JP6856429B2 - 眼科用顕微鏡 - Google Patents
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Description
一方、ガリレオ式実体顕微境においては、対物レンズと結像光学系が偏心しているため、残存収差が左右で逆の向きになり、残存収差を小さくすることは困難である。
グリノー式実体顕微境によれば、対物レンズと結合光学系の偏心を少なくすることが可能であるが、2つの独立した観察光学系を斜交させるため、機構が複雑になるという問題があった。
また、ガリレオ式実体顕微境の対物レンズをOCT光学系の光路が透過しない方式も開発されているが(特許文献8)、対物レンズと被検眼の間にOCT光学系を設けるものであった。
例えば、特許文献3〜7に示されるように、ガリレオ式実体顕微境にOCT光学系を組み込んだ眼科用顕微鏡は、OCT光学系の光路がガリレオ式実体顕微境の対物レンズを透過する方式となっており、OCT光学系と観察光学系を独立させることができなかった。
OCT光学系の光路がガリレオ式実体顕微境の対物レンズを透過しない方式として、特許文献8に示されるように、対物レンズの下部にOCT光学系を設ける方式があるが、被検眼と眼科用顕微鏡の間の作業空間を十分に確保できなくなるという問題があった。
しかしながら、グリノー式実体顕微境は、図14(A)に示されるように、左眼用観察光学系のピント位置(Q400L)が、右眼用観察光学系のピント位置(Q400R)と重ならず、図14(C)に示されるように周辺のピント差が左右眼の像で逆になるという問題点を有する。
また、グリノー式実体顕微鏡は、2つの独立した観察光学系を斜交させるため、機構的に複雑に成らざるを得ず、変倍光学系の組み立ても困難に成らざるを得ないという不都合があった。
前記眼科用顕微鏡内において、前記左眼用観察光学系の光軸と前記右眼用観察光学系の光軸が略平行であり、
前記左眼用観察光学系と前記右眼用観察光学系がそれぞれ対物レンズを有しており、前記対物レンズが、第1のレンズと、光軸の向きを変更する光学素子と、第2のレンズとを少なくとも有するレンズ群からなり、
前記対物レンズによって、前記左眼用観察光学系の光軸の向きと前記右眼用観察光学系の光軸の向きが、前記被検眼の側で互いに交差する方向に変更され、
前記左眼用観察光学系と前記右眼用観察光学系の間の領域に、前記OCT光学系が配置され、前記対物レンズとは別に、前記OCT光学系の光軸が透過するOCT用対物レンズを有しており、
前記被検眼と前記対物レンズの間の光路上に前記前置レンズが挿入された時に、前記観察光学系の光軸と前記OCT光学系の光軸とが前記前置レンズを透過し、
前記被検眼と前記対物レンズの間の光路上に挿入される前記前置レンズの焦点距離に応じて、次の1)又は2)の距離が自動的に変化し、
1)前記対物レンズと前記前置レンズの間の距離
2)前記OCT用対物レンズと前記前置レンズの間の距離
前記被検眼と前記対物レンズの間の光路上で前記前置レンズが挿脱される時に、前記前置レンズの焦点距離に応じて、前記OCT光学系の参照光の光路の長さが自動的に変化することを特徴とする眼科用顕微鏡に関する。
(2) 本発明の眼科用顕微鏡においては、前記被検眼と前記対物レンズの間の光路上に挿入される前記前置レンズの焦点距離に関する情報を取得するレンズ判別機構と、
前記対物レンズと前記前置レンズの間の距離及び/又は前記OCT用対物レンズと前記前置レンズの間の距離を調整する位置調整機構と、
前記レンズ判別機構により取得される前記前置レンズの焦点距離に関する情報に基づき、位置調整機構を制御する制御機構とをさらに有することが好ましい。
(3) 前記いずれかの眼科用顕微鏡においては、前記光軸の向きを変更する光学素子がウェッジプリズムであることが好ましい。
(4) 前記いずれかの眼科用顕微鏡においては、前記第1のレンズが負のパワーを有する凹レンズであり、前記第2のレンズが正のパワーを有する凸レンズであることが好ましい。
(5) 前記いずれかの眼科用鏡顕微鏡においては、前記第1のレンズと、前記光軸の向きを変更する光学素子と、前記第2のレンズが、前記被検眼の側からこの順で並んでいる場合には、
前記左眼用観察光学系の前記第1のレンズの光軸と、前記右眼用観察光学系の前記第1のレンズの光軸が、互いに前記被検眼の側で交差する方向に傾斜していることが好ましい。
