[第1実施形態]
以下、本発明の好適な第1実施形態について説明する。
(プリンタの全体構成)
図1に示すように、第1実施形態に係るプリンタ1は、キャリッジ2、インクジェットヘッド3、上流側搬送ローラ4、下流側搬送ローラ5、プラテン6などを備えている。キャリッジ2は、走査方向に延びた2本のガイドレール11、12に走査方向に移動可能に支持されている。また、キャリッジ2は、図示しないベルトなどを介して、キャリッジモータ56(図2参照)に接続されている。キャリッジモータ56を駆動させると、キャリッジ2がガイドレール11、12に沿って走査方向に移動する。なお、第1実施形態では、キャリッジ2と、キャリッジ2を移動させるためのキャリッジモータ56等とを合わせたものが、本発明の「ヘッド移動装置」に相当する。また、以下では、図1に示すように走査方向の右側及び左側を定義して説明を行う。
インクジェットヘッド3は、キャリッジ2に搭載されており、その下面に形成された複数のノズル10からインクを吐出する。複数のノズル10は、搬送方向に配列されることによってノズル列9を形成しており、インクジェットヘッド3には、ノズル列9が走査方向に4列に配列されている。そして、複数のノズル10からは、右側のノズル列9を形成するものから順に、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクが吐出される。
上流側搬送ローラ4(本発明の「第1搬送ローラ」)は、走査方向と直交する搬送方向におけるキャリッジ2よりも上流側に位置している。下流側搬送ローラ5(本発明の「第2搬送ローラ」)は、搬送方向におけるキャリッジ2よりも下流側に位置している。搬送ローラ4、5は、図示しないギヤなどを介して搬送モータ57(図2参照)に接続されている。搬送モータ57を駆動させると、搬送ローラ4、5が回転し、記録用紙Pを搬送方向に搬送する。
また、上流側搬送ローラ4は、走査方向における両端部が、それぞれ、プリンタ1の本体1aに設けられたローラ支持部13a、13bによって支持されている。また、上流側搬送ローラ4の、左端部近傍の部分は、プリンタ1の本体1aに設けられた挿通部14に挿通されている。また、上流側搬送ローラ4の挿通部14の右側に位置する部分には、上流側搬送ローラ4よりも若干径の大きい止め輪15が固定されている。また、上流側搬送ローラ4の挿通部14と止め輪15との間に位置する部分には、コイルばね16が設けられている。これにより、上流側搬送ローラ4は、コイルばね16によって右側に付勢され、その右端部が、右側のローラ支持部13bに押し付けられる。
また、下流側搬送ローラ5は、走査方向における両端部が、それぞれ、プリンタ1の本体1aに設けられたローラ支持部17a、17bに支持されている。また、下流側搬送ローラ5の右端部近傍の部分は、プリンタ1の本体1aに設けられた挿通部18に挿通されている。また、下流側搬送ローラ4の挿通部18の右側に位置する部分には、下流側搬送ローラ5よりも若干径の大きい止め輪19が固定されている。また、下流側搬送ローラ5の挿通部18と止め輪19との間に位置する部分にはコイルばね20(本発明の「付勢手段」)が設けられている。これにより、下流側搬送ローラ5は、コイルばね20によって右側(本発明の「走査方向の一方側」)に付勢され、その右端部が右側のローラ支持部17bに押し付けられる。
プラテン6は、搬送方向における上流側搬送ローラ4と下流側搬送ローラ5との間に位置している。また、プラテン6はインクジェットヘッド3よりも下方に位置し、インクジェットヘッド3と対向している。プラテン6は、搬送ローラ4、5によって搬送される記録用紙Pのインクジェットヘッド3と対向する部分を下方から支持する。
(制御装置)
次に、プリンタ1の電気的構成について説明する。プリンタ1の動作は、制御装置50によって制御されている。制御装置50は、CPU(Central Processing Unit)51、ROM(Read Only Memory)52、RAM(Random Access Memory)53、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)54、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)55等を備え、これらが、キャリッジモータ56、インクジェットヘッド3、搬送モータ57等の動作を制御する。
ここで、図2では、CPU51を1つだけ図示しているが、制御装置50は、CPU51を1つだけ備え、この1つのCPU51が一括して処理を行ってもよいし、CPU51を複数備え、これら複数のCPU51が分担して処理を行ってもよい。また、図2では、ASIC55を1つだけ図示しているが、制御装置50は、ASIC55を1つだけ備え、この1つのASIC55が一括して処理を行ってもよいし、ASIC55を複数備え、これら複数のASIC55が分担して処理を行ってもよい。
(印刷時の動作)
次に、プリンタ1で記録用紙Pに印刷を行うときの動作について説明する。プリンタ1では、制御装置50が、キャリッジモータ56を制御してキャリッジ2を走査方向に移動させつつ、インクジェットヘッド3を制御して複数のノズル10からインクを吐出させるスキャン印刷と、搬送モータ57を制御して搬送ローラ4、5に記録用紙Pを搬送方向に搬送させる搬送動作とを、交互に繰り返し行うことで、記録用紙Pに印刷を行う。
このようにして記録用紙Pに印刷を行う場合、印刷の途中で、記録用紙Pは、図1に示すように、上流側搬送ローラ4と下流側搬送ローラ5の両方によって搬送される状態(本発明の「第1状態」)から、図3に示すように、上流側搬送ローラ4を抜け、下流側搬送ローラ5によってのみ搬送される状態(本発明の「第2状態」)に移行する。ここで、上部品サイズの誤差や組み付け誤差による、下流側搬送ローラ5のローラ支持部17a、17bに対する走査方向のがたつきの影響により、記第1状態から上記第2状態に移行した後には、記録用紙Pが搬送中に走査方向に横ずれずる。そのため、第1状態にあるか第2状態にあるかによらず、スキャン印刷においてノズル10から同じ吐出タイミングでインクを吐出させると、第2状態でのインクの着弾位置が、第1状態でのインクの着弾位置に対して走査方向にずれ、画質の低下につながる。
また、プリンタ1で複数の記録用紙Pに印刷を行ったときには、下流側搬送ローラ5の走査方向のがたつきの影響により、記録用紙P間で、横ずれの程度にばらつきが生じる。そこで、第1実施形態では、コイルばね20により下流側搬送ローラ5を右側に付勢している。これにより、下流側搬送ローラ5を付勢しない場合よりも、下流側搬送ローラ5のがたつきを抑えて、記録用紙P間での横ずれの程度のばらつきを抑えることができる。
