指向性でのトレーニング後に経路の入れ替えを行わない状況を回避することができる。また、一つの固定局に対して複数の経路で冗長伝送するよりも通信遮断が生じる可能性を低減することができる。そのため、経路探索要求信号を受信したSNRから推定したAWV指向性アンテナでのSNRが、現在発見している経路のSNRよりも劣っている場合であっても、その固定局が一つも経路を発見できていない場合には経路探索応答信号を送信するように動作してもよい。固定局は、オムニ指向性などの広指向性でなくセクター指向性で受信動作を行うことで効率よく新しい経路を探索することができる。
図7に、受信指向性と誤検出を説明する図を示す。状態700は、移動局100が指向性705のメインローブを固定局103に指向し、固定局103が指向性707をオムニ指向性にして受信動作を行っている状態である。状態701は、移動局100が指向性709のサイドローブを固定局103に指向し、固定局103が指向性711をオムニ指向性にして受信動作をしている状態である。状態700の指向性705と、状態701の指向性709は異なる指向性として移動局100は経路探索要求信号を送信するが、通信経路は同一である。オムニ指向性で受信する固定局103は、経路探索要求信号を受信した段階では同一の経路で受信していると判断できず、異なる経路から受信していると誤検出し、経路探索応答信号を送信し詳細な経路探索を実行する。
固定局103の最善セクター指向性を発見するために、経路探索応答信号を受信した移動局100は、固定局103を指定し同じ指向性で信号を送信し続け、固定局103は指向性を切り替えながら受信動作を行う。セクター指向性アンテナを切り替えながら受信動作を行った結果、状態700と状態701ではともにメインローブを移動局に指向している同一の受信セクター指向性アンテナが最もSNRが高くなり、この段階で同一の経路で受信していることを固定局103は判定できる。つまり、固定局103は、同一の経路で受信していることを、移動局100が複数の固定局103〜133に対して経路探索信号を同報送信している段階では判定できない。移動局100が一つの固定局103を指定して帯域を占有して経路探索を行った後にはじめて、固定局103は、誤検出を認識するため通信帯域の利用効率が悪化する。
この誤検出を防ぐため、固定局103〜133毎に、最も良好な経路のSNRから規定の値を引いたSNR値を閾値にし、閾値以下の場合には経路探索応答信号を送信しない方法がある。例えば、正面方向を向くアレイアンテナの場合、メインローブに対するサイドローブ比は約13dBであるので、最も良好な経路のSNRから、10dBを引いたSNR値を閾値にすることができる。これにより、状態700でのSNRに比べ状態701のSNRは約13dB程度劣り、閾値10dBを下回るため、状態701では、固定局103は、経路探索応答信号を送信せず誤検出を防ぐことができる。
しかしながらこの場合、最善経路に対する他経路のマージンが10dBしかなく、反射物による減衰および反射経路による距離減衰の合計が10dBを超える経路は、たとえ最善経路とは異なる経路であったとしても検出できないことになる。
状態702は、移動局100が指向性713のメインローブを固定局103に指向し、固定局103が指向性715のメインローブを移動局100に指向して受信動作をしている状態である。状態703は、移動局100が指向性717のサイドローブを固定局103に指向し、固定局103が指向性719のサイドローブを移動局100に指向して受信動作をしている状態である。状態702の指向性713と、状態703の指向性717は異なる指向性として移動局は経路探索要求信号を送信するが、経路は同一である。状態702と状態703の場合も、最も良好な経路のSNRから規定の値を引いたSNR値を閾値する。閾値以下の場合には、異なる送信指向性で送信された経路探索要求信号であっても経路探索応答信号を送信しない方法を適用できる。
経路探索要求信号の送受信をセクター指向性に限定すれば、移動局100と固定局103がともにサイドローブを指向しあう状態703の場合に経路探索応答信号を送信しないように閾値を設定できる。例えば、最も良好な経路のSNRから、20dBを引いたSNRを閾値にすることができる。20dBの減衰量は自由空間伝搬損失では10倍の距離に等しいため、誤検出を防ぎながら十分に反射パスを検出できる閾値を設定でき、効率よく経路探索を実行することができる。
経路情報管理部303は、移動局100が送信した経路情報管理テーブルか、他の固定局113〜133が転送した経路情報管理テーブルに基づき、移動局100が有する経路数、各経路の通信品質、経路を構成する移動局の送信指向性・固定局・固定局の受信指向性、を取得する。経路情報管理部303は、取得した経路情報管理テーブルを要求信号取得部304に出力する。
要求信号取得部304は、移動局100が送信した経路探索要求信号を取得し、経路探索要求信号に記載されている、割り当てられる通信期間を示す通信期間フィールドと、送信権を持つ無線局のMACアドレスを示す送信局アドレスフィールドと、受信局のMACアドレスを示す受信局アドレスフィールドと、経路探索要求信号を移動局が送信するのに使用しているセクター指向性アンテナを識別するアンテナ識別情報を、それぞれ取得する。
要求信号取得部304は、取得したアンテナ識別情報と、経路情報管理テーブルに基づき、システムの要求経路数に対する移動局100の経路数を判定する。移動局100の経路数が要求経路数より少ない場合には、新しい経路を探索する必要がある。そのため、経路探索要求信号を受信した経路が現在発見できている経路でなければ、要求信号取得部304は、経路探索要求信号と経路探索要求信号を受信した指向性情報とSNR情報を応答信号生成部305に出力する。移動局100の経路数が要求経路数以上の場合には、現在発見している経路と入れ替えることができるかを判定するため、要求信号取得部304は、所定の閾値と経路探索要求信号のSNR値を比較する。所定の閾値は、固定局103は最も通信品質が悪い経路のSNRに基づいて決定され得る。経路を入れ替えることができると推定できる場合には、要求信号取得部304は、経路探索要求信号と経路探索要求信号を受信した指向性情報とSNR情報を応答信号生成部305に出力する。
応答信号生成部305は、要求信号取得部304が出力した情報に基づき、経路探索応答信号を生成する。経路探索応答信号はIEEE802.11adのGrant ACKフレームである。Grant ACKフレームは、
‐フレーム制御フィールド、
‐割り当て期間を記載する通信期間フィールド、
‐送信権を持つ無線局のMACアドレスを記載する送信局フィールド、
‐受信局のMACアドレスを記載する受信局アドレスフィールド、
‐移動局100が経路探索要求信号を送信したセクター指向性アンテナを記載する送信指向性フィールド、
‐固定局103が経路探索要求信号を受信したセクター指向性アンテナを記載する受信指向性フィールド
を含む。