(6) 前記いずれかの眼科用顕微鏡においては、前記第1のレンズと、前記光軸の向きを変更する光学素子と、前記第2のレンズが、前記被検眼の側からこの順で並んでいる場合には、
前記左眼用観察光学系の前記第2のレンズの光軸と、前記右眼用観察光学系の前記第2のレンズの光軸が、互いに前記被検眼の側で離れる方向に傾斜していることが好ましい。
本発明の眼科用顕微鏡は、被検眼を照明する照明光学系と、照明光学系で照明された被検眼を観察するための左眼用観察光学系と右眼用観察光学系を有する観察光学系と、光コヒーレンストモグラフィにより前記被検眼を検査するための測定光の光路と参照光の光路を有するOCT光学系と、前記被検眼と前記対物レンズの間の光路上に挿脱可能な前置レンズとを備える眼科用顕微鏡に関するものである。
本発明の眼科用顕微鏡は、左眼用観察光学系と右眼用観察光学系にそれぞれ小口径化された対物レンズを有しているため、左眼用観察光学系と右眼用観察光学系が共通して透過する大口径の対物レンズを使用する必要がない。このため、対物レンズの光軸とその前にあるレンズの光軸との偏心が小さくなり、残存収差の補正が可能である。また、本発明の眼科用顕微鏡は、大口径の対物レンズを使用する必要がなく、対物レンズを小口径化できるので、OCT光学系等の別の光学系を容易に設置することができる。
本発明の眼科用顕微鏡は、第1のレンズと、光軸の向きを変更する光学素子と、第2のレンズとを少なくとも有するレンズ群を、対物レンズとして使用する。かかる対物レンズにより、左眼用観察光学系の光軸と右眼用観察光学系の光軸の向きが、被検眼の側で互いにに交差する方向に変更されている。したがって、本発明の眼科用顕微鏡は、眼科用顕微鏡内において、左眼用観察光学系の光軸と右眼用観察光学系の光軸を略平行としながら、対物レンズよりも被検眼側で2つの光軸を交差させることができ、グリノー式実体顕微鏡のように左右の観察光学系を斜交して配置する複雑な機構とする必要がない。
本発明の眼科用顕微鏡は、眼科分野における診療や手術において被検眼の拡大像を観察(撮影)するために使用される。観察対象部位は、患者眼の任意の部位であってよく、たとえば、前眼部においては角膜や隅角や硝子体や水晶体や毛様体などであってよく、後眼部においては網膜や脈絡膜や硝子体であってよい。また、観察対象部位は、瞼や眼窩など眼の周辺部位であってもよい。
本発明の眼科用顕微鏡は、各レンズの位置や傾き等の制御や光源の制御を行うための制御部や、撮像した画像を表示する表示部等を含ませることができる。また、これらの制御部や表示部は、眼科用顕微鏡とは別のものとしてもよい。
また、本発明の「観察光学系」は、アイピースや接眼レンズ等を通じて観察者の肉眼により被検眼を観察できるものであってもよく、また、撮像素子等により受光して画像化することにより観察できるものであってもよく、あるいは、両方の機能を備えるものであってもよい。
本発明において、「照明光学系」、「観察光学系」、「OCT光学系」に使用される光学素子としては、これらに限定されるわけではないが、例えば、レンズ、プリズム、ミラー、光フィルタ、絞り、回折格子、偏光素子等を用いることができる。
そして、被検眼と対物レンズの間の光路上に前置レンズが挿入された場合に、観察光学系の光軸とOCT光学系の光軸が前置レンズを透過することから、前置レンズの焦点距離(パワー)に応じて、OCT走査面位置や観察焦点面位置が変化してしまう。
しかしながら、本発明の眼科用顕微鏡においては、被検眼と対物レンズの間の光路上に挿入される前置レンズの焦点距離に応じて、次の1)又は2)の距離が自動的に変化する。
1)対物レンズと前置レンズの間の距離
2)OCT用対物レンズと前置レンズの間の距離
このため、本発明の眼科用顕微鏡では、OCT走査面位置や観察焦点面位置を観察対象に合わせるための手動による面倒な調整を軽減することができる。
しかしながら、本発明の眼科用顕微鏡においては、被検眼と対物レンズの間の光路上で前置レンズが挿脱される時に、前置レンズの焦点距離に応じて、OCT光学系の参照光の光路の長さが自動的に変化する。
このため、本発明の眼科用顕微鏡では、OCTによる断層像を正しく得ることができる。
OCT光学系の参照光の光路の長さを変化させるためには、光学素子を用いることができ、例えば、これらに限定されるわけではないが、参照光の光路の折り返し点にあるミラーを移動させることにより光路長を変化させることができ、また、参照光の光路上で光路長補正部材を挿脱して、当該部材と大気との屈折率の違いにより光路長を変化させることもできる。
