JP6850990B2 - ダイヤモンド被覆切削工具及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、超硬合金からなる基体の表面にダイヤモンドが被覆されたダイヤモンド被覆切削工具及びその製造方法に関する。
超硬合金の表面にCVD(化学気相成長)ダイヤモンドを成膜するためには、表層に存在するダイヤモンドの核成長を阻害するCo(コバルト)成分を除去しておく必要がある。精密さが要求されるダイヤモンド被覆切削工具では、特許文献1に記載されているように、酸を用いてCo成分を選択除去する化学エッチングが用いられる場合が多い。
化学エッチングは、外形を変化させることなく均一に超硬合金の表面から10μm程度までの範囲内の浅い領域の表層にのみエッチングを行うため、工具径や刃先の鋭利さなどへの影響が小さいという利点がある。
特開昭62‐67174号公報
M.Barletta、外2名、「Adhesion and wear resistance of CVD diamond coatings on laser treated WC‐Co substrates」、Wear、ScienceDirect、vol.271(2011)、p.2016‐2024 若生 仁志、他2名、「超硬合金上に成膜したダイヤモンド薄膜の密着性に及ぼす硝酸処理の影響」、表面技術、Vol.61、No.7、2010、p.516‐521
切削工具となる超硬合金の基体の刃先をエッチング液に浸して表層のCo成分を除去する化学エッチングでは、基体の切れ刃先端において、切れ刃を稜線とする2つの面(逃げ面、すくい面)から同時にエッチング液が浸透するため、その周囲と比べてCo成分の溶出速度が速くなり、図7に示すように、切れ刃11の先端のCo成分が除去されたCo不存在層41の厚さD2がその周囲(すくい面21及び逃げ面31)のCo不存在層41の厚さD1よりも増すことになる。
ところが、D2>D1の関係が存在すると以下の問題が発生する。一般に、切れ刃11の先端のCo不存在層の厚さD2が大きい場合、Co不存在層は元の超硬合金と比べて靱性が低いため、刃先の耐欠損性が低下する。一方、切れ刃11の先端の周囲のCo不存在層の厚さD1が小さい場合、ダイヤモンド被膜の耐剥離性が低下する。非特許文献2では、超硬合金表層のCo不存在層の厚さが増すほど、ダイヤモンド被膜の付着強度が増加することが報告されている。実際の切削工具では、被削材に切り込む刃先先端部では、すくい面に対して高い垂直応力(刃先の欠損を生じる力)が発生するが、そこから少し離れたすくい面上では、切りくずのすべり抵抗に起因するせん断応力(ダイヤモンド被膜の剥離を生じる力)が最大の力学的負荷となる。そのため、従来の化学エッチングでは、耐欠損性と耐剥離性の両方を最適化すること(理想的にはD2<D1)ができなかった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、刃先の耐欠損性と多結晶ダイヤモンド被膜の耐剥離性とを向上したダイヤモンド被覆切削工具及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明のダイヤモンド被覆切削工具は、超硬合金製の基体上に、平均厚さが1μm以上30μm以下の多結晶ダイヤモンド被膜が被覆されており、前記基体のすくい面表層のCo成分の存在しないCo不存在層の厚さをD1とし、前記基体の切れ刃の刃先曲面部表層のCo成分の存在しないCo不存在層の厚さをD2としたときに、前記厚さD2が前記厚さD1よりも小さく設けられている。
工具刃先(基体の切れ刃の刃先曲面部表層)の靱性の低いCo不存在層の厚さD2を刃先周囲の面(すくい面表層)の厚さD1よりも小さく(浅く)することで、刃先の耐欠損性と多結晶ダイヤモンド被膜の耐剥離性を向上できる。
なお、多結晶ダイヤモンド被膜の平均厚さが1μm未満では摩耗による工具寿命が短くなり、30μmを超えると多結晶ダイヤモンド被膜が自壊しやすくなる。
