JP6860628B2 - バナジウム化合物の製造方法及び製造装置並びにレドックス・フロー電池用電解液の製造方法及び製造装置 - Google Patents

バナジウム化合物の製造方法及び製造装置並びにレドックス・フロー電池用電解液の製造方法及び製造装置 Download PDF

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Description

本発明は、バナジウム化合物の製造方法及び製造装置に関する。詳細には、本発明は、燃焼灰などからバナジウム化合物を分離するための製造方法及び製造装置に関する。他の観点から、本発明は、バナジウム化合物を用いてレドックス・フロー電池用電解液を得るための製造方法及び製造装置に関する。
バナジウムは、大型蓄電池であるレドックス・フロー電池の主要構成物である電解液の原料として使用されている。バナジウムを含むレドックス・フロー電池(バナジウム・レドックス・フロー電池)では、電解液の構成物として、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)などの夾雑金属化合物を含まない安価な高純度バナジウムが求められている。
例えば、特許文献1では、燃焼灰を原料として、鉄等の夾雑金属化合物の少ないバナジウム化合物を回収する技術が提案されている。この方法では、焼却灰をアルカリ性溶液に浸漬し、焼却灰からバナジウムをアルカリ性溶液中に浸出させて浸出液スラリーを得るアルカリ浸出工程と、アルカリ浸出工程で得られた浸出液スラリーを固液分離し、不溶物を除去して浸出液を得る固液分離工程と、固液分離後の浸出液に酸を添加し酸性にするpH調整工程と、pH調整後の浸出液に析出物が析出するまで熟成する熟成工程と、熟成工程後の浸出液から析出物を分離する分離工程と、を有する。
特許文献2には、集塵機灰を水で洗浄しながらpH調整を行った後、洗浄残渣と洗浄廃水とに固液分離する第1工程と、洗浄残渣にアルカリ溶液を添加して加熱した後、第1ろ液と第1ろ過残渣とに固液分離する第2工程と、第1ろ液中からバナジン酸アルカリを析出させた後、第2ろ液と第2ろ過残渣とに固液分離する第3工程と、第2ろ過残渣を酸で中和するとともに、洗浄廃水を混合して、生成した五酸化バナジウムを含む第3ろ過残渣を固液分離により取り出す第4工程と、第3ろ過残渣をか焼還元して四酸化二バナジウムを生成する第5工程と、四酸化二バナジウムを硫酸に溶解して硫酸バナジル電解液を製造する第6工程と、を有するレドックス・フロー電池用電解液の製造方法が開示されている。
国際公開2017/208471号 特開2019−46723号公報
燃焼灰は、原油など重質油を常圧蒸留した常圧蒸留残渣油や減圧蒸留して得られる減圧蒸留残渣油、オイルコークス、オイルサンドなどを燃焼したものであり、バナジウム(V)の他に、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)などの複数の金属が含まれる。通常、燃焼灰中のバナジウム含量(濃度)は少ない。燃焼灰から、選択的にバナジウムを高収率で浸出液に抽出するためには、固形分(燃焼灰)に対して多くのアルカリ溶液を投入する必要があり、実用的な安価な処理コストを達成することが困難であった。
また、特許文献1の方法によれば、多くのアルカリを含む浸出液のpH調整のため、多くの酸性化薬剤が必要であり、薬剤コスト増加の要因となっている。さらには、熟成工程後に析出物を分離した浸出液中に残存するバナジウムを回収するために、これをアルカリ浸出工程にリサイクルすることが好ましいが、浸出液が酸性に調整されているため、再度アルカリ溶液の投入が必要となり、多大なコストや手間がかかるという問題があった。
特許文献2では、バナジウムを含む洗浄残渣からバナジウムを抽出するために、アルカリ溶液添加後に加熱処理が行われており、エネルギー的な負担が生じている。また、特許文献2によれば、第3工程で得られる第2ろ液を回収して、第2工程のアルカリ溶液として再利用することにより、薬剤コストを低減する工夫がなされているが、バナジウム源である燃焼灰に硫酸イオンが多く含まれている場合、結果的に、得られる第2ろ過残渣中の硫酸アルカリ塩が増加して、製品純度低下の要因となっている。
例えば、アルカリ浸出液からバナジウムを含む固形分(ケーキ)として回収する方法として、蒸発晶析又は冷却晶析が知られている。この手法において、バナジン酸アルカリ塩と硫酸アルカリ塩との溶解度差を利用することにより、夾雑物である硫酸アルカリ塩含有量は低減されうる。しかし、アルカリの含有量が大きく高粘度のアルカリ浸出液の場合、蒸発濃縮や温度調整に要するエネルギー負担が増加するという問題があった。また、スケーリングの発生に起因する製造トラブルやスケール除去による製造効率の低下等も、課題となっていた。
本発明の目的は、製造トラブルが低減され、効率よく高純度バナジウム化合物を製造する方法の提供にある。
本発明者らは、オルトバナジン(V)酸ナトリウムなどのバナジウム化合物の溶解度と、硫酸ナトリウムなどの硫酸アルカリの溶解度とが、温度及びアルカリ濃度の条件によって異なることに着目し、さらには硫酸アルカリが溶解し、かつオルトバナジン(V)酸アルカリが析出する最適な温度及びアルカリ濃度の条件を見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明に係るバナジウム化合物の製造方法は、
(1)硫酸アンモニウム及び/又は硫酸水素アンモニウムからなる硫安分と、硫酸と、バナジウムと、を少なくとも含有する原料灰に、アルカリ及び水、又はアルカリ溶液を、pH13以上となる量で添加して、バナジウムを液相に浸出させ、バナジウムを含むアルカリ浸出液を得る、アルカリ抽出工程、
(2)アルカリ浸出液を固液分離して、バナジウムを含む浸出ろ液を得る、固液分離工程、
(3)浸出ろ液を蒸発濃縮して濃縮液を得る、蒸発濃縮工程、
(4)濃縮液に、さらにアルカリ又はアルカリ溶液を添加して、濃度調整液を得る、アルカリ濃度調整工程
及び
(5)濃度調整液を所定の冷却温度に冷却して晶析し、バナジウム化合物を含む析出物を固形分として回収する晶析・固液分離工程
を含む。ここで、冷却温度において、バナジウム化合物が飽和濃度以上、かつ、硫酸アルカリが飽和濃度以下となるように、濃度調整液のアルカリ濃度を調整する。
好ましくは、アルカリは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物である。好ましくは、アルカリ濃度調整工程において、濃度調整液のアルカリ濃度を、10質量%以上25質量%以下に調整する。