フレーム制御フィールドは、フレーム全体を制御するためのフィールドである。通信期間フィールドは、直前の経路探索要求信号内の通信期間フィールドと同一の値を記載する。送信局フィールドは、自局のMACアドレスを記載する。受信局フィールドは、直前の経路探索要求信号内の送信局フィールドと同一の値を記載する。送信指向性フィールドは、直前の経路探索要求信号内の送信指向性フィールドと同一の値を記載する。受信指向性フィールドは、経路探索要求信号を受信したセクター指向性アンテナを記載する。応答信号生成部305は、生成した経路探索応答信号を送信部310に出力する。
有線通信部309は、Gigabit Ethernetケーブルなどの有線通信ケーブルを介して、固定局103〜133と制御情報の送受信を行う。制御情報は、ビーコン信号や経路探索要求信号、経路探索応答信号および経路情報管理テーブル等である。ビーコン信号や経路探索要求信号を転送することで、移動局100からこれらを受信できなかった固定局103〜133も、経路探索期間の開始タイミングや経路探索の対象となる固定局を認識することができる。
固定局103が経路探索応答信号を移動局100に送信する際に他の固定局113〜133も出力することで、固定局113〜133が経路探索要求信号の受信動作を停止することができる。経路情報管理テーブルを転送することで常に移動局100と無線通信をしない固定局113〜133とであっても、現在の経路に関する情報を取得することができる。また、有線通信部309は、移動局100が送信した撮像画像データを、映像処理端末等のPC107に転送する。
PC107は、撮像画像に基づき移動局100の位置姿勢検出処理を行う。撮像画像の特徴点検出を行い、特徴点の移動をフレームにまたがって追跡することで位置姿勢の特定ができる。特徴点検出技術としては、たとえば公知の特徴点検出技術であるFAST(Features from Accelerated Segment Test)が挙げられ、FASTを用いることで、特徴点の座標および特徴量の算出が可能となる。PC107は、位置姿勢検出後にDB部(不図示)が保持する仮想物体を、移動局100の位置姿勢情報に基づき、移動局100のHMD装着者が仮想物体を観察した場合のCG画像を撮像画像に重畳してMR画像データを生成する。続いて、PC107は、生成したMRデータを、有線通信部309を介して固定局103〜133に有線通信する。有線通信部309は、MR画像データを移動局100に無線送信するため、送信信号生成部306に出力する。
起動信号取得部307は、経路探索起動信号に記載している、通信期間フィールドと、送信局アドレスフィールドと、受信局アドレスフィールドと、トレーニング要求フィールドと、トレーニング応答フィールドと、トレーニングフィールドと、フィードバックフィールドと、を取得し、経路探索信号生成部308に出力する。
経路探索信号生成部308は、経路探索起動信号に基づき、アンテナトレーニングに必要となる経路探索信号を生成し送信信号生成部306に出力する。
送信信号生成部306は、応答信号生成部305が生成する経路探索応答信号や、経路探索信号生成部308が生成する経路探索信号、有線通信部309が取得したMR画像データをIEEE802.11adのパケット形式に変換しアンテナ300に出力する。また、送信信号生成部306は、アンテナ設定部301に対して、無線信号に応じたアンテナ指向性種類とアンテナ指向性角度を出力する。例えば無線信号がMR画像データであれば、送信信号生成部306は、データ宛先局である移動局100を指向したAWV指向性アンテナをアンテナ設定部301に通知する。また、無線信号が経路探索応答信号や経路探索信号であれば、送信信号生成部306は、経路探索応答信号および経路探索信号内で指定されているセクター指向性アンテナおよびAWV指向性アンテナをアンテナ設定部301に通知する。
次に図8および図9の動作説明図を用いて、本実施形態の無線通信システムの移動局100および固定局103それぞれの動作を説明する。図8は、移動局100の動作を説明する図であり、図9は、固定局103の動作を説明する図である。
S801で移動局100は固定局103を指定してアンテナ指向性数情報を要求する。アンテナ指向性数は、DMG指向性アンテナ数、セクター指向性アンテナ数、AWV指向性アンテナ数を含む。アンテナ指向性数情報を要求するために、移動局100はビーコンフレーム内に移動局100のMACアドレスと移動局100のアンテナ指向性数情報を記載して送信する。固定局103のアソシエーションリクエストで少なくとも固定局103のアンテナ指向性数情報が記載されていない場合は、移動局100は、アソシエーションレスポンスで否定応答することでアンテナ指向性情報を要求する。アンテナ指向性数情報は、移動局100と固定局103の双方が認識できるフレーム形式であればよい。例えば、アンテナ指向性数情報は、IEEE802.11adフレーム形式のビーコンフレームやアソシエーションレスポンスフレームのDMG Capabilities Elementフィールドに記載してもよい。移動局100は、既知のいずれかの固定局のMACアドレスが記載されているアンテナ指向性数情報を含むフレームを受信したらS802に進む。
S901で固定局103は、有線通信手段106で他の固定局113〜133に対してアンテナ指向性数情報を通知し、完了したらS902に進む。
S902で固定局103は、他の固定局113〜133が有線通信手段106で通知したアンテナ指向性数情報を取得する。
S903で固定局103は、移動局100のアンテナ指向性数情報要求の有無を確認する。固定局103は、移動局100が送信するビーコンフレームを受信したら、自局と他の固定局113〜133のアンテナ指向性数と自局のMACアドレスを記載したアソシエーションリクエストフレームを生成し、S904に進む。固定局103は、ビーコンフレームが受信できるまでS903で受信動作を続ける。
S904で固定局103は、ビーコンフレームに記載されているチャネルアクセス方式でアソシエーションリクエストフレームを送信する。固定局103は、アソシエーションリクエストフレームに対する肯定応答を示すアソシエーションレスポンスフレームを受信したらS905に進む。
S802で移動局100は、固定局103が通知したアンテナ指向性情報に基づき、固定局識別情報とアンテナ指向性情報を関連付けて記録し、S803に進む。
S803およびS905で移動局100および固定局103は、経路探索を実行する。経路探索はIEEE802.11adのSLSプロトコルに則り最善送信セクター指向性アンテナを決定した後、BRPプロトコルに則り最善送信AWV指向性アンテナと最善受信AWV指向性アンテナの組み合わせを決定する。なお、最善AWV指向性アンテナと最善AWV指向性アンテナの組み合わせは上り通信リンク(送信側が移動局100、受信側が固定局103)と、下り通信リンク(送信側が固定局103、受信側が移動局100)の双方に対して行う
移動局100は、送信側が移動局100で、受信側が固定局103の通信期間を、ビーコンフレームを用いて固定局103に通知する。当該通信期間で移動局100は、セクター指向性アンテナ用テスト信号を送信する。セクター指向性アンテナ用テスト信号は、IEEE802.11adフレーム形式のSSWフレームである。