ここで、第2状態では、第1状態と比較すると、記録用紙Pが上流側搬送ローラ4に保持されていない分、記録用紙Pの挙動が、下流側搬送ローラ5の挙動の影響を受けやすい。そのため、例えば、第2状態で記録用紙Pが搬送されている状態で、下流側搬送ローラ5が僅かに左側にずれたときや、その後、下流側搬送ローラ5がコイルばね20の付勢力により右側に戻るときに、記録用紙Pに横ずれが生じることが考えられる。また、第2状態で記録用紙Pが搬送されている状態で、下流側搬送ローラ5に外力が加わったときに、下流側搬送ローラ5が僅かに走査方向に移動し、これによって記録用紙Pに横ずれが生じることも考えられる。
(第2状態での吐出タイミングの決定方法)
第1実施形態では、上述したような記録用紙Pの走査方向への横ずれに対して、以下のようにして、第2状態でのスキャン印刷における吐出タイミングを決定する。すなわち、図4に示すように、まず、制御装置50が、テストパターン60を印刷させる(S101、本発明の「テストパターン印刷ステップ」)。テストパターン60は、図5(a)に示すように、複数の第1部分61と、複数の第2部分62とを有する。複数の第1部分61は、それぞれが搬送方向と平行に延びた直線状の部分であり、搬送方向に並んで互いにつながっている。
複数の第2部分62は、それぞれが搬送方向に延びた直線状の部分である。また、複数の第2部分62は、搬送方向の位置が複数の第1部分61と同じである。また、複数の第2部分62は、搬送方向の上流側に位置するものほど、走査方向の右側に位置している。より詳細に説明すると、複数の第2部分62のうち、搬送方向において、中央に位置する第2部分62(本発明の「基準の第2部分」)よりも上流側の第2部分62は、中央に位置する第2部分62よりも走査方向の右側(本発明の「走査方向の一方側」)に位置する。また、複数の第2部分62のうち、搬送方向において、中央に位置する第2部分62よりも下流側の第2部分62は、中央に位置する第2部分62よりも走査方向の左側(本発明の「走査方向の他方側」)に位置する。さらに、搬送方向において、中央に位置する第2部分62から遠い第2部分62ほど、走査方向において中央に位置する第2部分との距離が大きくなっている。なお、図5(a)では、第2部分62の数が奇数個であり、搬送方向の中央に位置する第2部分62は1つに決まるが、第2部分62の数が偶数個である場合には、搬送方向の中央に位置する第2部分62とは、搬送方向の中央に位置する2つの第2部分62のうちのいずれかのことである。
ここで、テストパターン60の印刷方法について説明する。テストパターン60を印刷させるために、制御装置50は、上述の第1状態で、キャリッジ2を右側に移動させるスキャン印刷と、搬送ローラ4、5による記録用紙Pの搬送とを交互に繰り返し行わせることで、複数の第1部分61を印刷させる。このとき、各スキャン印刷において、複数のノズル10のうち、上流側のU個のノズル10a(本発明の「第1ノズル」)からインクを吐出させる。また、搬送ローラ4、5による記録用紙Pの搬送時には、記録用紙Pを、ノズル列9におけるノズル10の間隔FのU倍の長さだけ搬送させる。また、スキャン印刷間で、ノズル10からのインクの吐出タイミングを同じにする。これにより、複数の第1部分61の走査方向の位置が同じとなる。
次に、制御装置50は、搬送ローラ4、5により、記録用紙Pを、上流側搬送ローラ4を抜け、且つ、搬送方向において、最も下流側の第1部分61と、複数のノズル10のうち下流側のU個のノズル10b(本発明の「第2ノズル」)とが同じ位置となるような位置まで搬送させる。そして、この状態から、キャリッジ2を右側に移動させるスキャン印刷と、下流側搬送ローラ5による記録用紙Pの搬送とを交互に繰り返し行うことで、複数の第2部分62を印刷させる。このとき、各スキャン印刷において、ノズル10bからインクを吐出させる。また、下流側搬送ローラ5による記録用紙Pの搬送時には、記録用紙Pを、ノズル列9におけるノズル10の間隔FのU倍の長さだけ搬送させる。また、後のスキャン印刷ほど、ノズル10からのインクの吐出タイミングを遅らせる。これにより、搬送方向の上流側に位置する第2部分62ほど、走査方向の右側に位置する。また、搬送方向の中央に位置する第2部分62を印刷するスキャン印刷での吐出タイミングを、第1部分61を印刷するときの吐出タイミングと同じとする。
ここで、第1実施形態では、キャリッジ2を右側に移動させるスキャン印刷によって第1部分61及び第2部分62を印刷したが、キャリッジ2を左側に移動させるスキャン印刷によって第1部分61及び第2部分62を印刷してもよい。
次に、制御装置50は、印刷されたテストパターン60の印刷結果に基づいて横ずれ量D1を取得する(S102、本発明の「横ずれ量取得ステップ」)。ここで、上述したように、複数の第2部分62のうち、搬送方向の中央に位置する第2部分62を印刷するときの吐出タイミングを、第1部分61を印刷するときの吐出タイミングと同じとしている。そのため、上記横ずれが発生していなければ、図5(b)に示すように、上記中央に位置する第2部分62が、対応する第1部分61と重なる。なお、以下では、横ずれが生じないとした場合に印刷される、図5(b)に示すテストパターン60のことを基準テストパターン60Aとして説明を行う。
これに対して、第1実施形態では、第2状態で、記録用紙Pが搬送時に走査方向に横ずれすると、複数の第2部分62は、横ずれがないとした場合よりも走査方向の、横ずれ方向と反対側にずれる。そして、横ずれ量に応じて、いずれかの第2部分62において、対応する第1部分61との走査方向の距離が最も小さくなる。そこで、S102では、印刷されたテストパターン60において、どの第2部分62が、対応する第1部分61と走査方向距離が最も小さいかに基づいて横ずれ量を取得する。
より詳細に説明すると、EEPROM54には、複数の第2部分62に対応して、複数の横ずれ量についての情報が記憶されている。ここで、EEPROM54に記憶されている横ずれ量の情報は、印刷されたテストパターン60における第2部分62同士の走査方向の間隔A2が、上記基準テストパターン60Aにおける第2部分62同士の走査方向の間隔A1と同じであるとして算出される横ずれ量の情報である。すなわち、上記中央に位置する第2部分62からR個、搬送方向上流側にずれた第2部分62に対する横ずれ量の情報は、A1・Rによって算出される横ずれ量であることを示す情報である。
そして、S102では、ユーザが、テストパターン60において、どの第2部分62が対応する第1部分61との走査方向の距離が最も短いかを目視で確認し、その結果に応じて、プリンタ1の図示しない操作部、又は、プリンタ1に接続された図示しないPCなどを操作したときに、制御装置50が、ユーザの操作結果に応じて、第1部分61との走査方向の距離が最も小さい第2部分62の情報を取得する。そして、取得した第2部分62に対応する横ずれ量の情報に基づいて、横ずれ量D1を取得する。あるいは、プリンタ1がスキャナを備えた複合機である場合には、ユーザがスキャナにテストパターン60を読み取らせたときに、制御装置50が、その読み取り結果に基づいて、第1部分61との距離が最も小さい第2部分62の情報を取得する。そして、取得した走査方向の第2部分62に対応する横ずれ量の情報に基づいて、横ずれ量D1を取得する。
