JP6853050B2 - 熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物 - Google Patents

熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物 Download PDF

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Description

本発明は、熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物に関する。
熱可塑性エラストマーは、ゴム的性質を有し、柔軟性に優れるため、加硫ゴムや塩化ビニル樹脂の代替として、自動車部品、電子・電気機器部品、フィルム等の成形品材料や、通信ケーブル、電線等の被覆材等に広く使用されている。これら成形品、通信ケーブル、電線等には、耐摩耗性が求められる。また、例えば被覆材で被覆された通信ケーブルをロボットアーム等の装置に用いる場合、この装置の動作に追従して通信ケーブルも動く。そのため、特に通信ケーブルの最外層(シース)には摺動性も求められる。
耐摩耗性や摺動性に優れる樹脂として、例えば特許文献1には、オレフィン系熱可塑性エラストマーにアクリル変性オルガノポリシロキサンを配合したオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物が開示されている。
特許第3437466号公報
ところで、ロボットアーム等の装置に用いられる通信ケーブルは、装置の動作に追従して引っ張られるため、伸び性や引張強度も求められる。
しかし、特許文献1に記載のオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物は、伸び性や引張強度を必ずしも満足するものではなかった。また、特許文献1に記載のオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物は、ある程度の摺動性を有するものの、高い摺動性が求められる用途(例えば通信ケーブルの被覆用)には不向きであった。
熱可塑性エラストマーの中でも、熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、他の熱可塑性樹脂に比べて、伸び性や引張強度、耐摩耗性に優れることが知られている。オレフィン系熱可塑性エラストマーに代えて、熱可塑性ポリウレタンエラストマーにアクリル変性オルガノポリシロキサンを配合して摺動性を向上させることも考えられる。
しかし、熱可塑性ポリウレタンエラストマーは表面にベタツキがあり、熱可塑性ポリウレタンエラストマーにアクリル変性オルガノポリシロキサンを単に配合しただけでは、充分な摺動性は得られなかった。そのため、高い摺動性が求められる用途や人の肌に触れるような用途には不向きであった。さらに、熱可塑性ポリウレタンエラストマーにアクリル変性オルガノポリシロキサンを配合すると、硬度が高くなり、柔軟性が必要とされる用途には不向きであった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、成形品とした際、あるいは通信ケーブルや電線を被覆した際に、優れた摺動性を発現できる低硬度の熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物の提供を課題とする。
本発明は、以下の態様を有する。
〔1〕熱可塑性ポリウレタンエラストマーと、スチレン系エラストマーと、アクリル変性オルガノポリシロキサンとを含有し、
前記熱可塑性ポリウレタンエラストマー/前記スチレン系エラストマーの質量比が40/60〜90/10であり、
前記アクリル変性オルガノポリシロキサンの含有量が、前記熱可塑性ポリウレタンエラストマーと前記スチレン系エラストマーとの合計100質量部に対して、10〜100質量部である、熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物。
本発明の熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物は、成形品とした際、あるいは通信ケーブルや電線を被覆した際に、優れた摺動性を発現できる。また、低硬度である。
「熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物」
本発明の熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物は、熱可塑性ポリウレタンエラストマーと、スチレン系エラストマーと、アクリル変性オルガノポリシロキサンとを含有する。以下、各成分について説明する。
<熱可塑性ポリウレタンエラストマー>
熱可塑性ポリウレタンエラストマー(以下、「TPU」ともいう。)としては、ハードセグメントブロックとソフトセグメントブロックとを繰り返し単位とするブロック共重合体が好ましい。
ハードセグメントブロックは、少なくともジイソシアネートとジオール類とで構成されていることが好ましい。
ジイソシアネートとしては、例えば1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート(NDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、水素添加XDI、トリレンジイソシアネート(TDI)、トリイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート等が挙げられる。
ジオール類としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等が挙げられる。
ソフトセグメントブロックは、少なくともジイソシアネートとポリオールとで構成されていることが好ましい。
ジイソシアネートとしては、ハードセグメントブロックの説明において先に例示したジイソシアネート等が挙げられる。
ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール等が挙げられる。
ポリエステルポリオールとしては、ジオール類とジカルボン酸との縮合重合により得られるポリエステルポリオール;ε−カプロラクトン等のラクトンモノマーの開環重合により得られるポリラクトンジオール等が挙げられる。
ジオール類としては、ハードセグメントブロックの説明において先に例示したジオール類等が挙げられる。
