JP6864203B1 - 疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し機構、疲労亀裂の補修用くさび部材の装着方法、及び疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し方法 - Google Patents

疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し機構、疲労亀裂の補修用くさび部材の装着方法、及び疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し方法 Download PDF

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Abstract

【課題】疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し機構、疲労亀裂の補修用くさび部材の装着方法、及び疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し方法を提供する。【解決手段】疲労亀裂2に対して設けたストップホール3にはめ込んで構造物1の応力変動幅を抑制するための第1斜面部品11と、第2斜面部品12と、第2斜面部品12が第1斜面部品11上を摺動しせり上がる方向の荷重を付与する装着荷重付与手段を備えた補修用くさび部材10の取り外しに用いる取り外し機構であって、第2斜面部品12が第1斜面部品11上を摺動しずり下がる方向の荷重を付与する取り外し荷重付与手段(ボルト14)を備え、補修用くさび部材10のストップホール3からの取り外し時に、取り外し荷重付与手段(ボルト14)により取り外し荷重を付与する。【選択図】図1

Description

本発明は、船舶、海洋構造物、橋梁、道路、車輌、航空機、又は輸送・工作機械等の各種構造物に生じる疲労亀裂に適用する、疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し機構、疲労亀裂の補修用くさび部材の装着方法、及び疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し方法に関する。
船舶、海洋構造物、橋梁等の金属製構造物において疲労亀裂が発見された場合には、そのまま亀裂が進展し続けて重大な損傷事故に至ることがないよう、適切な対策を講じる必要がある。
しかし、稼働中又は供用中の構造物において大がかりな恒久的対策を講じることは困難な場合が多い。特に溶接やガウジング等の火気を伴う作業が禁じられた区域等においては、とりあえず施工が容易な応急処置を施しておき、次回の入渠時や大規模補修時等、恒久的対策が可能となるタイミングまで経過を見ながら何とか持たせるというのが現実的な対処方法となっている。
図18は疲労亀裂の補修用くさび部材をストップホールにはめ込んだ状態を示す図であり、図18(a)は正面図、図18(b)はB−B’断面図、図18(c)はA−A’断面図である。構造を分かりやすくするため、図18(b)(c)においては斜面部品及び母材板を断面で表し、ボルトは見取り図としている。
図18は特許文献1の図8を基にしている。特許文献1には、ボルト雌ねじ13が形成された第1斜面部品11と、第1斜面部品11上に摺動可能に当接する第2斜面部品12と、第1斜面部品11のボルト雌ねじ13に螺入するボルト14で構成される補修用部材(補修用くさび部材)10が開示されている。この補修用部材10を、母材板1に亀裂が生じた際に設けたストップホール3又はウェッジホールにはめ込んでくさび荷重Wを付与しておくことにより、孔端部の応力変動幅を抑制し、孔端部からの亀裂再発を防ぐことができる。
しかし、補修用部材を設置時に誤って締め込んでしまった場合や、設置後に大きなくさび荷重Wが作用した場合等は、補修用部材10をストップホール3又はウェッジホールから容易には取り外せない場合がある。
ここで、特許文献2には、柱梁接合構造における楔リングの抜き外しに用いる取外し工具が開示されている。
また、特許文献3には、楔形駆動部材、下部楔形受圧部材、上部楔形受圧部材、板状沓、反力受手段、駆動手段、及びストッパー手段を備え、扛上後に駆動手段を取り外し可能である楔形ジャッキ装置が開示されている。
特開2018−140488号公報 特開2001−105341号公報 特開平8−324980号公報
特許文献2、3には、部材の取り外しに関する記載はあるが、いずれも、ストップホール又はウェッジホールにはめ込んだ第1斜面部品及び第2斜面部品を有する疲労亀裂の補修用部材の取り外しに関するものではない。
そこで本発明は、第1斜面部品及び第2斜面部品を有する補修用くさび部材を、ストップホール又はウェッジホールから安全かつ確実に取り外すことができる疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し機構、疲労亀裂の補修用くさび部材の装着方法、及び疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し方法を提供することを目的とする。
請求項1記載に対応した疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し機構においては、構造物に生じた疲労亀裂に対して設けたストップホール及び/又はウェッジホールにはめ込んで構造物の応力変動幅を抑制するための斜面を有した第1斜面部品と、第1斜面部品上を摺動する斜面を有した第2斜面部品と、第2斜面部品が第1斜面部品上を摺動しせり上がる方向の荷重を付与する装着荷重付与手段を備えた補修用くさび部材の取り外しに用いる取り外し機構であって、第2斜面部品が第1斜面部品上を摺動しずり下がる方向の荷重を付与する取り外し荷重付与手段を備え、補修用くさび部材のストップホール及び/又はウェッジホールからの取り外し時に、取り外し荷重付与手段により取り外し荷重を付与することを特徴とする。
請求項1に記載の本発明によれば、補修用くさび部材のストップホール及び/又はウェッジホールからの取り外し時に、取り外し荷重付与手段で取り外し荷重を付与することにより、補修用くさび部材を安全かつ確実に取り外すことができる。
請求項2記載の本発明は、装着荷重付与手段として、第1斜面部品に形成されたボルト雌ねじに嵌合する第2斜面部品を離隔する方向に離隔荷重を付与するボルトと、取り外し荷重付与手段として、第1斜面部品と第2斜面部品が近接する方向に近接荷重を付与する近接荷重付与手段を備え、補修用くさび部材のストップホール及び/又はウェッジホールからの取り外し時に、近接荷重付与手段により近接荷重を付与することを特徴とする。
請求項2に記載の本発明によれば、取り外し時に近接荷重付与手段で近接荷重を付与することにより、補修用くさび部材を安全かつ確実に取り外すことができる。
請求項3記載の本発明は、近接荷重付与手段として、第1斜面部品と第2斜面部品とを係止する係止手段を兼ねた取り外し用ボルトと、第1斜面部品に開けた取り外し用ボルトが自在に貫通する長穴と、第2斜面部品に形成した取り外し用ボルトが嵌合する取り外し用ボルト雌ねじとを有したことを特徴とする。
請求項3に記載の本発明によれば、長穴を通して取り外し用ボルト雌ねじに嵌合させた取り外し用ボルトを回転させることにより近接荷重を付与し、第2斜面部品を第1斜面部品に近接する方向に引き寄せることができる。また、取り外し用ボルトを係止手段として用いることにより、ストップホール及び/又はウェッジホールにはめ込まれた第2斜面部品の脱落を防止できる。
請求項4記載の本発明は、近接荷重付与手段として、端部に雄ねじを有し第2斜面部品の周囲に装着されるU字形棒と、第2斜面部品を挟みこむために第1斜面部品に当接しU字形棒が貫通する貫通穴を有した板と、U字形棒の雄ねじに嵌合するナットとを有したことを特徴とする。
請求項4に記載の本発明によれば、第1斜面部品及び第2斜面部品をU字形棒と板で挟んでナットを締めることにより近接荷重を付与し、第2斜面部品を第1斜面部品の方向に引き寄せることができる。
請求項5記載の本発明は、装着荷重付与手段として、第1斜面部品と第2斜面部品が近接する方向に近接荷重を付与する近接荷重付与手段と、取り外し荷重付与手段として、第1斜面部品に形成されたボルト雌ねじに嵌合する第2斜面部品が離隔する方向に離隔荷重を付与するボルトを備え、補修用くさび部材のストップホール及び/又はウェッジホールからの取り外し時に、ボルトにより離隔荷重を付与することを特徴とする。
請求項5に記載の本発明によれば、取り外し時にボルトで離隔荷重を付与することにより、補修用くさび部材を安全かつ確実に取り外すことができる。
請求項6記載の本発明は、近接荷重付与手段として、第1斜面部品と第2斜面部品の周囲に装着され張力を発生する弾性バンドを備えたことを特徴とする。
請求項6に記載の本発明によれば、コンパクトな構成で簡便に近接荷重を常時付与することができる。また、第1斜面部品と第2斜面部品が弾性バンドで結ばれるので、補修用くさび部材をストップホール及び/又はウェッジホールへ装着する作業が容易になると共に、第2斜面部品の脱落を防止して安全に使用できる。
請求項7記載の本発明は、近接荷重付与手段として、第1斜面部品と第2斜面部品の周囲に装着され張力を発生する弾性バンドと、第1斜面部品に開けた長穴に貫通する初期締め付け用ボルトと、第2斜面部品に形成した初期締め付け用ボルトが嵌合する初期締め付け用ボルト雌ねじを備えたことを特徴とする。
請求項7に記載の本発明によれば、弾性バンドと初期締め付け用ボルトによって近接荷重を付与することができる。また、第1斜面部品と第2斜面部品が弾性バンド及び初期締め付け用ボルトで結ばれるので、補修用くさび部材をストップホール及び/又はウェッジホールへ装着する作業が容易になると共に、第2斜面部品の脱落を防止して安全に使用できる。
請求項8記載の本発明は、近接荷重付与手段として、端部に雄ねじを有し第2斜面部品の周囲に装着されるU字形棒と、第2斜面部品を挟みこむために第1斜面部品に当接しU字形棒が貫通する貫通穴を有した板と、U字形棒の雄ねじに嵌合するナットと、板とナットの間に装着されるばねを備えたことを特徴とする。
請求項8に記載の本発明によれば、ナットを締め付けてばねを圧縮させることで近接荷重を常時付与することができる。また、第1斜面部品と第2斜面部品がU字形棒で結ばれるので、第2斜面部品の脱落を防止して安全に使用できる。
請求項9記載に対応した疲労亀裂の補修用くさび部材の装着方法においては、疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し機構を用いた補修用くさび部材の装着方法であって、第1斜面部品の上に第2斜面部品を載置する載置ステップと、取り外し用ボルトを第1斜面部品の長穴に通して先端を第2斜面部品の取り外し用ボルト雌ねじに回し入れ、第1斜面部品と第2斜面部品を係止させる係止ステップと、係止された第1斜面部品と第2斜面部品をストップホール及び/又はウェッジホールにはめ込むはめ込みステップと、ボルトを回して離隔荷重を付与し、第2斜面部品を第1斜面部品上にせり上がらせてくさび荷重を発生させるくさび荷重発生ステップを備えたことを特徴とする。
請求項9に記載の本発明によれば、取り外し用ボルトを用いた係止ステップを有することで、ストップホール及び/又はウェッジホールにはめ込む際における第2斜面部品の第1斜面部品に対する相対的位置決めを容易かつ確実に行い、適切なくさび荷重を発生させることができる。
請求項10記載の本発明は、くさび荷重発生ステップの後、取り外し用ボルトを引き続き係止手段として用いるかを判断し、用いない場合は取り外し用ボルトを一旦外す取り外し用ボルトの扱い判断ステップを備えたことを特徴とする。
請求項10に記載の本発明によれば、必要に応じ取り外し用ボルトを外すことで、第2斜面部品の第1斜面部品に対する相対的位置の変動を妨げず、ストップホール及び/又はウェッジホールの開口変位に追随させることができる。
請求項11記載に対応した疲労亀裂の補修用くさび部材の装着方法においては、疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し機構を用いた補修用くさび部材の装着方法であって、第1斜面部品の上に第2斜面部品を載置する載置ステップと、第1斜面部品と第2斜面部品の周囲に弾性バンドを掛け回す弾性バンド装着ステップと、ボルトをねじ込む方向に操作し、第1斜面部品と第2斜面部品の位置関係を調節する位置調節ステップと、弾性バンドの掛け回された第1斜面部品と第2斜面部品をストップホール及び/又はウェッジホールにはめ込むはめ込みステップと、ボルトを緩める方向に操作して弾性バンドの張力により第2斜面部品を第1斜面部品上にせり上がらせてくさび荷重を発生させるくさび荷重発生ステップを備えたことを特徴とする。
請求項11に記載の本発明によれば、第1斜面部品と第2斜面部品の周囲に弾性バンドを掛け回す弾性バンド装着ステップと、ボルトを用いた位置調節ステップを有することで、ストップホール及び/又はウェッジホールにはめ込む際における第2斜面部品の第1斜面部品に対する相対的位置決めを容易かつ確実に行い、適切なくさび荷重を発生させることができる。また、ストップホール及び/又はウェッジホールにはめ込んだ補修用くさび部材に対し、弾性バンドの張力により近接荷重を常時付与することができる。
