JP6876765B2 - 脂質、糖、およびタンパク質回収のための微細藻類の酵素消化 - Google Patents

脂質、糖、およびタンパク質回収のための微細藻類の酵素消化 Download PDF

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Description

関連出願
[0001]本出願は、35U.S.C.§111(b)の下に、2013年8月30日に出願された米国仮出願第61/871,997号、および35U.S.C.§111(b)の下に、2013年9月13日に出願された米国仮出願第61/877,497号に優先権を請求し、これらの全開示は、すべての目的のため、本明細書に援用される。
連邦が出資した研究に関する言及
[0002]本発明は、全米科学財団によって授与される助成金番号CHE1230609および米国エネルギー省によって授与される助成金番号DE−EE0005993の下に、政府支援を得て行われた。米国政府は本発明において、特定の権利を有する。
[0003]石油化学製品価格の上昇およびCO放出減少への関心から、生物由来(bio−based)化学物質産生の開発が促されてきている。1つの例として、スクシネートは、1,4−ブタンジオール、エチレンジアミンジコハク酸、およびアジピン酸などの多様な多価(high−value)誘導体の産生のための重要なプラットホーム化学物質である。現在、スクシネートは、石油化学合成または微生物発酵のいずれかから産生可能であるが、後者のプロセスは、将来的に、石油化学産生と好適に競合しうるコストを有する。生物由来コハク酸産生のため、安価な原材料を探し、そして前処理プロセスを最適化することは、コハク酸産生コストを減少させる際の重要な課題である。生物学的前処理法、例えば酵素加水分解は、穏やかな条件、より少ない副産物、および腐食問題の欠如のため、伝統的な酸加水分解の代わりに使用されてきている。しかし、酵素加水分解のより有効でそしてコスト効率的な方法に関する、当該技術分野における多くの課題および満たされていない必要性がある。
[0004]本明細書において、酵素加水分解法であって、微細藻類を酵素で処理して、消化されたバイオマスを産生し、ここで酵素は少なくとも1つのプロテアーゼおよび少なくとも1つのアミラーゼの混合物を含み、そして消化されたバイオマスを有機相および水相に分離する、ここで有機相は脂質を含有し、そして水相は固形物、炭水化物およびペプチドを含有する工程を含む、前記方法を提供する。
[0005]特定の態様において、方法には、有機相および水相の一方または両方をさらにプロセシングおよび/または分離して、脂質、固形物、または生物由来産物を得る工程が含まれる。特定の態様において、さらなるプロセシングおよび/または分離工程は、有機相を脂質−溶媒分離に供して脂質を回収する工程を含む。特定の態様において、さらなるプロセシングおよび/または分離工程は、水相を固形物−液体分離に供して、分離された固形物および上清を得て、上清が炭水化物および栄養素を含有し、そして上清を微生物発酵に供して、生物由来産物を得る工程を含む。特定の態様において、生物由来産物はコハク酸を含む。特定の態様において、さらなるプロセシングおよび/または分離工程は、水相を微生物発酵に供して、生物由来産物を得る工程を含む。特定の態様において、生物由来産物はコハク酸を含む。
[0006]特定の態様において、方法は、有機溶媒で、固形物から脂質を抽出する工程をさらに含む。特定の態様において、微細藻類は、脂質が豊富な湿性微細藻類である。
[0007]本明細書に提供するのは、1またはそれより多いプロテアーゼで微細藻類を処理
して、消化されたバイオマスを得て;消化されたバイオマスを有機相および水相に分離して、ここで有機相は脂質を含有し、そして水相は固形物、炭水化物およびペプチドを含有する;そして水相の少なくとも一部を、1またはそれより多いアミラーゼで処理して、加水分解された炭水化物およびタンパク質を含有するアミラーゼ処理水相を得る工程を含む、酵素加水分解法である。
[0008]特定の態様において、方法は、有機相、水相、またはアミラーゼ処理水相のいずれかをさらに分離および/またはプロセシングして、脂質、固形物、または生物由来産物を得る工程をさらに含む。特定の態様において、さらなる分離および/またはプロセシング工程は、水相またはアミラーゼ処理水相のいずれかを微生物発酵に供して、生物由来産物を得る工程を含む。特定の態様において、さらなる分離および/またはプロセシング工程は、水相またはアミラーゼ処理水相を固形物−液体分離に供して、固形物および上清を得て、そして上清を微生物発酵に供して、生物由来産物を得る工程を含む。
[0009]さらに提供するのは、酵素で微細藻類を処理して、消化されたバイオマスを得て、ここで酵素は真菌酸性プロテアーゼを含む、そして消化されたバイオマスを有機相および水相に分離する、ここで有機相は脂質を含有し、そして水相は固形物、炭水化物およびペプチドを含有する工程を含む、酵素加水分解法である。特定の態様において、方法は、有機相および水相の一方または両方をさらにプロセシングおよび/または分離して、脂質、固形物、または生物由来産物を得る工程を含む。特定の態様において、さらなるプロセシングおよび/または分離工程は、有機相を脂質−溶媒分離に供して脂質を回収する工程を含む。特定の態様において、さらなるプロセシングおよび/または分離工程は、水相を固形物−液体分離に供して、分離された固形物および上清を得て、上清が炭水化物および栄養素を含有し、そして上清を微生物発酵に供して、生物由来産物を得る工程を含む。
[0010]さらに提供するのは、脂質が少ない微細藻類を、少なくとも1つのプロテアーゼおよび少なくとも1つのアミラーゼの混合物で処理して、消化されたバイオマスを得て;そして消化されたバイオマスをさらに分離および/またはプロセシングして、生物由来産物を得る工程を含む、酵素加水分解法である。特定の態様において、さらなる分離および/またはプロセシング工程は、液体から固形物を分離して、固形物および上清を得て、上清が炭水化物および栄養素を含有し;そして上清を微生物発酵に供して、生物由来産物を得る工程を含む。特定の態様において、さらなるプロセシング工程は、消化されたバイオマスを微生物発酵に供して、生物由来産物を得る工程を含む。
[0011]さらに提供するのは、脂質の放出、および単純な発酵可能な糖への多糖の分解が同時に起こる、単一工程を伴う酵素加水分解法である。方法は、プロテアーゼ、アミラーゼ、またはその組み合わせを含む酵素混合物を利用する。特定の態様において、方法は、酵素加水分解前に前処理(熱または機械的)を必要とせず、そして比較的単純な装置を用いて、低温で実行可能である。
[0012]さらに提供するのは、脂質を抽出し、そして糖を加水分解する、2段階酵素加水分解法である。第一段階において、酵素の第一のセットを用いて、細胞壁を破壊し、脂質を抽出し、そして炭水化物を少なくとも部分的に加水分解する。第二段階において、酵素の第二のセットを用いて、炭水化物の加水分解を完了する。いくつかの態様において、脂質の85%より多くが抽出され、そして単量体糖の99%が放出される。
[0013]さらに提供するのは、脂質を抽出し、そして同時に、炭水化物を加水分解する、一段階酵素加水分解法である。方法は、プロテアーゼ、アミラーゼ、またはその組み合わせを含む酵素の混合物を用いる工程を含む。