本発明のダイヤモンド被覆切削工具の好ましい実施形態において、前記基体の逃げ面表層のCo成分の存在しないCo不存在層の厚さをD3としたときに、前記厚さD2が前記厚さD3よりも小さく、かつ、前記厚さD3が前記厚さD1よりも小さく設けられているとよい。
基体の切れ刃の刃先曲面部表層のCo不存在層の厚さD2を、逃げ面表層のCo不存在層の厚さD3よりも小さくすることで、刃先の耐欠損性を向上させながら、逃げ面の耐剥離性を向上させることが出来る。また、逃げ面は切削中に切れ刃に発生する背分力により塑性変形を生じやすいため、元の超硬基体よりも耐塑性変形性に劣るCo不存在層の厚さが過剰であると、塑性変形に伴う破損が生じやすくなる問題がある。そのため、逃げ面表層のCo不存在層の厚さD3をすくい面表層の厚さD1よりも小さくすることで、逃げ面及びすくい面の耐剥離性と、逃げ面の耐塑性変形性の両方が最適化され、工具寿命を延ばすことが出来る。
本発明のダイヤモンド被覆切削工具の好ましい実施形態において、前記厚さD1が3μm以上30μm以下であり、前記厚さD2が0.5μm以上5μm以下であるとよい。
基体のすくい面表層のCo不存在層の厚さD1が3μm未満では、基体と多結晶ダイヤモンド被膜とのアンカー効果による結合が弱く、多結晶ダイヤモンド被膜が剥離しやすくなる。一方、厚さD1が30μmを超えると、すくい面(ここでは刃先から100μm以上離れた箇所を指す。)下部の基体を起点とした大きな欠損が発生しやすくなる。
また、基体の切れ刃の刃先曲面部表層のCo不存在層の厚さD2が0.5μm未満では、多結晶ダイヤモンド被膜の成膜中にCo成分が表層に浮き上がることで結晶成長を阻害するおそれがある。一方、厚さD2が5μmを超えると、刃先の欠損が発生する可能性が高まる。
本発明のダイヤモンド被覆切削工具の製造方法は、超硬合金の基体の表層にレーザビームを照射してCo成分を除去する成膜前処理工程と、前記成膜前処理工程後に前記表層の表面にダイヤモンド被膜を成膜する成膜工程とを有し、前記成膜前処理工程は、前記基体のすくい面又は逃げ面に対して垂直方向から照射されるレーザビームの照射方向を0°とし、前記レーザビームの照射方向を前記垂直方向から切れ刃側に向けて傾けた方向を正として前記垂直方向と該レーザビームとがなす角度をθとしたときに、前記レーザビームを0°<θ<90°の前記角度θで前記すくい面又は前記逃げ面に照射して行う。
非特許文献1には、レーザビームを用いて超硬合金の基体の表層に高出力(〜1000W)のレーザビームを照射することで、表層中のWC粒子の溶融を生じさせずにCo成分のみを選択的に除去することができ、そのCo成分が除去された表層に多結晶ダイヤモンド被膜を成膜できることが報告されている。本発明のダイヤモンド被覆切削工具においては、例えば、このレーザビームにより表層のCo成分を除去する方法(レーザエッチング)を用いて、さらにレーザビームを逃げ面又はすくい面に対して角度θ傾斜させて照射することで、工具刃先(切れ刃の刃先曲面部表層)のCo不存在層の厚さを刃先周囲の面(すくい面表層)よりも小さく(浅く)することができる。このように、切れ刃の刃先曲面部表層において靱性の低いCo不存在層の厚さが増すことを防止できるので、刃先の耐欠損性と多結晶ダイヤモンド被膜の耐剥離性とを向上できる。
詳細には、例えば図3に示すように、照射角度θを0°以下(θ≦0°)としてすくい面21に対してレーザビームBを照射した場合には、切れ刃11の刃先曲面部において局所的なビーム照射角度θ’が角度θよりも大きくなる(0°に近づく)。このため、局所的な照射エネルギー密度が高くなり、靱性の低いCo不存在層41の厚さは、刃先周囲の面(すくい面21表層)のCo不存在層41の厚さD1に比べて刃先曲面部表層のCo不存在層41の厚さD2が大きくなり(D2>D1)、刃先の耐欠損性が低下する。
一方、図1に示すように、すくい面21に対して照射角度θを0°より大きく(0°<θ)してレーザビームBを照射した場合には、照射面(すくい面21表層)のCo不存在層41の厚さD1はほぼ一定となる。この場合、切れ刃11の刃先曲面部では局所的なビーム照射角度θ’が角度θよりも大きくなる(0°から離れる)ため、Co不存在層41の厚さD2はすくい面21の平坦面部側よりも浅くなるが、刃先曲面部はすくい面21の平坦面部よりも高さが低いために、結果としてCo不存在層41の厚さD1及びD2は刃先先端まで大よそ一定の厚さとすることができる。したがって、刃先の耐欠損性を向上でき、工具の高寿命化を図ることができる。