請求項12記載に対応した疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し方法においては、疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し機構を利用した補修用くさび部材の取り外し方法であって、第2斜面部品に離隔荷重を付与しているボルトを緩めるボルト弛緩ステップと、近接荷重付与手段を操作して近接荷重を付与する近接荷重付与ステップと、近接荷重付与手段をさらに操作して補修用くさび部材の全体をストップホール及び/又はウェッジホールから取り外すくさび部材取り外しステップを備えたことを特徴とする。
請求項12に記載の本発明によれば、近接荷重付与手段を操作することにより、補修用くさび部材を安全かつ確実に取り外すことができる。
請求項13記載の本発明は、近接荷重付与ステップにおいて、取り外し用ボルトを取り外し用ボルト雌ねじにねじ込み第1斜面部品と第2斜面部品が近接する方向に近接荷重を付与することを特徴とする。
請求項13に記載の本発明によれば、長穴を通して取り外し用ボルト雌ねじに嵌合させた取り外し用ボルトを回転させることにより、第2斜面部品を第1斜面部品の方向に引き寄せることができる。
請求項14記載の本発明は、取り外し用ボルトを一旦取り外している場合に、近接荷重付与ステップ以前において取り外し用ボルトを取り外し用ボルト雌ねじに嵌合させることを特徴とする。
請求項14に記載の本発明によれば、予め取り外し用ボルト雌ねじに嵌合させることにより、近接荷重の付与に備えることができる。
請求項15記載の本発明は、近接荷重付与ステップにおいて、U字形棒をストップホール及び/又はウェッジホールと第1斜面部品及び第2斜面部品との間から差し込み第2斜面部品の裏側に引っ掛け、板を第1斜面部品に当接させて貫通穴から端部を前面に臨ませて装着し、端部の雄ねじにナットを嵌合させてねじ込み、板を介して第1斜面部品と第2斜面部品が近接する方向に近接荷重を付与することを特徴とする。
請求項15に記載の本発明によれば、第1斜面部品及び第2斜面部品をU字形棒と板で挟んでナットを締めることにより近接荷重を付与し、第2斜面部品を第1斜面部品の方向に引き寄せることができる。
請求項16記載の本発明は、近接荷重付与ステップにおいて、近接荷重を付与しても第2斜面部品が動かない場合に、近接荷重付与手段に付勢荷重を付与する付勢手段を装着する付勢手段装着ステップをさらに備え、付勢手段にて第1斜面部品と第2斜面部品が近接する方向に付勢荷重を常時付与し続けることにより、構造物に作用する確率的な外荷重により補修用くさび部材の全体をストップホール及び/又はウェッジホールから取り外し可能とすることを特徴とする。
請求項16に記載の本発明によれば、ストップホール及び/又はウェッジホールに過大な引張荷重が作用した場合にくさび荷重が解放され、近接荷重付与手段に付与した付勢荷重によって第2斜面部品を第1斜面に引き寄せることができる。
請求項17記載の本発明は、付勢手段として、コイルばね、もしくは板ばねを用いることを特徴とする。
請求項17に記載の本発明によれば、簡単な構成により適切な付勢荷重を常時付与し続けることができる。
請求項18記載の本発明は、近接荷重付与ステップにおいて、近接荷重を付与しても第2斜面部品が動かない場合に、構造物に強制的な外荷重を作用させ、補修用くさび部材の全体をストップホール及び/又はウェッジホールから取り外し可能とすることを特徴とする。
請求項18に記載の本発明によれば、強制的な外荷重を作用させることにより早期に補修用くさび部材を取り外すことができる。
請求項19記載に対応した疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し方法においては、疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し機構を利用した補修用くさび部材の取り外し方法であって、第1斜面部品に嵌合させたボルトの先端が第2斜面部品に当接するまでボルトをねじ込み離隔荷重を発生させる離隔荷重付与ステップと、ボルトをさらにねじ込んで第2斜面部品の動きを観察する動き観察ステップと、第2斜面部品が無理なく動くかを判断する動き判断ステップと、無理なく動く場合は、ボルトをくさび荷重が解放されるまで操作して、補修用くさび部材の全体をストップホール及び/又はウェッジホールから取り外すくさび部材取り外しステップを備えたことを特徴とする。
請求項19に記載の本発明によれば、ボルトにより離隔荷重を発生させ、第2斜面部品が無理なく動く場合に補修用くさび部材を取り外すことにより、補修用くさび部材を安全かつ確実に取り外すことができる。
請求項20記載の本発明は、動き判断ステップの判断結果として、無理なく動かないと判断した場合は、さらにストップホール及び/又はウェッジホールを上下に広げる荷重を人為的に負荷できるかを判断する人為的負荷判断ステップをさらに備え、人為的に負荷できることが可能な場合は、上下に広げる荷重を人為的に負荷し、動き観察ステップと、動き判断ステップを繰り返すことを特徴とする。
請求項20に記載の本発明によれば、人為的な負荷を構造物に作用させることにより早期に補修用くさび部材を取り外すことができる。
請求項21記載の本発明は、人為的負荷判断ステップでの判断として、人為的に負荷できることが不可能な場合は、ボルトに付勢手段を装着し第1斜面部品と第2斜面部品の間に離隔荷重を常時付与する離隔荷重常時付与ステップと、ストップホール及び/又はウェッジホールを設けた構造物に稼働時の外力が作用する状態で放置する放置ステップと、放置後の一定期間後に第2斜面部品の作動を判断する第2斜面部品作動判断ステップをさらに備え、第2斜面部品の作動があったと判断した場合は、くさび部材取り外しステップを実行し、第2斜面部品の作動がなかったと判断した場合は、放置ステップと第2斜面部品作動判断ステップを繰り返すことを特徴とする。
請求項21に記載の本発明によれば、ストップホール及び/又はウェッジホールに過大な引張荷重が作用した場合にくさび荷重が解放され、ボルトに付与した付勢荷重によって第2斜面部品を第1斜面部品から遠ざけることができる。
本発明の疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し機構によれば、補修用くさび部材のストップホール及び/又はウェッジホールからの取り外し時に、取り外し荷重付与手段で取り外し荷重を付与することにより、補修用くさび部材を安全かつ確実に取り外すことができる。
また、装着荷重付与手段として、第1斜面部品に形成されたボルト雌ねじに嵌合する第2斜面部品を離隔する方向に離隔荷重を付与するボルトと、取り外し荷重付与手段として、第1斜面部品と第2斜面部品が近接する方向に近接荷重を付与する近接荷重付与手段を備え、補修用くさび部材のストップホール及び/又はウェッジホールからの取り外し時に、近接荷重付与手段により近接荷重を付与する場合には、取り外し時に近接荷重付与手段で近接荷重を付与することにより、補修用くさび部材を安全かつ確実に取り外すことができる。
また、近接荷重付与手段として、第1斜面部品と第2斜面部品とを係止する係止手段を兼ねた取り外し用ボルトと、第1斜面部品に開けた取り外し用ボルトが自在に貫通する長穴と、第2斜面部品に形成した取り外し用ボルトが嵌合する取り外し用ボルト雌ねじとを有した場合には、長穴を通して取り外し用ボルト雌ねじに嵌合させた取り外し用ボルトを回転させることにより近接荷重を付与し、第2斜面部品を第1斜面部品に近接する方向に引き寄せることができる。また、取り外し用ボルトを係止手段として用いることにより、ストップホール及び/又はウェッジホールにはめ込まれた第2斜面部品の脱落を防止できる。
また、近接荷重付与手段として、端部に雄ねじを有し第2斜面部品の周囲に装着されるU字形棒と、第2斜面部品を挟みこむために第1斜面部品に当接しU字形棒が貫通する貫通穴を有した板と、U字形棒の雄ねじに嵌合するナットとを有した場合には、第1斜面部品及び第2斜面部品をU字形棒と板で挟んでナットを締めることにより近接荷重を付与し、第2斜面部品を第1斜面部品の方向に引き寄せることができる。
また、装着荷重付与手段として、第1斜面部品と第2斜面部品が近接する方向に近接荷重を付与する近接荷重付与手段と、取り外し荷重付与手段として、第1斜面部品に形成されたボルト雌ねじに嵌合する第2斜面部品が離隔する方向に離隔荷重を付与するボルトを備え、補修用くさび部材のストップホール及び/又はウェッジホールからの取り外し時に、ボルトにより離隔荷重を付与する場合には、取り外し時にボルトで離隔荷重を付与することにより、補修用くさび部材を安全かつ確実に取り外すことができる。
また、近接荷重付与手段として、第1斜面部品と第2斜面部品の周囲に装着され張力を発生する弾性バンドを備えた場合には、コンパクトな構成で簡便に近接荷重を常時付与することができる。また、第1斜面部品と第2斜面部品が弾性バンドで結ばれるので、補修用くさび部材をストップホール及び/又はウェッジホールへ装着する作業が容易になると共に、第2斜面部品の脱落を防止して安全に使用できる。
また、近接荷重付与手段として、第1斜面部品と第2斜面部品の周囲に装着され張力を発生する弾性バンドと、第1斜面部品に開けた長穴に貫通する初期締め付け用ボルトと、第2斜面部品に形成した初期締め付け用ボルトが嵌合する初期締め付け用ボルト雌ねじを備えた場合には、弾性バンドと初期締め付け用ボルトによって近接荷重を付与することができる。また、第1斜面部品と第2斜面部品が弾性バンド及び初期締め付け用ボルトで結ばれるので、補修用くさび部材をストップホール及び/又はウェッジホールへ装着する作業が容易になると共に、第2斜面部品の脱落を防止して安全に使用できる。
また、近接荷重付与手段として、端部に雄ねじを有し第2斜面部品の周囲に装着されるU字形棒と、第2斜面部品を挟みこむために第1斜面部品に当接しU字形棒が貫通する貫通穴を有した板と、U字形棒の雄ねじに嵌合するナットと、板とナットの間に装着されるばねを備えた場合には、ナットを締め付けてばねを圧縮させることで近接荷重を常時付与することができる。また、第1斜面部品と第2斜面部品がU字形棒で結ばれるので、第2斜面部品の脱落を防止して安全に使用できる。
また、本発明の疲労亀裂の補修用くさび部材の装着方法によれば、取り外し用ボルトを用いた係止ステップを有することで、ストップホール及び/又はウェッジホールにはめ込む際における第2斜面部品の第1斜面部品に対する相対的位置決めを容易かつ確実に行い、適切なくさび荷重を発生させることができる。
また、くさび荷重発生ステップの後、取り外し用ボルトを引き続き係止手段として用いるかを判断し、用いない場合は取り外し用ボルトを一旦外す取り外し用ボルトの扱い判断ステップを備えた場合には、必要に応じ取り外し用ボルトを外すことで、第2斜面部品の第1斜面部品に対する相対的位置の変動を妨げず、ストップホール及び/又はウェッジホールの開口変位に追随させることができる。
また、本発明の疲労亀裂の補修用くさび部材の装着方法によれば、第1斜面部品と第2斜面部品の周囲に弾性バンドを掛け回す弾性バンド装着ステップと、ボルトを用いた位置調節ステップを有することで、ストップホール及び/又はウェッジホールにはめ込む際における第2斜面部品の第1斜面部品に対する相対的位置決めを容易かつ確実に行い、適切なくさび荷重を発生させることができる。また、ストップホール及び/又はウェッジホールにはめ込んだ補修用くさび部材に対し、弾性バンドの張力により近接荷重を常時付与することができる。
また、本発明の疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し方法によれば、近接荷重付与手段を操作することにより、補修用くさび部材を安全かつ確実に取り外すことができる。
また、近接荷重付与ステップにおいて、取り外し用ボルトを取り外し用ボルト雌ねじにねじ込み第1斜面部品と第2斜面部品が近接する方向に近接荷重を付与する場合には、長穴を通して取り外し用ボルト雌ねじに嵌合させた取り外し用ボルトを回転させることにより、第2斜面部品を第1斜面部品の方向に引き寄せることができる。
また、取り外し用ボルトを一旦取り外している場合に、近接荷重付与ステップ以前において取り外し用ボルトを取り外し用ボルト雌ねじに嵌合させる場合には、予め取り外し用ボルト雌ねじに嵌合させることにより、近接荷重の付与に備えることができる。
また、近接荷重付与ステップにおいて、U字形棒をストップホール及び/又はウェッジホールと第1斜面部品及び第2斜面部品との間から差し込み第2斜面部品の裏側に引っ掛け、板を第1斜面部品に当接させて貫通穴から端部を前面に臨ませて装着し、端部の雄ねじにナットを嵌合させてねじ込み、板を介して第1斜面部品と第2斜面部品が近接する方向に近接荷重を付与する場合には、第1斜面部品及び第2斜面部品をU字形棒と板で挟んでナットを締めることにより近接荷重を付与し、第2斜面部品を第1斜面部品の方向に引き寄せることができる。