好ましくは、この製造方法は、アルカリ抽出工程前に、原料灰を、pH6未満の条件で洗浄する原料灰洗浄工程をさらに含む。
好ましくは、アルカリ抽出工程において、10℃以上50℃未満の温度で、バナジウムを液相に浸出させる。
本発明に係るレドックス・フロー電池用電解液の製造方法は、
(1)硫酸アンモニウム及び/又は硫酸水素アンモニウムからなる硫安分と、硫酸と、バナジウムと、を少なくとも含有する原料灰に、アルカリ及び水、又はアルカリ溶液を、pH13以上となる量で添加して、バナジウムを液相に浸出させ、バナジウムを含むアルカリ浸出液を得る、アルカリ抽出工程、
(2)アルカリ浸出液を固液分離して、バナジウムを含む浸出ろ液を得る、固液分離工程、
(3)浸出ろ液を蒸発濃縮して濃縮液を得る、蒸発濃縮工程、
(4)濃縮液に、さらにアルカリ又はアルカリ溶液を添加して、濃度調整液を得る、アルカリ濃度調整工程、
(5)濃度調整液を所定の冷却温度に冷却して晶析し、バナジウム化合物を含む析出物を固形分として回収する晶析・固液分離工程
及び
(6)バナジウム化合物を含む析出物を原料として、レドックス・フロー電池用電解液を製造する、電解液製造工程
を含む。ここで、冷却温度において、バナジウム化合物が飽和濃度以上、かつ、硫酸アルカリが飽和濃度以下となるように、濃度調整液のアルカリ濃度を調整する。
他の観点から、本発明に係るバナジウム化合物の製造装置は、硫酸アンモニウム及び/又は硫酸水素アンモニウムからなる硫安分と、硫酸と、バナジウムと、を少なくとも含有する原料灰に、アルカリ及び水、又はアルカリ溶液を、pH13以上となる量で添加して、バナジウムを液相に浸出させ、バナジウムを含むアルカリ浸出液を得る、アルカリ抽出手段と、アルカリ浸出液を固液分離して、バナジウムを含む浸出ろ液を得る、固液分離手段と、浸出ろ液を蒸発濃縮して濃縮液を得る、蒸発濃縮手段と、濃縮液に、さらにアルカリ又はアルカリ溶液を添加して、濃度調整液を得る、アルカリ濃度調整手段と、濃度調整液を所定の冷却温度に冷却して晶析し、バナジウム化合物を含む析出物を固形分として回収する晶析・固液分離手段と、を備えている。この製造装置では、アルカリ濃度調整手段により、冷却温度において、バナジウム化合物が飽和濃度以上、かつ、硫酸アルカリが飽和濃度以下となるように、濃度調整液のアルカリ濃度を調整する。
好ましくは、この製造装置は、原料灰にアルカリ及び水、又はアルカリ溶液を添加する前に、この原料灰を洗浄水で洗浄する原料灰洗浄手段と、洗浄時のpHを6未満に調整するpH調整手段と、をさらに備えている。
好ましくは、この製造装置は、原料灰にアルカリ及び水、又はアルカリ溶液を添加して、バナジウムを液相に浸出させる間、その温度を10℃以上50℃未満に制御する温度制御手段を、さらに備えている。
本発明に係るレドックス・フロー電池用電解液の製造装置は、硫酸アンモニウム及び/又は硫酸水素アンモニウムからなる硫安分と、硫酸と、バナジウムと、を少なくとも含有する原料灰に、アルカリ及び水、又はアルカリ溶液を、pH13以上となる量で添加して、バナジウムを液相に浸出させ、バナジウムを含むアルカリ浸出液を得る、アルカリ抽出手段と、アルカリ浸出液を固液分離して、バナジウムを含む浸出ろ液を得る、固液分離手段と、浸出ろ液を蒸発濃縮して濃縮液を得る、蒸発濃縮手段と、濃縮液に、さらにアルカリ又はアルカリ溶液を添加して、濃度調整液を得る、アルカリ濃度調整手段と、濃度調整液を所定の冷却温度に冷却して晶析し、バナジウム化合物を含む析出物を固形分として回収する晶析・固液分離手段と、バナジウム化合物を含む析出物を原料として、レドックス・フロー電池用電解液を製造する、電解液製造手段と、を備えている。この製造装置では、アルカリ濃度調整手段により、冷却温度において、バナジウム化合物が飽和濃度以上、かつ、硫酸アルカリが飽和濃度以下となるように、濃度調整液のアルカリ濃度を調整する。
本発明に係る製造方法では、アルカリ抽出工程においてpH13以上となる量でアルカリ及び水、又はアルカリ溶液を添加し、固液分離工程でバナジウムを含む浸出ろ液を回収する。アルカリ抽出工程でpH13以上とすることにより、加熱処理を要することなく、バナジウムを選択的に、高収率で抽出することができる。
この製造方法では、固液分離工程に続いて、蒸発濃縮工程で浸出ろ液を濃縮後、アルカリ濃度調整工程で、得られた濃縮液にさらにアルカリ又はアルカリ溶液を添加して、所定のアルカリ濃度に調整する。蒸発濃縮時の浸出ろ液のアルカリ濃度が低く、大きな沸点上昇が生じないため、蒸発濃縮に要するエネルギー負担が低減される。また、高濃度のアルカリに起因する、蒸発濃縮中のスケーリングの発生等の製造トラブルが回避されうる。
この製造方法では、アルカリ濃度調整工程後に、晶析・固液分離工程でバナジウム化合物を含む析出物を回収する。アルカリ濃度調整工程では、晶析・固液分離工程における冷却温度で、バナジウム化合物が飽和濃度以上、かつ、硫酸アルカリが飽和濃度以下となるように、アルカリ濃度が調整される。従って、本発明では従来のように、酸を添加することなく、バナジウム化合物と硫酸アルカリとの溶解度の差によって、バナジウム化合物を選択的に析出させて回収することができる。
このように、本発明に係る製造方法では、蒸発濃縮時に生じうる製造トラブルを回避して、従来よりも安価かつ簡便に、バナジウムを選択的に分離することができる。さらに、製造トラブルを回避して、安価かつ簡便にバナジウムを選択的に分離することによりレドックス・フロー電池用電解液を安価で簡便に、効率よく製造することができる。
また、本発明に係る製造装置では、アルカリ抽出手段によりpH13以上となる量でアルカリ及び水又はアルカリ溶液を添加し、固液分離手段でバナジウムを含む浸出ろ液を回収する。アルカリ抽出手段によりpH13以上とすることにより、加熱手段を要することなく、バナジウムを選択的に、高収率で抽出することができる。
この製造装置では、蒸発濃縮手段により浸出ろ液を濃縮後、アルカリ濃度調整手段で、濃縮液にさらにアルカリ又はアルカリ溶液を添加して、所定のアルカリ濃度に調整する。蒸発濃縮時の浸出ろ液のアルカリ濃度が低く、大きな沸点上昇が生じないため、蒸発濃縮に要するエネルギー負担が低減される。また、高濃度のアルカリに起因する、蒸発濃縮中のスケーリングの発生等の製造トラブルが回避されうる。
この製造装置では、アルカリ濃度調整後に、晶析・固液分離手段でバナジウム化合物を含む析出物を回収する。アルカリ濃度調整手段により、冷却温度において、バナジウム化合物が飽和濃度以上、かつ、硫酸アルカリが飽和濃度以下となるように、アルカリ濃度が調整される。従って、本発明では従来のように、酸の添加手段を要することなく、バナジウム化合物と硫酸アルカリとの溶解度の差によって、バナジウム化合物を選択的に析出させて回収することができる。