ジカルボン酸としては、例えばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸等が挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、ジカルボン酸とグリコールとの縮合重合により得られるポリエーテルポリオール;ポリエチレングリコール;ポリプロピレングリコール;ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
ジカルボン酸としては、ポリエステルポリオールの説明において先に例示したジカルボン酸等が挙げられる。
グリコールとしては、ジエチレングリコール、プロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。
ポリカーボネートポリオールとしては、ジオール類とカーボネート類との反応により得られるポリカーボネートポリオール;ポリカプロラクトンポリオールとポリヘキサメチレンカーボネートとの共重合体等が挙げられる。
ジオール類としては、ハードセグメントブロックの説明において先に例示したジオール類等が挙げられる。
カーボネート類としては、例えばジエチレンカーボネート、ジエチルカーボネート等が挙げられる。
TPUの硬度は、A80〜A95が好ましく、A85〜A95がより好ましい。TPUの硬度が低いほど、熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物の硬度も低くなる傾向がある。一方で、TPUの硬度が低くなると、熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物の成形性が低下する。例えば金型で成形する場合に、成形品を金型から取り出す際に成形品が変形しやすくなる。TPUの硬度が前記範囲内であれば、熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物の硬度が充分に低く、かつ成形性にも優れる。
本発明において、「硬度」は、JIS K 6253−3:2012に準拠して測定されるショアA硬度である。測定時間は、特に記載のない場合は、1秒以内である。
TPUの硬度は、TPUの分子量、ハードセグメントブロックの量等によって調整できる。
TPUとしては市販品を用いることができ、例えばディーアイシーコベストロポリマー株式会社製の「T−8185N」、「T−8180N」、「T−8175N」;BASFジャパン株式会社製の「ET−885」、「ET−880」、「ET870−11V」;Lubrizol社製の「58215」、「58315」、「2103−70A」等が挙げられる。
<スチレン系エラストマー>
スチレン系エラストマーは、熱可塑性エラストマーの一種であり、軟質スチレン樹脂とも称される。スチレン系エラストマーは、熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物の低硬度化に寄与する。
スチレン系エラストマーとしては、スチレン−共役ジエンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン−共役ジエンランダム共重合体およびその水素添加物等が挙げられる。
スチレン−共役ジエンブロック共重合体としては、(1)スチレン系単量体が重合して形成されたポリスチレンブロックと、共役ジエン単量体が重合して形成されたポリ共役ジエンブロックとを有するブロック共重合体;(2)スチレン系単量体が重合して形成されたポリスチレンブロックと、共役ジエン単量体およびスチレン系単量体がランダム共重合して形成された共役ジエンスチレン共重合体ブロックとを有するブロック共重合体等が挙げられる。(1)のブロック共重合体が有するポリスチレンブロック、ポリ共役ジエンブロックはそれぞれ1つでもよく2つ以上でもよい。(2)のブロック共重合体が有するポリスチレンブロック、共役ジエンスチレン共重合体ブロックはそれぞれ1つでもよく2つ以上でもよい。
スチレン系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン等が挙げられる。これらスチレン系単量体は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。前記スチレン系単量体のなかでも、スチレンが好ましい。
共役ジエン単量体としては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペタンジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。これら共役ジエン単量体は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。前記共役ジエン単量体のなかでも、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエンが好ましい。
スチレン系エラストマーの具体例としては、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、SBSの水素添加物であるスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、SISの水素添加物であるスチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンランダム共重合体(SBR)、SBRの水素添加物であるH−SBR等が挙げられる。これらは一種単独または2種以上の組み合わせで使用される。
スチレン系エラストマーとしては、上記の中でも、スチレン−共役ジエンブロック共重合体が好ましく、SEBS、SEPS、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体がより好ましい。
スチレン系エラストマーの硬度は、A41以下が好ましい。スチレン系エラストマーの硬度が低いほど、熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物の硬度も低くなる。
スチレン系エラストマーとしては市販品を用いることができ、例えば株式会社クラレ製の「HYBRAR7311」、「HYBRAR7125」、「セプトン2063」、株式会社カネカ製の「SIBSTAR」等が挙げられる。
熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物中、TPU/スチレン系エラストマーの質量比は、40/60〜90/10であり、40/60〜80/20が好ましく、40/60〜50/50がより好ましい。TPU/スチレン系エラストマーの質量比が40/60以上であれば、TPUの特性(伸び性、引張強度、耐摩耗性等)が充分に維持される。TPU/スチレン系エラストマーの質量比が90/10以下であれば、スチレン系エラストマーによる低硬度化の効果が充分に発揮され、熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物の硬度が充分に低くなる。
<アクリル変性オルガノポリシロキサン>
アクリル変性オルガノポリシロキサンとしては、下記一般式(1)で表されるオルガノポリシロキサンに、アクリル酸エステルを乳化グラフト共重合させてなるもの、下記一般式(1)で表されるオルガノポリシロキサンに、アクリル酸エステルとこれと共重合可能な単量体との混合物を乳化グラフト共重合させてなるものが好ましい。
Figure 0006853050
上記一般式(1)中、R、RおよびRは、それぞれ同一または異なる炭素数1〜20の炭化水素基または炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基である。
炭素数1〜20の炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等の、アルキル置換または無置換のアリール基等が挙げられる。
炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基としては、例えば前記炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の少なくとも1つがハロゲン原子で置換された基が挙げられる。ハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子等が挙げられる。
上記一般式(1)中、Yはラジカル反応性基、SH基またはその両方をもつ有機基である。
ラジカル反応性基としては、例えばビニル基、アリル基、γ−アクリロキシプロピル基、γ−メタクリロキシプロピル基、γ−メルカプトプロピル基等が挙げられる。
上記一般式(1)中、ZおよびZはそれぞれ同一または異なる水素原子、低級アルキル基またはトリオルガノシリル基である。
低級アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基が挙げられる。
トリオルガノシリル基は、下記一般式(2)で表される。
Figure 0006853050
上記一般式(2)中、RおよびRは、それぞれ同一または異なる炭素数1〜20の炭化水素基または炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基であり、Rは、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、ラジカル反応性基、SH基またはその両方をもつ有機基である。
これら、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、ラジカル反応性基、SH基またはその両方をもつ有機基は、上記R、R、RおよびYの説明において先に例示したものと同じものを挙げることができる。
上記一般式(1)中、mは10,000以下の正の整数であり、好ましくは500〜8,000の範囲の整数である。
nは1以上の整数であり、好ましくは1〜500の範囲の整数である。
上記オルガノポリシロキサンに乳化グラフト共重合されるアクリル酸エステルとしては、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート等のアルキルアクリレート;メトキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート等のアルコキシアルキルアクリレート;シクロヘキシルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート等が挙げられる。これらは一種単独または2種以上の組み合わせで使用される。
アクリル酸エステルと共重合可能な単量体としては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有不飽和単量体等が挙げられる。これらは一種単独または2種以上の組み合わせで使用される。(メタ)アクリレートはアクリレートまたはメタクリレートを示す。
上記オルガノポリシロキサン(a)と、アクリル酸エステルまたはアクリル酸エステルとこれと共重合可能な単量体との混合物(b)との配合割合((a)/(b))は、質量比で2/8〜8/2が好ましく、4/6〜7/3がより好ましい。
また、(b)として、アクリル酸エステルとこれと共重合可能な単量体との混合物を用いる場合、混合物の総質量に対し、アクリル酸エステルと共重合可能な単量体の含有量は、30質量%未満であることが好ましい。
アクリル変性オルガノポリシロキサンは、コアシェル構造を形成している粒子状の共重合体であることが好ましく、コア部の主成分がオルガノポリシロキサン(a)であり、シェル部の主成分がアクリル酸エステルまたはアクリル酸エステルとこれと共重合可能な単量体との混合物(b)の重合体であることが好ましい。
ここで、「主成分」とは、コア部またはシェル部の総質量に対する割合が50質量%以上であることを意味する。
このようなコアシェル構造を有するアクリル変性オルガノポリシロキサンとしては市販品を用いることができ、例えば日信化学工業株式会社製の「シャリーヌR−170」、「シャリーヌR−170S」、「シャリーヌR−127E」等が挙げられる。
アクリル変性オルガノポリシロキサンの含有量は、TPUとスチレン系エラストマーとの合計100質量部に対して、10〜100質量部であり、25〜80質量部が好ましく、40〜50質量部がより好ましい。
