JP6848820B2 - 電子時計 - Google Patents
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Description
特許文献1に記載の電子時計では、文字板をグランドとし、風防部材(カバーガラス)と文字板との間の見切り部分にアンテナを配置している。
特に、所望の周波数の電波を受信するためにアンテナを大きくした場合には、時計のケース全体も大きくならざるを得ず、電子時計が大型化してしまう。
また、文字板をグランドとして用いているため、文字板を金属材料で形成しなければならない等、文字板の材料や配置等の選択のバリエーションが限定されてしまうとの問題もある。
基板を内部に収容する筒状の外装ケースと、
金属材料により環状に形成され、環状の内側面から環状中心に向かって張り出す内向きフランジ部を備え、前記外装ケースにおける外側上部に配置されるとともに、前記基板と電気的に接続されるベゼルと、
透明な誘電体で形成され、前記ベゼルの内側に配置され、前記内向きフランジ部により支持される風防部材と、
を備え、
前記風防部材を形成する誘電体の比誘電率又は前記内向きフランジ部と前記風防部材とが重なり合う重畳領域の面積のうち少なくとも一方を調整し、前記ベゼルが所望の周波数の電波と共振するように構成されていることを特徴としている。
図1に示すように、電子時計100は、本体ケース(以下「外装ケース1」という。)を備えている。
外装ケース1は、例えばABS樹脂等の硬質樹脂で形成されている。
なお、外装ケース1を形成する材料は樹脂に限定されず、例えばステンレスやチタニウム等の金属、セラミックその他各種の材料を適用することができる。
なお、後述するように、本実施形態では外装ケース1の上部に、アンテナとして機能するベゼル2が装着されるため、外装ケース1が金属材料等の導電性材料で形成される場合には、絶縁性があり低損失である程度の比誘電率を有し、かつアンテナとしてのベゼル2の周波数特性を大きく変動させないような樹脂等を外装ケース1とベゼル2との間に介在させて外装ケース1とベゼル2とを絶縁することが好ましい。
また、外装ケース1が樹脂材料で形成されている場合にも、強度を持たせるために樹脂材料に強化材を混入することがある。この場合、強化材としては、ガラス繊維(ガラスファイバー)等の非導電性の材料を用いることが好ましい。
図2に示すように、外装ケース1はほぼ筒状のケースである。外装ケース1の内側は厚み方向の上下(図3における上下)が開口した中空状となっており、この中空部分が各種部品を収納する収納空間となる。
この外装ケース1の図1における上下(アナログ式の時計における12時側と6時側)の両端部には、バンド取付部11が形成されており、各バンド取付部11には図示しない時計バンドが取り付けられるようになっている。
また、外装ケース1には、後述するように、ベゼル2及び緩衝部材4(4a〜4c)がビス等により固定されるようになっており、外装ケース1におけるビス挿通位置に対応する箇所には、孔部13が形成されている(図2及び図3参照)。
図4及び図5は、操作ボタン12の構成を示す一部分解斜視図である。
図4に示すように、本実施形態の電子時計100には、アナログ式の時計におけるほぼ2時、4時、8時、10時に相当する位置に、押しボタン式の操作ボタン12aがそれぞれ設けられている。
押しボタン式の操作ボタン12aは、ユーザが指で操作する部分であるボタン本体121、操作時の衝撃等を吸収するクッションとなる緩衝部材122、ボタン本体121を内部に収容した状態で保持するボタンパイプ123等を備えて構成されている。
ボタンパイプ123は、先端部が貫通孔14から外装ケース1内に挿入されており、操作ボタン12aのボタン本体121が操作された際には、当該操作が外装ケース1内部の時計モジュール等に伝えられるようになっている。
また、図5に示すように、本実施形態の電子時計100には、アナログ式の時計におけるほぼ3時に相当する位置に、竜頭式の操作ボタン12bが設けられている。
竜頭式の操作ボタン12bは、ボタン本体124、スペーサ125、操作時の衝撃等を吸収するクッションとなる緩衝部材126等を備えて構成されている。
ボタン本体124は、一端側が貫通孔14から外装ケース1内に挿入される軸部124aと、この軸部124aの他端側に設けられユーザが指で操作する部分である頭部124bとで構成されている。
操作ボタン12bのボタン本体124がユーザによって回転操作された際には、当該操作が外装ケース1内部の時計モジュール等に伝えられるようになっている。
ハウジング7や回路基板71等は、外装ケース1内でのがたつきや位置ずれ等を防ぐために、ビス75により固定されている。