また、近接荷重付与ステップにおいて、近接荷重を付与しても第2斜面部品が動かない場合に、近接荷重付与手段に付勢荷重を付与する付勢手段を装着する付勢手段装着ステップをさらに備え、付勢手段にて第1斜面部品と第2斜面部品が近接する方向に付勢荷重を常時付与し続けることにより、構造物に作用する確率的な外荷重により補修用くさび部材の全体をストップホール及び/又はウェッジホールから取り外し可能とする場合には、ストップホール及び/又はウェッジホールに過大な引張荷重が作用した場合にくさび荷重が解放され、近接荷重付与手段に付与した付勢荷重によって第2斜面部品を第1斜面に引き寄せることができる。
また、付勢手段として、コイルばね、もしくは板ばねを用いる場合には、簡単な構成で適切な付勢荷重を常時付与し続けることができる。
また、近接荷重付与ステップにおいて、近接荷重を付与しても第2斜面部品が動かない場合に、構造物に強制的な外荷重を作用させ、補修用くさび部材の全体をストップホール及び/又はウェッジホールから取り外し可能とする場合には、強制的な外荷重を作用させることにより、早期に補修用くさび部材を取り外すことができる。
また、本発明の疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し方法によれば、ボルトにより離隔荷重を発生させ、第2斜面部品が無理なく動く場合に補修用くさび部材を取り外すことにより、補修用くさび部材を安全かつ確実に取り外すことができる。
また、動き判断ステップの判断結果として、無理なく動かないと判断した場合は、さらにストップホール及び/又はウェッジホールを上下に広げる荷重を人為的に負荷できるかを判断する人為的負荷判断ステップをさらに備え、人為的に負荷できることが可能な場合は、上下に広げる荷重を人為的に負荷し、動き観察ステップと、動き判断ステップを繰り返す場合には、人為的な負荷を構造物に作用させることにより早期に補修用くさび部材を取り外すことができる。
また、人為的負荷判断ステップでの判断として、人為的に負荷できることが不可能な場合は、ボルトに付勢手段を装着し第1斜面部品と第2斜面部品の間に離隔荷重を常時付与する離隔荷重常時付与ステップと、ストップホール及び/又はウェッジホールを設けた構造物に稼働時の外力が作用する状態で放置する放置ステップと、放置後の一定期間後に第2斜面部品の作動を判断する第2斜面部品作動判断ステップをさらに備え、第2斜面部品の作動があったと判断した場合は、くさび部材取り外しステップを実行し、第2斜面部品の作動がなかったと判断した場合は、放置ステップと第2斜面部品作動判断ステップを繰り返す場合には、ストップホール及び/又はウェッジホールに過大な引張荷重が作用した場合にくさび荷重が解放され、ボルトに付与した付勢荷重によって第2斜面部品を第1斜面部品から遠ざけることができる。
本発明の第一の実施形態による疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し機構を補修用部材に取り付けた状態を示す図 同取り外し用ボルトを用いた疲労亀裂の補修用くさび部材の設置方法のフロー 同第二の実施形態による疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し機構を補修用部材に取り付けた状態を示す図 同第三の実施形態による疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し機構を補修用部材に取り付けた状態を示す図 同取り外し用ボルトを用いた疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し方法のフローその1 同U字形棒を用いた疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し方法のフローその2 同U字形棒及び付勢手段を用いた疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し方法のフローその3 同第四の実施形態による疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し機構を補修用くさび部材に取り付けた状態を示す図 同第四の実施形態における疲労亀裂の補修用くさび部材の設置方法のフロー 同第五の実施形態による疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し機構を補修用くさび部材に取り付けた状態を示す図 同第五の実施形態における疲労亀裂の補修用くさび部材の設置方法のフロー 同第六の実施形態による疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し機構を取り付ける前の補修用くさび部材を示す図 同第六の実施形態における疲労亀裂の補修用くさび部材の設置方法のフロー 同第七の実施形態による疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し機構を補修用くさび部材に取り付けた状態を示す図 同第八の実施形態による疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し機構を補修用くさび部材に取り付けた状態を示す図 同疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し方法のフローその4 同疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し方法のフローその5 疲労亀裂の補修用くさび部材をストップホールにはめ込んだ状態を示す図
以下に、本発明の実施形態による疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し機構、疲労亀裂の補修用くさび部材の装着方法、及び疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し方法について説明する。
図1は第一の実施形態による疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し機構を補修用くさび部材に取り付けた状態を示す図であり、図1(a)は正面図、図1(b)はB−B’断面図である。構造を分かりやすくするため、図1(b)においては斜面部品及び母材板を断面で表し、ボルトは見取り図としている。
補修用くさび部材10は、斜面を有した第1斜面部品11と、第1斜面部品11上を摺動する斜面を有した第2斜面部品12と、第1斜面部品11に形成されたボルト雌ねじ13に嵌合し第2斜面部品12を離隔する方向に離隔荷重を付与するボルト14を備える。
第1斜面部品11は、側面視略L字状であり、母材板1と平行に配置する平行部11Aと、ストップホール3に挿入するはめ込み部11Bから成る。ボルト雌ねじ13は平行部11Aに形成されている。はめ込み部11Bは平行部11Aに近いほど高さが小さくなっており、はめ込み部11Bのうち第2斜面部品12との接触面は斜面(図1(b)において右上がり)となっている。
第2斜面部品12は四角形状であり、平行部11Aに近いほど高さが大きくなっており、第1斜面部品11のはめ込み部11Bとの接触面は斜面となっている。第2斜面部品12の斜面の傾斜角度αは、第1斜面部品11の斜面の傾斜角度αと同じであり両斜面は密接している。また、第1斜面部品11及び第2斜面部品12の斜面の角度αは、45度よりも小さい。
ボルト14は、第2斜面部品12が第1斜面部品11上を摺動しせり上がる方向の荷重を付与する装着荷重付与手段として、第1斜面部品11と第2斜面部品12が離隔する方向に離隔荷重を付与する。
第1斜面部品11に形成されたボルト雌ねじ13は第1斜面部品11の平行部11Aの前面から後面まで貫通しており、ボルト14の軸部はボルト雌ねじ13よりも長い。従って、平行部11Aの表側(前面側)からボルト雌ねじ13に螺入されたボルト14の軸部は、第1斜面部品11の平行部11Aの後面から突出し、先端が第2斜面部品12に当接して第2斜面部品12をストップホール3に押し込むことができる。なお、本実施形態ではボルト14として六角穴付ボルトを用いているが、用いることができるボルトの種類は任意であり、六角穴付ボルトに限定されるものではない。
船舶、海洋構造物又は橋梁等の構造物の母材板1に疲労亀裂2が生じた場合、疲労亀裂2の先端部にストップホール3を設け、ストップホール3に補修用くさび部材10をはめ込み、ボルト14に締め込む方向のトルクN1をかけて回転させることによりストップホール3の孔端部にくさび荷重Wを付与する。これにより構造物の応力変動幅を抑制することができる。
しかし、補修用くさび部材10を設置時に誤って締め込んでしまった場合や、設置後に大きなくさび荷重Wが作用した場合等は、補修用くさび部材10をストップホール3から取り外すことが困難な場合がある。
そこで、補修用くさび部材10をストップホール3から取り外す際に、補修用くさび部材の取り外し機構を用いる。
取り外し機構は、第2斜面部品12が第1斜面部品11上を摺動しずり下がる方向の荷重を付与する取り外し荷重付与手段として、近接荷重付与手段を備える。近接荷重付与手段は、第1斜面部品11と第2斜面部品12が近接する方向に、取り外し荷重としての近接荷重を付与する。
本実施形態では、近接荷重付与手段として、取り外し用ボルト21と、第1斜面部品11に設けられた長穴22と、第2斜面部品12に設けられた取り外し用ボルト雌ねじ23を有する。
取り外し用ボルト21は、第1斜面部品11と第2斜面部品12とを係止する係止手段を兼ねることができる。取り外し用ボルト21は、軸部の径が長穴22の径よりも小さく、長穴22の中を自在に動くことができる。
第1斜面部品11に開けられた長穴22は、第1斜面部品11の平行部11Aの前面から後面まで貫通している。長穴22は、ボルト雌ねじ13よりも上方に形成されている。
取り外し用ボルト雌ねじ23は、第2斜面部品12の表側において、長穴22に対応する高さに形成されている。取り外し用ボルト雌ねじ23には、長穴22から突出した取り外し用ボルト21の先端が嵌合する。
なお、本実施形態では取り外し用ボルト21として六角穴付ボルトを用いているが、用いることができるボルトの種類は任意であり、六角穴付ボルトに限定されるものではない。
また、取り外し用ボルト21は、必ずしも1本である必要はなく、必要に応じて本数を増やして安定性や強度を高めることなどができる。取り外し用ボルト21の本数を増やした場合は、対応する長穴22及び取り外し用ボルト雌ねじ23も増設する。
図2は第一の実施形態における取り外し用ボルトを用いた疲労亀裂の補修用くさび部材の設置方法のフローである。
まず、第1斜面部品11の上に第2斜面部品12を載置する(S1:載置ステップ)。載置ステップS1では、ボルト14は外しておくか、先端が第1斜面部品11の平行部11Aの後面から突き出さないようにしておく。
載置ステップS1の後、取り外し用ボルト21を第1斜面部品11の長穴22に通して先端を第2斜面部品12の取り外し用ボルト雌ねじ23に回し入れ、第1斜面部品11と第2斜面部品12を係止させる(S2:係止ステップ)。両斜面部品を繋ぎとめることにより、ストップホール3にはめ込む際における第2斜面部品12の第1斜面部品11に対する相対的位置決めを容易かつ確実に行うことができる。相対的位置は、取り外し用ボルト21を回し入れる量によって調節できるが、係止された第1斜面部品11と第2斜面部品12の高さが、ストップホール3の径よりも若干小さい程度に調節することが好ましい。
係止ステップS2の後、係止された第1斜面部品11と第2斜面部品12を、母材板1に生じた疲労亀裂2の先端部に設けたストップホール3にはめ込む(S3:はめ込みステップ)。はめ込みステップS3においては、係止された第1斜面部品11と第2斜面部品12について、ストップホール3に挿入する深さ、及び亀裂に対する角度(図1参照)を調節する。
はめ込みステップS3の後、ボルト14を第1斜面部品11のボルト雌ねじ13に回し込み、ボルト14の先端を第2斜面部品12の前面に当接させる(S4:ボルト先端当接ステップ)。
ボルト先端当接ステップS4の後、取り外し用ボルト21を十分弛める(S5:取り外し用ボルト弛緩ステップ)。これにより、第2斜面部品12の自由なせり上がりを妨げないようにすることができる。
取り外し用ボルト弛緩ステップS5の後、ボルト14を回して離隔荷重を付与し、第2斜面部品12を第1斜面部品11上にせり上がらせて、くさび荷重Wを発生させる(S6:くさび荷重発生ステップ)。離隔荷重は、第2斜面部品12に当接させたボルト14の回し込み量によって調節する。
くさび荷重発生ステップS6の後、取り外し用ボルト21を係止手段として用いるか否かを判断する(S7:取り外し用ボルトの扱い判断ステップ)。
取り外し用ボルトの扱い判断ステップS7において、取り外し用ボルト21を係止手段として用いないと判断した場合は、取り外し用ボルト21を長穴22から一旦外す(S8:取り外し用ボルト取り外しステップ)。必要に応じ取り外し用ボルト21を取り外しておくことで、第2斜面部品12の自由なせり上がりを妨げないようにすることができ、ストップホール3の開口変位に追随させることができる。