このように、本発明に係る製造装置によれば、蒸発濃縮時に生じうる製造トラブルを回避して、従来よりも安価かつ簡便に、バナジウムを選択的に分離することができる。さらに、製造トラブルを回避して、安価かつ簡便にバナジウムを選択的に分離することにより、レドックス・フロー電池用電解液を安価かつ簡便に、効率よく製造することができる。
本発明によれば、製造時のトラブルを回避しつつ、バナジウムを安価で簡便かつ選択的に分離することができるバナジウム化合物の製造方法、及びレドックス・フロー電池用電解液の製造方法、並びにバナジウム化合物の製造装置、及びレドックス・フロー電池用電解液の製造装置を提供することができる。
図1(a)は、本発明の一実施形態に係るバナジウム化合物の製造方法が示されたフローチャートであり、図1(b)は、図1(a)の各工程における成分の推移を示す模式図である。 図2は、異なるアルカリ濃度におけるオルトバナジン酸ナトリウム及び硫酸ナトリウムの飽和濃度を示すグラフである。 図3(a)は、異なる温度とアルカリ濃度におけるオルトバナジン酸ナトリウム(NaVO)の溶解度曲線を示すグラフであり、図3(b)は、硫酸ナトリウム(NaSO:芒硝)の溶解度曲線を示すグラフである。
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。本発明は、その要旨を変更しない範囲で、適宜変更して実施することが可能である。なお、本願明細書において特に言及しない限り、「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味し、「%」は「質量%」を意味する。
図1は、本発明の一実施形態に係るバナジウム化合物の製造方法を示しており、(a)はバナジウム化合物の製造方法の工程を示すフローチャート、(b)は(a)の各工程における成分の推移を示す模式図である。図1(b)中、「バナ」は「バナジウム」を意味し、「Naバナ」は「オルトバナジン酸ナトリウム(NaVO)」を意味する。「硫安」は、硫酸アンモニウム((NHSO)及び/又は硫酸水素アンモニウム(NHHSO)からなり、硫安分とも称される。
本発明のバナジウム化合物の製造方法は、バナジウム及び/又はバナジウム化合物を含有する原料灰から、バナジウム化合物を回収するための方法である。このような原料灰としては、例えば、重質油、常圧蒸留残渣油、減圧蒸留残渣油などの燃焼灰、焼却ボイラ灰、部分酸化灰、石油コークス灰、オイルサンドの残渣灰などを挙げることができる。
図1(a)に示される通り、この実施形態では、まず、原料灰として燃焼灰が準備される(ステップ10)。続いて、アルカリ抽出工程(ステップ12)、固液分離工程(ステップ14)、蒸発濃縮工程(ステップ16)、アルカリ濃度調整工程(ステップ17)及び晶析・固液分離工程(ステップ18)が、順次、実施されて、バナジウム化合物が回収される。図示されないが、回収されたバナジウム化合物は、後述するレドックス・フロー電池用電解液の製造方法に、原料として供される。以下、各工程について詳細に説明する。
(準備工程:ステップ10)
前述した通り、この準備工程では、燃焼灰が準備される(ステップ10)。燃焼灰をそのまま原料灰として使用してもよいし、水などの溶媒に溶解してスラリー状にしたものを原料灰として使用してもよい。
本発明に係る製造方法において、原料灰は、硫安分と、硫酸と、バナジウムと、を少なくとも含んでいる。図1(b)(ステップ10)に示される通り、この実施形態における原料灰(燃焼灰)に含まれる成分は、炭素、硫安、硫酸及びバナジウムである。
原料灰に含まれる硫安分は、通常、質量比で20〜60%程度であり、より一般的には30〜50%程度である。硫安分を多く含む廃棄物としては、石油系燃焼灰などを挙げることができる。また、原料灰に含まれる硫酸は、1〜20質量%(wt%)程度であり、より一般的には5〜10質量%程度である。
原料灰に含まれるバナジウムは、3価、4価、5価の様々な価数の化合物の形態をとっている。具体的にはNH(OH)(SO、VOSO・5HO、V等である。一般に、原料灰に含まれるバナジウムは、0.1〜30質量%程度であり、より一般的には1〜10質量%程度である。
原料灰には、炭素分として、未燃焼カーボンを主成分とする非水溶性固形物(SS分)が含まれる。原料灰に含まれる炭素分は、乾物当たり5〜90質量%程度であり、より一般的には30〜70質量%程度である。
図示されないが、原料灰には、バナジウム以外の他の元素(金属夾雑物)が含まれる場合がある。このような夾雑物の例として、鉄、マグネシウム、ニッケル、コバルト、モリブデン、マンガン、チタン、銅、亜鉛、パラジウム、白金、リン、硫黄等が挙げられる。一般にこれらの金属夾雑物は、硫化物などとして含まれることが多い。一般に、原料灰に含まれるこれらの金属夾雑物は、元素の種類にもよるが、0.1〜20質量%程度であり、より一般的には1〜10質量%程度である。
(アルカリ抽出工程:ステップ12)
アルカリ抽出工程では、原料灰(原料灰そのもの又は原料灰スラリー)に、アルカリ及び水、又はアルカリ溶液を、pH13以上となる量で添加して、液相にバナジウムを浸出させて、バナジウムを含むアルカリ浸出液を得る(ステップ12)。アルカリ浸出液のpHを13以上とすることにより、原料灰中のバナジウム及び/又はバナジウム化合物が選択的に抽出される。pH13以上15以下が好ましく、pH13以上14以下がより好ましい。
本発明に係る製造方法では、得られるアルカリ浸出液のpHが13以上となる量だけ、アルカリを添加すればよく、その添加量は、原料灰の種類及び量に応じて、適宜調整される。換言すれば、この製造方法のアルカリ抽出工程では、バナジウム及び/又はバナジウム化合物の選択的抽出が可能となる、最低限の量に、アルカリ添加量が調整される。好ましくは、アルカリ添加量は、得られるアルカリ浸出液の沸点上昇が5℃以下、より好ましくは1℃以下となるように調整される。アルカリ抽出工程におけるアルカリ添加量がこのように調整されることにより、後述する蒸発濃縮工程において、沸点上昇にともなうエネルギー負担が軽減され、スケーリング等の不具合が回避される。
本工程で使用するアルカリとしては、特に限定されないが、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物が好ましい。その具体例としては、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ルビジウム(RbOH)、水酸化セシウム(CsOH)、水酸化カルシウム(Ca(OH))、水酸化ストロンチウム(Sr(OH))、水酸化バリウム(Ba(OH))等を挙げることができる。これらのうち、入手が容易などの理由から、水酸化ナトリウムが好ましい。