本発明のダイヤモンド被覆切削工具の製造方法の好ましい実施形態において、前記成膜前処理工程は、前記レーザビームに光強度分布がフラットトップ化されたものを用いて、該光強度分布のうちの高強度の中央領域を前記すくい面又は前記逃げ面に照射して行うとよい。
光強度分布がフラットトップ化されたレーザビームを用いることで、切れ刃の刃先曲面部表層のCo不存在層の厚さD2をすくい面や逃げ面の平坦面部側のCo不存在層の厚さD1よりも薄くすることができる。なお、このような光強度分布がフラットトップ化されたレーザビームを有するレーザとしては、連続波発振の高出力半導体レーザが適している。
例えば、図4に示すように、レーザビームの中心部の光強度がほぼ一定の中央領域(高強度の中央領域)をL1、中央領域L1の外側でレーザビームの外周部の光強度が急激に低下する外周領域をL2とした場合に、図1に示すように、切れ刃11の刃先曲面部からすくい面21にかけての刃先領域にレーザビームBの中央領域L1を照射した場合は、照射面(すくい面21表層)のCo不存在層41の厚さD1はほぼ一定となる。この場合、切れ刃11の刃先曲面部では局所的なビーム照射角度θ’が角度θよりも大きくなる(0°から離れる)ため、Co不存在層41の厚さD2はすくい面21の平坦面部側よりも浅くなるが、刃先曲面部はすくい面21の平坦面部よりも高さが低いために、結果としてCo不存在層41の厚さD1及びD2は刃先先端まで大よそ一定の厚さとすることができる。また、図2に示すように、刃先領域にレーザビームBの外周領域L2を照射した場合は、外周領域L2ではビームの中心から離れるほど急激に光強度が低下するため、刃先先端に近づくにつれてCo不存在層41の厚さを小さくできる。
本発明によれば、工具の刃先における多結晶ダイヤモンド被膜のCo不存在層の厚さを刃先周囲のすくい面のCo不存在層の厚さよりも小さくしたので、刃先の耐欠損性と多結晶ダイヤモンド被膜の耐剥離性とを向上できる。
本発明に係るダイヤモンド被覆切削工具の製造方法において、基体に対するレーザビームの照射角度を示す刃先稜線に対する垂直断面の模式図であり、レーザビームの中央領域を刃先曲面部に照射した状態を示す。 基体に対するレーザビームの照射角度を示す模式図であり、レーザビームの外周領域を刃先曲面部に照射した状態を示す。 レーザビームの照射角度を変更した比較例を説明する模式図である。 フラットトップ化されたレーザビームの光強度分布を説明する模式図である。 本発明に係るダイヤモンド被覆切削工具の製造方法により製造される側面加工用エンドミルの斜視図である。 図5に示すエンドミルの切れ刃部分の模式図である。 化学エッチングによる表層のCo成分除去方法を説明する切れ刃部分の要部図である。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態のダイヤモンド被覆切削工具は、図5に示すように、軸線O回りに回転される円柱状のシャンク部20と、このシャンク部20の先端側に形成された工具先端部10とを有し、工具先端部10の外周に、切れ刃11が周方向に90°間隔をおいて配置された4枚刃を有する側面加工用のスクエアエンドミル1(以下、エンドミルと称す。)である。また、切れ刃11は、図6に示すように、すくい面21と逃げ面31との交差稜線部に形成されており、切れ刃11、すくい面21及び逃げ面31は、エンドミル1の軸線Oを対称点として点対称に4箇所に配置されている。
また、本実施形態のエンドミル1は、図6に示すように、超硬合金製の基体40の表面に、多結晶ダイヤモンド被膜45をコーティングしたものであり、多結晶ダイヤモンド被膜45が平均厚さ1μm以上30μm以下程度の略一定の膜厚で基体40(Co不存在層41)の表面に一様にコーティングされている。なお、多結晶ダイヤモンド被膜45の平均厚さが1μm未満では摩耗による工具寿命が短くなり、30μmを超えると多結晶ダイヤモンド被膜45が自壊しやすくなる。
