JP6881422B2 - 金属帯の冷間圧延方法及び冷間圧延設備並びに金属帯の製造方法 - Google Patents
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Description
ここで、近年、需要が増加している添加元素を多量に含む高張力鋼板や電磁鋼板、ステンレス鋼板等は、難圧延材と呼ばれ、室温にて低延性を示すことが知られている。このような難圧延材は、冷間圧延を行うまでの段階で鋼板の幅方向両端部に耳割れと呼ばれる、結晶粒レベルでの細かい凹凸が存在しており、このような鋼板に対して形状制御アクチュエータを使用すると、鋼板の幅方向両端部の耳割れ部に応力集中が生じ、冷間圧延中に鋼板の絞りや破断が生じ、圧延能率や圧延機自体の稼働率の低下を招く場合がある。
特許文献1に示す珪素鋼板の冷間圧延における耳割れ防止方法は、冷間タンデム圧延機によりSi含有量(重量%)が1.5%以上の珪素鋼板を圧延する方法であって、圧延前のサイドトリミングの工程で、トリミング直後に板エッジより板幅方向に研削代0.5mm以上のエッジグラインダー処理を施す。そして、その後のタンデム圧延にあたっては、第1スタンドのワークロールの一端を先太りとし、上下のワークロールの軸方向が互いに逆向きとなる配置とし、かつワークロール軸方向へ移動可能なものとする。また、第2スタンド以降のスタンドのワークロールの一端を先細りとし、上下のワークロールの軸方向が互いに逆向きとなる配置とし、かつワークロール軸方向へ移動可能としている。
特許文献1に示す耳割れ防止方法によれば、圧延前のサイドトリミングの工程で、トリミング直後に板エッジより板幅方向に研削代0.5mm以上のエッジグラインダー処理を施すことにより、剪断時の加工硬化層とトリミング時に発生する破断面の微小な割れを削除し、耳割れの大きな要因が消去可能となる。
特許文献2に示す冷間圧延方法によれば、冷間圧延前に順次搬送される鋼板の幅方向の両エッジ部を加熱装置によって加熱することにより、当該両エッジ部の温度を延性―脆性遷移温度以上の温度に昇温させ、耳割れ起因の破断を防止する。
特許文献3に示す冷延鋼板の製造方法によれば、ワークロールの圧延時に鋼板の幅方向端部と接触する接触領域の少なくとも一部を加熱し、膨張部を形成することで、耳割れの発生を効果的に抑制することができる。
即ち、特許文献1に示す珪素鋼板の冷間圧延における耳割れ防止方法の場合、圧延前のサイドトリミングの工程で、鋼板の全長に亘って板エッジより板幅方向に研削代0.5mm以上のエッジグラインダー処理(研削)を施している。鋼板の全長に亘り一律に0.5mm以上研削しているため、研削する箇所によっては研削代が大きすぎてしまうことがあり、鋼板の全長に亘って良好な鋼板形状を得ることが困難であった。
更に、特許文献3に示す冷延鋼板の製造方法の場合、ワークロールを膨張させたことによって生じるサーマルクラウンを直接計測することが困難であるだけでなく、サーマルクラウンが経時的に変化していくため、鋼板の全長に亘って良好な形状制御を行うことが困難であった。
更に、本発明の別の態様に係る金属帯の製造方法は、前述の金属帯の冷間圧延方法を用いて金属帯を製造することを要旨とする。
ここで、金属帯Sは、本発明が冷間圧延時の板破断を抑止する技術であることから、高張力鋼板や高炭素鋼板、電磁鋼板、ステンレス鋼板等、加工硬化による延性低下が大きく、圧延時に板破断を起こしやすい難圧延材であることが好ましい。具体的には、圧延後の鋼板から圧延方向を引張方向とする試験片を採取して引張試験を行ったときの引張強さが0.2%耐力以下を示す鋼板である。なお、より確実に破断を防止する観点から、圧延後の引張強さが0.2%耐力超えの鋼板に対しても本発明の効果が損なわれることはない。