[0014]さらに提供するのは、発酵法であって、酵素の混合物を用いて、微細藻類バイオマスにおけるタンパク質を加水分解し、そして栄養素を加水分解物内に放出する、ここで、放出された栄養素およびアミノ酸が、いかなるさらなる付加も伴わずに、発酵における窒素供給源として用いられる工程を含む、前記方法である。特定の態様において、固形物残渣を収集し、そしてさらなる工程を実行して、その中の価値ある産物を抽出することも可能である。特定の態様において、いかなるさらなる付加も伴わずに、微細藻類加水分解物の液体相をコハク酸発酵に用いる。
[0015]さらに提供するのは、コハク酸発酵を実行する方法であって、すべて、脂質不含微細藻類由来の酵素混合物を用いながら、同時に、細胞壁を破壊し、炭水化物を放出し、そして加水分解する工程を含む、前記方法である。特定の態様において、方法は、酵素加水分解前にいかなる前処理も必要とせず、そして比較的単純な装置を用いて、低温で実行可能である。これは操作のコストを有意に減少させる。いくつかの態様において、99%を超える単量体糖が、最適化された条件下で放出されることも可能である。
[0016]特定の態様において、熱水処理を用いて、多糖上の結合部位への酵素のアクセス可能性を増加させ、これは酵素活性を有意に改善し、そして酵素装填を減少させる。
[0017]特定の態様において、酵素混合物は、微細藻類バイオマス中のタンパク質内容物のある程度を加水分解し、そしてまた、他の栄養素を加水分解物内に放出する。放出された栄養素およびアミノ酸(窒素供給源)を含む加水分解物を、いかなるさらなる付加も伴わず、生物由来産物の発酵プロセス中に用いる。固形物残渣を収集し、そして場合によってさらなる工程を実行して、固形物残渣中の価値ある産物を抽出することも可能である。特定の態様のコハク酸発酵において、微細藻類加水分解物の液体相を用いると、補充酵母エキスを伴うまたは伴わない発酵間で、類似の収率(〜72%、w/w)および活性が達成される。
[0018]さらに提供するのは、脂質が豊富な湿性微細藻類をプロテアーゼで処理して、有機相および水相に分離可能な消化されたバイオマスを産生し、ここで有機相は脂質を含み、そして水相は未消化固形物ならびに可溶化炭水化物およびペプチドを含む;そして水相をアミラーゼで処理して、加水分解炭水化物およびタンパク質を産生する工程を含む、酵素加水分解法である。特定の態様において、方法は、有機相から脂質を分離する、分離工程をさらに含む。特定の態様において、水相を、生物由来産物に微生物発酵させる。
[0019]特定の態様において、方法は、可溶化炭水化物およびペプチドから未消化固形物を分離する工程をさらに含む。特定の態様において、分離された炭水化物およびペプチドを、生物由来産物に微生物発酵させる。
[0020]特定の態様において、未消化固形物を動物飼料または肥料として使用することが可能である。特定の態様において、加水分解された炭水化物およびタンパク質を発酵させて、生物由来産物を産生する。特定の態様において、方法は、加水分解された炭水化物およびタンパク質から固形物を分離する、ここで分離された固形物は動物飼料または肥料に使用可能である工程をさらに含む。
[0021]さらに提供するのは、脂質が豊富な湿性微細藻類を、プロテアーゼおよびアミラーゼを含む酵素カクテルで処理して、消化されたバイオマスを産生し;そしてバイオマスを有機相および水相に分離する、ここで有機相は脂質を含み、そして水相は未消化固形物ならびに可溶化炭水化物およびペプチドを含む工程を含む、酵素加水分解法である。特定の態様において、方法は、有機相を脂質および溶媒に分離する、ここで脂質は燃料および他の産物を産生するために有用である工程をさらに含む。
[0022]特定の態様において、方法は、水相を微生物発酵させて生物由来産物を産生する工程をさらに含む。特定の態様において、方法は、水相を固形物、ならびに炭水化物および栄養素を含有する上清に分離する、ここで固形物は動物飼料または肥料に使用可能である工程をさらに含む。特定の態様において、方法は、上清を微生物発酵させて、生物由来産物を産生する工程をさらに含む。
[0023]さらに提供するのは、脂質が少ない湿性藻類を、プロテアーゼの1つまたはプロテアーゼおよびアミラーゼの組み合わせで処理して、消化されたバイオマスを産生する工程を含む、酵素加水分解法である。特定の態様において、脂質が少ない湿性藻類を酵素処理する前に、熱処理する。特定の態様において、方法は消化されたバイオマスを微生物発酵させて生物由来産物を産生する工程を含む。特定の態様において、方法は、消化されたバイオマスに対して分離工程を実行して、固形物および上清を産生する、ここで固形物は動物飼料または肥料に使用可能であり、そして上清は炭水化物および栄養素を含む工程をさらに含む。特定の態様において、方法は、上清を微生物発酵させて、生物由来産物を産生する工程をさらに含む。
[0024]さらに提供するのは、本明細書記載の任意の方法の産物である。特定の態様において、産物はコハク酸を含む。
図面の簡単な説明
[0025]特許または出願ファイルは、彩色された1またはそれより多い図ならびに/あるいは1またはそれより多い写真を含有する。着色図(単数または複数)および/または写真(単数または複数)を含む本特許または特許出願刊行物のコピーは、依頼および必要な料金の支払いがあれば、米国特許商標局によって提供されるであろう。
[0026]図1:本開示にしたがった、プロテアーゼおよびアミラーゼを用いた、脂質が豊富な微細藻類の2段階酵素加水分解の限定されない例。ブロックフロー図は、脂質を含有する微細藻類バイオマスからの、2段階酵素加水分解を用いた、糖が豊富な加水分解物および脂質の産生のためのプロセスを示す。回収された脂質は、燃料および他の油脂化学物質の産生に使用可能である一方、放出された糖は、(固形物分離を伴いまたは伴わず)バイオ産物、例えばアルコール、有機酸、またはメタンに発酵させることも可能である。 [0027]図2:プロテアーゼおよびアミラーゼの混合物を用いた、脂質が豊富な微細藻類の1段階酵素加水分解の限定されない例。ブロックフロー図は、脂質を含有する微細藻類バイオマスからの、1段階酵素加水分解を用いた、糖が豊富な加水分解物および脂質の産生のためのプロセスを示す。回収された脂質は、燃料および他の油脂化学物質の産生に使用可能である一方、放出された糖は、(固形物分離を伴いまたは伴わず)バイオ産物、例えばアルコール、有機酸、またはメタンに発酵させることも可能である。 [0028]図3:プロテアーゼおよびアミラーゼの混合物またはプロテアーゼのみのいずれかを用いた、脂質が豊富な微細藻類の酵素加水分解の限定されない例。酵素処理後、加水分解物をまず、残渣固形物および上清に分離する。残渣固形物は、脂質を回収するため、溶媒抽出を経る一方、加水分解された糖およびタンパク質を含有する上清を、バイオ産物、例えばアルコール、有機酸、またはメタンに発酵させる。 [0029]図4:プロテアーゼのみまたはアミラーゼとの組み合わせを用いた、脂質が少ない微細藻類の酵素加水分解の限定されない例。酵素処理後、加水分解物を、(不溶性固形物をあらかじめ分離するかまたは分離せずに)バイオ産物、例えばアルコール、有機酸、またはメタンに発酵させることも可能である。 [0030]図5A〜5B:プロテアーゼ(白抜きのバー)またはプロテアーゼおよびアミラーゼの混合物(黒塗りのバー)での酵素消化後、SLA−04(図5A)およびSR−21(図5B)の酵素処理後に抽出可能な脂質の分画。