続いて、制御装置50は、S102で取得した横ずれ量D1を補正する(S103、本発明の「補正ステップ」)。横ずれ量D1の補正については後程、詳細に説明する。続いて、制御装置50は、S103での補正後の横ずれ量D2に応じて、第2状態での吐出タイミングを決定する(S104、本発明の「吐出タイミング決定ステップ」)。具体的には、第1状態での吐出タイミングから、S103での補正後の横ずれ量D2に対応する時間だけずらしたタイミングを、第2状態での吐出タイミングに決定する。
(横ずれ量の補正)
次に、S103での横ずれ量D1の補正について説明する。S102では、第2部分62同士の走査方向の間隔がA1であるとして、横ずれ量D1を取得している。しかしながら、例えば、記録用紙Pに走査方向の右側への横ずれが生じると、搬送方向の上流側に位置する第2部分62を印刷するときほど、記録用紙Pが走査方向の右側にずれる。そのため、複数の第2部分62を印刷したときには、複数の第2部分62は、一律に左側ずれるわけではなく、搬送方向の上流側に位置する第2部分62ほど、走査方向の左側に大きくずれる。上記のとおり、複数の第2部分62は、搬送方向の上流側に位置するものほど、走査方向の右側に位置しているため、記録用紙Pに走査方向の右側への横ずれが生じた場合には、第2部分62同士の走査方向の間隔A2が、基準テストパターン60Aにおける第2部分同士の間隔A1よりも小さくなる。
一方、記録用紙Pが走査方向の左側に横ずれする場合には、上述したのとは逆に、印刷されるテストパターン60における複数の第2部分62は、搬送方向における上流側に位置するものほど右側にずれる。その結果、印刷されるテストパターン60における第2部分62同士の間隔A2は、基準テストパターン60Aにおける第2部分62同士の間隔A1よりも大きくなる。
また、間隔A2と間隔A1との差は、横ずれ量が大きいほど大きくなる。したがって、横ずれ量が大きく、間隔A2と間隔A1との差が大きくなるほど、S102で取得した横ずれ量D1の、実際の横ずれ量との差が大きくなる。そこで、S103では、S102で取得した横ずれ量D1を補正する。
横ずれ量D1の補正について、より詳細に説明する。ただし、以下では、記録用紙Pが右側に横ずれしているとして説明を行う。補正後の横ずれ量D2は、S102に取得した横ずれ量D1を、基準パターンにおける第2部分同士の間隔A1と、印刷された第2部分62同士の間隔A2との比率Q(=[A1/A2])(本発明の「第1比率」)で除したもの、すなわち、D2=D1・(1/Q)として算出する。
一方、テストパターン60において、搬送方向の中央に位置する第2部分62よりも上流側及び下流側に位置する第2部分62の数が、それぞれN個であるとした場合、基準テストパターン60Aにおいて、搬送方向の中央に位置する第2部分62と最も上流側に位置する第2部分62との間の走査方向の離間距離W1(本発明の「第1離間距離」)と、第2部分62同士の間隔A1との間には、W1=N・A1の関係がある。また、印刷されたテストパターン60において、搬送方向の中央に位置する第2部分62と最も上流側に位置する第2部分62との間の走査方向の離間距離W2と、第2部分62同士の間隔A2との間には、W2=N・A2の関係がある。したがって、比率Qは、離間距離W1と離間距離W2との比率[W1/W2]と等しい。
離間距離W1は、第2部分62間で、印刷時の吐出タイミングをどれだけずらすかによって決まる、予め設定された既知の距離である。なお、離間距離W1などの既知の値は、例えば、EEPROM54に予め記憶されている。また、図6に示すように、離間距離W1と離間距離W2との差をKとすると、離間距離W2は、W2=W1−Kと表すことができる。そこで、第1実施形態では、以下のようにして上記差Kを算出し、算出した差Kと既知の離間距離W1とから、比率Qの値を算出する。なお、図6は、印刷されたテストパターン60の第2部分62と、基準テストパターン60Aの第2部分62とを、搬送方向の中央に位置する第2部分62において重なるように配置したものである。また、図6では、印刷されたテストパターン60の第2部分62を実線で図示し、基準テストパターン60Aの第2部分62を破線で図示している。
ここで、テストパターン60の、搬送方向の中央に位置する第2部分62の中心と、最も上流側に位置する第2部分62の後端との間の、搬送方向の離間距離をY(本発明の「第2離間距離」)とする。また、記録用紙Pの搬送量に対する横ずれ量の比率をM1(本発明の「第2比率」)とする。すると、差Kは、K=Y・M1のように表すことができる。離間距離Yは、テストパターン60の搬送方向の長さの半分に相当し、テストパターン60における第2部分62の数と、各第2部分62の搬送方向の長さCとによって決まる。テストパターン60における第2部分62の数、及び、各第2部分62の搬送方向の長さCは予め決まっており、記録用紙Pが横ずれするか否かによって変わるものではないため、離間距離Yは既知のものである。
また、記録用紙Pが上流側搬送ローラ4を抜けてから(横ずれを開始してから)、第1部分61と重なる第2部分62を印刷するときの位置まで搬送される間の、記録用紙Pの搬送量をXとすると、印刷されたテストパターン60は、記録用紙Pが搬送量Xだけ搬送される間に、横ずれ量D1だけ横ずれすることを示している。このことから、上記比率M1を、M1=D1/Xのように算出する。
ここで、搬送量Xは、記録用紙Pが上流側搬送ローラ4を抜けてから、搬送方向の中央に位置する第2部分62を印刷するときの位置まで搬送される間の、記録用紙Pの搬送量をX1と、この位置からさらに、第1部分61と重なる第2部分62を印刷するときの位置まで搬送される間の、記録用紙Pの搬送量をX2との合計[X1+X2]によって表すことができる。搬送量X1は、横ずれ量とは関係なく決まる一定の値である。搬送量X2は、基準テストパターン60Aにおける、第2部分62の搬送方向の長さCと、第2部分62同士の走査方向の間隔A1との比率[C/A1]と、S102で取得した横ずれ量D1とを用いて、X2=D1・[C/A1]のように算出する。