端面測定装置3は、ペイオフリール2から払い出された冷間圧延前の金属帯Sの幅方向両端面における割れ深さを測定する。端面測定装置3としては、例えば、画像センサーや高速度カメラ、レーザー変位計などを用いることができる。本実施形態では、端面測定装置3をタンデム圧延機5の入側に設置しているが、設置位置はこれらに限られるものではなく、例えば、冷間圧延前の酸洗ラインや検査ライン(図示せず)に設置してもよい。
この端面研削装置4は、端面測定装置3で測定された割れ深さに応じて金属帯Sの幅方向両端面における研削量を決定し、決定された研削量で金属帯Sの幅方向両端面を研削する。ここで、端面研削装置4は、図示しないトラッキングロールから端面測定装置3で割れ深さが測定された金属帯Sの長手方向位置の情報を受け取り、当該割れ深さの長手方向位置と端面研削装置4で機械的研削する金属帯Sの長手方向位置とを一致させるように制御する。ここで、金属帯Sの幅方向両端面における研削量とは、研削される金属帯Sの幅方向各端面からの量(研削代)を意味する。
冷間圧延設備1の端面測定装置3は端面測定工程であるステップS1を実行し、端面研削装置4は端面研削工程であるステップS2を実行し、ロールシフト装置8及びタンデム圧延機5は冷間圧延工程であるステップS3を実行する。
先ず、端面測定装置3は、ステップS1で、金属帯Sの幅方向両端面における割れ深さを測定する(端面測定工程)。
次いで、端面研削装置4は、ステップS2で、端面測定工程で測定された割れ深さに応じて金属帯Sの幅方向両端面における研削量を決定し、決定された研削量で金属帯の幅方向両端面を研削する(端面研削工程)。
先ず、端面研削装置4の制御部は、ステップS21で、端面測定工程によって測定された金属帯Sの幅方向両端面における割れ深さの実測値を取得する。また、端面研削装置4の制御部は、ステップS21で、図示しないトラッキングロールから端面測定工程で割れ深さが測定された金属帯Sの長手方向位置の情報を受け取る。
次いで、端面研削装置4の制御部は、ステップS22で、研削前における端面測定工程で測定された割れ深さをNとし、研削前における金属帯Sの幅方向両端部での破断伸び(機械特性)をELeとし、研削前の金属帯Sの幅方向中心部での破断伸び(機械特性)をELcとし、閾値をTとした場合、下記(1)式を満足するか否かを判定する。
N×ELc/ELe>T ・・・(1)
但し、閾値Tは0.5とする。
次いで、端面研削装置4の制御部は、ステップS24において、ステップS23で決定した研削量を確保するための研削条件を決定する。
例えば、研削条件としては、研削体の回転数、圧下量、接触荷重、負荷動力などが挙げられる。ここで、研削体の回転数を調整することにより、研削体と金属帯Sとの摩擦力が変化するため、研削量を調整することができる。また、研削体の圧下量、接触荷重あるいは負荷動力の調整により、研削体と金属帯Sとの接触面積が変化することにより、研削量を調整することができる。
次いで、端面研削装置4の制御部は、ステップS25にて、ステップS24で決定した研削条件で各研削体が研削を行うよう各研削体に指令を出し、各研削体はこの研削条件で研削を行い、処理を終了する。これにより、ステップS23で決定した研削量で金属帯Sの幅方向両端面を研削することができる。
なお、端面研削装置4は、ステップS22における判定結果がNoのとき、即ち(1)式を満足しない場合には、研削量の決定、研削条件の決定及び研削体による研削を行わずに処理を終了する。
この冷間圧延工程における調整した軸方向移動量は、当該軸方向移動量をS、金属帯Sの幅方向両端面の研削が行われない場合に予め設定した軸方向移動量をS0、前述の研削量をH、金属帯Sの材料(材質や板厚、板幅の寸法)毎に設定される係数をkとした場合、下記(2)式を満足するように算出される。