水平の点線は、バイオマス試料の総脂肪酸メチルエステル(FAME)を示す−SLA−04に関しては35%(w/w)およびSR21に関しては44%(w/w)。 [0030]図5A〜5B:プロテアーゼ(白抜きのバー)またはプロテアーゼおよびアミラーゼの混合物(黒塗りのバー)での酵素消化後、SLA−04(図5A)およびSR−21(図5B)の酵素処理後に抽出可能な脂質の分画。水平の点線は、バイオマス試料の総脂肪酸メチルエステル(FAME)を示す−SLA−04に関しては35%(w/w)およびSR21に関しては44%(w/w)。 [0031]図6:酵素消化したSLA−04における水相表面上に形成される脂質小滴を示す写真。 [0032]図7A〜7B:SLA−04(図7A)およびSR−21(図7B)から、消化および脂質の回収後に得られる溶媒抽出物のGCクロマトグラムの限定されない例。これは、回収された脂質の大部分がトリグリセリドであったことを示す(保持時間>30分)。 [0032]図7A〜7B:SLA−04(図7A)およびSR−21(図7B)から、消化および脂質の回収後に得られる溶媒抽出物のGCクロマトグラムの限定されない例。これは、回収された脂質の大部分がトリグリセリドであったことを示す(保持時間>30分)。 [0033]図8:脂質の部分が、酵素消化後に、残渣固形物に固着されたままである可能性があり、そして別個に抽出可能であることを示すグラフ。y軸は、藻類バイオマスの最初の質量(フィード)に比較した、残渣固形物から回収される脂質の質量を示す。 [0034]図9A〜9B:プロテアーゼ(白抜きのバー)またはプロテアーゼおよびアミラーゼの混合物(黒塗りのバー)での酵素消化後、SLA−04(図9A)およびSR−21(図9B)から放出される可溶化糖の濃度。 [0034]図9A〜9B:プロテアーゼ(白抜きのバー)またはプロテアーゼおよびアミラーゼの混合物(黒塗りのバー)での酵素消化後、SLA−04(図9A)およびSR−21(図9B)から放出される可溶化糖の濃度。 [0035]図10:商業的プロテアーゼ、α−アミラーゼ、およびグルコアミラーゼ酵素調製物に関するPAGE電気泳動ゲルの画像。画像は、ある程度のα−アミラーゼ活性が、プロテアーゼ調製物中に存在しうることを示す(レーン1および2における〜50kDの重複バンドを参照されたい)。 [0036]図11:糖放出に対する酵素カクテル組成物の影響。異なる組み合わせのα−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、およびプロテアーゼとともに、2時間、16%(w/v)の微細藻類バイオマス溶液を用いて実験を行った。y軸は、バイオマス中に最初に存在する総炭水化物に比較した、単量体糖の放出を示す。 [0037]図12:α−アミラーゼの多様な装填(0.5〜15kU)、および固定グルコアミラーゼ装填(150U)での藻類バイオマスの消化中の糖放出。4.5のpHおよび55℃で、16%(w/v)微細藻類バイオマス溶液を用いて実験を行った。y軸は、バイオマス中に最初に存在する総炭水化物に比較した、単量体糖の放出を示す。 [0038]図13:α−アミラーゼ(1kU)およびグルコアミラーゼ装填(150U)での藻類バイオマスの消化中のpHの関数としての糖放出。55℃で、16%(w/v)微細藻類バイオマス溶液を用いて実験を行った。y軸は、バイオマス中に最初に存在する総炭水化物に比較した、単量体糖の放出を示す。 [0039]図14:プロテアーゼの多様な装填(0〜3kU)、および固定グルコアミラーゼ装填(150U)での藻類バイオマスの消化中の糖放出。4.5のpHおよび55℃で、16%(w/v)微細藻類バイオマス溶液を用いて実験を行った。y軸は、バイオマス中に最初に存在する総炭水化物に比較した、単量体糖の放出を示す。 [0040]図15:プロテアーゼの多様な装填(0〜3kU)、および固定グルコアミラーゼ装填(150U)での藻類バイオマスの消化中の糖放出。4.5のpHおよび55℃で、16%(w/v)微細藻類バイオマス溶液を用いて実験を行った。y軸は、バイオマス中に最初に存在する総炭水化物に比較した、単量体糖の放出を示す。 [0041]図16A〜16B:消化した微細藻類バイオマスの発酵(図16A)およびコハク酸へのグルコースの発酵(図16B)。 [0041]図16A〜16B:消化した微細藻類バイオマスの発酵(図16A)およびコハク酸へのグルコースの発酵(図16B)。
[0042]本開示全体で、多様な刊行物、特許、および公開特許明細書が同定する引用によって言及される。これらの刊行物、特許、および公開特許明細書の開示は、本発明が属する技術分野の状態をより完全に記載するため、その全体が本開示に援用される。
[0043]微細藻類は、質が低い土地、水、および栄養素を用いてさえ、生産性が高いため、経済的に実行可能で、そして環境的に維持可能なバイオ燃料のための原料として働きうる。陸生植物とは異なり、微細藻類は、リグニンを含まない単細胞構造を有し、これによって、はるかにより穏やかな前処理法を用いて、細胞壁分解および炭水化物放出が可能である。その結果、微細藻類は、プロセス中に炭水化物の分解を引き起こす、かなりの量の阻害剤を生じない。以前、微細藻類は、細胞壁を破壊するため、機械的破壊、熱分解、マイクロ波、および超音波法に供されてきている。しかし、これらの方法はすべて、エネルギー消費またはより高い装置のコストを必要とする。本開示は、特定の態様において、同時に、(1)細胞壁を破壊し、(2)脂質を抽出し、(3)多糖を放出させ、そして単量体糖に加水分解し、そして(4)発酵のための窒素供給源用に、タンパク質を放出し、そして加水分解する、低エネルギー必要性を伴うコスト効率的なプロセスおよび装置の容易なセットアップの開発を記載する。
[0044]以前は、バイオディーゼル用の脂質産生には、海洋藻類が主に用いられてきた。現在、本開示にしたがって、海洋藻類は、コハク酸などの多様な種類の生物由来化学物質に変換されている。コハク酸産生のための原料として、陸生植物と比較して、微細藻類を用いる多くの利点がある。これらには、土が肥沃である必要性がなく、そして貴重な、そしてしばしば欠乏した、新鮮な水の供給が不要であることが含まれる。さらに、微細藻類が生長する間のバイオマスへのCOの固定および保存は、温室効果ガス放出の問題を減少させる。微細藻類は、脂質抽出後の乳酸発酵におけるバイオマスとして使用可能である。藻類バイオマスはまた、バイオエタノールまたはバイオ水素のような、再生可能エネルギー原料としても使用可能である。
[0045]微細藻類バイオマスは、4つの主な生化学分子クラス:炭水化物、タンパク質、核酸、および脂質によって慣用的に形成される。炭水化物に関しては、異なるクラスの微細藻類は、特定のタイプの多糖を産生する。通常、主にアミロースからなるデンプンが、大部分の藻類で見られるエネルギー貯蔵炭水化物である。例えば、緑藻、テトラセルミス・スエシカ(Tetraselmis suecica)は、栄養豊富および枯渇条件で、それぞれ、デンプンとして、乾燥重量の11%および47%を集積させる。紅藻は、大部分アミロースからなる紅藻デンプンとして知られる炭水化物ポリマーを合成する。多数の藻類種で一般的に見られる多糖は、β−1,3およびβ−1,6連結グルコース単位の直鎖ポリマーであるクリソラミナリンである。リグノセルロース系バイオマスとは異なり、微細藻類細胞は、浮揚性の単細胞生物であり、そうでなければ、陸上植物において、支持組織のために重要であるヘミセルロースおよびリグニンのような構造バイオポリマーの必要性を回避している。