アルカリ浸出液に含まれるアルカリの濃度は、使用されるアルカリの種類により変動する。アルカリとして水酸化ナトリウムを使用する場合、アルカリ浸出液中のアルカリ濃度は、バナジウムの選択的抽出の観点から、0.5質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましい。沸点上昇抑制及び製造トラブル低減の観点から、アルカリ濃度は10質量%以下が好ましく、3.0質量%以下がより好ましい。
アルカリ抽出工程における抽出温度は抽出効率に影響するが、本発明に係る製造方法では、アルカリ浸出液のpHを13以上とすることにより、バナジウムの選択的な抽出が可能となっている。そのため、抽出時に高温での加熱処理を要しない。この製造方法における抽出温度は、後述する蒸発濃縮工程の温度よりも低い温度であり、例えば10℃以上50℃未満であり、10℃〜40℃が好ましく、20℃〜30℃がより好ましい。
(固液分離工程:ステップ14)
固液分離工程では、得られたアルカリ浸出液を固液分離して、バナジウムを含む浸出ろ液を得る(ステップ14)。図1(b)(ステップ12)に示される通り、アルカリ浸出液には、炭素、硫安分、硫酸、バナジウム及びアルカリ(水酸化ナトリウム)が含まれている。本工程では、不溶物である炭素が固形分として除去される。本工程で得られる浸出ろ液に含まれる成分は、図1(b)(ステップ14)に示される通り、硫安分、硫酸、バナジウム及びアルカリである。
本発明に係る製造方法では、アルカリ浸出液を固液分離する方法は特に限定されない。例えば、沈殿分離、遠心分離、吸引ろ過等が適宜選択して用いられる。
好ましくは、本工程後、浸出ろ液を分離した後の固形分(ケーキ)を洗浄する固形分洗浄工程をおこなう。この固形分洗浄工程では、洗浄水を、固形分に含まれる水(固形分含水)の1〜3倍量加えて、洗浄を行う。この工程により、固形分含水からバナジウムを洗浄水に抽出し、回収することができる。アルカリ抽出工程後の固形分が高pHであることから、ケーキ洗浄水もpH12〜13程度となる。そのため、固形分中のバナジウムが溶液状態となり、固形分洗浄によって回収しやすくなるためである。固形分洗浄後の洗浄水(洗浄ろ液)を回収して、浸出ろ液とともに、次の蒸発濃縮工程に供することにより、バナジウムの回収率が向上する。
一方、特許文献2には、固形分洗浄に関する記載はない。また、特許文献2では、pH9以下でアルカリ浸出を行っているため、仮に固形分洗浄を行ったとしても、中性付近のpHで洗浄を行うことになり、バナジウムの新たな抽出は見込めず、むしろニッケル等の金属夾雑物が多く浸出する可能性がある。
(蒸発濃縮工程:ステップ16)
蒸発濃縮工程では、バナジウムを含む浸出ろ液を蒸発濃縮して、濃縮液を得る(ステップ16)。蒸発濃縮方法としては、特に制限はなく、多重効用式蒸発法(MED)、自己蒸気機械圧縮式蒸発法(MVR)、蒸気圧縮式蒸発法(VCD)、真空多段蒸発濃縮式蒸発法(VMEC)、多段フラッシュ式蒸発法(MSF)等が適宜選択して用いられる。省エネルギー及びコストの観点から、自己蒸気機械圧縮式(MVR)が好ましい。
蒸発濃縮温度は、浸出ろ液中の塩濃度にもよるが、70〜130℃であることが好ましい。蒸発濃縮温度が高いと濃縮に必要な投入エネルギー量が多くなり、処理コストが増大するため、減圧下で蒸発させることにより、温度100℃以下、特に80〜90℃で処理することが好ましい。
本工程では、浸出ろ液から水分が蒸気として除去されることにより、減容化される。蒸発濃縮工程後の浸出ろ液(濃縮液)の体積に対する蒸発濃縮工程前の浸出ろ液の体積の割合(濃縮率)は、通常は2〜8倍程度であり、4〜6倍がより好ましい。図1(b)(ステップ16)に示すように、この実施形態では、本工程において浸出ろ液が1/5に減容化される(濃縮率5倍)。減容化された浸出ろ液(濃縮液)中には、硫安分、硫酸イオン、バナジウム及びアルカリが含まれる。蒸発させた水分については、回収して、アルカリ抽出工程における調整水として使用してもよく、後述する原料灰洗浄工程における洗浄水として使用してもよい。
前述した通り、本発明に係る製造方法では、アルカリ抽出工程におけるアルカリ添加量が、バナジウム及び/又はバナジウム化合物の選択的抽出が可能となる、最低限の量に調整されており、好ましくは、沸点上昇が5℃以下、より好ましくは1℃以下となる量に調整されている。この製造方法によれば、蒸発濃縮工程において、沸点上昇にともなうエネルギー負担が軽減され、スケーリング等の不具合が回避される。
本工程で得られる濃縮液中のアルカリ濃度は、アルカリ抽出工程におけるアルカリ添加量及び濃縮率により変動する。蒸発濃縮中のスケーリング等の防止の観点から、濃縮液中のアルカリ濃度は、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
(アルカリ濃度調整工程:ステップ17)
アルカリ濃度調整工程では、得られた濃縮液にさらにアルカリ又はアルカリ溶液を添加して、濃度調整液を得る(ステップ17)。本工程において、濃縮液に添加するアルカリの種類は特に限定されず、アルカリ抽出工程にて前述したアルカリが用いられ得る。本工程で添加するアルカリと、アルカリ抽出工程で添加したアルカリとが同じであってもよく、異なっていてもよい。得られるバナジウム化合物の高純度化及びコスト上の観点から、アルカリ抽出工程で添加したアルカリと同じ種類のアルカリを添加することが、好ましい。図1(b)(ステップ17)に示される通り、この実施形態では、濃縮液にさらに水酸化ナトリウムが添加される。
本発明に係る製造方法では、後述する晶析・固液分離工程での冷却温度において、バナジウム化合物が飽和濃度以上、かつ、硫酸アルカリが飽和濃度以下となるように、濃度調整液のアルカリ濃度を調整する。この条件を満たすように、濃度調整液のアルカリ濃度を調製することにより、後述する晶析・固液分離工程で回収する析出物中への硫酸アルカリの混入が低減され、得られるバナジウム化合物の高純度化が達成される。なお、析出物への硫酸アルカリ混入量に対するアルカリ濃度の作用効果に関しては、後の晶析・固液分離工程において詳述する。
濃度調整液のアルカリ濃度がこの条件を満たす限り、本工程において濃縮液に添加するアルカリ又はアルカリ溶液の量は、特に限定されず、原料灰の種類、濃縮液のアルカリ濃度、添加するアルカリの種類等に応じて適宜調整される。
(晶析・固液分離工程:ステップ18)