本発明において「自動的に変化する」とは、手動によらず、機械的及び/又は電気的な機構により、前記1)若しくは2)の距離、又はOCT光学系の参照光の光路の長さが変化することをいう。
以下、本発明の実施形態の例を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1〜9は、本発明の眼科用顕微鏡の一例である第1の実施形態を模式的に示す図面である。これらの図面のうち、図1は、第1の実施形態の眼科用顕微鏡の光学系の構成を模式的に示す正面図であり、図2は、光学系の構成の側面図である。また、図3は、OCTユニットの光学構成を模式的に示す図面であり、図4は、対物レンズ周辺での光路の配置を模式的に示す断面図である。
また、図2の側面図に示されるように、眼科用顕微鏡(1)の光学系は、さらに照明光学系(300)を有している。観察光学系(400)は、照明光学系(300)により照明されている被検眼(8)を、拡大して観察するために用いられる。
図1及び図2に示されるように、観察光学系(400)と、OCT光学系(500)と、照明光学系(300)は、一点鎖線で示される眼科用顕微鏡本体(6)に収納されている。
したがって、第1の実施形態の眼科用顕微鏡(1)は、グリノー式実体顕微鏡のように左右の観察光学系を交差して配置する複雑な機構とする必要がない。
第1の実施形態においては、光軸の向きを変更する光学素子(401b)として、ウェッジプリズムが用いられ、基底方向は内側(ベースイン)である。ウェッジプリズムにより、左右の観察光学系の光軸(O−400L,O−400R)は、被検眼の側で互いに交差する方向に向きが変更される。
また、第2のレンズ(401c)は、正のパワーを有する凸レンズである。
また、図1に示されるように、左右の対物レンズ(401)は、左右の観察光学系の光軸(O−400L,O−400R)を、被検眼の側で交差するように向きを変更できるので、被検眼の同一の箇所を左右眼により両眼観察することを可能としている。
図2に示されるように、照明光学系(300)は、被検眼(8)を照明するものであり、照明光源(9)、光ファイバ(301)、出射口絞り(302)、コンデンサレンズ(303)、照明野絞り(304)、コリメートレンズ(305)、及び反射ミラー(306)を含んで構成されている。これらの照明光学系(300)の光軸を、図2において点線(O−300)で示す。
光ファイバ(301)の出射口(コンデンサレンズ(303)側のファイバ端)に臨む位置には、出射口絞り(302)が設けられている。出射口絞り(302)は、光ファイバ(301)の出射口の一部領域を遮断するように作用する。出射口絞り(302)による遮断領域が変更されると、照明光の出射領域が変更される。それにより、照明光による照射角度、つまり被検眼(8)に対する照明光の入射方向と対物レンズ(401)の光軸とがなす角度を変更することができる。
被検眼(8)に照射された照明光(の一部)は、角膜や網膜等の被検眼の組織で反射・散乱される。その反射・散乱した戻り光(「観察光」とも呼ばれる)は、観察光学系(400)に入射する。
変倍レンズ(402)は、複数のズームレンズ(402a,402b,402c)を含んだレンズ群となっている。各ズームレンズ(402a,402b,402c)は、図示しない変倍機構によって左右の観察光学系の光軸(O−400L,O−400R)に沿って移動可能となっている。これにより、被検眼(8)を観察又は撮影する際の拡大倍率が変更される。
テレビカメラ(1102)は、撮像素子(1102a)を備えている。撮像素子(1102a)は、例えば、CCD(Charge Coupled Devices)イメージセンサや、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等によって構成される。撮像素子(1102a)としては2次元の受光面を有するもの(エリアセンサ)が用いられる。
眼科用顕微鏡(1)の使用時には、撮像素子(1102a)の受光面は、例えば、被検眼(8)の角膜若しくは網膜の表面と光学的に共役な位置に配置される。