A1、Cは既知のものであるため、搬送量X2はS102で取得される横ずれ量D1によって決まる。ここで、第1実施形態では、基準テストパターン60Aにおける、第2部分62同士の走査方向の間隔A1と、第2部分62の搬送方向の長さCと比率[A1/C]を用いて搬送量X2を算出しているのに対して、印刷されたテストパターン60では、第2部分62同士の間隔がA2であり、間隔A1とは異なる。そのため、算出される搬送量X2は厳密なものとはならず、搬送量X2によって決まる比率M1も厳密なものとはならない。しかしながら、このようにして搬送量X2を算出し、さらに算出された搬送量X2を用いて比率M1を算出するようにすれば、比率M1を、S102で取得した横ずれ量D1と既知の値とを用いて簡易的に算出することができる。
以上のように、第1実施形態では、S102で取得した横ずれ量D1と、既知の量とを用いて、上記差Kの値を算出することができる。これにより、算出した差Kの値を用いて比率Qを算出し、算出した比率QとS102で取得した横ずれ量D1とを用いて、補正後の横ずれ量D2を算出することができる。
また、記録用紙Pが走査方向の左側に横ずれする場合にも、上述したのと同様にして、比率Qを算出し、算出した比率QとS102で取得した横ずれ量D1とを用いて、補正後の横ずれ量D2を算出することができる。ただし、この場合には、上記Kの値が負の値となる。
ここで、第1実施形態と異なり、印刷されたテストパターン60における離間距離W2を実際に測定し、測定した離間距離W2と、既知の離間距離W1とから、比率Qを算出することも考えられる。しかしながら、この場合には、印刷されたテストパターン60において、離間距離W2を測定する必要があり、横ずれ量を取得するのに必要な作業が煩雑なものとなる。
これに対して、第1実施形態では、S102において、印刷されたテストパターン60における第2部分62同士の間隔A2が、基準テストパターン60Aにおける第2部分同士の間隔A1と同じであるとして、横ずれ量D1を取得し、取得した横ずれ量D1と既知の値とを用いて、補正後の横ずれ量D2を算出している。これにより、印刷されたテストパターン60において、離間距離W2を実際に測定して、横ずれ量を取得する場合と比較して、横ずれ量D2を簡単に取得することができる。
ここで、(i)記録用紙Pが走査方向の右側に横ずれして離間距離W2が離間距離W1よりもK小さくなる(W2=W1−K)場合と、(ii)記録用紙Pが走査方向の左側に横ずれして離間距離W2が離間距離W1よりもK大きくなる(W2=W1+K)場合とを比較する。(i)の場合の比率QをQ1、(ii)の場合の比率QをQ2とすると、Q1=[W/(W−K)]、Q2=[W/(W+K)]となる。W>K>0として、比率Q1、Q2の、横ずれがない場合の比率Q(=1)に対する変化量|1−Q1|、|1−Q2|は、それぞれ、|1−Q1|=[K/(W−K))]、|1−Q2|=[K/(W+K))]のように算出される。これにより、|1−Q1|>|1−Q2|の大小関係が成り立つ。
このことから、離間距離W2が離間距離W1よりも小さくなる(間隔A2が間隔A1よりも小さくなる)場合には、離間距離W2が離間距離W1よりも大きくなる(間隔A2が間隔A1よりも大きくなる)場合よりも、比率Qの変化が大きく、テストパターン60から取得した横ずれ量D1を補正する意義が大きい。したがって、搬送方向の上流側に位置する第2部分ほど走査方向の右側に位置するテストパターン60を印刷する場合には、記録用紙Pが走査方向の右側に横ずれするときに、左側に横ずれするときよりも、取得した横ずれ量D1を補正する意義が大きい。
[第2実施形態]
次に、本発明の好適な第2実施形態について説明する。
第2実施形態も、第1実施形態と同じ構造のプリンタ1(図1参照)に係るものである。なお、第2実施形態では、搬送ローラ4、5を合わせたものが、本発明の「搬送装置」に相当する。第2実施形態では、プリンタ1において双方向印刷を行うときの、キャリッジ2を右側に移動させるスキャン印刷によって印刷される画像と、左側に移動させるスキャン印刷によって印刷される画像とのつなぎ目の走査方向のずれを抑えるように吐出タイミングを決定する。
より詳細に説明すると、第2実施形態では、図7に示すように、制御装置50(図2参照)は、まず、テストパターン100を印刷する(S201、本発明の「パターン印刷ステップ」)。テストパターン100は、図8に示すように、複数の第1部分101と、これら複数の第1部分101に対応する複数の第2部分102とを有する。複数の第1部分101は、搬送方向に並んでいる。各第1部分101は、2つの矩形部111によって形成されている。2つの矩形部111は、それぞれ、走査方向の長さがE1の略矩形の部分であり、走査方向に間隔を空けて並んでいる。2つの矩形部111の走査方向の間隔はE2である。また、第1部分101間で、矩形部111の走査方向の位置は同じとなっている。
複数の第2部分102は、搬送方向において複数の第1部分101と同じ位置に配置されることで、搬送方向に並んでいる。各第2部分102は、2つの矩形部121によって形成されている。2つの矩形部121は、それぞれ、走査方向の長さがE2の略矩形の部分であり、走査方向に間隔を空けて並んでいる。2つの矩形部121の走査方向の間隔はE1である。また、第2部分102間で、矩形部121の走査方向の位置がずれている。
具体的には、搬送方向の上流側に位置する第2部分102ほど、走査方向の右側に位置している。すなわち、複数の第2部分102のうち、搬送方向において、中央に位置する第2部分102(本発明の「基準の第2部分」)よりも上流側の第2部分102は、中央に位置する第2部分102よりも走査方向の右側(本発明の「走査方向の一方側」)に位置する。また、複数の第2部分102のうち、搬送方向において、中央に位置する第2部分102よりも下流側の第2部分102は、中央に位置する第2部分102よりも走査方向の左側(本発明の「走査方向の他方側」)に位置する。さらに、搬送方向において、中央に位置する第2部分102から遠い第2部分102ほど、走査方向において中央に位置する第2部分102との距離が大きくなっている。なお、図8では、第2部分102の数が奇数個であり、搬送方向の中央に位置する第2部分102は1つに決まるが、第2部分102の数が偶数個である場合には、搬送方向の中央に位置する第2部分102とは、搬送方向の中央に位置する2つの第2部分102のうちのいずれかのことである。
次に、テストパターン100を印刷する手順について説明する。テストパターン100を印刷するためには、まず、キャリッジ2を右側に移動させるスキャン印刷により、1つの第1部分101を印刷する。続いて、記録用紙Pを搬送させずに、キャリッジ2を左側に移動させるスキャン印刷により、1つの第2部分102を印刷する。これにより、第1部分101と第2部分102との組103が1組印刷される。
続いて、搬送ローラ4、5により記録用紙Pを搬送したうえで、上述したのと同様に第1部分101と第2部分102とを印刷する。そして、以下、同様の動作を繰り返す。これにより、第1部分101と第2部分102との組103が、搬送方向に複数組並んだテストパターン100が印刷される。