また、エンドミル1には、すくい面21表層のCo不存在層41の厚さをD1とし、切れ刃11の刃先曲面部表層のCo不存在層41の厚さをD2としたときに、厚さD2が厚さD1よりも小さく設けられている。また、逃げ面31表層のCo不存在層41の厚さをD3としたときに、厚さD2が厚さD3よりも小さく設けられ、かつ、厚さD3が厚さD1よりも小さく設けられている。つまり、エンドミル1においては、靱性の低いCo不存在層41が切れ刃11の刃先曲面部表層において深く形成されることなく、むしろCo不存在層41の厚さD2が、周囲のすくい面21の平坦面部の表層のCo不存在層41の厚さD1や逃げ面31の平坦面部の表層のCo不存在層41の厚さD3よりも薄く設けられており、刃先の耐欠損性と多結晶ダイヤモンド被膜45の耐剥離性とが高められている。また、このように逃げ面31表層のCo不存在層41の厚さD3を切れ刃11の刃先曲面部表層のCo不存在層41の厚さD2よりも小さくすることで、刃先の耐欠損性を向上させながら、逃げ面31の耐剥離性を向上させることができる。さらに、逃げ面31表層のCo不存在層41の厚さD3は、すくい面21表層のCo不存在層41の厚さD1よりも小さく設けられているので、逃げ面31及びすくい面21耐剥離性と、逃げ面31の耐塑性変形性の両方が最適化され、工具寿命を延ばすことができる。
また、この場合において、基体40のすくい面21表層のCo不存在層41の厚さD1が3μm以上30μm以下であり、切れ刃11の刃先曲面部表層のCo不存在層の厚さD2が0.5μm以上5μm以下であることが望ましい。また、逃げ面31表層のCo不存在層の厚さD3は3μm以上30μm以下であることが望ましい。
厚さD1又は厚さD3が3μm未満では、基体40と多結晶ダイヤモンド被膜45とのアンカー効果による結合が弱く、多結晶ダイヤモンド被膜45が剥離しやすくなる。一方、厚さD1又は厚さD3が30μmを超えると、すくい面21又は逃げ面31(ここでは刃先から100μm以上離れた箇所を指す)下部の基体40を起点とした大きな欠損が発生しやすくなる。
また、厚さD2が0.5μm未満では、多結晶ダイヤモンド被膜45の成膜中にCo成分が表層に浮き上がることで結晶成長を阻害するおそれがある。一方、厚さD2が5μmを超えると、刃先の欠損が発生する可能性が高まる。
なお、刃先曲面部とは、超硬基体を整形するための通常の研削加工において、WC粒子を加工することが困難であるため、WC粒子の大きさに応じて発生する刃先の丸みか、あるいは、研削加工後に刃先の耐欠損性を向上させる目的で、ブラスト処理等を用いて意図的に形成した刃先の丸みを表す。一般に、このように形成される刃先曲面部の曲率半径Rは0.1μm以上10μm以下程度の範囲である。
次に、本実施形態のエンドミル1(ダイヤモンド被覆切削工具)を製造する製造方法の一例について説明する。
本実施形態のエンドミル1は、例えば、超硬合金製の基体40にすくい面21と逃げ面31との交差稜線部に切れ刃11を形成する切れ刃形成工程と、基体40の表層にレーザビームBを照射してCo成分を除去する成膜前処理工程と、成膜前処理工程後に表層の表面に多結晶ダイヤモンド被膜45を成膜する成膜工程とを経て製造される。
(切れ刃形成工程)
切れ刃11は、公知の方法により、すくい面21、逃げ面31とを加工することにより、これらすくい面21と逃げ面31との交差稜線部に設けられる。
(成膜前処理工程)
高出力(〜1000W)のレーザを用いて、図2に示すように、基体40のすくい面21及び逃げ面31に対してレーザビームBを照射することにより、表層中のWC(炭化タングステン)粒子の溶融を生じさせずにCo成分のみを選択的を除去し、厚さD1よりも厚さD2を小さくしたCo不存在層41を形成する。この成膜前処理工程において使用するレーザとしては、図4に示すように、光強度分布がフラットトップ化された連続波発振の高出力半導体レーザ(波長940nm)が適している。