[0046]炭水化物に加えて、微細藻類は、細胞代謝制御における重要な酵素、または構造細胞壁としての架橋ヒドロキシル−プロリン・リッチ糖タンパク質であるタンパク質もま
た含有する。炭水化物でのように、脂質は、細胞のエネルギー貯蔵および構造構成要素(膜)としての両方で働く。単純脂肪酸トリグリセリドは、重要なエネルギー貯蔵である。膜は主に、リン脂質および糖脂質で構築され、ここで、親水性極性リン酸または糖部分、ならびに脂肪酸アシル鎖の飽和レベルが膜の流動性を決定する。ある微生物には、デンプンが豊富な培養物は、発酵における原料として直接使用可能でありうるが、生産性を改善するためには、前処理および/または酵素消化が得策でありうる。さらに、脂質抽出後に残る、炭水化物が豊富な微細藻類残渣は、コハク酸産生のための原料でありうる。
[0047]微細藻類のいくつかの株は、脂質、例えばトリグリセリドを集積させ、これはバイオディーゼル、グリーン・ディーゼル、または多価油脂化学物質に変換可能である。脂質を回収するためのコストおよびエネルギー効率的な方法に加えて、微細藻類のために開発される変換プロセスは、有益な使用のため、他の主要構成要素−炭水化物およびタンパク質を保持することが可能でなければならない。こうした変換プロセスはまた、乾燥プロセスがエネルギー集約的であるため、湿性バイオマスを直接利用することも可能であるはずである。特定の態様において、本明細書記載の方法は、好適に、炭水化物およびタンパク質を保持し、そして湿性バイオマスを利用することが可能である。湿性材料からトリグリセリドおよび他の脂質を回収するため、細胞破壊が重要である。機械的破壊は、通常、強い剪断ストレス、超音波、または電磁場のいずれかの形で適用される。これらの力は短い範囲に渡って最も有効であるため、スラリーを、狭い、そして制限されたゾーンに通過させ、ここで強い力を適用して、ロバストな微細藻類細胞壁を破壊する。その結果、機械的破壊に基づくプロセスは、エネルギーおよび資本集約的であるとともに、スケールアップが困難である可能性もある。
[0048]他の研究者らは、脂質および/または炭水化物を回収する目的で、藻類細胞の破壊のために酵素を使用するよう試みてきている。例えば、いくつかのエンドおよびエクソグルコナーゼを含む、最大14の異なる酵素を含有する熱安定性酵素のカクテルを試みてきている。これらのカクテルは、ある程度の脂質回収を生じたが、プロテアーゼ活性がカクテル中に存在せず、そしてアミラーゼは少量でしか存在しなかった。より多量のアミラーゼを含有する1つのカクテルは、脂質放出を促進する際に比較的有効でなかった。にもかかわらず、脂質放出は、脂質量を通常、過大評価する、重量測定法によって測定され、そしてこれらの試みにおいて用いる酵素は、商業的に入手不能であった。
[0049]酵素は、以前、細胞壁を分解するために用いられてきているが、以前には、脂質の回収または炭水化物の単量体糖への分解のいずれかを可能にするとは示されてこなかった。先の試みは、アミラーゼが細胞壁分解にいかなる影響も与えないことを示してきており、アスペルギルス属(Aspergillus)種由来の溶解酵素は、藻類細胞に対しては無効であると考えられてきた。他の研究者による以前の試みとはまったく対照的に、本開示は、プロテアーゼのみでも、藻類バイオマスを消化し、そして脂質を放出する際に有効であり、こうした脂質は、相分離するか、または溶媒抽出法を用いて回収可能であることを明らかにする。非極性有機溶媒、極性および非極性有機溶媒の混合物、あるいはスイッチ可能極性溶媒を用いた溶媒抽出を通じて、脂質を回収することも可能であり、そして脂質を続いて、燃料または油脂化学物質に変換することも可能である。プロテアーゼのみの処理はまた、藻類多糖を単量体糖に部分的に加水分解する。α−アミラーゼおよびグルコアミラーゼをプロテアーゼに補充すると、同時に脂質が放出されるのに加えて、炭水化物の糖へのほぼ完全な加水分解が可能になる。プロテアーゼおよびアミラーゼの相乗作用は、ともに、藻類炭水化物の加水分解に必要なアミラーゼの量を劇的に減少させる。さらに、脂質除去後、糖が豊富な水相は、微生物によって容易に発酵可能であり、そして残渣タンパク質および他の細胞物質は、微生物増殖を支持する栄養素(窒素、リン、および他の微量栄養素)供給源として働くことも可能である。その結果、いくつかのプロセスのオプションが記載され、いくつかのプロセスは、藻類バイオマスの生化学的組成によって
多様である。
[0050]本明細書に提供するのは、脂質の放出、および単純な発酵可能糖への多糖の分解が同時に起こる、一工程を伴う酵素加水分解法である。方法は、酵素消化によって、微生物バイオマスから、脂質、糖、およびタンパク質を回収するためのコスト効率的なプロセスを提供する。これらの方法は、藻類乾燥および脂質の別個の抽出に関連するコストを取り除き、当該技術分野に知られる方法に勝る、有意なコスト上の利点を生じる。対照的に、多工程プロセスでは、乾燥藻類からの脂質抽出は、残りの残渣を酵素加水分解または酸消化に供する前に行われ、経済的に不利な結果を生じる。本開示の方法は、リグノセルラーゼ由来の酵素とは対照的に、プロテアーゼ、アミラーゼ、またはその組み合わせを含む特定の酵素カクテルを利用する。これは関与するコストをさらに減少させる。特定の態様において、すべての主要な藻類バイオポリマーの脱重合は、プロテアーゼおよびアミラーゼの混合物を含有する低コストのそして十分な酵素カクテルの使用を通じた、一工程で行われる。
[0051]本明細書記載の方法は、いかなる酸消化工程も伴わない。これは、炭水化物を加水分解するために酸消化を用いる他の方法に勝る利点を提供する。酸消化は、典型的には、発酵プロセスを阻害する糖分解由来の阻害剤を生じ、それによって、付加価値産物への糖の変換を妨害する。本明細書の方法はまた、酵素を活性化するため、イオウ含有アミノ酸である遊離システインの存在を必要としない。本明細書で用いる酵素は、消化媒体に外因性システインを添加する必要を伴わずに活性である。理論によって束縛されることは望ましくないが、これは、用いる特定のプロテアーゼの作用によると考えられる。1つの限定されない例において、プロテアーゼは微細藻類を消化する一方、同時に、タンパク質および炭水化物の少なくとも10%を加水分解する。
[0052]機械的方法ではなく、より穏やかな操作条件下で、脂質を放出させる代替法は、細胞を消化する酵素の使用を通じる。しかし、酵素に基づくプロセスの全体の経済学的実行可能性は、酵素産生のコストおよび容易さに依存する。商業的に入手可能な低コスト酵素は、したがって、最も望ましい。いくつかの商業的なα−アミラーゼは、細胞壁内で、糖タンパク質を分解する能力を示す。さらに、アルファ−アミラーゼは、細胞内デンプンをデキストリンに液化し、デキストリンはさらに、グルコアミラーゼによって糖化されて糖単量体になることも可能である。S.セレビシエ(S. cerevisiae)S288Cによるエタノール産生のための微細藻類バイオマスの酵素的前処理は、酵素加水分解の2工程:pH6.0で最初に90℃の熱安定性α−アミラーゼによる液化、次いで、pH4.5で55℃の糖化を必要とする。真菌由来のプロテアーゼは、微細藻類細胞壁中の主要構造である糖タンパク質を加水分解可能であり、そしてこうした真菌による産生において、プロテアーゼの副産物であるため、プロテアーゼ中にブレンドされたある程度のα−アミラーゼおよびグルコアミラーゼもまたある。本開示にしたがって、これらの混合酵素は、ともに、細胞壁および炭水化物を同時に破壊するように働きうる。このプロセスは、30℃〜50℃、および3〜5のpHの低温で実行可能である。さらに、大部分の糖は、1時間未満で放出される。プロテアーゼは迅速に活性を失う(大部分、2時間未満)ため、さらなる発酵における微生物の放出の邪魔をしない。