一方、取り外し用ボルトの扱い判断ステップS7において、取り外し用ボルト21を係止手段として用いると判断した場合は、ストップホール3の開口変位に追随するときの第2斜面部品12の動きを妨げないように取り外し用ボルト21を十分弛めた状態で係止手段とする(S9:係止手段化ステップ)。なお、必要に応じて、取り外し用ボルト21を、より長いボルトと交換して係止手段とする。取り外し用ボルト21を十分弛めた状態で取り外し用ボルト雌ねじ23に嵌合させておくことにより、第2斜面部品12の自由なせり上がりを妨げずに第2斜面部品12の脱落を防止するための係止手段として用いることができる。
図3は第二の実施形態による疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し機構を補修用くさび部材に取り付けた状態を示す図であり、図3(a)は正面図、図3(b)は右側視図、図3(c)はA−A’断面図である。構造を分かりやすくするため、図3(b)(c)においては斜面部品及び母材板を断面で表し、取り外し機構は見取り図としている。なお、上記した実施形態と同一機能部材については同一符号を付して説明を省略する。
本実施形態では、近接荷重付与手段として、雄ねじ24を有し第2斜面部品12の周囲に装着されるU字形棒25と、円形の貫通穴を左右端部二箇所に有した四角形の板26と、U字形棒25の雄ねじ24に嵌合するナット27を有する。
雄ねじ24は、U字形棒25の両端部にそれぞれ設けられている。U字形棒25は、第1斜面部品11と第2斜面部品12を抱え込める大きさであり、端部が第1斜面部品11の平行部11Aの表側に配置される。
板26は、貫通穴に雄ねじ24を挿通させた状態で、第2斜面部品12を挟み込むために第1斜面部品11の平行部11Aの前面に当接して配置される。ナット27と板26との間には平ワッシャー28が配置される。
なお、U字形棒25は、例えば、釣り針のような半U字形とし、端部に雄ねじ24を設けることもできる。また、U字形棒25は、例えば、全体を丸棒で形成することも、端部のみ丸棒としてそれ以外を角棒で形成し、両端部に雄ねじ24を設けることもできる。また、第1斜面部品11の平行部11Aを張り出して板26を兼ねることもできる。
図4は第三の実施形態による疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し機構を補修用くさび部材に取り付けた状態を示す図であり、図4(a)は正面図、図4(b)は右側視図、図4(c)はA−A’断面図である。構造を分かりやすくするため、図4(b)(c)においては斜面部品及び母材板を断面で表し、取り外し機構は見取り図としている。なお、上記した実施形態と同一機能部材については同一符号を付して説明を省略する。
本実施形態は、近接荷重付与手段として、雄ねじ24を有し第2斜面部品12の周囲に装着されるU字形棒25と、円形の貫通穴を二箇所に有した板26と、U字形棒25の雄ねじ24に嵌合するナット27と、平ワッシャー28を有する点において第二の実施形態と同様であり、近接荷重付与手段に付勢荷重を付与する付勢手段30をさらに有する点において第二の実施形態と異なる。
付勢手段30は、板26と平ワッシャー28との間に配置したコイルばねである。ナット27を締め込むと、コイルばね30には圧縮方向の弾性歪が生じ、第1斜面部品11と第2斜面部品12との相対的距離を狭める方向に締め付け力が作用する。この状態のまま一定期間放置しておくと、構造物及びストップホール3を開けた母材板1には確率的な外荷重が作用するが、そのうち相対的に過大な引張荷重が作用した場合にはくさび荷重Wが解放され、締め付け力によって第2斜面部品12が第1斜面部品11の斜面上をずり下がり、過大な引張荷重が除荷された後でも補修用くさび部材10とストップホール3の上下端との間に作用していたくさび荷重Wが解放され、補修用くさび部材10を取り外すことが可能となる。
付勢手段30は、コイルばね以外の弾性体を用いることもできるが、特に、コイルばね、又は板ばねを用いることが好ましい。これにより、簡単な構成により適切な付勢荷重を常時付与し続けることができる。
次に、第1斜面部品11及び第2斜面部品12をストップホール3に装着してトルクN1をかけてボルト14を締め込むことによりくさび荷重Wを発生させた後、第1斜面部品11及び第2斜面部品12をストップホール3から取り外す必要が生じた場合の取り外し方法について説明する。
図5は取り外し用ボルトを用いた疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し方法のフローその1である。
まず、補修用くさび部材が、第一の実施形態による取り外し機構を備えているか否か、すなわち、取り外し用ボルト21を備え、第1斜面部品11に長穴22が形成され、第2斜面部品12に取り外し用ボルト雌ねじ23が形成されているか否かを判断する(S11:取り外し用ボルト適用判断ステップ)。
取り外し用ボルト適用判断ステップS11において、図18に示す補修用くさび部材10のように第一の実施形態による取り外し機構を備えていないと判断した場合は、後述する取り外し方法のフローその2に移行する。
一方、取り外し用ボルト適用判断ステップS11において、第一の実施形態による取り外し機構を備えていると判断した場合は、第2斜面部品12に離隔荷重を付与しているボルト14を弛める(S12:ボルト弛緩ステップ)。弛めたボルト14は、ボルト雌ねじ13から取り外すことが好ましい。
ボルト弛緩ステップS12の後、取り外し用ボルト21を係止手段として使用していたか否かを判断する(S13:係止手段使用判断ステップ)。
係止手段使用判断ステップS13において、取り外し用ボルト21を係止手段として使用していたと判断した場合は、近接荷重付与手段を操作して近接荷重を付与する(S15:近接荷重付与ステップ)。近接荷重付与ステップS15においては、取り外し用ボルト雌ねじ23に嵌合していた取り外し用ボルト21を更にねじ込み、板26を介して第1斜面部品11の平行部11Aに第2斜面部品12が近接する方向に近接荷重を付与する。取り外し用ボルト21を、長穴22に挿通した状態で取り外し用ボルト雌ねじ23にねじ込む方向に回転させることにより、第2斜面部品12は第1斜面部品11の平行部11Aの方向に引き寄せられてずり下がり、第1斜面部品11及び第2斜面部品12とストップホール3の上下端との間に作用していたくさび荷重Wが解放され、補修用くさび部材10をストップホール3から安全かつ確実に取り外すことができる。ボルト14の締め込みにより第2斜面部品12が第1斜面部品11の上に設置当初よりもせり上がっている場合でも、取り外し用ボルト21は、長穴22の中を自在に動けるため、取り外し用ボルト雌ねじ23に無理な負荷がかかることなく、円滑に回転することができる。また、近接荷重付与ステップS15においては、近接荷重を付与したときの第2斜面部品12の動きを観察する。
一方、係止手段使用判断ステップS13において、取り外し用ボルト21を係止手段として使用していなかったと判断した場合は、取り外し用ボルト21を第1斜面部品11に設けた長穴22に挿通し、取り外し用ボルト21の先端を第2斜面部品12に設けた取り外し用ボルト雌ねじ23に回し入れる(S14:取り外し用ボルト嵌合ステップ)。その後、近接荷重付与ステップS15に進む。取り外し用ボルト21を一旦取り外している場合に、予め取り外し用ボルト21を取り外し用ボルト雌ねじ23に嵌合させることで、近接荷重付与ステップS15における近接荷重の付与に備えることができる。
近接荷重付与ステップS15の後、第2斜面部品12が無理なく動くか否かを判断する(S16:第2斜面部品動き判断ステップ)。第2斜面部品12が無理なく動くとは、例えば、第2斜面部品12の動きによってストップホール3の孔端が削られる虞がない場合である。
第2斜面部品動き判断ステップS16において、第2斜面部品12が無理なく動かないと判断した場合は、取り外し方法のフローその2に移行する。
一方、第2斜面部品動き判断ステップS16において、第2斜面部品12が無理なく動くと判断した場合は、取り外し用ボルト21を、くさび荷重Wが解放されるまで回し込み、補修用くさび部材10全体を取り外して(S17:くさび部材取り外しステップ)、取り外し方法のフローその1を終了する。
このように、ストップホール3からの取り外し時に、近接荷重付与手段(取り外し荷重付与手段)により近接荷重(取り外し荷重)を付与することで、補修用くさび部材10を安全かつ確実に取り外すことができる。
図6はU字形棒を用いた疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し方法のフローその2である。
本フローでは、第二の実施形態による取り外し機構を用いる。なお、取り外し方法のフローその1の第2斜面部品動き判断ステップS16から移行した場合は、取り外し方法のフローその2を開始する前に、取り外し用ボルト21を長穴22から取り外しておく。
まず、U字形棒25を、ストップホール3と第1斜面部品11及び第2斜面部品12との間から差し込み、折れ曲がり部分を第2斜面部品12の裏側(後面側)に引っ掛ける。そして、雄ねじ24が取り付けられているU字形棒25の両端部を、ストップホール3と第1斜面部品11及び第2斜面部品12との間から母材板1の表側に引き出す(S21:U字形棒装着ステップ)。
U字形棒装着ステップS21の後、U字形棒25の両端部をそれぞれ板26の貫通穴に通してナット27を嵌合する。なお、板26とナット27との間には平ワッシャー28が配置されている。このとき板26の装着状態は、後面は第1斜面部品11の前面に当接し、前面には貫通穴から突出したU字形棒25の端部が臨んだ状態である(S22:板装着ステップ)。
板装着ステップS22の後、ナット27をねじ込み、板26を介して第1斜面部品11と第2斜面部品12が近接する方向に近接荷重を付与する(S23:ナットねじ込みステップ)。ナットねじ込みステップS23においては、2個のナット27による締め付け力が略均等になるように留意しながらナット27を徐々に締め付けていき、第2斜面部品12の動きを観察する。
U字形棒装着ステップS21、板装着ステップS22、及びナットねじ込みステップS23が、取り外し方法のフローその2における近接荷重付与ステップである。
近接荷重付与ステップの後、第2斜面部品12が無理なく動くか否かを判断する(S24:第2斜面部品動き判断ステップ)。第2斜面部品12が無理なく動くとは、例えば、第2斜面部品12の動きによってストップホール3の孔端が削られる虞がない場合である。
第2斜面部品動き判断ステップS24において、第2斜面部品12が無理なく動くと判断した場合は、2個のナット27を、くさび荷重Wが解放されるまで回し込み、補修用くさび部材10全体を取り外して(S25:くさび部材取り外しステップ)、取り外し方法のフローその2を終了する。
一方、第2斜面部品動き判断ステップS24において、第2斜面部品12が無理なく動かないと判断した場合は、ストップホール3を上下に広げるような荷重を人為的に負荷できるか否かを判断する(S26:荷重負荷可否判断ステップ)。
荷重負荷可否判断ステップS26において、ストップホール3を上下に広げるような荷重を人為的に負荷できると判断した場合は、そのような荷重を負荷する(S27:荷重負荷ステップ)。荷重負荷ステップS27の後は、ナットねじ込みステップS23に戻る。このように、近接荷重を付与しても第2斜面部品12が動かない場合に、構造物に強制的な外荷重を作用させ、補修用くさび部材10の全体をストップホール3から取り外し可能とすることで、早期に補修用くさび部材10を取り外すことができる。強制的な外荷重は、例えば構造物が船舶、海洋構造物、クレーン等の工作機械の場合、載荷物を増したり、橋梁や道路の場合、重い車両を走らせたり重量物を載置したりすること等により可能である。
一方、荷重負荷可否判断ステップS26において、ストップホール3を上下に広げるような荷重を人為的に負荷できないと判断した場合は、コイルばね等の付勢手段30を準備し、U字型棒25の両端部に装着されている2個のナット27を緩めて平ワッシャー28と共に一旦取り外し、U字型棒25の両端部の先端に付勢手段30をそれぞれ装着した後ナット27と平ワッシャー28を再装着する(付勢手段装着ステップ)。そして、後述する取り外し方法のフローその3のステップS33に移行する。
図7はU字形棒及び付勢手段を用いた疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し方法のフローその3である。
本フローでは、第三の実施形態による取り外し機構を用いる。
まず、U字形棒25を、ストップホール3と第1斜面部品11及び第2斜面部品12との間から差し込み、U字の折れ曲がり部分を第2斜面部品12の裏側に引っ掛ける。そして、雄ねじ24が取り付けられているU字形棒25の両端部を、ストップホール3と第1斜面部品11及び第2斜面部品12との間から母材板1の表側に引き出す(S31:U字形棒装着ステップ)。
U字形棒装着ステップS31の後、両端部をそれぞれ板26の貫通穴に通して、突き出た先端に付勢手段30及び平ワッシャー28を嵌め込んだ後、ナット27を嵌合する。上記のように、ここでは付勢手段30としてコイルばねを用いている。このときナット27とコイルばね30との間には平ワッシャー28が配置されている。なお、板26とコイルばね30との間に平ワッシャー28を配置してもよい。このとき板26の装着状態は、後面は第1斜面部品11の前面に当接し、前面には貫通穴から突出したU字形棒25の端部が臨んだ状態である(S32:付勢手段装着ステップ)。