晶析・固液分離工程では、得られた濃度調整液を所定の冷却温度に冷却して晶析し、バナジウム化合物を含む析出物を固形分(ケーキとも称される)として回収する(ステップ18)。冷却温度は0〜20℃であることが好ましい。晶析方法としては、冷却機能を備えた水槽、冷却晶析槽や、メタノールなど有機系貧溶媒を加える貧溶媒晶析槽などを用いた方法を挙げることができる。晶析後は、固液分離を行う。固液分離方法としては、シックナー、デカンター、バスケット遠心真空ベルトフィルタなどを用いた方法を挙げることができる。
本工程では、硫安分、硫酸アルカリ及びバナジウム化合物の一部が、それぞれ固形分として析出する。固液分離により固形分と分離された晶析ろ液には、これらの残りとアルカリとが含まれる。図1(b)(ステップ18)に示される通り、この実施形態では、硫酸アルカリとして硫酸ナトリウム(NaSO:芒硝)の一部と、バナジウム化合物としてオルトバナジン酸ナトリウム(NaVO)等の一部とが、それぞれ固形分として析出し、晶析ろ液には、アルカリとして水酸化ナトリウム(NaOH)が含まれる。
バナジウム化合物及び硫酸アルカリの溶解度は、濃度調整液のアルカリ濃度の増加によって低下する。本発明者らの知見によると、晶析時の冷却温度において、バナジウム化合物の溶解度が、硫酸アルカリの溶解度に比べて、極めて低くなるアルカリ濃度領域が存在する。本工程に供する濃度調整液のアルカリ濃度を、この濃度領域に調整することにより、硫酸アルカリの析出を顕著に抑制することが可能となる。
例えば、図2のグラフには、異なるアルカリ濃度におけるNaVOの飽和濃度(実線)及びNaSOの飽和濃度(破線)が示されている。それぞれの濃度が飽和濃度以上では析出し、飽和濃度以下では溶解する。換言すれば、図2の実線及び破線は、それぞれ、NaVO及びNaSOの10℃における溶解度曲線である。
図示される通り、アルカリとしてNaOHを使用する場合、アルカリ濃度10質量%以上25質量%以下の濃度領域で、バナジウム化合物の10℃における溶解度がゼロに漸近する一方、硫酸アルカリの10℃における溶解度が高い範囲に維持される。従って、本工程において、アルカリ濃度10質量%以上25質量%以下に調整した濃度調整液を10℃に冷却した場合、バナジウム化合物が優位に固形分として析出する一方で、ほとんどの硫酸アルカリは晶析ろ液中に残存する。これにより、夾雑物である硫酸アルカリの含有量が極めて少なく、バナジウム化合物を高純度で含む固形分が得られる。得られた固形分は、バナジウム化合物を主成分として精製されたバナジウム原料として回収され(ステップ20)、レドックス・フロー電解液の製造等に使用される。
バナジウム化合物の回収率向上及び硫酸アルカリの析出抑制の観点から、好ましくは、本工程に供される濃度調整液のアルカリ濃度は、10質量%以上25質量%以下に調整される。得られるバナジウム化合物の回収率向上の観点から、濃度調整液のアルカリ濃度は10質量%以上がより好ましく、15質量%以上が特に好ましい。硫酸アルカリの析出抑制の観点から、濃度調整液のアルカリ濃度は30質量%以下がより好ましく、25質量%以下が特に好ましい。
次に、図3を用いて、蒸発濃縮工程から晶析・固液分離工程で、バナジウム化合物が選択的に分離されるメカニズムについて説明する。図3(a)は、異なる温度とアルカリ濃度におけるオルトバナジン酸ナトリウム(NaVO)の溶解度曲線を示すグラフであり、図3(b)は、異なる温度とアルカリ濃度における硫酸ナトリウム(NaSO:芒硝)の溶解度曲線を示すグラフである。図示される通り、いずれの化合物も、温度が高いほど溶解度が高くなる。また、いずれの化合物の溶解度も、アルカリ濃度(NaOH濃度)が高くなるに従って低くなり、ほぼ一定となる。
図3(a)及び(b)において、アルカリ浸出液(30℃の場合)に含まれるNaVO及びNaSOの組成を、それぞれ「濃縮前@30℃」で示す。このアルカリ浸出液を80℃で蒸発濃縮すると、NaVO、NaSO及びアルカリ(NaOH)は液中に残留するため、その濃度変化は原点を通る直線で表される。濃縮後の濃縮液の温度は80℃であり、これに含まれるNaVO及びNaSOの組成を、それぞれ「濃縮後@80℃」で示す。図3(a)及び(b)は、5倍濃縮した場合の例示である。この濃度が80℃の飽和溶解度よりも低ければ(溶解度曲線の下であれば)、その時点で固形物の析出は生じない。
その後、アルカリ濃度調整工程で各濃縮液にさらにアルカリを添加した濃度調整液の、NaVO及びNaSOの組成を、それぞれ「アルカリ添加後@80℃」で示す。このとき、いずれの化合物の濃度も、80℃の飽和溶解度よりも低くなるように(即ち、固形物の析出が生じないように)、アルカリ添加量を調整する。次に、晶析・固液分離工程で、濃度調整液を10℃まで冷却すると、濃度調整液は10℃での飽和溶液の組成に到達し、飽和濃度を超えた各成分が析出し、固形分(ケーキ)として回収される。これに含まれるNaVO及びNaSOの組成を、それぞれ「冷却晶析ろ液@10℃」で示す。
図示される通り、NaVOの「冷却晶析ろ液@10℃」は、NaVOの溶解度曲線がゼロに漸近し下限に近い領域に位置し、NaSOの「冷却晶析ろ液@10℃」は、NaSOの溶解度曲線がゼロに漸近せず、高い溶解度を示す領域に位置している。これにより、バナジウム化合物が高収率で回収されるとともに、硫酸アルカリの析出が抑制される。さらに、晶析・固液分離工程の冷却温度において、バナジウム化合物の濃度が飽和濃度以上、かつ、硫酸アルカリの濃度が飽和濃度以下となるように、濃度調整液のアルカリ濃度を調整することにより、夾雑物である硫酸アルカリを含まず、バナジウム化合物を高純度で含む固形分を回収することができる。これにより、高純度バナジウム化合物を安定して得ることが可能となる。
本発明に係る製造方法によれば、晶析・固液分離工程で得られる固形分中のバナジウム化合物の含有量を30〜40質量%とすることができる。また、固形分を乾燥させた乾物ベースであれば、バナジウム化合物70〜80質量%、硫酸アルカリ2〜5質量%、アルカリ20〜25質量%とすることができる。また、晶析・固液分離工程後に、固形分を水等で洗浄するケーキ洗浄工程を設けると、乾物ベースでバナジウム化合物の含有量を90質量%以上とすることも可能である。
また、前述した通り、本発明に係る製造方法では、蒸発濃縮工程で得られる濃縮液に、さらにアルカリ又はアルカリ溶液を添加することにより、前述の冷却温度において、バナジウム化合物が飽和濃度以上、かつ、硫酸アルカリが飽和濃度以下となるアルカリ濃度に調整される。換言すれば、蒸発濃縮工程で得られる濃縮液のアルカリ濃度は、前述の冷却温度において、バナジウム化合物が飽和濃度以上、かつ、硫酸アルカリが飽和濃度以下となるアルカリ濃度よりも、低い。この製造方法の特徴は、蒸発濃縮後のアルカリ濃度が、前述の冷却温度において、バナジウム化合物が飽和濃度以上、かつ、硫酸アルカリが飽和濃度以下となるアルカリ濃度よりも低くなるように、アルカリ抽出工程で添加するアルカリの量を設定することにある。これにより、蒸発濃縮工程に供される浸出ろ液のアルカリ濃度が低くなり、大幅な粘度増加や沸点上昇が回避されるため、蒸発濃縮に要するエネルギー負担が低減され、かつ、流体ハンドリング性が向上する。また、高濃度のアルカリに起因する、蒸発濃縮中のスケーリングの発生に起因する製造トラブルが回避される。さらに、装置に付着したスケールの除去等に要する時間及び費用が軽減される。