SSWフレームは、
‐フレーム制御フィールド、
‐通信期間を示す通信期間フィールド、
‐送信権を持つ無線局のMACアドレスを記載する送信局フィールド、
‐受信局のMACアドレスを記載する受信局アドレスフィールド、
‐送信セクター指向性アンテナの識別情報を記載するセクター指向性アンテナ識別フィールド、
‐連続するSSWフレームを送信する残りの回数を記載するカウントダウンフィールドと、
を含む。
フレーム制御フィールドは、フレーム全体を制御するためのフィールドである。移動局100の送信セクター指向性アンテナをトレーニングするために、移動局100は、通信期間フィールドに残りのSSWフレームを送信するのに必要な通信期間を記載し、送信局アドレスフィールドに自局のMACアドレスを記載し、受信局アドレスフィールドにS801でアソシエーションした固定局103のMACアドレスを記載し、セクター指向性アンテナ識別フィールドにこのSSWフレームを送信するセクター指向性アンテナ番号を記載し、カウントダウンフィールドに残りのSSWフレームの回数を記載して、SSWフレームを全てのセクター指向性アンテナで送信する。
固定局103は、カウントダウンフィールドが0のSSWフレームを受信まで、DMG指向性アンテナでSSWフレームの受信動作を続ける。または、固定局103は、カウントダウンフィールドが0のSSWフレームを受信する予定の時刻から一定時間経過するまで、DMG指向性アンテナでSSWフレームの受信動作を続ける。当該一定時間は、最後に受信したSSWフレームの通信期間フィールドとカウントダウンフィールドに基づく。その後、固定局103は、各SSWフレームのSNRを記録し最もSNRの高いセクター指向性アンテナ識別番号を記録する。
受信動作を完了した固定局103およびSSWフレームの送信を完了した移動局100は、固定局103と送信と受信の役割を入れ替えてSSWフレームの送受信を行う。SSWフレームの送受信を完了した移動局100は、IEEE802.11adフレーム形式のSSWフィードバックフレームを送信する。
SSWフィードバックフレームは、
‐フレーム制御フィールド、
‐通信期間を示す通信期間フィールド、
‐送信権を持つ無線局のMACアドレスを記載する送信局フィールド、
‐受信局のMACアドレスを記載する受信局アドレスフィールド、
‐最善のSSWフレームを送信したアンテナの識別情報を記載するフィードバックフィールド、
‐BRPの開始を要求するBRP要求フィールド、
を含む。
フレーム制御フィールドは、フレーム全体を制御するためのフィールドである。移動局100は、通信期間フィールドにBRPを完了するのに十分な期間を記載し、送信局アドレスフィールドに自局のMACアドレスを記載し、受信局アドレスフィールドに直前のSSWフレームを送受信した固定局103のMACアドレスを記載し、フィードバックフィールドにSNRが最善となるSSWフレームのセクター指向性アンテナ識別フィールドと同一の値を記載し、BRP要求フィールドにBRPを要求することを示す値を記載し、SSWフィードバックフレームを送信する。
SSWフィードバックフレームを受信した固定局103は、IEEE802.11adフレーム形式のSSW ACKフレームを送信する。SSW ACKフレームはSSWフィードバックフレームと同一のフレーム構造およびフレーム形式である。固定局103は、通信期間フィールドにSSWフィードバックフレームの通信期間フィールドからSSW ACKフレームの送信に要する期間を減じた値を記載し、送信局アドレスフィールドには自局のMACアドレスを記載し、受信局アドレスフィールドに移動局100のMACアドレスを記載し、フィードバックフィールドにSNRが最善となるSSWフレームのセクター指向性アンテナ識別フィールドと同一の値を記載し、BRP要求フィールドにはBRPを要求することを示す値を記載し、移動局100に送信する。
SSW ACKフレームの送受信を完了した移動局100と固定局103は、アンテナトレーニングを前述のBRPフレームにより実施し、最善のAWV指向性の組み合わせを決定する。続いて、移動局100は、経路情報管理部212に固定局103の識別情報と、固定局103のセクター指向性とAWV指向性、移動局100のセクター指向性とAWV指向性と通信品質を記録する。経路探索を完了した移動局100は、S804に進み、経路探索を完了した固定局103はS906に進む。
S804で移動局100は、全ての固定局103〜133のアンテナ指向性数情報を取得したかを判定する。アンテナ指向性数情報はアソシエーションを完了している固定局であればその固定局から無線通信により取得できるが、無線通信できない固定局からは直接取得することはできない。移動局100は、全ての固定局103〜133を対象にして順番にアソシエーションおよび経路探索を実行する。ここで、移動局100は、アソシエーションが実行できずアンテナ指向性数情報を取得できなかった固定局に対しては、他の固定局からアンテナ指向性数情報を取得し、完了すればS805に進む。
S805で移動局100は、経路探索期間において経路探索要求信号を同一のセクター指向性アンテナで送信する回数を決定する。送信回数は発見できている経路状況と固定局103のセクター指向性アンテナ数で決定する。例えばS804で、移動局100が図6に示した経路状況を取得した場合、固定局のセクター指向性アンテナで最も経路を発見できている数が少ないのは固定局133で経路数は0である。また、図6の例では、固定局133のセクター指向性アンテナ数は4であるので、移動局100はセクター指向性アンテナあたりの経路探索要求信号送信回数Nを4に決定し、S806に進む。
S806で移動局100は、経路探索要求信号送信期間に全ての経路探索要求信号を送信するのに要する期間を算出する。図6の状態の場合、S805で同一のセクター指向性アンテナでの経路探索要求信号の送信回数Nは4である。移動局100が経路を発見できていないセクター指向性数Mは4である。よって、全固定局103〜133の経路を発見できていないセクター指向性アンテナと、移動局100の経路を発見できていないセクター指向性アンテナの組み合わせを探索するには送信回数Nとセクター指向性数Mの積である。すなわち、経路探索期間内に経路探索要求信号を送信する回数は、送信回数Nとセクター指向性アンテナ数Mの積で16である。移動局100は、経路探索要求信号を16回送信するのに要する期間を決定し、S807に進む。