液晶パネル55には、時刻、日付、曜日や、位置情報等の各種情報が表示されるようになっている。本実施形態において液晶パネル55は、後述する環状の文字板5を介して視認側に露出し、風防部材3越しに視認可能となっている。
なお、表示部は液晶パネル55で構成されているものに限定されない。例えば有機ELその他で構成される各種表示ユニットを表示部として適用することが可能である。
図6は、図2に示す外装ケース1を裏返して裏面側(非視認側、図3において下側)から見た斜視図である。
図2及び図6に示すように、外装ケース1における周縁部であって、回路基板71に搭載されたアンテナ回路に対応する位置又はその近傍には、後述するベゼル2と回路基板71とを電気的に接続させる接続部材25を挿通させる切欠き部150及び回路接続孔部15が設けられている。
切欠き部150の形状や位置、回路接続孔部15の設けられる数やその配置等は特に限定されないが、本実施形態では、アナログ時計における4時から5時に相当する位置に、外装ケース1の周縁形状に沿ってほぼ円弧状の切欠き部150が形成され、この切欠き部150の外装ケース1における外周側の辺に沿って4つの回路接続孔部15が並んで形成されている。
また、外装ケース1における周縁部であって、切欠き部150及び回路接続孔部15とは異なる位置には、ベゼル2をグランドと接続させる図示しないグランド端子を挿通させる切欠き部160及びグランド接続孔部16が設けられている。
切欠き部160の形状や位置、グランド接続孔部16の設けられる数やその配置等は特に限定されないが、本実施形態では、アナログ時計における7時から8時に相当する位置に、外装ケース1の周縁形状に沿ってほぼ円弧状の切欠き部160が形成され、この切欠き部160の外装ケース1における外周側の辺に沿って5つのグランド接続孔部16が並んで形成されている。
なお、裏蓋部材8を形成する材料はここに例示したものに限定されない。例えば、ABS樹脂等、各種樹脂材料を適用してもよい。
裏蓋部材8は、ビス82によって外装ケース1に固定されている。
本実施形態においてベゼル2は、所望の周波数の電波と共振するように構成されており、アンテナとして機能する。
例えば、GPS(global Positioning System)衛星から送信される電波や日本の準天頂衛星であるQZSSから送信される電波の周波数は1575.42MHzであり、GLONASS(Global Navigation Satellite System)から送信される電波は1602.5625MHzを中心とする周波数帯となっている。
本実施形態では、ベゼル2や後述する風防部材3等の各種条件を適宜設定することにより、ベゼル2を所望の周波数の電波を受信可能なアンテナとして機能させる。
例えば、ベゼル2を上記GPS等に対応した周波数1575.42MHzの電波や、GLONASSに対応した周波数1602.5625MHzの電波と共振可能な構成とすれば、GPSやGLONASSから送信された電波を受信することが可能となり、これらの電波に含まれる時刻情報や位置情報を電子時計100において利用することが可能となる。
なお、アンテナとして機能するベゼル2によって受信可能な所望の周波数の電波は、GPS衛星等から送信される電波に限定されない。
なお、ベゼル2を形成する材料は、SUS316に限定されない。
ただし、本実施形態において、ベゼル2は、前述のように所望の周波数の電波と共振状態となるアンテナとして機能するように構成されている。この点、形成材料の導電率が低い場合(抵抗率が高い場合)には、十分なアンテナ利得が得られないと考えられる。
このため、ベゼル2を良好なアンテナ利得を有するアンテナとして機能させるために、ベゼル2を形成する材料としては、導電率が一定程度以上(すなわち、抵抗率が一定程度以下)であり、透磁率が一定程度以下である金属材料を用いることが好ましい。
このような観点より、本実施形態のベゼル2を形成する材料としては、上記SUS316(抵抗率[μΩ・cm]74)の他、例えば、SUS304(抵抗率[μΩ・cm]72)、銀(抵抗率[μΩ・cm]1.62)、銅(抵抗率[μΩ・cm]1.72)、チタニウム(Ti)(抵抗率[μΩ・cm]55)、ニクロム(Ni,Fe,Crの合金)(抵抗率[μΩ・cm]109)、64チタン(Ti)(抵抗率[μΩ・cm]166)等の金属材料を適用することが可能である。なお、ここに例示した金属材料の透磁率(比透磁率)は、いずれも概ね「1」である。
なお、ベゼル2を形成する材料は、アンテナとしてのベゼル2によって受信したい電波の周波数、その他各種の条件により適宜設定されるべきものであり、ここに例示したものに限定されるものではない。
図7及び図8に示すように、ベゼル2は、その環状の内側面から環状中心に向かって張り出す内向きフランジ部21を備えている。