(その他の工程)
本発明の効果が阻害されない限り、この製造方法がさらに他の工程を含んでもよい。この他の工程として、準備工程後アルカリ抽出工程前に原料灰を洗浄する原料灰洗浄工程、準備工程後アルカリ抽出工程前に原料灰を酸化する酸化工程、晶析・固液分離工程で分離された晶析ろ液をアルカリ抽出工程で再利用するリサイクル工程等が挙げられる。
(原料灰洗浄工程)
本工程は、原料灰から溶解性の金属夾雑物及び溶解性塩類(硫安分、硫酸など)を除去する工程である。原料灰の洗浄には、水又はアルカリ溶液を用い、洗浄中の液のpHを、好ましくはpH4〜7、より好ましくはpH5〜6に調整する。さらには、洗浄時のpHが6を越えないことが好ましい。原料灰に対して質量比で2〜20倍の洗浄水の使用が好ましい。アルカリ抽出工程前に原料灰を洗浄することにより、蒸発濃縮工程に供される浸出ろ液中の塩濃度が低減される。そのため、より低い温度で蒸発濃縮を行うことが可能となり、消費エネルギー負担が低減される。さらに、晶析・固液分離工程において、金属夾雑物及び硫酸アルカリ等が低減され、バナジウム化合物を高純度で含むケーキが得られる。この観点から、原料灰洗浄工程後の原料灰中の可溶性成分(溶解性金属夾雑物及び溶解性塩類)の含有量が、5質量%以下となるまで洗浄することが好ましい。
原料灰の洗浄方法は、バッチ法でもよく、連続法でもよい。具体的には、洗浄水添加用の水槽と、固液分離用の真空ベルトフィルタ、バスケット式遠心機、デカンターといった脱水機との組み合わせによる方法を挙げることができる。また、洗浄水添加用の水槽を用いずに真空ベルトフィルタ上へ散水する方法でもよい。洗浄温度は、10〜40℃が好ましく、20〜30℃がより好ましい。洗浄時間は、洗浄方法により異なるが、概ね1秒〜60分程度であり、1〜30分程度が好ましい。
(酸化工程)
本工程は、原料灰に含まれる3価又は4価のバナジウムを、5価のバナジウムに酸化する工程である。原料灰中のバナジウムは3価、4価、5価等、様々な価数の化合物の形態をとっているが、アルカリ抽出工程では、概ね5価のバナジウムが選択的にアルカリ浸出液に溶解し、3価及び4価のバナジウムはほとんど溶解しない。酸化工程において3価又は4価のバナジウムを5価のバナジウムに変換した後、アルカリ抽出工程を実施することにより、バナジウムの回収率が向上する。
原料灰の酸化方法としては、原料灰に酸化性ガス及び/又は酸化剤を添加する方法が挙げられる。酸化性ガスとしては、空気、酸素、オゾン、亜酸化窒素、一酸化窒素、二酸化窒素、塩素等が挙げられる。酸化剤としては、過酸化水素、次亜塩素酸等が挙げられる。
(リサイクル工程)
本工程は、晶析後、固液分離して得た晶析ろ液を、アルカリ抽出工程に返送して、アルカリ溶液として再利用する工程である。晶析ろ液には、アルカリ及び未回収のバナジウムが含まれる。この晶析ろ液をアルカリ抽出工程に返送することにより、得られるバナジウム化合物の収率が向上する。
晶析ろ液の返送は、返送ポンプ、オーバーフロー槽等で行ってもよい。この場合、晶析ろ液の全量をアルカリ溶液としてアルカリ抽出工程で再使用しても良いが、SOの系内蓄積を抑えるため、得られた晶析ろ液の1〜30質量%の範囲で系外へ排出し、残りを使用することが好ましい。
(レドックス・フロー電池用電解液の製造方法)
本発明に係るレドックス・フロー電池用電解液の製造方法は、前述したバナジウム化合物の製造方法で得られたバナジウム化合物を、レドックス・フロー電池用の電解液の原料として用いる方法である。この実施形態では、原料灰の準備工程(ステップ10)、アルカリ抽出工程(ステップ12)、固液分離工程(ステップ14)、蒸発濃縮工程(ステップ16)、アルカリ濃度調整工程(ステップ17)、晶析・固液分離工程(18)及びバナジウム化合物を含む析出物を原料として、レドックス・フロー電池用電解液を製造する、電解液製造工程が、順次、実施されて、レドックス・フロー電池用の電解液が製造される。
本発明に係る製造方法では、蒸発濃縮時に生じうる製造トラブルを回避して、従来よりも安価かつ簡便に、バナジウムを選択的に分離することができる。このバナジウム化合物を原料とすることにより、レドックス・フロー電池用電解液を安価で簡便に、効率よく製造することができる。
レドックス・フロー電池用電解液としては、正極側はバナジウム(V)やバナジウム(IV)が、負極側はバナジウム(III)やバナジウム(II)が用いられている。本発明の方法では、バナジウムは主にオルトバナジン酸ナトリウム(NaVO)などのバナジウム(V)として回収されるため、特に正極側の電解液の製造に好適に使用することができる。しかしながら、本発明はこれに限定されず、例えば回収されたバナジウム(V)を還元してバナジウム(III)やバナジウム(II)とすることで、負極側の電解液の製造に使用してもよい。レドックス・フロー電池用電解液中に含まれるバナジウムの濃度は、特に制限はないが、正極側、負極側いずれも、例えば0.1mol/l〜10mol/lの範囲内、好ましくは1〜3mol/lの範囲内とすることができる。
(バナジウム化合物の製造装置)
本発明のバナジウム化合物の製造装置は、前述したバナジウム化合物の製造方法を実施するための装置として構成することができる。この実施形態のバナジウム化合物の製造装置は、アルカリ抽出手段、固液分離手段、蒸発濃縮手段、アルカリ濃度調整手段及び晶析・固液分離手段を備える。
アルカリ抽出手段は、前述したアルカリ抽出工程を実施する手段であり、原料灰(原料灰そのもの又は原料灰スラリー)に、アルカリ及び水、又はアルカリ溶液を、pH13以上となる量で添加して、液相にバナジウムを浸出させて、バナジウムを含むアルカリ浸出液を得るための手段である。アルカリ抽出手段としては、例えば、アルカリ溶液及び原料灰を混合する撹拌混合槽などを挙げることができる。
固液分離手段は、前述した固液分離工程を実施する手段であり、アルカリ浸出液を固液分離して、炭素等の不溶物を固形分として除去するとともに、バナジウムを含む浸出ろ液を得るための手段である。固液分離手段としては、例えば、アルカリ浸出液から固形分を分離する脱水機等を挙げることができる。