[0053]炭素供給源に加えて、窒素は、微生物細胞の増殖および代謝に必須の栄養素である。いかなる種類の窒素供給源フィード(アンモニウム、遊離アミノ酸、尿素、または酵母エキス)も、発酵率を増加させ、そして細胞増殖を改善しうる。窒素栄養素の欠如は、コハク酸形成率および収量の減少を導くであろうし、そしてこうした負の影響は、特に、培地中のコハク酸濃度がより高いレベルで必要な場合、無視できない可能性もある。産業プロセスにおいて、さらなる窒素供給源フィードが必要であり、そしてこれは、総コハク酸コストのかなりの部分に相当する。いくつかの微細藻類バイオマスは、かなり高レベル
のタンパク質(乾燥重量で20%を超える)を含有し、これは、プロテアーゼによる前処理プロセス中、遊離アミノ酸になりうる。したがって、窒素が豊富な微細藻類は、コハク酸発酵における代替低コスト窒素供給源として働きうる。
[0054]限定されない例において、アクチノバチルス・スクシノゲネス(Actinobacillus succinogenes)は、発酵における微生物として記載され、この微生物では、L−アラビノース、セロビオース、フルクトース、ガラクトース、グルコース、ラクトース、マルトース、マンニトール、キシロース等を含む、加水分解物に一般的に見られる異なる炭素供給源を効率的に発酵させる能力が柔軟である。ヘキソースおよびペントース糖の両方に関する代謝経路は、これらの糖が、大部分、スクシネートに完全に変換されることが可能であり、アセテート、ホルメート、およびアルコールが主な副産物であることを示す。しかし、アクチノバチルス・スクシノゲネス以外の微生物の使用が可能であることが理解されるものとする。適切な他の微生物には、限定されるわけではないが:ラクトバチルス属(Lactobacillus)の微生物;シュードモナス属(Pseudomonas)の微生物;バチルス属(Bacillus)の微生物;またはクロストリジウム属(Clostridia)の微生物、例えばクロストリジウム・オートエタノゲヌム(Clostridium autoethanogenum)、クロストリジウム・リュンダーリー(Clostridium ljundahlii)、またはクロストリジウム・ラグズラダレイ(Clostridium ragsdalei)が含まれる。
[0055]陸生リグノセルロース系バイオマスとは異なり、大部分の微細藻類は単細胞であり、そしてリグニンを含有しない。いくつかの藻類種は、細胞壁さえ持たない。この構造は、はるかに穏やかな条件およびより単純な前処理プロセスを可能にし、これによって、エネルギー集約プロセスにおける、より高い温度および腐食によって引き起こされるコストを減少させる。まず、微細藻類細胞壁は酸性プロテアーゼによって破壊され、この酵素は真菌から産生される低コスト酵素である。さらに、細胞において保存される炭水化物の大部分は、デンプン様多糖であり、これは、低コスト酵素、例えばα−アミラーゼおよびアミノグルコシダーゼによって、グルコース、ガラクトース、キシロース、またはマンノースのような糖単量体に加水分解されることも可能である。これらの放出された糖のすべては、酵母などの株の大部分によって直接利用されて、エタノールを産生するか、またはアクチノバチルス・スクシノゲネスに利用されてコハク酸を産生することも可能である。
[0056]1つの側面において、本明細書に記載するのは、微細藻類バイオマスのための慣用的なエネルギー集約的前処理の代わりに、最適化された酵素加水分解プロセスを用いる方法である。微細藻類のため、酵素加水分解の主な障害は、細胞内デンプン顆粒が、堅固な細胞壁内に結合され、酵素加水分解および発酵工程の前に、細胞壁を破壊して、そしてデンプンなどの多糖、構造炭水化物、および他の栄養素などを放出させる、バイオマス前処理工程が必要であることである。微細藻類の細胞壁は、細胞外マトリックス中の主な構成要素として、糖タンパク質を含有する。したがって、これらのタンパク質の分解は、全細胞壁を破壊するための重要な工程である。あるものは、細胞壁内の糖タンパク質分解に特異的なプロテアーゼ活性を示す。しかし、α−アミラーゼのみを用いて細胞壁を破壊しても、糖を高収率で回収するには十分に効率的であるにはほど遠い。この問題を解決するため、本開示の1つの態様は、α−アミラーゼを、実際に少量のα−アミラーゼおよびグルコアミラーゼもまた含有する、同じ真菌株(コウジカビ(Aspergillus oryzae))由来のプロテアーゼで置換する。この酵素混合物は、細胞壁の完全な破壊が、多糖の単量体糖への加水分解と同時に起こることを可能にする。微細藻類が特定の濃度まで増殖する間、微細藻類バイオマスを収集し、そして定着させるかまたは遠心分離することによって濃縮することも可能である。特定の態様において、次いで、クエン酸塩緩衝液(50mM)を添加することによって、スラリーのpHを約4.5に調整することも
可能である。次いで、コウジカビ由来のα−アミラーゼ(EC 3.2.1.1)およびプロテアーゼ(EC 232.752.2)、ならびにクロコウジカビ(Aspergillus niger)由来のアミログルコシダーゼ(EC 3.2.1.3)をブロスに添加して、加水分解プロセスを開始する。これらの2つの酵素は、最適な温度(30〜55℃)およびpH(3.0〜5.5)の類似の範囲を共有するため、これらを同時に添加することも可能である。
[0057]熱水前処理を用いると、多糖上の結合部位への酵素のアクセス可能性が増加することによって、酵素装填が減少し、これが次に、全プロセスをよりコスト効率的にする。リグノセルロース系バイオマスと同様、熱水前処理を適用すると、セルロースが再結晶化し、したがって、加水分解酵素がバイオポリマーに容易にアクセス可能になる。オートクレーブ装置は、最大120℃までの熱水前処理に適用可能であり、これは、微細藻類の細胞壁および細胞外マトリックスを部分的に分解するために十分に高い。この処理の後、酵素は、細胞壁が破壊されているため、細胞内多糖上の反応部位に結合するより高い確率を有する。その結果、同じ活性に到達するまでに必要となる酵素がより少なくなる。限定されない実施例によって、120℃で30分間のオートクレーブによって、同じ糖収率を達成するため、α−アミラーゼ装填を60%以上減少させることも可能である。
[0058]さらに、酵素加水分解後、微細藻類中のタンパク質内容物および他の栄養素が放出され、そして可溶化され、これは、発酵プロセスにおいて、窒素およびリン酸供給源として使用可能である。酵素加水分解後の微細藻類バイオマスの固形物残渣を遠心分離によって除去して、そしてさらなる工程において、価値が付加された産物を産生するために用いることも可能である。