本実施形態の内向きフランジ部21は、一段目フランジ21aと、この一段目フランジ21aよりも下側(図8において下側)に形成され、一段目フランジ21aよりもさらに環状中心に向かって張り出す二段目フランジ21bと、からなる。
二段目フランジ21bの上面(図8において上側の面)には、文字板5の外周縁が載せられている。
本実施形態の文字板5は、上文字板51と下文字板52とで構成されており、例えば両面テープ等で構成される接着部材53によってずれないように接着固定され、一体化されている。
文字板5は、例えば両面テープ等で構成される接着部材54により、その下側面(下文字板52の裏面側)を二段目フランジ21bの上面に接着することで、位置ずれしないように固定されている。
風防部材3の下面側にある部材(本実施形態では文字板5)が十分に固定されていない場合には、風防部材3の下面に接触したり貼り付いてしまうおそれがある。スペーサ32は、これを防止ために風防部材3の外周縁を受けるものである。
スペーサ32には、ガラス印刷等を施して外部から視認されないようにすることが好ましい。
スペーサ32は、例えば、PET(Poly Ethylene Terephthalate、ポリエチレンテレフタレート樹脂)等で形成されている。形成手法は特に限定されないが、例えばPETシートから型抜きする手法等を用いることができる。
なお、スペーサ32を形成する材料や形成手法は特に限定されない。
例えば、多少硬さのある両面テープ、ABS樹脂やポリカーボネート樹脂(PC)等で成形される成形部品、又は各種の金属材料で形成された部材等でもスペーサ32として適用可能である。
なお、内向きフランジ部21の構成は、ここに示した例に限定されない。
例えば、文字板5を支持する支持部を外装ケース1側に設けて、内向きフランジ部21を、風防部材3を支持するフランジ部(本実施形態における一段目フランジ21aに相当する部分)を一段のみを有する構成としてもよい。
本実施形態において、風防部材3は、例えば、白板ガラス等の各種ガラスや、サファイア(透明な人工サファイア)、等の誘電体で形成されている。
本実施形態では、ベゼル2をアンテナとして機能させるようになっている。このため、このベゼル2に近接する風防部材3を形成する材料を誘電体とすることで、ベゼル2のアンテナとしてのアンテナ利得の向上を期待することができる。
なお、ベゼル2により受信可能な周波数の調整手法については、後に詳述する。
緩衝部材4は、例えばウレタン樹脂等の各種樹脂により形成することができる。
なお、前述のように、本実施形態では、ベゼル2をアンテナとして機能させるため、このベゼル2と接する緩衝部材4は、ベゼル2のアンテナとしての機能を阻害しないように、損失(誘電損失(tanδ))の少ない非導電性の材料によって形成されることが好ましい。
第一の緩衝部材4aには、ビス41を挿通させるためのビス孔42がアナログ式の時計における12時側と6時側とにそれぞれ2つずつ形成されている。
図3に示すように、第一の緩衝部材4aに形成されているビス孔42から、ベゼル2に形成されているビス孔22を介して、外装ケース1に形成されている孔部13までビス41を挿通させることで、ベゼル2及び緩衝部材4(本実施形態では第一の緩衝部材4a)が、外装ケース1に対してビス止め固定される。
また、第一の緩衝部材4aには、操作ボタン12(12a)が設けられる位置に、操作ボタン12(12a)を外装ケース1の内部に通すための孔部43が形成されている。
さらに、第二の緩衝部材4b及び第三の緩衝部材4cは、ビス45によって外装ケース1にビス止め固定されるようになっており、ビス45が挿通される位置に図示しないビス孔が形成されている。
なお、緩衝部材4の構成はここに例示したものに限定されない。例えば、緩衝部材4を分割せずに一繋がりに形成してもよい。また、緩衝部材4は、ベゼル2の全周を覆うものであってもよい。
図9(a)は、ベゼル2と回路基板71との接続部分の要部拡大断面図であり、図9(b)は、ベゼル2と回路基板71とを接続させる接続部材の斜視図であり、図9(c)は、外装ケースの回路接続孔部に接続部材が挿入された状態を視認側から見た要部平面図である。
図9(a)に示すように、本実施形態のベゼル2と回路基板71との間には接続部材25が配置される。
接続部材25は、各種金属材料等の導電性を有する材料で形成された端子板であり、ベゼル2と回路基板71との間に接続部材25が介在することにより、ベゼル2と回路基板71とが電気的に接続される。
接続部材25は、例えば金属薄板を打ち抜き加工した後に、曲げ加工を施してベゼル側接続部251、接続舌片252、基板側接続部253、接続脚部254、フック部255の各部を形成したものであり、全体がばね性を有している。