蒸発濃縮手段は、前述した蒸発濃縮工程を実施する手段であり、バナジウムを含む浸出ろ液を蒸発濃縮して、濃縮液を得るための手段である。蒸発濃縮手段としては、例えば、蒸発濃縮缶等を挙げることができる。
アルカリ濃度調整手段は、前述したアルカリ濃度調整工程を実施する手段であり、濃縮液にさらにアルカリ又はアルカリ溶液を添加して、濃度調整液を得るための手段である。アルカリ濃度調整手段としては、濃縮液及びアルカリ溶液を混合する撹拌混合槽等が挙げられる。
晶析・固液分離手段は、前述した晶析・固液分離工程を実施する手段であり、濃度調整液を所定の冷却温度に冷却して晶析し、バナジウム化合物を含む析出物を固形分(ケーキとも称される)として回収するための手段である。晶析・固液分離手段は、晶析手段と固液分離手段とから構成される。晶析手段としては、例えば、冷却機能を備えた水槽、冷却晶析槽、メタノールなど有機系貧溶媒を加える貧溶媒晶析槽等を挙げることができる。固液分離手段としては、例えば、シックナー、デカンター、バスケット遠心真空ベルトフィルタ等を挙げることができる。
本発明に係る製造装置では、アルカリ抽出手段により、アルカリ浸出液をpH13以上とすることにより、高温による加熱手段を要することなく、バナジウムを選択的に、高収率で抽出することができる。また、この製造装置では、蒸発濃縮手段により浸出ろ液を濃縮後、アルカリ濃度調整手段で、濃縮液にさらにアルカリ又はアルカリ溶液を添加して、所定のアルカリ濃度に調整する。蒸発濃縮時の浸出ろ液のアルカリ濃度が低く、大きな沸点上昇が生じないため、蒸発濃縮に要するエネルギー負担が低減され、かつ、蒸発濃縮中のスケーリングの発生等の製造トラブルも回避されうる。
さらに、この製造装置では、アルカリ濃度調整手段により、晶析・固液分離工程での冷却温度において、バナジウム化合物が飽和濃度以上、かつ、硫酸アルカリが飽和濃度以下となるように、アルカリ濃度が調整される。この製造装置によれば、従来のように、酸の添加手段を要することなく、バナジウム化合物と硫酸アルカリとの溶解度の差によって、バナジウム化合物を選択的に析出させて回収することができる。
本発明の効果が阻害されない限り、この製造装置が、原料灰を洗浄水で洗浄する原料灰洗浄手段、この洗浄水のpHを4〜7に調整するpH調整手段、原料灰を酸化する酸化手段、アルカリ抽出手段によりバナジウムを液相に浸出させる間、その温度を10℃以上50℃未満に制御する温度制御手段、固液分離手段により分離された固形分(ケーキ)を洗浄する固形分洗浄手段、晶析・固液分離手段で固形分から分離された晶析ろ液をアルカリ抽出手段で再利用するリサイクル手段等を、さらに備えてもよい。
(レドックス・フロー電池用電解液の製造装置)
本発明のレドックス・フロー電池用電解液の製造装置は、前述したバナジウム化合物の製造装置で製造したバナジウム化合物を、レドックス・フロー電池用の電解液の原料として用いるための装置である。この実施形態のレドックス・フロー電池用電解液の製造装置は、アルカリ抽出手段、固液分離手段、蒸発濃縮手段、アルカリ濃度調整手段、晶析・固液分離手段及びバナジウム化合物を含む析出物を原料として、レドックス・フロー電池用電解液を製造する、電解液製造手段と、を備えている。
アルカリ抽出手段、固液分離手段、蒸発濃縮手段、アルカリ濃度調整手段、晶析・固液分離手段の詳細については、前述したバナジウム化合物の製造装置を参照することができる。レドックス・フロー電池用電解液の製造装置の詳細については、前述したレドックス・フロー電池用電解液の製造方法を参照することができる。
本発明に係る製造装置によれば、蒸発濃縮時に生じうる製造トラブルを回避して、従来よりも安価かつ簡便に、バナジウムを選択的に分離することができる。さらに、製造トラブルを回避して、安価かつ簡便にバナジウムを選択的に分離することにより、レドックス・フロー電池用電解液を安価かつ簡便に、効率よく製造することができる。
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
[実施例1]
(1)準備工程及び洗浄工程
原料灰として、燃焼灰1.5kg wet(含水率14.9%、バナジウム(V)含有率2.3%)を準備し、水:15kg(pH7)を加え、15分間撹拌したのち、遠心脱水機にて固液分離を行った。得られた残渣は、1.26kg(含水率29wt%)であった。
(2)アルカリ抽出工程及び固液分離工程
洗浄工程で得られた残渣1.29kgに、水3.5kg及び48wt%苛性ソーダ(NaOH):0.26kgを投入してpH13.5として60分間撹拌したのち、加圧ろ過を行って、バナジウムを含む浸出ろ液:3.35kg(NaVO濃度2.3wt.%、NaSO濃度0.4wt.%、NaOH濃度1.4wt.%)を得た。
(3)蒸発濃縮工程
得られた浸出ろ液から2100gを採取し、MVRを用いて、80〜85℃、−70kPaの条件にて減圧濃縮を行い、濃縮液:420gを得た(濃縮倍率5倍、NaOH濃度7.0wt.%)。蒸発濃縮工程において、スケーリングの発生等の製造トラブルは生じなかった。
(4)アルカリ濃度調整工程
得られた濃縮液から100gを採取し、これにNaOH粉末10.8gを投入して溶解し、濃度調整液(NaOH濃度16.0wt.%)を得た。
(5)晶析・固液分離工程
得られた濃度調整液を徐々に冷却して、5℃にて5時間攪拌し、結晶を析出させた。その後、1.0μmのメンブレンを用いた吸引ろ過により固液分離をおこなった。これにより、固形分であるケーキI:36.2g(うち、NaVO:11.5gとしてのバナジウム(V):3.2g)を得た。このケーキIの乾物中構成比は、NaVOが77.5wt%、NaSOが2.1wt%、NaOHが20.4wt%であった。
[消費電力比較]
アルカリ濃度調整工程を実施せず、アルカリ抽出工程でのみNaOHを添加する場合(A)、及び、アルカリ抽出工程及びアルカリ濃度調整工程でNaOHを添加する場合(B)について、下記製造条件にて蒸発濃縮工程をおこなったときの消費電力を算出して比較した。結果が表1に示されている。
装置:MVR(自己蒸気機械圧縮)
濃縮倍率:5倍
蒸発量:10 ton/h
蒸発濃縮前のアルカリ濃度:(A)4.0wt.%、(B)1.5wt.%
沸点上昇:(A)7℃、(B)1℃
沸点上昇がない場合の液温:70℃
ヒーターでの温度差:5℃
供給流体:70℃飽和蒸気(31.2kPa、0.198kg/m
吐出流体:(A)82℃飽和蒸気(51.4kPa)
(B)76℃飽和蒸気(40.2kPa)
ブロワ効率:80%
ブロワ動力:
(A)(10×1000/60/0.198)×(51.4−31.2)×1000/6120/0.8/9.81=353kW