[0059]ここで図1を参照すると、本明細書で提供するのは、プロテアーゼおよびアミラーゼを用いた、脂質が豊富な微細藻類の2段階酵素加水分解法である。図1のブロックフロー図は、プロテアーゼが、第一段階において、細胞破壊および脂質の回収のためにのみ用いられる、2段階プロセスを示す。抽出溶媒での処理後、必要であれば、水相をさらなるアミラーゼで処理して、さらなる多糖を単量体糖に分解する。アミラーゼでの処理は、炭水化物を単量体またはオリゴマー糖に加水分解する。有機相から蒸発を通じて脂質を回収する。水相を濾過して、タンパク質が豊富な残渣を回収する一方、可溶性糖、タンパク質、および他の細胞成分を、限定されるわけではないが、アルコール、有機酸、またはメタンなどの産物への発酵のために残しておく。あるいは、全スラリーを発酵させることも可能である。
[0060]ここで図2を参照すると、本明細書で提供するのは、プロテアーゼおよびアミラーゼの混合物を用いた、脂質が豊富な微細藻類の1段階酵素加水分解法である。図2のブロックフロー図は、プロテアーゼおよびアミラーゼの混合物での同時処理を取り込み、そして糖が豊富な加水分解物および脂質を産生する、1段階プロセスを示す。このプロセスでは、細胞消化および多糖加水分解が、単一工程で完了する。続く回収および変換経路は、2段階プロセスに関して示すものと同様である。回収された脂質は、燃料および他の油脂化学物質の産生において使用可能である一方、糖を、限定されるわけではないが、アルコール、有機酸、またはメタンなどのバイオ産物に発酵させることも可能である。
[0061]ここで図3を参照すると、本明細書で提供するのは、プロテアーゼおよびアミラーゼの混合物またはプロテアーゼのみのいずれかを用いた、脂質が豊富な微細藻類の酵素加水分解の代替法である。酵素処理後、加水分解物を、まず、残渣固形物および上清に分離する。残渣固形物は、溶媒抽出を経て、脂質を回収する一方、加水分解された糖およびタンパク質を含有する上清を、限定されるわけではないが、アルコール、有機酸、またはメタンなどのバイオ産物に発酵させる。
[0062]ここで図4を参照すると、本明細書で提供するのは、脂質が少ない微細藻類の酵素加水分解法である。これらの微細藻類は、炭水化物が豊富であるが、有意な量の脂質を含有しない。こうした微細藻類に関して、プロテアーゼのみのまたはアミラーゼと組み合わせた使用は、単量体糖としての細胞多糖の放出を達成する。酵素処理後、不溶性固形物を前もって分離し、または分離せず、加水分解物を、限定されるわけではないが、アルコール、有機酸、またはメタンなどのバイオ産物に発酵させることも可能である。図4は、この1段階プロセスに関するブロックフロー図を示す。酵素装填を減少させるため、熱処理もまた用いてもよい。
[0063]任意の適切な溶媒抽出を行って、分離を達成してもよいことが理解されるものとする。溶媒抽出は、溶媒を用いることによって、1またはそれより多い他の物質から物質を分離するための方法であり、異なる物質中の異なる化合物の可溶性の変動に頼る。抽出しようとする物質は、典型的には、液体中に溶解され、そして液体溶媒を抽出に用いる。分配されないまま放置されると、2つの別個の層が形成されるような、関心対象の物質が溶解する化合物と混ざらない溶媒を選択する。ひとたび溶媒を添加したら、2つの液体を一定の時間一緒に振盪し、そして次いで、分離するまでの時間、静置することも可能である。当業者は、溶媒の選択が、混合物中のすべての物質の化学的および物理的特性に応じるであろうことを認識するであろう。特定の方法において、異なる溶媒を用いて、いくつかの段階で溶媒抽出を行う。1つの限定されない例において、溶媒は、ヘキサンおよびイソプロパノールの混合物であるが、多くの他の極性または非極性溶媒、あるいは極性または非極性溶媒の混合物を用いてもよい。他のありうる抽出溶媒には、限定されるわけではないが:クロロホルム、メタノール、ヘプタン、ヘキサン、イソプロパノール、およびその混合物が含まれる。いくつかの限定されない例において、クロロホルムおよびメタノールの2:1(v/v)混合物を用いる。他の限定されない例において、ヘキサンおよびイソプロパノールの混合物を用いる。
[0064]特定の態様において、本明細書記載の方法は、藻類タンパク質の部分的加水分解に加えて、脂質放出、および単純な糖への炭水化物分解を同時に達成可能である。
[0065]クロレラ属(Chlorella)種およびシゾキトリウム・リマシウム(Schizochitrium limacium)が例示目的のために記載されているが、本明細書記載の方法を任意の適切な微細藻類で実行可能であることが理解されるものとする。微細藻類の50,000を超える既知の種がある。微細藻類の適切な種には、限定されるわけではないが:クロレラ属の種;スピルリナ属(Spirulina)の種;シゾキトリウム・リマシウム;ボトリオコッカス・ブラウニー(Botryococcus braunii);イソクリシス属(Isochrysis)の種、例えばイソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana);ネオクロリス・オレオアブンダンス(Neochloris oleoabundans);フェオダクチルム・トリコルヌツム(Phaeodactylum tricornutum);プレウロクリシス・カルテラエ(Pleurochrysis carterae);プリムネシウム・パルブム(Prymnesium parvum);セネデスムス・ディモルフス(Scenedesmus dimorphus);テントラセルミス・チュイ(Tetraselmis chui);およびテトラセルミス・スエシカ(Tetraselmis suecica)が含まれる。一般的に、本明細書記載の方法において、いかなる緑藻種も使用可能である。
[0066]本明細書記載の酵素的処理は、脂質の放出および単純な糖への多糖の分解を同時に行うことを可能にする。いくつかの態様において、少なくとも5%の非極性脂質が、水相から自発的に分離し、抽出工程に関する必要性を伴わずに、脂質の回収を可能にする。1つの限定されない例において、脂質の少なくとも85%が抽出され、そして単量体糖の
少なくとも99%が放出される。別の限定されない例において、タンパク質および炭水化物の少なくとも20%が加水分解される。別の限定されない例において、細胞脂質が放出される一方、他の細胞構成要素の少なくとも20%が同時に加水分解される。
[0067]方法は、例えば低温で実行可能であるなどの多くの理由で、コスト効率的である。方法は、基質のゼラチン化温度より低くても行われる。1つの限定されない例において、温度は約50℃であり、そしてpHは約4.5である。熱水処理を伴う方法の1つの限定されない例において、オートクレーブを120℃で30分間用い、そして前処理によって、酵素装填を1/3に減少させつつ、なお糖の同じ収量に達する。1つの限定されない例において、99%を超える単量体糖が2時間未満で回収され、そして脂質の99%以上が放出される。
[0068]任意の方法由来の水相を、限定されるわけではないが、アルコール、有機酸(例えばコハク酸)、またはメタンなどの産物を産生する、発酵プロセスにおいて、窒素供給源として用いることも可能である。いくつかの態様において、酵素加水分解後の微細藻類残渣を、外因性栄養素を伴わず、コハク酸窒素およびリン供給源として用いる。方法によって回収された別個の固形物は、微生物発酵として、あるいは動物飼料または肥料として、有用である。いくつかの態様において、脂質は、酵素消化後、固形物上に固着される。これが起こった場合、消化された固形物を有機溶媒で処理して、脂質を回収することも可能である。