ただし、搬送方向の上流側の第2部分102ほど、矩形部121が右側に形成されるように、第2部分102間で印刷時の吐出タイミングを徐々にずらす。また、吐出タイミングの補正を行わなくても、キャリッジ2を右側に移動させるスキャン印刷によって印刷される画像と、左側に移動させるスキャン印刷によって印刷される画像とのつなぎ目に走査方向のずれが生じないとした場合に、搬送方向の中央に位置する組103において、矩形部111と矩形部121とが重ならず、2つの矩形部111と2つの矩形部121とが走査方向に交互に並ぶような吐出タイミングでインクを吐出する。
なお、第1実施形態で説明したように、記録用紙Pが上流側搬送ローラ4を抜け、下流側搬送ローラ5によってのみ搬送される第2状態では、記録用紙Pが走査方向に横ずれする。そのため、テストパターン100は、記録用紙Pが上流側搬送ローラ4を抜ける前の第1状態で印刷する。
そして、このようにして印刷されたテストパターン100では、矩形部111と矩形部112とが重ならず、矩形部111と矩形部112とが走査方向に交互に並んでいる状態から、矩形部121が走査方向にずれると、矩形部111と矩形部112とが部分的に重なり、いずれかの矩形部111と矩形部112との間にインクが着弾しない白筋104が形成される。
そこで、第2実施形態では、図5に示すように、制御装置50は、印刷されたテストパターン100のどの組103において、矩形部111と矩形部112とが重ならず、走査方向に交互に並んでいるか(白筋104がないか)に基づいて、双方向印刷における吐出タイミングを決定する(S202)。具体的には、ユーザが、テストパターン100のどの組103において、矩形部111と矩形部112とが上記位置関係となっているかを目視で確認し、その結果に応じて、プリンタ1の図示しない操作部、又は、プリンタ1に接続された図示しないPCなどを操作したときに、制御装置50が、ユーザの操作結果に応じて双方向印刷における吐出タイミングを決定する。あるいは、プリンタ1がスキャナを備えた複合機である場合には、ユーザがスキャナにテストパターン100を読み取らせたときに、制御装置50が、その読み取り結果に基づいて双方向印刷での吐出タイミングを決定する。これにより、走査方向において、キャリッジ2を右側に移動させるスキャン印刷によって印刷される画像と、左側に移動させるスキャン印刷によって印刷される画像とのつなぎ目の走査方向のずれを抑えることができる。
また、上述したように、テストパターン100を印刷するときには、第2部分102間で印刷時の吐出タイミングを徐々にずらす。このとき、第2部分102間での吐出タイミングのずらし時間を短くするほど、吐出タイミングの調整の精度を高くすることができる。しかしながら、上記吐出タイミングのずらし時間を短くしすぎると、選択するべき組103に近い組103において、白筋104の走査方向の幅が狭すぎて、白筋104を視認することができない虞がある。この場合には、誤った組103を選択してしまう虞がある。一方、上記吐出タイミングのずらし時間を長くしすぎると、選択するべき組103以外の白筋104の走査方向の幅が広くなるため、誤った組103を選択してしまうことはなくなるが、吐出タイミングの調整の精度が低くなってしまう。
ここで、第2実施形態では、通常、スキャン印刷において、印刷される画像の走査方向の解像度に対応する吐出周期で複数のノズル10(図1参照)からインクを吐出させる。これに合わせて、テストパターン100の印刷時に、テストパターン100の走査方向の解像度に対応する吐出周期の整数倍の時間ずつ、第2部分102間で印刷時の吐出タイミングをずらす場合を考える。この場合には、例えば、Nを自然数として、第2部分102間で、印刷時の吐出タイミングを、上記吐出周期のN倍の時間ずつずらすと、白筋104の幅が狭くなりすぎて視認することができなくなるのに対して、上記吐出周期の[N+1]倍の時間ずつずらすと、必要な吐出タイミングの調整の精度が得られなくなってしまう、ということが起こり得る。
そこで、第2実施形態では、このような場合に、第2部分102間で、印刷時の吐出タイミングを、上記吐出周期のN倍の時間よりも長く、且つ、[N+1]倍の時間よりも短い時間ずつずらす。すなわち、第2部分102間で、印刷時の吐出タイミングを、上記吐出周期の整数倍とは異なる時間ずつずらして、第2部分102同士の走査方向の間隔を調整する。これにより、上記吐出周期のN倍の時間ずつずらす場合よりも、白筋104を目立ちやすくすることができ、且つ、上記吐出周期の[N+1]倍の時間ずつずらす場合よりも、吐出タイミングの調整の精度を高くすることができる。その結果、視認性を確保しつつも、必要な吐出タイミングの調整の精度を得ることが可能なテストパターン100を印刷することができる。
ここで、第2部分102間での吐出タイミングのずらし方について詳細に説明する。第2実施形態では、複数の第2部分102のうち、最も搬送方向の上流側に位置する第2部分102の吐出タイミングを基準タイミングとする。この基準タイミングは、図示しないエンコーダからの信号に応じて設定されるテストパターン100の走査方向の解像度に対応する複数の吐出周期のうち、ある1つの吐出周期によって決まるタイミングである。
そして、上記基準タイミングに基づいて、複数の第1部分101を印刷するときの吐出タイミングを、決定する。また、上記吐出周期の整数倍とは異なる所定時間Tを設定する。そして、各第2部分102の印刷時の吐出タイミングを基準タイミングから遅延させる。このとき、搬送方向の上流側(本発明の「搬送方向の一方側」)から下流側(本発明の「搬送方向の他方側」)に向かうにつれて、複数の第2部分102の印刷時の吐出タイミングの上記基準タイミングからずらす時間が、所定時間Tずつ増加するように吐出タイミングを遅延させる。
第2実施形態のように、上記基準タイミングを、エンコーダからの信号に応じたタイミングとする場合、吐出タイミングは、エンコーダの信号が入力された後のタイミングにしか設定することができない。すなわち、吐出タイミングを基準タイミングに対して早めることは難しい。これに対して、第2実施形態では、複数の第2部分102の走査方向の位置関係が上述したような位置関係となっていることにより、搬送方向の最も上流側第2部分62が最も右側に位置している。また、キャリッジ2を左側に移動させるスキャン印刷において、複数の第2部分102を印刷している。そのため、搬送方向の最も上流側第2部分62の印刷時の吐出タイミングを基準タイミングすれば、それ以外の、第2部分102を印刷するときの吐出タイミングを、上記基準タイミングから遅延させたタイミングとすることができる。