図9(c)に示すように、接続部材25は、外装ケース1の切欠き部150内に挿入されるとともに、いずれかの回路接続孔部15に上側(図9において上側、ベゼル2側)から一対のフック部255が挿入されることでセットされる。そして、外装ケース1の上方からベゼル2を載置することで、接続部材25がベゼル2と回路基板71との間で挟まれて、その位置が固定される。
図9(a)に示すように、接続部材25は全体を押し縮められた状態でベゼル2と回路基板71との間に配置されており、ベゼル側接続部251がベゼル2の裏面(図9において下面)に対して押し付けられ、基板側接続部253が回路基板71の表面(図9において上面)に対して押し付けられた状態となっている。
本実施形態では、回路基板71がグランドとして機能するようになっており、グランド端子は、一端側がベゼル2と接触し、他端側が回路基板71と接触するようになっている。
なお、グランドとして機能する部材は回路基板71に限定されない。他にグランドとして機能するものがある場合には、グランド端子の他端側が当該グランドとなる部材に接触するようにグランド端子が配置される。
前述のように、本実施形態では、風防部材3を形成する誘電体の比誘電率又は内向きフランジ部21(本実施形態では、ベゼル2の一段目フランジ21a)と風防部材3とが重なり合う重畳領域の面積のうち少なくとも一方を調整し、ベゼル2が所望の周波数の電波と共振状態となるように、すなわち、ベゼル2が所望の周波数の電波と共振するアンテナとして機能するように設定する。
通常、周波数の低い電波を受信できるようにする場合には、アンテナ長を大きくすることが考えられる。しかし、ベゼル2をアンテナとして機能させる電子時計100が腕時計である場合、時計の外装部材として設けられる一般的なベゼルのサイズでは低い周波数に対応するだけのアンテナ長を確保することが難しい。
このため、本実施形態では、ベゼル2のサイズを変えることなく、風防部材3との組み合わせによりベゼル2の共振周波数を所望の周波数の電波を受信可能なものに調整するように構成する。
図10に、白板ガラス及びサファイアの1MHzにおける比誘電率(εr)と1MHzにおける誘電損失(tanδ×10−4)とを示す。
図10に示すように、白板ガラスの比誘電率は7、誘電損失は36である。また、サファイア(人工サファイア)の比誘電率は10、誘電損失は0.001である。このため、ベゼル2によって受信可能な電波の周波数を低くしたいとき(すなわち、共振周波数、共振ポイントを下げたい場合)には、白板ガラスよりも比誘電率の高いサファイアを、風防部材3を形成する材料として適用することが好ましい。
なお、図10に示した材料は一例であり、風防部材3を形成する材料は、これに限定されない。風防部材3を形成する材料は、受信したい電波の周波数に応じて、比誘電率の高いもの、低いものを適宜選択して用いることができる。
図11は、ベゼルと風防部材との重なり合いを説明する模式図であり、図12は、ベゼルと風防部材との重畳領域と周波数との関係を示すグラフである。
図11において、「Gd」は、風防部材3の直径を示し、「BId」は、ベゼル3の内向きフランジ部21(本実施形態では一段目フランジ21a)の内側の直径を示し、「Bfw」は、内向きフランジ部21(本実施形態では一段目フランジ21a)と風防部材3とが重なり合っているリング状の部分の幅を示している。また、図11中で網掛けされている領域「Ar」は、内向きフランジ部21(本実施形態では一段目フランジ21a)と風防部材3とが重なり合っているリング状の重畳領域を示している。
図12に示すように、重畳領域Arが48.5mm2と少ない場合には、1592MHz程度の高い周波数の電波を受信可能であるのに対して、重畳領域Arが増えるほど受信可能な電波の周波数が低くなっていき、重畳領域Arが98.5mm2である場合には、1574MHz程度まで低くなる。
このため、ベゼル2によって受信可能な電波の周波数を低くしたいとき(すなわち、共振周波数、共振ポイントを下げたい場合)には、重畳領域Arが多くなるように風防部材3の大きさやベゼル2の内向きフランジ部21の幅を設定することが好ましい。
この場合、比誘電率の高い誘電体で重畳領域Arの面積が多くなるような大きさの風防部材3を形成することでより低い周波数の電波をベゼル2において受信可能となる。
逆に、比誘電率の低い誘電体で重畳領域Arの面積が少なくなるような大きさの風防部材3を形成することでより高い周波数の電波をベゼル2において受信可能となる。
ただ、風防部材3の厚み方向の周面における重畳領域は、ベゼル2によって受信可能な電波の周波数(共振周波数)の変化に対して大きく影響しないと考えられるため、図12においては特に考慮していない。