S807で移動局100は、ビーコンフレームにデータ通信期間の開始時刻と経路探索期間の開始時刻を記載する。図10に、本実施形態における各フレームの通信時間割当を示す。ビーコンフレーム送信期間1001の間にデータ通信期間1002と経路探索期間1003が存在する。データ通信期間1002では、AWV指向性アンテナでデータフレームが送受信される。経路探索期間1003では、経路探索要求信号、経路探索応答信号、経路探索起動信号、経路探索信号が送受信される。データ通信期間1002には、複数のタイムスロット1004を割り当てられる。各タイムスロット1004の割り当てのために、移動局100は、送信局のMACアドレスと受信局のMACアドレスとタイムスロットの開始時刻と終了時刻と、固定局103が使用するAWV指向性アンテナを記載する。さらに、移動局100は、S806で決定した、経路探索期間において同一セクター指向性アンテナで経路探索要求信号を送信する回数Nと、経路探索期間で全ての経路探索要求信号の送信に要する期間の情報をビーコンフレームに付与する。タイムスロットの割り当ては、システムが要求する冗長度を満たすように行われる。移動局100は、ビーコンフレームの送信を完了したらS808に進む。
S906で固定局103はビーコンフレームを受信し、ビーコンフレームに記載されている情報を取得したのち、有線通信手段106で他の固定局113〜133に転送する。移動局100からのビーコンフレームを受信できない固定局であっても、経路探索期間の開始タイミングを取得することができる。また、経路探索期間では、移動局100はセクター指向性で経路探索要求信号を送信しているため、固定局は、DMG指向性アンテナなどの広指向性で送受信をするよりも受信する可能性を高めることができる。固定局103は、ビーコンフレームを受信し他の固定局113〜133に転送するか、他の固定局113〜133からビーコンフレームに記載されている内容を転送された場合はS906に進む。
S808で移動局100は、経路状況に変化があれば経路情報管理テーブルを更新する。移動局100は、経路状況の変化を、後述のS810でのデータ通信の結果や、後述のS814での経路探索結果に基づき観測する。移動局100は、経路状況に変化があれば経路情報管理テーブルを更新し、S809に進む。
S907で固定局103は、経路状況に変化があれば経路情報管理テーブルを更新する。固定局103は、経路状況の変化を、後述のS909でのデータ通信の結果や、後述のS916での経路探索結果に基づき観測する。また、固定局103は、他の固定局113〜133との有線通信手段106により転送された経路情報で更新してもよい。固定局103は、経路状況に変化があれば経路情報管理テーブルを更新し、S908に進む。
S809で移動局100は、現在時刻がデータ通信期間か経路探索期間かを判定する(図10を参照)。データ通信期間であればS810に進み、経路探索期間であればS811に進む。S908で固定局103は、現在時刻がデータ通信期間か経路探索期間かを判定する。データ通信期間であればS909に進み、経路探索期間であればS910に進む。
S810で移動局100は、ビーコンフレームで通知した固定局103〜133に対して、AWV指向性アンテナを用いて撮像画像データやMR画像データおよび経路情報管理テーブルのデータ通信を行う。移動局100が送信局であるタイムスロットでは、移動局100は、データ送信が完了しデータ通信に対する通信品質結果を示す情報を応答信号として受信する。移動局100が受信局であるタイムスロットでは、移動局100は、データ受信が完了しデータ通信に対する通信品質結果を示す応答信号を送信する。ビーコンインターバル内のデータ通信期間が完了したら、S808に戻る。
S909で固定局103は、ビーコンフレームで通知された時刻およびAWV指向性アンテナで移動局100と撮像画像データやMR画像データおよび経路情報管理テーブルのデータ通信を行う。固定局103が送信局であるタイムスロットでは、固定局103は、データ送信が完了しデータ通信に対する通信品質結果を示す情報を応答信号として受信する。固定局103が受信局であるタイムスロットでは、固定局103は、データ受信が完了しデータ通信に対する通信品質結果を示す応答信号を送信する。ビーコンインターバル内のデータ通信期間が完了したら、S907に戻る。
S811で移動局100は、経路探索要求信号を送信するセクター指向性アンテナとセクター指向性アンテナの切替順を決定する。セクター指向性アンテナ切替順は、経路情報管理テーブルに基づいて決定するため、直近のデータ通信期間における通信結果を反映することができる。セクター指向性アンテナ切替順は、すでに固定局103〜133のいずれかと経路を発見できているセクター指向性アンテナを除いて構成する。セクター指向性アンテナの切替順は、例えば、最もセクター指向性アンテナ識別番号の小さいアンテナから順次選択する順でもよい。また、セクター指向性アンテナの切替順は、直近の経路探索期間で新しい経路を発見した場合は、次の経路探索期間ではそのセクター指向性アンテナの次のセクター指向性アンテナから開始するように構成されてもよい。移動局100は、セクター指向性アンテナ切替順を決定したらS812に進む。
S910で固定局103は、移動局100と経路を発見できているかを判定し、経路が発見できていなければS911に進み、経路が発見できていればS912に進む。
S911で固定局103は、経路探索期間におけるセクター指向性アンテナの切替順を決定する。図6の例では、経路が発見できていない固定局は固定局133である。経路探索期間では、移動局100と経路が発見できていないセクター指向性アンテナで順次経路探索要求信号の受信動作を行う。したがって、図6の例では、固定局133は全てのセクター指向性アンテナで受信動作を行うように切替順を決定する。固定局103(図6の例では固定局133)は、切替順を決定したらS913に進む。
S912でもS911と同様に、固定局103は、経路探索期間におけるセクター指向性アンテナの切替順を決定する。図6の例では、経路が発見できている固定局は103である。固定局103は既に経路607と608を発見できているため、該当するセクター指向性アンテナ620と621を除く2つのセクター指向性アンテナで切替順を構成する。移動局100が同じセクター指向性アンテナで送信する経路探索要求信号の送信回数は4であるため、固定局103は経路探索要求信号を2回分受信動作を行い2回分は受信動作を行わない。移動局100が同じセクター指向性アンテナで送信する回数を予め通知されることにより、同じセクター指向性アンテナ同士で重複して経路探索要求信号を受信することを回避できるため、消費電力の低減ができる。固定局103は、切替順を決定したらS913に進む。
S812で移動局100は、経路探索要求信号を送信し送信が完了したら、経路探索要求信号を送信したセクター指向性アンテナと同一のセクター指向性アンテナで経路探索応答信号の受信動作を起動する。移動局100は、受信動作の起動後、S813に進む。
S813で移動局100は、経路探索要求信号の送信完了後から、経路探索応答信号を送信するのに要する時間受信動作を続ける。移動局100が経路探索応答信号を受信しなかった場合には、S815に進む。移動局100が経路探索応答信号を受信した場合は、S814に進む。
S814で移動局100は、経路探索応答信号を送信した固定局と、経路探索起動信号および経路探索信号を用いたアンテナトレーニングを実行する。移動局100は、アンテナトレーニングを、S813で経路探索応答信号に記載されているアンテナ識別情報に該当するセクター指向性アンテナを用いて行う。アンテナトレーニングを完了した移動局100は、S808に戻り、S814で実行したアンテナトレーニングの結果を経路情報管理テーブルに記載する。