付勢手段装着ステップS32の後、付勢手段30にて第1斜面部品11と第2斜面部品12が近接する方向に付勢荷重を付与する(S33:付勢荷重付与ステップ)。付勢荷重付与ステップS33においては、2個のナット27による付勢荷重(締め付け力)が略均等になるように留意しながらナット27を徐々に締め付ける。これにより、コイルばね30に圧縮方向の弾性歪(圧縮歪)が生じ、第1斜面部品11と第2斜面部品12とのとの相対的距離を狭める方向に締め付け力が作用する。
付勢荷重付与ステップS33の後は、そのまま放置し、付勢手段30にて第1斜面部品11と第2斜面部品12が近接する方向に付勢荷重を常時付与し続ける(S34:付勢荷重常時付与ステップ)。ストップホール3を設けた母材板1に稼働時の外荷重(外力)が作用する状態で放置し、ストップホール3を上下に広げるような大きな引張荷重が作用するのを待つと、そのうち相対的に過大な引張荷重が作用した場合には、くさび荷重Wが解放され、付勢荷重によって第2斜面部品12が第1斜面部品11の斜面上をずり下がり、過大な引張荷重が除荷された後でも補修用くさび部材10とストップホール3の上下端との間に作用していたくさび荷重Wが解放され、補修用くさび部材10をストップホール3から取り外すことが可能となる。
付勢荷重常時付与ステップS34を開始してから一定期間が経過した後、第2斜面部品12が所定量動いたか否かを判断する(S35:第2斜面部品動き判断ステップ)。
第2斜面部品動き判断ステップS35において、第2斜面部品12が所定量動いていないと判断した場合は、付勢荷重常時付与ステップS34を継続する。
一方、第2斜面部品動き判断ステップS35において、第2斜面部品12が所定量動いたと判断した場合は、2個のナット27を、くさび荷重Wが解放されるまで回し込み、補修用くさび部材10全体を取り外して(S36:くさび部材取り外しステップ)、取り外し方法のフローその3を終了する。なお、2個のナット27を回す前に、第2斜面部品12が無理なく動くか否かを判断してもよい。
下表1は、補修用くさび部材10の取り外し方法をまとめた表である。
Figure 0006864203
表1において、状況例1は、第1斜面部品11及び第2斜面部品12をストップホール3に設置する時に誤って、目標トルク以下の比較的小さなトルクではあるが締め込んでしまった場合である。この場合は、取り外し方法のフローその1に基づき、第一の実施形態による取り外し機構を用いた取り外しを行うことで、第1斜面部品11及び第2斜面部品12をすぐに取り外すことができる。
また、状況例2は、第1斜面部品11及び第2斜面部品12をストップホール3に目標トルクまで締め込んで設置した後、工程変更により第1斜面部品11及び第2斜面部品12を取り外す場合である。この場合は、くさび荷重Wが状況例1よりも大きいが、取り外し方法のフローその2に基づき、第二の実施形態による取り外し機構を用いた取り外しを行うことで、第1斜面部品11及び第2斜面部品12をすぐに取り外すことができる。
また、状況例3は、補修用くさび部材10が、上記の特許文献1に記載されているような、第2斜面部品12が第1斜面部品11上にせり上がる方向のトルクを継続的にかけることにより設置後に母材板1に疲労亀裂2が開口する方向の過大荷重が作用してストップホール3が荷重方向に大きく延伸した場合に追随して適切なくさび荷重Wを自動的に付与する自動調節手段を備えた場合である。この場合は、くさび荷重Wが状況例2よりも大きいが、取り外し方法のフローその3に基づき、第三の実施形態による取り外し機構を用いた取り外しを行うことで、取り外し作業を開始してから一定期間経過後に、第1斜面部品11及び第2斜面部品12を取り外すことができる。
なお、上記実施形態においては、取り外し方法のフローその1から取り外し方法のフローその2へ、また、取り外し方法のフローその2から取り外し方法のフローその3へ移行するものとして説明したが、これに限らず、各取り外し方法のフローを独立して行うこともできる。
また、上記実施形態においては、付勢手段30をU字形棒25に装着する例を説明したが、付勢手段30は、第一の実施形態による取り外し機構で説明した取り外し用ボルト21に装着することもできる。この場合の付勢手段30は、取り外し用ボルト21に締め込む方向のトルクを継続的にかけるトルク負荷機構である。トルク負荷機構を設けて一定期間放置し、ストップホール3に過大な引張荷重が作用してくさび荷重Wが解放されるのを待って補修用くさび部材10を取り外す。このようなトルク負荷機構としては、上記の特許文献1に記載されている自動調節手段と同様なものを用いることができる。
また、上記実施形態においては、疲労亀裂2の先端部に設けたストップホール3に適用した補修用くさび部材10、及びその取り外し機構を説明したが、補修用くさび部材10、及びその取り外し機構は、疲労亀裂2の基部及び先端部以外の亀裂経路上に設けたドリル孔であるウェッジホールについても同様に使用できる。また、ストップホール3とウェッジホールを併設して両方に使用することもできる。
また、補修用くさび部材10の取り外し機構は、第1斜面部品11及び第2斜面部品12をストップホール3又はウェッジホールに装着してボルト14を締め込むことによりくさび荷重Wを発生させた後、くさび荷重Wを小さくする必要が生じた場合に、第2斜面部品12を第1斜面部品11の平行部11Aの後面に近づける手段としても使用することができる。
図8は第四の実施形態による疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し機構を補修用くさび部材に取り付けた状態を示す図であり、図8(a)は正面図、図8(b)はB−B’断面図である。構造を分かりやすくするため、図8(b)においては斜面部品及び母材板を断面で表し、ボルト及び弾性バンドは見取り図としている。なお、上記した実施形態と同一機能部材については同一符号を付して説明を省略する。
補修用くさび部材100は、斜面を有した第1斜面部品110と、第1斜面部品110上を摺動する斜面を有した第2斜面部品120と、第2斜面部品120が第1斜面部品110上を摺動しせり上がる方向の荷重を付与する装着荷重付与手段を備える。
第1斜面部品110は、側面視略L字状であり、母材板1と平行に配置する平行部110Aと、ストップホール3に挿入するはめ込み部110Bから成る。平行部110Aにはボルト雌ねじ130が形成されている。はめ込み部110Bは平行部110Aに近いほど高さが大きくなっており、はめ込み部110Bのうち第2斜面部品120との接触面は斜面(図8(b)において右下がり)となっている。
第2斜面部品120は四角形状であり、平行部110Aに近いほど高さが小さくなっており、第1斜面部品110のはめ込み部110Bとの接触面は斜面となっている。第2斜面部品120の斜面の傾斜角度αは、第1斜面部品110の斜面の傾斜角度αと同じであり両斜面は密接している。また、第1斜面部品110及び第2斜面部品120の斜面の角度αは、45度よりも小さい。
本実施形態では、装着荷重付与手段として、第1斜面部品110と第2斜面部品120が近接する方向に近接荷重を付与する近接荷重付与手段を備える。近接荷重付与手段は、第1斜面部品110と第2斜面部品120の周囲に装着され張力Tを発生する二つの弾性バンド150である。一方の弾性バンド150Aは、ボルト雌ねじ130よりも上方において環状に第1斜面部品110と第2斜面部品120に掛け回され、他方の弾性バンド150Bは、ボルト雌ねじ130よりも下方において環状に第1斜面部品110と第2斜面部品120に掛け回されている。これにより、コンパクトな構成で簡便に近接荷重を常時付与することができる。また、第1斜面部品110と第2斜面部品120が弾性バンド150で結ばれることで、補修用くさび部材100をストップホール3へ装着する作業が容易になると共に、第2斜面部品120の脱落を防止して安全に使用できる。弾性バンド150には、ゴムバンドの他、スプリング等も利用することができる。
船舶、海洋構造物又は橋梁等の構造物の母材板1に疲労亀裂2が生じた場合、疲労亀裂2の先端部にストップホール3を設け、ストップホール3に補修用くさび部材100をはめ込み、弾性バンド150の張力Tで第2斜面部品120を第1斜面部品110上にせり上がらせることによりストップホール3の孔端部にくさび荷重Wを付与する。これにより構造物の応力変動幅を抑制することができる。
しかし、補修用くさび部材100を設置時に誤って締め込んでしまった場合や、設置後に大きなくさび荷重Wが作用した場合等は、補修用くさび部材100をストップホール3から取り外すことが困難な場合がある。
そこで、補修用くさび部材100をストップホール3から取り外す際に、補修用くさび部材の取り外し機構を用いる。
本実施形態の取り外し機構は、第2斜面部品120が第1斜面部品110上を摺動しずり下がる方向の荷重を付与する取り外し荷重付与手段として、第1斜面部品110に形成されたボルト雌ねじ130に嵌合し第2斜面部品120を離隔する方向に離隔荷重を付与するボルト140を備える。
第1斜面部品110に形成されたボルト雌ねじ130は第1斜面部品110の平行部110Aの前面から後面まで貫通しており、ボルト140の軸部はボルト雌ねじ130よりも長い。従って、平行部110Aの表側(前面側)からボルト雌ねじ130に螺入されたボルト140の軸部は、第1斜面部品110の平行部110Aの後面から突出し、先端が第2斜面部品120に当接して第2斜面部品120を押すことができる。なお、本実施形態ではボルト140として六角穴付ボルトを用いているが、用いることができるボルトの種類は任意であり、六角穴付ボルトに限定されるものではない。
図9は第四の実施形態における疲労亀裂の補修用くさび部材の設置方法のフローである。
まず、第1斜面部品110の上に第2斜面部品120を載置する(S41:載置ステップS41)。
載置ステップS41の後、第1斜面部品110と第2斜面部品120の周囲に弾性バンド150を掛け回して張力Tを発生させる(S42:弾性バンド装着ステップ)。
載置ステップS41及び弾性バンド装着ステップS42では、ボルト140は外しておくか、先端が第1斜面部品110の平行部110Aの後面から突き出さないようにしておく。
弾性バンド装着ステップS42の後、ボルト140をねじ込む方向に操作し、ボルト140の先端を第2斜面部品120の前面に当接させて、第1斜面部品110と第2斜面部品120の位置関係を調節する(S43:位置調節ステップ)。これにより、ストップホール3にはめ込む際における第2斜面部品120の第1斜面部品110に対する相対的位置決めを容易かつ確実に行うことができる。相対的位置は、ボルト140を締め込む量によって調節できるが、補修用くさび部材100がぎりぎりでストップホール3を通るように、第1斜面部品110と第2斜面部品120の高さが、ストップホール3の径よりも若干小さい程度に調節することが好ましい。
なお、弾性バンド150には、第1斜面部品110と第2斜面部品120の周囲に最初に掛け回した時点からボルト140を回し込んで相対的位置決めをした時点に至るまで、常時適切な張力Tが生じているように斜面部品の寸法や弾性バンド150の寸法、材質等を設計しておく。これにより、設置後にストップホール3が変形しても補修用くさび部材100が追随して伸長し、適切なくさび荷重を維持していくことが可能となる。また、ボルト140を回し込んで相対的位置決めをした時点で第1斜面部品110の平行部110Aの後面と第2斜面部品120の前面との距離が十分に確保されているように、斜面部品の寸法や形状等を設計しておく。これにより、設置後にストップホール3が変形しても補修用くさび部材100が追随して伸長し、適切なくさび荷重を維持していくことが可能となる。
位置調節ステップS43の後、弾性バンド150により係止された第1斜面部品110と第2斜面部品120をストップホール3にはめ込む(S44:はめ込みステップ)。はめ込みステップS44においては、第1斜面部品110と第2斜面部品120について、ストップホール3に挿入する深さ、及び亀裂に対する角度(図8参照)を調節する。
はめ込みステップS44の後、ボルト140を緩める方向に操作して弾性バンド150の張力Tにより第2斜面部品120を第1斜面部品110上にせり上がらせてくさび荷重Wを発生させる(S45:くさび荷重発生ステップ)。くさび荷重発生ステップS45において、ボルト140は、先端が第1斜面部品110から突き出さない位置まで戻す。
図10は第五の実施形態による疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し機構を補修用くさび部材に取り付けた状態を示す図であり、図10(a)は正面図、図10(b)はB−B’断面図である。構造を分かりやすくするため、図10(b)においては斜面部品及び母材板を断面で表し、ボルト及び弾性バンドは見取り図としている。なお、上記した実施形態と同一機能部材については同一符号を付して説明を省略する。