上述の特許文献1のインクジェットプリンタでは、キャリッジの往動時にノズルからインクを吐出させることによって印刷した第1判定パターンと、キャリッジの復動時にノズルからインクを吐出させることによって印刷した第2判定パターンとを有する判定パターンを複数印刷する。このとき、判定パターン間で、第2判定パターンの印刷時の吐出タイミングをずらす。そして、このようにして印刷された複数の判定パターンの中から、パターンが形成されていない白色の領域(白筋)のない1つの判定パターンを選択し、選択した判定パターンに基づいて、双方向印刷において、キャリッジの往動時及び復動時のノズルからの吐出タイミングを決定する。
特許文献1のようなインクジェットプリンタでは、通常、印刷する画像の走査方向の解像度に対応した吐出周期で、ノズルからインクを吐出して印刷を行う。これに対応して、複数の判定パターンを印刷するときに、判定パターン間で、第2判定パターンの印刷時の吐出タイミングを、判定パターンの解像度に対応する吐出周期の整数倍の時間ずつずらすことが考えられる。この場合、例えば、Nを自然数として、判定パターン間で、第2判定パターンの印刷時の吐出タイミングを、上記吐出周期のN倍の時間ずつずらすと、ユーザが複数の判定パターンを目視で確認したときに、2以上の判定パターンにおいて、白筋が存在しないように見えてしまい、判定パターンを選択することができない虞がある。一方で、判定パターン間で、第2判定パターンの印刷時の吐出タイミングを、吐出周期の[N+1]倍の時間ずつずらすと、判定パターンの印刷結果に基づいて決定される吐出タイミングの精度が必要な精度よりも低くなってしまう虞がある。
本発明の目的は、視認性を確保しつつも、必要な精度で情報を取得させることが可能なテストパターンの印刷方法を提供することである。
本発明のテストパターンの印刷方法は、被記録媒体を搬送方向に搬送するための搬送装置と、前記搬送方向に沿って並んだ複数のノズルを有する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドを前記搬送方向と交差する走査方向に移動させるためのヘッド移動装置と、を備えた印刷装置におけるテストパターンの印刷方法であって、前記ノズルによって形成する第1部分と、前記ノズルによって形成する複数の第2部分であって、各第2部分を印刷する毎に被記録媒体を前記搬送方向に搬送し、第2部分間で前記ノズルからの吐出タイミングをずらして形成する複数の第2部分と、を有する前記テストパターンを印刷するパターン印刷ステップ、を備え、前記パターン印刷ステップにおいて、前記第2部分間で、前記ノズルからの吐出タイミングを、前記テストパターンの前記走査方向の解像度に対応する吐出周期の整数倍とは異なる時間ずらすことによって、前記第2部分同士の前記走査方向の間隔を調整する。
本発明では、第2部分間で、ノズルからの吐出タイミングを、テストパターンの走査方向の解像度に対応する吐出周期の整数倍とは異なる時間ずらすことによって、第2部分同士の走査方向の間隔を調整する。これにより、第2部分間で、ノズルからの吐出タイミングを、上記吐出周期の整数倍の時間しかずらさない場合と比較して、第1部分と複数の第2部分との位置関係の調整の自由度が高くなる。その結果、例えば、取得される情報の精度と、視認性の高さとを両立させてテストパターンを印刷することができる。
次に、第1、第2実施形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。
第1実施形態では、上述したように、比率M1(搬送量X2)を簡易的に算出している。そのため、算出された比率M1は、実際の搬送量に対する横ずれ量の比率から多少ずれた値となる。変形例1では、比率M1の代わりに、比率M1を上記比率Q(=[W1/(W1−K)])で除すことによって得られる比率M2(=M1/Q)を算出する。そして、差Kを、K=M2・Yとして算出する。この場合には、比率M2は比率M1よりも、実際の比率に近いものとなる。
ここで、第1実施形態のK=M1・Yの関係式では、右辺にKの項が含まれないため、右辺を計算することで差Kの値を算出することができる。これに対して、変形例1のK=M2・Yの関係式では、M2=M1/Q、及び、Q=[W1/(W1−K)]の関係があるため、両辺にKの項が含まれる。したがって、変形例1でK=M2・Yの関係式から差Kを算出する場合には、第1実施形態でK=M1・Yの関係式から差Kを算出する場合と比較すると、差Kを算出するための計算が複雑なものとなる。
また、第1実施の形態では、テストパターン60の複数の第2部分62のうち、搬送方向の上流側に位置する第2部分62ほど右側に位置するように、複数の第2部分62を印刷するときの吐出タイミングを徐々にずらしたが、これには限られない。
変形例2では、図9に示すように、テストパターン70が複数の第1部分71と、複数の第2部分72とを有する。複数の第1部分71は、複数の第1部分61(図5(a)参照)と同様のものである。複数の第2部分72は、搬送方向の上流側に位置するものほど左側に位置している。各第2部分72は、第2部分62(図5(a)参照)と同様の形状を有している。この場合には、記録用紙Pが右側に横ずれすると、第1実施形態とは逆に、印刷されたテストパターン70における第2部分72同士の間隔A4が、基準テストパターン70Aにおける第2部分72同士の間隔A3よりも大きくなる。この場合でも、第1実施形態のS102と同様に、どの第2部分72が対応する第1部分71と重なるかによって横ずれ量D1を取得し、第1実施形態のS103と同様にして、取得した横ずれ量D1から、横ずれ量D2を算出することができる。なお、変形例2の場合には、第1実施形態とは逆に、記録用紙Pが走査方向の左側に横ずれしたときに差Kが正の値となり、走査方向の右側に横ずれしたときに差Kが負の値となる。
また、第1実施形態では、基準テストパターン60Aが印刷される場合に、搬送方向の中央に位置する第2部分62が、対応する第1部分61と重なるようにテストパターン60を印刷したが、これには限られない。基準テストパターン60Aが印刷される場合に、搬送方向の中央に位置する第2部分62以外の第2部分62が、対応する第1部分61と重なるようにテストパターン60を印刷してもよい。
また、第1実施形態において、複数の第2部分62間で走査方向の位置がずれていれば、第2部分62は、搬送方向の上流側に位置するものほど、右側あるいは左側に位置していることにも限られない。例えば、第1実施形態のテストパターン60において、一部の第2部分62の搬送方向の位置を互いに入れ換えたテストパターンを印刷してもよい。
また、第1実施形態では、ユーザの視認性、あるいは、スキャナでの読み取りのために、テストパターン60において、複数の第2部分62に対して個別の、複数の第1部分61を印刷したが、これには限られない。テストパターン60において必要なのは、複数の第2部分62と第1部分61との走査方向の位置関係であるところ、複数の第1部分61の走査方向の位置は同じであるため、例えば、第1部分61を1つだけ印刷してもよい。