S815で移動局100は、S805で決定した同一のセクター指向性アンテナでの経路探索要求信号送信回数分、送信を完了したかを判定する。送信を完了していなければS812に戻り、移動局100は、再度同じセクター指向性アンテナで経路探索要求信号を送信する。送信を完了していれば、S816に進む。
S816で移動局100は、経路探索要求信号を送信したセクター指向性アンテナがS811で決定した切替順における最後のセクター指向性アンテナであるかを判定する。最後のセクター指向性アンテナでない場合には、まだ経路探索を実行していない方向があるので、S817に進む。最後のセクター指向性アンテナである場合には、既に経路が発見できている方向を除く全てのセクター指向性アンテナ同士の組み合わせで探索が完了したことを示し新しい経路が存在しないことを示しているため、S809に戻る。
S817で移動局100は、S811で決定した切替順における次のセクター指向性アンテナに切り替え、S812に戻り再び経路探索要求信号を送信する。
S913で固定局103は、S911またはS912で決定した切替順に則り、予め移動局100が通知した経路探索期間で経路探索要求信号の受信動作を開始する。経路探索期間内で固定局103は、経路探索開始時刻から経路探索要求信号のフレーム長に一致する期間、同じセクター指向性アンテナで経路探索要求信号の受信動作を行う。固定局103は、経路探索要求信号を受信しなかった場合には、次のセクター指向性アンテナに切り替える。受信動作を開始した固定局103は、S914に進む。
S914で固定局103は、既に発見できている経路とは異なる経路で経路探索要求信号を閾値以上の通信品質で受信したかを判定する。固定局103は、既に発見できている経路と異なるかは経路探索要求信号内のアンテナ識別情報と、経路探索要求信号を受信したセクター指向性アンテナと、経路情報管理テーブルに基づいて判定する。固定局103は、経路情報管理テーブル内に同一のセクター指向性アンテナと同一のセクター指向性アンテナの組み合わせがあれば、同一の経路であると判定する。セクター指向性アンテナの組み合わせが経路情報管理テーブルにない場合でも、固定局毎に設定した閾値に基づき経路探索応答信号を送信する条件を設定することで、複数の固定局に対する高効率な経路探索を実行できる。閾値は、システムが要求する経路数と、移動局100が持つ経路数と、固定局が経路を発見しているか否かと、固定局が経路を発見している場合には経路の最善SNRに応じて決定される。
システムが要求する経路数に対して移動局100が有する経路が多い場合、通信経路の入れ替えが生じるかを判定するため、閾値は、移動局100が持つ経路の中で最も通信品質の低いSNRに基づく値である。例えば、図6の例では、経路608の通信品質が最も低いため、経路608のSNR20dBからAWV指向性アンテナとセクター指向性アンテナのアンテナ駆動数の違いとマージンを考慮して9dB減じた値である11dBを閾値として設定する。また、経路を既に発見している固定局に対しては、メインローブ同士の経路とサイドローブとメインローブによる経路を同一の経路と誤検出するのを避けるため、最善の経路から20dB減じた値を、閾値として設定する。経路を発見していない固定局においては、経路が新たに発見できたことを移動局100に通知するために、閾値以下であっても経路探索応答信号を送信するためのステップに進む。
一つの固定局が複数の通信経路を持つ冗長伝送システムの場合、その固定局を覆うように障害物が存在することで同時に複数の経路が遮断されてしまう可能性がある。よって、一つの固定局が複数の通信経路を有する構成よりも、離散した位置に存在する異なる固定局それぞれと通信経路を持つ構成の方が通信遮断に対して堅牢なシステムである。そのため、一つも経路が発見できていない固定局は、新たに経路を発見できたら移動局100に通知する。誤検出を避けるために設定した閾値と、経路の入れ替えが生じるかを判定するために設定した閾値を比較し、高い閾値を固定局の閾値として設定する。
上記をまとめると、図6のように通信経路が要求経路数より多い状況では、固定局113は、既に経路を発見できており誤検出を避けるため閾値を20dBに設定する。固定局123は、経路を発見できていないため閾値を0dBに設定する。固定局123と固定局103は、既に経路が発見できており最も通信品質の低いSNRと入れ替えが生じるかを判定するため閾値を11dBに設定する。
また、図5のように通信経路が要求経路数よりも少ない状況では、固定局113と固定局133は通信経路を発見できていないため閾値は0dBに設定する。固定局123は、既に経路が発見できており誤検出を避けるため閾値を5dBに設定する。固定局103も既に経路が発見できており誤検出を避けるため閾値を10dBに設定する。
S914では、固定局103は、閾値以上の通信品質で受信したかを判定し、受信した場合はS915に進み、受信しなかった場合はS917に進む。
S915で固定局103はS914で経路探索要求信号を受信したセクター指向性アンテナと略一致するセクター指向性アンテナで経路探索応答信号を送信する。経路探索応答信号を移動局100に無線送信した固定局103は、有線通信手段106で他の固定局113〜133に対して経路探索応答信号を送信したことを通知する。経路探索応答信号の送信を完了した固定局103は、経路探索起動信号を受信するために、S914で経路探索要求信号を受信したセクター指向性アンテナと同じセクター指向性アンテナで受信動作を開始する。その後、S916に進む。
S916で固定局103は、移動局100と経路探索起動信号および経路探索信号を用いたアンテナトレーニングを実行する。アンテナトレーニングはS914で閾値以上で経路探索要求信号を受信したセクター指向性アンテナを用いて行う。アンテナトレーニングを完了した固定局103は、S907に戻り、S914で実行したアンテナトレーニングの結果を経路情報管理テーブルに記載する。
S917で固定局103は既に他の固定局113〜133が移動局100と経路探索を開始しているかを判定する。固定局103は、他の固定局113〜133から経路探索応答信号を送信したことを通知する信号を有線通信手段106により取得した場合、これらの固定局が移動局100と経路探索を開始しているかを判定する。また、固定局103は、移動局100が他の固定局に対して送信した経路探索応答信号を受信した場合に、これらの固定局が移動局100と経路探索を開始しているかを判定する。固定局103は、他の固定局113〜133が経路探索を実行していると判定した場合は、移動局100が経路探索要求信号を同報送信することはないので、S907に戻り受信動作を中止する。固定局103は、送信されることのない経路探索要求信号の受信動作を中止することで、消費電力を低減することができる。