アクリル変性オルガノポリシロキサンの含有量が1質量部以上であれば、摺動性の向上効果が充分に得られる。摺動性の向上効果は、アクリル変性オルガノポリシロキサンの含有量が多くなるに連れて高まる傾向にある。しかし、含有量が多くなりすぎるとアクリル変性オルガノポリシロキサンがTPU中で凝集しやすくなる。アクリル変性オルガノポリシロキサンが凝集すると、凝集部分を基点にクラックが生じることがある。また、伸び性や引張強度、耐摩耗性も低下しやすくなる。そのため、アクリル変性オルガノポリシロキサンの含有量が多くなりすぎると、本発明の熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物を加圧成形する際や離型時の応力に耐えられず、破壊などが生じで成形品が得られにくくなる。アクリル変性オルガノポリシロキサンの含有量が100質量部以下であれば、TPU中でアクリル変性オルガノポリシロキサンが凝集するのを抑制できるので、クラックが発生しにくい。また、TPUの伸び性、引張強度、耐摩耗性も良好に維持できる。加えて、加圧成形や離型時の応力への耐性が高まるため、破壊などが生じにくく、成形品を容易に製造できる。
<任意成分>
熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物は、必要に応じて、TPU、スチレン系エラストマーおよびアクリル変性オルガノポリシロキサン以外の成分(任意成分)を含んでいてもよい。
任意成分としては、プロセスオイル等の軟化剤、タルク、カーボンブラック、炭酸カルシウム等の充填剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、加工安定剤、着色剤等の各種添加剤が挙げられる。
本発明の熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物は、混練機等を用いて、TPUと、スチレン系エラストマーと、アクリル変性オルガノポリシロキサンとを混練することで得られる。
本発明の熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物の硬度は、用途によっても異なるが、A85〜A64が好ましく、A75〜A64がより好ましい。熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物の硬度がA75以下であれば、柔軟性が求められる用途に用いることができる。熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物の硬度がA64以上であれば、成形性に優れる。
熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物の硬度は、TPUの硬度、TPU/スチレン系エラストマーの質量比等によって調整できる。
上述したTPUは主に伸び性、引張強度、耐摩耗性に寄与する成分である。アクリル変性オルガノポリシロキサンは主に摺動性に寄与する成分である。
本発明の熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物は、TPUと特定量のアクリル変性オルガノポリシロキサンとの組み合わせにおいて、特定量のスチレン系エラストマーを併有する。スチレン系エラストマーの作用によって柔軟性が付与される。
よって、本発明の熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物は低硬度であり、また、本発明の熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物を成形品とした際、あるいは通信ケーブルや電線を被覆した際に、TPUの特性である伸び性や引張強度、耐摩耗性を充分に維持しつつ、優れた摺動性が発現する。
スチレン系エラストマーは、TPU以外の熱可塑性エラストマーのなかでもTPUとの親和性が良好であるため、熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物や成形品の製造において混練を行った際にTPUと良好に混和される。そのため、低硬度化の効果が充分に発揮される。
本発明の熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物の製造時、あるいは本発明の熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物の成形時に、アクリル変性オルガノポリシロキサンにも外力が加わると、アクリル変性オルガノポリシロキサンからオルガノポリシロキサンが染み出して、熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物やその成形品の表面にブリードアウトする。特にアクリル変性オルガノポリシロキサンがコアシェル構造を形成している粒子状の共重合体の場合、粒子が割れてコア部の主成分であるオルガノポリシロキサンが染み出しやすい。オルガノポリシロキサンが染み出して熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物やその成形品の表面にブリードアウトすることで、表面のベタツキが低減され、優れた摺動性を発現できるようになる。
本発明の熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物は、プレス成形、射出成形、押出成形等の公知の成形法により成形して成形品とすることができる。
成形品としては、特に限定されず、例えば自動車部品、パーソナルコンピュータ、コピー機等の電子・電気機器部品(例えばキーボード、トナーシール材、クリーニングブレード等)、レインコート等のフィルム材、放水ホース材、時計用バンド、フィギュア(人間やキャラクター等の立体的な模型)、工具グリップ(ドライバーのハンドル等)等が挙げられる。
本発明の熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物の成形品は、低硬度であり、また、伸び性や引張強度、耐摩耗性、表面の摺動性等に優れる。そのため、本発明の熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物が適用される成形品としては、それらの特性の1以上が求められる成形品が好適であり、例えば時計用バンド、フィギュア、キーボード、工具グリップ等が好適である。
本発明の熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物は、通信ケーブル被覆材、電線被覆材等として用いることができる。本発明の熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物で表面が被覆された通信ケーブルや電線は、TPUの特性である伸び性や引張強度、耐摩耗性を充分に維持しつつ、摺動性にも優れる。