[0069]実施例
[0070]実施例1−酵素処理法を用いた、湿性藻類バイオマスからの脂質および単量体糖の回収
[0071]これらの実験において、ATCC(MYA1381)から得た、2つの藻類株:a)クロレラ属種、SLA−04、およびb)シゾキトリウム・リマシウム、SR21を用いた。
[0072]4.5のpHに調整した50mMクエン酸緩衝液中、10%(w/v)の固形物濃度で、バイオマス消化を行った。プロテアーゼのみ、またはα−アミラーゼおよびアミログルコシダーゼ(すべてSigmaより購入)とプロテアーゼの混合物を、バイオマススラリーに添加した。酵素装填(g−バイオマスあたり)は以下の通りであった−(a)プロテアーゼ312U/g;(b)α−アミラーゼ1875U/g;および(c)グルコアミラーゼ18.75U/g。1 α−アミラーゼ単位は、pH 6.0および25℃で、1分あたり1μmolのマルトースを遊離させる酵素の量と定義され;1グルコアミラーゼ単位は、pH4.3および25℃で、1分あたり1μmolのマルトースを切断する酵素の量と定義され;そして1プロテアーゼ単位は、1分あたり1μmolのL−ロイシン−p−ニトロアニリドを加水分解する酵素の量と定義される。
[0073]藻類−酵素混合物を、200rpmで維持された振盪装置中、50℃で6時間インキュベーションした。バイオマス不含対照実験もまた行った。実験中、試料を規則的な間隔で採取して、放出された脂質および糖を測定した。
[0074]脂質回収および分析のため、ヘキサン/イソプロパノール3:2(v/v)混合物を用いた。0.5mLの溶媒混合物を、300μLの消化された試料に添加し、そして抽出を90℃で30分間行った。水素炎イオン化検出装置(FID)に連結されたガスクロマトグラフ(GC)を用いて、抽出溶媒中の脂質を分析し、そして定量化した。可溶性炭水化物分析のため、消化された試料を遠心分離し、そして0.22μm膜を通じて濾過し、そして上清を、屈折率(RI)検出装置を伴うShodex SH1011イオン交
換カラムを用いたHPLCを通じて、糖に関して分析した。
[0075]別の実験セットにおいて、SLA−04の酵素消化後、消化されたスラリーを遠心分離し、そして残渣固体をヘキサン/イソプロパノールで抽出した。
[0076]図5A〜5Bから、どちらの藻類材料(SLA−04およびSR−21)から放出された脂質の率および度合いも、プロテアーゼのみでの処理、ならびにプロテアーゼおよびアミラーゼの混合物での処理において、類似であることがわかる。酵素処理の結果として、SLA−04に関して、バイオマス中に含有される脂質の>85%(脂肪酸メチルエステル−FAMEに関して測定)が放出された(そして抽出された)。SR−21に関して、>72%の細胞脂質が放出された。酵素不含対照処理は、いかなる抽出可能な脂質も放出しなかった。
[0077]図6は、消化中に放出された脂質の少なくとも一部が、油相に分離され、そして溶媒抽出の必要性を伴わずに分離可能であることを示す。図7A〜7Bは、抽出後に回収される脂質の大部分がトリグリセリドであったことを示す。図8は、脂質の少なくとも部分が、残渣固形物と会合したままであり、そして別個に抽出可能であることを示す。図8中のy軸は、藻類バイオマスの最初の質量(フィード)に比較した、残渣固形物から回収された脂質の質量を示す。
[0078]酵素処理後、可溶化単量体糖濃度を、消化されたスラリー中で測定し、炭水化物加水分解もまた、処理中に生じるかどうかを決定した。図9A〜9Bは、プロテアーゼのみでの処理、ならびにプロテアーゼおよびアミラーゼの混合物での処理が、両方の藻類バイオマス試料(SLA−04およびSR−21)からの単量体糖の放出を生じたことを示す。しかし、糖放出の度合いは、アミラーゼを含有した処理において、より大きかった。グルコースは、より少量のキシロースとともに回収される主要な糖であった。これらの酵素調製物のゲル電気泳動(図10)は、商業的プロテアーゼ中に、ある程度のアミラーゼ活性がありうることを示し、これが、アミラーゼの非存在下であっても、ある程度の加水分解を生じた可能性もある。
[0079]実施例2−酵素消化による微細藻類バイオマスからの糖回収
[0080]プロテアーゼ、α−アミラーゼ、およびグルコアミラーゼ、ならびにその組み合わせを用いて、酵素加水分解実験を行った。脂質が少ない藻類バイオマス(脂質含量<5%(w/w))を商業的な廃水処理施設から得た。バイオマスは、24.5%(w/w)の炭水化物含量を有した。4.5のpH、16%(w/v)の固形物装填で、消化実験を行った。各酵素の量は、以下の通りに固定した:2.5kUプロテアーゼ、5kUのα−アミラーゼ、および150Uのグルコアミラーゼ。酵素加水分解反応を、200rpm、55℃で2時間攪拌する密封血清バイアル中で行った。インキュベーション期間終了時に試料を収集して、そして屈折率(RI)検出装置を伴うShodex SH1011イオン交換カラムを用いたHPLCによって分析した。
[0081]結果(図11)は、プロテアーゼのみでの処理が、単量体糖の有意な量の放出を生じたことを示す。理論によって束縛されることは望ましくないが、これは、おそらく、実施例1で先に論じたように(図10)、この酵素調製物中に少量のα−アミラーゼおよびグルコアミラーゼが存在するためであると考えられる。さらなるα−アミラーゼとともにプロテアーゼを補充しても糖収率は増加せず、この系ではα−アミラーゼ活性が制限しているのではなかったことが示された。しかし、グルコアミラーゼを、プロテアーゼ、またはプロテアーゼおよびα−アミラーゼの混合物に添加すると、利用可能な多糖の単量体糖へのほぼ完全な分解が生じ、商業的プロテアーゼおよびα−アミラーゼ調製物の両方で、不十分なグルコアミラーゼ活性しか利用可能でなかったことが示された。α−アミラーゼおよびグルコアミラーゼの混合物で実行した消化実験は、個々の酵素で実行する消化よ
りも優れた収率を示した。しかし、プロテアーゼを含有する処理よりもより少ない収率が観察され、細胞内炭水化物にアクセスするには、プロテアーゼ活性が必要であるか、またはこれらの実験で用いられるα−アミラーゼ濃度がすべての利用可能な多糖を分解するには不十分であったかいずれかであることが示された。
[0082]さらなるα−アミラーゼ(グルコアミラーゼと組み合わせて)が、より高い単量体糖回収を生じるかどうかを決定するため、0.5〜15kUの間のα−アミラーゼ装填で実験を行った。150Uのグルコアミラーゼもまた溶液に添加した。これらの実験の結果(図13)は、5kU未満のα−アミラーゼ装填では、60%未満のバイオマス炭水化物が単量体糖に変換されたことを示す。しかし、15kUのα−アミラーゼ装填では、ほぼ90%の多糖が糖に加水分解された。これらの結果は、α−アミラーゼおよびグルコアミラーゼのレベルを適切に調整することによって、藻類多糖のほぼ完全な加水分解が可能であることを示す。この酵素の組み合わせの最適pHを決定するため、3〜6の間の培地pH値で、1kU α−アミラーゼおよび150Uグルコアミラーゼの混合物を用いて、実験を行った。これらの実験の結果(図13)は、4〜5の間のpHで、最高の活性が得られることを示す。