S918で固定局103は、固定局103がセクター指向性を切り替えながら経路探索要求信号の受信動作を開始した時刻から、移動局100が同一のセクター指向性で経路探索要求信号をN回送信するのに要する期間を超過したかを判定する。固定局103は期間を超過していないと判定した場合、移動局の一つのセクター指向性に対する経路探索が完了していないため、S913に戻る。期間を超過したと判定した場合、移動局のこの送信セクター指向性に対しては経路探索が完了したことになるため、S919に進む。
S919で固定局103は、経路探索期間の開始時刻から今までの経過時間が、全経路探索要求信号送信期間を超過したかを判定する。超過したと判定することは、この探索期間で新たな経路が発見できなかったことを意味し、S907に戻る。固定局103は、超過していないと判定したら、S920に進む。
S920で固定局103は、S911またはS912で決定したセクター指向性アンテナの切替順の初期状態にセクター指向性アンテナを設定する。これにより、移動局100が異なるセクター指向性アンテナでN回送信する経路探索要求信号に対して経路探索を実行でき、固定局103は、セクター指向性アンテナを初期状態に設定したらS913に進む。
[実施形態2]
実施形態1では、経路探索期間が定常的に存在する構成について述べた。本実施形態では、直前のデータ通信期間の結果に基づいて経路探索期間の存在や経路探索期間長を適応的に決定する構成について説明する。システムが要求する冗長度に対して十分に経路が確立できている状態では、新たなパスを探索する経路期間を設定しないことでデータ通信期間を長く設定できデータ通信の伝送レートを高めることができる。経路が十分に確立できていない状態では、新たなパスを探索する期間を設定し経路探索を実行する。
この構成により、経路数が十分に足りない場合のみ経路探索期間の割り当ておよび経路探索の実行を行うため、実施形態1に比べて伝送レートを高めることができる。図15は本実施形態におけるフレームの通信時間割当を示す図である。状態1508はシステムが要求する冗長度に対して十分に経路が確立できている状態であり、この状態ではデータ通信期間1502のみが存在し、ビーコンフレーム1501とデータフレーム1503が存在する。状態1509はシステムが要求する冗長度に対して受分に経路が確立できていない状態であり、データ通信期間1504と経路探索期間1505が存在し、ビーコンフレーム1501とデータフレーム1506と経路探索フレーム1507が存在する。
以下、図面を参照して本実施形態における移動局100と固定局103の構成及び動作を説明するが、図中、実施形態1の構成及び動作が同様のブロックについては実施形態1と同様のブロックについては本実施形態1と同様の符号を付与し、その説明は省略する。また、以下の説明において、固定局103の動作および機能は、固定局113〜133にも同様に適用可能とする。
図11は、本実施形態における移動局100の構成例を示す図である。実施形態1と比較し、本実施形態の移動局100は応答信号取得部1101を備える。応答信号取得部1101は、直前のデータ通信期間における通信品質を示す情報を取得し、経路が遮断されたか否かを判定する。応答信号取得部1101は、経路が遮断されたと判定した場合には、経路情報管理部212に経路情報の更新を通知するとともに、送信信号生成部202に、経路探索期間を設定したことを通知する信号を出力する。
経路探索期間の設定の情報は、ビーコンフレームや固定局103〜133のいずれかに対するデータフレームに付与することで各固定局に通知される。経路探索期間の設定の情報は、
‐遮断された固定局のMACアドレスを記載する固定局識別フィールド、
‐経路が遮断される前の経路情報管理テーブルを記載する前経路情報管理テーブルフィールド、
‐経路が遮断された後の経路情報管理テーブルを記載する後経路情報管理テーブルフィールド、
‐経路期間の開始を記載する経路期間開始時刻フィールド、
‐経路期間の期間長を記載する経路期間長フィールド、
‐経路期間において同一のセクター指向性アンテナで経路探索要求信号を送信する回数を記載する同一送信回数フィールド、
‐経路期間において全ての経路探索要求信号を送信するのに要する期間を記載する全送信期間フィールド、
を含む。
図12は、本実施形態における固定局103の構成例を示す図である。実施形態1と比較し、本実施形態の固定局103は、応答信号生成部1201を備える。応答信号生成部1201は、直前のデータ通信における通信品質を示す情報を記載した応答信号フレームを生成する。応答信号生成部1201は、直前のデータ通信における通信品質が良好であった場合には、応答信号フレームを送信信号生成部306に出力し、送信信号生成部306は、次に移動局100に対してデータ送信するパケットに応答信号フレームを付与する。生成部1202は、直前のデータ通信における通信品質が悪かった場合には、有線通信手段106を介して他の固定局113〜133に対して応答信号フレームを通知する。固定局103は、有線通信手段106により他の固定局113〜133から直前のデータ通信期間における通信品質が悪いことを示す応答信号フレームを取得した場合には、次に移動局100に対して送信するMR画像データを含むパケットに、取得した応答信号フレームを付与する。
次に図13および図14の動作説明図を用いて、本実施形態の無線通信システムの移動局100および固定局103それぞれの動作を説明する。図13は、移動局100の動作を説明する図であり、図14は、固定局103の動作を説明する図である。
S1301で移動局100は、固定局103を指定してアンテナ指向性数情報を要求する。アンテナ指向性数はDMGアンテナ指向性数、セクター指向性数、AWV指向性アンテナ数を含む。アンテナ指向性数情報を要求するために、移動局100はビーコンフレーム内に移動局100のMACアドレスと移動局100のアンテナ指向性数情報を記載して送信する。固定局103のアソシエーションリクエストで少なくとも固定局103のアンテナ指向性数情報が記載されていない場合は、移動局100は、アソシエーションレスポンスで否定応答することでアンテナ指向性情報を要求する。アンテナ指向性数情報は、移動局100と固定局103の双方が認識できるフレーム形式であればよい。例えば、IEEE802.11adフレーム形式のビーコンフレームやアソシエーションレスポンスフレームのDMG Capabilities Elementフィールドに記載してもよい。既知のいずれかの固定局のMACアドレスが記載されているアンテナ指向性数情報を含むフレームを受信したらS1302に進む。
S1401で固定局103は、有線通信手段106で他の固定局113〜133に対してアンテナ指向性数情報を通知し、完了したらS1402に進む。
S1402で固定局103は、他の固定局113〜133が有線通信手段106で通知したアンテナ指向性数情報を取得する。
S1403で固定局103は、移動局100のアンテナ指向性数情報要求の有無を取得する。固定局103は、移動局が送信するビーコンフレームを受信したら、自局と他の固定局113〜133のアンテナ指向性数と自局のMACアドレスを記載したアソシエーションリクエストフレームを生成し、S1404に進む。固定局103は、ビーコンフレームが受信できるまでS1403で受信動作を続ける。