観察光学系(400L,400R)は、観察光学系の光路から挿脱可能に構成されたステレオバリエータを含んで構成されてもよい。ステレオバリエータは、左右の変倍レンズ系(402)によってそれぞれ案内される左右の観察光学系の光軸(O−400L,O−400R)の相対的位置を変更するための光軸位置変更素子である。ステレオバリエータは、例えば、観察光学系の光路に対して観察者側に設けられた退避位置に退避される。
また、角膜、虹彩等の前眼部を観察するときには、前置レンズを被検眼の眼前から脱離させて観察を行う。
照明野絞り(503)は、対物レンズ(401)の前側焦点位置(U0)と共役である。
第1レンズ群(506)は、1以上のレンズを含んで構成され、第2レンズ群(507)も、1以上のレンズを含んで構成されている。
OCT用対物レンズ(509)は、ガルバノミラー等の部材と光学的に共役な関係にしても良く、その場合、OCT用対物レンズ(509)の口径を小さくすることができる。
OCT光学系におけるスキャナには、観察用の可視光も追加することができる。
図3に示されるように、OCTユニット(10)は、OCT光源ユニット(1001)から出射された光を測定光(LS)と参照光(LR)に分割し、別の光路を経た測定光(LS)と参照光(LR)の干渉を検出する干渉計を構成している。
OCT光源ユニット(1001)は、一般的なスウェプトソースタイプのOCT装置と同様に、出射光の波長を走査(掃引)可能な波長走査型(波長掃引型)光源を含んで構成される。OCT光源ユニット(1001)は、人の眼では視認できない近赤外の波長において、出力波長を時間的に変化させる。OCT光源ユニット(1001)から出力された光を符号L0で示す。
偏波コントローラ(1003)により偏光状態が調整された光L0は、光ファイバ(1004)によりファイバカプラ(1005)に導かれて測定光(LS)と参照光(LR)とに分割される。
コーナーキューブ(1010)は、コリメータ(1007)により平行光束となった参照光(LR)の進行方向を逆方向に折り返す。コーナーキューブ(1010)に入射する参照光(LR)の光路と、コーナーキューブ(1010)から出射する参照光(LR)の光路とは平行である。また、コーナーキューブ(1010)は、参照光(LR)の入射光路及び出射光路に沿う方向に移動可能とされている。この移動により参照光(LR)の光路(参照光路)の長さが変更される。
偏波コントローラ(1013)は、例えば、偏波コントローラ(1003)と同様の構成を有する。偏波コントローラ(1013)により偏光状態が調整された参照光LRは、光ファイバ(1014)によりアッテネータ(1015)に導かれて、制御ユニット(12)の制御の下で光量が調整される。アッテネータ(1015)により光量が調整された参照光(LR)は、光ファイバ(1016)によりファイバカプラ(1017)に導かれる。
図4に示されるように、眼科用顕微鏡本体(6)の鏡筒内に、左眼用観察光学系の光路(P−400L)、右眼用観察光学系の光路(P−400R)、照明光学系の光路(P−300)、及びOCT光学系の光路(P−500)が配置されている。
本発明の眼科用顕微鏡においては、大口径の対物レンズを使用しないため、それぞれの光学系の光路を独立させて、独立に制御することも可能となる。
図5(A)は、第1の実施形態の眼科用顕微鏡で使用される対物レンズの構成を示し、図5(B)は、対物レンズを構成する各レンズの光軸の向きを示す。
図5(B)に示されるように、第1のレンズの光軸(A−401a)は、内側(互いに被検眼の側で交差する方向)に傾斜している。
図6は、本発明の第1の実施形態の眼科用顕微鏡において、前置レンズを被検眼と対物レンズの間の光路上に挿入した場合を示す模式図である。本発明の眼科用顕微鏡においては、少なくとも3つの光学素子からなるレンズ群を対物レンズとして用いるが、図6においてはこれを一つのレンズとして模式的に示す。図6に示されるように、対物レンズ(401)の焦点距離はF1であり、対物レンズからF1の距離にある位置が対物レンズの前側焦点位置(u0)となる。照明光学系からの光束は、対物レンズ(401)と前置レンズ(14)を透過して、被検眼(8)の内部を照明する。被検眼内の網膜(8a)で反射された反射光は、前置レンズ(14)の後側焦点位置で像を形成する。前置レンズ(14)の後側焦点位置を、対物レンズ(401)の前側焦点位置であるu0に一致させることにより、観察光学系の焦点(観察焦点面)が網膜(8a)に合わされて、ピントの合った状態で網膜を観察することができる。