[0083]上に論じるように、図11に提示する結果から、藻類炭水化物加水分解はまた、プロテアーゼおよびグルコアミラーゼの混合物を用いても達成可能である。糖回収に対するプロテアーゼの効果を決定するため、0〜3kUの間で多様であるプロテアーゼ装填で、そして150Uの固定されたグルコアミラーゼ装填で、実験を行った。結果は、1.25kUを超えるプロテアーゼ装填では、藻類炭水化物の90%以上が単量体糖に変換可能であることを示す(図14)。
[0084]実施例3:熱水前処理後の酵素消化による、微細藻類バイオマスからの糖回収
[0085]熱水前処理を酵素消化と組み合わせて用いて、糖回収のための酵素必要性を低下させる潜在的可能性を評価した。熱水処理のため、藻類スラリー(16%w/w)を密封血清瓶に装填し、そして120℃で30分間オートクレーブした。室温まで冷却した後、α−アミラーゼおよびグルコアミラーゼの混合物を用いて(pH=4.5)、前処理したスラリーを55℃で6時間消化した。150Uのグルコアミラーゼ装填を維持しながら、0.5〜15kUの間のα−アミラーゼ装填で、一連の消化を行った。実験終了時に単量体糖放出を測定した。図15に見られるように、前処理によって、熱で前処理されなかった対照に比較して、酵素消化可能性が改善された。その結果、5kUという低いα−アミラーゼ装填で、最大90%の糖回収が達成可能であった。
[0086]実施例4:消化された微細藻類バイオマスのコハク酸への発酵
[0087]4つの条件下、対照としての3つのモデル糖溶液とともに、酵素的に加水分解された藻類バイオマスに関して、コハク酸発酵実験を行った。まず、実施例2に記載するように、プロテアーゼおよびグルコアミラーゼの混合物を用いて、16%(w/v)藻類バイオマススラリーを50℃で2時間消化した。消化されたスラリーの一部を遠心分離して(5000rpm、10分間)、固形物を分離した。全消化物(digestate)で、ならびに上清で、さらなる栄養素供給源として酵母エキス(2g/L)を含む場合および含まない場合の両方で、発酵を実行した。対照として、消化物と同じ糖濃度を含むモデル糖溶液もまた、2g/L、5g/L、または10g/Lの酵母エキスとともに、発酵させた。
[0088]アクチノバチルス・スクシノゲネス型株130Z(ATCC 55618)を発酵生物として用いた。この株をトリプティック・ソイ・ブロス中で培養し、そして第二世代液体培養を接種物として用いた。MgCO(〜40g/L)をpH緩衝液として発酵培地に添加した。4%(v/v)接種物を用い、そして無菌二酸化炭素を含有する50m
L血清瓶中で、37℃で発酵を行った。硝酸を亜硝酸に変換するカドミウム還元法を用いて、分光光度計によって決定されるように、可溶性窒素を分析した。試料中の糖および有機酸をHPLCを通じて分析した。
[0089]酵母エキスを加水分解物に外部から補充しても、コハク酸発酵には有意な相違は示されなかった(図16A〜16B)。微細藻類加水分解物からのコハク酸産生は、窒素供給源としての10g/L酵母エキスを含有するモデル糖対照発酵に類似であった。したがって、加水分解物自体において利用可能である窒素および微量栄養素は、酵母エキスによって提供されるものと匹敵した。したがって、藻類バイオマス加水分解物のコハク酸発酵のため、外部窒素供給源または他の栄養素はまったく必要ではない。
[0090]表1 発酵中の窒素含有量変化
Figure 0006876765
[0091]表1に示すように、固形物残渣を含む微細藻類加水分解物の発酵後に残る可溶性窒素含量は、清澄化された加水分解物よりも高かった。これは、可溶性窒素が発酵中に固形物残渣から放出されることを示す。
[0092]本明細書に開示する方法および産物の特定の態様は、上記実施例に定義される。これらの実施例は、本発明の特定の態様を示す一方、例示のためにのみ提供されることを理解しなければならない。上記考察およびこれらの実施例から、当業者は本開示の本質的な特性を確認可能であり、そしてその精神および範囲から逸脱することなく、多様な使用および条件に対して、本明細書記載の方法を適用するため、多様な変更および修飾を行うことも可能である。本開示の本質的な範囲から逸脱することなく、多様な変更を行うことが可能であり、そしてその要素を同等物で置換することも可能である。さらに、本質的な範囲から逸脱することなく、本開示の解説に特定の状況または材料を適応させるため、多くの修飾を行うことも可能である。

Claims (18)

  1. 以下のことを含む、微細藻類から単量体糖を得る方法:
    微細藻類を酵素の混合物により一工程で消化して、消化されたバイオマスを産生すること、ここで酵素混合物は少なくとも1つのプロテアーゼおよび少なくとも1つのグルコアミラーゼを含み;そして
    その後で、消化されたバイオマスを固形物相および水相に分離すること、ここで、固形物相は脂質を含有し、そして水相は炭水化物および単量体糖を含有し;
    藻類炭水化物から単量体糖への変換が90%以上である。
  2. 固形物相および水相の一方または両方をさらにプロセシングおよび/または分離して、脂質、固形物、または生物由来(bio−based)産物を得る工程を含む、請求項1の方法。
  3. さらなるプロセシングおよび/または分離工程が、固形物相を脂質−溶媒分離処理に供して脂質を回収することを含む、請求項2の方法。
  4. さらなるプロセシングおよび/または分離工程が、水相を微生物発酵に供して、生物由来産物を得ることを含む、請求項の方法。
  5. 生物由来産物がコハク酸を含む、請求項4の方法。
  6. 有機溶媒で、固形物から脂質を抽出する工程をさらに含む、請求項1の方法。
  7. 微細藻類が、脂質が豊富な湿性微細藻類である、請求項1の方法。
  8. 以下のことを含む、微細藻類から単量体糖を得る方法:
    少なくとも1つのプロテアーゼおよび少なくとも1つのグルコアミラーゼを含む酵素混合物により、脂質含量5%w/w未満の微細藻類を一工程で消化して、消化されたバイオマスを産生すること;そして
    その後で、消化されたバイオマスを固形物相および水相に分離すること、ここで固形物相は脂質を含有し、そして水相は炭水化物および単量体糖を含有し;
    藻類炭水化物から単量体糖への変換が90%以上である。
  9. 固形物相および水相のいずれかをさらに分離および/またはプロセシングして、脂質、固形物、または生物由来産物を得る工程をさらに含む、請求項8の方法。
  10. さらなる分離および/またはプロセシング工程が、水相を微生物発酵に供して、生物由来産物を得ることを含む、請求項8の方法。
  11. さらなる分離および/またはプロセシング工程が、固形物相を脂質−溶媒分離処理に供して脂質を回収することを含む、請求項8の方法。
  12. 酵素の少なくとも一つが真菌由来である、請求項1の方法。
  13. 混合物がグルコアミラーゼを150Uの量で含む、請求項1の方法。
  14. 混合物がプロテアーゼを1.25kUを超える量で含む、請求項1の方法。
  15. 混合物が少なくとも一つのα−アミラーゼをさらに含む、請求項1の方法。
  16. グルコアミラーゼが混合物中に150Uの量で存在する、請求項8の方法。
  17. プロテアーゼが混合物中に1.25kUを超える量で存在する、請求項8の方法。
  18. 酵素混合物が少なくとも一つのα−アミラーゼをさらに含む、請求項8の方法。
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