S1404で固定局103は、ビーコンフレームに記載されているチャネルアクセス方式でアソシエーションリクエストフレームを送信する。固定局103は、アソシエーションリクエストフレームに対する肯定応答を示すアソシエーションレスポンスフレームを受信したらS1405に進む。
S1302で移動局100は、固定局103が通知したアンテナ指向性情報に基づき、固定局識別情報とアンテナ指向性情報を関連付けて記録しS1303に進む。
S1303およびS1405で移動局100および固定局103は、経路探索を実行する。ここでの経路探索の手順はS803およびS905と同様である。経路探索を完了した移動局はS1304に進み、経路探索を完了した固定局はS1406に進む。
S1304で移動局100は、全ての固定局103〜133のアンテナ指向性数情報を取得したかを判定する。移動局100は、アンテナ指向性数情報を、アソシエーションを完了している固定局から無線通信により取得できるが、無線通信できない固定局からは直接取得することはできない。移動局100は、全ての固定局103〜133を対象にして順番にアソシエーションおよび経路探索を実行する。移動局100は、アソシエーションが実行できずアンテナ指向性数情報を取得できなかった固定局に対しては、他の固定局からアンテナ指向性数情報を取得し、完了すればS1305に進む。
S1305で移動局100は、個別に経路探索を完了した結果を経路情報管理テーブルに記載する。また、移動局100は、経路状況に変化があれば経路情報管理テーブルを更新する。移動局100は、経路状況の変化を、後述のS1308でのデータ通信の結果や、後述のS1316での経路探索結果に基づき観測する。移動局100は、経路状況に変化があれば経路情報管理テーブルを更新し、S1306に進む。
S1406で固定局103は、経路状況に変化があれば経路情報管理テーブルを更新する。固定局103は、経路状況の変化を、後述のS1409でのデータ通信の結果や、後述のS1420での経路探索結果に基づき観測する。また、固定局103は、他の固定局113〜133との有線通信手段106により転送された経路情報で更新してもよい。固定局103は、経路状況に変化があれば経路情報管理テーブルを更新し、S1407に進む。
S1306で移動局100は、現在時刻がデータ通信期間か経路探索期間かを判定する。データ通信期間であればS1307に進み、経路探索期間であればS1314に進む。
S1407で固定局103は、現在時刻が経路探索期間であるか否かを判定する。固定局103は、経路探索期間であるかを、移動局100が送信したビーコンフレームや撮像データ画像フレームに記載されている情報から判定する。また固定局103は、移動局100から無線通信で経路探索期間に関する情報を取得した場合、有線通信手段106で他の固定局113〜133に対して経路探索期間を通知する。経路探索期間でなければS1408に進み、経路探索期間であればS1414に進む。
S1408で固定局103は現在時刻が、自局が送信局または受信局として割り当てられているデータ通信期間かを判定する。固定局103は、自局が割り当てられているデータ通信期間であればS1409に進み、自局が割り当てられているデータ通信期間でなければS1413に進む。
S1307で移動局100は、ビーコンフレームで通知した固定局に対してAWV指向性アンテナを用いて固定局103と撮像画像データやMR画像データおよび経路情報管理テーブルのデータ通信を行う。移動局100は、自局が送信局であるタイムスロットでは、データ送信が完了しデータ通信に対する通信品質結果を示す情報を応答信号として受信する。データ送信が完了した移動局100は、応答信号を受信するために受信指向性アンテナをデータ送信と略一致するAWV指向性アンテナに設定し受信動作を開始する。移動局100は、自局が送信局であるタイムスロットにおいて送信動作を完了した場合か、自局が受信局であるタイムスロットの期間が終了した場合、S1308に進む。
S1409で固定局103は、ビーコンフレームで通知された時刻およびAWV指向性で移動局と撮像画像データやMR画像データおよび経路情報管理テーブルのデータ通信を行う。固定局103は、自局が受信局であるタイムスロットでは、データ受信が完了しデータ通信に対する通信品質結果を示す応答信号を送信する。固定局103は、自局が送信局であるタイムスロットにおいて送信動作を完了した場合か、自局が受信局であるタイムスロットの期間が終了した場合、S1410に進む。
S1308で移動局は直前のデータ通信結果に基づき、経路の遮断が発生したかを判定する。例えば、自局が送信局のタイムスロットではデータ送信後に肯定応答を受信しなかった場合か、自局が受信局のタイムスロットでデータが受信できなかった場合に、経路の遮断が発生したと判断される。経路の遮断が発生したと判断した移動局100は、S1309に進む。経路の遮断が発生していないと判断した移動局はS1305に進み、直前のデータ通信結果を経路情報管理テーブルに記載する。
S1410で固定局103は、直前の自局が受信局として割り当てられているタイムスロットのデータ信号に対するSNRを導出する。受信パケットのエラー率を示すPERが一定の閾値未満であった場合には、S1411に進む。PERが一定の値以上であり、例えば受信した撮像画像から特徴点を検出できないほどPERが高い場合は、S1406に戻り、固定局103は、S1409で受信した経路に該当する経路情報管理テーブル内の行を削除する。これにより、固定局103は、当該経路を遮断する。
S1411で固定局103は、S1409で受信したパケットに対する肯定応答を示すACKフレームを生成しS1412に進む。
S1412で固定局103は、S1411で生成したACKフレームを、S1409で受信したAWV指向性アンテナと略一致するAWV指向性アンテナで送信する。固定局103は、送信が完了したらS1406に戻る。
S1413で固定局103は、経路探索期間の割り当ての情報を移動局100が通知したかを判定する。固定局103は、経路探索期間の割り当ての情報は、移動局100が送信するビーコンフレームや、他の固定局113〜133が有線通信手段106で転送する経路探索期間割当に関する情報により取得する。固定局103は、いずれかの方法で経路探索期間が新たに割り当てられたと判定した場合はS1414に進む。固定局103は、経路探索期間が新たに割り当てられてないと判定した場合はS1413に戻る。
S1309で移動局100は直前のデータ通信で遮断された経路に該当する行を経路情報管理テーブルから削除しS1310に進む。
S1310で移動局100は、経路探索期間において経路探索要求信号を同一のセクター指向性アンテナで送信する回数を決定する。回数の決定方法はS805と同様である。回数を決定した移動局100はS1311に進む。
S1311で移動局100は、経路探索期間に全ての経路探索要求信号を送信するのに要する期間を算出する。算出方法はS806と同様である。全送信期間を決定した移動局100はS1312に進む。