本実施形態における補修用くさび部材100は、近接荷重付与手段として、第1斜面部品110と第2斜面部品120の周囲に装着され張力Tを発生する弾性バンド150と、第1斜面部品110に開けた長穴160に貫通する初期締め付け用ボルト170と、第2斜面部品120に形成した初期締め付け用ボルト雌ねじ180を備える点において、第四の実施形態における補修用くさび部材100と異なる。
本実施形態において弾性バンド150は一つであり、ボルト雌ねじ130よりも下方で環状に第1斜面部品110と第2斜面部品120に掛け回されている。
初期締め付け用ボルト170は、軸部の径が長穴160の径よりも小さく、長穴160の中を自在に動くことができる。
第1斜面部品110に開けられた長穴160は、第1斜面部品110の平行部110Aの前面から後面まで貫通している。長穴160は、ボルト雌ねじ130よりも上方に形成されている。
初期締め付け用ボルト雌ねじ180は、第2斜面部品120の表側において、長穴160に対応する高さに形成されている。初期締め付け用ボルト雌ねじ180には、長穴160から突出した初期締め付け用ボルト170の先端が嵌合する。
本実施形態においては、弾性バンド150と初期締め付け用ボルト170によって近接荷重を付与することができる。また、第1斜面部品110と第2斜面部品120が弾性バンド150及び初期締め付け用ボルト170で結ばれるので、補修用くさび部材100をストップホール3へ装着する作業が容易になると共に、第2斜面部品120の脱落を防止して安全に使用できる。
なお、本実施形態では初期締め付け用ボルト170として六角穴付ボルトを用いているが、用いることができるボルトの種類は任意であり、六角穴付ボルトに限定されるものではない。
本実施形態の取り外し機構は、第四の実施形態と同様に、第2斜面部品120が第1斜面部品110上を摺動しずり下がる方向の荷重を付与する取り外し荷重付与手段として、第1斜面部品110に形成されたボルト雌ねじ130に嵌合し第2斜面部品120を離隔する方向に離隔荷重を付与するボルト140を備える。
図11は第五の実施形態における疲労亀裂の補修用くさび部材の設置方法のフローである。
まず、第1斜面部品110の上に第2斜面部品120を載置する(S51:載置ステップ)。
載置ステップS51の後、第1斜面部品110と第2斜面部品120の周囲に弾性バンド150を掛け回して張力Tを発生させる(S52:弾性バンド装着ステップ)。
載置ステップS51及び弾性バンド装着ステップS52では、ボルト140は外しておくか、先端が第1斜面部品110の平行部110Aの後面から突き出さないようにしておく。
弾性バンド装着ステップS52の後、ボルト140をねじ込む方向に操作し、第1斜面部品110と第2斜面部品120の位置関係を調節する(S53:位置調節ステップ)。これにより、ストップホール3にはめ込む際における第2斜面部品120の第1斜面部品110に対する相対的位置決めを容易かつ確実に行うことができる。相対的位置は、ボルト140を締め込む量によって調節できるが、補修用くさび部材100がぎりぎりでストップホール3を通るように、第1斜面部品110と第2斜面部品120の高さが、ストップホール3の径よりも若干小さい程度に調節することが好ましい。
位置調節ステップS53の後、弾性バンド150により係止された第1斜面部品110と第2斜面部品120をストップホール3にはめ込む(S54:はめ込みステップ)。はめ込みステップS54においては、第1斜面部品110と第2斜面部品120について、ストップホール3に挿入する深さ、及び亀裂に対する角度(図10参照)を調節する。
はめ込みステップS54の後、初期締め付け用ボルト170を第1斜面部品110の長穴160に通して先端を第2斜面部品120の初期締め付け用ボルト雌ねじ180に回し入れる(S55:初期締め付け用ボルト挿入ステップ)。
初期締め付け用ボルト挿入ステップS55の後、ボルト140を緩める方向に操作し、弾性バンド150の張力Tによる近接荷重の付与と、初期締め付け用ボルト170を締める方向に回すことによる近接荷重の付与とにより、第2斜面部品120を第1斜面部品110上にせり上がらせてくさび荷重Wを発生させる(S56:くさび荷重発生ステップ)。くさび荷重発生ステップS56において、ボルト140は、先端が第1斜面部品110から突き出さない位置まで戻す。
なお、くさび荷重発生ステップS56の後、初期締め付け用ボルト170を係止手段として用いるか否かを判断してもよい。
初期締め付け用ボルト170を係止手段として用いないと判断した場合は、初期締め付け用ボルト170を長穴160から一旦外す。必要に応じ初期締め付け用ボルト170を取り外しておくことで、第2斜面部品120の自由なせり上がりを妨げないようにすることができ、ストップホール3の開口変位に追随させることができる。
一方、初期締め付け用ボルト170を係止手段として用いると判断した場合は、ストップホール3の開口変位に追随するときの第2斜面部品120の動きを妨げないように初期締め付け用ボルト170を十分弛めた状態で係止手段とする。なお、必要に応じて、初期締め付け用ボルト170を、より長いボルトと交換して係止手段とする。初期締め付け用ボルト170を十分弛めた状態で初期締め付け用ボルト雌ねじ180に嵌合させておくことにより、第2斜面部品120の自由なせり上がりを妨げずに第2斜面部品120の脱落を防止するための係止手段として用いることができる。
図12は第六の実施形態による疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し機構を取り付ける前の補修用くさび部材を示す図であり、図12(a)は正面図、図12(b)は右側視図、図12(c)はA−A’断面図である。構造を分かりやすくするため、図12(b)(c)においては斜面部品及び母材板を断面で表し、U字形棒等は見取り図としている。なお、上記した実施形態と同一機能部材については同一符号を付して説明を省略する。
本実施形態における補修用くさび部材100は、近接荷重付与手段として、雄ねじ190を有し第2斜面部品120の周囲に装着されるU字形棒191と、円形の貫通穴を左右端部二箇所に有した四角形の板192と、U字形棒191の雄ねじ190に嵌合するナット193と、板192とナット193の間に装着されるばね194を有する点において、第四の実施形態における補修用くさび部材100と異なる。
雄ねじ190は、U字形棒191の両端部にそれぞれ設けられている。U字形棒191は、第1斜面部品110と第2斜面部品120を抱え込める大きさであり、端部が第1斜面部品110の平行部110Aの表側に配置される。
板192は、貫通穴に雄ねじ190を挿通させた状態で、第2斜面部品120を挟み込むために第1斜面部品110の平行部110Aの前面に当接して配置される。ナット193と板192との間には平ワッシャー195が配置される。
なお、U字形棒191は、例えば、釣り針のような半U字形とし、端部に雄ねじ190を設けることもできる。また、U字形棒191は、例えば、全体を丸棒で形成することも、端部のみ丸棒としてそれ以外を角棒で形成し、両端部に雄ねじ190を設けることもできる。また、第1斜面部品110の平行部110Aを張り出して板192を兼ねることもできる。
ばね194は、例えばコイルばねであり、板192と平ワッシャー195との間に配置される。ナット193を締め込むと、ばね194には圧縮方向の弾性歪が生じ、第1斜面部品110と第2斜面部品120との相対的距離を狭める方向に締め付け力が作用する。
ばね194は、コイルばね以外の弾性体を用いることもできるが、特に、コイルばね、又は板ばねを用いることが好ましい。これにより、簡単な構成により適切な近接荷重を常時付与し続けることができる。
本実施形態においては、ナット193を締め付けてばね194を圧縮させることで近接荷重を常時付与することができる。また、第1斜面部品110と第2斜面部品120がU字形棒191で結ばれるので、第2斜面部品120の脱落を防止して安全に使用できる。
本実施形態の取り外し機構は、第四、第五の実施形態と同様に、第2斜面部品120が第1斜面部品110上を摺動しずり下がる方向の荷重を付与する取り外し荷重付与手段として、第1斜面部品110に形成されたボルト雌ねじ130に嵌合し第2斜面部品120を離隔する方向に離隔荷重を付与するボルト140を備える。なお、図12では、ボルト140は取り外された状態のため図示されていない。
図13は第六の実施形態における疲労亀裂の補修用くさび部材の設置方法のフローである。
まず、第1斜面部品110の上に第2斜面部品120を載置する(S61:載置ステップ)。
載置ステップS61の後、第1斜面部品110と第2斜面部品120の位置関係を調節する(S62:位置調節ステップ)。これにより、ストップホール3にはめ込む際における第2斜面部品120の第1斜面部品110に対する相対的位置決めを行う。相対的位置は、補修用くさび部材100がぎりぎりでストップホール3を通るように、第1斜面部品110と第2斜面部品120の高さが、ストップホール3の径よりも若干小さい程度に調節することが好ましい。また、調整した位置関係がずれないように、テープ等で仮止めしておいてもよい。
位置調節ステップS62の後、第1斜面部品110と第2斜面部品120をストップホール3にはめ込む(S63:はめ込みステップ)。はめ込みステップS63においては、第1斜面部品110と第2斜面部品120について、ストップホール3に挿入する深さ、及び亀裂に対する角度を調節する。
はめ込みステップS63の後、U字形棒191を、ストップホール3と第1斜面部品110及び第2斜面部品120との間から差し込み、U字の折れ曲がり部分を第2斜面部品120の裏側に引っ掛ける。そして、雄ねじ190が取り付けられているU字形棒191の両端部を、ストップホール3と第1斜面部品110及び第2斜面部品120との間から母材板1の表側に引き出す(S64:U字形棒装着ステップ)。
U字形棒装着ステップS64の後、U字形棒191の両端部をそれぞれ板192の貫通穴に通して、突き出た先端にばね194及び平ワッシャー195を嵌め込んだ後、ナット193を嵌合する(S65:付勢荷重付与部材装着ステップ)。このとき、ナット193とばね194との間には平ワッシャー195が配置されている。なお、板192とばね194との間に平ワッシャー195を配置してもよい。このとき板192の装着状態は、後面は第1斜面部品110の前面に当接し、前面には貫通穴から突出したU字形棒191の端部が臨んだ状態である。
付勢荷重付与部材装着ステップS65の後、ばね194にて第1斜面部品110と第2斜面部品120が近接する方向に近接荷重を付与することにより、第2斜面部品120を第1斜面部品110上にせり上がらせてくさび荷重Wを発生させる(S66:くさび荷重発生ステップ)。くさび荷重発生ステップS66においては、2個のナット193による付勢荷重(締め付け力)が略均等になるように留意しながらナット193を徐々に締め付ける。これにより、ばね194に圧縮方向の弾性歪(圧縮歪)が生じ、第1斜面部品110と第2斜面部品120とのとの相対的距離を狭める方向に締め付け力が作用する。また、ばね194を圧縮された状態で保持することで、第1斜面部品110と第2斜面部品120が近接する方向に付勢荷重を常時付与し続けることができるため、設置後に母材板1に疲労亀裂2が開口する方向の過大荷重が作用してストップホール3が荷重方向に大きく延伸した場合に追随して適切なくさび荷重Wを自動的に付与することができる。
図14は第七の実施形態による疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し機構を補修用くさび部材に取り付けた状態を示す図であり、図14(a)は正面図、図14(b)はB−B’断面図である。構造を分かりやすくするため、図14(b)においては斜面部品及び母材板を断面で表し、取り外し機構は見取り図としている。なお、上記した実施形態と同一機能部材については同一符号を付して説明を省略する。
本実施形態では、ボルト140に付勢荷重を付与する付勢手段として、プーリー200、張力ワイヤー201、重錘202を有する。ボルト140の頭部に嵌合されたプーリー200には張力ワイヤー201の一端が固定され、張力ワイヤー201の他端には重錘202が吊るされている。これにより、重力Qを利用して張力ワイヤー201に張力Tを生じさせ、ボルト140に締め付け方向のトルクN1を常にかけることができるため、ボルト140は第1斜面部品110及び第2斜面部品120に対して離隔荷重fを常時付与することができる。なお、プーリー200、張力ワイヤー201、及び重錘202に代えて、付勢手段を弦巻ばね等とすることもできる。
図15は第八の実施形態による疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し機構を補修用くさび部材に取り付けた状態を示す図であり、図15(a)は正面図、図15(b)はB−B’断面図である。構造を分かりやすくするため、図15(b)においては斜面部品及び母材板を断面で表し、取り外し機構は見取り図としている。なお、上記した実施形態と同一機能部材については同一符号を付して説明を省略する。