光強度分布がフラットトップ化されたレーザビームは、図4に示すように、レーザビームの中心部の光強度がほぼ一定の中央領域L1を有し、中央領域L1の外側にレーザビームの外周部の光強度が急激に低下する外周領域L2を有している。
本実施形態において、超硬合金の基体40の表層のWC粒子の溶融を発生させずにCo成分のみを除去する光強度範囲をI1からI2の範囲(I1>I2)としたときに、レーザビームBの光強度の最大値(Imax)をI1の直下に設定すると、I1とI2の比率(I1:I2)は、大体2:1となり、I2は、光強度が急激に低下するビームの外周部に相当する。このとき、レーザビームBの中心部の光強度がほぼ一定の高強度の中央領域をL1、中央領域L1の外側でレーザビームの外周部の光強度が急激に低下する外周領域をL2とする。
そして、図2に示すように、基体40のすくい面21又は逃げ面31に対して垂直方向から照射されるレーザビームBの照射方向を0°とし、レーザビームBの照射方向を垂直方向から切れ刃11側に向けて傾けた方向を正として垂直方向とレーザビームBとがなす角度をθとしたときに、レーザビームBを0°<θ<90°の角度θですくい面21又は逃げ面31に照射して行う。このように、レーザビームBをすくい面21又は逃げ面31に対して角度θ傾斜させて照射することで、刃先曲面部表層のCo不存在層41の厚さD2を、刃先周囲の面(すくい面21表層及び逃げ面31表層)のCo不存在層41の厚さD1,D3よりも薄くすることができる。
なお、図2は、すくい面21及び逃げ面31が平面の場合であるが、本発明は、それらが曲面の場合でも適用することができる。その場合、レーザビームBの照射角度θの定義は、刃先曲面部を除いて、刃先稜線に垂直な断面において、すくい面21及び逃げ面31の刃先近傍の曲線を多項式でフィッティングした際の、刃先先端部における、そのフィッティングカーブの法線に対する角度とする。
すくい面21側を例として詳細に説明すると、図1に示すように、レーザビームの高強度の中央領域L1を切れ刃11の刃先曲面部からすくい面21にかけて照射することで、すくい面21表層、切れ刃11表層、照射面(すくい面21表層)のCo不存在層41の厚さD1をほぼ一定とできる。この際、すくい面21に対してレーザビームBの照射角度θを0°より大きく(0°<θ)してレーザビームBを照射することで、すくい面21の平坦面部の表層のCo不存在層41の厚さD1をほぼ一定とできる。この場合、切れ刃11の刃先曲面部では局所的なビーム照射角度θ’がすくい面21となす角度θよりも大きくなる(0°から離れる)ため、Co不存在層41の厚さD2はすくい面21の平坦面部側よりも浅くなるが、刃先曲面部はすくい面21の平坦面部よりも高さが低いために、結果としてCo不存在層41の厚さD1及びD2は刃先先端まで大よそ一定の厚さとできる。
なお、例えば図3に示すように、照射角度θを0°以下(θ≦0°)としてすくい面21に対してレーザビームBを照射した場合には、切れ刃11の刃先曲面部において局所的なビーム照射角度θ’が角度θよりも大きくなる(0°に近づく)。このため、局所的な照射エネルギー密度が高くなり、靱性の低いCo不存在層41の厚さは、刃先周囲の面(すくい面21表層)のCo不存在層41の厚さD1に比べて刃先曲面部表層のCo不存在層41の厚さD2が大きくなる(D2>D1)。
また、図2に示すように、切れ刃11の刃先曲面部にレーザビームBの外周領域L2を照射し、すくい面21の平坦面部にレーザビームBの中央領域L1を照射することで、外周領域L2ではビームの中心から離れるほど急激に光強度が低下するため、刃先先端に近づくにつれてCo不存在層41の厚さを小さくできる。したがって、刃先曲面部表層のCo不存在層41の厚さD2を、すくい面21の平坦面部の表層や逃げ面31の平坦面部の表層のCo不存在層41の厚さD1よりも薄く設けることができる。
(成膜工程)
基体40(Co不存在層41)への多結晶ダイヤモンド被膜45のコーティングは、例えばマイクロ波プラズマCVD法や、熱フィラメントCVD法、高周波プラズマCVD法等の公知の方法を好適に用いることができ、これら公知の方法により、基体40の表面(Co不存在層41)に厚さ1μm以上30μm以下の多結晶ダイヤモンド被膜45を形成する。なお、イオンビーム法等の他のコーティング法を適用することもできる。