ここで、図6(A)及び図6(B)の比較から明らかなように、OCT用対物レンズ(509)と前置レンズ(14)の間の距離(H1,H1´)は、焦点距離の長い(パワーの小さい)前置レンズ(14)を用いた図6(A)の場合の方が、図6(B)の場合よりも長くする必要がある。また、OCT用対物レンズ(509)と被検眼(8)の間の距離(H2,H2´)も、焦点距離の長い(パワーの小さい)前置レンズ(14)を用いた図6(A)の場合の方が、図6(B)の場合よりも長くする必要がある。
したがって、OCT光学系の焦点(OCT走査面)を網膜に合わせるためには、前置レンズの焦点距離(パワー)に応じて、OCT用対物レンズと被検眼の間の距離を変更し、また、OCT用対物レンズと前置レンズの間の距離を変更する必要がある。
眼科用顕微鏡は、被検眼(8)を手術する眼科の執刀医が使用する術者用顕微鏡(18)と、その手術助手が使用する助手用顕微鏡(19)を有しており、両者が被検眼を観察しながら手術できるようになっている。眼科用顕微鏡の3次元位置は、フットスイッチ(21)でも操作できるようになっており、執刀医は、手術器具を両手に持ちながら、眼科用顕微鏡の位置を足による操作で調整することが可能である。眼科用顕微鏡の鏡筒(22)の内部の下端には、図示しない対物レンズが設けられている。また、対物レンズと被検眼(8)の間には、保持アーム(23)により前置レンズ(14)を挿入することができる。
また、図7において眼科用顕微鏡の鏡筒(22)内にある図示しないOCT用対物レンズについても、位置決め装置により眼科用顕微鏡を上下に移動させることにより、被検眼(8)との間の距離を変更することができる。
この場合、眼科用顕微鏡の上方向への移動にあわせて、前置レンズ(14)も同じ距離だけ上方向に移動するため、対物レンズ(401)と前置レンズ(14)との間の距離は、H1´のままである。そこで、対物レンズ(401)に対して前置レンズ(14)を下方向に移動させて、対物レンズ(401)と前置レンズ(14)との間の距離をH1とする必要がある。
前置レンズ位置調整機構について、以下、図8を用いて説明する。
制御ユニットは、前置レンズ(14)の種類を判別するとともに、前置レンズの種類に応じた焦点距離に関する情報を記憶した記憶媒体の情報を参照して、光路に挿入される前置レンズ(14)の焦点距離に関する情報を取得する。制御ユニットは、取得した情報に基づいて、観察対象に焦点を合わせるための対物レンズと前置レンズ(14)の間の距離を算出し、前置レンズ位置調整機構(20)を制御して、前置レンズ(14)の位置を調整する。
回動ネジ(2002)は、微動調整ノブ(2005)をつまんで手動で回転させることができ、これにより、可動板(2003)を上下に移動させることができる。そして、可動板(2003)の上下の動きと連動して、連結アーム(2004)と保持アーム(23)を介して可動板(2003)と連結した前置レンズ(14)を上下に移動させることが可能となる。
制御ユニットは、前置レンズ(14)の種類を判別して、前置レンズ(14)の焦点距離(パワー)に基づいて、観察対象に焦点を合わせるための対物レンズと前置レンズ(14)の間の距離を算出する。そして、制御ユニットは、対物レンズと前置レンズ(14)の間の距離が算出した距離となるように、前置レンズ位置調整機構(20)を制御して前置レンズ(14)の位置を自動的に調整することができる。
その後、図7に示される位置決め装置を用いて、執刀医又は手術助手は、手動により又はフットスイッチ(21)等を操作することにより、眼科用顕微鏡の位置を上方向に移動させる。このとき、執刀医又は手術助手は、顕微鏡観察をしながら眼底にピントが合うまで、眼科用顕微鏡の位置を上方向に移動させる。そして、ピントが合った位置で、対物レンズと被検眼(8)との間の距離は図6(A)に示すH2となる。
このように、対物レンズと前置レンズの間の距離を自動的に変更した後に、顕微鏡観察でピントが合うまで眼科用顕微鏡を上方方向に移動させることもできるが、自動制御でピントを合わせることもできる。例えば、眼科用顕微鏡の制御ユニットが、前置レンズ(14)の焦点距離(パワー)に応じて、観察対象にピントを合わせるための図6(A)に示す対物レンズ(401)と被検眼(8)の間の距離(H2)を算出し、図7に示す位置決め装置のアクチュエータを制御して、自動で眼科用顕微鏡を上方向へ移動させることもできる。