本実施形態では、ボルト140に付勢荷重を付与する付勢手段として、付勢用ばね210を有する。付勢用ばね210は、例えばコイルばねであり、ボルト雌ねじ130の内径よりもやや小さい外径と、ストップホール3に設置したときの平行部110Aと第2斜面部品120との間隔よりも十分に大きい自然長を有する。
付勢用ばね210は、ボルト140の先端と第2斜面部品120の表側との間に挟まれるようにボルト雌ねじ130内へ挿入され、ボルト140を締め付け方向に回すことにより圧縮状態で保持される。これにより、第1斜面部品110及び第2斜面部品120に対して離隔荷重fを常時付与することができる。
次に、第四から第六の実施形態における第1斜面部品110及び第2斜面部品120をストップホール3に装着して近接荷重付与手段により第2斜面部品120を第1斜面部品110上にせり上がらせてくさび荷重Wを発生させた後、第1斜面部品110及び第2斜面部品120をストップホール3から取り外す必要が生じた場合の取り外し方法について説明する。
図16は疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し方法のフローその4である。
まず、第1斜面部品110に嵌合させたボルト140の先端が第2斜面部品120に当接するまでボルト140をねじ込み、離隔荷重を発生させる(S71:離隔荷重付与ステップ)。なお、第五の実施形態における補修用くさび部材100の場合は、離隔荷重付与ステップS71の前に初期締め付け用ボルト170を取り外しておくか、十分に緩めておく。また、第六の実施形態における補修用くさび部材100の場合は、離隔荷重付与ステップS71の前にU字形棒191等を取り外しておく。
離隔荷重付与ステップS71の後、ボルト140をさらにねじ込んで第2斜面部品120の動きを観察する(S72:動き観察ステップ)。
次に、動き観察ステップS72でボルト140をねじ込んだときに第2斜面部品120が無理なく動くか否かを判断する(S73:動き判断ステップ)。第2斜面部品120が無理なく動くとは、例えば、第2斜面部品120の動きによってストップホール3の孔端が削られる虞がない場合である。
動き判断ステップS73において、第2斜面部品120が無理なく動くと判断した場合は、ボルト140をくさび荷重Wが解放されるまで回し込む操作を行い、補修用くさび部材100全体をストップホール3から取り外して(S74:くさび部材取り外しステップ)、取り外し方法のフローその4を終了する。
このように、ストップホール3からの取り外し時に、ボルト140(取り外し荷重付与手段)により離隔荷重(取り外し荷重)を付与して第2斜面部品120を第1斜面部品から遠ざけることで、補修用くさび部材100を安全かつ確実に取り外すことができる。
一方、動き判断ステップS73において、第2斜面部品120が無理なく動かないと判断した場合は、ストップホール3を上下に広げるような荷重を人為的に負荷できるか否かを判断する(S75:人為的負荷判断ステップ)。
人為的負荷判断ステップS75において、ストップホール3を上下に広げるような荷重を人為的に負荷できると判断した場合は、そのような荷重を負荷する(S76:荷重負荷ステップ)。荷重負荷ステップS76の後は、動き観察ステップS72に戻り同様のステップを繰り返す。このように、離隔荷重を付与しても第2斜面部品120が動かない場合に、構造物に強制的な外荷重を作用させ、補修用くさび部材100の全体をストップホール3から取り外し可能とすることで、早期に補修用くさび部材100を取り外すことができる。強制的な外荷重は、例えば構造物が船舶、海洋構造物、クレーン等の工作機械の場合、載荷物を増したり、橋梁や道路の場合、重い車両を走らせたり重量物を載置したりすること等により可能である。
一方、人為的負荷判断ステップS75において、ストップホール3を上下に広げるような荷重を人為的に負荷できないと判断した場合は、後述する取り外し方法のフローその5に移行する。
図17は疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し方法のフローその5である。
本フローでは、第七又は第八の実施形態による取り外し機構を用いる。
まず、ボルト140に付勢手段(プーリー200、張力ワイヤー201及び重錘202、又は付勢用ばね210)を装着し、第1斜面部品110と第2斜面部品120の間に離隔荷重を常時付与する(S81:離隔荷重常時付与ステップ)。
離隔荷重常時付与ステップS81の後は、付勢手段が装着された補修用くさび部材100を、ストップホール3を設けた構造物に稼働時の外力(引張荷重)Pが作用する状態で放置する(S82:放置ステップ)。そして、ストップホール3を上下に広げるような大きな引張荷重Pが作用するのを待つ。補修用くさび部材100を付勢手段が装着された状態のまま一定期間放置しておくと、構造物及びストップホール3を開けた母材板1には確率的な外荷重が作用するが、そのうち相対的に過大な引張荷重Pが作用した場合にはくさび荷重Wが解放され、第七の実施形態の場合は重錘202が下がってプーリー200が回転することにより、また第八の実施形態の場合は付勢用ばね210が伸長することにより、離隔荷重によって第2斜面部品120が第1斜面部品110の斜面上をずり下がり、過大な引張荷重Pが除荷された後でも補修用くさび部材100とストップホール3の上下端との間に作用していたくさび荷重Wが解放され、補修用くさび部材100を取り外すことが可能となる。
放置ステップS82における放置を開始して一定期間を経過した後、第2斜面部品120が作動した(動いた)か否かを判断する(S83:第2斜面部品作動判断ステップ)。
第2斜面部品作動判断ステップS83において、第2斜面部品120の作動があったと判断した場合は、ボルト140をくさび荷重Wが解放されるまで回し込む操作を行い、補修用くさび部材100全体をストップホール3から取り外して(S84:くさび部材取り外しステップ)、取り外し方法のフローその5を終了する。なお、第八の実施形態のくさび部材取り外しステップS84においては、まずボルト140及び付勢用ばね210を取り外し、第四の実施形態による疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し機構で用いたような十分にボルト雌ねじ130よりも軸部の長いボルトを改めて螺入して回し込むことにより、より確実に補修用くさび部材100全体をストップホール3から取り外すことができる。
一方、第2斜面部品作動判断ステップS83において、第2斜面部品120の作動がなかったと判断した場合は、放置ステップS82に戻り同様のステップを繰り返す。
下表2は、補修用くさび部材100の取り外し方法をまとめた表である。
Figure 0006864203
表2において、状況例1は、第1斜面部品110及び第2斜面部品120をストップホール3に設置する時に誤って、目標トルク以下の比較的小さなトルクではあるが締め込んでしまった場合である。この場合は、取り外し方法のフローその4に基づき、ボルト140を用いた取り外しを行うことで、第1斜面部品110及び第2斜面部品120をすぐに取り外すことができる。
また、状況例2は、第1斜面部品110及び第2斜面部品120をストップホール3に目標トルクまで締め込んで設置した後、工程変更により第1斜面部品110及び第2斜面部品120を取り外す場合である。この場合は、くさび荷重Wが状況例1よりも大きいが、取り外し方法のフローその4に基づきボルト140を締め込むことで第2斜面部品120が無理なく動くのであれば、第1斜面部品110及び第2斜面部品120をすぐに取り外すことができる。一方、第2斜面部品120が無理なく動かないのであれば、取り外し方法のフローその5に基づき、第七又は第八の実施形態による取り外し機構を用いた取り外しを行うことで、取り外し作業を開始してから一定期間経過後に、第1斜面部品110及び第2斜面部品120を取り外すことができる。
また、状況例3は、第1斜面部品110と第2斜面部品120に掛け回された弾性バンド150等が自動調節手段として第2斜面部品120が第1斜面部品110上にせり上がる方向の近接荷重を継続的に付与し、設置後に母材板1に疲労亀裂2が開口する方向の過大荷重が作用してストップホール3が荷重方向に大きく延伸した場合に補修用くさび部材100が追随して適切なくさび荷重Wを自動的に付与する場合である。この場合は、くさび荷重Wが状況例2よりも大きいが、取り外し方法のフローその5に基づき、第七又は第八の実施形態による取り外し機構を用いた取り外しを行うことで、取り外し作業を開始してから一定期間経過後に、第1斜面部品110及び第2斜面部品120を取り外すことができる。
なお、上記実施形態においては、取り外し方法のフローその4から取り外し方法のフローその5へ移行するものとして説明したが、これに限らず、取り外し方法のフロー5を独立して行うこともできる。
また、上記実施形態においては、疲労亀裂2の先端部に設けたストップホール3に適用した補修用くさび部材100、及びその取り外し機構を説明したが、補修用くさび部材100、及びその取り外し機構は、疲労亀裂2の基部及び先端部以外の亀裂経路上に設けたドリル孔であるウェッジホールについても同様に使用できる。また、ストップホール3とウェッジホールを併設して両方に使用することもできる。
また、補修用くさび部材100の取り外し機構は、第1斜面部品110及び第2斜面部品120をストップホール3又はウェッジホールに装着してくさび荷重Wを発生させた後、くさび荷重Wを小さくする必要が生じた場合に、第2斜面部品120を第1斜面部品110の平行部110Aの後面から遠ざける手段としても使用することができる。
また、補修用くさび部材100がストップホール3又はウェッジホールに装着された状態において、点検時にボルト140を回し込んで第2斜面部品120に軽く当接させることにより、第1斜面部品110の平行部110Aと第2斜面部品120との距離を測定し、その時点におけるストップホール3又はウェッジホールの変形量を推定することができる。
下表3は、斜面部品の傾斜方向に応じた装着荷重付与手段と取り外し荷重付与手段の適用をまとめた表である。
Figure 0006864203
表3において、上段は、第一から第三の実施形態における斜面部品(図1、3、4)のように、はめ込み部11Bの高さが平行部11Aに近いほど小さくなっていることで、第1斜面部品110と第2斜面部品120との接触面が右側視において右上がりの傾斜方向となっている場合であり、下段は、第四から第八の実施形態における斜面部品(図8、10、12、14、15)のように、はめ込み部110Bの高さが平行部110Aに近いほど大きくなっていることで、第1斜面部品110と第2斜面部品120との接触面が右側視において右下がりの傾斜方向となっている場合である。
表3に示すように、第1斜面部品11と第2斜面部品12との接触面が右側視において右上がりの傾斜方向である補修用くさび部材10には、設置後に母材板1に疲労亀裂2が開口する方向の過大荷重が作用してストップホール3が荷重方向に大きく延伸した場合に追随して適切なくさび荷重Wを自動的に付与する装着荷重の自動調節手段として、第七の実施形態における張力ワイヤー201及び重錘202を有するプーリー200、もしくは弦巻ばね等をボルト14の頭部に嵌着もしくは固着するか、又は第八の実施形態における付勢用ばね210等の弾性体をボルト14の先端と第2斜面部品12の表側との間に挿入して、ボルト14による離隔荷重を常時付与することができる。
また、補修用くさび部材10には、取り外し荷重としての近接荷重を付与しても第2斜面部品12が動かない場合に付勢荷重を付与する付勢手段として、上記した実施形態における付勢手段30の他、第四又は第五の実施形態における弾性バンド150を第1斜面部品11と第2斜面部品12の周囲に装着するか、又は上記第七の実施形態と同様に、張力ワイヤー201及び重錘202を有するプーリー200もしくは弦巻ばね等を取り外し用ボルト21の頭部に嵌着もしくは固着して常時締め込む側のトルクを負荷して、近接荷重を常時付与することができる。
一方、第1斜面部品110と第2斜面部品120との接触面が右側視において右下がりの傾斜方向である補修用くさび部材100には、上記した実施形態における近接荷重付与手段の他、第二の実施形態における近接荷重付与手段(U字形棒25、ナット27)を適用することができる。
本発明は、船舶、海洋構造物、橋梁、道路、車輛、航空機、又は輸送・工作機械等の各種構造物について、ストップホールやウェッジホールからの亀裂再発の防止や再発亀裂の進展の抑制に用いる補修用くさび部材の取り付け、取り外しに利用することができる。
1 母材板(構造物)
2 疲労亀裂
3 ストップホール
10、100 補修用くさび部材
11、110 第1斜面部品
12、120 第2斜面部品
13、130 ボルト雌ねじ
14、140 ボルト
21 取り外し用ボルト(係止手段)
22、160 長穴
23 取り外し用ボルト雌ねじ
24、190 雄ねじ
25、191 U字形棒
26、192 板
27、193 ナット
30 付勢手段(コイルばね)
150 弾性バンド
170 初期締め付け用ボルト
180 初期締め付け用ボルト雌ねじ
194 ばね
S1、S41、S51、S61 載置ステップ
S2 係止ステップ
S3、S44、S54、S63 はめ込みステップ
S6、S45、S56、S66 くさび荷重発生ステップ
S7 取り外し用ボルトの扱い判断ステップ