本発明の熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物で表面が被覆された通信ケーブルの構成としては、最外層(シース層)が本発明の熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物で形成されていれば特に制限されず、例えば導体線の外周が絶縁体で被覆された心線の外周が、本発明の熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物で被覆された構成などが挙げられる。
本発明の熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物で表面が被覆された通信ケーブルは、ロボットアーム、自動組立機械、ゲーム機のクレーン等の装置に用いられる通信ケーブルとして好適である。かかる装置においては、装置の動作に追従して通信ケーブルが動く。その際、通信ケーブルが摺動性に優れれば、通信ケーブルの動きがスムーズである。また、動いた際に表面が摩耗しにくい。また、通信ケーブルが伸び性および引張強度に優れれば、装置の動作に追従して通信ケーブルが引っ張られても切断されにくい。
以下、本発明について実施例を示して具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。
「実施例1」
TPU(DICコベストロポリマー社製、「T−8185N」)90.0質量部と、スチレン系エラストマー(株式会社クラレ製、「HYBRAR 7311」、硬度A41)10.0質量部と、アクリル変性オルガノポリシロキサン(日信化学工業株式会社製、「シャリーヌR−170S」、(a)/(b)=7/3)45.0質量部とを混練し、熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物を得た。
得られた熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物を、3.5インチテストロール(2本)を用いて170℃で7分間混練してロールシート成形物を得た。これを鏡面板で狭持して170℃で4分間予熱した後、150kg/cmの圧力で4分間加圧して、厚さ1.0mmのシート状の試験片(120mm×120mm)を作製した。
得られた試験片について、以下に示す方法で各種測定・評価を行った。結果を表1に示す。
<測定・評価>
(硬度の測定)
JIS K 6253−3:2012に準拠し、熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物のショアA硬度を測定した。
(引張試験)
予め、試験片をJIS K 6251のダンベル5号型で打ち抜き、25mmの標線を記入した。
ショッパ式引張試験機を用い、引張速度200mm/分、温度23℃で試験片を引張り、100%モジュラスを測定した。また、試験片が破断するのに要した最大荷重を引張強度(破断強度)とした。また、試験片が破断した際の標線間距離を測定し、伸び率を求めた。
(摺動性の評価)
摩擦試験機(新東科学株式会社製、「ヘイドン 14D−ANL」)を用い、直径10mmのSUS鋼球、荷重50g、引張速度100mm/分の条件で試験片の動摩擦係数を測定した。動摩擦係数が低いほど、摺動性に優れることを意味する。
「実施例2〜7、比較例1〜6」
表1〜2に示す配合組成に変更した以外は、実施例1と同様にして熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物を調製し、試験片を作製し、各種測定・評価を行った。結果を表1〜2に示す。
Figure 0006853050
Figure 0006853050
各実施例の熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物からは、低硬度で、摺動性、伸び性および引張強度に優れた成形品が得られた。
一方、アクリル変性オルガノポリシロキサンおよびスチレン系エラストマーを用いなかった比較例1の場合、摺動性に劣っていた。
スチレン系エラストマーを用いなかった比較例2、スチレン系エラストマーを5.0質量部用いた比較例3の場合、硬度が高かった。
アクリル変性オルガノポリシロキサンを用いなかった比較例4、アクリル変性オルガノポリシロキサンを5質量部用いた比較例5の場合、摺動性に劣っていた。
アクリル変性オルガノポリシロキサンを150質量部用いた比較例6の場合、成形品を作製することができなかった。
「比較例7」
スチレン系エラストマーの代わりにオレフィン系エラストマー(東洋紡株式会社製、Sarlink 4155)を用いた以外は、実施例3と同様にして熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物を調製し、試験片を作製しようとしたところ、成形品を作製することができなかった。

Claims (1)

  1. 熱可塑性ポリウレタンエラストマーと、スチレン系エラストマーと、下記一般式(1)で表されるオルガノポリシロキサン(a)に、アクリル酸エステルまたはアクリル酸エステルとこれと共重合可能な単量体との混合物(b)を乳化グラフト共重合させてなるアクリル変性オルガノポリシロキサンとを含有し、
    前記熱可塑性ポリウレタンエラストマー/前記スチレン系エラストマーの質量比が40/60〜90/10であり、
    前記アクリル変性オルガノポリシロキサンの含有量が、前記熱可塑性ポリウレタンエラストマーと前記スチレン系エラストマーとの合計100質量部に対して、40〜100質量部である、熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物。
    Figure 0006853050
    ただし、R 、R およびR は、それぞれ独立に炭素数1〜20の炭化水素基または炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基であり、Y はラジカル反応性基、SH基またはその両方をもつ有機基であり、Z およびZ は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基またはトリオルガノシリル基であり、mは10,000以下の正の整数であり、nは1以上の整数である。
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