すなわち、周波数(共振周波数)の変化には、実効比誘電率を考慮する必要があり、ベゼル2のうち電流がより多く流れる部分での風防部材3との重なり合いの程度が特に重要となる。この点、電流はグランドに近いところをより多く流れるため、回路基板71がグランドとなる本実施形態の場合、回路基板71に近い内向きフランジ部21の環状中心寄りの部分により電流が集まりやすくなると考えられる。
このため、本実施形態では、風防部材3の厚み方向の周面における重畳領域については考慮せず、内向きフランジ部21の上面と風防部材3の裏面とが接している重畳領域Arの面積と周波数(共振周波数)の変化との関係のみを示している。
例えば、前述のように、スペーサ32を形成する材料としてPETを採用した場合、PETの比誘電率は3.2程度と比較的低いため、共振周波数は高くなる傾向となる。このため、スペーサ32を形成する材料を高比誘電率のものに変えることで、共振周波数を低くする効果が期待できる。
また、スペーサ32の厚みが厚くなるほどベゼル2において受信可能な電波の周波数は高くなるとの関係がある。
すなわち、極力比誘電率の高い部材とアンテナとしてのベゼル2とを接触(又は近接)させることで、実効比誘電率を高めることができ、あたかもベゼル2と風防部材3とが重なり合う重畳領域Arを多くしたのと同様の効果を得ることができる。
このため、スペーサ32の厚みとこれを形成する材料との組み合わせも合せて考慮することで、ベゼル2において受信可能な電波の周波数(共振周波数)をより大きく変化させることが可能となる。
このため、接続部材25及びグランド端子をいずれの回路接続孔部15、グランド接続孔部16に設けるかを調整することによっても、ベゼル2において受信可能な電波の周波数(共振周波数)を調整することができる。
まず、電子時計100を組み立てる際には、ベゼル2の内向きフランジ部21の二段目フランジ21b上に外周縁が載置されるように文字板5を配置し、両面テープ等の接着部材54により固定する。
また、ベゼル2の内向きフランジ部21の一段目フランジ21a内に内側面に沿って防水リング31を配置するとともに、一段目フランジ21aの上面にスペーサ32を配置して、上方から風防部材3を圧入する。
さらに、ベゼルの外側に第一の緩衝部材4a、第二の緩衝部材4b、第三の緩衝部材4cを取り付けて、第一の緩衝部材4a及びベゼル2をビス41により外装ケース1に固定する。また、第二の緩衝部材4b、第三の緩衝部材4cをビス45により外装ケース1に固定する。
また、第一の緩衝部材4aの孔部43、外装ケース1の貫通孔14を挿通させて操作ボタン12(12a,12b)を取り付ける。
さらに、切欠き部150内に接続部材25を配置し、この接続部材25のフック部255を回路接続孔部15に係止させるとともに、切欠き部160内にグランド端子を配置し、このグランド端子をグランド接続孔部16に係止させる。
そして、外装ケース1内にバッテリ74等を搭載したハウジング7、回路基板71、液晶パネル55等を配置し、外装ケース1の裏面側の開口を裏蓋部材8により閉塞する。
これにより、電子時計100が完成する。
これにより、金属材料で形成されたベゼル2がアンテナとして機能する。
また、例えばGPS衛星からの信号を受信したい場合には1575.42MHz等、所定の周波数の電波と共振可能となるようにベゼル2の内側に配置される風防部材3の形成材料の比誘電率を考慮したり、ベゼル2と風防部材3との重畳領域Arの面積を調整したりすることにより、アンテナであるベゼル2により、所望の周波数の電波を受信することができる。
そしてこのように所望の周波数の電波を受信することによって、正確な時刻情報や位置情報等を取得することができ、電子時計100において表示させる時刻等を適宜正しいものに修正することができる。
このため、ベゼル2の大きさや形状を変えることなく、ベゼル2により受信可能な電波の周波数(共振周波数)を設定することができる。
これにより、時計としてのデザイン的な制約を抑えることができ、デザイン性を維持しつつ、所望の周波数の電波を良好に受信することが可能となる。
そして、風防部材3の比誘電率又は内向きフランジ部21と風防部材3との重畳領域Arの面積等を適宜設定することで、ベゼル2が所望の周波数の電波と共振するアンテナとして機能するように構成しているので、アンテナであるベゼル2によって、所望の周波数の電波を受信することができ、正確な時刻情報や位置情報を取得することのできる電子時計100を実現することができる。
このように、アンテナとして機能するベゼル2を接続部材25により直接的に回路基板71と接続することで、アンテナと回路基板とを容量結合により間接的に接続させるような場合と比較して接続状態が安定し、アンテナ特性を良好に保つことができる。