すなわち、制御ユニットは、前置レンズ(14)の種類を判別して、前置レンズ(14)の焦点距離(パワー)に基づいて、観察対象にOCT光学系の焦点(OCT走査面)を合わせるための、OCT用対物レンズと前置レンズ(14)の間の距離を算出する。そして、制御ユニットは、OCT用対物レンズと前置レンズ(14)の間の距離が算出した距離となるように、前置レンズ位置調整機構(20)を制御して前置レンズ(14)の位置を自動的に調整することができる。
前置レンズ(14)を光路上に挿入すると、被検眼の像が反転して逆像となるため、これを正像に戻すためのレンズユニットがインバータ部(27)に設けられている。このインバータ部(27)に設けられるレンズユニットの光学系には、例えば、特公平7−48091号公報に開示のものを用いることができる。レンズユニットは、前置レンズの挿脱に連動して手動により切り替えレバー(28)で鏡筒内の光路上に挿脱することができ、また、前置レンズの挿脱と連動してアクチュエータを作動させることにより自動的に鏡筒内の光路上に挿脱することもできる。
図9(A)と図9(B)の比較から明らかなように、対物レンズと被検眼との間の光路上に前置レンズを挿入して後眼部を観察する図9(B)の場合には、前置レンズを挿入せずに前眼部を観察する図9(A)の場合と比較して、OCT光学系の測定光の光路長が長くなる。その差は、片側方向の光路長で、F2(前置レンズの焦点距離)×2+眼軸長(角膜頂点から眼底までの距離)となる。
第1の実施形態の眼科用顕微鏡においては、光路上への前置レンズの挿脱と連動して、図3に示されるOCTユニット内のコーナーキューブ(1010)を移動させることで、参照光の光路の長さを一定の値だけ自動的に長くすることができる。
前記とおり、前置レンズを光路に挿入しない図9(A)の場合と比較して、前置レンズを光路に挿入する図9(B)の場合には、測定光の光路長が、片側方向の光路長で「F2×2+眼軸長」だけ長くなる。したがって、前置レンズの挿入と連動して、図3に示されるコーナーキューブ(1010)の基準位置を「F2×2+眼軸長」だけ自動的に移動させることにより、参照光の光路の長さを、片側方向の光路長で「F2×2+眼軸長」だけ長くすることができる。ここで、「眼軸長」はヒトの平均的な眼軸長を用いるが、眼軸長には個人差があるため、第1の実施形態の眼科用顕微鏡では、参照光の光路長の微調整を可能としている。
本発明の眼科用顕微鏡においては、a)被検眼と対物レンズの間の光路上に挿入される前置レンズの焦点距離に関する情報を取得するレンズ判別機構と、b)対物レンズと前置レンズの間の距離及び/又はOCT用対物レンズと前置レンズの間の距離を調整する位置調整機構と、c)レンズ判別機構により取得される前置レンズの焦点距離に関する情報に基づき位置調整機構を制御する制御機構とを有することが好ましい。
また、前記a)のレンズ判別機構については、光路に挿入される前置レンズの焦点距離に関する情報を取得して、制御機構に伝えることができる機構であればどのようなものであってもよい。例えば、これらに限定されるわけではないが、前置レンズに焦点距離の値を含むタグを付して、タグ読み取り機により前置レンズの焦点距離の値を取得して、制御機構に伝えるものであってもよい。また、前置レンズにIDタグを付して、タグ読み取り機により前置レンズのID情報が取得できる態様であってもよい。この場合には、制御機構は、前置レンズのID情報を取得するとともに、記憶媒体の情報にアクセスして、前置レンズのIDに応じた焦点距離の値を取得し、これにより光路に挿入される前置レンズの焦点距離の値を得ることができる。
ここで使用されるタグとしては、これらに限定されるわけではないが、例えば、RFIDタグやICタグのような無線タグ、磁気により情報を記録したタグ、バーコードにより情報を記録したタグ等を用いることができる。
次に、本発明の他の実施形態の例を、図面を参照しながら説明する。
図10は、本発明の眼科用顕微鏡の他の一例である第2の実施形態の眼科用顕微鏡及び第3の実施形態の眼科用顕微鏡における、対物レンズ周辺での光路の配置を模式的に示す断面図である。
図10(A)は、第2の実施形態の眼科用顕微鏡の対物レンズ周辺での光路の配置を示し、図10(B)は、第3の実施形態の眼科用顕微鏡の対物レンズ周辺の光路の配置を示す。