このようにして製造されたエンドミル1(ダイヤモンド被覆切削工具)においては、上述したように、工具刃先のCo不存在層41の厚さD2を刃先周囲の面(すくい面21表層及び逃げ面31表層)の厚さD1,D3よりも小さく(薄く)することができる。したがって、切れ刃11の刃先曲面部表層において靱性の低いCo不存在層41の厚さD2が増すことを防止できるので、刃先の耐欠損性と多結晶ダイヤモンド被膜45の耐剥離性とを向上でき、工具の高寿命化を図ることができる。
また、本実施形態のエンドミル1は、上述したように、フラットトップレーザーの端のエネルギー密度の低い部分が刃先に位置するように調整しながら切れ刃11輪郭に倣ってレーザビームを掃引する方法や、レーザビームの照射角度θを90°未満にして斜めから照射して照射エネルギー密度を下げる方法等を採用することにより容易に製造できるが、必ずしも上記の製造方法に限定されるものではない。
なお、本発明で述べるすくい面21表層のCo不存在層41の厚さD1及び逃げ面31表層のCo不存在層41の厚さD3と、刃先曲面部表層のCo不存在層41の厚さD2とは、FIB加工等により切れ刃11の稜線に垂直な断面を露出させた箇所を走査型電子顕微鏡を用いて観察した際の、超硬基体40の内側から、エッチング処理を行う前の超硬基体40表面に垂直な方向に順次調べて行った際の、Coバインダーが観察される臨界位置と、WC粒子先端が見られる臨界位置との距離の差分とする。
このうち、すくい面21表層のCo不存在層41の厚さD1及び逃げ面31表層のCo不存在層41の厚さD3は、それぞれ切れ刃11の刃先先端から100μm以上200μm以下離れた範囲におけるすくい面21表層及び逃げ面31表層のCo不存在層41の厚さの最小値である。例えば、すくい面21上の刃先先端から100μm以上200μm以下の範囲内の一点にCo不存在層41の厚さの最小値があれば、その値を厚さD1とする。また、刃先曲面部表層のCo不存在層41の厚さD2は、切れ刃11の稜線の垂直な断面において、基体40の刃先先端を通るすくい面21と逃げ面31との二等分線上における、基体40の刃先先端とCoバインダーが存在し始める位置との間の距離とする。
上記において説明した本発明に係るエンドミル(ダイヤモンド被覆切削工具)について、その効果を確認するために実験を行った。
エンドミルの各試料には、図5に示すような外観の4枚刃のスクエアエンドミル1(工具直径φ20mm、刃長40mm)を作製した。各試料は、表1に示すように、超硬合金製の基体に対してサンドブラスト処理により刃先の曲率半径Rを変更した後、レーザビームによるレーザエッチング(表1では「レーザ」と表記)又は化学エッチング(表1では「化学」と表記)により成膜前処理を行い、Co不存在層を形成した。そして、基体の表面に、熱フィラメントCVD法により、平均厚さ(平均膜厚)が12μmの多結晶ダイヤモンド被膜を成膜した。なお、本発明の効果は、多結晶ダイヤモンド被膜の平均膜厚に依存するものではないことは自明のため、1μm以上30μm以下の範囲内において平均膜厚を変えた場合の実施例については省略した。
このように作製した各試料を用いて、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製の被削材(200mm×200mm×10mmの板材)に回転数500(mm−1)で溝加工(切断加工)を行った。その際、テーブル送り速度を段階的に増やしてゆき、刃先の欠損、又は、多結晶ダイヤモンド被膜の摩耗により刃先の基体が露出した時点のテーブル送り速度を記録した。結果を表1に示す。
Figure 0006850990