また、第1実施形態では、テストパターン60が、複数の第1部分61と複数の第2部分62とによって形成されたものであり、S102において、どの第2部分62が対応する第1部分61と重なるかによって、横ずれ量D1を取得したが、これには限られない。
例えば、図9に示すように、第1実施形態において、記録用紙Pが上流側搬送ローラ4及び下流側搬送ローラ5の両方に搬送されている状態で、キャリッジ2を右側に移動させるスキャン印刷により、第2実施形態の複数の第1部分101(図8参照)と同様の複数の第1部分を印刷し、記録用紙Pが下流側搬送ローラ5にのみ搬送されている状態で、キャリッジ2を右側に移動させるスキャン印刷により、第2実施形態の複数の第2部分102(図8参照)と同様の複数の第2部分を印刷することによって、第2実施形態のテストパターン100(図8参照)と同様のテストパターンを印刷してもよい。この場合には、どの第1部分と第2部分との組において、白筋が最も目立たないかに基づいて、横ずれ量D1を取得することができる。
また、比率Qの算出は、第1実施形態や変形例1のようにして行うことにも限られない。テストパターン60の印刷結果から取得される横ずれ量D1と、既知の値とを用いた別の方法によって比率Qを算出してもよい。
さらには、テストパターン60の印刷結果から取得される横ずれ量D1と、既知の値とから、上記比率Q(差K)を算出することにも限られない。例えば、印刷されたテストパターン60において、実際に離間距離W2を測定し、測定した離間距離W2と、既知の離間距離W1とを用いて比率Qを算出してもよい。あるいは、印刷されたテストパターン60において、実際に間隔A2を測定し、測定した間隔A2と、既知の間隔A1とを用いて比率Qを算出してもよい。ここで、間隔A2は離間距離W2に比べて小さく、実際に間隔A2を測定するためには、ある程度精度の高い測定機器で測定を行うなどする必要がある。これに対して、離間距離W2は間隔A2よりも大きいため、離間距離W2を測定することは、間隔A2を測定することと比較すれば容易である。
また、第1実施形態では、記録用紙Pが走査方向の右側に横ずれした場合及び左側に横ずれした場合のいずれにおいても、取得した横ずれ量を補正したが、これには限られない。変形例3では、図10に示すように、第1実施形態のS101、S102と同様、テストパターン60を印刷し(S301)、テストパターン60の印刷結果に基づいて、横ずれ量D1を決定する(S302)。続いて、制御装置50は、テストパターン60の印刷結果に基づいて、記録用紙Pが右側及び左側のどちら側に横ずれしたかを判定する(S303、本発明の「判定ステップ」)。ここで、テストパターン60を印刷した場合、記録用紙Pが右側に横ずれしたときには、搬送方向において中央よりも上流側に位置する第2部分62が、対応する第1部分61と重なる。一方、記録用紙Pが左側に横ずれしたときには、搬送方向において中央よりも下流側に位置する第2部分62が、対応する第1部分61と重なる。したがって、S203では、どの第2部分62が対応する第1部分61と重なるかによって、記録用紙Pが右側及び左側のどちらに横ずれしたかを判定することができる。
そして、記録用紙Pが右側に横ずれしている場合には(S303:YES)、第1実施形態と同様に、S202で取得した横ずれ量D1を補正し(S304)、補正後の横ずれ量D2に基づいて、第2状態での吐出タイミングを決定する(S305)。一方、記録用紙Pが左側に横ずれしている場合には(S303:NO)、制御装置50は、S202で取得した横ずれ量D1の補正を行わず、S302で取得した横ずれ量D1に基づいて、第2状態での吐出タイミングに決定する(S305)。
上述したように、離間距離W2が離間距離W1よりも小さくなる(間隔A2が間隔A1よりも小さくなる)場合には、離間距離W2が離間距離W1よりも大きくなる(間隔A2が間隔A1よりも大きくなる)場合よりも、テストパターン60から取得した横ずれ量D1を補正する意義が大きい。そのため、テストパターン60を印刷する場合には、記録用紙Pが右側に横ずれするときに、左側に横ずれするときよりも、テストパターン60の印刷結果に基づいて取得される横ずれ量D1を補正する意義が大きい。そこで、変形例3では、記録用紙Pが右側に横ずれするときには、S202で取得した横ずれ量D1を補正し、左側に横ずれするときには、S202で取得した横ずれ量D1を補正しない。
ここで、変形例3では、搬送方向の上流側の第2部分62ほど走査方向の右側に位置するテストパターン60を印刷する場合を例に挙げて説明したが、これには限られない。変形例2のように、搬送方向の上流側の第2部分72ほど走査方向の左側に位置するテストパターン70を印刷する場合に、記録用紙Pが右側に横ずれしたときには、S202で取得した横ずれ量D1を補正せず、左側に横ずれしたときには、S202で取得した横ずれ量D1を補正するようにしてもよい。
また、第1実施形態では、搬送ローラ4、5がコイルばね16、20により右側に付勢されていたが、コイルばね16、20の代わりに、搬送ローラ4、5を左側に付勢して、左側のローラ支持部13a,17aに押し付けるコイルばねが設けられていてもよい。さらには、搬送ローラ4、5を走査方向に付勢するための構成は設けられていなくてもよい。
また、第1実施形態では、第1状態で複数の第1部分61を印刷し、第2状態で複数の第2部分62を印刷したが、これには限られない。第1実施形態とは逆に、第1状態でノズル10aからインクを吐出させて複数の第2部分62を印刷し、その後、第2状態でノズル10bからインクを吐出させて複数の第2部分62を印刷してもよい。この場合には、記録用紙Pの横ずれにより、第1部分61同士が走査方向にずれる。したがって、この場合には、印刷されたテストパターン60から横ずれ量を取得し、基準パターン60Aにおける第1部分61同士の走査方向の間隔(0)と印刷されたテストパターン60における第1部分61同士の間隔との違いに応じて、取得した横ずれ量補正すればよい。なお、この場合には、ノズル10aが本発明の第2ノズルに相当し、ノズル10bが本発明の第1ノズルに相当する。また、この場合には、第1部分61毎に印刷時の吐出タイミングをずらすことで、基準テストパターン60Aを印刷したときに、第1部分61の走査方向の位置が互いにずれる(第1部分61同士の走査方向の間隔が0とならない)ようにしてもよい。
また、第2実施形態では、搬送方向の上流側から下流側に向かうにつれて、複数の第2部分102の印刷時の吐出タイミングを基準タイミングからずらす時間が、所定時間Tずつ増加するように、各第2部分102の印刷時の吐出タイミングを基準タイミングから遅延させたが、これには限られない。第2実施形態において、搬送方向の上流側から下流側に向かうにつれて、複数の第2部分102の印刷時の吐出タイミングを基準タイミングからずらす時間が、所定時間Tの2以上の整数倍の時間ずつ増加するように、各第2部分102の印刷時の吐出タイミングを基準タイミングから遅延させてもよい。