S1312で移動局100は、経路探索応答信号を送信するセクター指向性アンテナとセクター指向性アンテナの切替順を決定する。切替順の決定方法はS807と同様である。切替順を決定した移動局100はS1313に進む。
S1313で移動局100は、固定局に経路探索開始時刻と、期間長と、セクター指向性あたりの経路探索要求信号送信回数と、全経路探索要求信号送信期間を通知する。通知方法はS807と同様である。固定局に通知を完了した移動局100は、S1305に戻りS1308で発生した経路遮断を経路情報管理テーブルに記載する。
S1414で固定局103は移動局100と経路を発見できているかを判定し、経路が発見できていなければS1415に進み、経路が発見できていればS1416に進む。
S1415で固定局103は、経路探索期間におけるセクター指向性アンテナの切替順を決定し、決定方法はS911と同様である。切替順を決定したらS1417に進む。S1416でもS1415と同様に、固定局103は経路探索期間におけるセクター指向性アンテナの切替順を決定し、切替順はS912と同様である。切替順を決定したらS1417に進む。
S1314で移動局100は、経路探索要求信号を送信し送信が完了したら、経路探索要求信号を送信したセクター指向性アンテナと同一のセクター指向性アンテナで経路探索応答信号の受信動作を起動しS1315に進む。
S1315で移動局100は、経路探索要求信号の送信完了後から、経路探索応答信号を送信するのに要する時間受信動作を続ける。移動局100は、経路探索応答信号を受信しなかった場合にはS1317に進む。移動局100は、経路探索応答信号を受信した場合はS1316に進む。
S1316で移動局100は、経路探索応答信号を送信した固定局と、経路探索起動信号および経路探索信号を用いたアンテナトレーニングを実行する。アンテナトレーニングは、S1315で経路探索応答信号に記載されているアンテナ識別情報に該当するセクター指向性アンテナを用いて行う。アンテナトレーニングを完了した移動局100は、S1305に戻り、S1316で実行したアンテナトレーニングの結果を経路情報管理テーブルに記載する。また、アンテナトレーニングの結果、システムが要求する経路数を超える経路が発見できた場合、移動局100は、ビーコンフレームに記載している経路探索期間に関する情報を削除する。経路探索期間に関する情報を削除したビーコンフレームを固定局103〜133に送信することで、固定局103〜133は経路探索期間の存在しない新たなタイムスロット割当情報を取得することができる。
S1317で移動局100は、S1312で決定した同一のセクター指向性アンテナでの経路探索要求信号送信回数分、送信を完了したかを判定する。送信を完了していなければS1314に戻り、移動局100は、再度同じセクター指向性アンテナで経路探索要求信号を送信する。送信を完了していれば、S1318に進む。
S1318で移動局100は、経路探索要求信号を送信したセクター指向性アンテナがS1312で決定した切替順における最後のセクター指向性アンテナであるかを判定する。最後のセクター指向性アンテナでない場合には、まだ経路探索を実行していない方向があるので、S1319に進む。最後のセクター指向性アンテナである場合は、既に経路が発見できている方向を除く全てのセクター指向性アンテナ同士の組み合わせで探索が完了したことを示す。すなわち、この場合は、新しい経路が存在しないので、S1305に戻る。
S1319で移動局100は、S1312で決定した切替順における次のセクター指向性アンテナに切り替え、S1314に戻り再び経路探索要求信号を送信する。
S1417で固定局103は、S1415またはS1516で決定した切替順に則り、予め移動局100が通知した経路探索期間で経路探索要求信号の受信動作を開始する。S1417の動作はS913と同様である。動作を開始した固定局103はS1418に進む。
S1418で固定局103は、既に発見できている経路とは異なる経路で経路探索要求信号を閾値以上の通信品質で受信したかを判定する。S1418の動作はS914と同様である。固定局103は、S1418では閾値以上の通信品質で受信したかを判定し、受信した場合はS1419に進み、受信しなかった場合はS1421に進む。
S1419で固定局103は、S1418で経路探索要求信号を受信したセクター指向性アンテナと略一致するセクター指向性アンテナで経路探索応答信号を送信する。S1419の動作はS915と同様である。固定局103は、経路探索起動信号の受信動作を開始し、S1420に進む。
S1420で固定局103は移動局100と経路探索起動信号および経路探索信号を用いたアンテナトレーニングを実行する。S1420の動作はS916と同様である。S1421で固定局103は、既に他の固定局113〜133が移動局100と経路探索を開始しているかを判定する。S1421の動作はS917と同様である。固定局103は、他の固定局113〜133が移動局100と帯域を占有して経路探索を実行していると判定した場合はS1406に戻り受信動作を中止する。
S1422で固定局103は、経路探索期間の開始時刻から今までの経過時間が、全経路探索要求信号送信期間を超過したかを判定する。S1422の動作はS918と同様である。固定局103は超過したと判定した場合はS1406に戻る。超過していないと判定した場合はS1424に進む。
S1424で固定局103は、S1415またはS1416で決定したセクター指向性アンテナの切替順の初期状態にセクター指向性アンテナを設定しS1406に戻る。S1423の動作はS919と同様である。
このように、上記に説明した実施形態によれば、同時に複数の固定局を対象に通信経路の探索が行えるように、移動局が複数の固定局を対象に通信経路探索を実行する。これにより、通信経路の探索期間が固定局の数に依存しないため、通信の信頼性を向上するために多数固定局を配置した場合でも経路探索に要する通信帯域を抑制することができる。また、全ての固定局が受信できるような広い指向性で経路探索の起動を通知する無線信号を送受信せず、指向性利得を高めた指向性で送受信するので雑音耐性が高まり、新たな経路を発見する確率がより高まり、通信接続が遮断する可能性を低減することができる。なお、上記実施形態では、移動局100が無線通信帯域を管理したが、固定局103〜133または外部の制御装置が無線通信帯域を管理してもよい。
[その他の実施形態]
なお、上記実施形態では、無線通信システムの一例としてHMDやPCから構成されるMRシステムについて説明したが、その他の無線通信システムに適用することも可能である。
また、本発明の目的は、以下のようにすることによって達成することもできる。即ち、前述した実施形態の少なくとも一部の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給する。そして、そのシステム或いは情報処理装置の1以上のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する。この場合、読みだされたプログラム自体が前述した実施形態の機能を実現することとなる。