これにより、ベゼル2の大きさ、形状、形成材料等を適宜設定することにより、ベゼル2を、例えば周波数1575.42MHzの電波と共振可能な構成とすれば、GPS(global Positioning System)衛星から送信される電波や日本の準天頂衛星であるQZSSから送信される電波を受信することが可能となり、これらの電波に含まれる時刻情報や位置情報を電子時計100において利用することが可能となる。
この場合、ソーラーパネルもアンテナとして機能するベゼル2に比較的近接した位置に配置されることとなるため、ベゼル2により受信したい所望の電波の周波数に応じてソーラーパネルを形成する材料の比誘電率等も考慮することが好ましい。
例えば、文字板5が金属材料等で形成されている場合には、文字板がグランドとして機能してもよく、この場合には、グランド端子は、その一端側がベゼル2と接続され、他端側が文字板と接続される。
また、上記のように電子時計がソーラーパネルを備えている場合には、ソーラーパネルがグランドとして機能してもよい。
例えば、歩数計、高度計、気圧計等の各種機器について、本発明の電子時計を適用してもよい。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
〔付記〕
<請求項1>
基板を内部に収容する筒状の外装ケースと、
金属材料により環状に形成され、環状の内側面から環状中心に向かって張り出す内向きフランジ部を備え、前記外装ケースにおける外側上部に配置されるとともに、前記基板と電気的に接続されるベゼルと、
透明な誘電体で形成され、前記ベゼルの内側に配置され、前記内向きフランジ部により支持される風防部材と、
を備え、
前記風防部材を形成する誘電体の比誘電率又は前記内向きフランジ部と前記風防部材とが重なり合う重畳領域の面積のうち少なくとも一方を調整し、前記ベゼルが所望の周波数の電波と共振するように構成されていることを特徴とする電子時計。
<請求項2>
前記所望の周波数の電波の周波数が低くなるにしたがって、前記風防部材を形成する誘電体の比誘電率を高くすることを特徴とする請求項1に記載の電子時計。
<請求項3>
前記所望の周波数の電波の周波数が低くなるにしたがって、前記内向きフランジ部と前記風防部材とが重なり合う重畳領域の面積を広くすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子時計。
<請求項4>
前記ベゼルは、接続部材を介して前記基板と接続されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電子時計。
<請求項5>
前記所望の周波数の電波は、衛星から送信される電波を含むことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電子時計。
2 ベゼル
3 風防部材
4 緩衝部材
21 内向きフランジ部
25 接続部材
32 スペーサ
41 ビス
71 回路基板
100 電子時計
Claims (5)
- 基板を内部に収容する筒状の外装ケースと、
金属材料により環状に形成され、環状の内側面から環状中心に向かって張り出す内向きフランジ部を備え、前記外装ケースにおける外側上部に配置されるとともに、前記基板と電気的に接続されるベゼルと、
透明な誘電体で形成され、前記ベゼルの内側に配置され、前記内向きフランジ部により支持される風防部材と、
を備え、
前記風防部材を形成する誘電体の比誘電率又は前記内向きフランジ部と前記風防部材とが重なり合う重畳領域の面積のうち少なくとも一方を調整し、前記ベゼルが所望の周波数の電波と共振するように構成されていることを特徴とする電子時計。 - 前記所望の周波数の電波の周波数が低くなるにしたがって、前記風防部材を形成する誘電体の比誘電率を高くすることを特徴とする請求項1に記載の電子時計。
- 前記所望の周波数の電波の周波数が低くなるにしたがって、前記内向きフランジ部と前記風防部材とが重なり合う重畳領域の面積を広くすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子時計。
- 前記ベゼルは、接続部材を介して前記基板と電気的に接続されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電子時計。
- 前記所望の周波数の電波は、衛星から送信される電波を含むことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電子時計。
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