S12 ボルト弛緩ステップ
S15 近接荷重付与ステップ
S17、S25、S36、S74、S84 くさび部材取り外しステップ
S32 付勢手段装着ステップ
S42、S52 弾性バンド装着ステップ
S43、S53、S62 位置調節ステップ
S71 離隔荷重付与ステップ
S72 動き観察ステップ
S73 動き判断ステップ
S75 人為的負荷判断ステップ
S81 離隔荷重常時付与ステップ
S82 放置ステップ
S83 第2斜面部品作動判断ステップ
P 外力(外荷重、引張荷重)
T 張力
W くさび荷重

Claims (21)

  1. 構造物に生じた疲労亀裂に対して設けたストップホール及び/又はウェッジホールにはめ込んで前記構造物の応力変動幅を抑制するための斜面を有した第1斜面部品と、前記第1斜面部品上を摺動する斜面を有した第2斜面部品と、前記第2斜面部品が前記第1斜面部品上を摺動しせり上がる方向の荷重を付与する装着荷重付与手段を備えた補修用くさび部材の取り外しに用いる取り外し機構であって、
    前記第2斜面部品が前記第1斜面部品上を摺動しずり下がる方向の荷重を付与する取り外し荷重付与手段を備え、前記補修用くさび部材の前記ストップホール及び/又は前記ウェッジホールからの取り外し時に、前記取り外し荷重付与手段により取り外し荷重を付与することを特徴とする疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し機構。
  2. 前記装着荷重付与手段として、前記第1斜面部品に形成されたボルト雌ねじに嵌合する前記第2斜面部品を離隔する方向に離隔荷重を付与するボルトと、前記取り外し荷重付与手段として、前記第1斜面部品と前記第2斜面部品が近接する方向に近接荷重を付与する近接荷重付与手段を備え、前記補修用くさび部材の前記ストップホール及び/又は前記ウェッジホールからの取り外し時に、前記近接荷重付与手段により前記近接荷重を付与することを特徴とする請求項1に記載の疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し機構。
  3. 前記近接荷重付与手段として、前記第1斜面部品と前記第2斜面部品とを係止する係止手段を兼ねた取り外し用ボルトと、前記第1斜面部品に開けた前記取り外し用ボルトが自在に貫通する長穴と、前記第2斜面部品に形成した前記取り外し用ボルトが嵌合する取り外し用ボルト雌ねじとを有したことを特徴とする請求項2に記載の疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し機構。
  4. 前記近接荷重付与手段として、端部に雄ねじを有し前記第2斜面部品の周囲に装着されるU字形棒と、前記第2斜面部品を挟みこむために前記第1斜面部品に当接し前記U字形棒が貫通する貫通穴を有した板と、前記U字形棒の前記雄ねじに嵌合するナットとを有したことを特徴とする請求項2に記載の疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し機構。
  5. 前記装着荷重付与手段として、前記第1斜面部品と前記第2斜面部品が近接する方向に近接荷重を付与する近接荷重付与手段と、前記取り外し荷重付与手段として、前記第1斜面部品に形成されたボルト雌ねじに嵌合する前記第2斜面部品が離隔する方向に離隔荷重を付与するボルトを備え、前記補修用くさび部材の前記ストップホール及び/又は前記ウェッジホールからの取り外し時に、前記ボルトにより前記離隔荷重を付与することを特徴とする請求項1に記載の疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し機構。
  6. 前記近接荷重付与手段として、前記第1斜面部品と前記第2斜面部品の周囲に装着され張力を発生する弾性バンドを備えたことを特徴とする請求項5に記載の疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し機構。
  7. 前記近接荷重付与手段として、前記第1斜面部品と前記第2斜面部品の周囲に装着され張力を発生する弾性バンドと、前記第1斜面部品に開けた長穴に貫通する初期締め付け用ボルトと、前記第2斜面部品に形成した前記初期締め付け用ボルトが嵌合する初期締め付け用ボルト雌ねじを備えたことを特徴とする請求項5に記載の疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し機構。
  8. 前記近接荷重付与手段として、端部に雄ねじを有し前記第2斜面部品の周囲に装着されるU字形棒と、前記第2斜面部品を挟みこむために前記第1斜面部品に当接し前記U字形棒が貫通する貫通穴を有した板と、前記U字形棒の前記雄ねじに嵌合するナットと、前記板と前記ナットの間に装着されるばねを備えたことを特徴とする請求項5に記載の疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し機構。
  9. 請求項3に記載の疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し機構を用いた前記補修用くさび部材の装着方法であって、
    前記第1斜面部品の上に前記第2斜面部品を載置する載置ステップと、
    前記取り外し用ボルトを前記第1斜面部品の前記長穴に通して先端を前記第2斜面部品の前記取り外し用ボルト雌ねじに回し入れ、前記第1斜面部品と前記第2斜面部品を係止させる係止ステップと、
    係止された前記第1斜面部品と前記第2斜面部品を前記ストップホール及び/又は前記ウェッジホールにはめ込むはめ込みステップと、
    前記ボルトを回して前記離隔荷重を付与し、前記第2斜面部品を前記第1斜面部品上にせり上がらせてくさび荷重を発生させるくさび荷重発生ステップを備えたことを特徴とする疲労亀裂の補修用くさび部材の装着方法。
  10. 前記くさび荷重発生ステップの後、前記取り外し用ボルトを引き続き前記係止手段として用いるかを判断し、用いない場合は前記取り外し用ボルトを一旦外す取り外し用ボルトの扱い判断ステップを備えたことを特徴とする請求項9に記載の疲労亀裂の補修用くさび部材の装着方法。
  11. 請求項6に記載の疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し機構を用いた前記補修用くさび部材の装着方法であって、
    前記第1斜面部品の上に前記第2斜面部品を載置する載置ステップと、
    前記第1斜面部品と前記第2斜面部品の周囲に前記弾性バンドを掛け回す弾性バンド装着ステップと、
    前記ボルトをねじ込む方向に操作し、前記第1斜面部品と前記第2斜面部品の位置関係を調節する位置調節ステップと、
    前記弾性バンドの掛け回された前記第1斜面部品と前記第2斜面部品を前記ストップホール及び/又は前記ウェッジホールにはめ込むはめ込みステップと、
    前記ボルトを緩める方向に操作して前記弾性バンドの張力により前記第2斜面部品を前記第1斜面部品上にせり上がらせてくさび荷重を発生させるくさび荷重発生ステップを備えたことを特徴とする疲労亀裂の補修用くさび部材の装着方法。
  12. 請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し機構を利用した前記補修用くさび部材の取り外し方法であって、
    前記第2斜面部品に前記離隔荷重を付与している前記ボルトを緩めるボルト弛緩ステップと、
    前記近接荷重付与手段を操作して前記近接荷重を付与する近接荷重付与ステップと、
    前記近接荷重付与手段をさらに操作して前記補修用くさび部材の全体を前記ストップホール及び/又は前記ウェッジホールから取り外すくさび部材取り外しステップを備えたことを特徴とする疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し方法。
  13. 前記近接荷重付与ステップにおいて、前記取り外し用ボルトを前記取り外し用ボルト雌ねじにねじ込み前記第1斜面部品と前記第2斜面部品が近接する方向に前記近接荷重を付与することを特徴とする請求項3を引用する請求項12に記載の疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し方法。
  14. 前記取り外し用ボルトを一旦取り外している場合に、前記近接荷重付与ステップ以前において前記取り外し用ボルトを前記取り外し用ボルト雌ねじに嵌合させることを特徴とする請求項13に記載の疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し方法。
  15. 前記近接荷重付与ステップにおいて、前記U字形棒を前記ストップホール及び/又は前記ウェッジホールと前記第1斜面部品及び前記第2斜面部品との間から差し込み前記第2斜面部品の裏側に引っ掛け、前記板を前記第1斜面部品に当接させて前記貫通穴から前記端部を前面に臨ませて装着し、前記端部の前記雄ねじに前記ナットを嵌合させてねじ込み、前記板を介して前記第1斜面部品と前記第2斜面部品が近接する方向に前記近接荷重を付与することを特徴とする請求項4を引用する請求項12に記載の疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し方法。
  16. 前記近接荷重付与ステップにおいて、前記近接荷重を付与しても前記第2斜面部品が動かない場合に、前記近接荷重付与手段に付勢荷重を付与する付勢手段を装着する付勢手段装着ステップをさらに備え、
    前記付勢手段にて前記第1斜面部品と前記第2斜面部品が近接する方向に前記付勢荷重を常時付与し続けることにより、前記構造物に作用する確率的な外荷重により前記補修用くさび部材の全体を前記ストップホール及び/又は前記ウェッジホールから取り外し可能とすることを特徴とする請求項12から請求項15のいずれか1項に記載の疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し方法。
  17. 前記付勢手段として、コイルばね、もしくは板ばねを用いることを特徴とする請求項16に記載の疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し方法。
  18. 前記近接荷重付与ステップにおいて、前記近接荷重を付与しても前記第2斜面部品が動かない場合に、前記構造物に強制的な外荷重を作用させ、前記補修用くさび部材の全体を前記ストップホール及び/又は前記ウェッジホールから取り外し可能とすることを特徴とする請求項12から請求項15のいずれか1項に記載の疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し方法。
  19. 請求項5から請求項8のいずれか1項に記載の疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し機構を利用した前記補修用くさび部材の取り外し方法であって、
    前記第1斜面部品に嵌合させた前記ボルトの先端が第2斜面部品に当接するまで前記ボルトをねじ込み離隔荷重を発生させる離隔荷重付与ステップと、
    前記ボルトをさらにねじ込んで第2斜面部品の動きを観察する動き観察ステップと、
    第2斜面部品が無理なく動くかを判断する動き判断ステップと、
    無理なく動く場合は、前記ボルトをくさび荷重が解放されるまで操作して、前記補修用くさび部材の全体を前記ストップホール及び/又は前記ウェッジホールから取り外すくさび部材取り外しステップを備えたことを特徴とする疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し方法。
  20. 前記動き判断ステップの判断結果として、無理なく動かないと判断した場合は、さらに前記ストップホール及び/又は前記ウェッジホールを上下に広げる荷重を人為的に負荷できるかを判断する人為的負荷判断ステップをさらに備え、人為的に負荷できることが可能な場合は、前記上下に広げる荷重を人為的に負荷し、前記動き観察ステップと、前記動き判断ステップを繰り返すことを特徴とする請求項19に記載の疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し方法。
  21. 前記人為的負荷判断ステップでの判断として、人為的に負荷できることが不可能な場合は、前記ボルトに付勢手段を装着し前記第1斜面部品と前記第2斜面部品の間に離隔荷重を常時付与する離隔荷重常時付与ステップと、前記ストップホール及び/又は前記ウェッジホールを設けた前記構造物に稼働時の外力が作用する状態で放置する放置ステップと、前記放置後の一定期間後に前記第2斜面部品の作動を判断する第2斜面部品作動判断ステップをさらに備え、前記第2斜面部品の前記作動があったと判断した場合は、前記くさび部材取り外しステップを実行し、前記第2斜面部品の前記作動がなかったと判断した場合は、前記放置ステップと前記第2斜面部品作動判断ステップを繰り返すことを特徴とする請求項20に記載の疲労亀裂の補修用くさび部材の取り外し方法。
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