S=S0+k×H ・・・(2)
そして、ロールシフト装置8は、算出した軸方向移動量Sだけ第1圧延機5aのワークロール6を軸方向に移動させる。
そして、タンデム圧延機5は、ワークロール6を軸方向に移動させた状態で金属帯Sの冷間圧延を行う(冷間圧延工程)。
そして、このような冷間圧延工程を経て金属帯Sが製造される。
そして、本実施形態に係る金属帯Sの冷間圧延方法においては、端面研削工程において、研削前における端面測定工程で測定された割れ深さをNとし、研削前における金属帯Sの幅方向両端部での破断伸び(機械特性)をELeとし、研削前の金属帯Sの幅方向中心部での破断伸び(機械特性)をELcとし、閾値をTとした場合、下記(1)式を満足するか否かを判定し(ステップS22)、判定結果が(1)式を満足する場合に研削量を決定する(ステップS23)。
N×ELc/ELe>T ・・・(1)
但し、閾値Tは0.5とする。
これにより、金属帯Sの幅方向両端面において、耳割れの懸念のある領域のみを研削することができ、金属帯Sの歩留まりの低下を抑えつつ、圧延時の板破断を大幅に低減することができ、そして、耳割れの懸念のない領域の研削は行わないので、生産性の向上を図ることができる。
例えば、端面研削装置4は、一対の研削体を備えているが、研削体を少なくとも一対備えていればよく、要求される金属帯Sの品質や性能を得ることができれば、一対でもよいし、設備の設置スペースを確保できれば複数対備えていても良い。
また、(1)式の判定における研削前における金属帯Sの幅方向両端部での破断伸び(機械特性)をELeとし、研削前の金属帯Sの幅方向中心部での破断伸び(機械特性)をELcとしてあるが、機械特性としては、破断伸びのみならず、降伏応力、0.2%耐力、引張強さ、及びストレッチベンド試験における最大荷重のうちのいずれか一つであってもよい。
また、(1)式の判定における閾値Tは0.5としてあるが、この閾値Tは0.4〜0.6であればよい。
また、ステップS22による判定工程は必ずしも設ける必要はなく、ステップS21で割れ深さを取得したら、ステップS23で全ての割れ深さのある領域の研削量を決定し、ステップS24で研削条件を決定し、ステップS25で研削を行うようにしてもよい。
また、本実施形態にあっては、第1圧延機5aのワークロール6を軸方向に移動可能としてあるが、第1圧延機5a〜第5圧延機5eのワークロール6のうち、軸方向に移動させるワークロール6は任意とするこができ、その数も任意とすることができる。この場合、ロールシフト装置8は、軸方向に移動する全てのワークロール6を軸方向に移動させる。
タンデム圧延機5の第1圧延機5aには、片側端部にテーパーを付与したワークロール6を配設し、軸方向(板幅方向)にロールシフト装置8によりシフトさせる機構とした。
予め素材鋼板の幅方向中心部での破断伸びELcと素材鋼板の幅方向両端部での破断伸びELeとの比を測定したところ、ELc/ELe=1.05であった。なお、上記圧延後の鋼板から圧延方向を引張方向とする引張試験片を採取し、引張試験を行ったところ、0.2%耐力に達する前に破断した。
また、比較例2では、冷間圧延前の鋼板の幅方向両端面における研削量に応じたワークロール6に軸方向移動量を調整しない以外は実施例と同様にして冷間圧延を行った。
以上のような冷間圧延を実施例、比較例1及び比較例2のそれぞれにつき200コイルずつ行い、冷間圧延後の形状及び冷間圧延時の破断回数を調査した。調査結果を表1に示す。冷間圧延後の形状は鋼板長手方向における幅方向端部のI−Unitの最大値として示した。I−Unitは、伸び率差Δε=Δl/l(一定区間lにおける板の幅方向での伸びの差Δl)に105を乗じたものである。