表1に示すように、工具刃先(基体の切れ刃の刃先曲面部)表層の靱性の低いCo不存在層の厚さD2を刃先周囲の面(すくい面)表層の厚さD1よりも小さく(浅く)した実施例1〜8では、厚さD2を厚さD1よりも小さくした比較例1〜3と比較し、同じ基体の刃先の曲率半径R同士であっても、より高いテーブル送り速度まで使用することができた。また、特に、厚さD1が3μm以上30μm以下で、厚さD2が0.5μm以上5μm以下であるもの(実施例1,2,4〜6,9)では、いずれも正常摩耗による刃先の損耗となり、より高いテーブル送り速度を可能とした。一方、実施例3では、膜剥離が発生したが、これは、すくい面表層のCo不存在層の厚さD1が薄すぎたため、多結晶ダイヤモンド被膜の成膜中の高温時に、Co成分が毛細管現象により基体表面に浮き上がり、多結晶ダイヤモンド被膜の成長を阻害したためであると考えられる。
なお、実施例7、実施例8、比較例1〜3では欠損が発生したが、このうち実施例8は、他の欠損が発生したもの(実施例7、比較例1,2,3)と比べて刃先の欠損量が大きかった。この実施例8の結果と、正常摩耗である実施例6との違いは、実施例8のすくい面のCo不存在層の厚さD1が、実施例6よりも大きい点のみである。このことから、実施例8からは、すくい面のCo不存在層の厚さD1が過剰であったため、そこが欠損発生の起点になったと判断した。また、実施例2,5,9は、それぞれ実施例1,4,6を基準に、逃げ面のCo不存在層の厚さD3を相対的に小さくしたものであるが、厚さD3を小さくすることで、いずれも刃先損傷時のテーブル送り速度が高まる結果となった。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、エンドミルについて説明を行ったが、本発明の製造方法により製造されるダイヤモンド被覆切削工具はこれに限定されるものではなく、例えばインサート、ドリル等に適用が可能である。
1 エンドミル(ダイヤモンド被覆切削工具)
10 工具先端部
11 切れ刃
20 シャンク部
21 すくい面
31 逃げ面
40 基体
41 Co不存在層
45 多結晶ダイヤモンド被膜
B レーザビーム
L1 中央領域
L2 外周領域

Claims (5)

  1. 超硬合金製の基体上に、平均厚さが1μm以上30μm以下の多結晶ダイヤモンド被膜が被覆されており、
    前記基体のすくい面表層のCo成分の存在しないCo不存在層の厚さをD1とし、前記基体の切れ刃の刃先曲面部表層のCo成分の存在しないCo不存在層の厚さをD2としたときに、
    前記厚さD2が前記厚さD1よりも小さく設けられていることを特徴とするダイヤモンド被覆切削工具。
  2. 前記基体の逃げ面表層のCo成分の存在しないCo不存在層の厚さをD3としたときに、前記厚さD2が前記厚さD3よりも小さく、かつ、前記厚さD3が前記厚さD1よりも小さく設けられていることを特徴とする請求項1に記載のダイヤモンド被覆切削工具。
  3. 前記厚さD1が3μm以上30μm以下であり、
    前記厚さD2が0.5μm以上5μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のダイヤモンド被覆切削工具。
  4. 超硬合金の基体の表層にレーザビームを照射してCo成分を除去する成膜前処理工程と、
    前記成膜前処理工程後に前記表層の表面にダイヤモンド被膜を成膜する成膜工程とを有し、
    前記成膜前処理工程は、
    前記基体のすくい面又は逃げ面に対して垂直方向から照射されるレーザビームの照射方向を0°とし、前記レーザビームの照射方向を前記垂直方向から切れ刃側に向けて傾けた方向を正として前記垂直方向と該レーザビームとがなす角度をθとしたときに、
    前記レーザビームを0°<θ<90°の前記角度θで前記すくい面又は前記逃げ面に照射して行うことを特徴とするダイヤモンド被覆切削工具の製造方法。
  5. 前記成膜前処理工程は、
    前記レーザビームに光強度分布がフラットトップ化されたものを用いて、
    該光強度分布のうちの高強度の中央領域を前記すくい面又は前記逃げ面に照射して行うことを特徴とする請求項4に記載のダイヤモンド被覆切削工具の製造方法。
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