副観察光学系は、主となる観察者(術者)以外の助手となる観察者が被検眼を観察するために用いられる。
本発明の眼科用顕微鏡においては、大口径の対物レンズを使用しないため、このように多くの光学系の光路を独立させて配置することも可能である。
本発明の眼科用顕微鏡で使用する対物レンズは、少なくとも、第1のレンズ、光軸の向きを変更する光学素子、及び第2のレンズを含んで構成されるレンズ群からなる対物レンズである。
ここで、第1のレンズと、光軸の向きを変更する光学素子と、第2のレンズは、どのような順序により並んでいてもよい。
また、これらのレンズにさらに他レンズや光学素子を加えて、対物レンズとして用いるレンズ群とすることもできる。
このような構成とすることにより、図14に示したような、周辺のピント差が左右眼の像で逆になるという問題を大きく改善することができる。
図11は、本発明の眼科用顕微鏡の他の一例である第4の実施形態の眼科用顕微鏡における、対物レンズの光学構成を模式的に示す正面図である。
図11(A)は、第4の実施形態の眼科用顕微鏡で使用される対物レンズの構成を示し、図11(B)は、対物レンズを構成する各レンズの光軸の向きを示す。
このような構成とすることにより、図14に示したような、周辺のピント差が左右眼の像で逆になるという問題を大きく改善することができる。
図12は、本発明の眼科用顕微鏡の他の一例である第5の実施形態の眼科用顕微鏡における、対物レンズの光学構成を模式的に示す正面図である。
図12(A)は、第5の実施形態の眼科用顕微鏡で使用される対物レンズの構成を示し、図12(B)は、対物レンズを構成する各レンズの光軸の向きを示す。
2 被検体
300 照明光学系
301 光ファイバ
302 出射光絞り
303 コンデンサレンズ
304 照明野絞り
305 コリメートレンズ
306 反射ミラー
400 観察光学系
400L 左眼用の観察光学系
400R 右眼用の観察光学系
401 対物レンズ
401a 第1のレンズ
401b 光軸の向きを変更する光学素子
401c 第2のレンズ
402 変倍レンズ
402a,402b,402c ズームレンズ
403 ビームスプリッタ
404 結像レンズ
405 像正立プリズム
406 眼幅調整プリズム
407 視野絞り
408 接眼レンズ
500 OCT光学系
501 光ファイバ
502 コリメートレンズ
503 照明野絞り
504a,504b スキャナ
505 リレー光学系
506 第1レンズ群
507 第2レンズ群
508 反射ミラー
509 OCT用対物レンズ
6 眼科用顕微鏡本体
8 被検眼
8a 網膜
9 照明光源
10 OCTユニット
1001 OCT光源ユニット
1002 光ファイバ
1003 偏波コントローラ
1004 光ファイバ
1005 ファイバカプラ
1006 光ファイバ
1007 コリメータ
1008 光路長補正部材
1009 分散補償部材
1010 コーナーキューブ
1011 コリメータ
1012 光ファイバ
1013 偏波コントローラ
1014 光ファイバ
1015 アッテネータ
1016 光ファイバ
1017 ファイバカプラ
1018 光ファイバ
1019 光ファイバ
1020 光ファイバ
1021 検出器
1101 結像レンズ
1102 テレビカメラ
1102a 撮像素子
12 制御ユニット
13 表示部
14,14´ 前置レンズ
15 支柱
16 アーム
17 X−Y微動装置
18 術者用顕微鏡
19 助手用顕微鏡
20 前置レンズ位置調整機構
2001 支持ブラケット
2002 回動ネジ
2003 可動板
2004 連結アーム
2005 微動調整ノブ
2006 モータ
21 フットスイッチ
22 鏡筒
23 保持アーム
24 保持板
25 タグ検出器
26 固定ブラケット
27 インバータ部
28 切り替えレバー
A−401 対物レンズの光軸
A−402 変倍レンズの光軸
A−401a 第1のレンズの光軸
A−401c 第2のレンズの光軸
F1 対物レンズの焦点距離
F2,F2´ 前置レンズの焦点距離
H1,H1´ 対物レンズと前置レンズの間の距離
H2,H2´,H2´´ 対物レンズと被検眼の間の距離
O−300 照明光学系の光軸
O−400 観察光学系の光軸
O−400L 左眼用観察光学系の光軸
O−400R 右眼用観察光学系の光軸