また、第2実施形態では、搬送方向の最も上流側第2部分62が最も右側に位置しており、キャリッジ2を左側に移動させるスキャン印刷によって複数の第2部分102を印刷する。これに対して、搬送方向の最も上流側第2部分62の印刷時の吐出タイミングを基準タイミングとし、それ以外の、第2部分102を印刷するときの吐出タイミングを、上記基準タイミングから遅延させたタイミングとしている。しかしながら、これには限られない。例えば、吐出タイミングを基準タイミングに対して早めることができる場合には、例えば、搬送方向の最も下流側の第2部分102を印刷するときの吐出タイミングを基準タイミングとしてもよい。そして、搬送方向の下流側から上流側に向かうにつれて、複数の第2部分102の印刷時の吐出タイミングの上記基準タイミングからずらす時間が、所定時間ずつ増えるように、各第2部分102を印刷するときの吐出タイミングを上記基準タイミングから早めてもよい。
あるいは、搬送方向の最も上流側及び下流側の第2部分102以外の第2部分102を印刷するときの吐出タイミングを基準タイミングとしてもよい。この場合には、基準タイミングに対応する第2部分102よりも搬送方向の上流側に位置する第2部分102の印刷時の吐出タイミングを、基準タイミングから早める。また、基準タイミングに対応する第2部分102よりも搬送方向の下流側に位置する第2部分102の印刷時の吐出タイミングを、基準タイミングから遅延させる。
また、第2実施形態において、第2部分102同士の走査方向のずれ量が互いに異なる、複数種類のテストパターンを印刷することができるようになっていてもよい。例えば、変形例4では、プリンタ1において、図11(a)、(b)に示すような2種類のテストパターン130A、130Bを印刷することができるようになっている。ここで、テストパターン130Aは、テストパターン130Bよりも第2部分102同士の走査方向のずれ量が大きい(Wa>Wb)。このように、第2部分102同士の走査方向のずれ量が異なる複数種類のテストパターンを印刷することができるようにすれば、ユーザのニーズ等に応じて、複数種類のテストパターンの中から最適なテストパターンを印刷することができる。
変形例4において、テストパターン130A、130Bを印刷するときの第2部分102間での吐出タイミングのずらし方について説明する。変形例4では、EEPROM54に、テストパターン130A、130Bについて個別に所定時間Ta、Tbが記憶されている。ここで、所定時間Ta、Tbは、ずれ量Wa、Wbに対応しており、Ta>Tbの大小関係がある。なお、変形例4では、所定時間Taが、本発明の「最長所定時間」である。
そして、変形例4では、第2部分102同士の間隔が最も大きいテストパターン130Aにおける、搬送方向の最も上流側に位置する第2部分102を印刷するときの吐出タイミングを、基準タイミングとする。そして、テストパターン130Aを印刷するときには、第2実施形態と同様に、搬送方向の上流側から下流側に向かうにつれて、複数の第2部分102の印刷時の吐出タイミングを上記基準タイミングからずらす時間が、最長所定時間Taずつ増加するように、各第2部分102の印刷時の吐出タイミングを基準タイミングから遅延させる。
一方、テストパターン130Bを印刷するときには、搬送方向の最も上流側に位置する第2部分102を印刷するときの吐出タイミングを、上記基準タイミングから、設定された所定時間Tbと最長所定時間Taとの比率に応じた時間だけ遅延させる。また、搬送方向の上流側から下流側に向かうにつれて、複数の第2部分102の印刷時の吐出タイミングを上記基準タイミングからずらす時間が、設定された所定時間Tbずつ増加するように、各第2部分102の印刷時の吐出タイミングを上記基準タイミングから遅延させる。
変形例4では、このように、第2部分102同士の走査方向のずれ量が最も大きいテストパターン130Aを印刷するとき(所定時間が最長所定時間に設定されるとき)の、搬送方向の最も上流側に位置する第2部分102を印刷するときの吐出タイミングを、基準タイミングとする。したがって、テストパターン130Aを印刷するときに、各第2部分102を印刷するときの吐出タイミングを、基準タイミング、もしくは、基準タイミングに対して遅延させたタイミングとすることができる。さらに、第2部分102同士の走査方向の間隔がテストパターン130Aよりも短いテストパターン130Bを印刷するとき(所定時間が、最長所定時間よりも短い時間に設定されるとき)に、各第2部分102を印刷するときの吐出タイミングを、基準タイミングに対して遅延させたタイミングとすることができる。
また、第2実施形態では、テストパターン100において、第1部分101と第2部分102との組103が、搬送方向に1列に並んでいたが、これには限られない。変形例5では、図12に示すように、テストパターン150において、第1部分101と第2部分102との組103が搬送方向に並んだ列151が、走査方向に2列に並んでいる。また、走査方向の左側の列151と右側の列151とは、搬送方向の位置が互いにずれている。また、これら2つの列151を形成する複数の組103間で、第2部分102を印刷するときの吐出タイミングの、対応する第1部分101の印刷時の吐出タイミングに対するずらし時間を異ならせることで、搬送方向の上流側に位置する第2部分102ほど、対応する第1部分101を基準とする位置が右側にくるようにしている。
また、第2実施形態で印刷するテストパターンは、第1部分101と第2部分102との組103を複数有するテストパターンであることには限られない。例えば、第2実施形態において、キャリッジ2を右側に移動させるスキャン印刷により、第1実施形態の複数の第1部分61(図5(a)参照)と同様の複数の第1部分を印刷し、キャリッジ2を左側に移動させるスキャン印刷により、第1実施形態の複数の第2部分62(図5(a)参照)と同様の複数の第2部分を印刷することによって、第1実施形態のテストパターン60(図5(a)参照)と同様のテストパターンを印刷してもよい。この場合には、どの第2部分が第1部分と重なるかによって、双方向印刷における吐出タイミングを決定すれば、双方向印刷において、キャリッジ2を右側に移動させるスキャン印刷で印刷される画像と、左側に移動させるスキャン印刷で印刷される画像との走査方向のずれを抑えることができる。
また、以上では、ノズルからインクを吐出して記録用紙Pに印刷を行うプリンタに本発明を適用した例について説明したが、これには限られない。例えば、配線基板に印刷する配線パターンの材料等のインク以外の液体を吐出して印刷を行う印刷装置に本発明を適用することも可能である。