これにより、本発明に係る冷間圧延方法を用いることで、低延性を示す鋼帯であっても、冷間圧延時の耳割れや板破断を大幅に低減できるだけでなく、全長に亘って良好な形状の冷延鋼板を得ることができ、ひいては、生産性の向上や品質の向上に大いに寄与することができる。
2 ペイオフリール
3 端面測定装置
4 端面研削装置
5 タンデム圧延機
5a 第1圧延機(圧延機)
5b 第2圧延機(圧延機)
5c 第3圧延機(圧延機)
5d 第4圧延機(圧延機)
5e 第5圧延機(圧延機)
6 ワークロール
7 バックアップロール
8 ロールシフト装置
S 金属帯
Claims (7)
- ワークロール及び中間ロールのうちのいずれか一方が軸方向に移動可能な1台以上の圧延機を用いて金属帯を冷間圧延する金属帯の冷間圧延方法であって、
前記金属帯の幅方向両端面における割れ深さを測定する端面測定工程と、該端面測定工程で測定された前記割れ深さに応じて前記金属帯の幅方向両端面における研削量を決定し、決定された研削量で前記金属帯の幅方向両端面を研削する端面研削工程と、該端面研削工程における前記研削量に応じて前記ワークロール及び中間ロールのうちのいずれか一方の軸方向移動量を調整し、調整した軸方向移動量で前記ワークロール及び中間ロールのうちのいずれか一方を軸方向に移動させて前記金属帯を冷間圧延する冷間圧延工程とを含むことを特徴とする金属帯の冷間圧延方法。 - 前記端面研削工程は、研削前における前記端面測定工程で測定された前記割れ深さをNとし、研削前における前記金属帯の幅方向両端部での機械特性をELeとし、研削前の前記金属帯の幅方向中心部での機械特性をELcとし、閾値をTとした場合、下記(1)式を満足するか否かの判定工程を含み、該判定工程の結果が(1)式を満足する場合に前記研削量を決定することを特徴とする請求項1に記載の金属帯の冷間圧延方法。
N×ELc/ELe>T ・・・(1)
但し、Tは0.4〜0.6とする。 - 前記機械特性は、破断伸び、降伏応力、0.2%耐力、引張強さ、及びストレッチベンド試験における最大荷重のうちのいずれか一つを適用することを特徴とする請求項2に記載の金属帯の冷間圧延方法。
- 前記冷間圧延工程における前記調整した軸方向移動量は、当該軸方向移動量をS、前記金属帯の幅方向両端面の研削が行われない場合に予め設定した軸方向移動量をS0、前記研削量をH、金属帯の材料毎に設定される係数をkとした場合、下記(2)式を満足するように算出されることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載の金属帯の冷間圧延方法。
S=S0+k×H ・・・(2) - ワークロール及び中間ロールのうちのいずれか一方が軸方向に移動可能な1台以上の圧延機によって金属帯を冷間圧延する金属帯の冷間圧延設備であって、
前記金属帯の幅方向両端面における割れ深さを測定する端面測定装置と、該端面測定装置で測定された前記割れ深さに応じて前記金属帯の幅方向両端面における研削量を決定し、決定された研削量で前記金属帯の幅方向両端面を研削する端面研削装置と、該端面研削装置における前記研削量に応じて前記ワークロール及び中間ロールのうちのいずれか一方の軸方向移動量を調整し、調整した軸方向移動量で前記ワークロール及び中間ロールのうちのいずれか一方を軸方向に移動させるロールシフト装置とを備えていることを特徴とする金属帯の冷間圧延設備。 - 前記端面研削装置は、前記金属帯の幅方向両端面を研削する少なくとも一対の研削体を備えていることを特徴とする請求項5に記載の金属帯の冷間圧延設備。
- 請求項1乃至4のうちいずれか一項に記載の金属帯の冷間圧延方法を用いて金属帯を製造することを特徴とする金属帯の製造方法。
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