O−500 OCT光学系の光軸
P−300 照明光学系の光路
P−400L 左眼用観察光学系の光路
P−400R 右眼用観察光学系の光路
P−400SL 副観察光学系の左眼用の光路
P−400SR 副観察光学系の右眼用の光路
P−500 OCT光学系の光路
Q400L 左眼用観察光学系のピント位置
Q400R 右眼用観察光学系のピント位置
V400L 左眼用の像
V400R 右眼用の像
L0 OCT光源ユニットから出力された光
LC 干渉光
LS 測定光
LR 参照光
U0 前側焦点位置
Claims (6)
- 被検眼を照明する照明光学系と、前記照明光学系で照明された前記被検眼を観察するための左眼用観察光学系と右眼用観察光学系を有する観察光学系と、光コヒーレンストモグラフィにより前記被検眼を検査するための測定光の光路と参照光の光路を有するOCT光学系と、前記被検眼と前記対物レンズの間の光路上に挿脱可能な前置レンズとを備える眼科用顕微鏡において、
前記眼科用顕微鏡内において、前記左眼用観察光学系の光軸と前記右眼用観察光学系の光軸が略平行であり、
前記左眼用観察光学系と前記右眼用観察光学系がそれぞれ対物レンズを有しており、
前記対物レンズが、第1のレンズと、光軸の向きを変更する光学素子と、第2のレンズとを少なくとも有するレンズ群からなり、
前記対物レンズによって、前記左眼用観察光学系の光軸の向きと前記右眼用観察光学系の光軸の向きが、前記被検眼の側で互いに交差する方向に変更され、
前記左眼用観察光学系と前記右眼用観察光学系の間の領域に、前記OCT光学系が配置され、前記対物レンズとは別に、前記OCT光学系の光軸が透過するOCT用対物レンズを有しており、
前記被検眼と前記対物レンズの間の光路上に前記前置レンズが挿入された時に、前記観察光学系の光軸と前記OCT光学系の光軸とが前記前置レンズを透過し、
前記被検眼と前記対物レンズの間の光路上に挿入される前記前置レンズの焦点距離に応じて、次の1)又は2)の距離が自動的に変化し、
1)前記対物レンズと前記前置レンズの間の距離
2)前記OCT用対物レンズと前記前置レンズの間の距離
前記被検眼と前記対物レンズの間の光路上で前記前置レンズが挿脱される時に、前記前置レンズの焦点距離に応じて、前記OCT光学系の参照光の光路の長さが自動的に変化することを特徴とする眼科用顕微鏡。 - 前記被検眼と前記対物レンズの間の光路上に挿入される前記前置レンズの焦点距離に関する情報を取得するレンズ判別機構と、
前記対物レンズと前記前置レンズの間の距離及び/又は前記OCT用対物レンズと前記前置レンズの間の距離を調整する位置調整機構と、
前記レンズ判別機構により取得される前記前置レンズの焦点距離に関する情報に基づき、位置調整機構を制御する制御機構と
をさらに有することを特徴とする、請求項1に記載の眼科用顕微鏡。 - 前記光軸の向きを変更する光学素子がウェッジプリズムであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の眼科用顕微鏡。
- 前記第1のレンズが負のパワーを有する凹レンズであり、前記第2のレンズが正のパワーを有する凸レンズであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の眼科用顕微鏡。
- 前記対物レンズにおいて、前記第1のレンズと、前記光軸の向きを変更する光学素子と、前記第2のレンズが、前記被検眼の側からこの順で並んでおり、
前記左眼用観察光学系の前記第1のレンズの光軸と、前記右眼用観察光学系の前記第1のレンズの光軸が、互いに前記被検眼の側で交差する方向に傾斜していることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の眼科用顕微鏡。 - 前記対物レンズにおいて、前記第1のレンズと、前記光軸の向きを変更する光学素子と、前記第2のレンズが、前記被検眼の側からこの順で並んでおり、
前記左眼用観察光学系の前記第2のレンズの光軸と、前記右眼用観察光学系の前記第2のレンズの光軸が、互いに前記被検眼の側で離れる方向に傾斜していることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の眼科用顕微鏡。
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