(B)(10×1000/60/0.198)×(40.2−31.2)×1000/6120/0.8/9.81=158kW
Figure 0006860628
表1に示されるように、蒸発濃縮工程後にアルカリ濃度調整工程を実施する本発明に係る製造方法によれば、蒸発濃縮工程前のアルカリ抽出工程でのみアルカリを添加する方法と比較して、消費電力が約45%に削減されうることがわかる。また、実施例の製造方法では、蒸発濃縮工程における製造トラブルが生じなかった。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
10・・・原料灰準備工程
12・・・アルカリ抽出工程
14・・・固液分離工程
16・・・蒸発濃縮工程
17・・・アルカリ濃度調整工程
18・・・晶析・固液分離工程
20・・・バナジウム化合物回収

Claims (10)

  1. 硫酸アンモニウム及び/又は硫酸水素アンモニウムからなる硫安分と、硫酸と、バナジウムと、を少なくとも含有する原料灰に、アルカリ及び水、又はアルカリ溶液を、pH13以上となる量で添加して、前記バナジウムを液相に浸出させ、バナジウムを含むアルカリ浸出液を得る、アルカリ抽出工程と、
    前記アルカリ浸出液を固液分離して、バナジウムを含む浸出ろ液を得る、固液分離工程と、
    前記浸出ろ液を蒸発濃縮して濃縮液を得る、蒸発濃縮工程と、
    前記濃縮液に、さらにアルカリ又はアルカリ溶液を添加して、濃度調整液を得る、アルカリ濃度調整工程と、
    前記濃度調整液を所定の冷却温度に冷却して晶析し、バナジウム化合物を含む析出物を固形分として回収する晶析・固液分離工程と、を含み、
    前記冷却温度において、バナジウム化合物が飽和濃度以上、かつ、硫酸アルカリが飽和濃度以下となるように、前記濃度調整液のアルカリ濃度を調整する、バナジウム化合物の製造方法。
  2. 前記アルカリが、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物である、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記アルカリ濃度調整工程において、前記濃度調整液のアルカリ濃度を、10質量%以上25質量%以下に調整する、請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 前記アルカリ抽出工程前に、前記原料灰を、pH6未満の条件で洗浄する原料灰洗浄工程をさらに含む、請求項1から3のいずれかに記載の製造方法。
  5. 前記アルカリ抽出工程において、10℃以上50℃未満の温度で、前記バナジウムを液相に浸出させる、請求項1から4のいずれかに記載の製造方法。
  6. 硫酸アンモニウム及び/又は硫酸水素アンモニウムからなる硫安分と、硫酸と、バナジウムと、を少なくとも含有する原料灰に、アルカリ及び水、又はアルカリ溶液を、pH13以上となる量で添加して、前記バナジウムを液相に浸出させ、バナジウムを含むアルカリ浸出液を得る、アルカリ抽出工程と、
    前記アルカリ浸出液を固液分離して、バナジウムを含む浸出ろ液を得る、固液分離工程と、
    前記浸出ろ液を蒸発濃縮して濃縮液を得る、蒸発濃縮工程と、
    前記濃縮液に、さらにアルカリ又はアルカリ溶液を添加して、濃度調整液を得る、アルカリ濃度調整工程と、
    前記濃度調整液を所定の冷却温度に冷却して晶析し、バナジウム化合物を含む析出物を固形分として回収する晶析・固液分離工程と、
    前記バナジウム化合物を含む析出物を原料として、レドックス・フロー電池用電解液を製造する、電解液製造工程と、を含み、
    前記冷却温度において、バナジウム化合物が飽和濃度以上、かつ、硫酸アルカリが飽和濃度以下となるように、前記濃度調整液のアルカリ濃度を調整する、レドックス・フロー電池用電解液の製造方法。
  7. 硫酸アンモニウム及び/又は硫酸水素アンモニウムからなる硫安分と、硫酸と、バナジウムと、を少なくとも含有する原料灰に、アルカリ及び水、又はアルカリ溶液を、pH13以上となる量で添加して、前記バナジウムを液相に浸出させ、バナジウムを含むアルカリ浸出液を得る、アルカリ抽出手段と、
    前記アルカリ浸出液を固液分離して、バナジウムを含む浸出ろ液を得る、固液分離手段と、
    前記浸出ろ液を蒸発濃縮して濃縮液を得る、蒸発濃縮手段と、
    前記濃縮液に、さらにアルカリ又はアルカリ溶液を添加して、濃度調整液を得る、アルカリ濃度調整手段と、
    前記濃度調整液を所定の冷却温度に冷却して晶析し、バナジウム化合物を含む析出物を固形分として回収する晶析・固液分離手段と、
    を備えており、
    前記アルカリ濃度調整手段により、前記冷却温度において、バナジウム化合物が飽和濃度以上、かつ、硫酸アルカリが飽和濃度以下となるように、前記濃度調整液のアルカリ濃度を調整する、バナジウム化合物の製造装置。
  8. 前記原料灰に前記アルカリ及び水、又はアルカリ溶液を添加する前に、この原料灰を洗浄水で洗浄する原料灰洗浄手段と、洗浄時のpHを6未満に調整するpH調整手段と、をさらに備えている請求項7に記載の製造装置。
  9. 前記原料灰に前記アルカリ及び水、又はアルカリ溶液を添加して、前記バナジウムを液相に浸出させる間、その温度を10℃以上50℃未満に制御する温度制御手段を、さらに備えている請求項7又は8に記載の製造装置。
  10. 硫酸アンモニウム及び/又は硫酸水素アンモニウムからなる硫安分と、硫酸と、バナジウムと、を少なくとも含有する原料灰に、アルカリ及び水、又はアルカリ溶液を、pH13以上となる量で添加して、前記バナジウムを液相に浸出させ、バナジウムを含むアルカリ浸出液を得る、アルカリ抽出手段と、
    前記アルカリ浸出液を固液分離して、バナジウムを含む浸出ろ液を得る、固液分離手段と、
    前記浸出ろ液を蒸発濃縮して濃縮液を得る、蒸発濃縮手段と、
    前記濃縮液に、さらにアルカリ又はアルカリ溶液を添加して、濃度調整液を得る、アルカリ濃度調整手段と、
    前記濃度調整液を所定の冷却温度に冷却して晶析し、バナジウム化合物を含む析出物を固形分として回収する晶析・固液分離手段と、
    前記バナジウム化合物を含む析出物を原料として、レドックス・フロー電池用電解液を製造する、電解液製造手段と、を備えており、
    前記アルカリ濃度調整手段により、前記冷却温度において、バナジウム化合物が飽和濃度以上、かつ、硫酸アルカリが飽和濃度以下となるように、前記濃度調整液のアルカリ濃度を調整する、レドックス・フロー電池用電解液の製造装置。
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